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  • 特開-吸収性物品 図1
  • 特開-吸収性物品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084286
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20220531BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20220531BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/534 110
A61F13/537
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196044
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA08
3B200BB10
3B200BB17
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB12
3B200DB18
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】急な多量の排尿であっても漏れにくく、排尿前後で一貫して良好な肌触りを保ち、かつ排尿後期でも通液性が保たれた吸収体を備えた吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に吸収体とを設けた吸収性物品であって、吸収体は、上層吸収体と、下層吸収体とを含み、下層吸収体は、高吸収性ポリマーを有し、上層吸収体は、上部嵩高多孔質体と、下部嵩高多孔質体とを含み、上部嵩高多孔質体と下部嵩高多孔質体は、いずれも全長にわたって吸収性物品の長手方向に平行な5本以上50本以下の溝を備え、かつ各々の溝が向かい合うように重ねられており、溝は、いずれも底部に高吸収性ポリマーが接着されていることを特徴とする、吸収性物品を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に吸収体とを設けた吸収性物品であって、
前記吸収体は、上層吸収体と、下層吸収体とを含み、
前記下層吸収体は、高吸収性ポリマーを有し、
前記上層吸収体は、上部嵩高多孔質体と、下部嵩高多孔質体とを含み、
前記上部嵩高多孔質体と前記下部嵩高多孔質体は、いずれも全長にわたって吸収性物品の長手方向に平行な5本以上50本以下の溝を備え、かつ各々の溝が向かい合うように重ねられており、
前記溝は、いずれも底部に高吸収性ポリマーが接着されていることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記上部嵩高多孔質体及び前記下部嵩高多孔質体の孔径がいずれも0.1mm以上3mm以下であり、空隙率がいずれも70vol%以上95vol%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記上層吸収体の高吸収性ポリマーは、いずれも前記溝の底部にホットメルト接着剤で接着されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層吸収体の高吸収性ポリマー及び前記下層吸収体の高吸収性ポリマーは、いずれも通液速度が0.3psiで20mL/分以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートと前記上層吸収体との間に、更に液透過性のセカンドシートを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。
【0003】
近年、ヘルスケア用品の薄型化のために、吸収体として高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer;SAPとも称される)を含有する吸収性コアを、クレープ紙等のキャリアシートで包んだものを用いる態様が広く知られている。
【0004】
このような吸収体の先行技術として、例えば、特許文献1には不織布状以外のパルプ繊維を含まない吸収用積層体であって、2枚の不織布が、不織布間に設けられたホットメルト接着剤からなる網状体層によって接着されていると共に、このホットメルト接着剤に吸水性樹脂粉末が付着してなる使い捨て製品の吸収用積層体が開示されている。
また、特許文献2には親水性多孔体及び吸収性ポリマーを含んで構成される下部吸収層と、該下部吸収層上に積層され、不織布及び吸収性ポリマーを含んで構成される上部吸収層とを具備する吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-106554号公報
【特許文献2】特開2009-131349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような高吸収性ポリマーを含むシート状の吸収体には以下のように問題があった。
まず、吸水速度がフラッフパルプを用いた吸収体よりも劣り、急な多量の排尿時(一般的な老人の平均排尿速度3~5mL/秒よりも速い速度で排尿された場合)に、吸収し切れずに漏れてしまいやすかった。また、排尿前はSAP粒子のジャリ感を感じやすく、排尿後はSAPの偏在により膨潤後の吸収体厚さが不均一になることで凹凸感を感じやすく、全般的に肌当たりが悪かった。
なお、吸収速度に関してはフラッフパルプをSAPと組合せることで課題を解決することができるが、全体的に吸収体が厚くなり、本来のSAPシートの薄いという特徴を弱めてしまう。
【0007】
一方で、特許文献2の吸収体は親水性多孔体(スポンジ)を用いているため、吸水速度と保水力に優れ、かつ柔らかさを有しているが、上層はSAPを単純に散布しているが故に、前述のSAP粒子のジャリ感や凹凸感の課題を解決できなかった。また、単純散布はゲルブロッキングも起こしやすく、排尿後期は下層のスポンジの働きを阻害してしまうという別の課題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、急な多量の排尿であっても漏れにくく、排尿前後で一貫して良好な肌触りを保ち、かつ排尿後期でも通液性が保たれた吸収体を備えた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行い、通常の吸収体の他に嵩高多孔質体を含む別の吸収体を配置し、嵩高多孔質体の内部に空隙ができるように上下に向かい合うように溝を設け、かつ各溝の底部に高吸収性ポリマーを配置することで、急な多量の排尿であっても漏れにくく、排尿前後で一貫して良好な肌触りを保ち、かつ排尿後期でも通液性が保たれた吸収体を備えた吸収性物品とすることができ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、上記トップシートと上記バックシートの間に吸収体とを設けた吸収性物品であって、上記吸収体は、上層吸収体と、下層吸収体とを含み、上記下層吸収体は、高吸収性ポリマーを有し、上記上層吸収体は、上部嵩高多孔質体と、下部嵩高多孔質体とを含み、上記上部嵩高多孔質体と上記下部嵩高多孔質体は、いずれも全長にわたって吸収性物品の長手方向に平行な5本以上50本以下の溝を備え、かつ各々の溝が向かい合うように重ねられており、上記溝は、いずれも底部に高吸収性ポリマーが接着されていることを特徴とする吸収性物品である。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、上記上部嵩高多孔質体及び上記下部嵩高多孔質体の孔径がいずれも0.1mm以上3mm以下であり、空隙率がいずれも70vol%以上95vol%以下であることを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、上記上層吸収体の高吸収性ポリマーは、いずれも上記溝の底部にホットメルト接着剤で接着されていることを特徴とするものである。
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記上層吸収体の高吸収性ポリマー及び上記下層吸収体の高吸収性ポリマーは、いずれも通液速度が0.3psiで20mL/分以上であることを特徴とするものである。
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記トップシートと上記上層吸収体との間に、更に液透過性のセカンドシートを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、急な多量の排尿であっても漏れにくく、排尿前後で一貫して良好な肌触りを保ち、かつ排尿後期でも通液性が保たれた吸収体を備えた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の吸収性物品の平面図である。
図2図1のY-Y線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。
【0014】
また、本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1を有する吸収性物品が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収性物品1の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収性物品1の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。さらに、吸収性物品1としては、特に軽失禁用製品、尿取りパッドが例示されるが、これに限定されるものではなく、それ以外の介護用おむつのような、パンツ型吸収性物品等の吸収性物品であってもよい。
【0015】
<吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図であり、図2は、図1のY-Y線における断面図である。本発明の吸収性物品1は、液透過性のトップシート10と液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20との間に吸収体30とを設ける。
なお、吸収性物品1は、長手方向の寸法は150mm以上600mm以下、幅方向の寸法は40mm以上200mm以下であることが好ましい。各寸法が上記の数値範囲内であることにより、軽失禁用製品、尿取りパッドに適した吸収性物品1を得ることができる。
【0016】
<トップシート>
トップシート10は、尿が吸収体30(特に上層吸収体31)へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、14g/m以上40g/m以下であることが好ましく、18g/m以上30g/m以下であることがより好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30(特に上層吸収体31)へと誘導するために必要とされる、吸収体30を覆う形状であればよい。
【0017】
<バックシート>
バックシート20は、吸収体30(特に下層吸収体32)が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、通気性又は非通気性である、不透液性のポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを使用できる。
【0018】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、14g/m以上40g/m以下であることが好ましく、15g/m以上35g/m以下であることがより好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0019】
<上層吸収体>
本発明の吸収性物品1が備える吸収体30は、上層吸収体31と、下層吸収体32とを含む。
上層吸収体31は、下層吸収体32より肌当接面側にあることにより、排尿時に下層吸収体32より先に尿を吸収する。その後、尿が下層吸収体32に移動すると上層吸収体31は乾燥状態となり、そこから更に排尿された尿を吸収するというサイクルを繰り返すことになる。
上層吸収体31は上部嵩高多孔質体40と下部嵩高多孔質体41とを含むが、いずれも材質としては親水性を有するもの(親水化処理をしたものも含む)であれば特に問わないが、中でも軟質ポリウレタンフォームが好ましい。
【0020】
なお、上部嵩高多孔質体40及び下部嵩高多孔質体41は、いずれも長手方向の寸法は150mm以上600mm以下、幅方向の寸法は40mm以上200mm以下であることが好ましく、また、厚さは5mm以上10mm以下であることが好ましい。各寸法が上記の数値範囲内であることにより、軽失禁用製品、尿取りパッドに適した吸収性物品1を得ることができる。
また、吸収速度及び通液性の点から上部嵩高多孔質体40及び下部嵩高多孔質体41の孔径がいずれも0.1mm以上3mm以下であることが好ましく、空隙率がいずれも70vol%以上95vol%以下であることが好ましい。孔径及び空隙率がいずれも上記の数値範囲内であることにより、急な多量の排尿であっても漏れにくく、かつ排尿後期でも通液性が保たれた吸収体30を備えた吸収性物品1を得ることができる。
【0021】
さらに、上部嵩高多孔質体40と下部嵩高多孔質体41は、いずれも全長にわたって吸収性物品1の長手方向に平行な5本以上50本以下の溝60を備え、かつ各々の溝60が向かい合うように重ねられている。これらの溝60のいずれも、底部に高吸収性ポリマー51が接着されている。なお、図1及び図2では溝60は5本備えられている。
このように上層吸収体31の内部に高吸収性ポリマー51を配置することで、下層吸収体32だけでなく上層吸収体31の吸水効率も高められることになり、急な多量の排尿(老人の平均排尿速度以上、例えば10mL/秒で排出された尿)でも漏れにくい吸収性物品1を得ることができる。また、高吸収性ポリマー51が膨潤しても、溝60の内部で収まり、高吸収性ポリマー51が配置されていない溝60の部分は尿の通り道として残存するため、排尿後期でも通液性が保たれた吸収体30を備えた吸収性物品1を得ることができる。
【0022】
なお、溝60の幅方向の寸法はそれぞれ3mm以上10mm以下であることが好ましく、深さはそれぞれ2mm以上5mm以下であることが好ましい。また、上述のように溝60はいずれも上部嵩高多孔質体40と下部嵩高多孔質体41の全長にわたって備えられており、それにより幅内側方向へ吸収性物品1が屈曲しやすく、股下の間での着用不快感が軽減される。
また、高吸収性ポリマー51は、いずれも溝60の底部にホットメルト接着剤で接着されていることが好ましい。溝60と高吸収性ポリマー51との接着面は通液性が低下するが、溝60の側面から尿を吸水することができるため、通液性が極端に悪くなることはない。
【0023】
<下層吸収体>
本発明の吸収性物品1において、下層吸収体32の長手方向の寸法は、150mm以上600mm以下であることが好ましく、上層吸収体31と同等または長いことがより好ましい。また、下層吸収体32の幅方向の寸法は、40mm以上200mm以下であることが好ましく、上層吸収体31と同等または広いことがより好ましい。
【0024】
下層吸収体32は、高吸収性ポリマー50を含むが、フラッフパルプ等のその他の吸水性基材は含まない方が好ましい。
下層吸収体32がフラッフパルプを含まないことにより、吸収性物品1が備える吸収体30が従来の軽失禁用製品や尿取りパッドに用いられる吸収体よりも薄型の吸収体となり、吸収性物品1の着用時における股下の不快感を軽減することができる。
【0025】
(高吸収性ポリマー)
本発明の吸収性物品1は、上層吸収体31内部に高吸収性ポリマー51や、より非肌当接面側である下層吸収体32に高吸収性ポリマー50を配置することにより、上層吸収体31がクッションの役割を果たし、排尿前のSAPのジャリ感や膨潤後の凹凸感を感じにくく、排尿前後で一貫して良好な肌触りを保つ吸収体30を備えた吸収性物品1を得ることができる。
【0026】
高吸収性ポリマー50及び高吸収性ポリマー51としては、いずれも体液を吸収し、かつ、液戻りを防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、特にポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。また、高吸収性ポリマー50及び高吸収性ポリマー51の坪量は、いずれも200g/m以上1200g/m以下であることが好ましく、通液速度が0.3psiで20mL/分以上であることが好ましい。
【0027】
(キャリアシート)
また、下層吸収体32は更に、図2に示すように高吸収性ポリマー50を包むようなキャリアシート80を有していてもよい。
キャリアシート80は、トップシート10と同様に、尿が高吸収性ポリマー50へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布や、ティシュペーパー等の薄葉紙を使用できる。
【0028】
強度、加工性及び液戻り量の点から、キャリアシート80の坪量は、14g/m以上30g/m以下であることが好ましく、15g/m以上20g/m以下であることがより好ましい。キャリアシート80の形状としては特に制限はないが、吸収した尿を漏れなく高吸収性ポリマー50へと誘導し、かつ高吸収性ポリマー50が隙間から脱落しないために必要とされる、高吸収性ポリマー50の全体を覆う形状であればよい。
【0029】
<セカンドシート>
また、吸収性物品1はトップシート10とバックシート20以外にも、図2に示すように液透過性のセカンドシート70を、トップシート10と上層吸収体31との間に配置してもよい。
セカンドシート70は、トップシート10と同様に尿が上層吸収体31へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。
【0030】
強度、加工性及び液戻り量の点から、セカンドシート70の坪量は、14g/m以上80g/m以下であることが好ましく、15g/m以上50g/m以下であることがより好ましい。セカンドシート70の形状としては特に制限はないが、トップシート10と同様の形状であることが好ましい。
【0031】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが、当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0032】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
下記の表1に記載された実施例1及び2の上層吸収体(上下の嵩高多孔質体)を含む吸収体を備えたパンツ型吸収性物品を作製し、市販の2種類の嵩高多孔質体を含まないパンツ型吸収性物品を比較例1及び2として、下記の実験を行った。なお、実施例1及び2の上下の嵩高多孔質体における溝の本数はいずれも8本であった。
<吸収速度3回法>
底面積16.8cmの円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定治具を、パンツ型吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ150mlを投下し、生理食塩水がパンツ型吸収性物品に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測した。3回測定時の合計を表1に示した。
【0034】
<液戻り量>
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水150mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製 No.2ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cmの錘を乗せ、30秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量とした。結果を表1に示した。
【0035】
<着用感:吸収前の柔らかさ>
20名のパネラーにより、吸収前の柔らかさについて、「柔らかい」又は「硬い」の選
択で着用評価を実施して調査を行い、以下の基準により評価を行った。結果を表1に示した。
◎:「柔らかい」が16人以上20人以下のとき
○:「柔らかい」が11人以上15人以下のとき
△:「柔らかい」が6人以上10人以下のとき
×:「柔らかい」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0036】
<着用感:吸収後の厚みの変化に起因する違和感のなさ>
20名のパネラーにより、吸収後の厚みの変化による違和感のなさについて、「違和感
がある」又は「違和感がない」の選択で着用評価を実施して調査を行い、以下の基準により評価を行った。結果を表1に示した。
◎:「違和感がない」が16人以上20人以下のとき
○:「違和感がない」が11人以上15人以下のとき
△:「違和感がない」が6人以上10人以下のとき
×:「違和感がない」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように、実施例1及び2の吸収性物品はいずれも吸水速度に優れ、液戻り量も少なく、かつ、吸収前及び吸収後の着用感のいずれも良好であった。一方で比較例1及び2の吸収性物品はいずれも吸収前の着用感には優れるものの、吸水速度が遅く、液戻り量も多く、吸収後の着用感に劣るものであった。
以上より、本発明の吸収性物品は、急な多量の排尿であっても漏れにくく、排尿前後で一貫して良好な肌触りを保ち、かつ排尿後期でも通液性が保たれた吸収体を備えた吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 吸収性物品
10 トップシート
20 バックシート
30、31、32 吸収体
40、41 嵩高多孔質体
50、51 高吸収性ポリマー
60 溝
70 セカンドシート
80 キャリアシート
図1
図2