(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084243
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】生地及び布製品
(51)【国際特許分類】
D03D 15/20 20210101AFI20220531BHJP
D03D 15/56 20210101ALI20220531BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20220531BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20220531BHJP
D01F 1/04 20060101ALI20220531BHJP
D01F 1/08 20060101ALI20220531BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20220531BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20220531BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220531BHJP
【FI】
D03D15/00 A
D03D15/00 E
D03D15/08
D04B1/16
D04B21/16
D01F1/04
D01F1/08
D01F6/92 303B
A41D31/06 100
A41D31/00 503B
A41D31/00 503G
A41D31/00 503K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195978
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】399042890
【氏名又は名称】皿海衣料株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519144107
【氏名又は名称】聯潤翔(青島)紡績科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】松井 善孝
(72)【発明者】
【氏名】安本 司
(72)【発明者】
【氏名】ゴ ダイイ
【テーマコード(参考)】
4L002
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA01
4L002AA02
4L002AA03
4L002AA04
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB01
4L002AB02
4L002AC00
4L002AC01
4L002AC07
4L002BA00
4L002BB02
4L002CA00
4L002EA00
4L002FA01
4L035AA05
4L035BB31
4L035EE07
4L035EE20
4L035JJ05
4L035JJ08
4L035JJ10
4L048AA06
4L048AA08
4L048AA09
4L048AA11
4L048AA12
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA26
4L048AA42
4L048AA51
4L048AA56
4L048AB07
4L048AC00
4L048AC12
4L048BA01
4L048BA02
4L048CA00
4L048CA04
4L048DA01
(57)【要約】
【課題】生地の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地に持たせる。
【解決手段】機能性糸は、赤外線吸収材及び紫外線反射材として機能する顔料を含有する中空状の合成樹脂製フィラメントを含む。生地は、普通糸と機能性糸とから構成され、一方の面において普通糸が露出する面積が機能性糸が露出する面積以上になっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通糸と、
赤外線吸収材及び紫外線反射材として機能する顔料を含有する中空状の合成樹脂製フィラメントを含む機能性糸と
から構成され、
一方の面において前記普通糸が露出する面積が前記機能性糸が露出する面積以上である
生地。
【請求項2】
前記合成樹脂製フィラメントは、灰色顔料を含有する
請求項1に記載の生地。
【請求項3】
織物又は編物である
請求項1又は2に記載の生地。
【請求項4】
緯糸及び経糸のうちの一方として、前記普通糸及び前記機能性糸のうちの一方が使用され、緯糸及び経糸のうちの他方として、前記普通糸及び前記機能性糸のうちの他方が使用された織物である
請求項3に記載の生地。
【請求項5】
前記普通糸及び前記機能性糸を用いたプレーティング又は引き揃えにより編成された編物である
請求項3に記載の生地。
【請求項6】
前記普通糸は、綿、毛、麻、及び、絹のうちの1種以上の天然繊維を含む
請求項1ないし5のいずれかに記載の生地。
【請求項7】
前記機能性糸は、ナイロン、ポリエステル、及び、ポリウレタンのうちの1種以上の合成樹脂材料を含む
請求項1ないし6のいずれかに記載の生地。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の生地で構成された布製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地及び布製品に関し、特に、例えば、生地の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地に持たせることができるようにする生地及び布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、使用したときに涼しく感じる機能性を布帛に持たせながらも、布帛の外観が機能性によって損なわれることを防止することができる涼感織布を先に提案している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
涼感織布によれば、夏季等の温度が高い環境において涼しく感じることができる。
【0005】
一方、冬季等の温度が低い環境において温かく感じる生地の開発が要請されている。
【0006】
また、温度が低い環境でも、紫外線が存在するため、紫外線を十分に遮蔽する機能性を有する生地の開発が要請されている。
【0007】
さらに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地に持たせた場合にも、生地の外観を損ねないようにする必要がある。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、生地の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地に持たせることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生地は、普通糸と、赤外線吸収材及び紫外線反射材として機能する顔料を含有する中空状の合成樹脂製フィラメントを含む機能性糸とから構成され、一方の面において前記普通糸が露出する面積が前記機能性糸が露出する面積以上である生地である。
【0010】
本発明の布製品は、本発明の生地で構成された布製品である。
【0011】
本発明の生地及び布製品においては、機能性糸が、赤外線吸収材及び紫外線反射材として機能する顔料を含有する中空状の合成樹脂製フィラメントを含んでおり、一方の面において前記普通糸が露出する面積が前記機能性糸が露出する面積以上になっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生地の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地に持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した生地の第1実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
【
図2】本発明を適用した生地の第1実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【
図3】本発明を適用した生地の第2実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
【
図4】本発明を適用した生地の第2実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【
図5】本発明を適用した生地の第3実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
【
図6】本発明を適用した生地の第3実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【
図7】本発明を適用した生地の第4実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
【
図8】本発明を適用した生地の第4実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【
図9】本発明を適用した生地の第5実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
【
図10】本発明を適用した生地の第5実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【
図11】本発明を適用した生地の第6実施の形態の組織を示す図である。
【
図12】本発明を適用した生地の第7実施の形態の組織を示す図である。
【
図13】本発明を適用した生地の第8実施の形態の組織を示す図である。
【
図14】本発明を適用した生地の第9実施の形態の組織を示す図である。
【
図15】本発明を適用した生地の第10実施の形態の組織を示す図である。
【
図16】本発明を適用した生地の第11実施の形態の組織を示す図である。
【
図17】本発明を適用した生地の第12実施の形態の組織を示す図である。
【
図18】本発明を適用した生地の第13実施の形態の組織を示す図である。
【
図19】本発明を適用した生地の第14実施の形態の組織を示す図である。
【
図20】生地の蓄熱性を評価する試験装置の構成例を示す図である。
【
図21】生地の蓄熱性を評価する試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明を適用した生地の第1実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
図2は、本発明を適用した生地の第1実施の形態の他方の面の組織を示す平面図(底面図)である。
【0016】
第1実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される織布である。
【0017】
織布である生地10において、普通糸11は、経糸として使用され、機能性糸12は、緯糸として使用されている。但し、普通糸11を、緯糸として使用し、機能性糸12を、経糸として使用することもできる。
【0018】
図1及び
図2において、普通糸11は、斜線を付して示してあり、機能性糸12は、黒色を付して示してある。以降の図でも同様である。
【0019】
生地10では、一方の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になっており、これにより、生地10の外観を損なわないようになっている。
【0020】
第1実施の形態では、生地10は、綾織の1種である3/1綾織で織成されている。これにより、生地10の一方の面においては、
図1に示すように、普通糸11の露出率は75%になっており、機能性糸12の露出率は25%になっている。また、生地10の他方の面においては、
図2に示すように、普通糸11の露出率は25%になっており、機能性糸12の露出率は75%になっている。
【0021】
普通糸11の露出率は、式(1)にしたがって求めることができる。
【0022】
普通糸の露出率(%)=普通糸の露出面積/(普通糸の露出面積+機能性糸の露出面積)×100(%)
・・・(1)
【0023】
機能性糸12の露出率も同様に求めることができる。
【0024】
織布である生地10について、一方の面において普通糸11が露出する面積を、機能性糸12が露出する面積以上にする方法としては、経糸及び緯糸のうちの一方として、普通糸11及び機能性糸12のうちの一方を使用するとともに、経糸及び緯糸のうちの他方として、普通糸11及び機能性糸12のうちの他方を使用した場合に、一方の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になる織り方(組織)を採用する方法がある。
【0025】
この場合、織り方によって、生地10の一方の面における普通糸11及び機能性糸12の露出率を調整することができる。
【0026】
また、経糸及び緯糸のうちの一方として、普通糸11及び機能性糸12の両方を、所定の割合で混合して使用するとともに、経糸及び緯糸のうちの他方として、普通糸11のみを使用して、一方の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になるようにする方法がある。
【0027】
さらに、経糸及び緯糸それぞれとして、普通糸11及び機能性糸12の両方を、所定の割合で混合して使用して、一方の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になるようにする方法がある。
【0028】
経糸及び緯糸のうちの一方、又は、それぞれとして、普通糸11及び機能性糸12の両方を、所定の割合で混合して使用する場合、普通糸11及び機能性糸12を混合する割合や、織り方によって、生地10の一方の面における普通糸11及び機能性糸12の露出率を調整することができる。
【0029】
その他、生地10の一方の面における普通糸11及び機能性糸12の露出率は、普通糸11及び機能性糸12それぞれの太さによって調整することができる。なお、以下では、特に断らない限り、普通糸11及び機能性糸12の太さは同一であるとする。
【0030】
図1及び
図2、さらには、後述する
図3ないし
図10に示す生地10は、一方の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になる織り方で織成された織布になっている。
【0031】
図3は、本発明を適用した生地の第2実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
図4は、本発明を適用した生地の第2実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【0032】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0033】
第2実施の形態では、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される織布であり、綾織の他の1種である3/1破れ斜文織で織成される。これにより、生地10の一方の面においては、
図3に示すように、普通糸11の露出率は75%になっており、機能性糸12の露出率は25%になっている。また、生地10の他方の面においては、
図4に示すように、普通糸11の露出率は25%になっており、機能性糸12の露出率は75%になっている。
【0034】
図5は、本発明を適用した生地の第3実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
図6は、本発明を適用した生地の第3実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【0035】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0036】
第3実施の形態では、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される織布であり、綾織のさらに他の1種である2/1綾織で織成される。これにより、生地10の一方の面においては、
図5に示すように、普通糸11の露出率は62.5%になっており、機能性糸12の露出率は37.5%になっている。また、生地10の他方の面においては、
図6に示すように、普通糸11の露出率は37.5%になっており、機能性糸12の露出率は62.5%になっている。
【0037】
図7は、本発明を適用した生地の第4実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
図8は、本発明を適用した生地の第4実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【0038】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0039】
第4実施の形態では、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される織布であり、朱子織の一種である5枚朱子織で織成される。これにより、生地10の一方の面においては、
図7に示すように、普通糸11の露出率は80%になっており、機能性糸12の露出率は20%になっている。また、生地10の他方の面においては、
図8に示すように、普通糸11の露出率は20%になっており、機能性糸12の露出率は80%になっている。
【0040】
図9は、本発明を適用した生地の第5実施の形態の一方の面の組織を示す平面図である。
図10は、本発明を適用した生地の第5実施の形態の他方の面の組織を示す平面図である。
【0041】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0042】
第5実施の形態では、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される織布であり、朱子織の他の一種である8枚朱子織で織成される。これにより、生地10の一方の面においては、
図9に示すように、普通糸11の露出率は87.5%になっており、機能性糸12の露出率は12.5%になっている。また、生地10の他方の面においては、
図10に示すように、普通糸11の露出率は12.5%になっており、機能性糸12の露出率は87.5%になっている。
【0043】
以上、織布である生地10の織り方として、綾織及び朱子織を説明したが、生地10の織り方としては、その他の織り方、例えば、平織等を採用することができる。
【0044】
生地10を構成する機能性糸12としては、赤外線吸収材と紫外線反射材とを含有する中空状の合成樹脂製フィラメントを含む糸を採用することができる。
【0045】
機能性糸12は、赤外線吸収材と紫外線反射材とを含有する中空状の1つ又は複数の合成樹脂製フィラメントのみで構成することもできるし、1つ又は複数の合成樹脂製フィラメントと、任意の普通糸とを混成して構成することもできる。
【0046】
機能性糸12を構成する合成樹脂製フィラメントは、合成樹脂材料を中空状にしたモノフィラメントであってもよいし、複数本の中空状の合成樹脂製フィラメントを撚った撚糸であるマルチフィラメントであってもよい。
【0047】
機能性糸12を構成する合成樹脂製フィラメントは、ナイロン、ポリエステル、及び、ポリウレタンのうちの1種以上の合成樹脂材料を含むように構成することができる。
【0048】
例えば、ポリウレタンは、伸縮性に優れるので、ポリウレタン糸を芯材として使用し、そのポリウレタン糸にナイロン糸やポリエステル糸を巻き付けて、機能性糸12を構成することで、機能性糸12に伸縮性を持たせることができる。また、ナイロン、ポリエステル、及び、ポリウレタンによれば、蓄熱性を向上させることができる。
【0049】
機能性糸12が複数の糸で構成される場合、その複数の糸については、少なくとも1つの糸が中空状であればよい。また、機能性糸12を構成する複数の糸それぞれは、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。
【0050】
機能性糸12を構成する合成樹脂製フィラメントに含有させる赤外線吸収材及び紫外線反射材としては、別個の物質を採用することもできるし、赤外線吸収材及び紫外線反射材の両方として機能する1つの物質、例えば、顔料(の粉末)を採用することもできる。
【0051】
赤外線吸収材及び紫外線反射材の両方として機能する顔料を、合成樹脂製フィラメントに含有させること場合には、赤外線吸収材及び紫外線反射材としてそれぞれ機能する別個の物質を含有させる場合よりも、機能性糸12の製造を容易化することができる。
【0052】
赤外線吸収材及び紫外線反射材の両方として機能する顔料としては、例えば、灰色顔料を採用することができる。
【0053】
なお、現時点では確認されていないが、赤外線吸収材及び紫外線反射材の両方として機能する白色顔料が発見された場合には、機能性糸12を構成する合成樹脂製フィラメントに含有させる赤外線吸収材及び紫外線反射材としての顔料には、白色顔料を採用することができる。白色顔料を採用することにより、色染めを容易に行うことができる。
【0054】
灰色顔料(の粉末)としては、例えば、金属酸化物、鉱物、及び無機物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の粉末を採用することができる。金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられる。鉱物としては、例えば、灰色雲母が挙げられる。無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが挙げられる。
【0055】
赤外線吸収材及び紫外線反射材の両方として機能する灰色顔料の粉末は、例えば、合成樹脂製フィラメントに付着させることや練り込むことで、合成樹脂製フィラメントに含有させることができる。
【0056】
赤外線吸収材及び紫外線反射材の両方として機能する灰色顔料を含有する合成樹脂製フィラメントを含む機能性糸12を用いて、生地10を構成することにより、生地10において吸収される赤外線の量を増加させるとともに、紫外線を遮蔽することができる。
【0057】
さらに、機能性糸12に含まれる合成樹脂製フィラメントは中空状になっており、蓄熱効果を備えるため、生地10の一方の面が冷気等によって冷却されても、生地10の他方の面の温度が降下することを抑制することができる。
【0058】
以上から、生地10においては、他方の面に温感を持たせるとともに、紫外線を十分に遮蔽することができる。
【0059】
生地10を構成する普通糸11としては、機能及び構成が特に限定されない任意の糸を採用することができる。したがって、普通糸11は、任意の染料や顔料を使用して任意の色彩に容易に着色することが可能である。
【0060】
以上のように、普通糸11は、任意の糸を採用し、任意の色彩に着色することができるので、そのような普通糸11から、生地10を構成することによって、任意の風合いや感触を生地10に付与することができる。
【0061】
例えば、普通糸11としては、綿、毛、麻、及び、絹からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の天然繊維を使用することができる。普通糸11として天然繊維を使用することにより、外観は天然繊維であるように見える生地10を構成することができる。
【0062】
生地10は、以上のような普通糸11と機能性糸12とから構成され、一方の面において普通糸11が露出する面積が機能性糸12が露出する面積以上であるので、生地10の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地10に持たせることができる。
【0063】
すなわち、生地10の外観を機能性糸12によって損なわずに、外観や質感を、天然繊維で構成した生地と同様にして、温感を感じさせ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能を機能性糸12によって生地10に付与することができる。
【0064】
したがって、生地10の一方の面が製品の表側になるような布使いをすることによって、外観は普通の生地に見えるものの、温感を感じさせ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能を備えた生地を提供することができる。
【0065】
そして、生地10を使用して布製品を縫製することで、外観を所望のデザインとしながら、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する布製品を提供することができる。
【0066】
例えば、生地10を使用して衣服を縫製する場合は、生地10の一方の面が衣服の表側になり、生地10の他方の面が衣服の裏側になるように、衣服を縫製することができる。この場合、外観は普通糸11を使用した衣服でありながら、温感を感じさせ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能を備えた布製品を提供することができる。
【0067】
なお、
図1ないし
図10では、織布である生地10について、普通糸11を、経糸として使用し、機能性糸12を、緯糸として使用したが、
図1及び
図2で説明したように、普通糸11を、緯糸として使用し、機能性糸12を、経糸として使用することもできる。
【0068】
普通糸11を、緯糸として使用し、機能性糸12を、経糸として使用する場合、普通糸11及び機能性糸12の露出率が、上述の場合と入れ替わる。
【0069】
したがって、普通糸11を、経糸として使用し、機能性糸12を、緯糸として使用する場合に、生地10の表側において、普通糸11が露出する面積が機能性糸12が露出する面積以上であれば、普通糸11を、緯糸として使用し、機能性糸12を、経糸として使用する場合には、生地10の裏側において、普通糸11が露出する面積が機能性糸12が露出する面積以上になる。
【0070】
また、生地10については、一方の面において普通糸11が露出する面積が機能性糸12が露出する面積以上となるようにする他、一方の面において普通糸11が露出する面積を、機能性糸12が露出する面積よりも大きくすることができる。この場合、機能性糸12によって生地10の外観が損なわれることをより防止することができる。
【0071】
さらに、生地10は、織布(織物)で構成する他、編物で構成することができる。
【0072】
普通糸11及び機能性糸12で構成される生地10としての編物を編成する(編む)編み方としては、複数の糸を用いて編成するプレーティングや引き揃えを採用することができる。
【0073】
図11は、本発明を適用した生地の第6実施の形態の組織を示す図である。
【0074】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0075】
第6実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0076】
第6実施の形態において、編物である生地10は、普通糸11を、地糸(表糸)として使用するとともに、機能性糸12を、添え糸(裏糸)として使用し、地糸と添え糸とを、生地10(の平面)の奥行き方向に並ぶように揃えて編むプレーティングにより編成される。
【0077】
プレーティングによれば、生地10の一方の面としての表側の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になる。すなわち、プレーティングによれば、生地10の表側のほぼ全面に、地糸としての普通糸11が露出し、生地10の裏側のほぼ全面に、添え糸としての機能性糸12が露出する。
【0078】
したがって、生地10の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地10に持たせることができる。
【0079】
図12は、本発明を適用した生地の第7実施の形態の組織を示す図である。
【0080】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0081】
第7実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0082】
第7実施の形態において、編物である生地10は、普通糸11と機能性糸12とを、生地10の平面方向に並ぶように揃えて編む引き揃えにより編成される。
【0083】
引き揃えによれば、例えば、普通糸11として、機能性糸12の太さ以上の太さの糸を使用することで、生地10の一方の面において普通糸11が露出する面積が、機能性糸12が露出する面積以上になる。
【0084】
したがって、生地10の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地10に持たせることができる。
【0085】
なお、引き揃えにおいて、生地10の一方の面に露出する普通糸11及び機能性糸12の面積は、編物を編成する編み機において、普通糸11及び機能性糸12それぞれの給糸を行う糸口の数を設定することにより調整することができる。例えば、普通糸11の糸口の数を、機能性糸12の糸口の数よりも多くすることで、一方の面において普通糸11が露出する面積を、機能性糸12が露出する面積よりも大きくすることができる。
【0086】
プレーティング及び引き揃えは、任意の編地で行うことができる。
【0087】
編物の編地には、横方向に編み目(ループ)を作っていく緯編と、縦方向に編み目を作っていく経編とがある。緯編には、例えば、平編(天竺編)や、ゴム編み(リブ編)、パール編(ガーター編)、両面編(スムース編)等がある。経編には、例えば、デンビー編(シングルゴッド編)や、コード編、アトラス編等がある。
【0088】
普通糸11と機能性糸12とから構成され、一方の面において普通糸11が露出する面積が機能性糸12が露出する面積以上になる編物である生地10は、2本(以上)の糸を揃えて編むプレーティングや引き揃えを適用しなくても編成することができる。
【0089】
すなわち、一方の面において普通糸11が露出する面積が機能性糸12が露出する面積以上になる編物である生地10は、1本の糸で編成される編地でも構成することができる。
【0090】
例えば、緯編において横方向に作られる編み目を構成する糸として、普通糸11又は機能性糸12を、行単位で選択して使用することにより、生地10を編成することができる。
【0091】
また、経編において縦方向に作られる編み目を構成する糸として、普通糸11又は機能性糸12を、列単位で選択して使用することにより、生地10を編成することができる。
【0092】
図13は、本発明を適用した生地の第8実施の形態の組織を示す図である。
【0093】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0094】
第8実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0095】
第8実施の形態において、編物である生地10は、平編により編成される。平編において横方向に作られる編み目を構成する糸としては、普通糸11又は機能性糸12が、行単位で選択されて使用される。
【0096】
図13のAは、平編により編成された生地10の一方の面を表し、
図13のBは、他方の面を表す。
【0097】
図14は、本発明を適用した生地の第9実施の形態の組織を示す図である。
【0098】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0099】
第9実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0100】
第9実施の形態において、編物である生地10は、ゴム編により編成される。ゴム編において横方向に作られる編み目を構成する糸としては、普通糸11又は機能性糸12が、行単位で選択されて使用される。
【0101】
図15は、本発明を適用した生地の第10実施の形態の組織を示す図である。
【0102】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0103】
第10実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0104】
第10実施の形態において、編物である生地10は、パール編により編成される。パール編において横方向に作られる編み目を構成する糸としては、普通糸11又は機能性糸12が、行単位で選択されて使用される。
【0105】
図16は、本発明を適用した生地の第11実施の形態の組織を示す図である。
【0106】
なお、図中、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0107】
第11実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0108】
第11実施の形態において、編物である生地10は、両面編により編成される。両面編において、表側及び裏側それぞれの横方向に作られる編み目を構成する糸としては、普通糸11又は機能性糸12が、行単位で選択されて使用される。
【0109】
例えば、
図13ないし
図16に示した平編、ゴム編み、パール編、及び、両面編等の緯編の生地10については、横方向に作られる編み目を構成する糸として、普通糸11及び機能性糸12それぞれを使用する行の割合によって、生地10の一方の面における普通糸11及び機能性糸12の露出率を調整することができる。例えば、普通糸11を使用する行の割合を5割以上とすることにより、普通糸11が露出する面積を、機能性糸12が露出する面積以上にすることができる。
【0110】
図17は、本発明を適用した生地の第12実施の形態の組織を示す図である。
図18は、本発明を適用した生地の第13実施の形態の組織を示す図である。
図19は、本発明を適用した生地の第14実施の形態の組織を示す図である。
【0111】
なお、
図17ないし
図19において、
図1及び
図2の場合と対応する部分については、同一の符号を付してある。
【0112】
第12実施の形態ないし第14実施の形態において、生地10は、普通糸11と機能性糸12とから構成される編物である。
【0113】
第12実施の形態ないし第14実施の形態において、編物である生地10は、デンビー編、コード編、及び、アトラス編それぞれにより編成される。デンビー編、コード編、及び、アトラス編において縦方向に作られる編み目を構成する糸としては、普通糸11又は機能性糸12が、列単位で選択されて使用される。
【0114】
例えば、
図17ないし
図19に示したデンビー編、コード編、及び、アトラス編等の経編の生地10については、縦方向に作られる編み目を構成する糸として、普通糸11及び機能性糸12それぞれを使用する列の割合によって、生地10の一方の面における普通糸11及び機能性糸12の露出率を調整することができる。例えば、普通糸11を使用する列の割合を5割以上とすることにより、普通糸11が露出する面積を、機能性糸12が露出する面積以上にすることができる。
【0115】
なお、編物である生地10については、例えば、
図13ないし
図19に示した編地の機能性糸12に代えて、普通糸11と機能性糸12とを混成した糸を用いることができる。この場合、普通糸11と機能性糸12とを混成する割合によって、生地10の一方の面における普通糸11及び機能性糸12の露出率を調整することができる。
【0116】
以上のような編物である生地10についても、普通糸11と機能性糸12とから構成し、(少なくとも)一方の面において普通糸11が露出する面積を機能性糸12が露出する面積以上にすることで、生地10の外観を損なわずに、温かく感じ、かつ、紫外線を十分に遮蔽する機能性を生地10に持たせることができる。
【0117】
次に、生地10について行った試験について説明する。
【0118】
試験では、中空形状の断面に対応する口金を備える押出機を利用して、ポリエステルを溶融紡糸し、複数の中空形状のモノフィラメントが撚り合されてなるマルチフィラメントを、機能性糸12として製造した。機能性糸12の製造において、ポリエステルを溶融し、混錬する際に、灰色顔料としてのセラミックスの粉末を添加することで、フィラメントに、灰色顔料を含有させた。
【0119】
試験では、普通糸11として、綿糸を採用し、普通糸11を地糸として使用するとともに、機能性糸12を添え糸として使用することで、表側に普通糸11が露出し、裏側に機能性糸12が露出するように編み分けるプレーティングを適用した平編により、天竺生地を、生地10として編成した。
【0120】
生地10としての天竺生地の外観としては、通常の天竺生地、例えば、機能性糸12に代えて通常のポリエステル糸を採用し、その通常のポリエステル糸と普通糸11とにより、生地10と同様に編成した天竺生地と同様の外観が観察された。
【0121】
図20は、生地の蓄熱性を評価する試験装置の構成例を示す図である。
【0122】
試験装置101は、光源111、受熱体112及び113、並びに、サーモカメラ114で構成され、JIS L 1926の繊維製品の光吸収発熱性評価方法による試験を行う試験装置である。
【0123】
試験装置101では、光源111が、人工太陽光を発し、その人工太陽光は、光源111の下部に設置された受熱体112及び113に照射される。
【0124】
受熱体112及び113のうちの一方、例えば、受熱体113には、蓄熱性を評価する試料が装着される。
【0125】
試験では、試料として、生地10としての天竺生地と、通常の天竺生地とをそれぞれ用い、試料の裏面を受熱体113に接触させる形で、試料が受熱体113に装着される。したがって、受熱体113では、試料が人工太陽光を吸収して発した熱が吸収される。
【0126】
試験では、人工太陽光が30分間照射された後の、何も装着されていない裸の受熱体112と、試料が装着された受熱体113とのそれぞれの上昇温度が、サーモカメラ114によって測定される。
【0127】
そして、裸の受熱体112の平均の上昇温度ΔT1と、試料が装着された受熱体113の平均の上昇温度ΔT2とを用いて、試料の光吸収発熱温度差ΔTが、式ΔT=ΔT2-ΔT1にしたがって算出される。
【0128】
図21は、生地の蓄熱性を評価する試験の試験結果を示す図である。
【0129】
生地10としての天竺生地の光吸収発熱温度差ΔTは、15.2度であり、通常の天竺生地の光吸収発熱温度差ΔTは、11.4度であった。したがって、生地10としての天竺生地と、通常の天竺生地との光吸収発熱温度差ΔTの差は3.8度であり、生地10としての天竺生地では、通常の天竺生地よりも、裏側の温度が上昇しやすいことを確認することができる。
【0130】
生地10としての天竺生地について、紫外線遮蔽率を測定する試験を行った。紫外線遮蔽率を測定する試験では、JIS L 1925に従い、波長290~400nmの紫外線が生地を透過する透過率が分光光度計で測定され、式(2)に従って、紫外線遮蔽率が求められる。
【0131】
紫外線遮蔽率(%) = 100 - 紫外線の平均透過率(%)
・・・(2)
【0132】
生地10としての天竺生地の赤外線の(平均)透過率は、0.2%であり、紫外線遮蔽率は、99.8%であった。綿100%の生地の赤外線遮蔽率は、98.9%であった。したがって、生地10としての天竺生地では、紫外線を十分に遮蔽することを確認することができる。
【0133】
生地10としての天竺生地について、官能試験を行った。官能試験は、生地10としての天竺生地を使用して、ロングスリーブシャツを作製し、このロングスリーブシャツを着用することで行った。
【0134】
生地10としての天竺生地を使用したロングスリーブシャツに袖を通すと、温かく感じ、接触温感機能があることが確認された。また、生地10としての天竺生地を使用したロングスリーブシャツを着用して、日光の当たる場所に移動したところ、通常の天竺生地を使用した天竺シャツに比較して、明らかに温かく感じた。
【0135】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0136】
例えば、生地10は、織物又は編物により構成する他、織物及び編物以外の生地、例えば、不織布により構成することができる。
【0137】
また、生地10は、シャツの他、例えば、パンツ、作業着、カジュアル衣服等の衣服の生地、シーツや枕カバー等の寝具の生地、リストバンド等の装飾品の生地、サポーター等の支持具の生地等の、温感が求められる布製品の生地に使用することができる。
【符号の説明】
【0138】
10 生地, 11 普通糸, 12 機能性糸, 101 試験装置, 111 光源, 112,113 受熱体, 114 サーモカメラ