(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084139
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/04 20060101AFI20220531BHJP
H05B 6/10 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
H05B6/04 321
H05B6/10 341
H05B6/10 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195801
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 千春
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA02
3K059AA07
3K059AA08
3K059AA16
3K059AB19
3K059AB25
3K059AB26
3K059AB27
3K059AB28
3K059AD03
3K059AD35
3K059CD54
3K059CD72
3K059CD75
(57)【要約】
【課題】 非磁性金属の加熱処理技術を改善する。
【解決手段】 誘導加熱装置は、10kHz以上、100kHz以下の出力周波数と、3kW以上、30kW以下の定格出力と、を有し、第1の共振コンデンサが内蔵されたIHインバータと、トランスと、第2の共振コンデンサと、加熱コイルと、を備えている。トランスは、一次コイルと、一次コイルよりも巻数が少ない二次コイルと、を有している。IHインバータが一次コイルに接続され、第2の共振コンデンサと加熱コイルとが二次コイルに接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱装置であって、
10kHz以上、100kHz以下の出力周波数と、3kW以上、30kW以下の定格出力と、を有し、第1の共振コンデンサが内蔵されたIHインバータと、
一次コイルと、該一次コイルよりも巻数が少ない二次コイルと、を有するトランスと、
第2の共振コンデンサと、
加熱コイルと
を備え、
前記IHインバータが前記一次コイルに接続され、前記第2の共振コンデンサと前記加熱コイルとが前記二次コイルに接続された
誘導加熱置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱装置であって、
前記加熱コイルはソレノイドコイルであり、
前記誘導加熱装置は、さらに、被加熱物を、前記ソレノイドコイルの内部を通るように搬送する搬送手段を備える
誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導加熱装置であって、
前記加熱コイルは平面コイルであり、
前記誘導加熱装置は、さらに、被加熱物を、前記平面コイルの近傍を通るように搬送する搬送手段を備える
誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項3に記載の誘導加熱装置であって、
前記平面コイルは、互いに直列に接続される第1の平面コイルおよび第2の平面コイルを備え、
前記第1の平面コイルおよび前記第2の平面コイルは、前記被加熱物の搬送方向と直交する方向に並ぶように配置された
誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の誘導加熱装置であって、
前記第1の平面コイルおよび前記第2の平面コイルの前記搬送方向の長さは、200mm以上である
誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の誘導加熱装置であって、
前記平面コイルは、第3の平面コイルと第4の平面コイルとを備え、
前記第1の平面コイル、前記第2の平面コイル、第3の平面コイルおよび第4の平面コイルは、互いに直列に接続され、
前記第3の平面コイルおよび前記第4の平面コイルは、前記搬送方向と直交する方向に並ぶように配置され、
前記第1の平面コイル、前記第2の平面コイル、第3の平面コイルおよび第4の平面コイルは、前記第1の平面コイルおよび前記第2の平面コイルと、前記第3の平面コイルおよび前記第4の平面コイルと、が、前記被加熱物が搬送される領域を間に挟んで対向するように配置された
誘導加熱装置。
【請求項7】
非磁性金属製の被加熱物を加熱する方法であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の誘導加熱装置を用意する工程と、
前記誘導加熱装置によって前記被加熱物を加熱する工程と
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ鋳造のアルミ溶解保持工程では、アルミインゴットは、溶解炉に投入する前に、水分除去等の目的で例えば150℃程度まで予熱される。このアルミインゴットの予熱は、典型的には、化石燃料の燃焼によって発生させた熱風を用いて行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の熱風によってアルミインゴットを予熱する方式(以下、熱風方式と呼ぶ)は、改善の余地を残している。例えば、熱風方式は、効率が低い(例えば、10~20%)ので、効率の向上が求められる。また、CO2の排出削減の観点から、加熱方式を電化することが望ましい。電化の一手法として誘導加熱方式が考えられるが、アルミは、電気抵抗が小さく、加熱に大きな電流を必要とする。そのような大きな電流を加熱コイルに流すためには、必要な加熱条件に合わせてカスタマイズされた誘導加熱用のインバータが必要になるが、そのようなインバータは比較的高価であり、低コスト化が求められる。あるいは、熱風方式は、予熱スペースを必要とすることから設備が大型化するので、設備のコンパクト化が求められる。
【0005】
このような課題は、アルミインゴットの150℃程度までの予熱に限られるものではなく、溶解の寸前(例えば、500℃程度)まで予熱する場合にも共通する。また、このような課題は、アルミ鋳造に限らず、種々のアルミ加熱処理(例えば、鍛造においてアルミビレットを加熱する処理)や、種々の非磁性金属(例えば、銅)の加熱処理にも共通する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本発明の第1の形態によれば、誘導加熱装置が提供される。この誘導加熱装置は、10kHz以上、100kHz以下の出力周波数と、3kW以上、30kW以下の定格出力と、を有し、第1の共振コンデンサが内蔵されたIHインバータと、トランスと、第2の共振コンデンサと、加熱コイルと、を備えている。トランスは、一次コイルと、一次コイルよりも巻数が少ない二次コイルと、を有している。IHインバータが一次コイルに接続され、第2の共振コンデンサと加熱コイルとが二次コイルに接続される。
【0008】
この誘導加熱装置によれば、10kHz以上、100kHz以下の出力周波数と、3kW以上、30kW以下の定格出力と、を有し、第1の共振コンデンサが内蔵されたIHインバータが使用される。このようなIHインバータは、業務用(例えば、給食センター用)のIHクッキングヒータ用に設計された汎用品として流通している。したがって、加熱コイルでの加熱条件に合わせてカスタマイズされたインバータを使用する必要が無いので、低コスト化できる。また、汎用品のIHインバータでは、電流の上限値が比較的小さいが、IHインバータと加熱コイルとの間にトランスが介装されているので、加熱コイルに流れる電流を増幅することができる。しかも、トランスと加熱コイルとの間に第2の共振コンデンサが介装されているので、トランスの二次側で共振回路を構成することができる。換言すれば、第1の共振コンデンサが内蔵されたIHインバータから加熱コイルまでを含む回路全体が共振回路になって、トランスが大きなインダクタンスとして働き、加熱コイルの巻数を小さくせざるを得ないといった事象が生じない。したがって、加熱コイルの巻数を大きく確保できる。このように電流と加熱コイルの巻数とを十分に確保することによって、汎用品のIHインバータを使用しても、非磁性金属(特に、アルミ)の加熱に必要な加熱能力を確保できるとともに、効率を向上させることができる。なお、本願において「アルミ」とは、純粋なアルミニウムと、アルミニウム合金と、の両方を含む意味で用いられる。
【0009】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、加熱コイルはソレノイドコイルである。誘導加熱装置は、さらに、被加熱物を、ソレノイドコイルの内部を通るように搬送する搬送手段を備えている。この形態によれば、被加熱物の搬送中に被加熱物を加熱できるので、設備の設置スペースを低減できる。また、被加熱物の大きさが、ソレノイドコイルの内部を通すことができるものである限り、被加熱物の形状に関係なく、加熱できる。さらに、被加熱物の搬送方向に直交する各断面の温度を均一化できる。
【0010】
本発明の第3の形態によれば、第1の形態において、加熱コイルは平面コイルである。誘導加熱装置は、さらに、被加熱物を、平面コイルの近傍を通るように搬送する搬送手段を備えている。この形態によれば、被加熱物の搬送中に被加熱物を加熱できるので、設備の設置スペースを低減できる。また、被加熱物を平面コイルに近づけるだけで加熱可能であるから(換言すれば、第2の形態のように被加熱物をソレノイドコイルの内部に通す必要が無いので)、被加熱物をソレノイドコイルに対して出し入れするスペースを必要としない。したがって、さらなる省スペース化が可能になる。また、被加熱物の大きさが変わっても、被加熱物のうちの、平面コイルに向けられた面の形状がほぼ変わらなければ、被加熱物を加熱可能であり、汎用性に優れる。
【0011】
本発明の第4の形態によれば、第3の形態において、平面コイルは、互いに直列に接続される第1の平面コイルおよび第2の平面コイルを備えている。第1の平面コイルおよび第2の平面コイルは、被加熱物の搬送方向と直交する方向に並ぶように配置される。この形態によれば、被加熱物の長手方向が、被加熱物の搬送方向と直交する方向となるように被加熱物を搬送すれば、平面コイル全体としての巻数を稼ぎつつ、さらなる省スペース化が可能でなる。
【0012】
本発明の第5の形態によれば、第4の形態において、第1の平面コイルおよび第2の平面コイルの搬送方向の長さは、200mm以上である。この形態によれば、平面コイル全体としての巻数をさらに稼ぐことができる。さらに、被加熱物が、例えば、100mm以下の短手方向の長さを有するアルミインゴットであれば、2つのインゴットを同時に加熱することができる。
【0013】
本発明の第6形態によれば、第4または第5の形態において、平面コイルは、第3の平面コイルと第4の平面コイルとを備えている。第1の平面コイル、第2の平面コイル、第3の平面コイルおよび第4の平面コイルは、互いに直列に接続される。第3の平面コイルおよび第4の平面コイルは、搬送方向と直交する方向に並ぶように配置される。第1の平面コイル、第2の平面コイル、第3の平面コイルおよび第4の平面コイルは、第1の平面コイルおよび第2の平面コイルと、第3の平面コイルおよび第4の平面コイルと、が、被加熱物が搬送される領域を間に挟んで対向するように配置される。この形態によれば、被加熱物の長手方向が、被加熱物の搬送方向と直交する方向となるように被加熱物を搬送すれば、平面コイル全体としての巻数を稼ぎつつ、被加熱物をより均一に加熱できる。また、加熱コイルの必要巻数を第1ないし第4の平面コイルに分散できるので、1つの平面コイルあたりの巻数を低減できる。換言すれば、第1ないし第4の平面コイルの各々の、被加熱物の搬送方向の長さを小さくできる。したがって、被加熱物を1つずつ加熱することができる。
【0014】
本発明の第7の形態によれば、非磁性金属製の被加熱物を加熱する方法が提供される。この方法は、第1ないし第6のいずれかの形態の誘導加熱装置を用意する工程と、誘導加熱装置によって被加熱物を加熱する工程と、を備えている。この方法によれば、第1ないし第6の形態と同様の効果が得られる。この方法は、電気抵抗の小さいアルミや銅の加熱に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による誘導加熱装置の回路構成を示す模式図である。
【
図2】アルミインゴットの搬送手段の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】アルミインゴットの搬送手段の構成および加熱コイルの配置の一例を示す模式図である。
【
図4】アルミインゴットの搬送手段の構成および加熱コイルの配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による誘導加熱装置10(以下、単に加熱装置10と呼ぶ)の回路構成を示す模式図である。以下では、アルミ鋳造において、被加熱物としてのアルミインゴットを予熱するために加熱装置10を使用するものとして説明する。図示するように、加熱装置10は、IHインバータ30を備えている。IHインバータ30は、業務用(例えば、給食センター用)のIHクッキングヒータ用に設計された汎用品のIHインバータであり、10kHz以上、100kHz以下の出力周波数と、3kW以上、30kW以下の定格出力と、を有している。典型的には、3kW、5kW、10kW、15kW、20kWまたは30kWの定格出力の汎用IHインバータが加熱条件に応じて選定され得る。
【0017】
汎用品のIHインバータの構成は周知であるので、IHインバータ30について簡潔に説明する。本実施形態では、IHインバータ30には、4つのIGBTによって構成されるフルブリッジ方式が採用されている。ただし、ハーフブリッジ方式が採用されてもよい。IHインバータ30には交流電源20が接続される。交流電源20側から見てIGBTの先には、第1の共振コンデンサ31,32が接続されている。
【0018】
このIHインバータ30は、交流電源20側から見て第1の共振コンデンサ31,32よりも先には、インピーダンス整合器は接続されない前提で設計されている。つまり、IHインバータ30は、交流電源20側から見て第1の共振コンデンサ31,32よりも先には、加熱コイルが直接的に接続された状態で市販されている。本実施形態では、IHインバータ30は、この加熱コイルを取り除いた状態で、加熱装置10に組み入れられる。
【0019】
加熱装置10は、さらに、トランス40と、第2の共振コンデンサ51,52と、アルミ製の被加熱物を加熱するための加熱コイル60と、を備えている。IHインバータ30は、トランス40の一次コイル41に接続されており、第2の共振コンデンサ51,52および加熱コイル60は、トランス40の二次コイル42に接続されている。本実施形態では、第2の共振コンデンサ51,52は、加熱コイル60と直列に接続されている。二次コイル42の巻数は、一次コイル41の巻数よりも少なくなっている。
【0020】
この加熱装置10によれば、汎用品のIHインバータ30と、加熱コイル60と、の間にトランス40が介装されているので、加熱コイル60に流れる電流を増幅することができる。しかも、トランス40と加熱コイル60との間に第2の共振コンデンサ51,52が介装されているので、トランス40の二次側で直列共振回路を構成することができる。換言すれば、第1の共振コンデンサ31,32が内蔵されたIHインバータ30から加熱コイル60までを含む回路全体が共振回路になって、トランス40が大きなインダクタンスとして働き、加熱コイル60のインダクタンスを大きく確保できない(つまり、加熱コイル60の巻数を小さくせざるを得ない)といった事象が生じない。したがって、加熱コイル60の巻数を大きく確保できる。このように電流と加熱コイル60の巻数とを十分に確保することによって、汎用品のIHインバータ30を使用しても、アルミの加熱に必要な加熱能力を確保できる。また、効率を55%程度まで向上させることができる。しかも、汎用品のIHインバータ30を使用することによって、加熱コイルでの加熱条件に合わせてカスタマイズされたインバータを使用する場合と比べて、大幅に低コスト化できる。通常、誘導加熱用の回路の設計では、加熱コイル側から仕様を決定していき、最後に、電源の仕様を決定するのが技術常識であるが、本実施形態では、逆の発想により、電源の仕様から先に決定することによって、上述の効果が得られる。
【0021】
トランス40と加熱コイル60との間に介装される第2の共振コンデンサの数や接続形態は、
図1に示した例に限られるものではなく、適宜変更され得る。例えば、第2の共振コンデンサの数は1つであってもよい。あるいは、トランス40と加熱コイル60との間に介装される第2の共振コンデンサの数や接続形態は、
図1に示した例に限られるものではなく、適宜変更され得る。例えば、第2の共振コンデンサの数は1つであってもよい。あるいは、トランス40と加熱コイル60との間に、第2の共振コンデンサが並列に介装され、トランス40の二次側だけで並列共振回路が構成されてもよい。
【0022】
図2は、アルミインゴット90の搬送手段の構成の一例を示す模式図である。この例では、アルミインゴット90の搬送手段として、絶縁性を有する複数の搬送ローラ80が使用される。搬送ローラ80は、モータやチェーン(図示せず)によって回転駆動されるように構成される。IHインバータ30とトランス40と第2の共振コンデンサ51,52と加熱コイル60とを含むコイルユニット70が2つ、アルミインゴット90の搬送方向D1に並んで配置されている。加熱コイル60はソレノイドコイルである。アルミインゴット90は、加熱コイル60の内部を通るように搬送ローラ80によって搬送される。2つのコイルユニット70は、磁界の干渉を避けるために、100mm~150mm程度離間して配置されている。加熱コイル60の搬送方向D1の長さは、例えば250mm~300mmであり、加熱コイル60の巻数は、1つのコイルユニット70について30程度とすることができる。設置されるコイルユニット70の数は、加熱条件や搬送速度に応じて、1以上の任意の数に設定され得る。
【0023】
図2の構成によれば、アルミインゴット90の搬送中にアルミインゴット90を予熱できるので、設備を省スペース化できる。さらに、アルミインゴット90の大きさが、加熱コイル60の内部を通すことができるものである限り、アルミインゴット90の形状に関係なく、加熱できる。さらに、搬送方向D1に直交する各断面の温度を均一化できる。
【0024】
図3は、アルミインゴット90の搬送手段の構成および加熱コイルの配置の一例を示す模式図である。
図3(a)は、アルミインゴット90の搬送方向D2の前方から見た図であり、
図3(b)は平面図である。この例では、アルミインゴット90の搬送手段として、絶縁性を有する2つのコンベア180が使用される。2つのコンベア180は、搬送方向D2と直交する方向に離間して配置されている。アルミインゴット90は、その長手方向が搬送方向D2と直交する方向となるように、2つのコンベア180の間に架け渡される。
【0025】
この例では、加熱コイル60は、平面コイルであり、1つのコイルユニットについて、第1の平面コイル61および第2の平面コイル62を備えている。第1の平面コイル61と第2の平面コイル62とは、他の素子が介在することなく直列に接続されており、また、搬送方向D2と直交する方向に並ぶように配置されている。第1の平面コイル61および第2の平面コイル62は、アルミインゴット90が第1の平面コイル61および第2の平面コイル62の近傍を通るように、2つのコンベア180の間に配置される。アルミインゴット90と、第1の平面コイル61および第2の平面コイル62と、の間には、僅かな隙間が形成されている。
【0026】
図3の構成によれば、アルミインゴット90の搬送中にアルミインゴット90を加熱できるので、設備を省スペース化できる。また、
図2の例のように、加熱コイル60の内部にアルミインゴット90を通す必要が無いので、アルミインゴット90を加熱コイル60に対して出し入れするスペースが不要になり、いっそう省スペース化できる。また、アルミインゴット90の大きさが変わっても、アルミインゴット90のうちの、加熱コイル60に向けられた面の形状がほぼ変わらなければ、アルミインゴット90を加熱可能であり、汎用性に優れる。さらに、第1の平面コイル61および第2の平面コイル62の配置によれば、加熱コイル60全体としての巻数を稼ぎ、省スペース化を図っている。
【0027】
本実施形態では、第1の平面コイル61および第2の平面コイル62の各々の搬送方向D2の長さL1は、200mm以上である。これにより、加熱コイル60全体として30程度の巻数を確保できる。この場合、
図3(b)に示すように、100mm以下の短手方向の長さL2を有する2つのアルミインゴット90を同時に加熱することができる。
【0028】
図3では、1つのコイルユニットのみを示しているが、加熱条件や搬送速度に応じて、2つ以上のコイルユニットが、搬送方向D2に並ぶように配置されてもよい。
【0029】
図4は、アルミインゴット90の搬送手段の構成および加熱コイルの配置の他の例を示す模式図である。
図4に示す構成は、加熱コイル60が、第1の平面コイル61および第2の平面コイル62に加えて、第3の平面コイル63と第4の平面コイル64とを備えている点が、
図3に示す構成と異なっている。第1の平面コイル61と第2の平面コイル62と第3の平面コイル63と第4の平面コイル64とは、他の素子が介在することなく直列に接続されている。第3の平面コイル63および第4の平面コイル64は、搬送方向D2と直交する方向に並ぶように配置されている。第1の平面コイル61および第2の平面コイル62と、第3の平面コイル63および第4の平面コイル64と、は、アルミインゴット90の搬送領域を間に挟んで対向するように配置されている。より具体的には、第1の平面コイル61および第2の平面コイル62は、アルミインゴット90の搬送領域の下方に位置し、第3の平面コイル63および第4の平面コイル64は、アルミインゴット90の搬送領域の上方に位置している。
【0030】
この例では、第1の平面コイル61、第2の平面コイル62、第3の平面コイル63および第4の平面コイル64の搬送方向D2の長さL3は、
図3の第1の平面コイル61および第2の平面コイル62の搬送方向D2の長さL1と比べて半分程度である。しかしながら、第3の平面コイル63および第4の平面コイル64が付加されていることから、加熱コイル60全体としては、
図3の例と同程度の巻数を確保できる。したがって、
図3の例と同様の効果を得ることができる。
【0031】
この例では、
図4(b)に示すように、アルミインゴット90を1つずつ効率的に加熱することができる。また、
図3の例と同程度の巻数を確保できるので、アルミインゴット90の加熱時間は、
図3の例と比べて半分にすることができる。この構成によれば、所定数のアルミインゴット90を連続的に加熱する場合に、最初および最後に搬送される1つのアルミインゴット90についても効率的に加熱できる。
図4では、1つのコイルユニットのみを示しているが、加熱条件や搬送速度に応じて、2つ以上のコイルユニットが、搬送方向D2に並ぶように配置されてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0033】
例えば、
図3および
図4に示した搬送方式は一例に過ぎず、
図1に示した加熱装置10は、任意の搬送方式と組み合わせることができる。例えば、絶縁性を有するロボットアームが使用されてもよい。この場合、アルミインゴット90は、鉛直方向に搬送されながら加熱されてもよい。
図2ないし
図4に示した加熱コイル60のコイル配置についても、任意の形態に変更可能である。例えば、2層巻のコイルが使用されてもよい。
【0034】
あるいは、加熱装置10は、アルミインゴット90の予熱に限らず、種々のアルミ加熱処理に適用可能である。例えば、鍛造においてアルミビレットの加熱に加熱装置10が使用されてもよい。この場合、例えば、2層巻のソレノイドコイルが加熱コイル60として使用されてもよい。
【0035】
さらに、上述した加熱装置10は、電気抵抗の小さいアルミや銅の加熱に特に適しているが、任意の非磁性金属の加熱に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10...誘導加熱装置
20...交流電源
31...第1の共振コンデンサ
40...トランス
41...一次コイル
42...二次コイル
51...第2の共振コンデンサ
60...加熱コイル
61...第1の平面コイル
62...第2の平面コイル
63...第3の平面コイル
64...第4の平面コイル
70...コイルユニット
80...搬送ローラ
90...アルミインゴット
180...コンベア
D1,D2...搬送方向