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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084361
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】中柱固定穴形成治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20220531BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20220531BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
E04G21/18 A
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196196
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 直人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
【テーマコード(参考)】
2E139
2E174
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA08
2E139AC19
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA40
2E174DA57
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】中柱を固定するための固定穴を容易かつより正確に形成することができる中柱固定穴形成治具を提供する。
【解決手段】中柱固定穴形成治具は、床面に当接する第一の平面と当該第一の平面の逆側の第二の平面を備える略矩形形状の板状の本体部と、本体部に設けられ、止水板を開口部に固定する場合の止水板取付見付け面に対応する開口部の幅方向に沿う基準線と平行にすることが可能な内外方向基準面と、内外方向基準面上に設けられ、開口部に配置される止水板の設置数に基づく基準線上の分割点と一致させることが可能な幅方向基準指標と、内外方向基準面と幅方向基準指標とに基づく位置で、本体部の第一の平面と上記第二の平面との間を貫通する、固定穴の形成予定位置に形成される複数の位置決め穴と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の内側と外側とを連通する開口部の前記外側で前記開口部の幅方向に沿って配列され、かつ前記開口部の一部を構成する床面から所定の高さまで当該開口部を閉塞可能な隣接する止水板を連結する中柱の脚部材を、前記止水板より前記内側で固定するための固定穴を形成する際に用いる中柱固定穴形成治具であって、
前記床面に当接する第一の平面と当該第一の平面の逆側の第二の平面を備える略矩形形状の板状の本体部と、
前記本体部に設けられ、前記止水板を前記開口部に固定する場合の止水板取付見付け面に対応する前記開口部の幅方向に沿う基準線と平行にすることが可能な内外方向基準面と、
前記内外方向基準面上に設けられ、前記開口部に配置される前記止水板の設置数に基づく前記基準線上の分割点と一致させることが可能な幅方向基準指標と、
前記内外方向基準面と前記幅方向基準指標とに基づく位置で、前記本体部の前記第一の平面と前記第二の平面との間を貫通する、前記固定穴の形成予定位置に形成される複数の位置決め穴と、
を備える、中柱固定穴形成治具。
【請求項2】
構造物の内側と外側とを連通する開口部の前記外側で前記開口部の幅方向に沿って配列され、かつ前記開口部の一部を構成する床面から所定の高さまで当該開口部を閉塞可能な隣接する止水板を連結する中柱の脚部材の一部を、前記止水板より前記外側に突出させた状態で固定するための固定穴を形成する際に用いる中柱固定穴形成治具であって、
前記床面に当接する第一の平面と当該第一の平面の逆側の第二の平面を備える略矩形形状の板状の本体部と、
前記本体部の前記幅方向と直交する方向に延在する一対の第一の側面に設けられ、前記止水板を前記開口部に固定する場合の止水板取付見付け面に対応する前記開口部の幅方向に沿う基準線と一致させる、一対の内外方向基準指標と、
前記本体部の前記幅方向と平行な方向に延在する一対の第二の側面に設けられ、前記開口部に配置される前記止水板の設置数に基づく前記基準線上の分割点を通り前記基準線と直交する方向に延びる分割線と一致させる幅方向基準指標と、
前記内外方向基準指標と前記幅方向基準指標とに基づく位置で、前記本体部の前記第一の平面と前記第二の平面の間を貫通する、前記固定穴の形成予定位置に形成される複数の位置決め穴と、
を備える、中柱固定穴形成治具。
【請求項3】
前記位置決め穴は、前記第二の平面から前記第一の平面とは逆方向に離れるのに連れて拡径するすり鉢状のドリルガイドを備える、請求項1または請求項2に記載の中柱固定穴形成治具。
【請求項4】
前記第一の平面は、前記床面に対する摺動を抑制する抵抗部材を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の中柱固定穴形成治具。
【請求項5】
前記第二の平面は、前記本体部を前記床面に押圧するために添えられる押圧体の底面と係合可能な、前記第二の平面から前記第一の平面とは逆方向に突出する固定突起を備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の中柱固定穴形成治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中柱固定穴形成治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の開口部に設置して当該構造物の内側への浸水を抑制する止水板(防水板、止水装置)が知られている。止水板は、集中豪雨や河川の氾濫等で開口部の内側への浸水が予想される場合に、予め例えば板状の防水板を開口部に設置することで開口部を閉塞して浸水を防止する。止水板を適用する開口部の幅(例えば、開口部を構成する左右の方立の間隔)は構造物(例えば建物)の形態に応じて様々である。一方、保管場所と設置場所との間を人手によって迅速に運ぶことが望ましい止水板は、軽量であることが望ましく、また止水時に水圧を受けても変形が少なく、止水性が規定値を下回らないように所定の強度(剛性)が要求される。そのため、可搬性や強度の点を考慮し、止水板の幅(開口部の幅方向の長さ)は制限されることがある。したがって、止水板の幅より広い開口幅の開口部を閉塞する場合には、開口部において、幅方向の例えば中央位置に中柱を設置して、複数(例えば2枚)の止水板を配置(連装)する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-184754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような中柱を床面に固定する場合、アンカーボルトが利用される場合が多い。アンカーボルトを利用する場合、床面(例えば、コンクリート等)に打ち込み式アンカーの外筒を嵌挿する固定穴を、振動ドリル等を用いて開ける場合が多い。この場合、ドリルが振動するため、ケガキ線等を用いて固定穴の形成予定位置を定めても、穴開け作業を進めて行くうちに位置ずれが生じたり、ケガキ線が消えて、開けるべき穴位置が分からなくなってしまったりする場合があった。その結果、中柱側に形成されたアンカーボルト挿通穴と床面の打ち込み式アンカーの穴位置がずれて、中柱が固定できなくなってしまったり、中柱の起立姿勢が開口部に対してずれて止水性能が低下してしまったりする懸念があった。また、位置ずれを配慮した穴開け作業が必要になり、作業効率が悪かったり、作業者によって穴位置精度のばらつきが出やすかったりするという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、中柱を固定するための固定穴を容易かつより正確に形成することができる中柱固定穴形成治具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本実施形態に係る中柱固定穴形成治具は、例えば、構造物の内側と外側とを連通する開口部の上記外側で上記開口部の幅方向に沿って配列され、かつ上記開口部の一部を構成する床面から所定の高さまで当該開口部を閉塞可能な隣接する止水板を連結する中柱の脚部材を、上記止水板より上記内側で固定するための固定穴を形成する際に用いる中柱固定穴形成治具であって、上記床面に当接する第一の平面と当該第一の平面の逆側の第二の平面を備える略矩形形状の板状の本体部と、上記本体部に設けられ、上記止水板を上記開口部に固定する場合の止水板取付見付け面に対応する上記開口部の幅方向に沿う基準線と平行にすることが可能な内外方向基準面と、上記内外方向基準面上に設けられ、上記開口部に配置される上記止水板の設置数に基づく上記基準線上の分割点と一致させることが可能な幅方向基準指標と、上記内外方向基準面と上記幅方向基準指標とに基づく位置で、上記本体部の上記第一の平面と上記第二の平面との間を貫通する、上記固定穴の形成予定位置に形成される複数の位置決め穴と、を備える。この構成によれば、例えば、基準線と内外方向基準面を一致させ、かつ、基準線上の分割点と幅方向基準指標を一致させるように本体部を床面に配置するのみで、固定穴の形成予定位置に複数の位置決め穴を位置させることが可能になる。その結果、固定穴の穴開け作業中、固定穴の形成予定位置を作業者に見失い難くさせ、穴開け精度を向上することができる。また、固定穴の形成予定位置を示す例えばケガキ線等が消えてしまった場合でも穴開け作業が継続可能であり、穴開け作業が容易になる。また、穴開け作業の途中で本体部がずれた場合でも、基準線(ケガキ線等)や分割点は固定穴の形成予定位置とは異なる位置に存在するため、穴開け作業により消えてしまう可能性は低い。その結果、基準線と分割点を用いて本体部の再度の位置合わせを容易に行うことができる。
【0007】
上記目的を達成するために、本実施形態に係る中柱固定穴形成治具は、例えば、構造物の内側と外側とを連通する開口部の上記外側で上記開口部の幅方向に沿って配列され、かつ上記開口部の一部を構成する床面から所定の高さまで当該開口部を閉塞可能な隣接する止水板を連結する中柱の脚部材の一部を、上記止水板より上記外側に突出させた状態で固定するための固定穴を形成する際に用いる中柱固定穴形成治具であって、上記床面に当接する第一の平面と当該第一の平面の逆側の第二の平面を備える略矩形形状の板状の本体部と、上記本体部の上記幅方向と直交する方向に延在する一対の第一の側面に設けられ、上記止水板を上記開口部に固定する場合の止水板取付見付け面に対応する上記開口部の幅方向に沿う基準線と一致させる、一対の内外方向基準指標と、上記本体部の上記幅方向と平行な方向に延在する一対の第二の側面に設けられ、上記開口部に配置される上記止水板の設置数に基づく上記基準線上の分割点を通り上記基準線と直交する方向に延びる分割線と一致させる幅方向基準指標と、上記内外方向基準指標と上記幅方向基準指標とに基づく位置で、上記本体部の上記第一の平面と上記第二の平面の間を貫通する、上記固定穴の形成予定位置に形成される複数の位置決め穴と、を備える。この構成によれば、例えば、基準線と一対の内外方向基準指標を一致させ、かつ、分割線と幅方向基準指標を一致させるように本体部を床面に配置するのみで、固定穴の形成予定位置に複数の位置決め穴を位置させることが可能になる。その結果、固定穴の穴開け作業中、固定穴の形成予定位置を作業者に見失い難くさせ、穴開け精度を向上することができる。また、固定穴の形成予定位置を示す例えばケガキ線等が消えてしまった場合でも穴開け作業が継続可能であり、穴開け作業が容易になる。また、穴開け作業の途中で本体部がずれた場合でも、基準線(ケガキ線等)や分割線は固定穴の形成予定位置とは異なる位置に存在するため、穴開け作業により消えてしまう可能性は低い。その結果、基準線と分割線を用いて本体部の再度の位置合わせを容易に行うことができる。
【0008】
また、本実施形態に係る中柱固定穴形成治具の上記位置決め穴は、例えば、上記第二の平面から上記第一の平面とは逆方向に離れるのに連れて拡径するすり鉢状のドリルガイドを備えてもよい。この構成によれば、例えば、穴開け作業中にドリルガイドによってドリルを位置決め穴の中央にガイド可能となり、穴開け精度の向上に寄与することができる。
【0009】
また、本実施形態に係る中柱固定穴形成治具の上記第一の平面は、例えば、上記床面に対する摺動を抑制する抵抗部材を備えてもよい。この構成によれば、例えば、穴開け作業中に例えばドリルの振動等により本体部が床面上を摺動してしまうことが抑制され、穴開け精度の向上に寄与することができる。
【0010】
また、本実施形態に係る中柱固定穴形成治具の上記第二の平面は、例えば、上記本体部を上記床面に押圧するために添えられる押圧体の底面と係合可能な、上記第二の平面から上記第一の平面とは逆方向に突出する固定突起を備えてもよい。この構成によれば、例えば、本体部を作業者が足(靴)等の押圧体で踏みつけて固定する場合、固定突起と押圧体との係合により本体部の固定状態を維持し易くなる。その結果、穴開け作業中に例えばドリルの振動等により本体部が床面上を摺動してしまうことが抑制され、穴開け精度の向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成によれば、中柱を固定するための固定穴を容易かつより正確に形成することができる中柱固定穴形成治具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る中柱固定穴形成治具を用いて形成した固定穴で設置した中柱を用いて固定した止水板を示す例示的かつ模式的な正面図である。
図2図2は、図1に示す中柱(外部突出タイプ)および複数配列して設置した止水板の例示的かつ模式的な図1のA-A矢視図である。
図3図3は、図1に示す中柱および止水板の例示的かつ模式的なB-B矢視図である。
図4図4は、中柱の他の設置態様を示す図であり、中柱(内部突出タイプ)および複数配列して設置した止水板の例示的かつ模式的な図1のA-A矢視に対応する図である。
図5図5は、実施形態に係る中柱固定穴形成治具を示す図であり、図4の内部突出タイプの中柱の固定穴を形成する中柱固定穴形成治具の例示的かつ模式的な平面図である。
図6図6は、実施形態に係る中柱固定穴形成治具を示す図であり、図2の外部突出タイプの中柱の固定穴を形成する中柱固定穴形成治具の例示的かつ模式的な平面図である。
図7図7は、固定穴の穴開け精度を向上するための補助部材を搭載する中柱固定穴形成治具の例示的かつ模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
まず、本実施形態の中柱固定穴形成治具で固定穴を開けて利用可能となる止水装置の構成について説明する。
【0015】
本実施形態の中柱固定穴形成治具で固定穴を開けて利用可能となる止水装置は、少なくとも止水板と中柱とを含んで構成される。止水板は、構造物の内側と外側とを連通する開口部の外側で開口部の幅方向に沿って配置可能な板形状の部品である。止水板は、開口部の開口幅に応じて、複数枚が中柱によって連設された状態で利用され、開口部の幅方向に沿って設置することができる。止水板は、開口部の一部を構成する床面から所定の高さまで当該開口部を閉塞可能であり、開口部の内側に雨水等が浸入することを防止または軽減する。止水板は、開口部の幅によっては1枚で使用することも可能である。この場合、開口部を構成する左右一対の枠部材(建物の場合は例えば「方立」)に止水板の幅方向の両端面を密着させ、かつ止水板の下面を床面に密着させることにより、止水性能を確保する。また、2枚の止水板を幅方向に配列して利用する場合は、開口部の幅方向の例えば中央部に中柱(中間柱と称する場合もある)を床面から立設する。そして、止水板の下面を床面に密着させつつ、止水板の幅方向に一方の端面を開口部の枠部材に密着させ、他方の端面を中柱に密着させる。同様に隣接する止水板も下面を床面に密着させつつ、幅方向の一方の端面を中柱に密着させ、他方の端面を逆側の枠部材に密着させる。その結果、幅の広い開口部に対しても同様な止水性能を得ることができる。なお、開口部の開口幅がさらに広い場合には、中柱を複数本用いることで、幅方向に配列(連結)する止水板を増加して、同様な止水を実現することができる。
【0016】
以下の説明では、中柱(例えば1本)を用いて複数の止水板(例えば2枚)を設置する仕様の止水装置について説明する。
【0017】
図1は、止水板10を構造物(例えば、建物)の開口部12に複数(例えば2枚)配列して設置した例を示す正面図であり、外側(屋外側)から見た図である。すなわち、実施形態に係る中柱固定穴形成治具を用いて形成した固定穴で設置した中柱14A(外部突出タイプ)を用いて固定した止水板10を示す例示的かつ模式的な正面図である。また、図2は、図1に示す中柱14Aおよび複数配列して設置した止水板10の例示的かつ模式的なA-A矢視図である。図3は、図1に示す中柱14Aおよび止水板10の例示的かつ模式的なB-B矢視図である。
【0018】
なお、実施形態において「外側」とは、構造物(例えば、建物)の開口部12を基準に、集中豪雨や河川の氾濫等が原因で開口部12に向かって雨水等が流れ来る側であり、「内側」とは、開口部12を挟んで「外側」の反対側、つまり、開口部12より構造物側を意味する。なお、開口部12が建物に形成されている場合、「外側」を「屋外側」と表現し、「内側」を「屋内側」と表現する場合もある。したがって、各図において、「内外方向」とは、開口部12を挟んで外側(屋外側)と内側(屋内側)とを結ぶ方向であり、「幅方向」とは内外方向と直交し、開口部12を構成する一対の枠部材(建物の場合は、「方立」)が離間して設置される方向であり、「上下方向」とは内外方向および幅方向と直交する方向である。
【0019】
まず、止水板10の構成について説明する。図1図2に示すように、止水板10は、開口部12の幅方向に沿って設置可能な長い板形状の部品である。図1のように複数の止水板10(例えば、2枚)を幅方向に配列して使用する場合は、配列時の幅方向の長さが開口部12の幅方向の長さより長くなるように設定される。また、止水板10の上下方向の高さは、止水板10が設置された状態、すなわち、「起立状態」で利用者が十分に跨ぐことができる高さに設定されていることが好ましく、例えば、40~60cm程度が好ましい。従って、利用者は、止水板10が設置状態であっても、止水板10を跨ぐことで、開口部12の内外を行き来することができる。止水板10は、設置時の外側面10aで受け止めた雨水の水圧に耐えうる強度を有し、かつ、利用者が単独で持ち運びできる程度の重量であることが好ましい。止水板10は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、ステンレスなど、軽量で強度の高い材料で構成されている。また、別の実施例において、止水板10は、外形を規定するフレームを金属で形成し、フレームの内部を遮水性の材料で塞ぐような形態でもよい。遮水性の材料として、例えば、発泡材やシートを用いることができる。この場合、止水板10の軽量化に寄与できる。また、止水板10には、利用者が運搬作業や設置作業を容易にできるように、例えば上面にハンドル10bを備えてもよいし、外側面10aや内側面10c(図2参照)に把持用のハンドルや凹凸等を設けてもよい。
【0020】
図2に示すように、止水板10の内側面10cの両端部には、開口部12の一部を構成する枠部材16の外側面16aまたは中柱14Aが設置された場合に止水板10と対向する第一の本体面14aと接触可能な、上下方向に延びる帯状の第1止水部材18が固定されている。また、図1図3に示すように、止水板10が設置されたときに開口部12の一部を構成する床面20と接触可能な下面10dには、幅方向に延びる帯状の第2止水部材22が固定されている。第1止水部材18および第2止水部材22は、例えば弾性部材であり、弾性変形が大きい軟質ゴムや発泡ゴム、エラストマ、柔軟性樹脂等で形成することができる。第1止水部材18は、止水板10が開口部12に設置された場合に、弾性変形して枠部材16に対して止水性を維持するように機能する。同様に、第2止水部材22は、止水板10が開口部12に設置された場合に、弾性変形して床面20に対して止水性を維持するように機能する。なお、第2止水部材22は、第1止水部材18と共通の矩形断面形状としてもよいが、止水板10の自重および後述する押圧機構による押圧力により変形することを考慮して、外力が作用していない状態で、第1止水部材18よりも厚く形成するようにしてもよい。
【0021】
止水板10は、当該止水板10を開口部12に設置固定するための機構として、図1図2に示すように、押圧機構24、固定機構26、姿勢維持機構28、位置決め機構30を備える。押圧機構24、固定機構26、姿勢維持機構28、位置決め機構30は、止水板10の幅方向の両端領域に一対ずつ設けられている。
【0022】
一対の押圧機構24は、止水板10が設置準備姿勢である傾斜状態から設置姿勢である起立状態となることで、止水板10を床面20に押圧するときの固定位置を定めるための機構である。押圧機構24は、図3に示すように、支持部材24aと、押圧部材24bとを備える。支持部材24aは、幅方向に配置される回転軸を中心に押圧部材24bを回転自在に支持する。支持部材24aは、止水板10の設置時に内側となる内側面10cに取り付けられている。押圧部材24bは、ノブ26aの幅方向に延びる軸部を中心に固定機構26を回転自在に支持する。押圧部材24bは、幅方向から見た場合に例えばL形状に形成されている。押圧部材24bは、L形状の一端側で支持部材24aに回転自在に接続された第1先端部24cと、L形状の他端側で、姿勢維持機構28の引っ掛け部材28aを引っ掛けるフック24dを支持する第2先端部24eと、第1先端部24cと第2先端部24eの間で、ノブ26aの軸部に形成された雄ねじが螺合する雌ねじが軸方向に形成された角部24fとを備える。
【0023】
一対の固定機構26は、開口部12の幅方向に対向する一対の枠部材16の一方の対向面16bと、開口部12に設置された中柱14Aの第一の本体面14a(第1止水部材18が押圧される面)と直交する第二の本体面14bまたは第三の本体面14cに着脱自在に固定される。固定機構26は、止水板10に対する幅方向の位置を変化させることで、枠部材16の幅方向において対向する対向面16bと中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14cにそれぞれ接触する。固定機構26は、枠部材16の対向面16bまたは中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14cに接触する接触部材26bと、当該接触部材26bを幅方向に延びる軸周りで回転可能に支持するノブ26aとを備える。ノブ26aは、雄ねじが形成された軸部と、軸部の一端側に取り付けられた把持部とを備える。軸部の雄ねじは、押圧部材24bに形成された雌ねじに螺合された状態で、軸部の先端に接触部材26bが取り付けられている。ノブ26aの把持部を幅方向の軸周りに例えば正転させると、軸部に螺合された押圧部材24bに対して、軸部の先端に取り付けられた接触部材26bが幅方向に相対移動する。つまり、一対の接触部材26bを幅方向における外側に移動させて枠部材16の対向面16bと中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14cにそれぞれ接触させ、さらにノブ26aをねじ込むことで押圧されて固定機構26自身が固定される。その結果、固定機構26とねじ結合された押圧機構24が固定された止水板10が枠部材16と中柱14Aとの間で固定される。また、ノブ26aの把持部を逆転させることで、一対の接触部材26bを幅方向における内側に移動させて、接触部材26bを枠部材16の対向面16bと中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14cからそれぞれ離間させる。つまり、枠部材16と中柱14Aとの間の空間から止水板10を取り外すことが可能になる。なお、接触部材26bは、図2に示すように、枠部材16または中柱14Aの固定安定性が向上できるように、断面をL形状に形成されて二面で接触可能になっている。つまり、固定機構26は、枠部材16の外側面16aと対向面16bに接触するように構成されている。同様に、固定機構26は、中柱14Aの第一の本体面14aと第二の本体面14bまたは第三の本体面14cに接触するように構成されている。
【0024】
姿勢維持機構28は、押圧機構24の姿勢を維持する。姿勢維持機構28は、引っ掛け部材28aとロック操作部材28bとを備える。引っ掛け部材28aおよびロック操作部材28bは、止水板10の外側面10aにおける上下方向の上部領域に取り付けられている。引っ掛け部材28aは、止水板10が設置姿勢である起立状態になった場合に、押圧機構24の第2先端部24eに固定されたフック24dに引っ掛けられ、ロック操作部材28bをロック状態に移行させる(引き下ろす)ことにより、フック24dに対してロック操作部材28bを引っ張り、止水板10の起立状態を維持する。姿勢維持機構28は、いわゆるパッチン錠(draw latch)やスナップ錠(snap lock)と称される留め金と同一あるいは準じた構造とすることができる。なお、姿勢維持機構28のロック操作部材28bを解放位置に移行させることで、引っ掛け部材28aとフック24dとの係合が解除可能となり、止水板10を設置準備姿勢である傾斜状態に移行させることができる。この場合、止水板10は、押圧機構24によって支持されているので、傾斜状態を維持することができる。なお、止水板10を保管する場合や運搬する場合は、引っ掛け部材28aをフック24dに引っ掛けておくことにより、固定機構26を止水板10に仮止めすることが可能になり、保管時や運搬時の不安定さの解消、接触等による破損の防止ができる。
【0025】
図2図3に示すように位置決め機構30は、止水板10の内側面10cの上下方向の例えば下部領域の両端部に設けられている(図2は一方のみ図示)。位置決め機構30は、本体部30aと軸部30bと台座30cと調整部材30dで構成されている。そして、止水板10が開口部12に配置された場合に、本体部30aが枠部材16の対向面16b、中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14cにそれぞれ突き当たるように構成されている。本体部30aは、止水板10の幅方向における位置決めを可能にするように、幅方向における外側に突出量が調整可能である。本体部30aは、枠部材16の対向面16b(中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14c)と接触可能な、例えば円板状の部品である。本体部30aは、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。軸部30bは、棒状であり、外周面に雄ねじが形成されている。軸部30bの幅方向における両端部のうち、一方側は、例えば、山型鋼等で構成される台座30cの挿入穴に挿入され、他方側の端部に本体部30aが固定されている。軸部30bは、台座30cを挟んで、本体部30aとは反対側に設けられた調整部材30d(例えばナット)により台座30cに対する位置決めおよび固定が可能である。台座30cに対する軸部30bの位置、すなわち、本体部30aの位置を調節することで、本体部30aを止水板10に対して幅方向に移動自在とし、かつ止水板10に対して幅方向における位置を保持する。位置決め機構30は、台座30cに対する本体部30aの幅方向における位置を変更することで、第1止水部材18が、枠部材16の外側面16aまたは中柱14Aの第一の本体面14aと、開口部12の内外方向において確実に向き合うようにすることができる。その結果、止水板10が起立状態で開口部12に設置されたときに、第1止水部材18が外側面16aおよび第一の本体面14aにより確実に弾性変形させられ、止水性を確保することができる。
【0026】
このように構成される止水板10を開口部12に設置する手順を説明する。まず、止水板10を開口部12の外側(屋外側)に仮置きする。つまり、枠部材16の外側面16aと中柱14Aの第一の本体面14aに止水板10の両端部が接触するように立て掛ける。このとき、止水板10の両端部に設けられた位置決め機構30の本体部30aについて、幅方向の位置調整を予め行っておく。その結果、本体部30aが枠部材16の対向面16bおよび中柱14Aの第二の本体面14bまたは第三の本体面14cに接触し、止水板10が起立状態で設置された場合に、第1止水部材18が枠部材16および中柱14Aの適切な位置に当接するように位置決めされる。続いて、姿勢維持機構28のロック操作部材28bを解放位置にした状態で、固定機構26の接触部材26bを枠部材16および中柱14Aに固定する。この場合の止水板10の姿勢は、第2止水部材22が固定された止水板10の下端部を枠部材16の外側面16aの下端部および中柱14Aの第一の本体面14aの下端部に当接させるとともに、止水板10の上端部をロック操作部材28bの解放により緩んだ引っ掛け部材28aの遊び分だけ、外側に倒した傾斜状態(設置準備姿勢)とする。最後に、止水板10の姿勢を傾斜状態から起立状態(設置姿勢)になるように起こしながら、姿勢維持機構28のロック操作部材28bをロック位置に移動させる。その結果、止水板10の幅方向の両端部に設けられた第1止水部材18が枠部材16の外側面16aおよび中柱14Aの第二の本体面14b(第三の本体面14c)に押圧され弾性変形して止水性が確保できる。また、止水板10は、固定機構26によって、上下方向の位置が固定されているので、止水板10は、起立状態に移行する過程で開口部12に向かって斜めに押し下げられる。その結果、止水板10の下面に設けられた第2止水部材22が床面20に押圧され弾性変形して止水性が確保できる。なお、止水板10を開口部12から取り外す場合には、逆の手順を行えばよい。なお、止水板10を開口部12に設置する場合に、外側面10aと内側面10cとの識別が容易にできるように、図1に示すように、例えば外側面10aに識別マークQを設けてもよい。識別マークQはシールでもよいし、印刷されたものでもよい。また、外側面10aの表面の凹凸を用い表現されてもよい。また、識別マークQには、止水板10の表裏案内の他、設置方法や保管方法が示されてもよい。
【0027】
続いて、中柱14Aの詳細について図2図3を用いて説明する。上述したように、図2図3は、外部突出タイプの中柱14Aを示す。中柱14Aは、隣接して配置された止水板10の内側面10cの端部領域と接続可能で、かつ床面20に対して取り付けおよび取り外しが可能な部品である。中柱14Aは、柱本体部32と、脚部材34と、ハンドル38等を備える。なお、本実施形態における、脚部材34のうち開口部12の幅方向と直交する方向に延在する脚部材34aが止水板10の外側面10a側に突出した状態で配置される中柱14Aを「外部突出タイプ」と称する。
【0028】
柱本体部32は、例えば角柱の筒状部品で、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金あるいはステンレスなど、軽量で強度の高い金属材料で構成することができる。中柱14Aの姿勢を維持する姿勢維持部材の一つとして機能する脚部材34は、柱本体部32の一方端側(図3の下端側)に複数設けられている。本実施形態の場合、図2に示すように、脚部材34は、例えば、中柱14Aを床面20に設置した場合に、柱本体部32から開口部12の外側に向かって突出する脚部材34aと、柱本体部32から開口部12の幅方向に向かって突出する脚部材34b,34cが設けられている。なお、3個の脚部材34のうち脚部材34aは中柱14Aを保管する場合に、取り外し可能に構成されてもよい。脚部材34aは、例えば、手回しが可能な締結部材(例えば、ローレットねじ34dや蝶ねじ等)を用いて、柱本体部32に固定することができる。各脚部材34には、例えばアジャスタパッド34eが設けられている。アジャスタパッド34eは、中柱14Aが床面20に設置された場合に止水性を確保するための止水部材40(ゴム、エラストマ、柔軟性樹脂等の弾性部材等)が弾性変形した際の中柱14Aの起立姿勢の安定化ができるように高さ調整を行う。
【0029】
中柱14Aは、例えば脚部材34に設けられた固定用貫通穴34f(図3参照)を介して姿勢維持部材の一つとして機能するアンカーボルト42を、床面20に形成された固定穴20aに嵌挿された例えば打ち込み式アンカー42aにねじ込むことにより固定できる。アンカーボルト42のねじ込み量とアジャスタパッド34eの突出量を調整することにより止水部材40を適正状態に弾性変形させて、中柱14Aにおいても止水板10と同等の止水性が確保できる。なお、中柱14Aは、当該中柱14Aが床面20から取り外された場合に中柱14A(脚部材34)から取り外したアンカーボルト42を保持する保持構造を備える。保持機構の一例として、図3の場合、取り外したアンカーボルト42を螺合させて保持する保持用ねじ穴44aを備える。このように、非使用時のアンカーボルト42を中柱14A(柱本体部32)の一部に固定しておくことで、紛失や破損を容易に防止することができる。なお、保持機構の他の例としては、柱本体部32に保持用のポケット(例えば、蓋付き凹部等)を設け保管するようにしてもよい。また、前述したように、中柱14Aの保管時には、脚部材34aを起立使用時の位置(図3の位置)から取り外す。この場合も脚部材34aが紛失したり破損したりしないように、保持用ねじ穴44bにローレットねじ34dを用いて固定する。
【0030】
ハンドル38は、中柱14Aを設置したり運搬したりする際に用いる。例えば、柱本体部32の上面14dに設けられたハンドル38は、中柱14Aを床面20に起立状態で設置する場合や、運搬する場合に用いる。
【0031】
図4は、実施形態に係る中柱固定穴形成治具を用いて形成した固定穴で設置した内部突出タイプの中柱14Bを用いて固定した止水板10を示す例示的かつ模式的な正面図である。
【0032】
内部突出タイプの中柱14Bは、脚部材34のうち開口部12の内外方向に向く脚部材34aが、中柱14Bの第一の本体面14aの裏面側である第四の本体面14eに固定され、止水板10を配置された場合に室内側に突出する点が中柱14Aと異なる。中柱14Bは、例えば、脚部材34aを固定する固定穴20aを止水板10の外側面10a側、すなわち、開口部12の外側に形成できない場合で、開口部12の内側に形成可能な場合に利用可能である。中柱14Aを利用するか、中柱14Bを利用するかは、固定穴20aが形成可能な位置を、例えば、床面20の構造上の条件や意匠上の条件を考慮して予め決定することができる。なお、中柱14Bは、脚部材34aの固定位置(方向)が中柱14Aと異なること以外は、中柱14Aと同じ構成であり、止水板10を同様に固定可能であり、同様な止水性能を発揮することができる。したがって、中柱14Bの詳細な説明は省略する。また、中柱14Bで固定可能な止水板10の構成、および中柱14Bを用いた止水板10の固定態様等も図2図3で説明した中柱14Aと同じであり、詳細な説明は省略する。
【0033】
次に、上述したような中柱14Aおよび中柱14Bを床面20に固定するための固定穴20aを形成する際に用いる中柱固定穴形成治具について、図5図6を用いて説明する。まず、図5を用いて、形状がより単純な中柱固定穴形成治具100について説明する。中柱固定穴形成治具100は、図4で説明した内部突出タイプの中柱14Bを固定するために床面20に固定穴20aを形成する場合に用いる治具である。
【0034】
中柱固定穴形成治具100は、本体部102と、内外方向基準面104と、幅方向基準指標106と、複数の位置決め穴108と、を含む。
【0035】
本体部102は、床面20に当接する第一の平面102aと当該第一の平面102aの逆側の第二の平面102bを備える例えば略矩形形状の板状の部品(例えば、正方形の部品)で、ステンレスや鉄等で形成される。本体部102の厚みは、穴開け作業中に作業者が足(靴)等の押圧体で踏みつけて固定した場合でも変形しない剛性を備えれば、適宜選択可能である。例えば、5mm程度に設定することができる。
【0036】
内外方向基準面104は、本体部102の側面の一つとして設けられ、止水板10を開口部12に固定する場合の止水板取付見付け面F(外側面16a:図4参照)に対応する開口部12の幅方向に沿う方向の基準線SL(止水板取付見付け面Fで決定される幅方向の線)と平行にすることが可能な面である。例えば、左右の枠部材16の止水板取付見付け面F(外側面16a)を結ぶ幅方向ケガキ線を床面20に書き込む場合、幅方向ケガキ線が基準線SLとなる。したがって、内外方向基準面104を基準線SL(幅方向ケガキ線)に位置合わせすることにより、中柱固定穴形成治具100の内外方向の配置位置を決定することができる。
【0037】
幅方向基準指標106は、内外方向基準面104上の例えば幅方向の中央部に設けられ、開口部12に配置される止水板10の設置数に基づく基準線SL上の分割点DPと一致させることが可能な位置に形成される指標である。例えば、開口部12を2枚の止水板10で閉塞する場合、中柱14Bは、開口部12の幅方向に略中央位置(二分割位置)に配置されることになる。したがって、分割点DPは、開口部12の開口幅に基づいて容易に決定することができる。図5の場合、幅方向基準指標106は、例えば、内外方向基準面104から内側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字形状の、第一の平面102aと第二の平面102bとを跨ぐ溝である。したがって、内外方向基準面104を基準線SL(幅方向ケガキ線)に位置合わせするとともに、分割点DPと幅方向基準指標106とを一致させることにより、中柱14Bの脚部材34を固定するための固定穴20aの形成予定位置に中柱固定穴形成治具100を容易かつ正確に位置決めすることができる。
【0038】
位置決め穴108は、内外方向基準面104と幅方向基準指標106とに基づく位置に形成された、本体部102の第一の平面102aと第二の平面102bとの間を貫通する貫通穴である。位置決め穴108は、形成予定位置に形成される固定穴20aより所定の許容量分だけ大径の穴である。位置決め穴108は、中柱14Bの設計段階に決定される各脚部材34(脚部材34a,34b,34c)の固定用貫通穴34fと同じ位置関係に形成される。図5の場合、位置決め穴108は、例えば3個形成されている。
【0039】
なお、幅方向基準指標106を通り、内外方向基準面104と直交する方向に延びる予備直線106Lと、内外方向基準面104に対向する対向面104aとが交わる位置に幅方向基準指標106と同様な幅方向予備基準指標106aを形成してもよい。例えば、床面20に基準線SLとして幅方向ケガキ線を形成する際に、分割点DPを通り幅方向ケガキ線と直交する内外方向ケガキ線を形成することができる。この場合、内外方向ケガキ線が分割線MLになる。そして、内外方向基準面104を基準線SL(幅方向ケガキ線)に位置合わせするとともに、幅方向基準指標106と幅方向予備基準指標106aとを分割線MLに位置合わせすることにより、中柱14Bの脚部材34を固定するための固定穴20aの形成予定位置に中柱固定穴形成治具100を、より容易かつ正確に位置決めすることができる。
【0040】
なお、幅方向基準指標106や幅方向予備基準指標106aは、図5に示すようなV溝に限らず、分割点DPや基準線SL(内外方向ケガキ線)と位置合わせできればよく、例えば、第二の平面102b上に印刷されたり、表面加工により形成されたり、粘付されたマーク等でもよく、同様な効果を得ることができる。また、第二の平面102bには、内外方向基準面104の位置(基準線SLと一致させる面が存在する位置)や脚部材34aの固定穴20aを形成する方向を示すマークや説明標記を付してもよい。このマークや説明表示を形成しておくことにより、穴開け作業時の中柱固定穴形成治具100の向きの間違えを防止し易くなる。
【0041】
このように、構成される中柱固定穴形成治具100は、上述のように、内外方向基準面104を基準線SLに位置合わせするとともに、分割点DPと幅方向基準指標106とを一致させた状態で、作業者の足(靴)等で押圧領域PPを踏みつけて床面20に固定する。その状態で、位置決め穴108に振動ドリルのドリルを差し込み、穴開け作業を行う。その結果、位置決め穴108によって固定穴20aの形成予定位置を見失い難くさせ、穴開け精度を向上することができる。また、固定穴20aの形成予定位置を示す例えばケガキ線等が消えてしまった場合でも穴開け作業が継続可能であり、穴開け作業が容易になる。また、穴開け作業の途中で本体部102がずれた場合でも、基準線SL(ケガキ線等)や分割点DPは固定穴20aの形成予定位置とは異なる位置に存在するため、穴開け作業により消えてしまう可能性は低い。その結果、基準線SLと分割点DPを用いて本体部102の再度の位置合わせを容易に行うことができる。
【0042】
次に、図6を用いて、中柱固定穴形成治具110について説明する。中柱固定穴形成治具110は、図2図3で説明した外部突出タイプの中柱14Aを固定するために床面20に固定穴20aを形成する場合に用いる治具である。
【0043】
中柱固定穴形成治具110は、本体部112と、一対の第一の側面114に設けられた一対の内外方向基準指標116と、一対の第二の側面118に設けられた一対の幅方向基準指標120と、複数の位置決め穴122と、を含む。
【0044】
本体部112は、中柱固定穴形成治具100の本体部102と同様に床面20に当接する第一の平面112aと当該第一の平面112aの逆側の第二の平面112bを備える例えば略矩形形状の板状の部品(例えば、正方形の部品)で、ステンレスや鉄等で形成される。本体部112の厚みは、穴開け作業中に作業者が足(靴)等の押圧体で踏みつけて固定した場合でも変形しない剛性を備えれば、適宜選択可能である。例えば、5mm程度に設定することができる。
【0045】
内外方向基準指標116(116a,116b)は、本体部112の幅方向(開口部12の幅方向)と直交する方向に延在する一対の第一の側面114に設けられる一対の指標である。そして、内外方向基準指標116は、止水板10を開口部12に固定する場合の止水板取付見付け面F(外側面16a:図2参照)に対応する開口部12の幅方向に沿う基準線SL(止水板取付見付け面Fで決定される幅方向の線)と一致させることが可能な指標である。例えば、左右の枠部材16の止水板取付見付け面F(外側面16a)を結ぶ幅方向ケガキ線を床面20に書き込む場合、幅方向ケガキ線が基準線SLとなる。したがって、内外方向基準指標116(116a,116b)を基準線SL(幅方向ケガキ線)に位置合わせする、言い換えれば、第二の平面112b上で内外方向基準指標116a,116bを結んで形成される内外方向基準線116Lと基準線SL(幅方向ケガキ線)を一致させることにより、中柱固定穴形成治具110の内外方向の配置位置を決定することができる。
【0046】
幅方向基準指標120(120a,120b)は、本体部112の幅方向(開口部12の幅方向)と平行な方向に延在する一対の第二の側面118に設けられる指標である。幅方向基準指標120(120a,120b)は、開口部12に配置される止水板10の設置数に基づく基準線SL上の分割点DPを通り、基準線SLと直交する方向に延びる分割線MLと一致させることが可能な位置、例えば、第二の側面118の幅方向の中央部に形成される。例えば、開口部12を2枚の止水板10で閉塞する場合、中柱14Aは、開口部12の幅方向に略中央位置(二分割位置)に配置されることになる。したがって、分割点DPは、開口部12の開口幅に基づいて容易に決定可能である。例えば、床面20に基準線SLである幅方向ケガキ線を形成するときに、分割点DPを通り幅方向ケガキ線と直交する内外方向ケガキ線を形成することができる。この場合、内外方向ケガキ線が分割線MLになる。したがって、幅方向基準指標120(120a,120b)を分割線ML(内外方向ケガキ線)に位置合わせする、言い換えれば、第二の平面112b上に形成される幅方向基準指標120a,120bを結んで形成される幅方向基準線120Lと分割線MLを一致させることにより、中柱固定穴形成治具110の幅方向の配置位置を決定することができる。
【0047】
図6の場合、内外方向基準指標116および幅方向基準指標120は、例えば、本体部112または第二の側面118から内側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字形状の、第一の平面112aと第二の平面112bとを跨ぐ溝である。したがって、内外方向基準指標116(内外方向基準線116L)を基準線SL(内外方向ケガキ線)に位置合わせするとともに、幅方向基準指標120(幅方向基準線120L)を分割線ML(幅方向ケガキ線)に位置合わせすることにより、中柱14Aの脚部材34を固定するための固定穴20aの形成予定位置に中柱固定穴形成治具110を容易かつ正確に位置決めすることができる。
【0048】
位置決め穴122は、内外方向基準指標116と幅方向基準指標120とに基づく位置に形成された、本体部112の第一の平面112aと第二の平面112bとの間を貫通する貫通穴である。位置決め穴122は、形成予定位置に形成される固定穴20aより所定の許容量分だけ大径の穴である。位置決め穴122は、中柱14Aの設計段階に決定される各脚部材34(脚部材34a,34b,34c)の固定用貫通穴34fと同じ位置関係に形成される。図6の場合、位置決め穴122は、例えば3個形成されている。
【0049】
なお、内外方向基準指標116や幅方向基準指標120もまた、図6に示すようなV溝に限らず、基準線SLや分割線MLと位置合わせできればよく、例えば、第二の平面112b上に印刷されたり、表面加工により形成されたり、粘付されたマーク等でもよく、同様な効果を得ることができる。また、第二の平面112bには、脚部材34aの固定穴20aを形成する方向を示すマークや説明標記を付してもよい。このマークや説明表示を形成しておくことにより、穴開け作業時の中柱固定穴形成治具110の向きの間違えを防止し易くなる。
【0050】
このように、構成される中柱固定穴形成治具110は、上述のように、内外方向基準指標116を基準線SLに位置合わせするとともに、幅方向基準指標120を分割線MLに位置合わせした状態で、作業者の足(靴)等で押圧領域PPを踏みつけて床面20に固定する。その状態で、位置決め穴122に振動ドリルのドリルを差し込み、穴開け作業を行う。その結果、位置決め穴122によって固定穴20aの形成予定位置を見失い難くさせ、穴開け精度を向上することができる。また、固定穴20aの形成予定位置を示す例えばケガキ線等が消えてしまった場合でも穴開け作業が継続可能であり、穴開け作業が容易になる。また、穴開け作業の途中で本体部112がずれた場合でも、基準線SL(ケガキ線等)や分割線MLは固定穴20aの形成予定位置とは異なる位置に存在するため、穴開け作業により消えてしまう可能性は低い。その結果、基準線SLと分割線MLを用いて本体部112の再度の位置合わせを容易に行うことができる。
【0051】
図7は、固定穴20aの穴開け精度を向上するための補助部材を搭載する中柱固定穴形成治具100Aの例示的かつ模式的な斜視図である。中柱固定穴形成治具100Aは、図5に示す中柱固定穴形成治具100の変形例である。
【0052】
中柱固定穴形成治具100Aの本体部102に形成された位置決め穴108には、第二の平面102bから第一の平面102aとは逆方向に離れるのに連れて拡径する、すり鉢状のドリルガイド124が設けられている。ドリルガイド124は、例えば、本体部102と同じ材質で形成された部品で、振動ドリルのドリルが、位置決め穴108内で回転する際に、ドリルの回転中心を位置決め穴108の中心に向けてガイドする。その結果、位置決め穴108の内壁面とドリルとの接触を回避しやすくなる。その結果、本体部102(中柱固定穴形成治具100A)がドリルの回転時の接触により床面20に沿って摺動することを抑制し、穴開け精度の向上に寄与する。
【0053】
なお、図7の場合、ドリルガイド124は、第二の平面102bから突出した内面がすり鉢状のコーン形状とする例を示したが、内面がドリルを中央にガイドするすり鉢状であれば、外径の形状は適宜変更可能である。例えば、第二の平面102bに円柱状や角柱状の突起部を設け、その突起部に内面がすり鉢状で位置決め穴108に連通した穴を設けてもよい。また、本体部102の厚みが十分にある場合には、第二の平面102b側を大径にして、第一の平面102aに至る過程で、位置決め穴108と同径になるようにしてもよい。これらの場合、ドリルガイド124の剛性を向上可能で、ドリルのガイドをより安定的に行うことができる。
【0054】
また、ドリルガイド124の内面は、開口側(第二の平面102bから遠い側)がドリルの径より大きいすり鉢状であればよく、第二の平面102bに近い位置では、位置決め穴108と同径の円筒形状としてもよい。この場合、すり鉢状部分で、ドリルのガイド(ぶれ抑制)が行われ、円筒部分で鉛直方向のガイドを行うことが可能となり、ドリルの回転振れを、より軽減することが可能になり、穴開け精度をより向上させることができる。
【0055】
また、本体部102の第一の平面102aには、他の補助部材として、床面20に対する摺動を抑制する抵抗部材126が設けられている。図7の場合、抵抗部材126は、例えば、本体部102の端部を第一の平面102a側に向かって突出させた線状の突起である。前述したように、中柱固定穴形成治具100Aを用いて固定穴20aの穴開け作業を行う場合、作業者は足(靴)で押圧領域PPを踏みつけて床面20に中柱固定穴形成治具100Aを固定する。この場合、抵抗部材126が床面20に押圧され、振動ドリルの振動やドリルと位置決め穴108の内壁面との接触により本体部102が床面20を摺動する方向の力を受けても、抵抗部材126が床面20に引っかかり、摺動することを抑制できる。その結果、穴開け精度の向上に寄与することができる。
【0056】
なお、抵抗部材126は、床面20に対して抵抗力を発生できればよく、例えば、ピン形状や波形等の突起であってもよいし、ゴム材等摩擦抵抗の大きな部材が第一の平面102aに貼り付けられていてもよく、同様の効果を得ることができる。また、抵抗部材126の形成位置は、第一の平面102aであれば、適宜選択可能であり、同様な効果を得ることができる。抵抗部材126として、ゴム材等摩擦抵抗の大きな部材を設ける場合、第一の平面102aの一部、例えば、押圧領域PPに対応する位置のみでもよいし、第一の平面102aの全面でもよい。
【0057】
また、本体部102の第二の平面102bには、他の補助部材として、本体部102を床面20に押圧するために添えられる作業者の靴等の押圧体の底面と係合可能な固定突起128が設けられている。固定突起128は、第二の平面102bから第一の平面102aとは逆方向に突出した、例えばピン形状の部品であり、中柱固定穴形成治具100Aを用いて固定穴20aの穴開け作業を行う場合、作業者が靴で踏みつける押圧領域PPの一部に形成されている。作業者が靴で固定突起128を踏むことで、中柱固定穴形成治具100Aと靴との係合強度は向上し、振動ドリルの振動やドリルと位置決め穴108の内壁面との接触により本体部102が力を受けても、作業者の靴の踏みつけによる固定位置から中柱固定穴形成治具100Aがずれることが抑制される。つまり、本体部102の固定状態を維持し易くなる。その結果、穴開け作業中に例えばドリルの振動等により床面上を摺動してしまうことが抑制され、穴開け精度の向上に寄与することができる。
【0058】
なお、図7の場合、固定突起128は先端が細くなったテーパ部128aを備える。テーパ部128aを備えることにより、靴で固定突起128を踏みつけた場合の係合強度がより向上し、中柱固定穴形成治具100Aの固定安定性が向上する。固定突起128は、踏みつける靴底(押圧体)と係合し靴底と中柱固定穴形成治具100Aとのずれが抑制できれば、テーパ部128aを備えない円柱や角柱、その他の形状でもよく、同様の効果を得ることができる。また、固定突起128は、押圧領域PPに形成されればよく、形成数は適宜選択可能である。固定突起128の数は多い方が、中柱固定穴形成治具100Aの固定安定性が向上する。
【0059】
上述したドリルガイド124、抵抗部材126、固定突起128は、図6に示す中柱固定穴形成治具110に適用してもよく、同様な効果を得ることができる。また、ドリルガイド124、抵抗部材126、固定突起128は、いずれか一つを設けてもよいし、複数組み合わせて設けてもよい。例えば、床面20にダメージを与えたくない場合には、抵抗部材126を省略してもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、押圧領域PPを本体部102等の右側手前一としているが、押圧領域PPの設定位置は適宜選択可能であり、左足固定タイプの場合、本体部102等の左側に形成される。また、右側、左側の両方に設定してもよく、その位置に補助部材を設けることにより、上述した例を同様の効果を得ることができる。
【0061】
上述した例では、外部突出タイプの中柱14Aの固定穴20a形成用として中柱固定穴形成治具110を示し、内部突出タイプの中柱14Bの固定穴20a形成用として中柱固定穴形成治具100を示した。これば、止水板取付見付け面Fに基づく基準線SLに対する中柱14Aの固定穴20aの位置関係と中柱14Bの固定穴20aの位置関係が異なるためである。別の実施形態では、中柱14Aの固定穴20aと中柱14Bの固定穴20aとが干渉しなければ、中柱固定穴形成治具100と中柱固定穴形成治具110とを融合させ、一つの治具で共用するようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、上述した実施形態では、止水板10を構造物(例えば建物)の出入口としての開口部において止水を行う止水板を設置する場合に利用する中柱を固定する固定穴を形成する際に用いる中柱固定穴形成治具を示した。他の実施形態において、止水板および中柱は、建物の出入口に適用する場合に限らない。例えば、電気設備や造形物等を設置した浸水を避けたい領域を囲む場合に利用する止水板を設置する中柱を固定する固定穴を形成する際にも、本実施形態の中柱固定穴形成治具は、適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0063】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 止水板
12 開口部
14A,14B 中柱
42 アンカーボルト
42a 打ち込み式アンカー
100,100A,110 中柱固定穴形成治具
102,112 本体部
102a,112a 第一の平面
102b,112b 第二の平面
104 内外方向基準面
104a 対向面
106,120 幅方向基準指標
106a 幅方向予備基準指標
108,122 位置決め穴
114 第一の側面
116 内外方向基準指標
118 第二の側面
124 ドリルガイド
126 抵抗部材
128 固定突起
DP 分割点
F 止水板取付見付け面
ML 分割線
SL 基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7