(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084316
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】防水・防湿コーティング剤及び基材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20220531BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220531BHJP
C09D 123/28 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C09K3/18 102
C09D7/20
C09D123/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196111
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】平林 涼
【テーマコード(参考)】
4H020
4J038
【Fターム(参考)】
4H020AA04
4H020AB02
4H020BA12
4J038CD101
4J038GA03
4J038GA06
4J038GA15
4J038JA11
4J038JA25
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA07
(57)【要約】
【課題】パーフルオロアルキル基を有しない含フッ素重合体を含み、良好な撥水性能を示す防水・防湿コーティング剤、及びその防水・防湿コーティング剤によって撥水性を付与した部材の提供。
【解決手段】式(a)で表される単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体と、非引火性フッ素系溶剤とを含む防水・防湿コーティング剤であって、前記非引火性フッ素系溶剤が、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、防水・防湿コーティング剤。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(a)で表される単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体と、非引火性フッ素系溶剤とを含む防水・防湿コーティング剤であって、
前記非引火性フッ素系溶剤が、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、防水・防湿コーティング剤。
【化1】
式(a)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Lは-(CH
2)
m-(CF
2)
n-で表される2価の連結基である。
Lにおいて、mは1~4の整数であり、nは1~8の整数である。ただし、Lにおいて、メチレン基(-CH
2-)とジフルオロメチレン基(-CF
2-)との結合順序は限定されない。
【請求項2】
前記含フッ素重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対する、単量体(a)に基づく単位の割合が50~100質量%である、請求項1に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項3】
式(a)において、-O-L-Hが-O-(CH2)m-(CF2)n-Hであり、-(CH2)m-と-(CF2)n-とがこの順に結合している、請求項1又は2に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項4】
式(a)において、m=1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項5】
式(a)において、nが2~8の整数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項6】
式(a)において、Rがメチル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項7】
前記含フッ素重合体の数平均分子量が5.0×103~5.0×104である、請求項1~6のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項8】
前記非引火性フッ素系溶剤が、
m-キシレンヘキサフルオリドと1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンを混合してなり、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンを65質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤、
m-キシレンヘキサフルオリドとエチルノナフルオロブチルエーテルとを混合してなり、エチルノナフルオロブチルエーテルを30質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤、
m-キシレンヘキサフルオリドと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンとを混合してなり、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンを10質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤、及び
m-キシレンヘキサフルオリドと1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルとを混合してなり、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルを10質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤
からなる群から選択されるいずれか1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項9】
前記含フッ素重合体を0.1~30質量%含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤。
【請求項10】
表面の少なくとも一部に、請求項1~9のいずれか1項に記載の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜を有する基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水・防湿コーティング剤及び基材に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系の防水・防湿コーティング剤として、炭素鎖長が8以上の直鎖状又は末端分岐のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合物が使用されてきた。これは、側鎖の(CF2)8F基の持つ結晶性が、高い撥水性能を示すためであった。
【0003】
特許文献1には、式(a):CH2=C(CH3)-COO-(CH2)n-(CF2)6F(式(a)中、nは0~4の整数である。)で表される化合物から導かれる単位(A)及び式(b):CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4Hで表される化合物から導かれる単位(B)を含有する共重合体と、溶媒とを含む防水・防湿コーティング剤が開示でされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された防水・防湿コーティング剤は、パーフルオロアルキル基を有する不飽和化合物から導かれる重合体を含む。しかし、近年、パーフルオロアルキル基を有する重合体を含まない防水・防湿コーティング剤が求められている。
【0006】
本発明は、パーフルオロアルキル基を有しない含フッ素重合体を含み、良好な撥水性能を示す防水・防湿コーティング剤、及びその防水・防湿コーティング剤によって撥水性を付与した部材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 式(a)で表される単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体と、非引火性フッ素系溶剤とを含む防水・防湿コーティング剤であって、
前記非引火性フッ素系溶剤が、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、防水・防湿コーティング剤。
【化1】
式(a)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Lは-(CH
2)
m-(CF
2)
n-で表される2価の連結基である。
Lにおいて、mは1~4の整数であり、nは1~8の整数である。ただし、Lにおいて、メチレン基(-CH
2-)とジフルオロメチレン基(-CF
2-)との結合順序は限定されない。
[2] 前記含フッ素重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対する、単量体(a)に基づく単位の割合が50~100質量%である、[1]に記載の防水・防湿コーティング剤。
[3] 式(a)において、-O-L-Hが-O-(CH
2)
m-(CF
2)
n-Hであり、-(CH
2)
m-と-(CF
2)
n-とがこの順に結合している、[1]又は[2]に記載の防水・防湿コーティング剤。
[4] 式(a)において、m=1である、[1]~[3]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤。
[5]式(a)において、nが2~8の整数である、[1]~[4]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤。
[6] 式(a)において、Rがメチル基である、[1]~[5]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤。
[7] 前記含フッ素重合体の数平均分子量が5.0×10
3~5.0×10
4である、[1]~[6]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤。
[8] 前記非引火性フッ素系溶剤が、
m-キシレンヘキサフルオリドと1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンを混合してなり、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンを65質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤、
m-キシレンヘキサフルオリドとエチルノナフルオロブチルエーテルとを混合してなり、エチルノナフルオロブチルエーテルを30質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤、
m-キシレンヘキサフルオリドと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンとを混合してなり、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンを10質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤、及び
m-キシレンヘキサフルオリドと1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルとを混合してなり、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルを10質量%以上含む非引火性フッ素系混合溶剤
からなる群から選択されるいずれか1種である、[1]~[7]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤。
[9] 前記含フッ素重合体を0.1~30質量%含む、[1]~[8]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤。
[10] 表面の少なくとも一部に、[1]~[9]のいずれかに記載の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜を有する基材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パーフルオロアルキル基を有しない含フッ素重合体を含み、良好な撥水性能を示す防水・防湿コーティング剤、及びその防水・防湿コーティング剤によって撥水性を付与した部材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「~」を用いて表される数値範囲は、その両端の数値を含む。
パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の全部がフッ素原子に置換されたパーフルオロ置換アルキル基を意味する。アルキル基の末端CH3を含む部分もまたアルキル基という場合がある。
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0010】
[防水・防湿コーティング剤]
本発明の防水・防湿コーティング剤は、後述する含フッ素重合体(以下「重合体(A)」ともいう。)と、後述する非引火性フッ素系溶剤とを含む防水・防湿コーティング剤である。
【0011】
〈重合体(A)〉
重合体(A)は、式(a)で表される単量体(以下「単量体(a)」ともいう。)に基づく構成単位(以下「単位(a)」ともいう。)を含む。
【0012】
【0013】
式(a)において、Rは水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましい。Rがメチル基であると、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の撥水性がより良好になる傾向がある。
【0014】
式(a)において、Lは-(CH2)m-(CF2)n-で表される2価の連結基である。
Lにおいて、mは1~4の整数であり、1又は2が好ましい。
Lにおいて、nは1~8の整数であり、1~6の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
Lにおいて、メチレン基(-CH2-)とジフルオロメチレン基(-CF2-)との結合順序は限定されない。例えば、Lは、メチレン基からなるブロックとジフルオロメチレン基からなるブロックが結合したものであってもよいし、メチレン基とジフルオロメチレン基とがタンデムに結合したものであってもよいし、メチレン基とジフルオロメチレン基とがランダムに結合したものであってもよい。
【0015】
単量体(a)の具体例としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。
CH2=C(CH3)-COO-CH2-CF2-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)2-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)3-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)4-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)5-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)6-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)7-H
CH2=C(CH3)-COO-CH2-(CF2)8-H
【0016】
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-CF2-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)2-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)3-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)4-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)5-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)6-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)7-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)2-(CF2)8-H
【0017】
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-CF2-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)2-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)3-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)4-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)5-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)6-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)7-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-(CF2)8-H
【0018】
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-CF2-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)2-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)3-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)4-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)5-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)6-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)7-H
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)4-(CF2)8-H
【0019】
CH2=CH-COO-CH2-CF2-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)2-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)3-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)4-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)5-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)6-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)7-H
CH2=CH-COO-CH2-(CF2)8-H
【0020】
CH2=CH-COO-(CH2)2-CF2-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)2-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)3-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)4-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)5-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)6-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)7-H
CH2=CH-COO-(CH2)2-(CF2)8-H
【0021】
CH2=CH-COO-(CH2)3-CF2-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)2-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)3-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)4-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)5-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)6-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)7-H
CH2=CH-COO-(CH2)3-(CF2)8-H
【0022】
CH2=CH-COO-(CH2)4-CF2-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)2-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)3-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)4-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)5-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)6-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)7-H
CH2=CH-COO-(CH2)4-(CF2)8-H
【0023】
重合体(A)は、単位(a)の1種からなる単独重合体であってもよいし、単位(a)の2種以上からなる共重合体であってもよい。
【0024】
《単位(a)以外の構成単位》
また、重合体(A)は、単位(a)以外の構成単位(パーフルオロアルキル基を有するものを除く。)を含む共重合体であってもよい。重合体(A)が単位(a)以外の構成単位を含む場合の重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する単位(a)の割合(質量%)は、特に限定されないが、30~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、70~100質量%がさらに好ましい。重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する単位(a)の割合(質量%)が大きいほど、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の撥水性がより良好になる傾向がある。
【0025】
上記単位(a)以外の構成単位としては、例えば、後述する単位(b)及び単位(c)が挙げられる。重合体(A)は、単位(a)の他に、単位(b)及び単位(c)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0026】
(単位(b))
単位(b)は、式(b)で表される単量体(以下「単量体(b)」ともいう。)に基づく構成単位である。
CH2=C(R6)-Q2-W (b)
式(b)において、R6、Q2及びWは、それぞれ、以下の意味である。
R6は、水素原子又はメチル基である。
Q2は、単結合又は2価の連結基である。上記2価の連結基としては、上述した式(b)におけるQ1と同様のものが挙げられる。
Wは、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基である。上記カルボキシ基は、塩の形でもよい。
【0027】
Wとしては、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の基材の表面に対する密着性がより向上することから、カルボキシ基又はアルコキシシリル基が好ましい。
【0028】
単量体(b)は、Wがアルコキシシリル基である場合、式(b1)で表される化合物(以下「化合物(b1)」ともいう。)が好ましい。
CH2=C(R6)-COO-Q21-Si(OAk2)3 (b1)
式(b1)において、R6、Q21及びAk2は、それぞれ、以下の意味である。
R6は、水素原子又はメチル基である。
Q21は、直鎖状又は分岐状のアルキレン基(置換基を有していてもよい)である。
Ak2は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0029】
化合物(b1)の例としては、式(b11)~式(b16)のいずれか1つで表される化合物が挙げられる。
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-Si(OCH3)3 (b11)
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3 (b12)
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)3-Si(OCH2(CH3)2)3 (b13)
CH2=CH-COO-(CH2)3-Si(OCH3)3 (b14)
CH2=CH-COO-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3 (b15)
CH2=CH-COO-(CH2)3-Si(OCH2(CH3)2)3 (b16)
【0030】
単量体(b)は、Wがヒドロキシ基である場合、式(b2)で表される化合物が好ましい。
CH2=C(R6)-COO-Q22-OH (b2)
式(b2)において、R6及びQ22は、それぞれ、以下の意味である。
R6は、水素原子又はメチル基である。
Q22は、-X3-又は-X4-X3-である。ただし、X3は、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基(水素原子がヒドロキシ基で置換されていてもよい)、フェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、X4は、-(C2H4O)n-又は-(C3H6O)n-(nは1~30の整数である)である。
【0031】
化合物(b2)の例としては、式(b21)~式(b28)のいずれか1つで表される化合物が挙げられる。ただし、式(b21)~式(b26)において、aは、式毎にそれぞれ独立に、1~10の整数である。
CH2=CH-COO-(CH2)a-OH (b21)
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)a-OH (b22)
CH2=CH-COO-(C2H4O)a-OH (b23)
CH2=C(CH3)-COO-(C2H4O)a-OH (b24)
CH2=CH-COO-(C3H6O)a-OH (b25)
CH2=C(CH3)-COO-(C3H6O)a-OH (b26)
CH2=CH-COO-CH2CH(OH)CH2-OH (b27)
CH2=C(CH3)-COO-CH2CH(OH)CH2-OH (b28)
【0032】
単量体(b)は、Wがカルボキシ基である場合、式(b2)で表される化合物が好ましい。
CH2=C(R6)-Q23-COOH (b3)
式(b3)において、R6及びQ23は、それぞれ、以下の意味である。
R6は、水素原子又はメチル基である。
Q23は、単結合、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、-(C2H4O)n-若しくは-(C3H6O)n-(nは1~30の整数である)、又は-Z3-X5-若しくは-Z3-X6-Z4-X7-で表される2価の連結基である。ただし、Z3は、-COO-であり、X5は、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基又は-(C2H4O)n-若しくは-(C3H6O)n-(nは1~30の整数である)であり、X6は、-(C2H4O)n-又は-(C3H6O)n-(nは1~30の整数である)であり、Z4は、-CO-であり、X7は、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。
【0033】
化合物(b3)の例としては、式(b31)~式(b40)のいずれか1つで表される化合物が挙げられる。ただし、式(b31)~式(b36)において、a及びbは、式毎にそれぞれ独立に1~10の整数である。
CH2=CH-COOH (b31)
CH2=C(CH3)-COOH (b32)
CH2=CH-COO-(CH2)b-COOH (b33)
CH2=C(CH3)-COO-(CH2)b-COOH (b34)
CH2=CH-COO-(C2H4O)c-CO-(CH2)b-COOH (b35)
CH2=C(CH3)-COO-(C2H4O)c-CO-(CH2)b-COOH (b36)
【0034】
【0035】
重合体(A)が単位(b)を含むと、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の基材の表面に対する密着性がより良好になる傾向がある。
重合体(A)が単位(b)を含む場合の重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する単位(b)の割合(質量%)は、特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0036】
(単位(c))
単位(c)は、単量体(a)及び単量体(b)と共重合しうる化合物(以下「単量体(c)」ともいう。)に基づく構成単位である。
単量体(c)は、炭化水素基等の疎水性の基と重合性不飽和結合を有するものが好ましい。単量体(c)の例として、炭素数8以上の長鎖アルキルの(メタ)アクリル酸エステル、炭素数7以下の短鎖アルキルの(メタ)アクリル酸エステル、及びシクロヘキシル基、フェニル基、イソボルニル基又はノルボルニル基等の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0037】
重合体(A)が単位(c)を含むと、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜に、単量体(c)の種類に応じた機能性を付与することができる。
重合体(A)が単位(c)を含む場合の重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する単位(c)の合計割合(質量%)は、特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する単位(c)の割合(質量%)がこの範囲内であると、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の撥水性が損なわれず、単量体(c)の種類に応じた機能性を付与しやすい。
【0038】
《重合体(A)が含まない構成単位》
重合体(A)は、パーフルオロアルキル基を有する構成単位を含まないことが好ましい。上記パーフルオロアルキル基を有する構成単位は、パーフルオロアルキル基を有する単量体に基づく構成単位である。
【0039】
《重合体(A)の分子量》
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、5.0×103~5.0×104が好ましく、8.0×103~3.0×104がより好ましく、1.0×104~2.0×104がさらに好ましい。
重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5.0×103~1.0×105が好ましく、8.0×103~7.0×104がより好ましく、1.0×104~5.0×104がさらに好ましい。
重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、1.0に近いほど分子量分布が小さくなり、好ましい。
重合体(A)の質量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)が上記範囲内であると、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の撥水性がより良好になる傾向がある。
【0040】
重合体(A)の分子量は、以下の測定方法によって測定した値である。
(試料)重合体(A)をNovec7300/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=85/15vol%で0.2質量%に希釈して試料を製造する。
(測定)試料中の重合体(A)の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を以下の測定条件で測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
パージ溶媒:Novec7300(3M社製)/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=85/15vol%
移動相:Novec7300/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=85/15vol%
注入量:20μL
流速:0.3mL/min
カラム温度:40℃
分析時間:40min
検出器:示差屈折(RI)検出器
カラム:Shodex GPC LF-604×2、Shodex GPC LF-6×1、KF-600PH×1(昭和電工社製) 直列接続
【0041】
《重合体(A)の製造方法》
重合体(A)は、単位(a)とともに、任意に、単位(b)及び単位(c)からなる群から選択される1種以上を含んでよいこと以外は、重合形態など特に制限されない。重合体(A)が共重合体である場合の重合形態は特に制限されず、ランダム重合体、ブロック重合体及びグラフト重合体等のいずれでもよい。
【0042】
重合体(A)の製造方法も特に限定されず、各種の公知の方法を採用し得る。例えば、各単量体中の不飽和基に基づき付加重合させることができる。重合に際しては、公知の不飽和化合物の付加重合条件を適宜に採択して行うことができる。例えば重合開始源として有機過酸化物、アゾ化合物又は過硫酸塩等の通常の開始剤が利用できる。また、分子量の調整のために、重合反応時に分子量調整剤を利用することもできる。
【0043】
〈非引火性フッ素系溶剤〉
本発明の防水・防湿コーティング剤組成物が含む非引火性フッ素系溶剤は、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0044】
上記非引火性フッ素系溶媒は、上述した溶剤を1種単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。さらに、非引火性を維持できる限りにおいて、上述した溶剤以外の有機溶剤を含んでもよい。
【0045】
上述した溶剤以外の有機溶剤としては、例えば、m-キシレンヘキサフルオリド(以下「m-XHF」ともいう。)、p-キシレンヘキサフルオリド(以下「p-XHF」ともいう。)、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン及びメチルエチルケトンが挙げられる。非処理物への材質影響と重合物の溶解性の観点から、上述した溶剤以外の有機溶剤としては、m-XHF又はp-XHFが好ましい。また、非引火性フッ素系溶剤がm-XHF又はp-XHFを含む混合溶剤であると、本発明の防水・防湿コーティング剤の成膜性がより良好になる。
【0046】
上記非引火性フッ素系溶剤のうち、非引火性の混合溶剤の例を以下に示す。
m-XHFと1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3;製品例,アサヒクリンAC-6000,AGC社製)との混合溶剤(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンを65質量%以上含むもの)。
m-XHFとエチルノナフルオロブチルエーテル(C4F9OC2H5;製品例,Novec 7200(異性体混合物),3M社製)との混合溶剤(エチルノナフルオロブチルエーテルを30質量%以上含むもの)。
m-XHFと1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン(CF3CF2CF(OCH3)CF(CF3)2;製品例,Novec 7300,3M社製)との混合溶剤(1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタンを10質量%以上含むもの)。
m-XHFと1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(CF3CH2OCF2CF2H;製品例,アサヒクリンAE-3000,AGC社製)との混合溶剤(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテルを10質量%以上含むもの)。
【0047】
〈重合体(A)の濃度〉
本発明の防水・防湿コーティング剤における重合体(A)の濃度は、特に限定されないが、防水・防湿コーティング剤の全質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
本発明の防水・防湿コーティング剤における重合体(A)の濃度が上記範囲内であると、本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜の撥水性能が十分に発揮できる。
本発明の防水・防湿コーティング剤における重合体(A)の濃度は最終濃度であればよく、例えば、本発明の防水・防湿コーティング剤を重合組成物として直接調製する場合には、重合直後の重合組成物の重合体濃度(固形分濃度)が30質量%を超えていてもなんら差し支えない。高濃度の重合組成物は、適宜に希釈することにより、最終的に上記範囲内とすることができる。
【0048】
〈重合体(A)以外の成分〉
本発明の防水・防湿コーティング剤は、その組成物としての安定性、撥水性能又は外観等に悪影響を与えない範囲であれば、上述したもの以外の他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、組成物を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的又は未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤及び帯電防止剤が挙げられる。
なお、本発明の防水・防湿コーティング剤は、フッ素系有機溶媒を除き、パーフルオロアルキル基を有する化合物を含まないことが好ましい。例えば、本発明の防水・防湿コーティング剤は、パーフルオロアルキル基を有する重合体を含まないことが好ましい。
【0049】
[撥水性を付与した部材]
本発明の撥水性を付与した基材は、表面の少なくとも一部に、上述した防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜を有する基材である。
本発明の撥水性を付与した部材は、本発明の防水・防湿コーティング剤を、基材の表面に塗布し、乾燥することで、基材の表面の少なくとも一部を重合体(A)で被覆し、撥水性能を付与したものである。
塗布の方法としては、一般的な塗布方法が採用できる。例えば、浸漬塗布、スプレー塗布又はローラー等により、本発明の防水・防湿コーティング剤を基材の表面の少なくとも一部に塗布できる。
乾燥の方法としては、溶剤の沸点以上の温度に加熱する方法が採用できるが、基材の種類により加熱乾燥が困難な場合には、加熱を回避して乾燥する。なお、加熱の条件は、塗布する防水・防湿コーティング剤の組成及び塗布面積等に応じて適宜選択すればよい。
本発明の防水・防湿コーティング剤を乾燥した被膜は、パーフルオロアルキル基を有する化合物を含まないことが好ましい。
【実施例0050】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0051】
[実施例1]
(単独重合体の製造)
2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート(富士フイルム和光純薬社製)(単量体)の10.0gと、m-キシレンヘキサフルオライド(市販品)(重合溶剤)の30.9gと、V-601(ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート,富士フイルム和光純薬社製)(重合開始剤)の0.1gを加え、重合溶液を準備した。重合溶液内の溶存酸素を除くために、窒素ガスで1分間のバブリングを行った。その後、メジューム瓶を振とう恒温槽に入れ、70℃で18時間以上、振とう数120~130min-1の条件で重合させ、単独重合体溶液を製造した。
【0052】
(単独重合体の分子量)
得られた単独重合体溶液を60℃で減圧乾燥させた。その後、メタノールとイオン交換水の比率が80:20(質量%)の水溶液で洗浄し、再度、60℃で減圧乾燥させ固体を得た。
得られた固体をNovec7300/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=85/15vol%で0.2質量%に希釈して試料を製造した。
得られた重合体の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を以下の測定条件で測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
パージ溶媒:Novec7300(3M社製)/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=85/15vol%
移動相:Novec7300/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=85/15vol%
注入量:20μL
流速:0.3mL/min
カラム温度:40℃
分析時間:40min
検出器:示差屈折(RI)検出器
カラム:Shodex GPC LF-604×2、Shodex GPC LF-6×1、KF-600PH×1(昭和電工社製) 直列接続
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0053】
(撥水性)
得られた単独重合体溶液を重合体の濃度が5質量%になるようにm-キシレンフルオライド(市販品)で希釈してコーティング剤を調製した。
コーティング剤を常温(20℃±15℃)とし、ガラス板(サイズ:0.9mm×10mm×50mm)を浸漬した。1分間浸漬した後、ガラス板を取り出し、120℃で5分間乾燥させて、ガラス板の表面にコーティング剤を乾燥させた被膜を形成した。
次に、被膜を形成したガラス板の被膜上に、イオン交換水を10μL滴下し、水接触角を測定した。水接触角の測定には、接触角計(Dmo-501、協和界面科学社製)を用いた。
測定した水接触角(°)を表1に示す。
【0054】
(パーフルオロアルキル基の有無)
合成した単独重合体がパーフルオロアルキル基を有する場合には「P」、有しない場合には「A」と評価した。評価を表1に示す。
【0055】
(コーティング剤の調製例)
得られた単独重合体溶液を60℃で減圧乾燥させた。その後、メタノールとイオン交換水の比率が80:20(質量%)の水溶液で洗浄し、再度、60℃で減圧乾燥させ固体を得た。
サンプル瓶に、得られた重合体固体の約0.1gと表2に示すフッ素系溶剤の約0.9gとを加え、重合体の濃度が10質量%になるように調製した。その後、1時間超音波にあて、25℃で1日静置して、溶解性を以下のとおり評価した。
○・・・透明な溶液である
×・・・固体が残っている
【0056】
[実施例2~4]
単量体を、表1に示す各化合物(市販品)に変更した他は、実施例1と同様にして単独重合体の分子量の測定、撥水性の評価(水接触角の測定)、パーフルオロアルキル基の有無の評価及びコーティング剤の調製(フッ素系溶剤に対する溶解性の評価)を行った。結果を表1~表2に示す。
【0057】
[比較例1~6]
単量体を、表1に示す各化合物(市販品)に変更した他は、実施例1と同様にして重合を行い、貧溶媒としてメタノールを過剰に加えて再沈殿し、60℃で減圧乾燥させ重合体固体を得た。その後、実施例1と同様にして単独重合体の分子量の測定、撥水性の評価(水接触角の測定)、パーフルオロアルキル基の有無の評価及びコーティング剤の調製(フッ素系溶剤に対する溶解性の評価)を行った。結果を表1、表3及び表4に示す。
【0058】
[比較例7、8]
単量体を、表3に示す各化合物(市販品)に変更して非フッ素系重合体を合成した他は、実施例1と同様にして重合を行った。重合後、固体が析出したため、固体をNovec7200(3M社製)で洗浄し、60℃で減圧乾燥させ重合体固体を得た。その後、実施例1と同様にして単独重合体の分子量の測定、撥水性の評価(水接触角の測定)、パーフルオロアルキル基の有無の評価及びコーティング剤の調製(フッ素系溶剤に対する溶解性の評価)を行った。結果を表1及び表4に示す。
なお、非フッ素系重合体については、Mw、Mn、及び(Mw/Mn)を、ACQUITY Arc Systems(日本ウォーターズ株式会社製)を用いて測定した。以下に各測定条件を示す。
装置:ACQUITY Arc Systems(日本ウォーターズ株式会社製)
パージ溶媒:テトラヒドロフラン
移動相:テトラヒドロフラン
注入量:20μL
流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
分析時間:10min
検出器:ELSD
カラム:ACQUITY APCTM XT 45×2,ACQUITY APCTM XT 200×1,ACQUITY APCTM XT 450×1(日本ウォーターズ株式会社製)
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
[結果の説明]
実施例1~4及び比較例1~6のコーティング剤を乾燥した被膜の撥水性はいずれも良好であった。
実施例1~4の重合体のフッ素系溶剤に対する溶解性は良好であったが、比較例の重合体のフッ素系溶剤に対する溶解性は良好でないものがあった。
実施例1~4のコーティング剤はパーフルオロアルキル基を有する重合体を含んでいないが、比較例1~8のコーティング剤はパーフルオロアルキル基を有する重合体を含んでいる。