(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084317
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
F25B1/00 101H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196113
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】木野村 肇
(72)【発明者】
【氏名】所谷 雅史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 一哉
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧縮機外に流出した潤滑油を短時間で回収可能な空気調和装置を提供する。
【解決手段】圧縮機20及び室外熱交換器24,25を少なくとも内蔵した室外ユニット2と、凝縮器30及び蒸発器31を少なくとも内蔵した室内ユニット3と、室外ユニット2及び室内ユニット3に架けて接続された高圧ガス管10、低圧ガス管11、及び液管12と、を備え、再熱除湿運転を実行可能な空気調和装置1であって、凝縮器30の上流側は、高圧ガス管10に連通可能に接続され、凝縮器30の下流側及び蒸発器31の上流側は、液管12に連通可能に接続され、蒸発器31の下流側は、低圧ガス管11に連通可能に接続され、凝縮器30及び蒸発器31よりも圧縮機20側には、高圧ガス管10及び低圧ガス管11を連通可能なバイパス部34を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機及び室外熱交換器を少なくとも内蔵した室外ユニットと、
凝縮器及び蒸発器を少なくとも内蔵した室内ユニットと、
前記室外ユニット及び前記室内ユニットに架けて接続された高圧ガス管、低圧ガス管、及び液管と、を備え、再熱除湿運転を実行可能な空気調和装置であって、
前記凝縮器の上流側は、前記高圧ガス管に連通可能に接続され、前記凝縮器の下流側及び前記蒸発器の上流側は、前記液管に連通可能に接続され、前記蒸発器の下流側は、前記低圧ガス管に連通可能に接続され、
前記凝縮器及び前記蒸発器よりも前記圧縮機側には、前記高圧ガス管及び前記低圧ガス管を連通可能なバイパス部を有していることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記バイパス部は、前記室内ユニットに内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記バイパス部は、開閉弁を具備していることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記バイパス部は、キャピラリチューブを具備していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記バイパス部から前記凝縮器までの管路と、前記蒸発器から前記バイパス部までの管路とが、略等距離であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気調和を行う空気調和装置に関し、特に再熱除湿運転を実行可能な空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で空気調和を行うために利用されている空気調和装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器から主に構成されるヒートポンプを備えている。このような空気調和装置には、ヒートポンプの構成が、空気調和を行う対象となる室内に設置される室内ユニットと、室外に設置される室外ユニットに分割され、室外にて排熱を行うことで室内の空気調和の効率が高められているセパレート式のものもある。
【0003】
セパレート式の空気調和装置には、室内ユニットに設置された蒸発器によって空気を冷却し、当該空気中の水分を水滴として排出することで除湿を行い、続けて除湿済空気を加温する再熱により温度調整し、空調済空気として室内に供給する、いわゆる再熱除湿運転を実行可能なものがある。再熱除湿運転は、除湿時に蒸発器による冷却度合いによって排出される水分量を調整可能であることに加え、空気の加温度合いによって空調済空気の温度・湿度調整が可能である。このような空気調和装置には、加温に必要なエネルギの省力化を目指して、電熱ヒーターよりも相対的に消費電力が少ないヒートポンプが利用されているものもある。
【0004】
このような再熱除湿運転を可能な空気調和装置の一例である特許文献1に示される空気調和装置は、室内ユニットが、圧縮機から吐出された高温高圧であるガス状の熱媒(以下、「高圧ガス熱媒」と称する)と、高圧ガス熱媒を室外ユニット内の室外熱交換器により熱交換した低温高圧である液状の熱媒(以下、「液熱媒」と称する)を両方またはどちらか一方を吐出可能な室外ユニットに接続されている。
【0005】
より詳しくは、室内ユニットは、凝縮器と、蒸発器を共に備えている。凝縮器の上流側は高圧ガス熱媒が流れる高圧ガス管に連通し、その下流側は液熱媒が流れる液管に連通可能となっている。蒸発器の上流側は液管に連通可能となっており、その下流側は圧縮機に吸入される低温低圧であるガス状の熱媒(以下、「低圧ガス熱媒」と称する)が流れる低圧ガス管に連通している。
【0006】
再熱除湿運転時には、室外ユニットから吐出された高圧ガス熱媒が凝縮器を通過して液熱媒に状態変化した後、当該液熱媒が蒸発器を通過して低圧ガス熱媒に状態変化する一方で、室内ユニット内に取り込まれた空調対象となる室内空気(以下、「空調前空気」と称する)が蒸発器、凝縮器の順に通過する。これにより、空調前空気が蒸発器により除湿されて除湿済空気となり、続けて除湿済空気が凝縮器により再熱されて空調済空気となる。このように、除湿・再熱共にヒートポンプを利用した再熱除湿運転を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-227841号公報(第3,4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように特許文献1のような空気調和装置にあっては、高圧ガス熱媒ばかりでなく、液熱媒も吐出することができるため、室外ユニットから吐出される液熱媒の量に応じて蒸発器による除湿度合いを調節することができる。ところで、空気調和装置では、圧縮機の駆動が潤滑油により保たれている一方で、潤滑油が吐出される熱媒に混ざり込む場合があるため、圧縮機から流出した潤滑油を回収する必要がある。しかしながら、潤滑油を回収するには、凝縮器及び蒸発器を通過した後、圧縮機に回収されるサイクルを一巡する必要があることから、圧縮機から潤滑油が過剰に流出すると回収されるまでの間に貧潤滑による焼き付きが圧縮機に生じる虞があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、圧縮機外に流出した潤滑油を短時間で回収可能な空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、
圧縮機及び室外熱交換器を少なくとも内蔵した室外ユニットと、
凝縮器及び蒸発器を少なくとも内蔵した室内ユニットと、
前記室外ユニット及び前記室内ユニットに架けて接続された高圧ガス管、低圧ガス管、及び液管と、を備え、再熱除湿運転を実行可能な空気調和装置であって、
前記凝縮器の上流側は、前記高圧ガス管に連通可能に接続され、前記凝縮器の下流側及び前記蒸発器の上流側は、前記液管に連通可能に接続され、前記蒸発器の下流側は、前記低圧ガス管に連通可能に接続され、
前記凝縮器及び前記蒸発器よりも前記圧縮機側には、前記高圧ガス管及び前記低圧ガス管を連通可能なバイパス部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、圧縮機内の潤滑油量が良好である場合には、バイパス部により高圧ガス管と低圧ガス管とを非連通状態とすることで通常の再熱除湿運転を行える一方、潤滑油が熱媒に過度に混入し、圧縮機内の潤滑油量が低減してきた場合には、バイパス部により高圧ガス管と低圧ガス管とを連通状態とすることで凝縮器及び蒸発器よりも圧縮機側で熱媒と共に潤滑油を回収する油戻し運転を行うことができる。これにより、熱媒に混入した潤滑油が凝縮器及び蒸発器に流入することを抑制して当該潤滑油を圧縮機に回収することができる。加えて、凝縮器への潤滑油流入の抑制度合いと、蒸発器への潤滑油流入の抑制度合いとを略同一に保つことができるため、通常の再熱除湿運転と油戻し運転との切り替えに必要な制御が容易となる。
【0011】
前記バイパス部は、前記室内ユニットに内蔵されていることを特徴としている。
この特徴によれば、凝縮器に近い位置で高圧ガス熱媒の流れが分岐することにより、バイパス部から凝縮器に流入するまでに生じる圧力損失が低減されるため、通常の再熱除湿運転と油戻し運転との切り替えに必要な制御が容易となる。
【0012】
前記バイパス部は、開閉弁を具備していることを特徴としている。
この特徴によれば、開閉弁の開閉により、再熱除湿運転と油戻し運転とを切り替えることができる。
【0013】
前記バイパス部は、キャピラリチューブを具備していることを特徴としている。
この特徴によれば、蒸発器への熱媒の逆流を抑止することができる。
【0014】
前記バイパス部から前記凝縮器までの管路と、前記蒸発器から前記バイパス部までの管路とが、略等距離であることを特徴としている。
この特徴によれば、バイパス部から凝縮器までの管路の圧力と、蒸発器からバイパス部までの管路の圧力とのバランスを保ちながら熱媒を循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施例の空気調和装置における通常の再熱除湿運転を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る実施例の空気調和装置における通常の再熱除湿運転の別態様を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る実施例の空気調和装置における通常の再熱除湿運転のさらに別態様を示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る実施例の空気調和装置における油戻し運転を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る空気調和装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0017】
実施例に係る空気調和装置につき、
図1~
図4を参照して説明する。本実施例の空気調和装置1は、通常の再熱除湿運転のほか、油戻し運転を切り替え可能に構成されている。尚、本実施例において、油戻し運転とは、後述する油戻しのみを行うものに限られず、油戻しと並行して再熱除湿運転を行うものも含む。
【0018】
図1を参照して、空気調和装置1は、例えば執務室、作業場等の室内空間のほか、特に病院、図書館、美術館等のように湿度管理が求められる室内空間の湿度調整のために使用されるものであって、建物外に設置される室外ユニット2と、空調対象となる室内に設置される室内ユニット3と、室外ユニット2及び室内ユニット3に架けて接続された高圧ガス管10、低圧ガス管11、及び液管12と、から主に構成されている。
【0019】
本実施例の空気調和装置1は、これらの高圧ガス管10、低圧ガス管11、及び液管12内を通じ、熱媒を室外ユニット2及び室内ユニット3間で循環させることにより、後述する再熱除湿運転が可能となっている。
【0020】
先ず、室外ユニット2の内部構造について説明する。室外ユニット2は、低圧ガス熱媒を圧縮するインバータ駆動の圧縮機20と、圧縮された高圧ガス熱媒に混在しているミスト状の潤滑油を分離・回収するためのオイルセパレータ21と、熱媒の流れを切り替えるための第1四方弁22及び第2四方弁23と、熱媒と外気とを熱交換させるための第1熱交換器24及び第2熱交換器25と、第1熱交換器24に接続されている第1膨張弁26と、第2熱交換器25に接続されている第2膨張弁27と、液熱媒を貯留するためのレシーバ28と、低圧ガス熱媒から液熱媒を分離・回収するためのアキュムレータ29と、を主として備えている。
【0021】
また、室外ユニット2は、圧縮機20及びオイルセパレータ21に接続されている吐出管20aと、オイルセパレータ21、四方弁22,23及び高圧ガス管10に分岐接続されている高圧ガス分岐管21aと、第1四方弁22及び第1熱交換器24に接続されている第1ガス管22aと、第2四方弁23及び第2熱交換器25に接続されている第2ガス管23aと、膨張弁26,27及びレシーバ28に分岐接続されている液分岐管28aと、レシーバ28及び液管12に接続されている室外側液管28bと、を備えている。
【0022】
また、室外ユニット2は、アキュムレータ29、四方弁22,23及び低圧ガス管11に分岐接続されている低圧ガス分岐管29aと、アキュムレータ29及び圧縮機20に接続されている吸入管29bと、を備えている。
【0023】
また、圧縮機20及びオイルセパレータ21には、吐出管20aとは別に、キャピラリチューブを有する油戻し主部20bが接続されており、油戻し主部20bには、油戻し主部20bのキャピラリチューブを跨いで、電磁弁及びキャピラリチューブを有する油戻し副部20cが接続されている。
【0024】
第1四方弁22及び高圧ガス分岐管21aには、第1キャピラリチューブ22bが接続されている。また、第2四方弁23及び高圧ガス分岐管21aには、第2キャピラリチューブ23bが接続されている。
【0025】
次に、室内ユニット3の内部構造について説明する。室内ユニット3は、この室内ユニット3内に取り込まれた空調前空気A1を液熱媒と熱交換させて冷却する蒸発器31と、冷却した空調前空気A1を高圧ガス熱媒と熱交換させて加温する凝縮器30と、凝縮器30の下流側に接続されている凝縮器側弁32と、蒸発器31の上流側に接続されている蒸発器側弁33と、凝縮器30及び蒸発器31よりも圧縮機20側に設けられているバイパス部34と、空調前空気A1を蒸発器31、凝縮器30の順に通過させ、空調済空気A2として室内に送出する送風機35と、を主として備えている。
【0026】
また、室内ユニット3は、高圧ガス管10と凝縮器30の上流側に接続されている室内側高圧ガス管30aと、蒸発器31の下流側と低圧ガス管11に接続されている室内側低圧ガス管31aと、液管12と蒸発器側弁33に接続されている第1室内側液管33aと、凝縮器側弁32と第1室内側液管33aに接続されている第2室内側液管32aと、を備えている。
【0027】
バイパス部34は、室内側高圧ガス管30aと室内側低圧ガス管31aに架けて接続されているバイパス管34aと、バイパス管34aに介設され、開閉可能な開閉弁としてのバイパス側弁34bと、バイパス側弁34bの下流側にてバイパス管34aに介設されているキャピラリチューブ34cと、によって構成されている。
【0028】
また、室内側高圧ガス管30aにおけるバイパス管34aとの分岐点から凝縮器30までの管路D1と、室内側低圧ガス管31aにおけるバイパス管34aとの分岐点から蒸発器31までの管路D2は、略等距離となるように配管部材が構成されている(D1=D2)。
【0029】
次に、空気調和装置1による通常の再熱除湿運転について
図1~
図3を参照して説明する。通常の再熱除湿運転は、空調前空気A1の除湿及び再熱を行い、空調済空気A2として送出するものであるが、空調済空気A2の温度は任意に制御可能である。本説明では、空調前空気A1と空調済空気A2のエンタルピー差が小さい標準モード、空調前空気A1よりも空調済空気A2のエンタルピーの方が低い冷却モード、空調前空気A1よりも空調済空気A2のエンタルピーの方が高い加温モードの順で説明する。
【0030】
尚、第1四方弁22、第1熱交換器24及び第1膨張弁26から主に構成される第1四方弁22側の構成と、第2四方弁23、第2熱交換器25及び第2膨張弁27から主に構成される第2四方弁23側の構成は、略同一であり、熱媒の流れ及びこれに伴う状態変化についても略同一であるため、同一態様である説明については一方側の構成を例に説明し、他方側の構成については説明を省略する。
【0031】
図1に示されるように、通常の再熱除湿運転における標準モードにおいて、圧縮機20から吐出された高圧ガス熱媒は、吐出管20aを通じ、
図1において黒塗り矢印で示すように、高圧ガス分岐管21aの高圧ガス管10側に流入するものと、高圧ガス分岐管21aの四方弁22,23側に流入するものとに分岐する。
【0032】
尚、高圧ガス分岐管21aの高圧ガス管10側に流入した熱媒は、四方弁22,23の切り替え状態に関らず、
図1~
図3において黒塗り矢印で示すように、高圧ガス管10に流入する。
【0033】
また、通常の再熱除湿運転時において、バイパス部34のバイパス側弁34bは閉塞状態、凝縮器側弁32が開放状態、かつ蒸発器側弁33が開放状態であるため、高圧ガス管10から室内側高圧ガス管30aに流入した高圧ガス熱媒は、
図1において黒塗り矢印で示すように、室内側高圧ガス管30a、凝縮器30の順で通過して液熱媒に状態変化する。このとき、単位時間あたりに凝縮器30を通過する熱媒量は、凝縮器側弁32の弁開度に応じて制御され、これに伴い空気の加温度合いを加減調整することが可能となっている。
【0034】
凝縮器30を通過した液熱媒は、
図1において黒塗り矢印で示すように、第2室内側液管32a、第1室内側液管33a、蒸発器側弁33、蒸発器31の順で通過して低圧ガス熱媒に状態変化し、室内側低圧ガス管31aを通過して低圧ガス管11に流入する。蒸発器31に流入する液熱媒は、蒸発器31を通過することでそのすべてが低圧ガス熱媒へと状態変化するように蒸発器側弁33の弁開度に応じて減圧されることに加え、単位時間あたりに蒸発器31を通過する熱媒量に応じて空気の除湿度合いを加減調整することが可能となっている。すなわち、蒸発器側弁33は、膨張弁として機能する。
【0035】
低圧ガス管11から低圧ガス分岐管29aに流入した低圧ガス熱媒は、
図1において黒塗り矢印で示すように、アキュムレータ29、吸入管29bの順で通過して圧縮機20に吸引されて回収される。
【0036】
一方、送風機35によって室内ユニット3内に吸い込まれた空調前空気A1は、
図1において白抜き矢印で示すように、蒸発器31、凝縮器30の順に通過する。これにより、空調前空気A1が蒸発器31と熱交換することによって冷却され、当該空調前空気A1に含まれる水分が水滴として排出され、絶対湿度が低下した除湿済空気となる。
【0037】
その後、除湿済空気が凝縮器30と熱交換することによって再熱されて温度調整され、飽和水蒸気量が増加することにより相対湿度が低下された空調済空気A2となり、
図1において二重線矢印で示すように、室内に送り出される。このようにして、通常の再熱除湿運転を行うことができる。
【0038】
再熱除湿運転についてより詳しくは、各モード共通として、凝縮器側弁32の弁開度を大とした場合には、単位時間あたりに凝縮器30を通過する熱媒量が増加するとともに、単位時間あたりに蒸発器31を通過可能な熱媒量が増加することから、凝縮器30による加温度合いと、蒸発器31による除湿度合いを高めることが可能となるため、再熱除湿機能を高めることができる。
【0039】
また、凝縮器側弁32の弁開度を小とした場合には、単位時間あたりに凝縮器30を通過する熱媒量が減少するとともに、単位時間あたりに蒸発器31を通過可能な熱媒量が減少することから、凝縮器30による加温度合いと、蒸発器31による除湿度合いを下げることが可能となるため、再熱除湿機能を下げることができる。
【0040】
すなわち、凝縮器側弁32の弁開度を調整することにより、再熱除湿運転における再熱除湿機能を変化させることができる。
【0041】
また、蒸発器側弁33の弁開度を大とした場合には、単位時間あたりに蒸発器31を通過する熱媒量が増加することから、蒸発器31による除湿度合いを高めることが可能となる。
【0042】
また、蒸発器側弁33の弁開度を小とした場合には、単位時間あたりに蒸発器31を通過可能な熱媒量が減少することから、蒸発器31による除湿度合いを下げることが可能となる。
【0043】
他方、高圧ガス分岐管21aの第1四方弁22側に流入した高圧ガス熱媒は、通常の再熱除湿運転における標準モードにおいて、第1四方弁22を通じて高圧ガス分岐管21aと第1ガス管22aが連通している切り替え状態、かつ第1膨張弁26が開放状態であるため、
図1において黒塗り矢印で示すように、第1四方弁22、第1ガス管22a、第1熱交換器24の順で通過して液熱媒に状態変化した後、第1膨張弁26、液分岐管28a、レシーバ28、室外側液管28bの順で通過し、液管12に流入する。
【0044】
尚、単位時間あたりに第1熱交換器24を通過する熱媒量は、第1膨張弁26の弁開度に応じて変化する。言い換えれば、第1膨張弁26の弁開度により、液管12に流入する液熱媒量を調節することができる。
【0045】
これにより、上述したように凝縮器30を通過した液熱媒に加え、液管12を通じて第1四方弁22側を通過した液熱媒も室内ユニット3の第1室内側液管33aに流入するため、蒸発器31による除湿効率を向上させて、空調前空気A1と空調済空気A2との温度差が小さい標準モードとしての再熱除湿運転が可能となっている。
【0046】
尚、この第1四方弁22側の切り替え状態では、第1キャピラリチューブ22bと第1四方弁22を通じて第1ガス管22aが低圧ガス分岐管29aに連通しているため、第1ガス管22aに過剰供給された高圧ガス熱媒は、
図1において点線矢印で示すように、第1キャピラリチューブ22bを通過して減圧された後、低圧ガス熱媒として圧縮機20に回収される。
【0047】
また、高圧ガス分岐管21aの第2四方弁23側に流入した高圧ガス熱媒は、第2四方弁23と第2キャピラリチューブ23bを通じて高圧ガス分岐管21aと第2ガス管23aが連通している切り替え状態、かつ第2膨張弁27が閉塞状態であるため、
図1において点線矢印で示すように、第2キャピラリチューブ23bを通過して減圧された後、第2四方弁23、低圧ガス分岐管29aの順で通過し、低圧ガス熱媒として圧縮機20に回収される。
【0048】
次いで、標準モードにおける空調済空気A2よりも温度の低い空調済空気A2を室内に送り出す冷却モードについて説明する。尚、標準モードと重複する説明については省略する。
【0049】
図2に示されるように、冷却モードでは、第1四方弁22を通じて高圧ガス分岐管21aと第1ガス管22aが連通している切り替え状態、第1膨張弁26が開放状態、第2四方弁23を通じて高圧ガス分岐管21aと第2ガス管23aが連通している切り替え状態、かつ第2膨張弁27が開放状態に制御されており、
図2において黒塗り矢印で示すように、第1四方弁22側を通過した液熱媒及び第2四方弁23側を通過した液熱媒が共に室内ユニット3内に流入する。
【0050】
これにより、第1四方弁22側を通過した液熱媒または第2四方弁23側を通過した液熱媒の一方が室内ユニット3内に流入する構成(
図1参照)と比較して、室内ユニット3に流入する液熱媒量が増す一方、相対的に高圧ガス熱媒量が減ることで、蒸発器31による冷却度合いの方が、凝縮器30による加温度合いを上回るため、空調前空気A1よりも温度の低い空調済空気A2を室内に送り出す冷却運転となっている。
【0051】
このとき、液管12から室内ユニット3に流入する液熱媒の量は、膨張弁26,27の弁開度に応じて調整されるため、言い換えれば膨張弁26,27の弁開度に応じて空調済空気A2の温度調整が可能である。
【0052】
次いで、標準モードにおける空調済空気A2よりも温度の高い空調済空気A2を室内に送り出す加温モードについて説明する。尚、標準モード及び冷却モードと重複する説明については省略する。
【0053】
図3に示されるように、加温モードでは、第1四方弁22と第1キャピラリチューブ22bを通じて高圧ガス分岐管21aと第1ガス管22aが連通している切り替え状態、第1膨張弁26が開放状態、第2四方弁23と第2キャピラリチューブ23bを通じて高圧ガス分岐管21aと第2ガス管23aが連通している切り替え状態、かつ第2膨張弁27が開放状態に制御されており、圧縮機20から吐出された高圧ガス熱媒のほぼ全量が、
図3において黒塗り矢印で示すように、高圧ガス分岐管21aの高圧ガス管10側に流入する。
【0054】
また、凝縮器30を通過した液熱媒の一部は、
図3において黒矢印で示すように、液管12からレシーバ28に向かって流入し、液分岐管28a、膨張弁26,27を通過することで減圧され、熱交換器24,25を通過することで低圧ガス熱媒に状態変化した後、ガス管22a,23a、四方弁22,23、低圧ガス分岐管29aの順で通過し、圧縮機20に回収される。
【0055】
これにより、凝縮器30を通過した液熱媒すべてが蒸発器31を通過する場合と比較して、蒸発器31による空調前空気A1の冷却度合いが抑止されることで、凝縮器30による加温度合いの方が、蒸発器31による冷却度合いを上回るため、空調前空気A1よりも温度の高い空調済空気A2を室内に送り出す加温運転となっている。
【0056】
このとき、凝縮器30から液管12に流入する液熱媒の量は、膨張弁26,27の弁開度に応じて調整されるため、言い換えれば膨張弁26,27の弁開度に応じて空調済空気A2の温度調整が可能である。
【0057】
尚、膨張弁26,27共に閉塞状態とすることで、凝縮器30を通過した液熱媒のすべてを蒸発器31に流入させてもよく、加温度合いの調整のため、膨張弁26,27の一方を閉塞状態としてもよい。
【0058】
また、本実施例の室内ユニット3では、凝縮器30を通過した液熱媒が室内ユニット3に内蔵されている第2室内側液管32aを通じて蒸発器31に流入するため、例えば特許文献1のように室内ユニット外にある液管に流入した後、蒸発器に流入する構成と比較して、室内ユニット3と高圧ガス管10、低圧ガス管11、及び液管12への接続が簡素となっているばかりでなく、蒸発器31に流入されるまでに生じる圧力損失が低減されることから、蒸発器31による除湿度合いが高められている。
【0059】
また、上述したように
図1~3で示した通常の再熱除湿運転において、圧縮機20から吐出された第1ガス管22a内の高圧ガス熱媒には、圧縮機20にて使用される潤滑油の一部がミスト状に混入しているものの、このような潤滑油の多くはオイルセパレータ21で分離されるようになっている。
【0060】
オイルセパレータ21によって高圧ガス熱媒から分離された潤滑油は、油戻し主部20bのキャピラリチューブを通過することによって減圧された後、圧縮機20に吸引されて回収される。
【0061】
また、オイルセパレータ21によって分離された潤滑油の圧力が所定以上である場合には、当該圧力に応じて油戻し副部20cの電磁弁の弁開度が調整され、当該電磁弁を通過した潤滑油が油戻し副部20cのキャピラリチューブを通過することによって減圧された後、油戻し主部20bを通じて圧縮機20に吸引されて回収される。
【0062】
ただし、一部の潤滑油がオイルセパレータ21を通過してしまい、高圧ガス熱媒と共に室内ユニット3内に流入する場合がある。そこで、潤滑油が圧縮機20外に過度に流出した場合に、潤滑油の減少による圧縮機20の不具合や、潤滑油が混入した熱媒による再熱除湿機能の低下を防ぐべく、オイルセパレータ21による潤滑油回収に加え、室外ユニット2外に流出した潤滑油を回収するための油戻し運転が行われる。以降、油戻し運転について、
図4を参照して説明する。
【0063】
空気調和装置1は、制御装置(図示略)が圧縮機20への通電量に対する回転速度や熱媒の圧縮度合い等から圧縮機20内の潤滑油量の減少を検知すると、油戻し運転を開始する。
【0064】
油戻し運転が開始されると、バイパス部34のバイパス側弁34bが開放状態となる。これにより、高圧ガス管10から室内側高圧ガス管30aに流入した高圧ガス熱媒の少なくとも一部は、室内側高圧ガス管30aと室内側低圧ガス管31aとの圧力差に応じて、バイパス部34を通じて室内側高圧ガス管30aから室内側低圧ガス管31aに流入する。
【0065】
より詳しくは、凝縮器側弁32及び蒸発器側弁33の弁開度によって、室内側高圧ガス管30aからバイパス管34aに分岐して流入する高圧ガス熱媒量が調整され、残りの高圧ガス熱媒は、管路D1に流入し、通常の再熱除湿運転時と同様に凝縮器30及び蒸発器31を通過する。
【0066】
バイパス管34aに流入した高圧ガス熱媒は、バイパス側弁34bを通過した後、キャピラリチューブ34cによって減圧されて室内側低圧ガス管31aに流入し、低圧ガス管11、低圧ガス分岐管29a、アキュムレータ29、吸入管29bを通過して圧縮機20に回収される。
【0067】
この油戻し運転においてバイパス部34を通過して室内側低圧ガス管31aに流入した熱媒(以下、「バイパス通過熱媒」と称する)は、通常の再熱除湿運転において蒸発器31で熱交換された低温低圧の低圧ガス熱媒と比較して略同圧であっても高温であるため、室内側低圧ガス管31a、低圧ガス管11、低圧ガス分岐管29aの内面に付着した潤滑油を加温し、その流動性を高めることができる。そのため、油戻し運転では、通常の再熱除湿運転と比較して潤滑油を回収する効率が高い。
【0068】
一方、
図4に示されるように、油戻し運転において、第1四方弁22と第1キャピラリチューブ22bを通じて高圧ガス分岐管21aと第1ガス管22aが連通している切り替え状態、第1膨張弁26が閉塞状態、第2四方弁23と第2キャピラリチューブ23bを通じて高圧ガス分岐管21aと第2ガス管23aが連通している切り替え状態、かつ第2膨張弁27が閉塞状態に制御すると、室内ユニット3に吐出される高圧ガス熱媒量を増加させることができるとともに、室内側低圧ガス管31a、低圧ガス管11、低圧ガス分岐管29aに流入するバイパス通過熱媒量を増加させることができるため、より短時間で室外ユニット2外に流出した潤滑油を回収することができる。
【0069】
また、油戻し運転において、制御装置(図示略)が圧縮機20の温度が所定温度以上であることを検知すると、圧縮機20内の温度等に応じて膨張弁26,27の弁開度を制御し、凝縮器30を通過した液熱媒を液管12に流入させ、熱交換器24,25を通過させて低圧ガス熱媒に状態変化させてバイパス通過熱媒と混在させる(
図3参照)。これにより、圧縮機20の過剰な温度上昇が防止されている。
【0070】
以上説明したように、本実施例の空気調和装置1は、圧縮機20内の潤滑油量が良好である場合には、バイパス部34により高圧ガス管10と低圧ガス管11とを非連通状態とすることで通常の再熱除湿運転を行える一方、潤滑油が熱媒に過度に混入し、圧縮機20内の潤滑油量が低減してきた場合には、バイパス部34により高圧ガス管10と低圧ガス管11とを連通状態とすることで凝縮器30及び蒸発器31よりも圧縮機20側で熱媒と共に潤滑油を回収する油戻し運転を行うことができる。これにより、熱媒に混入した潤滑油が凝縮器30及び蒸発器31に流入することを抑制して圧縮機20に回収することができる。
【0071】
加えて、油戻し運転において、バイパス部34に流入する高圧ガス熱媒と管路D1に流入する高圧ガス熱媒とに分岐され、管路D1に流入した高圧ガス熱媒は、通常の再熱除湿運転時と同様に凝縮器30を通過した後、蒸発器31を通過する。言い換えればこの油戻し運転において、バイパス部34により室内側高圧ガス管30aと室内側低圧ガス管31aとを連通状態とするだけで、凝縮器30を通過する熱媒量と蒸発器31を通過する熱媒量を一律に低減させることができる。よって、凝縮器30への潤滑油流入の抑制度合いと、蒸発器31への潤滑油流入の抑制度合いとを略同一に保ちながら再熱除湿運転が継続される。
【0072】
これにより、油戻し運転において、圧縮機20の出力、凝縮器側弁32及び蒸発器側弁33の弁開度調整等の制御を省略することができることから、通常の再熱除湿運転と油戻し運転との切り替えに必要な制御が容易となる。
【0073】
また、空気調和装置1では、バイパス部34が室内ユニット3に内蔵されており、バイパス部が室内ユニット3外に設けられている構成と比較して、凝縮器30により近い位置で高圧ガス熱媒の流れが分岐されることから、管路D1を通過し、凝縮器30に流入されるまでに生じる圧力損失が低減される。これにより、例えば当該圧力損失を補うために圧縮機20の出力を上昇させる等の制御が省略されるため、通常の再熱除湿運転と油戻し運転との切り替えに必要な制御が容易となる。
【0074】
また、油戻し運転では、圧縮機20の出力を高める制御が不要であることから、圧縮機20内の潤滑油量が低減している状態で出力を高めることにより、焼き付きが発生するリスクを低減することができる。
【0075】
また、バイパス部34は、室内ユニット3に内蔵されているため、例えば室内ユニット3及び室外ユニット2の間に延設された既存の高圧ガス管10と低圧ガス管11との間にバイパス部を追加配管する構成と比較して、高圧ガス管10、低圧ガス管11、及び液管12に対して室内ユニット3を接続するだけで、油戻し運転が可能となることから、油戻し運転に関する施工が簡素である。
【0076】
また、バイパス側弁34bの開閉により、再熱除湿運転と油戻し運転とを切り替えることができるため、制御が容易である。
【0077】
また、油戻し運転においてバイパス部34を通過する熱媒は、キャピラリチューブ34cにより減圧されることによって、蒸発器側弁33を通過して減圧された低圧ガス熱媒の圧力と略同圧となるため、蒸発器31へのバイパス通過熱媒の逆流を抑止することができる。
【0078】
また、油戻し運転においてバイパス部34を通過する熱媒は、キャピラリチューブ34cにより減圧されることにより、高圧ガス熱媒がそのまま室内側低圧ガス管31aに流入する等、圧力差による衝撃の発生が防止されているため、衝撃の発生に基づく騒音の発生が防止されている。
【0079】
また、管路D1と管路D2とが略等距離であるため、管路D1の圧力と、管路D2の圧力とのバランスを保ちながら熱媒を循環させることができる。
【0080】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0081】
例えば、前記実施例では、バイパス部34は、室内ユニット3に内蔵されている構成として説明したが、これに限らず、凝縮器30及び蒸発器31よりも圧縮機20側に配置されていればよく、高圧ガス管10と低圧ガス管11との間に設けられていてもよく、例えば室内ユニット3内と高圧ガス管10と低圧ガス管11との間にそれぞれ設けられていてもよく、すなわち複数設けられていてもよい。
【0082】
また、バイパス側弁34bは、開閉可能である構成として説明したが、これに限らず、その弁開度を調整可能であってもよい。このような構成であれば、室内側高圧ガス管30aからバイパス管34aに流入する高圧ガス熱媒量の調整を、凝縮器側弁32及び蒸発器側弁33の弁開度を調整せずとも、バイパス側弁34bの弁開度のみを調整するだけで、管路D1に流入する高圧ガス熱媒の量を一律に制御することができる。
【0083】
加えて、キャピラリチューブ34cを設けずとも、バイパス側弁34bを膨張弁として機能させて、熱媒を減圧させることができる。
【0084】
また、バイパス通過熱媒の圧力は、低圧ガス熱媒と略同圧である構成として説明したが、これに限らず、液熱媒未満であればよく、このような構成であっても、蒸発器31への逆流を防止することができる。