(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084560
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/195 20060101AFI20220531BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220531BHJP
A61K 31/09 20060101ALI20220531BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220531BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220531BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20220531BHJP
A61P 11/10 20060101ALI20220531BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61K31/195
A61K31/192
A61K31/09
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/32
A61P11/10
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191049
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020196072
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517129485
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】川崎 崇典
(72)【発明者】
【氏名】八戸 嵩仁
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC05
4C076CC15
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD39
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4C076EE06H
4C076EE31
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4C076EE38
4C076FF23
4C076FF36
4C206AA01
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4C206CA34
4C206DA24
4C206FA01
4C206KA01
4C206MA05
4C206MA55
4C206NA03
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZA63
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含む固形製剤において、外観不良が改善された製剤を提供する。
【解決手段】イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含む素錠と、該素錠を被覆したポリビニルアルコールを含有するコーティング層を含む、固形製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン、トラネキサム酸、及びグアイフェネシンを含む素錠と、該素錠を被覆したポリビニルアルコールを含有するコーティング層を含む、固形製剤。
【請求項2】
コーティング層が、さらにヒプロメロースを含有する、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
コーティング層が、ポリビニルアルコールとヒプロメロースを重量比1:7~7:1で含有するものである、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
ポリビニルアルコールが部分けん化物である、請求項1~3いずれか記載の固形製剤。
【請求項5】
フィルムコーティング錠である、請求項1~4いずれか記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンが含まれる固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤、特に一般用医薬製剤では配合される主薬や添加物が多いため、相互作用を起こし、物理化学的変化(外観変化、融点降下、膨張、変色等)を起こしやすい。とりわけ、昇華性物質、低融点物質などを配合する製剤においては、薬物や添加物間の相互作用によって、保存中に物理化学的変化が生じ、錠剤が膨張する現象が見られる。この現象により、素錠であれば素錠表面や側面にヒビが出る場合があり、またコーティング錠であれば、コーティングの亀裂及び剥離のような外観不良が発生する。
【0003】
イブプロフェン及びグアイフェネシンは、それぞれ解熱鎮痛剤及び去痰剤として広く利用されており、抗炎症剤として汎用されるトラネキサム酸と組み合わせて総合感冒薬に使用されることがある。イブプロフェン及びグアイフェネシンは昇華性物質であることから、イブプロフェンと、トラネキサム酸と、グアイフェネシンを含有するコーティング錠においては、膨張によるコーティングの亀裂及び剥離など、外観不良が発生する問題があった。
【0004】
イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する医薬製剤における外観不良を解消するため、種々の技術が開発されている。
例えば、特許文献1では、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する医薬製剤に乾燥剤を包装工程で同封することにより、製剤の膨張の抑制、外観の安定化を達成している。
また、特許文献2には、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する医薬製剤を、ポリビニルアルコールとヒプロメロースを特定割合で含有するフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコート層に亀裂を生じない安定なフィルムコーティング錠が開示されている。
さらに、特許文献3では、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤に、マグネシウムを含む無機塩を添加することにより、高温保存時に生じる製剤の外観の変化を抑制している。
また、特許文献4では、イブプロフェン、トラネキサム酸、及びメタケイ酸アルミン酸ナトリウムなどの流動化剤を含む素錠と、該素錠を被覆したポリビニルアルコールを含有するフィルムコーティング層を含む、フィルムコーティング錠により、製剤の膨張の抑制、外観の安定化を達成している。
しかしながら、上記文献のいずれも、イブプロフェン及びトラネキサム酸に加えてグアイフェネシンを含有する医薬製剤における外観不良の問題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-145758
【特許文献2】特開2015-137238
【特許文献3】特開2017-002038
【特許文献4】特開2019-019128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含有する錠剤において、錠剤膨張によるコーティングの亀裂及び剥離などの外観不良が改善された固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含有する固形製剤において、これら三成分を含む素錠を被覆するコーティング層にポリビニルアルコールを含有させることにより、錠剤膨張(特に高湿度下での膨張)によるコーティングの亀裂及び剥離などの外観不良を顕著に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] イブプロフェン、トラネキサム酸、及びグアイフェネシンを含む素錠と、該素錠を被覆したポリビニルアルコールを含有するコーティング層を含む、固形製剤。
[2] コーティング層が、さらにヒプロメロースを含有する、上記[1]に記載の固形製剤。
[3] コーティング層が、ポリビニルアルコールとヒプロメロースを重量比1:7~7:1で含有するものである、上記[1]又は[2]に記載の固形製剤。
[4] ポリビニルアルコールが部分けん化物である、上記[1]~[3]いずれか記載の固形製剤。
[5] フィルムコーティング錠である、上記[1]~[4]いずれか記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含有する固形製剤において、錠剤膨張(特に高湿度下での膨張)によるコーティングの亀裂及び剥離などの外観不良を顕著に改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固形製剤は、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含む素錠と、該素錠を被覆したポリビニルアルコールを含有するコーティング層を含む。
【0010】
本発明における「イブプロフェン」は、日本薬局方に準拠したイブプロフェンであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「イブプロフェン」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の1~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。
【0011】
本発明における「トラネキサム酸」は、日本薬局方に準拠したトラネキサム酸であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「トラネキサム酸」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の1~70質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0012】
本発明における「グアイフェネシン」は、日本薬局方に準拠したグアイフェネシンであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の固形製剤中に含まれる「グアイフェネシン」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の1~60質量%、好ましくは2~40質量%、より好ましくは4~20質量%である。
【0013】
本発明における「イブプロフェン」と「トラネキサム酸」の配合割合は、特に限定されないが、例えば、イブプロフェンの1質量部に対して、トラネキサム酸が、0.2~3質量部、好ましくは0.6~2質量部である。
本発明における「イブプロフェン」と「グアイフェネシン」の配合割合は、特に限定されないが、例えば、グアイフェネシンの1質量部に対して、イブプロフェンが0.4~6質量部、好ましくは0.9~4質量部である。
本発明における「トラネキサム酸」と「グアイフェネシン」の配合割合は、特に限定されないが、例えば、グアイフェネシンの1質量部に対して、トラネキサム酸が0.5~7質量部、好ましくは1.5~6質量部である。
【0014】
本発明における「素錠」は、コーティング層で被覆される固形製剤を意味する。コーティング層で被覆可能なものであれば、その形状、大きさ、形態等は、特に限定されないが、例えば、打錠された固形製剤などが挙げられる。本発明における「素錠」は、上記「イブプロフェン」、「トラネキサム酸」及び「グアイフェネシン」を含有する。
【0015】
本発明における「素錠」には、本発明の効果を阻害しない限り、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシン以外の薬物、例えば、イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤、鼻炎用薬、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、グアイフェネシン以外の去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミン類、催眠鎮静剤、喀痰溶解剤、トラネキサム酸以外の抗炎症剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方などを配合してもよい。
【0016】
イブプロフェン以外の解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、ケトプロフェン、イソプロピルアンチピリン、ロキソプロフェンナトリウムなどが例示できる。
鼻炎用薬としては、例えば、塩酸プソイドエフェドリン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、タンニン酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、トリプロリジン塩酸塩水和物、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、クレマスチンフマル酸塩、メキタジンなどが例示できる。
鎮咳剤としては、例えば、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、塩酸アロクラミド、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩(クエン酸カルベタペンタン)、チペピジンヒベンズ酸塩、ジブナートナトリウム、クエン酸チペピジン、ジメモルファンリン酸塩などが例示できる。
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物などが例示できる。
グアイフェネシン以外の去痰剤としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、クエン酸チペピジン、L-カルボシステイン、塩化アンモニウム、l-メントール、アンモニア・ウイキョウ精、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示できる。
気管支拡張剤としては、例えば、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l-塩酸メチルエフェドリン、塩酸プソイドエフェドリン、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。
胃粘膜保護剤としては、例えば、グリシン、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウムなどが例示できる。
カフェイン類としては、例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物、無水カフェインなどが例示できる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1類又はその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンB2類又はその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンC類又はその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンP(ヘスペリジン)又はその誘導体若しくはそれらの塩類などが例示できる。
催眠鎮静剤としては、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。
喀痰溶解剤としては、例えば、塩化リゾチーム、L-エチルシステイン塩酸塩、塩酸メチルシステインなどが例示できる。
トラネキサム酸以外の抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその塩類などが例示できる。
抗コリン剤としては、例えば、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなどが例示できる。
生薬類としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタン含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジンなどが例示できる。
漢方処方としては、例えば、葛根湯、葛根湯加桔梗、桂皮湯、香蘇散、柴胡桂皮湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯などが例示できる。
【0017】
本発明における「素錠」は、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない限り、製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体又は添加剤をさらに含有していてもよい。
担体又は添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、酸味料、香料などが挙げられる。これら単体又は添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0018】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類;乳糖水和物、ショ糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトール等の糖又は糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルクなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
酸味料としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
上記した担体又は添加剤は、2種以上を適宜、混合して用いてもよい。
【0019】
本発明における「コーティング層」は、上記「素錠」を被覆したものであり、「ポリビニルアルコール」を含有する。ポリビニルアルコールは、PVAとも称される。
本発明における「ポリビニルアルコール」としては、特に限定されないが、「ポリビニルアルコール 部分けん化物」が望ましい。
本発明における「ポリビニルアルコール 部分けん化物」は、「医薬品添加物規格2013」(株式会社薬事日報社)に沿ったものであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明における「ポリビニルアルコール 部分けん化物」は、医薬品添加物事典2016に収載されており、例えば「PVA PE-05JPS」(日本酢ビ・ポバール株式会社)などが挙げられる。
本発明の固形製剤中に含まれる「ポリビニルアルコール」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の0.001~7質量%、好ましくは0.01~4.5質量%、特に好ましくは0.1~3質量%である。
【0020】
本発明における「コーティング層」は、ポリビニルアルコールに加えて、さらに「ヒプロメロース」を含有し得る。ヒプロメロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはHPMCとも称される。
本発明における「ヒプロメロース」は、日本薬局方に準拠したヒプロメロースであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明における「ヒプロメロース」は、医薬品添加物事典2016に収載されており、例えば「TC-5」(信越化学工業株式会社)などが挙げられる。
本発明の固形製剤中に含まれる「ヒプロメロース」の含量は、特に限定されないが、例えば、固形製剤全体の0.001~7質量%、好ましくは0.01~4.5質量%、特に好ましくは0.1~3質量%である。
【0021】
本発明における「コーティング層」は、上記のポリビニルアルコール及びヒプロメロースに加えて、他の添加物を含有していてもよい。
「コーティング層」に添加する添加剤としては、医薬品添加物事典2016、及び医薬品添加物ハンドブック2007に収載されている可塑剤及びコーティング剤である添加剤を使用することが好ましく、例えばメタクリル酸コポリマーL、オパドライOY-6950、マクロゴール6000、ポリエチレングリコール、酸化チタン、タルク等を好ましいものとして挙げることができる。
【0022】
本発明における「固形製剤」は、素錠がコーティング層で被覆されたものであり、例えば、コーティング錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、シュガーレス薄層が挙げられ、好ましくはフィルムコーティング錠である。
【0023】
本発明の固形製剤は、常法、例えば、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)、製剤機械技術ハンドブック(第2版、製剤機械技術研究会設立20周年記念出版編集委員会編、製剤機械技術研究会)のような刊行物に記載されている方法を用いて製造することができる。
例えば、医薬品に通常使用される添加剤及び必要により他の有効成分とともに、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを、一緒に、それぞれ別個に又は一部別個に造粒して顆粒を製造し、該顆粒を必要によりさらに添加剤を添加して打錠し、素錠を製造する。顆粒の造粒方法は特に限定されず、公知の方法(押し出し造粒、転動造粒、撹拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、溶融造粒等)を用いればよい。
次いで、得られた素錠を、ポリビニルアルコール、好ましくはヒプロメロース及び他の添加剤を含有するコーティング層で被覆することにより製造することができる。コーティングの方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0024】
上述のとおり、本発明によれば、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含む素錠を被覆するコーティング層にポリビニルアルコールを含有させることにより、外観不良が改善された固形製剤が製造できるが、イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシン以外の有効成分の組合せについても、本発明の技術が適用される。
例えば、相互作用による物理化学的変化(例、高湿度下での膨張)を起こしやすい「(イブプロフェン以外の)解熱鎮痛剤」及び「(トラネキサム酸以外の)抗炎症剤」、「(グアイフェネシン以外の)去痰剤」を有効成分として含有する固形製剤において、当該「解熱鎮痛剤」「抗炎症剤」及び「去痰剤」を含む素錠を被覆するコーティング層にポリビニルアルコールを含有させることにより、外観不良が改善された固形製剤、例えばフィルムコーティング錠を製造できる。
「解熱鎮痛剤」は、解熱鎮痛作用を有する薬剤を意味し、解熱鎮痛作用を有する薬剤であれば特に限定されないが、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンナトリウム、ナプロキセン、ケトプロフェン、サリチル酸、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、イソプロピルアンチピリンなどが挙げられる。また、本発明の固形製剤において、解熱鎮痛剤は、1種でも2種以上であってもよい。
「抗炎症剤」は、抗炎症作用を有する薬剤を意味し、抗炎症作用を有する薬剤であれば特に限定されないが、例えば、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、水溶性アズレン、グリチルリチン酸などが挙げられる。また、本発明の固形製剤において、抗炎症剤は、1種でも2種以上であってもよい。
「去痰剤」は、去痰作用を有する薬剤を意味し、去痰作用を有する薬剤であれば特に限定されないが、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、クエン酸チペピジン、L-カルボシステイン、アンモニア・ウイキョウ精、クレゾールスルホン酸カリウムなどが挙げられる。また、本発明の固形製剤において、解熱鎮痛剤は、1種でも2種以上であってもよい。
【実施例0025】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
(実施例1~2および比較例1)
下表1の区分Aに示した処方および配合比にしたがって各成分を混合し、打錠して素錠を得た。得られた素錠を、区分Bに示した処方にしたがってコーティングし、コーティング錠を得た。
【表1】
【0027】
(試験例)
上記で得られたコーティング錠を、苛酷試験条件下(60℃又は50℃)または加速試験条件下(40℃)で保存した。保存後のコーティング錠のフィルム割れの様子について評価を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
【0028】
イブプロフェン、トラネキサム酸およびグアイフェネシンが配合されることにより、苛酷試験及び加速試験時に錠剤膨張が見られ、表2に示すとおり、HPMCフィルム処方(比較例1)においてはフィルム割れが確認された。一方、PVA:HPMC=1:1、1:2のフィルム処方(実施例1、2)については、イブプロフェン及びグアイフェネシンの昇華が抑制され、苛酷試験条件下または加速試験条件下で保存後のフィルム割れを抑えることができた。
【0029】
(製造例)
下表3の区分Aに示した処方および配合比にしたがって各成分を混合し、打錠して素錠を得た。得られた素錠を、区分Bに示した処方にしたがってコーティングし、コーティング錠を得た。
イブプロフェン、トラネキサム酸及びグアイフェネシンを含有する固形製剤において、イブプロフェン、トラネキサム酸及グアイフェネシンを含有する素錠を被覆するコーティング層にポリビニルアルコールを含有させることにより、膨張(特に高湿度下での膨張)によるコーティングの亀裂及び剥離などの外観不良を顕著に改善できる。これにより、外観不良が生じず、良好な品質が確保された固形製剤を提供することができる。