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特開2022-8425アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の食事制御された発現
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008425
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の食事制御された発現
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220105BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220105BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N7/01
C12N5/10
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/16
A61P35/00
A61K31/7088
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151399
(22)【出願日】2021-09-16
(62)【分割の表示】P 2019237502の分割
【原出願日】2017-06-02
(31)【優先権主張番号】62/345,162
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517449453
【氏名又は名称】アンスティテュート ナショナル ド ルシェルシュ プール ラグリキュルテュール,ラリマンタシォン エ ランヴィロンヌマン
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ファフォーノー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個体におけるアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸を提供する。
【解決手段】ミニマルプロモーターと少なくとも1つのAARE(アミノ酸応答要素)核酸とを含む調節ポリヌクレオチド、ここで、上記調節ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事の摂取に応じて個体において活性化される、及び上記調節ポリヌクレオチドの制御下に置かれる、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸、を含む、核酸を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸であって、
ミニマルプロモーターと少なくとも1つのAARE(アミノ酸応答要素)核酸とを含む調節ポリヌクレオチド、ここで、上記調節ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事の摂取に応じて個体において活性化される、及び
上記調節ポリヌクレオチドの制御下に置かれる、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸、
を含む、上記核酸。
【請求項2】
上記アミノ酸応答要素(AARE)核酸が、配列SEQ ID No:1、SEQ ID No:2、SEQ ID No:3、SEQ ID No:4及びSEQ ID No:5の核酸を含む群において選択される、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
上記調節ポリヌクレオチドが少なくとも2つのAARE核酸を含む、請求項1又は2に記載の核酸。
【請求項4】
上記アポトーシス促進タンパク質がTRAILである、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項5】
アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸ベクターであって、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸を含む、上記核酸ベクター。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸又は請求項5に記載の核酸ベクターを含む送達粒子。
【請求項7】
標的とされた細胞の膜において暴露された標的受容体への結合の為に適した1以上のリガンドをその表面に含む、請求項6に記載の送達粒子。
【請求項8】
(i)請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸、又は請求項5に記載の核酸ベクター、又は請求項6若しくは7に記載の送達粒子と、(ii)医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸又は請求項5に記載の核酸ベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
医薬品としての使用の為の、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項11】
アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の活性剤としての使用の為の、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項12】
上記標的細胞が腫瘍細胞である、請求項11に記載の使用の為の核酸。
【請求項13】
腫瘍を処置及び/又は阻止する為の活性剤としての使用の為の、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項14】
アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の方法であって、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸又は請求項5に記載の核酸ベクターをそれを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法。
【請求項15】
腫瘍を処置及び/又は阻止する為の方法であって、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸又は請求項5に記載の核酸ベクターをそれを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法。
【請求項16】
腫瘍を処置及び/又は阻止する為のキットであって、
請求項8に記載の医薬組成物、及び
抗腫瘍化合物
を含む、上記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体におけるアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸に関する。
【0002】
特に、核酸の発現は、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事の消費時に制御されうる。
【背景技術】
【0003】
最近、遺伝子導入ベクターにおける技術的改善及び適切な遺伝子送達システムの開発は、遺伝子治療における実質的な臨床的成功がもたらされている。しかしながら、遺伝子治療が広範な疾患群に対して広く受け入れられた処置法になる前に、幾つかの障壁が克服されなければならない。利用可能なベクター系に関する安全性(例えば、遺伝毒性、免疫応答)の懸念に加えて、主な制限は、信頼のある、非常に特異的な、単純な且つ安全な様式で導入遺伝子の発現を外因的に調節することが現在できないことである。1つの戦略は、用量依存的な方法で、例えば経口的に利用可能な良好な耐容性の誘導物質によって、遺伝子発現を調節することであろう。さらに、遺伝子発現の誘導及び抑制の両方が可逆的であるべきである。
【0004】
有害事象の場合に、注入された細胞を迅速に取り除くことが可能であれば、科学界は、細胞療法が癌処置及び再生医療において役割を果たす可能性があるという事実に同意する。より具体的には、十分に確保された 分子スイッチが、多くの種類の癌の治療法を提供するという大きな期待を満たすために、養子キメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)T細胞に基づく処置の為に緊急に必要とされるであろう。そのようなスイッチはまた、幹細胞に基づく、特に造血幹細胞に基づく、及びiPS細胞に基づく治療法の可能性を確保し且つ再生医療の分野を促進する為に非常に貴重であるだろう。
【0005】
養子T細胞治療は最初に、ワクチン接種単独によって得られることができるものよりも多い数のT細胞を達成する為の腫瘍特異的T細胞の単離及びエクス・ビボ増殖を含む。次に、腫瘍特異的T細胞は、腫瘍特異的抗原のT細胞認識及び癌細胞破壊を介して残存腫瘍を圧倒する能力をそれらの免疫系に与えようとして、癌を有する患者に注入される。言い換えれば、そのような治療は、患者自身の免疫細胞を操作して腫瘍を認識し、そしてそれらの腫瘍を攻撃することを含む。
【0006】
癌処置の為に使用される養子T細胞治療の幾つかの形態がある:腫瘍浸潤リンパ球(TIL:tumor infiltrating lymphocytes)を培養しそして拡大すること、1つの特定のT細胞クローンを単離しそして拡大すること、並びに腫瘍抗原を強力に認識し且つ腫瘍細胞を破壊する為にキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されたT細胞を用いること。CAR T細胞は、臨床試験において最も有望であり、50以上のCAR臨床試験が米国だけで現在登録されている(clinicaltrials.gov)。注目すべきことには、キメラ抗原受容体(CAR)-リダイレクトされたT細胞は、治療抵抗性白血病を有する患者において長期の恒久性の寛解及び顕著な奏効率をもたらしている。
【0007】
現在まで、CAR技術は、各患者自身のT細胞からの治療用製品のカスタムメイド製造を通じて管理されている。しかしながら、この患者特異的な自己のパラダイムは、CAR技術の大規模な展開における重要な制限因子である。同種移植の状況において、無関係の第三者ドナーT細胞からの「既製の(off-the-shelf)」CAR T細胞の産生の為のプラットフォームが現在開発されている。
【0008】
CAR T細胞はクリニックにおいて大きな初期の見込みを示しているが、これらの開発は幾つかの重篤な且つさらには致命的な副作用を伴っている(Gargett and Brown,Front Pharmacol.,2014年10月 28;5:235)。
【0009】
移植後の再発を有する患者におけるドナーT細胞注入は移植片対白血病効果を介して疾病の寛解をもたらすことができることが観察されているが、これは一般に、非造血組織に対する同種免疫の結果としてGVHD(graft versus host disease:移植片対宿主病)の展開に関連付けられている(Kolb,Blood,2008年12月1日;112(12):4371-83)。
【0010】
分化抗原を標的とするT細胞は、同じ抗原を発現する非悪性細胞をまた認識し、有害事象を結果として生じることが予測されることができるため、標的ではあるが腫瘍外(On-target but off-tumor)の有害作用が生じうる。例えば、メラノサイト分化抗原、例えばMART-1及びgp100、を標的とするT細胞で処置されたメラノーマ患者はしばしば、白斑及びぶどう膜炎を発症した(Teulings等,2014年;Pigment Cell Melanoma Res.2014年11月;27(6):1086-96)。
【0011】
標的ではあるが腫瘍外(On-target but off-tumor)の毒性は、直ちに生命を危うくすることができる。肺転移及び肝転移を伴う結腸直腸癌を有する患者は、HER2特異的CAR T細胞注入の15分以内に呼吸困難を発症し、そしてその後5日後に多臓器不全で死亡した。
【0012】
これらの各場合において、腫瘍外部位における比較的低いレベルの抗原発現にも関わらず、有害作用が生じ、従って高い結合力及び効力を有するリダイレクトされたT細胞を使用することにおける有害性の可能性を強調する。
【0013】
T細胞治療がより有効になるにつれて、急性毒性がまたより明白になり、且つ発熱、厳しさ、低血圧及び低酸素によって特徴付けられるサイトカイン放出症候群を引き起こしうる。この症候群は、CD19+悪性細胞の認識に応じて大規模のT細胞活性化の結果として、多くのCD19 CAR T細胞研究において観察されている。
【0014】
T細胞治療の魅力の1つは、導入された細胞が存続しそして拡大し、それにより持続的な治療効果を媒介する見込みがあることである。しかしながら、如何なる有害作用がまた同様に持続し、細胞が増殖するにつれて悪化し、そして細胞増殖に関連付けられるだろう(Tey,Clin Transl Immunology,2014年6月20日;3(6):e17)。
【0015】
Zhou等によって認められている通り、細胞治療は癌処置に有効でありうるが、それらの拡大、正常臓器の損傷、及び悪性形質転換の可能性は懸念の元である。イン・ビボで異常なT細胞を条件付きで取り除く能力はこれらの懸念を改善し、そして細胞療法の適用を広げるであろう(Methods Mol Biol.2015年:1317:87-105)。
【0016】
従って、その可能性を満たす為に、養子細胞移入技術は、特にCAR T細胞のレベルで「自殺」安全性要素を組み込む必要がある。以下において議論されるであろう通り、幾つかのアプローチが開発されているが、臨床現場において安全に移される為の要求を完全に満たすものではない。
【0017】
ESC 細胞の可能性は、造血系の疾病の状況において大部分実証されている。同様に、人工多能性幹細胞(iPSC:induced pluripotent stem cell)技術は、それらの無限の自己再生能力と3つの胚性胚葉の全てに由来する細胞型に分化する為の能力とに基づいて、再生医療に大きな期待を寄せた。明らかに、iPSCに基づく治療法が、患者特異的な再生医療の為の有望な道を提供する。
【0018】
Assawachananont等は最近、マウス胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞由来の3D網膜組織が、外顆粒層(ONL:outer nuclear layer)を欠く高度な網膜変性モデル (rd1)においてさえも、完全な内側セグメント及び外側セグメントを有する構造化された外顆粒層(ONL:outer nuclear layer)を発達させたことを示した。宿主-移植片シナプス結合は、免疫組織化学によって観察され、進行した網膜変性疾患の為の網膜シート移植治療の為の「概念の証明」を提供した(Stem Cell Reports.2014年4月24:2(5):662-74)。
【0019】
これらの結果は、非ヒト 霊長類における研究とともに、自己のiPSC由来の網膜色素上皮 (RPE:retinal pigment epithelial)細胞シートのヒトへの移植に着手することを上記著者等に導いた。この臨床治験は、iPS細胞ベースの製品の最初の歴史的移植であるとして歓迎された。
【0020】
患者は、両眼に一連の18の抗血管内皮増殖因子 (VEGF:anti-vascular endothelial growth factor) 眼内注入を行って、該疾患の一定の再発に対処した。網膜下の線維症組織の除去及びiPS細胞由来のRPE 細胞シートの移植後、患者は、6ヶ月の時点で新血管形成の再発を経験せず、そして頻繁な抗VEGF注射を受けなかった。彼女の視力は安定されており、少なくとも移植後のほぼ1年後の少なくとも2015年9月において安全に関する懸念を有していなかった。
【0021】
しかしながら、この試験について懸念が生じた:「いまだ、iPS 細胞から作られた組織はそれ自体の懸念を有しており、且つそれはどの国も臨床試験の為のそれらを承認することを中止していた。体の免疫系がそれらを攻撃することができ、又は彼らは、まだ多能性状態にある幾つかの細胞を含んでいてもよく、且つ癌性増殖を引き起こす幾つかの細胞を含んでいてもよい(Jeanne Loring,Scripps Research Institute in La Jolla,California)。
【0022】
明らかに、RPEシートの製造に従事しているiPS細胞に、堅牢なビルトイン安全システムを装備することが非常に重要である。CAR T細胞注入の状況において上記で強調されている通り、そのような系を保有するRPE 細胞を用いた臨床試験(及びその後の処置)は、かなり安全であろう。そのような安全デバイスはまた、眼の疾病の為の治療法の出現をかなり促進するだけでなく、再生医療の分野全体を刺激するだろう。
【0023】
事実、既存の「自殺」系は、それらの注意点を有する。
【0024】
臨床的に試験されている最初の自殺遺伝子は、分裂細胞に対して毒性であるガンシクロビルのガンシクロビルトリホスフェートへの転化を媒介する単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ (HSVtk:herpes simplex virus thymidine kinase)である。しかしながら、安全スイッチとしてのHSVtkは、多くの欠点、例えば、ガンシクロビルによるHSV-TKの活性化が比較的遅く、イン・ビトロで完全な効果を有する為に3日を必要とするという事実、を有する(Marin等,Hum Gene Ther Methods.2012年12月;23(6):376-86)。
【0025】
最も重要なことに、ウィルスTK遺伝子産物は、形質導入細胞が免疫適格個体において宿主免疫系によって拒絶される原因となりうる固有の免疫原性を有する(Berger等,Blood.2006年3月15日;107(6):2294-302)。さらに、ガンシクロビルが造血幹移植の免疫不全レシピエントにおけるCMV感染を処置する為に使用される場合、この自殺遺伝子の使用は、形質導入細胞の望ましくない欠失を結果として生じるであろう(Bonini等,Mol Ther.2007年7月;15(7):1248-52)。
【0026】
別の自殺遺伝子系は、低分子の、生物不活性の、二量化の化学誘導(CID:chemical induction of dimerization)薬物であるAP1903と共に、誘導性カスパーゼ9(iCasp9:inducible caspase 9)遺伝子からなる。iCasp9遺伝子は、ヒトFK506-結合タンパク質に由来する薬物結合ドメインに融合した、アポトーシス促進分子であるヒトカスパーゼ 9 タンパク質の細胞内部分を含む(Straathof等,Blood.2005年6月1日;105(11):4247-54)。AP1903の静脈内投与は、このキメラタンパク質の薬物結合ドメインの架橋を生成し、それは今度はカスパーゼ9を二量化し、そして下流の実行者であるカスパーゼ3分子を活性化し、細胞アポトーシスを結果として生じる。
【0027】
SCIDマウス-ヒト異種移植モデルを用いた初期のイン・ビボ実験において、単回投与が3日目までに循環ヒト GFP+ T細胞の99%以上を死滅させた。重要なことに、iCasp9を介した死滅は、30分以内に現れる初期アポトーシスアネキシンV+ 細胞で非常に急速であることが見出されており、イン・ビトロでの24 時間のCID処置によって完全な効果が観察された(Marin等,2012年)。
【0028】
造血幹細胞及び前駆細胞に関して (Stem Cells.2015年1月;33(1):91-100)、Cyntia Dunbar(NIH)は、アカゲザルにおけるiCasp9を発現する造血細胞の安定した生着に続いて、iCasp9を活性化することができる二量体化の化学誘導物質であるAP1903の投与は、全ての造血系統におけるベクター含有細胞を長期的に特に取り除かれ、HSPCレベルでの活性を示唆することを報告した。75~94%のベクター含有細胞が良好な耐容性の AP1903の投与により取り除かれ、しかし完全なアブレーション(ablation)の欠如は、残存細胞におけるiCasp9発現を低下させることに関連していた。耐性機構の更なる研究は、ベクターで形質導入され且つAP1903アブレーションに対して耐性である、造血細胞株におけるBcl-2の上方制御を示した。これらの結果は、臨床開発との高い関連性を有するモデルにおいて、HSPCを標的とされた遺伝子治療設定に対してiCasp9を利用する安全性アプローチの可能性と限界との両方を示した。
【0029】
iCasp9自殺系の現在の有効性は幾つかの特定の状況において適しているかもしれないが、それは腫瘍形成の過程を十分に克服しないであろう。
【0030】
いずれにせよ、主な問題は、その固有の免疫原性の問題である。
【0031】
Malcom Brennerのチームは、iCasp9自殺系を推進した。iCasp9自殺遺伝子のヒト起源は、それを異種起源からの自殺遺伝子よりも抗原原性をおそらく低くする。遺伝子導入細胞に対する免疫応答の証拠は見出されず、それは我々の患者において長期間に亘って安定したレベルで持続したが、それは他の臨床設定における構築物のいずれの要素の免疫原性も排除することができない(Di Stasi等;N.Engl.J.Med.2011年11月3日;365(18):1673-83)。
【0032】
本質的に、iCasp9タンパク質は、合成の20個のアミノ酸ペプチドの為に潜在的に免疫原性であり、及びこのペプチドと2つのペプチド部分との間のヒンジは非ヒト 起源のものである。ごく少数の患者のみを含む初期臨床試験において有害事象は観察されなかったが、より多くの患者が登録されるときに免疫学的事象が起こらないという保証は無く、保証さえもないだろう。
【0033】
明らかに、新規な自殺系が必要である。
【0034】
幾つかの栄養関連の研究は、生理学的機能の調節における(AA:amino acids)の役割、特にAAによる遺伝子発現の調節に関与するメカニズムに関して、を識別することに焦点を当てている。1つの必須アミノ酸(EAA:essential amino acid)が不足している食事を摂った後、制限的なEAAの血中濃度は急速且つ大幅に減少し、アミノ酸応答経路と呼ばれる遍在する適応過程を引き起こす。この経路の最初の工程は、セリン51上の真核生物開始因子2 (eIF2α:eukaryotic initiation factor 2)のアルファーサブユニットをリン酸化する、哺乳類のGCN2 タンパク質キナーゼの荷電されていないtRNAによる活性化であり、活性化転写因子(ATF4:activating transcription factor)の翻訳の上方制御を導く。一旦誘発されると、ATF4は、アミノ酸応答要素 (AARE:Amino Acid Response Element)への結合を通じて特定の標的遺伝子の転写を活性化する。GCN2-eIF2α-ATF4経路は、欠如しているEAAの投与によって急速に止めることができる。
【0035】
これらの知見を利用して、特許出願 国際公開第2013/068096号は、少なくとも1つのAARE調節配列及びミニマルプロモーターを含む誘導性プロモーターの制御下にある関心のある遺伝子を含む発現カセットを開示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
第1の観点において、本発明は、個体におけるアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸であって、
ミニマルプロモーターと少なくとも1つのAARE(アミノ酸応答要素)核酸とを含む調節ポリヌクレオチド、ここで、上記調節ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事の消費に応じて個体において活性化される、
上記調節ポリヌクレオチドの制御下に置かれる、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸、
を含む、上記核酸に関する。
【0037】
更なる観点において、本発明は、本発明に従う、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸ベクターであって、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸を含む、上記核酸ベクターに関する。
【0038】
他の観点において、本発明は、本発明において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクターを含む送達粒子に関する。
【0039】
本発明のなお更なる観点は、(i)本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸又は核酸ベクター又は送達粒子と、(ii)医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0040】
1つの観点において、本発明は、本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0041】
他の観点において、本発明は、医薬品としての使用の為の、本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸に関する。
【0042】
1つの更なる観点において、本発明は、アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の活性剤としての使用の為の、本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸に関する。
【0043】
なお更なる観点において、本発明は、腫瘍を処置及び/又は阻止する為の活性剤としての使用の為の、本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸に関する。
【0044】
他の観点において、 本発明は、アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞に誘発する為の方法であって、本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸又は核酸ベクターを、それを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法に関する。
【0045】
1つの観点において、本発明は、腫瘍を処置及び/又は阻止する為の方法であって、本明細書において定義された、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸又は核酸ベクターを、それを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法に関する。
【0046】
最後に、本発明の他の観点は、腫瘍を処置及び/又は阻止する為のキットであって、
本明細書において定義された通りの医薬組成物、及び
抗腫瘍化合物
を含む上記キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】スキームは、GCN2-eIF2α-ATF4シグナル経路を示す。EAA飢餓に応答して、活性化されたGCN2はeIF2αをリン酸化し、転写因子ATF4の上方制御及びAARE配列に対するその補充(recruitment)をもたらし、標的遺伝子発現を誘発する。
図2】スキームは、AARE遺伝子構築物の描写を説明する:Trb3 プロモーターからの及びTkミニマルプロモーターからのAARE(灰色の枠)の2つのコピーは、この構築物を含む。
図3】プロットは、マウスの血漿ロイシン濃度を示す。掃除されたケージ内で一晩絶食した後に、マウスは対照(Ctrl,開いた四角形)又はロイシンが欠乏した食餌(-Leu,閉じた四角)を与えられた。血漿が集められ、そしてロイシンが測定された(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図4】プロットは、イン・ビボでのルシフェラーゼ発現の測定を示す。AARE-TK-ルシフェラーゼ構築物が安定して組み込まれている遺伝子導入マウスが使用された。16時間の絶食期間の後に、遺伝子導入マウスが対照食餌(Ctrl)で又はロイシンが欠乏した食餌(-Leu)を与えられた。生物発光画像法が、食事開始後3~12時間行われた。光子検出の結果としての信号強度は、赤(最高数の光子)から青(最低強度)まで段階的に変化する(図示せず)。次に、光放射が腹部領域(腹側領域,閉じた四角)又は背部領域(灰色四角)をカバーする関心領域 (ROI:Regions Of Interest)を用いて定量化された(スチューデントのt検定:***p<0.001,**p<0.01 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図5】プロットは、長期絶食期間後のイン・ビボでのルシフェラーゼ発現の測定を示す。16時間、20時間又は24時間の絶食期間の後に、遺伝子導入マウスが生物発光について画像化された。次に、光放射が腹部領域(腹側領域,閉じた四角)又は背部領域(灰色四角)をカバーする関心領域 (ROI)を用いて定量化された(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図6】スキームは、AARE駆動発現系を介した導入遺伝子の発現調節のオン/オフの為の戦略を示す。欠如しているアミノ酸(イソロイシン、フェニルアラニン又はリシン)を交換する食餌のパルスが行われた。AARE-Luc遺伝子導入マウスは、それぞれ連続的に下記を含む3つの飢餓シーケンスに付された:12時間の断食(白色の形状,Fa)、EAA欠乏食餌での6時間の食餌期間(灰色の形状,-I;-F;-K) 及び対照食餌での30時間の回復期間(灰色の形状,C)。4分の1円弧は、6時間を表す。黒い矢印は、生物発光獲得の時点を示す。光子検出の結果としての信号強度は、赤(最高数の光子)から青(最低強度)まで段階的に変化する(図示せず)。
図7】プロットは、腹部領域をカバーするROIを用いて定量化された光放射を示し、及び時間に沿った生物発光倍率誘導が図6に記載された条件で表されている(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 0日目,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図8】スキームは、AARE駆動発現系を24時間利用する為の栄養プロトコルを示す。マウスは、上記に示された栄養サイクルの4回の繰り返しに付された(-EAA群)。対照群(Ctrl群)は、対照食餌のみを与えられた(参照については、図6を参照)。
図9】プロットは、上記の図8に記載されている栄養プロトコルの間に観察された、初期値のパーセントで表された体重を示す。Ctrl(開いた四角) 群及び-EAA(閉じた四角)群が示されている。該2群の間で有意差は観察されなかった。
図10】プロットは、上記の図8に記載されている栄養プロトコルの間に観察された、初期値のパーセントで表された除脂肪量を示す。Ctrl(開いた四角)及び-EAA(閉じた四角)群が示されている。該2群の間で有意差は観察されなかった。
図11】プロットは、上記の図8に記載されている栄養プロトコルの間に観察された、初期値のパーセントで表された体脂肪量を示す。Ctrl(開いた四角)及び-EAA(閉じた四角)群が示されている。該2群の間で有意差は観察されなかった。
図12】プロットは、図8に示されている栄養プロトコルの最後での筋肉の組織重量を示す。マウスが屠殺され、そして3つの骨格筋(ヒラメ筋、腓腹筋及び脛骨筋)が集められ、そして秤量された。データは、対照群のパーセントで表される。該2群の間で有意差は観察されなかった。
図13】プロットは、pGL3-AARE-Lucの流体力学に基づくDNA注入後のマウスの生物発光画像法から測定された平均放射輝度を示す。野生型マウスは、流体力学的注入法に従って25マイクログラムのプラスミドを与えられた。24時間後、マウスは、栄養プロトコル(一晩の飢餓後の-Ile食餌)でチャレンジされた。生物発光画像法が、食餌開始の6時間後に行われ、そして光放射が腹部領域をカバーするROIを用いて定量化され、対照群は開いた四角によって表され、且つ-Ile群が閉じた四角によって表される(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。光子検出の結果としての信号強度は、赤(最高数の光子)から青(最低強度)まで段階的に変化する(図示せず)。
図14】プロットは、図13に記載の通りに処置されたマウスの肝臓から測定された相対ルシフェラーゼ活性を示す。肝臓が集められ、そして生物発光について画像化され、そして次に対応するタンパク質ホモジネートがルシフェラーゼ活性決定の為にアッセイされた。対照群が開いた四角によって表され、及び-Ile群が閉じた四角によって表される(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 対照食餌, n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図15】プロットは、レンチウィルス形質導入の後の膵臓内送達及びAARE-Lucの導入を示す。AARE-TK-Lucを含むレンチウィルス粒子(LV-AARE-Luc)の投与が、野生型マウスの膵臓内に行われた。注射の10日後に、マウスは、栄養プロトコル(一晩の飢餓後の-Ile食餌)でチャレンジされた。光放射が膵臓領域をカバーするROIを用いて定量化された。光子検出の結果としての信号強度は、赤(最高数の光子)から青(最低強度)まで段階的に変化する(図示せず)。対照群が開いた四角によって表され、及び-Ile群が閉じた四角によって表される(スチューデントのt検定:**p<0.01 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図16】プロットは、図15に記載の通りに処置されたマウスの膵臓から測定された相対ルシフェラーゼ活性を示す。膵臓が集められ、そして生物発光について画像化され、そして対応するタンパク質ホモジネートがルシフェラーゼ活性決定の為にアッセイされた。対照群が開いた四角によって表され、及び-Ile群が閉じた四角によって表される(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図17】プロットは、レンチウィルス形質導入の後の海馬内送達及びAARE-Lucの導入を示す。AARE-Luc構築物を含むレンチウィルス粒子の定位投与が、野生型マウスの海馬内に行われた。2つの構築物が使用された:AARE-TK-LUC構築物(LV-AARE-Luc),海馬の左部分に注射された、及び対照TK-LUC構築物(LV-Luc)、ここでAARE配列が除去されて、右部分に注入された。注射の10日後に、マウスは、栄養プロトコル(-Ile食餌)でチャレンジされた。次に、海馬の2つの部分(左及び右)が集められ、解剖され、そしてルシフェラーゼ活性についてアッセイされた。対照群が開いた四角によって表され、及び-Ile群が閉じた四角によって表される(スチューデントのt検定:***p<0.001 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図18】プロットは、AARE駆動発現系を用いたTRAIL発現による腫瘍成長阻害を示す。Gli36-luc細胞(2x106)がヌードマウスの皮下に移植された。1週間後、LV-AARE-TRAIL レンチウィルスの腫瘍内注入が行われた。次に、マウスが、図8に記載の通りの栄養プロトコルに付された:第1群は対照食餌(Ctrl;開いた四角)を与えられ、第2群はEAA欠乏食餌(-EAA;閉じた四角)の交互給餌を与えられた。腫瘍成長が、Gli36-luc移植後の最初の日(T0)及びその後の毎週に生物発光画像法によって監視された。関心領域内の信号強度が、腫瘍をカバーするROIを用いて定量化された(一群当たり6匹のマウス)。光子検出が、赤(最高数の光子)から青(最低強度)まで段階的に変化する(図示せず)。データが、一方向としての栄養プロトコル及び第二の方向としての週を含む、相互作用を有する二元配置分散分析(two-way ANOVA)を用いて解析された(*p<0.05;***p<0.001,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図19】プロットは、図18における通り処置されたマウスからの腫瘍重量分析を示す。栄養プロトコルの終わりに、摘出された腫瘍が写真撮影され、且つ秤量された。対照群は開いた四角によって表され、及び-EAA群が閉じた四角によって表される(スチューデントのt検定:**p<0.01 対 対照食餌,n=6匹の雄のマウス;エラーバー:平均+s.e.m.)。
図20】スキームは、TRAIL依存性アポトーシスを制御する為の栄養プロトコルを示す。栄養プロトコルの終わりに、対照食餌(Ctrl/Ctrl)を与えられたCtrl群からの腫瘍が21日目に切除された。-EAA群内において、ロットの半分が21日目に犠牲にされた一方で、残りの半分は1日後に殺された。より具体的には、3匹のマウスが、TRAIL発現の誘導を検出する為に、イソロイシンが欠乏した食餌(-EAA/-Ile)の摂取後に犠牲にされた。1日後、他の3匹のマウスが、Ctrl食餌に応答してTRAIL発現を消滅させることを検証する為に殺された。黒色の矢印は、各言及された条件についての犠牲時間を示す。
図21図20においての通りに処置された摘出された腫瘍からのタンパク質ホモジネートの分析結果。タンパク質ホモジネートが、TRAIL(短時間及び長時間の暴露)、切断されたPARP及びATF4レベルの検出の為のウェスタンブロットにより解析された。アクチンレベルが、ロードする対照として示されている。ウェスタンブロットの定量化は、EAA食餌下でのTRAILのレベルが、対照条件下で得られるわずかな信号よりも100倍強強いを推定されたことを明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書において言及されたいずれの引用も参照により本明細書に取り込まれる。
【0049】
本発明者等は、遺伝子治療に理想的に適した調節系を達成する為に、1つの必須アミノ酸が不足している食事に対する栄養適応経路の顕著な特徴を評価した。本発明者等は、食事特異的アミノ酸飢餓に基づくそのような系は、合成転写因子又は調節タンパク質の発現を必要とせず、また薬理学的誘導物質の投与も必要としないことを見出した。それは、生理学的に非毒性であり且つ臨床応用に適している。この新規な栄養ベースの調節系は、ヒトの遺伝子治療における主要な残りの障害の1つを解決する為の能力を備えた生理学的アプローチとして成り立ち、且つ「自殺戦略」に基づく治療アプローチの為の「安全スイッチ」を提供する。
【0050】
本明細書の実施例に示されているとおり、AARE駆動発現系は順応性であり、当該系において各個々の必須アミノ酸が潜在的な誘導物質として作用することができる。単一のサイクルを使用するという状況においてさえ、特定の実験/状況に最も適切であろう誘導過程の増幅に従って「欠損している必須アミノ酸」を選択する為の手段を提供するという点で本発明者等はこの点は重要であると考える。
【0051】
下記の実験データにおける重要な部分は、アポトーシス促進タンパク質TRAILに関する。対応する一連の実験は、癌を扱う問題に対処するためだけでなく、バックグラウンド活動の問題及びモデルシステムの動力学に対処する為のモデルシステムとしても実施された。言い換えれば、臨床的に関連する為には、遺伝子調節系は、ベクターの安全な用量内で、誘導物質の広い用量範囲に亘って調節されるべきであり、且つ低レベルのバックグラウンド発現を示すべきである。
【0052】
以下の説明から明らかになるであろう通り、AARE/自殺遺伝子系は自殺暗線デバイスとして作用するのに理想的に適しており、ありうる免疫応答を結果として生じない。そのようなデバイスは、CAR T細胞の機能にも幹細胞/iPS細胞の成熟/分化にも必要でない。しかしながら、そのような安全デバイスの存在は、これらの対応する治療において欠くことのできないセーフガードを表すであろう。
【0053】
さらに、AAREに基づく安全デバイスは、本質的に完全に安全である。CAR T細胞(又は iPSC由来の細胞)を破壊するであろう自殺遺伝子の予期せぬ発現は、患者が治療用の「既成の(off-the-shelf)」CAR T細胞の別の注入を容易に受けることができることを考慮すると、患者を悩ませるものでない。
【0054】
最後に、AAREに基づく自殺系は、安全スイッチの分野及び開発をかなり広げる。カスパーゼの全ファミリーが考慮されることができる。その上、AARE 自殺系は自殺タスクを実行する為に非ヒト起源のタンパク質に必ずしも依存しない。自殺導入遺伝子の発現は、対応する細胞の実行が不可逆的に続かなければならず、それにおいて自殺遺伝子が内因的に発現され、如何なる免疫反応の時間も許されない。従って、自殺遺伝子のリストは様々な起源からの「毒」を含むことができ、ただし、該遺伝子産物が分泌されず、それらの発現が細胞の死滅と密接に関連付けられている。
【0055】
アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸
本発明の第1の観点は、個体におけるアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸であって、
ミニマルプロモーターと少なくとも1つのAARE(アミノ酸応答要素:amino acid response element)核酸とを含む調節ポリヌクレオチド、ここで、上記調節ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事の消費に応じて個体において活性化される、及び
上記調節ポリヌクレオチドの制御下に置かれる、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸、
を含む上記核酸に関する。
【0056】
本発明の範囲内において、表現「アポトーシス促進タンパク質」は、細胞による適切な信号の受信に応じて、プログラムされた細胞死又はアポトーシスに生理学的に関与するタンパク質を意味することを意図される。
【0057】
本発明の範囲内において、表現「制御された発現」は、誘導の瞬間、誘導の持続時間に関して、正確な様式で、発現が正確に、誘導されるか又は「オン」にされるか及び停止されるか又は「オフ」にされることを意味することを意図される。
【0058】
或る実施態様において、表現「アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸」は、当該技術分野において利用可能な任意の適切な方法、例えば該アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の転写から生じるmRNA 発現の測定及び/又は該アポトーシス促進タンパク質発現の測定、によって測定されうる。
【0059】
幾つかの実施態様において、該アポトーシス促進タンパク質発現の測定は、アポトーシス促進タンパク質に特異的に結合する抗-抗体を用いて該アポトーシス促進タンパク質の発現を測定することによって行われうる。
【0060】
本発明の範囲内において、誘発された発現は、基本的な、誘発されていない発現と比較して、発現の倍数として表されうる。
【0061】
幾つかの実施態様において、誘発された発現は、基本的発現と比較して、2倍~10,000倍、好ましくは4倍~500倍、より好ましくは8倍~250倍、最も好ましくは10倍~100倍までさまざまである。
【0062】
本発明の範囲内において、2倍~10,000倍は、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、600倍、750倍、800倍、850倍、900倍、950倍、1,000倍、2,000倍、3,000倍、4,000倍、5,000倍、6,000倍、7,000倍、8,000倍、及び9,000倍を含む。
【0063】
本発明の範囲内において、表現「ミニマルプロモーター」は、下流に位置する関心のある遺伝子の転写を適切に開始する為に、必要である全ての要素を含むプロモーターを意味することを意図される。本発明の範囲内において、「ミニマルプロモーター」及び「コアプロモーター」は、同等の表現として見做される。当業者は、「ミニマルプロモーター」が、少なくとも転写開始部位、RNAポリメラーゼ及び一般的な転写因子の為の結合部位(TATA box)を含むことを理解している。
【0064】
適切なミニマルプロモーターは当業者に知られている。
【0065】
幾つかの実施態様において、本発明を実施する為に適したミニマルプロモーターは、チミジンキナーゼのプロモーター、β-グロブリンのプロモーター、サイトメガロウィルス (CMV:cytomegalovirus)のプロモーター、SV40プロモーターなどのプロモーターを含む群から選択されうる。
【0066】
幾つかの実施態様において、個体は、ヒト又は非ヒト哺乳動物、好ましくはヒト、である。
【0067】
幾つかの実施態様において、非ヒト哺乳動物は、ペット、例えばイヌ、ネコ、飼育ブタ、ウサギ、フェレット、ハムスター、マウス、ラットなど;霊長類、例えばチンパンジー、サルなど;経済的に重要な動物、例えば牛、豚、ウサギ、馬、羊、山羊、マウス、ラット、を含む群において選択される。
【0068】
本発明の範囲内において、表現「必須アミノ酸」は、ヒスチジン(His,H)、イソロイシン(Ile,I)、ロイシン(Leu,L)、リシン(Lys,K)、メチオニン(Met,M)、フェニルアラニン(Phe,F)、トレオニン(Thr,T)、トリプトファン(Trp,W)及びバリン(Val,V)を包含する。
【0069】
本発明の範囲内において、表現「少なくとも1つの必須アミノ酸」は、1、2、3、4、5、6、7、8又は9個の必須アミノを意味することを意図される。
【0070】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、個体に、5分~12時間の期間、例えば10分、15分、20分、25分、30分、45分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、3時間30分、4時間、4時間30分、5時間、5時間30分、6時間、6時間30分、7時間、7時間30分、8時間、8時間30分、9時間、9時間30分、10時間、10時間30分、11時間、11時間30分、に亘って与えられることを含みうる。
【0071】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、個体に、1日に、1回、2回、3回、4回、5回、6回、又はそれ以上与えられうる。
【0072】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、個体に、毎日、一日おき、週に一回、週に二回、週に三回与えられうる。
【0073】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、個体に、半日、1 日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日又はそれ以上の期間が与えられうる。
【0074】
或る実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、個体に、1日に1回又は2回与えられうる。
【0075】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、個体に、早朝に、例えば朝食、に与えられてもよく、そして次に個体は昼食及び夕食の為に普通の食事を与えられてもよい。
【0076】
本発明の範囲内において、 表現「普通の食事」は、必須アミノ酸のいずれも不足していない食事を意味することが意図される。
【0077】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、毎週、隔週、毎月、毎月、又はそれ以上繰り返されうる。
【0078】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事は、NUTRICA METABOLICS(登録商標)からMILUPA(登録商標)という名称下で商業的に入手可能な、イソロイシンを含まない、ロイシンを含まない及びバリンを含まない粉末食品によって提供されうる。この食事は、メープルシロップ尿症を有する個体に適しており、その疾病は分岐鎖アミノ酸代謝に影響を与えるように思われる。
【0079】
或る実施態様において、ロイシンを含まない、イソロイシンを含まない又はバリンを含まない食事は、イソロイシンを含まない、ロイシンを含まない、及びバリンを含まない粉末を、残りの2つのアミノ酸の外部供給源と混合することによって得られうる。
【0080】
或る実施態様において、フェニルアラニンを含まない食事は、MEAD JOHNSON(登録商標)から商業的に入手可能な、イソロイシンを含まない粉末として提供されうる。この食事は、フェニルケトン尿症を有する個体に適応される。
【0081】
実際には、該粉末は、所望の必須アミノ酸を含まない、適合された液体又は半固体の食品と混合される。
【0082】
1つの実施態様において、アミノ酸応答要素(AARE)核酸は、配列 SEQ ID No: 1, SEQ ID No: 2, SEQ ID No: 3, SEQ ID No: 4 and SEQ ID No: 5の核酸を含む群から選択される。
【0083】
本発明の範囲内において、表現「少なくとも1つのAARE核酸」は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、及び少なくとも5のAARE核酸を含む。従って、表現「少なくとも1つのAARE核酸」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のAARE核酸を含む。
【0084】
或る実施態様において、調節ポリヌクレオチドは、少なくとも2つのAARE核酸を含む。
【0085】
幾つかの他の実施態様において、該調節ポリヌクレオチドは、1~20のAARE核酸、好ましくは1~10のAARE核酸、を含む。
【0086】
或る実施態様において、該調節ポリヌクレオチドは、2~6のAARE核酸を含む。
【0087】
幾つかの実施態様において、該調節ポリヌクレオチドは、配列SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:4の核酸を含む群において選択される2個のAARE核酸を含む。
【0088】
幾つかの実施態様において、該調節ポリヌクレオチドは、配列SEQ ID NO:1の6個のAARE核酸を含む。
【0089】
或る実施態様において、少なくとも2つのAARE核酸は、同一であってもよく又は異なっていてもよい。
【0090】
幾つかの実施態様において、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸 の制御された発現の為の核酸に含まれる調節ポリヌクレオチドはまたハロフギノン、ツニカマイシンなど、すなわちAARE核酸の活性化特性を有することが知られている化合物、の個体への投与に応じて活性化されうる。
【0091】
現在までに、アポトーシス促進タンパク質の幾つかのファミリーが識別されており、その中でも、Bcl2タンパク質ファミリー、Bir含有タンパク質ファミリー、Card含有タンパク質ファミリー、カスパーゼタンパク質ファミリー、デスドメイン(death domain)含有タンパク質ファミリー、デスエフェクター(death effector)ドメイン含有タンパク質ファミリー、デスリガンド(death ligand)タンパク質ファミリー、デス受容体タンパク質ファミリー、及びIAPアンタゴニストタンパク質ファミリーが挙げられうる。
【0092】
制限されること無しに、該アポトーシス促進タンパク質は、下記を含む群から選択されうる:アポトーシス誘導因子1(AIF,AIFM1)、アデニル酸キナーゼアイソザイム2(AK2)、アネキシンA1(アネキシン-1,アネキシンI,リポコルチンI,カルパクチンII,クロモビンディン-9,p35,ホスホリパーゼA2阻害タンパク質,ANXA1,ANX1,LPC1,アネキシン-1,リポコルチンI)、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1(APAF1,CED4)、核小体タンパク質3(Myp,Nop30,ARC,NOL3)、細胞死調節因子Aven(AVEN,PDCD12)、細胞死のBcl2アンタゴニスト(Bcl-2-結合成分6,Bcl-XL/Bcl-2に関連付けられたデスプロモーター,Bcl-2様8タンパク質,BAD,BCL2L8,BBC2)、Bcl-2同種アンタゴニスト/キラー(アポトーシスレギュレーターBAK,Bcl-2様7タンパク質,BAK1,BAK2)、アポトーシスレギュレーターBAX(BAX,BCL2L4)、Bcl-2に関連するタンパク質A1(BCL2A1,GRS,BFL1,BCL2L5,ACC-1,ACC-2)、アポトーシスレギュレーターBcl-X(BCL2L1,BCLX,BCL2L,BCL-X,BCL-XL,BCL-XS)、アポトーシスレギュレーターBcl-B(BCL2L10,DIVA,BOO,BCL-B)、Bcl-2様タンパク質11(細胞死のBcl2-相互作用メディエーター,BCL2L11,BOD,BIML,BIMEL,BIM)、Bcl-2に関連するプロリン豊富なタンパク質(Bcl-2様12タンパク質,BCL2L12,BCL-2L12)、Bcl-2様13タンパク質(タンパク質Mil1,Bcl-rambo,BCL2L13,MIL1,BCL-RAMBO,RAMBO)、アポトーシスファシリテーターBcl-2様14タンパク質(アポトーシスレギュレーターBcl-G,BCL2L14,BCLG,BCL-G)、アポトーシスレギュレーターBcl-W(Bcl-2様2タンパク質,BCL2L2,KIAA0271,BCL-W)、BH3-相互作用メインデスアンタゴニスト(p22 BID,BID)、Bcl-2-相互作用キラー(アポトーシス誘導物質NBK,BP4,BIP1,BIK,NBK/BLK)、バキュロウィルスI AP繰り返し含有タンパク質1(神経細胞アポトーシス阻害タンパク質,BIRC1,NLRB1)、バキュロウィルスI AP繰り返し含有タンパク質3(アポトーシスタンパク質1の阻害剤,HIAP-1,HIAP1,C-IAP2,TNFR2-TRAFシグナル伝達複合体タンパク質1,IAPホモログC,アポトーシス阻害剤2,API2,RINGフィンガータンパク質49,BIRC3,CIAP2,HIAP-1,MIHC,RNF49,MALT2)、バキュロウィルスIAP繰り返し含有タンパク質5(アポトーシス阻害剤サーバイビング(surviving)、アポトーシス阻害剤4,BIRC5)、Bcl-2-変異因子(BMF,FLJ00065)、BCL2/アデノウィルスE1B 19kDaタンパク質相互作用タンパク質3(BNIP3,NIP3)、BCL2/アデノウィルスE1B 19kDaタンパク質相互作用タンパク質3様(NIP3様タンパク質X,NIP3L,BCL2/アデノウィルスE1B 19kDaタンパク質相互作用タンパク質3A,アデノウィルスE1B19K-結合タンパク質B5,BNIP3L,NIX,BNIP3A)、Bcl-2に関連する卵巣キラータンパク質(Hbok,BOK,BCL2L9,BOKL,MGC4631),カルレチクリン前駆体(CRP55,カルレギュリン,HACBP,ERp60,grp60,CALR)、カスパーゼ-1前駆体(CASP-1,EC 3.4.22.36,インターロイキン-1ベータ転換酵素,IL-1BC,インターロイキン-1ベータ-変換酵素,IL-1ベータ-変換酵素,ICE,p45,CASP1,ICE,カスパーゼ-1,カスパーゼ1,CASP1)、カスパーゼ-10前駆体(CASP-10,EC 3.4.22.63,ICE様アポトーシスプロテアーゼ4,アポトーシスプロテアーゼMch-4,FASに関連付けられたデスドメインタンパク質インターロイキン-1B-変換酵素2,FLICE2,CASP10,MCH4)、不活性カスパーゼ-12(CASP-12)、カスパーゼ-2前駆体(CASP-2,EC 3.4.22.55,ICH-1プロテアーゼ,下方調節されたタンパク質2を発生的に発現した神経前駆細胞,NEDD-2,CASP2,ICH1)、カスパーゼ-3前駆体(CASP-3,EC 3.4.22.56,アポパイン,システインプロテアーゼCPP32,CPP-32,Yamaタンパク質,SREBP切断活性1,SCA-1,CASP3,CPP32,CPP32B,YAMA,アポパイン)、カスパーゼ-4前駆体(CASP-4,EC 3.4.22.57,ICH-2プロテアーゼ,TXプロテアーゼ,ICE(rel)-II,CASP4,ICE(REL)II,ICH-2,TX)、カスパーゼ-5前駆体(CASP-5,EC 3.4.22.58,ICH-3プロテアーゼ,TYプロテアーゼ,ICE(rel)-III,CASP5,ICE(REL)III)、カスパーゼ-6前駆体(CASP-6,EC 3.4.22.59,アポトーシスプロテアーゼMch-2,CASP6,MCH2)、カスパーゼ-7前駆体(CASP-7,EC 3.4.22.60,ICE様アポトーシスプロテアーゼ3,ICE-LAP3,アポトーシスプロテアーゼMch-3,CMH-1,CASP7,MCH3)、カスパーゼ-8前駆体(CASP-8,EC 3.4.22.61,ICE様アポトーシスプロテアーゼ5,MORT1に関連付けられたCED-3ホモログ,MACH,FADD-同種ICE/CED-3様プロテアーゼ,FADD様ICE,FLICE,アポトーシスシステインプロテアーゼ,アポトーシスプロテアーゼMch-5,CAP4,CASP8,MCH5)、カスパーゼ-9前駆体(CASP-9,EC 3.4.22.62,ICE様アポトーシスプロテアーゼ6,ICE-LAP6,アポトーシスプロテアーゼMch-6,アポトーシスプロテアーゼ活性化因子3,APAF-3,CASP9,カスパーゼ-9,カスパーゼ9,CASP9,MCH6,ICE-LAP6,APAF-3)、カスパーゼ-14前駆体(CASP-14,EC 3.4.22,カスパーゼ-14,CASP14,カスパーゼ14,マウス,MGC119078,MGC119079)、CASP8及びFADD様アポトーシスレギュレーター前駆体(細胞性FLICE様阻害タンパク質,c-FLIP,カスパーゼ-8に関連するタンパク質,カスパー(Casper),カスパーゼ様アポトーシス調節タンパク質,CLARP,毒性のMACHに関連する誘導物質,MRIT,カスパーゼホモログ,CASH,FLICEの阻害剤,I-FLICE,FADD様アンチアポトーシス分子1,FLAME-1,ウスルピン(Usurpin),CFLAR,CASPER,CLARP,FLAME,FLIP,MRIT)、バキュロウィルスIAP繰り返し含有タンパク質2(アポトーシスタンパク質2の阻害剤,HIAP-2,C-IAP1,TNFR2-TRAF-シグナル伝達複合体タンパク質2,IAPホモログB,RINGフィンガータンパク質48,CIAP1,BIRC2,CIAP1,HIAP-2,MIHB,RNF48)、デスドメイン含有タンパク質CRADD(カスパーゼ及びデスドメインを有するRIPアダプター,デスドメインを有する、RIPに関連付けられたタンパク質,CRADD,RAIDD)、エキスポーチン(Exportin)-2(Exp2,インポーチン(Importin)-アルファーリ-エクスポーター(re-exporter),染色体分離1様タンパク質,細胞アポトーシス感受性タンパク質,CSE1L,CAS,XPO2,CSE1),高可能性(Probable)ユビキチンカルボキシル-末端ヒドロラーゼCYLD(EC 3.1.2.15,ユビキチンチオエステラーゼCYLD,ユビキチン特異的処理プロテアーゼCYLD,脱ユビキチン化酵素CYLD,CYLD)、チトクロームc(チトクロームC,HCS,CYCS)、ディアブロ(Diablo)ホモログ、ミトコンドリア前駆体(カスパーゼの第2のミトコンドリア由来活性化因子,エスマック(Smac)タンパク質,低pIを有する直接IAP-結合タンパク質,DIABLO,SMAC,DIABLO-S,FLJ25049,FLJ10537)、エンドヌクレアーゼG、ミトコンドリア前駆体(エンド(Endo)G,EC 3.1.30.-)、タンパク質FADD(FASに関連付けられたデスドメインタンパク質、FASに関連するデスドメイン含有タンパク質、受容体誘発毒性のメディエーター,FADD,MORT1,GIG3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6前駆体(FASLG受容体,アポトーシス媒介表面抗原FAS,Apo-1抗原,CD95抗原,FAS,CD95,APO-1)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6(Fas抗原リガンド,Fasリガンド,CD95Lタンパク質,アポトーシス抗原リガンド,APTL,CD178抗原,FASL,CD178,FASリガンド)、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)、グランザイムB前駆体(EC 3.4.21.79,グランザイム-2,T細胞セリンプロテアーゼ1-3E,細胞傷害性Tリンパ球プロテイナーゼ2,リンパ球プロテアーゼ,SECT,カテプシンG様1,CTSGL1,CTLA-1,フラグメンチン(Fragmentin)-2,ヒトリンパ球タンパク質,HLP,C11,GZMB,GRB,グランザイムB),アポトーシスハラキリ(harakiri)の活性化因子(神経細胞デスタンパク質DP5,BH3-相互作用ドメイン含有タンパク質3,HRK,DP5)、セリンプロテアーゼHTRA2,ミトコンドリア前駆体(EC 3.4.21.108,高温度要求性タンパク質A2,HtrA2,オミ(Omi)ストレス調節されたエンドプロテアーゼ,セリンプロテイナーゼOMI,セリンプロテアーゼ25,HTRA2,OMI,PARK13)、細胞間接着分子3前駆体(ICAM-3,ICAM-R,CDw50,CD50抗原)、ロイシン豊富な繰り返しタンパク質及びデスドメイン含有タンパク質(デスドメインを有するp53誘発されたタンパク質,LRDD,PIDD,MGC16925,DKFZP434D229)、プロロウ(Prolow)密度リポタンパク質受容体に関連するタンパク質1前駆体(LRP,アルファー-2-マクログロブリン受容体,A2MR,アポリポタンパク質E受容体,APOER,CD91抗原,LRP1,CD91)、粘膜に関連付けられたリンパ組織リンパ腫転位タンパク質1(EC 3.4.22.-,MALTリンパ腫に関連付けられた転位,パラカスパーゼ,MALT1)、マイトジェン活性化されたタンパク質キナーゼ8(EC 2.7.11.24,ストレス活性化されたタンパク質キナーゼJNK1,c-Jun N-末端キナーゼ1,JNK-46,MAPK8,JNK,JNK1,SAPK1)、誘発された骨髄性白血病細胞分化タンパク質Mcl-1(Bcl-2に関連するタンパク質EAT/mcl1,mcl1/EAT,MCL1,BCL2L3)、アポトーシス1のモジュレーター(MAP-1,MAP1,腫瘍随伴症抗原Ma4,MOAP1,PNMA4),LRR及びPYDドメイン含有タンパク質1(デスイフェクターフィラメント形成ced-4様アポトーシスタンパク質,ヌクレオチド結合ドメイン及びカスパーゼ補充ドメイン,カスパーゼ補充ドメイン含有タンパク質7,NLRP1,KIAA0926,DKFZP586O1822,CARD7,NAC,CLR17.1,DEFCAP,NACHT)、LRR及びPYDドメイン含有タンパク質3(低温自己炎症性症候群1タンパク質,クリオピリン,パイリン(PYRIN)含有APAF1様タンパク質1,アンギオテンシン/バソプレッシン受容体AII/AVP様,NLRP3,AGTAVPRL,AII,AVP,FCAS,FCU,NALP3,PYPAF1,MWS,CLR1.1,NACHT)、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート誘発されたタンパク質1(PMA誘発されたタンパク質1,最初期の応答タンパク質APR,NOXA,PMAIP1,APR)、ダイナミン様120kDaタンパク質,ミトコンドリア前駆体(視神経萎縮タンパク質1,OPA1)、酸性ロイシン豊富な核ホスホタンパク質32ファミリーメンバーA(強力な耐熱性タンパク質ホスファターゼ2A阻害剤I1PP2A,酸性核ホスホタンパク質pp32,ロイシン豊富な酸性核タンパク質,ランプ(Lanp),推定上のHLA-DRに関連付けられたタンパク質I,PHAPI,マップモジュリン(Mapmodulin),PHAP,ANP32A,LANP,PP32,I1PP2A,MAPM,MAPMODULIN)、Bcl-2-結合成分3(アポトーシスのp53上方制御されたモジュレーター,JFY-1,PUMA,BBC3)、アポトーシスに関連付けられたスペック(speck)様タンパク質含有CARD(hASC,PYD及びCARDドメイン含有タンパク質,メチル化誘発されたサイレンシング1の標的,カスパーゼ補充ドメイン含有タンパク質5,PYCARD,TMS-1,CARD5,ASC)、受容体-相互作用セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ1(EC 2.7.11.1,セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼRIP,細胞死タンパク質RIP,受容体-相互作用タンパク質,RIPK1,RIP)、受容体相互作用セリン/トレオニン-タンパク質キナーゼ3(EC 2.7.11.1,RIP様タンパク質キナーゼ3,受容体相互作用タンパク質3,RIP-3,RIPK3)、エンドフィリン(Endophilin)-B1(SH3ドメイン含有GRB2様タンパク質B1,Bax相互作用因子1,Bif-1,SH3GLB1,CGI-61,KIAA0491,BIF-1)、腫瘍壊死因子前駆体(TNFアルファー,腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー2,TNF-a,カケクチン,TNF,TNFSF2,DIF,TNF-アルファー)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1A前駆体(p60,TNF-R1,TNF-RI,TNFR-I,p55,CD120a抗原,TNFRSF1A,TNF-R,TNFAR,TNFR60,TNF-R-I,CD120A,TNF-R55)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B前駆体(腫瘍壊死因子受容体2)、TNF-R2,腫瘍壊死因子受容体II型,p75,p80 TNF-アルファー受容体,CD120b抗原,エタネルセプト,TNFRSF1B,TNFBR,TNFR80,TNF-R75,TNF-R-II,P75,CD120B)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー10(TNFに関連するアポトーシス誘発性リガンド,タンパク質TRAIL,アポトーシスリガンド2,アポ(Apo)-2リガンド,アポ(Apo)-2L,アポ(Apo)2L,CD253抗原,TNFSF10,TRAIL,アポ(APO)-2L,アポ(APO)2L TL2,CD253)、細胞性腫瘍抗原p53(腫瘍サプレッサーp53,ホスホタンパク質p53,抗原NY-CO-13,TP53,P53,LFS1)、腫瘍壊死因子受容体1型に関連付けられたデスドメインタンパ
ク質(TNFR1に関連付けられたデスドメインタンパク質,デスドメインを介して関連付けられたTNFRSF1A,TRADD,HS.89862)、TNF受容体に関連付けられた因子1(エプスタイン・バール・ウィルス誘発されたタンパク質6,TRAF1,EBI6)、TNF受容体に関連付けられた因子2(腫瘍壊死因子2型受容体に関連付けられたタンパク質3,TRAF2,TRAP3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10A前駆体(デス受容体4,TNFに関連するアポトーシス誘発性リガンド受容体1,TRAIL受容体1,TRAIL-R1,CD261抗原,TRAIL-R1,DR4,TNFRSF10A,DR4,CD261)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B前駆体(デス受容体5,TNFに関連するアポトーシス誘発性リガンド受容体2,TRAIL受容体2,TRAIL-R2,CD262抗原TRAIL-R2,TNFRSF10B,TNFRSF10B,TRAIL-R2,DR5,KILLER,TRICK2A,TRICK2B,APO-2,CD262)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10C前駆体(デコイ(Decoy)受容体1,DcR1,デスドメイン無しのデコイTRAIL受容体,TNFに関連するアポトーシス誘発性リガンド受容体3,TRAIL受容体3,TRAIL-R3,細胞内ドメイン無しのTrail受容体,TRAILのリンパ球阻害剤,TRAIL/Apo-2Lの為のアンタゴニストデコイ(decoy)受容体,CD263抗原,TRAIL-R3/TNFSF10C,TNFRSF10C,TRAIL-R3,DCR1,LIT,TRID,CD263)、TNFに関連するアポトーシス誘発性リガンド受容体4(TRAIL受容体4,TRAIL-R4,腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10D前駆体,デコイ(Decoy)受容体2,DcR2,トランケートされたデスドメインを有するTRAIL受容体,CD264抗原,TRAIL-R4,TNFRSF10D,TNFRSF10D,DCR2,TRUNDD,CD264)、XIAPに関連付けられた因子1(BIRC4-結合タンパク質,XAF1)及びバキュロウィルスIAP繰り返し含有タンパク質4(EC 6.3.2.-,E3ユビキチン-タンパク質リガーゼXIAP,アポトーシスタンパク質3の阻害剤,アポトーシスタンパク質のX-リンク付けされた阻害剤,X-リンク付けされたIAP,IAP様タンパク質,XIAP,HILP)。
【0093】
幾つかの実施態様において、該アポトーシス促進タンパク質は、TRAIL、FAS受容体、FASに関連付けられたタンパク質、FADD、カスパーゼ1、カスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8及びカスパーゼ9を含む群において選択される。
【0094】
或る実施態様において、アポトーシス促進タンパク質はTRAILである。
【0095】
核酸ベクター
他の観点において、本発明はまた、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸ベクターであって、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸を含む核酸ベクターに関する。
【0096】
幾つかの実施態様において、本発明に従う、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸は、遺伝子治療に適しているベクター内に組み込まれる。
【0097】
本発明の範囲内において、表現「遺伝子治療に適しているベクター」は、ベクターが標的細胞においてアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の発現を達成する為の必須要素を含むことを意味することが意図される。
【0098】
或る実施態様において、該ベクターはウィルスベクターである。
【0099】
幾つかの実施態様において、ウィルスベクターは、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、アルファウィルス、ヘルペスウィルス、レンチウィルス、非組み込み型(non-integrative)レンチウィルス、レトロウィルス及びワクシニアウィルスを含む群において選択される。
【0100】
送達粒子
なお他の観点において、本発明はさらに、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクターを含む送達粒子に関する。
【0101】
或る実施態様において、該送達粒子はリポプレックスの形態であってもよく、例えばカチオン性脂質;脂質ナノエマルジョン;固体脂質ナノ粒子;ペプチドに基づく粒子;ポリマーに基づく粒子を含み、特に天然の及び/又は合成のポリマーを含む。
【0102】
幾つかの実施態様において、ポリマーに基づく粒子は、タンパク質;ペプチド;多糖類、特にキトサン、を含みうる。
【0103】
幾つかの実施態様において、ポリマーに基づく粒子は、合成ポリマー、特に、ポリエチレンイミン(PEI:polyethylene imine)、デンドリマー、ポリ(DL-ラクチド)(PLA:poly(DL-Lactide))、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコシド)(PLGA:poly(DL-Lactide-co-glycoside))、ポリメタクリレート及びポリホスホエステル、を含みうる。
【0104】
幾つかの実施態様において、該送達粒子はさらに、標的とされた細胞の膜で暴露された標的受容体への結合の為に適した1以上のリガンドをその表面に含む。
【0105】
医薬組成物
本発明の他の観点は医薬組成物であって、(i)本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸、又は核酸ベクター、又は送達粒子と、(ii) 医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0106】
本発明に従う医薬組成物の処方は、当業者に周知である。
【0107】
本明細書において言及される場合に、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸、又は核酸ベクター、又は送達粒子は、本明細書において定義される通り、活性剤を表しうる。
【0108】
幾つかの実施態様において、該医薬組成物は、唯一の活性剤として、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸、又は核酸ベクター、又は送達粒子を含みうる。
【0109】
幾つかの実施態様において、本発明に従う医薬的に許容される適切な添加剤は、全ての慣用的な溶媒、分散媒、充填剤、固体担体、水性溶液、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤などを含む。
【0110】
或る実施態様において、医薬的に許容される適切な添加剤は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、及びそれらの混合物を含みうる。
【0111】
幾つかの実施態様において、医薬的に許容される 添加剤はさらに、貯蔵寿命又は細胞の有効性を高める少量の補助剤、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、保存剤又は緩衝剤、を含みうる。医薬的に許容される添加剤の調製及び使用は、当技術分野において周知である。
【0112】
任意の慣用的な媒体又は剤が活性成分と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が企図される。
【0113】
幾つかの実施態様において、該医薬組成物は、それを必要とする個体に、任意の経路によって、すなわち経口投与、局所投与又は非経口投与によって、例えば注射、例えば皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、眼内投与及び耳介内投与、によって、投与されうる。
【0114】
或る実施態様において、該医薬組成物の投与は、特に該医薬組成物に含まれている上記核酸又は上記核酸ベクターの広がりを避ける為に、関心のある標的組織において直接行われうる。
【0115】
本発明者等は、脳組織が標的であるときに、これが特に重要であると考えている。特にフレームレス定位エイミング装置(frameless stereotactic aiming devices)を使用する際に、例えば磁気共鳴スキャナーを利用することによって、核酸ベクター注入が、脳組織の特定の部分に非常に正確に行われることができる。MRIガイダンスと新しい定位エイミング装置との使用は、インターベンショナルな神経学(interventiona neurology)において、受け入れられた手順になる為に、神経学的遺伝子治療の為の強い基盤を今確立した。
【0116】
他の投与形態は、肺用処方、坐剤、及び経皮的適用を使用する。
【0117】
幾つかの実施態様において、本発明に従う経口製剤は通常の添加物、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、を含む。
【0118】
幾つかの実施態様において、化合物の有効量が、それを必要とする個体に投与される。
【0119】
本発明の範囲内において、「有効量」は、単独で所望の結果を刺激する、すなわち包含される疾患、特に癌、の症状を軽減又は根絶する、化合物の量を云う。
【0120】
所望の結果を観察する為に、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクター又は送達粒子の有効量を決定することは当業者の常識の範囲内である。
【0121】
本発明の範囲内において、投与されるべき化合物の有効量は、医師又は当業者によって決定されてもよく、且つ処置の時間経過内に適切に適合されることができる。
【0122】
或る実施態様において、投与されるべき有効量は、様々なパラメータ、例えば投与の為に選択される材料、投与が単回投与であるか又は複数回投与であるか、並びに、個体のパラメータ、例えば年齢、体調、大きさ、体重、性別及び処置される疾病の重症度を含む個体のパラメータ、を含む様々なパラメータ、に依存しうる。
【0123】
或る実施態様において、活性剤の有効量は、投与単位当たり、約0.001mg~約3000 mg、好ましくは約0.05mg~約100mg、を含みうる。
【0124】
本発明の範囲内において、約0.001mg~約3000mgは、投与単位当たり、約0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、2000mg、2100mg、2150mg、2200mg、2250mg、2300mg、2350mg、2400mg、2450mg、2500mg、2550mg、2600mg、2650mg、2700mg、2750mg、2800mg、2850mg、2900mg、及び2950mgを含む。
【0125】
或る実施態様において、該活性剤は、1日当たり対象体重の約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg~約40mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、及びより好ましくは約1mg/kg~約25mg/kg、を送達する為に十分である投与量レベルでありうる。
【0126】
幾つかの特定の実施態様において、該活性剤の有効量は、投与単位当たり、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の核酸又は核酸ベクター又は送達粒子の約1x105~約1x1015のコピーを含みうる。
【0127】
本発明の範囲内において、約1x105~約1x1015コピーは、投与単位当たり、2x105、3x105、4x105、5x105、6x105、7x105、8x105、9x105、1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、1x107、2x107、3x107、4x107、5x107、6x107、7x107、8x107、9x107、1x108、2x108、3x108、4x108、5x108、6x108、7x108、8x108、9x108、1x109、2x109、3x109、4x109、5x109、6x109、7x109、8x109、9x109、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、8x1011、9x1011、1x1012、2x1012、3x1012、4x1012、5x1012、6x1012、7x1012、8x1012、9x1012、1x1013、2x1013、3x1013、4x1013、5x1013、6x1013、7x1013、8x1013、9x1013、1x1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014のコピーを含む。
【0128】
宿主細胞
更なる観点において、本発明は、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0129】
幾つかの実施態様において、宿主細胞は真核細胞である。
【0130】
本発明の範囲内において、「真核細胞」は動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、及びより好ましくはヒト細胞、を包含する。
【0131】
幾つかの好ましい態様において、真核細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、である。
【0132】
或る実施態様において、本発明に従う宿主細胞は、中枢神経系の細胞、上皮細胞、筋細胞、胚細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC:induced Pluripotent Stem Cell)を包含しうるが、これらに限定されない。
【0133】
幾つかの特定の実施態様において、宿主細胞は、幹細胞、前駆細胞、胚芽細胞又は胚細胞ではない。
【0134】
幾つかの実施態様において、宿主細胞は、筋肉組織、神経組織、結合組織、及び上皮組織を含む群において選択される組織に属しうる。
【0135】
幾つかの実施態様において、宿主細胞は、膀胱、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、腎臓、喉頭、肝臓、肺、食道、卵巣、膵臓、胸膜、前立腺、直腸、網膜、唾液腺、皮膚、小腸、軟部組織、胃、精巣、甲状腺、子宮、膣からなる群かにおいて選択される器官に属しうる。
【0136】
或る実施態様において、本発明に従う宿主細胞は、癌細胞(cancer cell)、特に白血病細胞、癌細胞(carcinoma cell)、肉腫細胞、リンパ腫細胞、頭蓋咽頭腫細胞、芽細胞腫、メラノーマ細胞、神経膠腫細胞及び中皮腫細胞を含む群において選択される癌細胞、でありうる。
【0137】
幾つかの実施態様において、癌細胞は、鼻腔神経芽細胞腫細胞、神経膠芽腫細胞、肝芽腫細胞、髄芽細胞腫細胞、腎芽細胞腫細胞、神経芽細胞腫細胞、膵芽細胞腫細胞、胸膜肺芽腫細胞、網膜芽細胞腫細胞を含む群において選択される。
【0138】
使用
本発明の他の観点は、医薬品として使用する為の核酸であって、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の該核酸に関する。
【0139】
1つの観点において、本発明はまた、医薬品の調製又は製造の為に、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸の使用に関する。
【0140】
なお他の観点において、本発明は、アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の核酸であって、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の該核酸に関する。
【0141】
本発明の他の観点はさらに、アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の活性剤として、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸の使用に関する。
【0142】
或る実施態様において、アポトーシスの誘導は、イン・ビボ、イン・ビトロ又はエクス・ビボで行われうる。
【0143】
1つの実施態様において、標的細胞は腫瘍細胞である。
【0144】
幾つかの実施態様において、腫瘍細胞は、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、上部気道消化管癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、生殖細胞癌、グリア芽腫、ホジキン(Hodgkin)リンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、胚癌、骨髄腫、腎芽細胞腫(ウィルムス(Wilms)腫瘍)、神経芽細胞腫、非ホジキン(Hodgkin)リンパ腫、食道癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、胸膜癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、皮膚癌 (メラノーマを含む)、小腸癌、軟部肉腫、胃癌、精巣癌及び甲状腺癌からの細胞を含む群において選択される。
【0145】
1つの観点において、本発明は、腫瘍を処置及び/又は阻止する為の活性剤としての使用の為の核酸であって、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の該核酸に関する。
【0146】
幾つかの実施態様において、該腫瘍は、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、上部気道消化管癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、生殖細胞癌、グリア芽腫、ホジキン(Hodgkin)リンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、胚癌、骨髄腫、腎芽細胞腫(ウィルムス(Wilms)腫瘍)、神経芽細胞腫、非ホジキン(Hodgkin)リンパ腫、食道癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、胸膜癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、皮膚癌 (メラノーマを含む)、小腸癌、軟部肉腫、胃癌、精巣癌及び甲状腺癌を含む群において選択される。
【0147】
幾つかの実施態様において、当業者は、幹細胞及び前駆細胞、造血幹細胞及び前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、並びに異なる種由来の成体細胞を含むであろうエクス・ビボ操作及び/又は治療が本発明の範囲内に包含されうることを理解しうる。理論に拘束されることを望まないが、本発明者等は、当業者が再生医療を行っているときにこれが特に重要であると考える。
【0148】
或る実施態様において、本発明により包含される核酸及び核酸ベクターは、基本的な倫理原則を念頭に置いて、動物又は植物のモデル、例えば前臨床試験の為の動物モデル、を設計する為に用いられうる。
【0149】
本発明の他の観点は、養子細胞移入の為の活性剤としての使用の為の核酸であって、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸に関する。
【0150】
方法
本明細書において開示された方法は、イン・ビトロ、イン・ビボ又はエクス・ビボで達成されうる。
【0151】
本発明の他の観点は、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクターの、それを必要とする個体への投与する工程を少なくとも含む、アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の方法に関する。
【0152】
1つの観点において、本発明は、本明細書において定義される通り、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の核酸又は核酸ベクターの、それを必要とする個体への投与する工程を少なくとも含む、腫瘍を処置及び/又は阻止する為の方法に関する。
【0153】
幾つかの実施態様において、上記の方法はさらに、少なくとも1つの必須アミノ酸、特にヒスチジン(His,H)、イソロイシン (Ile,I)、ロイシン(Leu,L)、リシン(Lys,K)、メチオニン(Met,M)、フェニルアラニン(Phe,F)、トレオニン(Thr,T)、トリプトファン(Trp,W)及びバリン(Val,V)を含む群において選択されるアミノ酸、が付属している食事を個体に提供する工程を含む。
【0154】
或る実施態様において、上記の方法は、代替として、該調節ポリヌクレオチドに含まれるAARE核酸を活性化することが知られている化合物、特にハロフジノン、ツニカマイシンなどを含む群において選択される化合物、を投与する工程を含む。幾つかの実施態様において、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクターは、上記の通り、医薬組成物として処方されうる。
【0155】
幾つかの実施態様において、該医薬組成物は、それを必要とする個体に、任意の経路によって、すなわち経口投与、局所投与又は非経口投与によって、例えば注射、例えば皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、眼内投与及び耳介内投与、によって投与されうる。
【0156】
他の投与形態は、肺用処方、坐剤、及び経皮的適用を使用する。
【0157】
幾つかの実施態様において、本発明に従う経口製剤は通常の添加物、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、を含む。
【0158】
幾つかの実施態様において、化合物の有効量が、それを必要とする個体に投与される。
【0159】
本発明の範囲内において、「有効量」は、単独で所望の結果を刺激する、すなわち包含される疾患、特に癌、の症状を軽減又は根絶する、化合物の量を云う。
【0160】
所望の結果を観察する為に、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸又は核酸ベクター又は送達粒子の有効量を決定することは当業者の常識の範囲内である。
【0161】
本発明の範囲内において、投与されるべき化合物の有効量は、医師又は当業者によって決定されてもよく、且つ処置の時間経過内に適切に適合されることができる。
【0162】
或る実施態様において、投与されるべき有効量は、様々なパラメータ、例えば投与の為に選択される材料、投与が単回投与であるか又は複数回投与であるか、並びに、個体のパラメータ、例えば年齢、体調、大きさ、体重、性別及び処置される疾病の重症度を含む個体のパラメータ、を含む様々なパラメータ、に依存しうる。
【0163】
キット
更なる観点において、本発明は、腫瘍を処置及び/又は阻止する為のキットであって、
本明細書において定義される通りの医薬組成物、及び
抗腫瘍化合物
を含む、上記キットに関する。
【0164】
幾つかの実施態様において、該抗腫瘍化合物は、化学療法において一般的に用いられる化合物から当業者によって選択されうる。
【0165】
或る実施態様において、該抗腫瘍化合物は、アルキル化剤、プリン類似体、ピリミジン類似体、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、トポイソメラーゼ1の阻害剤、トポイソメラーゼ2の阻害剤、タキサン、モノクローナル抗体、サイトカイン、タンパク質キナーゼの阻害剤などを含む群において選択されうる。
【0166】
実施例
【0167】
1/方法。
【0168】
1.1/倫理規定。
本明細書において得られた実験データは、欧州の動物福祉規制に準拠したINRAガイドラインに従っている。マウスのメンテナンス及び全ての実験は、フランス及び欧州連合の法律(マウスB63-150で実験する許可、痴呆倫理委員会CEMEA CE10-13、動物施設契約C6334514、GMO契約4756CA-I)に準拠して、我々の施設内動物管理使用委員会によって承認されている。
【0169】
1.2/動物及び実験食。
AAREの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を発現するC57Bl/6遺伝子導入マウスは、Chaveroux等(Science signaling;2015年,8(374):rs5)に記載された通り、我々の研究室で操作された。フィッシャー(Fisher)ラット並びにBalB/Cマウス及びC57Bl/6マウスが、INRAでの動物施設に収容された。ヌードマウスが、Janvier labs(SM-NU-6S-M)から購入された。各実験について、1群当たり6週齢の雄が用いられた。該動物がレンチウィルスの腫瘍内又は組織送達と接触プロトコルとの間の期間中に死亡した場合、該動物は試験から除外された。試験官は、食事の投与と処置とに関して盲検でなかった。動物は、特に指示がない限り、常に食物及び水に自由にアクセスできた。動物がプラスチック製のケージに個々に収容され、そして病原体のない環境において、22℃の温度で、12時間の明/暗サイクルに付された。栄養実験が、Maurin等(Cell Metab,2005年,1,273-277)において以前に行われた通り行われた。
【0170】
大まかに言えば、げっ歯動物は絶えず少しずつ噛みつき且つ糞食性であることを考慮に入れて、それらの設計はげっ歯動物を扱うことに関連する偶発性に従うべきである。従って、マウスをアミノ酸が欠乏した食餌に付す前に、一晩の絶食期間が不可欠であり、一方でこの期間中に、新しく清掃されたケージが該動物に提供されることを確実にする。そうすることで、該動物は飢えて空腹になり、食餌が提供されると栄養食をすぐに食べるだろう。各食餌摂取量が実験で制御された。必要ならば、強制給餌がまた選択肢でありうるが、動物にとってストレスのない条件下で行われるべきである。実験用食餌は、INRA食事中核施設(Unite de Preparation des Aliments Experimentaux,INRA)において製造された。
【0171】
1.3/イン・ビボ レンチウィルス形質導入及び流体力学的注入手順。
脾臓注射が下記の通りに行われた:6週齢の雄のC57Bl/6 マウスがイソフルランで麻酔され、そして正中切開を通じて開腹手術が行われた。2x107個の粒子を含むレンチウィルスベクター溶液が、脾静脈内に投与された。注射の10日後に、16時間絶食されたマウスが、対照食餌又はイソロイシンが欠乏した食餌を6時間与えられた。実験の最後に、全身及び切除された膵臓の生物発光が生物発光画像法システム(IVISスペクトル,PerkinElmer)を用いることによって測定された。
【0172】
レンチウィルス粒子の海馬投与は、6週齢の雄の344匹のラットで行われた(1群当たり6匹)。動物はイソフルランで麻酔され、そして定位固定フレームに入れられた。注射の前に、レンチウィルスベクターが滅菌PBSで希釈され、そして10x109の力価を達成した。2μL容量におけるウィルス調製物が海馬の歯状回領域内に一側性に注射された。該調製物は、ハミルトンの5μLシリンジ及び27Gシリンジを用いることによって、4分間に亘って、0.5 μL/分の速度で注射された。
【0173】
流体力学的注射が、マウスの10%身体容積に対応する生理食塩水緩衝液中に50μgのpGL3-2XAARETRB3-Tk-LUC プラスミドを希釈することによって調製さて、そして6週齢の雄のBalB/Cマウスの尾静脈に5秒間に亘って投与された(1群当たり6匹)。注射の24時間後に、16時間絶食されたマウスは、対照食餌又はイソロイシンが欠乏した食餌を6時間与えられた。実験の最後に、全身及び切除された肝臓の生物発光が生物発光画像法システム(IVISスペクトル,PerkinElmer)を用いることによって測定された。
【0174】
イン・ビボ生物発光実験の為に、遺伝子導入法の後、基礎光放射が、IVISスペクトル測定を通じて評価された。マウスがルシフェラーゼ活性に対してそれぞれランク付けされ、そして実験群に分配されて、異なる群間で等しい平均生物発光活性を保証した。
【0175】
1.4/イン・ビボ腫瘍異種移植モデル。
腫瘍が、200μLのDMEMに懸濁された2x106のGli36-luc細胞を左側腹部内に注射することによって得られた。異種移植片移植の為の1週間の期間の後に、マウスが、該腫瘍の光放射に従ってランク付けされ、そして次に実験群に分配されて、該群間の平均腫瘍体積を確実に等しくした。次に、腫瘍が109のレンチウィルス粒子で注射され、そして指示された栄養条件に付された。異種移植片移植の為の1週間の期間の後に、腫瘍が109のレンチウィルス粒子で注射され、そして指示された栄養条件に付された。結果として得られた腫瘍の大きさが、生物発光画像法システム(IVISスペクトル,Perkin-Elmer)を用いることによって毎週測定された。終点で、マウスが屠殺され、そして腫瘍が外科的に採取され、秤量され、写真撮影され、そしてその後のタンパク質分析の為に瞬間冷凍された。
【0176】
1.5/血漿 アミノ酸分析。
血液サンプルが、麻酔されたマウスの大動脈から採取された。血漿アミノ酸が精製された。すなわち、100μLの血漿が、予め蒸発された30 μLのスルホサリチル酸溶液(0.5mol/Lのチオグリコールを含むエタノール中1mol/L)に添加された。我々は、サンプル処理効率を評価する為に、ノルロイシンを内部標準として添加し、それは生の値を補正する為に使用された。アミノ酸濃度が、BTC 2410樹脂(Hitachi Chemical)とともにL8900アミノ酸分析器(ScienceTec,Courtaboeuf,France)を用いて決定された。
【0177】
1.6/身体測定。
脂肪及び除脂肪量が、拘束された個々のマウスをマウス EchoMRI-100機器(Echo Medical Systems LLC)に入れることによって決定された。筋消耗評価の為に、実験の24日後に、腓腹筋、ヒラメ筋及び前脛骨筋後部骨格筋が秤量された。EAA欠乏食餌が与えられたマウスからの結果が、対照群データに報告され、そしてパーセントで表された。
【0178】
1.7/細胞培養及びレンチウィルス形質導入。
マウス胎児線維芽細胞(MEF:Mouse embryonic fibroblasts)、HeLa細胞及びGli36-luc細胞が、10%のウシ胎児血清を含むダルベッコの改変イーグル培地F12(DMEM F12:Dulbecco’s modified Eagle’s medium F12)(Sigma)中、37℃で培養された。指示がある場合には、ロイシンを欠くDMEM F12(DMEM F12 Base)(Sigma)が用いられた。アミノ酸飢餓を含む全ての実験において、10%の透析された牛血清が用いられた。Gli36-Luc細胞が、Shah K博士(Harvard Medical School,Boston,MA)の贈り物である。GCN2-/-及びPERK-/-MEFsは、D.Ron博士及びH.Harding博士(Institute of Metabolic Science,Cambridge,UK)によって与えられた。PKR-/-MEFsは、John C Bell博士(Ottawa health research institute,Canada)からのものである。KO MEFsはPCR及びウェスタンブロット解析によって、及びGli36-Luc細胞はルシフェラーゼアッセイによって確認された。全ての細胞株が、マイコプラズマフリーであった。Gli36-luc細胞が、ポリブレン(5 μg/mL)の存在下で、10のMOIを用いることによって、LV-AARE-eGFPベクター又はLV-AARE-TRAILベクターのいずれかで形質導入された。感染の48時間後に、細胞が10cm皿に移され、そして実験目的の為に維持された。
【0179】
1.8/免疫ブロット分析及び抗体。
ウェスタンブロットが、Maurin等 (Cell reports,2014年,6,438-444)において以前に記載された通りに行われた。使用された一次抗体は、抗ホスホ-eIF2α(Abcam,ab32157)、抗ATF4(Santa Cruz,sc-200)、抗アクチン(Santa Cruz,sc-1616R)、切断された抗PARP(Cell signalling tech.,5625)、抗TRAIL(Cell signalling tech.,3219)であった。
【0180】
1.9/一過性形質転換及びルシフェラーゼアッセイ。
細胞が24ウェルプレートに播種され、そしてBruhat等(Mol Cell Biol,2000年,20,7192-7204)において以前に記載された通り、リン酸カルシウム共沈法によってトランスフェクションされた。全てのトランスフェクション実験について、プラスミドpCMV-βGALが内部標準として使用された。相対ルシフェラーゼ活性は、相対ルシフェラーゼ単位/相対β-Gal単位の比として与えられた。全ての値は、3回の独立した実験の結果から計算された平均である(1群当たり3サンプル)。
【0181】
1.10/プラスミド及びレンチウィルス構築。
2XAARE TRB3-Tk-LUCプラスミド、2XAARE CHOP-Tk-LUCプラスミド及び2XAARE ATF3-Tk-LUCプラスミドが、2つのコピーの異なるAARE配列を含むSacI-XhoI二本鎖オリゴヌクレオチドをpcDNA3-TK-Lucプラスミド内に挿入することによって構築された。2XAARE TRB3-β-グロブリン-LUC構築物が、Xho1 及びHindIII制限部位に隣接するTKミニマルプロモーター配列を様々なAARE配列に対応する二本鎖配列で置換することによって得られた。2XAARE TRB3-Tk-eGFPレンチウィルス及び2XAARE TRB3-Tk-TRAILレンチウィルスが、Nco1及びXba1 制限部位に隣接するeGFP及びヒトTRAIL cDNA 配列(GeneCust)を合成することによって得られた。次に、DNAカセットが、Trib3遺伝子からの2つのコピーのAAREを含むHIV-INS ベクター内に挿入された。2XAARE TRB3-Tk-eGFPレンチウィルス及び2XAARE TRB3-Tk-TRAILレンチウィルスが、Vectorology施設(ICM,Paris)において生産された。
【0182】
操作の容易の為に、2XAARE TRB3-Tk-TRAIL構築が、SEQ ID NO: 8によって記載された通り、pENTR プラスミドに最初に実行された。
【0183】
1.11/細胞生存、アポトーシス及びELISAアッセイ。
細胞の生存率が、XTT細胞生存率キット(Cell signaling tech.,9095)を用いて測定された。アポトーシスが、製造者の指示に従って、ANXA5/PE/7-AADアポトーシス検出キット(BD Biosciences,559763)を用いてフローサイトメトリー分析によって評価された。ELISAアッセイに関して、処理の16時間後に培地が回収され、そしてヒトTRAIL/TNFSF10 Quantikine ELISAキット(R&D systems,DTRL00)を用いてTRAILタンパク質決定の為に使用された。
【0184】
1.12/統計。
各細胞実験が3回繰り返された。全ての動物実験群が、6匹のマウス又はラットから構成された。すべての統計分析が、GraphPad Prism 6(GraphPad Software)を用いて生成され、そして全てのデータが平均±SEMとして表される。2以上の実験群の比較の為に、統計的有意性が、0.05のアルファーレベルで、スチューデントのt検定又は2次元配置分析(two-way ANOVA)(その後、一対比較p値を調製する、ボンフェローニの事後試験(Bonferroni’s post-hoc test))を介して評価された。*p <0.05,**p<0.01 及び***p<0.001。
【0185】
2/結果
【0186】
2.1/アミノ酸制限に応じて転写制御する異種系の最適化及びイン・ビボ検証
以前の結果に基づいて、EAA可用性によって制御される新しい遺伝子発現が最適化された。以前に報告された通り、Trb3遺伝子、Chop遺伝子及びAtf3遺伝子は、GCN2-eIF2α-ATF4 経路の活性化後に上方制御され、そしてそれらの発現を誘発する為にATF4の特異的なAAREへの補充を意味する(図1)。これらのAAREは、Chop及びAtf3プロモーター内にコア配列の単一コピーとして又はTrb3プロモーター中の3つのコピーの繰り返しとして存在する。
【0187】
レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いて、2つの最小プロモーター(チミジンキナーゼ及びβ-グロブリン)と融合されたこれらのAAREの異なる組み合わせが、トランスフェクションされたマウス胎児線維芽細胞(MEF:Mouse Embryonic Fibroblasts)において試験された。最も高い応答性は、TK プロモーターに関連付けられた2つのコピーのTrb3 AARE(コア配列の6反復)で得られ、低いバックグラウンドレベルでロイシン飢餓に応答して6倍の誘導を生じた(図示せず)。β-グロブリンミニマルプロモーターを有する構築物が、TKプロモーターでの場合よりも3倍高い対応するバックグラウンドレベルで、同様の誘導レベルを提供した(図示せず)。従って、全ての更なる実験は、TKミニマルプロモーターに関連付けられた2つのTrb3 AAREで実行された。この構築物は、AARE駆動発現系と命名された(図2)。
【0188】
最後に、マウス(MEF) 細胞又はヒト(HeLa)細胞において安定して組み込まれている場合、アミノ酸飢餓によるこの構築物の誘導性の維持が確認された(図示せず)。GCN2以外に、eIF2αが哺乳動物組織において下記の3つの他のキナーゼによってリン酸化されることができる:PKR(dsRNA及びサイトカインによって活性化される)、PERK(小胞体ストレスによって活性化される)、又はHRI(ヘム欠乏によって活性化される)。HRIは、赤血球系細胞特異的様式で発現される;それ故に、注意が、偏在的に発現されるキナーゼGCN2、PKR及びPERKの役割に集中された。ロイシン飢餓に応答して、ルシフェラーゼ誘導がGCN2-/-細胞において完全に廃止され、一方PERK-/-細胞及びPKR-/-細胞において効果が観察されず、導入遺伝子調節がGCN2 発現に厳密に依存することを示す(図示せず)。次に、我々は、ロイシンの濃度に関してルシフェラーゼ発現のイン・ビトロ誘導を試験した。レポーター遺伝子発現の誘導は、ロイシン濃度に反比例する(図示せず)。最も通目すべきことに、このイン・ビトロ実験において、転写活性化を引き起こすロイシン濃度は、ロイシン欠乏食の摂取後に哺乳動物において得られる濃度と同様であり、それはまたイン・ビボでも同様に有効でありうる。
【0189】
有機体が食餌中の遊離アミノ酸を迅速に吸収することを考慮して合成食が調製され、その中でタンパク質画分が遊離アミノ酸の混合物によって置き換えられる。この状態において、該食餌が1つのEAAを欠いているとき、血中の子のEAAのレベルは急速に減少するはずである。この遺伝子調節系の概念を動物に転換する為に、我々は最初に、食後の血中ロイシン含量に対するロイシン欠乏食の影響を試験した。図3は、対照食の摂取後の食後期間中に血中ロイシンレベルが増加したことを示す。これとは際立って対照的に、ロイシン血症は、ロイシンが欠乏した食餌を摂取してから30分後には早くも劇的に減少した。
【0190】
AARE駆動発現系のイン・ビボ検証は、Chaveroux等(Science signaling,2015年,8(374):rs5)によって以前に設計されたAARE駆動ルシフェラーゼマウスモデルを利用することによってさらに評価された。ロイシンを含まない食餌の摂取は3時間で腹部内の生物発光における著しい増加を結果としてもたらし、且つ少なくとも12時間維持された(図4)。16~24時間の絶食期間は、導入遺伝子発現に影響を及ぼさなかった(図5)。以前の研究は、GCN2-eIF2α-ATF4経路がロイシンが欠乏した食餌の摂取後にイン・ビボで迅速に活性化されることを示した。例えば、Trb3をコードする肝臓mRNAは、ロイシンを含まない食事の開始後1時間で有意に誘発される。測定可能な生物発光を得る為の遅延は、十分なルシフェラーゼを蓄積する必要があるためである。以前のイン・ビトロの結果から予想される通り、この実験は、AARE駆動発現系がイン・ビボでも同様に機能することを明らかに示す。
【0191】
2.2/AARE駆動発現系の最適栄養誘導の決定
哺乳動物において、9個のEAAが食餌中に供給されなければならず、それらのいずれか1つが欠乏することは、AARE駆動発現系の潜在的な誘導物質となる。9個のEAAのそれぞれを独立して枯渇させた食餌の効果が、AAREによって駆動されるルシフェラーゼ発現のレベルに関して比較された。第1に、欠乏しているEAAの血中濃度が食餌の摂取後に有意に低下することが確認された。減少の程度は、アミノ酸によって異なる(図示せず)。ルシフェラーゼ活性の誘導率は、特定の食餌に動物を切り替えた6時間後に、イン・ビボでの生物発光画像法によってAARE駆動ルシフェラーゼマウスにおいて測定された。誘導率は、イソロイシン又はトリプトファン飢餓の場合、5~50を超えて変化した。予想通り、絶食されたマウスにおいて又は非必須アミノ酸、例えばアラニン、が欠乏した食餌を与えあれたマウスにおいて、ルシフェラーゼ誘導は観察されなかった。これらの結果はAARE駆動発現系の順応性を強調し、その中で各個々のEAAが潜在的な誘導物質として働くことができる。
【0192】
2.3/長期導入遺伝子発現の為の「栄養に基づく」プロトコル
遺伝子治療は、導入遺伝子の長期発現を必要としうる。長期EAA欠乏が生理学的に関連性がないことを考慮して、導入遺伝子の長期発現を維持する能力は、AARE動発現系の順応性を利用することによって試験された。そのために、欠けているEAAのそれぞれを交換するアミノ酸が欠乏した食餌のパルスが行われた。このパラダイムにおいて、AARE駆動ルシフェラーゼ マウスは、図6に記載されている通り、6日間、栄養サイクルに付された。腹部の生物発光を観測することが毎日行われた(図7)。生物発光に定量化は、導入遺伝子発現が食餌チャレンジの24時間後に基底レベル近くに戻ったことを明らかに示した。再誘導は、欠けているAAに依存して、最大レベルで同様の動態に従った。アミノ酸が1つのサイクルから他と異なるという条件で、EAA欠乏食餌の給餌サイクルはタンパク質代謝に影響を及ぼさない。体重、除脂肪体重及び体脂肪量のパーセント並びに筋肉量が、上記の周期的栄養プロトコル(図8に示さされている通り、4栄養サイクル)に24日間付されている動物においてモニターされた。図9図12に示されている通り、これらの生物学的パラメータはいずれも対照に対して修正されなかった。
【0193】
2.4/栄養に基づく調節系は、イン・ビボでの遺伝子導入の観点において有効である。
次に、遺伝子導入実験設定においてAARE駆動発現系を調節する栄養素の能力が、遺伝子治療に関連する様々な組織を標的とすることによって調査された。GCN2-eIF2α-ATF4 経路は偏在的であるけれども、或る器官はEAAを含まない食餌に対して、他のものよりもより敏感である。EAA欠乏食餌を与えられた遺伝子導入マウスからのデータは、この経路が、脳並びに、肝臓及び膵臓を含む多くの代謝器官において機能的であることを示した(図示せず)。遺伝子導入マウスに基づく以前の実験と同様に、動物が一晩の飢餓、引き続きイソロイシン欠乏食を6時間与える栄養プロトコルを与えられた。
【0194】
一連の実験において、AAREによって駆動されるルシフェラーゼを担持するプラスミドの最初の流体力学的注入は、Balb/C マウスの尾静脈内で調査され、肝臓トランスフェクションを許した。腹部領域における及び集められた肝臓における生物発光は、対照食餌と比較して6時間の食餌性イソロイシン飢餓に応答して、劇的に誘発された(図13)。肝臓タンパク質抽出物のルシフェラーゼ アッセイは、ルシフェラーゼ活性のこの増加を確認した(図14)。
【0195】
第2セットの実験において、肝臓組織が、AAREよって駆動されるルシフェラーゼを担持するレンチウィルスベクターで形質導入された。発光の明瞭な誘導が、誘導物質食餌に応答して膵臓において観察され、それはタンパク質抽出物におけるルシフェラーゼ活性を測定することによって確認された(図15及び図16)。マウスの他の部分においてシグナルは検出されなかった。最後に、脳内のAARE駆動発現系の調節を試験する為に、AARE-駆動Luc発現系のレンチウィルス注射が、ラットの海馬、定位注射によって容易にアクセス可能である脳領域において行われた。左海馬は、AARE-Luc配列を含むレンチウィルス粒子を受け取り、一方、右海馬は、AARE配列無しの粒子を受け取った。栄養プロトコルの完了時に、ルシフェラーゼ活性が脳抽出物内において測定された。図17において示されている通り、AARE-駆動 Luc 発現系を有するベクターを含有する左海馬の脳抽出物は、増加したルシフェラーゼ活性を示し、一方、右海馬及び、左海馬の非注射領域は、バックグラウンド活性を発現した。
【0196】
これらのイン・ビボ研究の状況において、AARE駆動発現系は、ハロフギノンと、プロピル-tRNAシンターゼ18を阻害することによりアミノ酸飢餓を模倣するGCN2の薬理学的 活性化因子との腹腔内注射後に、肝臓において及び膵臓において薬理学的に誘発されることができることが観察された(図示せず)。GCN2の薬理学的活性化は、栄養プロトコルに対する代替案を提供することができる。しかしながら、ハロフギノンの特異的、薬物動態的、及び潜在的な有害作用の慎重な評価が待たれている。
【0197】
2.5/危険な治療因子の発現を調節する為の「栄養に基づく」プロトコルの適用
幾つかの例において、治療的因子のレベルは、患者の必要性及び/又は望ましく名毒性作用の場合に排除されるその発現に従って厳密に調整される必要がありうる。TRAILが、関心のある遺伝子として選択された。TRAILは、アポトーシスを開始する為に特定のデス受容体で結合することによってパラクリン様式で作用する分泌サイトカインである。TRAILは、特にグリア芽腫細胞において精力的に研究されてきた。それは短い生物学的半減期(30分)を有し、且つ全身投与後に体から急速に除去される。しかしながら、TRAILへの正常なヒト細胞の長期暴露は、依然として有毒でありうる。
【0198】
その状況において、長期の「栄養に基づく」プロトコルは、TRAIL発現の調節に対する適切な解決策を表しうる。ヒトGli36-ルシフェラーゼ細胞は、グリア芽腫細胞の為のモデルとして使用された。恒常的にルシフェラーゼを発現するこれらの細胞は、AARE-駆動TRAIL発現系で形質導入された。第1に、TRAIL タンパク質発現は、ロイシン飢餓に応答して、培地中に分泌され、周囲の細胞にパラクリン効果を及ぼし、そしてアポトーシスを誘発することが確かめられた(図示せず)。
【0199】
最初に、我々は、ヌードマウスにおけるGli36-ルシフェラーゼ グリア芽腫異種移植片に対するTRAIL発現の効果を試験した。レンチウィルスベクターは腫瘍内に直接的に注射され(細胞移植後1週間)、そして上記の長期「栄養に基づく」プロトコルが2週間適用された。腫瘍展開は、生物発光画像法によって評価された。注目すべきことには、TRAIL発現は、総レベルでは明らかな毒性無しに腫瘍成長を妨げた(-EAA群)が、対照食餌を与えられた同様の動物は阻害を示さなかった(Ctrl群)(図18及び図19)。腫瘍からのタンパク質の医務のブロット分析は、-EAA群からのマウスのみがアポトーシスマーカー切断されたPARPの上昇を示し、アポトーシス過程がこれらの細胞内で生じ且つ対応する対照において生じなかったことを示す(図20及び図21)。
【0200】
重要なことに、TRAILタンパク質は、-Ile食餌期間の6時間後に、-EAA群からの腫瘍においてのみ検出された。予想された通り、栄養プロトコルそれ自体は、腫瘍成長に影響を及ぼさなかった(図示せず)。まとめると、これらの知見は、導入遺伝子発現のパルスを生成する為のAARE駆動発現系の能力を検証し、それによって長期/断続的な遺伝子治療処置を許す。
【0201】
3/議論
治療遺伝子発現の一時的な調節は、遺伝子治療の臨床的有用性を広げるために長い間待たされてきた。栄養欠乏の生理学に関連する基礎研究の状況において最初に発見された調節系が、どのようにして、外因性導入遺伝子の発現を制御する為の非常に単純で、非常に特異的に、信頼性があり、そして頑丈な手段を提供するか、及び実験から臨床治療への転換に望ましい特性を示すかが、本明細書において示される。
【0202】
この栄養に基づく調節系の展開は、アミノ酸欠乏を感知する適応的GCN2-eIF2α-ATF4シグナル伝達経路を利用する。酵母から人まで保存されているこの経路は、雑食動物が1つのEAAにおいて制限された食事(単一の植物タンパク質源のみが利用可能である場合に野生で頻発に発生する可能性がある状況)に直面した場合に、引き起こされる。
【0203】
GCN2-eIF2α-ATF4経路の活性化は専らEAA不均衡食事の消費に応答して生じ、そして他のいかなるヒトの栄養状態にも関与していない。生理学的条件、例えば空腹時、は、それがGCN2 経路を誘発するような程度までアミノ酸血中濃度に影響を及ぼさない。長期間の絶食に応答して、全てのアミノ酸の血中濃度は、肝臓、そして次に筋肉中の増加したタンパク質分解を含む補償機構を通じで維持されるであろう。
【0204】
GCN2-eIF2α-ATF4経路は、多数の組織、例えば肝臓、膵臓、において、及び脳の様々な部分において見出されており、それによってAARE駆動発現系の多数の疾患への大きな潜在的適用性を明らかにする。それは非ヒト/ウィルス転写因子/調節タンパク質に依存する外因性リガンド誘導系に基づいていないので、それは独特であり且つ固有の毒性を示さず、それは免疫応答を生じる可能性がある。その上、それは薬理学的誘導物質の必要性を排除し、それは特に長期処置の為に、毒性効果を生じる可能性がある。
【0205】
誘導物質食事は容易に吸収される遊離アミノ酸で構成されている故に、栄養に基づく調節系は所望の遺伝子の発現を正確に調整する為に頑強で且つ柔軟な手段を提供し、それによって、急速なEAA血流速度論及び治療的導入遺伝子の誘発をもたらす。所与の導入遺伝子の発現のレベルは、食事において欠けている特定のEAAに応じて、依存するであろう。午前中に患者において摂取された遊離アミノ酸からなる食事は、患者にとってチャレンジであるとは予想されない。すぐに食べられる食事パッケージを使用することは、補助食品を摂取することに似ているだろう。この臨床状況において、市場で入手可能であり且つメープルシロップ尿症 (MSUD:Maple syrup urine disease)において確認されているロイシンを含まない食事の医学的処方が、AARE系と併せて容易に使用されることができることはまた特に注目に値する。さらに、患者の個々のニーズ及び嗜好に合わせた新規な処方が開発されることができる。誘導期間後、患者は数時間後に通常の食事を再開することができた。必要に応じて、導入遺伝子の持続的な発現は、毎日又は数日ごとに、食事を交互にすることによって得られることができる。
【0206】
導入遺伝子発現の適時の外因性調節は、遺伝子弛緩/手術とは対照的に薬理学的遺伝子治療法の状況において特に適していると思われる。後者の戦略は、真正の機能的対応物による欠陥遺伝子の置換を許し、それによって外因性調節の必要性を排除する。対照的に、慣用的な薬理学的処置と同様である薬理学的遺伝子治療法は、導入遺伝子発現の長期/断続的な調節を必要としうる。適切な状況は、神経変性疾患の状況においてかなりの注目を集めているトロピック(tropic)因子によって表される。特に、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF:glial cell line-derived neurotrophic factor)は、成人の脳におけるドーパミン作動性ニューロンの生存に必須であることが示されており、及び遺伝子治療アプローチがパーキンソン病について評価されている。
【0207】
所与の調節系のダイナミクスは、遺伝子導入を通じて与えられた所与の薬の薬理学的特定に取り組む上で重要な特徴である。臨床的に適切である為には、遺伝子調節系は、安全な用量のベクター内で、広い用量範囲の誘導物質に亘って調節されるべきであり、且つ低レベルのバックグラウンド発現を示す。これに関して、結果のセクションに記載されたアポトーシス促進TRAILサイトカインの研究は、導入遺伝子発現と結果として生じた生理学的/臨床的効果との間の直接的且つ定量的な比較を提供した。
【0208】
具体的には、誘発された腫瘍において発現されたTRAILのレベルは、食事性イソロイシンに非存在下では、対照的条件下で得られたかすかなシグナルよりも100倍強いと推定された。注目すべきことには、TRAIL発現は、肉眼的レベルで明らかな毒性無しに腫瘍成長を阻止したが、対照食餌を与えられた動物は腫瘍阻害を示さなかった。栄養プロトコルに関連付けられたそのような高い誘導比は、導入遺伝子発現レベルを最適な治療レベルに適応させること、及び必要とされる場合にバックグラウンド活性を無効にすることにおいて大きな柔軟性を提供する。従って、臨床現場において、(i)治療ベクターの投与量、(ii)治療導入遺伝子を駆動するミニマルプロモーターの強度、(iii)対応するRNAの(不)安定化、(iv)全ての有効性及び安全性の懸念を満たすであろうEEAが欠乏した食事の選択の取り扱いを通じて、効率的且つ安全な用量の治療用分子を生成する立場にあるべきである。
【0209】
AARE系は、特定の状況において、eIF2α-ATF4シグナル経路がERストレス応答の3つの分岐のうちの1つの一部であるという事実を考慮すると、内因的に制御された系として作用しうる。従って、疾病組織内に厳密にベクターを送達した後、AARE依存性転写は、アルツハイマー病又はパーキンソン病を患っている患者の或る腫瘍又は或る脳領域などの状況において内部的に活性化されることができる。これらの例において、治療遺伝子の発現は、EAA欠乏食餌に頼ること無しに、内因的に引き起こされる可能性がある。代替的に、治療因子がパラクリン効果を有する分泌タンパク質である場合に、治療効果は、近隣の健全な組織内へのベクターの注射、そしてそれに続く食事の誘導によって得られうる。
【0210】
最後に、栄養に基づく調節系は、ベクターバックボーンの状況において、例えば多くの種類の細胞を効率的に形質導入し且つ遺伝子治療試験において現在使用される最も有望なウィルスベクターのうちの1つであるレンチウィルスベクターの状況において、有効であることが示された。この発見は、他のベクターがAARE系を発現する能力について他のベクターを試験することを要求し、それはさらに、栄養を調節された系の柔軟性及び可能性を例示しうる。明らかに、AARE系は、遺伝子治療の分野における新しい概念を強調し、合成の食事は治療用導入遺伝子発現の厳密で且つ頑健な時間的制御を可能にすることができ、それによって遺伝子治療プロトコルの臨床実体への転換における頻繁なハードルをロック解除する。
【0211】
本発明において使用される核酸配列
下記の表1は、本明細書において使用される核酸配列を開示する。
【0212】
【表1】
【0213】
チミジンキナーゼ(Tk)ミニマルプロモーター及びTRIB3遺伝子からのAARE核酸配列の6個のコピーを含む調節ポリペプチド:SEQ ID NO: 6
【0214】
【0215】
TRAILタンパク質のcDNA:SEQ ID NO:7
【0216】
【0217】
Trib3遺伝子配列からのAARE核酸の6個のコピー、Tkミニマルプロモーター、及びTRAILタンパク質をコードするcDNAを含むプラスミド pENTR:SEQ ID NO: 8
【0218】
【0219】
本明細書に記載の事項を以下にまとめる。
[1]
個体におけるアポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸であって、
ミニマルプロモーターと少なくとも1つのAARE(アミノ酸応答要素)核酸とを含む調節ポリヌクレオチド、ここで、上記調節ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの必須アミノ酸が不足している食事の摂取に応じて個体において活性化される、及び
上記調節ポリヌクレオチドの制御下に置かれる、アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸、
を含む、上記核酸。
[2]
上記アミノ酸応答要素(AARE)核酸が、配列SEQ ID No:1、SEQ ID No:2、SEQ ID No:3、SEQ ID No:4及びSEQ ID No:5の核酸を含む群において選択される、[1]に記載の核酸。
[3]
上記調節ポリヌクレオチドが少なくとも2つのAARE核酸を含む、[1]又は[2]に記載の核酸。
[4]
上記アポトーシス促進タンパク質がTRAILである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の核酸。
[5]
アポトーシス促進タンパク質をコードする核酸の制御された発現の為の核酸ベクターであって、[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸を含む、上記核酸ベクター。
[6]
[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸又は[5]に記載の核酸ベクターを含む送達粒子。
[7]
標的とされた細胞の膜において暴露された標的受容体への結合の為に適した1以上のリガンドをその表面に含む、[6]に記載の送達粒子。
[8]
(i)[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸、又は[5]に記載の核酸ベクター、又は[6]若しくは[7]に記載の送達粒子と、(ii)医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
[9]
[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸又は[5]に記載の核酸ベクターを含む宿主細胞。
[10]
医薬品としての使用の為の、[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸。
[11]
アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の活性剤としての使用の為の、[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸。
[12]
上記標的細胞が腫瘍細胞である、[11]に記載の使用の為の核酸。
[13]
腫瘍を処置及び/又は阻止する為の活性剤としての使用の為の、[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸。
[14]
アポトーシスを少なくとも1つの標的細胞内に誘発する為の方法であって、[1]~[[4]のいずれか1項に記載の核酸又は[5]に記載の核酸ベクターをそれを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法。
[15]
腫瘍を処置及び/又は阻止する為の方法であって、[1]~[4]のいずれか1項に記載の核酸又は[5]に記載の核酸ベクターをそれを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法。
[16]
腫瘍を処置及び/又は阻止する為のキットであって、
[8]に記載の医薬組成物、及び
抗腫瘍化合物
を含む、上記キット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
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