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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084417
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】商品販売システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20120101AFI20220531BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20220531BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G06Q30/06
G07G1/00 331Z
G07G1/00 311D
B65G1/137 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196288
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣戸 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 晴貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康史郎
【テーマコード(参考)】
3E142
3F522
5L049
【Fターム(参考)】
3E142AA03
3E142GA32
3F522AA04
3F522BB06
3F522BB22
3F522BB35
3F522BB36
3F522CC01
3F522EE15
3F522FF02
3F522FF11
3F522FF37
3F522GG18
3F522GG24
3F522GG33
3F522JJ02
3F522JJ04
3F522KK02
3F522KK04
3F522KK08
3F522LL70
5L049BB46
5L049BB72
(57)【要約】
【課題】顧客を店舗内に入店させることなく、有人での営業時間外に無人営業を行うことを可能とする。
【解決手段】店舗サーバ4とピッキングロボット6とを有し、店舗サーバ4は、顧客端末2からの商品の注文を受け付ける注文受付部42と、ピッキングロボット6に対して、注文に係る商品を陳列棚5からピッキングして受渡しロッカー7に搬送するよう指示するピッキング処理部44とを有し、ピッキングロボット6は、アームと、アームの先端部に設置されたピッキング手段と、アームの先端部付近に設置されたセンサとを有し、センサにより撮影された、商品が陳列されている陳列段の画像から、画像処理により物体を検出し、各物体に対する商品毎に設定された認識モデルに基づく画像認識処理により、商品がいずれの物体であるかを識別して、ピッキング手段を商品のピッキングが可能な位置に移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗の有人営業時間外に、前記店舗内の陳列棚に陳列された商品を顧客に対して販売する商品販売システムであって、
情報処理システムからなる店舗サーバと、
前記店舗内を移動可能なピッキングロボットと、を有し、
前記店舗サーバは、
ネットワークを介して前記顧客の情報処理端末からの商品の注文を受け付ける注文受付部と、
前記ピッキングロボットに対して、前記注文に係る商品を前記陳列棚からピッキングして所定の受渡し場所に搬送するよう指示するピッキング処理部と、を有し、
前記ピッキングロボットは、
先端部を所望の位置に移動させることができるアームと、
前記アームの前記先端部に設置された、商品をピッキングするピッキング手段と、
前記アームの前記先端部付近に設置された、撮像機能を有するセンサと、を有し、
前記センサにより撮影された、前記注文に係る商品が陳列されている前記陳列棚の陳列段の画像から、画像処理により1つ以上の物体を検出し、前記各物体に対する商品毎に設定された認識モデルに基づく画像認識処理により、前記注文に係る商品がいずれの前記物体であるかを識別して、前記ピッキング手段を、前記注文に係る商品のピッキングが可能な位置に移動させる、商品販売システム。
【請求項2】
請求項1に記載の商品販売システムにおいて、
前記ピッキングロボットは、
画像処理により検出した前記各物体に対して、前記陳列段に陳列されている各商品についてそれぞれ設定されている前記認識モデルを順次適用して、前記各物体がいずれの商品であるかをそれぞれ識別する、商品販売システム。
【請求項3】
請求項1に記載の商品販売システムにおいて、
前記ピッキングロボットは、
画像処理により検出した前記各物体に対して、前記注文に係る商品および当該商品に外観が類似する商品についてそれぞれ設定された前記認識モデルを順次適用して、前記注文に係る商品がいずれの前記物体であるかを識別する、商品販売システム。
【請求項4】
請求項1に記載の商品販売システムにおいて、
前記ピッキングロボットは、
前記注文に係る商品について設定された前記認識モデルを、前記注文に係る商品が陳列されている前記陳列棚から所定の距離まで移動したときに前記店舗サーバから取得する、商品販売システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実店舗において商品を販売する技術に関し、特に、無人の実店舗において商品を販売する商品販売システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア(以下「コンビニ」という)をはじめとした小売業では、深夜・早朝の営業や24時間営業など、営業時間を伸ばすことで顧客に対して利便性を提供し、利用機会を増やすことで売上や収益を伸ばしてきた。しかし、少子高齢化が進んで特に若年層の労働人口の減少が進んだことなどから、小売業でも人手不足は深刻となっており、特に深夜・早朝に勤務することができる人手の確保は困難となっている。このように深夜・早朝の時間帯は人手の確保に要するコストは高い一方で、顧客は少なく売上は日中に比べて少ないため、24時間営業や深夜・早朝の営業をやめて営業時間を短縮する動きが広がっている。
【0003】
このような状況に対して、人手を要さずに無人で店舗を運営することで深夜・早朝の営業を行うことも検討されている。例えば、特開2019-021283号公報(特許文献1)には、ユーザの生体認証を行う認証装置と、認証がされた場合にユーザが店舗に入退場できるようにゲートを開くゲート制御装置と、ユーザの生体認証を行うことで商品金額を決済する無人レジ装置とを含む無人店舗システムが記載されている。また、非特許文献1には、コンビニにおける深夜時間帯の無人営業の実証実験について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-021283号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“「深夜時間帯の無人営業」実験開始”、[online]、2019年3月29日、株式会社ローソン、[令和2年10月18日検索]、インターネット<URL:https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1369017_2504.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によれば、専用の販売場所や商品受取場所、無人販売のための自動販売機のような装置などを設けることを要さずに、既存の小売店舗において、日中は通常営業を行いつつ、深夜・早朝の人手確保が困難な時間帯のみ無人営業するということも可能である。しかしながら、無人となった店舗に顧客を入店させる仕組みでは、対策をいくら施したとしても、セキュリティや防犯上のリスクを低減させるには限界がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、顧客を店舗内に入店させることなく、有人での営業時間外に無人営業を行うことを可能とする商品販売システムを提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態である商品販売システムは、店舗の有人営業時間外に、前記店舗内の陳列棚に陳列された商品を顧客に対して販売する商品販売システムであって、情報処理システムからなる店舗サーバと、前記店舗内を移動可能なピッキングロボットと、を有し、前記店舗サーバは、ネットワークを介して前記顧客の情報処理端末からの商品の注文を受け付ける注文受付部と、前記ピッキングロボットに対して、前記注文に係る商品を前記陳列棚からピッキングして所定の受渡し場所に搬送するよう指示するピッキング処理部と、を有する。
【0011】
また、前記ピッキングロボットは、先端部を所望の位置に移動させることができるアームと、前記アームの前記先端部に設置された、商品をピッキングするピッキング手段と、前記アームの前記先端部付近に設置された、撮像機能を有するセンサと、を有し、前記センサにより撮影された、前記注文に係る商品が陳列されている前記陳列棚の陳列段の画像から、画像処理により1つ以上の物体を検出し、前記各物体に対する商品毎に設定された認識モデルに基づく画像認識処理により、前記注文に係る商品がいずれの前記物体であるかを識別して、前記ピッキング手段を、前記注文に係る商品のピッキングが可能な位置に移動させる。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、顧客を店舗内に入店させることなく、有人での営業時間外に無人営業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態である商品販売システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるピッキングロボットの構成例について概要を模式的に示した図である。
図3】(a)、(b)は、本発明の一実施の形態における商品搬送台の構成例について概要を模式的に示した図である。
図4】(a)、(b)は、本発明の一実施の形態におけるロッカーの設置例について概要を模式的に示した図である。
図5】本発明の一実施の形態におけるピッキングロボットの移動ルートの例について概要を模式的に示した図である。
図6】本発明の一実施の形態における陳列棚内での商品の陳列位置を特定する手法の例について概要を示した図である。
図7】(a)、(b)は、本発明の一実施の形態における画像認識の方式の例について概要を示した図である。
図8】本発明の一実施の形態における商品マスタDBのデータ構成の例について概要を示した図である。
図9】本発明の一実施の形態における在庫DBのデータ構成の例について概要を示した図である。
図10】本発明の一実施の形態におけるロッカーDBのデータ構成の例について概要を示した図である。
図11】本発明の一実施の形態における注文DBのデータ構成の例について概要を示した図である。
図12】本発明の一実施の形態における商品販売処理の流れの例について概要を示した処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0016】
<概要>
本発明の一実施の形態である商品販売システムは、コンビニエンスストアや百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、複合商業施設、書店、商店等、顧客に商品を販売する実店舗において、その営業時間外(例えば、深夜等の夜間や早朝、休日、祝日、年末年始等)のオペレーションをロボットにより無人化して顧客への商品の販売を可能にするサービスを実現する。ここで、「営業時間」とは、店員などの店舗側の人間が商品の販売などのオペレーションを行う時間帯を指し、「営業時間外」とは、上記「営業時間」以外の時間帯を指す。本実施の形態によれば、「営業時間外」もロボットにより顧客への商品の販売が可能となることから、「営業」を行っている時間帯ということもできる。したがって、以下では、店員がオペレーションを行う時間帯(従来の「営業時間」に対応)を「有人営業時間」、ロボットによりオペレーションを行う時間帯(従来の「営業時間外」に対応)を「無人営業時間」という場合がある。
【0017】
本実施の形態では、顧客が事前(有人営業時間中であってもよい)に店舗外で情報処理端末を使用してネットワーク経由で商品を注文する。無人営業時間では、当該店舗の出入口等は施錠等されており、顧客は店内に入ることはできないが、店舗内では顧客に代わってロボットが無人の店内を移動し、注文された商品を陳列棚から順次ピッキングして集め、専用の受渡し場所に搬送する。この受渡し場所は、例えば、店舗の内外で商品の受渡しができる小窓やロッカー等からなり、顧客は、電子マネーやクレジットカード等によりキャッシュレス決済を行って(もしくは事前に電子決済を済ませて)、この受渡し場所から商品を受け取る。これにより、店舗では、「営業時間外」であっても、顧客を店内に入れることなく店内の商品を販売することが可能となる。
【0018】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である商品販売システムの構成例について概要を示した図である。商品販売システム1は、例えば、店舗3内を移動しながら、顧客の注文に係る商品を陳列棚5からピッキングして専用の受渡し場所に搬送する1台以上のピッキングロボット6と、店舗3の内外で商品の受渡しを行う専用の場所としての受渡しロッカー7、および店舗サーバ4から構成される。
【0019】
[ピッキングロボット]
図2は、本発明の一実施の形態におけるピッキングロボット6の構成例について概要を模式的に示した図である。ピッキングロボット6は、例えば、無人搬送車(Automatic Guided Vehicle:AGV)61、制御部62、アーム63、吸着パッド64、真空ポンプ65、大気圧計66、深度センサ67、商品搬送台68などの各部を有する。
【0020】
無人搬送車61は、例えば、店舗3において陳列棚5にアクセスするための通路に沿って床面に敷設された磁気テープ31の上を、これに沿って移動・走行するよう構成される。具体的には、例えば、シャープ株式会社の有軌道AGV<XFシリーズ>により構成することができる。磁気テープを用いるものに限られず、いわゆるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて、無人搬送車61が店舗3内における自機位置を自動認識しながら移動・走行するよう構成されていてもよい。
【0021】
制御部62は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等の記録装置、通信装置等を備え、ネットワークを介して後述する店舗サーバ4と通信することで、商品のピッキング等に係る指示を受け取ったり、搬送状況を通知したりする。また、店舗サーバ4からの指示に基づいてピッキングロボット6全体の動作を制御して、商品の陳列棚5からのピッキングと搬送を行う。制御部62は、店舗サーバ4からの指示を受けた後、自身でピッキングロボット6の全ての制御を独自に行ってもよいし、店舗サーバ4とリアルタイムで通信しながら適宜店舗サーバ4からの指示を受けて制御内容を調整するようにしてもよい。
【0022】
アーム63には、先端部に商品のピッキング手段として吸着パッド64が取付けられており、制御部62からの指示に基づいてアーム63の各可動部を屈曲・伸展することにより、吸着パッド64を所望の位置に移動させることができる。吸着パッド64は、ホースを介して大気圧計66および真空ポンプ65に接続され、制御部62からの指示に基づいて真空ポンプ65を制御することで、吸着パッド64の真空吸着機能が実現される(吸着の成否は大気圧計66により把握することができる)。具体的には、アーム63は、例えば、ユニバーサルロボット社のUR5により、また、吸着パッド64は、例えば、シュマルツ株式会社のベル型真空パッドにより、また、真空ポンプ65は、例えば、日東工器株式会社のLinicon LV660により構成することができる。
【0023】
本実施の形態では、吸着パッド64を2つ備える構成としているが、吸着パッド64の数はこれに限られない。また、本実施の形態では、陳列棚5から所望の商品をピッキングする手段として吸着パッド64と真空ポンプ65による真空吸着機能を用いているが、ピッキング手段はこれに限られない。例えば、マジックハンド型や人間の手を模したような機構による機械的な把持手段であってもよいし、フォーク型等の形状の機構によりすくい上げるような手段であってもよい。
【0024】
アーム63の先端部付近には深度センサ67も取付けられている。深度センサ67は、深度検出機能および撮像機能を有するセンサであり、具体的には、例えば、Intel社のRealSense(登録商標) Depth Cameraにより構成することができる。ピッキングロボット6の制御部62では、後述するように、陳列棚5からピッキング対象の商品の位置を特定する際に、深度センサ67によって撮影された陳列棚5の画像からAI(人工知能)による画像認識によって特定する。また、深度センサ67から得られる深度情報に基づいて対象の商品までの深度(奥行き)を把握し、これらの情報に基づいて、アーム63と吸着パッド64を制御して当該商品を吸着してピッキングし、これを商品搬送台68に載せる。
【0025】
商品搬送台68は、ピッキングロボット6が陳列棚5からピッキングした商品を受渡しロッカー7に搬送するまで保持しておく「買い物かご」の役割を持つ部材である。本実施の形態では、商品搬送台68において商品が置かれる載置面をベルトコンベアによって構成することで、保持している商品の受渡しロッカー7への搬送を容易かつスムーズに行うことができる。
【0026】
図3は、本発明の一実施の形態における商品搬送台68の構成例について概要を模式的に示した図である。図3(a)は、ピッキングロボット6のうち主に商品搬送台68の部分を抜粋してその構成例について概要を示した図である。本実施の形態では、商品搬送台68の載置面にベルトコンベア681を用いる。具体的には、例えば、マルヤス機械株式会社のミニミニエックス2型(MMX2)により構成することができる。ピッキングロボット6は、アーム63を制御して、吸着パッド64により陳列棚5から吸着してピッキングした商品を、図示するようにベルトコンベア681の上面(載置面)に置く。
【0027】
ベルトコンベア681の載置面の外周には、保持した商品が落下等しないよう、保護壁682を設けている。なお、外周の4辺のうち、ベルトコンベア681の下流側に相当する1辺(図3(a)の例では左側の辺)には、保護壁682ではなく商品搬送口としての搬送ゲート683を備える。搬送ゲート683は、通常時は、保持した商品が落下等しないよう、図示するように閉じた状態で固定されている。
【0028】
図3(b)は、商品搬送台68から受渡しロッカー7の格納スペース71に商品を搬送するときの構成例について概要を示した図である。図3(b)も図3(a)と同様に、ピッキングロボット6のうち商品搬送台68の部分を抜粋して示している。ピッキングロボット6は、商品搬送台68が、受渡しロッカー7における所望の格納スペース71に商品を搬送可能な位置に配置されるよう、自身が移動するとともに、必要に応じて商品搬送台68の高さを図示しないサーボ機構等により調整する。その後、ベルトコンベア681を回転させて、上面側に保持されている商品を下流側(図3(b)の例では左側)に移動させる。その際、搬送ゲート683を図示するように開放することで、商品が商品搬送台68の外に出ることができるようにする。
【0029】
なお、図3(b)の例では、搬送ゲート683が観音開きのように開放される構成としているが、これに限られず、例えば、スライド扉のように開放される構成であってもよいし、搬送ゲート683が全体に上方向や下方向に移動することで開放する構成であってもよい。また、商品搬送台68の外側に倒れる形で開放する構成であってもよい。
【0030】
一方、受渡しロッカー7の格納スペース71内の底面部分にも、例えば、図示するように商品受領用のベルトコンベア72を設置し、ピッキングロボット6のベルトコンベア681と連動して回転させることで、商品搬送台68から外に出てきた商品を受け取るとともに、これを格納スペース71の奥側に移動・搬送するようにしてもよい。この場合、ベルトコンベア72は、例えば、図示しないセンサーにより、商品を受け取る(もしくは受け取った)ことを検知して回転を開始してもよいし、ピッキングロボット6からの指示を受けて回転を開始するように制御してもよい。格納スペース71がベルトコンベア72を備えずに、ピッキングロボット6の方が商品搬送台68を動かして格納スペース71内に挿入し、奥側から順次商品を置きながら出てくるような構成とすることも可能である。
【0031】
商品搬送台68のベルトコンベア681上には、各種の商品が複数載せられている場合があり、商品によっては受渡しロッカー7の格納スペース71に搬送する際に他の商品と干渉して、自身もしくは他の商品を毀損してしまう可能性がある。このため、例えば、ベルトコンベア681に重量センサを設置して、保持している商品の総重量を把握し、所定の重量以上の商品を保持しないようにしてもよい(この場合、例えば、注文に係る全ての商品を一回のピッキングで搬送するのではなく複数回に分けて搬送する)。
【0032】
また、ベルトコンベア681の上面に保持された商品の重量分布や上面の傾きを検知して、アーム63を制御して商品搬送台68に商品を置く際に、全体としてバランスが取れるよう置く位置を調整し、重い商品が動いたり転がったりして他の商品に干渉するのを回避するようにしてもよい。もしくは、商品搬送台68に商品を置く際に、重い商品を優先的に下流側に置くことで、格納スペース71への搬送時に軽い商品よりも先に搬送されるようにして、軽い商品に干渉しないようにしてもよい。また、商品の形状に応じて、商品搬送台68に置く際の姿勢をできるだけ安定する姿勢となるように調整してもよい。
【0033】
[受渡しロッカー]
本実施の形態では、顧客との商品の受渡し場所としての受渡しロッカー7を、例えば、店舗3において店外から顧客がアクセスできる位置の壁面や窓面(例えば、「1階の駐車場に面した壁面」など)に設ける。図4は、本発明の一実施の形態における受渡しロッカー7の設置例について概要を模式的に示した図である。図4の例では、3×3=9個の受渡しロッカー7が設置されている例を示している。
【0034】
図4(a)は、店舗3の壁面もしくは窓面に設置された受渡しロッカー7を店内側から見た状態を模式的に示した図である。受渡しロッカー7の点線で示された部分は、店舗3の外部に位置していることを示している。図4(a)の例では、各受渡しロッカー7の店内側は、扉等がなく開放された状態となっていて、各格納スペース71に対して、店内側から上述の図3(b)に示したような手法により商品を自由に置くことができる構成としているが、このような構成に限られない。各受渡しロッカー7が店内側に扉等を備え、通常時は扉等が閉められていて格納スペース71にアクセスできない状態となっているが、ピッキングロボット6による商品搬送時に扉等を開放して格納スペース71にアクセスできるようにする構成であってもよい。
【0035】
図4(b)は、受渡しロッカー7を店外側から見た状態を模式的に示した図である。受渡しロッカー7の点線で示された部分は、店舗3の内部に位置していることを示している。各受渡しロッカー7の店外側には、それぞれ開閉可能な扉72が設けられている。この扉72は、公知の電子ロッカーなどで用いられている、電子的に施錠・解錠することが可能な扉により構成することができる。
【0036】
例えば、受渡しロッカー7の店外側には、図示しないICカードリーダー等の近距離無線通信装置を備え、顧客が自身に関連付けられたスマートフォン等の近距離無線通信機能を有する携帯端末をかざして通信することで、扉72を解錠して開けられるように構成することができる。このとき、顧客がクレジットカード等による事前決済を済ませていない場合は、この場で電子マネーによる決済を行ったうえで解錠するようにしてもよい。顧客が自身の注文に割り当てられた受渡しロッカー7の扉72を開けると、既に注文に係る商品が店内のピッキングロボット6により格納スペース71に搬送されており、顧客は、店内に入ることなく、店外から当該受渡しロッカー7を介して商品を受け取ることができる。
【0037】
[店舗サーバ]
図1の例における店舗サーバ4は、顧客からの注文を受け付けて、注文に係る商品の陳列棚5からのピッキングと受渡しロッカー7への搬送を指示するとともに、顧客による決済の処理を行う機能を有する情報処理システムである。例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により実装され、図示しないインターネット等のネットワークを介して、顧客が注文処理を行うPC(Personal Computer)やスマートフォン等の情報処理端末である顧客端末2が接続する構成を有する。顧客端末2は、顧客自身が保有する情報処理端末であってもよいし、店舗3の外部に設置された専用の注文装置や注文端末であってもよい。
【0038】
店舗サーバ4は、例えば、図示しないCPUにより、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)、Webサーバ等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、無人営業時間での商品販売に係る後述する各種機能を実現する。この店舗サーバ4は、例えば、ソフトウェアによって実装された販売可能商品提示部41、注文受付部42、ピッキング準備処理部43、ピッキング処理部44、および決済処理部45などの各部を有する。また、データベースやファイル等により構成された商品マスタデータベース(DB)46、在庫DB47、ロッカーDB48、および注文DB49などの各データストアを有する。
【0039】
販売可能商品提示部41は、顧客端末2を介した顧客からの要求を受けて、店舗3の陳列棚5に陳列されている商品のうち、現在もしくは直近で到来する無人営業時間において販売が可能な商品の情報を抽出し、顧客端末2に提示する機能を有する。例えば、図示しないWebサーバプログラム等を介して、顧客端末2上の図示しないWebブラウザや専用のアプリケーション上に販売可能な商品のリストとして表示する。顧客が指定した条件に基づいて商品を絞り込んで表示するようにしてもよい。
【0040】
販売可能な商品の抽出に際しては、後述する商品マスタDB46や在庫DB47の情報に基づいて、例えば、陳列数量がゼロ、すなわち陳列棚5に現に陳列されていない商品(バックヤードや倉庫等には在庫があるという場合であっても、無人で在庫から陳列棚5に商品を補充する仕組みを有さない限り、無人営業時間中は販売できないため同様)や、商品の性質上、そもそも無人販売ができない、もしくは適さない商品は、販売可能な商品から除外する。
【0041】
商品の性質上、そもそも無人販売ができない、もしくは適さない商品であるか否かについては、各商品自体の属性情報として、商品マスタDB46に予め設定しておくことができる。例えば、搬送時に液体がこぼれたり商品が破損したりする危険性がある商品や、小さすぎたり、商品の形状が一定ではないためにピッキングロボット6がピッキングできない(もしくは困難である)等、商品自体の性質や、ピッキングロボット6の仕様や性能との関係で、そもそも無人販売ができない、もしくは適さないという場合が考えられる。
【0042】
さらに、例えば、重量が所定の上限値を上回る商品を無人販売可能な商品から除外したり、セキュリティや防犯の観点から、価格が所定の上限値より高い商品を販売可能な商品から除外したりしてもよい。また、商品自体の属性としては無人販売できないというわけではないが、在庫DB47の情報に基づいて、例えば、当該商品が陳列されている陳列棚5の場所や陳列棚5内での陳列位置、陳列棚5の種類(冷蔵庫や冷凍庫、保温ケース等)などによって、ピッキングロボット6がアクセスできないために事実上ピッキングが不可能・困難となっている商品を販売可能な商品から除外してもよい。
【0043】
注文受付部42は、顧客端末2に表示された販売可能商品の中から顧客が購入を指示した商品とその数量および決済に関する情報を含む注文情報を顧客端末2から受け付けて、後述する注文DB49に記録する機能を有する。
【0044】
ピッキング準備処理部43は、注文受付部42が受け付けた注文に対して、ピッキングロボット6が実際にピッキングをするための準備処理を行う機能を有する。準備処理には、例えば、顧客との商品の受渡しに使用する受渡しロッカー7を割り当てる処理が含まれる。各受渡しロッカー7の使用状況は、後述するロッカーDB48に記録される。また、準備処理には、注文に係る各商品に関する情報を商品マスタDB46や在庫DB47から取得し、ピッキングロボット6が各商品を陳列棚5から順次ピッキングして受渡しロッカー7に搬送するまでの移動ルートを決定する処理も含まれる。
【0045】
図5は、本発明の一実施の形態におけるピッキングロボット6の移動ルートの例について概要を模式的に示した図である。図5の例では、店舗3の内部の平面図を示しており、複数の陳列棚5(「A1」~「A4」、「B1」~「B7」、「C1」~「C7」、「D1」~「D3」、「E1」~「E2」)、および複数の受渡しロッカー7が設置されていることを示している。また、ピッキングロボット6は所定の待機場所に待機していることを示している。図示しない店舗サーバ4のピッキング準備処理部43は、注文に係る商品について、在庫DB47を参照して、どの陳列棚5に陳列されているかを把握し、各商品の陳列棚5の位置に基づいて、各商品をピッキングして受渡しロッカー7に搬送し、待機場所に帰還するまでの移動ルートを探索・決定する。
【0046】
なお、移動ルートは最短ルートであるのが望ましいが、必ずしも最短ルートである必要はなく、例えば、複数の商品をピッキングする場合に、商品の種類に応じてピッキングする順序を調整し、これに応じて移動ルートを決定するようにしてもよい。また、複数の注文(もしくは複数の顧客)に対して1つの移動ルートを決定するようにしてもよい。この場合、各注文に対して異なる受渡しロッカー7が割り当てられるが、同一顧客の複数の注文については1つの受渡しロッカー7にまとめて搬送するようにしてもよい。
【0047】
図5では、注文に係る商品が、「A4」と「C2」の陳列棚5に陳列されている商品であった場合の移動ルートの例を曲線矢印にて示している。この移動ルートによればピッキングロボット6は、まず、「a」の矢印のルートを通って「C2」の陳列棚5まで移動し、ここから対象の商品をピッキングして商品搬送台68に載せる。その後さらに、「b」の矢印のルートを通って「A4」の陳列棚5まで移動し、ここから対象の商品をピッキングして商品搬送台68に載せる。その後、「c」の矢印のルートを通って当該顧客に割り当てられた受渡しロッカー7(図中の網掛け部分)まで移動し、商品搬送台68に載せられた商品をベルトコンベア681によって格納スペース71内に搬送する。その後、「d」の矢印のルートを通って所定の待機場所に帰還する。
【0048】
図1に戻り、ピッキング処理部44は、ピッキングロボット6に対して、ピッキング準備処理部43により決定された移動ルートに従って移動し、陳列棚5に陳列された商品を順次ピッキングして、割り当てられた受渡しロッカー7に搬送し、待機場所まで帰還する一連の処理に係る指示・指令を行うとともに、ピッキングの状況を管理する機能を有する。上述したように、一連のピッキング処理に係る必要情報(ピッキング対象の商品と陳列棚5の情報および陳列棚5における陳列位置の情報、割り当てられた受渡しロッカー7、移動ルート等)を最初に一括してピッキングロボット6に送信し、その後はピッキングロボット6が自律してピッキング処理を行うようにしてもよいし、リアルタイムもしくはこれに準ずるような状態で随時ピッキングロボット6と通信しながら逐次指示を行うようにしてもよい。
【0049】
ピッキングロボット6が陳列棚5から所望の商品をピッキングする(本実施の形態では吸着パッド64により吸着する)にあたり、陳列棚5のどこに当該商品が陳列されているかを特定する必要がある。一般的に、店舗3において商品を陳列棚5のどこに陳列するかについては、どの段の棚(以下「陳列段」という。例えば、「上段」、「中段」、「下段」等)に陳列するかまではある程度予め設定して固定化することができるが、その陳列段の中でどの位置(例えば、「左から○○番目」等)に陳列するかまでは予め設定できない、もしくはできたとしても流動的でその後位置が変わってしまうことも多いと考えられる。
【0050】
そこで本実施の形態では、各商品がどの陳列棚5のどの陳列段に陳列されているかまでの陳列位置情報は、データベース(例えば、後述する商品マスタDB46や在庫DB47等)に保持する一方で、陳列段の中で実際にどの位置に陳列されているかは、ピッキングロボット6の深度センサ67により得られる情報に基づいてリアルタイムで把握する。すなわち、深度センサ67により対象の陳列段付近を撮影し、その撮像データに基づくAIによる画像認識処理によって対象の商品を識別・特定し、さらに深度情報を用いることでその位置(上下左右および奥行き)や姿勢を把握する。これにより、商品の陳列位置がずれたり、商品が傾いたり転倒したりしたような場合であっても対象の商品を識別・特定し、その陳列位置を把握することが可能となる。
【0051】
図6は、本発明の一実施の形態における陳列棚5内での商品の陳列位置を特定する手法の例について概要を示した図である。図6では、ピッキングの対象の商品が「商品C」であり、陳列棚5における陳列段が上段であるという場合の例を示している。陳列棚5の付近まで移動してきたピッキングロボット6は、深度センサ67により陳列棚5の上段付近を撮影する。そして、撮影画像に対して公知の輪郭抽出技術等を用いて物体検出を行い(図6の例では点線四角で囲まれた4つの物体を検出)、検出された各物体についてAIによる画像認識を行い、「商品C」に合致する物体を特定する。
【0052】
このときAIが用いる学習モデルである認識モデル441は、予め、店舗3における販売対象の各商品について撮影した画像データ等に基づいて学習して生成し、店舗サーバ4に保持しておく。なお、AIによる画像認識処理は、店舗サーバ4のピッキング処理部44で行ってもよいし、ピッキングロボット6の制御部62が、店舗サーバ4から認識モデル441を取得して自身で行ってもよい。また、使用するAIエンジンやライブラリ等は特に限定されず、一般に利用可能な公知のものを適宜使用することができる。
【0053】
[画像認識による商品の把握]
図7は、本発明の一実施の形態における画像認識の方式の例について概要を示した図である。図7(a)は、例えば、陳列棚5の1つの棚(1段)毎に、当該棚に陳列されている全ての商品を対象として(図中の例では「商品A」、「商品B」、「商品C」、「商品D」、…)、これらの商品を識別することができる1つの認識モデル441を作成して適用する方式を示している。この場合、陳列段の画像から輪郭抽出等の画像処理により識別された各物体に対して、この認識モデル441を順次適用して、各物体がどの商品であるかを識別する。
【0054】
このような画像認識の手法は一般的ではあるが、例えば、コンビニなどのチェーンでは店舗3毎に取り扱っている商品が類似してはいるものの各陳列棚5や陳列段に陳列する商品のラインナップや陳列位置が異なるというような場合も多く、結局店舗3毎に認識モデル441を個別に作成しておく必要が生じる。この場合、店舗3の数が少ない場合や、陳列棚5に陳列する商品の位置や種類等を頻繁に変更しないような場合には問題とならないが、店舗3の数が多くなるに従って対応の負担が大きくなり、非現実的なものとなってくる。
【0055】
そこで本実施の形態では、図7(b)に示すように、1つの商品毎にこれを識別するための認識モデル441をそれぞれ作成しておく方式をとる。この場合、陳列段の画像から輪郭抽出等の画像処理により識別された各物体に対して、商品毎に作成された識別モデル441を適用して、どの物体が対象商品であるかを識別する。この方式では、識別モデル441が商品毎に作成されるため、例えば、コンビニチェーンの本部で予め一括して作成して、商品マスタDB46に保持する商品情報の一つとして各店舗3に対して提供しておくことができる。これにより、各店舗3において、各商品がどの陳列棚5のどの陳列段に陳列されているかに関わらず、商品毎に作成された認識モデル441をそのまま利用することができる。これにより、認識モデル441の作成・準備に係る負担を大きく低減できるとともに、画像認識による商品の識別精度を向上させることもできる。
【0056】
陳列段の画像から識別された各物体の中から、ピッキング対象の商品を識別するためには、例えば、対象の商品についての認識モデル441を取得して、これを各物体に順次適用してAIにより判別し、スコアの最も高い物体を対象商品であるとすることができる。本実施の形態では、より精度を高めるために、対象の陳列段に陳列されている各商品(ピッキング対象の商品に加えて、当該陳列段に陳列されている他の商品も含む)の認識モデル441をそれぞれ取得して、物体毎に各商品の認識モデル441を順次適用してAIにより判別することで、スコアの最も高い商品が当該物体に係る商品であるとする。なお、対象の陳列段に陳列されている他の商品の情報は、例えば、在庫DB47から把握することができる。
【0057】
一般的に陳列段には同種の類似する商品や同じ商品だがタイプやグレード等が異なる商品など、大きさや形状、模様、色などの外観が類似する商品が並べて陳列されることも多い。そこで、より商品の識別精度を向上させるため、対象の陳列段に陳列されている各商品に加えて、これらに外観が類似する商品に係る認識モデル441を併せて取得して適用することで、より精度を向上させるようにしてもよい。なお、各商品について外観が類似する他の商品の情報は、例えば、商品マスタDB46に予め設定・登録しておくことができる。
【0058】
輪郭抽出等の画像処理により識別された各物体からピッキング対象の商品を識別する処理を行うためには、上述したように、対象の陳列段に陳列されている他の商品も含む各商品(対象の商品に外観が類似する商品を含んでいてもよい)の認識モデル441を取得する必要がある。これらの認識モデル441について、複数の商品をピッキングする場合も含めて、画像認識処理をピッキングロボット6が行うか店舗サーバ4のピッキング処理部44が行うかに関わらず、本実施の形態では、ピッキングロボット6が移動して対象の陳列棚5から所定の距離まで近づいてきた時点で、当該陳列棚5からピッキングする商品に関連する商品(同じ陳列段に陳列されている他の商品や、外観が類似する商品等)の認識モデル441を特定して随時取得するものとするが、これに限られない。一連のピッキング処理の最初の段階で、後に必要となる全ての認識モデル441を予め特定して取得しておいてもよい。
【0059】
なお、例えば、画像認識処理をピッキングロボット6において行う場合、一度店舗サーバ4から取得した認識モデル441については、対象の商品や陳列棚5と関連付けて履歴として保持しておくようにしてもよい。これにより、一度ピッキングした商品について他の注文で再度ピッキングすることになった場合、既に一度取得したことがある認識モデル441を改めて通信により店舗サーバ4から取得する負荷を回避することができる。無人営業時間においては、陳列棚5に陳列された商品の配置が変わることは基本的にないため、各陳列棚5に陳列されている商品の認識モデル441は、当該陳列棚5について再利用することが可能である。
【0060】
<データ構成>
図8は、本発明の一実施の形態における商品マスタDB46のデータ構成の例について概要を示した図である。商品マスタDB46は、店舗3において販売される各商品についてのマスタ情報を保持するテーブルであり、例えば、商品ID、商品名、種別、単価、重量、無人販売可否、認識モデル、および類似商品IDなどの各項目を有する。
【0061】
商品IDの項目は、各商品を一意に識別するIDや番号などの識別情報を保持する。商品名、種別および単価の各項目は、それぞれ、対象の商品の名称、商品の種別(例えば「カップ麺」や「洗剤」等)を識別する名称やコード値の情報、および対象の商品の販売単価の情報を保持する。重量の項目は、対象の商品の販売単位あたりの重量の情報を保持する。無人販売可否の項目は、対象の商品を本実施の形態による無人販売の対象とするか否かのフラグ等の情報を保持する。これにより、対象の商品を強制的に無人販売の対象外に設定することができる。
【0062】
認識モデルの項目は、対象の商品をAIによる画像認識により識別するための認識モデル441の情報を保持する。認識モデル441自体を保持していてもよいし、ファイルや他の記録媒体上に管理されている認識モデル441へのパスやリンクなどの指示情報を保持するようにしてもよい。類似商品IDの項目は、対象の商品と外観が類似する他の商品がある場合(複数あってもよい)に、これらの商品の商品IDを保持する。
【0063】
図9は、本発明の一実施の形態における在庫DB47のデータ構成の例について概要を示した図である。在庫DB47は、店舗3において販売される各商品についての在庫や陳列の状況に係る情報を保持するテーブルであり、例えば、商品ID、在庫数量、陳列数量、陳列棚ID、および陳列段などの各項目を有する。
【0064】
商品IDの項目は、各商品を一意に識別するIDなどの識別情報であり、上述の商品マスタDB46の商品IDの項目と同内容である。在庫数量の項目は、対象の商品の店舗3における当該時点での在庫数量の情報を保持する。陳列数量の項目は、対象の商品の店舗3における当該時点での陳列棚5での陳列数量の情報を保持する。陳列数量がゼロの場合は、有人営業時間であれば在庫数量がゼロではない限り在庫から補充して陳列することになるが、無人営業時間中は、ロボット等による無人での補充・陳列等の手段がない限り、当該商品は欠品中の扱いとなる。
【0065】
陳列棚IDの項目は、上述した陳列数量の値がゼロではない場合に、対象の商品が実際に陳列されている陳列棚5を特定するIDや番号などの識別情報(例えば、図5の例における「C2」等)を保持する。この情報を参照することでピッキングロボット6は対象の陳列棚5まで移動することができる。陳列段の項目は、陳列数量の値がゼロではない場合に、上述した陳列棚IDの項目で特定される陳列棚5の中で実際に陳列されている陳列段を識別する情報(例えば、「上段」、「中段」、「下段」や「1段目」、「2段目」、「3段目」等)を保持する。この項目により、対象の商品がどの陳列段に陳列されているかに加えて、特定の陳列段にどの商品が陳列されているかを把握することができる。
【0066】
図10は、本発明の一実施の形態におけるロッカーDB48のデータ構成の例について概要を示した図である。ロッカーDB48は、例えば、店舗3に設置された受渡しロッカー7について、その空き状況や使用状況等の情報を保持するテーブルであり、例えば、ロッカー番号、ステータス、ステータス更新日時、および注文IDなどの各項目を有する。
【0067】
ロッカー番号の項目は、店舗3に設置された各受渡しロッカー7を一意に識別する番号やIDなどの識別情報を保持する。このロッカー番号により、受渡しロッカー7の位置(例えば、図4の例のような構成では「○段目の○番目」等)を特定できるものとするが、別途、受渡しロッカー7の位置を特定するための情報を保持する項目を有していてもよい。
【0068】
ステータスの項目は、対象の受渡しロッカー7の空き状況等(例えば「空き」や「割当て済」、「搬送済」等)を示す文字列やコード値等の情報を保持する。顧客からの注文に対して、当該項目が「空き」を示すものの中から、当該注文で商品の受渡しに用いる受渡しロッカー7を割り当てる。ステータス更新日時の項目は、上記のステータスの項目の値が最後に更新されたときのタイムスタンプの情報を保持する。例えば、ステータスが「搬送済」となってから所定の時間以上経過している場合には、対象の顧客に対して商品の取り出しを促す通知等を行うようにしてもよい。注文IDの項目は、対象の受渡しロッカー7のステータスが「割当て済」や「搬送済」である場合に、当該受渡しロッカー7が割り当てられた注文のIDの情報を保持する。この注文IDは、後述する注文DB49の注文IDの項目と同内容である。
【0069】
図11は、本発明の一実施の形態における注文DB49のデータ構成の例について概要を示した図である。注文DB49は、例えば、顧客からの注文の内容に係る情報を保持するテーブルであり、例えば、注文ID、ユーザID、商品ID、購入数量、決済金額、決済ステータス、注文日時、対応ロボットID、受渡し予定日時、および注文ステータスなどの各項目を有する。
【0070】
注文IDの項目は、対象の店舗3において各注文を一意に識別するIDや連番等の識別情報を保持する。ユーザIDの項目は、対象の注文を行った顧客のアカウントを一意に識別するID等の識別情報を保持する。商品IDおよび購入数量の各項目は、対象の注文にて購入を指示された商品を特定する商品IDおよびその数量の情報をそれぞれ保持する。商品IDの項目は、上述の商品マスタDB46の商品IDの項目と同内容である。なお、対象の注文において複数の商品の購入が指示された場合は、指示された商品毎にこれらの項目を保持する。
【0071】
決済金額および決済ステータスの各項目は、対象の注文における決済金額合計の情報および顧客による決済が完了しているか否かを示すフラグの情報をそれぞれ保持する。注文日時の項目は、対象の注文を店舗サーバ4が受け付けたときのタイムスタンプの情報を保持する。対応ロボットIDの項目は、対象の注文について商品のピッキングと受渡しロッカー7への搬送を行うよう割り当てられたピッキングロボット6を特定するIDや番号等の識別情報を保持する。受渡し予定日時の項目は、対象の注文についてピッキングロボット6による受渡しロッカー7への搬送が完了し、顧客が商品を受け取れるようになる予定の日時として、店舗サーバ4のピッキング処理部44等により見積もられた日時の情報を保持する。注文ステータスの項目は、対象の注文についての状況(例えば、「注文済」、「搬送済」、「受渡し済」等)を示す文字列やコード値等の情報を保持する。
【0072】
<処理の流れ>
図12は、本発明の一実施の形態における商品販売処理の流れの例について概要を示した処理フロー図である。まず、店舗サーバ4では、販売可能商品提示部41により、商品マスタDB46および在庫DB47を参照して、無人営業時間において販売(注文)が可能な商品、すなわち無人販売可能な種類の商品であり、かつ陳列棚5に実際に陳列されている商品を抽出して、これを顧客端末2を介して顧客に提示する(S01)。顧客端末2では、Webブラウザや専用のアプリケーションなどにより、販売可能な商品が表示され、顧客が希望する商品や決済方法等を指定して購入を指示すると、注文情報が店舗サーバ4に送られる。店舗サーバ4の注文受付部42では、顧客端末2から送られた注文情報を受け付けて注文DB49に記録する(S02)。
【0073】
注文を受け付けると、ピッキング準備処理部43では、ロッカーDB48を参照して、当該注文での商品の受渡しに使用する「空き」状態の受渡しロッカー7を割り当てる(S03)。受渡しロッカー7に空きがない場合は、その旨を顧客端末2に対して通知し、顧客が希望する場合には当該注文をキャンセルできるようにしてもよい。顧客がキャンセルしない場合は、受渡しロッカー7に空きが出るまで待った上で割り当てるようにしてもよい。この場合、受渡しロッカー7への商品の搬送完了が遅くなり、その結果顧客が受取り可能となる時間が遅くなる。受渡しロッカー7が割り当てられると、ピッキング準備処理部43では、ピッキングのための準備として、ピッキングロボット6が注文に係る各商品を陳列棚5から順次ピッキングして受渡しロッカー7に搬送し、待機場所に帰還するまでの移動ルートを決定する(S04)。
【0074】
その後、店舗サーバ4のピッキング処理部44では、ピッキングロボット6に対して無線・有線での通信によりピッキングの指示を行う(S05)。ピッキングの指示内容には、少なくとも、ピッキング対象の商品の情報と、ステップS03で割り当てられた受渡しロッカー7の情報、およびステップS04で決定された移動ルートの情報が含まれる。ピッキングの指示を行った後は、定期的に商品の搬送状況を確認し(S06)、搬送状況が「搬送済」となったか否かを判定する(S07)。搬送状況は、例えば、注文DB49の注文ステータスの項目が「搬送済」であるか否かにより判定してもよいし、ピッキングロボット6に都度問い合わせて搬送状況の情報を取得するようにしてもよい。
【0075】
ステップS07で搬送状況が「搬送済」でない場合は、まだピッキング中であると判断し、ピッキング処理部44では、「搬送済」になるまでの見込み所要時間を算出し(S08)、現在時刻にこれを加算することで「搬送済」となる予定時刻を求めてこれを顧客端末2を介して顧客に提示する(S09)。その後、ステップS07に戻り処理を繰り返す。
【0076】
なお、見込み所要時間の算出は、例えば、ピッキングロボット6が移動ルートを移動するのに要する時間(移動ルートの距離とピッキングロボット6の移動速度から算出)や、対象の陳列棚5に移動してから商品をピッキングするまでに要する時間(画像認識処理に要する時間や、ピッキングロボット6がアーム63を所望の位置に移動させるのに要する時間等から算出)、ピッキングロボット6が商品搬送台68から受渡しロッカー7の格納スペース71に商品を搬送するのに要する時間(ベルトコンベア681の回転速度や大きさ等から算出)などに基づいて概算することができる。
【0077】
ステップS07で搬送状況が「搬送済」となった場合は、受渡しロッカー7への商品の搬送が完了したと判断し、ピッキング処理部44では、搬送の完了により顧客への商品の受渡しが可能となった旨を顧客端末2を介して顧客に対して提示する(S10)。顧客が店舗3を訪れて、店外から対象の受渡しロッカー7に対して解錠・開放を試みた場合、店舗サーバ4の決済処理部45では、注文DB49を参照して、対象の注文の決済ステータスが「決済済」であるか否かを判定する(S11)。上述したように、決済は、事前にクレジットカード等によるネット決済がされていてもよいし、受渡しロッカー7において電子マネー等によりその場で決済してもよい。
【0078】
決済ステータスが「決済済」でない場合は、「決済済」になるまでステップS11の処理を繰り返し、「決済済」になった場合に受渡しロッカー7の扉72を解錠して開放する(S12)。顧客が格納スペース71から商品を取り出して扉72を閉めると、受渡しロッカー7はその旨を店舗サーバ4に伝え、店舗サーバ4では注文DB49における当該注文の注文ステータスの項目を「受渡し済」に更新して、一連の処理を終了する。
【0079】
一方、上述のステップS05で店舗サーバ4からピッキングロボット6に対してピッキングの指示が出されると、ピッキングロボット6は、所定の待機場所から、指示された移動ルートに従って対象の陳列棚5まで移動する(S21)。その際、対象の陳列棚5の近くまで移動した段階で、対象の陳列棚5においてピッキングの対象の商品が陳列されている陳列段に陳列されている全ての商品(さらに対象の商品に外観が類似する商品を含んでいてもよい)の認識モデル441を店舗サーバ4からそれぞれ取得する(S22)。なお、このように陳列棚5の近くに移動した段階で必要な認識モデル441を都度店舗サーバ4から取得するようにしてもよいし、ステップS05でピッキングの指示を受ける際に、注文に係る全商品について必要となる認識モデル441を予め全て取得するようにしてもよい。
【0080】
その後、ピッキングロボット6は、対象の陳列棚5まで移動すると、ピッキング対象の商品が陳列されている陳列段について、アーム63を動かして深度センサ67の位置を制御して画像を撮影し、AIによる画像認識によって、陳列段における対象の商品の陳列位置を特定する(S23)。そして、アーム63を動かして吸着パッド64の位置を制御して当該商品を吸着パッド64で吸着してピッキングし、商品搬送台68に載せる(S24)。
【0081】
より詳細には、ピッキングロボット6は、対象の陳列棚5の前まで移動すると、ピッキング対象の商品が陳列されている陳列段の高さと、陳列段の幅に応じて、当該陳列段の商品全体が深度センサ67の撮像可能範囲に収まるよう、深度センサ67を配置すべき位置を決定し、アーム63を動かして深度センサ67を目的の位置に配置させ、陳列段の画像を撮影する。そして、撮影された画像に基づいて、上述の図6の例で示したような画像認識の手法により、ピッキング対象の商品の位置を特定する。
【0082】
ピッキング対象の商品の位置を特定すると、その位置情報と、深度センサ67により得られる当該位置の深度情報とに基づいて、対象の商品と、アーム63の先端部に設置された吸着パッド64との相対的な位置関係を算出する。ピッキングロボット6の制御部62では、算出された位置関係から、吸着パッド64の吸着面を対象の商品に接触させる、すなわちピッキング可能な位置に移動させるための移動軌跡を生成し、アーム63を動かして、生成された移動軌跡にしたがって吸着パッド64を移動させる。その後、真空ポンプ65をオンにして、対象の商品を吸着パッド64に吸着させ、この状態のまま、アーム63を動かして吸着パッド64を商品搬送台68の上の所望の位置に移動させる。そして、真空ポンプ63をオフにして、商品を吸着パッド64から離して商品搬送台68の上に置く。
【0083】
対象の注文に含まれる商品が複数種類ある場合は、必要に応じて上記のステップS21~S24の処理を対象の商品毎に繰り返す。同一の商品について複数個の購入が指示されている場合は、必要に応じて上記のステップS23~S24の処理を個数分繰り返す。注文に含まれる商品を全てピッキングすると、ピッキングロボット6は、当該注文に対して上記のステップS03で割り当てられた受渡しロッカー7まで移動し(S25)、上述の図3の例で示したような手法により、商品搬送台68から受渡しロッカー7の格納スペース71に商品を搬送する(S26)。その後、上記のステップS04で決定された移動ルートに従って所定の待機場所に帰還して(S27)、一連の処理を終了する。
【0084】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である商品販売システム1によれば、無人営業時間中で店舗3が施錠等されており、顧客は店舗3内に入ることができない状況であっても、店舗3内では顧客に代わってピッキングロボット6が無人の店舗3内を移動し、注文された商品を陳列棚5から順次ピッキングして集め、受渡しロッカー7に搬送する。これにより、「営業時間外」であっても、顧客を店舗3内に入れることなくセキュリティや防犯上のリスクを低減させながら、陳列棚5に実際に陳列されている商品を販売することが可能となる。
【0085】
また、注文に係る商品について、対象の陳列棚5における陳列段の撮影画像からAIによる画像認識により陳列位置や姿勢等を識別するため、商品の実際の陳列状況に関わらず対象の商品の陳列位置を識別することが可能である。また、画像認識の際に用いる認識モデル441を、陳列段の単位ではなく商品毎に用意することで、例えば、多数の加盟店を有するコンビニ等であっても、本部で商品毎の認識モデル441を予め用意しておけば、各店舗3において実際の商品の陳列状況に応じて認識モデル441を個別に作成・準備する必要がなく、多数の店舗3に商品販売システム1を容易に展開することが可能となる。
【0086】
また、ピッキングロボット6の商品搬送台68にベルトコンベア681を用いることで、受渡しロッカー7への商品の搬送を容易かつスムーズに行うことが可能となる。さらに、受渡しロッカー7の格納スペース71にもベルトコンベア72を設けることで、商品の搬送をより一層スムーズにすることが可能となる。
【0087】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0088】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0089】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、無人の実店舗において商品を販売する商品販売システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…商品販売システム、2…顧客端末、3…店舗、4…店舗サーバ、5…陳列棚、6…ピッキングロボット、7…受渡しロッカー、
41…販売可能商品提示部、42…注文受付部、43…ピッキング準備処理部、44…ピッキング処理部、45…決済処理部、46…商品マスタDB、47…在庫DB、48…ロッカーDB、49…注文DB、
61…無人搬送車、62…制御部、63…アーム、64…吸着パッド、65…真空ポンプ、66…大気圧計、67…深度センサ、68…商品搬送台、
71…格納スペース、72…ベルトコンベア、
441…認識モデル、
681…ベルトコンベア、682…保護壁、683…搬送ゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12