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  • 特開-排水処理装置および排水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084324
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】排水処理装置および排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20220531BHJP
   C02F 1/02 20060101ALI20220531BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20220531BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20220531BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20220531BHJP
   C02F 9/10 20060101ALI20220531BHJP
   C02F 9/14 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C02F3/12 V
C02F1/02 A
C02F1/04 D
C02F3/12 S
C02F1/78
C02F9/04
C02F9/10
C02F9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196120
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】杉本 麻由
(72)【発明者】
【氏名】森 隆史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕一郎
【テーマコード(参考)】
4D028
4D034
4D050
【Fターム(参考)】
4D028AB00
4D028BA00
4D028BC24
4D028BC26
4D028BD06
4D028BD10
4D028BD16
4D028BE01
4D028CA01
4D034AA26
4D034BA00
4D034BA01
4D034CA02
4D034CA12
4D050AA13
4D050AB07
4D050BB02
4D050BD06
4D050CA01
4D050CA02
4D050CA17
4D050CA20
(57)【要約】
【課題】有機酸を含有した排水を効率的に浄化処理することのできる排水処理装置および排水処理方法を提供する。
【解決手段】有機酸を含有した排水である排水原水を加熱して濃縮し濃縮排水とするとともに、前記排水原水を加熱して濃縮することによって生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水とする加熱濃縮装置と、前記加熱濃縮装置にて得られた前記濃縮排水を燃焼して分解する液中燃焼装置と、前記加熱濃縮装置にて得られた前記凝縮水を微生物により分解するバイオ処理装置と、を少なくとも備える排水処理装置とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸を含有した排水である排水原水を加熱して濃縮し濃縮排水とするとともに、前記排水原水を加熱して濃縮することによって生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水とする加熱濃縮装置と、
前記加熱濃縮装置にて得られた前記濃縮排水を燃焼して分解する液中燃焼装置と、
前記加熱濃縮装置にて得られた前記凝縮水を微生物により分解するバイオ処理装置と、
を少なくとも備える排水処理装置。
【請求項2】
前記排水原水に含有された有機酸の濃度が、
10重量%以下である請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記濃縮排水に含有された有機酸の濃度が、
60重量%以下である請求項1または2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記排水原水に含有された有機酸が、
フタル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトンアルデヒド、クロトン酸、フェノール、安息香酸から選択された少なくとも一つ以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記排水原水の化学的酸素要求量(COD)を100%とした際、
前記凝縮水の化学的酸素要求量(COD)が、前記排水原水の化学的酸素要求量(COD)の10%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記バイオ処理装置から排出された排水(バイオ排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、90%以上である請求項1~5のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記バイオ処理装置から排出された排水(バイオ排水)をオゾン処理するオゾン処理装置をさらに備える請求項1~6のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記オゾン処理装置から排出された排水(オゾン排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、95%以上である請求項7に記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記バイオ処理装置に用いられる微生物が、
繊毛虫類下毛目、吸管虫類、繊毛虫類緑毛目から選択された少なくとも一つ以上である請求項1~8のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項10】
前記排水原水に含有された有機酸のpHが、6.0~10.0の範囲内である請求項1~9のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項11】
前記濃縮排水に含有された有機酸のpHが、6.0~10.0の範囲内である請求項1~10のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項12】
前記有機酸を含有した排水である排水原水が、ブタジエン製造の際に排出された排水である請求項1~11のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項13】
有機酸を含有した排水である排水原水を加熱して濃縮し濃縮排水とするとともに、前記排水原水を加熱して濃縮することによって生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水とする加熱濃縮工程と、
前記加熱濃縮工程にて得られた濃縮排水を燃焼して分解する液中燃焼工程と、
前記加熱濃縮工程にて得られた凝縮水を微生物により分解するバイオ処理工程と、
を少なくとも有する排水処理方法。
【請求項14】
前記排水原水に含有された有機酸の濃度が、
10重量%以下である請求項13に記載の排水処理方法。
【請求項15】
前記濃縮排水に含有された有機酸の濃度が、
60重量%以下である請求項13または14に記載の排水処理方法。
【請求項16】
前記排水原水に含有された有機酸が、
フタル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトンアルデヒド、クロトン酸、フェノール、安息香酸から選択された少なくとも一つ以上である請求項13~15のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項17】
前記排水原水の化学的酸素要求量(COD)を100%とした際、
前記凝縮水の化学的酸素要求量(COD)が、前記排水原水の化学的酸素要求量(COD)の10%以下である請求項13~16のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項18】
前記バイオ処理工程にて排出された排水(バイオ排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、90%以上である請求項13~17のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項19】
前記バイオ処理工程にて排出された排水(バイオ排水)をオゾン処理するオゾン処理工程をさらに有する請求項13~18のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項20】
前記オゾン処理工程にて排出された排水(オゾン排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、95%以上である請求項19に記載の排水処理方法。
【請求項21】
前記バイオ処理工程において用いられる微生物が、
繊毛虫類下毛目、吸管虫類、繊毛虫類緑毛目から選択された少なくとも一つ以上である請求項13~20のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項22】
前記排水原水に含有された有機酸のpHが、6.0~10.0の範囲内である請求項13~21のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項23】
前記濃縮排水に含有された有機酸のpHが、6.0~10.0の範囲内である請求項13~22のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項24】
前記有機酸を含有した排水である排水原水が、ブタジエン製造の際に排出された排水である請求項13~23のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置および排水処理方法に関し、詳しくは有機酸を含有した排水の排水処理装置および排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばブタジエン製造の際に生ずる多量の有機酸を含有した排水(以下、排水原水とも称する)の浄化処理が行われている。具体的には微生物によって有機酸を分解するバイオ処理装置が用いられ、これにより排水原水中の有機酸を分解し化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)を一定の値以下へ下げることが行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6442856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような排水原水の浄化処理において、バイオ処理装置は、微生物による有機酸の分解に一定の時間を要し、特に有機酸が多量に含有された排水原水であると分解処理に時間を要することとなるため、処理能力の向上を求められているのが実情である。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであって、有機酸を含有した排水を効率的に浄化処理することのできる排水処理装置および排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、以下に記載の排水処理装置および排水処理方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明の排水処理装置は、
有機酸を含有した排水である排水原水を加熱して濃縮し濃縮排水とするとともに、前記排水原水を加熱して濃縮することによって生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水とする加熱濃縮装置と、
前記加熱濃縮装置にて得られた前記濃縮排水を燃焼して分解する液中燃焼装置と、
前記加熱濃縮装置にて得られた前記凝縮水を微生物により分解するバイオ処理装置と、
を少なくとも備える。
【0007】
さらに本発明の排水処理方法は、
有機酸を含有した排水である排水原水を加熱して濃縮し濃縮排水とするとともに、前記排水原水を加熱して濃縮することによって生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水とする加熱濃縮工程と、
前記加熱濃縮工程にて得られた濃縮排水を燃焼して分解する液中燃焼工程と、
前記加熱濃縮工程にて得られた凝縮水を微生物により分解するバイオ処理工程と、
を少なくとも有する。
【0008】
このように排水原水を加熱濃縮して、濃縮排水と凝縮水を得るようにし、濃縮排水については燃焼分解を行い、凝縮水は微生物分解するようにすれば、有機酸を含有した排水を効率的に浄化することができる。
【0009】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記排水原水に含有された有機酸の濃度が、
10重量%以下であることが好ましい。
例えばこのような有機酸の濃度であれば、本発明の排水処理装置および排水処理方法を好適に適用することができる。
【0010】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記濃縮排水に含有された有機酸の濃度が、
60重量%以下であることが好ましい。
例えばこのような有機酸の濃度の濃縮排水を加熱濃縮装置または加熱濃縮工程にて得るようにすれば、この後で行われる濃縮排水の燃焼分解および凝縮水の微生物分解を効率良く行うことができる。
【0011】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記排水原水に含有された有機酸が、
フタル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトンアルデヒド、クロトン酸、フェノール、安息香酸から選択された少なくとも一つ以上であることが好ましい。
特にこのような有機酸であれば、本発明の排水処理装置および排水処理方法を好適に適用することができる。
【0012】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記排水原水の化学的酸素要求量(COD)を100%とした際、
前記凝縮水の化学的酸素要求量(COD)が、前記排水原水の化学的酸素要求量(COD)の10%以下であることが好ましい。
このようにバイオ処理を行うに際し、凝縮水の化学的酸素要求量(COD)を下げておけば、バイオ処理の負担が軽減され、微生物分解を効率良く行うことができる。
【0013】
また本発明の排水処理装置は、
前記バイオ処理装置から排出された排水(バイオ排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、90%以上であることが好ましい。
【0014】
さらに本発明の排水処理方法は、
前記バイオ処理工程にて排出された排水(バイオ排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、90%以上であることが好ましい。
このような化学的酸素要求量(COD)除去率であれば、多くの有機酸の分解処理がなされた状態であるため、排水の処理状態を高い状態とすることができる。
【0015】
また本発明の排水処理装置は、
前記バイオ処理装置から排出された排水(バイオ排水)をオゾン処理するオゾン処理装置をさらに備えることが好ましい。
【0016】
さらに本発明の排水処理方法は、
前記バイオ処理工程にて排出された排水(バイオ排水)をオゾン処理するオゾン処理工程をさらに有することが好ましい。
このようにオゾン処理をすれば、さらに排水の処理能力を高めることができる。
【0017】
また本発明の排水処理装置は、
前記オゾン処理装置から排出された排水(オゾン排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、95%以上であることが好ましい。
【0018】
さらに本発明の排水処理方法は、
前記オゾン処理工程にて排出された排水(オゾン排水)の化学的酸素要求量(COD)除去率が、95%以上であることが好ましい。
このような化学的酸素要求量(COD)除去率であれば、さらに多くの有機酸の分解処理がなされた状態であるため、排水の処理状態を非常に高い状態とすることができる。
【0019】
また本発明の排水処理装置は、
前記バイオ処理装置に用いられる微生物が、
繊毛虫類下毛目、吸管虫類、繊毛虫類緑毛目から選択された少なくとも一つ以上であることが好ましい。
【0020】
さらに本発明の排水処理方法は、
前記バイオ処理工程において用いられる微生物が、
繊毛虫類下毛目、吸管虫類、繊毛虫類緑毛目から選択された少なくとも一つ以上であることが好ましい。
このような微生物であれば、バイオ処理に好適である。
【0021】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記排水原水に含有された有機酸のpHが、6.0~10.0の範囲内であることが好ましい。
このようなpHであれば、本発明の排水処理装置および排水処理方法を好適に用いることができる。
【0022】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記濃縮排水に含有された有機酸のpHが、6.0~10.0の範囲内であることが好ましい。
このようなpHであれば、本発明の排水処理装置および排水処理方法を好適に用いることができる。
【0023】
また本発明の排水処理装置および排水処理方法は、
前記有機酸を含有した排水である排水原水が、ブタジエン製造の際に排出された排水であることが好ましい。
このようにブタジエン製造の際に排出された排水には有機酸が多量に含まれており、この多量の有機酸を本発明の排水処理装置および排水処理方法を用いて効率的に浄化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の排水処理装置および排水処理方法によれば、有機酸を含有した排水を加熱濃縮して、濃縮排水と凝縮水を得るようにし、濃縮排水については燃焼分解を行い、凝縮水は微生物分解するようにしているため、有機酸を含有した排水を効率的に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第1の実施形態における排水処理装置の概略図である。
図2図2は、本発明の排水処理装置に用いられる液中燃焼装置の概略図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態における排水処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づきより詳細に説明する。
<<排水処理装置10>>
本発明の第1の実施形態における排水処理装置10は、例えばブタジエン製造の際に生ずる有機酸を含有した排水(排水原水20とも称する)を浄化処理するためのものである。
【0027】
有機酸の例としては、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトンアルデヒド、クロトン酸、フェノール、安息香酸から選択された少なくとも一つ以上を挙げることができる。
【0028】
この排水原水20に含まれた有機酸の濃度は、例えば10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
さらに排水原水20に含有された有機酸のpHは、例えば6.0~10.0の範囲内であり、好ましくは6.0~9.0の範囲内、さらに好ましくは7.0~8.0の範囲内である。
【0029】
具体的な排水処理装置10の構成としては、図1に示したように、有機酸を含有した排水である排水原水20を加熱して濃縮し濃縮排水36とするとともに、この濃縮排水36を得る際に生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水39とする加熱濃縮装置30をまず備えている。
【0030】
そして、さらにこの加熱濃縮装置30にて得られた濃縮排水36を燃焼して分解する液中燃焼装置40と、加熱濃縮装置30にて得られた凝縮水39を微生物により分解するバイオ処理装置70が備えられている。
【0031】
すなわち、有機酸を含有した排水である排水原水20は、加熱濃縮装置30にて、濃縮排水36と凝縮水39の二つに分けられ、濃縮排水36については、液中燃焼装置40で燃焼分解され、凝縮水39については、バイオ処理装置70にて微生物により分解される。このため、有機酸を含有した排水を効率的に浄化することができる。
【0032】
ここで各装置の仕様例について説明する。
<加熱濃縮装置30>
加熱濃縮装置30には、排水原水を加熱する加熱部31,35が備えられ、ここで濃縮排水36と凝縮水39が得られる。
【0033】
まず排水原水20は、加熱部31内に導入され、加熱部31で加熱されることにより、排水原水20の濃度が高められ濃縮された排水(濃縮排水33)が得られる。得られた濃縮排水33は、ポンプ32を介して次の加熱部35に送られて加熱され、さらに濃度が高められた排水(濃縮排水36)が得られ、得られた濃縮排水36は、ポンプ34を介して次の装置である液中燃焼装置40へ送られる。
【0034】
なお、加熱部31で得られた濃縮排水33の一部は、再度加熱部31に導入され、これを繰り返すことで所定の濃度まで濃縮されることとなる。また加熱部35で得られた濃縮排水36の一部も、再度加熱部35に導入され、これを繰り返すことで所定の濃度まで濃縮されることとなる。
【0035】
この加熱濃縮装置30にて所定濃度の濃縮排水36が得られたら、この濃縮排水36を液中燃焼装置40へ導入する。
この濃縮排水36に含有された有機酸の濃度は、例えば60重量%以下であり、好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0036】
さらに濃縮排水36に含有された有機酸のpHは、例えば5.0~10.0の範囲内であり、好ましくは6.0~9.0の範囲内、さらに好ましくは7.0~8.0の範囲内である。
【0037】
一方、濃縮排水33を得る際に加熱部31で生じた水分は蒸発させた後、凝縮して凝縮水39とし、バイオ処理装置70へ送られる。
この凝縮水39については、排水原水20の化学的酸素要求量(COD)を100%とした際、凝縮水39の化学的酸素要求量(COD)が、排水原水20の化学的酸素要求量(COD)の10%以下であることが好ましい。
【0038】
<液中燃焼装置40>
液中燃焼装置40は、濃縮排水36を燃焼炉43内で燃焼して分解するものである。具体的には図2に示したように、まず燃焼炉43の炉頂に位置するバーナー部43aに、たとえば、LPG、都市ガス、灯油、重油等の補助燃料48が供給され、図示しないブロワからポンプ60を介して供給される空気49を用いて燃焼される。これにより、燃焼炉43内に高温ガス領域が形成される。
【0039】
次に、加熱濃縮装置30で得られた濃縮排水36が燃焼炉43の炉肩部から噴霧されると、燃焼炉43内で濃縮排水36が燃焼されて有機酸が完全分解される。燃焼によって生じた高温の燃焼ガス45は、冷却缶44で急冷された後、スクラバー50内に導入され、燃焼ガス45を冷却した缶液は、排水62としてポンプ46を介して排出される。ここで一部の排水62については、ポンプ46を介して再び冷却缶44内に導入される。
【0040】
スクラバー50内に導入された燃焼ガス45は、水53aと接することで集塵される。微粒子を含む水53bは、スクラバー50の底部に貯留され、一部は、ポンプ52を介して再びスクラバー50内に導入される。またスクラバー50内の排ガス54は排気筒55に導入され、さらに浄化されて大気中に排出される。
【0041】
<バイオ処理装置70>
加熱濃縮装置30で得られた凝縮水39は、バイオ処理装置70に導入され、微生物により分解される。具体的には、図1に示したように、まず調整槽72に送られて水質・水量を均一化した後、微生物入りの微生物貯留槽74に送られる。ここで、凝縮水39は、所定時間の間攪拌されることにより、微生物によって分解処理され、凝縮水39が浄化される。
【0042】
ここでバイオ処理に用いられる微生物としては、特に限定されるものではないが、例えば有機酸を有する凝縮水39の場合には、繊毛虫類下毛目、吸管虫類、および繊毛虫類緑毛目などから選択された少なくとも一つ以上を用いることが好ましい。なお、繊毛虫類下毛目の具体例としては、アスピディスカ、ユープロテスなどがそれぞれ挙げられる。吸管虫類の具体例としては、アキネタ、ポドフィリアなどがそれぞれ挙げられ、繊毛虫類緑毛目の具体例としては、ボルティセラ属、エピスティリス属、カルケシウム属、オペルクラリア属、ズーサムニウム属、バギニコラ属かなどがそれぞれ挙げられる。
【0043】
バイオ処理がなされた凝縮水39は、次いで曝気槽76へ送られる。曝気槽76には、好気性微生物を多量に含んだフロックと呼称される塊が浮遊しており、好気性微生物が微生物を捕食することにより、さらに凝縮水39中の有機酸が処理される。
【0044】
ここで曝気槽76の好気性微生物としては、特に限定されるものではないが、例えば有機酸を有する凝縮水39の場合には、上述したのと同様に、繊毛虫類下毛目、吸管虫類、および繊毛虫類緑毛目などから選択された少なくとも一つ以上を用いることが好ましい。
【0045】
次に、沈殿槽78において、有機酸を捕食した好気性微生物の塊を活性汚泥として沈殿させることにより、活性汚泥と凝縮水39から有機酸が除去された処理水とに分離される。処理水は排水処理装置10から排水(この排水を、本明細書中ではバイオ排水82とも称する。)としてされる。一方、活性汚泥は、汚泥槽80に集積された後、汚泥槽80内の水分については再び調整槽72へ送られる。
【0046】
なお、バイオ排水82は、化学的酸素要求量(COD)除去率が、90%以上であることが好ましい。
このように本発明の第1の実施形態における排水処理装置10では、有機酸を含有した排水(排水原水20)を加熱濃縮して、濃縮排水36と凝縮水39の二つを得るようにし、濃縮排水36については燃焼分解を行い、凝縮水39は微生物分解をしているため、有機酸を含有した排水(排水原水20)を効率的に浄化することができる。
【0047】
次いで、本発明の排水処理装置10の第2の実施形態について、図3を用いて説明する。
図3に示した排水処理装置10は、図1および図2に示した第1の実施形態の排水処理装置10と基本的に同じ構成であるので、同じ構成部材には同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
図3に示した排水処理装置10は、バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)をさらにオゾン処理するオゾン処理装置90を備えている点で、第1の実施形態の排水処理装置10と異なる。
【0049】
バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)は、オゾン処理装置90内に導入され、オゾンと接触される。これによりバイオ排水82中の有機酸が分解されて排水(この排水を、本明細書中ではオゾン排水92とも称する。)される。
【0050】
このオゾン排水92の化学的酸素要求量(COD)除去率は、95%以上であることが好ましい。
このように、さらにオゾン処理装置90をさらに備えることにより、バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)は、オゾン処理されて、第1の実施形態の場合よりもさらに浄化された排水(オゾン排水92)とすることができる。
【0051】
<<排水処理方法>>
本発明の排水処理方法は、少なくとも次の工程を有する。
【0052】
<加熱濃縮工程>
まず、有機酸を含有した排水である排水原水20を、加熱濃縮装置30を介して加熱して濃縮し濃縮排水36とするとともに、この濃縮排水36を得る際に生じた水分を蒸発させて凝縮し凝縮水39とする。
【0053】
<液中燃焼工程>
加熱濃縮工程にて得られた濃縮排水36は、液中燃焼装置40を介して燃焼して分解する。
【0054】
<バイオ処理工程>
さらに加熱濃縮工程にて得られた凝縮水39は、バイオ処理装置70を介して微生物により分解する。
このように本発明の排水処理方法は、有機酸を含有した排水(排水原水20)を加熱濃縮して、濃縮排水36と凝縮水39の二つを得るようにし、濃縮排水36については燃焼分解を行い、凝縮水39は微生物分解をしているため、有機酸を含有した排水(排水原水20)を効率的に浄化することができる。
【0055】
なお、上記した加熱濃縮工程、液中燃焼工程、バイオ処理工程に加え、バイオ処理工程の後に、オゾン処理工程を有しても良いものである。
【0056】
<オゾン処理工程>
バイオ処理工程にて排出された排水(バイオ排水82)を、さらにオゾン処理装置90を介してオゾン処理する。
このようにさらにオゾン処理をすれば、さらに浄化された排水とすることができる。
【実施例0057】
[実施例1]
ブタジエン製造時に生じた有機酸(フタル酸,マレイン酸,アクリル酸、クロトンアルデヒド酸、クロトン酸、フマル酸等)を含有した排水(排水原水20)20Lを、図1に示した本発明の排水処理装置10に導入し、バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)の化学的酸素要求量(COD)除去率を求めた。
【0058】
なお、排水原水20に含まれた有機酸の濃度は、5重量%であった。
また、本実施例1において、加熱濃縮装置30としては、処理能力が原液処理量360Nm3/日であり、濃縮倍率が10倍のものを用いた。また、液中燃焼装置40としては、処理能力が濃縮処理量1,000kg/hのものを用い、バイオ処理装置70としては、処理能力が720Nm3/hのものを用いた。なお、バイオ処理装置70で用いた微生物は、繊毛虫類下毛目、吸管虫類、および繊毛虫類緑毛目である。
【0059】
すなわち、上記の加熱濃縮装置30と液中燃焼装置40とバイオ処理装置70を用い、バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)の化学的酸素要求量(COD)除去率を求めたところ、99.6%であった。結果を表1に記す。
【0060】
[実施例2]
実施例1で用いた加熱濃縮装置30、液中燃焼装置40、バイオ処理装置70に加え、図3に示した本発明の排水処理装置10のようにバイオ処理装置70によるバイオ処理の後、さらにオゾン処理装置90を用い、オゾン処理装置90から排出された排水(オゾン排水92)の化学的酸素要求量(COD)除去率を求めた。オゾン処理装置90としては、処理能力が30m3/hrのものを用いた。
結果、オゾン処理装置90から排出された排水(オゾン排水92)の化学的酸素要求量(COD)除去率は99.9%であった。結果を表1に記す。
【0061】
[比較例1]
実施例1で用いた加熱濃縮装置30、液中燃焼装置40、バイオ処理装置70のうち、バイオ処理装置70のみを用いて処理を行ったものである。なお、バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)の化学的酸素要求量(COD)除去率については、実施例1と同様にして算定した。
バイオ処理装置70から排出された排水(バイオ排水82)の化学的酸素要求量(COD)除去率は85.8%であった。結果を表1に記す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1,2と比較例1とを対比すると、化学的酸素要求量(COD)除去率に違いが見受けられ、実施例1,2が、比較例1と比べて顕著な効果を有することが確認された。すなわち、本発明の排水処理装置10および排水処理方法の優位性が確認された。
【0064】
以上、本発明の排水処理装置10および排水処理方法について説明したが、本発明は、少なくとも加熱濃縮によって排水原水20を濃縮排水36と凝縮水39の二つにし、濃縮排水36については液中燃焼を行い、凝縮水39はバイオ処理を行えば、所望の排水処理を行えるものであり、バイオ処理後については、オゾン処理のみならず、活性炭処理、HIPO処理などの他の排水処理を行っても良いものである。
【0065】
さらに、上記した本発明の排水処理装置10で用いた加熱濃縮装置30、液中燃焼装置40、バイオ処理装置70の構成については、あくまで一構成例を説明したものにすぎず、従来より公知の装置を用いても良いものである。すなわち例えば特開昭53-125378号公報に開示の加熱濃縮装置、特開2002-89820号公報に開示の液中燃焼装置、特許第6442856号公報に開示されたバイオ処理装置、特許第5892904号公報に開示されたオゾン処理装置を用いても良いなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0066】
10 排水処理装置
20 排水原水
30 加熱濃縮装置
31 加熱部
32 ポンプ
33 濃縮排水
34 ポンプ
35 加熱部
36 濃縮排水
39 凝縮水
40 液中燃焼装置
43 燃焼炉
43a バーナー部
44 冷却缶
45 燃焼ガス
46 ポンプ
48 補助燃料
49 空気
50 スクラバー
52 ポンプ
53a 水
53b 微粒子を含む水
54 排ガス
55 排気筒
60 ポンプ
62 排水
70 バイオ処理装置
72 調整槽
74 微生物貯留槽
76 曝気槽
78 沈殿槽
80 汚泥槽
82 排水(バイオ排水)
90 オゾン処理装置
92 排水(オゾン排水)
図1
図2
図3