(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084448
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】シリコーン組成物、硬化性シリコーン組成物の分配組成物およびその硬化物の製造方法および得られる硬化物、光透過率調整方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220531BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196335
(22)【出願日】2020-11-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅川 幸彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
(57)【要約】 (修正有)
【課題】5℃以下の温度で保管後の光透過率が一定値以上であり、白濁しない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物と、高透明な硬化物を得る製造方法を提供する。
【解決手段】(A)(A-1)25℃における粘度が所定上限値以下で、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(A-2)25℃における粘度が、前記(A-1)成分の所定上限値より大きく、ケイ素原子に結合するOH基の含有量が0.5~250質量ppmである、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物と、(B)アルケニル基を有するシリコーンレジンと、(C)オルガノハイドロジェンシロキサン、を含む、微粉末シリカを含まないシリコーン組成物であって、(B)成分のシリコーンレジンに対して一定量以上の(A-2)成分を含み、所定温度以下で保管後の光透過率が、所定波長領域で所定数値以上である、シリコーン組成物。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、所定上限値以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、前記(A-1)成分の所定上限値より大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物と、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジンと、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
を含む、微粉末シリカを含まないシリコーン組成物であって、
前記(B)成分のシリコーンレジンに対して一定量以上の前記(A-2)成分を含み、
前記シリコーン組成物を、所定温度以下で一定時間保管した後の光透過率が、所定波長領域で所定数値以上である、シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・s以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・sより大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物:100重量部、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジン:0.5~150重量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
を含む、微粉末シリカを含まないシリコーン組成物であって、
前記(B)成分のシリコーンレジン100重量部に対して、前記(A-2)成分を10重量部以上含み、
前記シリコーン組成物を、5℃以下の温度で24時間以上保管した後の光透過率が、400nmで85%以上である、シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(B)成分のシリコーンレジンが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、R1
3SiO1/2単位(M単位)およびSiO4/2単位(Q単位)より構成されるMQ単位のシリコーンレジン、または、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、R1SiO3/2単位(T単位)より構成されるシルセスキオキサンの少なくとも一方であるシリコーンレジン(ただし、式中、R1 は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換の、もしくは置換された一価炭化水素基またはOH基である。)を含む、請求項2に記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、所定上限値以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、前記(A-1)成分の所定上限値より大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物と、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジンと、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
を含む、微粉末シリカを含まないシリコーン組成物の、
5℃以下の温度で24時間以上保管した後の光透過率を、400nmで85%以上にする前記シリコーン組成物の光透過率調整方法であって、
前記(A-1)成分に、25℃における粘度が30,000mPa・s以下の直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンを選択する工程と、
前記(A-2)成分に、25℃における粘度が30,000mPa・sより大きい直鎖状オルガノポリシロキサンを選択する工程と、
前記(B)成分のシリコーンレジン100重量部に対して、前記(A-2)成分を10重量部以上配合する工程、
を含む、
シリコーン組成物の光透過率調整方法。
【請求項5】
分配組成物1と混合されることにより、微粉末シリカを含まない硬化性シリコーン組成物を構成する分配組成物2であって、
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・s以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・sより大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物:100重量部、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジン:0.5~150重量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(C)成分中の、ケイ素原子に結合した水素原子が、前記(A)成分と前記(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、1モル以上、20モル以下となる量、
を含み、
前記(B)成分のシリコーンレジン100重量部に対して、前記(A-2)成分を10重量部以上含み、
前記シリコーン組成物を、5℃以下の温度で24時間以上保管した後の光透過率が、400nmで85%以上である、硬化性シリコーン組成物の分配組成物2。
【請求項6】
前記(B)成分のシリコーンレジンが、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、R1
3SiO1/2単位(M単位)およびSiO4/2単位(Q単位)より構成されるMQ単位のシリコーンレジン、または、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、R1SiO3/2単位(T単位)より構成されるシルセスキオキサンの少なくとも一方であるシリコーンレジン(ただし、式中、R1 は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換の、もしくは置換された一価炭化水素基またはOH基である。)を含む、請求項5に記載の分配組成物2。
【請求項7】
分配組成物1と混合されることにより、微粉末シリカを含まない硬化性シリコーン組成物を構成する分配組成物2であって、
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・s以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・sより大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物:100重量部、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジン:0.5~150重量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(C)成分中の、ケイ素原子に結合した水素原子が、前記(A)成分と前記(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、1モル以上、20モル以下となる量、
を含むものを、
5℃以下の温度で24時間以上保管した後の光透過率を、400nmで85%以上にする光透過率調整方法であって、
前記(A-1)成分に、25℃における粘度が30,000mPa・s以下の直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンを選択する工程と、
前記(A-2)成分に、25℃における粘度が30,000mPa・sより大きい直鎖状オルガノポリシロキサンを選択する工程と、
(B)成分のシリコーンレジン100重量部に対して、前記(A-2)成分を10重量部以上配合する工程、
を含む、
硬化性シリコーン組成物の分配組成物2の光透過率調整方法。
【請求項8】
請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のシリコーン組成物に含まれる成分を、分配組成物1と分配組成物2とに分配されるように、前記分配組成物1と前記分配組成物2とを製造する製造工程と、
前記製造工程で得られた前記分配組成物1と前記分配組成物2を混合して、微粉末シリカを含まない硬化性シリコーン組成物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた硬化性シリコーン組成物を硬化して硬化物を得る硬化工程、
を含み、
前記硬化物は、厚さ2mmの硬化シートの光透過率が、400nmで85%以上である、硬化性シリコーン組成物の硬化物の製造方法。
【請求項9】
前記製造工程において、前記分配組成物1と前記分配組成物2とを、それぞれ、ふるいに通す分散工程を含む、請求項8に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物の製造方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の製造方法で得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーンレジンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンを含む、微粉末シリカを含まない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物であって、5℃以下の温度で24時間以上保管後の光透過率が一定値以上であり、白濁しない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物に関する。さらに、硬化性シリコーン組成物の高透明な硬化物を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、耐候性、安全性、透明性、肌触りの良さ、などに優れるため、医療、食品、工芸、電気・電子、自動車、建材、事務機器など、さまざまな分野に使用されている。そして、これらの分野に使用される硬化性シリコーンゴムに、さらに、立体的三次元構造を有するシリコーンレジンを配合することで、耐熱性、耐候性、電気絶縁性、撥水性、高硬度、透明性といった特性を、より一層向上させることが従来より行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、付加硬化型シリコーン組成物に、微粉末シリカと、ビニル基を有するシリコーンレジンを配合して硬化物をより高硬度、高モジュラス、高引裂強さにする方法が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、付加硬化型シリコーン組成物に、微粉末シリカと、かご型構造を有するシルセスキオキサンを配合して硬化物をより高強度、高引裂強さにする方法が開示されている。
さらに、光学用途など、より高透明が要求される用途では、例えば、特許文献3には、微粉末シリカなどの無機充填材を全く配合しない方法が開示されており、厚さ2mmの硬化シートの全光線透過率を測定して透明性を評価している。
【0004】
ところが、一般的にシリコーンレジン分子中には、製法上、親水性のOH基が少量残存するため、シリコーン組成物中のシリコーンレジン含有量が多くなると、他の原料、例えば、オルガノハイドロジェンシロキサンとの相溶性が悪くなり、シリコーンレジンの分散性が低下していた。特に前記の高透明性が要求される用途においては、分散性を改善する効果を有する微粉末シリカを配合しないため、分散性がさらに低下していた。
そこで、例えば、特許文献4には、シリコーンレジン中のOH基の影響を抑制するために、OH基をキャッピング処理する方法が開示されているが、透明性についての記載はなく、知見も示されていない。特に高透明を得るためには、MQ単位やT単位より構成されるシリコーンレジンが有効であるが、シリコーンレジンの三次元構造による立体障害が大きいためにキャッピング処理が不完全となる問題があった。さらに、このような特別な処理工程は製造コストを押し上げるため、経済的な理由から実施することが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2015-52027号公報
【特許文献2】特開2019-85532号公報
【特許文献3】特表2018-48214号公報
【特許文献4】特表2017-502153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような状況下で、微粉末シリカを含まない、シリコーン組成物や硬化性シリコーン組成物の分配組成物を、低温環境下で運搬、あるいは、保管することが国内外で頻繁に行われるが、特に寒冷地での取扱いや保管中に、光透過率が徐々に低下して白濁することがあった。一方、低温下で白濁を生じないものは、室温以上では白濁を生じることはないが、一旦光透過率が低下したもの、あるいは、白濁したものから作製した硬化物も、光透過率が低下して高透明なシリコーンゴム製品にならないという重大な問題を起こしていた。
【0007】
本発明は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーンレジンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンを含む、微粉末シリカを含まない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物であって、5℃以下の温度で24時間以上保管後の光透過率が一定値以上であり、白濁しない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物を提供する。さらに、硬化性シリコーン組成物の高透明な硬化物を得る製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーンレジンと、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、微粉末シリカを含まない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物において、ケイ素原子に結合したアルケニル基とOH基とを有し、25℃における粘度が、一定値以上の直鎖状オルガノポリシロキサンを配合すると、本発明の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、所定上限値以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、前記(A-1)成分の所定上限値より大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物と、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジンと、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
を含む、微粉末シリカを含まないシリコーン組成物であって、
前記(B)成分のシリコーンレジンに対して一定量以上の前記(A-2)成分を含み、
前記シリコーン組成物を、所定温度以下で一定時間保管した後の光透過率が、所定波長領域で所定数値以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微粉末シリカを含まない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物は、取扱いや保管中に光透過率が低下せず、白濁しないため、特に寒冷地で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の、(A-2)成分の作用を示す概念図である。
【
図2】本発明の、(A-2)成分の作用を示す概念図である。
【
図3】本発明の、(A-2)成分の作用を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係る、シリコーン組成物、硬化性シリコーン組成物の分配組成物およびその硬化物の製造方法および得られる硬化物、光透過率調整方法の詳細を説明する。
【0013】
((A)成分)
(A-1)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、本発明のシリコーン組成物または硬化性シリコーン組成物の分配組成物の主成分で、通常、平均組成式が下記一般式(1)で表される。
R2
aSiO(4-a)/2 (1)
(ただし、式(1)中、R2 は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換の、もしくは置換された一価の炭化水素基である。a は1.5以上、2.8以下である。R2の炭素数は、合成コストの観点から、好ましくは1~10である。また、aは好ましくは1.8~2.5、より好ましくは1.95~2.05である。)
【0014】
ここで、上記R2で示される一価炭化水素基のうち、(A-1)成分の1分子中において、少なくとも2個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1~18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれることができる。
【0015】
R2の選択にあたって、2個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3 - トリフルオロプロピル基が好ましい。また、全R2中の70モル%以上がメチル基であることが、硬化物の物性および経済性などの点で好ましく、通常はメチル基が80モル%以上のものが好ましい。
【0016】
(A-1)成分のオルガノポリシロキサンは当業者に公知の方法で製造され、その構造は直鎖状または一部分岐した直鎖状である。
具体的には、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、が例示され、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種類以上の混合物が例示されるが、経済性の観点から、入手しやすい、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンで、少なくとも分子鎖両末端にビニル基を有するものが好ましい。
【0017】
(A-1)成分の粘度は、25℃ における粘度が30,000mPa・s以下であることが好ましく、25,000mPa・s以下であるものがより好ましい。これらは、単独であっても、複数の種類を混合したものであってもよい。粘度が30,000mPa・s以下の場合は、付加硬化型シリコーンゴム組成物の粘度が上昇して混合時の気泡が抜けにくくなり、硬化物作製の作業性が低下したり、硬化物中に気泡が残るといった現象を抑制できるため好ましい。
【0018】
一方、(A-2)は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、前記(A-1)の所定上限値より大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンであり、本発明の課題を解決するための必須成分である。通常、平均組成式が下記一般式(2)で表される。
R3
aSiO(4-a)/2 (2)
(ただし、式(2)中、R3 は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換の、もしくは置換された一価炭化水素基またはOH基である。a は1.5以上、2.8以下である。R3の炭素数は、合成コストの観点から、好ましくは1~10である。また、aは好ましくは1.8~2.5、より好ましくは1.95~2.05である。)
【0019】
ここで、上記R3で示される一価炭化水素基のうち、(A-2)成分の1分子中において、少なくとも1個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1~18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれることができる。
【0020】
R3の選択にあたって、1個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3 - トリフルオロプロピル基が好ましい。また、全R3中の70モル%以上がメチル基であることが、硬化物の物性および経済性などの点で好ましく、通常はメチル基が80モル%以上のものが好ましい。
【0021】
本発明の(A-2)成分の作用を図で説明する。
(A-1)成分のオルガノポリシロキサンと(B)成分のシリコーンレジンと(C)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンとを含む組成物では、
図1に示すように、(A-1)成分中の(B)成分のシリコーンレジン分子中にはOH基が残存しており、そのOH基が多くなると、(C)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンとの相溶性が悪くなり、(B)成分と(C)成分は均一に分散しにくくなり、(B)成分と(C)成分の間に分離しやすい関係が生じてくる。
【0022】
一方、(B)成分は、シリコーン組成物中の濃度が高いものは分子同士が接近しており、
図2に示すように、分子中に残存するOH基によって水素結合を生じる。特に低温では水素結合が促進され、さらに、(B)成分と(C)成分の分離しやすい関係も加わるため、特に室温以下で(B)成分は集合体を形成すると考えられる。そうすると、(B)成分と(C)成分の相溶性がさらに低下し、(B)成分は(C)成分を排除してより大きな集合体へと成長し、その結果、詳細な機構は明らかではないが、成長した(B)成分の集合体と(C)成分の間には、
図2の点線に示すような大きな界面が生じ、この屈折率の差によって光透過率の低下や白濁が起ると考えられる。
【0023】
これに対して、(A-2)成分が含まれる場合は、(A-2)成分中のOH基によって、(A-2)成分は(B)成分との相溶性が良好となり、(B)成分の集合体の形成を抑制する。また、(A-2)成分は直鎖状であるため、同じ直鎖状構造を有する(C)成分との相溶性が良好となり、(C)成分と(B)成分との分離しやすい関係を抑制する。その結果、
図3に示すように、(A-2)成分は、(B)成分の集合体の形成と、(B)成分の集合体と(C)成分との大きな界面の形成を抑制すると考えられる。
【0024】
従って、(A-2)成分のオルガノポリシロキサンは当業者に公知の方法で製造されるが、その構造は直鎖状であることが好ましい。直鎖状であることで、(C)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンとの相溶性が良好となる。
(A-2)成分は、その製造において、オルガノポリシロキサンの末端の不完全なアルケニル化、およびこれと結合した末端の残りのSi-OH基に基づいて、1分子中にアルケニル基を1つだけ有するオルガノポリシロキサンや、アルケニル基を含まないオルガノポリシロキサンを少量含んでいてもよい。
(A-2)成分は、経済性の観点から、入手しやすい、ケイ素原子に結合したビニル基を、1分子中に少なくとも1個以上有する、直鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
(A-2)成分の粘度は、25℃ における粘度が、(A-1)成分の粘度より大きいことが好ましく、具体的には、30,000mPa・sより大きいことが好ましく、30,000mPa・sより大きく、1,000,000mPa・s以下の範囲が好ましい。そして、(B)成分と(C)成分の相互作用を抑制するためには、(A-2)成分の粘度は高いものが好ましく、50,000mPa・s以上がより好ましく、100,000mPa・s以上がさらに好ましい。これらは、単独であっても、複数の種類を混合したものであってもよい。
【0026】
(A-2)成分は、ケイ素原子に結合したOH基を有することで、(B)成分の集合体の形成を抑制できる。(A-2)成分中のOH基の含有量としては、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmであることが好ましく、0.5~200ppmがより好ましく、1~150ppmがさらに好ましい。0.5ppm以上の場合は、本発明の白濁を抑制する効果が得られ、250ppm以下の場合は、架橋密度が低下して硬化物の硬さが低下しやすくなる現象を抑制できるため好ましい。
【0027】
(A-2)成分の配合量は、(B)成分のシリコーンレジンに応じた量であることが好ましく、具体的には、(B)成分のシリコーンレジン100重量部に対して、10重量部以上であることが好ましく、15重量部以上がより好ましい。10重量部以上の場合は、特に5℃以下の低温において、光透過率の低下や白濁を抑制する効果が得られるため好ましい。なお、白濁の程度は低温ほど強くなる傾向があるが、本発明は5℃以下として0℃以下の温度、さらにはマイナス20℃以下の温度でも効果を得ることができる。
【0028】
((B)成分)
(B)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に少なくとも1個以上有する、シリコーンレジンであり、本発明の硬化物に高透明性を付与するための必須成分である。
(B)成分は、当業者に公知の方法で製造され、その製造において、一般的に式(RO)の基を1~20%(ここでRは水素原子または1~4個の炭素原子のアルキル基である。)含有している。白濁発生を抑制する観点から、シリコーンレジン中OH基の量は少ないことが好ましく、0.1mol/g以下が好ましく、0.08mol/g以下がより好ましく、0.05mol/g以下がさらに好ましい。
(B)成分は、R1SiO3/2単位(T単位)とSiO4/2単位(Q単位)(ただし、式中、R1 は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換の、もしくは置換された一価炭化水素基またはOH基である。)のどちらか一方、あるいは両方を含むものであれば、どのような分子量や構造であってもよいが、R1
3SiO1/2単位(M単位)とQ単位のMQ単位のシリコーンレジン、あるいは、TQ単位のシリコーンレジン、あるいはT単位のみのシルセスキオキサンは、特に所望する高透明性や強度を得やすくなるため好ましい。これらは、単独であっても、複数の種類を混合したものであってもよい。
【0029】
ここで、上記R1で示される一価炭化水素基のうち、少なくとも1個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1~18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれることができる。
【0030】
R1の選択にあたって、1個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3 - トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0031】
(B)成分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が1,000~10,000g/molの範囲が好ましく、質量平均分子量が大きくなると白濁を生じやすくなるため、より好ましくは、1,500~8,000g/molである。1,000g/mol以上の場合は、十分な硬さと透明性が得られるようになり、10,000g/mol以下の場合は、付加硬化型シリコーンゴム組成物の粘度が上昇して混合時の気泡が抜けにくくなり、硬化物作製の作業性が低下したり、硬化物中に気泡が残るといった現象を抑制できるため好ましい。
【0032】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.5~150重量部が好ましく、1.0~130重量部がより好ましい。0.5重量部以上の場合は、十分な硬さと透明性が得られるようになり、150重量部以下の場合は、付加硬化型シリコーンゴム組成物の粘度が上昇して混合時の気泡が抜けにくくなり、硬化物作製の作業性が低下したり、硬化物中に気泡が残るといった現象を抑制できるため好ましい。
【0033】
((C)成分)
(C)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に少なくとも2個以上有する、オルガノハイドロジェンシロキサンであり、例えば、付加硬化では架橋剤成分である。これらは、当業者に公知の方法で製造され、具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、などが例示される。これらは、単独であっても、複数の種類を混合したものであってもよい。
【0034】
(C)成分の構造は特に限定されないが、環状や両末端にのみ水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンは、硬化物の硬さを低下させることがあるため、直鎖状、あるいは一部分岐した直鎖状で、分子鎖の末端および非末端、あるいは、分子鎖非末端に、ケイ素原子に結合した水素原子を有し、1分子中に少なくとも3個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好ましい。
【0035】
(C)成分の粘度が低いものは、付加硬化の場合、硬化反応が速やかに進行しやすくなるため、粘度は1,000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。しかし、(C)成分の粘度が(B)成分に対して低くなると、(B)成分が流動しやすくなり、特に低温下で白濁を促進しやすくなるため、粘度は1mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0036】
(C)成分の配合量は、付加硬化の場合、ケイ素原子に結合した水素原子が、前記(A)成分と前記(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、1モル以上、20モル以下となる量である。1モル以上の場合は、硬化物の硬さが著しく低下することがなく、20モル以下の場合は、シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物中に気泡が発生する現象を抑制するため好ましい。
【0037】
本発明は、以上に述べた(A)成分、(B)成分、(C)成分を配合することにより、シリコーン組成物の波長400nmにおける光透過率を85%以上となるように調整することができる。
【0038】
((D)成分)
本発明のシリコーン組成物は、硬化に必要な反応基や触媒を含有することで、硬化物を得ることができる硬化性シリコーン組成物とすることができる。通常、硬化性シリコーン組成物は、触媒を含む分配組成物と、触媒を含まない分配組成物から構成され、それらの分配組成物を混合することにより、シリコーン組成物が硬化して、硬化物を得ることができる。
従って、本発明の硬化性シリコーン組成物の分配組成物は、そのどちらか一方に(D)成分として、硬化性シリコーン組成物を硬化するための触媒を含み、そのような能力を有するものであれば、本発明の目的を妨げない範囲で、どのような触媒を用いてもよい。
硬化方式は当業者に公知の方式であればどのようなものであってもよく、付加硬化、縮合硬化、ラジカル硬化、紫外線硬化、電子線硬化、放射線硬化が例示されるが、工業製品の量産化の観点から、紫外線硬化、あるいは、付加硬化であることが好ましい。
【0039】
紫外線硬化には、ラジカル重合や、光活性化触媒を用いた付加硬化や、ラジカル重合と縮合硬化を併用する方法が知られているが、シリコーン分子鎖に光硬化反応性の官能基を多く導入したものや、特定の重合開始剤や増感剤を使用すると、硬化物の透明性が低下する場合があるため、光活性化触媒を用いた付加硬化による紫外線硬化方式であることが好ましい。
【0040】
付加硬化の場合の触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、イリジウム系触媒、鉄系触媒、コバルト系触媒、ニッケル系触媒が例示され、好ましくは、入手しやすい白金系触媒である。前記白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体が例示される。これらは、高い光透過性を得るために、微粒子であることが好ましく、ナノサイズにまで加工したものであってもよい。触媒はそのままの状態であっても、例えば、マイクロカプセル化したものであってもよい。
触媒含有量は、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で0.01~1,000ppmの範囲内となる量である。0.01ppm以上の場合は、硬化が十分に進行するため好ましい。1,000ppm以下の場合は、硬化物に着色が起こりにくくなるため好ましい。
【0041】
その他、本発明の目的を妨げない範囲で、硬化反応に必要とされる添加剤や助剤を配合することができる。例えば、付加硬化では反応遅延剤として、アセチレン系化合物、ヒドラジン類、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、が例示される。
【0042】
本発明は、典型的にはシリコーン組成物を透明にすることが目的であるため、組成物中に微粉末シリカを含まないことが最も好ましく、含むとしてもその含有量は少ないほど好ましい。本発明の「微粉末シリカを含まない」とは、微粉末シリカを意図的に配合しないことである。微粉末シリカが含まれると硬化物の光透過性が低下しやすいため、含有量は0.1%以下であることが好ましく、配合していないことがより好ましい。
微粉末シリカはシリコーンゴムの補強に用いられるもので、沈降シリカ(湿式シリカ)、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、焼成シリカなどが例示される。
【0043】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、分配組成物1と分配組成物2の2つの製品形態で市場に供給される。前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分と(D)成分は、同時に、ひとつの分配組成物中に分配されていなければ、どのような組成と割合で2つに分配してもよい。配合割合としては、例えば、自動供給機での取り扱いの観点から、1:1の割合で分配されていることが好ましい。
【0044】
前記分配組成物1と分配組成物2を混合する場合は、各成分が均一に分散するように、よく混合することが好ましいが、分配組成物の製造時に、細かなふるい、例えば、ステンレス金網など、を通過させて、原料をよく分散させておくと、本発明の効果をより発揮しやすくなる。そのため、分散工程として、ふるいの見開き間隔が細かいものを用いたろ過を実施することが好ましく、ふるいサイズとしては、JIS規格による公称目開きが75μm以下が好ましく、53μm以下がより好ましく、38μm以下がさらに好ましい。しかし、排出の所要時間を長期化させず、適切な生産性を維持するためには、20μm以上であることが好ましい。
【0045】
分配組成物2が(A-1)成分と(A-2)成分とを含む(A)成分と、(B)成分と、(C)成分を含む場合、上記の配合量とすることにより、分配組成物2の波長400nmにおける光透過率を85%以上となるように調整することができる。
また、分配組成物1と分配組成物2を、上記の配合量とすることにより、厚さ2mmの硬化シートの波長400nmにおける光透過率を85%以上となるように調整することができる。
【0046】
本発明のシリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物は、このままでも十分目的を達成できるが、使用前に加温を行うと水素結合を抑制できるため、光透過率の低下や白濁のさらなる抑制に有効である。従って、その場合には、5℃以上の温度とすることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。25℃以下で保管した場合は、使用前に40~100℃の温度で1~12時間加温してから使用するとよい。
【0047】
本発明のシリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物は、光透過率をさらに向上させるために、本発明の目的を妨げない範囲で、1分子中にアルケニル基を含まない、室温における平均重合度が2,000以上のシリコーンの生ゴムを併用してもよい。生ゴムの配合量は多くなると、シリコーン組成物の粘度が上昇して気泡が抜けにくくなるため、(A-1)成分と(A-2)成分の合計100重量部中の10重量部以下であることが好ましい。
【0048】
本発明のシリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物の透明性の評価は、例えば、JIS K 7361:1997に準拠した方法によって光透過率を測定するとよい。光透過率の測定は分光装置で行うが、市販のものであれば特に指定はない。
本発明のシリコーン組成物や硬化性シリコーン組成物の分配組成物は、通常、液状のため、測定用セルを用いるが、測定用セルは、シリコーンとの相互作用が少ない樹脂製が好ましい。また、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物の透明性の評価は、厚さ2mmの硬化シートを作製し、前記シリコーン組成物や硬化性シリコーン組成物の分配組成物と同様の方法で、その光透過率を測定するとよい。
【0049】
光透過率の測定波長は、紫外可視光近赤外に及ぶ広範囲な領域であっても、これらのうちの任意の波長領域や固定波長でもよく、具体的には、200~1,100nmの範囲内の波長領域で測定することが好ましい。光透過率は低波長領域で低下する傾向があるため、測定時間の短縮の観点から、250~400nmの範囲内における固定波長の測定が好ましく、その場合の透明性の基準としては、光透過率が85%以上であることが好ましい。
【0050】
前記透明性の評価において、寒冷地での取扱いや保管を想定して、試料を予め低温で保管してから光透過率を測定するとよい。保管温度としては5℃以下の温度であることが好ましく、0℃以下がより好ましく、マイナス20℃以下であってもよい。このような低温で光透過率の低下や白濁を起こさないものは、室温でも問題を起こさない。また、製造直後のシリコーン組成物や硬化性シリコーン組成物の分配組成物中には、攪拌による気泡が多く含まれているため、真空ポンプなどで脱気を十分に行ってから測定を行うとよい。あるいは、少なくとも24時間以上静置して、気泡を抜いてから測定を行うとよい。
【実施例0051】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。実施例中の部は重量部を示し、%は重量%を示す。粘度は25℃におけるせん断速度が0.9s-1のときの粘度である。また、実施例および比較例の結果を表1に示す。
【0052】
(光透過率の測定方法)
各実施例と各比較例の分配組成物を、PMMA樹脂製の測定セル(商品名:ディスポセル アズワン製 サイズ12.5mm×12.5mm×45mm)に注入し、事前に5℃の温度に設定した環境試験機中に保管した。これを24時間後に取り出して、気泡のないことを確認し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製 V-670型)で400nmにおける光透過率を25℃で測定した。
硬化性シリコーン組成物の硬化物は、厚さ2mmの硬化シートを作製し、そこから小片を切り出し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製 V-670型)で400nmにおける光透過率を25℃で測定した。
いずれの場合も、光透過率が85%以上を合格と判定した。
【0053】
(硬化シート作製方法)
各実施例と各比較例の分配組成物1と分配組成物2を、事前に5℃の温度に設定した環境試験機中に保管し、24時間後に取り出して、1:1の割合で計量して撹拌機で十分に混合した。そして真空ポンプで脱気を行い、鏡面を有する金型に注入し、熱プレスで130℃の温度で10分間硬化して、厚さ2mmの硬化シートを作製した。そして、金型から脱型して、200℃の温度で4時間の二次硬化を実施し、光透過率測定用の厚さ2mmの硬化シートを作製した。
【0054】
[実施例1]
(実施例1の分配組成物1の作製)
(A-1)成分として、25℃における粘度が20,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン100部と、(B)成分として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が6,500g/molで、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.04mol/gのビニル基を有するMQ単位のシリコーンレジン43部と、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金含有量として1%含有するジメチルポリシロキサン溶液0.2部を、撹拌機でよく混合し、これを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいに通したものを、実施例1の分配組成物1とした。
(実施例1の分配組成物2の作製)
(A-1)成分として、25℃における粘度が20,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン50部と、(A-2)成分1として、25℃における粘度が40,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有し、ケイ素結合に結合したOH基量が200ppmである直鎖状ジメチルポリシロキサン50部と、(B)成分として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が6,500g/molで、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.04mol/gのビニル基を有するMQ単位のシリコーンレジン50部と、(C)成分として、25℃における粘度が60mPa・sで、分子鎖の非両末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー128部と、硬化遅延剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.3部を加えたものを、撹拌機でよく混合し、これを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいに通したものを、実施例1の分配組成物2とした。
【0055】
実施例1の分配組成物1と分配組成物2を1:1で混合した硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子に結合した全水素原子モル数と全アルケニル基のモル数比は1.9であった。 また、分配組成物2中の(B)成分のシリコーンレジンは50部であり、(A-2)成分1は50部である。従って、(B)成分のシリコーンレジン100部に対する(A-2)成分1は100部となる。
分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで97%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで95%であった。硬化シートも白濁はなく、光透過率は400nmで90%であり、実施例1の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%以上であり、合否判定は合格であった。
【0056】
[実施例2]
(実施例2の分配組成物1の作製)
実施例1の分配組成物1と同じ処方のものを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいの代わりに、金属ふるいに通さなかったものを、実施例2の分配組成物1とした。
(実施例2の分配組成物2の作製)
実施例1の分配組成物2と同じ処方のものを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいの代わりに、金属ふるいに通さなかったものを、実施例2の分配組成物2とした。
【0057】
実施例2の分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで96%に低下した。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで94%であった。硬化シートも白濁はなく、光透過率は400nmで89%であり、実施例2の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%以上であり、合否判定は合格であった。
【0058】
[実施例3]
(実施例3の分配組成物1の作製)
実施例1の分配組成物1と同じ処方と工程で作製したものを実施例3の分配組成物1とした。
(実施例3の分配組成物2の作製)
(A-1)成分として、25℃における粘度が20,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン50部と、(A-2)成分2として、25℃における粘度が100,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有し、ケイ素結合に結合したOH基量が60ppmである直鎖状ジメチルポリシロキサン50部と、(B)成分として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が6,500g/molで、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.04mol/gのビニル基を有するMQ単位のシリコーンレジン100部と、(C)成分として、25℃における粘度が60mPa・sで、分子鎖の非両末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー50部と、硬化遅延剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.2部を加えたものを、撹拌機でよく混合し、これを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいに通したものを、実施例3の分配組成物2とした。
【0059】
実施例3の分配組成物1と分配組成物2を1:1で混合した硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子に結合した全水素原子モル数と全アルケニル基のモル数比は1.8であった。
また、分配組成物2中の(B)成分のシリコーンレジンは100部であり、(A-2)成分2は50部である。従って、(B)成分のシリコーンレジン100部に対する(A-2)成分2は50部となる。
分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで97%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで95%であった。硬化シートも白濁はなく、光透過率は400nmで90%であり、実施例3の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%以上であり、合否判定は合格であった。
【0060】
[実施例4]
(実施例4の分配組成物1の作製)
実施例3の分配組成物1と同じ処方のものを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいの代わりに、38μmの金属ふるいに通したものを、実施例4の分配組成物1とした。
(実施例4の分配組成物2の作製)
実施例3の分配組成物2と同じ処方のものを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいの代わりに、38μmの金属ふるいに通したものを、実施例4の分配組成物2とした。
【0061】
実施例4の分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで99%に上昇した。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで97%に上昇した。硬化シートも白濁はなく、光透過率は400nmで91%であり、実施例4の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%以上であり、合否判定は合格であった。
【0062】
[比較例1]
(比較例1の分配組成物1の作製)
実施例1の分配組成物1と同じ処方と工程で作製したものを比較例1の分配組成物1とした。
(比較例1の分配組成物2の作製)
実施例1の分配組成物2の(A-2)成分1である、25℃における粘度が40,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有し、ケイ素結合に結合したOH基量が200ppmである直鎖状ジメチルポリシロキサン50部の代わりに、25℃における粘度が40,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有し、ケイ素結合に結合したOH基量が0.3ppmである直鎖状ジメチルポリシロキサン50部を用いたものを、比較例1の分配組成物2とした。
【0063】
比較例1の分配組成物1と分配組成物2を1:1で混合した硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子に結合した全水素原子モル数と全アルケニル基のモル数比は1.9であった。
また、分配組成物2中の(B)成分のシリコーンレジンは50部であり、(A-2)成分1は50部である。従って、(B)成分のシリコーンレジン100部に対する(A-2)成分1は100部となる。
分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで97%であり、これを、5℃の温度で24時間保管したものも白濁は認められなかったが、(A-2)成分1中のOH基量が0.5ppmよりも少ないため、(B)成分との相溶性が低下して(B)成分の集合体の形成を抑制する効果が低下し、光透過率は400nmで80%にまで低下した。硬化シートに白濁は認められなかったが、光透過率は400nmで80%にまで低下した。従って、比較例1の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%に未達であり、合否判定は不合格であった。
【0064】
[比較例2]
(比較例2の分配組成物1の作製)
実施例1の分配組成物1と同じ処方と工程で作製したものを比較例2の分配組成物1とした。
(比較例2の分配組成物2の作製)
(A-1)成分として、25℃における粘度が20,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン95.5部と、(A-2)成分1として、25℃における粘度が40,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有し、ケイ素結合に結合したOH基量が200ppmである直鎖状ジメチルポリシロキサン4.5部と、(B)成分として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が6,500g/molで、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.04mol/gのビニル基を有するMQ単位のシリコーンレジン50部と、(C)成分として、25℃における粘度が60mPa・sで、分子鎖の非両末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー128部と、硬化遅延剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.3部を加えたものを、撹拌機でよく混合し、これを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいに通したものを、比較例2の分配組成物2とした。
【0065】
比較例2の分配組成物1と分配組成物2を1:1で混合した硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子に結合した全水素原子モル数と全アルケニル基のモル数比は1.9であった。
また、分配組成物2中の(B)成分のシリコーンレジンは50部であり、(A-2)成分1は4.5部である。従って、(B)成分のシリコーンレジン100部に対する(A-2)成分1は9部となる。
分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで97%であったが、(A-2)成分1の配合量が少ないため、(B)成分と(C)成分を抑制する効果が低下し、これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁が認められ、光透過率も400nmで45%にまで大きく低下した。硬化シートも白濁しており、光透過率は400nmで40%にまで大きく低下した。従って、比較例2の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%に未達であり、合否判定は不合格であった。
【0066】
[比較例3]
(比較例3の分配組成物1の作製)
実施例1の分配組成物1と同じ処方と工程で作製したものを比較例2の分配組成物1とした。
(比較例3の分配組成物2の作製)
(A-1)成分として、25℃における粘度が20,000mPa・sで、分子鎖両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン100部と、(B)成分として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が6,500g/molで、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.04mol/gのビニル基を有するMQ単位のシリコーンレジン100部と、(C)成分として、25℃における粘度が60mPa・sで、分子鎖の非両末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー50部と、硬化遅延剤として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.2部を加えたものを、撹拌機でよく混合し、これを、JIS規格の公称目開きが75μmの金属ふるいに通したものを、比較例3の分配組成物2とした。
【0067】
比較例3の分配組成物1と分配組成物2を1:1で混合した硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子に結合した全水素原子モル数と全アルケニル基のモル数比は1.8であった。
また、分配組成物2中の(B)成分のシリコーンレジンは50部であり、(A-2)成分1は含まれていない。従って、(B)成分のシリコーンレジン100部に対する(A-2)成分1は0部となる。
分配組成物1の作製直後の光透過率は400nmで99%であった。これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁せず、光透過率は400nmで99%であり、変化はなかった。
分配組成物2の作製直後の光透過率は400nmで98%であったが、(A-2)成分を含まないため、(B)成分と(C)成分を抑制する効果がなく、これを、5℃の温度で24時間保管したものは白濁が認められ、光透過率も400nmで32%にまでさらに大きく低下した。硬化シートも白濁しており、光透過率は400nmで28%にまでさらに大きく低下した。従って、比較例3の分配組成物2と硬化物の光透過率はいずれも85%に未達であり、合否判定は不合格であった。
【0068】
本発明の微粉末シリカを含まない、シリコーン組成物、あるいは、硬化性シリコーン組成物の分配組成物は、取扱いや保管中に光透過率が低下せず、白濁しないため、特に寒冷地で有用である。
(A)(A-1)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・s以下である、直鎖状または一部分岐した直鎖状の少なくとも一方であるオルガノポリシロキサンと、
(A-2)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、25℃における粘度が、30,000mPa・sより大きく、ケイ素原子に結合したOH基の含有量が0.5~250ppmである、直鎖状オルガノポリシロキサンとの混合物:100重量部、
(B)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有する、シリコーンレジン:0.5~150重量部、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンシロキサン、
を含む、微粉末シリカを含まないシリコーン組成物であって、
前記(B)成分のシリコーンレジン100重量部に対して、前記(A-2)成分を10重量部以上含み、
前記シリコーン組成物を、5℃以下の温度で24時間以上保管した後の光透過率が、400nmで85%以上である、シリコーン組成物。
請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のシリコーン組成物に含まれる成分を、分配組成物1と分配組成物2とに分配されるように、前記分配組成物1と前記分配組成物2とを製造する製造工程と、
前記製造工程で得られた前記分配組成物1と前記分配組成物2を混合して、微粉末シリカを含まない硬化性シリコーン組成物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた硬化性シリコーン組成物を硬化して硬化物を得る硬化工程、
を含み、
前記硬化物は、厚さ2mmの硬化シートの光透過率が、400nmで85%以上である、硬化性シリコーン組成物の硬化物の製造方法。
前記製造工程において、前記分配組成物1と前記分配組成物2とを、それぞれ、ふるいに通す分散工程を含む、請求項8に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物の製造方法。