(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084363
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】土壌の処理方法、土壌の分級方法
(51)【国際特許分類】
B09C 1/02 20060101AFI20220531BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20220531BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B09B3/00 304K
G21F9/28 Z
G21F9/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196200
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】河野 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一彦
(72)【発明者】
【氏名】辻本 宏
(72)【発明者】
【氏名】速水 公佑
(72)【発明者】
【氏名】間宮 尚
(72)【発明者】
【氏名】日下 英史
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB05
4D004AB09
4D004CA34
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC12
4D004CC17
4D004DA03
4D004DA11
(57)【要約】
【課題】土壌改質材等が含まれている土壌を対象として、本来の粒径に基づいた湿式分級をするのに適した状態とするための土壌の処理方法を提供する。
【解決手段】有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、を混合して泥水を調製する。ここで、調整土壌と水との質量比は1:30~1:70であり、カルボン酸の混合量は、水の質量を100質量部としたとき0.001質量部~2質量部である。これにより吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤の効果を弱めることができ、土粒子の凝集及び沈降を遅らせることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、
水と、
カルボン酸と、を混合して泥水を調製し、
前記調整土壌と前記水との質量比が1:30~1:70であり、
前記カルボン酸の混合量は、前記水の質量を100質量部としたとき0.001質量部~2質量部である、土壌の処理方法。
【請求項2】
有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、
水と、
カルボン酸と、
炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合して泥水を調製し、
前記調整土壌と前記水との質量比が1:30~1:70であり、
前記カルボン酸の混合量は、前記水の質量を100質量部としたとき0.01質量部~0.5質量部であり、
前記炭酸水素塩又は前記二酸化炭素の混合量は、前記水の質量を100質量部としたとき0.005質量部~10質量部である、土壌の処理方法。
【請求項3】
有機物含有量が70g/kgを超え200g/kg以下の土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、
水と、
カルボン酸と、
炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合して泥水を調製し、
前記調整土壌と前記水との質量比が1:30~1:70であり、
前記カルボン酸の混合量は、前記水の質量を100質量部としたとき0.01質量部~0.5質量部であり、
前記炭酸水素塩又は前記二酸化炭素の混合量は、前記水の質量を100質量部としたとき0.02質量部~0.4質量部である、土壌の処理方法。
【請求項4】
有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、
水と、
カルボン酸と、を混合してpHが1.3~6.0である泥水を調製する、土壌の処理方法。
【請求項5】
有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、
水と、
カルボン酸と、
炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合してpHが3.0~8.0である泥水を調製する、土壌の処理方法。
【請求項6】
有機物含有量が70g/kgを超え200g/kg以下の土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、
水と、
カルボン酸と、
炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合してpHが4.3~6.3である泥水を調製する、土壌の処理方法。
【請求項7】
前記土壌は、放射性セシウムを含有しているものである、請求項1~6のいずれか一項記載の土壌の処理方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項記載の土壌の処理方法で調製した前記泥水を湿式分級する、土壌の分級方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の処理方法、及び、土壌の分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中間貯蔵や廃棄等の処理をすべき土壌に土壌改質材を添加することにより、土壌の取扱いを容易にすることが行われている。例えば特許文献1には、草木根等の異物を含む対象土壌に対して吸水性樹脂及び高分子化合物を含むかさ密度調整材を添加することで、対象土壌のかさ密度が低減され、その後の篩い分けによる異物の分別が良好となることが開示されている。
【0003】
他方、対象土壌に吸水性材料が含まれていると、その土壌を砂分と細粒子分とに湿式分級する際に吸水性材料が水を大量に吸収するため、分級やその後の脱水に負担がかかる。吸水性材料の吸水機能を低下させてその吸水量を少なくさせることでこの負担を軽減する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6401852公報
【特許文献2】特開2019-103989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湿式分級は本来、所望の分級点に応じた条件にて分級するものであるが、分級する土壌に土壌改質材等が含まれていると、水中での土粒子の凝集及び沈降が促進されるので、本来の粒径に基づいた分級の障害となる。そこで本発明は、土壌改質材等が含まれている土壌を対象として、本来の粒径に基づいた湿式分級をするのに適した状態とするための土壌の処理方法を提供することを目的とする。また、その処理方法で調製した泥水を湿式分級する、土壌の分級方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の土壌の処理方法は以下のとおりである。
[1]有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、を混合して泥水を調製し、調整土壌と水との質量比が1:30~1:70であり、カルボン酸の混合量は、水の質量を100質量部としたとき0.001質量部~2質量部である、土壌の処理方法。
【0007】
[2]有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合して泥水を調製し、調整土壌と水との質量比が1:30~1:70であり、カルボン酸の混合量は、水の質量を100質量部としたとき0.01質量部~0.5質量部であり、炭酸水素塩又は二酸化炭素の混合量は、水の質量を100質量部としたとき0.005質量部~10質量部である、土壌の処理方法。
【0008】
[3]有機物含有量が70g/kgを超え200g/kg以下の土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合して泥水を調製し、調整土壌と水との質量比が1:30~1:70であり、カルボン酸の混合量は、水の質量を100質量部としたとき0.01質量部~0.5質量部であり、炭酸水素塩又は二酸化炭素の混合量は、水の質量を100質量部としたとき0.02質量部~0.4質量部である、土壌の処理方法。
【0009】
[4]有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、を混合してpHが1.3~6.0である泥水を調製する、土壌の処理方法。
【0010】
[5]有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合してpHが3.0~8.0である泥水を調製する、土壌の処理方法。
【0011】
[6]有機物含有量が70g/kgを超え200g/kg以下の土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌と、水と、カルボン酸と、炭酸水素塩又は二酸化炭素と、を混合してpHが4.3~6.3である泥水を調製する、土壌の処理方法。
【0012】
土壌に含まれている吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤は、水中において土粒子の凝集及び沈降を促進するので、土粒子が本来の粒径よりも大きくなり、湿式分級に際しては本来の粒径に基づいた分級の障害となる。ここで、以上に示した土壌の処理方法によれば、カルボン酸を用いることで、又は、カルボン酸と炭酸水素塩又は二酸化炭素とを用いることで、吸水性樹脂及び/又は高分子凝集剤の効果を弱めることができ、土粒子の凝集及び沈降を遅らせることができる。これにより、本来の粒径に基づいた分級をするのに十分な時間を確保することができるようになる。
【0013】
本発明者らは、土壌に含まれている有機物含有量の多寡に応じてカルボン酸や炭酸水素塩又は二酸化炭素の混合量を調整し、又は、これらを混合することで泥水のpHを所定の範囲に調整することで上記の効果が確実に奏される条件を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明において、土壌は、放射性セシウムを含有しているものであってもよい。
【0015】
また、本発明は、上記[1]~[6]の処理方法で調製した泥水を湿式分級する、土壌の分級方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、土壌改質材等が含まれている土壌を対象として、本来の粒径に基づいた湿式分級をするのに適した状態とするための土壌の処理方法を提供することができる。また、その処理方法で調製した泥水を湿式分級する、土壌の分級方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実験例R1~R6における沈降容積を示すグラフである。
【
図2】実験例R1~R6における濁度を示すグラフである。
【
図3】実験例R1~R6における粒度分布を示すグラフである。
【
図4】実験例R1,R2,R7~R16における沈降容積を示すグラフである。
【
図5】実験例R1,R2,R7~R16における濁度を示すグラフである。
【
図6】実験例R1,R2,R7~R16における粒度分布を示すグラフである。
【
図7】実験例M1~M6における沈降容積を示すグラフである。
【
図8】実験例M1~M6における濁度を示すグラフである。
【
図9】実験例M1~M6における粒度分布を示すグラフである。
【
図10】実験例M1,M2,M4,M5,M7~M22における沈降容積を示すグラフである。
【
図11】実験例実験例M1,M2,M4,M5,M7~M22における濁度を示すグラフである。
【
図12】実験例実験例M1,M2,M8~M22における粒度分布を示すグラフである。
【
図13】実験例B1~B6における沈降容積を示すグラフである。
【
図14】実験例B1~B6における濁度を示すグラフである。
【
図15】実験例B1~B6における粒度分布を示すグラフである。
【
図16】実験例B1,B2,B7~B16における沈降容積を示すグラフである。
【
図17】実験例B1,B2,B7~B16における濁度を示すグラフである。
【
図18】実験例B1,B2,B7~B16における粒度分布を示すグラフである。
【
図19】実験例R17~R21における沈降容積を示すグラフである。
【
図20】実験例M23~M27における沈降容積を示すグラフである。
【
図21】実験例B17~B20における沈降容積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態の土壌の処理方法は、有機物を含有する土壌に吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合された調整土壌を対象とするものである。ここで「調整土壌」とは、有機物を含有する土壌に対して土壌改質材を混合してなる改質土のことをいう。「土壌改質材」は、吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方を含むものである。土壌改質材は例えば、かさ密度調整材であって、土壌に含まれている水を吸水して土壌を取り扱いやすくする材料である。
【0019】
本実施形態の処理方法は、調整土壌を湿式分級するための前処理として行うものである。調整土壌に添加混合されている土壌改質材は、その目的を達した後は不要のものとなる。例えば土壌改質材がかさ密度調整材である場合は、これを土壌に添加すると、土壌に過剰に含まれていた水が吸水性樹脂に吸水されて土壌のかさ密度が調整され、取扱いが容易となり、土壌に混入していた異物の分別等を容易に行えるようになる。しかしながら、異物の分別等を終えた後、その調整土壌を湿式分級しようとすると、土壌改質材の影響により水中での土粒子の凝集及び沈降が促進されるので、本来の粒径に基づいた分級の障害となる。そこで、湿式分級を行う前にその調整土壌に対して本実施形態の処理方法を実施することで、土壌改質材の効果を打ち消すことができ、本来の粒径に基づいた湿式分級をすることができるようになる。また、たとえ土壌改質材の効果を完全に打ち消すことができない場合でも、土粒子が凝集及び沈降するまでの時間を遅らせることができるので、分級のための時間を確保することができる。なお、ここでいう湿式分級は、20μmを分級点とすることを想定している。
【0020】
本実施形態の処理方法では、調整土壌と混合する成分の量を土壌の有機物含有量に応じて変更することで、所望の効果を確実に得ることができる。本実施形態では、有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌と有機物含有量が70g/kgを超え200g/kg以下の土壌とに分類し、これらに吸水性樹脂及び高分子凝集剤の少なくとも一方が混合されてなる調整土壌(以下、これらを順に「第1種の調整土壌」、「第2種の調整土壌」と呼ぶ。)を対象とする。なお、吸水性樹脂や高分子凝集剤を添加する前の土壌の有機物含有量は、土の有機炭素含有量試験「JGS0231」に従って測定して求めることができる値であって、土壌の乾燥重量を基準とした有機物含有量である。その有機物含有量がいずれの値であるにしても、その土壌の含水率は0%~55%であってもよく、5%~50%であってもよく、10%~45%であってもよく、下限は15%、20%、25%又は30%であってもよく、上限は40%又は35%であってもよい。含水率は土壌の加熱の前後の重量を比較することで求めることができる。
【0021】
吸水性樹脂は、水と接触することで吸水し、膨潤する性質を有する樹脂である。吸水性樹脂としては、デンプン系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、アクリル系等の樹脂が挙げられる。高分子凝集剤は、土壌の土粒子表面に作用して土粒子同士を結合する化合物である。高分子凝集剤としては、有機高分子化合物が好ましく、例えばポリアクリルアミド系化合物等が挙げられる。有機高分子化合物は、アニオン系又はノニオン系のいずれの化合物であってもよい。
【0022】
本実施形態の処理方法は、対象とする調整土壌に対して、水及びカルボン酸を添加して混合する。または、対象とする調整土壌に対して、水と、カルボン酸と、炭酸水素塩又は二酸化炭素とを添加して混合する。本明細書において、カルボン酸、炭酸水素塩及び二酸化炭素を「調整薬剤」と呼ぶ。
【0023】
カルボン酸としては、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。二酸化炭素は、気体、液体(液化炭酸ガス)、固体(ドライアイス)のいずれの状態であってもよい。これらの中でも、安全性、汎用性、価格の観点からクエン酸、シュウ酸、重曹が好ましい。カルボン酸や炭酸水素塩又は二酸化炭素の添加量は、調整土壌に含まれている有機物の量の大小によって異なる。有機物含有量が比較的少ない場合は、カルボン酸の添加混合で泥水のpHを所望の値に調整することができるが、有機物含有量が比較的多い場合は、カルボン酸と併せて炭酸水素塩を添加混合すると泥水のpH調整を所望の値に調整しやすい。炭酸水素塩を添加混合するとカルボン酸単独のときと比べてpHが高くなる。カルボン酸と炭酸水素塩の解離定数の差異の大きさとこれらの添加混合によるpHの変動幅が、調整土壌の土粒子を分散させることができるpH域と重複しているので、カルボン酸と炭酸水素塩の併用が土粒子の凝集や沈降を遅らせるために特に有効である。以下、調整土壌の種類に応じた処理方法について説明する。
【0024】
<第1種の調整土壌>
第1種の調整土壌は、有機物含有量が1g/kg以上70g/kg以下である土壌に対して調整薬剤が混合されたものである。当該有機物含有量は5g/kg以上65g/kg以下であってもよく、5g/kg以上40g/kg以下であってもよく、10g/kg以上30g/kg以下であってもよく、40g/kg以上60g/kg以下であってもよく、50g/kg以上58g/kg以下であってもよい。
【0025】
調整土壌の含水率は0%~55%であってもよく、5%~50%であってもよく、10%~45%であってもよく、下限は15%、20%、25%又は30%であってもよく、上限は40%又は35%であってもよい。調整土壌の含水率は、調整薬剤を混合する前の土壌の含水率と等しいとみなしてもよく、調整薬剤を混合した後に改めて調整土壌の含水率を測定し直してもよい。測定方法は調整薬剤を混合する前の土壌での測定方法と同様である。
【0026】
添加する水の量は、第1種の調整土壌の質量に対して固液比(質量比)で1:30~1:70とする。固液比は1:35~1:65としてもよく、1:40~1:60としてもよい。ここで「第1種の調整土壌の質量」は、第1種の調整土壌に含まれている水(吸水性樹脂や高分子凝集剤に捕捉されている水やこれらに捕捉されきらずに含まれている水を含む)を含む質量である。つまり、土壌に初めから含まれており土壌の含水率として表現される水を土壌の質量の一部とみなしている。
【0027】
調整薬剤としてカルボン酸のみを添加する場合、カルボン酸の添加量は、添加する水の質量を100質量部としたとき0.001質量部~2質量部とする。カルボン酸の添加量は、0.004質量部~1.5質量部としてもよく、0.01質量部~0.5質量部としてもよい。
【0028】
カルボン酸の添加量は、第1種の調整土壌と水とカルボン酸とが全て混合されたときの泥水のpHが1.3~6.0となるように調整することが好ましい。このpHの調整は、pHが1.5~5.0となるようにしてもよい。
【0029】
調整薬剤としてカルボン酸と炭酸水素塩又は二酸化炭素との両方を添加する場合、カルボン酸の添加量は、添加する水の質量を100質量部としたとき0.01質量部~0.5質量部とする。カルボン酸の添加量は、0.03質量部~0.3質量部としてもよく、0.05質量部~0.1質量部としてもよい。炭酸水素塩又は二酸化炭素の混合量は、添加する水の質量を100質量部としたとき0.005質量部~10質量部とする。炭酸水素塩又は二酸化炭素の添加量は、0.03質量部~7質量部としてもよく、0.3質量部~3質量部としてもよい。
【0030】
二酸化炭素を固体又は液体で添加する場合は、密閉容器中で秤量することで添加量を求めることができる。二酸化炭素を気体で添加する場合は、曝気により添加し、その添加量は添加前後の溶液のpHと、添加雰囲気中の二酸化炭素分圧と、酸解離定数とから平衡濃度を計算して求めることができる。
【0031】
調整薬剤の添加量は、第1種の調整土壌と水と調整薬剤とが全て混合されたときの泥水のpHが3.0~8.0となるように調整することが好ましい。
【0032】
第1種の調整土壌と水と調整薬剤との混合は、任意の順で行うことができる。例えば、第1種の調整土壌に対して、水と調整薬剤とをそれぞれ別に添加してもよく、水に調整薬剤を溶解させて調整薬剤の水溶液を調製し、これを第1種の調整土壌に添加してもよい。また、調整薬剤の水溶液に対して第1種の調整土壌を添加してもよい。いずれの方法で混合するにしても、これらを十分に撹拌して完全に混合された泥水を調製する。調整した泥水は3分~5分の間、静置することが好ましい。
【0033】
このようにして調製した泥水は、第1の調整土壌に含まれていた土壌改質材の効果が打ち消されたものとなっている。これは、調整薬剤を混合したことにより、土壌改質材が吸水していた水が吐き出されるとともに、土壌改質材中の官能基が互いに水素結合をして土粒子の凝集が生じにくくなるためと考えられる。
【0034】
<第2種の調整土壌>
第2種の調整土壌は、有機物含有量が70g/kgを超え200g/kg以下である土壌に対して調整薬剤が混合されたものである。当該有機物含有量は80g/kg以上180g/kg以下であってもよく、90g/kg以上160g/kg以下であってもよい。
【0035】
調整土壌の含水率は0%~55%であってもよく、5%~50%であってもよく、10%~45%であってもよく、下限は15%、20%、25%又は30%であってもよく、上限は40%又は35%であってもよい。調整土壌の含水率は、調整薬剤を混合する前の土壌の含水率と等しいとみなしてもよく、調整薬剤を混合した後に改めて調整土壌の含水率を測定し直してもよい。測定方法は調整薬剤を混合する前の土壌での測定方法と同様である。
【0036】
添加する水の量は、第2種の調整土壌の質量に対して固液比で1:30~1:70とする。固液比は1:35~1:65としてもよく、1:40~1:60としてもよい。ここで「第2種の調整土壌の質量」は、第2種の調整土壌に含まれている水(吸水性樹脂や高分子凝集剤に捕捉されている水やこれらに捕捉されきらずに含まれている水を含む)を含む質量である。つまり、土壌に初めから含まれており土壌の含水率として表現される水を土壌の質量の一部とみなしている。
【0037】
調整薬剤としては、カルボン酸と炭酸水素塩又は二酸化炭素との両方を添加する。カルボン酸の添加量は、添加する水の質量を100質量部としたとき0.01質量部~0.5質量部とする。カルボン酸の添加量は、0.02質量部~0.3質量部としてもよく、0.05質量部~0.1質量部としてもよい。炭酸水素塩又は二酸化炭素の混合量は、添加する水の質量を100質量部としたとき0.02質量部~0.4質量部とする。炭酸水素塩又は二酸化炭素の添加量は、0.03質量部~0.3質量部としてもよく、0.05質量部~0.2質量部としてもよい。
【0038】
二酸化炭素を固体又は液体で添加する場合は、密閉容器中で秤量することで添加量を求めることができる。二酸化炭素を気体で添加する場合は、曝気により添加し、その添加量は添加前後の溶液のpHと、添加雰囲気中の二酸化炭素分圧と、酸解離定数とから平衡濃度を計算して求めることができる。
【0039】
調整薬剤の添加量は、第2種の調整土壌と水と調整薬剤とが全て混合されたときの泥水のpHが4.3~6.3となるように調整することが好ましい。
【0040】
第2種の調整土壌と水と調整薬剤との混合は、任意の順で行うことができる。例えば、第2種の調整土壌に対して、水と調整薬剤とをそれぞれ別に添加してもよく、水に調整薬剤を溶解させて調整薬剤の水溶液を調製し、これを第2種の調整土壌に添加してもよい。また、調整薬剤の水溶液に対して第2種の調整土壌を添加してもよい。いずれの方法で混合するにしても、これらを十分に撹拌して完全に混合された泥水を調製する。調整した泥水は3分~5分の間、静置することが好ましい。
【0041】
このようにして調製した泥水は、第2の調整土壌に含まれていた土壌改質材の効果が打ち消されたものとなっている。これは、調整薬剤を混合したことにより、土壌改質材が吸水していた水が吐き出されるとともに、土壌改質材中の官能基が互いに水素結合をして土粒子の凝集が生じにくくなるためと考えられる。
【0042】
<効果の確認方法>
本実施形態の処理方法において、調整土壌に含まれている土壌改質材の効果が打ち消すことができたかどうかの確認は、例えば以下の指標を測定することで行うことができる。
【0043】
・沈降容積…調整薬剤を添加・混合して調製した泥水を静置して、所定時間ごとに上澄み液の容積を測定する。メスシリンダーのように、目盛が付されている透明容器であると容積を測定しやすい。土壌改質材の効果が発揮されている場合は沈降容積の増加が早く、土壌改質材の効果が打ち消されている場合は沈降容積の増加が遅い。
【0044】
・濁度…調整薬剤を添加・混合して調製した泥水を静置して、所定時間ごとに上澄み液を採取する。採取した上澄み液の濁度を濁度計で測定する。濁度の値は、例えばホルマジン標準液を用いた濁度(FTU)として示される。土壌改質材の効果が発揮されている場合は濁度が小さくなるのが早く、土壌改質材の効果が打ち消されている場合は濁度が小さくなるのが遅い。
【0045】
・粒度分布…調整薬剤を添加・混合して調製した泥水を静置して、所定時間後の上澄み液を採取する。採取した上澄み液を対象として、レーザー回折・散乱法で粒度分布を測定する。装置としてはレーザー回折粒度分布測定装置を用いることができる。土壌改質材の効果が発揮されている場合は粒子径が小さい土粒子が多く、土壌改質材の効果が打ち消されている場合は粒子径が大きい土粒子が多い。なお、これらの測定は「JIS Z8825:2013 粒子径解折-レーザー回折・散乱法-」や「JIS A1204:2020 土の粒度試験(粒径加積曲線)」に従うことができる。
【0046】
<湿式分級>
本実施形態の処理方法によって調製した泥水は、その後、湿式分級する。湿式分級の方法は従来知られている方法のいずれでもよい。泥水の調製から時間が経過している場合は、分級を開始する直前に泥水を再混合して均一にすることが好ましい。分級点は50μm~100μmの範囲内(例えば75μm)であってもよく、10μm~40μmの範囲内(例えば20μm)であってもよい。この分級方法では特に、分級点を20μmとした場合、放射性セシウムが吸着している粘土が細粒分のほうへ多く含まれるように分級・移行・濃縮できるので、特別な処理をすべき放射性セシウム含有土の容積を減らすことができるので好ましい。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記では調整土壌に対して調整薬剤を混合する場合を示したが、調整薬剤以外にも必要に応じて他の薬剤を混合してもよい。このとき、混合後の泥水のpHは上記に示したpHの範囲内に収めることが好ましい。
【実施例0048】
以下、実験例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実験例に限定されるものではない。
【0049】
用いた材料と各種の測定方法は以下のとおりである。
<土壌>
・土壌R…有機物含有量が13.0g/kgである土壌。含水率は約50%。
・土壌M…有機物含有量が56.7g/kgである土壌。含水率は約50%。
・土壌B…有機物含有量が97.9g/kgである土壌。含水率は約50%。
【0050】
<土壌改質材>
グリーンタフを90質量%以上、吸水性樹脂を約5質量%、ポリアクリルアミドを1質量%以下で含む材料である。
【0051】
<改質土>
土壌R、土壌M、土壌Bのそれぞれに対して、上記の土壌改質材を25g/kgの量で添加し混合した。このように調整した改質土をそれぞれ改質土R、改質土M、改質土Bと呼ぶ。
【0052】
<pHの測定方法>
泥水のpHは、ガラス電極計のpHメーター(MM-50R東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した。
【0053】
<沈降容積の測定方法>
有栓メスシリンダーに泥水を入れ、振盪して静置してからストップウォッチをスタートさせる。所定時間ごとの沈降長さ(上澄み部分の鉛直方向長さ)をメスシリンダーの目盛を目視して確認した。[メスシリンダーの底面積]×[長さ]で沈降容積を求めた。
【0054】
<濁度の測定方法>
有栓メスシリンダーに泥水を入れ、振盪して静置してからストップウォッチをスタートさせた。所定時間ごとの上澄み液をポリ瓶に採取して測定した。濁度計はポータブル濁度センサー(TD-M500、OPTEX社製)を用いた。
【0055】
<粒度分布の測定方法>
有栓メスシリンダーに泥水を入れ、振盪して静置してからストップウォッチをスタートさせた。10分後の上澄み液を直接採取し、レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3100、島津製作所社製)の試料層に約5gを添加し測定した。ここで、レーザー回折粒度分布測定装置で土粒子の粒度分布を求め、粒径加積曲線の縦軸を相対粒子量(積算)で表した。
【0056】
以下に示した手順で実験を行った。
<調整薬剤としてクエン酸と炭酸水素ナトリウムを用いた実験>
(実験例R1)
水200mlに対して、土壌Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0057】
(実験例R2)
水200mlに対して、改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0058】
(実験例R3)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.004質量部となる量のクエン酸を添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0059】
(実験例R4~R6)
添加するクエン酸の量を表1に示したとおりに変更したこと以外は実験例R3と同様にして、沈降容積、濁度、粒度分布、pHを測定した。
【0060】
実験例R1~R6について、測定した沈降容積、濁度、粒度分布のグラフを
図1~
図3に示した。沈降容積、濁度、粒度分布のいずれにおいても、クエン酸を添加した場合のグラフは、土壌Rのみの場合(R1)のグラフと改質土Rのみの場合(R2)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、クエン酸の添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0061】
(実験例R7)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.05質量部となる量のクエン酸と、0.01質量部となる量の炭酸水素ナトリウムとを添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0062】
(実験例R8~R16)
添加するクエン酸の量と炭酸水素ナトリウムの量を表1に示したとおりに変更したこと以外は実験例R7と同様にして、沈降容積、濁度、pHを測定した。実験例R12~R16については粒度分布も測定した。
【0063】
実験例R7~R16について、測定した沈降容積、濁度、粒度分布のグラフを
図4~
図6に示した。クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合のグラフは、土壌Rのみの場合(R1)のグラフと改質土Rのみの場合(R2)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムの添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0064】
【0065】
(実験例M1)
水200mlに対して、土壌Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0066】
(実験例M2)
水200mlに対して、改質土Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0067】
(実験例M3)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.004質量部となる量のクエン酸を添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0068】
(実験例M4~M6)
添加するクエン酸の量を表2に示したとおりに変更したこと以外は実験例M3と同様にして、沈降容積、濁度、粒度分布、pHを測定した。
【0069】
実験例M1~M6について、測定した沈降容積、濁度、粒度分布のグラフを
図7~
図9に示した。沈降容積、濁度、粒度分布のいずれにおいても、クエン酸を添加した場合のグラフは、土壌Mのみの場合(M1)のグラフと改質土Mのみの場合(M2)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、クエン酸の添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0070】
(実験例M7)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.05質量部となる量のクエン酸と、0.01質量部となる量の炭酸水素ナトリウムとを添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0071】
(実験例M8~M22)
添加するクエン酸の量と炭酸水素ナトリウムの量を表2に示したとおりに変更したこと以外は実験例M7と同様にして、沈降容積、濁度、pHを測定した。実験例M8~M14、M16~M22については粒度分布も測定した。
【0072】
実験例M7~M22について、測定した沈降容積、濁度、粒度分布のグラフを
図10~
図12に示した。クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合のグラフは、土壌Mのみの場合(M1)のグラフと改質土Mのみの場合(M2)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムの添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0073】
【0074】
(実験例B1)
水200mlに対して、土壌Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0075】
(実験例B2)
水200mlに対して、改質土Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0076】
(実験例B3)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.004質量部となる量のクエン酸を添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0077】
(実験例B4~B6)
添加するクエン酸の量を表3に示したとおりに変更したこと以外は実験例B3と同様にして、沈降容積、濁度、粒度分布、pHを測定した。
【0078】
実験例B1~B6について、測定した沈降容積、濁度、粒度分布のグラフを
図13~
図15に示した。沈降容積、濁度、粒度分布のいずれにおいても、クエン酸を添加した場合のグラフは、土壌Bのみの場合(B1)のグラフと改質土Bのみの場合(B2)のグラフとの間に必ずしも位置していないことが分かる。つまり、クエン酸の添加によって土壌改質材の効果が打ち消されているとは言い難いことが分かる。
【0079】
(実験例B7)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.05質量部となる量のクエン酸と、0.01質量部となる量の炭酸水素ナトリウムとを添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積、濁度、粒度分布を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0080】
(実験例B8~B16)
添加するクエン酸の量と炭酸水素ナトリウムの量を表3に示したとおりに変更したこと以外は実験例B7と同様にして、沈降容積、濁度、粒度分布、pHを測定した。
【0081】
実験例B7~B16について、測定した沈降容積、濁度、粒度分布のグラフを
図16~
図18に示した。
図16(沈降容積)において、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合のグラフは、土壌Bのみの場合(B1)のグラフと改質土Bのみの場合(B2)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムの添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
図17(濁度)及び
図18(粒度分布)において、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合のグラフは、ある濃度においては土壌Bのみの場合(B1)のグラフと改質土Bのみの場合(B2)のグラフとの間に位置していることが分かる。また、別の濃度においては土壌Bのみの場合(B1)のグラフと改質土Bのみの場合(B2)のグラフとの間に位置していないことが分かる。つまり、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを特定の濃度範囲で添加することによって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0082】
【0083】
<調整薬剤としてシュウ酸と炭酸水素ナトリウムを用いた実験>
(実験例R17)
水200mlに対して、土壌Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。
【0084】
(実験例R18)
水200mlに対して、改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。
【0085】
(実験例R19)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.5質量部となる量のシュウ酸を添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0086】
(実験例R20)
添加するクエン酸の量を表4に示したとおりに変更したこと以外は実験例R19と同様にして、沈降容積、pHを測定した。
【0087】
(実験例R21)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.05質量部となる量のシュウ酸と、0.01質量部となる量の炭酸水素ナトリウムとを添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Rを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0088】
実験例R17~R21について、測定した沈降容積のグラフを
図19に示した。シュウ酸のみを添加した場合(R19及びR20)、並びに、シュウ酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合(R21)のグラフは、土壌Rのみの場合(R17)のグラフと改質土Rのみの場合(R18)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、シュウ酸のみの添加、又は、シュウ酸及び炭酸水素ナトリウムの添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0089】
【0090】
(実験例M23)
水200mlに対して、土壌Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。
【0091】
(実験例M24)
水200mlに対して、改質土Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。
【0092】
(実験例M25)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.5質量部となる量のシュウ酸を添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0093】
(実験例M26)
添加するクエン酸の量を表4に示したとおりに変更したこと以外は実験例M25と同様にして、沈降容積、pHを測定した。
【0094】
(実験例M27)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.05質量部となる量のシュウ酸と、0.01質量部となる量の炭酸水素ナトリウムとを添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Mを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0095】
実験例M23~M27について、測定した沈降容積のグラフを
図20に示した。シュウ酸のみを添加した場合(M25及びM26)、並びに、シュウ酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合(M27)のグラフは、土壌Mのみの場合(M23)のグラフと改質土Mのみの場合(M24)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、シュウ酸のみの添加、又は、シュウ酸及び炭酸水素ナトリウムの添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。
【0096】
(実験例B17)
水200mlに対して、土壌Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。
【0097】
(実験例B18)
水200mlに対して、改質土Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。
【0098】
(実験例B19)
水200mlに対して、水の質量を100質量部としたときに0.025質量部となる量のシュウ酸と、0.05質量部となる量の炭酸水素ナトリウムとを添加し水溶液とした。この水溶液のpHを測定した。この水溶液に改質土Bを4g混合して泥水を調製した。その泥水を有栓メスシリンダーに入れて振盪し、静置した。所定の経過時間ごとに沈降容積を測定した。また、上澄み液のpHを測定した。
【0099】
(実験例B20)
添加するシュウ酸の量を表4に示したとおりに変更したこと以外は実験例R19と同様にして、沈降容積、pHを測定した。
【0100】
実験例B17~B20について、測定した沈降容積のグラフを
図21に示した。シュウ酸及び炭酸水素ナトリウムを添加した場合(B19及びB20)のグラフは、土壌Bのみの場合(B17)のグラフと改質土Bのみの場合(B18)のグラフとの間に位置していることが分かる。つまり、シュウ酸及び炭酸水素ナトリウムの添加によって土壌改質材の効果が打ち消されていることが分かる。