(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084537
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】オレフィンの三量化
(51)【国際特許分類】
C07C 2/28 20060101AFI20220531BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20220531BHJP
C07C 7/04 20060101ALI20220531BHJP
B01J 31/08 20060101ALI20220531BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
C07C2/28
C07C11/02
C07C7/04
B01J31/08 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021182120
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】20206143
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンチ ピュヘラハチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーナ カネルボ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い選択性でオレフィン単量体からオレフィン三量体を製造する方法を提供する。
【解決手段】オレフィン単量体フィードおよび少なくとも一つの酸素含有のモデレーターを、二量化触媒を含むリアクター内にフィードし、触媒二量化反応およびオレフィン単量体と二量体の付加反応を行うために、40~140℃、および10~40barで、リアクターを操作し、オレフィン三量体を含む塔底生成物を分離するためにリアクター出口流を蒸留することを含む、オレフィン三量体を製造するための方法であって、軽質な生成物が、リアクター内にリサイクルされ、オレフィン単量体が、リアクター内にフィードされ、リアクター内にフィードされたオレフィン単量体フィードおよびリサイクルされたフィードの量は、リアクターに入るオレフィン単量体の二量体に対する質量比が、1:8~1:15の範囲から選択されるように制御される方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン単量体フィードおよび少なくとも一つの酸素含有のモデレーターを、二量化触媒を含むリアクター内にフィードすること、
オレフィン単量体とオレフィン単量体とのあいだの触媒二量化反応およびオレフィン単量体とオレフィン二量体とのあいだの付加反応を行うために、40~140℃の範囲から選択される温度、および、10~40barの範囲から選択される圧力で、前記リアクターを操作すること、
前記リアクターからリアクター出口流を取り出すこと、ならびに
オレフィン二量体を含む少なくとも一つのより軽質な生成物、およびオレフィン三量体を含むより重質な塔底生成物を分離するために前記リアクター出口流を蒸留すること
を含む、オレフィン三量体を製造するための方法であって、
前記より軽質な生成物の少なくとも一部分が、リサイクルフィードを提供するために前記リアクター内にリサイクルされ、
オレフィン単量体が、主に新鮮なオレフィン単量体フィードとして前記リアクター内にフィードされ、
前記リアクター内にフィードされた新鮮なオレフィン単量体フィードおよびリサイクルされたフィードの量は、前記リアクターに入るオレフィン単量体のオレフィン二量体に対する質量比が、1:8~1:15の範囲から選択されるように制御され、ならびに
触媒反応は、オレフィンが液相にとどまっている操作条件で行われる方法。
【請求項2】
新鮮なオレフィン単量体が前記リアクター内にフィードされ、および、前記新鮮なオレフィン単量体が、4つの炭素原子を有するオレフィン、好ましくはイソブテンを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記オレフィン単量体フィードが、少なくとも一つの以下:
C4オレイン、C5オレフィン、C4およびC5オレフィンの混合フィード、イソブテン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、および任意には少なくとも一つの不活性物、n-ブタン、i-ブタン、ブタジエン、蒸留留分、またはそれらの任意の混合物
を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記混合フィードを前記リアクター内にフィードする前に、前記リサイクルフィードを新鮮なオレフィン単量体と混合することによって、前記オレフィン二量体が前記リアクター内にリサイクルされる請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィン単量体の前記オレフィン二量体に対する質量比が、1:8~1:10の範囲から選択される請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オレフィン三量体製造のための選択性が、前記オレフィン単量体をベースとした重量-%として表されて、少なくとも約85%、好ましくは約90%である請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
オレフィン単量体の貫流転換率が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記二量化触媒が、酸触媒、好ましくは強酸性イオン交換樹脂触媒、最も好ましくはマクロ網状酸性イオン交換樹脂触媒である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記モデレーターが、水、デミウォーター、アルコール、tert-ブチルアルコール、またはこれらの任意の組み合わせを含む請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記モデレーターの量が、前記リアクターにフィードされる総計の0.01~0.5wt-%の範囲から、好ましくは0.1~0.4wt-%の範囲から、より好ましくは0.2~0.3wt-%の範囲から選択される請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記リアクターの操作温度が、50~130℃の範囲から、より好ましくは60~120℃の範囲から選択される請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記リアクターの操作圧力が、15~35barの範囲から、より好ましくは20~30barの範囲から選択される請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記リアクターを通る前記フィードの滞留時間が、毎時重量空間速(WHSV)として表されて、0.25~2 1/h、好ましくは0.25~0.4 1/hである請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸留が、1.8~2barの範囲から選択される圧力で、および、250℃のTmaxで行われる請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リサイクルフィードが、少なくとも95wt-%のオレフィン二量体を含む請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
a.酸触媒を受容するように構成される少なくとも一つのリアクターユニット、
b.イソドデセンからイソオクテンを分離するように構成される少なくとも一つの蒸留カラム、
c.前記リアクターユニットおよびオレフィン単量体のためのリザーバと液体接続している少なくとも一つのリアクターフィードライン、
d.前記リアクターユニットおよび前記蒸留カラムと液体接続している少なくとも一つのリアクター出口流ライン、
e.前記蒸留カラムおよび前記リアクターユニットと液体接続している少なくとも一つのリサイクルライン、ならびに
f.前記蒸留カラムおよび塔底生成物リザーバと流体接続している塔底生成物ライン
を備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を行うために構成される製造ユニット。
【請求項17】
前記リアクターユニットが、複数のリアクター容器を備え、および、下流のリアクター容器それぞれが、その前の上流のリアクター容器と比較してより多くの量の酸触媒を含む請求項16記載の製造ユニット。
【請求項18】
前記蒸留カラムからの少なくとも一つラインからの熱を回収するように構成される少なくとも一つの熱交換器をさらに備える請求項17記載の製造ユニット。
【請求項19】
前記オレフィン単量体、希釈液およびモデレーターの少なくとも一つを第1のリサイクルラインを通じて前記少なくとも一つのリアクターにリサイクルするように構成されている第1のリサイクルライン、ならびに、オレフィン二量体を前記少なくとも一つのリアクターにリサイクルするように構成されている第2のリサイクルラインを備える請求項16~18のいずれか1項に記載の製造ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの処理、特には、高い選択性でオレフィン単量体からオレフィン三量体を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために使用される現在の方法は、典型的は、オレフィンポリマーの混合物を生成し、および、あるポリマーへの選択性は低い。このようなポリマー混合物からの所望のポリマー種の製造は、複雑な分離技術の使用を必要とする。したがって、ポリマーの混合物の代わりに高い選択性で所望のオレフィンポリマーを製造する方法、および該方法であってオレフィン単量体が所望のポリマーに効率良く転換される農法を見出すことは有益であろう。
【0003】
特許文献1は、C4単量体から75%の二量体および15%の三量体を製造する2つのリアクタープロセスを開示している。
【0004】
イソドデカンは、イソブテンのオリゴマー化反応によって生成され得るイソブテンの三量体である。これらの三量体は、以前には、イソオクテンプロセスにおける不要な副生成物をして少量で得られてきたが、イソオクテン製造において、それらの量は酸素含有のモデレーター物質を用いることによって通常抑制される。しかしながら、オレフィン三量体はそれ自身興味の対象である生成物として考えられ得るため、イソブテンを、イソオクテン(二量体)またはより重質のオリゴマー(四量体およびそれより大きなポリマー)を生成および分離する必要なしに、選択的に優位に三量体へといかにして導くかという挑戦が起こっている。
【0005】
酸触媒イソブテンオリゴマー化は一般的に、イソブテンの転換が増加するに応じて、より幅広いオリゴマー分布をもたらす。したがって、以前のプロセスは、イソブテン三量体、すなわちイソドデセンを生成するために効率的ではなかった。本開示は、高いオレフィン転換、および同時に90%より高い選択率でさえもある多くの三量体生成物を達成するプロセスに関する。
【0006】
本開示の目的は、したがって、上述された不利益点を軽減するための生成物、プロセス、およびシステムを提供することである。特には、本開示は、高い選択性でオレフィン単量体からオレフィン三量体を製造するために使用され得るプロセスおよび製造ユニットを提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,544,791号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の様々な実施形態が求める保護の範囲は、添付の請求項によって設定される。
【0009】
本明細書において、オレフィン三量体を製造するための方法が開示され、該方法は、
オレフィン単量体フィードおよび少なくとも一つの酸素含有のモデレーターを、二量化触媒を含むリアクター内にフィードすること、
オレフィン単量体とオレフィン単量体とのあいだの触媒二量化反応およびオレフィン単量体とオレフィン二量体とのあいだの付加反応を行うために、40~140℃の範囲から選択される温度、および、10~40barの範囲から選択される圧力で、リアクターを操作すること、
リアクターからリアクター出口流を取り出すこと、ならびに
オレフィン二量体を含む少なくとも一つのより軽質な生成物、およびオレフィン三量体を含むより重質な塔底生成物を分離するためにリアクター出口流を蒸留すること、
を含み、ここで、
より軽質な生成物の少なくとも一部分が、リサイクルフィードを提供するためにリアクター内にリサイクルされ、
オレフィン単量体が、主に新鮮なオレフィン単量体フィードとしてリアクター内にフィードされ、
リアクターにフィードされた新鮮なオレフィン単量体フィードおよびリサイクルされたフィードの量は、リアクターに入るオレフィン単量体のオレフィン二量体に対する質量比が、1:8~1:15の範囲から選択されるように制御され、ならびに
触媒反応は、オレフィンが液相にとどまっている操作条件で行われる。
【0010】
本発明のプロセスの優位点は、オレフィン三量体のためのポリマー化反応(二量化および付加反応)の選択性である。別の優位点は、本発明のプロセスを用いれば、単一のレアクターシステム中であってもオレフィン三量体の製造を行うことが可能であることである。リアクター中で製造された二量体は、蒸留後に、他のより軽質な成分と共にリアクターへと戻されてリサイクルされ得るため、例えば二量体などのより軽質な成分をオレフィン三量体生成物から除去するためのさらなる分離技術は必要でない。したがって、本発明のプロセスは、オレフィン三量体の回収および反応種のリサイクルを同時に達成する。
【0011】
代替的には、複数のリアクター容器が単一のリアクターユニットの代わりに使用され得、これは三量体製造のためのプロセスの選択性を最適化するためのさらなる制御さえも可能にする。複数のリアクター容器の使用はまた、上述のシングルステップの蒸留と互換性がある。さらに、プロセスは、柔軟であり、別個の生成物流としてオレフィン二量体およびオレフィン三量体の回収を可能にする。後述されるように、本発明を2つの蒸留カラムを用いて行うこともまた可能である。
【0012】
本明細書において、上述のプロセスに適切なおよびそれを行うために構成される製造ユニットが開示され、該ユニットは、
a.酸触媒を受容するように構成される少なくとも一つのリアクターユニット、
b.イソドデセンからイソオクテンを分離するように構成される少なくとも一つの蒸留カラム、
c.リアクターユニットまたは複数のリアクターユニットおよびオレフィン単量体のための少なくとも一つのリザーバと液体接続している少なくとも一つのリアクターフィードライン、
d.リアクターユニットまたは複数のリアクターユニットおよび蒸留カラムと液体接続している少なくとも一つのリアクター出口流ライン、
e.蒸留カラムおよびリアクターユニットまたは複数のリアクターユニットと液体接続している少なくとも一つのリサイクルライン、ならびに
f.蒸留カラムおよび塔底生成物リザーバと流体接続している塔底生成物ライン
を備える。
【0013】
本発明は以下の図面を参照して非限定的な好ましい実施形態によってより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1はリサイクルされたオレフィン二量体を用いた本発明のプロセスにより得られた塔底生成物の組成を示す図である。
【
図2】
図2は「貫流」実験デザインを用いた場合、すなわちオレフィン二量体をリサイクルすることなしに得られた比較のための塔底生成物の組成を示す図である。
【
図3】
図3は製造ユニット100の実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は製造ユニット100の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語「酸素含有モデレーター(oxygen containing moderator)」は、酸素を含む化合物、例えば酸素化物または酸素、炭素および水素を含む化合物などを意味する。
【0016】
本明細書において使用される、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、および「含む(comprehending)」のより広い意味、ならびに、「からなる(consisting of)」および「からなる(consisting only of)」のより狭い表現を含む。
【0017】
ある実施形態において、プロセスは、産業的規模で、好ましくは連続プロセスとして、行われる。
【0018】
ある実施形態において、プロセスステップは、任意の態様、実施形態、または請求項にて規定される順番で行われる。別の実施形態において、その前のステップにおいて得られた生成物または中間体に対して行われることが特定されている任意のプロセスステップは、該生成物または中間体に直接的に、すなわち、該2つの連続したステップの間で生成物または中間体を化学的または物理的に変化させるであろう追加の、任意の、または補助の処置ステップなしに行われる。
【0019】
本発明の文脈において、リアクターフィード(reactor feed)との用語は、リアクターに入る任意のフィードを意味する。簡潔にするため、少なくとも一つの同一の成分、例えばオレフィン単量体が複数のフィードを介してリアクターにフィードされる場合、オレフィン単量体のリアクターフィードまたはオレフィン単量体リアクターフィードはこのような場合、リアクターへの該オレフィン単量体の総計を意味する。
【0020】
新鮮なオレフィン単量体フィードおよび新鮮なオレフィン単量体との用語は、新鮮である、すなわちリサイクルされていない、かつ、リアクター中の触媒反応のあいだに消費され、および、回収されるまたは消費される二量体または三量体生成物として主に除去されるオレフィン単量体の量を補充するためのオレフィン単量体の供給源を提供するためにリアクター中へとフィードされるオレフィン単量体を意味する。新鮮なオレフィン単量体は、単量体の二量体に対する質量比を所望のレベルに維持するために十分である量でフィードされる。したがって、オレフィン三量体製造が連続プロセスとして行われる場合、それまでにリアクターに入っていなかった新鮮な単量体がリアクターフィードラインを通じてリアクターにフィードされ、そして、オレフィン三量体が反応生成物としてプロセスから除去される。
【0021】
ある実施形態において、オレフィン単量体は、主に、新鮮なオレフィンフィード、すなわちリアクターに入るオレフィン単量体の総計の50wt-%より多くを構成する新鮮なオレフィン単量体としてリアクター内にフィードされる。別の実施形態において、リアクターに入る少なくとも55wt-%、60wt-%、70wt-%、80wt-%、または90wt-%のオレフィン単量体が新鮮である。
【0022】
ある実施形態において、リサイクルフィードは、未反応のオレフィン単量体を含む。
【0023】
リアクターとの用語は、例えば少なくとも一つのリアクターユニット、または少なくとも一つのリアクター容器などのリアクターを意味し、ここで、触媒反応が行われる。リアクターは、少なくとも一つの触媒床ならびに流体をリアクターに導入するおよびリアクターから流体を除去するための開口を備えていてもよい。
【0024】
オレフィンは、少なくとも水素および炭素から構成される化合物であり、少なくとも一つの二重結合を2つの炭素原子のあいだに含む。本発明のプロセスに適切なオレフィンは、2つまたはそれ以上の炭素原子を含み、直鎖または分岐構造であり得る。本発明における好ましいオレフィンは、イソブテンである。
【0025】
例えばオレフィン単量体、オレフィン二量体およびより重質なポリマーの混合物、または、様々な炭素原子数および二重結合数を有するオレフィンを含む混合物などのオレフィン混合物がまた、本発明のプロセスにおいて使用され得、リアクター内にフィードされ得る。ある実施形態において、オレフィン混合物を含むフィードが、混合フィードとしてリアクター内にフィードされる。
【0026】
本発明の文脈において、混合フィードまたは混合された単量体フィードとは、種々の炭素数を有するオレフィンまたは同じ炭素数を有するオレフィン異性体の混合物、およびそれらの組み合わせを意味する。ある実施形態において、混合フィードは、C4~C5オレフィンを含む。別の実施形態において、混合フィードは、C4+/-1の炭素数を有するオレフィンを含む。ある実施形態において、C4オレフィンよりも軽質である反応性成分は、反応生成物の蒸留を可能にするために、リアクターに入るフィードから除去される。
【0027】
ある実施形態において、オレフィン単量体フィードは、少なくとも一つの以下:
C4オレイン、C5オレフィン、C4およびC5オレフィンの混合フィード、イソブテン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、および任意には少なくとも一つの不活性物、n-ブタン、i-ブタン、ブタジエン、蒸留留分、またはそれらの任意の混合物
を含む。
【0028】
ある実施形態において、オレフィン単量体フィード、または混合フィードは、イソブテン、ならびに、C4オレフィン、C5オレフィン、C4およびC5オレフィンの混合フィード、イソブテン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、不活性物、n-ブタン、i-ブタン、ブタジエン、蒸留留分、またはそれらの任意の混合物のうちの少なくとも一つを含む、または本質的にそれらからなる。好ましい実施形態において、イソブテンは、混合フィードの主成分である。
【0029】
ある実施形態において、リアクターから出ていくリアクター出口流中の例えば不活性物、n-ブタン、i-ブタンなどの非反応性成分の量は、非常に少なく、したがって、それらは蒸留ステップにおけるオレフィン二量体およびオレフィン三量体の分離を顕著には妨げない。
【0030】
本発明のプロセスにおいて混合フィードを使用する場合の優位点は、混合フィード中に存在する不活性物の除去が効率的であり、および、不活性物の除去が生成物の収率に顕著な影響を及ぼさないことである。本発明のプロセスにおいて混合フィードが使用される場合、一巡あたりの高いモノマー転換率に起因してリアクターから出ていくリアクター出口流中に残っている反応性モノマーは非常に少量であり、そしてその結果、不活性物除去ステップにおいて単量体はほぼ失われない。
【0031】
リアクターから引き出されるリアクター出口流は、オレフィン二量体およびオレフィン三量体を少なくとも含み、および、任意にはより少量のオレフィン単量体、モデレーター、および不活性物を含む。
【0032】
本発明のプロセスを行うための製造ユニット100の実施形態が
図3に示されている。製造ユニット100は、リアクターユニット110および蒸留カラム210を備える。オレフィン単量体が、リザーバ410から、
図3において第一のリサイクルフィード220と、および、第2のリサイクルフィード230と流体接続されているリアクターフィードライン420を通してリアクター内へとフィードされる。リアクターユニット110から反応生成物がリアクター出口流120を通じて蒸留カラム210へと移動される。蒸留カラム210から、第1のリサイクルライン220がオレフィン単量体、希釈液およびモデレーターの少なくとも一つを含むより軽質の生成物をリアクターユニット110へと戻す。第2のリサイクルライン230は、主にオレフィン二量体から構成されるストリームをリアクターユニット110へと戻す。オレフィン三量体を含むより重質の塔底生成物は、蒸留カラムから塔底生成物ライン250を介して塔底生成物リザーバ510へと運ばれる。不活性物は、任意には、不活性物除去ライン240を投資手除去され得る。
【0033】
図3の実施形態において、リサイクルフィードは、第1のリサイクルライン220および第2のリサイクルライン230を通じてリアクターユニット110へと導かれる2つのリサイクルフィードから構成される。
図3において、リサイクルラインは、リアクターユニット110へと入るリアクターフィードライン420へと流体接続されているように描かれている。代替的には、リサイクルラインは、リアクターユニット110の別個の開口を介してリアクターユニット110へと導かれ得る。
【0034】
上述の2つのリサイクルライン220、230の代わりに、単一のリサイクルフィードラインもまた使用され得る。本実施形態において、単一のリサイクルラインは、オレフィン二量体およびオレフィン三量体の両方、および任意にはモデレーターをリアクターに戻してリサイクルする。
【0035】
ある実施形態において、オレフィン単量体リザーバ410は、混合フィードを提供するように構成される。
【0036】
別の実施形態において、オレフィン単量体リザーバ410は、複数の反応ユニットまたはリアクター容器への流体接続を提供するように構成される。複数のリアクター容器が順に提供される場合、好ましくはオレフィン単量体が一連のうちの第1のリアクター容器へとフィードされ、および任意には、後のリアクター容器はその前のリアクター容器からのリアクター出口流ラインからのフィードしか受け取らない。
【0037】
製造ユニット100の別の実施形態が
図4に示されており、ここで、混合フィードが好ましくは用いられる。本実施形態において、製造ユニット100は、リアクターユニット110および蒸留カラム210を備える。新鮮なオレフィンが、リザーバ410から、リアクターフィードライン420を通じてリアクターへとフィードされ、
図4において第1のリサイクルフィードライン220と、第2のリサイクルフィード230と、および任意の二量体フィードライン430と流体接続している。反応生成物は、リアクターユニット110からリアクター出口流ライン120を通じて蒸留カラム210へと移動される。第1のリサイクルライン220は、蒸留カラム210からオレフィン単量体、希釈液およびモデレーターのうちの少なくとも一つを含むより軽質な生成物をリアクターユニット110へと戻す。第2のリサイクルライン230は、主にオレフィン二量体から構成されるストリームをリアクターユニット110へと戻す。オレフィン三量体を含むより重質な塔底生成物は、蒸留カラムから塔底生成物ライン250を通じて塔底生成物リザーバ510へと導かれる。不活性物は、任意には、不活性物除去ライン240と通じて除去され得る。
図4はまた、蒸留カラムから出ていくアウトレット流から熱を除去するため、および、蒸留カラムに入る前にリアクター出口流ライン120を加熱するために使用され得る熱交換器310を示している。
図4において、オレフィン二量体は、副流を提供するために蒸留カラムの側面に流体接続されている第2のリサイクルライン230を通じて蒸留カラムから除去される。好ましくは、副流は、蒸気出口流として蒸留カラムから取り出され、これは、熱交換器における熱回収の後かつリサイクルフィードとしてリアクターユニット110に入る前に凝縮される。
【0038】
図4に示されるように、塔底生成物ライン250は、任意の熱交換器を通じて、ストリームが蒸留カラムに入る前にリアクター出口流ライン120を加熱するように処理され得る。
【0039】
ある実施形態において、オレフィン単量体フィード、好ましくは高純度のオレフィン単量体フィードが、
図3および
図4の実施形態では単一のリアクター容器であるリアクターユニットへとフィードされる。代替的には、複数のリアクター容器を備えるリアクターユニットが使用され得る。
【0040】
リアクターユニット110は、二量体触媒を含み、これは、2つのオレフィン単量体の間の二量化反応におけるオレフィン二量体の生成、および、オレフィン単量体とオレフィン二量体との間の付加反応におけるオレフィン三量体の形成を触媒する。追加で、少量のより重質なオレフィンオリゴマーが生成され得る。反応生成物は、リアクター出口流120としてリアクターから、未反応の不活性物、オレフィン単量体およびオレフィン二量体を、少なくともオレフィン三量体および任意にはオレフィン二量体より高い沸点を有する化合物を含むより重質の塔底生成物から分離する蒸留カラム210へと導かれる。任意の熱交換器310は、オレフィン三量体を含む塔底生成物から熱を回収するため、および、回収された熱を蒸留カラムに入る前にリアクター出口流を加熱するために使用するために使用され得る。
【0041】
図3および
図4の実施形態において、モデレーターは、リアクターフィードライン420を通じてオレフィン単量体フィードと共に、リサイクルライン220、239として蒸留カラムからリアクターユニットへとまたは分離インレット(図時せず)を通じて直接リアクターへと導かれるリサイクルフィードと共に、リアクターに加えられ得る。良好な混合を確実とするために、例えばリアクターフィードライン420またはリサイクルライン220、230などのリアクターに入るリアクターフィードと共にモデレーターをフィードすることが好ましい。
【0042】
ある実施形態において、新鮮な単量体は、高純度の単量体フィードとしてリアクターへとフィードされる。高純度のオレフィンは、好ましくは、少なくとも95wt-%の純度を有する。高純度のオレフィンの使用は、1つのカラムシステムにおいて特に優位であり、これは、オレフィン二量体またはオレフィン三量体と重なる沸点を有する成分を少量しか含まない反応生成物フィードをもたらすためである。
【0043】
オレフィン流がリアクターユニットまたは複数のリアクターユニットを通過したのち、結果として得られるリアクター出口流は、未反応のオレフィン(主に二量体)をより軽質な生成物として塔底生成物として取り出されるオレフィン三量体から分離する蒸留カラムへと導かれる。好ましくは、より軽質な生成物は、本質的にオレフィン単量体を含まず、これは、高い転換率を示している。ある実施形態において、プロセスパラメーターは、オレフィン単量体の貫流転換率が少なくとも96%であるように選択され、これによって、より軽質な生成物は、主に二量体を含み、少量のオレフィン単量体しか含まない。単量体が完全にまたはほぼ完全に触媒的転換において消費されるため、リアクターに入るフィードの制御は、単量体がほぼ専ら新鮮なオレフィン単量体フィードを通じてフィード中に添加されるためより簡易であり、そして、少量の単量体のみがリサイクルされた二量体フィード中に存在し得る。
【0044】
ある実施形態において、より軽質な生成物は、オレフィン三量体を含まない。オレフィン三量体の分離は、蒸留パラメーターによって制御され得る。本発明のプロセスにおいて、オレフィン三量体は、蒸留のあいだに塔底生成物中に濃縮され、そして、それらはプロセスから除去される。結果として、リサイクルフィードは、オレフィン二量体を含み、オレフィン三量体は、好ましくは、有意な量ではリサイクルフィード中に存在しない。
【0045】
ある実施形態において、塔底生成物は、塔底生成物の総計の重量をベースとして15wt-%未満のオレフィン四量体および任意には少なくとも80wt-%のオレフィン三量体を含む。ある実施形態において、塔底生成物は、塔底生成物の総計の重量をベースとして12wt-%未満のオレフィン四量体および任意には少なくとも80wt-%のオレフィン三量体を含む。80wt-%の代わりに、塔底生成物中のオレフィン三量体の量はまた、少なくとも85wt-%、または少なくとも88wt-%であってもよい。
【0046】
ある実施形態において、オレフィン単量体の貫流転換率は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%であり、任意は、オレフィン三量体の選択率は、オレフィン単量体の重量-%として表されて、少なくとも85%、少なくとも90%である。
【0047】
本発明の文脈において、用語希釈液(diluent)は、任意の不活性剤、または本発明のプロセスにおいてオレフィンよりの反応性の低い剤を意味する。リアクター中への希釈液の添加は、したがって、リアクター中のオレフィンの濃度を低下させ、プロセスにおけるオレフィンの触媒的転換の層度は適切な量の希釈液を選択することによって制御され得る。
【0048】
ある実施形態において、リサイクルフィードは、サイドリサイクル流として第1の蒸留カラムの側面から取り出され得る。ある実施形態において、このリサイクルフィードは、オレフィン単量体とオレフィン二量体の両方を含む。別の実施形態において、リサイクルフィードは、オレフィン二量体を含む。サイドリサイクル流を取り出す位置は、したがって、二量体が蒸留カラムから少なくとも部分的に除去されるが、リサイクルフィードは、より重質なおよびより軽質な化合物を有意な量では含まないように選択され得る。
【0049】
図4の実施形態において、単量体含有生成物および二量体含有のより軽質な生成物は、リアクター内に入る前に新鮮なオレフィン流と混合され得る。リサイクルされたフィードの量および新鮮なオレフィンの量は、リアクターに入るフィード中のオレフィン単量体のオレフィン二量体に対する質量比が所望のレベルを維持するように制御され得る。任意の二量体フィードライン430がまた、二量体をリアクター内にフィードするために使用され得、これによってプロセスのさらなる制御が達成される。
【0050】
本明細書中に記載される実施形態は、オレフィン単量体からの選択的な三量体製造に適切であり、そして、触媒反応の選択性がオレフィン三量体の形成を促進するようにオレフィンフィードおよびモデレーターを制御することを可能にする。
【0051】
モデレーターは、反応速度を少し抑制するために、および、触媒寿命の延長を確実とするために適用される。好ましいモデレーター量は、目的とされる主生成物に特有であり、そして、反応生成物およびプロセス条件を分析することによって当業者により選択され得る。オレフィン三量体の製造のため、好ましい量は、オレフィン二量体の製造において使用される量よりも顕著に少ない。モデレーターは、オレフィン単量体を含むリサイクルフィードと共に蒸留カラムからリアクターへと戻されてリサイクルされ得る。
【0052】
驚くべきことに、発明者らは、イソオクテン製造とは異なり、オレフィン三量体を製造するために最適化されている本発明においては、分離溶媒は必要でない。したがって、ある実施形態において、本発明のプロセスは、追加の溶媒なしで行われる。ある実施形態において、リアクター中にフィードされるオレフィン系フィードは、イソブテンおよびフィードがリアクターを通過した後に回収されたリサイクルオレフィン(主にイソオクテン)を含む。本発明のプロセスは、好ましい実施形態において、希釈液なしで行われ得るために優位である。主にオレフィン二量体のためにデザインされている従来のプロセスは、希釈液の使用を必要とし、これは、特に、高純度および高濃度のフィードが使用される場合にプロセスを非経済的なものとする。優位なことに、本発明のプロセスにおけるオレフィン単量体の高い転換率によって、不活性物の除去は未反応のオレフィン単量体の顕著な損失を引き起こさず、これはプロセスの効率を向上させ、そして、不活性物の除去を向上させる。
【0053】
単一のリアクターユニットを使用する代わりに、リアクターユニットは、別の容器に分けられ、および分配され得る。リアクター容器およびリアクター床の数を増加させることによって、反応条件が制御されやすくなり、結果として、例えばイソブテンなどのオレフィン単量体のほぼ完全な貫流転換率が達成され得る。断熱性の温度上昇の熱制御もまた、すく数のリアクターユニットが使用される場合より簡単になる。
【0054】
ある実施形態において、リアクターユニットは、連続したリアクターとして、または、並行のリアクターとして、またはそれらの組み合わせとして配置される複数のリアクター容器を備える。
【0055】
ある実施形態において、リアクターは、例えば、2つ、3つ、4つまたは5つのリアクター容器などの2つ以上のリアクター容器を備え、それぞれのリアクター容器は、少なくとも一つのリアクター床を備えている。2以上のリアクター容器の使用は、温度のより詳細な制御を可能とするため、そして、さらに個々のリアクター容器においてモデレーターおよび触媒の量を制御することを可能にするため優位である。リアクター容器のあいだで、フィードの温度は、フィードを冷却または加熱することのできる温度制御ユニットによって制御される。ある実施形態において、例えば温度および圧力などの反応条件は本質的には個々のリアクター容器において同じである。
【0056】
単一のリアクター容器の代わりにリアクターユニットとして複数のリアクター容器が使用される場合、リアクター容器のそれぞれが、二量体触媒、好ましくは酸性イオン交換樹脂触媒を含む。好ましくは、同じ触媒がそれぞれのリアクター容器において使用される。好ましくは、触媒の量は、第一のリアクター容器において低く保たれ、そして、その量はプロセスの下流方向に続くリアクター容器において増加される。第1のリアクター容器において触媒の量を制限することによって、例えば、温度がより制御されやすくなり、反応条件はより簡単に選択された範囲内に維持され得る。例えば、複数のリアクター容器が使用される場合、オレフィンは液相内に維持され得、そして、オレフィン流は、リアクター容器のあいだで冷却され、そして、オレフィン単量体のオレフィン二量体に対する質量比は、所望のレベルでより簡単に維持される。好ましくは、第1のリアクター容器へのリアクターフィードに加えて、プロセスのあいだ、さらなるオレフィンはその後のリアクター容器にフィードされず、すなわち、フィードされたオレフィン混合物は、混合物がリアクター容器を流れるあいだ、さらなるオレフィンによって補充されない。それぞれのリアクター容器において単一のリアクター床を有する複数のリアクター容器が使用される場合、触媒の量はリアクター容器中で増加し得る。複数のリアクター構成において、上流のリアクター容器は下流のリアクター容器よりも多くの触媒を含む。ある実施形態において、複数のリアクター構成は、3つまたは4つのリアクター容器を含む。
【0057】
複数のリアクター容器を含むリアクターユニットにおいて、リアクター容器の容量は、第1のリアクター容器から下流に向かって続くその後のリアクター容器へと増加され得る。ある実施形態において、第1および第2のリアクター容器の容量は、本質的に同じである、別の実施形態において、第3および第4のリアクター容器の容量は、本質的に同じである。
【0058】
さらに別の実施形態において、第3および第4のリアクター容器の容量は互いに本質的に同一であるが、それらの容量は、第1または第2のリアクター容器の容量よりも大きく、ここで、第1および第2のリアクター容器は本質的に同一の容量をもち得る。
【0059】
ある実施形態において、酸素含有モデレーター、またはモデレーターは、例えば、デミウォーター(demiwater)(脱ミネラル化された水(demineralized water))またはtert-ブチルアルコール(TBA)などの酸素化物である。代替的または追加で、モデレーターは、水とオレフィンとのあいだの反応の結果としてリアクター内で生成されるアルコールを含む。結果として、例えば2-ブタノールがリアクター内でイソブテンから生成され得る。
【0060】
オレフィン流がリアクターユニットを通過した後、結果として得られるリアクター出口流は、蒸留カラムへと導かれ、これは、より軽質な生成物として未反応のオレフィン(主にイソオクテン)およびモデレーター成分を塔底生成物として取り出されるオレフィン三量体から分離する。オレフィン単量体は、オレフィン二量体から主に構成されるより軽質な生成物中に少量の種として存在してもよい。単量体が触媒的転換においてほぼ完全に消費されるため、リアクター内部のフィード組成物の制御が、単量体が新鮮なオレフィン単量体フィードを通じてのみ添加されるためにより簡単になる。より軽質な生成物が溶解されたガスを含むのであれば、それらは周知の方法によってより軽質な生成物から分離され得る。
【0061】
モデレーターは、より軽質な化合物と共にリサイクル-リアクターループで循環され得、実質的に一定のレベルでその量を維持するように補充される。モデレーターは、好ましくは、新鮮なオレフィンフィード中またはリサイクルフィード中に存在する可能性のある水の量を超える、酸素化物の供給源としても作用し得るが、それだけでは本発明においては十分ではない量で使用される。モデレーターは、リアクターに入るフィード、例えば新鮮なオレフィン単量体を含むリアクターフィードなどと共に混合されることによってリアクター内にフィードされ得る。代替的には、モデレーターは、新鮮なオレフィン単量体と混合される前に、リサイクルされたオレフィン二量体流を混合され得る。本発明のプロセスにおける追加のモデレーターの使用は、それが三量体製造のための選択性を向上させるために優位である。
【0062】
蒸留のあいだに分離されたオレフィン二量体の少なくとも一部が、リアクターに戻されてリサイクルされ得る。代替的または追加で、オレフィン二量体の外部の供給源、好ましくはイソオクテンがオレフィン単量体と共にリアクター内にフィードされる。
【0063】
ある実施形態において、リアクター出口流は、リアクター内にリサイクルされるオレフィン二量体を分離するために蒸留される。
【0064】
ある実施形態において、リアクター中で反応しなかった成分は、蒸留カラム中で蒸留物として分離される。蒸留された化合物はプロセスから除去されるか、または、リアクター内にリサイクルされ得る。
【0065】
ある実施形態において、本発明のプロセスは、連続プロセスである。優位には、本発明のプロセスは、長期にわたって、何か月でさえも、メンテナンスのためにプロセスを中断することなくプロセスを続行させることを可能にする。先行技術におけるプロセスは、研究室スケールのパッチプロセスを使用しており、これらは、不安定性の問題により工業的スケールには適していない。特には、複数のリアクター容器を使用する場合、三量体製造プロセスは、本発明のプロセスにおいて効果的に制御化におかれ、そして、連続プロセスが長期間操業され得る。
【0066】
用語「二量化触媒」、または「触媒」は、オレフィン単量体のオレフィン二量体への二量化、および、オレフィン三量体を提供するためのオレフィン二量体とオレフィン単量体とのあいだの付加反応を触媒する触媒を意味する。本発明のプロセスにおけるある実施形態において、リアクターに入るフィードの大部分は、オレフィン二量体を含み、そして、オレフィン単量体の量は比較的低く維持されている。結果として、リアクター内の条件は、本発明において、二量化触媒が、リアクター内で形成されたオレフィン二量体が好ましくはオレフィン単量体と反応する反応を触媒するように選択され、これによって、オレフィン三量体が形成される。
【0067】
ある好ましい実施形態において、リアクターは、単一の触媒を含む。好ましくは、リアクターは、第1の触媒が2つの単量体のあいだの二量化反応に特異的であるが、単量体と二量体とのあいだの反応は触媒しない、および、第2の触媒は、単量体と二量体とのあいだの反応に特異的であるが、2つの単量体のあいだの二量化反応は触媒しない、といった2つの異なる触媒を含まない。本発明のプロセスは、したがって、複数の触媒を使用する従前のシステムと比較してより単純化されているという優位性を提供する。
【0068】
ある実施形態において、水はリアクターから、または、蒸留カラムから得られるより軽質な生成物から除去されない。
【0069】
ある実施形態において、触媒的反応は、オレフィンが液相中に維持されている、および、任意にはモデレーターもまた液相中に維持されている操作条件において行われる。好ましくは、リアクターの温度および圧力の少なくとも一つは、オレフィンがリアクター内で液相に存在するように選択される。少なくともオレフィンを液相中に維持することの優位性は、気体状のオレフィンを含むプロセスにおいてよりもリアクターの制御が達成され易いことである。
【0070】
ある実施形態において、新鮮なオレフィン単量体は、リアクター内にフィードされ、そして、新鮮なオレフィン単量体は、4つの炭素原子を有するオレフィン、好ましくはイソブテンを含む。
【0071】
ある実施形態において、混合フィードをリアクター内にフィードする前に、リサイクルフィードを新鮮なオレフィン単量体と混合することによって、オレフィン二量体は、リアクター内にリサイクルされる。ある実施形態において、オレフィン二量体は、合わせられた混合物がリアクターに入る前にリアクターフィードと混合される。オレフィン二量体をリアクターフィードと混合することは、それが第1の触媒と接触する前の効果的な混合を確実なものとするために優位である。さらに、2つのフィードのあいだの潜在的な温度差が取り除かれ得る。
【0072】
ある実施形態において、リサイクルフィードは、少なくとも95wt-%のオレフィン二量体を含む。
【0073】
ある実施形態において、リサイクルは、5wt-%未満、好ましくは3wt-%未満、2wt-%未満、または1wt-%未満のオレフィン三量体を含む。リサイクルフィード中のオレフィン三量体の量を低く維持することは、さらに、オレフィン三量体の製造へと向かうプロセスの選択性を向上させ、および、3つより多い単量体ユニットを有するオレフィンオリゴマーの形成を防ぐ。
【0074】
好ましい実施形態において、リアクターフィード中のオレフィン単量体のオレフィン二量体に対する質量比は、少なくとも約1:50、1:40、1:30、1:20、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、または1:2である。より好ましい実施形態において、リアクターに入るフィード中のオレフィン単量体のオレフィン二量体に対する質量比として表されるフィード質量比は、1:8~1:15、または1:8~1:10の範囲から選択される。上記で特定される量でのオレフィン二量体の過剰量を使用することは、触媒反応を、単量体の転換率を顕著に低下させることなくオレフィン三量体の形成へと向かわせる。
【0075】
ある実施形態において、オレフィン三量体製造のための選択性は、オレフィン単量体をベースとした重量-%として表されて、少なくとも約85%、好ましくは約90%である。プロセス条件に依存して、約99%でさえでもある選択性が達成され得る。少なくとも85%の選択性とは、オレフィン単量体の少なくとも85%が、オレフィン二量体およびオレフィン三量体が形成される際に、触媒転換において使用されることを意味している。
【0076】
ある実施形態において、オレフィン単量体の貫流転換率は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%である。
【0077】
ある実施形態において、二量化触媒は、酸触媒、好ましくは強酸性イオン交換樹脂触媒、最も好ましくはマクロ網状酸性イオン交換樹脂触媒である。
【0078】
ある実施形態において、触媒は固体である。
【0079】
ある実施形態において、触媒は、2つのオレフィン単量体の二量化反応、およびオレフィン単量体とオレフィン二量体との付加反応を触媒する。
【0080】
優位には、本発明のプロセスは、三量体形成のためのプロセスの選択性を向上させるために触媒およびモデレーターを使用する。好ましくは、例えばt-ブタノールまたはアルコールなどのモデレーターは、二量体形成のみを促進し、そして、リアクター中の水の存在がアルコールまたはエーテルの形成を導き、それによって三量体およびオリゴマーの形成を抑制していると推定されてきた。結果として、以前は、例えばアルコールまたはエーテルなどの極性化合物は、リアクター内に入る前にオレフィンフィードストックから除去されてきた。
【0081】
ある実施形態において、モデレーターは、水、デミウォーター、アルコール、tert-ブチルアルコール、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0082】
ある実施形態において、モデレーターの量は、リアクターにフィードされる総計の0.01~0.5wt-%の範囲から、好ましくは0.1~0.4wt-%の範囲から、より好ましくは0.2~0.3wt-%の範囲から選択される。リアクターへの総計のフィードは、リアクター内にフィードされる全てのフィードを含む。
【0083】
ある実施形態において、リアクター内部の温度は、40~140℃の範囲から、好ましくは50~130℃の範囲から、より好ましくは60~120℃の範囲から選択される。
【0084】
ある好ましい実施形態において、リアクター内部の圧力は、15~35barの範囲から、より好ましくは20~30barの範囲から選択される。
【0085】
ある好ましい実施形態において、リアクターは、50~130℃および13~35barで、50~130℃および20~30barで、60~120℃および15~35barで、または60~120℃および20~30barで操作される。好ましくは。リアクターの操作条件は、オレフィン単量体およびオレフィン二量体がリアクター中で液相にあるように選択される。ある好ましい実施形態において、リアクターを通るフィードの滞留時間は、毎時重量空間速(WHSV)として表されて、0.25~2 1/h、好ましくは0.25~0.4 1/hである。
【0086】
毎時重量空間速(WHSV)は、乾燥触媒の重量ユニット当たりに流れる時間当たりの新鮮なフィードの重量として規定される。
【0087】
ある実施形態において、蒸留は、1.8~2barの範囲から選択される圧力で、および、250℃のTmaxで行われる。
【0088】
ある実施形態において、プロセスは、さらに、蒸留カラムから得られる少なくとも一つのフィードから熱を回収することを含む。
【0089】
本発明のプロセスのある実施形態において、回収された熱は、それが蒸留カラムに入るまえにリアクター出口流を加熱するために使用される。別の実施形態において、熱は、それがリアクターに入る前にリアクターフィードを加熱するために使用される。
【0090】
ある実施形態において、蒸留カラムは、触媒的材料または反応ゾーンを含まない非反応性蒸留カラムであり、および、その中ではオレフィンは化学的に有意には反応しない。非反応性蒸留カラムは、したがって、例えば、フィード成分特にはオレフィン単量体またはオレフィン二量体またはオレフィン三量体を化学的に転換する反応性ゾーンまたは触媒的ゾーンを備える反応性蒸留カラムとは異なっている。
【0091】
ある実施形態において、蒸留は、連続した2つの蒸留カラムを使用して行われる。本実施形態は、オレフィン二量体よりも低いかもしれない沸点を有する成分を含む、またはオレフィン二量体よりも低い沸点を有する不活性物を含む混合フィードを使用する場合に、特に優位であり得る。したがって、不活性物は2つの蒸留カラム構成を使用することにより効果的に除去され得、そしてそれらの凝縮が回避され得る。
【0092】
2つの蒸留カラムが使用される場合、第1の蒸留カラム中で軽質不活性物が除去され、任意には、オレフィン単量体、希釈液およびモデレーターのうちの少なくとも一つが分離され、リアクター内に戻されてリサイクルされ、一方、オレフィン二量体および任意的なより重質な化合物は、中間性塔底生成物として除去され、そして、オレフィン単量体、希釈液およびモデレーターのうちの少なくとも一つをリアクター内に戻されてリサイクルために分離するための第2の蒸留カラムへとフィードされ、そしてオレフィン三量体および任意的なより重質の化合物が塔底生成物として回収される。2つの蒸留カラムプロセスにおいて、オレフィン二量体は、任意には第2の蒸留カラムからのリサイクルフィードから回収され得る。
【0093】
ある実施形態において、化学反応は、単一のリアクター内で行われる。本実施形態において、リサイクルされたオレフィン二量体は、オレフィン単量体が二量化触媒によって二量化される同じリアクターへと導かれる。
【0094】
蒸留カラムから得られるオレフィン三量体は、2つのオレフィン単量体を一緒に重合することによって形成されるオレフィンポリマーを含む。オレフィン三量体を形成するオレフィン単量体成分は、ある実施形態において、化学的に同一のオレフィン単量体、例えばある種のC4オレフィン、例えばイソブテンなどであってもよく、また、三量体は、異なる数の炭素原子を有するより軽質またはより重質のオレフィン単量体成分の少なくとも一つ、または、同じ数の炭素原子を有するが二重結合の数および/または異性化の程度に変化があるオレフィン単量体の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0095】
ある実施形態において、リアクターは、トリクルベッド反応器ではない。
【0096】
ある実施形態において、触媒的反応は、蒸留が行われる場所とは異なるユニット中で行われる。したがって、一実施形態において、反応は触媒的な蒸留カラム中では行われない。
【0097】
ある実施形態において、蒸留カラムは、オレフィンの二量化またはオリゴマー化が起こらない環境で行われる。
【0098】
ある実施形態において、本発明のプロセスは、さらに添加される溶媒、および/またはさらに添加される不活性剤の非存在下で行われる。優位には、本発明によって、二量体それ自体が化学的転換の速度を制御する剤として作用する。追加で、モデレーターが、リアクター中の触媒的転換の速度を制御するためにリアクター内へリサイクルされ得る。
【0099】
第1の態様のプロセスを行うために適切である製造ユニット100の実施形態が、
図3および
図4に提供される。
【0100】
製造ユニットは、任意には、熱回収ユニット、熱移送ユニット、および/またはヒーターユニットを含む。
【0101】
ヒーターユニットは、製造ユニット内に、リアクターフィードライン、蒸留カラムに入る前のリアクター出口流ライン、および蒸留カラムリボイラーのうちの少なくとも一つを加熱するように配置され得る。
【0102】
複数のリアクター容器が使用される場合、熱回収ユニット、または冷却ユニットは、リアクター容器のあいだに配置され得る。一つのリアクター容器から次のリアクター容器へと動くフィードから回収された熱は、好ましくは、プロセスの経済性を向上させるために製造ユニットの加熱ユニットにおいて使用され得る。
【0103】
製造ユニットのある実施形態において、リアクターは、複数のリアクター容器を備え、ここで、それぞれの下流のリアクターユニットは、その前の蒸留のリアクター容器と比較してより多くの量の酸触媒を含む。
【0104】
ある実施形態において、製造ユニットはさらに、オレフィン三量体を含む塔底生成物から熱を吸収するように、および、第1の蒸留カラムに入る前にリアクター出口流を加熱するするそれが使用されるように構成される少なくとも一つの熱交換器を備える。
【0105】
ある実施形態において、製造はさらに、オレフィン単量体、希釈液、およびモデレーターを第1のリサイクルラインを通じて少なくとも一つのリアクターへとリサイクルするように構成される第1のリサイクルライン、ならびに、オレフィン二量体を少なくとも一つのリアクターユニットへとリサイクルするように構成される第2のリサイクルラインを含む。
【0106】
実施例
以下の実施例は、クレームされる発明をより良好に示すために提供されるものであり、請求項によって規定される発明の範囲を限定するように理解されるべきではない。ある程度特定の材料が記載されているが、これは単に説明を目的とするものであり、発明を限定する意図はない。当業者であれば、発明性の能力を行使することなく、および本発明の歯にから逸脱することなく等価な方法または反応物を開発できるであろう。本明細書に記載される手順において、本発明の範囲内に留まりながら多くの変更がなされ得ることが理解されるべきである。
【0107】
本発明の例示的な実施形態が、リアクターセクションへの総計のフィードにおいて、0.12であるイソブテン:リサイクルフィード比、および、モデレーターであるTBA含有量0.37wt-%であるプロセスを行うことによって行われた。それぞれの出口温度が90℃である連続した3つのリアクターが用いられた。触媒は、酸性イオン交換樹脂(5.2mmol酸グラム当量)であった。
【0108】
結果
塔底生成物組成比:塔底生成物の総計の重量をベースとして、0.0%の二量体、89.2%の三量体、10.8%の四量体。結果は
図1に示されている。
【0109】
上記の実験条件と同様な条件における比較例において、反応セクションが、同じイソブテンフィードおよびイソブタン溶媒(50wt-%)および同様のモデレーターTBA含有量の貫流法で行われた。
【0110】
結果
塔底生成物組成比:塔底生成物の総計の重量をベースとして、68%の二量体、23%の三量体、9%の四量体。結果は
図2に示されている。
【0111】
貫流操作における二量体含有量は、フィード中のモデレーターTBAの容量を減少することによってさらに最小とされ得るが、同時に、四量体の量が増大し、そして、いずれより大きなオリゴマーが出現するであろう。したがって、実質的な三量体選択性は、本開示で記載された特徴を有するプロセス構成および適切な容量のモデレーターの両方を必要とする。
【0112】
本発明の異なる例示的な実施形態が上記で説明されている。実施形態は、本発明を実施する際に利用され得る選ばれた態様またはステップを説明することのみを目的として使用される。いくつかの実施形態は、発明の特定の態様を参照するためにのみ本明細書中に示されている。実施形態は、本発明の他の態様にも適用され得ることが理解されるべきである。結果として、実施形態および態様の任意の適切な組み合わせが形成されてよい。本明細書中に記載される態様または実施形態の任意の組み合わせはまた、態様、実施形態または実施例に記載されている非本質的な特長なしに行われ得る。
【外国語明細書】