(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084562
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】マグネトロン
(51)【国際特許分類】
H01J 23/20 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
H01J23/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021191071
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2018624.3
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】320003301
【氏名又は名称】テレダイン・ユーケイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ミネーオ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】サリーム,ケサル
(72)【発明者】
【氏名】クレイ,ダニエル ジェイムズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マグネトロン用のアノードや複数のストラップリングの構造と製造方法を提供する。
【解決手段】アノード101、及び、カソード102を収容するための円筒形のアノードシェル103と、カソード102の周りに角度間隔で配置された複数のベーン104とを備え、隣接するベーン104の間の角距離が、マグネトロン100の空洞共振器を提供するように構成される。各ベーン104は、アノードシェル103から中心に向かって半径方向内向き及び長手方向軸と平行に延びる。複数の環状ストラップリング113は、アノードシェルの長手方向軸と同心状に配置される。交互配列のベーン104は、交互配列のストラップリング113を支持するように構成される。各ベーン104がストラップリング113に連結し、少なくとも第1ストラップリング113と第2ストラップリングの断面寸法が異なる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロン用のアノードであって、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェルと、
シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーンであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、複数のベーンと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングであって、長手方向の間隔でシェルの長手方向軸と同心円状に配置される複数の環状ストラップリングとを備え、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する、アノード。
【請求項2】
前記少なくとも第1ストラップリングの断面寸法は、交互配列のアノードベーンの間に延びるストラップリングの少なくとも一部において、前記少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
少なくとも、隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する、請求項1または2に記載のアノード。
【請求項4】
複数のストラップリングのうちの少なくとも1つのストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも他のストラップリングの半径とは相違する、請求項1~3のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項5】
ストラップリングは、実質的に正方形および長方形の形状のうちの少なくとも1つである断面を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項6】
各ストラップリングは、各ストラップリングの断面寸法に基づいて、予め決定した配置に従ってシェルに渡って配置される、請求項1~5のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項7】
第1ストラップリングは、第2ストラップリングよりも大きい断面寸法を有し、
第1ストラップリングは、個々のベーンの長手方向端部に向けて配置される、請求項1~6のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項8】
第2ストラップリングは、第1ストラップリングよりも、個々のベーンの長さに沿ってより中央に配置される、請求項7に記載のアノード。
【請求項9】
少なくとも第1ストラップリングの断面寸法は、起動したマグネトロンのカソードによって発生した場合に、ベーンに沿った無線周波数RF電界をベーンの長さ全体に均一に分布するように予め決定されている、請求項1~8のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項10】
複数の環状ストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結された第1グループのストラップリングと、ベーンの第2サブセットに連結された第2グループのストラップリングとを含み、
少なくとも第1ストラップリングおよび少なくとも第2ストラップリングは、第1グループまたは第2グループのストラップリングの同じものに属する、請求項1~9のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項11】
マグネトロン用のアノードであって、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェルと、
シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーンであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、複数のベーンと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングであって、長手方向の間隔でシェルの長手方向軸と同心円状に配置される複数の環状ストラップリングとを備え、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、隣接ストラップリングのうちの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングのうちの第2ペア間の間隔とは相違する、アノード。
【請求項12】
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法および半径のうちの少なくとも1つが、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの個々の断面寸法および半径とは相違する、請求項11に記載のアノード。
【請求項13】
隣接ストラップリングの第1ペアは、隣接ストラップリングの第2ペアよりもマグネトロン内でより中心に配置され、
隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔は、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔よりも大きい、請求項11または12に記載のアノード。
【請求項14】
ストラップリング間の間隔は、起動したマグネトロンのカソードによって発生した場合に、ベーンに沿った無線周波数RF電界をベーンの長さ全体に均一に分布するように予め決定されている、請求項11~13のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項15】
マグネトロン用のアノードであって、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェルと、
シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーンであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、複数のベーンと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングであって、長手方向の間隔でシェルの長手方向軸と同心円状に配置される複数の環状ストラップリングとを備え、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの半径とは相違する、アノード。
【請求項16】
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する、請求項15に記載のアノード。
【請求項17】
隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する、請求項15または16に記載のアノード。
【請求項18】
少なくとも第1ストラップリングの半径は、起動したマグネトロンのカソードによって発生した場合に、ベーンに沿った無線周波数RF電界をベーンの長さ全体に均一に分布するように予め決定されている、請求項15~17のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項19】
複数の環状ストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結された第1グループのストラップリングと、ベーンの第2サブセットに連結された第2グループのストラップリングとを含み、
少なくとも第1ストラップリングおよび少なくとも第2ストラップリングは、第1グループまたは第2グループのストラップリングの同じものに属する、請求項15~18のいずれか1つに記載のアノード。
【請求項20】
マグネトロンの空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数のストラップリングであって、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法および半径のうちの少なくとも1つが、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの個々の断面寸法および半径の少なくとも1つとは相違する、複数のストラップリング。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1つに記載のアノードを含むマグネトロン。
【請求項22】
マグネトロン用のアノードを製造する方法であって、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心を有し、長手方向軸を定義する円筒形シェルを用意するステップと、
シェルの周りに角度間隔で配置される複数のベーンを用意するステップであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するためであり、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、ステップと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングを用意するステップと、
該ストラップリングを、シェル内部に長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置するステップと、含み、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する、方法。
【請求項23】
ストラップリングは、各ストラップリングの断面寸法に基づいて、予め定めた配置に従って配置される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1ストラップリングは、第2ストラップリングよりも大きい断面寸法を有し、
第1ストラップリングは、個々のベーンの長手方向端部に向けて配置され、
第2ストラップリングは、第1ストラップリングよりも、個々のベーンの長さに沿ってより中央に配置される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
ストラップリングは、少なくとも、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔を提供するように配置される、請求項22~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
複数のストラップリングのうちの少なくとも1つのストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも他のストラップリングの半径とは相違する、請求項22~25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
マグネトロン用のアノードを製造する方法であって、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心を有し、長手方向軸を定義する円筒形シェルを用意するステップと、
シェルの周りに角度間隔で配置される複数のベーンを用意するステップであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するためであり、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、ステップと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングを用意するステップと、
該ストラップリングを、シェル内部に長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置するステップと、含み、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する、方法。
【請求項28】
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
隣接ストラップリングの第1ペアは、隣接ストラップリングの第2ペアよりもマグネトロン内でより中心に配置され、
隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔は、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔よりも大きい、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
マグネトロン用のアノードを製造する方法であって、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心を有し、長手方向軸を定義する円筒形シェルを用意するステップと、
シェルの周りに角度間隔で配置される複数のベーンを用意するステップであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するためであり、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、ステップと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングを用意するステップと、
該ストラップリングを、シェル内部に長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置するステップと、含み、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの半径とは相違する、方法。
【請求項31】
各ストラップリングには、各ストラップリングを個々のベーンの開口に通すための少なくとも1つの切断部が設けられる、請求項22~30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
各ストラップリングは、一体的に形成される、請求項22~31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
配置されたストラップリングおよびベーンを一緒にろう付けするステップをさらに含む、請求項22~32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
ベーンを、シェルの内壁にろう付けするステップをさらに含む、請求項22~33のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マグネトロン用のアノード、その複数のストラップリング、マグネトロンおよびマグネトロン用のアノードを製造する方法に関する。装置および方法は、特定の用途を見つけてもよいが、限定的ではなく、例えば、粒子加速器での使用のためのマイクロ波発生の分野である。
【背景技術】
【0002】
マグネトロンが、種々の異なる目的で無線周波数(RF)エネルギー(例えば、マイクロ波など)を発生するために使用できる。例えば、マグネトロンによって発生したRFエネルギーは、粒子加速器(例えば、リニア加速器など)に提供され、帯電粒子、例えば、電子などの加速のための加速電磁界を確立するために使用される。いくつかの用途では、加速された電子がターゲット材料(例えば、タングステンなど)に入射するように方向付けられ、これにより電子のエネルギーの一部がターゲット材料からX線として放出される。
【0003】
発生したX線は、いくつかの用途では、医療イメージングおよび/または治療の目的のために使用できる。例えば、X線は、患者の身体の全部または一部に入射するように方向付けでき、1つ以上のセンサは、患者の身体によって透過および/または反射したX線を検出するように位置決めできる。検出されたX線を使用して、患者の身体の全部または一部の画像を形成でき、これにより身体の内部構造の詳細を解像可能になる。X線は、治療目的のために患者の身体の特定の部分に入射するように追加または代替として方向付けできる。例えば、X線は、体内で検出された腫瘍に入射するように方向付けして、腫瘍内の癌細胞を破壊することによって腫瘍を治療することができる。
【0004】
代替として、加速された電子は、治療目的のために患者の身体の特定の部分(例えば、腫瘍など)に入射するように方向付けできる。例えば、粒子加速器(例えば、リニア加速器など)から出力された電子は、コリメートされ、患者の身体の一部に入射するように方向付けできる。
【0005】
更なる用途では、粒子加速器を使用して、非医療目的のX線を発生できる。例えば、発生したX線は、撮像対象の非医療ターゲットに入射するように方向付けできる。1つ以上のセンサが、撮像ターゲットから透過および/または反射したX線を検出するように位置決めできる。検出されたX線を使用して、撮像ターゲットの内部構造を解像できる画像を形成できる。X線イメージングは、セキュリティ関連の用途で特定の使用を見つけることができ、別の方法で視界から隠されている物品を解像可能であるためである。例えば、X線イメージングを使用して、貨物が保管されているコンテナの外側から貨物を撮像できる。X線画像は、貨物の内容を識別するために、隠された貨物の一部を形成する様々な物体を解像可能である。
【0006】
マグネトロンのいくつかの用途を上述したが、そこでは発生したRFエネルギーを使用して、電子などの荷電粒子を加速している。しかしながら、マグネトロンは、他の用途、例えば、レーダーでの使用のためのRFエネルギーの発生など見つけることができる。
【0007】
この文脈において、本開示が考案された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、マグネトロン用のアノードが提供され、該アノードは、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェルと、
シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーン(羽根)であって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離(angular separation)が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、複数のベーンと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングであって、長手方向の間隔でシェルの長手方向軸と同心円状に配置される複数の環状ストラップリングとを備え、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する。
【0009】
上述のアノードがマグネトロンに実装された場合、使用中のマグネトロンのパワー出力は、従来のマグネトロンのパワー出力と比較して増加できる。ベーンの長さに沿って分布する異なる寸法を備えたストラップを提供することによって、ストラップの各々が同じ寸法を有する先行技術と比べて、アノードのベーンに沿って生成されるRF電界は、ベーンの長さに沿ってより均一に分布できるようになる。マグネトロンで発生するRF電界の強度は、ベーンの長さに沿って比較的一定にできるため、これにより電気力学的相互作用プロセスの効率を改善し、ベーンに沿って発生する局所的加熱のリスクを減少させ、そうでなければ、マグネトロンで発生する電磁界に影響を与える可能性がある。従って、これによりアノードのベーンの電気的特性を改善し、マグネトロンに渡るRF電界全体がより精度良く正確に制御可能になり、マグネトロンによって出力されるパワーを改善することができる。さらに、ベーンに沿った局所的加熱のリスクが著しく減少するため、これによりベーンが時間経過とともに侵食されるリスクを低減し、マグネトロンの寿命を改善する。先行技術のマグネトロンと比較して、本開示の分散ストラップ手法は、調整された寸法を有する複数のストラップの使用を可能にし、こうして安定性およびパワー処理能力を改善する。
【0010】
少なくとも第1ストラップリングの断面寸法および、少なくとも第2ストラップリングの断面寸法は、ベーン間に延びるストラップリングの部分の断面寸法を参照することがある。より詳細には、各ストラップリングは、それらが電気的に接触しているベーン(各交互配列のベーン)の間に延びる第1部分と、ストラップリングがベーンと直接接触している第2部分とを含む。ストラップリングの第2部分は、各ストラップリングについてストラップリングと各交互配列のベーンとの間の電気的接続を提供する(個々のベーンとストラップリングとの間の境界面において)。ストラップリングの第1部分は、交互配列のベーン間の電気的接続を提供する。少なくとも第1ストラップリングの第1部分の断面寸法が、少なくとも第2ストラップリングの第1部分の断面寸法とは相違してもよい。従って、交互配列のベーン間のストラップリングによって提供される電気接続の断面寸法が、異なるストラップリングについて相違してもよい(即ち、少なくとも第1ストラップリングおよび少なくとも第2ストラップリングについて相違する)。少なくともいくつかの例では、交互配列のベーン間のストラップリングによって提供される電気接続の断面積が、異なるストラップリングについて相違することがある(即ち、少なくとも第1ストラップリングおよび少なくとも第2ストラップリングについて相違する)。
【0011】
少なくとも、隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違してもよい。ストラップリングは、ベーンの長さに沿って不均一に分布してもよい。このようにストラップリングを配置することによって、先行技術と比較して、ベーンの長さ全体に沿ってより均一に分布したRF電界を生成でき、それにより使用時に、アノードが実装されたマグネトロンのパワー出力を改善でき、マグネトロンの寿命および電気的特性も改善できる。
【0012】
複数のストラップリングのうちの少なくとも1つのストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも他のストラップリングの半径とは相違してもよい。このようにストラップリングを配置することによって、先行技術と比較して、ベーンの長さ全体に沿ってより均一に分布したRF電界を生成でき、それにより使用時に、アノードが実装されたマグネトロンのパワー出力を改善でき、マグネトロンの寿命および電気的特性も改善できる。ここで説明したように、ストラップリングの半径は、ストラップリングの断面半径ではなく、ストラップリング全体の半径(実質的にリング状の形状を有してもよい)を参照することがある。即ち、ここで説明したように、ストラップリングの半径は、ストラップリングによって定義されるリング形状の半径を参照することがある。ストラップリングの半径は、長手方向軸からリングの中心半径位置までの半径距離として定義できる。
【0013】
ストラップリングは、実質的に正方形および長方形の形状のうちの少なくとも1つである断面を有してもよい。こうした断面プロファイルを備えたストラップリングは、製造および組み立ての容易さを改善できる。
【0014】
同じ断面寸法を有するストラップリングは、各ストラップリングの断面寸法に基づいて、予め定めた配置に従ってシェルに渡って配置できる。そうすることで、これはさらに、ベーンの長さに沿って発生するRF電界をより均一にするように貢献するとともに、局所的加熱を減少させることによって、より大きな構造的完全性(structural integrity)を提供する。例えば、第1ストラップリングは、第2ストラップリングよりも大きい断面寸法を有してもよく、第1ストラップリングは、個々のベーンの長手方向端部に向けて配置してもよい。第2ストラップリングは、第1ストラップリングよりも、個々のベーンの長さに沿ってより中央に配置してもよい。比較的厚いストラップをベーンの端部に向かって配置してもよく、一方、比較的小さいストラップをベーンに沿ってより中央に配置してもよい。
【0015】
少なくとも第1ストラップリングの断面寸法は、起動したマグネトロンのカソードによって発生した場合に、ベーンに沿った無線周波数RF電界をベーンの長さ全体に均一に分布するように予め決定してもよい。
【0016】
上述したように、各ベーンは交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングは交互配列のベーンに連結する。従って、複数の環状ストラップリングは、第1グループのストラップリングおよび第2グループのストラップリングを含むと見なすことができ、第1グループのストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結し、第2グループのストラップリングは、ベーンの第2サブセットに連結する。第1グループのストラップリングに属するストラップリングは、第2グループのストラップリングに属するストラップリングと交互に配置される。即ち、各交互配列のストラップリングは、ストラップリングの同じグループに属する。
【0017】
少なくともいくつかの例によれば、第1グループのストラップリングに属する少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、第1グループのストラップリングに属する少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違してもよい。第2グループのストラップリングに属する少なくとも第3ストラップリングの断面寸法が、第2グループのストラップリングに属する少なくとも第4ストラップリングに属する断面寸法とは相違してもよい。即ち、第1グループのストラップリングおよび/または第2グループのストラップリングは、異なる断面寸法を有する異なるストラップリングを含んでもよい。上述したように、ここで参照する断面寸法は、交互配列のベーンの間に延びて、ベーン間の電気的接続を提供する、ストラップリングの少なくとも第1部分の断面寸法に対応してもよい。少なくともいくつかの例では、第1グループのストラップリングおよび/または第2グループのストラップリングは、異なる断面積を有する異なるストラップリング(交互配列のベーン間の電気的接続を提供する)を含んでもよい。
【0018】
少なくとも第1ストラップリングの断面寸法は、交互配列のアノードベーンの間に延びるストラップリングの少なくとも一部において、少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違してもよい。
【0019】
複数の環状ストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結された第1グループのストラップリングと、ベーンの第2サブセットに連結された第2グループのストラップリングとを含んでもよい。少なくとも第1ストラップリングおよび少なくとも第2ストラップリングは、第1グループまたは第2グループのストラップリングの同じものに属してもよい。
【0020】
本開示の第2態様によれば、マグネトロン用のアノードが提供され、該アノードは、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェルと、
シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーンであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、複数のベーンと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングであって、長手方向の間隔でシェルの長手方向軸と同心円状に配置される複数の環状ストラップリングとを備え、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、隣接ストラップリングのうちの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングのうちの第2ペア間の間隔とは相違する。
【0021】
上述のアノードがマグネトロンに実装された場合、使用中のマグネトロンのパワーを増加できる。ベーンの長さに沿って不均一に分布するストラップを提供することによって、ストラップがマグネトロン全体に均一に分布する場合と比較して、アノードのベーンに沿って生成されるRF電界は、アノードベーンの長さに沿ってより均一に分布できる。マグネトロンで発生するRF電界の強度は、ベーンの長さに渡って比較的一定にできるため、これによりベーンに沿って発生する局所的加熱のリスクを減少させ、そうでなければ、マグネトロンで発生する電磁界に影響を与える可能性がある。従って、これによりアノードのベーンの電気的特性を改善し、マグネトロンに渡るRF電界全体がより精度良く正確に制御可能になり、マグネトロンによって出力されるパワーを改善することができる。さらに、ベーンに沿った局所的加熱のリスクが著しく減少するため、これによりベーンが時間経過とともに侵食されるリスクを低減し、マグネトロンの寿命を改善する。先行技術のマグネトロンと比較して、本開示の分散ストラップ手法は、調整された寸法を有する複数のストラップの使用を可能にし、こうして安定性およびパワー処理能力を改善する。
【0022】
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法および半径のうちの少なくとも1つが、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの個々の断面寸法および半径とは相違してもよい。このようにストラップリングの断面寸法(異なる断面積をもたらしてもよい)を変化させることによって、これにより先行技術と比較して、ベーンの長さに沿ってより均一に分布するRF電界を生成でき、それにより使用時に、アノードが実装されたマグネトロンのパワー出力を改善することができ、マグネトロンの寿命および電気的特性を改善する。
【0023】
第1態様を参照して上述したように、ここで参照する断面寸法は、交互配列のベーンの間に延びて、ベーン間の電気的接続を提供する、ストラップリングの少なくとも第1部分の断面寸法に対応してもよい。さらに上述するように、ここで説明するストラップリングの半径は、ストラップリングの断面半径ではなく、全体としてのストラップリングの半径(実質的にリング状の形状を有してもよい)を参照することがある。即ち、ここで説明するストラップリングの半径は、ストラップリングによって定義されるリング形状の半径を参照してもよい。ストラップリングの半径は、長手方向軸からリングの中心半径位置までの半径距離として定義してもよい。
【0024】
隣接ストラップリングの第1ペアは、隣接ストラップリングの第2ペアよりもマグネトロン内でより中心に配置してもよく、隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔は、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔よりも大きい。そうすることで、これはさらに、ベーンの長さに沿って発生するRF電界をより均一にすることに貢献するとともに、局所的加熱を減少させることによって、より大きな構造的完全性を提供する。
【0025】
ストラップリング間の間隔は、起動したマグネトロンのカソードによって発生した場合に、ベーンに沿った無線周波数RF電界をベーンの長さ全体に均一に分布するように予め決定してもよい。そうすることで、これにより局所的加熱が減少し、これによりベーン侵食のリスクを減少させる。上述したように、各ベーンは、交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングは交互配列のベーンに連結する。従って、複数の環状ストラップリングは、第1グループのストラップリングおよび第2グループのストラップリングを含むと見なすことができ、第1グループのストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結し、第2グループのストラップリングは、ベーンの第2サブセットに連結する。第1グループのストラップリングに属するストラップリングは、第2グループのストラップリングに属するストラップリングと交互に配置される。即ち、各交互配列のストラップリングは、ストラップリングの同じグループに属する。
【0026】
少なくともいくつかの例によれば、第1グループのストラップリング(これは第1グループ内で互いに隣接している)に属するストラップリングの第1ペア間の間隔が、第1グループのストラップリング(これは第1グループ内で互いに隣接している)に属するストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違してもよい。第2グループのストラップリング(これは第2グループ内で互いに隣接している)に属するストラップリングの第1ペア間の間隔が、第2グループのストラップリング(これは第2グループ内で互いに隣接している)に属するストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違してもよい。即ち、第1グループのストラップリングおよび/または第2グループのストラップリングは、それらの間に異なる間隔を有するストラップリングの異なるペア(該グループ内で互いに隣接している)を含んでもよい。
【0027】
本開示の第3態様によれば、マグネトロン用のアノードが提供され、該アノードは、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェルと、
シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーンであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、複数のベーンと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングであって、長手方向の間隔でシェルの長手方向軸と同心円状に配置される複数の環状ストラップリングとを備え、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの半径とは相違する。
【0028】
上述のアノードがマグネトロンに実装された場合、使用中のマグネトロンのパワーを増加できる。ベーンの長さに沿って不均一に分布するストラップを提供することによって、ストラップがマグネトロン全体に均一に分布する場合と比較して、アノードのベーンに沿って生成されるRF電界は、アノードベーンの長さに沿ってより均一に分布できる。マグネトロンで発生するRF電界の強度は、ベーンの長さに渡って比較的一定にできるため、これによりベーンに沿って発生する局所的加熱のリスクを減少させ、そうでなければ、マグネトロンで発生する電磁界に影響を与える可能性がある。従って、これによりアノードのベーンの電気的特性を改善し、マグネトロンに渡るRF電界全体がより精度良く正確に制御可能になり、マグネトロンによって出力されるパワーを改善することができる。さらに、ベーンに沿った局所的加熱のリスクが著しく減少するため、これによりベーンが時間経過とともに侵食されるリスクを低減し、マグネトロンの寿命を改善する。先行技術のマグネトロンと比較して、本開示の分散ストラップ手法は、調整された寸法を有する複数のストラップの使用を可能にし、こうして安定性およびパワー処理能力を改善する。
【0029】
上述のように、ここで説明するストラップリングの半径は、ストラップリングの断面半径ではなく、全体としてストラップリングの半径(実質的にリング状の形状を有してもよい)を参照することがある。即ち、ここで説明するストラップリングの半径は、ストラップリングによって定義されるリング形状の半径を参照することがある。ストラップリングの半径は、長手方向軸からリングの中心半径位置までの半径距離として定義できる。
【0030】
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違してもよい。上述したように、ここで参照する断面寸法は、交互配列のベーンの間に延びて、ベーン間の電気的接続を提供する、ストラップリングの少なくとも第1部分の断面寸法に対応してもよい。隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違してもよい。
【0031】
少なくとも第1ストラップリングの半径は、起動したマグネトロンのカソードによって発生した場合に、ベーンに沿った無線周波数RF電界をベーンの長さ全体に均一に分布するように予め決定してもよい。
【0032】
上述したように、各ベーンは、交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングは交互配列のベーンに連結する。従って、複数の環状ストラップリングは、第1グループのストラップリングおよび第2グループのストラップリングを含むと見なすことができ、第1グループのストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結し、第2グループのストラップリングは、ベーンの第2サブセットに連結する。第1グループのストラップリングに属するストラップリングは、第2グループのストラップリングに属するストラップリングと交互に配置される。即ち、各交互配列のストラップリングは、ストラップリングの同じグループに属する。
【0033】
少なくともいくつかの例によれば、第1グループのストラップリングに属する少なくとも第1ストラップリングの半径は、第1グループのストラップリングにも属する少なくとも第2ストラップリングの半径とは相違してもよい。第2グループのストラップリングに属する少なくとも第3ストラップリングの半径は、第2グループのストラップリングにも属する少なくとも第4ストラップリングの半径とは相違してもよい。即ち、第1グループのストラップリングおよび/または第2グループのストラップリングは、異なる半径を有する異なるストラップリングを含んでもよい。
【0034】
複数の環状ストラップリングは、ベーンの第1サブセットに連結された第1グループのストラップリングと、ベーンの第2サブセットに連結された第2グループのストラップリングとを含んでもよい。少なくとも第1ストラップリングおよび少なくとも第2ストラップリングは、第1グループまたは第2グループのストラップリングの同じものに属してもよい。
【0035】
【0036】
本開示の第4の態様によれば、マグネトロンの空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数のストラップリングが提供され、複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法および半径のうちの少なくとも1つが、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの個々の断面寸法および半径の少なくとも1つとは相違する。
【0037】
上述のように、ここで参照される断面寸法は、交互配列のベーン間に延びており、交互配列のベーン間の電気的接続を提供する、ストラップリングの少なくとも第1部分の断面寸法に対応してもよい。さらに上述するように、ここで説明するストラップリングの半径は、ストラップリングの断面半径ではなく、全体としてのストラップリングの半径(実質的にリング状の形状を有してもよい)を参照することがある。即ち、ここで説明するストラップリングの半径は、ストラップリングによって定義されるリング形状の半径を参照することがある。ストラップリングの半径は、長手方向軸からリングの中心半径位置までの半径距離として定義してもよい。
【0038】
本開示の第5の態様によれば、ここで説明するようなアノードを含むマグネトロンが提供される。
【0039】
本開示の第6の態様によれば、マグネトロン用のアノードを製造する方法が提供される。該方法は、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心を有し、長手方向軸を定義する円筒形シェルを用意するステップと、
シェルの周りに角度間隔で配置される複数のベーンを用意するステップであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するためであり、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、ステップと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングを用意するステップと、
該ストラップリングを、シェル内部に長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置するステップと、含み、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する。
【0040】
ストラップリングは、各ストラップリングの断面寸法に基づいて、予め定めた配置に従って配置してもよい。第1ストラップリングは、第2ストラップリングよりも大きい断面寸法を有してもよく、第1ストラップリングは、個々のベーンの長手方向端部に向けて配置してもよい。第2ストラップリングは、第1ストラップリングよりも、個々のベーンの長さに沿ってより中央に配置してもよい。
【0041】
ストラップリングは、少なくとも、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔を提供するように配置してもよい。
【0042】
複数のストラップリングのうちの少なくとも1つのストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも他のストラップリングの半径とは相違してもよい。
【0043】
本開示の第7の態様によれば、マグネトロン用のアノードを製造する方法が提供される。該方法は、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心を有し、長手方向軸を定義する円筒形シェルを用意するステップと、
シェルの周りに角度間隔で配置される複数のベーンを用意するステップであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するためであり、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、ステップと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングを用意するステップと、
該ストラップリングを、シェル内部に長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置するステップと、含み、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
少なくとも、隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する。
【0044】
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違してもよい。
【0045】
隣接ストラップリングの第1ペアは、隣接ストラップリングの第2ペアよりもマグネトロン内でより中心に配置してもよく、隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔は、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔よりも大きい。
【0046】
本開示の第8の態様によれば、マグネトロン用のアノードを製造する方法が提供される。該方法は、
マグネトロンのカソードを収容するためのシェルの中心を有し、長手方向軸を定義する円筒形シェルを用意するステップと、
シェルの周りに角度間隔で配置される複数のベーンを用意するステップであって、各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するためであり、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する、ステップと、
空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリングを用意するステップと、
該ストラップリングを、シェル内部に長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置するステップと、含み、
交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、
複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの半径が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの半径とは相違する。
【0047】
各ストラップリングには、各ストラップリングを個々のベーンの開口に通すための少なくとも1つの切断部(break)が設けられてもよい。これは、アノードの迅速かつ効率的な組み立てのために特に有益になることがある。
【0048】
各ストラップリングは、一体的に形成してもよい。
【0049】
該方法は、配置されたストラップリングおよびベーンを一緒にろう付けするステップをさらに含んでもよい。該方法は、ベーンを、シェルの内壁にろう付けするステップをさらに含んでもよい。
【0050】
ここで説明する態様および/または例のいずれかにおいて、各ストラップリングは、ストラップリング全体の周りに実質的に均一な断面を有してもよい。即ち、ストラップリングの断面寸法、プロファイルおよび/または断面積は、ストラップリング全体の周りで実質的に一定でもよい。
【0051】
ここで説明する態様および/または例のいずれかにおいて、ストラップリングの各々は、それらがベーンを通過するときに各ベーンによって囲まれるように配置できる。例えば、ベーンは、ストラップリングが通過する孔を含んでもよく、ストラップリングは、それらがベーンを通過するポイントにおいて孔によって完全に囲まれる。ベーンは、単一のストラップリングだけがベーンの各孔に位置決めされるように、各ストラップリング用の孔を含むことができる。各ベーンは、第1グループのストラップリングのための第1グループの孔と、第2グループのストラップリングのための第2グループの孔とを含んでもよい。各ベーンにおいて、第1グループおよび第2グループの孔の一方は、ベーンが、これらの孔を通過するストラップリングと電気的に接触するように寸法設定できる。第1グループおよび第2グループの孔の他方は、これらの孔を通過するストラップリングがこれらの孔でベーンと電気的に接触しないように寸法設定できる。第1グループの孔に属する孔は、アノードベーンに沿った第2グループの孔に属する孔と交互に配列してもよい。こうしてベーンは、交互配列のストラップリングとの電気的接触を介して、交互配列のストラップリングに連結する。
【0052】
ストラップリングがベーンを通過する際、ストラップリングを囲むベーンを提供することによって、ストラップリングは、アノードベーン間のギャップにおいてカソードに対して露出するだけである。従って、アノードベーンの両端に露出しているストラップリングは、回避できる。アノードベーンの両端に露出しているストラップリングは、マグネトロンの不安定な動作のリスクを生じさせることがある。
【0053】
上述のように、複数のストラップリングは、ストラップリングの断面寸法、ストラップリングの半径、および隣接ストラップリングまでの間隔のうちの1つ以上が、異なるストラップリングについて異なるように配置できる。こうした配置の結果として、所定のストラップリングとアノード内の別のストラップリングとの間(例えば、ストラップリングと隣接ストラップリングとの間)のキャパシタンスが、異なるストラップリングについて異なってもよい。追加または代替として、所定のストラップリングとアノードの他のコンポーネント(例えば、アノードベーンなど)との間のキャパシタンスが、異なるストラップリングについて異なってもよい。即ち、アノードの異なる個々のコンポーネント間のキャパシタンスが、ここで説明するストラップリングの変化(例えば、断面寸法、半径、および/またはストラップリング間の間隔)の結果として、アノードの長さに沿って変化してもよい。キャパシタンスのこうした変化は、アノードに沿ったRF電界分布を平滑化するように機能する配置を提供するために使用できる。
【0054】
本願の範囲内で、前述の段落、請求項および/または下記説明および図面、特にその個々の特徴に記載された種々の態様、実施形態、例および代替物が独立にまたは任意の組合せで解釈できることは明確に意図している。即ち、任意の実施形態の全ての実施形態および/または特徴は、こうした特徴が互換性がない場合を除いて、任意の方法および/または組合せで組み合わせできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
本発明の1つ以上の実施形態は、添付図面において例としてのみ概略的に示されている。
【
図1A】ここで想定されるタイプのマグネトロンの概略図である。
【
図2A】チューニングアセンブリを含むマグネトロンの概略図である。
【
図3】本開示の第1例に係るマグネトロンの概略図である。
【
図4】異なるストラップリングセットを備えた、その長手方向にベーンを横断するRF電場分布の振幅の概略図である。
【
図5】本開示の第2例に係るマグネトロンの概略図である。
【
図6】本開示の第3例に係るマグネトロンの概略図である。
【
図7】本開示の第1方法に係るフローチャートである。
【
図8】本開示の第2方法に係るフローチャートである。
【0056】
説明および図面の全体を通して、類似の参照番号は類似の部品を指す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の特定の例を説明する前に、本開示は、ここで説明する特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。ここで使用する用語は、特定の例を説明するためにのみ使用され、請求項の範囲を制限することを意図していないことも理解すべきである。
【0058】
図1Aと
図1Bは、ここで検討したタイプの例示のマグネトロン100の概略図である。
図1Aは、マグネトロン100を通る長手方向の切断面を示し、
図1Bは、
図1Aに示す平面A-Aに沿ったマグネトロン100を通る断面を示す。
【0059】
マグネトロン100は、アノード101およびカソード102を含む。
図1Aと
図1Bに示す例示のアノード101は、略円筒形のアノード壁103と、アノード壁103から内向きに延びる複数のアノードベーン104とを含む。以下でさらに詳細に説明するように、アノードベーンは、第1グループのアノードベーン104aと、第2グループのアノードベーン104bとを備えてもよい。
【0060】
カソード102は、少なくとも部分的にアノード101の内側に位置し、アノードベーン104を含むアノード101に対して所定の位置に保持される。カソード102は、支持アーム105によって支持され、アノード102に対して所定の位置に保持される。支持アーム105は、支持構造106によってカソード102の遠位端で所定の位置に固定され、カソード102を支持するカンチレバーを形成する。
【0061】
カソード102および、アノード101の少なくとも内部部分(例えば、アノード壁103の内側の空間)は、真空エンベロープ110の内側に設置される。他の真空電子デバイスと同様に、RFエネルギーを発生するために、真空エンベロープ110の内側空間は、真空圧力条件にポンプ吸引される。
【0062】
カソード102を支持し、カソード102をアノード101に対して所定の位置に保持することに加えて、支持アームはまた、カソード102およびヒータ131(一般にはカソード102内に含まれる)との電気接続を提供できる。図示の例では、電気接続は、支持アーム105(例えば、支持アーム105を形成する外部ケーシング)を経由してカソード102まで確立できる。支持アーム105は、支持構造106と電気的に接続できる。支持構造106は、支持アーム105に電気的に接続された導電性材料(例えば、銅)を含み、カソード102との電気接続を確立するための接続端子として機能できる。図示の例では、支持アーム105は、ヒータ131と接続端子108との間に延びる電気接続部107(これは、
図1Aに示すように、支持アーム105に沿って内部に延びている)をさらに含む。ヒータ131は、例えば、フィラメントを含んでもよく、カソード102を加熱するように構成できる(例えば、カソード102からの電極の熱電子放出を促進する)。接続端子108は、電気絶縁部材132によって支持アーム105のケーシングおよび支持構造106から電気絶縁される。
【0063】
接続端子108および/または支持構造106は、DC電源(例えば、パルスDC電源を含む)などの電源(不図示)との接続のために配置でき、電源とカソード102および/またはヒータ131との間の電気接続を提供する。実際、カソード102は、数キロボルトの電圧に保持できる(アノード101に対して)。例えば、支持構造106は、外部電源(不図示)に電気的に接続でき、カソード102とアノード101との間に(支持構造106および支持アーム105を経由して)ある電圧を確立する。
【0064】
ヒータ131は、抵抗エレメントを含むことができ、これを経由して電流が通過して抵抗加熱を発生する。こうした例では、ヒータ131は、加熱電流が流れる2つの電気端子を備えることができる。第1端子は、接続端子108とすることができ、第2端子は、ヒータ131とカソード102との間にある接続部とすることができる(接続部は不図示)。接続端子108は、カソード102に対してある電位差(例えば、数ボルトの)に保持でき、ヒータ電流がヒータ131を通って流れるのを促進する。
【0065】
支持アーム105は、マグネトロンのセクション109に沿って延びており、これはサイドアーム109と称される。図示の例では、サイドアーム109は、真空エンベロープ110の一部を形成し、こうしてサイドアーム109の内部空間は、真空圧力条件にポンプ吸引できる。図示の例では、サイドアーム109の外部構造は、支持構造106および、支持構造106とアノード101との間に延びるケーシング111によって画定される。ケーシング111は、電気絶縁または誘電材料、例えば、セラミックなどで形成できる。
【0066】
サイドアーム109は、アノード101と、接続端子108と、そしてカソード102およびアノード101の遠位側のサイドアーム109の実質的に端部に位置する支持構造106との間にホールドオフ距離を提供するように機能できる。支持構造106を使用して、アノード101とカソード102との間に電圧差を確立することができ、支持構造106とアノード101および/またはマグネトロンの他のコンポーネントとの間に比較的高い電圧が存在し得る。例えば、動作の際、アノード101は電気的に接地でき、カソード102は、支持構造106を経由して高電圧に保持できる。例えば、数キロボルトの電圧差(例えば、3kV以上の電圧差)が、カソード102とアノード101との間に提供できる。使用される電圧が比較的高いため、マグネトロンのコンポーネントは、電気的破壊およびコンポーネント間のアーク発生のリスクを低減するように配置できる。
【0067】
空気中の電圧ホールドオフ要件は、一般に、真空圧力条件の要件よりもはるかに厳しい(例えば、約8倍)。例えば、アノード101と支持構造106との間の空気中の適切な電圧ホールドオフは、ケーシング111(誘電体材料を含んでもよい)の設計を通じて達成できる。例えば、ケーシング111の形状および長さは、ケーシング111に沿った粒子追跡のリスクを低減するように設計できる(これは、支持構造106とアノード101との間の電気的破壊を導く可能性がある)。適切な電圧ホールドオフを維持しつつ、サイドアーム109の長さを短縮するために使用できる複雑なケーシング111の形状を提供することが可能であろう。しかしながら、これらは複雑でおよび/または高価になることがあり、簡単な円筒形(または他の簡単な形状)のケーシング111が使用できる。一般に、所定形状のケーシング111では、支持構造106とアノード101との間に充分な電圧ホールドオフを提供するために必要となるサイドアーム109の最小長さが存在し得る。
【0068】
マグネトロン100は、マグネトロン100の動作中に発生したRFエネルギーをマグネトロン100から外へ結合させるための出力部115をさらに含む。出力部115は、RFエネルギーを1つ以上の外部コンポーネントに提供するために、マグネトロン100を、マグネトロン100の外部にある1つ以上のコンポーネント(不図示)(例えば、粒子加速器など)に結合させるための任意の適切な構造を備えてもよい。図には示していないが、マグネトロン100はさらに、真空エンベロープ110を外部環境から隔離しつつ、発生したRFエネルギーが出力される出力窓を備えてもよい。
【0069】
上述のように、マグネトロン100の動作中に、ある電圧(例えば、数キロボルトの高電圧でもよい)が、カソード101とアノード102との間に印加できる。特にここで検討される例では、アノード101は電気的に接地してもよく、カソード102は、接地されたアノード101に対して高電圧に保持してもよい。
【0070】
カソード102は、例えば(必ずではないが)、熱電子放出によって電子を放出するように構成され、これは、カソード102とアノード101との間に維持される電圧のためにアノードに向かって引き寄せられる。上述したように、カソード102を加熱して、カソード102からの熱電子放出を促進できる。カソード102の熱放出特性は、カソード102の放出表面の温度および材料特性によって駆動することができる。
【0071】
図1Bに示すように、アノード101は、複数のアノードベーン104を含み、これらはそれらの間に偶数個の空洞112を画定する。図には示していないが、マグネトロン100は、マグネトロン軸(
図1Aでは左から右、
図1Bではページから外へ)と略平行に延在する磁界に曝される。磁界は、1つ以上の永久磁石および/または電磁石の任意の適切な配置によって発生できる。
【0072】
カソード102から放出された電子雲が、(両者間の電圧のために)アノード101とカソード102との間に確立された電界、およびマグネトロン内に確立された磁界の両方の影響を受ける。これらの電磁界の組合せ効果は、アノード101とカソード102との間の相互作用領域の周りで電子の回転を引き起こすことである。空洞112を通過する電子雲の回転は、RF電磁界を誘導し、これは空洞112の共振モードを励起するように機能する。RF電界の誘導により、電子雲は、電子の角速度に基づいて空洞共振器の共振モードを励起できる。そして、相対的位相に応じて、アノード101でのRF電界に起因して電子を加速または減速できる。電子がベーン104を横切って移動すると、正フィードバック効果が生成され、それによって共振モードのエネルギーが増加する。実際、これは、電子雲を変形させて、スポーク付ホイール効果(または空間電荷ホイール)を受ける。
【0073】
電子雲とアノード101との間の相互作用は、アノード101によって支持される任意の共振モードを介して生じ得る。実際、マグネトロン内で有用なRFパワーを生成するための最も効果的なモードは、πモードと称され、アノード101の各空洞112の振動は、隣接する各空洞112での振動と実質的に180°(πラジアン)位相ずれである。即ち、πモードでは、マグネトロン内の各交互配列の空洞112は、互いに実質的に同相で振動する。
【0074】
いくつかのマグネトロンでは、πモード周波数と他の共振モードの周波数との間の分離が小さすぎて、マグネトロンの安定動作を確保できない。πモード周波数を他の共振モードから分離するために、アノードストラッピング(strapping)と称される手法が使用できる。
図1Aと
図1Bに示すマグネトロンでは、アノードは、アノード101の周りおよびアノードベーン104の間に延びる複数のアノードストラップ/ストラップリング113を含む。例えば、
図1Bから判るように、各アノードストラップ113は、各交互配列のアノードベーン104と電気的に接触しており、他の全てのアノードベーン104の適切に配置された開口114を通過する。例えば、
図1Bに示す断面では、アノードストラップ113は、通過する。アノードベーン104aの第1グループに位置決めされた開口114を通過し、アノードベーン104bの第2グループの各々と電気的に接触している。
図1Aに見えるように、他のアノードストラップ103は、アノードベーン104aの第1グループの各々と電気的に接触し、アノードベーン104bの第2グループに設置された開口/孔114を通過するように配置される。こうしてベーン104は、アノードストラップ/ストラップリング113を支持して、各ベーンが交互配列のストラップ113と連結し、各ストラップが交互配列のベーンと連結している。交互配列のベーン104を電気的に接続することによって、πモード周波数は、他の共振モードの周波数から分離できる。
【0075】
マグネトロン100のいくつかの用途では、マグネトロンの動作中にマグネトロンの出力の1つ以上のパラメータを変更することが望ましいことがある。例えば、マグネトロン100によって発生するRFエネルギーの周波数(波長も)を変化させる(典型的には、所定の周波数帯域内で)ことが望ましいことがある。特に、マグネトロン100によって発生する共振πモードの周波数を変化させることが望ましいことがある。マグネトロン100によって発生するRFエネルギーが粒子加速器(例えば、リニア加速器)を駆動するために使用される用途では、マグネトロン100の周波数は、加速器の周波数(それ自体が動作中に変化する可能性がある)に一致させるために変更できる。一般に、マグネトロン100の周波数は、マグネトロン100が動作するシステムの要件に一致するように(例えば、マグネトロン100の出力によって駆動される1つ以上のサブシステムと整合するように)変更できる。
【0076】
図2Aと
図2Bは、チューニングアセンブリ201を含む例示的なマグネトロンの概略図である。
図1Aおよび
図1Bと同様に、
図2Aは、マグネトロン100を通る長手方向切断面を示し、
図2Bは、
図2Aに示されている平面AAでのマグネトロン100を通る断面を示す。
図2Aおよび
図2Bに示すマグネトロン100は、
図1Aおよび
図1Bを参照して上述したものと同じコンポーネントおよび特性の多くを含み、同じ参照符号は、対応するコンポーネントを示すために
図1A、
図1B、
図2Aおよび
図2Bで使用している。従って、対応するコンポーネントの詳細な説明は、
図2Aおよび2Bを参照して提供していない。
【0077】
一般に、アノード101の共振モードスペクトルは、アノード空洞112の幾何形状およびそれらの相対的配置に依存する。
図2Aおよび
図2Bに示すチューニングアセンブリ201は、アノード101に連結され、それ自体の共振周波数スペクトルを有する共振構造を備える。チューニングアセンブリ201の共振周波数スペクトルは、チューニングアセンブリ201の共振周波数スペクトルの基本モードに対応する自然共振周波数によって特徴付けできる。アノード101と共振チューニングアセンブリ201との間の結合は、アノード101の共振モードスペクトルが、アノード空洞112の幾何形状および共振チューニングアセンブリ201の自然共振周波数の両方に依存し、そしてアノード101とチューニングアセンブリ201との間の結合度にも依存することを意味する。チューニングアセンブリ201は、チューニングアセンブリ201の1つ以上のコンポーネントの移動によってチューニングアセンブリ201の共振周波数が変化可能なように構成される。チューニングアセンブリ201とアノード101との間の結合の結果として、アノード101の共振モードスペクトルは、チューニングアセンブリ201の自然共振周波数を変化させることによって変更できる。例えば、チューニングアセンブリ201は、マグネトロンによって発生するπモードの周波数を変更するために使用できる。
【0078】
チューニングアセンブリ201は、チューニング部材202と、移動機構203と、シール構造204と、ケーシング205とを含む。チューニング部材202は、チューニング部材202の移動がチューニングアセンブリ201の共振周波数の変動をもたらすように構成された導電性材料の配置を含む。図示の例では、チューニング部材202は、導電性プレート202を含む。チューニング部材202は、容量性ギャップ211によって、アノード101の少なくとも一部から分離している。ギャップ211間のキャパシタンス(静電容量)は、ギャップ211の長さの関数であり、これは、チューニング部材202の移動によって変化する。従って、チューニング部材202の移動は、チューニングアセンブリ201のキャパシタンスの変化を生じさせ、これはチューニングアセンブリ201の自然共振周波数において対応する変化をもたらす。チューニング部材202は、例えば、銅などの任意の適切な導電性材料を含むでもよい。
【0079】
移動機構203は、例えば、アノード101に対してチューニング部材202を移動させるように構成される。例えば、移動機構203は、
図2Aおよび
図2Bで220とラベル付けされた両方向矢印で示すように、チューニング部材202をアノード101に向けて、および/またはアノード101から離れるように移動させるように構成できる。上述したように、チューニング部材202のこうした移動は、チューニングアセンブリ201のキャパシタンス(そして共振周波数)の対応する変動を生じさせる。
図2Aおよび
図2Bに示す図では、移動機構203は、チューニング部材202に取り付けられた単一の可動部分203で表現される。可動部分203の移動(例えば、矢印220で示す方向)は、チューニング部材202の対応する移動をもたらす。移動機構203はさらに、チューニング部材202の移動を駆動するため(例えば、
図2Aおよび
図2Bに示す可動部分の移動を駆動することによって)の任意の適切なアクチュエータ(不図示)を備えてもよい。
【0080】
図2Aおよび
図2Bに示す配置では、アノード壁103は、切り欠き221を含み、
チューニングアセンブリ201がその周囲に位置するアノードベーン104a’は、切り欠き222を含む。アノード101(例えば、アノードベーン104a’)に対するチューニングアセンブリ201の配置は、共振チューニングアセンブリ201とアノード101との間の結合度を決定できる。その結果、アノード壁103の切り欠き221、チューニング部材202の少なくとも1つが、真空エンベロープ110の内側に少なくとも部分的に位置しており、これがチューニングアセンブリ201のケーシング205の中に延びている。
【0081】
シール構造204は、移動機構203の少なくとも一部を真空エンベロープ110から封止するように構成される。例えば、シール構造204は、移動機構203の少なくとも一部の周りに気密シールを提供できる。シール構造204は、移動機構203の周りのシールを維持しながら、移動機構203の移動に順応するように構成された可撓性の境界面を備えてもよい。図示の例では、シール構造204は、チューニング機構203の移動に順応するために膨張および収縮するベローズ(蛇腹)の形態で配置される。
【0082】
チューニングアセンブリの特定の設計が
図2Aおよび
図2Bを参照して上述したが、一般に、マグネトロン100の共振周波数を変化させるために、任意の適切なチューニングアセンブリが使用できる。例えば、可変共振モードスペクトルを有し、アノード101に連結された任意の適切な共振構造を使用して、共振チューニング構成を形成できる。共振チューニング構成を上述したが、代替の例では、空洞112の共振周波数(よってマグネトロン100の周波数)は、空洞112自体のキャパシタンスおよび/またはインダクタンスを変化させることによって変更できる。こうした構成は、容量性および/または誘導性チューナと称することがある。
【0083】
図1Aおよび
図2Aに示すように、ストラップリング113は、一般に、それぞれ同じ寸法および断面形状を有する。しかしながら、本発明者は、同一の幾何学的寸法を有する各ストラップリング113を設けることにより、マグネトロン100が、アノード101のベーン104a,104bの長さに沿って均一に分布しないRF電界を発生できることに気付いた。特に、本発明者は、発生したRF電界を調査し、このことがアノードの中央領域に高度に集中するRF電界をもたらし、アノードの長手方向端部にはより弱いRF電界を備えることを発見した。RF電界は、ベーン104a,104bの長さに渡って均一に分布していないため、このことは、RF電界が高度に集中しているベーン104a,104bの領域に局所的加熱を生じさせるリスクを生じさせる。本発明者は、こうした局所的加熱により、ベーンがそれらの領域で侵食され、それにより動作アノードモードの安定性およびそれらの電気的特性に影響を及ぼし、生ずるRF電界の強度を減少させ、そしてマグネトロンによって出力されるパワーを減少させることがあることを発見した。特に、本発明者は、ベーン104a,104bの長さに渡る不均一な分布に起因して、電磁場がアノードによって、予測したほどは精度良くまたは正確には生成されないことがあるがあることに気付いた。
【0084】
さらに、
図1Aおよび
図2Aに示すように、ストラップリング113は、一般に、ベーン104a,104bの長さに沿って均等に分布している。本発明者は、ストラップリング113をベーン104a,104bに沿って均一に分布させることにより、マグネトロン100は、アノード101のベーン104a,104bの長さに沿って均一に分布しないRF電界を発生させることがあり、そしてベーンのRF電界の高度に集中した領域で局所的加熱を引き起こし、それにより上述と同じ理由で、ベーンが侵食され、マグネトロンによって出力されるパワーが減少するというリスクを生じさせることに気付いた。
【0085】
マグネトロンの長さに沿ったRF電界の許容できない変動を克服する1つの手法が、アノードの長さを増加させることである。しかしながら、本発明者は、マグネトロンのサイズを増加させると、より多くの共振空洞を含むアノードをもたらし、そしてアノード空洞のモードスペクトルを変化させ、基本動作モードが不安定になるリスクを生じさせることに気付いた。さらに、より長いマグネトロンアノードは、磁気回路がより高いコストになり、そのサイズを著しく増加させる可能性がある。
【0086】
図3は、本開示の第1例に係るマグネトロン300の概略図を示す。マグネトロン300は、アノード310およびカソード302を備える。カソード302は、実質的に
図1Aおよび
図2Aのカソード102にできる。
【0087】
アノード301は、円筒形シェル303と、複数のベーン304a,304bと、複数のストラップまたはストラップリング313a,313b,313c,313d,313e,313f(まとめてストラップリング313と称する)を備える。ここで使用される「円筒形」とは、略/実質的に円筒形を意味すると理解される。シェル303は、長手方向軸(
図3では左から右)を定義し、これはマグネトロン軸と実質的に一致してもよい。シェル303は、
図1A~
図2Bに関連して説明したアノード壁103とすることができる。ベーンは、ベーン304aの第1グループおよびベーン304bの第2グループとして提供され、これらの各々は、シェル303から内向きに、シェル303の周りに角度間隔で延びるように配置される。「角度間隔」とは、各ベーンとそれに隣接するベーンとの間に方位角(azimuth)分離が設けられることを意味すると理解できる。
図3に示すように、ベーン320aの第1グループは、ベーン320bの第2グループと角度的に交互配列する。ベーン320a,320bは、ストラップリング313が通過する複数の孔314を含む。特に、ストラップリング313は、長手方向の間隔で、シェル303の長手方向軸と同心状に配置され、ベーン304a,304bを通過して、交互配列したベーンと電気的に接続する。ベーンの孔を通過することによって、ストラップリングは、ベーンによって効果的に包まれるため、使用中にストラップリングが空洞共振器を通過する際にカソードに露出するだけとなる。このようにストラップリングを包むことによって、空洞共振器内の所望のπモード周波数への改変のリスクを減少させ、それによりストラップリングによる共振空洞の周波数を設定するより高い精度および正確さを可能にする。
【0088】
第1ベーン304aは、
図3に示すように、ベーン204aの細長い軸に沿って長手方向に間隔を置いて配置された複数の孔314を含む。孔314は、互いに交互配列した第1孔および第2孔を含む。交互に配列した第1孔は、それを通過するストラップリングの断面形状にほぼ対応する断面形状を有するように寸法設定され、該ストラップリングとそれが通過するベーンとの間の電気的接触を容易にする。第1孔と交互配列する残りの第2孔は、それを通過するストラップリングの断面形状よりも大きい断面形状を有するように寸法設定され、ストラップリングは、それらが通過する際に個々のベーンに接触することなく第2孔を通過するように配置され、両者間に連結を提供しないようにする。
図3に示すように、孔314のこの配置は、第1ベーン304aが交互に配列したストラップリング313a,313c,313eによって互いに電気的に接続されることを可能にし、一方、孔314のために、第1ベーン304aがストラップリング313b,313b,313d,313fと電気的に接触しない。同様に、第2ベーン304bは、交互に配列したストラップリング313b,313d,313fによって互いに連結され、一方、孔314のために、第2ベーン304bは、ストラップリング313a,313c,313eと電気的に接触しない。第1ベーン304aおよび第2ベーン304bの各々は、カソード302の長さとほぼ同じ長さでもよい。
【0089】
図3の例およびここで図示し説明している他の例に見えるように、環状ストラップリング313は、それらがアノードベーン304a,304bを通過する位置においてアノードベーン内に囲まれてもよい。ベーン304a,304bを通過する際にストラップリング313を囲むベーン304a,304bを設けることによって、アノードベーン304a,304bの両端に露出するストラップリングが回避できる。アノードベーン304a、304bの両端に露出しているストラップリングは、マグネトロンの不安定な動作のリスクを生じさせることがある。
【0090】
図3の例およびここで図示し説明している他の例にも見られるように、各ストラップリング313は、ストラップリング313全体の周りに実質的に均一な断面を有してもよい。即ち、ストラップリング313の断面寸法および/または断面積は、ストラップリング313全体の周りで実質的に一定でもよい。
【0091】
本開示の第1例では、ストラップリングの少なくとも1つは、他のストラップリングの幾何学的寸法とは異なる幾何学的寸法、例えば、他のストラップリングの個々の断面形状および/または半径とは異なる断面形状および/または異なる半径を有する。
図3は、スケールどおりでないことに留意する。
図3に示す特定の例では、ストラップリング313a,313fは、実質的に長方形であり、第1半径を有する第1断面プロファイルを有し、一方、ストラップリング313b,313eは、実質的に正方形であり、ストラップリング313a,313fの第1半径を有してもよい第2断面プロファイルを有する。ストラップリング313cは、ストラップリング313a,313fの第1断面プロファイルを有してもよいが、ストラップリング313a,313b,313e,313fの第1半径よりも大きい第2半径を有する。ストラップリング313dは、長方形の第1および第2断面プロファイルの配向とは異なる配向を有する長方形プロファイルを有する第3断面プロファイルを有し、他のストラップリングの第1および第2半径とは異なる第3半径を有してもよい。こうして各ストラップリングは、予め定めた断面プロファイルおよび半径を有してもよい。しかしながら、本開示はこれに限定されず、ストラップリングの1つ以上が、他のストラップリングとは異なる断面プロファイルを有してもよく、および/または、ストラップリングの1つ以上が、他のストラップリングとは異なる半径を有してもよいことが理解されよう。さらに、孔314の寸法は、ストラップリング313の断面に従って調整されて予め定められる。
図3の特定の例では、ストラップリング313は、マグネトロン300の長さに渡って均一に配置され、各ストラップリングは、隣接するストラップリングから同じ分離距離で分離している。
【0092】
図3に示す例(およびここで説明し図示す他の例)では、ストラップリング313は、2つのグループのうちの一方に属すると見なすことができ、ストラップの同じグループに属する各ストラップリングは、同じ交互配列のアノードベーンと電気的に接触している。即ち、ストラップリングの第1グループは、アノードベーン304aの第1グループと電気的に接触しており、ストラップリングの第2グループは、アノードベーン304bの第2グループと電気的に接触している。
図3の上半分に示すアノードベーン304aと接触することが示されるストラップリング313a,313c,313eは、ストラップリングの第1グループに属すると見なしてもよい。
図3の下半分に示すアノードベーン304bと接触することが示されるストラップリング313b,313d,313fは、ストラップリングの第2グループに属すると見なしてもよい。少なくともいくつかの例では、ストラップリングの各グループに属するストラップリングの少なくとも1つは、ストラップリングの同じグループに属する少なくとも1つの他のストラップリングとは異なる断面プロファイルおよび/または面積を有してもよい。例えば、ストラップリングの第1グループに属するストラップリング313aは、ストラップリングの同じグループに属するストラップリング313c,313eとは異なる半径または断面プロファイルを有する。
【0093】
ベーンの長さに沿って分布する異なる幾何学的寸法をストラップリングに設けることによって、マグネトロン内で動作中にアノードのベーンに渡って生成されるRF電界は、ストラップの各々が同じ寸法を有する先行技術と比較して、アノードベーンの長さ全体に渡ってより均等に分布できる。マグネトロンで発生するRF電界の強度は、ベーンの長さ全体に渡って比較的一定にできるため、このことはベーンに沿って発生する局所的加熱のリスクを好都合に低減する。従って、これは、アノードのベーンの電気的特性を改善し、マグネトロンに渡る全体的なRF電界をより精度良くかつ正確に制御することができ、マグネトロンによって出力されるパワーを改善できる。さらに、ベーンに沿った局所的加熱のリスクが著しく減少するため、これによりベーンが時間経過とともに侵食されるリスクを低減し、マグネトロンの寿命を改善する。先行技術のマグネトロンと比較して、本開示の分散ストラップ手法は、調整された寸法を有する複数のストラップの使用を可能にし、安定性およびパワー処理能力を改善する。
【0094】
このことは、
図4に特に示されており、動作中のマグネトロンの長さに渡るRF電界を定性的に示し、それぞれが幾何学的に同一であるストラップリング(点線で示す)を有するマグネトロン350(例えば、
図1A、
図1B、
図2Bおよび
図2Bに示すようなマグネトロン)、および他のストラップリングの幾何学的寸法とは異なる幾何学的寸法を有する少なくとも1つのストラップリング(実線で示す)を有するマグネトロン360、例えば、変化する断面プロファイル(および/または面積)および/または半径を備えたストラップリング313を有する
図3のマグネトロン300など、のRF電界を比較している。特に、
図4は、RF電界がマグネトロン350の中央でピークに達し、そこでRF電界がほぼ中央に集中していることを示す。しかしながら、異なる幾何形状を有するストラップリングを含めることによって、使用時に発生するRF電界は、マグネトロン360に渡って実質的により均一になる。
【0095】
図3の特定の例では、ベーン304a,304bの長手方向軸に沿って対称のエレメントも存在しており、同じ断面プロファイルを有するストラップリングは、ベーンの両端に配置されている。例えば、第1断面プロファイルおよび第1半径を有するストラップリング313a,313fは、ベーン304a,304bの遠位端に配置される。特に、ストラップリング313a,313fの第1断面プロファイル(それに対応してその断面積)は、ストラップリング313b,313eの第2断面プロファイルよりも大きい。そうすることで、より大きな断面プロファイル(および面積)を有するストラップリング313a,313fは、ベーン304a,304bの中心から離れて配置され、一方、より小さな断面プロファイル(および面積)を有するストラップリング313b,313eは、ベーン304a,304bの長さに沿ってより中央に配置される。これによりベーン304a,304bの長さに沿ってRF電界を好都合に平滑化し、そうでなければベーンに対して中央に集中するであろう。こうしてベーンは、過熱(overheatを生じさせる可能性のある集中したRF電界の同じ領域を経験しないため、これによりベーンが侵食するリスクを軽減し、使用時にマグネトロンによって出力されるより大きいパワーに生成される電磁界を改善する。
【0096】
しかしながら、本開示は、
図3に示すマグネトロン300に限定されない。ストラップリング313は、任意の適切な断面形状および半径を有してもよく、マグネトロンの周波数範囲および/またはパワーに従って、使用時にベーンを横断するRF電界を平滑化するように調整し、予め定められることが理解されよう。
図3の特定の実施形態では、マグネトロンは、Sバンド(約2~4GHz)の周波数を有するマイクロ波を発生するように動作可能であり、ストラップリング313の断面長さは、最大5mmにできる。しかしながら、任意の適切な断面寸法および半径が予め定めてもよいことは理解されよう。
【0097】
マグネトロン300は、アノードの共振モードスペクトルを同調させるためのチューニングアセンブリ(不図示)をさらに含んでもよい。チューニングアセンブリは、
図2Aおよび
図2Bのチューニングアセンブリ201に実質的に対応してもよい。マグネトロン300がチューニングアセンブリを含む場合、ストラップリング313の断面形状および寸法は、ベーン内のチューニングアセンブリを支持するシェル303およびベーン304a,304bの構造的完全性を乱さないように決定できる。特に、シェル303内の切り欠き221,222とベーン304a,304bとの間の分離距離は、チューニングアセンブリを支持するのに充分である必要があり、こうして両者間の最小分離距離を提供する必要があり、これはマグネトロンのサイズに基づいて決定される。従って、ストラップリング313の断面は、チューニングアセンブリ用の切り欠き221,222間の分離距離に基づいて予め定められる。
【0098】
図5は、本開示の第2例に係るマグネトロン400を示す。
図5に示すマグネトロン400は、アノード401およびカソード402を含み、アノード401は、シェル403と、
図3を参照して上述した方法でシェル403の周りに互いに角度的に交互配列した第1ベーン404aおよび第2ベーン404bとを含む。従って、対応するコンポーネントの詳細な説明は、
図5を参照して提供していない。
【0099】
マグネトロン400は、複数のストラップリング413a,413b,413c,413d,413e,413f(まとめてストラップリング413と称する)を含み、これらは、ベーン404a,404bの孔414を通過する。
図3のマグネトロン300のストラップリング313とほぼ同じ方法で、交互配列したストラップリング413a,413c,413eは、第1ベーン404aに連結し、一方、残りのストラップリング413b,413d,413fは、第2ベーン404bに連結する。しかしながら、
図5のストラップリング413は、下記の点で
図3のストラップリング313とは相違しており、幾何学的には、ストラップリング413は、それぞれ同じであり、同一の断面プロファイルを有し、隣接するストラップリングの第1ペアの間の少なくとも1つの間隔が、隣接するストラップリングの第2ペアの間の間隔とは相違する。
図5の特定の例では、間隔420aは、ストラップリング413a,413bを分離し、間隔420bは、ストラップリング413b,413cを分離し、間隔420cは、ストラップリング413c,413dを分離し、間隔420dは、ストラップリング413d,413eを分離し、間隔420eは、ストラップリング413e,413fを分離している。間隔420a,420eは、間隔420b,420dよりも狭くてもよく、間隔420cとは相違してもよい。間隔420a,420b,420c,420d,420e,420fは、まとめて間隔420と称している。しかしながら、本開示はこれに限定されず、間隔の1つ以上が他の間隔とは相違してもよいことは理解されよう。さらに、孔414の寸法および配置は、ストラップリング413の寸法および配置に従って調整され予め定められる。
図5の特定の実施形態では、マグネトロンは、Sバンド(約2~4GHz)の周波数を有するマイクロ波を発生するように動作可能であり、間隔420は、3~5mmの範囲でもよい。しかしながら、マグネトロンの周波数範囲および/またはパワーに基づいて、任意の適切な間隔が予め定められることは理解されよう。
【0100】
ベーンの長さに沿って不均一に分布したストラップを設けることによって、均一に分布したストラップリングを有するマグネトロンと比較して、アノードのベーンに渡って生成されるRF電界は、アノードベーンの長さに渡ってより均一に分布させることができる。マグネトロンで発生するRF電界の強度は、ベーンの長さに渡って比較的一定にできるため、これによりベーンに沿って発生する局所的加熱のリスクを軽減し、そうでなければマグネトロンで発生する電磁界に影響を与える可能性がある。従って、これによりアノードのベーンの電気的特性を改善し、マグネトロンを横断するRF電界全体がより精度良くより正確に制御可能になり、マグネトロンによって出力されるパワーを改善できる。さらに、ベーンに沿った局所的加熱のリスクが著しく減少するため、これによりベーンが時間経過とともに侵食するリスクを減少させ、マグネトロンの寿命を改善する。先行技術のマグネトロンと比較して、本開示の分散ストラップ手法は、調整された寸法を有する複数のストラップの使用を可能にし、安定性およびパワー処理能力を改善する。従って、マグネトロン全体に不均一に分布するストラップリングにより、
図4に示す可変の幾何学的寸法を有するマグネトロン360と同じマグネトロンRF電界の平滑化を生じさせることができる。
【0101】
図5の特定の例では、ベーン404a,404bの長手方向軸に沿って対称のエレメントが存在し、同じ間隔で分離した隣接ストラップリングがベーンの両端に配置されている。例えば、同じ間隔を有する第1間隔420a,420eは、ベーン404a,404bの遠位端に配置され、一方、同じ間隔を有する第2間隔420b,420dは、より中央に配置される。特に、第1間隔420a,420eは、第2間隔420b,420dより小さい。そうすることで、共により接近するようにより小さい間隔を有するストラップリング413a,413bは、ベーン404a,404bの中心から離れて配置され、一方、さらに離間するようにより大きい間隔を有するストラップリング413c,413dは、ベーン404a,404bの長さに沿ってより中央に配置される。これによりベーン404a,404bの長さに沿ってRF電界を好都合に平滑化し、そうでなければベーンに対して中央に集中するであろう。こうしてベーンは、過熱を生じさせる可能性のある集中したRF電界の同じ領域を経験しないため、これによりベーンが侵食するリスクを軽減し、使用時にマグネトロンによって出力されるより大きいパワーに生成される電磁界を改善する。
【0102】
上述したように、ストラップリング420は、2つのグループのうちの1つに属すると見なすことができ、ストラップリングの同じグループに属する各ストラップリングは、同じ交互配列のアノードベーンと電気的に接触している。即ち、ストラップリングの第1グループは、アノードベーン404aの第1グループと電気的に接触しており、ストラップリングの第2グループは、アノードベーン404bの第2グループと電気的に接触している。
図5の上半分に示すアノードベーン404aと接触することが示されるストラップリング413a,413c,413eは、ストラップリングの第1グループに属すると見なしてもよい。
図5の下半分に示すアノードベーン404bと接触することが示されるストラップリング413b,413d,413fは、ストラップリングの第2グループに属すると見なしてもよい。いくつかの例では、ストラップリングの同じグループに属するストラップリングの異なる隣接ペアは、互いに異なる間隔を有してもよい。例えば、ストラップリング413a,413cは、ストラップリングの第1グループにおいて互いに隣接しており、それらの間に第1間隔を有する。ストラップリング413c,413eも、ストラップリングの第1グループにおいて互いに隣接しており、それらの間に第2間隔を有する。一方、
図5には明確に示していないが、いくつかの例では、第1間隔は第2間隔とは相違してもよく、そのためストラップリングの同じグループ内の隣接ストラップリングの異なるペアは、それらの間で異なる間隔を有する。
【0103】
マグネトロン400は、アノードの共振モードスペクトルを同調させるためのチューニングアセンブリ(不図示)をさらに含んでもよい。チューニングアセンブリは、
図2Aおよび
図2Bのチューニングアセンブリ201に実質的に対応してもよい。マグネトロン400がチューニングアセンブリを含む場合、隣接ストラップリング413のペアの間の間隔は、ベーン内のチューニングアセンブリを支持するシェル403およびベーン404a,404bの構造的完全性を乱さないように決定できる。特に、シェル403の切り欠き221,222とベーン404a,404bとの間の分離距離は、チューニングアセンブリを支持するのに充分である必要があり、こうして両者間の最小分離距離が提供する必要があり、これはマグネトロンのサイズに基づいて決定される。従って、ストラップリング413の隣接ペアの間の間隔は、チューニングアセンブリ用の切り欠き221,222間の分離距離に基づいて制限される。
【0104】
図6は、本開示の第3例に係るマグネトロン500を示す。
図6に示すマグネトロン500は、アノード501およびカソード502を含み、アノード501は、シェル503と、
図3を参照して上述した方法でシェル503の周りに互いに角度的に交互配列した第1ベーン504aおよび第2ベーン504bとを含む。従って、対応するコンポーネントの詳細な説明は、
図6を参照して提供していない。
【0105】
マグネトロン500は、複数のストラップリング513a,513b,513c,513d,513e,513f(まとめてストラップリング513と称する)を含み、これらは、ベーン504a,504bの孔514を通過する。
図3のマグネトロン300のストラップリング313とほぼ同じ方法で、交互配列したストラップリング513a,513c,513eは,第1ベーン504aに連結し、一方、残りのストラップリング513b,513d,513fは、第2ベーン504bに連結する。しかしながら、
図6の特定の例では、ストラップリング513は幾何学的に変化し、そのため、少なくとも1つのストラップリング513は、他のストラップリング513とは異なる断面プロファイルおよび/または半径を有し、ストラップリング513もベーン504a,504bの長さに沿って不均一に分布しており、ストラップリング513a,513bの第1隣接ペア間の間隔520aが、隣接ストラップリング513b,513cの第2ペア間の間隔520bとは相違する。従って、マグネトロン500は、
図3および
図5に提供されるストラップリングの特徴を組み合わせている。幾何学的変化は、
図3に関連して説明しており、それらの間で変化する間隔520a,520b,520c,520d,520e,520f(まとめて間隔520と称する)を備えた不均一分布は、
図5に関連して説明しているため、
図6を参照して詳細な説明は提供していない。マグネトロン500全体に渡って幾何学的かつ不均一にストラップリング513を変化させることによって、マグネトロン全体のRF電界の平滑化がさらに改善できる。
【0106】
異なるストラップリングが異なる断面プロファイル、面積および/または寸法を有する種々の例を説明し図示した。こうした例は、
図3、
図5および
図6を参照して説明した。これらの例では、ストラップリングは、ストラップリング全体の周りに実質的に均一な断面を有する。即ち、ストラップリングの断面寸法、プロファイルなどは、ストラップリングの周りの各位置で実質的に同じである。しかしながら、他の例では、ストラップリングは、ストラップリングの周りの異なる位置で異なる断面を有してもよい。例えば、ストラップリングは、それがアノードベーンと電気的に接触している位置で、ストラップリングがアノードベーンの間に延びる位置でのその断面とは異なる断面を有してもよい。機能的な観点から、ストラップリングの重要な部分は、それが電気的に接続される交互配列のアノードベーンの間に延びる部分であることが理解されよう。理由は、これがアノードベーン間のRF電流の経路を提供する部分であるためである。
【0107】
ストラップリングの断面寸法、プロファイルおよび/または面積などへの参照は、少なくともベーン間に延びるストラップリングの一部の断面寸法、プロファイルおよび/または面積などを参照すると解釈できる。より詳細には、各ストラップリングは、それらが電気的に接触しているベーン(各交互配列ベーン)の間に延びる第1部分と、ストラップリングがベーンと直接接触している第2部分とを含むと見なしてもよい。ストラップリングの第2部分は、ストラップリングと、各ストラップリングの各交互配列ベーンとの間の電気的接続を提供する(個々のベーンとストラップリングとの間の境界面において)。ストラップリングの第1部分は、交互配列ベーン間の電気的接続を提供する。異なる断面寸法、プロファイルおよび/または面積などを有するストラップリングへの参照は、異なる断面寸法、プロファイルおよび/または面積などを有する第1部分(アノードベーン間に延びる)を有するストラップリングを参照すると解釈できる。従って、交互配列ベーン間のストラップリングによって提供される電気接続の断面寸法、プロファイルおよび/または面積などは、異なるストラップリングについて相違してもよい。
【0108】
ここで説明するように、複数のストラップリングは、ストラップリングの断面寸法、ストラップリングの半径、および隣接ストラップリングの間隔のうちの1つ以上が、異なるストラップリングについて相違するように配置してもよい。こうした配置の結果として、アノード内の所定のストラップリングと他のストラップリングとの間(例えば、ストラップリングと隣接ストラップリングとの間)のキャパシタンスは、異なるストラップリングについて相違してもよい。追加または代替として、所定のストラップリングと、アノードの他のコンポーネント(例えば、アノードベーンなど)との間のキャパシタンスが、異なるストラップリングについて相違してもよい。即ち、アノードの異なる個々のコンポーネント間のキャパシタンスが、ここで説明するようなストラップリングの変化(例えば、断面寸法、半径および/またはストラップリング間の間隔)の結果として、アノードの長さに沿って変化してもよい。キャパシタンスのこうした変化は、アノードに沿ったRF電界分布を平滑化するように機能する配置を提供するために使用できる。
【0109】
図7は、マグネトロン用アノードを製造する方法の第1例のフローチャートを示す。該方法は、
図3のマグネトロン300のアノード310を製造するために使用できる。
【0110】
該方法は、略円筒形のシェル、複数のベーン、および複数のストラップリングを用意するステップを含み、これらの各々は実質的に、
図3の開示の第1例に関連して説明したようなシェル303、ベーン304a,304bおよびストラップリング313とすることができる。特に、ストラップリングは、複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違するように用意される。ステップ610において、ベーンは、シェル303の周りに角度間隔で配置され、シェル303から半径方向内向きに延びており、第1ベーン304aは、第2ベーン304bと交互配列する。各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、空洞共振器を提供するためである。ステップ620において、ストラップリングは、長手方向間隔で、シェルの長手方向軸の周りに同心円状に配置され、そのため第1ストラップリングが第1ベーンと電気的に接続し、第2ストラップリングが第2ベーンと電気的に接続する。
【0111】
該方法の第1例では、ストラップリングは、
図3に関連して上述した方法のいずれか1つで配置してもよい。例えば、より大きな断面を有するストラップリング313a,313fは、ベーン304a,304bの遠位端に向けて配置され、一方、より小さな断面を有するストラップリング313b,313eは、ベーン304a,304bの長手方向に対してより中央に配置される。
【0112】
該方法の第1例では、ストラップリング313が製造されるが、本開示の他の例では、ストラップリングは既製品で提供してもよいことが理解されよう。ストラップリングは、本開示の第1例では以下のように製造される。
【0113】
各ストラップリングの断面プロファイルは、最初に、コンピュータ/数学モデリングに従って予め決定される。いったん寸法が予め決定されると、ストラップリングは、任意の適切な成形ツールを用いて形成できる。例えば、銅を含む金属ブロックが用意され、そこからストラップリングを整形し切削される。他の例では、ストラップリングは、任意の適切なモールド形成手法を用いて鋳型(mould)を用いて形成できる。
【0114】
方法の第1例では、ベーンは製造しているが、本開示の他の例では、ベーンは既製品で提供してもよいことが理解されよう。ベーンは、本開示の第1例において以下のように製造される。
【0115】
最初に複数のベーンを形成するために、複数の金属直方体が提供される。各直方体は、例えば、切削によって、得られるベーンの所望の長さおよび幅に対応する長さおよび幅を有するように整形できる。そして、複数の直方体は半分に分割され、第1グループの直方体と第2グループの直方体を提供し、それぞれ同じ数の直方体を有する。
【0116】
該方法の第1例では、第1孔パターンが、第1グループの直方体の深さを通って形成され、第1ベーン304aを形成する。直方体に孔を開けるために、任意の適切な孔形成ツールが実装できる。第1孔パターンは、本開示の第1例に関連して説明した孔314を含む。特に、第1孔および第2孔は、ベーンの長さに沿って交互配列している。各第1孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面に対応する断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結しながらそこを通過できるようする。各第2孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面よりも大きい断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結することなくそこを通過できるようにする。製造の容易さのために、各孔の断面は、形成される前に、コンピュータ/数学モデリングに従って予め決定できる。
【0117】
同様に、第2孔パターンが、第2グループの直方体の深さを通って形成され、第2ベーン304bを形成する。第2孔パターンは、本開示の第1例に関連して説明した孔314を含む。特に、第1孔および第2孔は、ベーンの長さに沿って交互配列している。各第1孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面に対応する断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結しながらそこを通過できるようする。各第2孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面よりも大きい断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結することなくそこを通過できるようにする。
【0118】
しかしながら、ベーンは、他の適切な方法によって、例えば、積層造形(additive manufacturing)手法を使用することによって形成できることが理解されよう。
【0119】
該方法の第1例では、ベーン304a,304bの各第1孔とそれに隣接する第2孔との間の間隔は同じであり、ストラップリング313がそれを通過する場合、ストラップリング313はベーンの長さに沿って均一に配置される。
【0120】
該方法の第1例では、ストラップリング313は、それを通る少なくとも1つの切断部を含むように切断されるが、そうでなければ、ストラップリング313は、それを通る切断部を有するように形成できる。そして、各ストラップリング313は、例えば、治具を用いて、ベーン304a,304bに形成された孔314を通すことができ、ストラップリング313およびベーン304a,304bを一緒に配置するようにする。
【0121】
該方法の第1例では、シェル303は、ベーン304a,304bがシェルの周りに配置される位置に対応するインジケータでマーク付与され、そのためベーンは目的の位置に正確に配置できる。例えば、シェル303は、ベーン304a,304bを着座させるための溝を含んでもよい。こうした例では、該方法は、任意の適切な溝形成手法を用いて、シェル303の内壁に溝を形成することを含んでもよい。そして、ベーン304a,304bは、それを通過するストラップリング313と共に、シェル303と共に配置される。特に、ベーンは、シェル303の周りに角度間隔で配置され、第1ベーン304aは、例えば、治具を用いて、第2ベーン304bと交互に配列する。そして、ストラップリング313およびベーン304a,304bが配置されたシェル303は、適切な温度で一緒にはんだ付け/ろう付けされ、アノード310を形成する。
【0122】
図8は、マグネトロン用のアノードを製造する方法の第2例のフローチャートを示す。該方法は、
図5のマグネトロン400のアノード401を製造するために使用できる。
【0123】
該方法は、略円筒形のシェル、複数のベーン、および複数のストラップリングを用意するステップを含み、これらの各々は実質的に、
図5の開示の第2例に関連して説明したような、シェル403、ベーン404a,404bおよびストラップリング413とすることができる。ステップ710において、ベーンは、シェル403の周りに角度間隔で配置され、シェル403から内向きに延びており、第1ベーン404aは、第2ベーン404bと交互配列する。各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、空洞共振器を提供するためである。ステップ720において、ストラップリングは、長手方向間隔で、シェルの長手方向軸の周りに同心円状に配置され、そのためストラップリングの第1グループが第1ベーンと電気的に接続し、ストラップリングの第2グループが第2ベーンと電気的に接続し、少なくとも、隣接ストラップリングの第1ペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する。
【0124】
該方法の第2例では、ストラップリングは、
図5に関連して上述した方法のいずれか1つで配置してもよい。例えば、ストラップリング413は、ベーンの遠位端に向けて配置された隣接ストラップリング413a,413bの間の間隔420aが、ベーンの長手方向に対してより中央に配置された隣接ストラップリング413b,413cの間の間隔420bよりも小さくなるように配置できる。
【0125】
該方法の第2例では、ストラップリング413が製造されるが、本開示の他の例では、ストラップリングは既製品で提供してもよいことが理解されよう。該方法の第2例では、ストラップリング413は、それぞれが同じ断面プロファイルおよび寸法を有するように製造され、任意の適切な形成またはモールド成形手法を用いて形成してもよい。
【0126】
該方法の第2例では、ベーン404a,404bが製造されるが、本開示の他の例では、ベーンは既製品で提供してもよいことが理解されよう。ベーン404a,404bは、本開示の第2例では以下のように製造される。
【0127】
各ストラップリングの配置は、最初にコンピュータ/数学モデリングに従って予め決定される。特に、各ストラップリングとその隣接ストラップリングとの間の間隔420は、予め決定されている。いったん間隔420が予め決定されると、ベーン404a,404bが形成できる。
【0128】
第1に、複数の金属直方体が提供され、上述した開示の第1例のように、第1グループおよび第2グループに等しく分割される。
【0129】
本開示の第2例では、第1孔パターンが、直方体の第1グループの深さを通って形成され、第1ベーン404aを形成する。直方体に孔を開けるために、任意の適切な孔形成ツールが実装できる。第1孔パターンは、本開示の第1例に関連して説明した孔414を含む。特に、第1孔および第2孔は、ベーンの長さに沿って交互配列しており、ストラップリング413について予め定めた間隔420に対応する間隔で配置される。各第1孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面に対応する断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結しながらそこを通過できるようする。各第2孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面よりも大きい断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結することなくそこを通過できるようにする。
【0130】
同様に、第2孔パターンが、第2グループの直方体の深さを通って形成され、第2ベーン404bを形成する。第2孔パターンは、本開示の第1例に関連して説明した孔414を含む。特に、第1孔および第2孔は、ベーンの長さに沿って交互配列しており、ストラップリングについて予め定めた間隔に対応する間隔で配置される。各第1孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面に対応する断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結しながらそこを通過できるようする。各第2孔は、それを通過する個々のストラップリングの断面よりも大きい断面を有するように寸法設定され、ストラップリングが、個々のベーンに連結することなくそこを通過できるようにする。
【0131】
本開示の第2例では、ベーン403a,403bでの第1孔の各々は、同じ断面プロファイルを有し、ベーン403a,403bでの第2孔の各々は、第1孔の断面プロファイルよりも大きい同じ断面プロファイルを有する。
【0132】
そして、ストラップリング413は、
図7の方法の第1例に関して上述したものと実質的に同じ方法で、ベーン404a,404bおよびシェル403と一緒に配置されて、ろう付けされ、アノード401を形成できる。
【0133】
該方法の第3例(不図示)が、マグネトロンのアノードを製造するために使用でき、少なくとも1つのストラップリングは、残りのストラップリングの幾何学的寸法とは異なる幾何学的寸法を有し、隣接ストラップリングのペア間の間隔が、隣接ストラップリングの第2ペア間の間隔とは相違する。第3方法は、
図6に示すマグネトロン500のアノード501を製造するために使用できる。
【0134】
第3方法は、上述した
図7および
図8の第1方法と第2方法を組み合わせたステップを含む。特に、第3方法は、
図7に関連して上述した方法で異なる幾何学的寸法(例えば、断面プロファイルおよび/または半径)を有するようにストラップリング513を用意するステップを含み、
図8に関連して上述したように、不均一に配置された間隔を備えた孔を有するベーン504a,504bを提供する。そして、ストラップリング513、ベーン504a,504bおよびシェル503は、一緒に組み立ててはんだ付けし、実質的に
図7と
図8に関連して上述した方法でアノード501を形成できる。従って、対応するステップの詳細な説明は、第3方法を参照して提供していない。
【0135】
そして、第1方法、第2方法および第3方法によってそれぞれ形成されたアノードは、個々のマグネトロンに組み立てできる。例えば、アノード301は、マグネトロン300に組み立てでき、アノード401は、マグネトロン400に組み立てでき、アノード501は、マグネトロン500に組み立てできる。
【0136】
ここでは、マグネトロン用のアノード(300)が提供され、該アノードは、マグネトロンのカソード(302)を収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェル(303)と、シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーン(304a,304b)とを備える。各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する。空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリング(313)は、長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置される。交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、複数のストラップリングのうちの少なくとも第1ストラップリングの断面寸法が、複数のストラップリングのうちの少なくとも第2ストラップリングの断面寸法とは相違する。
【0137】
ここでは、マグネトロン(400)用のアノード(401)も提供され、該アノードは、マグネトロンのカソード(402)を収容するためのシェルの中心、長手方向軸を定義する円筒形シェル(403)と、シェルの周りに角度間隔で配置された複数のベーン(404a,404b)とを備える。各ベーンとその隣接ベーンとの間の角距離が、マグネトロンの空洞共振器を提供するように構成され、各ベーンは、シェルからシェルの中心に向かって半径方向内向きに延びる幅を有し、シェルの長手方向軸と平行に長手方向に延びる長さを有する。空洞共振器の共振モードスペクトルを設定するための複数の環状ストラップリング(413)は、長手方向の間隔で、シェルの長手方向軸と同心円状に配置される。交互配列のベーンは、交互配列のストラップリングを支持するように構成され、そのため各ベーンが交互配列のストラップリングに連結し、各ストラップリングが交互配列のベーンに連結し、少なくとも、隣接ストラップリングのうちの第1ペア間の間隔(420)が、隣接ストラップリングのうちの第2ペア間の間隔とは相違する。
【0138】
説明した実施形態の変形例が想定される。例えば、本明細書に開示した全ての特徴(添付した請求項、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示した任意の方法またはプロセスのステップの全ては、こうした機能および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせてもよい。
【0139】
ここで無線周波数への参照は、約30Hzから300GHzの間の任意の周波数を意味すると解釈できる。無線周波数は、マイクロ波周波数を含むことを明確に意図している。ここでマイクロ波周波数への参照は、約300MHzから300GHzの間の任意の周波数を意味すると解釈できる。
【0140】
ここで想定されるマグネトロンの例は、Sバンド(約2から4GHz)、Cバンド(約4から8GHz)および/またはXバンド(約8から12GHz)の周波数を有するマイクロ波を発生するように動作可能でもよい。いくつかの例では、マグネトロンが、約3GHzより高い周波数を有するマイクロ波を発生するように動作可能でもよい。マグネトロンは、約12GHz未満の周波数を有するマイクロ波を発生するように動作可能でもよい。
【0141】
ここに提供される全ての範囲および値(例えば、パワーおよび/または周波数の値および/または範囲)は、例示目的のみで提供されており、限定する効果を有すると解釈されるべきではない。
【0142】
本発明の特定の態様、実施形態または例に関連して説明した特徴、整数または特性は、それらと互換性がない場合を除き、ここで説明したいずれか他の態様、実施形態または例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の請求項、要約および図面を含む)に開示した特徴の全て、および/またはそのように開示した任意の方法またはプロセスのステップの全ては、こうした特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組合せできる。本発明は、前述の実施形態のいずれの詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の請求項、要約および図面を含む)に開示した特徴の任意の新規のもの、または任意の新規の組合せに、あるいは、そのように開示した任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規のもの、または任意の新規の組合せに及ぶ。
【外国語明細書】