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特開2022-84227寸法検査方法、寸法検査用スケール、及び工作機械用シール部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084227
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】寸法検査方法、寸法検査用スケール、及び工作機械用シール部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/14 20060101AFI20220531BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G01B3/14
B23Q11/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195956
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】坂中 宏行
(72)【発明者】
【氏名】野田 武
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA16
2F061AA35
2F061BB07
2F061DD27
2F061FF09
2F061FF10
2F061FF41
2F061GG01
2F061JJ83
2F061JJ91
2F061LL21
2F061NN01
2F061VV05
(57)【要約】
【課題】 被検査物の評価対象寸法が検査対象製品の規格値に合致しているか否かの検査を短時間で容易にかつ正確に行うことができる検査方法を提供すること。
【解決手段】 一方向から視た検査対象製品が製品寸法で描画された基準図を有する寸法検査用スケールと、評価対象寸法が前記検査対象製品の規格値に合致しているか否かが判断される被検査物と、を用意し、前記寸法検査用スケールに描画された基準図に、前記被検査物を重ね合わせて、当該被検査物を前記一方向から視た形状と、前記基準図とを比較して、前記被検査物の評価対象寸法が、前記検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断する、寸法検査方法。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向から視た検査対象製品が製品寸法で描画された基準図を有する寸法検査用スケールと、
評価対象寸法が前記検査対象製品の規格値に合致しているか否かが判断される被検査物と、を用意し、
前記寸法検査用スケールに描画された基準図に、前記被検査物を重ね合わせて、当該被検査物を前記一方向から視た形状と、前記基準図とを比較して、前記被検査物の評価対象寸法が、前記検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断する、寸法検査方法。
【請求項2】
前記基準図には、前記検査対象製品における前記評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されており、
前記被検査物の評価対象寸法が寸法公差の範囲に収まっているか否かを判定し、収まっていれば前記検査対象製品の規格値に合致していると判断する、請求項1に記載の寸法検査方法。
【請求項3】
検査対象製品における少なくとも2つの評価対象寸法を同時に評価する、請求項1又は2に記載の寸法検査方法。
【請求項4】
前記検査対象製品は、工作機械への取付け面を構成する平面と、工作機械に取り付けるための孔とを備える工作機械用シール部材であり、
前記寸法検査用スケールは、前記工作機械への取付け面を構成する平面の法線方向であって、前記平面と反対側から前記平面側に向かう方向、に視た前記工作機械用シール部材の基準図を有する、請求項1~3のいずれかに記載の寸法検査方法。
【請求項5】
被検査物の評価対象寸法が、検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断するための寸法検査用スケールであって、
一方向から視た前記検査対象製品が製品寸法で描画された基準図を有し、
前記基準図には、前記検査対象製品における前記評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されている、寸法検査用スケール。
【請求項6】
前記検査対象製品は、工作機械への取付け面を構成する平面と、工作機械に取り付けるための孔とを備える工作機械用シール部材であり、
前記工作機械への取付け面を構成する平面の法線方向であって、前記平面と反対側から前記平面側に向かう方向、に視た前記工作機械用シール部材の基準図を有する、請求項5に記載の寸法検査用スケール。
【請求項7】
工作機械への取付け面を構成する平面と、前記工作機械に取り付けるための孔とを備える工作機械用シール部材の製造方法であって、
請求項4に記載の寸法検査方法によって、評価対象寸法が規格値に合致した工作機械用シール部材を選別する工程を含む、工作機械用シール部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法検査方法、この寸法検査方法で使用される寸法検査用スケール、及びこの寸法検査方法を含む工作機械用シール部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤やマシニングセンタなどの工作機械は、製造産業で汎用されている最も基本的な機械装置であり、これらの工作機械では、駆動機構等を切屑やクーラント(切削油)等から保護したり、切屑やクーラントを除去したりするために、リップシール、スライドシール、テレスコシール、カバーシール等の種々のシール部材(ワイパー部材と称することもある)が使用されている(例えば、特許文献1~6参照)。上記シール部材は、通常、当該シール部材を工作機械に取り付けるために使用される取付け孔を備えている。
上記シール部材は、工作機械ごとに設計されており、また、1台の工作機械に対して複数種類の工作機械用シール部材を組み合わせて使用されることもある。
そのため、工作機械用シール部材としては様々な寸法の部材が存在している。各工作機械用シール部材は寸法精度良く、製造されている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/110275号
【特許文献2】特開2019-30936号公報
【特許文献3】特開2017-189863号公報
【特許文献4】特許第6174175号公報
【特許文献5】国際公開第2017/073405号
【特許文献6】国際公開第2015/119030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記シール部材は、寸法が規格値と合致しているか否か(寸法公差の範囲内にあるか否か)が検査され、検査に合格したものが製品として出荷される。
上記シール部材の検査では、例えば、当該シール部材の外形の長さや、上記取付け孔の位置や径が検査される。
これらのシール部材の検査は、例えばノギスやマイクロメータなどを用いて行うことができる。しかしながら、これらの方法は、かなりの時間と工数とを必要とする検査方法である。
【0005】
また、ノギスやマイクロメータはそもそも寸法の具体的な数値を取得するための道具であるのに対し、製品の寸法が規格値と合致しているか否かを判断する場合、寸法の具体的な数値は必ずしも必要な情報ではなかった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、工作機械用シール部材などの検査対象となる製品の寸法が規格値と合致しているか否かの判断を短時間で簡単に行うことができる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の寸法検査方法は、一方向から視た検査対象製品が製品寸法で描画された基準図を有する寸法検査用スケールと、
評価対象寸法が上記検査対象製品の規格値に合致しているか否かが判断される被検査物と、を用意し、
上記寸法検査用スケールに描画された基準図に、上記被検査物を重ね合わせて、当該被検査物を上記一方向から視た形状と、上記基準図とを比較して、上記被検査物の評価対象寸法が、上記検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断する。
【0008】
上記寸法検査方法では、被検査物を寸法検査用スケールに描画された図形と重ね合わせるだけで、寸法の具体的な数値を実測することなく、被検査物の評価対象寸法が検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断することができる。そのため、短時間で容易にかつ正確に被検査物の寸法検査を行うことができる。
また、上記寸法検査用スケールは、被検査物ごとに安価に製造することができるため、上記寸法検査方法は、多品種少量生産品の寸法検査方法として特に好適である。
本明細書においては、評価対象寸法が検査対象製品の規格値に合致しているか否かの判断がなされる前の検査対象製品を被検査物と称する。従って、上記被検査物には、評価対象寸法が検査対象製品の規格値に合致しているものと、合致していないものとが含まれる。
【0009】
(2)上記(1)の寸法検査方法において、上記基準図には、上記検査対象製品における上記評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されており、
上記被検査物の評価対象寸法が寸法公差の範囲に収まっているか否かを判定し、収まっていれば上記検査対象製品の規格値に合致していると判断する、ことが好ましい。
この場合、検査対象製品の寸法公差を考慮した寸法検査を容易に行うことができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の寸法検査方法は、検査対象製品における少なくとも2つの評価対象寸法を同時に評価する、ことが好ましい。
この場合、少ない工数で被検査物の評価対象寸法が検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断することができる。
本評価において、評価対象寸法を同時に評価するとは、厳密に評価時間が一致しているわけではなく、1回の評価工程で判断することを意味する。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの寸法検査方法において、
上記検査対象製品は、工作機械への取付け面を構成する平面と、工作機械に取り付けるための孔とを備える工作機械用シール部材であり、
上記寸法検査用スケールは、上記工作機械への取付け面を構成する平面の法線方向であって、上記平面と反対側から上記平面側に向かう方向、に視た上記工作機械用シール部材の基準図を有する、ことが好ましい。
上記工作機械用シール部材は、本発明の寸法検査方法で評価する検査対象製品として適している。
【0012】
(5)本発明の寸法検査用スケールは、
被検査物の評価対象寸法が、検査対象製品の規格値に合致しているか否かを判断するための寸法検査用スケールであって、
一方向から視た上記検査対象製品が製品寸法で描画された基準図を有し、
上記基準図には、上記検査対象製品における上記評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されている。
上記寸法検査用スケールは、上記(1)~(4)の寸法検査方法で使用する寸法検査用スケールとして好適である。
また、上記寸法検査用スケールは、検査対象製品ごとに安価に準備することができる。
【0013】
(6)上記(5)の寸法検査用スケールにおいて、
上記検査対象製品は、工作機械への取付け面を構成する平面と、工作機械に取り付けるための孔とを備える工作機械用シール部材であり、
上記工作機械への取付け面を構成する平面の法線方向であって、上記平面と反対側から上記平面側に向かう方向、に視た上記工作機械用シール部材の基準図を有する、ことが好ましい。
上記工作機械用シール部材は、上記寸法検査用スケールを用いて評価する検査対象製品として適している。
【0014】
(7)本発明の工作機械用シール部材の製造方法は、
工作機械への取付け面を構成する平面と、上記工作機械に取り付けるための孔とを備える工作機械用シール部材の製造方法であって、
上記(4)に記載の寸法検査方法によって、評価対象寸法が規格値に合致した工作機械用シール部材を選別する工程を含む。
上記工作機械用シール部材の製造方法は、評価対象寸法が規格値と合致した工作機械用シール部材を効率良く製造する方法として適している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検査物の寸法が検査対象製品の規格値と合致しているか否かの検査を短時間で容易にかつ正確に行うことができる。
また、上記の検査を工作機械用シール部材の製造工程に取り入れることにより、評価対象寸法が規格値と合致した工作機械用シール部材を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態で検査対象となる工作機械用シール部材の一例を示す部分斜視図である。
図2】(a)は図1に示した工作機械用シール部材の正面図であり、(b)は図1に示した工作機械用シール部材の側面図であり、(c)は図1に示した工作機械用シール部材の背面図である。
図3図1に示した工作機械用シール部材を工作機械に取り付けた状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る寸法検査用スケールの一例を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る寸法検査方法を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態で検査対象となる工作機械用シール部材の別の一例を示す部分斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る寸法検査用スケールの別の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
ここでは、工作機械用シール部材を検査対象製品として、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態において、検査対象製品は、工作機械用シール部材に限定されるわけではない。
【0018】
(第1実施形態)
<工作機械用シール部材>
図1は、本実施形態の検査対象製品である工作機械用シール部材の一例を示す部分斜視図である。図2(a)は図1に示した工作機械用シール部材30を矢印IIAの方向から視た正面図であり、図2(b)は図1の工作機械用シール部材30を矢印IIBの方向から視た側面図であり、図2(c)は図1の工作機械用シール部材30を矢印IICの方向から視た背面図である。図3は、図1に示した工作機械用シール部材30を工作機械に取り付けた状態を示す図である。
【0019】
本実施形態の工作機械用シール部材30は、図1に示すように、弾性部材31と、支持部材41と、湾曲補助部材51を備える。
弾性部材31は、湾曲補助部材51と接合される前の自然状態では、平板状の部材である。弾性部材31は、工作機械用シール部材30を工作機械に取り付けた際に、工作機械60の取付け部65と支持部材41との間に配置される部材である。
弾性部材31は、支持部材41の支持面41aと対向する固定部32と、固定部32から先端側(工作機械の摺動面との接触側)に延設されたリップ部33とからなる。リップ部33は、エッジ部34を含み、かつ、湾曲状態にある。
弾性部材は31、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、ウレタンエラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等を含むゴム組成物からなる。
【0020】
支持部材41は、弾性部材31を支持しつつ、工作機械用シール部材30を工作機械60に取り付けるための部材である。
支持部材41は、弾性部材31のおもて面31aと対向する支持面41aを有する平板状の支持部42と、支持部42の支持面41a側と反対側に立設され、使用時に弾性部材31のおもて面31aを切り粉等から保護するための、平板状の保護部43とを有している。
支持部材41は、例えば、折り曲げ加工されたスチール板やアルミニウム板等からなる。支持部材41の折り曲げ角度θ1(図2(b)参照)は、例えば80~150°程度とすればよい。
【0021】
湾曲補助部材51は、弾性部材31のリップ部33の湾曲をサポートする部材である。
湾曲補助部材51を備える工作機械用シール部材30は、使用時に弾性部材31のリップ部33の反転が発生しにくくなる。また、工作機械60に取り付ける前から湾曲しているため、工作機械60への取り付け時に工作機械用シール部材30を取り付ける向きを誤ることもない。
湾曲補助部材51は、平板状の本体部52と平板状の補助部53とを有する。補助部53は、本体部52の下端部から弾性部材31の湾曲側(支持部材41側)に向かって斜めに延設されている。
湾曲補助部材51は、例えば、折り曲げ加工されたスチール板やアルミニウム板等からなる。湾曲補助部材51の折り曲げ角度θ2(図2(b)参照)は、例えば、15~60°程度とすればよい。
【0022】
弾性部材31と支持部材41とは、弾性部材31のおもて面31aと支持部材41の支持部42との間に設けられた接着剤層37を介して接合されている。
弾性部材31と湾曲補助部材51とは、湾曲補助部材51の本体部52と、弾性部材31の裏面31bの一部との間に設けられた接着剤層38を介して接合されている。
【0023】
工作機械用シール部材30は、図3に示すように工作機械60の取付け部65に、当該取付け部65側から順に、湾曲補助部材51、弾性部材31及び支持部材41が配置されるように取り付けて使用される。
工作機械用シール部材30は、ボルト66とナット67を用いて工作機械60に取り付けられる。そのため、工作機械用シール部材30では、所定の位置にボルト66を挿通するための取付け孔36が設けられている。
工作機械60に取り付けられた工作機械用シール部材30は、弾性部材31のエッジ部34で工作機械60の摺動面61と摺接する。
【0024】
<工作機械用シール部材の製造方法>
工作機械用シール部材30は、例えば、弾性部材31と、支持部材41と、湾曲補助部材51とを別々に作製した後、各部材を接着剤層37、38を介して所定の位置関係で接合させる作製工程Aを経て製造する。
支持部材41及び湾曲補助部材51は、例えば、スチール板等を所定の形状に裁断した後、折り曲げ加工することにより作製することができる。
弾性部材31は、例えば、上述したゴム成分を含むゴム組成物からなるシート状物を所定の形状に裁断することにより作製することができる。
【0025】
また、長手方向(図2(a)中、左右方向)の長さが充分に長い、支持部材、湾曲補助部材及び弾性部材を用意した後、これらを接着剤層を介して接合させて工作機械用シール部材の長尺物を作製し、その後、長手方向の寸法が所定の寸法となるように裁断する作製工程Bを経て工作機械用シール部材30を製造してもよい。
上記作製工程A及びBのいずれの工程を経た場合も、図1に示した工作機械用シール部材30と同じ部材を備え、本実施形態に係る寸法検査が行われる前の工作機械用シール部材30′を作製することができる。
【0026】
上記作製工程Aや上記作製工程Bを経て作製された、被検査物となる工作機械用シール部材30′には、通常、評価対象寸法が工作機械用シール部材30の規格値に合致するものと、当該規格値に合致しないものとが混在している。
そこで、本実施形態では、上記作製工程Aや上記作製工程Bを経て作製された工作機械用シール部材30′を被検査物とし、後述する寸法検査方法によって、評価対象寸法が工作機械用シール部材30の規格値に合致した工作機械用シール部材30′を選別する寸法検査工程を行う。
これにより、評価対象寸法が規格値に合致した工作機械用シール部材30を製造することができる。
【0027】
本実施形態では、工作機械用シール部材30′を被検査物とし、工作機械用シール部材30′の長手方向の長さと、取付け孔36′の位置及び径が、工作機械用シール部材30の規格値に合致しているか否かを判断する。
【0028】
<寸法検査用スケール>
図4は、本実施形態に係る寸法検査用スケールの一例を示す平面図である。図4では矢印Xの方向を上方向、矢印Yの方向を左方向とする。
本実施形態に係る寸法検査用スケール10は、紙11のおもて面に、一方向から視た工作機械用シール部材30が製品寸法で描画された基準図12を有する。基準図12は、工作機械用シール部材30を支持部材41側から湾曲補助部材51側に向かう方向(図1における矢印IIAの方向)に視たときの図である。基準図12は、検査対象製品である工作機械用シール部材30が製品寸法で(即ち、縮尺1:1で)描画されている。
【0029】
本発明の実施形態において、基準図には、設計寸法通りに製造された検査対象製品(例えば、工作機械用シール部材)が描画される。
また、本発明の実施形態において、基準図に描画される形状を取得するために検査対象製品を視る、上記一方向は特に限定されず、検査対象製品の形状や評価対象寸法に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
基準図12には、工作機械用シール部材30における評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されている。
ここでは、工作機械用シール部材30の設計品の長手方向(図4中、左右方向)の長さの寸法公差の範囲14がハッチングされた領域として示されている。
また、工作機械用シール部材30の設計品の取付け孔36に対応する図形13A~13C(ハッチングされた領域)が、寸法公差の範囲を含んで描画されている。そのため、工作機械用シール部材30の設計品の取付け孔36を上記一方向(図1中、矢印IIAの方向)から見た形状は円形であるが、紙11に描画された図形13A~13Cは、取付け孔36の寸法公差を含んだ、二つの等しい長さの平行線と二つの半円形とからなる形状(以下、単に長円形ともいう)で描画されている。
【0031】
寸法公差の範囲14、及び図形13A~13Cは、検査実施者が容易に視認できるように描画されていればよい。これらは、ハッチングではなく、例えば、紙11とは異なる色によるベタ塗りで示されていてもよい。
【0032】
本発明の実施形態において、寸法検査用スケールに描画された基準図に評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されている場合、評価対象寸法の寸法公差の範囲が示された部分には、基準図12の寸法公差の範囲14の部分のように、設計品の形状を示す線14aと寸法公差の範囲を示すための線14bとの両方が描画されていてもよいし、基準図12の図形13A~13Cのように、設計品の形状を示す線は省略され、寸法公差の範囲を示すための線13bだけが描画されていてもよい。
【0033】
寸法検査用スケール10を使用した後述の寸法検査方法では、寸法検査用スケール10に設定した基準部位を基準として、基準図12と、被検査物である工作機械用シール部材30′との重ね合わせを行う。
上記基準部位の設定では、基準図12における工作機械用シール部材30の外形線のうち左上の角を基準点BPに設定し、上側の辺を第1基準線BL1に設定する。更に紙11のおもて面内にあり、基準点BPを通り第1基準線BL1に垂直な仮想線を第2基準線BL2に設定する。
このように設定した基準部位(基準点BP、第1基準線BL1及び第1基準線BL2)は、本実施形態の寸法検査方法において、重ね合わせ時の基準となる。
本実施形態において、基準図12の外形線の左上の角を基準点BPに設定している理由は、この部位を検査対象製品である工作機械用シール部材30の設計図面(図示せず)が基準点としているからである。検査対象製品の設計図面の基準点と同じ部位に、寸法検査用スケール10の基準部位を設定することにより、設計図面通りの寸法検査が可能となる。
【0034】
上述の寸法公差の範囲14は、基準点BPを含む第2基準線BL2を基準にして設定されている。
また、図形13A~13Cは、13Aの長円形より13Bの長円形の方が長手方向(図4中、左右方向)の長さが長くなり、13Bの長円形より13Cの長円形の方が長手方向の長さが長くなるように描画されている。
これは、取付け孔36に対応する図形13A~13Cの寸法公差が第2基準線BL2を基準にして設定されているからである。寸法検査用スケール10に描画された基準図12では、第2基準線BL2から離れた取付け孔36に対応する図形ほど寸法公差の範囲が大きくされている。
【0035】
<寸法検査方法>
図5は、本実施形態に係る寸法検査方法を説明するための図である。
本実施形態において、工作機械用シール部材の寸法検査は、寸法検査用スケール10と、別途用意した検査用治具70とを用いて行う。
検査用治具70は、2本の四角柱部材71、72が、両者のなす角度90°で接合されたような形状(L字形状)を有する部材である。検査用治具70は、樹脂や金属等からなる充分に硬い部材である。検査用治具70は、位置合わせが容易な観点から透明であることが好ましい。
上記検査用治具において、2本の四角柱部材のなす角度は、図4に示した基準図12の上辺と左辺とのなす角度以上であればよく、90°より大きくてもよい。
【0036】
(1)図5に示すように、寸法検査用スケール10のおもて面の所定の位置に検査用治具70を載置する。
ここでは、検査用治具70を、四角柱部材71の1つ稜線71aが基準図12に設定された第1基準線BL1と一致し、この稜線71aの四角柱部材72側の端部が基準図12の基準点BPと一致するように載置する。これにより、四角柱部材71と四角柱部材72とのなす角度が90°であることから、四角柱部材72の1つの稜線が、基準点BPを通り第1基準線BL1と直交する第2基準線BL2と一致する。
【0037】
(2)次に、被検査物である工作機械用シール部材30′を寸法検査用スケール10のおもて面に載置し(図5参照)、工作機械用シール部材30′の外縁(湾曲補助部材51の上側の縁部と当該縁部の左側端部)を検査用治具70に接触させて、工作機械用シール部材30′を寸法検査用スケール10に描画された基準図12に重ね合わせる。
ここでは、工作機械用シール部材30′の背面側(完成品における工作機械60への取付け面側)が、寸法検査用スケール10のおもて面と対向するように、当該工作機械用シール部材30′を載置する。
【0038】
その後、検査実施者の視認により、工作機械用シール部材30′を支持部材41側から湾曲補助部材51側に向かう方向に視た形状と、寸法検査用スケール10に描画された工作機械用シール部材30の設計品の形状(基準図12)とを比較し、下記(A)及び(B)の判断を行う。
【0039】
(A)工作機械用シール部材30′の検査用治具70に接触させた側と長手方向反対側(長手方向右側)の端部が、基準図12の寸法公差の範囲14と重なっているか、否かを判断する。その結果、上記長手方向反対側の端部全体が、寸法公差の範囲14と重なっている場合は、この評価寸法は合格と判断する。
【0040】
(B)工作機械用シール部材30′の取付け孔36′を通して、寸法検査用スケール10に描画された基準図12を見た際に、各取付け孔36′から図形13A~13Cのみが見えるか否かを判断する。その結果、取付け孔36′を通して図形13A~13Cのみ(ハッチングのみ)が観察された場合は、この評価寸法は合格と判断する。一方、取付け孔36′を通して、図形13A~13Cのその周辺も観察された場合は、不合格と判断する。
そして、本実施形態では、上記(A)及び(B)の評価がともに合格であった場合に、評価した工作機械用シール部材30′は、評価対象寸法が規格値に合致していると判断する。
本実施形態の寸法検査方法では、少なくとも2つの評価対象寸法を同時に評価している。
【0041】
このような寸法検査方法は、上述した工作機械用シール部材の製造方法に含まれる一工程とすることができ、上記寸法検査方法を含む工作機械用シール部材の製造方法によれば、評価対象寸法が規格値と合致した工作機械用シール部材を効率良く製造することができる。
【0042】
本実施形態では、基準点BPを通る第2基準線BL2を基準に、長手方向(図4中、左右方向)の寸法を検査している。
上述した検査方法で検査される工作機械用シール部材の被検査物は、より精度良く寸法検査を行うことができる観点から、短手方向(図4中、上下方向)の寸法、及び、上側の縁部と長手方向両端の縁部との角度、の検査が既に行われ、当該検査に合格した工作機械用シール部材であることが好ましい。
【0043】
(第2実施形態)
本実施形態は、検査対象製品である工作機械用シール部材の形状、及び寸法検査用スケールに描画された基準図が、第1実施形態とは異なる。
図6は、本実施形態の検査対象製品である工作機械用シール部材の一例を示す部分斜視図である。図7は、本実施形態に係る寸法検査用スケールの一例を示す平面図である。
【0044】
<工作機械用シール部材>
本実施形態の検査対象製品である工作機械用シール部材130は、弾性部材131と、板状の支持部材141とを備える。この工作機械用シール部材130は、湾曲補助部材を備えていない点で、第1実施形態の工作機械用シール部材30と異なる。工作機械用シール部材130は、長手方向両端縁の形状も第1実施形態の工作機械用シール部材30と異なる。
【0045】
弾性部材131は、第1実施形態のおける弾性部材31と同様の部材である。弾性部材131は、ゴム組成物からなり自然状態では平板状の部材である。弾性部材131は、工作機械用シール部材130を工作機械に取り付けた際に、工作機械の取付け部と支持部材141との間に配置される部材である。弾性部材131は、支持部材141と対向する固定部132と、固定部132から先端側に延びるリップ部133とからなり、リップ部133先端のエッジ部134で工作機械の摺動面と接触する。
【0046】
支持部材141は、弾性部材131を支持しつつ、工作機械用シール部材130を工作機械に取り付けるための部材である。支持部材141は、スチール板やアルミニウム板等からなる平板状の部材である。支持部材141は、工作機械の取付け部との間に弾性部材131の固定部132を挟み込み、工作機械用シール部材130を工作機械に取り付ける。
【0047】
弾性部材131と支持部材141とは、両者の間に設けられた接着剤層137を介して接合されている。
工作機械用シール部材130は、複数の取付け孔136を有している。工作機械用シール部材130は、取付け孔136にボルトを挿通し、ナットで固定して工作機械に取り付けられる。
【0048】
<工作機械用シール部材の製造方法>
工作機械用シール部材130は、第1実施形態の工作機械用シール部材の製造方法における作製工程Aや作製工程Bと同様の手順(ただし、湾曲補助部材の接合工程は無い)を経て製造することができる。
この場合も、上記作製工程Aや上記作製工程Bを経て作製された工作機械用シール部材には、通常、評価対象寸法が工作機械用シール部材130の規格値に合致するものと、当該規格値に合致しないものとが混在している。
【0049】
そこで、本実施形態の製造方法でも、上記作製工程Aや上記作製工程Bを経て作製された工作機械用シール部材を被検査物とし、後述する寸法検査方法によって、評価対象寸法が工作機械用シール部材130の規格値に合致した工作機械用シール部材を選別する寸法検査工程を行う。
【0050】
これにより、評価対象寸法が規格値に合致した工作機械用シール部材130を製造することができる。
【0051】
本実施形態では、工作機械用シール部材130を検査対象製品とする。
本実施形態は、被検査物としての工作機械用シール部材の長手方向の長さと、取付け孔の位置及び径とが、工作機械用シール部材130の規格値に合致しているか否かを判断する。
【0052】
<寸法検査用スケール>
図7は、本実施形態に係る寸法検査用スケールの一例を示す平面図である。図7では矢印Xの方向を上方向、矢印Yの方向を左方向とする。
本実施形態に係る寸法検査用スケール110は、紙111のおもて面に、一方向から視た工作機械用シール部材130が製品寸法で描画された基準112を有する。基準図112は、工作機械用シール部材130を支持部材141側から弾性部材131に向かう方向に視たときの図である。基準図112は、検査対象製品である工作機械用シール部材が製品寸法で描画されている。基準図112の縮尺は1:1である。
【0053】
基準図112には、工作機械用シール部材130における評価対象寸法の寸法公差の範囲が示されている。
ここでは、工作機械用シール部材130の設計品の長手方向(図7中、左右方向)の長さの寸法公差の範囲114がハッチングされた領域として示されている。
また、工作機械用シール部材130の設計品の取付け孔136に対応する図形113A及び113B(ハッチングされた領域)は、寸法公差の範囲を含んで描画されている。そのため、工作機械用シール部材130の設計品の取付け孔136を上記一方向から見た形状は円形であるが、図形113A及び113Bは、寸法公差を含んだ長円形で描画されている。
【0054】
寸法公差の範囲114、及び図形113A及び113Bは、ハッチングではなく、例えば、紙111とは異なる色によるベタ塗りで示されていてもよい。
【0055】
寸法検査用スケール110を使用した寸法検査方法では、寸法検査用スケール110に設定した基準部位を基準として、基準図112と、工作機械用シール部材の被検査物との重ね合わせを行う。
上記基準部位の設定では、基準図112における工作機械用シール部材130の外形線のうち左上の角を基準点BPに設定し、上側の辺を第1基準線BL1に設定する。更に紙111のおもて面内にあり、基準点BPを通り第1基準線BL1に垂直な線を第2基準線BL2に設定する。本実施形態では、基準図112の左側の辺が第2基準線BL2と一致する。
このように設定した基準部位(基準点BP、第1基準線BL1及び第1基準線BL2)は、後述する寸法検査方法において、重ね合わせ時の基準となる。
本実施形態において、基準図112の外形線の左上の角を基準点BPに設定している理由は、検査対象製品である工作機械用シール部材130の設計図面(図示せず)において、この部位が基準点とされているからである。これにより、設計図面通りの寸法検査が可能となる。
【0056】
上述の寸法公差の範囲114は、基準点BPを含む第2基準線BL2を基準にして設定されている。
図形113A及び113Bは、113Aの長円形より113Bの長円形の方が長手方向の長さが長くなるように描画されている。これは、第2基準線BL2を基準として図形113A及び113Bに含まれる寸法公差が設定されているからである。
【0057】
<寸法検査方法>
本実施形態でも、第1実施形態と同様、寸法検査用スケール110とL字形状の検査用治具とを用いて、寸法検査を行う。なお、上記検査用治具において、2本の四角柱部材のなす角度は、図7に示した基準図112の上辺と左辺とのなす角度より大きくてもよい。
まず、第1基準線BL1及び基準点BPを基準にして寸法検査用スケール110のおもて面の所定の位置に、上記検査用治具を載置する。
【0058】
次に、上記工作機械用シール部材の被検査物を寸法検査用スケール110のおもて面に載置し、上記工作機械用シール部材の被検査物の上側の縁部と左側の縁部とを上記検査用治具に接触させて、上記工作機械用シール部材の被検査物を寸法検査用スケール110に描画された基準図112に重ね合わせる。
ここでは、上記工作機械用シール部材の被検査物の背面側(完成品における工作機械への取付け面側)が、寸法検査用スケール110のおもて面と対向するように、当該工作機械用シール部材の被検査物を載置する。
【0059】
その後、検査実施者の視認により、上記工作機械用シール部材の被検査物を支持部材141側から弾性部材131側に向かう方向に視た形状と、寸法検査用スケール110に描画された工作機械用シール部材130の設計品の形状(基準図112)とを比較し、第1実施形態と同様にして、上記工作機械用シール部材の被検査物の評価対象寸法が工作機械用シール部材130の規格値に合致しているか否かを判断する。
本実施形態の寸法検査方法でも、少なくとも2つの評価対象寸法を同時に評価している。
【0060】
本実施形態では、基準点BPを通る第2基準線BL2を基準に、長手方向(図7中、左右方向)の寸法を検査している。
本実施形態で検査される工作機械用シール部材の被検査物は、より精度良く寸法検査を行うことができる観点から、短手方向(図7中、上下方向)の寸法、及び、上側の縁部と長手方向両端の縁部との角度(両者が直角であること)、の検査が既に行われ、当該検査に合格した工作機械用シール部材であることが好ましい。
【0061】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、1枚の寸法検査用スケールに一方向から視た検査対象製品の基準図が1つだけ記載されていたが、本発明の実施形態では、1枚の寸法検査用スケールに複数の基準図が描画されていてもよい。
例えば、1台の工作機械に工作機械用シール部材を取りつける場合、複数の工作機械用シール部材を組み合わせたものを1台の工作機械に取り付けることがある。この場合には、1台の工作機械に取り付ける複数の工作機械用シール部材の全ての基準図が1枚の寸法検査用スケールに描画されていてもよい。
また、1枚の寸法検査用スケールに複数の基準図が描画されている場合、各基準図は全て同一の方向から視た図であってもよいし、1枚の寸法検査用スケールに異なる方向から視た基準図が混在していてもよい。
【0062】
上述した実施形態の寸法検査用スケールにおいて、検査対象製品の基準図は紙に描画されているが、本発明の実施形態に係る寸法検査用スケールおいて、上記基準図が描画される部材は紙に限定されず、例えば、樹脂シートや樹脂板、木製又は金属製の板等のシート状又は板状の部材であってもよい。これらのなかでは、安価で大量生産に向いている点で、紙が好ましい。
【0063】
上述した実施形態の寸法検査用スケールでは、検査対象製品の基準図と被検査物とを重ね合わせるための基準部位が、検査対象製品の設計図面の基準点と同じ位置を含むように設定されているが、上記基準部位は必ずしも設計図面の基準点と同じ位置を含むように設定されていなくてもよく、測定対象製品に応じて適宜設定すればよい。
【0064】
上述した実施形態では、工作機械用シール部材の長手方向(図4図7のY方向)の寸法検査を行っているが、本発明の実施形態では、併せて工作機械用シール部材の短手方向(図4図7のX方向)の寸法検査を行ってもよい。また、工作機械用シール部材の短手方向の寸法検査は、本発明の実施形態に係る寸法検査方法を用いて別工程で行ってもよい。
この場合、一方向から視た工作機械用シール部材が製品寸法で描画された基準図には、工作機械用シール部材における短手方向の長さの寸法公差の範囲がハッチング等で示されていてもよい。
【0065】
本発明の実施形態で検査対象となる工作機械用シール部材は、上述した構成の工作機械用シール部材に限定されるわけではなく、リップシール、スライドシール、テレスコシール、カバーシール等の公知の工作機械用シール部材を検査対象とすることができる。
上記工作機械用シール部材の具体例としては、例えば、上述した特許文献1~6に例示された工作機械用シール部材が例示できる。
上記検査対象製品は、工作機械用シール部材以外の製品であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10、110 寸法検査用スケール
11、111 紙
12、112 基準図
13A、13B、13C 取付け孔36に対応する図形
14、114 寸法公差
30、130 工作機械用シール部材
30′ 工作機械用シール部材の被検査物
31、131 弾性部材
32、132 固定部
33、133 リップ部
34、134 エッジ部
36、136 取付け孔
37、38、137 接着剤層
41、141 支持部材
42 支持部
43 保護部
51 湾曲補助部材
52 平板部
53 補助部
60 工作機械
65 取付け部
66 ボルト
67 ナット
BL1 第1基準線
BL2 第2基準線
BP 基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7