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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084201
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】電線検査装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20220531BHJP
   H01R 43/28 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H02G1/12 048
H01R43/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195904
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】藤田 征一郎
【テーマコード(参考)】
5G353
【Fターム(参考)】
5G353AB08
5G353EA11
5G353EA12
(57)【要約】
【課題】様々なストリップ範囲に対応した被覆電線の検査が可能であって、かつ安価な電線検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電線検査装置10は、被覆電線5の軸線方向であるY方向に交差するX方向に被覆電線5を搬送する搬送装置20と、搬送装置20によって搬送される被覆電線5の通過を検出する1つまたは複数のセンサ41~44と、1つまたは複数のセンサ41~44のうちの少なくとも1つのセンサ41、44のY方向の位置を変更可能に構成された位置変更機構32と、1つまたは複数のセンサ41~44の検出結果を取得する判定装置と、を備える。判定装置は、1つまたは複数のセンサ41~44によって検出された被覆電線5の通過時間をそれぞれ計測する計測部と、計測部によって計測された時間に基づいて被覆電線5が良品かどうかを判定する判定部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆の一部が剥かれた被覆電線を軸線方向が第1方向を向くように支持し、前記第1方向と交差する第2方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される前記被覆電線の通過を検出する、1つまたは複数のセンサと、
前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサを支持するとともに、前記被覆電線の搬送経路上において、支持した各センサの前記第1方向の位置を変更可能な位置変更機構と、
前記1つまたは複数のセンサの検出結果を取得する判定装置と、を備え、
前記判定装置は、
前記1つまたは複数のセンサによって検出された前記被覆電線の通過時間をそれぞれ計測する計測部と、
前記計測部によって計測された時間に基づいて前記被覆電線が良品かどうかを判定する判定部と、を備えている、
電線検査装置。
【請求項2】
前記1つまたは複数のセンサは、第1センサを含み、
前記位置変更機構は、前記第1センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる範囲に応じて、前記被覆が剥かれる部分に対応する位置に前記第1センサを位置付けることが可能に構成されている、
請求項1に記載の電線検査装置。
【請求項3】
前記被覆電線は、先端部の被覆を含む一部の被覆が剥かれており、
前記搬送装置は、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分と前記被覆が残る部分との境界が前記第1方向の所定位置を通過するように、前記被覆電線を搬送し、
前記1つまたは複数のセンサは、第1センサを含み、
前記計測部は、前記第1センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第1計測部を備え、
前記位置変更機構は、前記第1センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記第1センサを前記被覆電線の先端部に対応する位置に位置付けることが可能に構成されている、
請求項1または2に記載の電線検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項3に記載の電線検査装置。
【請求項5】
前記1つまたは複数のセンサは、第2センサを含み、
前記第2センサは、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記位置変更機構は、前記第2センサよりも前記被覆電線の先端側において前記第1センサの位置を変更可能に構成されており、
前記計測部は、前記第2センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第2計測部を備え、
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間および前記第2計測部によって計測された時間に基づいて前記被覆電線が良品かどうかを判定する、
請求項3または4に記載の電線検査装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第2計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項5に記載の電線検査装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第2計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項5に記載の電線検査装置。
【請求項8】
前記1つまたは複数のセンサは、第3センサを含み、
前記第3センサは、前記被覆電線の前記被覆が残る部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記計測部は、前記第3センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第3計測部を備え、
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項3~7のいずれか一つに記載の電線検査装置。
【請求項9】
前記1つまたは複数のセンサは、第3センサを含み、
前記第3センサは、前記被覆電線の前記被覆が残る部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記計測部は、前記第3センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第3計測部を備え、
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項3~7のいずれか一つに記載の電線検査装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のセンサは、第4センサを含み、
前記位置変更機構は、前記第4センサを支持するとともに、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記被覆電線の先端よりもさらに前記第1方向の先の位置に対応する位置に前記第4センサを位置付けることが可能に構成され、
前記判定部は、前記第4センサによって前記被覆電線の通過が検出された場合に、前記被覆電線が不良であると判定する、
請求項3~9のいずれか一つに記載の電線検査装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数のセンサは、第2センサおよび第3センサを含み、
前記第2センサは、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記第3センサは、前記被覆電線の前記被覆が残る部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記位置変更機構は、前記第2センサよりも前記被覆電線の先端側において前記第1センサの位置を変更可能に構成されており、
前記計測部は、
前記第2センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第2計測部と、
前記第3センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第3計測部と、を備え、
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合、および、前記第2計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項3に記載の電線検査装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数のセンサは、第2センサおよび第3センサを含み、
前記第2センサは、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記第3センサは、前記被覆電線の前記被覆が残る部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられ、
前記位置変更機構は、前記第2センサよりも前記被覆電線の先端側において前記第1センサの位置を変更可能に構成されており、
前記計測部は、
前記第2センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第2計測部と、
前記第3センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第3計測部と、を備え、
前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲を外れた場合、および、前記第2計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲を外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する、
請求項3に記載の電線検査装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数のセンサは、第4センサを含み、
前記位置変更機構は、前記第4センサを支持するとともに、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記被覆電線の先端よりもさらに前記第1方向の先の位置に対応する位置に前記第4センサを位置付けることが可能に構成され、
前記判定部は、前記第4センサによって前記被覆電線の通過が検出された場合に、前記被覆電線が不良であると判定する、
請求項11または12に記載の電線検査装置。
【請求項14】
前記被覆電線は、先端部の被覆を含む一部の被覆が剥かれており、
前記搬送装置は、前記被覆電線の先端部が前記第1方向の所定位置を通過するように、前記被覆電線を搬送し、
前記1つまたは複数のセンサは、
前記被覆電線の先端部に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられた第1センサと、
第2センサと、を含み、
前記位置変更機構は、前記第2センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分と前記被覆が残る部分との境界から所定の距離の位置に対応する位置に前記第2センサを位置付けることが可能に構成されている、
請求項1または2に記載の電線検査装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数のセンサは、第3センサを含み、
前記位置変更機構は、前記第3センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記第2センサを前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分に対応する位置に位置付けること、および、前記第3センサを前記被覆電線の前記被覆が残る部分に対応する位置に位置付けることが可能なように構成されている、
請求項14に記載の電線検査装置。
【請求項16】
前記1つまたは複数のセンサは、2つのセンサを含み、
前記位置変更機構は、前記2つのセンサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる範囲に応じて、前記被覆が剥かれる部分に対応する位置に一方のセンサを、前記被覆が残る部分に対応する位置に他方のセンサを位置付けることが可能に構成されている、
請求項1に記載の電線検査装置。
【請求項17】
前記位置変更機構は、支持したセンサの前記第1方向の位置を変更するアクチュエータを備え、
前記被覆電線の前記被覆が剥かれる範囲が入力される入力部と、
前記入力部に入力された範囲に応じ、前記位置変更機構に支持された各センサの前記第1方向の位置を演算する位置演算部と、
前記アクチュエータを制御して、前記位置変更機構によって支持された各センサを前記位置演算部によって演算された位置に位置付ける駆動制御部と、をさらに備えている、
請求項1~16のいずれか一つに記載の電線検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先端部の被覆が剥かれた被覆電線の先端部の状態を検査する電線検査装置が従来から知られている。例えば特許文献1には、搬送される被覆電線の芯線先端部、芯線根元部、および被覆の残留部分を光ファイバセンサで検出し、それらの部位の通過時間を比較する電線検査装置が開示されている。特許文献1によれば、それら通過時間を比較することにより、被覆がついたままになった不良、芯線先端部がばらけて広がる不良等が検出できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-74119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被覆電線の被覆を剥く長さ(ストリップ長)は、例えば使用する端子の種類などに応じて様々である。また、切り離した被覆を完全に抜かず、芯線に差し込んだまま次工程に進むこともあり得、その場合、被覆電線は、中間部の被覆が剥かれた状態(セミストリップ状態)となる。このように、被覆電線の被覆が剥かれる範囲(以下、ストリップ範囲とも言う)は、工程により様々である。センサを多数設けたり、カメラ等を使用して画像認識を行ったりすることにより、様々なストリップ範囲で被覆が剥かれた被覆電線の検査ができる電線検査装置を実現することは可能である。しかしながら、電線検査装置をそのように構成すると、電線検査装置が高価なものとなってしまう。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々なストリップ範囲に対応した被覆電線の検査が可能であって、かつ安価な電線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電線検査装置は、搬送装置と、1つまたは複数のセンサと、位置変更機構と、判定装置と、を備えている。前記搬送装置は、被覆の一部が剥かれた被覆電線を軸線方向が第1方向を向くように支持し、前記第1方向と交差する第2方向に搬送する。前記1つまたは複数のセンサは、前記搬送装置によって搬送される前記被覆電線の通過を検出する。前記位置変更機構は、前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサを支持するとともに、前記被覆電線の搬送経路上において、支持した各センサの前記第1方向の位置を変更可能に構成されている。前記判定装置は、前記1つまたは複数のセンサの検出結果を取得する。前記判定装置は、計測部と、判定部と、を備えている。前記計測部は、前記1つまたは複数のセンサによって検出された前記被覆電線の通過時間をそれぞれ計測する。前記判定部は、前記計測部によって計測された時間に基づいて前記被覆電線が良品かどうかを判定する。
【0007】
上記電線検査装置によれば、被覆電線のストリップ範囲に応じて、位置変更機構に支持されたセンサの第1方向の位置を変更することができる。それにより、被覆電線の適切な位置をセンサで検出することができる。そのため、上記電線検査装置によれば、様々なストリップ範囲に対応して、被覆電線の検査が可能である。また、上記電線検査装置によれば、全てのストリップ範囲に対応できるような多数のセンサを備える必要もなく、画像認識装置を備える必要もない。そのため、電線検査装置を安価に構成することができる。
【0008】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、第1センサを含んでいる。前記位置変更機構は、前記第1センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる範囲に応じて、前記被覆が剥かれる部分に対応する位置に前記第1センサを位置付けることが可能に構成されている。
【0009】
上記電線検査装置によれば、様々なストリップ範囲に対応して、少なくとも被覆が剥かれた芯線部分の検査が可能である。
【0010】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記被覆電線は、先端部の被覆を含む一部の被覆が剥かれており、前記搬送装置は、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分と前記被覆が残る部分との境界が前記第1方向の所定位置を通過するように、前記被覆電線を搬送する。前記1つまたは複数のセンサは、第1センサを含んでいる。前記計測部は、前記第1センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第1計測部を備えている。前記位置変更機構は、前記第1センサを支持している。前記位置変更機構は、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記第1センサを前記被覆電線の先端部に対応する位置に位置付けることが可能に構成されている。
【0011】
上記電線検査装置では、被覆電線の被覆が剥かれる部分と被覆が残る部分との境界の第1方向の位置が決められているため、被覆電線の先端部の第1方向に関する位置が、ストリップ長によって変動する。上記電線検査装置によれば、被覆電線のストリップ長に応じて第1センサの第1方向の位置を変更し、被覆電線の先端部に対応する位置に第1センサを配置することができる。そのため、被覆電線のストリップ長に応じて、被覆電線の先端部の状態を第1センサにより検査することができる。被覆電線の被覆が剥かれる部分と被覆が残る部分との境界の第1方向の位置が決められている電線検査装置では、芯線の根元部分は位置を固定されたセンサによって検査することができるが、芯線の根元部分だけの検査では、例えば、芯線の根元部分は存在するが途中で芯線が切れているような重大不良を発見できないことがあり得る。上記電線検査装置によれば、被覆電線のストリップ長に応じて被覆電線の先端部を検査できるため、かかる誤判定を抑制することができる。
【0012】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0013】
上記電線検査装置によれば、第1センサによって検出した被覆電線の箇所の第2方向の幅が異常である場合に、それを発見できる。
【0014】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、第2センサを含んでいる。前記第2センサは、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられている。前記位置変更機構は、前記第2センサよりも前記被覆電線の先端側において前記第1センサの位置を変更可能に構成されている。前記計測部は、前記第2センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第2計測部を備えている。前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間および前記第2計測部によって計測された時間に基づいて前記被覆電線が良品かどうかを判定する。
【0015】
上記電線検査装置によれば、第1センサによって検出される被覆電線の箇所よりも根元側の箇所の状態を第2センサによって検出できる。これにより、被覆を剥いた部分のより根元側も検査することができ、検査の確実性が向上する。
【0016】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第2計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0017】
上記電線検査装置によれば、第1計測部によって計測された時間と第2計測部によって計測された時間との差分に基づいて被覆電線の良否を判定するため、被覆電線の搬送速度のばらつきによる誤判定のおそれを低減できる。
【0018】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第2計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0019】
上記電線検査装置によれば、第1計測部によって計測された時間と前記第2計測部によって計測された時間との差分を利用する態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0020】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、第3センサを含んでいる。前記第3センサは、前記被覆電線の前記被覆が残る部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられている。前記計測部は、前記第3センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第3計測部を備えている。前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0021】
上記電線検査装置によれば、第3センサの検出に基づく被覆電線の被覆が残った部分の通過時間と、第1センサの検出に基づく被覆が剥かれた部分の通過時間との間の差分に基づいて判定が行われる。そのため、被覆電線の搬送速度が大きく変化した場合であっても誤判定のおそれを低減できる。
【0022】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0023】
上記電線検査装置によれば、第1計測部によって計測された時間と第3計測部によって計測された時間との差分を利用する態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、第4センサを含んでいる。前記位置変更機構は、前記第4センサを支持するとともに、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記被覆電線の先端よりもさらに前記第1方向の先の位置に対応する位置に前記第4センサを位置付けることが可能に構成されている。前記判定部は、前記第4センサによって前記被覆電線の通過が検出された場合に、前記被覆電線が不良であると判定する。
【0025】
上記電線検査装置によれば、本来の先端よりも先に一部が突出する不良が発生した被覆電線をストリップ長によらず発見することができる。
【0026】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、第2センサおよび第3センサを含んでいる。前記第2センサは、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられている。前記第3センサは、前記被覆電線の前記被覆が残る部分のうちの1位置に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられている。前記位置変更機構は、前記第2センサよりも前記被覆電線の先端側において前記第1センサの位置を変更可能に構成されている。前記計測部は、前記第2センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第2計測部と、前記第3センサによって検出された前記被覆電線の通過時間を計測する第3計測部と、を備えている。前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合、および、前記第2計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との差分が予め定められた範囲から外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0027】
上記電線検査装置によれば、第1計測部による計測時間と第3計測部による計測時間との間の差分または比に基づいて良否判定を行う態様と同じ理由により、電線の搬送速度が大きく変化した場合であっても誤判定のおそれを低減できる。さらに、被覆が剥かれた部分のより根元側も検査できるため、検査の確実性が向上する。
【0028】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記判定部は、前記第1計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲を外れた場合、および、前記第2計測部によって計測された時間と前記第3計測部によって計測された時間との比が予め定められた範囲を外れた場合に、前記被覆電線を不良と判定する。
【0029】
上記電線検査装置によれば、第1計測部によって計測された時間と第3計測部によって計測された時間との差分、および、第2計測部によって計測された時間と第3計測部によって計測された時間との差分を利用する態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記被覆電線は、先端部の被覆を含む一部の被覆が剥かれており、前記搬送装置は、前記被覆電線の先端部が前記第1方向の所定位置を通過するように、前記被覆電線を搬送する。前記1つまたは複数のセンサは、第1センサと、第2センサと、を含んでいる。前記第1センサは、前記被覆電線の先端部に対応する、前記被覆電線の搬送経路上の位置に設けられている。前記位置変更機構は、前記第2センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分と前記被覆が残る部分との境界から所定の距離の位置に対応する位置に前記第2センサを位置付けることが可能に構成されている。
【0031】
上記電線検査装置では、被覆電線の先端部の第1方向の位置が決められているため、被覆電線の被覆が剥かれる部分と被覆が残る部分との境界の第1方向の位置が、ストリップ長によって変動する。上記電線検査装置によれば、第1センサにより被覆電線の先端部を検査することができる。また、被覆電線のストリップ長に応じて第2センサの第1方向の位置を変更し、被覆電線の被覆が剥かれる部分と被覆が残る部分との境界から所定の距離の位置に対応する位置に第2センサを配置することができる。これにより、ストリップ長によらず、被覆電線の先端部と、先端部よりも根元側の部分とをセンサにより検出することができる。
【0032】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、第3センサを含んでいる。前記位置変更機構は、前記第3センサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる長さに応じて、前記第2センサを前記被覆電線の前記被覆が剥かれる部分に対応する位置に位置付けること、および、前記第3センサを前記被覆電線の前記被覆が残る部分に対応する位置に位置付けることが可能なように構成されている。
【0033】
上記電線検査装置によれば、ストリップ長に応じて、被覆電線の先端部、被覆が剥かれた部分のうち先端部よりも根元側の部分、および被覆が残った部分をセンサにより検出することができる。
【0034】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記1つまたは複数のセンサは、2つのセンサを含んでいる。前記位置変更機構は、前記2つのセンサを支持しており、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる範囲に応じて、前記被覆が剥かれる部分に対応する位置に一方のセンサを、前記被覆が残る部分に対応する位置に他方のセンサを位置付けることが可能に構成されている。
【0035】
上記電線検査装置によれば、ストリップ範囲に応じて、被覆電線の被覆が剥かれた部分と被覆が残った部分とをセンサにより検出することができる。
【0036】
本発明に係る電線検査装置の好ましい一態様によれば、前記位置変更機構は、支持したセンサの前記第1方向の位置を変更するアクチュエータを備えている。電線検査装置は、入力部と、位置演算部と、駆動制御部と、をさらに備えている。前記入力部には、前記被覆電線の前記被覆が剥かれる範囲が入力される。前記位置演算部は、前記入力部に入力された範囲に応じ、前記位置変更機構に支持された各センサの前記第1方向の位置を演算する。前記駆動制御部は、前記アクチュエータを制御して、前記位置変更機構によって支持された各センサを前記位置演算部によって演算された位置に位置付ける。
【0037】
上記電線検査装置によれば、位置変更機構によって支持されているセンサの第1方向に関する位置を、ストリップ範囲に合わせて自動で調整することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、様々なストリップ範囲に対応した被覆電線の検査が可能な電線検査装置を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】一実施形態に係る電線検査装置の模式的な正面図である。
図2】第1センサ~第4センサの検出位置を示す模式図である。
図3】電線検査装置のブロック図である。
図4】ストリップされた電線の不良モードを示す模式図である。
図5】第3センサを省略した電線検査装置の良否判定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、一実施形態に係る電線検査装置10の模式的な正面図である。電線検査装置10は、先端側の一部の被覆7が剥かれた被覆電線(以下、電線と言う)5の状態を検査する装置である。図1に示すように、電線検査装置10は、電線5を搬送する搬送装置20と、センサ支持機構30によって支持された第1センサ41~第4センサ44と、位置制御装置50(図3参照)と、判定装置60(図3参照)とを備えている。以下の説明では、電線5の搬送方向をX方向とも呼び、X方向に直交する方向をY方向とも呼ぶ。また、以下では、Y方向のうちの一方をY1方向とも呼び、Y1方向の逆方向をY2方向とも呼ぶこととする。なお、本実施形態の説明では、X方向およびY方向は水平面内の方向とするが、これは説明の便宜のためのものに過ぎず、電線検査装置10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0041】
電線5の搬送経路の電線検査装置10よりも上流には、例えば、電線5の先端側の被覆7を剥く(ストリップする)図示しないストリップ装置が設けられている。以下、電線5の被覆7が剥かれる部分を被覆除去部5aとも呼び、その先端(電線5の先端)を先端5bとも呼ぶ。また、電線5のうち被覆7が残る部分を被覆部5cとも呼ぶ。電線5の先端側の被覆7がストリップされることにより、被覆除去部5aに芯線6が露出する。電線5の搬送経路の電線検査装置10よりも下流には、例えば、電線5の露出した芯線6に圧着端子を圧着する端子圧着装置(図示せず)が設けられている。
【0042】
図1に示すように、搬送装置20は、電線5を把持する把持爪21と、図示しない駆動部と、を備えている。把持爪21は、被覆部5cを把持している。搬送装置20は、把持爪21により、軸線方向がY方向を向くように電線5を支持している。より詳しくは、搬送装置20は、先端5bがY1方向を向くように電線5を支持している。搬送装置20は、図示しない駆動部により、電線5の軸線方向と交差する方向に電線5を搬送する。ここでは、搬送装置20は、Y方向に直交するX方向に電線5を搬送する。なお、搬送装置20は、電線5を平行移動することにより、電線5をX方向に搬送してもよい。または、搬送装置20は、電線5を旋回させることにより、電線5をX方向に搬送してもよい。電線5の搬送方向であるX方向は、電線5が平行移動する方向であってもよく、電線5の旋回方向であってもよい。Y方向は、電線5を旋回する場合には、電線5の旋回とともに向きを変えてもよい。
【0043】
図1に示すように、センサ支持機構30は、固定部31と、位置変更機構32とを備えている。固定部31は不動に構成され、第2センサ42と、第3センサ43とを支持している。固定部31は、下部アーム31aと、上部アーム31bとを備えている。上部アーム31bは、下部アーム31aの上方に下部アーム31aと向かい合うように設けられている。
【0044】
位置変更機構32は、第1センサ41と第4センサ44とを支持してY方向に移動させる機構である。図1に示すように、位置変更機構32は、移動部材32aと、ガイドレール32bと、ナット32cと、ネジ32dと、駆動モータ32eとを備えている。移動部材32aは、固定部31よりもY1方向に設けられている。移動部材32aは、X方向視において略コの字に形成されている。移動部材32aは、略コの字の開いた側を固定部31の側(Y2方向)に向けて配置されている。
【0045】
ガイドレール32bは、Y方向に延びている。移動部材32aは、Y方向に摺動可能にガイドレール32bに係合している。ガイドレール32bは、ここでは、移動部材32aの下部アーム32a1よりも下方に設けられている。移動部材32aの上部アーム32a2の上面には、ナット32cが固定されている。ナット32cには、ネジ32dが噛み合っている。ネジ32dは、Y方向に延びている。ネジ32dには、駆動モータ32eが接続されている。駆動モータ32eは、位置変更機構32に支持されたセンサのY方向の位置を変更するアクチュエータの一例である。駆動モータ32eは、ここでは、回転位置を所望の位置に調整可能なサーボモータである。ただし、駆動モータ32eは、例えば、ステッピングモータ等であってもよい。駆動モータ32eが駆動されると、ネジ32dが回転する。これにより、移動部材32aがガイドレール32bに沿ってY方向に移動する。移動部材32aがY方向に移動すると、移動部材32aによって保持された第1センサ41および第4センサ44がY方向に移動する。駆動モータ32eを所望の回転位置に位置付けることにより、第1センサ41および第4センサ44がY方向の所望の位置に位置付けられる。
【0046】
図1に示すように、電線5の搬送経路は、固定部31の下部アーム31aと上部アーム31bとの間、および、位置変更機構32の下部アーム32a1と上部アーム32a2との間に設定されている。搬送装置20によって搬送される電線5は、固定部31の下部アーム31aと上部アーム31bとの間、および、位置変更機構32の下部アーム32a1と上部アーム32a2との間を通過する。
【0047】
第1センサ41~第4センサ44は、搬送装置20によって搬送される電線5の通過を検出する。第1センサ41~第4センサ44は、ここでは、透過式の光電センサである。第1センサ41~第4センサ44は、それぞれ投光器から照射された光が遮られて受光器に到達しなくなることにより、電線5が光軸上を通過中であることを検出する。
【0048】
第2センサ42および第3センサ43は、固定部31に支持されている。固定部31の上部アーム31bは、ここでは、第2センサ42および第3センサ43の投光器を支持している。第2センサ42および第3センサ43の投光器は、Y方向に並んで配置されている。固定部31の下部アーム31aは、第2センサ42および第3センサ43の受光器を支持している。第2センサ42および第3センサ43の受光器は、対応する投光器と上下方向に向かい合うように配置されている。第2センサ42は、第3センサ43よりもY1方向に設けられている。なお、第2センサ42および第3センサ43の投光器と受光器の配置は逆でもよい。
【0049】
第1センサ41および第4センサ44は、位置変更機構32の移動部材32aに支持されている。移動部材32aの上部アーム32a2は、ここでは、第1センサ41および第4センサ44の投光器を支持している。第1センサ41および第4センサ44の投光器は、Y方向に並んで配置されている。移動部材32aの下部アーム32a1は、第1センサ41および第4センサ44の受光器を支持している。第1センサ41および第4センサ44の受光器は、対応する投光器と上下方向に向かい合うように配置されている。なお、第1センサ41および第4センサ44の投光器と受光器の配置は逆でもよい。第4センサ44は、第1センサ41よりもY1方向に設けられている。第1センサ41~第4センサ44は、Y2方向に向かって、第4センサ44、第1センサ41、第2センサ42、および第3センサ43の順で並んでいる。
【0050】
位置変更機構32は、被覆除去部5aの長さ(以下、ストリップ長)に合わせて第1センサ41および第4センサ44のY方向の位置を変更するためのものである。ストリップ長は、例えば、電線5に圧着される圧着端子の種類などにより種々に設定され得る。位置変更機構32は、第1センサ41および第4センサ44を支持するとともに、電線5の搬送経路上において、第1センサ41および第4センサ44のY方向の位置を変更可能に構成されている。図2は、第1センサ41~第4センサ44の検出位置を示す模式図である。以下では、想定されているうちで最もストリップ長の短い電線5-1と、最もストリップ長の長い電線5-2を例に説明する。なお、図2に示すように、搬送装置20は、被覆部5cと被覆除去部5aとの境界が、ストリップ長によらず、Y方向の所定位置を通過するように電線5を搬送する。
【0051】
図2に示すように、固定式の第2センサ42および第3センサ43は、いずれも電線5の搬送経路上に設けられている。第2センサ42は、Y方向に関して、電線5の被覆除去部5aのうちの1位置に対応した位置に設けられている。詳しくは、第2センサ42のY方向の位置は、被覆除去部5aのうち被覆部5cに近い位置に対応している。第2センサ42は、電線5の被覆除去部5aのうち被覆部5cとの境界近くの部分の通過を検出している。第3センサ43は、Y方向に関して、電線5の被覆部5cのうちの1位置に対応した位置に設けられている。第3センサ43は、被覆部5cの通過を検出している。
【0052】
第1センサ41の可動範囲は、図2に示すように、想定中最もストリップ長の短い電線5-1の先端5bよりも根元側と、最もストリップ長の長い電線5-2の先端5bよりも先の位置との間に設定されている。位置変更機構32は、Y方向に関し、電線5のストリップ長に応じて第1センサ41を電線5の先端部に対応する位置に位置付けることが可能に構成されている。位置変更機構32は、駆動モータ32eを駆動することにより、第1センサ41および第4センサ44のY方向の位置を調整することができる。第1センサ41は、電線5のストリップ長に合わせてY方向の位置を調整され、電線5のうち先端5bからY2方向(根元側)に所定の距離だけ離れた部分の通過を検出する。
【0053】
第4センサ44の可動範囲は、図2に示すように、想定中最もストリップ長の短い電線5-1の先端よりもさらに先の位置と、最もストリップ長の長い電線5-2の先端よりもさらに先の位置と間に設定されている。第4センサ44は、電線5の先端5bよりもさらに先、言い換えると、電線5が良品である場合には電線5が通過しない領域における電線5の通過を検出するセンサである。位置変更機構32は、Y方向に関し、電線5のストリップ長に応じて電線5の先端5bよりもさらに先の位置に対応する位置に第4センサ44を位置付けることが可能に構成されている。第4センサ44は、第1センサ41とともに、電線5のストリップ長に合わせてY方向の位置を調整される。第1センサ41が電線5の先端5bからY2方向に所定の距離だけ離れた位置に位置付けられたとき、第4センサ44は、電線5の先端5bからY1方向に所定の距離だけ離れた位置に位置付けられる。このときの電線5の先端5bと第4センサ44の検出位置との間のY方向に関する距離は、好適には、例えば2mm以下である。
【0054】
電線検査装置10は、位置制御装置50と、判定装置60とを備えている。図3は、電線検査装置10のブロック図である。図3に示すように、位置制御装置50は、位置変更機構32の駆動モータ32eに接続され、駆動モータ32eの動作を制御している。判定装置60は、第1センサ41~第4センサ44に接続され、それらからの信号を受信している。判定装置60は、第1センサ41~第4センサ44の検出結果を取得している。位置制御装置50および判定装置60の構成は特に限定されない。位置制御装置50および判定装置60は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。位置制御装置50および判定装置60の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。位置制御装置50および判定装置60は、例えば、プログラマブルコントローラやコンピュータなどであってもよい。なお、位置制御装置50と判定装置60とは、1つの制御装置によって実現されていてもよい。
【0055】
図3に示すように、位置制御装置50は、入力部51と、位置演算部52と、駆動制御部53とを備えている。入力部51には、電線5のストリップ長が入力される。入力部51は、作業者が電線5のストリップ長を入力するように構成されていてもよく、上位の生産管理システム等から送信されたストリップ長が入力されるように構成されていてもよい。位置演算部52は、入力部51に入力された長さに応じ、位置変更機構32に支持された第1センサ41および第4センサ44のY方向の位置を演算する。駆動制御部53は、駆動モータ32eを制御して、第1センサ41および第4センサ44を、位置演算部52によって演算された位置に位置付ける。ここでは、位置制御装置50は、電線5の先端5bから所定の距離だけ根元側(Y2方向)の位置に対応する位置に第1センサ41を位置付ける。これにより、第4センサ44も、電線5の先端5bから所定の距離だけY1方向の位置に対応する位置に位置付けられる。
【0056】
図3に示すように、判定装置60は、計測部60Aと、判定部65とを備えている。計測部60Aは、第1センサ41~第4センサ44によって検出された電線5の通過時間をそれぞれ計測する。図3に示すように、計測部60Aは、第1計測部61~第4計測部64を備えている。第1計測部61は、第1センサ41によって検出された電線5の通過時間を計測する。第1計測部61は、第1センサ41によって電線5が検出され始めた時刻から電線5が検出されなくなった時刻までの時間を計測することにより、電線5の通過時間を計測する。第1センサ41の光軸上を通過する物体のX方向の長さが長いほど、第1計測部61が計測する通過時間は大きい。同様に、第2計測部62は、第2センサ42によって検出された電線5の通過時間を計測する。第3計測部63は、第3センサ43によって検出された電線5の通過時間を計測する。第4計測部64は、第4センサ44によって検出された電線5の通過時間を計測する。
【0057】
判定部65は、計測部60A(詳しくは、第1計測部61~第4計測部64)によって計測された時間に基づいて電線5が良品かどうかを判定する。判定部65は、ここでは、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との差分ΔT12(図4参照)が予め定められた範囲から外れた場合に、電線5を不良と判定する。また、判定部65は、第1計測部61によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との差分ΔT13(図4参照)が予め定められた範囲から外れた場合にも、電線5を不良と判定する。判定部65は、第2計測部62によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との差分ΔT23(図4参照)が予め定められた範囲から外れた場合にも、電線5を不良と判定する。さらに、判定部65は、第4計測部64によって電線5の通過時間が計測された場合に電線5が不良であると判定する。
【0058】
本実施形態では、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との差分ΔT12は、第2計測部62によって計測された時間から第1計測部61によって計測された時間を減じた時間である。ただし、差分ΔT12は上記には限定されない。差分ΔT12は、例えば、第1計測部61によって計測された時間から第2計測部62によって計測された時間を減じた時間であってもよい。差分ΔT12は、例えば、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との差の絶対値であってもよい。差分ΔT13は、ここでは、第3計測部63によって計測された時間から第1計測部61によって計測された時間を減じた時間である。差分ΔT23は、ここでは、第3計測部63によって計測された時間から第2計測部62によって計測された時間を減じた時間である。ただし、差分ΔT13およびΔT23も、上記には限定されない。
【0059】
判定部65による判定の具体例は、電線5の良否判定のプロセスの説明において説明する。なお、位置制御装置50および判定装置60は、上記以外の処理部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
【0060】
[良否判定プロセス]
以下では、電線検査装置10による電線5の良否判定プロセスの一例について説明する。電線検査装置10による電線5の良否判定プロセスにおいては、まず、入力部51に電線5のストリップ長が入力される。これにより、図1に示すように、第1センサ41が、電線5の先端部に対応する位置に位置付けられる。同時に、第4センサ44も、電線5の先端5bよりも先の所定位置に対応する位置に位置付けられる。
【0061】
電線検査装置10による電線5の良否判定プロセスの次のステップでは、電線5が搬送され、電線5が良品かどうかが判定される。図4は、ストリップされた電線5の不良モードを示す模式図である。なお、図4の一番上の図は電線5の良品を示す。図4に示すように、不良モードの1つである不良モードAでは、芯線6が被覆7とともに切断され、欠落している。不良モードの他の1つである不良モードBでは、被覆7がストリップされていない。不良モードCでは、先端5bから芯線6のヒゲ6aが生じている。不良モードCでは、ヒゲ6aは、電線5の先端5b(芯線6の先端)からさらに先に延びている。不良モードDでは、芯線6の先端付近の一部が欠落し、芯線6の先端付近の太さが細くなっている。不良モードEでは、芯線6の先端部がばらけて太くなっている。不良モードFでは、不良モードAと同様に芯線6が切断されているが、被覆7の一部が被覆部5cと被覆除去部5aとの境界よりも先端側に突出している。不良モードGでは、芯線6の根元部分は存在するものの、芯線6が途中から欠落している。
【0062】
図4では、不良モードごとに、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との差分ΔT12、第1計測部61によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との差分ΔT13、第2計測部62によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との差分ΔT23、および第4計測部64の計測結果がどうなるかを示している。「ΔT12」の欄に「OK」と記入されている場合は、ΔT12が所定の範囲内に入っていることを示している。「ΔT12」の欄に「大」と記入されている場合は、ΔT12が所定の範囲よりも大きいことを示している。「ΔT12」の欄に「小」と記入されている場合は、ΔT12が所定の範囲よりも小さいことを示している。
【0063】
同様に、「ΔT13」および「ΔT23」の欄に「OK」と記入されている場合は、ΔT13またはΔT23が、それぞれ所定の範囲内に入っていることを示している。「ΔT13」および「ΔT23」の欄に「大」と記入されている場合は、ΔT13またはΔT23が、それぞれ所定の範囲よりも大きいことを示している。「ΔT13」および「ΔT23」の欄に「小」と記入されている場合は、ΔT13またはΔT23が、それぞれ所定の範囲よりも小さいことを示している。
【0064】
「T4」の欄に「〇」と記載されている場合には、第4計測部64によって電線5の通過時間が計測されない(すなわち、第4センサ44が電線5を検出しない)ことを示している。「T4」の欄に「×」と記載されている場合には、第4計測部64によって電線5の通過時間が計測される(すなわち、第4センサ44が電線5を検出する)ことを示している。図4に示すように、良品の電線5では、「ΔT12」、「ΔT13」、および「ΔT23」の欄は「OK」となり、T4の欄は「〇」となる。
【0065】
不良モードAでは、芯線6が欠落しているため、第1センサ41および第2センサ42が電線5を検出しない(第1計測部61が計測した時間および第2計測部62が計測した時間が「0」となる)。そのため、第1計測部61が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT13、および、第2計測部62が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT23が大きくなり過ぎる。そのため、ΔT13およびΔT23が「大」となる。不良モードAの電線5が通過した場合、ΔT13およびΔT23が所定の範囲よりも大きくなるため、電線検査装置10は、電線5を不良と判定することができる。
【0066】
不良モードBでは、被覆7がストリップされていないため、第1計測部61が計測する時間および第2計測部62が計測する時間が通常よりも大きくなる。そのため、第1計測部61が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT13、および、第2計測部62が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT23が「小」となる。不良モードBの電線5が通過した場合、ΔT13およびΔT23が所定の範囲よりも小さくなるため、電線検査装置10は、電線5を不良と判定することができる。
【0067】
不良モードCでは、電線5の先端5bよりも先に芯線6のヒゲ6aが発生しているため、第4計測部64により電線5の通過時間が計測される。そのため、「T4」の欄が「×」となる。不良モードCの電線5が通過した場合、第4センサ44が電線5を検出するため、電線検査装置10は、電線5を不良と判定することができる。なお、かかる検査によれば、電線5の先端5bと第4センサ44の検出位置との間のY方向に関する距離よりも長いヒゲ6aを検出可能である。例えば電線5の先端5bと第4センサ44の検出位置との間のY方向に関する距離を2mm以下とすれば、少なくとも2mmの長さのヒゲ6aを検出可能である。電線5の先端5bと第4センサ44の検出位置との間のY方向に関する距離は、検出したいヒゲ6aの長さに応じて適宜に設定されるとよい。
【0068】
不良モードDでは、芯線6の先端部が細くなっているため、第1計測部61が計測する時間が通常よりも小さくなる。そのため、第1計測部61が計測した時間と第2計測部62が計測した時間との差分ΔT12、および、第1計測部61が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT13が大きくなり過ぎる。そのため、ΔT12およびΔT13が「大」となる。不良モードDの電線5が通過した場合、ΔT12およびΔT13が所定の範囲よりも大きくなるため、電線検査装置10は、電線5を不良と判定することができる。
【0069】
不良モードEでは、芯線6の先端部が太くなっているため、第1計測部61が計測する時間が通常よりも大きくなる。そのため、第1計測部61が計測した時間と第2計測部62が計測した時間との差分ΔT12は小さくなる(マイナスの値となる)。第1計測部61が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT13も小さくなる。不良モードEの電線5が通過した場合、ΔT12およびΔT13が所定の範囲よりも小さくなるため、電線検査装置10は、電線5を不良と判定することができる。
【0070】
不良モードFおよびGでは、芯線6の先端部が欠落しているため、第1センサ41が電線5を検出しない(第1計測部61が計測した時間が「0」となる)。そのため、第1計測部61が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT13が「大」となる。不良モードEの電線5が通過した場合、ΔT13が所定の範囲よりも大きくなるため、電線検査装置10は、電線5を不良と判定することができる。なお、不良モードFおよびGでは、第2計測部62が計測した時間が通常通りとなる可能性がある。その場合には、第2計測部62が計測した時間と第3計測部63が計測した時間との差分ΔT23は「OK」となり、第1計測部61が計測した時間と第2計測部62が計測した時間との差分ΔT12は「大」となる。図4には、そのような場合のΔT12およびΔT23の状態を図示している。
【0071】
[第1実施形態の作用効果]
以下、本実施形態に係る電線検査装置10の作用効果について説明する。
【0072】
本実施形態に係る電線検査装置10によれば、位置変更機構32は、センサ(ここでは、第1センサ41および第4センサ44)を支持するとともに、電線5の搬送経路上において、支持したセンサ(ここでは、第1センサ41および第4センサ44)のY方向の位置を変更可能に構成されている。かかる電線検査装置10によれば、電線5のストリップ長に応じて、位置変更機構32に支持されたセンサのY方向の位置を変更することができる。これにより、電線5のストリップ長によらず、電線5の適切な位置をセンサで検出することができる。
【0073】
電線のストリップ長は、例えば使用する端子の種類などに応じて様々である。そのため、電線の適切な位置、例えば、芯線先端部と芯線根元部とをセンサで検出しようとすると、従来は、ストリップ長ごとに電線検査装置を用意する必要があった。あるいは、従来は、不良の電線を見逃すリスクはありながらも、ストリップ長にかかわらず芯線が存在するはずの位置にだけセンサを設けていた。例えば、不良モードD、E、F、Gなどの不良は、電線の先端部を検査しないと発見できないおそれがある。しかし、例えば本実施形態のように、電線の被覆除去部と被覆部との境界が電線の軸線方向の所定位置を通過するように電線を搬送する電線検査装置の場合には、電線の先端部の位置はストリップ長によって変化する。そのため、従来は、ある程度の誤判定については諦めるか、または、ストリップ長ごとに電線検査装置を用意するかしていた。
【0074】
上記したような課題に対しては、例えば、多数のセンサをY方向に並べて設ける方式や、画像認識を使用して検査を行う方式を電線検査装置に適用することによって対応が可能である。しかし、多数のセンサをY方向に並べたり、画像認識装置を搭載したりすると、電線検査装置が高価なものとなってしまう。
【0075】
上記した課題に対し、本実施形態に係る電線検査装置10によれば、様々なストリップ長で被覆7が剥かれた電線5の検査を、より安価な構成によって行うことができる。本実施形態に係る電線検査装置10によれば、位置変更機構32に支持されたセンサ(ここでは、第1センサ41および第4センサ44)のY方向の位置を電線5のストリップ長に合わせて変更し、電線5の適切な位置にセンサを配置することができる。これにより、電線5のストリップ長によらず、電線5の適切な位置をセンサで検出することができる。その結果、本実施形態に係る電線検査装置10によれば、様々なストリップ長に対応して、電線5の適切な検査が可能である。かかる方式は、例えば、多数のセンサをY方向に並べて設ける方式や、画像認識などの方式よりも安価かつ容易に実現できる。
【0076】
本実施形態に係る電線検査装置10の位置変更機構32は、具体的には、第1センサ41を支持しており、電線5の搬送経路上において第1センサ41のY方向の位置を変更可能に構成されている。位置変更機構32は、電線5のストリップ長に応じて第1センサ41を電線5の先端部に対応する位置に位置付けることが可能に構成されている。これにより、電線5のストリップ長によらず、電線5の先端部の状態を検査することができる。その結果、例えば、不良モードD、E、F、Gなどの不良モードの電線5を発見することができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、位置変更機構32は、第4センサ44も支持しており、電線5の搬送経路上において第4センサ44のY方向の位置を変更することが可能に構成されている。位置変更機構32は、電線5のストリップ長に応じて、電線5の先端5bよりもさらにY方向の先の位置に対応する位置に第4センサ44を位置付けることができる。かかる構成によれば、電線5の先端5bよりも先に電線5の一部が突出する不良モード(例えば、芯線6のヒゲ6a)が発生した電線5を、電線5のストリップ長によらず発見することができる。
【0078】
本実施形態に係る電線検査装置10によれば、第2センサ42は、被覆除去部5aのうちの1位置に対応する、電線5の搬送経路上の位置に設けられている。位置変更機構32は、第2センサ42よりも電線5の先端5b側において第1センサ41の位置を変更可能に構成されている。言い換えると、第2センサ42は、第1センサ41よりも被覆除去部5aの根元側で電線5の状態を検出している。判定部65は、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間とに基づいて、電線5が良品かどうかを判定している。判定部65は、ここでは、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との差分ΔT12が予め定められた範囲から外れた場合に、電線5を不良と判定する。かかる構成によれば、例えば不良モードD、E、F、またはGのような芯線6の根元部と先端部との太さが異なる不良モードの電線5が搬送されてきた場合に、不良品として認識することができる。さらに、このように第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との差分ΔT12を取ることにより、電線5の搬送速度のばらつきの影響が解消される。そのため、より確実な良否判定が可能となる。例えば、不良モードDのような先端部が細い電線5が搬送されているときに電線5の搬送速度が遅くなると、第1計測部61の計測時間は正常値を示すおそれがあるが、差分ΔT12は異常値を示す。そのため、不良モードDのような不良の電線5を誤って良品と判定する誤判定が防止される。
【0079】
また、本実施形態に係る電線検査装置10によれば、第3センサ43は、電線5の被覆部5cのうちの1位置に対応する、電線5の搬送経路上の位置に設けられている。判定部65は、第1計測部61によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との差分ΔT13が予め定められた範囲を外れた場合、および、第2計測部62によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との差分ΔT23が予め定められた範囲を外れた場合に、電線5を不良と判定する。かかる構成は、何らかの原因により電線5のX方向への搬送速度が大きく変化した場合に特に効果を奏する。
【0080】
例えば、電線5が電線検査装置10または他の装置のどこかに引っ掛かり、この引っ掛かりが外れると、電線5が跳ねて、電線検査装置10における電線5のX方向の速度が大きく増加することがある。このような場合には、第1センサ41が計測する電線5の通過時間および第2センサ42が計測する電線5の通過時間は、ともに小さくなる。例えば不良モードBのような被覆7が剥かれていない電線5が搬送されているときにこれが発生すると、第1センサ41が計測する電線5の通過時間および第2センサ42が計測する電線5の通過時間にそれぞれ閾値を設けていたのでは、誤判定してしまうおそれがある。すなわち、第1センサ41が計測する電線5の通過時間および第2センサ42が計測する電線5の通過時間が小さいため、通過時間が閾値を越えず、電線5が良品と判断されてしまうおそれがある。それに対して、本実施形態では、差分ΔT13およびΔT23の値は、電線5の搬送速度の影響をほとんど受けない。具体的には、不良モードBのような被覆7が剥かれていない電線5が搬送されてきた場合には、差分ΔT13およびΔT23は、電線5の搬送速度によらずほとんどゼロとなり、予め定められた範囲から外れる。そのため、上記のように電線5の搬送速度が大きく変化した場合にも、確実な良否判定が可能となる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る電線検査装置10は、位置変更機構32に支持された各センサ(ここでは、第1センサ41および第4センサ44)のY方向の位置を変更する駆動モータ32eと、電線5のストリップ長が入力される入力部51と、入力部51に入力された長さに応じ、位置変更機構32に支持された各センサのY方向の位置を演算する位置演算部52と、位置変更機構32によって支持された各センサを位置演算部52によって演算された位置に位置付ける駆動制御部53と、をさらに備えている。かかる構成によれば、位置変更機構32に支持された各センサ、ここでは、第1センサ41および第4センサ44のY方向に関する位置が、ストリップ長に応じて自動で調整される。
【0082】
[より簡易な実施形態]
上記した実施形態は、コストパフォーマンスなどを鑑みて、より簡易に変更されてもよい。例えば、発生率の極めて低い不良モードを検出するセンサを省略してもよい。以下、電線検査装置10のセンサの数を減少させた場合について簡単に説明する。
【0083】
[第4センサを省略する場合]
第4センサ44を省略した場合には、不良モードCを検出できないが、他の例示した不良モードは検出できる。不良モードC以外の各不良モードの判定のプロセスは、図4に示した場合と同じである。
【0084】
[第3センサを省略する場合]
第3センサ43を省略する場合には、判定部65は、第1計測部61の計測時間が所定の範囲内から外れた場合、および、第2計測部62の計測時間が所定の範囲内から外れた場合に電線5を不良と判断してもよい。さらに判定部65は、電線5の搬送速度のばらつきを考慮して、第1計測部61の計測時間と第2計測部62の計測時間との差分ΔT12が所定の範囲内から外れた場合にも、電線5を不良と判断してもよい。図5は、第3センサ43を省略した電線検査装置10の良否判定方法を示す図である。図5の「T1」の欄が「OK」の場合、第1計測部61の計測時間は所定の範囲内に入っている。図5の「T1」の欄が「大」の場合、第1計測部61の計測時間は所定の範囲を越えている。図5の「T1」の欄が「小」の場合、第1計測部61の計測時間は所定の範囲を下回っている。第2センサ42についての「T2」の欄も同様である。
【0085】
図5に示すように、不良モードAの場合、芯線6が欠落しているため、T1およびT2はともに「小」となる。不良モードBの場合、被覆7が剥かれていないため、T1およびT2はともに「大」となる。不良モードDの場合、芯線6の先端部だけが細くなっているため、T1は「小」となり、T2は「OK」となる。また、ΔT12は、「大」となる。不良モードEの場合、芯線6の先端部だけが太くなっているため、T1は「大」となり、T2は「OK」となる。ΔT12は、「小」となる。不良モードFまたはGの場合、被覆除去部5aの根元部分に残った被覆7または芯線6の状態によっては、T2は「OK」となるが、T1は「小」となる。ΔT12は、「大」となる。すなわち、かかる構成によれば、電線5が跳ねるなどして、電線5の搬送速度が大きく増加した場合に不良モードBを見逃すおそれはあるが、その他の例示した不良モードの電線5は検出することができる。
【0086】
[第2センサを省略する場合]
第2センサ42を省略する場合、被覆除去部5aの根元部分にのみ不良が存する電線5を除いて、最初の実施形態と同様の良否判定を行うことができる。
【0087】
[第1センサのみを使用する場合]
第1センサ41以外のセンサを省略する場合、判定部65は、第1計測部61によって計測された時間が予め定められた範囲から外れた場合に、電線5を不良と判定する。かかる態様によっても、不良モードA、B、F、およびGは、確実に検出できる(ただし、不良モードBについては、搬送速度が大きく増加しない場合に限る)。不良モードDおよびEについては、電線5の搬送速度のばらつきを考慮しても検出可能なレベルの不良であれば検出できる。かかる態様では、例えば、不良モードDおよびEの検出を所望するレベルに応じて、電線5の搬送速度を調整してもよい。電線5の搬送速度を適切に設定する(例えば遅くする)ことにより、不良モードDおよびEを確実に検出することができるようになる。
【0088】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明した。ただし、上記した実施形態は例示に過ぎず、他にも種々の実施形態が可能である。例えば、電線検査装置10が備えるセンサの数、および、位置変更機構32が支持して移動させるセンサの数は限定されない。電線検査装置10は、搬送装置20によって搬送される電線5の通過を検出する、1つまたは複数のセンサを備えていればよく、センサの数は限定されない。また、位置変更機構32は、少なくとも1つのセンサを支持し、支持したセンサをY方向に移動させるように構成されていればよい。
【0089】
例えば、電線検査装置10は、電線5の先端部がY方向の所定位置を通過するように電線5を搬送する搬送装置20を備えていてもよく、その場合、移動可能なセンサおよび固定されたセンサは、上記した実施形態と異なっていてもよい。この場合、例えば、第1センサ41は、電線5の先端部に対応する、電線5の搬送経路上の位置に設けられていてもよい。すなわち、第1センサ41は、電線5の先端部に対応する位置に移動不能に設けられていてもよい。第2センサ42は、位置変更機構32によってY方向に移動可能に支持されていてもよい。位置変更機構32は、電線5のストリップ長に応じて、電線5の被覆除去部5aと被覆部5cとの境界から所定の距離の位置に対応する位置に、第2センサ42を位置付けることが可能なように構成されていてもよい。
【0090】
このような電線検査装置10では、電線5の先端部のY方向の位置が決められているため、電線5の被覆除去部5aと被覆部5cとの境界の位置が、ストリップ長によって変動する。しかし、かかる電線検査装置10によれば、電線5のストリップ長に応じて第2センサ42のY方向の位置を変更し、電線5の被覆除去部5aと被覆部5cとの境界から所定の距離の位置に対応する位置に第2センサ42を配置することができる。これにより、ストリップ長によらず、電線5の先端部と、先端部よりも根元側の部分とを検査することができる。なお、第2センサ42は、電線5の被覆除去部5aを検出してもよく、被覆部5cを検出してもよい。
【0091】
上記の電線検査装置10は、さらに第3センサ43を備えていてもよく、位置変更機構32は、第3センサ43をY方向に移動可能に支持していてもよい。位置変更機構32は、
電線5のストリップ長に応じて、第2センサ42を電線5の被覆除去部5aに対応する位置に位置付けること、および、第3センサ43を電線5の被覆部5cに対応する位置に位置付けることが可能なように構成されていてもよい。かかる構成によれば、ストリップ長に応じて、電線5の先端部、被覆除去部5aのうち先端部よりも根元側の部分、および被覆部5cをセンサにより検出することができる。なお、電線5の良否判定フローは、これまでに例示したフローのいずれかと同じであってもよい。
【0092】
また、電線検査装置10は、切り離した被覆7を完全に抜かず、芯線6に差し込んだまま(以下、セミストリップ状態とも言う)の電線5の検査が可能なように構成されていてもよい。その場合、電線5のストリップ範囲は、電線5の中間部となる。かかるセミストリップ状態の電線5の適切な検査を行う電線検査装置10は、位置変更機構32に支持された2つのセンサ、例えば、第1センサ41および第4センサ44を含んでいてもよい。位置変更機構32は、電線5のストリップ範囲に応じて、被覆7が剥かれる部分に対応する位置に例えば第1センサ41を、被覆7が残る部分に対応する位置に例えば第4センサ44を位置付けることが可能に構成されていてもよい。かかる構成によれば、第1センサ41で芯線6を検出し、第4センサ44でセミストリップされた被覆7(切り離された後に電線5から完全に抜かれず、芯線6に差し込まれた状態の被覆7)を検出することにより、少なくとも芯線6とセミストリップされた被覆7が存在することを検知することができる。
【0093】
セミストリップ状態の電線5の検査に関してさらに好ましくは、電線検査装置10は、第1センサ41および第2センサ42で芯線6を、第3センサで被覆部5cを、第4センサ44でセミストリップされた被覆7を検出するように構成されていてもよい。上記構成によれば、第1センサ41の計測時間と第2センサ42の計測時間との差分から、芯線6の状態を検出することができる。例えば、第1センサ41の計測時間と第2センサ42の計測時間との差分が所定の範囲から外れていれば、電線5を不良と判定することができる。また、第2センサ43の計測時間と第4センサ44の計測時間との差分から、被覆7の状態を検出することができる。例えば、第3センサ43の計測時間と第4センサ44の計測時間との差分が所定の範囲から外れていれば、電線5を不良と判定することができる。なお、被覆部5cと被覆除去部5aとの境界がY方向の所定位置を通るように搬送装置20が電線5を搬送する場合には、第1センサ41および第4センサ44が可動式であってもよい。電線5の先端部がY方向の所定位置を通るように搬送装置20が電線5を搬送する場合には、第2センサ42および第3センサ43が可動式であってもよい。
【0094】
上記した実施形態では、第1計測部61の計測時間、第2計測部62の計測時間、および第3計測部63の計測時間は、差分を求めることによって比較されたが、複数の計測時間の比較方法は差分を取ることに限定されない。第1計測部61の計測時間、第2計測部62の計測時間、および第3計測部63の計測時間は、比を求めることによって比較されてもよい。具体的には、判定部65は、第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との比が予め定められた範囲から外れた場合に、電線5を不良と判定するように構成されていてもよい。第1計測部61によって計測された時間と第2計測部62によって計測された時間との比は、第1計測部61によって計測された時間を基準とする比であってもよく、第2計測部62によって計測された時間を基準とする比であってもよい。
【0095】
判定部65は、同様に、第1計測部61によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との比が予め定められた範囲を外れた場合、および、第2計測部62によって計測された時間と第3計測部63によって計測された時間との比が予め定められた範囲を外れた場合に、電線5を不良と判定するように構成されていてもよい。第2センサ42または第3センサ43が省略された態様の場合も同様である。
【0096】
上記した実施形態では、位置変更機構32は、ガイドレール32bとナット32cとねじ32dとを備えていたが、位置変更機構32の構成は限定されない。位置変更機構32は、例えば、ラックとピニオンとを備えていてもよい。あるいは、位置変更機構32は、例えば、ベルトと一対のプーリとを備えていてもよい。位置変更機構32は、保持したセンサを独立にY方向に移動させることが可能なように構成されていてもよい。
【0097】
また、上記した実施形態では、第1センサ41および第4センサ44のY方向の位置は、入力部51にストリップ長を入力すると後は自動調整されたが、作業者がセンサ位置を確認しながら駆動モータ32eを駆動させることによって調整されてもよい。さらには、位置変更機構32は、保持したセンサを駆動部の駆動力によって移動させるものには限定されない。位置変更機構32は、例えば、作業者の力によりセンサを移動させるものであってもよい。
【0098】
その他、特に言及されない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。例えば、搬送装置20の構成は特に限定されない。また、電線検査装置10が備えるセンサは、透過式の光電センサには限定されない。複数のセンサの各検出点のX方向の位置は同じでなくてもよい。
【符号の説明】
【0099】
5 被覆電線
10 電線検査装置
20 搬送装置
30 センサ支持機構
32 位置変更機構
32e 駆動モータ(アクチュエータ)
41 第1センサ
42 第2センサ
43 第3センサ
44 第4センサ
50 位置制御装置
51 入力部
52 位置演算部
53 駆動制御部
60 判定装置
60A 計測部
61 第1計測部
62 第2計測部
63 第3計測部
64 第4計測部
65 判定部

図1
図2
図3
図4
図5