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特開2022-84535ZrSi2粒子を含有する粉末混合物から付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法
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  • 特開-ZrSi2粒子を含有する粉末混合物から付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法 図1
  • 特開-ZrSi2粒子を含有する粉末混合物から付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084535
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ZrSi2粒子を含有する粉末混合物から付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/04 20060101AFI20220531BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20220531BHJP
   C22C 1/05 20060101ALI20220531BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220531BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20220531BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20220531BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20220531BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220531BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220531BHJP
【FI】
C22C1/04 C
B22F10/28
C22C1/05 C
B22F1/00 N
B22F10/25
C22C21/00 N
B22F1/052
B33Y10/00
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180947
(22)【出願日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】2011559
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウプレシュ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ガーランデ ジャン-ポール
(72)【発明者】
【氏名】ルー ギレム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法を提供する。
【解決手段】粉末の混合物の層が局所的に溶融され、それから凝固されるステップを含み、粉末の混合物が:
-少なくとも80wt.%のアルミニウムおよび最高で20wt.%の1つ以上の追加の元素を含む第1の粒子と、
-ZrSi2の第2の粒子と、
を含むことを特徴とし、粉末の混合物が1.8wt.%から4wt.%の第2の粒子を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の混合物の層が局所的に溶融され、それから凝固されるステップを含み、
前記粉末の混合物が:
- 少なくとも80wt.%のアルミニウムおよび最高で20wt.%の1つ以上の追加の元素を含む第1の粒子(10)と、
- ZrSi2の第2の粒子(20)と、
を含むことを特徴とし、
前記粉末の混合物が1.8wt.%から4wt.%の第2の粒子を含む、
付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法。
【請求項2】
前記粉末の混合物が1.9wt.%から2.5wt.%の第2の粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の粒子(20)が、50nmから5000nmの範囲である、より大きいサイズを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の粒子(20)が、100nmから1000nm、さらにより好ましくは400nmから600nmの範囲である、より大きいサイズを有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の粒子(10)が、10μmから120μm、好ましくは20μmから65μmの範囲である、より大きいサイズを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記追加の元素がCu、Si、Zn、Mg、Fe、Ti、Mn、Zr、Va、Ni、Pb、Bi、およびCrから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム合金が合金7075、合金6061、合金2219、または合金2024であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記製造方法が選択的レーザー溶融プロセスまたは選択的電子ビーム溶融プロセスであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末の混合物が3Dダイナミックミキサーによって生産されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造する分野一般に関する。
【0002】
本発明はアルミニウム合金パーツを製造するための方法に関する。
【0003】
本発明はこの方法によって得られるアルミニウム合金パーツにもまた関する。
【0004】
それは溶融が関わる付加製造方法におけるアルミニウム合金の高温割れの問題を克服することを可能にするので、本発明は特に興味深い。
【0005】
本発明は、数々の工業分野における、特に自動車および航空分野における、またはアルミニウム合金の構造強化のための利用を有する。
【背景技術】
【0006】
付加製造(3D印刷ともまた言われる)によって合金パーツを製造するための異なる方法の共通の側面は、それらが粉末の形態の原材料を用い、これらの粉末を溶融するステップにおいて合金を成形するということである。
【0007】
該当する付加製造のための異なる方法は、特に、かつ非限定的な様式で、粉末床溶融結合(PBF)のための方法および指向性エネルギー堆積(DED)のための方法を包含する。
【0008】
PBF法は、粉末床の特定の箇所を例えばレーザービームの手段によって溶融することにある。DED法は、固体材料を例えばワイヤまたは粉末の形態で導入すること、それを例えばレーザービームの手段によって溶融すること、および溶融された材料を堆積させることにある。
【0009】
かかる方法によって、満足な機械的特性を有する単純なまたは複雑な形態を有するパーツを工業生産することが可能である。
【0010】
しかしながら、いくつかのアルミニウム合金は、柱状デンドライト凝固の結果としての高温割れの問題を被る。特に、典型的には0.9から0.98の範囲である1に近い固相率について、凝固の間の熱機械的応力に弱い微細構造を作り出す。
【0011】
この短所を克服するために、異なる解決方法が想定されている。
【0012】
例えば、例えばScam合金のように、合金粉末の化学組成を改変することが可能である。これは、とりわけ付加製造のために開発されたアルミニウム、マグネシウム、およびスカンジウムを含む軽合金である。凝固の間に、一次Al3Sc粒子が液体から析出し、Alマトリックスの結晶粒成長のためのシードとして働く。よって、スカンジウムは微細構造の微細化と等軸デンドライト凝固の発生とを可能とする。しかしながら、スカンジウムは特に高価な元素であり、これは原材料のコストをかなり増大させる。
【0013】
別の解決方法は、等軸凝固を促すために、スカンジウムよりも安いいわゆる固相核生成材料のナノ粒子をアルミニウム粉末に追加することにある。
【0014】
例えば、特許文献1では、アルミニウム合金粉末がZr、Ta、Nb、Ti、またはそれらの酸化物、窒化物、水素化物、ホウ化物、炭化物、およびアルミナイドのいずれかのナノ粒子と混合されて、付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造する。記載される種々の実施形態においては、パーツが、選択的レーザー溶融(SLM)によって、例えば:
- アルミニウムおよび50nmの直径を有するタンタルナノ粒子(1体積%)、または
- アルミニウム合金(Al7075またはAl6061)および500~1500nmの直径を有するジルコニウムナノ粒子(1体積%)、
を含む混合物から製造される。
【0015】
非特許文献1では、7075(15μmおよび45μmにおける二峰性分布)および6061(45μmのd50)シリーズのアルミニウム合金粉末が1体積%の水素安定化ジルコニウムナノ粒子(ZrH2)と混合されて、SLMによって生産されるアルミニウム合金の高温割れの問題に対処した。ナノ粒子はベース粉末に静電的に結合されて、均一な分布を得る。用いられるナノ粒子の粒径の情報は与えられていない。
【0016】
最後に、非特許文献2では、アルミニウム6061合金パーツが付加製造によって得られる。アルミニウム6061合金粒子への2体積%のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粒子の追加は、合金6061を微細化することおよび割れを完全になくすことを可能にする。微細化方法には次のステップが関わるように見える:YSZ粒子の溶解(OおよびZrの放出)、酸化Al/Mgの析出、酸化Al/Mg上のAl3Zrの固相核生成、それから、Al3Zr上のアルミニウム相の固相核生成および成長である。酸素の存在はAl3Zrの固相核生成にとって重要であり、これは酸化アルミニウムおよび/またはマグネシウム上で起こる。
【0017】
方法の間に形成されるAl3Zr粒子は微細構造の微細化を担う。それらの固相核生成力は主にアルミニウムに対するそれらの結晶学的近位を原因とする(非特許文献3)。
【0018】
しかしながら、イットリア安定化ジルコニア粒子の使用は酸素含量の増大に至り、これはこれらの合金の使用特性にとってアプリオリに有利ではない。特に、酸素は酸化物(例えばAl2O3)の形成を引き起こし、これらはパーツの機械的特性を減ずることが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2018/144323号パンフレット
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】マーチン(Martin)ら著,「高強度アルミニウム合金の3D印刷(3D printing of high-strength aluminium alloys)」,ネイチャー(Nature),第549巻(2017年),p.365-369
【非特許文献2】オプレヒト(Opprecht)ら著,「レーザービーム溶融によって製造されるアルミニウム合金の高温割れ問題の解決方法(A solution to the hot cracking problem for aluminum alloys manufactured by laser beam melting)」,アクタ・マテリアリア(Acta Materialia),第197巻(2020年),p.40-53
【非特許文献3】ワン(Wang)ら著,「Al合金の結晶粒微細化剤としてのAl3ZrおよびAl3Nbの結晶学的研究(Crystallographic study of Al3Zr and Al3Nb as grain refiners for Al alloys)」,中国有色金属学会会刊,第24巻(2014年),p.2034-2040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の狙いは、割れなしのアルミニウム合金パーツを製造するための方法を提案することであり、方法は、実装することが単純かつ安価であることを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これを達成するために、本発明は、付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法を提案し、
粉末の混合物の層が溶融され、それから凝固される少なくとも1つのステップを含み、
前記粉末の混合物は:
- 少なくとも80wt.%のアルミニウムおよび最高で20wt.%の1つ以上の追加の元素を含む第1の粒子と、
- ZrSi2の第2の粒子と、
を含み、
前記粉末の混合物は少なくとも1.5wt.%の第2の粒子を含む。
【0023】
本発明は、アルミニウムに基づく粉末への二ケイ化ジルコニウム粒子の追加によって従来技術とは根本的に異なる。かかる粒子の追加は、等軸凝固構造を促進すること、それゆえに最終的なパーツの割れをなくすことを可能にする。
【0024】
全く予想に反して、本発明者らは、ZrSi2粒子によって酸素の追加の導入なしに、Al3Zr粒子が酸化Al/Mg上で固相核生成するということを見出した。実際に、イットリア安定化ジルコニアの使用と比較して、ZrSi2の使用は方法から酸素源を奪う。しかしながら、酸素はAl3Zrの固相核生成にとって重要であり、これは酸化アルミニウムおよび/またはマグネシウム上で起こる。
【0025】
さらにその上、全く予想に反して、ZrSi2粒子は次の反応(1)および(2)に従ってアルミニウムとの反応によってAl3Zrの固相核生成粒子を生じさせる:
ZrSi2 → Zr + 2Si (1)
3Al + Zr → Al3Zr (2)
【0026】
実際に、反応(1)の熱力学的データは、それが有利ではないということを示している。1300Kでは、そのΔGは大きく正であり、本明細書の終わりの参照の[1]からのデータに従うと1.77eVである。ZrSi2相は解離した元素よりも安定である。
【0027】
1300Kにおいては、Al3Zr相の形成のためのΔG(-0.43eV[2]はZrSi2のもの(-1.77eV[1]))よりも重要ではないということが注意されるべきである。換言すると、Zr元素は解離してAl3Zrを形成するよりもSi元素と共に留まることが蓋然的である。
【0028】
それにもかかわらず、本発明者らは、付加製造プロセスの間に、Al3Zr固相核生成相がZrSi2の分解によって形成されるということを観察した。
【0029】
このAl3Zr相(反応(2))が固相核生成する時間を有するであろうということは自明ではないように思われた。なぜなら、方法の間に形成される金属の溶融浴の耐用寿命は相対的に短いが(100マイクロ秒から1ミリ秒)、一般的には、数十分またはさらには数時間というインキュベーション時間が、かかる粒子を成長させるために鋳造業によって用いられるからである([3])。一見すると、ZrSi2からのAl3Zr固相核生成粒子の本来の場所での形成のこの反応は、方法によって課される熱条件では、熱力学的にまたは速度論的に有利ではない。
【0030】
有利には、前記粉末の混合物は1.9wt.%から2.5wt.%の第2の粒子を含む。換言すると、粉末の混合物は1.9wt.%から2.5wt.%の第2の粒子および97.5wt.%から98.1wt.%の第1の粒子を含む。
【0031】
有利には、前記第2の粒子は、50nmから5000nmの範囲である、より大きいサイズを有する。
【0032】
さらにより有利な様式では、前記第2の粒子は、100nmから1000nm、さらにより好ましくは400nmから600nmの範囲である、より大きいサイズを有する。
【0033】
有利には、前記第1の粒子は、10μmから120μm、好ましくは20μmから65μmの範囲である、より大きいサイズを有する。
【0034】
有利には、前記追加の元素はCu、Si、Zn、Mg、Fe、Ti、Mn、Zr、Va、Ni、Pb、Bi、およびCrから選択される。
【0035】
有利には、前記アルミニウム合金は7075合金、6061合金、2219合金、または2024合金である。
【0036】
第1の有利な実施形態に従うと、前記製造方法は選択的レーザー溶融プロセスである。
【0037】
第2の有利な実施形態に従うと、前記製造方法は選択的電子ビーム溶融プロセスである。
【0038】
有利には、前記粉末の混合は3Dダイナミックミキサーによって行われる。
【0039】
方法は数々の利点を有する:
- 粉末を混合することのみが必要であるので、それは実装することが単純である。それは乾式ステップにあり、粉末の数量にかかわらず、行うことが迅速かつセットアップすることが容易である。
- それは安価であり、よって、工業的観点から興味深い。例として、アルミニウム合金6061の材料コストはおよそ60ユーロ/kgであり、アルミニウム合金6061およびZrSi2(1.9wt.%)を含む粉末の混合物の材料コストはおよそ68ユーロ/kgである;酸化タンタルおよびZrH2はZrSi2よりも有意に高価である(少なくとも3倍高価である)。
- ZrSi2粉末を保存する/扱うことは容易である。
- ZrSi2の追加の間に酸素を導入する必要はない。これは最終的な合金中の酸化物の存在を限定する。
- 粉末を混合する時に粉末間の質量比を容易に改変することが可能である。
- それはいずれかの付加製造プロセスおよびいずれかのアルミニウム合金(高温割れの問題を被る)に容易に適合させられ得る。
- アルミニウム合金の微細構造は微細化され得、それゆえに、付加製造によって得られるパーツの異方性は限定され得る。
- 得られるパーツの機械的特性は増大させられ得る(変態しない粒子による構造強化)。
- 付加製造方法に一般的に用いられるパラメータを用いることが可能である。
【0040】
本発明は先に記載された方法に従って得られるアルミニウム合金パーツにもまた関し、パーツはZrSi2を含む。パーツは割れ/亀裂が無い状態である。
【0041】
本発明のさらなる特徴および利点は下のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0042】
このさらなる記載は本発明の対象を例解するために与えられているのみであり、決してこの対象の限定として解釈されるべきではないことは言うまでもない。
【0043】
本発明は、例解としてのみ与えられた且つ決して限定しない例示的な実施形態の記載から、添付の図面の参照によって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】アルミニウム合金6061の粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像である。
図2】本発明の具体的な実施形態におけるアルミニウム粒子および1.9wt.%のZrSi2粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像である。
図3】アルミニウム合金6061の粒子から作られたパーツのYZ平面上の光学顕微鏡によって得られた画像である(Zは構築軸であり、Yは、水平な平面上のレーザーの移動に対して直角の軸である)。
図4】本発明の具体的な実施形態におけるアルミニウム合金6061の粒子および1.9wt.%のZrSi2粒子の混合物から作られたパーツのYZ平面上の光学顕微鏡によって得られた画像である。
図5】アルミニウム合金6061粒子から作られたパーツのYZ平面上の電子線後方散乱回折(EBSD)の画像である。
図6】本発明の具体的な実施形態に従うアルミニウム合金6061の粒子および1.9wt.%のZrSi2粒子の混合物から作られたパーツのYZ平面上の電子線後方散乱回折(EBSD)の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
付加製造によってアルミニウム合金パーツを製造するための方法は、次に示すステップを含む:
a)粉末の混合物を提供する。好ましくは:
- 少なくとも80wt.%のアルミニウムおよび最高で20wt.%の1つ以上の追加の元素を含む第1の材料から作られた第1の粒子10を含む第1の粉末、
- 第2の材料の第2の粒子20を含む第2の粉末、
からなり、第2の材料はZrSi2である。
b)粉末の混合物の層を形成する。
c)複数の溶融したエリアを順次に形成するようにして、粉末の混合物の層を好ましくはレーザービーム走査によってまたは電子ビーム走査によって局所的に溶融する。
d)複数の凝固したエリアを形成するようにして、ステップc)で溶融した複数のエリアを冷却する。この複数の凝固したエリアは、構築されるべきパーツの第1の元素からなる。
【0046】
有利には、第1の凝固したエリア上に少なくとも1つの他の凝固したエリアを形成するようにして、ステップb)、c)、およびd)は少なくとも1回繰り返され得る。方法はパーツの最終的な形態が得られるまで繰り返される。粉末の混合物の第1の層は基材上に形成される。
【0047】
目当てのアルミニウムに基づく第1の粒子10へのZrSi2粒子20の追加は、実質的に等軸的な凝固構造と割れフリーの最終的なアルミニウム合金パーツとを得ることを可能にする。
【0048】
好ましくは、第1の粒子10は、第2の粒子20によって、例えば静電的グラフト化によって機能化される。
【0049】
好ましくは、第2の粒子20はZrSi2からなる。
【0050】
第2のZrSi2粉末は、好ましくは粉末の混合物の1.8wt.%から4wt.%に相当する。換言すると、粉末の混合物は1.8wt.%から4wt.%の第2の粒子および96wt.%から98.2wt.%の第1の粒子を含む。第2のZrSi2粉末は、さらにより好ましくは粉末の混合物の1.9wt.%から2.5wt.%に相当する。換言すると、粉末の混合物は1.9wt.%から2.5wt.%の第2の粒子および97.5wt.%から98.1wt.%の第1の粒子を含む。
【0051】
有利な実施形態に従うと、第1の粒子10は、10μmから120μm、好ましくは20μmから65μmの範囲である、より大きいサイズを有する。
【0052】
有利には、第2の粒子20は、50nmから5000nm、好ましくは100nmから1000nm、さらにより好ましくは400nmから600nmの範囲である、より大きいサイズを有する。
【0053】
第1の粒子10および第2の粒子20は例えば球形の、卵形の、または細長の形態を有し得る要素であり得る。好ましくは、粒子は実質的に球形であり、それらの最も大きい寸法はそれらの直径である。
【0054】
第1の粉末は、第1の材料から作られる第1の粒子10によって形成される。第1の材料は、少なくとも80wt.%のアルミニウム、好ましくは少なくとも90wt.%のアルミニウムを含む。
【0055】
第1の粒子10は、最高で20%、好ましくは最高で10wt.%の1つ以上の追加の元素(合金元素ともまた言われる)を含み得る。これらの元素は好ましくは亜鉛、マグネシウム、銅、ケイ素、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ビスマス、鉛、ニッケル、ジルコニウム、およびクロムから選択される。
【0056】
好ましくは、合金はアルミニウム合金のうち、7075合金、2024合金、2219合金、または6061合金である。
【0057】
ステップa)で提供される粉末の混合物は付加製造プロセスの上流で作られる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、第1の粉末および第2の粉末は3Dダイナミックミキサーによって、例えばTurbula(登録商標)ミキサーによって混合される。代替的には、それはメカノ合成のための方法であり得る。
【0059】
ステップc)の間には、少なくとも第1の粒子10を溶融するために十分なエネルギーのビームが用いられる。
【0060】
堆積した層は局所的にまたは全体的に溶融され得る。
【0061】
溶融ステップは、溶融したパターンを粉末の混合物の層に作り出すことを可能にする。所望のパターンを形成するために、溶融した粒子の1つ以上のエリアが作られ得る。凝固(ステップd)の間に、アルミニウム合金の1つ以上の凝固したエリアが形成されるようにして、パターンを形成する粒子10は完全に溶融する。
【0062】
有利には、第1の凝固したエリア上に少なくとも1つの他の凝固したエリアを形成するようにして、ステップb)、c)、およびd)は少なくとも1回繰り返され得る。方法はパーツの最終的な形態が得られるまで繰り返される。
【0063】
それから、凝固していない粉末が排出され、最終的なパーツは基材から取り外される。
【0064】
これらの方法の1つに従って得られたパーツはアニーリングステップ(熱処理)に付されて、内部応力を減じ、機械的特性を改善し得る。
【0065】
第1の実施形態に従うと、方法はレーザー式粉末床溶融(FBLF)プロセスであり、粉末床溶融結合(PBF)としておよび不正確には選択的レーザー溶融(SLM)としてもまた公知である。例解としてかつ限定しない様式で、レーザー式粉末床溶融製造方法のパラメータは:
- レーザー出力については50から500Wの間、
- レーザースピードについては100から2000mm/sの間、
- 2つのベクトル空間の間の距離(ハッチ)については25から120μmの間、
- 層厚さについては15および60μmの間、
である。
【0066】
別の実施形態に従うと、方法は粉末床による電子ビーム溶融(EBM)プロセスである。例解としてかつ限定しない様式で、粉末床によるEBM製造プロセスのパラメータは:
- 電子ビームについては50から3000Wの間、
- ビームスピードについては100から8000mm/sの間、
- 2つのベクトル空間の間の距離については50から200μmの間、
- 層厚さについては30から150μmの間、
である。
【0067】
付加製造方法に用いられる堆積機械は、例えば、粉末送達システム、粉末の表面を広げるおよび均質化するための装置(「ローラー」または「ブレード」)、ビーム(例えば、約1060nmの波長を有する赤外レーザービーム)、ビームを導くための走査装置、ならびに(粉末床に対して直角なZ軸に従って)垂直に降下させられ得る基材(トレーともまた言われる)を含む。
【0068】
雰囲気を制御するためだが、粉末の飛散を回避するためにもまた、アセンブリは熱的に閉じた且つ不活性化された筐体内に封じ込められ得る。
【0069】
これは決して限定しないが、本発明は特に航空学の分野においておよび自動車分野において利用され得る。
【0070】
実施形態の例解的なかつ限定しない例:
この例では、10mm×10mm×10mmの寸法を有する立方体に成形されたパーツがSLM印刷によって製造される。
【0071】
パーツは、2つの粉末:アルミニウム合金粉末およびZrSi2粉末の混合物から得られる。
【0072】
マルバーン・パナリティカルのマスターサイザー2000装置の粒径レーザーによって測定されたアルミニウム合金粉末(Al6061)の粒径は次の通りである:d10=27.5μm、d50=41.5μm、d90=62.7μm。粉末はSEMによって観察される(図1)。
【0073】
ZrSi2粉末については、その粒径は約500nmである。
【0074】
2つの粉末の混合物は、グローブボックスにおいて:微細化されるべき1200mLのアルミニウム合金粉末、17mLのZrSi2粉末(1.4体積%での混合物。これは1.9wt.%に相当する)、および混合物を均質化するために用いられる250mLの5mm直径ジルコニアビーズから作られる。混合ポットの体積は6.5Lである。
【0075】
混合ポットの体積に対する粒子10、粒子20、およびジルコニアビーズに相当する体積の比として定義される充填率はおよそ23%である。
【0076】
混合物は10時間に渡って3Dダイナミックミキサー、例えばTurbula(登録商標)に通される。
【0077】
それから、混合物はグローブボックスに戻されて、粗く(1mm)ふるい分けされて、ジルコニアビーズを回収する。
【0078】
粉末の混合物はSEMによって観察された(図2)。アルミニウム合金粒子6061は灰色で、ZrSi2の粒子は白色で見える。
【0079】
それから、粉末の混合物は3D印刷によってパーツを製造するために用いられる。
【0080】
例えば、最も高密度な立方体を得ることを可能にするSLM条件は次の通りである:レーザー出力:189~270W;レーザースピード:400~800mm/s、ベクトル空間:100μm;層厚さ(粉末床):20μm。
【0081】
比較のために、アルミニウムパーツがZrSi2粉末を追加することなしに作られる。
【0082】
アルミニウム粉末だけによって製造されたパーツ(図3)は割れを有する。1.9wt.%のZrSi2粉末を含有する粉末の混合物によって得られたパーツは、割れなしの高密度パーツ(>99%)である(図4)。
【0083】
ZrSi2粉末を追加することなしに製造されたパーツおよび1.9wt.%のZrSi2によって製造されたものは、電子線後方散乱回折によってキャラクタリゼーションされた(それぞれ図5および6):1.9wt.%のZrSi2の追加は微細構造の微細化に至り、高温割れの問題を回避することを可能にする。
【0084】
参照
[1]シュテンマー(Stemmer)ら著,「相補型金属酸化物半導体の代替的ゲート誘電膜についての二元酸化物の安定性の熱力学的考慮事項(Thermodynamic considerations in the stability of binary oxides for alternative gate dielectrics in complementary metal-oxide-semiconductors)」,ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Vacuum Science and Technology)B,第22巻(2004年),p.791.
[2]クルーエ(Clouet)ら著,「アルミニウム合金におけるAl3ZrおよびAl3Scの核生成:動的モンテカルロシミュレーションから古典的理論まで(Nucleation of Al 3 Zr and Al 3 Sc in aluminum alloys: From kinetic Monte Carlo simulations to classical theory)」,フィジカル・レビュー(Physical Review)B,第69巻(2004年),p.064109.
[3]ニップリング(Knipling)ら著,「希薄Al-TiおよびAl-Zr合金における核生成および析出強化(Nucleation and Precipitation Strengthening in Dilute Al-Ti and Al-Zr Alloys)」,メタラジカル・アンド・マテリアルズ・トランザクションズ(Metallurgical and Materials Transactions)A,第38巻(2007年),p.2552-2563.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】