(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084069
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】レーザビーム照射用光学ユニット及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/042 20140101AFI20220531BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B23K26/042
B23K26/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195668
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小森 一範
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敬志
(72)【発明者】
【氏名】竹本 昌紀
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA87
4E168BA88
4E168CA02
4E168CA07
4E168CB04
4E168CB18
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
4E168DA36
4E168DA38
4E168EA13
4E168EA15
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向に傾きがあっても、精度良くレーザ加工ができるレーザビーム照射用光学ユニット及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、レーザ発振器から照射されるレーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットであって、前記レーザ発振器から前記加工対象物までの前記レーザビームの照射軌道内において、前記レーザ発振器の光ファイバのレーザビーム出力端から出力される前記レーザビームの前記照射軌道への入射方向を調整するレーザビーム方向調整機構と、前記レーザビームを平行光にするためのコリメートレンズとを備え、前記レーザビーム方向調整機構は、前記レーザ発振器と前記コリメートレンズとの間に配されるレーザビーム照射用光学ユニットを採用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から照射されるレーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットであって、
前記レーザ発振器から前記加工対象物までの前記レーザビームの照射軌道内において、前記レーザ発振器の光ファイバのレーザビーム出力端から出力される前記レーザビームの前記照射軌道への入射方向を調整するレーザビーム方向調整機構と、
前記レーザビームを平行光にするためのコリメートレンズとを備え、
前記レーザビーム方向調整機構は、前記レーザ発振器と前記コリメートレンズとの間に配されることを特徴とするレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項2】
前記レーザビーム方向調整機構は、前記光ファイバが接続されるコネクタ部と、前記コネクタ部を前記照射軌道に対して固定するコネクタ受け部とからなり、
前記レーザビーム出力端における前記光ファイバのコアの中央部を中心点として、前記コネクタ部と前記コネクタ受け部との少なくとも一方が円弧状に旋回することによって、前記レーザビームの前記照射軌道への入射方向を調整する請求項1に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項3】
前記旋回の旋回角度θは、前記照射軌道の光学素子の光学中心を通る光軸方向を0mradとしたとき、-40mrad<θ<40mradである請求項1又は請求項2に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項4】
前記照射軌道内に、前記レーザビーム方向調整機構を用いて調整した前記レーザビームの前記照射軌道への入射方向を確認するための、脱着可能な観測装置を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項5】
前記観測装置で観測する観測光が、前記レーザビームとは異なる観測用の前記観測光である請求項4に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項6】
前記照射軌道内に、前記スポットにおける前記レーザビームのエネルギー分布を定めるエネルギー分布制御用光学素子を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項7】
前記エネルギー分布制御用光学素子は、前記スポットとして、少なくとも環状の周辺領域からなる環状形状のスポットを形成する請求項6に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項8】
前記エネルギー分布制御用光学素子が備える光学有効面の少なくとも1面は、回折レンズ、アキシコンレンズ、非球面レンズのいずれかである請求項6又は請求項7に記載のレーザビーム照射用光学ユニット。
【請求項9】
レーザ加工ヘッド内に、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレーザビーム照射用光学ユニットを収容して得られることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、レーザビーム照射用光学ユニット及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザビームが種々の製品の加工に広く用いられている。このレーザビームを用いることで、加工する部位に高エネルギー密度の微小な照射領域(スポット)が形成でき、各種微細加工を容易に行うことができるようになる。たとえば、金属板の切断、溶接等を行なえることが知られている。
【0003】
このような加工に用いられるレーザビームは、レーザ発振器から光ファイバを通してレーザ加工ヘッドに導かれる。そして、当該光ファイバは、コネクタを介してレーザ加工ヘッドに接続される。このようにして入射されたレーザビームは、レーザ加工ヘッド内のレーザビーム照射用光学ユニットにおいて、必要な光学素子を経て加工対象物に照射され、加工対象物を加工する。
【0004】
ここで、加工対象物表面におけるレーザビームのスポットを十分かつ適切なエネルギー強度分布で照射するためには、加工対象物の表面に対するレーザビームの照射角度を垂直にすることが望ましい。ところが、加工対象物の表面は、レーザ加工ヘッドの光軸に対して、必ずしも垂直に位置している場合だけではない。そこで、特許文献1では、レーザ加工ヘッド全体をチルト方向に制御してレーザビームの軌道を変更し、レーザビームが加工対象物の表面に垂直に照射することを可能とするレーザ照射装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向は、光ファイバの出力端の構造部及び前記コネクタの構造で決定される基準光軸に対して、完全には一致せず、一定の傾きを有している場合がある。例えば、フィーディングファイバ、プロセスファイバの出力端の構造部及び前記コネクタの構造で決定される基準光軸に対して、フィーディングファイバ、プロセスファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向の傾きが、30mrad(ミリラジアン)以下であるとされている。なお、本明細書におけるレーザビームの「出射方向」とは、光ファイバの出力端から放射状に出力されるレーザビームの中心部分の出射する方向を意味する。そして、本明細書における「レーザビームの出射方向の傾き」とは、当該レーザビームが出力される光ファイバの出力端の構造部及び前記コネクタの構造で決定される基準光軸に対する出射方向の傾きを意味する。
【0007】
このようなフィーディングファイバ、プロセスファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向の傾きがある場合、特許文献1のように光ヘッド部全体をチルトする機構を使って、加工対象物の加工部位にレーザビームを照射するよう調整したとしても、当該光ヘッド内の、レーザビーム照射用光学ユニットの鏡筒の内側にレーザビームが照射されてしまい、鏡筒材が溶融破損したり、鏡筒等の溶融物によってレーザビーム照射用光学ユニット内の光学素子が汚損するといった問題が発生する。しかしながら、この問題に関しての解決策は具体的に提示されていない。
【0008】
そこで、フィーディングファイバ、プロセスファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向の傾きに合わせて、レーザビームの出射方向がレーザビーム照射用光学ユニットの光学素子の略光学中心を通るよう、光学系全体をシフトさせる機構を設けることで、前述の問題を解決することが考えられる。しかしながら、この場合、レーザビームのスポットにおいて、レーザビームのエネルギー強度分布にコマ収差が生じるなどして、エネルギー強度分布の形状が歪んでしまうといった問題が生じ、精度の良いレーザ加工が困難となってしまう。
【0009】
本件発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向に傾きがあっても、精度良くレーザ加工ができるレーザビーム照射用光学ユニット及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、鋭意研究の結果、以下のレーザビーム照射用光学ユニット及びレーザ加工装置に想到した。
【0011】
A.本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニット
本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットは、レーザ発振器から照射されるレーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのレーザビーム照射用光学ユニットであって、前記レーザ発振器から前記加工対象物までの前記レーザビームの照射軌道内において、前記レーザ発振器の光ファイバのレーザビーム出力端から出力される前記レーザビームの前記照射軌道への入射方向を調整するレーザビーム方向調整機構と、前記レーザビームを平行光にするためのコリメートレンズとを備え、前記レーザビーム方向調整機構は、前記レーザ発振器と前記コリメートレンズとの間に配されることを特徴としている。
【0012】
B.本件発明に係るレーザ加工装置
本件発明に係るレーザ加工装置は、レーザ加工装置のレーザ加工ヘッドに、上述のレーザビーム照射用光学ユニットを収容して得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットは、レーザ発振器から加工対象物までのレーザビームの照射軌道内において、レーザ発振器の光ファイバのレーザビーム出力端から出力されるレーザビームの照射軌道への入射方向を調整するレーザビーム方向調整機構と、レーザビームを平行光にするためのコリメートレンズとを備えている。そして、レーザビーム方向調整機構は、レーザ発振器とコリメートレンズとの間に配される。そのため、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向に傾きがあっても、レーザビームのスポットにおけるエネルギー強度分布にコマ収差が生じず、エネルギー強度分布の形状が歪まないよう、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整することができる。また、このレーザビーム方向調整機構は、機構が小型かつシンプルであり、調整も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】レーザビーム照射用光学ユニットの光学素子の配置構成とレーザビームの略軌道を示す断面図である。
【
図2】光ファイバ接続部とレーザビーム方向調整機構部分の略断面図である。
【
図4】実施例1のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整前の観測装置におけるスポット像のシミュレーション図である。
【
図5】実施例1のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整前の観測装置におけるスポット像のY軸断面でのエネルギー強度を示した図である。
【
図6】実施例1のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整後の観測装置におけるスポット像のシミュレーション図である。
【
図7】実施例1のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整後の観測装置におけるスポット像のY軸断面でのエネルギー強度を示した図である。
【
図8】実施例2のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整前の観測装置におけるスポット像のシミュレーション図である。
【
図9】実施例2のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整前の観測装置におけるスポット像のY軸断面でのエネルギー強度を示した図である。
【
図10】実施例2のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整後の観測装置におけるスポット像のシミュレーション図である。
【
図11】実施例2のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整後の観測装置におけるスポット像のY軸断面でのエネルギー強度を示した図である。
【
図12】比較例1のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整後の観測装置におけるスポット像のシミュレーション図である。
【
図13】比較例1のレーザビームの照射軌道への入射方向を調整後の観測装置におけるスポット像のY軸断面でのエネルギー強度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニット及びレーザ加工装置の実施の形態に関して述べる。なお、以下に説明するものは、単に一態様を示したものであり、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0016】
A.レーザビーム照射用光学ユニット
本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニットは、レーザ発振器から照射されるレーザビームを加工対象物にスポットを形成して照射しレーザ加工するためのものである。そして、当該レーザビーム照射用光学ユニットのレーザ発振器から加工対象物までのレーザビームの照射軌道内において、レーザ発振器の光ファイバのレーザビーム出力端から出力されるレーザビームの照射軌道への入射方向を調整するレーザビーム方向調整機構と、レーザビームを平行光にするためのコリメートレンズとを備えている。そして、コリメートレンズと、加工対象物との間に、加工対象物表面でのスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布を定めるためのエネルギー分布制御用光学素子を備えている。特に、レーザビーム方向調整機構は、レーザ発振器とコリメートレンズとの間に配したことが特徴である。
【0017】
なお、本明細書におけるレーザビームの照射軌道への「入射方向」とは、光ファイバの出力端から放射状に出力されるレーザビームの中心部分の照射軌道へ入射する方向を意味する。
【0018】
レーザビーム照射用光学ユニットは、レーザビーム方向調整機構を備えることによって、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向に傾きがあっても、レーザビームのスポットにおけるエネルギー強度分布にコマ収差が生じず、エネルギー強度分布の形状が歪まないよう、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整することができる。これによって、精度良くレーザ加工ができる。さらに、このレーザビーム方向調整機構は、機構が小型かつシンプルであり、調整も簡単に行うことができる。
【0019】
図1に、本件発明に係るレーザビーム照射用光学ユニット1の光学素子の配置構成とレーザビームの略軌道を示す断面図を示す。ここで、
図1(a)は、レーザビームの出射方向に傾きがある場合であって、レーザ発振器から加工対象物までのレーザビームの照射軌道への、レーザビームの入射方向を未だ調整していない状態を示し、
図1(b)は、レーザビームの出射方向に傾きがある場合であって、レーザ発振器から加工対象物までのレーザビームの照射軌道への、レーザビームの入射方向を調整した状態を示している。
【0020】
レーザビーム照射用光学ユニット1は、レーザ発振器から出力されるレーザビームを導く光ファイバ30を接続するコネクタ部31と、コネクタ部31をレーザビームの照射軌道に対して固定するコネクタ受け部32と、光ファイバ30の出力端からレーザビームの光軸11に沿って拡散状に出力されたレーザビームを平行光にするためのコリメートレンズ21と、加工対象物表面でのスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布を定めるためのエネルギー分布制御用光学素子22と、レーザビームの照射軌道へのレーザビームの入射方向を調整する際に観測光を観測するための観測装置23とを、レーザビーム照射用光学ユニット1の照射軌道の光軸10に沿って、レーザ発振器側から順に配置している。
【0021】
なお、エネルギー分布制御用光学素子22は、コリメート機能を併せ持っても良い。この場合、コリメートレンズ21は不要となり、エネルギー分布制御用光学素子22の加工対象物側に、集光レンズを配置するのが好ましい。エネルギー分布制御用光学素子22がコリメート機能を併せ持つ場合、レーザビーム照射用光学ユニット1におけるレーザビーム方向調整機構20は、レーザ発振器とエネルギー分布制御用光学素子22との間に配されるものである。
【0022】
レーザビーム方向調整機構20は、光ファイバ30が接続されるコネクタ部31と、コネクタ部31を照射軌道の光軸10に対して固定するコネクタ受け部32とからなり、レーザビーム出力端における光ファイバ30のコアの中央部を中心点として、コネクタ部31とコネクタ受け部32との少なくとも一方が円弧状に旋回することによって、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整する。
【0023】
コネクタ受け部32と、コリメートレンズ21と、エネルギー分布制御用光学素子22とは、鏡筒33に固定されている。そして、鏡筒33には、観測装置23を備える脱着可能な観測筒34が接続されている。レーザビームの照射軌道の光軸10を構成する鏡筒33に、観測装置23を備える脱着可能な観測筒34を接続することによって、コネクタ部31とコネクタ受け部32とからなるレーザビーム方向調整機構20を用いて調整する際に、レーザビームの照射軌道への入射方向を確認することができる。そして、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整した後、観測筒34を取り外し、観測装置23の撮像面があった位置に加工対象物の表面を位置させることによって、レーザ加工を精度良く行うことができる。
【0024】
なお、レーザビーム照射用光学ユニット1は、ガルバノミラーを用いて、レーザ光の照射位置を加工対象物の狙った位置へ移動させることができるガルバノ光学系を含むものであっても良い。ガルバノ光学系を含むものであっても、レーザビーム照射用光学ユニット1におけるレーザビーム方向調整機構20は、レーザ発振器とコリメートレンズ21との間に配されるものである。そして、レーザビームの照射軌道への入射方向の調整も、前述の観測装置23を備える脱着可能な観測筒34を接続して行うものである。
【0025】
レーザ発振器からレーザビーム照射用光学ユニット1に入射されるレーザビームは、レーザ加工用に用いることができるレーザビームであれば、いかなるレーザビームであっても用いることができる。特に、YAGレーザ(波長1064nm)、ファイバレーザ(波長1070nm)、ディスクレーザ(波長1030nm)、半導体レーザ(波長935nm、940nm、980nm、940~980nm、940~1025nm)に代表される発振波長が約920~1080nmの近赤外レーザビームであることが好ましい。
【0026】
図1(a)の望ましい照射軌道15は、レーザビーム照射用光学ユニット1において、加工対処物表面でのスポットが、照射軌道の光軸10の延長線上に形成される場合のレーザビームの照射軌道を示している。レーザビームが望ましい照射軌道15を通ることによって、レーザビームは、コリメートレンズ21と、エネルギー分布制御用光学素子22とを、照射軌道の光軸10に対して点対称に通過する。そのため、エネルギー分布制御用光学素子22において変換されるスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布は、照射軌道の光軸10に対して点対称に分布する。
【0027】
図1(a)の無調整時の照射軌道16は、レーザビームの出射方向11の傾きが0mradでは無い場合であって、レーザビームが、レーザビーム照射用光学ユニット1に配されている各光学素子を、照射軌道の光軸10に対して点対称ではない状態で通過する場合を示している。この場合、エネルギー分布制御用光学素子22において変換されるスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布にコマ収差や歪が生じるため、照射軌道の光軸10に対して点対称ではない状態で分布する。スポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が照射軌道の光軸10に対して点対称ではない状態で分布する場合、レーザビームでの加工において、加工対象物の表面を精度良く溶融させることができない。
【0028】
図1(b)は、レーザビームの出射方向11の傾きが0mradでは無い場合であって、レーザビーム方向調整機構20を用いて、レーザビームの照射軌道への入射方向を照射軌道の光軸10に略一致するよう調整した場合を示している。光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの照射軌道への入射方向を、照射軌道の光軸10に略一致するよう調整するために、レーザビーム方向調整機構20は、レーザビーム出力端における光ファイバ30のコアの中央部を中心点として、コネクタ部31とコネクタ受け部32との少なくとも一方が円弧状に旋回することによって、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整する。このように、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向11を、照射軌道の光軸10に略一致するよう調整することによって、レーザビームは、レーザビーム照射用光学ユニット1に配されている各光学素子を、照射軌道の光軸10に対して点対称に通過する。そのため、エネルギー分布制御用光学素子22において変換されるスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が、照射軌道の光軸10に対して点対称に分布する。スポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が照射軌道の光軸10に対して点対称に分布することから、レーザビームでの加工において、加工対象物の表面を精度良く溶融させることができる。
【0029】
図2に、光ファイバ30とレーザビーム方向調整機構20の略断面図を示す。レーザ発振器から出力されるレーザビームは、光ファイバ30を用いてレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドへ導かれる。この光ファイバ30は、レーザ加工ヘッド内のレーザビーム照射用光学ユニット1にコネクタ部31を介して接続される。このとき、
図2(a)が示すように、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向11は、光ファイバ30の出力端の構造部及びコネクタ部31の構造で決定される基準光軸(照射軌道の光軸10に一致している)に対して、光ファイバ出力端の中央部を中心点としてθの角度で表される一定の範囲の傾きを有している。具体的には、例えばレイカスファイバー社のCWファイバレーザでは、光ファイバの出力端の構造部及びコネクタの構造で決定される基準光軸に対して、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの光軸の角度が、30mrad(ミリラジアン)以下であるとされている。
【0030】
上述のような光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向11は、観測装置23を備える脱着可能な観測筒34を接続し、観測装置23に当該レーザビームを照射することによって、確認することができる。具体的には、観測装置23を用いて、レーザビームの照射位置や、レーザビームのエネルギー分布を観測する。なお、観測装置23にレーザビームを入射する前に、観測装置23が損傷することなく観測可能なレベルにレーザビームの強度を減光することが好ましい。観測装置23への入射光を歪ませることなくレーザビームの強度を減光するものであれば、いかなる減光素子も用いることができる。
【0031】
観測装置23に入射する観測光は、上述のように、加工に用いるレーザビームもしくは減光したレーザビームを用いることができる。しかしながら、加工に用いるレーザビームに限定されることなく、加工に用いるレーザビームとは異なるガイド光、エイミング光と呼ばれる観測用の観測光を用いることが好ましい。観測用の観測光のエネルギー強度が、観測装置23を損傷させるレベルではなく、減光させる必要が無いからである。
【0032】
図2(b)は、レーザビーム方向調整機構20を用いて、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの照射軌道への入射方向を調整したときの概要を示す断面図である。
図2(b)では、レーザビーム方向調整機構20を用いて、光ファイバ30及びコネクタ部31側を、光ファイバ出力端の中央部を中心点として、半径rの円弧状に-θ1の角度で旋回させている。旋回軌跡40は、コネクタ部31が、半径rで円弧状に旋回する場合の軌跡を示している。すなわち、光ファイバ30の出力端の構造部及びコネクタ部31の構造で決定される基準光軸12が、照射軌道の光軸10に対して、-θ1の角度を有する状態となる。この調整によって、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向11は、照射軌道の光軸10に略一致する状態になる。
【0033】
このとき、レーザビーム方向調整機構20は、レーザ発振器の光ファイバ30の出力端の中央部を中心点として円弧状に旋回する構造であることが好ましい。レーザビーム方向調整機構20が、レーザビーム出力端における光ファイバ30のコアの中央部を中心点として、コネクタ部31とコネクタ受け部32との少なくとも一方が円弧状に旋回する構造を有することによって、光ファイバ30の出力端の構造部及びコネクタ部31の構造で決定される基準光軸12に対する、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの照射軌道への入射方向を、レーザビーム照射用光学ユニット1のレーザビームの照射軌道の光軸10と略一致するよう調整することができるからである。
【0034】
スポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が環状である場合、観測装置23への入射光のエネルギー分布が偏った環状とならないようレーザビーム方向調整機構20を用いて調整する。スポットにおけるレーザビームのエネルギー分布がガウシアン状である場合、観測装置23への入射光のエネルギー分布が偏ったガウシアン状とならないようレーザビーム方向調整機構20を用いて調整する。
【0035】
〔レーザビーム方向調整機構〕
レーザビーム方向調整機構20において、光ファイバ30の出力端の中央部を中心点とした円弧状の旋回の旋回角度θは、照射軌道の光学素子の光学中心を通る光軸10方向を0mradとした場合、-40mrad<θ<40mradであることが好ましい。-40mrad<θ<40mradであることによって、光ファイバ30の出力端の構造部及びコネクタ部31の構造で決定される基準光軸12に対する、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向11の傾きがあっても、レーザビーム照射用光学ユニット1のレーザビームの照射軌道への入射方向を、照射軌道の光軸10と略一致するよう調整することができるからである。一方、θが-40mrad以下、もしくはθが40mrad以上の場合、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの出射方向11の角度の一般的な製品仕様を超えるため、必要以上の仕様となり、レーザビーム方向調整機構20のサイズも大きくなることから、好ましくない。
【0036】
なお、上述の光ファイバ30の出力端の中央部を中心点とした円弧状の旋回の旋回角度θとは、照射軌道の光軸10に対して、照射軌道の光軸10に沿った照射軌道の光軸10を含む平面において、任意の平面における角度を示しており、特定の平面における角度に限定されるものではない。
【0037】
レーザビーム方向調整機構20の旋回機構の具体例を
図3に示す。
図3に示すレーザビーム方向調整機構20の旋回機構は、光ファイバ30の出力端の中央部50を含むX方向55の回転軸51と、光ファイバ30の出力端の中央部50を含むY方向54の回転軸52との、2つの回転軸を有している。そして、X方向55の回転軸51と、Y方向54の回転軸52とは、照射方向の光軸10に直交する平面上にあって、かつ、互いに直交している。
図3においては、コネクタ部31はY方向54の回転軸52で固定されており、Y方向54の回転軸52は、X方向55の回転軸51に接続されたリング状の固定具53で固定されている。
【0038】
このとき、X方向55の回転軸51における旋回角度θと、Y方向54の回転軸52における旋回角度θとが、それぞれ-40mrad<θ<40mradの範囲を取りうるようにする。このような旋回機構を用いることによって、照射軌道の光軸10に対して、照射軌道の光軸10に沿った照射軌道の光軸10を含む任意の平面において、光ファイバ30の出力端の中央部50を中心点とした円弧状の旋回の旋回角度θとして、-40mrad<θ<40mradの範囲で、調整することができるものである。
【0039】
ただし、旋回機構は、照射軌道の光軸10に対して、照射軌道の光軸10に沿った照射軌道の光軸10を含む任意の平面において、光ファイバ30の出力端の中央部50を中心点とした円弧状の旋回の旋回角度θとして、-40mrad<θ<40mradの範囲で、調整することができるものであれば、
図3を用いて説明したものに限定されるものではない。
【0040】
〔観測装置〕
観測装置23は、レーザビーム方向調整機構20を用いて調整したレーザビームの照射位置や、レーザビームのエネルギー分布を観測することができるものであれば、特に限定されるものではなく、いかなる観測装置も用いることができる。そして、当該観測装置23を備える観測筒34は、鏡筒33に対して脱着可能であることが好ましい。観測筒34を鏡筒33に接続した際の、観測装置23の撮像面の位置は、レーザ加工時の、スポットを形成する加工対処物の表面と同じ場所に位置するのが好ましい。さらに、観測装置23の撮像面の中心の位置は、加工対象物の加工部分の中心であることが好ましい。スポットを形成する加工対処物の表面と同じ位置において、レーザビームの位置やレーザビームのエネルギー分布を観測することができるからである。そして、光ファイバ30の出力端から出力されるレーザビームの照射軌道への入射方向を、照射軌道の光軸10に略一致するよう調整した後、観測装置23を取り外すことによって、加工対象物を加工することができるからである。
【0041】
〔コリメートレンズ〕
コリメートレンズ21は、光ファイバ30の出力端から放射状に出力されるレーザビームを平行光にするための光学素子である。
【0042】
〔エネルギー分布制御用光学素子〕
エネルギー分布制御用光学素子22は、レーザビームを加工対象物の表面に照射したときに、加工対象物表面でのスポットにおけるエネルギー分布を定めるための光学素子である。
【0043】
ここで、エネルギー分布制御用光学素子22は、加工対象物表面でのスポットにおけるエネルギー分布の形状が少なくとも環状の周辺領域からなる環状形状となるようにレーザビームを変換することが好ましい。スポットのエネルギー分布の形状が少なくとも環状の周辺領域からなる環状形状となることによって、加工対象物の表面において、スポットの中心領域からどの向きにも均一にレーザビームのエネルギーが照射されるからである。そして、このことによって、溶融亜鉛鋼板の重ね溶接で、亜鉛のガスが抜け、きれいな溶接ができるからである。
【0044】
また、エネルギー分布制御用光学素子22が形成するスポットの形状は特に限定されるものではなく、例えば、環状と環状の中心部における点状とからなるものであっても良いし、トップハット型の形状などであっても良い。このとき、環状の中心部における点状のスポットのエネルギー強度は、環状部のエネルギー強度よりも高いことが好ましい。光の反射率が高いアルミなどでは、エネルギー強度の弱い環状部で金属を溶融させて反射率を下げ、エネルギー強度の高い中心部で加工対象物を深く溶融させることなどができるため、レーザ加工がより容易になるからである。
【0045】
前述のスポット形状を形成するために、エネルギー分布制御用光学素子22が備える光学有効面の少なくとも1面は、回折レンズ、アキシコンレンズ、非球面レンズのいずれかであることが好ましい。レーザビームのスポット形状を、環状、もしくは、環状と環状の中心部における点状とからなるものにすることができるからである。
【0046】
エネルギー分布制御用光学素子22は、コリメート機能を併せ持っても良い。エネルギー分布制御用光学素子22がコリメート機能を併せ持つ場合、レーザビーム照射用光学ユニット1におけるレーザビーム方向調整機構20は、レーザ発振器とエネルギー分布制御用光学素子22との間に配されるものである。
【0047】
〔集光レンズ〕
エネルギー分布制御用光学素子22の加工対象物側に、集光レンズを備えても良い。加工対象物表面でのスポットにおけるエネルギー分布の形状がガウシアン状となるレーザビームの集光ができるからである。
【0048】
〔レーザビームの照射軌道への入射方向の調整方法〕
レーザビーム照射用光学ユニット1のレーザビーム方向調整機構20を用いた、レーザビームの照射軌道への入射方向の調整方法の具体的方法について説明する。なお、この調整方法は、以下に説明する方法に限定されるものではない。
【0049】
ここでは、加工対象物表面でのスポットにおけるエネルギー強度分布の形状が環状である場合を想定する。観測装置23で撮像したレーザビームのスポット像から、撮像面の中心を含む第1の座標軸上のエネルギー強度分布を抽出する。そして、撮像面の中心を第1の座標軸の原点として、第1の座標軸上のマイナス座標側とプラス座標側のそれぞれのエネルギー強度分布値を積分した値をEM1、EP1とする。同様にして、第1の座標軸と直交する第2の座標軸上のエネルギー強度分布を抽出し、撮像面の中心を第2の座標軸の原点として、第2の座標軸上のマイナス座標側とプラス座標側のそれぞれのエネルギー強度分布値を積分した値をEM2、EP2とする。このとき、EM1、EP1、EM2、EP2の大きさを比較することによって、第1の座標軸と第2の座標軸からなる座標平面において、スポット像のエネルギー強度がどのように偏っているかを知ることができる。
【0050】
さらに、観測装置23で撮像したレーザビームのスポット像から、第1の座標軸上と第2の座標軸上とにおいて、マイナス座標側とプラス座標側のそれぞれのエネルギー強度値のピーク値と、ピーク値を示した座標値を抽出する。これらのエネルギー強度値のピーク値と、ピーク値を示した座標値から、エネルギー強度分布の形状の歪み状態を知ることができる。
【0051】
このようにして確認したレーザビームの出射方向の傾き情報から、レーザビーム方向調整機構20を用いて、レーザビーム出力端における光ファイバ30のコアの中央部を中心点として、コネクタ部31とコネクタ受け部32との少なくとも一方を円弧状に旋回させることによって、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整することができる。調整した後、上述の方法で再度レーザビームのスポットにおけるエネルギー強度分布を確認し、例えばEM1、EP1、EM2、EP2の大きさの差が、一定の許容値の範囲内であるとか、マイナス座標側とプラス座標側のそれぞれのエネルギー強度値のピーク値の差が一定の許容値の範囲内であり、ピーク値を示した座標値の絶対値の差が一定の許容値の範囲内であるなどの判断基準によって、調整完了を判断できる。そして、1回の調整で判断基準内に調整できなかった場合は、上述の方法で再調整することができる。このようにして、スポットにおいて適切なエネルギー分布を得ることができる。
【0052】
また、上述のように、観測装置23から、スポットにおけるエネルギー強度分布を数値情報として得ることができることから、観測装置23から得られる上述の観測値を、レーザビームの出射方向の傾きの大きさに応じて事前に学習させること等によって、当該調整を自動化させることも可能である。
【0053】
B.レーザ加工装置
本件発明に係るレーザ加工装置は、レーザ加工装置のレーザ加工ヘッドに、上述のレーザビーム照射用光学ユニット1を収容して得られるものである。これによって、加工対象物にレーザビームを照射して、加熱溶解による加工対象物の加工を行うことができる。また、当該レーザ加工装置のレーザビーム方向調整機構20は、レーザビーム出力端における光ファイバ30のコアの中央部を中心点として、コネクタ部31とコネクタ受け部32との少なくとも一方が円弧状に旋回することができる。
【0054】
したがって、当該レーザ加工装置は、レーザビームの出射方向11の傾きが0mradでは無い場合であっても、レーザビーム方向調整機構20を用いて、レーザビームの照射軌道への入射方向を照射軌道の光軸10に略一致するよう調整することができる。そのため、エネルギー分布制御用光学素子において変換されるスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が、照射軌道の光軸に対して点対称に分布する。スポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が照射軌道の光軸に対して点対称に分布することから、レーザビームでの加工において、加工対象物の表面を精度良く溶融させることができる。
【0055】
以上説明した本件発明に係る実施の形態は、本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、以下実施例を挙げて本件発明をより具体的に説明するが、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0056】
光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向が、レーザビーム照射用光学ユニット1のレーザビームの照射軌道の光軸に対して、20mradの角度で傾いている場合の、レーザビーム方向調整機構による調整結果を確認した。ここでは、エネルギー分布制御用光学素子において変換されるスポットにおけるレーザビームのエネルギー分布が環状である。まず、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整する前の、観測装置におけるスポット像のシミュレーション結果を
図4に示す。
図4に示す画像は、レーザビームのエネルギー強度の最大値を1.0としたときの強度比を、画像の色の濃淡で表している。レーザビームの出射方向が、照射軌道の光軸に対して20mradの角度で傾いていることが原因で、
図4の画像がY軸の中心点からずれており、かつ、環状のエネルギー強度が不均一であることを示している。
【0057】
また、
図4のX軸の中心における、スポット像のY軸断面でのエネルギー強度を
図5に示す。
図5から、レーザビームの照射軌道への入射方向が、Y軸にそって照射軌道の光軸(Y軸の中心)からずれ、かつ、2つのエネルギー強度のピーク値が異なる値になっていることが確認できた。
【0058】
次に、
図5に示す確認結果を用いて、2つのエネルギー強度のピークの位置や、ピーク値の違いの情報などから、レーザビーム方向調整機構による旋回の方向と角度を割り出して、レーザビーム方向調整機構による旋回によってレーザビームの照射軌道への入射方向を調整した場合の、観測装置におけるスポット像のシミュレーション結果を
図6に示す。レーザビームの照射軌道への入射方向が、照射軌道の光軸に略一致し、
図6の画像がY軸とX軸との中心点に位置しており、かつ、環状のエネルギー強度が均一であることを示している。
【0059】
次に、
図6のX軸の中心における、スポット像のY軸断面でのエネルギー強度を
図7に示す。
図7から、レーザビームの照射軌道への入射方向が、照射軌道の光軸(Y軸の中心)に位置しており、かつ、2つのエネルギー強度のピーク値が同じ値になっていることが確認できた。すなわち、光ファイバの出力端から出力されるレーザビームの出射方向に傾きがあっても、レーザビームのスポットにおけるエネルギー強度分布にコマ収差が生じず、エネルギー強度分布の形状が歪まないよう、レーザビームの照射軌道への入射方向を調整することができた。そして、レーザビーム方向調整機構による調整後、観測装置を取り外して、観測装置の撮像面の位置に加工対象物の表面を設置することによって、加工対象物の表面を精度良く溶融させることができることを確認した。