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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084342
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20220531BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20220531BHJP
【FI】
B60K20/02 A
G05G1/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196153
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 充浩
【テーマコード(参考)】
3D040
3J070
【Fターム(参考)】
3D040AA03
3D040AB10
3D040AC01
3D040AD09
3D040AE19
3D040AF02
3J070AA32
3J070BA41
3J070BA51
3J070DA01
3J070DA04
(57)【要約】
【課題】軸部材の変位を精度よく検出することができるとともに、外部からの磁気の影響を抑制して誤作動を防止することができるシフト装置を提供する。
【解決手段】車両のシフトペダルのシフト操作に応じて変位し得る軸部材Lと、軸部材Lが変位端に達した状態で一体的に移動して車両の変速操作を行わせ得るハウジング2と、軸部材Lと共に変位可能とされた永久磁石Mと、永久磁石Mの磁気変化を検出することにより軸部材Lの変位を検出する磁気センサ5とを具備したシフト装置1であって、ハウジング2は、開口部2aが形成され、当該開口部2aにケース3が取り付けられるとともに、ケース3は、開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有し、当該突出部3cに磁気センサ5を収容可能な収容凹部3aが形成されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシフトペダルのシフト操作に応じて変位し得る軸部材と、
前記軸部材を変位可能に収容する収容空間を有するとともに、当該軸部材が変位端に達した状態で一体的に移動して車両の変速操作を行わせ得るハウジングと、
前記軸部材に形成され、当該軸部材と共に変位可能とされるとともに、磁気を発生する磁気発生手段と、
前記磁気発生手段の磁気変化を検出することにより、前記ハウジングに対する前記軸部材の変位を検出する検出手段と、
を具備したシフト装置であって、
前記ハウジングは、前記磁気発生手段の配設位置に応じた部位に開口部が形成され、当該開口部にケースが取り付けられるとともに、前記ケースは、前記開口部を覆うカバー部と、前記カバー部から前記ハウジングの収容空間まで突出する突出部とを有し、当該突出部に前記検出手段を収容可能な収容部が形成されたことを特徴とするシフト装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記カバー部の所定位置で開口した収容凹部から成り、当該収容凹部の開口を介して前記検出手段が取り付け可能とされるとともに、当該開口から前記検出手段の配線を外部に延設させたことを特徴とする請求項1記載のシフト装置。
【請求項3】
前記ケースにおけるカバー部に取り付けられて前記収容凹部の開口を覆う蓋部材を具備したことを特徴とする請求項2記載のシフト装置。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記収容凹部の開口を含む前記カバー部の表面領域を覆うとともに、当該開口から延設した配線に沿って膨出した膨出部が形成されたことを特徴とする請求項3記載のシフト装置。
【請求項5】
前記蓋部材は、立体的な形状から成り、前記カバー部の表面領域を覆うとともに、前記ケースと共に共締めされて固定されたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のシフト装置。
【請求項6】
前記ケースに挿通可能とされ、前記収容凹部に収容された前記検出手段を外部から遮蔽し得る遮蔽部材を具備したことを特徴とする請求項2記載のシフト装置。
【請求項7】
前記収容部は、前記突出部の側面及びカバー部の所定位置で開口した収容凹部から成り、前記突出部の側面の開口を介して前記検出手段が取り付け可能とされるとともに、前記カバー部側の開口を介して前記検出手段の配線を外部に延設させたことを特徴とする請求項1記載のシフト装置。
【請求項8】
前記収容凹部における前記突出部の側面の開口と前記カバー部側の開口とが連続した開口を成すことを特徴とする請求項7記載のシフト装置。
【請求項9】
前記収容凹部における前記突出部の側面の開口と前記カバー部側の開口とが別個に形成され、前記突出部の側面の開口を閉止する閉止部材を具備したことを特徴とする請求項7記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのシフト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車等の変速機は、運転者によるシフトペダルのシフト操作に応じて変速操作可能とされており、従来、シフトペダルの操作力を変速機に伝達させる伝達経路の途中にシフト装置が取り付けられたものが提案されている。従来のシフト装置は、例えば特許文献1にて、シフトペダルのシフト操作に応じて変位し得る軸部材と、軸部材を変位可能に収容したハウジングと、軸部材に取り付けられた磁石と、ハウジングに取り付けられた磁気センサとを有したものが開示されている。
【0003】
かかる従来のシフト装置は、二輪車等の運転者がシフトペダルを操作開始して、ハウジングに対して軸部材が変位したことを磁気センサが検出すると、車両のエンジンを制御して駆動トルクを調整するとともに、当該軸部材が変位端に達した状態で軸部材とハウジングとが一体的に移動することにより変速機の変速操作を行わせるよう構成されていた。これにより、二輪車等の運転者は、クラッチを操作することなく変速操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許102010015036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、磁気センサがハウジングの外側に取り付けられていたため、磁気センサと軸部材の磁石との間の離間寸法が大きくなってしまい、軸部材の変位に伴う磁石の磁気変化を精度よく検出するのが困難な場合があった。また、上記従来技術は、磁気センサがハウジングの外側に取り付けられていたので、外部の磁気の影響を受けて誤作動してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軸部材の変位を精度よく検出することができるとともに、外部からの磁気の影響を抑制して誤作動を防止することができるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両のシフトペダルのシフト操作に応じて変位し得る軸部材と、前記軸部材を変位可能に収容する収容空間を有するとともに、当該軸部材が変位端に達した状態で一体的に移動して車両の変速操作を行わせ得るハウジングと、前記軸部材に形成され、当該軸部材と共に変位可能とされるとともに、磁気を発生する磁気発生手段と、前記磁気発生手段の磁気変化を検出することにより、前記ハウジングに対する前記軸部材の変位を検出する検出手段とを具備したシフト装置であって、前記ハウジングは、前記磁気発生手段の配設位置に応じた部位に開口部が形成され、当該開口部にケースが取り付けられるとともに、前記ケースは、前記開口部を覆うカバー部と、前記カバー部から前記ハウジングの収容空間まで突出する突出部とを有し、当該突出部に前記検出手段を収容可能な収容部が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシフト装置において、前記収容部は、前記カバー部の所定位置で開口した収容凹部から成り、当該収容凹部の開口を介して前記検出手段が取り付け可能とされるとともに、当該開口から前記検出手段の配線を外部に延設させたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のシフト装置において、前記ケースにおけるカバー部に取り付けられて前記収容凹部の開口を覆う蓋部材を具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のシフト装置において、前記蓋部材は、前記収容凹部の開口を含む前記カバー部の表面領域を覆うとともに、当該開口から延設した配線に沿って膨出した膨出部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4記載のシフト装置において、前記蓋部材は、立体的な形状から成り、前記カバー部の表面領域を覆うとともに、前記ケースと共に共締めされて固定されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項2記載のシフト装置において、前記ケースに挿通可能とされ、前記収容凹部に収容された前記検出手段を外部から遮蔽し得る遮蔽部材を具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1記載のシフト装置において、前記収容部は、前記突出部の側面及びカバー部の所定位置で開口した収容凹部から成り、前記突出部の側面の開口を介して前記検出手段が取り付け可能とされるとともに、前記カバー部側の開口を介して前記検出手段の配線を外部に延設させたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のシフト装置において、前記収容凹部における前記突出部の側面の開口と前記カバー部側の開口とが連続した開口を成すことを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項7記載のシフト装置において、前記収容凹部における前記突出部の側面の開口と前記カバー部側の開口とが別個に形成され、前記突出部の側面の開口を閉止する閉止部材を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ハウジングは、磁気発生手段の配設位置に応じた部位に開口部が形成され、当該開口部にケースが取り付けられるとともに、ケースは、開口部を覆うカバー部と、カバー部からハウジングの収容空間まで突出する突出部とを有し、当該突出部に検出手段を収容可能な収容部が形成されたので、軸部材の変位を精度よく検出することができるとともに、外部からの磁気の影響を抑制して誤作動を防止することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、収容部は、カバー部の所定位置で開口した収容凹部から成り、当該収容凹部の開口を介して検出手段が取り付け可能とされるとともに、当該開口から検出手段の配線を外部に延設させたので、検出手段を磁気発生手段のより近傍に配設することができ、軸部材の変位をより精度良く検出することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ケースにおけるカバー部に取り付けられて収容凹部の開口を覆う蓋部材を具備したので、収容凹部内の検出手段を蓋部材にて確実に保護することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、蓋部材は、収容凹部の開口を含むカバー部の表面領域を覆うとともに、当該開口から延設した配線に沿って膨出した膨出部が形成されたので、蓋部材により検出手段の保護を図りつつケースの表面領域を覆って意匠性を向上させることができ、且つ、膨出部により蓋部材と配線との干渉を防止しつつ配線の位置決めを図ることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、蓋部材は、立体形状から成り、カバー部の表面領域を覆うとともに、ケースと共に共締めされて固定されたので、立体形状の蓋部材により意匠性をより向上させることができるとともに、ケースと共に共締めされることによりケースの表面領域を蓋部材にて広く覆うことができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、ケースに挿通可能とされ、収容凹部に収容された検出手段を外部から遮蔽し得る遮蔽部材を具備したので、収容凹部内の検出手段を遮蔽部材にて覆って確実に保護することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、収容部は、突出部の側面及びカバー部の所定位置で開口した収容凹部から成り、突出部の側面の開口を介して検出手段が取り付け可能とされるとともに、カバー部側の開口を介して検出手段の配線を外部に延設させたので、検出手段の収容部への収容作業を容易に行わせることができるとともに、検出手段の配線を容易に延設させることができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、収容凹部における突出部の側面の開口とカバー部側の開口とが連続した開口を成すので、突出部の側面の開口から検出手段を収容部に収容させつつ配線をカバー部側の開口から容易に延設させることができ、検出手段の収容時の作業性を向上させることができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、収容凹部における突出部の側面の開口とカバー部側の開口とが別個に形成され、突出部の側面の開口を閉止する閉止部材を具備したので、ハウジングの開口部とケースとの間のシール性を向上させることができるとともに、閉止部材によって突出部の側面の開口のシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係るシフト装置を示す平面図及び側面図
図2】同シフト装置を示す斜視図
図3図1におけるIII-III線断面図
図4図1におけるIV-IV線断面図
図5】同シフト装置における軸部材に永久磁石及びコイルスプリングが取り付けられた状態を示す斜視図
図6】同シフト装置におけるハウジングを示す平面図及び側面図
図7】同ハウジングを示す斜視図
図8】同シフト装置におけるケースを示す3面図
図9】同ケースを示す斜視図
図10図8におけるX-X線断面図
図11図8におけるXI-XI線断面図
図12】同ケースに磁気センサを収容させた状態を示す平面図
図13図12におけるXII-XII線断面図
図14】本発明の第2の実施形態に係るシフト装置を示す平面図及び側面図
図15】同シフト装置を示す斜視図
図16】同シフト装置における蓋部材を示す3面図
図17】同蓋部材を示す斜視図
図18】本発明の第3の実施形態に係るシフト装置を示す平面図及び側面図
図19】同シフト装置を示す斜視図
図20】同シフト装置におけるケースを示す3面図
図21】同ケースを示す斜視図
図22図20におけるXXII-XXII線断面図
図23図20におけるXXIII-XXIII線断面図
図24】同ケースに磁気センサを収容させた状態を示す平面図
図25図24におけるXII-XII線断面図
図26】本発明の第4の実施形態に係るシフト装置を示す平面図及び側面図
図27】同シフト装置を示す斜視図
図28】同シフト装置におけるケースを示す3面図
図29】同ケースを示す斜視図
図30図28におけるXXX-XXX線断面図
図31図28におけるXXXI-XXXI線断面図
図32】同ケースに適用される閉止部材を示す斜視図
図33】同ケースに磁気センサを収容し、閉止部材で開口を閉止した状態を示す平面図及び側面図
図34】同ケースに磁気センサを収容し、閉止部材で開口を閉止した状態を示す斜視図
図35図33におけるXXXV-XXXV線断面図
図36】本発明の第5の実施形態に係るシフト装置を示す平面図及び側面図
図37】同シフト装置を示す斜視図
図38】同シフト装置におけるケースを示す3面図
図39】同ケースを示す斜視図
図40図38におけるXL-XL線断面図
図41】同ケースに適用される遮蔽部材を示す3面図
図42】同ケースに適用される遮蔽部材を示す斜視図
図43】同ケースに磁気センサを収容し、遮蔽部材で遮蔽した状態を示す平面図及び側面図
図44図43におけるXLIV-XLIV線断面図
図45】本発明の第6の実施形態に係るシフト装置を示す平面図
図46】同シフト装置を示す斜視図
図47】同シフト装置を示す縦断面図
図48】同シフト装置におけるケースを示す3面図
図49】同ケースを示す斜視図
図50】同ケースに磁気センサを収容した状態を示す平面図
図51図50におけるLI-LI線断面図
図52】同ケースに適用される蓋部材を示す3面図
図53】同蓋部材を示す斜視図
図54】同蓋部材をケースに取り付けた状態を示す斜視図
図55】同シフト装置における蓋部材をケースに取り付ける過程を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係るシフト装置1は、二輪車等の車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのもので、図1~4に示すように、軸部材Lと、ハウジング2と、永久磁石M(磁気発生手段)と、ケース3と、磁気センサ5(検出手段)とを有して構成されている。
【0027】
軸部材Lは、車両のシフトペダルに連結されるとともに、当該シフトペダルのシフト操作に応じて変位し得るもので、図3~5に示すように、ハウジング2の長手方向に延設された軸状の部材から成る。かかる軸部材Lには、同図に示すように、コイルスプリングSが取り付けられるとともに、先端部に磁気発生手段としての永久磁石Mが取り付けられており、二輪車等の運転者によりシフトペダルが操作されると、コイルスプリングSの付勢力に抗して長手方向に変位可能とされている。
【0028】
また、永久磁石Mは、磁気を発生する円筒状に形成された磁石から成り、軸部材Lの先端部に取り付けられることにより、シフトペダルの操作に応じて当該軸部材Lと共に変位し得るようになっている。なお、磁気発生手段は、軸部材Lに取り付けられて磁気を発生するものであれば、本実施形態に係る永久磁石Mに代えて、他の形状の永久磁石やプラスチック等に着磁したもの、或いは軸部材Lに直接着磁したもの等であってもよい。
【0029】
ハウジング2は、軸部材Lを変位可能に収容する収容空間Dを有するとともに、当該軸部材Lが変位端に達した状態で一体的に移動して車両の変速操作を行わせ得るもので、図6、7に示すように、永久磁石Mの配設位置に応じた部位に開口部2aが形成されている。かかるハウジング2は、軸部材Lが変位端に達した後、更に変位するのに伴い、軸部材L及びハウジング2が同方向に一体的に移動し得るようになっている。
【0030】
さらに、本実施形態に係るハウジング2は、開口部2aの縁部に複数のネジ穴aが形成されており、当該ネジ穴aに挿通するネジnによりケース3を取付可能とされている。かかるケース3は、ハウジング2の開口部2aに取付可能とされるとともに、図8~13に示すように、ハウジング2に取り付けられた状態で開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有して構成されている。
【0031】
そして、ケース3の突出部3cには、磁気センサ5及び基板4を収容可能な収容部が形成されている。本実施形態に係る収容部は、カバー部3bの所定位置で開口した収容凹部3aから成り、図12、13に示すように、当該収容凹部3aの開口Kを介して磁気センサ5が取り付け可能とされるとともに、当該開口Kから磁気センサ5の配線hを外部に延設させるようになっている。
【0032】
なお、カバー部3bの周縁には、ハウジング2のネジ穴aと対応したネジ穴bが形成されており、これらネジ穴a、bに締結手段としての取付ネジnを挿通して螺合することにより、図1、2に示すように、カバー部3bがハウジング2に取り付けられるようになっている。また、収容凹部3aには、磁気センサ5及び基板4が収容された状態において、樹脂製のシール材が充填固化されるようになっている。
【0033】
磁気センサ5は、基板4上に形成されたホールIC素子等のセンサから成り、永久磁石Mの磁気変化を検出することにより、ハウジング2に対する軸部材Lの変位を検出するよう構成されている。なお、磁気センサ5は、永久磁石M(磁気発生手段)の磁気変化を検出することにより、ハウジング2に対する軸部材Lの変位を検出するものであれば、ホールIC素子等の他、種々の形態のセンサであってもよい。
【0034】
しかるに、ハウジング2の開口部2cに対して磁気センサ5が取り付けられたケース3を取り付けることにより、図4に示すように、カバー部3bが開口部2cを覆いつつ突出部3cがハウジング2の収容空間D内で突出するので、突出部3cの収容凹部3aに収容された磁気センサ5が永久磁石Mの近傍に位置することとなり、軸部材Lの変位に伴う永久磁石Mの磁気変化を検出可能とされている。
【0035】
そして、磁気センサ5で磁気変化が検出されると、軸部材L(すなわち、シフトペダル)が変位開始したか、及び何れの方向に操作されたか判別されるので、その判別信号が配線hを介して例えば車両のECUに送信可能とされている。これにより、運転者がシフトペダルを操作開始して、ハウジング2に対して軸部材Lが変位したことを磁気センサ5が検出すると、車両のエンジンを制御して駆動トルクを調整するとともに、当該軸部材Lが変位端に達した状態で軸部材Lとハウジング2とが一体的に移動することにより変速機の変速操作を行わせることができる。
【0036】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係るシフト装置1は、二輪車等の車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのもので、図14、15に示すように、軸部材Lと、ハウジング2と、永久磁石M(磁気発生手段)と、ケース3と、磁気センサ5(検出手段)とを有して構成(各構成要素の詳細については、第1の実施形態を参照)されるとともに、蓋部材6を具備している。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してある。
【0037】
蓋部材6は、ケース3におけるカバー部3bに取り付けられて収容凹部3aの開口Kを覆うもので、本実施形態においては、図14、15に示すように、収容凹部3aの開口Kを含むカバー部3bの表面領域(一部領域)を覆うよう構成されている。このように、ケース3におけるカバー部3bに取り付けられて収容凹部3aの開口Kを覆う蓋部材6を具備したので、収容凹部3a内の磁気センサ5を蓋部材6にて確実に保護することができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る蓋部材6は、図16、17に示すように、ケース3のカバー部3bを覆って取り付けられた状態において、開口Kから延設した配線hに沿って膨出した膨出部6aが形成されている。これにより、本実施形態は、蓋部材6により磁気センサ5の保護を図りつつケース3の表面領域を覆って意匠性を向上させることができ、且つ、膨出部6aにより蓋部材6と配線hとの干渉を防止しつつ配線hの位置決めを図ることができる。
【0039】
第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、ハウジング2は、永久磁石Mの配設位置に応じた部位に開口部2aが形成され、当該開口部2aにケース3が取り付けられた。また、ケース3は、開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有し、当該突出部3cに磁気センサ5を収容可能な収容凹部3aが形成された。これにより、第1の実施形態及び第2の実施形態は、軸部材Lの変位を精度よく検出することができるとともに、外部からの磁気の影響を抑制して誤作動を防止することができる。
【0040】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態に係る収容部は、カバー部3bの所定位置で開口した収容凹部3aから成り、当該収容凹部3aの開口Kを介して磁気センサ5が取り付け可能とされるとともに、当該開口Kから磁気センサ5の配線hを外部に延設させたので、磁気センサ5を永久磁石Mのより近傍に配設することができ、軸部材Lの変位をより精度良く検出することができる。
【0041】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係るシフト装置1は、二輪車等の車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのもので、図18、19に示すように、軸部材Lと、ハウジング2と、永久磁石M(磁気発生手段)と、ケース3と、磁気センサ5(検出手段)とを有して構成(ケース3以外の各構成要素の詳細については、第1の実施形態を参照)されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してある。
【0042】
ケース3は、図18、19に示すように、ハウジング2の開口部2aに取付可能とされるとともに、図20~23に示すように、ハウジング2に取り付けられた状態で開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有して構成されている。そして、ケース3の突出部3cには、磁気センサ5及び基板4を収容可能な収容部(収容凹部3a)が形成されている。
【0043】
ここで、本実施形態に係る収容部は、突出部3cの側面及びカバー部3bの所定位置で開口した収容凹部3aから成り、図24、25に示すように、突出部3cの側面の開口K1を介して磁気センサ5が取り付け可能とされるとともに、カバー部3b側の開口K2を介して磁気センサ5の配線hを外部に延設させるよう構成されている。これにより、本実施形態は、磁気センサ5の収容凹部3aへの収容作業を容易に行わせることができるとともに、磁気センサ5の配線hを容易に延設させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態においては、同図に示すように、収容凹部3aにおける突出部3cの側面の開口K1とカバー部3b側の開口K2とが連続した開口を成すものとされている。これにより、突出部3cの側面の開口K1から磁気センサ5を収容凹部3aに収容させつつ配線hをカバー部3b側の開口K2から容易に延設させることができ、磁気センサ5の収容時の作業性を向上させることができる。
【0045】
次に、本発明に係る第4の実施形態について説明する。
本実施形態に係るシフト装置1は、二輪車等の車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのもので、図26、27に示すように、軸部材Lと、ハウジング2と、永久磁石M(磁気発生手段)と、ケース3と、磁気センサ5(検出手段)とを有して構成(ケース3以外の各構成要素の詳細については、第1の実施形態を参照)されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してある。
【0046】
ケース3は、図26、27に示すように、ハウジング2の開口部2aに取付可能とされるとともに、図28~31に示すように、ハウジング2に取り付けられた状態で開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有して構成されている。そして、ケース3の突出部3cには、磁気センサ5及び基板4を収容可能な収容部(収容凹部3a)が形成されている。
【0047】
ここで、本実施形態に係る収容部は、突出部3cの側面及びカバー部3bの所定位置で開口した収容凹部3aから成り、図33~35に示すように、突出部3cの側面の開口K3を介して磁気センサ5が取り付け可能とされるとともに、カバー部3b側の開口K4を介して磁気センサ5の配線hを外部に延設させるよう構成されている。これにより、本実施形態は、磁気センサ5の収容凹部3aへの収容作業を容易に行わせることができるとともに、磁気センサ5の配線hを容易に延設させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態においては、同図に示すように、収容凹部3aにおける突出部3cの側面の開口K3とカバー部材3b側の開口K4とが別個(第3の実施形態の如く連続していない独立した開口)に形成されるとともに、突出部3cの側面の開口K3を閉止する閉止部材7を具備している。かかる閉止部材7は、図32に示すように、突出部3cの側面の開口K3と対応した形状の部品から成り、図33~35に示すように、収容凹部3aに磁気センサ5及び基板4を収容した状態で開口K3を塞ぐよう構成されている。
【0049】
本実施形態によれば、収容凹部3aにおける突出部3cの側面の開口K3とカバー部材3b側の開口K4とが別個に形成されるとともに、突出部3cの側面の開口K3を閉止する閉止部材7を具備した。これにより、第3の実施形態の連続した開口を有するものに比べ、ハウジング2の開口部2aとケース3との間のシール性を向上させることができるとともに、閉止部材7によって突出部3cの側面の開口K3のシール性を確保することができる。
【0050】
次に、本発明に係る第5の実施形態について説明する。
本実施形態に係るシフト装置1は、二輪車等の車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのもので、図36、37に示すように、軸部材Lと、ハウジング2と、永久磁石M(磁気発生手段)と、ケース3と、磁気センサ5(検出手段)とを有して構成(ケース3以外の各構成要素の詳細については、第1の実施形態を参照)されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してある。
【0051】
ケース3は、図36、37に示すように、ハウジング2の開口部2aに取付可能とされるとともに、図38~40に示すように、ハウジング2に取り付けられた状態で開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有して構成されている。そして、ケース3の突出部3cには、磁気センサ5及び基板4を収容可能な収容部(収容凹部3a)が形成されている。
【0052】
ここで、本実施形態に係るケース3は、図38~40に示すように、突出部3cの側面であってカバー部3bの直下の位置に挿入口3caが形成されており、この挿入口3caには、図41、42に示すような遮蔽部材8が挿通可能とされている。かかる遮蔽部材8は、突出部3cの挿入口3caに挿入されることにより、図43、44に示すように、収容凹部3aに収容された磁気センサ5の上方の位置に固定されるよう構成されている。これにより、遮蔽部材8は、磁気センサ5を外部から遮蔽し得るようになっている。
【0053】
本実施形態によれば、ケース3に挿通可能とされ、収容凹部3aに収容された磁気センサ5を外部から遮蔽し得る遮蔽部材8を具備したので、収容凹部3a内の磁気センサ5を遮蔽部材8にて覆って確実に保護することができる。また、本実施形態は、遮蔽部材8が、磁気センサ5の上方を覆うとともに、磁気センサ5から延設される配線hの上方位置には至らないので、配線hを良好に外部に延設させることができる。
【0054】
次に、本発明に係る第6の実施形態について説明する。
本実施形態に係るシフト装置1は、二輪車等の車両のシフトペダルのシフト操作を変速機に伝達して変速操作を行わせるためのもので、図45~47に示すように、軸部材Lと、ハウジング2と、永久磁石M(磁気発生手段)と、ケース3と、磁気センサ5(検出手段)とを有して構成(ケース3以外の各構成要素の詳細については、第1の実施形態を参照)されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してある。
【0055】
ケース3は、図45~47に示すように、ハウジング2の開口部2aに取付可能とされるとともに、図48、49に示すように、ハウジング2に取り付けられた状態で開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部3cとを有して構成されている。そして、ケース3の突出部3cには、磁気センサ5及び基板4を収容可能な収容部(収容凹部3a)が形成されている。
【0056】
本実施形態に係る収容部は、図38~40に示すように、カバー部3bの所定位置で開口した収容凹部3aから成る。また、本実施形態に係る収容部は、図50、51に示すように、当該収容凹部3aの開口Kを介して磁気センサ5が取り付け可能とされるとともに、当該開口Kから磁気センサ5の配線hを外部に延設させるようになっている。さらに、本実施形態に係るケース3は、開口Kから縁部まで延びた溝形状Rを有しており、この溝形状Rに沿って配線hが延設されるようになっている。なお、カバー部3bの周縁には、ハウジング2のネジ穴aと対応したネジ穴gが形成されている。また、収容凹部3aには、磁気センサ5及び基板4が収容された状態において、樹脂製のシール材が充填固化されるようになっている。
【0057】
ここで、本実施形態に係るシフト装置1は、ケース3におけるカバー部3bに取り付けられて収容凹部3aの開口Kを覆う蓋部材9を具備している。かかる蓋部材9は、図52、53に示すように、立体的な形状から成り、その周縁部には、ケース3のネジ穴gと対応したネジ穴jが形成されている。また、蓋部材9は、ケース3に取り付けられると、図54に示すように、カバー部3bの表面領域を覆うよう構成されるとともに、一部に切欠き部9aが形成されており、その位置に配設された配線hとの干渉が回避されている。
【0058】
さらに、本実施形態に係る蓋部材9は、図55に示すように、ケース3のネジ穴gに対してネジ穴jを合致させつつ位置決めされるとともに、ネジnをネジ穴g、j及びハウジング2のネジ穴aに挿通して螺合することにより、ケース3と共に共締めされて固定されるよう構成されている。これにより、立体形状の蓋部材9により意匠性をより向上させることができるとともに、ケース3と共に共締めされることによりケース3の表面領域を蓋部材9にて広く覆うことができる。
【0059】
しかるに、本実施形態に係る蓋部材9は、切欠き部9aにて配線hの延設部位を避けつつケース3の表面領域を覆うよう構成されているが、第2の実施形態の蓋部材9のように、開口Kから延設した配線hに沿って膨出した膨出部6a(図16、17参照)のような形状を形成するようにしてもよい。なお、本実施形態においては、ケース3のカバー部3bに磁気センサ5を取付可能な開口Kを有しているが、第3、4の実施形態のケース3のように、ケース3のカバー部3b及び突出部3cの側面にそれぞれ開口(K1、K2)を形成するようにしてもよく、或いは、第5の実施形態のように、遮蔽部材8をケース3に挿通するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態1~6は、ハウジング2に、磁気センサ5の配設位置に応じた部位に開口部2aが形成され、当該開口部2aにケース3が取り付けられるとともに、ケース3に、開口部2aを覆うカバー部3bと、カバー部3bからハウジング2の収容空間Dまで突出する突出部2cとを有し、更に当該突出部2cに磁気センサ5を収容可能な収容部(収容凹部3a)が形成されたので、軸部材Lの変位を精度よく検出することができるとともに、外部からの磁気の影響を抑制して誤作動を防止することができる。
【0061】
以上、実施形態1~6について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばケース3を取付ネジnにてハウジング2に固定するものの他、他の手段で固定するものであってもよく、蓋部材6、9とは異なる形態の保護部材をケース3に取り付けるものであってもよい。また、本発明は、磁気センサ5を基板4の表裏に取り付けて、それぞれ磁気変化を検出するようにしてもよく、或いは、基板4に磁気センサ5とは異なる他の機能を有した素子を形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のシフト装置は、ハウジングの磁気発生手段の配設位置に応じた部位に開口部が形成され、当該開口部にケースが取り付けられるとともに、ケースが開口部を覆うカバー部と、カバー部からハウジングの収容空間まで突出する突出部とを有し、当該突出部に検出手段を収容可能な収容部が形成されたものであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 シフト装置
2 ハウジング
2a 開口部
3 ケース
3a 収容凹部(収容部)
3b カバー部
3c 突出部
3ca 挿入口
4 基板
5 磁気センサ(検出手段)
6 蓋部材
6a 膨出部
7 閉止部材
8 遮蔽部材
9 蓋部材
9a 切欠き部
L 軸部材
M 永久磁石(磁気発生手段)
S コイルスプリング
D 収容空間
K 開口
K1 突出部の側面の開口
K2 カバー部側開口
h 配線
n 取付ネジ(締結手段)
R 溝形状
図1
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