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特開2022-84318セミフローティング軸受およびターボチャージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084318
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】セミフローティング軸受およびターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20220531BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20220531BHJP
   F16C 23/04 20060101ALI20220531BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
F16C17/02 B
F16C17/04 B
F16C23/04 Z
F02B39/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196114
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】松井 邦宜
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭一
【テーマコード(参考)】
3G005
3J011
3J012
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA27
3G005GB56
3J011AA20
3J011BA02
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011KA03
3J011MA03
3J011PA03
3J011RA03
3J012AB01
3J012BB01
3J012BB02
3J012DB04
3J012FB01
(57)【要約】
【課題】ジャーナル軸受面と回転軸との隙間から異物を排出しやすいセミフローティング軸受および当該セミフローティング軸受を備えるターボチャージャを提供することを課題とする。
【解決手段】セミフローティング軸受2は、軸受本体20と、軸受本体20の内周面に配置され、油膜を介して回転軸50を径方向から支持するジャーナル軸受面21と、を備える。セミフローティング軸受2は、ジャーナル軸受面21を軸方向を含む方向に貫通する溝部23を備える。セミフローティング軸受2の径方向断面において、ジャーナル軸受面21は、周方向に交互に配置される、径方向外側に向かって膨出する3つ以上の円弧部21aと、円弧部21aよりも曲率が小さい3つ以上の連結部21bと、を有する。溝部23は、円弧部21aまたは連結部21bに配置される。連結部21bは、回転軸50との隙間Cが最も狭くなる最狭部210bを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の軸受本体と、
前記軸受本体の内周面に配置され、油膜を介して回転軸を径方向から支持するジャーナル軸受面と、
を備えるセミフローティング軸受であって、
さらに、前記ジャーナル軸受面を軸方向を含む方向に貫通する溝部を備え、
前記セミフローティング軸受の径方向断面において、前記ジャーナル軸受面は、周方向に交互に配置される、径方向外側に向かって膨出する3つ以上の円弧部と、前記円弧部よりも曲率が小さい3つ以上の連結部と、を有し、
前記溝部は、前記円弧部または前記連結部に配置され、
前記連結部は、前記回転軸との隙間が最も狭くなる最狭部を有することを特徴とするセミフローティング軸受。
【請求項2】
前記溝部は、前記連結部に配置され、
前記セミフローティング軸受の径方向断面における、潤滑油の流動方向上流側を上流側、流動方向下流側を下流側として、
前記連結部に配置される前記溝部は、前記最狭部よりも前記上流側に配置されると共に、前記上流側から前記下流側に向かって前記回転軸との隙間が狭くなる傾斜部を有する請求項1に記載のセミフローティング軸受。
【請求項3】
さらに、前記軸受本体の軸方向端面に配置され、油膜を介して前記回転軸を軸方向から支持するスラスト軸受面を備え、
前記溝部は、前記スラスト軸受面の内周縁に開口する請求項1または請求項2に記載のセミフローティング軸受。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセミフローティング軸受を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャーナル荷重を支持するセミフローティング軸受およびターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のセミフローティング軸受の内周面には、ジャーナル軸受面が配置されている。ジャーナル軸受面は、油膜を介して、回転軸を支持している。セミフローティング軸受の径方向断面において、ジャーナル軸受面は、波線状(サイン波状)を呈している。具体的には、ジャーナル軸受面は、6つの円弧部と、6つの逆円弧部と、6つの給油孔と、を備えている。円弧部は、径方向外側に向かって膨出している。反対に、逆円弧部は、径方向内側に向かって膨出している。逆円弧部は、最狭部を備えている。最狭部においては、ジャーナル軸受面と回転軸との隙間が最も狭くなる。同文献記載のセミフローティング軸受は、6つの最狭部の油膜圧力により、回転軸を支持している。給油孔は、セミフローティング軸受を径方向に貫通している。給油孔の入口(径方向外端)は、セミフローティング軸受の外周面に開口している。他方、給油孔の出口(径方向内端)は、ジャーナル軸受面に開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/015599号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献のセミフローティング軸受の場合、ジャーナル軸受面と回転軸との隙間から異物を排出することが困難である。すなわち、当該隙間には、異物が混入する場合がある。上述したように、ジャーナル軸受面には給油孔の出口が開口している。しかしながら、潤滑油の流れに逆らって、異物が給油孔に流れ込むことは困難である。このため、異物は、ジャーナル軸受面と回転軸との隙間つまり摺動界面を経由して、外部に排出される。したがって、ジャーナル軸受面や回転軸が摩耗しやすくなる。
【0005】
そこで、本発明は、ジャーナル軸受面と回転軸との隙間から異物を排出しやすいセミフローティング軸受および当該セミフローティング軸受を備えるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセミフローティング軸受は、筒状の軸受本体と、前記軸受本体の内周面に配置され、油膜を介して回転軸を径方向から支持するジャーナル軸受面と、を備えるセミフローティング軸受であって、さらに、前記ジャーナル軸受面を軸方向を含む方向に貫通する溝部を備え、前記セミフローティング軸受の径方向断面において、前記ジャーナル軸受面は、周方向に交互に配置される、径方向外側に向かって膨出する3つ以上の円弧部と、前記円弧部よりも曲率が小さい3つ以上の連結部と、を有し、前記溝部は、前記円弧部または前記連結部に配置され、前記連結部は、前記回転軸との隙間が最も狭くなる最狭部を有することを特徴とする。また、上記課題を解決するため、本発明のターボチャージャは、上述のセミフローティング軸受を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、「回転軸を径方向から支持する」形態には、ジャーナル軸受面が回転軸を直接支持する形態、ジャーナル軸受面が回転軸を、径方向介装部材(油膜を介してジャーナル軸受面と径方向に対向する部材)を介して、間接的に支持する形態などが含まれる。ジャーナル軸受面が回転軸を間接的に支持する形態の場合、「回転軸との隙間」とは、ジャーナル軸受面と径方向介装部材との隙間をいう。
【0008】
また、「曲率が小さい」形態には、円弧部よりも連結部の方が曲がり方が緩い形態、連結部が平面である形態(曲率が0)、連結部が径方向内側に向かって膨出する形態(曲率がマイナス)などが含まれる。「軸方向を含む方向」には、軸方向のみ、軸方向および周方向を含む方向(螺旋方向)などが含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセミフローティング軸受およびターボチャージャによると、溝部が円弧部または連結部に配置されている。回転軸の回転に伴う遠心力により、溝部には、潤滑油や異物が合流しやすい。また、溝部は、ジャーナル軸受面を軸方向を含む方向に貫通している。このため、溝部を潤滑油や異物が流動しやすい。よって、ジャーナル軸受面と回転軸との隙間からの異物排出効果、当該隙間への給油効果、当該隙間からの排油効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一実施形態のターボチャージャの軸方向断面図である。
図2図2は、図1の枠II内の拡大図である。
図3図3は、第一実施形態のセミフローティング軸受の前半部分の斜視図である。
図4図4は、図2のIV-IV方向断面図である。
図5図5は、図4の枠V内の拡大図である。
図6図6は、図2のVI-VI方向断面図である。
図7図7は、図2のVII-VII方向断面図である。
図8図8は、第二実施形態のセミフローティング軸受の前側のジャーナル軸受面付近の径方向断面図である。
図9図9は、図8の枠IX内の拡大図である。
図10図10は、同セミフローティング軸受の給油孔付近の径方向断面図である。
図11図11は、同セミフローティング軸受の前端面図である。
図12図12(A)は、その他の実施形態(その1)のセミフローティング軸受の前端面図である。図12(B)~図12(D)は、その他の実施形態(その2~その4)のセミフローティング軸受の径方向断面図である。
図13図13は、その他の実施形態(その5)のセミフローティング軸受の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のセミフローティング軸受およびターボチャージャの実施の形態について説明する。
【0012】
<第一実施形態>
(ターボチャージャの構成)
まず、本実施形態のターボチャージャの構成について説明する。図1に、本実施形態のターボチャージャの軸方向断面図を示す。図2に、図1の枠II内の拡大図を示す。図3に、本実施形態のセミフローティング軸受の前半部分の斜視図を示す。図4に、図2のIV-IV方向断面図を示す。図5に、図4の枠V内の拡大図を示す。図6に、図2のVI-VI方向断面図を示す。図7に、図2のVII-VII方向断面図(セミフローティング軸受の前端面図)を示す。なお、図2は、図4図6図7のII-II方向断面図に対応している。
【0013】
これらの図においては、説明の便宜上、ジャーナル軸受面21、スラスト軸受面22、隙間C、D、Eを誇張して示す。また、これらの図において、前後方向は、回転軸50の軸心Aの延在方向、つまり本発明の「軸方向」に対応する。また、本発明の「径方向」、「周方向」は、軸心Aを中心としている。また、「周方向」は、回転軸50の回転方向、および図4図7に示すジャーナル軸受面21およびスラスト軸受面22における潤滑油の流動方向に対応している。また、回転軸50の回転方向後側は潤滑油の流動方向上流側(以下、「上流側」と略称する。)に、回転軸50の回転方向前側は潤滑油の流動方向下流側(以下、「下流側」と略称する。)に、各々対応している。
【0014】
図1図2に示すように、ターボチャージャ1は、セミフローティング軸受2と、回転部5と、ベアリングハウジング90と、コンプレッサハウジング91と、タービンハウジング92と、を備えている。ベアリングハウジング90の内部には、軸受配置部900と、ハウジング側油路(給油孔25に対する上流側油路)905と、が形成されている。軸受配置部900は、ハウジング側油路905の下側に連なっている。
【0015】
図1に示すように、回転部5は、回転軸50と、コンプレッサインペラ51と、タービンインペラ52と、スラストカラー53と、を備えている。回転部5は、ベアリングハウジング90に対して、回転軸50の軸心Aを中心に回転可能である。回転軸50は、ベアリングハウジング90を前後方向に貫通している。回転軸50は、段付き円柱状を呈している。回転軸50は、後述するセミフローティング軸受2により、径方向および前後方向から、回転可能に支持されている。つまり、セミフローティング軸受2は、ジャーナル軸受とスラスト軸受との機能を併有している。コンプレッサインペラ51は、回転軸50の前端(軸方向一端)に取り付けられている。タービンインペラ52は、回転軸50の後端(軸方向他端)に連なっている。すなわち、回転軸50は、コンプレッサインペラ51とタービンインペラ52とを連結している。スラストカラー53は、回転軸50の外周面に固定されている。図2に示すように、スラストカラー53は、回転軸50とスラスト軸受面22との間に介装される、軸方向介装部材である。スラストカラー53は、スラスト軸受面22つまりセミフローティング軸受2により、後側から、回転可能に支持されている。
【0016】
(軸受配置部付近の構成)
次に、軸受配置部付近の構成について詳しく説明する。図2に示すように、軸受配置部900には、スラストカラー53、セミフローティング軸受2、回転軸50の一部が配置されている。回転軸50は、前側から後側に向かって、小径部500と、中径部501と、大径部502と、を備えている。中径部501は小径部500よりも大径である。小径部500と中径部501との間には、環状であって前向きの第1段差部503が配置されている。大径部502は中径部501よりも大径である。中径部501と大径部502との間には、環状であって前向きの第2段差部504が配置されている。スラストカラー53は、環状であって、小径部500に環装されている。スラストカラー53の後端面(径方向内側部分)は、第1段差部503に当接している。
【0017】
図2図6に示すように、セミフローティング軸受2は、中径部501に環装されている。セミフローティング軸受2は、第1段差部503(スラストカラー53)と、第2段差部504と、の間に配置されている。セミフローティング軸受2は、軸受本体20と、前後2つのジャーナル軸受面21と、前後2つのスラスト軸受面22と、6つ(前後3つずつ)の円弧部側溝部23と、給油孔25と、前後2つの油路26と、凹面27と、を備えている。円弧部側溝部23は、本発明の「溝部」の概念に含まれる。
【0018】
図2図3に示すように、軸受本体20は、前後方向に延在している。軸受本体20は、軸心Aを中心とする円筒状を呈している。2つのジャーナル軸受面21は、軸受本体20の内周面の前後方向両端に配置されている。ジャーナル軸受面21は、油膜を介して、中径部501(図3においては、中径部501の外周縁を一点鎖線で示す)の外周面に摺接している。詳しくは、ジャーナル軸受面21と中径部501の外周面との間には、隙間Cが区画されている。油膜は隙間Cに配置されている。
【0019】
図2図6に示すように、凹面27は、軸受本体20の内周面の前後方向中間部(前後2つのジャーナル軸受面21の間)に配置されている。ジャーナル軸受面21に対して、凹面27は、径方向外側に配置されている。凹面27と中径部501の外周面との間には、隙間Dが区画されている。隙間D(詳しくは、隙間Dの径方向幅)は、凹面27の前後方向全長に亘って、全周的に一定である。
【0020】
図4に示すように、セミフローティング軸受2の径方向断面において、前側のジャーナル軸受面21は、3つの円弧部21aと、3つの連結部21bと、を備えている。3つの円弧部21aと、3つの連結部21bと、は周方向に交互に配置されている。周方向に隣り合う任意の円弧部21a(周方向中心)と連結部21b(周方向中心)とは、軸心Aを中心として、60°だけ離間して配置されている。
【0021】
図4図5に示すように、円弧部21aは、曲率一定の曲面状(図4図5においては円弧状)を呈している。円弧部21aは、中径部501の外周面と同じ方向に湾曲している。円弧部21aの曲率中心は、軸心Aと一致している。このため、円弧部21aにおいて、隙間C(詳しくは、隙間Cの径方向幅)は、一定である。円弧部21aの周方向中心には、後述の円弧部側溝部23が配置されている。円弧部側溝部23の上流側(潤滑油の流動方向(矢印Y)の上流側)には上流側区間211aが、円弧部側溝部23の下流側には下流側区間212aが、各々配置されている。
【0022】
図4図5に示すように、連結部21bは、平面状(図4図5においては直線状)を呈している。すなわち、連結部21bの曲率は0である。連結部21bは、中径部501の外周面の接線方向に延在している。連結部21bの周方向中心には、最狭部210bが配置されている。最狭部210bの上流側には上流側区間211bが、最狭部210bの下流側には下流側区間212bが、各々配置されている。隙間Cは、上流側区間211bにおいて上流側から下流側に向かって狭くなり、最狭部210bにおいて最も狭くなり、下流側区間212bにおいて上流側から下流側に向かって広くなる。
【0023】
図2図6に示すように、円弧部側溝部23は、円弧部21aの周方向中心に配置されている。円弧部側溝部23の径方向断面は、V字状を呈している。図5に示すように、円弧部側溝部23は、2つの溝側面230a、230bと、溝底230cと、を備えている。2つの溝側面230a、230bは、溝底230cを介して、周方向に対向している。溝底230cは、円弧部21a(曲率一定の曲面)に対して、径方向外側に配置されている。円弧部側溝部23は、前後方向に延在している。円弧部側溝部23は、円弧部21aを前後方向に貫通している。図2図3に示すように、円弧部側溝部23の後端(軸方向内端、入口)は、隙間Dに開口している。他方、円弧部側溝部23の前端(軸方向外端、出口)は、後述するスラスト軸受面22の内周縁の面取部220に開口している。図2図4図6に示すように、後側のジャーナル軸受面21は、前側のジャーナル軸受面21と、構成、配置が同様である。
【0024】
図2図3図7に示すように、2つのスラスト軸受面22は、軸受本体20の前後方向両端面に配置されている。前側のスラスト軸受面22は、油膜を介して、スラストカラー53の後端面(径方向外側部分)に摺接している。詳しくは、スラスト軸受面22とスラストカラー53の後端面との間には、隙間Eが区画されている。油膜は隙間Eに配置されている。
【0025】
図3図7に示すように、前側のスラスト軸受面22は、3つのパッド部221を備えている。3つのパッド部221は、周方向に連設されている。パッド部221は、テーパ部221aと、ランド部221bと、を備えている。テーパ部221aは、上流側から下流側に向かって高度(詳しくは、前後方向の高度)が高くなる、平面状を呈している。ランド部221bは、テーパ部221aの下流側に連なっている。ランド部221bは、高度が一定の平面状を呈している。
【0026】
図2図3図7に示すように、面取部220は、スラスト軸受面22の内周縁に配置されている。具体的には、面取部220は、3つのパッド部221と、前側のジャーナル軸受面21と、の間に介在している。面取部220は、軸心Aを中心とするリング状を呈している。また、面取部220は、後側(軸方向内側)から前側(軸方向外側)に向かって拡径する、平面取状を呈している。ジャーナル軸受面21の前端、円弧部側溝部23の前端(出口)は、面取部220に開口している。図7に示すように、円弧部側溝部23は、テーパ部221aの上流端と同じ周方向位置(位相)に配置されている。
【0027】
図2に示すように、後側のスラスト軸受面22は、第2段差部504に、油膜を介して摺接している。後側のスラスト軸受面22は、前側のスラスト軸受面22と、構成、配置が同様である。
【0028】
図2に示すように、給油孔25は、軸受本体20を径方向に貫通している。給油孔25の入口(径方向外端)は、ハウジング側油路905に連なっている。給油孔25の出口(径方向内端)は、凹面27に開口している。2つの油路26のうち、前側の油路26は、給油孔25と前側のスラスト軸受面22とを繋いでいる。前側の油路26は、給油孔25と、凹面27(隙間D)の前側部分と、前側のジャーナル軸受面21(隙間C、円弧部側溝部23)と、スラスト軸受面22(隙間E)と、を備えている。後側の油路26は、給油孔25と後側のスラスト軸受面22とを繋いでいる。後側の油路26は、前側の油路26と、構成、配置が同様である。
【0029】
(潤滑油の流れ)
次に、本実施形態のセミフローティング軸受における潤滑油の流れについて説明する。ターボチャージャ1の駆動時において、潤滑油は、ハウジング側油路905から、給油孔25に流入し、2つの油路26に分流する。前側の油路26において、潤滑油は、給油孔25、凹面27、ジャーナル軸受面21、スラスト軸受面22を流動する。潤滑油は、ジャーナル軸受面21において、所望の油膜圧力、負荷容量の油膜を形成する。すなわち、図4図5に矢印Yで示すように、潤滑油は、回転軸50の回転に伴って、軸心Aを中心に隙間Cを流動する。
【0030】
隙間Cにおける周方向の油膜圧力分布に着目すると、円弧部21aにおいて、隙間Cは一定である。このため、油膜圧力はあまり変化しない。連結部21bの上流側区間211bにおいて、隙間Cは徐々に狭くなる。このため、油膜圧力は徐々に大きくなる。最狭部210bにおいて、隙間Cは最も狭くなる。このため、最狭部210b付近において、油膜圧力は最大になる。連結部21bの下流側区間212bにおいて、隙間Cは徐々に広くなる。このため、油膜圧力は、徐々に小さくなる。
【0031】
このように、周方向に120°ずつ離間して配置される3つの最狭部210b付近において、油膜圧力は最大になる。当該油膜圧力により、ジャーナル軸受面21は、回転軸50に作用するジャーナル荷重(ラジアル荷重)を支持している。
【0032】
ここで、図5に示すように、円弧部21aには、円弧部側溝部23が配置されている。円弧部側溝部23において、隙間Cは局所的に広くなる。このため、油膜圧力は局所的に小さくなる。しかしながら、円弧部側溝部23は円弧部21aの径方向中心に配置されている。このため、油膜圧力は、下流側区間212aの上流側から下流側に向かって上昇する。その結果、巨視的には、円弧部21aにおいて、油膜圧力はあまり変化しない。
【0033】
また、潤滑油は、図3図7に示すスラスト軸受面22において、所望の油膜圧力、負荷容量の油膜を形成する。すなわち、矢印Yで示すように、潤滑油は、回転軸50の回転に伴って、遠心力により径方向外側に拡がりながら、スラスト軸受面22の前側(図2に示す隙間E)を周方向に流動する。
【0034】
隙間Eにおける周方向の油膜圧力分布に着目すると、テーパ部221aにおいて、隙間E(詳しくは、隙間Eの前後方向幅)は徐々に狭くなる。このため、油膜圧力は徐々に大きくなる。ランド部221bにおいて、隙間Eは最狭かつ一定になる。このため、油膜圧力はあまり変化しない。このように、周方向に120°ずつ離間して配置される3つのランド部221bにおいて、油膜圧力は最大になる。当該油膜圧力により、スラスト軸受面22は、回転軸50に作用するスラスト荷重(アキシアル荷重)を支持している。図2に示す後側の油路26における潤滑油の流れ方は、前側の油路26における潤滑油の流れ方と、同様である。
【0035】
(作用効果)
次に、本実施形態のセミフローティング軸受およびターボチャージャの作用効果について説明する。以下、セミフローティング軸受2の軸方向基準位置(給油孔25の孔軸位置)に対して、前側部分の作用効果について説明するが、後側部分についても同様である。
【0036】
図4図5に示すように、円弧部側溝部23は、円弧部21aに配置されている。円弧部側溝部23においては、油膜圧力が小さくなりやすい。他方、最狭部210bは、連結部21bに配置されている。このため、円弧部側溝部23が連結部21bに配置されている場合と比較して、最狭部210bから円弧部側溝部23までの周方向距離を遠くすることができる。したがって、最狭部210bの油膜圧力に及ぼす円弧部側溝部23の影響を小さくすることができる。よって、最狭部210bが所望の油膜圧力、負荷容量を確保しやすい。
【0037】
また、最狭部210bは、連結部21bの周方向中心に配置されている。他方、円弧部側溝部23は、円弧部21aの周方向中心に配置されている。このため、最狭部210bから円弧部側溝部23までの周方向距離が最も遠くなる。したがって、最狭部210bの油膜圧力に及ぼす円弧部側溝部23の影響が最小になる。よって、最狭部210bが所望の油膜圧力、負荷容量を確保しやすい。
【0038】
また、図4図5に示す隙間Cには、潤滑油と共に、異物(例えば、塵埃、摩耗粉など)が混入する場合がある。この点、円弧部21aには、円弧部側溝部23が配置されている。円弧部側溝部23の溝底230cは、円弧部21aおよび連結部21bよりも、径方向外側に配置されている。このため、回転軸50の回転に伴う遠心力により、円弧部側溝部23には、潤滑油や異物が合流しやすい。また、図2に示すように、円弧部側溝部23は、円弧部21aを前後方向に貫通している。すなわち、円弧部側溝部23の入口は隙間Dに連通している。並びに、円弧部側溝部23の出口は隙間Eに連通している。このため、円弧部側溝部23を潤滑油や異物が流動しやすい。よって、隙間Cから隙間Eを経由して外部に、円滑に異物を排出することができる。また、隙間Dから隙間Cに、円滑に潤滑油を流動させることができる。また、隙間Cから隙間Eに、円滑に潤滑油を流動させることができる。このように、円弧部側溝部23は、隙間Cからの異物排出効果、隙間Cへの給油効果、隙間Cからの排油効果(隙間Eへの給油効果)を有している。
【0039】
図4に示すように、最狭部210bは、周方向に120°ずつ離間して、3つ配置されている。このため、中径部501(回転軸50)を、大きな油膜圧力、負荷容量でしっかりと保持することができる。したがって、強制振動や自励振動(オイルホイップ、オイルホワールなど)による、油膜切れや焼き付きを抑制することができる。
【0040】
図2に示すように、ジャーナル軸受面21には、給油孔25の出口が開口していない。このため、ジャーナル軸受面21の油膜圧力分布がばらつきにくい。また、給油孔25の出口は、凹面27つまり隙間Dに開口している。隙間Dは隙間Cよりも広い。このため、油路26に、潤滑油を導入しやすい。また、スラスト軸受面22には、油路26を介して、潤滑油が供給される。このため、ベアリングハウジング90に、スラスト軸受面22専用のハウジング側油路905を配置する必要がない。
【0041】
図4に示すように、円弧部21aの曲率は一定である。また、円弧部21aの曲率中心と軸心Aとは一致する。このため、円弧部21aの周方向全長に亘って(円弧部側溝部23が配置されている部分を除く)、隙間Cを一定にすることができる。したがって、円弧部21aの周方向における油膜圧力分布のばらつきを抑制することができる。
【0042】
図3図7に示すように、スラスト軸受面22の内周縁には、面取部220が配置されている。円弧部側溝部23の出口は、面取部220に開口している。このため、当該出口がパッド部221(図2に示すスラスト軸受面22とスラストカラー53との摺動界面)に開口している場合と比較して、スラスト軸受面22の油膜圧力分布のばらつきを抑制することができる。
【0043】
スラスト軸受面22において、テーパ部221aは、ランド部221bよりも油膜圧力が小さい。この点、図3図7に示すように、前側から見て、円弧部側溝部23は、テーパ部221aの周方向区間に含まれている。このため、図2に示す隙間Eに潤滑油を導入しやすい。テーパ部221aにおいて、上流端は最も油膜圧力が小さい。この点、図3図7に示すように、前側から見て、円弧部側溝部23は、テーパ部221aの上流端と同じ周方向位置に配置されている。このため、隙間Eに潤滑油を導入しやすい。
【0044】
また、セミフローティング軸受2は、ジャーナル軸受面21とスラスト軸受面22とを併有している。このため、ターボチャージャ1がラジアル軸受とスラスト軸受とを各々独立して備えている場合と比較して、ターボチャージャ1の部品点数を少なくすることができる。また、ターボチャージャ1の構成を簡単にすることができる。また、ターボチャージャ1を小型化することができる。
【0045】
<第二実施形態>
本実施形態のセミフローティング軸受およびターボチャージャと、第一実施形態のセミフローティング軸受およびターボチャージャとの相違点は、円弧部側溝部ではなく、連結部側溝部が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0046】
図8に、本実施形態のセミフローティング軸受の前側のジャーナル軸受面付近の径方向断面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図9に、図8の枠IX内の拡大図を示す。なお、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図10に、同セミフローティング軸受の給油孔付近の径方向断面図を示す。なお、図6と対応する部位については、同じ符号で示す。図11に、同セミフローティング軸受の前端面図を示す。なお、図7と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0047】
図8図11に示すように、セミフローティング軸受2は、軸受本体20と、前後2つのジャーナル軸受面21と、前後2つのスラスト軸受面22と、6つ(前後3つずつ)の連結部側溝部24と、給油孔25と、前後2つの油路26(図2参照)と、凹面27と、を備えている。連結部側溝部24は、本発明の「溝部」の概念に含まれる。セミフローティング軸受2は、円弧部側溝部23(図4参照)を備えていない。
【0048】
図8図9に示すように、セミフローティング軸受2の径方向断面において、前側のジャーナル軸受面21の連結部21bの上流側区間211bには、連結部側溝部24が配置されている。連結部側溝部24は、最狭部210bに近接して配置されている。連結部側溝部24の径方向断面は、L字状を呈している。連結部側溝部24は、2つの溝側面240a、240bと、溝底240cと、を備えている。下流側の溝側面240bは、本発明の「傾斜部」の概念に含まれる。2つの溝側面240a、240bは、溝底240cを介して、周方向に対向している。溝底240cは、連結部21b(平面)に対して、径方向外側に配置されている。連結部側溝部24の後端(軸方向内端、入口)は、図10に示す隙間Dに開口している。他方、連結部側溝部24の前端(軸方向外端、出口)は、図11に示すスラスト軸受面22の内周縁の面取部220に開口している。図11に示すように、連結部側溝部24は、テーパ部221aの中間部と同じ周方向位置に配置されている。図8図10に示すように、後側のジャーナル軸受面21は、前側のジャーナル軸受面21と、構成、配置が同様である。
【0049】
2つの油路26(図2参照)のうち、前側の油路26は、給油孔25と前側のスラスト軸受面22とを繋いでいる。すなわち、前側の油路26は、給油孔25と、凹面27(隙間D)の前側部分と、前側のジャーナル軸受面21(隙間C、連結部側溝部24)と、スラスト軸受面22(図2に示す隙間E)と、を備えている。後側の油路26は、給油孔25と後側のスラスト軸受面22とを繋いでいる。後側の油路26は、前側の油路26と、構成、配置が同様である。
【0050】
図9に示すように、中径部501の外周面の接線に平行な直線をF、溝底240cを通過する直線Fに対する上流側の溝側面240aの傾斜角度をθ1、当該直線Fに対する下流側の溝側面240bの傾斜角度をθ2とすると、θ1>θ2の関係がある。このため、上流側から下流側に向かって、隙間Cは、上流側の溝側面240aにおいて急激に広くなり、下流側の溝側面240bにおいて徐々に狭くなる。したがって、油膜圧力は、連結部側溝部24付近において、急激に小さくなり、徐々に大きくなる。
【0051】
また、最狭部210bを通過する直線Fに対する溝側面240bの傾斜角度をθ3、当該直線Fに対する下流側区間212bの傾斜角度をθ4とすると、θ3>θ4(=0)の関係がある。このため、上流側から下流側に向かって、隙間Cは、溝側面240bにおいて急激に狭くなり、下流側区間212bにおいて徐々に広くなる。したがって、油膜圧力は、最狭部210b付近において、急激に大きくなり、徐々に小さくなる。
【0052】
本実施形態のセミフローティング軸受およびターボチャージャと、第一実施形態のセミフローティング軸受およびターボチャージャとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。
【0053】
図8図9に示す隙間Cには、潤滑油と共に、異物が混入する場合がある。この点、連結部21bには、連結部側溝部24が配置されている。連結部側溝部24の溝底240cは、連結部21bよりも、径方向外側に配置されている。このため、回転軸50の回転に伴う遠心力により、連結部側溝部24には、潤滑油や異物が合流しやすい。また、連結部側溝部24は、連結部21bを前後方向に貫通している。すなわち、連結部側溝部24の入口は隙間Dに連通している。並びに、連結部側溝部24の出口は隙間E(図2参照)に連通している。このため、連結部側溝部24を潤滑油や異物が流動しやすい。よって、隙間Cから隙間E(図2参照)を経由して外部に、円滑に異物を排出することができる。また、隙間Dから隙間Cに、円滑に潤滑油を流動させることができる。また、隙間Cから隙間E(図2参照)に、円滑に潤滑油を流動させることができる。このように、連結部側溝部24は、隙間Cからの異物排出効果、隙間Cへの給油効果、隙間Cからの排油効果(図2に示す隙間Eへの給油効果)を有している。
【0054】
図9に示すように、連結部側溝部24は、最狭部210bの上流側に、近接して配置されている。このため、潤滑油が最狭部210bに流れ込む直前で、潤滑油から異物を除去することができる。したがって、連結部側溝部24と最狭部210bとが離間している場合と比較して、最狭部210bに異物が混入しにくい。
【0055】
図9に示すように、連結部側溝部24は、連結部21bの上流側区間211bに配置されている。θ3>θ4の関係があるため、上流側から下流側に向かって、隙間Cは、溝側面240bにおいて急激に狭くなる。このため、油膜圧力は急激に大きくなる。したがって、最狭部210bが所望の油膜圧力、負荷容量を確保しやすい。このように、連結部側溝部24の溝側面240bは、昇圧効果(くさび効果)を有している。
【0056】
また、θ3>θ4の関係があるため、上流側から下流側に向かって、隙間Cは、下流側区間212bにおいて徐々に広くなる。このため、油膜圧力は徐々に小さくなる。したがって、下流側区間212bにおいて、潤滑油に、減圧に伴うキャビテーションが発生しにくい。
【0057】
図11に示すように、スラスト軸受面22の内周縁には、面取部220が配置されている。連結部側溝部24の出口は、面取部220に開口している。このため、当該出口がパッド部221(図2に示すスラスト軸受面22とスラストカラー53との摺動界面)に開口している場合と比較して、スラスト軸受面22の油膜圧力分布のばらつきを抑制することができる。
【0058】
スラスト軸受面22において、テーパ部221aは、ランド部221bよりも油膜圧力が小さい。この点、図11に示すように、前側から見て、連結部側溝部24は、テーパ部221aの周方向区間に含まれている。このため、隙間E(図2参照)に潤滑油を導入しやすい。
【0059】
<その他>
以上、本発明のセミフローティング軸受およびターボチャージャの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。以下、セミフローティング軸受の軸方向基準位置(油孔の孔軸位置)に対して、前側部分の実施形態について説明するが、後側部分についても同様である。
【0060】
図12(A)に、その他の実施形態(その1)のセミフローティング軸受の前端面図を示す。なお、図7と対応する部位については、同じ符号で示す。図12(A)に示すように、セミフローティング軸受2の軸受本体20の前端面に、スラスト軸受面22(図7参照)が配置されていなくてもよい。すなわち、セミフローティング軸受2は、ジャーナル軸受面21だけを備えるジャーナル軸受であってもよい。
【0061】
図12(B)~図12(D)に、その他の実施形態(その2~その4)のセミフローティング軸受の径方向断面図を示す。なお、図4図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図12(B)に示すように、円弧部21aにおける円弧部側溝部23が、円弧部21aの周方向中心よりも、上流側に配置されていてもよい。また、連結部21bにおいて、下流側区間212bよりも、上流側区間211bの方が、傾斜角度(図9に示す傾斜角度θ3、θ4のように、最狭部210bを通過する直線Fに対する傾斜角度)が大きくてもよい。こうすると、上流側から下流側に向かって、隙間Cは、上流側区間211bにおいて急激に狭くなる。このため、油膜圧力は急激に大きくなる。したがって、最狭部210bが所望の油膜圧力、負荷容量を確保しやすい。このように、上流側区間211bは、昇圧効果(くさび効果)を有している。また、上流側から下流側に向かって、隙間Cは、下流側区間212bにおいて徐々に広くなる。このため、油膜圧力は徐々に小さくなる。したがって、下流側区間212bにおいて、潤滑油に、減圧に伴うキャビテーションが発生しにくい。
【0062】
図12(C)に示すように、ジャーナル軸受面21に、「円弧部21a-連結部21b」の対が、90°ごとに4つ配置されていてもよい。連結部21bが、径方向外側に向かって膨出する、曲率一定の曲面状(図12(C)においては円弧状)を呈していてもよい。なお、連結部21bは、円弧部21aよりも曲率が小さい。
【0063】
図12(D)に示すように、連結部21bが、曲率一定の曲面状(図12(D)においては円弧状)を呈していてもよい。連結部21bは、中径部501の外周面と反対方向に湾曲していてもよい。つまり、連結部21bが径方向内側に向かって膨出していてもよい。言い換えると、円弧部21aの湾曲方向を基準として、連結部21bの曲率がマイナスでもよい。
【0064】
なお、図12(A)~図12(D)においては、円弧部21aに円弧部側溝部23が配置されており、連結部21bに連結部側溝部24が配置されていない。しかしながら、図12(A)、図12(C)、図12(D)に点線で示すように、連結部21bに連結部側溝部24が配置されていてもよい。並びに、円弧部21aに円弧部側溝部23が配置されていなくてもよい。
【0065】
図13に、その他の実施形態(その5)のセミフローティング軸受の軸方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。図13に示すように、凹面27(図2参照)が配置されていなくてもよい。すなわち、軸受本体20の軸方向全長に亘って、軸受本体20の内径が円弧部21aの内径と同一でもよい。また、軸受本体20の軸方向全長に亘って、円弧部側溝部23が延在していてもよい。こうすると、軸受本体20の内周面の軸方向両端部に、所定角度ずつ離間して、複数の連結部21b(必要に応じて連結部側溝部24)を配置するだけで、セミフローティング軸受2を製造することができる。このため、軸受本体20の内周面の加工が簡単になる。
【0066】
円弧部21aの曲率中心は、特に限定しない。軸心Aと一致していても異なっていてもよい。円弧部21aの曲率は、特に限定しない。同一でも異なっていてもよい。例えば、上流側区間211a、下流側区間212aの曲率は、同一でも異なっていてもよい。円弧部21aにおける円弧部側溝部23の周方向位置は、特に限定しない。周方向中心でも、周方向中心の上流側(例えば上流側端部)でも、周方向中心の下流側(例えば下流側端部)でもよい。
【0067】
上流側区間211b、下流側区間212bの傾斜は特に限定しない。同一でも異なっていてもよい。連結部21bにおける連結部側溝部24の周方向位置は、特に限定しない。最狭部210bの上流側(例えば上流側端部)でも、下流側(例えば下流側端部)でもよい。円弧部21aと連結部21bとの間に、面取部(丸面取部、平面取部)が介在してもよい。
【0068】
円弧部側溝部23、連結部側溝部24の径方向(短手方向)断面形状は、特に限定しない。半円状、V字状、L字状(V字状に対して、溝底230c、240cの位置が、上流側または下流側にずれている形状)、U字状、矩形状などであってもよい。溝側面230a、230bの傾斜は、同一でも異なっていてもよい。同様に、溝側面240a、240bの傾斜は、同一でも異なっていてもよい。溝底230c、240cは、平面状や曲面状であってもよい。円弧部側溝部23、連結部側溝部24の長手方向の形状は、特に限定しない。軸心Aと平行な直線状(軸方向)、軸心Aを中心とする螺旋状(軸方向および周方向を含む方向)などであってもよい。円弧部側溝部23、連結部側溝部24の出口(軸方向外端)が、面取部220に開口していなくてもよい。すなわち、円弧部側溝部23、連結部側溝部24の出口が、パッド部221に開口していてもよい。
【0069】
ジャーナル軸受面21における円弧部21a、連結部21bの配置数は特に限定しない。「円弧部21a-連結部21b」の対が、軸心Aを中心とする等角度ごとに、3つ(120°ごと)、4つ(90°ごと)、5つ(72°ごと)、6つ(60°ごと)など配置されていてもよい。同様に、スラスト軸受面22におけるパッド部221(テーパ部221a、ランド部221b)の配置数は特に限定しない。また、パッド部221の代わりに、スラスト軸受面22に、渦巻き状の溝が配置されていてもよい。ジャーナル軸受面21における「円弧部21a-連結部21b」の配置数とスラスト軸受面22におけるパッド部221の配置数とは、同一でも異なっていてもよい。
【0070】
ジャーナル軸受面21における全ての円弧部21aのうち、少なくとも一つの円弧部21aに、円弧部側溝部23が配置されていればよい。同様に、ジャーナル軸受面21における全ての連結部21bのうち、少なくとも一つの連結部21bに、連結部側溝部24が配置されていればよい。また、セミフローティング軸受2に、円弧部側溝部23および連結部側溝部24が配置されていてもよい。こうすると、隙間Cからの異物排出効果、隙間Cへの給油効果、隙間Cからの排油効果が高くなる。
【0071】
単一の円弧部21aにおける円弧部側溝部23の配置数は限定しない。単一でも複数でもよい。単一の連結部21bにおける連結部側溝部24の配置数についても同様である。セミフローティング軸受2におけるジャーナル軸受面21の配置数は特に限定しない。単一でも複数(例えば3つ以上)でもよい。スラスト軸受面22の配置数についても同様である。
【0072】
隙間C(ジャーナル軸受面21)における周方向の油膜圧力分布において、最狭部210bの周方向位置と油膜圧力最大部の周方向位置とは、同一でも異なっていてもよい。同様に、隙間Cにおける周方向の負荷容量分布において、最狭部210bの周方向位置と負荷容量最大部の周方向位置とは、同一でも異なっていてもよい。隙間E(スラスト軸受面22)における周方向の油膜圧力分布において、ランド部221bの周方向位置と油膜圧力最大部の周方向位置とは、一致していても、異なっていてもよい。同様に、隙間Eにおける周方向の負荷容量分布において、ランド部221bの周方向位置と負荷容量最大部の周方向位置とは、同一でも異なっていてもよい。
【0073】
ジャーナル軸受面21の円弧部21a、連結部21b、円弧部側溝部23、連結部側溝部24、スラスト軸受面22のテーパ部221a、ランド部221bの周方向位置関係は特に限定しない。例えば、連結部21bの最狭部210bの周方向位置が、ランド部221bの周方向区間に含まれていてもよい。こうすると、ジャーナル軸受面21の油膜圧力最大部の周方向位置と、スラスト軸受面22の油膜圧力最大部の周方向位置と、を一致または近接させることができる。
【0074】
ジャーナル軸受面21と回転軸50との間に、カラー等の径方向介装部材が配置されていてもよい。すなわち、回転軸50の外周面に径方向介装部材が固定されており、ジャーナル軸受面21が、隙間C(油膜)を介して、径方向介装部材の内周面と径方向に対向していてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1:ターボチャージャ、2:セミフローティング軸受、20:軸受本体、21:ジャーナル軸受面、21a:円弧部、211a:上流側区間、212a:下流側区間、21b:連結部、210b:最狭部、211b:上流側区間、212b:下流側区間、22:スラスト軸受面、220:面取部、221:パッド部、221a:テーパ部、221b:ランド部、23:円弧部側溝部(溝部)、230a:溝側面、230b:溝側面、230c:溝底、24:連結部側溝部(溝部)、240a:溝側面、240b:溝側面(傾斜部)、240c:溝底、25:給油孔、26:油路、27:凹面、5:回転部、50:回転軸、500:小径部、501:中径部、502:大径部、503:第1段差部、504:第2段差部、51:コンプレッサインペラ、52:タービンインペラ、53:スラストカラー、90:ベアリングハウジング、900:軸受配置部、905:ハウジング側油路、91:コンプレッサハウジング、92:タービンハウジング、A:軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13