(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084292
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】前後輪駆動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 17/356 20060101AFI20220531BHJP
B60K 23/08 20060101ALI20220531BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20220531BHJP
B60K 17/34 20060101ALI20220531BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20220531BHJP
B60K 6/387 20071001ALI20220531BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20220531BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220531BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220531BHJP
【FI】
B60K17/356 B
B60K23/08 Z
B60K17/04 G
B60K17/34 Z
B60K6/36 ZHV
B60K6/387
B60K6/52
B60K6/48
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196053
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 則行
【テーマコード(参考)】
3D036
3D039
3D043
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D036GA02
3D036GA14
3D036GA26
3D036GB05
3D036GJ17
3D039AA03
3D039AB01
3D039AB27
3D039AC21
3D043AA06
3D043AB01
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3D043EA05
3D043EA17
3D202AA08
3D202EE12
3D202EE16
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3D202FF06
3D202FF13
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BE05
5H125FF30
(57)【要約】
【課題】電動モータを駆動源として有する前後輪駆動車両において、駆動源の駆動力を前輪側及び後輪側に配分することが可能な駆動力配分装置を小型化及び軽量化する。
【解決手段】前後輪駆動車両1は、電動モータ11を有する駆動源と、前輪側に駆動力を伝達するフロントプロペラシャフト14と、後輪側に駆動力を伝達するリヤプロペラシャフト17と、駆動源の駆動力をフロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17に配分することが可能な駆動力配分装置2とを備える。駆動力配分装置2は、第1及び第2のスプロケット251,252に掛け回されて循環回転するチェーン26と、電動モータ11の駆動力により回転する二連ギヤ23とを有し、二連ギヤ23において入力側ギヤ部231と出力側ギヤ部232を連結する連結軸233が、チェーン26の内側における第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間に挿通されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源として少なくとも電動モータを有し、前輪及び後輪を駆動することが可能な前後輪駆動車両であって、
前記前輪側に駆動力を伝達する前輪側駆動軸と、
前記後輪側に駆動力を伝達する後輪側駆動軸と、
前記駆動源の駆動力を前記前輪側駆動軸及び前記後輪側駆動軸に配分することが可能な駆動力配分装置とを備え、
前記駆動力配分装置は、第1の回転部材と、前記第1の回転部材の回転軸線と平行な回転軸線を中心として回転する第2の回転部材と、前記第1の回転部材から前記第2の回転部材に駆動力を伝達する環状の駆動力伝達媒体と、前記電動モータの駆動力により回転するモータ駆動力回転部材とを有し、
前記モータ駆動力回転部材が、前記駆動力伝達媒体の内側における前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間に挿通されている、
前後輪駆動車両。
【請求項2】
前記駆動力伝達媒体は、前記第1及び第2の回転部材に掛け回されて循環回転する環状の無端帯状体である、
請求項1に記載の前後輪駆動車両。
【請求項3】
前記駆動力配分装置は、複数のギヤ部と、前記複数のギヤ部が一体となって回転するように前記複数のギヤ部を連結する連結軸とを有する多連ギヤを備え、
前記モータ駆動力回転部材は、前記連結軸である、
請求項1又は2に記載の前後輪駆動車両。
【請求項4】
前記多連ギヤは、前記電動モータの駆動力が伝達される入力側ギヤ部と、ピッチ円径が異なる複数の出力側ギヤ部とを有し、前記入力側ギヤ部と前記複数の出力側ギヤ部とが前記連結軸によって連結され、
前記複数の出力側ギヤ部のうち何れの出力側ギヤ部から前記前輪側駆動軸側及び前記後輪側駆動軸側に駆動力を伝達するかを切り替えることが可能である、
請求項3に記載の前後輪駆動車両。
【請求項5】
前記モータ駆動力回転部材は、前記電動モータの出力回転軸である、
請求項1又は2に記載の前後輪駆動車両。
【請求項6】
前記駆動力配分装置は、前記前輪側駆動軸が連結された前輪側出力回転軸と、前記後輪側駆動軸が連結された後輪側出力回転軸と、前記前輪側出力回転軸と前記後輪側出力回転軸との差動が規制される連結状態と当該差動が規制されない非連結状態とを切り替え可能な噛み合いクラッチとを有し、
前記噛み合いクラッチが前記第1及び第2の回転部材の何れかと同軸上に配置されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の前後輪駆動車両。
【請求項7】
前記駆動力配分装置は、前記前輪側駆動軸が連結された前輪側出力回転軸と、前記後輪側駆動軸が連結された後輪側出力回転軸と、前記駆動源の駆動力を前記前輪側出力回転軸側と前記後輪側出力回転軸側とに配分する差動歯車機構とを備え、
前記差動歯車機構が前記第1及び第2の回転部材の何れかと同軸上に配置されている、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の前後輪駆動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪及び後輪を駆動することが可能な前後輪駆動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前輪及び後輪を駆動することが可能な前後輪駆動車両として、特許文献1に記載されたハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両は、縦置きされたエンジンと、第1モータ及び第2モータとを駆動源とし、第1モータ及び第2モータが車両前後方向におけるエンジンの後方で軸方向に並んで配置されている。エンジンが出力するエンジントルク及び第1モータが出力する第1モータトルクは、オートマチックトランスミッション及びリヤプロペラシャフトを介して後輪に伝達される。第2モータが出力する第2モータトルクは、一対のスプロケット及びチェーンを有するチェーン減速機構、及びフロントプロペラシャフトを介して前輪に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電動モータを駆動源として有する車両は増加傾向にあり、前輪及び後輪を駆動することが可能な前後輪駆動車両でも、駆動源として広く電動モータが用いられるようになってきている。このような電動モータを駆動源として有する前後輪駆動車両では、電動モータの出力回転軸の回転を減速しながら駆動力を前輪及び後輪に配分する必要があるので、前輪のみ又は後輪のみを駆動する車両に比較して、駆動源の駆動力を前輪側及び後輪側に配分する駆動力配分装置の構成が複雑となり、駆動力配分装置が大型化すると共に重量も増大してしまう。駆動力配分装置の大型化は車室空間を圧迫し、重量の増大は車両の走行性能の低下やエネルギー消費量の増大を招来することとなる。
【0005】
そこで、本発明は、電動モータを駆動源として有する前後輪駆動車両において、駆動源の駆動力を前輪側及び後輪側に配分することが可能な駆動力配分装置を小型化及び軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するため、駆動源として少なくとも電動モータを有し、前輪及び後輪を駆動することが可能な前後輪駆動車両であって、前記前輪側に駆動力を伝達する前輪側駆動軸と、前記後輪側に駆動力を伝達する後輪側駆動軸と、前記駆動源の駆動力を前記前輪側駆動軸及び前記後輪側駆動軸に配分することが可能な駆動力配分装置とを備え、前記駆動力配分装置は、第1の回転部材と、前記第1の回転部材の回転軸線と平行な回転軸線を中心として回転する第2の回転部材と、前記第1の回転部材から前記第2の回転部材に駆動力を伝達する環状の駆動力伝達媒体と、前記電動モータの駆動力により回転するモータ駆動力回転部材とを有し、前記モータ駆動力回転部材が、前記駆動力伝達媒体の内側における前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間に挿通されている、前後輪駆動車両を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る前後輪駆動車両によれば、電動モータを駆動源として有する前後輪駆動車両において、駆動源の駆動力を前輪側及び後輪側に配分することが可能な駆動力配分装置を小型化及び軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るチェーン機構と、電動モータと、入力ギヤと、アイドルギヤと、二連ギヤの入力側ギヤ部及び連結軸との位置関係を示す構成図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るチェーン機構を二連ギヤの連結軸の一部と共に示す斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態の変形例に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る電動モータと、入力ギヤと、二連ギヤの入力側ギヤ部及び連結軸と、チェーン機構の位置関係を示す構成図である。
【
図7】第2の実施の形態の変形例1に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図8】第2の実施の形態の変形例2に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図9】第3の実施の形態に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図10】第3の実施の形態の変形例1に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図11】第3の実施の形態の変形例2に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図12】第4の実施の形態に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図13】第5の実施の形態に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。
【
図14】第5の実施の形態に係る電動モータと、入力ギヤと、アイドルギヤと、二連ギヤの連結軸と、歯車機構の位置関係を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至3を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る前後輪駆動車両の駆動系の構成を示す概略構成図である。この前後輪駆動車両1は、駆動源として電動モータ11及びエンジン12を有すると共に、これらの駆動源の駆動力を前輪101,102側及び後輪103,104側に配分することが可能な駆動力配分装置2を備えている。以下の説明において、「前側」とは、前後輪駆動車両1の車両前後方向における前側をいい、「後側」とは、前後輪駆動車両1の車両前後方向における後側をいうものとする。
【0011】
駆動力配分装置2は、駆動力を左右の前輪101,102及び後輪103,104に配分する4輪駆動状態と、駆動力を後輪103,104のみに配分する2輪駆動状態とを切り替え可能である。また、駆動力配分装置2の少なくとも一部及び電動モータ11は、車室の下方(床下)に配置される。
【0012】
電動モータ11は、例えば三相交流モータであり、不図示のインバータ装置から供給される電流によって動力を発生させる他、回生電力を発生させる発電機としても機能する。電動モータ11は、固定子及び回転子を有する本体110と、本体110から突出して回転子と一体に回転する出力回転軸111とを有している。本体110は、駆動力配分装置2のハウジング20の後側の端部に取り付けられている。電動モータ11の駆動力(トルク)は、出力回転軸111から駆動力配分装置2に入力される。出力回転軸111の回転軸線は、車両前後方向と平行である。
【0013】
エンジン12は、ガソリン等の液体燃料をシリンダ内で燃焼させて動力を発生させる内燃機関である。エンジン12の出力回転は、トランスミッション13で変速され、トランスミッション13の出力回転軸134から駆動力配分装置2に入力される。トランスミッション13は、クラッチ131と変速機構132とを備え、クラッチ131によってエンジン12の出力回転軸であるクランクシャフト121と変速機構132の入力回転軸133とが断続される。エンジン12及びトランスミッション13は、電動モータ11及び駆動力配分装置2の前側に縦置きされており、クランクシャフト121ならびにトランスミッション13の出力回転軸134の回転軸線は、車両前後方向と平行である。
【0014】
前後輪駆動車両1は、駆動力配分装置2から左右の前輪101,102に駆動力を伝達するための構成として、前輪側駆動軸としてのフロントプロペラシャフト14と、フロントプロペラシャフト14の前端部に連結されたピニオンギヤシャフト151と、ピニオンギヤシャフト151に噛み合うリングギヤ152と、リングギヤ152と一体に回転するデフケース161を有するフロントディファレンシャル16と、左右のドライブシャフト153,154とを有している。
【0015】
フロントプロペラシャフト14は、車両前後方向に延在し、前輪101,102側に駆動力を伝達する。フロントプロペラシャフト14は、円筒状あるいは円柱状の軸部140と、軸部140の後側及び前側の端部に設けられたクロスジョイント等の継手141,142と有している。ピニオンギヤシャフト151は、継手142によって軸部140と揺動可能に連結されている。フロントディファレンシャル16は、デフケース161と、デフケース161と一体に回転するピニオンピン162と、ピニオンピン162に軸支された複数のピニオンギヤ163と、複数のピニオンギヤ163に噛み合う一対のサイドギヤ164とを有している。一対のサイドギヤ164には、左右のドライブシャフト153,154がそれぞれ相対回転不能に連結されている。
【0016】
また、前後輪駆動車両1は、駆動力配分装置2から左右の後輪103,104に駆動力を伝達するための構成として、後輪側駆動軸としてのリヤプロペラシャフト17と、リヤプロペラシャフト17の後端部に連結されたピニオンギヤシャフト181と、ピニオンギヤシャフト181に噛み合うリングギヤ182と、リングギヤ182と一体に回転するデフケース191を有するリヤディファレンシャル19と、左右のドライブシャフト183,184とを有している。
【0017】
リヤプロペラシャフト17は、車両前後方向に延在し、後輪103,104側に駆動力を伝達する。リヤプロペラシャフト17は、円筒状あるいは円柱状の軸部170と、軸部170の前側及び後側の端部に設けられた継手171,172と有している。ピニオンギヤシャフト181は、継手172によって軸部170と揺動可能に連結されている。リヤディファレンシャル19は、デフケース191と、デフケース191と一体に回転するピニオンピン192と、ピニオンピン192に軸支された複数のピニオンギヤ193と、複数のピニオンギヤ193に噛み合う一対のサイドギヤ194とを有している。一対のサイドギヤ194には、左右のドライブシャフト183,184がそれぞれ相対回転不能に連結されている。
【0018】
駆動力配分装置2は、電動モータ11の駆動力及びトランスミッション13で変速されたエンジン12の駆動力を、フロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17に配分することが可能である。駆動力配分装置2は、前輪側出力回転軸201及び後輪側出力回転軸202を同軸上に有している。前輪側出力回転軸201には、継手141によってフロントプロペラシャフト14の軸部140が揺動可能に連結されている。後輪側出力回転軸202には、継手171によってリヤプロペラシャフト17の軸部170が揺動可能に連結されている。以下、駆動力配分装置2の構成について詳細に説明する。
【0019】
駆動力配分装置2は、電動モータ11の出力回転軸111に固定された入力ギヤ21と、入力ギヤ21に噛み合うアイドルギヤ22と、入力側ギヤ部231と出力側ギヤ部232とが連結軸233によって連結された二連ギヤ23と、後輪側出力回転軸202に固定された出力ギヤ24とを備えている。二連ギヤ23の連結軸233は、入力側ギヤ部231と出力側ギヤ部232とが同一回転軸線上で一体となって回転するように、入力側ギヤ部231と出力側ギヤ部232とを連結している。入力側ギヤ部231は、アイドルギヤ22に噛み合わされており、出力側ギヤ部232は、出力ギヤ24に噛み合わされている。
【0020】
また、駆動力配分装置2は、トランスミッション13の出力回転軸134に固定された第1のスプロケット251と、後輪側出力回転軸202に固定された第2のスプロケット252と、第1のスプロケット251及び第2のスプロケット252に掛け回されて循環回転する環状のチェーン26とを備えている。第1のスプロケット251は、本発明の第1の回転部材の一態様であり、第2のスプロケット252は、本発明の第2の回転部材の一態様である。チェーン26は、金属製であり、第1の回転部材(第1のスプロケット251)から第2の回転部材(第2のスプロケット252)に駆動源の駆動力を伝達する本発明の駆動力伝達媒体及び無端帯状体の一態様である。なお、無端帯状体としては、チェーン26に限らず、例えば樹脂製のベルトを用いてもよい。
【0021】
また、駆動力配分装置2は、前輪側出力回転軸201と後輪側出力回転軸202とを断続する噛み合いクラッチ27を備えている。噛み合いクラッチ27は、前輪側出力回転軸201と一体に回転する第1のディスク271と、後輪側出力回転軸202と一体に回転する第2のディスク272と、第1のディスク271及び第2のディスク272に対して軸方向移動する円筒状のスリーブ273とを有し、第2のスプロケット252と同軸上に配置されている。第1のディスク271及び第2のディスク272には、スリーブ273の内歯に噛み合う外歯が形成されている。
【0022】
スリーブ273は、第1のディスク271と第2のディスク272とを相対回転不能に連結する連結位置と、第1のディスク271と第2のディスク272とを相対回転自在とする非連結位置との間を、不図示のアクチュエータの動力によって移動する。スリーブ273が連結位置にある連結状態では、前輪側出力回転軸201と後輪側出力回転軸202との差動が規制され、前後輪駆動車両1が4輪駆動状態となる。一方、スリーブ273が非連結位置にある非連結状態では、前輪側出力回転軸201と後輪側出力回転軸202との差動が規制されず、前後輪駆動車両1が2輪駆動状態となる。
【0023】
図2は、第1及び第2のスプロケット251,252ならびにチェーン26からなるチェーン機構25と、電動モータ11と、入力ギヤ21と、アイドルギヤ22と、二連ギヤ23の入力側ギヤ部231及び連結軸233との位置関係を示す構成図である。
図2では、図面下方が鉛直方向下方にあたり、図面上方が鉛直方向上方にあたる。
図3は、チェーン機構25を二連ギヤ23の連結軸233の一部と共に示す斜視図である。
【0024】
アイドルギヤ22及び二連ギヤ23は、不図示の軸受によってハウジング20に対して回転可能に支持されている。アイドルギヤ22のギヤ歯22aには、入力ギヤ21のギヤ歯21a、及び入力側ギヤ部231のギヤ歯231aが噛み合っている。電動モータ11は、その出力回転軸111の回転軸線O1が、アイドルギヤ22の回転軸線O2及び二連ギヤ23の回転軸線O3よりも鉛直方向下方に位置するように配置されている。電動モータ11が発生するトルクは、アイドルギヤ22及び二連ギヤ23によって増幅されて、出力ギヤ24から後輪側出力回転軸202に伝達される。
【0025】
チェーン26は、
図3に示すように、複数の金属製のプレート261を複数のピン262によって連結して構成されている。第1及び第2のスプロケット251,252は、チェーン26と噛み合う歯部251a,252aをそれぞれの外周端部に有している。トランスミッション13の出力回転軸134から第1のスプロケット251に入力されたエンジン12の駆動力は、チェーン26によって第2のスプロケット252に伝達され、第2のスプロケット252から後輪側出力回転軸202に伝達される。第1のスプロケット251のピッチ円径と第2のスプロケット252のピッチ円径とは同じである。
【0026】
二連ギヤ23は、入力側ギヤ部231がチェーン26の後側に配置されると共に出力側ギヤ部232がチェーン26の前側に配置され、連結軸233がチェーン26の内側における第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間に挿通されている。二連ギヤ23は、本発明の多連ギヤの一態様である。二連ギヤ23の連結軸233は、第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間で電動モータ11の駆動力によって回転する回転部材であり、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様である。
【0027】
図2に示すように、第1のスプロケット251は、その回転軸線O
5が第2のスプロケット252の回転軸線O
6よりも鉛直方向上方に位置するように配置されている。電動モータ11の出力回転軸111の回転軸線O
1、アイドルギヤ22の回転軸線O
2、及び二連ギヤ23の回転軸線O
3は、鉛直方向において、第1のスプロケット251の回転軸線O
5と第2のスプロケット252の回転軸線O
6との間に位置している。電動モータ11の鉛直方向の最下点P
1は、チェーン26の鉛直方向の最下点P
2よりも鉛直方向上方に位置している。
【0028】
後輪側出力回転軸202には、車速やアクセルペダルの踏み込み量等の車両情報に応じて、電動モータ11の駆動力のみ、又はエンジン12の駆動力のみ、もしくは電動モータ11の駆動力及びエンジン12の駆動力の両方が伝達される。また、前後輪駆動車両1の減速時には、電動モータ11が回生電力を発生させ、この回生電力によって不図示のバッテリーが充電される。なお、後輪側出力回転軸202に電動モータ11の駆動力のみが伝達される場合や、電動モータ11が回生電力を発生させる場合には、クラッチ131によるクランクシャフト121と変速機構132の入力回転軸133との連結が遮断される。
【0029】
噛み合いクラッチ27は、例えば運転者のスイッチ操作等により4輪駆動状態が選択された場合に、アクチュエータによってスリーブ273が連結位置に移動する。これにより、第1のディスク271と第2のディスク272とが相対回転不能に連結され、後輪側出力回転軸202に伝達された駆動力の一部が噛み合いクラッチ27を介して前輪側出力回転軸201に伝達される。
【0030】
以上説明した第1の実施の形態によれば、二連ギヤ23の連結軸233がチェーン26の内側における第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間に挿通されているため、例えば連結軸233がチェーン26の上側又は下側に配置される場合に比較して、駆動力配分装置2を小型化及び軽量化することができる。つまり、仮に連結軸233がチェーン26の上側に位置するように二連ギヤ23が配置された場合には車室空間が圧迫され、連結軸233がチェーン26の下側に位置するように二連ギヤ23が配置された場合には最低地上高が低くなってしまうが、本実施の形態では、連結軸233がチェーン26の内側における第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間に挿通されているため、ハウジング20内のスペースを有効に活用して各部材を高密度に配置することが可能となり、駆動力配分装置2を小型化及び軽量化することができる。
【0031】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、第1の実施の形態の変形例について、
図4を参照して説明する。
図4は、第1の実施の形態の変形例に係る前後輪駆動車両1Aの駆動系の構成を示す概略構成図である。
【0032】
第1の実施の形態では、電動モータ11の出力回転軸111から後輪側出力回転軸202までの減速比(後輪側出力回転軸202が1回転する間の出力回転軸111の回転数)が一定である場合について説明したが、本変形例では、電動モータ11の出力回転軸111から後輪側出力回転軸202までの減速比を二段階に切り替え可能である。このため、本変形例では、駆動力配分装置2が二連ギヤ23に替えて、三連ギヤ28及び切り替えクラッチ29を有する変速機構203を備えている。
【0033】
三連ギヤ28は、入力側ギヤ部281と、第1の出力側ギヤ部282と、第2の出力側ギヤ部283と、連結軸284とを有している。連結軸284は、入力側ギヤ部281、第1の出力側ギヤ部282、及び第2の出力側ギヤ部283が同一回転軸線上で一体となって回転するように、これらのギヤ部281~283を連結している。入力側ギヤ部281は、チェーン26の後側に配置され、アイドルギヤ22に噛み合わされている。第1の出力側ギヤ部282及び第2の出力側ギヤ部283は、チェーン26の前側に配置されている。第1の出力側ギヤ部282のピッチ円径は、第2の出力側ギヤ部283のピッチ円径よりも大きく形成されている。
【0034】
切り替えクラッチ29は、後輪側出力回転軸202に固定された出力ギヤ291と、出力ギヤ291の後側に配置された後側筒状体292と、後側筒状体292に固定された第1の変速ギヤ293と、出力ギヤ291の前側に配置された前側筒状体294と、前側筒状体294に固定された第2の変速ギヤ295と、出力ギヤ291の外周に配置されたスリーブ296とを有して構成されている。後側筒状体292及び前側筒状体294には、スリーブ296の内歯に噛み合う外歯が形成されている。後側筒状体292には、第2のスプロケット252が固定されている。
【0035】
後側筒状体292及び前側筒状体294は、その中心部に後輪側出力回転軸202が挿通されており、後輪側出力回転軸202と同軸上で相対回転可能に軸受支持されている。後輪側出力回転軸202は、出力ギヤ291を貫通している。スリーブ296は、不図示のアクチュエータにより、出力ギヤ291と後側筒状体292とを相対回転不能に連結する第1連結位置と、出力ギヤ291と前側筒状体294とを相対回転不能に連結する第2連結位置との間を軸方向に移動する。スリーブ296が第1連結位置にあるとき、出力ギヤ291と前側筒状体294とは相対回転可能であり、スリーブ296が第2連結位置にあるとき、出力ギヤ291と後側筒状体292とは相対回転可能である。
図4では、第1連結位置にあるスリーブ296を実線で示し、第2連結位置にあるスリーブ296を破線で示している。
【0036】
トランスミッション13の出力回転軸134から第1のスプロケット251に入力されたエンジン12の駆動力は、チェーン26によって第2のスプロケット252及び後側筒状体292に伝達される。三連ギヤ28の連結軸284は、チェーン26の内側における第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間に挿通されている。三連ギヤ28は、本発明の多連ギヤの一態様である。三連ギヤ28の連結軸284は、第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間で電動モータ11の駆動力によって回転する回転部材であり、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様である。
【0037】
第1の変速ギヤ293は、三連ギヤ28の第1の出力側ギヤ部282に噛み合わされており、第2の変速ギヤ295は、三連ギヤ28の第2の出力側ギヤ部283に噛み合わされている。第2の変速ギヤ295のピッチ円径は、第1の変速ギヤ293のピッチ円径よりも大きく形成されている。スリーブ296が第1連結位置にあるとき、三連ギヤ28に伝達された電動モータ11の駆動力は、三連ギヤ28の第1の出力側ギヤ部282から第1の変速ギヤ293を経て後側筒状体292に伝達され、さらにスリーブ296及び出力ギヤ291を介して後輪側出力回転軸202に伝達される。また、第2のスプロケット252に伝達されたエンジン12の駆動力は、後側筒状体292からスリーブ296及び出力ギヤ291を介して後輪側出力回転軸202に伝達される。
【0038】
一方、スリーブ296が第2連結位置にあるときには、三連ギヤ28に伝達された電動モータ11の駆動力が、三連ギヤ28の第2の出力側ギヤ部283から第2の変速ギヤ295を経て前側筒状体294に伝達され、さらにスリーブ296及び出力ギヤ291を介して後輪側出力回転軸202に伝達される。また、第2のスプロケット252に伝達されたエンジン12の駆動力は、後側筒状体292、第1の変速ギヤ293、三連ギヤ28の第1の出力側ギヤ部282及び第2の出力側ギヤ部283、第2の変速ギヤ295、前側筒状体294、スリーブ296、及び出力ギヤ291を介して後輪側出力回転軸202に伝達される。
【0039】
以上説明した本変形例では、三連ギヤ28の連結軸284がチェーン26の内側における第1のスプロケット251と第2のスプロケット252との間に挿通されているため、第1の実施の形態と同様に、駆動力配分装置2を小型化及び軽量化することができる。また、三連ギヤ28の第1の出力側ギヤ部282及び第2の出力側ギヤ部283の何れから前輪側出力回転軸201及び後輪側出力回転軸202に電動モータ11の駆動力を伝達するかを、例えば車速に応じて切り替えクラッチ29を制御することによって切り替えることが可能であるため、幅広い車速において電動モータ11の駆動力を効率よく発生させることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、第2の実施の形態に係る前後輪駆動車両1Bの駆動系の構成を示す概略構成図である。
図5及び
図6において、第1の実施の形態について
図1を参照して説明したものと共通する部材には、
図1に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0041】
前後輪駆動車両1Bは、駆動力配分装置3を有しており、駆動力配分装置3は、電動モータ11及びエンジン12の駆動力をフロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17に配分することが可能である。
【0042】
駆動力配分装置3は、ハウジング30と、電動モータ11の出力回転軸111に固定された入力ギヤ31と、入力側ギヤ部321と出力側ギヤ部322とが連結軸323によって連結された二連ギヤ32と、トランスミッション13の出力回転軸134と相対回転不能に連結された駆動軸33と、駆動軸33に固定された出力ギヤ34と、第1及び第2のスプロケット351,352及びチェーン353を有するチェーン機構35と、噛み合いクラッチ36と、前輪側出力回転軸371とを備えている。駆動軸33の後端部には、継手171によってリヤプロペラシャフト17の軸部170が揺動可能に連結されている。前輪側出力回転軸371の前端部には、継手141によってフロントプロペラシャフト14の軸部170が揺動可能に連結されている。
【0043】
図6は、電動モータ11と、入力ギヤ31と、二連ギヤ32の入力側ギヤ部321及び連結軸323と、チェーン機構35との位置関係を示す構成図である。入力ギヤ31のギヤ歯31aは、二連ギヤ32の入力側ギヤ部321のギヤ歯321aに噛み合わされている。二連ギヤ32の出力側ギヤ部322は、出力ギヤ34に噛み合っている。連結軸323は、入力側ギヤ部321と出力側ギヤ部322とが同一回転軸線上で一体に回転するように、これらの両ギヤ部321,322を連結している。電動モータ11の鉛直方向の最下点P
1は、チェーン353の鉛直方向の最下点P
2よりも鉛直方向上方に位置している。
【0044】
二連ギヤ32は、本発明の多連ギヤの一態様である。二連ギヤ32の連結軸323は、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様であり、チェーン353の内側における第1のスプロケット351と第2のスプロケット352との間に挿通されている。電動モータ11の出力回転軸111の回転軸線O1及び二連ギヤ32の回転軸線O3は、鉛直方向において、第1のスプロケット351の回転軸線O5と第2のスプロケット352の回転軸線O6との間に位置している。
【0045】
入力側ギヤ部321のピッチ円径は、入力ギヤ31のピッチ円径よりも大きく形成されている。出力側ギヤ部322のピッチ円径は、入力側ギヤ部321のピッチ円径よりも小さく形成されている。出力ギヤ34のピッチ円径は、出力側ギヤ部322のピッチ円径よりも大きく形成されている。電動モータ11が発生するトルクは、入力ギヤ31、二連ギヤ32、及び出力ギヤ34によって増幅され、駆動軸33に伝達される。
【0046】
第1のスプロケット351は、中空のリング状であり、その中心部に駆動軸33が挿通されている。第2のスプロケット352には、前輪側出力回転軸371の後側の端部が固定されている。チェーン353は、第1の実施の形態のチェーン26と同様に構成された環状の無端帯状体であり、第1及び第2のスプロケット351,352に掛け回されて循環回転する。
【0047】
噛み合いクラッチ36は、駆動軸33と一体に回転する第1のディスク361と、第1のスプロケット351と一体に回転する第2のディスク362と、第1のディスク361及び第2のディスク362に対して軸方向移動するスリーブ363とを有し、第1のスプロケット351と同軸上に配置されている。第1のディスク361及び第2のディスク362には、スリーブ363の内歯に噛み合う外歯が形成されている。
【0048】
スリーブ363は、第1のディスク361と第2のディスク362とを相対回転不能に連結する連結位置と、第1のディスク361と第2のディスク362とを相対回転自在とする非連結位置との間を、不図示のアクチュエータの動力によって移動する。
図5では、連結位置にあるスリーブ363を実線で示し、非連結位置にあるスリーブ363を破線で示している。第2のディスク362は、第1のスプロケット351と同様に中空のリング状であり、その中心部に駆動軸33が挿通されている。
【0049】
後輪103,104には、駆動軸33及びリヤプロペラシャフト17を経て電動モータ11及びエンジン12の駆動力が伝達される。噛み合いクラッチ36のスリーブ363が連結位置にあるときには、電動モータ11及びエンジン12の駆動力が駆動軸33から第1のディスク361を経て第2のディスク362に伝達され、さらにチェーン機構35を経て前輪側出力回転軸371に伝達される。これにより、前輪101,102及び後輪103,104が駆動される4輪駆動状態となる。この4輪駆動状態では、前輪側出力回転軸371と駆動軸33との差動が規制される。一方、スリーブ363が非連結位置にあるときには、第1のディスク361から第2のディスク362へ駆動力が伝達されず、後輪103,104のみが駆動される2輪駆動状態となる。この2輪駆動状態では、前輪側出力回転軸371と駆動軸33との差動が規制されない。
【0050】
以上説明した第2の実施の形態でも、二連ギヤ32の連結軸323がチェーン353の内側における第1のスプロケット351と第2のスプロケット352との間に挿通されているため、駆動力配分装置3を小型化及び軽量化することができる。
【0051】
[第2の実施の形態の変形例1]
次に、第2の実施の形態の変形例1について、
図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施の形態の変形例1に係る前後輪駆動車両1Cの駆動系の構成を示す概略構成図である。
【0052】
本変形例では、トランスミッション13の出力回転軸134からリヤプロペラシャフト17までの変速比を二段階に切り替え可能である。このため、本変形例では、駆動力配分装置3が二連ギヤ32に替えて、三連ギヤ38及び切り替えクラッチ39を有する変速機構301を備え、駆動軸33に替えて後輪側出力回転軸372を備えている。
【0053】
三連ギヤ38は、後側ギヤ部381と、中間ギヤ部382と、前側ギヤ部383と、連結軸384とを有している。連結軸384は、後側ギヤ部381、中間ギヤ部382、及び前側ギヤ部383が同一回転軸線上で一体となって回転するように、これらのギヤ部381~383を連結している。後側ギヤ部381は、チェーン353の後側に配置され、入力ギヤ31に噛み合わされている。中間ギヤ部382及び前側ギヤ部383は、チェーン353の前側に配置されている。前側ギヤ部383のピッチ円径は、中間ギヤ部382のピッチ円径よりも大きく形成されている。
【0054】
三連ギヤ38は、本発明の多連ギヤの一態様である。三連ギヤ38の連結軸384は、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様であり、チェーン353の内側における第1のスプロケット351と第2のスプロケット352との間に挿通されている。
【0055】
切り替えクラッチ39は、トランスミッション13の出力回転軸134が固定された中間回転部材391と、中間回転部材391の後側に配置された後側筒状体392と、後側筒状体392に固定された第1の変速ギヤ393と、中間回転部材391の前側に配置された前側筒状体394と、前側筒状体394に固定された第2の変速ギヤ395と、中間回転部材391の外周に配置されたスリーブ396とを有して構成されている。第1の変速ギヤ393のピッチ円径は、第2の変速ギヤ395のピッチ円径よりも大きく形成されている。
【0056】
第1の変速ギヤ393には、後輪側出力回転軸372が固定されている。後輪側出力回転軸372は、第1のスプロケット351に挿通されており、後輪側出力回転軸372の後端部には、継手171によってリヤプロペラシャフト17の軸部170が揺動可能に連結されている。また、後輪側出力回転軸372には、噛み合いクラッチ36の第1のディスク361が固定されている。
【0057】
後側筒状体392及び前側筒状体394には、スリーブ396の内歯に噛み合う外歯が形成されている。スリーブ396は、不図示のアクチュエータにより、中間回転部材391と後側筒状体392とを相対回転不能に連結する第1連結位置と、中間回転部材391と前側筒状体394とを相対回転不能に連結する第2連結位置との間を軸方向に移動する。スリーブ396が第1連結位置にあるとき、中間回転部材391と前側筒状体394とは相対回転可能であり、スリーブ396が第2連結位置にあるとき、中間回転部材391と後側筒状体392とは相対回転可能である。
図7では、第1連結位置にあるスリーブ396を実線で示し、第2連結位置にあるスリーブ396を破線で示している。
【0058】
第1の変速ギヤ393は、三連ギヤ38の中間ギヤ部382に噛み合わされており、第2の変速ギヤ395は、三連ギヤ38の前側ギヤ部383に噛み合わされている。三連ギヤ38に伝達された電動モータ11の駆動力は、三連ギヤ38の中間ギヤ部382から第1の変速ギヤ393を経て後輪側出力回転軸372に伝達される。
【0059】
スリーブ396が第1連結位置にあるとき、中間回転部材391に伝達されたエンジン12の駆動力は、スリーブ396を介して後側筒状体392に伝達され、第1の変速ギヤ393を経て後輪側出力回転軸372に伝達される。一方、スリーブ396が第2連結位置にあるときには、中間回転部材391に伝達されたエンジン12の駆動力がスリーブ396を介して前側筒状体394に伝達され、さらに第2の変速ギヤ395、三連ギヤ38の前側ギヤ部383、連結軸384、中間ギヤ部382、及び第1の変速ギヤ393を経て、後輪側出力回転軸372に伝達される。
【0060】
第2の変速ギヤ395のピッチ円径をPCD1、前側ギヤ部383のピッチ円径をPCD2、中間ギヤ部382のピッチ円径をPCD3、第1の変速ギヤ393のピッチ円径をPCD4としたとき、PCD4/PCD3は、PCD2/PCD1よりも大きい。このため、スリーブ396が第2連結位置にあるときには、トランスミッション13の出力回転軸134の回転が減速されて後輪側出力回転軸372に伝達される。
【0061】
この第2の実施の形態の変形例1でも、三連ギヤ38の連結軸384がチェーン353の内側における第1のスプロケット351と第2のスプロケット352との間に挿通されているため、駆動力配分装置3を小型化及び軽量化することができる。
【0062】
[第2の実施の形態の変形例2]
次に、第2の実施の形態の変形例2について、
図8を参照して説明する。
図8は、第2の実施の形態の変形例2に係る前後輪駆動車両1Dの駆動系の構成を示す概略構成図である。
【0063】
本変形例に係る前後輪駆動車両1Dは、駆動源として単一の電動モータ11のみを有しており、エンジン12及びトランスミッション13を有していない。また、前後輪駆動車両1Dの駆動力配分装置3は、電動モータ11の出力回転軸111から後輪側出力回転軸372までの減速比を二段階に切り替え可能である。駆動力配分装置3は、
図7を参照して説明した変形例1と同様に、三連ギヤ38及び切り替えクラッチ39を有しているが、後輪側出力回転軸372が切り替えクラッチ39の第1の変速ギヤ393ではなく、中間回転部材391に固定されている。
【0064】
スリーブ396が第1連結位置にあるとき、三連ギヤ38に伝達された電動モータ11の駆動力は、中間ギヤ部382から第1の変速ギヤ393及び後側筒状体392に伝達され、さらにスリーブ396を介して中間回転部材391から後輪側出力回転軸372に伝達される。また、スリーブ396が第2連結位置にあるとき、三連ギヤ38に伝達された電動モータ11の駆動力は、前側ギヤ部383から第2の変速ギヤ395及び前側筒状体394に伝達され、さらにスリーブ396を介して中間回転部材391から後輪側出力回転軸372に伝達される。本変形例では、三連ギヤ38の前側ギヤ部383が本発明の入力側ギヤ部に相当し、中間ギヤ部382及び前側ギヤ部383が本発明の複数の出力側ギヤ部に相当する。
【0065】
この第2の実施の形態の変形例2でも、第2の実施の形態の変形例1と同様、三連ギヤ38の連結軸384がチェーン353の内側における第1のスプロケット351と第2のスプロケット352との間に挿通されているため、駆動力配分装置3を小型化及び軽量化することができる。
【0066】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、
図9を参照して説明する。
図9は、第3の実施の形態に係る前後輪駆動車両1Eの駆動系の構成を示す概略構成図である。
図9において、第1の実施の形態について
図1を参照して説明したものと共通する部材には、
図1に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0067】
前後輪駆動車両1Eは、駆動力配分装置4を有しており、駆動力配分装置4は、電動モータ11及びエンジン12の駆動力をフロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17に配分することが可能である。また、駆動力配分装置4は、フロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17への駆動力伝達経路において、電動モータ11の回転速度及びトランスミッション13の出力回転軸134の回転速度を二段階に変速して、駆動力をフロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17に伝達することが可能である。
【0068】
駆動力配分装置4は、ハウジング40と、電動モータ11の出力回転軸111に固定された入力ギヤ41と、三連ギヤ43と、切り替えクラッチ44と、第1及び第2のスプロケット451,452及びチェーン453を有するチェーン機構45と、噛み合いクラッチ46と、前輪側出力回転軸471と、後輪側出力回転軸472とを備えている。
【0069】
チェーン453は、第1の実施の形態のチェーン26と同様に構成された環状の無端帯状体であり、第1及び第2のスプロケット451,452に掛け回されて循環回転する。前輪側出力回転軸471には、継手141によってフロントプロペラシャフト14の軸部140が揺動可能に連結されている。後輪側出力回転軸472には、継手171によってリヤプロペラシャフト17の軸部170が揺動可能に連結されている。
【0070】
三連ギヤ43は、入力側ギヤ部431と、第1の出力側ギヤ部432と、第2の出力側ギヤ部433と、連結軸434とを有している。連結軸434は、入力側ギヤ部431、第1の出力側ギヤ部432、及び第2の出力側ギヤ部433が同一回転軸線上で一体となって回転するように、これらのギヤ部431~433を連結している。入力側ギヤ部431は、チェーン453の後側に配置され、入力ギヤ41に噛み合わされている。第1の出力側ギヤ部432及び第2の出力側ギヤ部433は、チェーン453の前側に配置されている。第2の出力側ギヤ部433のピッチ円径は、第1の出力側ギヤ部432のピッチ円径よりも大きく形成されている。
【0071】
連結軸434の前側の端部には、トランスミッション13の出力回転軸134が相対回転不能に連結されており、トランスミッション13で変速されたエンジン12の駆動力が三連ギヤ43に直接伝達される。三連ギヤ43は、本発明の多連ギヤの一態様である。三連ギヤ43の連結軸434は、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様であり、チェーン453の内側における第1のスプロケット451と第2のスプロケット452との間に挿通されている。
【0072】
切り替えクラッチ44は、後輪側出力回転軸472が相対回転不能に挿通された中間回転部材441と、中間回転部材441の後側に配置された後側筒状体442と、後側筒状体442に固定された第1の変速ギヤ443と、中間回転部材441の前側に配置された前側筒状体444と、前側筒状体444に固定された第2の変速ギヤ445と、中間回転部材441の外周に配置されたスリーブ446とを有して構成されている。第1の変速ギヤ443のピッチ円径は、第2の変速ギヤ445のピッチ円径よりも大きく形成されている。後側筒状体442及び前側筒状体444には、スリーブ446の内歯に噛み合う外歯が形成されている。
【0073】
三連ギヤ43の第1の出力側ギヤ部432は、切り替えクラッチ44の第1の変速ギヤ443に噛み合わされ、三連ギヤ43の第2の出力側ギヤ部433は、切り替えクラッチ44の第2の変速ギヤ445に噛み合わされている。スリーブ446は、不図示のアクチュエータにより、中間回転部材441と後側筒状体442とを相対回転不能に連結する第1連結位置と、中間回転部材441と前側筒状体444とを相対回転不能に連結する第2連結位置との間を軸方向に移動する。スリーブ446が第1連結位置にあるときには、スリーブ446が第2連結位置にあるときに比較して、三連ギヤ43のトルクが増幅されて後輪側出力回転軸472に伝達される。
【0074】
噛み合いクラッチ46は、後輪側出力回転軸472と一体に回転する第1のディスク461と、第1のスプロケット451と一体に回転する第2のディスク462と、第1のディスク461及び第2のディスク462に対して軸方向移動するスリーブ463とを有し、第1のスプロケット451と同軸上に配置されている。第1のディスク461及び第2のディスク462には、スリーブ463の内歯に噛み合う外歯が形成されている。
【0075】
スリーブ463は、第1のディスク461と第2のディスク462とを相対回転不能に連結する連結位置と、第1のディスク461と第2のディスク462とを相対回転自在とする非連結位置との間を、不図示のアクチュエータの動力によって移動する。
図9では、連結位置にあるスリーブ463を実線で示し、非連結位置にあるスリーブ463を破線で示している。第2のディスク462及び第1のスプロケット451は、中空の円盤状であり、その中心部に後輪側出力回転軸472が挿通されている。
【0076】
スリーブ463が連結位置にあるときには、後輪側出力回転軸472に伝達された駆動力の一部が噛み合いクラッチ46及びチェーン機構45を介して前輪側出力回転軸471に伝達され、前後輪駆動車両1Eが4輪駆動状態となる。この4輪駆動状態では、前輪側出力回転軸471と後輪側出力回転軸472との差動が規制される。一方、スリーブ463が非連結位置にあるときには、前輪側出力回転軸471への駆動力伝達経路が噛み合いクラッチ46で遮断され、前後輪駆動車両1Eが2輪駆動状態となる。この2輪駆動状態では、前輪側出力回転軸471と後輪側出力回転軸472との差動が規制されない。
【0077】
以上説明した第3の実施の形態でも、三連ギヤ43の連結軸434がチェーン453の内側における第1のスプロケット451と第2のスプロケット452との間に挿通されているため、駆動力配分装置4を小型化及び軽量化することができる。
【0078】
[第3の実施の形態の変形例1]
次に、第3の実施の形態の変形例1について、
図10を参照して説明する。
図10は、第3の実施の形態の変形例1に係る前後輪駆動車両1Fの駆動系の構成を示す概略構成図である。
【0079】
第3の実施の形態では、前後輪駆動車両1Eが駆動源として電動モータ11及びエンジン12を有する場合について説明したが、本変形例では、前後輪駆動車両1Fが駆動源として単一の電動モータ11のみを有しており、エンジン12及びトランスミッション13を有していない。その他の構成については、第3の実施の形態と同様である。すなわち、本変形例では、電動モータ11の駆動力のみが三連ギヤ43に伝達され、三連ギヤ43から後輪側出力回転軸472に伝達される。入力ギヤ41から後輪側出力回転軸472までの減速比は、切り替えクラッチ44によって二段階に切り替え可能である。
【0080】
この第3の実施の形態の変形例1によっても、第3の実施の形態と同様に、駆動力配分装置4を小型化及び軽量化することができる。また、三連ギヤ43の連結軸434の前側の端部にトランスミッション13の出力回転軸134が連結されないので、車両レイアウトにおける駆動力配分装置4の配置の自由度が高まる。
【0081】
[第3の実施の形態の変形例2]
次に、第3の実施の形態の変形例2について、
図11を参照して説明する。
図11は、第3の実施の形態の変形例2に係る前後輪駆動車両1Gの駆動系の構成を示す概略構成図である。
【0082】
第3の実施の形態では、三連ギヤ43の入力側ギヤ部431がチェーン453の後側に配置されると共に第1の出力側ギヤ部432及び第2の出力側ギヤ部433がチェーン453の前側に配置され、連結軸434がチェーン453の内側における第1のスプロケット451と第2のスプロケット452との間に挿通された場合について説明したが、本変形例では、入力側ギヤ部431、第1の出力側ギヤ部432、及び第2の出力側ギヤ部433が全てチェーン453の前側に配置されている。
【0083】
また、本変形例では、電動モータ11の出力回転軸111がチェーン453の内側における第1のスプロケット451と第2のスプロケット452との間に挿通されており、入力ギヤ41がチェーン453の前側に配置され、電動モータ11の本体110がチェーン453の後側に配置されている。すなわち、本変形例では、電動モータ11の出力回転軸111が、本発明のモータ駆動力回転部材である。
【0084】
本変形例によっても、電動モータ11の出力回転軸111がチェーン453の内側における第1のスプロケット451と第2のスプロケット452との間に挿通されていることにより、出力回転軸111がチェーン453の上側又は下側に配置された場合に比較して、駆動力配分装置4を小型化及び軽量化することができる。なお、電動モータ11の出力回転軸111は、単一の部材であってもよいが、複数の部材が電動モータ11の回転軸線に沿って軸方向に連結されて出力回転軸111を構成していてもよい。
【0085】
また、電動モータ11の駆動力を、入力ギヤ41及び入力側ギヤ部431を介することなく、直接三連ギヤ43に伝達してもよい。この場合、電動モータ11が三連ギヤ43と同軸上に配置され、電動モータ11の出力回転軸111が連結軸434に直結される。またさらに、第3の実施の形態の変形例1として
図10に示したように、駆動源を単一の電動モータ11のみによって構成してもよい。
【0086】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、
図12を参照して説明する。
図12は、第4の実施の形態に係る前後輪駆動車両1Hの駆動系の構成を示す概略構成図である。
図12において、第1の実施の形態について
図1を参照して説明したものと共通する部材には、
図1に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0087】
前後輪駆動車両1Hは、駆動力配分装置5を有しており、駆動力配分装置5は、電動モータ11及びエンジン12の駆動力をフロントプロペラシャフト14及びリヤプロペラシャフト17に配分することが可能である。また、駆動力配分装置5は、フロントプロペラシャフト14とリヤプロペラシャフト17との回転速度差(差動)が許容された4輪駆動状態と、この回転速度差が許容されない4輪駆動状態(リジッド4WD状態)とを切り替え可能である。
【0088】
駆動力配分装置5は、ハウジング50と、電動モータ11の出力回転軸111に固定された入力ギヤ51と、入力側ギヤ部521と出力側ギヤ部522とが連結軸523によって一体となって回転するように連結された二連ギヤ52と、出力側ギヤ部522に噛み合うリングギヤ53と、リングギヤ53が取り付けられたデフケース541を有する差動歯車機構54と、噛み合いクラッチ55と、第1及び第2のスプロケット561,562及びチェーン563を有するチェーン機構56と、前輪側出力回転軸571と、後輪側出力回転軸572とを備えている。
【0089】
チェーン563は、第1の実施の形態のチェーン26と同様に構成された環状の無端帯状体であり、第1及び第2のスプロケット561,562に掛け回されて循環回転する。前輪側出力回転軸571には、継手141によってフロントプロペラシャフト14の軸部140が揺動可能に連結されている。後輪側出力回転軸572には、継手171によってリヤプロペラシャフト17の軸部170が揺動可能に連結されている。
【0090】
二連ギヤ52は、入力側ギヤ部521がチェーン563の後側に配置され、出力側ギヤ部522がチェーン563の前側に配置されている。連結軸523は、チェーン563の内側における第1のスプロケット561と第2のスプロケット562との間に挿通されている。入力側ギヤ部521は、入力ギヤ51に噛み合わされており、電動モータ11の駆動力が入力ギヤ51から二連ギヤ52に伝達される。また、連結軸523の前側の端部には、トランスミッション13の出力回転軸134が相対回転不能に連結されており、トランスミッション13で変速されたエンジン12の駆動力が二連ギヤ52に伝達される。二連ギヤ52は、本発明の多連ギヤの一態様であり、連結軸523は、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様である。
【0091】
差動歯車機構54は、デフケース541と、デフケース541に固定されたピニオンピン542と、ピニオンピン542に軸支された複数のピニオンギヤ543と、複数のピニオンギヤ543に噛み合う第1及び第2のサイドギヤ544,545と、第2のサイドギヤ545に固定された円筒状の連結部材546とを有し、第1のスプロケット561と同軸上に配置されている。第1のサイドギヤ544は、デフケース541内において複数のピニオンギヤ543の前側に配置されている。第1のサイドギヤ544には、後輪側出力回転軸572が相対回転不能に連結されている。
【0092】
第2のサイドギヤ545は、デフケース541内において複数のピニオンギヤ543の後側に配置されている。連結部材546は、前側の端部が第2のサイドギヤ545に固定され、後側の端部が第1のスプロケット561に固定されており、第2のサイドギヤ545と第1のスプロケット561とを相対回転不能に連結している。第2のサイドギヤ545の中心部、連結部材546、及び第1のスプロケット561の中心部には、後輪側出力回転軸572が挿通されている。
【0093】
二連ギヤ52に伝達された電動モータ11及びエンジン12の駆動力は、リングギヤ53からデフケース541に伝達され、第1のサイドギヤ544から後輪側出力回転軸572に配分されると共に、第2のサイドギヤ545から連結部材546及びチェーン機構56を介して前輪側出力回転軸571に配分される。
【0094】
噛み合いクラッチ55は、連結部材546の外周に固定された噛み合い部材551と、デフケース541及び噛み合い部材551の外周に配置されたスリーブ552とを有し、第1のスプロケット561と同軸上に配置されている。スリーブ552は、デフケース541と噛み合い部材551とを相対回転不能に連結する連結位置と、デフケース541と噛み合い部材551とを相対回転自在とする非連結位置との間を、不図示のアクチュエータの動力によって軸方向に移動する。
【0095】
図12では、連結位置にあるスリーブ552を実線で示し、非連結位置にあるスリーブ552を破線で示している。デフケース541と噛み合い部材551とがスリーブ552によって連結されると、デフケース541と第1及び第2のサイドギヤ544,545との相対回転が規制され、フロントプロペラシャフト14とリヤプロペラシャフト17との回転速度差が許容されない4輪駆動状態となる。また、スリーブ552が非連結位置に移動すると、フロントプロペラシャフト14とリヤプロペラシャフト17との回転速度差が許容された4輪駆動状態となる。
【0096】
以上説明した第4の実施の形態でも、二連ギヤ52の連結軸523がチェーン563の内側における第1のスプロケット561と第2のスプロケット562との間に挿通されているため、駆動力配分装置5を小型化及び軽量化することができる。また、差動歯車機構54及び噛み合いクラッチ55が第1のスプロケット561と同軸上に配置されているので、駆動力配分装置5を小型化することが可能となる。なお、差動歯車機構54及び噛み合いクラッチ55を第2のスプロケット562と同軸上に配置してもよい。
【0097】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について、
図13及び
図14を参照して説明する。第5の実施の形態は、第1の実施の形態に係る前後輪駆動車両1におけるチェーン機構25を複数の歯車からなる歯車機構に置き換えたものである。
【0098】
図13は、第5の実施の形態に係る前後輪駆動車両1Iの駆動系の構成を示す概略構成図である。
図13及び
図14において、第1の実施の形態について
図1及び
図2を参照して説明したものと共通する部材には、
図1に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0099】
歯車機構6は、第1の回転部材としてのドライブギヤ61と、第2の回転部材としてのドリブンギヤ62と、ドライブギヤ61からドリブンギヤ62に駆動源であるエンジン12の駆動力を伝達する駆動力伝達媒体としてのアイドルギヤ63とを有している。ドライブギヤ61は、トランスミッション13の出力回転軸134に固定され、
図14に示す回転軸線O
7を中心として回転する。ドリブンギヤ62は、後輪側出力回転軸202に固定され、回転軸線O
8を中心として回転する。アイドルギヤ63は、中心部に挿通孔630が形成された環状であり、回転軸線O
9を中心として回転する。これらの回転軸線O
7,O
8,O
9、及び電動モータ11の出力回転軸111の回転軸線O
1、ならびに二連ギヤ23の回転軸線O
3は、互いに平行であり、かつ離間している。
【0100】
アイドルギヤ63は、円筒状の筒部631と、筒部631の外周に設けられたギヤ部632とを有している。筒部631は、その中心部が回転軸線O9に沿った挿通孔630となっており、不図示の軸受によってハウジング30に対して回転可能に支持されている。アイドルギヤ63のギヤ部632は、ドライブギヤ61のギヤ歯61a及びドリブンギヤ62のギヤ歯62aに噛み合うギヤ歯632aを外周に有している。
【0101】
二連ギヤ23の連結軸233は、アイドルギヤ63の挿通孔630に挿通されている。本実施の形態では、
図14に示すように、アイドルギヤ63が二連ギヤ23に対して偏心しており、アイドルギヤ63の回転軸線O
9と二連ギヤ23の回転軸線O
3とが一致していないが、アイドルギヤ63の回転軸線O
9と二連ギヤ23の回転軸線O
3とが一致していてもよい。二連ギヤ23の連結軸233は、第1の実施の形態と同様、本発明のモータ駆動力回転部材の一態様であり、アイドルギヤ63の内側におけるドライブギヤ61とドリブンギヤ62との間に挿通され、電動モータ11の駆動力によって回転する。その他の駆動力配分装置2の構成及び動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0102】
以上説明した第5の実施の形態でも、二連ギヤ23の連結軸233が歯車機構6におけるアイドルギヤ63の内側におけるドライブギヤ61とドリブンギヤ62との間に挿通されているため、第1の実施の形態と同様に、駆動力配分装置2を小型化及び軽量化することができる。なお、第2乃至第4の実施の形態及びその変形例に示したチェーン機構35,45,56を、歯車機構6に置き換えてもよい。また、挿通孔630を有するアイドルギヤ63とドライブギヤ61及びドリブンギヤ62の少なくとも何れかとの間に、さらに別の歯車を追加してもよい。
【0103】
(付記)
以上、本発明を第1乃至第5の実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0104】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。またさらに、上記した複数の実施の形態あるいは変形例の一部の構成を互いに組み合わせてもよい。
【0105】
また、第1乃至第5の実施の形態及び変形例では、エンジン12が縦置きされたFRベースの前後輪駆動車に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、エンジンが横置きされていてもよい。この場合、多連ギヤ(二連ギヤや三連ギヤ)の回転軸線が車両左右方向に延在するように駆動力配分装置を配置してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1,1A~1I…前後輪駆動車両
101,102…前輪
103,104…後輪
11…電動モータ
111…出力回転軸(モータ駆動力回転部材)
14…フロントプロペラシャフト(前輪側駆動軸)
17…リヤプロペラシャフト(後輪側駆動軸)
2~5…駆動力配分装置
201,371,471,571…前輪側出力回転軸
202,372,472,572…後前輪側出力回転軸
23,32,52…二連ギヤ(多連ギヤ)
231,281,321,431…入力側ギヤ部
232,322…出力側ギヤ部
233,284,323,384,434,523…連結軸(モータ駆動力回転部材)
251,351,451,561…第1のスプロケット(第1の回転部材)
252,352,452,562…第2のスプロケット(第2の回転部材)
26,353,453,563…チェーン(駆動力伝達媒体、無端帯状体)
27,36,46,55…噛み合いクラッチ
28,38,43…三連ギヤ(多連ギヤ)
282,432…第1の出力側ギヤ部
283,433…第2の出力側ギヤ部
381…後側ギヤ部(入力側ギヤ部)
382…中間ギヤ部(出力側ギヤ部)
383…前側ギヤ部(出力側ギヤ部)
54…差動歯車機構
61…ドライブギヤ(第1の回転部材)
62…ドリブンギヤ(第2の回転部材)
63…アイドルギヤ(駆動力伝達媒体)