(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084564
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】車両ルーフのための装置及び車両ルーフ
(51)【国際特許分類】
B60J 7/02 20060101AFI20220531BHJP
B60J 7/05 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
B60J7/02 B
B60J7/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191274
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10 2020 131 345.4
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506027147
【氏名又は名称】ヴェバスト ソシエタス エウロペア
【氏名又は名称原語表記】Webasto Societas Europaea
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロルウェス ヤン
(57)【要約】
【課題】 カバー支持点を改善し、装置の固有振動数、特に開かれたカバーの固有振動数をより大きくすることを可能にし、開閉レバーのガイドレール側の端部の支承力をより小さくすることを可能にする。
【解決手段】 ルーフ開口部102を備えた車両ルーフのための装置であって、ルーフ開口部を閉じるための、滑動可能なカバー103と、ガイドレール108に対して枢転可能な開閉レバー109と、開閉レバー枢転用駆動キャリッジ110とを備える。その際、開閉レバーが、ガイドレールを有する第1の連結部111及びガイドレールを有する第2の連結部112を備えており、その際、第1の連結部及び第2の連結部が長手方向Xに互いに間隔を空けており、かつ開閉レバーが区分ごとにガイドレールに対して長手方向に滑動可能であるように形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ開口部(102)を備えた車両ルーフのための装置であって、
前記ルーフ開口部(102)を閉じるための、長手方向(X)に滑動可能なカバー(103)と、
前記車両ルーフ(101)に配置されているガイドレール(108)と、
前記ガイドレール(108)に対して枢転可能な開閉レバー(109)とを備え、その際、前記カバー(103)が前記ルーフ開口部(102)を開くために前記開閉レバー(109)に対して長手方向(X)に滑動可能であり、
前記開閉レバー(109)枢転用駆動キャリッジ(110)を備え、その際、前記駆動キャリッジ(110)が前記長手方向(X)に滑動可能に前記ガイドレール(108)に案内され、
その際、前記開閉レバー(109)が、前記ガイドレール(108)を有する第1の連結部(111)及び前記ガイドレール(108)を有する第2の連結部(112)を備えており、
その際、前記第1の連結部(111)及び前記第2の連結部(112)が前記長手方向(X)に互いに間隔を空けており、及び前記開閉レバー(109)が区分ごとに前記ガイドレール(108)に対して前記長手方向(X)に滑動可能であるように形成され、
その際、前記第1の連結部(111)が連結リンク(114)及び前記連結リンク(114)に案内される滑りピン(115)を備え、及びその際、前記駆動キャリッジ(110)が前記第2の連結部(112)の1つに割り当てられた前記開閉レバー(109)の範囲(116)で前記開閉レバー(109)と作用接続しており、それによって前記ガイドレール(108)に対する前記開閉レバー(109)の枢転及び滑動が行われることを特徴とする車両ルーフのための装置。
【請求項2】
前記開閉レバー(109)が形状(117)を有し、該形状が稼働可能状態で常に長手方向(X)が、長手方向(X)に対して横向きに延びる横方向(Y)及び垂直方向(Z)よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項3】
前記開閉レバー(109)が長手方向(X)に縦長に延びる範囲(120)を備え、その際前記縦長に延びる範囲(120)が、その閉位置で、長手方向(X)に少なくとも前記カバー(103)の前記長手伸展部(121)の25%を超えて延びることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項4】
前記第1の連結部(111)の前記連結リンク(114)が前記開閉レバー(109)内に形成され、及び前記滑りピン(115)が定置状態で前記ガイドレール(108)に形成されていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項5】
前記第2の連結部(112)が、定置状態で前記ガイドレール(108)に形成されたチルト連結リンク(122)を有し、及び前記開閉レバー(109)に形成され且つ前記チルト連結リンク(122)内に案内されるチルトピン(123)を有することを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項6】
前記開閉レバー(109)が駆動連結リンク(124)を有し、及び前記駆動キャリッジ(110)が、前記駆動キャリッジ(110)の滑動を前記開閉レバー(109)に伝達するために、前記駆動連結リンク(124)内に案内される駆動ピン(125)を有することを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項7】
前記チルト連結リンク(122)及び前記駆動連結リンク(124)が互いに反対向きのコース(126、127)を有しているために、前記チルト連結リンク(122)と前記駆動連結リンク(124)とが少なくともカバー(103)の閉位置で交差することを特徴とする請求項5及び6に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項8】
前記開閉レバー(109)が長手方向(X)に突出範囲(128)を有し、該範囲が前記カバーの開位置で長手方向(X)に、固定ルーフ要素(129)を超えて突出していることを特徴とする請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項9】
別の駆動キャリッジ(130)を有する装置であって、前記カバー(103)が、前記カバー(103)の閉位置で、長手方向(X)で前記開閉レバー(109)と反対向きの前縁(106)が、カバー連結リンク(133)を有し、その際別の駆動キャリッジ(130)が、前記カバー(103)を長手方向に(X)滑動させるために前記カバー連結リンク(133)にかみ合うことを特徴とする請求項1~8のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項10】
前記別の駆動キャリッジ(130)の滑動を前記駆動キャリッジ(110)に伝達するために、前記駆動キャリッジ(110)及び前記別の駆動キャリッジ(130)が互いに連結可能であり、及び前記駆動キャリッジ(100)及び前記別の駆動キャリッジ(130)が互いに連結解除可能であるために、前記別の駆動キャリッジ(130)が長手方向(X)に前記駆動キャリッジ(110)に対して滑動可能であることを特徴とする請求項9に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項11】
前記カバー(103)に固定されたカバースライダー(134)を有することを特徴とする請求項1~10のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置。
【請求項12】
ルーフ開口部(102)を備えた車両ルーフであって、
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置(200)と、
前記可動カバー(103)とを備え、その際前記カバー(103)と前記ルーフ開口部(102)が、前記ルーフ開口部(102)が前記カバー(102)の後端部(107)を、カバー(103)を使用して閉じることが可能であるように寸法決めされていることを特徴とする車両ルーフ。
【請求項13】
ルーフ開口部(102)を備えた車両ルーフであって、
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の車両ルーフのための装置(200)と、
前記可動カバー(103)と、
別のカバー(129)とを備え、その際、前記可動カバー(103)はその開位置で、前記別のカバー(129)の上に配置されており、その際、前記カバー(103)及び前記別のカバー(129)並びに前記ルーフ開口部(102)は、車両ルーフ。前記カバー(103)と前記別のカバー(129)が一緒に前記ルーフ開口部(102)内に配置されるように寸法決めされていることを特徴とする車両ルーフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車の車両ルーフのための装置及び車両ルーフ、特に、車両ルーフのルーフ開口部を閉じるための可動カバーを動かすための装置が提示される。さらに、自動車用の車両ルーフ、特に、本願記載の装置を有する車両ルーフが提示される。
【背景技術】
【0002】
車両ルーフ用可動カバーを備えた装置は、例えば特許文献1に記述されたように、いわゆるスポイラールーフとして仕上げられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許公開第102012106545(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確実な稼働を可能にする、車両ルーフのための装置を提示することが望ましい。さらに、確実な稼働を可能にする車両ルーフを提示することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも1つの実施形態により、ルーフ開口部を備えた車両ルーフのための装置が提示される。この装置は、
ルーフ開口部を閉じるための、長手方向に滑動可能なカバーと、
車両ルーフに配置されているガイドレールと、
ガイドレールに対して枢転可能な開閉レバーとを備え、その際、カバーがルーフ開口部を開くために開閉レバーに対して長手方向に滑動可能であり、
開閉レバー枢転用駆動キャリッジを備え、その際、駆動キャリッジが長手方向に滑動可能にガイドレールに案内され、
その際、開閉レバーが、ガイドレールを有する第1の連結部及びガイドレールを有する第2の連結部を備えており、
その際、第1の連結部及び第2の連結部が長手方向に互いに間隔を空けており、かつ開閉レバーが段階的にガイドレールに対して長手方向に滑動可能であるように形成され、
その際、第1の連結部が連結リンク及び連結リンクに案内される滑りピンを備え、及びその際、駆動キャリッジが第2の連結部の1つに割り当てられた開閉レバーの範囲で開閉レバーと作用接続しており、それによってガイドレールに対する開閉レバーの枢転及び滑動が行われる。
【0006】
この装置は、特にいわゆるスポイラールーフのために形成される。スポイラールーフでは、開方向に見て後部エッジで、カバーの後端部をチルトアップするために、まず開閉レバーが回転されるか又は枢転される。このカバーは、ルーフ開口部を少なくとも部分的に開放するために、開閉レバーに対して開方向に滑動される。ここで開閉レバーは、残りの車両ルーフに対して保持され、カバーと一緒に開方向に滑動されることはない。カバーが開閉レバーに対してより後方に滑動されるほど、開閉レバーを使用して保持しなければならない力が大きくなり、車両が動いている場合はカバーの振動も大きくなる。これを克服することはずっと以前から望まれており、本願に記述された解決法により改善が可能である。
【0007】
これは例えば、開閉レバーがカバーの後部エッジでカバーと一緒に残りの車両ルーフに
対して開方向に滑動される、いわゆる外部ガイド式のスライディングルーフとは異なる。そこでは上述の問題は起こらない。しかし、このようなルーフは、スポイラールーフの代替として使用することはできない。なぜならこれは構造的にまったく異なるからであり、さらに、スポイラールーフ又は外部ガイド式ルーフの使用はそれぞれの車両ベースの適性によって異なるからである。
【0008】
本願に記述された装置の開閉レバーは、ガイドレールの長手方向に区分ごとに滑動可能である。これとは別に、ルーフの滑動中にガイドレールに対して長手方向に一緒に動かないようにするため、開閉レバーはガイドレールに対してロック可能である。カバーがルーフ開口部を閉じるカバー閉位置を基点にして、カバーの後端部をチルトアップ(いわゆる換気位置)するために、開閉レバーが枢転される。本願に記述された装置は、以下において、開閉レバーがガイドレールに対してロックされ且つカバーが開閉レバーに対してさらに開方向へ滑動される前に、開閉レバーを開方向へ所与の区間滑動させることを可能にする。これにより、従来技術と比べて、開閉レバーとガイドレールにあるカバー支持点が改善される。装置の固有振動数、特に開かれたカバーの固有振動数をより大きくすることが可能である。開閉レバーのガイドレール側の端部の支承力をより小さくすることが可能である。
【0009】
そのために開閉レバーは、ガイドレールを有して互いに間隔を空けた2つの連結部を備えている。したがって、開閉レバーでは、より長い支持比が実現可能である。これにより、より大きな開口部幅が可能になる。つまり、従来のスポイラー機構と比べて最大開位置でカバーが比較的大幅に後方へ配置され得、このスポイラー機構では開閉レバーがガイドレールのただ1つの旋回点にしか配置されておらず、及び加えてこの旋回点は長手方向には滑動できない。
【0010】
連結リンクと滑りピンを有する第1の連結部により、開閉レバーの回転動作及び枢転が可能になる。一実施形態に従って、連結リンクは開閉レバー内に形成され、及び滑りピンは定置状態でガイドレールに形成される。滑りピンが開閉レバーに形成され、及び連結リンクがガイドレール内に形成されることも可能である。第1の連結部によって開閉レバーとガイドレール間の接続が可能になり、このガイドレールは単純に形成されることにより低費用で実現できる。加えて、このガイドレールによって開閉レバーで比較的長い支持比が実現し、及び開閉レバーがガイドレールに対して長手方向に滑動可能になる。
【0011】
駆動キャリッジは、例えば間接的に又は直接的に装置の電気モーターによって駆動される。駆動キャリッジは開閉レバー付近に、つまり特にカバーが閉じている位置でカバーの後端部に、配置される。駆動キャリッジは、開閉レバーを枢転及び長手方向に滑動するために、長手方向に滑動される。枢転運動及び滑動運動の完了後、例えば駆動キャリッジはガイドレールに対してロックされる。ルーフ開口部を閉じるために、駆動キャリッジが反対方向に動き、その結果、開閉レバーが前方へ滑動され、及び戻り枢転され、それによってカバーが閉じられる。
【0012】
「後ろ」又は「前方」のような、使用されている場所情報または方向情報は、車両長手方向に関して適用される。車両長手方向は、水平方向又は数学座標系のX軸方向と呼ぶことも可能である。カバーのチルトアップ又は押し開けは、実質的に垂直方向に、若しくは数学座標系のZ軸方向に行われる。カバーの後範囲とは、例えばカバーの中心を基点として車両後部の方を向いた範囲と解釈するものとする。
【0013】
少なくとも1つの実施形態に従って、開閉レバーは稼動可能な状態で、長手方向が横方向及び垂直方向より常に長いという形状を有している。横方向及び垂直方向には例えばそれぞれ長手方向に対して横向きに伸びている。つまり、カバーがその閉位置で折り畳まれ
た状態でも、換気位置及びカバーが開いた状態でも、駆動キャリッジは、特に垂直方向よりも長手方向が長い。このことにより、換気位置及び開位置におけるカバーの有利な支持比が可能になる。枢転の度合いとは無関係に、開閉レバーは垂直方向よりも長手方向に特に常に長い。
【0014】
少なくとも1つの実施形態に従って、開閉レバーは長手方向に縦長に延びる範囲を備えている。縦長に延びる範囲は長手方向に延び、例えばカバーの閉位置で少なくともカバーの長手伸展範囲の25%に沿って延びる。したがって縦長に延びる範囲の長さは、例えばカバーの長手伸展範囲の少なくとも4分の1である。縦長に延びる範囲の長さは、換気位置及び/又は開位置で、特にカバーの所望の支持比によって決まる。開閉レバーがカバーの長手伸展範囲の10%超、カバーの長手伸展範囲の20%超、カバーの長手伸展範囲の30%以上、例えば最大でカバーの長手伸展範囲の50%以上延びることも可能である。
【0015】
開閉レバーの縦長に延びる範囲が長くなればなるほど、カバー側の開閉レバー終端がさらに後方へ移動され得る。このことは大きい固有振動数及び低い支承力及び有利な支持比を可能にする。カバーの換気位置及び/又は開位置に割り当てられた、外へ回された位置では、開閉レバーは垂直方向よりも長手方向に何倍も長く、例えば3倍、5倍、7倍または10倍延びる。縦長に延びる範囲の、長手方向と垂直方向の比率は、別の比率ももちろん可能である。
【0016】
少なくとも1つの実施形態に従って、第2の連結部はチルト連結リンクを備えている。チルト連結リンクは定置状態でガイドレールに形成される。第2の連結部はチルトピンを有している。チルトピンは開閉レバーに形成される。チルトピンはチルト連結リンク内に案内される。開閉レバーを長手方向に滑動すると、チルトピンはチルト連結リンクに沿って動く。チルト連結リンクは、後ろの開閉レバー終端が持ち上げられ及び開閉レバーがそれによって枢転される形状を有している。チルト連結リンクの形状により、さらに開閉レバーの長手方向滑動が可能になる。
【0017】
少なくとも1つの実施形態に従って、開閉レバーは駆動連結リンクを有している。駆動キャリッジは、駆動ピンを有している。駆動ピンは駆動連結リンク内に案内され、それにより駆動キャリッジの滑動を開閉レバーの動きに移す。駆動連結リンクは、後ろの開閉レバー終端の動きを垂直方向に沿って可能にし、及び開閉レバーの長手方向の滑動を可能にするコースを有している。
【0018】
少なくとも1つの実施形態に従って、チルト連結リンク及び駆動連結リンクは、互いに反対方向のコースを有している。チルト連結リンク及び駆動連結リンクのコースは、少なくともカバーの閉位置で交差する。駆動連結リンクは、駆動連結リンクが開方向に沿ってまずガイドレールからさらに離れ、及びその後コースで開方向に沿ってガイドレールに接近するコースを有する。例えば駆動連結リンクは、実質的に水平に延びる範囲及び傾斜する範囲を有している。これにより、いわゆる許容平坦部が可能になり、そこでは駆動ピンが長手方向へ滑動しても、開閉レバーの滑動又は枢転が引き起こされない。
【0019】
開閉連結リンクは、開閉連結リンクが長手方向にまず傾斜して伸び、及び続いて実質的に水平に延びるコースを有する。したがって、閉位置から始まり、まず開閉レバーの枢転が可能であり、及び続いて、チルトピンがチルト連結リンクの終端の裏側に達するまで、開閉レバーが長手方向に滑動される。
【0020】
少なくとも1つの実施形態に従って、開閉レバーは長手方向に突出している範囲を有し、この範囲がカバーの開位置で長手方向に、固定ルーフ要素を超えて突出している。突出範囲は、特に後方へ突出している。突出範囲は、換気位置及び開位置で、第1及び第2の
連結部の後ろに配置されている。閉位置では、突出範囲は長手方向に固定ルーフ要素の前に配置されている。ガイドレールに対して開閉レバーを長手方向に滑動することにより、突出範囲を固定ルーフ要素の上方に配置することが可能になる。このことは、開閉レバーにおける大きな固有振動数及び低い支承力、及び開閉レバーにおけるより長い支持比を可能にする。カバーから開閉レバーに伝達されるてこ作用は、開閉レバーの突出範囲より後方になるほど小さくなる。
【0021】
少なくとも1つの実施形態に従って、この装置はさらに別の駆動キャリッジを有している。このカバーは、カバーの閉位置で、長手方向に開閉レバーとは反対側に前縁を有している。カバーは前縁にカバー連結リンクを有している。例えばカバーはカバーキャリアを有し、及びカバー連結リンクはカバーキャリア内に形成される。別の駆動キャリッジがカバー連結リンクにかみ合い、カバーが長手方向に滑動される。別の駆動キャリッジは、例えば直接駆動ケーブルと結合され、この駆動ケーブルはさらに電気モーターの駆動力を別の駆動キャリッジに伝達する。
【0022】
駆動キャリッジと別の駆動キャリッジは、別の駆動キャリッジの動きが駆動キャリッジに伝達されるように、特に一時的に互いに接続される。これにより、例えば開閉レバーの枢転及び滑動が可能になる。
【0023】
別の駆動キャリッジと駆動キャリッジは互いに連結解除可能であるため、別の駆動キャリッジの動きが駆動キャリッジに伝達されず、及びそれによって開閉レバーに伝達されない。これにより別の駆動キャリッジは、例えば換気位置と開位置との間でカバーが滑動できるようにするため、駆動キャリッジ及び開閉レバーに対して滑動可能である。
【0024】
少なくとも1つの実施形態に従って、この装置はカバースライダーを有する。カバースライダーは、固定されてカバーに取着されている。例えばカバーはカバーキャリアを有し、及びカバースライダーはカバーのカバーキャリアに固定されて取着されている。カバースライダーは、特にカバーに対して枢転可能ではない、若しくはカバーに対して枢転可能なレバーに、配置されている。これにより、省スペースでカバー前縁の案内が可能である。閉位置と換気位置との間のカバーの仮想回転軸は、可能な限り前方へ配置され得る。仮想回転軸として、カバーが実際にその周りを枢転する軸が示される。この仮想回転軸は、カバーが枢転可能に保持されている機械的回転軸とは相違している。これによりさらに、カバーが開方向に沿って比較的大幅に後方に滑動され得ることが可能である。なぜなら機械部分はカバー前縁で必要スペース及び取付けスペースが小さいからである。
【0025】
少なくとも1つの実施形態に従って、自動車用車両ルーフは、本願に記載された少なくとも1つの実施形態による装置を備えている。この車両ルーフは可動カバーを有している。カバー及びルーフ開口部は、ルーフ開口部が少なくとも開方向に後方へ、カバーの後端部でカバー単独で閉鎖可能になるように寸法決めされている。ルーフ開口部は例えば、シートメタルから形成された自動車の固定ルーフにある開口部である。ルーフ開口部のサイズとカバーのサイズは、カバーの後端部が直接固定ルーフと隣接するよう配置されることで、ルーフ開口部が可動カバーで閉鎖可能になるように調整されている。したがって、換気位置及び開位置では、開閉レバーの突出範囲は、車両ルーフの固定ルーフ部分の上に、すなわち特にシートメタルルーフの上に配置されるがルーフ開口部の上には配置されない。
【0026】
少なくとも1つの実施形態に従って、車両ルーフは、本願に記載された少なくとも1つの実施形態による装置を備えている。この車両ルーフは可動カバー及び別のカバーを有している。可動カバーと別のカバー及びルーフ開口部は、例えば、カバーと別のカバーが閉位置で一緒にルーフ開口部内に配置可能なように寸法決めされる。可動カバーと別のカバ
ー及びルーフ開口部は、例えばルーフ開口部が、カバーと別のカバーとで一緒に閉鎖可能になるように寸法決めされる。別のカバーは、特に作動安定状態で残りの車両ルーフに対して不動にルーフ開口部に配置されている。閉位置では、可動カバーは別のカバーの前でルーフ開口部に配置されて、及び両方のカバーは一緒にルーフ開口部を閉じる。開位置では、可動カバーは別のカバーの上方に配置されている。したがって、別のカバーは引き続きルーフ開口部の一部、特に後ろ部分であり続ける。開位置では、したがって、開閉レバーの突出範囲は別のカバーの上に突出する。
【発明の効果】
【0027】
開閉レバーとガイドレールにあるカバー支持点が改善される。装置の固有振動数、特に開かれたカバーの固有振動数をより大きくすることが可能である。開閉レバーのガイドレール側の端部の支承力をより小さくすることが可能である。
さらなる利点、特徴及び発展形態は、図を使用して説明される例により、以下に開示される。同じ、または同種の及び同じように作用する要素は、すべての図で共通して同じ符号が付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】一実施例による車両ルーフ部分の模式図である。
【
図6】一実施例によるロッキング装置の模式図である。
【
図8】閉位置における一実施例による装置の模式図である。
【
図9】閉位置における一実施例による装置の模式図である。
【
図10】開閉レバーが枢転した、一実施例による装置の各模式図である。
【
図11】開閉レバーが枢転した、一実施例による装置の各模式図である。
【
図12】開閉レバーが枢転した、一実施例による装置の各模式図である。
【
図13】開位置における一実施例による装置の各模式図である。
【
図14】開位置における一実施例による装置の各模式図である。
【
図15】開位置における一実施例による装置の各模式図である。
【
図16】一実施例による開閉レバーの模式図である。
【
図17】一実施例によるロッキング装置部分の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、自動車100の車両ルーフ101の模式図である。車両ルーフ101は、特に自動車100の部品、特に乗用車の部品である。車両ルーフ101は、装置200を備えている。装置200は、カバー103を有している。カバー103は、ルーフ開口部102を閉じるために使用される。ルーフ開口部は、カバー103を長手方向Xに滑動することで、閉鎖可能及び少なくとも部分的に開放可能である。加えてカバー103は、X方向に、車両ルーフ101の固定ルーフ要素129に対して滑動可能である。
【0030】
図1は、閉位置のカバー103の図で、この位置ではカバー103はルーフ開口部102を閉じている。閉位置を基点にカバー103は垂直方向Zにチルトアップ可能であり且つ長手方向Xに滑動可能であり、これによってルーフ開口部102が少なくとも部分的に開放可能になる。
【0031】
装置200は、特に一種のスポイラールーフのように構成されている。例えば
図2~
図5に模式的に示されたように、装置200は開閉レバー109を有しており、これは後部開閉レバー109とも呼ばれる。この開閉レバー109は、カバー103の後端部107をチルトアップ及びプルダウンするために使用される。後端部107は、長手方向Xに、カバー103の前縁106と反対側に配置されている。カバー103の前縁106は、自動車100のフロントウィンドウ104の方を向いている。
【0032】
開閉レバー109は、ガイドレール108に支持されている。ガイドレール108は、長手方向にX配置されており、及び横方向Yに沿ってルーフ開口部102の横で自動車100のボディ105と接続している。ルーフ開口部102の両側には、それぞれ1つのガイドレール108が、付属している開機構と共に配置されている。開機構若しくは装置200は、両側に同様に及び対応して相互に形成されている。以下では片側のみが記述され、及び記述内容は、ルーフ開口部の別の側にも、横方向Yに沿って対応している。
【0033】
開閉レバー109は、第1の連結部111を使用して及び第2の連結部112を使用して、ガイドレール108で支持されている。第1の連結部111及び第2の連結部112は、長手方向Xに互いの間に間隔113を有している。間隔113は、例えば少なくともルーフ開口部の長手方向Xの4分の1の大きさであり、間隔113はそれより大きくても小さくてもよい。例えば間隔113は5cmより大きく、特に30cmより大きく、最大50cm前後である。
【0034】
第1の連結部111には、ガイドレール108に滑りピン115が形成されている。滑りピン115は、横方向Yに延びる。
【0035】
第1の連結部111は、開閉レバー109内に形成された連結リンク114を有している。特に連結リンク114は、開閉レバー109の第1の終端131に形成される。開閉レバー109の第1の終端131は、フロントウィンドウ104の方を向いている。連結リンク114は、実質的に直線的に、長手方向Xに延びるコースを有している。
【0036】
滑りピン115は、連結リンク114内に配置されている。それゆえに開閉レバー109は、連結リンク114を使用して及び滑りピン115を使用して、ガイドレール108で支持されている。第1の連結部111の支持は、開閉レバー109が長手方向Xに滑動可能になるよう形成される。このことは、連結リンク114によって可能になる。カバーの閉位置(例えば
図8及び
図9も参照)は、滑りピン115が後方の、すなわちフロントウィンドウ104と反対向きの、連結リンク114終端に配置されている。カバーの換気位置及び特に開位置では、滑りピン115は連結リンク114の前側の終端に、すなわちフロントウィンドウ104の方を向いた、連結リンク114の終端の1つに配置されている。
【0037】
第2の連結部112は、チルト連結リンク122を有している。チルト連結リンク122は、定置状態でガイドレール108に配置され及び例えばガイドレール108の一部である。チルト連結リンク122が独立した構成部品内に形成され及びこの構成部品がガイドレール108に固定的に接続されていることも可能である。
【0038】
チルトピン123はチルト連結リンク122内に案内される。チルトピン123は開閉レバー109に形成される(
図7、
図16も参照)。チルト連結リンク122のコース126は、長手方向Xに前側の、すなわちフロントウィンドウ104の方を向いた、急勾配に上昇する範囲を備えた終端から始まる。続いて、チルト連結リンク122は実質的に直線的に、長手方向Xに延びる範囲を有している。チルト連結リンク122に沿った動きに沿って、カバーの閉位置から始まり、チルトピン123はそれゆえにまず垂直方向Zにチ
ルトアップされ、及び続いて、垂直方向Zにさらなる動きなしに、長手方向Xに滑動される。これに応じて、開閉レバー109の後方の終端132も、まず実質的に垂直方向Zにチルトアップされ、及び続いて、X方向に滑動される。
【0039】
開閉レバー109の動きは、駆動キャリッジ110によって引き起こされる(
図17も参照)。駆動キャリッジ110は、図示された実施例では、別の駆動キャリッジ130を備えた連結部(
図3)によって駆動される。別の駆動キャリッジ130は、駆動ケーブル139、例えば引っ張りや圧力に強いスレッドケーブルで電気モーターと接続されている。駆動ケーブル139は作動中に別の駆動キャリッジ130を長手方向Xに滑動する。この滑動は、カバー103の閉位置から始まり、ロッキング装置135(
図6)を使用して駆動キャリッジ110に伝達される。駆動キャリッジは、長手方向Xにも後方へ滑動される。その際に、駆動キャリッジ110の駆動ピン125は、開閉レバー109の駆動連結リンク124に沿って移動する。
【0040】
駆動連結リンク124は、チルト連結リンク122のコース126とは反対方向のコース127を有している。その前側の、すなわちフロントウィンドウ104の方を向いた終端は、駆動連結リンク124のコース127を、例えば長手方向に延びる水平範囲を、有している。この範囲は実質的に、その中で駆動ピン125が長手方向Xに可動である許容誤差調整として機能し、開閉レバー109の動きを引き起こすことがない。続いてコース127が下降する。駆動ピン125がこの下降する範囲に配置され、及び駆動キャリッジ110がさらに後方へ滑動されると、開閉レバー109がチルトアップされる。なぜなら、チルトピン123がチルト連結リンク122の反対方向に上昇する範囲にあるからである。
【0041】
駆動連結リンク124のコース127は、例えばカバー103の位置が換気位置にある場合、中央範囲に別の、実質的に水平方向に向いた範囲を有している。ここでも、長手方向Xのコースは、許容誤差調整として機能する。続いて、開閉レバー109をその最終位置で長手方向Xに後方に滑動できるよう、降下範囲が駆動連結リンク124内に備えられている。開閉レバー109が垂直方向Zに完全に枢転し及び長手方向Xに滑動すると、駆動キャリッジ110と別の駆動キャリッジ130との間の連結部が外れる。駆動キャリッジ110は、ガイドレール108に対してロックされ、その結果、カバー103をさらに後方へ滑動するために別の駆動キャリッジ130がさらに長手方向Xに滑動される場合に、駆動キャリッジ110及び開閉レバー109はそれ以上動かされない。カバー103を閉じるために、動作順序は反対に進行する。別の駆動キャリッジ130は、まず駆動キャリッジ110に対して後ろから前へ滑動される。さらに、ロッキング装置135が両方の駆動キャリッジ110、130を互いに連結し、その結果、開閉レバー109が再び前へ引かれ、及び下方へ枢転される。
【0042】
開閉レバー109は形状117を有する。形状117は、横方向Y及び垂直方向Zよりも長手方向Xに明らかに拡大している。開閉レバー109はしたがって長さ118を有し、この長さは垂直方向Zの高さ119の何倍も長い。例えば長さ118は、カバー103の換気位置又は開位置に割り当てられている開閉レバー109の押上位置においても、高さ119より何倍も長い。例えば長さ118は高さ119よりも2倍長い、3倍長い、4倍長い、5倍長い又は最大10倍以上長い。これにより、間隔113がより大きくなる。
【0043】
第2の連結部112に割り当てられ、及び開閉レバー109の第2の終端132に割り当てられた後範囲116を基点として、開閉レバー109は縦長に延びた範囲120を有し、この範囲は長手方向X前方へ、フロントウィンドウ4の方向に延びている。この範囲は特に開閉レバー109の押上位置でも、長手方向Xに縦長に前方へ延びている。カバー103の閉位置及び換気位置では、縦長に延びる範囲120がカバーの長手伸展部121
に沿って延びる(
図1)。カバーの長手伸展範囲は、前縁106と後端部107の間を長手方向Xに延びる。後方の終端132から、縦長に延びる範囲120はカバー103が閉じており且つカバー103の装置が換気位置にある場合、例えば5分の1、4分の1、3分の1、又はそれ以上、例えばカバー103の長手伸展部121の半分又は3分の2、長手方向Xに前へ、フロントウィンドウ104の方向に延びる。
【0044】
開閉レバー109は、後範囲116にロック溝142を有している。ロック溝142は、長手方向Xに後方へ開いている。駆動キャリッジ110は、ロックピン143を有している。このロックピン143は、カバー103の閉位置でロック溝142内に配置されている。このロックピン143を使って、カバー103を閉じるために、開閉レバー109の換気位置から垂直位置Zに沿って下方へ引かれ、及び垂直方向Zに保持される。これにより、カバー103は、力が強く作用すると、確実に閉じることが可能であり、及び確実に閉位置に維持できる。
【0045】
カバー103は例えばカバーキャリア140を有する。カバーは例えば平らなパネル、特にガラス製パネルを有する。このパネルには、カバーキャリア140が配置されている。カバーキャリア140は、その前方の、フロントウィンドウ104の方を向いた終端に、カバースライダー134を有する。カバースライダー134は固定され且つ不動にカバーキャリア140に取り付けられ、及び特にカバーキャリア140に対して枢転不可能である。カバースライダー134を、横方向Yに沿って伸びる回転軸周りに、カバーキャリア140に対して回転させることが可能である。しかし、カバースライダー134は、実施例に従い、長手方向X及び/又は垂直方向Zに、カバーキャリア140に対して不動である。カバースライダー134は、ガイドレール108内に案内され及びカバー103の前縁106のチルト及び滑動のために使用される。
【0046】
カバーキャリア140には、カバー103の前縁106を垂直方向Zにチルトアップ及びプルダウンするためにカバー連結リンク133が形成されている。カバー連結リンク133は、その前方の、フロントウィンドウ104の方を向いた終端から始まり、まず実質的に直線的に、長手方向Xに伸びる範囲を有する。別の駆動キャリッジ130のカバーピン144は、カバー連結リンク133内に配置されている。カバーピン144が直線的な範囲内で長手方向Xに滑動しても、前縁106が著しく長手方向Xに滑動されることはない。開閉レバー109が押上げられ、及び後端部107がチルトアップされ、ルーフ開口部102を開くためにカバーピン144がカバー連結リンク133の降下範囲に達する。カバーピン144がカバー連結リンク133の降下範囲に配置されていると、別の駆動キャリッジ130の滑動運動がカバーキャリア140に伝達され、及びカバー103が長手方向Xに滑動される。
【0047】
ロッキング装置135は、例えば引っ張りや圧力に強い駆動ケーブルを使用して、ロッキング要素138として実現される。ロッキング要素138は駆動キャリッジ110と固定的に接続され、及び長手方向X前方へ延びている。ロッキング要素138はロッキングピン136を使用して、選択的に別の駆動キャリッジ130と接続可能であるか、又は別の駆動キャリッジ130から分離可能であり、及びガイドレール108と長手方向Xにロック可能である。ロッキング要素138は、例えばガイドレール108のロック連結リンク137内に案内される。別の駆動キャリッジ130から連結解除されるために、及びガイドレール108と長手方向Xにロックされるために、ロッキングピン136は例えば長手方向Xに相当する回転軸の周りを回る。ロッキングピン136が別の駆動キャリッジ130と接続されている状態では、ロッキングピン136が横方向Yに向けられる。ロッキングピン136がガイドレール108とロックされている状態では、ロッキングピン136は垂直方向Zに向けられる。
【0048】
ロッキング装置135の別の実施例も可能である。例えばロッキング要素138が固定されたロッキングレバーとして、弾力性のあるフレキシブルなロッキング要素138として、又はほかの方法で形成されている。ロッキング要素138及びロッキング装置135は、別の駆動キャリッジ130の運動が、一時的に駆動キャリッジ110に伝達可能であり、及び駆動キャリッジ110がほかの状態においてガイドレール108に対して不動にガイドレールとロック可能であるように形成される。
【0049】
図10~
図12には、開閉レバー109が少なくとも部分的に押上げられた装置200を示している。開閉レバー109の後方の終端132は、カバー103の閉位置と比較して、垂直方向Zにチルトアップされている。加えて、駆動キャリッジ110は長手方向Xに滑動され、及び駆動ピン125は駆動連結リンク124に滑動されている。しかしチルトピン123は、チルト連結リンク122の急勾配で上昇する範囲に配置されている。だが、まだ大幅には開閉レバー109が長手方向Xに滑動はされていない。ただ、カバー103の後端部107がチルトアップされている。カバー103の前縁106も、まだ大幅には動かされていない。カバーキャリア140に配置され、Y方向に外側へ向いたカバースライダー134は、まだ大幅には動いていない。連結リンク114は、滑りピン115に対してまだ大幅には滑動されていない。
【0050】
図13~
図15には、カバー103の開位置における装置200が示されている。
図10~
図12の換気位置と比べて、チルトピン123がチルト連結リンク122の終端に配置されるまで、駆動キャリッジ110はさらに長手方向Xに後方へ滑動される。それに応じて、駆動ピン125は駆動連結リンク124の後ろの終端へ滑動されている。したがって開閉レバー109はその最大押上位置にチルトアップされ及び加えて長手方向X後方に滑動されている。これに関して、連結リンク114も滑りピン115に対して滑動されている。
【0051】
開閉レバー109は、示されたカバー103の開位置でも換気位置でも及びカバー103の閉位置でも、確実に2つの間隔を空けた第1、第2連結部111、112に支持される。それゆえに、特に開位置では、開いたカバー103を介して装置200にもたらされる力の確実な支持が、ガイドレール108及びそれによってボディ105で可能である。したがって、カバー103は比較的遠くまで後方へ滑動できるようになる。
【0052】
全開位置では、開閉レバーの連結リンク114が長手方向Xにカバーピン144の前に配置される。全開位置では、別の駆動キャリッジ130が連結リンク114の後ろに配置される。別の駆動キャリッジ130及びカバーピン144は、全開位置で長手方向Xに開閉レバー109の2つの終端131、132の間に配置される。別の駆動キャリッジ130及びカバーピン144は、全開位置で滑りピン115とチルトピン123の間に配置される。全開位置では、開閉レバー109の縦長に延びる範囲120は、長手方向Xに後ろから前へ別の駆動キャリッジ130を通り過ぎて延びる。別の駆動キャリッジ130は、全開位置で、横方向Yに開閉レバー109の隣に配置される。
【0053】
特に、開閉レバー109が後方に突出する範囲128を備えて形成されることも可能である。この、後方に突出範囲128は、カバーの開位置では後ろの固定ルーフ要素129を飛び越える。これにより、カバーキャリア140の支持は、比較的に、固定ルーフ要素129の後ろ及び特に上部で可能である。カバーキャリア140の支持は、長手方向Xに、可能な限りずっと後ろで、カバーキャリア140を介して両方の第1、第2連結部111、112にかかるてこの作用を低減する。開閉レバー109の後方の終端132に配置され、及びカバーキャリア140内で滑走して支承されている移動スライダー141は、カバー103が開いている状態で、固定ルーフ要素129の上方に配置されている。
【0054】
固定ルーフ要素129は、例えばルーフ開口部102内に配置された別のカバーである。固定ルーフ要素129が車両ボディの一部であるか又は車両ルーフ101と形成し且つルーフ開口部102を取り囲むシートメタルであることも可能である。装置200は、カバー103を全開するために、装置200の要素及び別の機械的要素が固定ルーフ要素129の下に来ないように構成されている。特に別の駆動キャリッジ130は、例えばチルト連結リンク122の範囲までしか進まない。カバーキャリア140の動きは、非常に大幅に前方にカバーキャリア140に配置されているカバー連結リンク133を使って、カバーキャリア140を大きく後方に滑動させ、及びルーフ開口部102を大きく開く。
【0055】
図18には、カバー103が開いた状態のカバー支持点A及びBにおける力及びレバー比が模式的に示されている。前側の支持点A、すなわち特にカバースライダー134が後ろに配置されていればいるほど、ルーフ開口部102を大きく開放することが可能である。しかし、カバー103を確実に支持できるためには、支持点AとBの間には最小間隔iが必要である。そのためにはてこ力が作用する。なぜなら前方の支持点Aとカバー103の後端部107との間の間隔Lは、前方の支持点Aとカバー103を支持している移動スライダー141との間の間隔kよりも明らかに長いからである。Lとkの差異から、移動スライダー141がより後方へ配置されるほど小さくなる、てこの力が生じる。それにより、突出範囲128は、てこの力の低減を可能にする。なぜなら後方へ突出していない開閉レバーと比べると、kとLの比が改善されるからである。他方、てこの力が低減されると、最小距離iも小さくなる。なぜなら全体として少ない力が作用し、及びそれによってカバー103が、より小さいiも確実に支持され得るからである。最小間隔iを小さくするため、さらに、カバー103を支持点Aの前で支持することを可能にする長手方向に延びる開閉レバー109が備えられ、それについては以下において
図19で詳細に説明される。
【0056】
図19には、カバー103が開いている状態で、第1、第2連結部111、112における力及びレバー比が模式的に示されている。移動スライダー141は、長手方向Xにその最後端位置に配置され、及び固定ルーフ要素129の上に配置される。開閉レバー109の前側の第1連結部111では、2つの点CとBの間の間隔fによって生じるてこが作用する。ここでBは、移動スライダー141における力の作用点であり、及びCは、滑りピン115及び連結リンク114における力の作用点である。さらに、導き入れられるべき力は、間隔113によって、又は点CとDの間のeによって決まる。ここでDは第2の連結部112、チルト連結リンク122及びチルトピン123における作用点に相当する。
【0057】
点Bは、点Dに関して後方にずらして配置されている。なぜなら突出範囲128は後方に突き出ているからである。点Bがより後方へ滑動されるほど、開いたカバーからてこにもたらされる力は小さくなる。なぜならLとkの比が理由で生じるてこの力がより小さいからである(
図18)。点Bの後ろに配置されたカバー範囲のてこの作用はこうしてより小さくなる。例えばカバー103全開時、カバースライダー134と移動スライダー141間の間隔と、カバースライダー134と後端部107との間のカバー103の長さの比は、0.25より大きい、特に0.28より大きい、又は0.3より大きい。また、移動スライダー141の作用力が可能な限り小さい比も可能である。例えば支持比e:fは、第2の連結部112での作用力を可能な限り小さく保つため、可能な限り大きい。
【0058】
開閉レバー109によって保持されるべき力は、特に比f:eによって決まる。比f:eが小さければ小さいほど、開閉レバー109に吸収されるべき力が、より均等に作用点C及びDに分配される。比f:eが例えば値1.0に近ければ近いほど、開閉レバー109に吸収されるべき力が、より均等に作用点C及びDに分配される。突出範囲128の長さが一定に保たれた状態では、第1の連結部111がより前へ配置されるほど、点Dで吸
収されるべき力がより小さくなる。間隔113、又は点CとDの間のeがより大きくなるほど、長手方向Xに点DとBの間の間隔が一定に保たれた状態では、点Dで吸収されるべき力が小さくなる。
【0059】
点A及びDで吸収されるべき力は、突出範囲128を使用して移動スライダー141の作用点Bを後ろに移動させることでも、開閉レバー109の縦長に延びる範囲120を使用して比較的大幅に前へ第1の連結部111を配置することでも、低減され得る。
【0060】
連結リンク114又は122及び124を使用して、第1の連結部111だけでなく第2の連結部112も実現することで、所望の開口部幅及び実現可能な力比に基づいて、個別の長さ及び拡張のフレキシブルな設計が可能になる。
【0061】
開閉レバー109の支持比は、広い開口部幅を実現可能であることを、確実に調整可能である。カバーキャリア140を支持するための移動スライダー141の支持点Bは、後方へ移される。開閉レバー109は、第1の連結部111及び第2の連結部112の2つの支持点で支承される。第1の連結部111の前側の支持点は、開閉レバー109内の連結リンク114によって、及びガイドレール108に固定された滑りピン115に支承される。これにより、有利に選択された連結リンクガイドを介して開閉レバー109の回転動作に作用が可能になり、これが移動スライダー141に追加のストロークを与え、及び開閉レバー109の比較的大きな支持比をもたらす。
【0062】
カバーキャリア140及び開閉レバー109に、常時位置Dで長手方向にそれぞれ作用する、位置BとCに起因する支持比は、開口部幅が比較的大きい場合も互いに調整可能である。作用点Dに最大に作用する支持力が例えば従来の機械装置と同等であり、その機械装置では開閉レバーが、ルーフが開いた状態で垂直方向Zに対して垂直に、及び特に後方へ固定ルーフ要素129の上に突き出している。例えば作用点Dには、例えば移動スライダー141の点Bに作用する力よりも10%未満大きい、例えば6%~9%大きい力が作用する。これとは別の力比も、当然ながら可能である。例えば長さfが約440ミリメートル、長さeが約400ミリメートルである。例えば長さeと長さfの差が10ミリメートルより大きく且つ50ミリメートルより小さい。
【0063】
開閉レバー109の駆動部は駆動キャリッジ110を使って、及びロッキング装置135を使って別の駆動キャリッジ130が実現される。駆動キャリッジ110内には、このために駆動ピン125が成形されており、この駆動ピンは開閉レバー109内の駆動連結リンク124内で走行する。駆動連結リンク124は、チルト連結リンク122への十字連結リンクとして形成される。加えて、駆動連結リンク124は、閉位置及び換気位置のために許容誤差を調整する平坦部を有している。さらに、駆動連結リンク124を使用して任意の伝達比を実行することが可能である。駆動キャリッジ110と別の駆動キャリッジ130若しくはガイドレール108との間の連結若しくはロックは、例えば縦軸の周りを回転自在のロッキングピン136又は別のロッキング装置を使用して行われる。
【0064】
カバー103の前縁106の機械装置により、カバーキャリア140内に第2の制御連結リンクが実現できる。唯一のスライダー134は、カバーキャリア140に取り付けられ、このカバーキャリアは大幅に前方にカバー103に、特にカバー103の仮想回転軸のできる限り近くに配置される。これにより、長手方向Xに大きな開口部幅が可能になる。加えて、省スペースの終端ロッキング装置135により、ルーフ開口部102の大きな開口幅及び騒音の少ないスムーズなロック作動が可能になる。構成部品数は、他の従来型機械装置と比べて低減できる。これにより、複雑さが低下し、及び装置200は低コストで実現可能である。全体として、カバー103が開いた状態で大きな固有振動数が実現される。開閉レバー109の第2の連結部112の後方の支持点では、開閉レバー109の
支持比がより長いことによって、低い支承力が実現可能である。
【0065】
車両ルーフがルーフ開口部102を閉じるための唯一のカバー、すなわち可動カバー103のみを実現することも可能である。なぜなら機械コンポーネントを、固定ルーフ129の下へ後方に滑動させる必要がないからである。
【0066】
連結リンク114、チルト連結リンク122及び駆動連結リンク124を使用して実施することで、大きな設計自由度と充分な許容誤差余地が可能になる。全体として、装置200は比較的少数の構成部品で実現可能である。装置200は、ルーフ開口部102の信頼性の高い開閉を可能にする。
【符号の説明】
【0067】
100 自動車
101 車両ルーフ
102 ルーフ開口部
103 カバー
104 フロントウィンドウ
105 ボディ
106 前縁
107 後端部
108 ガイドレール
109 開閉レバー
110 駆動キャリッジ
111 第1の連結部
112 第2の連結部
113 間隔
114 連結リンク
115 滑りピン
116 範囲
117 形状
118 長さ
119 高さ
120 縦長に延びる範囲
121 カバーの長手伸展範囲
122 チルト連結リンク
123 チルトピン
124 駆動連結リンク
125 駆動ピン
126、127 コース
128 突出範囲
129 固定されたルーフ要素
130 別の駆動キャリッジ
131、132 終端
133 カバー連結リンク
134 カバースライダー
135 ロッキング装置
136 ロッキングピン
137 ロック連結リンク
138 ロッキング要素
139 駆動ケーブル
140 カバーキャリア
141 移動スライダー
142 ロック溝
143 ロックピン
144 カバーピン
200 車両ルーフのための装置
X 長手方向
Y 横方向
Z 垂直方向
A、B、C、D 作用点
e、f、i、k、L 間隔