(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084591
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリプロピレンフィルム用キャビテーション剤としての炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220531BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20220531BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20220531BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20220531BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20220531BHJP
B29C 55/16 20060101ALI20220531BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220531BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20220531BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20220531BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20220531BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20220531BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220531BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J9/00 A
C08J3/22
B29C55/12
B29C55/14
B29C55/16
B29C44/00 E
B29C67/20 B
B29C48/08
B29C48/285
B29B9/12
C08L23/10
C08K3/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022022641
(22)【出願日】2022-02-17
(62)【分割の表示】P 2019502602の分割
【原出願日】2017-07-17
(31)【優先権主張番号】16180663.3
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ブルナー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・イルシジェル
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ブランシャール
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ルネ・ピエール・ルー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い不透明度と良好な機械的特性を有する低密度フィルムを提供する。
【解決手段】密度≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、フィルムの少なくとも1層は、層の総重量に基づいて79.0~95.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン及び5.0~21.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含み、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、フィルムの少なくとも1層は、層の総重量に基づいて79.0~95.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン及び5.0~21.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含み、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層が、
a) 層の総重量に基づいて、82.0~93.0重量%、好ましくは84.0~92.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン、及び/又は
b) 層の総重量に基づいて、7.0~18.0重量%、好ましくは8.0~16.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウム
を含む、請求項1に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
少なくとも1種のポリプロピレンが、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマーであって、好ましくはエチレンとのプロピレンランダムコポリマー、ターポリマーであって、好ましくはエチレン及びブテンとのターポリマーから選択される群から選択され、最も好ましくは少なくとも1種のポリプロピレンが、プロピレンホモポリマーである、請求項1又は2に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
少なくとも1種のポリプロピレンが、
a) ISO 1133(230℃、2.16kg)に従って決定された0.01~20g/10分、最も好ましくは0.1~10g/10分の範囲のメルトフローレート(MFR)、及び/又は
b) ISO 1183に従って決定された0.880g/cm3~0.920g/cm3の範囲、最も好ましくは0.890g/cm3~0.910g/cm3の範囲の密度
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、重質天然炭酸カルシウム、好ましくは湿式又は乾式粉砕された天然炭酸カルシウム、最も好ましくは乾式粉砕された天然炭酸カルシウムである、請求項1から4のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、大理石及び/又は石灰石及び/又はチョークである、請求項1から5のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、
a) 3.5μm~8.0μm、より好ましくは3.5μm~7.2μm、最も好ましくは4.0μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50、及び/又は
b) ≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径d98、及び/又は
c) ISO 9277に従う窒素及びBET法を用いて測定された0.5~150m2/g、好ましくは0.5~50m2/g、より好ましくは0.5~35m2/g、最も好ましくは0.5~15m2/gの比表面積(BET)
を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上に、
i) 1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物、並びに/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物の、リン酸エステルブレンド、及び/又は
ii) 少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii) 少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv) 置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基によって一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又は
v) 少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi) iからvに従う材料の混合物
を含む処理層を含む表面処理された天然炭酸カルシウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項9】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層が、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物を含み、好ましくは少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸が、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸及び/若しくはそれらの混合物、並びに/又は置換基中に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/若しくはそれらの塩反応生成物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層が、ステアリン酸及びその塩性反応生成物を含む、請求項8に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項10】
表面処理された天然炭酸カルシウムが、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.05~2.3重量%、好ましくは0.1~2.0重量%、より好ましくは0.1~1.9重量%、最も好ましくは、0.15~1.8重量%の量で処理層を含む、請求項8又は9に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項11】
フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び天然炭酸カルシウム含有層が、キャビテーション剤、特にポリマーキャビテーション剤から選択されるもの、好ましくは、熱可塑性ポリマー、より好ましくは架橋剤で架橋されたものであって、ポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、アイオノマー、アクリル樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、並びにそれらの共重合樹脂及び混合物からなる群から選択される熱可塑性ポリマー、並びに/又は無機キャビテーション剤であって、好ましくは無機充填剤(少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる)、顔料、中実微小球、中空微小球、金属、及びそれらの混合物から選択される無機キャビテーション剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、加工助剤、帯電防止添加剤、押出助剤、核形成剤、光安定剤、光学的光沢剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物、を含む群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含み、少なくとも1種の添加剤が、少なくとも1種のポリプロピレンに分散されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項12】
フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層が、層の総重量に基づいて、0.1~30.0重量%、好ましくは2.0~25.0重量%、より好ましくは4.0~22.0重量%、さらにより好ましくは5.0~20.0重量%、さらにより好ましくは6.0~17重量%、最も好ましくは8.0~15.0重量%の範囲の量で少なくとも1種の添加剤を含む、請求項11に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項13】
フィルム、好ましくはフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層が、
a) ≦0.70g/cm3、好ましくは≦0.68g/cm3、より好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3の範囲、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4と<0.672g/cm3との間の範囲の密度、及び/又は
b) ≧40%、好ましくは≧55%、さらにより好ましくは≧60%、最も好ましくは≧65%の不透明度
を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項14】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する方法であって、
a) 少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物を提供する工程、及び
b) 工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、及び
c) 工程b)で得られたフィルムを、縦方向(MD)及び横方向(TD)に任意の順序で延伸する工程であって、縦方向又は横方向における延伸が、逐次的に又は同時に行われ、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する、方法。
【請求項15】
工程a)で提供される組成物が、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程a)で提供される組成物が、マスターバッチの総重量に基づいて、>30と85重量%との間、好ましくは35~80重量%、より好ましくは40~75重量%の量で少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含むマスターバッチである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
工程a)で提供される組成物が、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られる複合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
方法の工程a)及びb)が同時に実施され、好ましくは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを押出機に直接添加して工程b)を実施する、、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
工程a)の少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物が、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを、少なくとも1種のポリプロピレンの重合過程に、好ましくはその前又は後に、加えることによって得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
密度≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるキャビテーション剤としての、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの使用であって、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する、使用。
【請求項21】
請求項1から13のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを含む物品であって、物品が、花の上包み、タバコの上包み、CDの上包み、収縮性フィルム、離型フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、食品包装、可撓性包装、キャンディーバー包装、衛生用品、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、包装袋、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、好ましくは感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサからなる群から選択される該物品。
【請求項22】
花の上包み、タバコの上包み、CDの上包み、収縮性フィルム、離型フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、食品包装、可撓性包装、キャンディーバー包装、衛生用品、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、包装袋、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、好ましくは感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサにおける、請求項1から13のいずれか一項に記載の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度が≦0.72g/cm3の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるキャビテーション剤としての少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの使用、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを含む物品及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムは、配向ポリプロピレンフィルムとしても知られているが、包装製品、例えば、食品包装、包装袋、可撓性包装及びキャンディーバー包装、ラッピング、フィルム、例えば、収縮性フィルム、剥離フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、例えば、感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサ等の幅広い技術用途で使用される。
【0003】
キャビテーション剤の添加により低密度の物品を製造できることはよく知られている。例えば、空隙は、マトリックスポリマー中に約5~約50重量%の小さな有機又は無機剤又は「内包物」(当技術分野では「ボイド形成」剤又は「キャビテーション」剤と呼ばれる)を組み込み、少なくとも1つの方向に伸張することによってポリマーを配向することによって得られる。延伸の間に、ボイド形成剤の周囲に小さな空隙又は微小空隙が形成される。ポリマーフィルムに空隙が導入されると、得られる空隙フィルムは非空隙フィルムより低い密度を有するだけでなく、不透明になり紙様の表面を発現させる。この表面には、印刷性が向上する利点もある。即ち、表面は、非空隙フィルムよりも実質的に大きな容量で多くのインクを受容することができる。どちらの場合でも、物品中の小さなキャビテーション/孔の生成は、密度の低下、不透明度及び絶縁特性の増加、及び空隙による光の散乱のために、別個のUV吸収剤を必要とせずに固有のUV遮断をもたらす。微小空隙含有物品は、特にそのような物品が、例えば、ラベル等の包装用途に使用される場合に、全体的なフィルムコストがより低くなり、分離/リサイクル性がより容易になるというさらなる利点を有する(例えば、US7297755B2号を参照)。
【0004】
原理的には、空隙の形成は、縦延伸の間のポリマーとボイド形成剤との間の界面における微小亀裂の発生に基づく。その後の横延伸の間に、これらの微細な縦方向の亀裂は裂開して、空気で満たされた閉じた中空空間を形成する。したがって、同時配向中の空隙の発生は、連続配向中よりも不均衡に困難であると思われる。事実、CaCO3又はPBTのような一般的な、ポリプロピレン中で非相溶性の粒子は、同時配向中に空隙を全く生じないか、又は選択的な粒子形状又は粒子サイズのみでそれらを生成することは明らかである(例えば、WO03/033574号参照)。したがって、この方法のために、発泡剤によって空隙を生成する代替技術が開発された。
【0005】
当技術分野では、有機又は無機充填材料、特に炭酸カルシウム含有充填材を添加することによって、ポリプロピレンフィルムの機械的特性及び光学的特性を改良するためのいくつかの試みがなされてきた。
【0006】
例えば、US2013/0086874A1号は、ポリプロピレン及び各々コア層材料の重量に基づいて2重量%~30重量%の炭酸カルシウム及び0.5重量%~20重量%の白色化剤を含む第1及び第2の面を有する少なくとも1つのコア層と、コア層の第1及び第2の面の各々に接着された少なくとも1つのスキン層とを含む、不透明で、空洞化された配向ポリプロピレンフィルムについて言及する。WO2011/068728A1号は、空洞化されたコア層、2つのスキン層、及びコア層とスキン層の1つに介在する少なくとも1つの結合層を含む多層不透明フィルムに関する。WO03/033574A1号は、その少なくとも1層に粒子を含む同時配向ポリオレフィンフィルムについて言及し、粒子は、流延ポリオレフィンがMD及びTDの両方で同時に延伸されるとき、かつ粒子が、(i)少なくとも2の平均アスペクト比x/y及び約3μmを超える最も長い粒子寸法の平均サイズ、及び/又は(ii)約1の平均アスペクト比、狭いサイズ分布、約3~約10μmの平均粒径を有し、サイズが約12μmを超える粒子を実質的に含まない粒子を含むときに、空隙の開始を引き起こすために前記層と非相溶性である。ボイド形成剤は、好ましくは雲母のような平坦な板状材料である。
【0007】
WO2010/039375A1号は、ポリプロピレン、キャビテーション剤を含むポリプロピレン、及び単延伸高密度ポリエチレンの少なくとも1つを有する第1の層を少なくとも含むフィルムに関し、第1の層は、0.2~0.96g/cm3の範囲の密度及び約0.5~80μmの範囲の厚さを有し、フィルムは、0.236cm×kgf/μm以下の衝撃強度を有する。第1層又は第3層のキャビテーション剤は、ポリブチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー、ガラス球、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウム-マグネシウム、ドロマイト、ケイ酸塩、硫酸バリウム、カーボンブラック、スレートパウダー、パールホワイト、シリカ、水和アルミナ、カオリン、珪藻土、雲母、及びタルクの少なくとも1つを含み、キャビテーション剤は、約0.5~約15μmの粒径を有する。
【0008】
US5,876,857号は、ポリプロピレン又はポリプロピレン混合物を含む基層と、オレフィン性ポリマーを含む少なくとも1つの最上層とを含む同時押出二軸延伸フィルムについて言及する。最上層は、無機粒子及び/又は有機粒子と第3級脂肪族アミンとの組合せを含む。
【0009】
US5,498,447号は、構造KZDに基層K、中間層Z及び外層Dを含む多層ポリプロピレンフィルムについて言及する。基層は、プロピレンポリマー又はプロピレンポリマー混合物及び充填剤を含む。中間層は、プロピレンポリマー又はプロピレンポリマー混合物及び顔料を含む。外層はヒートシール可能であり、無機粒子及び/又は有機粒子と第3級脂肪族アミンとの組合せを含有する。US5,326,625号は、コア層と、コア層の一方又は両方の側に位置する中間層と、中間層又はコア層の一方又は両方の側に位置する最上層とを含む、シール可能で不透明な二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムについて言及し、コア層はポリプロピレンポリマー又はポリプロピレン混合物及び1~2μmの平均粒径を有する炭酸カルシウムを含有する。
【0010】
マーチン・ブルンナー(Martin Brunner)ら、Cavitation and Gloss、Packaging Films 3-2013、6~8頁は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて言及する。特に、0.5g/cm3の最低密度を得るために炭酸カルシウムの最適化された平均粒径は、約2.5~3ミクロンであると述べられている。
【0011】
しかし、既存のフィルムよりも良好な性能を提供するBOPPフィルム、特に高い不透明度と組み合わせて低密度を提供するBOPPフィルムに対する継続的な必要性が存在する。
【0012】
したがって、高い不透明度と組み合わせて低密度を提供するBOPPフィルムの提供は、当業者にとって興味深いままである。特に、微細な炭酸カルシウム、即ち、<3.2μmの重量メジアン粒径d50を有する炭酸カルシウムを含む従来のBOPPフィルムと比較して、より高い不透明度と組み合わせてより低密度を提供するBOPPフィルムを提供することが望ましい。さらに、BOPP膜の機械的特性及びさらなる光学的特性を高レベルに保つことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,297,755号明細書
【特許文献2】国際公開第2003/033574号
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0086874号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/068728号
【特許文献5】国際公開第2003/033574号
【特許文献6】国際公開第2010/039375号
【特許文献7】米国特許第5,876,857号明細書
【特許文献8】米国特許第5,498,447号明細書
【特許文献9】米国特許第5,326,625号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】マーチン・ブルンナーら、Cavitation and Gloss、Packaging Films 3-2013、6~8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、低密度を有する二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムを提供することが本発明の目的である。キャビテーション剤として3.2μmの重量メジアン粒径d50を有する炭酸カルシウムを使用して、BOPPフィルム又は対応する層で典型的に達成される密度より低い密度を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は対応する層を提供することも望ましいであろう。したがって、密度0.72g/cm3未満を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層を提供することが望ましいであろう。それに加えて、不透明な外観を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層を提供することも望ましいであろう。特に、キャビテーション剤として<3.2μmの重量メジアン粒径d50を有する炭酸カルシウムを使用して、BOPPフィルム又は対応する層について典型的に達成される不透明度より高い不透明度を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は対応する層を提供することが望ましいであろう。良好な機械的特性及びさらなる光学特性を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層を提供することも望ましいであろう。
【0016】
本発明の別の目的は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層のための無機キャビテーション剤の提供である。ポリプロピレンフィルム/層用途において良好な分散特性及び配合性能を示す、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層のための無機キャビテーション剤を提供することもまた望ましいであろう。フィルム又は層に低密度及び高い不透明度を付与する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層のための無機キャビテーション剤を提供することもまた望ましいであろう。引張強度、破断点伸び又は弾性率等の良好な機械的特性を付与する二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は層のための無機キャビテーション剤を提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的及び他の目的は、独立請求項に記載された主題によって解決される。
【0018】
本発明の一態様によれば、密度≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムが提供され、フィルムの少なくとも1層は、層の総重量に基づいて、79.0~95.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン及び5.0~21.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含み、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0019】
さらなる態様によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する方法が提供され、該方法は、
a) 少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物を提供する工程、及び
b) 工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、及び
c) 工程b)で得られたフィルムを、縦方向(MD)及び横方向(TD)に任意の順序で延伸する工程であって、縦方向又は横方向前記の延伸が、逐次的に又は同時に行われ、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書で定義される密度≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるキャビテーション剤としての少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの使用が提供され、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書で定義される単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを含む物品が提供され、物品は花の上包み、タバコの上包み、CDの上包み、収縮性フィルム、離型フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、食品包装、可撓性包装、キャンディーバー包装、衛生用品、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、包装袋、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、好ましくは感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサからなる群から選択される。
【0022】
本発明のさらに別の態様によれば、花の上包み、タバコの上包み、CDの上包み、収縮性フィルム、離型フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、食品包装、可撓性包装、キャンディーバー包装、衛生用品、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、包装袋、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、好ましくは感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサにおける、本明細書で定義される単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの使用が提供される。
【0023】
本発明の有利な実施形態は、本明細書に定義され、対応する従属請求項においても定義される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、a)層の総重量に基づいて、82.0~93.0重量%、好ましくは84.0~92.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン、及び/又はb)層の総重量に基づいて、7.0~18.0重量%、好ましくは8.0~16.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む。
【0025】
別の実施形態によれば、少なくとも1種のポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマーであって、好ましくはエチレンとのプロピレンランダムコポリマー、ターポリマーであって、好ましくはエチレン及びブテンとのターポリマーから選択される群から選択され、最も好ましくは少なくとも1種のポリプロピレンはプロピレンホモポリマーである。
【0026】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1種のポリプロピレンは、a)ISO 1133(230℃、2.16kg)に従って決定された0.01~20g/10分、最も好ましくは0.1~10g/10分の範囲のメルトフローレート(MFR)、及び/又はb)ISO 1183に従って決定された0.880g/cm3~0.920g/cm3、最も好ましくは0.890g/cm3~0.910g/cm3の範囲の密度を有する。
【0027】
一実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、重質天然炭酸カルシウム、好ましくは湿式又は乾式粉砕された天然炭酸カルシウム、最も好ましくは乾式粉砕された天然の炭酸カルシウムである。
【0028】
別の実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、大理石及び/又は石灰石及び/又はチョークである。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、a)3.5μm~8.0μm、より好ましくは3.5μm~7.2μm、最も好ましくは4.0μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50、及び/又はb)≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径d98、及び/又はc)ISO 9277に従う窒素及びBET法を用いて測定された0.5~150m2/g、好ましくは0.5~50m2/g、より好ましくは0.5~35m2/g、最も好ましくは0.5~15m2/gの比表面積(BET)を有する。
【0030】
一実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上に、i)1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物、並びに/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物の、リン酸エステルブレンド、及び/又はii)少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又はiii)少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又はiv)置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基によって一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又はv)少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又はvi)iからvに従う材料の混合物を含む処理層を含む表面処理された天然炭酸カルシウムである。
【0031】
別の実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物を含み、好ましくは少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸は、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸及び/若しくはそれらの混合物、並びに/又は置換基中に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/若しくはそれらの塩反応生成物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層はステアリン酸及びその塩性反応生成物を含む。
【0032】
さらに別のものによれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.05~2.3重量%、好ましくは0.1~2.0重量%、より好ましくは0.1~1.9重量%、最も好ましくは、0.15~1.8重量%の量で処理層を含む。
【0033】
一実施形態によれば、フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び天然炭酸カルシウム含有層は、キャビテーション剤、特にポリマーキャビテーション剤から選択されるもの、好ましくは、熱可塑性ポリマー、より好ましくは架橋剤で架橋されたものであって、ポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、アイオノマー、アクリル樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、並びにそれらの共重合樹脂及び混合物からなる群から選択される熱可塑性ポリマー、並びに/又は無機キャビテーション剤であって、好ましくは無機充填剤(少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる)、顔料、中実微小球、中空微小球、金属、及びそれらの混合物から選択される無機キャビテーション剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、加工助剤、帯電防止添加剤、押出助剤、核形成剤、光安定剤、光学的光沢剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含み、少なくとも1種の添加剤が、少なくとも1種のポリプロピレンに分散されている。
【0034】
別の実施形態によれば、フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、層の総重量に基づいて、0.1~30.0重量%、好ましくは2.0~25.0重量%、より好ましくは4.0~22.0重量%、さらにより好ましくは5.0~20.0重量%、さらにより好ましくは6.0~17重量%、最も好ましくは8.0~15.0重量%の範囲の量で少なくとも1種の添加剤を含む。
【0035】
さらに別の実施形態によれば、フィルム、好ましくはフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、a)≦0.70g/cm3、好ましくは≦0.68g/cm3、より好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3の範囲、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4と<0.672g/cm3との間の密度、及び/又はb)≧40%、好ましくは≧55%、さらにより好ましくは≧60%、最も好ましくは≧65%の不透明度を有する。
【0036】
本方法の一実施形態によれば、工程a)で提供される組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチである。
【0037】
本方法の別の実施形態によれば、工程a)で提供される組成物は、マスターバッチの総重量に基づいて、>30と85重量%との間、好ましくは35~80重量%、より好ましくは40~75重量%の量で少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含むマスターバッチである。
【0038】
本方法の別の実施形態によれば、工程a)で提供される組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られる複合物である。
【0039】
本方法のさらに別の実施形態によれば、方法の工程a)及びb)は同時に実施され、好ましくは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを押出機に直接添加して工程b)を実施する。
【0040】
本方法の一実施形態によれば、工程a)の少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを、少なくとも1種のポリプロピレンの重合過程に、好ましくはその前又は後に、加えることによって得られる。
【0041】
少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の炭酸カルシウム、及び存在する場合には他の任意の添加剤は、適切なミキサー、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を使用して混合することができる。別の実施形態によれば、方法の工程a)及びb)は同時に実施され、好ましくは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の炭酸カルシウムを押出機に直接添加して工程b)を実施する。さらに別の実施形態によれば、工程a)の少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の炭酸カルシウムを含む組成物は、少なくとも1種の炭酸カルシウムを、少なくとも1種のポリプロピレンの重合過程に、好ましくはその前又は後に、加えることによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の目的に関し、以下の用語は以下の意味を有することを理解すべきである。
【0043】
「二軸延伸」ポリプロピレンフィルムという用語は、フィルムが二軸延伸フィルムであること、即ち、フィルムが縦方向(MD)及び横方向(TD)に延伸処理を受けて、それによって二軸延伸ポリマーが得られることを示す。
【0044】
本発明の意味における「フィルム」は、その長さ及び幅と比較して小さい中央値厚さを有する材料のシート又は層である。例えば、「フィルム」という用語は、3.2~500μm、好ましくは4~400μm、より好ましくは5~300μm、最も好ましくは6~250μm、例えば、8~150μmの中央値厚さを有する材料のシート又は層を指すことができる。フィルムは単層又は多層フィルムの形態である。
【0045】
「単層」フィルムとは、1層のみからなるフィルムを指す。「多層」フィルムとは、互いに隣接している2~10層、好ましくは3層のような2以上の層からなるフィルムを指す。多層フィルムが3層フィルムである場合、フィルムはフィルム構造A-B-A又はA-B-Cを有することができる。多層フィルムにおいて、コア層は空隙を有することが好ましい。
【0046】
本発明の要旨における「天然炭酸カルシウム」という用語は、石灰石若しくはチョークのような堆積岩から、又は変成大理石の岩石から採掘され、粉砕、篩い分け及び/又は乾式若しくは湿式での細分化のような処理を通して、例えば、サイクロン又は分級機により処理される天然形態の炭酸カルシウムを指す。本発明の一実施形態では、天然炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、石灰石及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0047】
本発明の意味における「低密度」という用語は、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4から<0.62g/cm3までの範囲の密度を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、又は対応する層を指す。
【0048】
本発明の目的に関し、「高い不透明度」という用語は、≧40%、好ましくは≧55%、さらにより好ましくは≧60%、最も好ましくは≧65%の不透明度を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム又は対応する層を指す。
【0049】
「ポリマー組成物」という用語は、ポリマー製品の製造に使用することができる少なくとも1種の添加剤(例えば、少なくとも1種の充填剤)と少なくとも1種のポリプロピレン材料とを含む複合材料を指す。
【0050】
「ポリマーマスターバッチ」(=又は「マスターバッチ」)という用語は、比較的高い、好ましくは(組成物の総重量に基づいて)少なくとも30重量%又は30重量%の充填剤含有率を有する組成物に関する。より高い充填剤含有率を達成するために、加工中に「ポリマーマスターバッチ」を未充填又は低充填ポリプロピレンに添加することができる。それにもかかわらず、比較的低い、好ましくは(組成物の総重量に基づいて)30重量%未満の充填剤含有率を有する、先に定義されたような「ポリマー組成物」(=又は「組成物」)であり、しばしば「ポリマー複合物」(=又は「複合物」)とも呼ばれる「ポリマー組成物」(=又は「組成物」)は、ポリマー製品の製造に直接使用することもできる。したがって、本明細書で使用される「ポリマー組成物」(=組成物)という用語は、「ポリマーマスターバッチ」及び「ポリマー複合物」の両方を含む。
【0051】
本発明の意味における炭酸カルシウムの「比表面積」(m2/gで表される)という用語は、吸着ガスとして窒素を用いるBET法を用いて決定され、それは当業者に周知である(ISO 9277:2010)。次いで、炭酸カルシウムの総表面積(m2で表される)は、該比表面積に処理前の炭酸カルシウムの質量(gで表される)を乗じることによって得られる。
【0052】
本明細書を通して、炭酸カルシウムの「粒径」は、その粒度分布によって説明される。値dxは、粒子のx重量%がdx未満の直径を有する直径を表す。これは、d20値は全粒子の20重量%がより小さい粒径であり、d98値は全粒子の98重量%がより小さい粒径であることを意味する。d98値は「トップカット」とも呼ばれる。したがって、d50値は、重量メジアン粒径、即ち、全粒子の50重量%がこの粒径よりも小さい一方、残りの50重量%がこの粒径よりも小さい。本発明の目的に関し、粒径は、他に示さない限り、重量メジアン粒径d50として特定される。重量メジアン粒径d50値又はトップカット粒径d98値を決定するために、米国マイクロメリティクス(Micromeritics)社製のSedigraph 5100又は5120装置を使用することができる。この方法及び装置は当業者に知られており、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般に使用される。測定は、0.1重量%のNa4P2O7の水溶液中で行われる。試料は高速攪拌機及び超音波を用いて分散される。
【0053】
本発明の目的に関し、液体組成物の「固形分」は、全ての溶媒又は水が蒸発した後に残っている材料の量の尺度である。
【0054】
本発明の意味における「懸濁液」又は「スラリー」は、不溶性の固体及び水、並びに任意にさらなる添加剤を含み、通常は大量の固体を含み、したがってそれが形成される液体より粘性が高く、高密度であり得る。
【0055】
本発明の要旨における「処理層」は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の表面処理剤の層、好ましくは単層を指す。「処理層」は、表面処理剤として、即ち、i、1種以上のリン酸モノエステル及びそれらの塩反応生成物、並びに/又は1種以上のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物の、リン酸エステルブレンド、及び/又はii、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物、及び/又はiii、少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又はiv、置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又はv、少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又はvi、iからvによる材料の混合物を含む。
【0056】
「含む(comprising)」という用語が本説明及び特許請求の範囲において使用される場合、それは、機能的に重要な又は重要ではない他の特定されていない要素を排除するものではない。本発明の目的に関し、「からなる」という用語は「含む」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下、ある群が少なくとも特定数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示すると理解されるべきである。
【0057】
「含む(including)」又は「有する」という用語が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上で定義された「含む(comprising)」と同等であることを意味する。
【0058】
単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば、「a」、「an」又は「the」が使用される場合、他に具体的に述べられていない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0059】
「取得可能」又は「定義可能」及び「取得された」又は「定義された」等の用語は互換的に使用される。これは、文脈上明らかにそうでないことを指示していない限り、「得られた」という用語が、例えば、ある実施形態が、たとえそのような限定された理解が好ましい実施形態として用語「得られた」又は「定義された」によって常に含まれるとしても、例えば、「得られた」という用語に続く工程の順序で得られなければならないことを示すことを意味しないことを意味する。
【0060】
本発明の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、密度≦0.72g/cm3を有する。フィルムは、層の総重量に基づいて、79.0~95.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン及び5.0~21.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む少なくとも1層を含む。少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0061】
以下では、本発明の製品の詳細及び好ましい実施形態がさらに詳細に説明される。これらの技術的詳細及び実施形態は、前記単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための本発明の方法、並びに単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの本発明の使用にもあてはまることが理解されるべきである。
【0062】
<ポリプロピレン>
本発明の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、少なくとも1種のポリプロピレンを含む少なくとも1層を含む。ポリマーが単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造に適している限り、少なくとも1種のポリプロピレンは特定の材料に限定されないことが理解される。当業者は、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの所望の用途に従ってポリプロピレンを選択するであろう。
【0063】
少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが同じ層中に存在することが本発明の1つの要件である。したがって、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは少なくとも1種のポリプロピレン中に分散される。
【0064】
したがって、多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む少なくとも1層を含む。多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムが2つ以上のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層を含む場合、2つ以上の層は同じでも異なっていてもよいことが理解され、例えば、2つの層は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの種類又は量において異なっていてもよい。
【0065】
「少なくとも1種の」ポリプロピレンという表現は、ポリプロピレンが1種以上のポリプロピレンを含む、好ましくはそれ(ら)からなることを意味することが理解される。
【0066】
したがって、少なくとも1種のポリプロピレンは1種のポリプロピレンでもよいことに留意すべきである。あるいは、少なくとも1種のポリプロピレンは、2種以上のポリプロピレンの混合物であることができる。例えば、少なくとも1種のポリプロピレンは、2種のポリプロピレンのように、2種又は3種のポリプロピレンの混合物であることができる。
【0067】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種のポリプロピレンは1種のポリプロピレンを含み、好ましくはそれからなる。
【0068】
一般に、「ポリプロピレン」という用語は、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー及び/又はターポリマーを指す。
【0069】
「プロピレンホモポリマー」という表現は、実質的に、即ち、少なくとも99.0重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。プロピレンホモポリマーは、最大0.90重量%、好ましくは最大0.50重量%、より好ましくは0.20~0.50重量%の範囲の量のエチレン単位を含むことができることが理解される。
【0070】
ポリプロピレンがプロピレンランダムコポリマーである場合、それはプロピレンと共重合可能なモノマー、即ち、プロピレン以外のα-オレフィン、例えば、エチレン又はC4~C10α-オレフィンのようなコモノマーを含む。好ましくは、プロピレンランダムコポリマーは、エチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンからなる群からの、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特にそれ(ら)からなる。より好ましくは、プロピレンランダムコポリマーは、エチレン及びプロピレンのみから誘導可能な単位を含む。
【0071】
プロピレンランダムコポリマー中のコモノマー含有率は、好ましくは30.0重量%未満、より好ましくは25.0重量%以下である。例えば、コモノマー含有率は、プロピレンランダムコポリマーの総重量に基づいて、好ましくは1.0~30.0重量%、より好ましくは1.5~25.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは2.0~20.0重量%の範囲内、最も好ましくは7.5~15.0重量%である。
【0072】
ポリプロピレンがターポリマーである場合、それはプロピレンと共重合可能な2つの異なるモノマー、即ち、プロピレン以外のα-オレフィン、例えば、エチレン及び/又はC4~C10α-オレフィンのようなコモノマーを含む。好ましくは、ターポリマーは、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群からの、プロピレンと共重合可能な2つのモノマーを含み、特にそれらからなる。より好ましくは、ターポリマーは、エチレン、1-ブテン及びプロピレンのみから誘導可能な単位を含む。
【0073】
少なくとも1種のポリプロピレンは、好ましくはプロピレンホモポリマーであることが理解される。
【0074】
一実施形態によれば、少なくとも1種のポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマーは、0.880g/cm3~0.920g/cm3、最も好ましくは0.890g/cm3~0.910g/cm3の範囲のISO 1183に従って決定される密度を有する。
【0075】
これに加えて又はこれに代えて、少なくとも1種のポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマーのISO 1133(230℃、2.16kg)に従って決定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~20g/10分、最も好ましくは0.1~10g/10分の範囲である。
【0076】
一実施形態では、少なくとも1種のポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマーは、0.880g/cm3~0.920g/cm3、最も好ましくは0.890g/cm3~0.910g/cm3の範囲のISO 1183に従って決定される密度、及び0.01~20g/10分、最も好ましくは0.1~10g/10分の範囲のISO 1133(230℃、2.16kg)に従って決定されるメルトフローレート(MFR)を有する。
【0077】
あるいは、少なくとも1種のポリプロピレン、好ましくはプロピレンホモポリマーは、0.880g/cm3~0.920g/cm3、最も好ましくは0.890g/cm3~0.910g/cm3の範囲のISO 1183に従って決定される密度、及び0.01~20g/10分、最も好ましくは0.1~10g/10分の範囲のISO 1133(230℃、2.16kg)に従って決定されるメルトフローレート(MFR)を有する。
【0078】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層が、層の総重量に基づいて、79.0~95.0重量%の範囲の量で少なくとも1種のポリプロピレンを含むことが、本発明の1つの要件である。
【0079】
一実施形態によれば、フィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、層の総重量に基づいて、82.0~93.0重量%、好ましくは84.0~92.0重量%の範囲の量で少なくとも1種のポリプロピレンを含む。
【0080】
<天然炭酸カルシウム>
本発明の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1層は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムも含む。
【0081】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、好ましくは重質天然炭酸カルシウムである。より正確には、少なくとも1つの天然炭酸カルシウム、好ましくは重質天然炭酸カルシウムは、湿式又は乾式粉砕天然炭酸カルシウムである。好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウム、好ましくは重質天然炭酸カルシウムは、乾式粉砕天然炭酸カルシウムである。
【0082】
一般に、粉砕工程は、任意の従来の粉砕装置を用いて、例えば、精製が主に二次体との衝突から生じるような条件下で、即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー(de-clumper)、ナイフカッター、又は当業者に公知の他のそのような装置のうちの1つ以上で行うことができる。
【0083】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが湿式粉砕天然炭酸カルシウムである場合、湿式粉砕工程は、自生粉砕が起こるような条件下で及び/又は水平ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に知られている他のそのような方法で実施することができる。このようにして得られた処理された重質天然炭酸カルシウムは、周知の方法、例えば、乾燥前の凝集、濾過又は強制蒸発によって洗浄し、脱水することができる。乾燥という後続の工程は、噴霧乾燥のような単一工程で、又は少なくとも2工程、例えば、少なくとも1種の湿式粉砕天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、約0.5重量%以下のレベルまで関連する含水率を減少させるために、湿式粉砕天然炭酸カルシウムに第1の加熱工程を適用することによって実施することができる。炭酸カルシウムの残留総含水率は、カールフィッシャー電量滴定法によって測定することができ、195℃のオーブン中で水分を脱着させ、それを乾燥N2を100ml/分で用いて、10分間連続的にKFクーロメーター(メトラーオーブンDO 0337と組み合わされたメトラートレド電量KF滴定装置C30)に通すことによって測定することができる。残留総含水率は、検量線を用いて決定することができ、また試料なしの10分のガス流のブラインドを考慮に入れることができる。残留総含水率は、少なくとも1種の湿式粉砕天然炭酸カルシウムに第2の加熱工程を適用することによってさらに減少させることができる。前記乾燥が2つ以上の乾燥工程によって行われる場合、第1の工程は空気の熱い流れの中で加熱することによって実施することができ、一方第2工程以降の乾燥工程は、好ましくは対応する容器の雰囲気が表面処理剤を含む間接加熱によって実施される。少なくとも1つの湿式粉砕天然炭酸カルシウムは、不純物を除去するために選鉱工程(浮遊、漂白又は磁気分離工程等)を受けることも一般的である。
【0084】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の重質天然炭酸カルシウムは、水平ボールミルで粉砕され、続いて周知の噴霧乾燥法を使用することによって乾燥される材料である。
【0085】
本発明の意味における少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、好ましくは重質天然炭酸カルシウムであり、より好ましくは少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは乾式粉砕天然炭酸カルシウムである。
【0086】
天然炭酸カルシウムは、石灰石若しくはチョークのような堆積岩から、又は変成大理石の岩石から採掘され、粉砕、篩い分け及び/又は湿式形態で細分化のような処理を通して、例えば、サイクロン又は分類機によって処理される天然形態の炭酸カルシウムであると理解される。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、大理石及び/又は石灰石及び/又はチョークである。好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、大理石及び/又は石灰石である。
【0087】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは大理石、より好ましくは乾式粉砕大理石である。
【0088】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウム中の炭酸カルシウムの量は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%であることが理解される。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウム中の炭酸カルシウムの量は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、97~100重量%の間、より好ましくは98.50~99.95重量%の間である。
【0089】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、粒状材料の形態であることが好ましく、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムに従来用いられているものよりも大きいメジアン粒径を有する。驚くべきことに、大きな粒径の炭酸カルシウムは、高い不透明度と組み合わせて特に低い密度をもたらすことが判明した。さらに、そのような粗い炭酸カルシウムは、その製造に必要とされるエネルギーがより少ないので、より微細な炭酸カルシウムと比較して有利である。したがって、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有することが、本発明の1つの特定の要件である。
【0090】
例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、3.5μm~8.0μm、より好ましくは3.5μm~7.2μm、最も好ましくは4.0μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50を有する。一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、3.5μm~6.8μm、好ましくは4.0μm~6.8μm、最も好ましくは4.5μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0091】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径(d98)を有することが好ましい。
【0092】
一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの重量メジアン粒径d50値及びトップカット(d98)は、特定の比率を満たす。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、0.1~0.27、好ましくは0.12~0.27、最も好ましくは0.14~0.27の重量メジアン粒径d50値及びトップカット(d98)の比[d50/d98]を有する。
【0093】
一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、
i) 3.2μm~8.0μm、好ましくは3.5μm~8.0μm、より好ましくは3.5μm~7.2μm、最も好ましくは4.0μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50、及び
ii) ≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径d98
を有する。
【0094】
例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、
i) 4.0μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50、及び
ii) ≦35.0μmのトップカット粒径d98
を有する。
【0095】
一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、
i) 3.5μm~6.8μm、好ましくは4.0μm~6.8μm、最も好ましくは4.5μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50、及び
ii) ≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径d98
を有する。
【0096】
例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、
i) 4.5μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50、及び
ii) ≦35.0μmのトップカット粒径d98
を有する。
【0097】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、ISO 9277による窒素及びBET法を使用して測定された、0.5~150m2/g、好ましくは0.5~50m2/g、より好ましくは0.5~35m2/g、最も好ましくは0.5~15m2/gのBET比表面積を有することが好ましい。
【0098】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの天然炭酸カルシウムは、好ましくは、3.2μm~8.0μm、好ましくは3.5μm~8.0μm、より好ましくは3.5μm~7.2μm、最も好ましくは4.0μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50を有する大理石である。この場合、大理石は、ISO 9277による窒素及びBET法を使用して測定された、好ましくは、0.5~150m2/g、好ましくは0.5~50m2/g、より好ましくは0.5~35m2/g、最も好ましくは0.5~15m2/gのBET比表面積を有する。これに加えて又はこれに代えて、大理石は、好ましくは、≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径d98を有する。
【0099】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、好ましくは、3.5μm~6.8μm、好ましくは4.0μm~6.8μm、最も好ましくは4.5μm~6.8μmの重量メジアン粒径d50を有する大理石である。この場合、大理石は、ISO 9277による窒素及びBET法を使用して測定された、好ましくは、0.5~150m2/g、好ましくは0.5~50m2/g、より好ましくは0.5~35m2/g、最も好ましくは0.5~15m2/gのBET比表面積を有する。これに加えて又はこれに代えて、大理石は、好ましくは、≦50.0μm、好ましくは≦40.0μm、最も好ましくは≦35.0μmのトップカット粒径d98を有する。
【0100】
本発明によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、≦1重量%の残留含水率を有する。少なくとも1種の天然炭酸カルシウムに応じて、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~1重量%、好ましくは0.01~0.2重量%、より好ましくは0.02~0.15重量%、最も好ましくは0.04~0.15重量%の残留総含水率を有する。
【0101】
例えば、粉砕及び噴霧乾燥された大理石が少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとして使用される場合、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの残留総含水率は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、好ましくは0.01~0.1重量%、より好ましくは0.02~0.08重量%、最も好ましくは0.04~0.07重量%である。
【0102】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、表面処理された又は未処理の天然炭酸カルシウムであることができることが理解される。
【0103】
本発明者らが驚くべきことに、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが表面処理天然炭酸カルシウムである場合、未処理天然カルシウムと比較して、BOPPフィルムの密度をさらに低下させ、フィルムの不透明度をさらに上昇させることができることを見出したので、本発明の単相又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、好ましくは表面処理された天然炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
【0104】
したがって、一実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、表面処理された天然炭酸カルシウムである。
【0105】
表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上に処理層をさらに含むことが理解される。
【0106】
処理層は、
i) 1種以上のリン酸モノエステル及びそれらの塩反応生成物、並びに/又は1種以上のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物の、リン酸エステルブレンド、及び/又は
ii) 少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物、及び/又は
iii) 少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又は
iv) 置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基によって一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物、及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又は
v) 少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi) iからvに従う材料の混合物を含む。
【0107】
本発明の一実施形態によれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に処理層を含み、処理層は、1種以上のリン酸モノエステル及びそれらの塩反応生成物、並びに/又は1種以上のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物の、リン酸エステルブレンドを含む。
【0108】
本発明の意味における「リン酸モノエステル」という用語は、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0109】
本発明の意味における「リン酸ジエステル」という用語は、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0110】
本発明の意味における「1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンドの塩反応生成物」という用語は、天然炭酸カルシウムを1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び場合によりリン酸と接触させることによって得られる生成物を指す。塩反応生成物は、塗布された1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸と、天然炭酸カルシウムの表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0111】
リン酸のアルキルエステルは、特に界面活性剤、潤滑剤及び帯電防止剤として業界でよく知られている(Die Tenside; Kosswig und Stache、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、1993)。
【0112】
異なる方法によるリン酸のアルキルエステルの合成及びリン酸のアルキルエステルによる鉱物の表面処理は、例えば、農薬製剤とアプリケーションシステム(Pesticide Formulations and Application Systems)から:第15巻、Collins HM、Hall FR、Hopkinson M、STP1268、1996年刊行)、US3,897,519A、US4,921,990A、US4,350,645A、US6,710,199B2、US4,126,650A、US5,554,781A、EP1092000B1及びWO2008/023076A1から当業者にはよく知られている。
【0113】
「1種以上」のリン酸モノエステルという表現は、1種以上のリン酸モノエステルがリン酸エステルブレンド中に存在し得ることを意味することが理解される。
【0114】
したがって、1種以上のリン酸モノエステルは、1種のリン酸モノエステルであってもよいことに留意すべきである。あるいは、1種以上のリン酸モノエステルは、2種以上のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、2種のリン酸モノエステルのように、2種又は3種のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。
【0115】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC6~C30の総炭素原子数を有する不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0116】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC6~C30の総炭素原子数を有する飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0117】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和で直鎖の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和で分岐の脂肪族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0118】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0119】
例えば、1種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルである。
【0120】
「1種以上」のリン酸ジエステルという表現は、1種以上のリン酸ジエステルが、表面処理された天然炭酸カルシウム及び/又はリン酸エステルブレンドの処理層中に存在し得ることを意味することが理解される。
【0121】
したがって、1種以上のリン酸ジエステルは、1種のリン酸ジエステルであってもよいことに留意すべきである。あるいは、1種以上のリン酸ジエステルは、2種以上のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、2種のリン酸ジエステルのように、2種又は3種のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。
【0122】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC6~C30の総炭素原子数を有する不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択された2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される2つの脂肪族アルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0123】
リン酸をエステル化するために使用される2つのアルコールは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから独立して選択され得る。換言すれば、1種以上のリン酸ジエステルは、同じアルコールに由来する2つの置換基を含み得るか、又はリン酸ジエステル分子は、異なるアルコールに由来する2つの置換基を含み得る。
【0124】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC6~C30の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択された2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択された2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0125】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、飽和で直鎖の脂肪族アルコールから選択された2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、飽和で分岐の脂肪族アルコールから選択された2つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0126】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0127】
例えば、1種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸ジエステルは、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルである。
【0128】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びそれらの混合物を含む群から選択され、1種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0129】
例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、1種のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。この場合、1種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、1種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0130】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部が、1種のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む場合、1種のリン酸モノエステル及び1種のリン酸ジエステルのアルコール置換基は、好ましくは同じであることが理解される。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、2-エチルヘキシルリン酸のジエステル及び塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、ヘキサデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、ヘキサデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、オクタデシルリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、オクタデシルリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステル及びその塩の反応生成物と、2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステル及びその塩の反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0131】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、2種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と2種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。この場合、2種以上のリン酸モノエステルは、2-エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸モノエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、2種以上のリン酸ジエステルは、2-エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸ジエステル及び2-オクチル-1-ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0132】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、2種のリン酸モノエステル及びそれらの塩反応生成物と2種のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、ヘキサデシルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物及びそれらの塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0133】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物に対し、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を特定のモル比で含む。特に、処理層及び/又はリン酸エステルブレンド中の、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル比は、1:1~1:100であることができる。
【0134】
本発明の意味における「1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル比」という用語は、リン酸ジエステル分子の分子量の合計及びその塩性反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計に対する、リン酸モノエステル分子の分子量の合計及びその塩性反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計を指す。
【0135】
一実施形態によれば、リン酸エステルブレンド中の1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のモル比は、1:1~1:100、好ましくは1:1.1~1:80、より好ましくは1:1.1~1:60、さらにより好ましくは1:1.1~1:40、さらにより好ましくは1:1.1~1:20、最も好ましくは1:1.1~1:10である。
【0136】
これに加えて又はこれに代えて、処理層のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて、1~50モル%の量の1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を含む。例えば、処理層のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物とのモル合計に基づいて、10~45モル%の量の1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物を含む。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、
I) 1種以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する不飽和又は飽和、分岐又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択された1つのアルコール分子でモノエステル化されたo-リン酸分子からなり、及び/又は
II) 1種以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、不飽和又は飽和、分岐又は直鎖、脂肪族又は芳香族脂肪アルコールから選択された2つのアルコール分子でジエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0138】
本発明の一実施形態では、処理層のリン酸エステルブレンドは、1種以上のリン酸トリエステル、並びに/又はリン酸及びその塩反応生成物をさらに含む。
【0139】
本発明の意味における「リン酸トリエステル」という用語は、アルコール置換基にC6~C30、好ましくはC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択された3つのアルコール分子でトリエステル化されたo-リン酸分子を指す。
【0140】
「1種以上」のリン酸トリエステルという表現は、1種以上のリン酸トリエステルが少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に存在し得ることを意味することが理解される。
【0141】
したがって、1種以上のリン酸トリエステルは、1種のリン酸トリエステルであってもよいことに留意すべきである。あるいは、1種以上のリン酸トリエステルは、2種以上のリン酸トリエステルの混合物であることができる。例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、2種のリン酸トリエステルのように、2種又は3種のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。
【0142】
本発明の一実施形態では、1つ又は複数のリン酸トリエステルは、アルコール置換基にC6~C30の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから選択された3つのアルコール分子でエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族脂肪アルコールから選択された3つのアルコール分子でエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0143】
リン酸をエステル化するために使用される3つのアルコールは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する、不飽和又は飽和の、分岐又は直鎖の、脂肪族又は芳香族アルコールから独立して選択することができる。換言すれば、1種以上のリン酸トリエステル分子は、同じアルコールに由来する3つの置換基を含むことができるか、又はリン酸トリエステル分子は、異なるアルコールに由来する3つの置換基を含むことができる。
【0144】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中にC6~C30の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択された3つのアルコールでエステル化されたo-リン酸分子からなる。例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基にC8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する、同じ又は異なる、飽和の、直鎖又は分岐の脂肪族アルコールから選択された3つのアルコール分子でエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0145】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基にC6~C30、C8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和で直鎖の脂肪族アルコールから選択された3つのアルコール分子でエステル化されたo-リン酸分子からなる。あるいは、1種以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基にC6~C30、C8~C22、より好ましくはC8~C20、最も好ましくはC8~C18の総炭素原子数を有する飽和で分岐の脂肪族アルコールから選択された3つのアルコール分子でエステル化されたo-リン酸分子からなる。
【0146】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸トリエステルは、ヘキシルリン酸トリエステル、ヘプチルリン酸トリエステル、オクチルリン酸トリエステル、2-エチルヘキシルリン酸トリエステル、ノニルリン酸トリエステル、デシルリン酸トリエステル、ウンデシルリン酸トリエステル、ドデシルリン酸トリエステル、テトラデシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステルエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸トリエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0147】
例えば、1種以上のリン酸トリエステルは、2-エチルヘキシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステルエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-デシルリン酸トリエステル、2-オクチル-1-ドデシルリン酸トリエステル及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0148】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及び及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと任意にリン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩の反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及び塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、リン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0149】
あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩の反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及び塩反応生成物と、任意にリン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩の反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及び塩反応生成物と、リン酸及びその塩反応生成物とのリン酸エステルブレンドを含む。
【0150】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部が1種以上のリン酸トリエステルを含むリン酸エステルブレンドを含む場合、リン酸エステルブレンドは1種以上のリン酸トリエステルを、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルとリン酸及びその塩反応生成物とのモル量の合計に基づいて、≦10モル%の量で含むことが好ましい。例えば、リン酸エステルブレンドは1種以上のリン酸トリエステルを、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルとリン酸及びその塩反応生成物とのモル量の合計に基づいて、≦8モル%、好ましくは≦6モル%、より好ましくは0.1~4モル%のような≦4モル%の量で含む。
【0151】
これに加えて又はこれに代えて、少なくとも1つの天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部が、リン酸及びその塩反応生成物を含むリン酸エステルブレンドを含む場合、リン酸エステルブレンドはリン酸及び塩反応生成物を、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルとリン酸及びその塩反応生成物とのモル量の合計に基づいて、≦10モル%の量で含むことが好ましい。例えば、リン酸エステルブレンドはリン酸及びその塩反応生成物を、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、リン酸及びその塩反応生成物とのモル量の合計に基づいて、≦8モル%、好ましくは≦6モル%、より好ましくは0.1~4モル%のような≦4モル%の量で含む。
【0152】
リン酸エステルブレンドがさらにリン酸及びその塩反応生成物と1種以上のリン酸トリエステルとを含む場合、リン酸エステルブレンド中のリン酸及びその塩反応生成物対1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物対1種以上のリン酸トリエステルのモル比は、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物と、1種以上のリン酸トリエステルと、リン酸及びその塩反応生成物とのモル量の合計に基づいて、≦10モル%:≦40モル%:≧40モル%:≦10モル%である。
【0153】
本発明の意味における「リン酸及びその塩反応生成物対1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物対1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物対1種以上のリン酸トリエステルのモル比」という表現は、リン酸の分子量の合計とその塩反応生成物中のリン酸分子の分子量の合計対リン酸モノエステル分子の分子量の合計とその塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計対リン酸ジエステル分子の分子量の合計とその塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計対リン酸トリエステル分子の分子量の合計を指す。
【0154】
リン酸エステルブレンドは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸と接触させることから得られる塩反応生成物を含むことができることが理解される。そのような場合、リン酸エステルブレンドは、好ましくはリン酸モノエステルの1種以上のカルシウム、マグネシウム及び/又はアルミニウム塩と、リン酸ジエステルの1種以上のカルシウムのカルシウム、マグネシム及び/又はアルミニウム塩と、任意にリン酸の1種以上のカルシウム、マグネシウム及び/又はアルミニウム塩等の塩反応生成物を含む。好ましくは、リン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩と、リン酸ジエステルの1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩と、任意にリン酸の1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩等の塩反応生成物を含む。
【0155】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸は、少なくとも1種の表面処理された天然炭酸カルシウムを調製する前に、一価及び/又は二価及び/又は三価のカチオンの1種以上の水酸化物、及び/又は一価及び/又は二価及び/又は三価のカチオンの弱酸の1種以上の塩によって少なくとも部分的に中和することができる。二価及び/又は三価のカチオンの1種以上の水酸化物は、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Al(OH)3及びそれらの混合物から選択することができる。
【0156】
これに加えて又はこれに代えて、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸が、一価のカチオンの1種以上の水酸化物及び/又は一価のカチオンの弱酸の1種以上の塩によって少なくとも部分的に中和される場合、一価のカチオンの量は、好ましくは1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸中の酸性基のモル量の合計に基づいて、≦10モル%であり、一価のカチオンの1種以上の水酸化物及び/又は一価のカチオンの弱酸の1種以上の塩は、LiOH、NaOH、KOH、Na2CO3、Li2CO3、K2CO3及びそれらの混合物から選択することができる。
【0157】
本発明の一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意のリン酸の部分中和に使用される二価のカチオンは、そのようなカチオンの弱酸の塩から誘導され、好ましくは炭酸カルシウム等の炭酸塩及び/又はホウ酸塩から誘導される。
【0158】
本願の意味における「弱酸」という用語は、ブレンステッドローリー酸、即ち、>2、好ましくは4~7のpKaを特徴とするH3O+イオン供与体を指す。
【0159】
したがって、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩とリン酸ジエステルの1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩と任意にリン酸の1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩等の塩反応生成物をさらに含むことができる。これに加えて又はこれに代えて、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のアルミニウム塩及びリン酸ジエステルの1種以上のアルミニウム塩及び任意にリン酸の1種以上のアルミニウム塩等の塩反応生成物をさらに含む。これに加えて又はこれに代えて、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のリチウム塩及びリン酸ジエステルの1種以上のリチウム塩及び任意にリン酸の1種以上のリチウム塩等の塩反応生成物をさらに含む。これに加えて又はこれに代えて、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のナトリウム塩及びリン酸ジエステルの1種以上のナトリウム塩及び任意にリン酸の1種以上のナトリウム塩等の塩反応生成物をさらに含む。これに加えて又はこれに代えて、処理層のリン酸エステルブレンドは、リン酸モノエステルの1種以上のカリウム塩及びリン酸ジエステルの1種以上のカリウム塩及び任意にリン酸の1種以上のカリウム塩等の塩反応生成物をさらに含む。
【0160】
1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸が、一価のカチオンの1種以上の水酸化物及び/又は一価のカチオンの弱酸の1種以上の塩によって少なくとも部分的に中和される場合、処理層及び/又はリン酸エステルブレンドは、好ましくは、1種以上のリン酸モノエステル及び1種以上のリン酸ジエステル及び任意にリン酸中の酸性基のモル合計に基づいて、≦10モル%の一価カチオンの量を含む。
【0161】
本発明の一実施形態では、処理層のリン酸エステルブレンドは、本発明の1種以上のリン酸モノエステル、1種以上のリン酸ジエステル及び任意の1種以上のリン酸トリエステル及び/又はリン酸に対応しない追加の表面処理剤をさらに含むことができる。
【0162】
一実施形態では、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルとそれらの塩反応生成物とのモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0163】
本発明の意味における「1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルとそれらの塩反応生成物とのモル比」という表現は、リン酸モノエステル分子の分子量の合計及び/又はリン酸ジエステル分子の分子量の合計対その塩反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計及び/又はその塩反応生成物中のリン酸ジエステル分子の合計を指す。
【0164】
少なくとも1種のリン酸エステルブレンドで処理された、表面処理された天然炭酸カルシウムを調製する方法及び被覆に適した化合物は、例えば、EP2770017A1号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1つの天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に処理層を含み、処理層は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びその塩反応生成物を含む。
【0166】
例えば、処理層は、C4~C24の総炭素原子数を有する飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0167】
本発明の意味における飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸の「塩反応生成物」という用語は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸と接触させることによって得られる生成物を指す。前記反応生成物は、塗布された少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸の少なくとも一部と少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0168】
本発明の意味における脂肪族カルボン酸は、1種以上の直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和及び/又は脂環式カルボン酸から選択することができる。好ましくは、脂肪族カルボン酸はモノカルボン酸であり、即ち、脂肪族カルボン酸は単一のカルボキシル基が存在することを特徴とする。前記カルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置される。
【0169】
本発明の一実施形態では、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸は、飽和非分岐カルボン酸から選択され、即ち、脂肪族カルボン酸は、好ましくはペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコリシル酸、リグノセリン酸及びそれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択される。
【0170】
本発明の別の実施形態では、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸は、オクタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0171】
例えば、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸は、オクタン酸又はステアリン酸である。好ましくは、脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸はステアリン酸である。
【0172】
一実施形態では、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸とその塩反応生成物(複数可)とのモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0173】
本発明の意味における「少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸とその塩反応生成物(複数可)とのモル比」という表現は、塩反応生成物中の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸の分子量の合計に対する飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸の分子量の合計を指す。
【0174】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に処理層を含み、処理層は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0175】
これに関して、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは表面処理剤を表し、任意の直鎖、分岐又は脂環式、置換又は非置換の、飽和又は不飽和脂肪族アルデヒドから選択することができる。前記アルデヒドは、好ましくは、炭素原子の数が6以上、より好ましくは8以上となるように選択される。さらに、前記アルデヒドは、一般に14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である炭素原子の数を有する。好ましい一実施形態では、脂肪族アルデヒドの炭素原子数は、6~14の間、好ましくは6~12の間、より好ましくは6~10の間である。
【0176】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは、好ましくは、炭素原子数が6~12の間、より好ましくは6~9の間、最も好ましくは8又は9となるように選択される。
【0177】
脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-2-ヘキセナール、(E)-3-ヘキセナール、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-4-ヘキセナール、(Z)-4-ヘキセナール、5-ヘキセナール、ヘプタナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、(E)-3-ヘプテナール、(Z)-3-ヘプテナール、(E)-4-ヘプタナール、(Z)-4-ヘプタナール、(E)-5-ヘプテナール、(Z)-5-ヘプテナール、6-ヘプテナール、オクタナール、(E)-2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、(E)-3-オクテナール、(Z)-3-オクテナール、(E)-4-オクテナール、(Z)-4-オクテナール、(E)-5-オクテナール、(Z)-5-オクテナール、(E)-6-オクテナール、(Z)-6-オクテナール、7-オクテナール、ノナナール、(E)-2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-3-ノネナール、(Z)-3-ノネナール、(E)-4-ノネナール、(Z)-4-ノネナール、(E)-5-ノネナール、(Z)-5-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-7-ノネナール、(Z)-7-ノネナール、8-ノネナール、デカナール、(E)-2-デセナール、(Z)-2-デセナール、(E)-3-デセナール、(Z)-3-デセナール、(E)-4-デセナール、(Z)-4-デセナール、(E)-5-デセナール、(Z)-5-デセナール、(E)-6-デセナール、(Z)-6-デセナール、(E)-7-デセナール、(Z)-7-デセナール、(E)-8-デセナール、(Z)-8-デセナール、9-デセナール、ウンデカナール、(E)-2-ウンデセナール、(Z)-2-ウンデセナール、(E)-3-ウンデセナール、(Z)-3-ウンデセナール、(E)-4-ウンデセナール、(Z)-4-ウンデセナール、(E)-5-ウンデセナール、(Z)-5-ウンデセナール、(E)-6-ウンデセナール、(Z)-6-ウンデセナール、(E)-7-ウンデセナール、(Z)-7-ウンデセナール、(E)-8-ウンデセナール、(Z)-8-ウンデセナール、(E)-9-ウンデセナール、(Z)-9-ウンデセナール、10-ウンデセナール、ドデカナール、(E)-2-ドデセナール、(Z)-2-ドデセナール、(E)-3-ドデセナール、(Z)-3-ドデセナール、(E)-4-ドデセナール、(Z)-4-ドデセナール、(E)-5-ドデセナール、(Z)-5-ドデセナール、(E)-6-ドデセナール、(Z)-6-ドデセナール、(E)-7-ドデセナール、(Z)-7-ドデセナール、(E)-8-ドデセナール、(Z)-8-ドデセナール、(E)-9-ドデセナール、(Z)-9-ドデセナール、(E)-10-ドデセナール、(Z)-10-ドデセナール、11-ドデセナール、トリデカナール、(E)-2-トリデセナール、(Z)-2-トリデセナール、(E)-3-トリデセナール、(Z)-3-トリデセナール、(E)-4-トリデセナール、(Z)-4-トリデセナール、(E)-5-トリデセナール、(Z)-5-トリデセナール、(E)-6-トリデセナール、(Z)-6-トリデセナール、(E)-7-トリデセナール、(Z)-7-トリデセナール、(E)-8-トリデセナール、(Z)-8-トリデセナール、(E)-9-トリデセナール、(Z)-9-トリデセナール、(E)-10-トリデセナール、(Z)-10-トリデセナール、(E)-11-トリデセナール、(Z)-11-トリデセナール、12-トリデセナール、ブタデカナール、(E)-2-ブタデセナール、(Z)-2-ブタデセナール、(E)-3-ブタデセナール、(Z)-3-ブタデセナール、(E)-4-ブタデセナール、(Z)-4-ブタデセナール、(E)-5-ブタデセナール、(Z)-5-ブタデセナール、(E)-6-ブタデセナール、(Z)-6-ブタデセナール、(E)-7-ブタデセナール、(Z)-7-ブタデセナール、(E)-8-ブタデセナール、(Z)-8-ブタデセナール、(E)-9-ブタデセナール、(Z)-9-ブタデセナール、(E)-10-ブタデセナール、(Z)-10-ブタデセナール、(E)-11-ブタデセナール、(Z)-11-ブタデセナール、(E)-12-ブタデセナール、(Z)-12-ブタデセナール、13-ブタデセナール、及びそれらの混合物からなる脂肪族アルデヒドの群から選択することができる。好ましい実施形態では、脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-2-ヘキセナール、(E)-3-ヘキセナール、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-4-ヘキセナール、(Z)-4-ヘキセナール、5-ヘキセナール、ヘプタナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-ヘプテナール、(E)-3-ヘプテナール、(Z)-3-ヘプテナール、(E)-4-ヘプテナール、(Z)-4-ヘプテナール、(E)-5-ヘプテナール、(Z)-5-ヘプテナール、6-ヘプテナール、オクタナール、(E)-2-オクテナール、(Z)-2-オクテナール、(E)-3-オクテナール、(Z)-3-オクテナール、(E)-4-オクテナール、(Z)-4-オクテナール、(E)-5-オクテナール、(Z)-5-オクテナール、(E)-6-オクテナール、(Z)-6-オクテナール、7-オクテナール、ノナナール、(E)-2-ノネナール、(Z)-2-ノネナール、(E)-3-ノネナール、(Z)-3-ノネナール、(E)-4-ノネナール、(Z)-4-ノネナール、(E)-5-ノネナール、(Z)-5-ノネナール、(E)-6-ノネナール、(Z)-6-ノネナール、(E)-7-ノネナール、(Z)-7-ノネナール、8-ノネナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0178】
他の好ましい実施形態では、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは飽和脂肪族アルデヒドである。この場合、脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、ブタデカナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、飽和脂肪族アルデヒドの形態の少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール及びそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、飽和脂肪族アルデヒドの形態の少なくとも1種の脂肪族アルデヒドは、オクタナール、ノナナール及びそれらの混合物から選択される。
【0179】
2種の脂肪族アルデヒドの混合物、例えば、オクタナール及びノナナールのような2種の飽和脂肪族アルデヒドが本発明に従って使用される場合、オクタナールとノナナールとの重量比は70:30~30:70、より好ましくは60:40~40:60である。本発明の特に好ましい一実施形態では、オクタナールとノナナールとの重量比は約1:1である。
【0180】
本発明の意味における少なくとも1種の脂肪族アルデヒドの「塩反応生成物」という用語は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを少なくとも1種の脂肪族アルデヒドと接触させることによって得られる生成物を指す。前記反応生成物は、塗布された少なくとも1種の脂肪族アルデヒドの少なくとも一部と少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0181】
一実施形態では、少なくとも1種の脂肪族アルデヒドとその塩反応生成物(複数可)とのモル比は、99.9:0.1~0.1:99.9、好ましくは70:30~90:10である。
【0182】
本発明の意味における「少なくとも1種の脂肪族アルデヒドとその塩反応生成物(複数可)とのモル比」という表現は、塩反応生成物中の脂肪族アルデヒドの分子量の合計に対する脂肪族アルデヒドの分子量の合計を指す。
【0183】
少なくとも1種の脂肪族アルデヒドで処理された、表面処理された天然炭酸カルシウムを調製する方法及び被覆に適した化合物は、例えば、EP2390285A1号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0184】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に処理層を含み、処理層は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0185】
「コハク酸無水物」という用語は、ジヒドロ-2,5-フランジオン、無水コハク酸又はコハク酸オキシドとも呼ばれ、分子式C4H4O3を有し、コハク酸の酸無水物である。
【0186】
本発明の意味における「一置換」コハク酸無水物という用語は、1個の水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸無水物を指す。
【0187】
本発明の意味における「一置換」コハク酸という用語は、1個の水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸を指す。
【0188】
少なくとも1種の一置換コハク酸無水物の「塩反応生成物」という用語は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを1種以上の一置換コハク酸無水物と接触させることによって得られる生成物を指す。前記塩反応生成物は、塗布された一置換コハク酸無水物から形成される一置換コハク酸と少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面に位置する反応性分子との間に形成される。あるいは、前記塩反応生成物は、任意に少なくとも1種の一置換コハク酸無水物と共に存在し得る一置換コハク酸と、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0189】
例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物を含む。より好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、置換基に少なくともC2からC30まで、好ましくはC3からC20まで、最も好ましくはC4からC18までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0190】
置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物で処理された天然炭酸カルシウムを調製する方法及び被覆に適した化合物は、例えば、WO2016/023937A1号及びEP2722368A1号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
本発明の別の実施形態によれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上に処理層を含み、処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0192】
好ましいポリジアルキルシロキサンは、例えば、US2004/0097616A1号に記載されている。最も好ましいのは、ポリジメチルシロキサン、好ましくはジメチコーン、ポリジエチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサン及び/又はそれらの混合物からなる群から選択されるポリジアルキルシロキサンである。
【0193】
例えば、少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンは、好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0194】
少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンは、好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上のポリジアルキルシロキサンの総量が1000ppm未満、より好ましくは800ppm未満、最も好ましくは600ppm未満であるような量で存在する。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上のポリジアルキルシロキサンの総量は、100~1000ppm、より好ましくは200~800ppm、最も好ましくは300~600ppmで、例えば、400~600ppmである。
【0195】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、好ましくは少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物、及び/又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物を含む。
【0196】
より好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物を含む。最も好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、ステアリン酸及びその塩反応生成物を含む。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上の処理層は、ステアリン酸及びその塩反応生成物からなる。
【0197】
一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、上記の材料の混合物、好ましくは2つの材料の混合物を含む。
【0198】
従って、後処理層が処理層上に存在してもよい。
【0199】
本発明の意味における「後処理層」は、処理層とは異なり得る表面処理剤の層、好ましくは単層を指し、「後処理層」は「処理層」上に位置する。
【0200】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面処理は2工程で行われ、第1の工程は、処理層を形成するために、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸、又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物による処理を含み、第2の工程は、後処理層を形成するために、少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンによる処理を含む。
【0201】
別の実施形態では、表面処理は、処理層を形成するために、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを、1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンドと、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸、又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物と、少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンと同時に処理することによって実施される。
【0202】
さらに、表面処理は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを最初にポリジアルキルシロキサンで処理し、続いて1種以上のリン酸モノエステル及び/又は1種以上のリン酸ジエステルのリン酸エステルブレンド、又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸、又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物で処理することによって実施することができる。
【0203】
好ましくは、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0204】
したがって、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、好ましくは1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物のリン酸エステルブレンドを含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0205】
あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物を含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0206】
あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物を含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0207】
あるいは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物を含み、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含む。
【0208】
より好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物、又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択された基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物を含み、最も好ましくはそれらからなり、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含み、より好ましくはそれからなる。例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部上の処理層は、少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びその塩反応生成物を含み、最も好ましくはそれらからなり、後処理層は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサンを含み、より好ましくはそれからなる。
【0209】
一実施形態によれば、リン酸エステル、1種以上のリン酸モノエステル、1種以上のリン酸ジエステルのブレンド、又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸、少なくとも1種の脂肪族アルデヒド、又は少なくとも1種の一置換コハク酸無水物の塩反応生成物(複数可)は、それらの1種以上のカルシウム及び/又はマグネシウム塩である。
【0210】
したがって、少なくとも1種の表面処理天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムと、以下を含む処理層とを含み、好ましくはそれらからなることが理解される。
i) 1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物、並びに/又は1種以上のリン酸ジエステル及びその塩反応生成物の、リン酸エステルブレンド、及び/又は
ii) 少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びその塩反応生成物、及び/又は
iii) 少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は
iv) 置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族及び環式基から選択される基によって一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はそれらの塩反応生成物、及び/又は
v) 少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は
vi) iからvに従う材料の混合物
【0211】
処理層は、前記少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面上に形成される。
【0212】
表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.05~2.3重量%の量で処理層を含むことが好ましい。一実施形態によれば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.1~2.0重量%、より好ましくは0.1~1.9重量%、最も好ましくは0.15~1.8重量%の量で処理層を含む。
【0213】
処理層は、好ましくは、表面処理された天然炭酸カルシウムの表面上の、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族、環式基から選択された基によって一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は前記材料の混合物の総重量が、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの0.05~1重量%/m2、より好ましくは0.1~0.5重量%/m2、最も好ましくは0.15~0.25量%/m2であることを特徴とする。
【0214】
本発明の一実施形態では、処理層は、表面処理された天然炭酸カルシウムの表面上の、1種以上のリン酸モノエステル及びその塩反応生成物及び/又は1種以上のリン酸ジエステル及びそれらの塩反応生成物のリン酸エステルブレンド、及び/又は又は少なくとも1種の飽和脂肪族直鎖又は分岐カルボン酸及びそれらの塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種の脂肪族アルデヒド及び/又はその塩反応生成物、及び/又は置換基に少なくともC2からC30までの総炭素原子数を有する直鎖、分岐、脂肪族、環式基から選択された基によって一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1種の一置換コハク酸無水物及び/又はその塩反応生成物、及び/又は少なくとも1種のポリジアルキルシロキサン、及び/又は前記材料の混合物の総重量が、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの0.1~5mg/m2、より好ましくは0.25~4.5mg/m2、最も好ましくは1.0~4.0mg/m2であることを特徴とする。
【0215】
表面処理された天然炭酸カルシウムは、≧250℃の揮発性発現温度を特徴とすることが好ましい。例えば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、≧260℃又は≧270℃の揮発性発現温度を有する。一実施形態では、表面処理された天然炭酸カルシウムは、250℃~400℃、好ましくは260℃~400℃、最も好ましくは270℃~400℃の揮発性発現温度を特徴とする。
【0216】
これに加えて又はこれに代えて、表面処理された天然炭酸カルシウムは、0.25質量%未満、好ましくは0.23質量%未満、例えば、約0.04~0.21質量%、好ましくは0.08~0.15質量%、より好ましくは0.1~0.12質量%の、25~350℃の間の総揮発性物質を特徴とする。
【0217】
さらに、表面処理された天然炭酸カルシウムは、低吸湿感受性を特徴とする。表面処理された天然炭酸カルシウムの吸湿感受性は、約+23℃(±2℃)の温度で、その全表面水分レベルが乾燥した天然炭酸カルシウムの1mg/g未満であるようなものであることが好ましい。例えば、表面処理された天然炭酸カルシウムは、約+23℃(±2℃)の温度で、乾燥した天然炭酸カルシウムの0.1~3.0mg/g、より好ましくは0.2~2.5mg/g、最も好ましくは0.2~2.0mg/gの吸湿感受性を有する。
【0218】
高い不透明度で低密度、即ち、≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを達成するために、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1層は、層の総重量に基づいて、5.0~21.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む。
【0219】
一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1層は、層の総重量に基づいて、7.0~18.0重量%、好ましくは8.0~16.0重量%の範囲の量で少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む。
【0220】
本発明の一態様によれば、上記の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、密度≦0.72g/cm3を有する単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるキャビテーション剤として使用される。
【0221】
<単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム>
本発明によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムが提供され、フィルムの少なくとも1層が、層の総重量に基づいて、79.0~95.0重量%の範囲の量の少なくとも1種のポリプロピレン及び5.0~21.0重量%の範囲の量の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含み、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムが、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0222】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは特に低密度を特徴とすることが理解される。したがって、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲の密度を有する。例えば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、<0.62g/cm3、さらにより好ましくは≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度を有する。
【0223】
本発明の他の利点は、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムが特に高い不透明度を特徴とすることである。単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、≧40%、好ましくは≧55%、さらにより好ましくは≧60%、最も好ましくは≧65%の不透明度を有することが理解される。
【0224】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、高い不透明の外観において特に低い密度を有するので有利である。
【0225】
したがって、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3、例えば、≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度、及び≧40%、好ましくは≧55%、さらにより好ましくは≧60%、最も好ましくは≧65%の不透明度を有することが好ましい。
【0226】
一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の中央値厚さは、3.2~500μm、好ましくは4~400μm、より好ましくは5~300μm、最も好ましくは6~250μm、例えば、8~150μmである。
【0227】
一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、3.2~500μm、好ましくは4~400μm、より好ましくは5~300μm、最も好ましくは6~250μm、例えば、8~150μmの中央値厚さ、及び≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3例えば、≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度を有する。
【0228】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは単層又は多層フィルムであることが理解される。
【0229】
多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合、フィルムは、互いに隣接している2~10層、好ましくは3層のような2以上の層からなる。多層フィルムが3層フィルムである場合、フィルムは好ましくはフィルム構造A-B-A又はA-B-Cを有する。多層フィルムにおいて、コア層、即ち、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は空隙を有する。一実施形態では、多層フィルムは、2つの隣接する層の間に配置されるバリア層を含む。本願の意味における「バリア層」とは、拡散バリア、例えば、酸素及び/又は水蒸気及び/又はガスバリアを指し、これは包装された商品を様々な外部の影響から保護するために使用される。
【0230】
バリア層は、この目的に適していると当該技術分野において知られている任意の材料であることができる。例えば、バリア層は、アルミニウム層、Al2O3層、SiOx層、エチレンビニルアルコール層、ポリ(ビニルアルコール)層、又はポリ塩化ビニリデン層、及びそれらの混合物であることができる。
【0231】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む層の中央値厚さは、製造される製品に応じて広い範囲で変わり得ることが理解される。
【0232】
例えば、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、他の個々の層、即ち、少なくとも1種のポリプロピレン及び/又は及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含まない層よりも厚いことが好ましい。あるいは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、一緒に他の層、即ち、少なくとも1種のポリプロピレン及び/又は及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含まない層、好ましくは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含まない層とほぼ同じ厚さである。
【0233】
好ましくは、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、3.2~500μm、好ましくは4~400μm、より好ましくは5~300μm、最も好ましくは6~250μm、例えば、8~150μmの中央値厚さを有する。
【0234】
特記しない限り、本明細書に記載の機械的及び光学的特性は、本明細書の以下に記載の実施例の節に従って、即ち、記述された条件下で二軸ラボストレッチャー(ドイツのドクター・コリン社(Dr.Collin GmbH)製Model Maxi Grip 750S二軸実験室用延伸フレーム)を使用することによって調製される少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層又はフィルムを指す。したがって、異なる条件下で調製された少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層又はフィルムについての結果は、本明細書で定義されている機械的及び光学的特性から逸脱し得ることが理解される。
【0235】
さらに、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、フィルム、特に層の機械的性質が高レベルに保たれるので有利である。
【0236】
例えば、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度で、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、ISO 527-3に従って測定された、70~200MPaの範囲、より好ましくは75~190MPaの範囲、最も好ましくは80~180MPaの範囲の、縦方向及び横方向における引張強度を有する。縦方向及び横方向における引張強度の値は、延伸法が同時に行われる場合には大きくは異ならないことが理解される。
【0237】
一実施形態では、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度で、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、ISO 527-3に従って測定された、1000~5000MPaの範囲、より好ましくは1100~4500MPaの範囲、最も好ましくは1200~4000MPaの範囲の、縦方向及び横方向における弾性率を有する。縦方向及び横方向における弾性率の値は、延伸法が同時に行われる場合には大きくは異ならないことが理解される。
【0238】
一実施形態では、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度で、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、ISO 527-3に従って測定された、18~90%の範囲、より好ましくは20~80%の範囲、最も好ましくは22~70%の範囲の縦方向及び横方向における最大破断点伸びを有する。縦方向及び横方向における破断点伸びの値は、延伸法が同時に行われる場合には大きくは異ならないことが理解される。
【0239】
さらに、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は微孔質であり、良好な光学的特性を有することが理解される。微孔性及び良好な光学的特性は、水蒸気透過率(WVTR)及び例えば、L*に関する以下のデータから推定することができる。
【0240】
「微孔性の」又は「微孔性」という用語は、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層を指し、それらは、それらが通気性があるか通気性を有すると同時に、それらを通る液体の流れを抑制又は停止するように、蒸気又はガスがそれらを通って流れることを可能にする。
【0241】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の微孔性は、その水蒸気透過率によって測定することができる。一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、ASTM E398に従ってLyssy L80-5000測定装置で測定された、100g/(m2・日)未満、好ましくは15~100g/(m2・日)の水蒸気透過率(WVTR)を有する。
【0242】
一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、好ましくは、≦0.72g/cm3、好ましくは≦0.70g/cm3、より好ましくは≦0.68g/cm3、さらにより好ましくは≦0.65g/cm3、さらにより好ましくは0.40~0.65g/cm3、最も好ましくは0.50~0.65g/cm3の範囲、例えば、≧0.4から<0.62g/cm3の間の範囲の密度で、DIN 6174によれば、60~100、好ましくは70~100、最も好ましくは80~98のL*を有する。
【0243】
一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、ポリプロピレンに分散されている、キャビテーション剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、加工助剤、帯電防止添加剤、押出助剤、核形成剤、光安定剤、光学的光沢剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む。
【0244】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、層の総重量に基づいて、0.1~30.0重量%、好ましくは2.0~25.0重量%、より好ましくは4.0~22.0重量%、さらにより好ましくは5.0~20.0重量%、さらにより好ましくは6.0~17重量%、最も好ましくは8.0~15.0重量%の範囲の量で少なくとも1つの添加剤を含む。
【0245】
一実施形態では、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの量より少ない量で少なくとも1種の添加剤を含む。例えば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの総重量に基づいて、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの量を下回る、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の量で少なくとも1種の添加剤を含む。
【0246】
したがって、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムが少なくとも1種の添加剤を含む場合、少なくとも1種の添加剤は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムと同じ層に存在するのが好ましい。添加剤の機能に応じて、それは外層に存在してもよく、例えば、UV安定剤又はブロッキング防止剤である。
【0247】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層中にさらなるキャビテーション剤が存在することは、それが、フィルム又は層の製造中に空隙の形成をさらに改善するので有利であることが理解される。しかし、さらなるキャビテーション剤がポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリマー性のものである場合、それは典型的にはフィルム又は層の不透明な外観を高めるのに役立たない。
【0248】
使用することができるキャビテーション剤は、ポリマーキャビテーション剤、好ましくはポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、アイオノマー、アクリル樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、並びにそれらの共重合樹脂及び混合物から選択される熱可塑性ポリマー、より好ましくは架橋剤で架橋されたもの、並びに/又は好ましくは無機充填剤(少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる)、顔料、中実微小球、中空微小球、金属、及びそれらの混合物から選択される無機キャビテーション剤から選択される。
【0249】
ポリマーキャビテーション剤は、少なくとも1種のポリプロピレンに可溶性ではないことに留意されたい。したがって、少なくとも1種のポリプロピレンは連続相、即ち、マトリックスを形成し、熱可塑性ポリマーがその中に分散され、即ち、分散相を形成する。
【0250】
「少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる」という用語は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは種類又は重量メジアン粒径d50が異なる無機充填剤を指す。したがって、無機充填剤は、<3.2μm、例えば、≧0.5から<3.2μmまでの重量メジアン粒径d50を有する天然炭酸カルシウムでもあってもよいことが理解される。
【0251】
好ましくは、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる無機充填剤は、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、アルカリ金属塩、例えば、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0252】
少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる無機充填剤の重量メジアン粒径d50は、好ましくは少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの重量メジアン粒径d50未満である。したがって、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる無機充填剤は、0.5μm~<3.2μm、好ましくは0.5μm~2.5μm、より好ましくは0.5μm~1.8μm、最も好ましくは0.6~1.8μmの範囲の重量メジアン粒径d50を有することができる。
【0253】
一実施形態では、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムとは異なる無機充填剤は、タルク、アルミナ、シリカ、アルカリ金属塩、例えば、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。したがって、この実施形態では、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、好ましくは二酸化チタンを含まない。
【0254】
好ましくは、中実微小球又は中空微小球は、ガラス又はセラミック製であることができる。
【0255】
これに加えて又はこれに代えて、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、製造されるフィルムに添加剤として典型的に使用される添加剤をさらに含んでもよい。有利には、それらは溶融前に既にポリマー又はポリマー混合物に添加される。あるいは、添加剤をマスターバッチに添加することができる。
【0256】
例えば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、酸化防止剤、酸捕捉剤、加工助剤、帯電防止剤、押出助剤、核形成剤、光安定剤、光学的光沢剤、青色染料、ブロッキング防止剤、白色顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0257】
単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム用の適切な酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤及び亜リン酸エステル系酸化防止剤の混合物、例えば、Lowinox BOPP 415(ドイツ、ヴァルトクライブルク、アディファント(Addivant))、ALBlend 925P(スイス、プラッテルン、SIグループ)である。
【0258】
UV安定剤又はUV吸収剤である光安定剤は、光誘起劣化の物理的及び化学的過程に介入することができる化合物であることが理解される。カーボンブラック及び他の顔料は光の悪影響からある程度の保護を与えることができるが、これらの物質は、それらが変色又は色の変化をもたらすので白色フィルムには不適当である。白色フィルムに適した唯一の添加剤は、安定化されるべきフィルムに全く色若しくは色の変化を与えない又は極めて低いレベルの色若しくは色の変化しか与えない有機化合物又は有機金属化合物である。適切なUV安定剤である光安定剤は、180~380nm、好ましくは280~350nmの波長範囲のUV光の少なくとも70%、好ましくは80%、特に好ましくは90%を吸収する。特に適しているものは、260~300℃の温度範囲で熱的に安定である、即ち、分解せずガスの放出を引き起こさないものである。適切なUV安定剤である光安定剤の例は、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾトリアゾール、有機ニッケル化合物、サリチル酸エステル、桂皮酸エステル誘導体、レゾルシノールモノベンゾエート、オキサニリド、ヒドロキシ安息香酸エステル、立体障害アミン及びトリアジン、好ましくは2-ヒドロキシベンゾトリアゾール及びトリアジンである。最も好ましくは、光安定剤は、ベンゾトリアゾール及び/又はベンゾフェノンから選択される。適切なベンゾトリアゾール及び/又はベンゾフェノンの例は、US8088848号に記載されており、したがってこれは参照により本明細書に組み込まれる。使用される光安定剤の量は、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の総重量に基づいて、典型的には10~50000ppm、好ましくは20~30000ppm、最も好ましくは50~25000ppmである。
【0259】
フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層中に存在するさらなる添加剤は、所望ならば光学的光沢剤である。本発明による光学的光沢剤は、約360~380nmの波長範囲のUV放射線を吸収し、これを再び可視の、より長波長の青紫色光として放出することができる。適切な光学的光沢剤は、ビスベンゾオキサゾール、フェニルクマリン及びビスステアリルビフェニル、特にフェニルクマリン、そして特に好ましくはトリアジン-フェニルクマリン(Tinopal(R)(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン、BASF)である。使用される光学的光沢剤の量は、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の総重量に基づいて、典型的には10~50000ppm、好ましくは20~30000ppm、最も好ましくは50~25000ppmである。
【0260】
適切な白色顔料は、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カオリン及びシリカであり、二酸化チタン及び硫酸バリウムが好ましい。二酸化チタン粒子は、アナターゼ又はブルッカイト又はルチル、好ましくは主にアナターゼよりも高い隠蔽力を有するルチルから構成され得る。好ましい実施形態では、二酸化チタン粒子の95重量%がルチルである。白色顔料の重量メジアン粒径d50は、典型的には、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの重量メジアン粒径d50未満であり、したがって白色顔料はボイド形成剤として作用しない。好ましくは、白色顔料の重量メジアン粒径d50は、0.10~0.30μmの範囲である。フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層中の白色顔料の量は、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の総重量に基づいて、通常は0.3~25重量%である。
【0261】
これに加えて又はこれに代えて、青色染料、好ましくはポリプロピレンに可溶な青色染料も、有用ならば、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層に添加することができる。例えば、成功したことが証明されている青色染料は、コバルトブルー、群青及びアントラキノン染料、特にSudanブルー2(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン、BASF)から選択される。使用される青色染料の量は、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の総重量に基づいて、典型的には10~10000ppm、好ましくは20~5000ppm、最も好ましくは50~1000ppmである。
【0262】
これに加えて又はこれに代えて、ブロッキング防止剤も、有用ならば、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層に添加することができる。典型的なブロッキング防止剤は、無機粒子及び/又は有機粒子、例えば、少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層とは異なる炭酸カルシウム、非晶質シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、又は架橋ポリマー粒子、例えば、ポリスチレン粒子、アクリレート粒子、PMMA粒子、又は架橋シリコーンである。4.0~12μm、好ましくは6~10μmの平均粒径(加重平均)を有する白雲母もまた特に適している。一般に知られているように、雲母は小板状ケイ酸塩からなり、そのアスペクト比は好ましくは5~50の範囲である。2種以上の異なるブロッキング防止剤の混合物又は同じ組成を有するが異なる粒径を有するブロッキング防止剤の混合物も添加剤として選択することができる。粒子は、押出し中にそれぞれの有利な濃度でフィルムの個々の層のポリマーに、直接又はマスターバッチによって添加することができる。ブロッキング防止剤は、好ましくは外層(複数可)、即ち、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含まない層に添加される。ブロッキング防止剤の量は、フィルム、好ましくは少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層の総重量に基づいて、一般に0.01~1重量%である。
【0263】
核形成剤は、α-核形成剤又はβ-核形成剤であることができる。α-核形成剤は、好ましくは、ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくは、ジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は置換ノニトール誘導体、例えば、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、及びそれらの混合物を含む群から選択される。少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、典型的には2000ppm以下、より好ましくは1~2000ppm、さらに好ましくは5~1500ppmの核形成剤を含有する。
【0264】
製造しようとする製品に適していて市販されているものとして当技術分野で周知の任意の酸化防止剤、酸捕捉剤、加工助剤、帯電防止添加剤及び/又は押出助剤を使用することができる。
【0265】
少なくとも1種の添加剤は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層中に存在し得ることが理解される。多層フィルムの場合、少なくとも1種の添加剤は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層中に及び/又は追加の層の少なくとも1つの中に存在することができる。
【0266】
本発明の単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、当技術分野において既知の任意の方法によって製造することができる。一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する方法は、
a) 少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物を提供する工程、及び
b) 工程a)の組成物からフィルムを形成する工程、及び
c) 工程b)で得られたフィルムを縦方向(MD)及び横方向(TD)に任意の順序で延伸する工程
を含み、縦方向(MD)及び横方向(TD)における延伸は逐次的又は同時に行われ、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムは、3.2μm~8.0μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0267】
方法の工程a)で提供される少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成することによって得られる複合物であることができる。少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム、及び存在するならば他の任意の添加剤は、適切なミキサー、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等の使用により混合及び/又は混練することができる。配合工程は、適切な押出機を用いて、好ましくは二軸スクリュー押出機(共回転又は逆回転)によって、又は任意の他の適切な連続式配合装置、例えば、連続式混練機(Buss)、連続式混合機(Farrel Pomini)、リング押出機(Extricom)等によって行うことができる。押出からの連続ポリマー塊は、水中ペレット化、偏心ペレット化及びウォーターリングペレット化による(ホットカット)ダイフェースペレット化、又は水中での(コールドカット)ストランドペレット化及び慣用のストランドペレット化によりペレット化されて、押出ポリマー塊をペレットに形成することができる。
【0268】
好ましくは、方法の工程a)で提供される少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られる複合物である。例えば、連続ペレット化は水中で行われる。
【0269】
任意に、配合工程は、内部(バッチ式)ミキサー、例えば、バンバリーミキサー(HFミキシンググループ)又はブラベンダーミキサー(ブラベンダー)等を使用する不連続法又はバッチ法でも実施することができる。
【0270】
一実施形態によれば、複合物は、複合物の総重量に基づいて、≦30重量%、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは5~30重量%の量で少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む。
【0271】
任意の実施形態によれば、方法の工程a)で提供される組成物は、上述の添加剤/化合物の1種以上をさらに含む。
【0272】
一実施形態によれば、方法の工程a)で提供される組成物はマスターバッチである。好ましい実施形態によれば、マスターバッチは、マスターバッチの総重量に基づいて、>30と85重量%との間、好ましくは35~80重量%、より好ましくは40~75重量%の量で少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む。マスターバッチは、ペレット、ビーズ、又は顆粒の形態であることができる。
【0273】
マスターバッチは上記複合物について記載したのと同じ方法により製造できることが理解される。したがって、マスターバッチは、好ましくは、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を形成することによって得られる。好ましくは、方法の工程a)で提供される少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの組成物は、少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを混合及び/又は混練して混合物を成形し、得られた混合物を連続的にペレット化することによって得られるマスターバッチである。
【0274】
複合物はさらなる加工中に希釈されないという点で、複合物はマスターバッチとは異なることに留意されたい。即ち、マスターバッチはさらなる加工中に希釈される。
【0275】
本発明の発明者らは、マスターバッチに本発明の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを使用すると、均一に充填された単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムがもたらされ、したがって高い不透明度で特に低い密度がもたらされることを見出した。
【0276】
方法の工程b)が実施される前に、マスターバッチは、好ましくは、(マスターバッチのマトリックスとして使用される)同じ又は異なるポリプロピレン及び/又は上記の少なくとも1種の添加剤と混合される。好ましい実施態様によれば、マスターバッチは、方法の工程b)が実施される前に、(マスターバッチのマトリックスとして使用される)同じポリプロピレンと混合される。
【0277】
一実施形態では、少なくとも1種の添加剤がマスターバッチに添加される。
【0278】
あるいは、工程a)の少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物は、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを少なくとも1種のポリプロピレンの重合方法に添加することによって得られる。すなわち、工程a)の少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物は、少なくとも1種のポリプロピレンの重合方法に、その前又は最中又は後に少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを添加することによって得られる。例えば、工程a)の少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物は、少なくとも1種のポリプロピレンの重合方法に、その前又は後に、好ましくは後に、少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを添加することによって得られる。したがって、工程a)の少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムを含む組成物は、そのまま使用できる組成物として提供することができる。
【0279】
方法の工程b)は、ポリマーフィルムを製造するために使用される任意の周知の技術によって実施することができる。適切なフィルム押出技術の例は、インフレーションフィルム押出又は流延フィルム押出である。好ましくは、方法の工程b)は流延フィルム押出によって行われる。
【0280】
したがって、方法の工程b)は好ましくは押出法である。
【0281】
フィルムを形成するための好ましい押出法では、方法の工程a)で提供された少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの溶融組成物は、スロットダイを通して押し出され、そして実質的に非晶質のプレフィルムの形態でチルロール上で急冷される。
【0282】
方法の工程c)では、方法の工程b)で得られたフィルムは、縦方向(MD)及び横方向(TD)に任意の順序で延伸される。
【0283】
例えば、方法の工程b)で得られたフィルムは、再加熱され、縦方向(MD)及び横方向(TD)、又は横方向(TD)及び縦方向(MD)、又は縦方向(MD)、横方向(TD)及び再度縦方向(MD)及び/又は横方向(TD)に延伸される。好ましくは、方法の工程b)で得られたフィルムは再加熱され、縦方向(MD)及び横方向(TD)に延伸される。
【0284】
したがって、工程c)における縦方向(MD)及び横方向(TD)における延伸は、逐次的に、同時に又はLISIM法又はそれらの組み合わせを用いて実施することができる。好ましくは、工程c)における縦方向(MD)及び横方向(TD)における延伸は、逐次的に行われる。
【0285】
延伸工程c)は、当技術分野において既知の任意の手段によって実施することができる。延伸工程c)を実施するためのそのような方法及び装置は、例えば、既知のLISIM又はMESIM法(機械的同時延伸)として当該技術分野において知られている。LISIM手順は、EP1112167号及びEP0785858号に詳細に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。MESIM法は、US2006/0115548号明細書に記載されており、これも同様に参照により本明細書に組み込まれる。例えば、同時二軸延伸法は、バッチ式二軸延伸機、例えば、Model Maxi Grip 750S(ドイツのドクター・コリン社)又はBruckner Karo IV(ドイツのブリュックナー・マシーネンバウ社(Bruckner Maschinenbau GmbH & Co. KG)により行うことができる。この延伸方法により、分子配向のためにフィルムが異方性になる。
【0286】
縦方向(MD)における最初の延伸は、所望ならば横方向(TD)における延伸と同時に行うことができる(同時延伸)。次いでフィルムは冷却され、巻き取られる。
【0287】
延伸工程中に、ポリプロピレンを少なくとも1種の天然炭酸カルシウムの表面から剥離することができ、それによって単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムに空隙が形成される。
【0288】
延伸は一工程で行ってもよいし、数工程で行ってもよい。一実施形態によれば、方法の工程c)は1~10回行われる。
【0289】
延伸倍率は、得られるフィルムの通気性及び水蒸気透過性と共に、高延伸時のフィルム破損を決定するため、過度に高い延伸倍率及び過度に低い延伸倍率は避けることが望ましい。一実施形態によれば、方法の工程c)において、工程b)で得られたフィルムは、3~12倍、より好ましくは4~11倍、最も好ましくは4~5倍の延伸倍率で各方向に延伸される。
【0290】
好ましくは、延伸工程c)は、工程b)で得られたフィルムを
a) 縦方向(MD)に3~10、好ましくは4~8の延伸比で、及び/又は
b) 横方向(TD)に4~12、好ましくは4~11の延伸比で
延伸するように行われる。
【0291】
一実施形態によれば、方法の工程c)は、120~180℃、より好ましくは130~160℃の範囲の延伸温度で行われる。
【0292】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムが多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムである場合、フィルムは、延伸工程c)の前又は後に共押出成形によって又は層を積層することによって(押出積層)製造することができる。好ましくは、多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、延伸工程c)の後に層を積層することによって調製される。一実施形態では、バリア層が多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムの層間に導入される。例えば、多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、2つの隣接する層の間に位置する、アルミニウム層、Al2O3層、SiOx層、エチレンビニルアルコール層、ポリ(ビニルアルコール)層、又はポリ塩化ビニリデン層、及びそれらの混合物を含む。したがって、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、積層工程においてバリア層を付加することによって製造することができる。
【0293】
本発明の発明者らは、本発明による単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層が低密度を有すること、特にその密度がキャビテーション剤として<3.2μmの重量メジアン粒径d50を有する炭酸カルシウムを使用して二軸延伸フィルム又は層について典型的に達成される密度未満であることを見出した。さらに、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、不透明な外観を有し、特にその密度がキャビテーション剤として<3.2μmの重量メジアン粒径d50を有する炭酸カルシウムを使用して二軸延伸フィルム又は層について典型的に達成される密度未満である。さらに、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルム、特に少なくとも1種のポリプロピレン及び少なくとも1種の天然炭酸カルシウム含有層は、引張強度、破断点伸び又は弾性率等の良好な機械的特性及びさらなる光学的特性を提供する。
【0294】
本発明による単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、多くの異なる用途に使用することができる。一実施形態によれば、単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、花の上包み、タバコの上包み、CDの上包み、収縮性フィルム、離型フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、食品包装、可撓性包装、キャンディーバー包装、衛生用品、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、包装袋、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、好ましくは感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサに使用される。
【0295】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による単層又は多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを含む物品が提供され、ここで物品は、花の上包み、タバコの上包み、CDの上包み、収縮性フィルム、離型フィルム、ツイストフィルム、マットフィルム、非電気コンデンサ膜、食品包装、可撓性包装、キャンディーバー包装、衛生用品、ラベル、織物、文房具、フォトアルバム、封筒、窓、カタログ、マニュアル、包装袋、地図、オーディオ/ビデオカセット、工業用テープ、好ましくは感圧テープ、箱用ガムテープ、マスキングテープ、積層金属化パンフレットカタログ、印刷積層板、カートンボックス、化粧箱、レストランメニュー、電気製品、例えば、ケーブル絶縁材及びコンデンサからなる群から選択される。
【0296】
本発明の範囲及び関心は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図し、非限定的である以下の実施例に基づいてより深く理解される。
【実施例0297】
<1 測定方法及び材料>
以下に、実施例で実施した測定方法及び材料について説明する。
【0298】
<MFR>
メルトフローレートMFRは、ISO 1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定する。
【0299】
<MVR>
メルトボリュームレートMVRは、ISO 1133(250℃/2.16kg)に従って測定する。
【0300】
<結晶化温度Tc>
結晶化温度は、Mettler-Toledo「Polymer DSC装置(メトラー・トレド社(スイスのMettler-Toledo(スイス)GmbH)での示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。30℃~225℃の間の10℃/分の冷却及び加熱走査の間に結晶化曲線を得た。結晶化温度は、吸熱及び発熱のピークと見なした。
【0301】
<粒径>
未処理の重質炭酸カルシウム含有充填材の粒度分布を、米国のマイクロメリティクス社製のSedigraph 5120を使用して測定した。この方法及び装置は当業者に知られており、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般に使用される。0.1重量%のNa4P2O7を含む水溶液中で測定を行った。試料を高速攪拌機及び超音速を用いて分散させた。
【0302】
<比表面積(BET)>
本明細書を通して、充填材の比表面積(m2/gで表される)を、当業者に周知のBET法(吸着ガスとして窒素を使用)を使用して決定する(ISO 9277:2010)。
【0303】
<灰分>
マスターバッチ及びフィルムの[重量%]での灰分を、焼却炉に570℃で2時間入れた焼却るつぼ中で試料を焼却することによって決定した。灰分は、残留無機残渣の総量として測定した。
【0304】
<フィルム厚さ>
フィルム厚さは、デジタル測定スライドMitutoyo IP 66(ドイツ、ノイス、ミツトヨ・ヨーロッパ社(Mitutoyo Europe GmbH))を使用して決定した。測定値をμmで報告した。
【0305】
<フィルム又は層の密度>
密度は試験片から決定し、それにより正確な面積のフィルム(100mm×100mm)を切断し、分析天秤上で秤量する。平均フィルム厚さを、フィルム表面全体にわたって割り当てられた9つの厚さ測定値を取ることによって決定した。密度を計算し、[g/cm3]で報告した。これらの値から、平均収量(m2/kg)及び単位重量(g/m2)も計算できる。
【0306】
<輝度Ry>
比色値は、Datacolor Elrepho分光計(スイスのデータカラー社(Datacolor AG))を用いて測定し、RyはDIN 53163に従って測定し、CIELAB色差L*、a*及びb*はDIN 6174に従って決定した。
【0307】
<光沢60°(20°、85°)>
光沢は60°で測定し、さらに20°又は85°で測定してもよい。全ての測定は、trigloss光沢計(ドイツのBykガードナー社(Gardner GmbH))を用いてISO 2813に従って行った。
【0308】
<不透明度>
不透明度測定は、DIN53146に従って、Byk-Gardner Spectro-Guide(ドイツのBykガードナー社)を使用して、白黒基材上のフィルム試料の白色度を測定することによって行った。不透明度は2つの測定値のコントラスト比である。単位はパーセント%であり、完全に不透明な素材は100%という不透明度の値を有する。
【0309】
<透過率>
光透過率(透明度)は、入射光の量に対する全透過光の比率である。ASTM D1003に従って、ヘイズ-ガード/プラス(ドイツのBykガードナー社)試験装置を使用して光透過率を測定した。
【0310】
<引張強度>
製造されたフィルム試料を、Zwick/Roell Allround Z020装置(ドイツのツヴィック社(Zwick GmbH & Co. KG))でISO 527-3に従ってそれらの引張挙動について試験した。引張試験は、縦方向(MD)及び横方向(TD)に採取した試料に対して行った。各配合物について少なくとも5つの試料を試験し、平均値を計算する。引張弾性率[MPa]、引張強度[MPa]、及び破断点伸び[%]を報告する。フィルム試料の試料サイズは15mm×170mmであり、試験長さは5cmであった。
【0311】
<最大破断点伸び>
破断点伸びの決定は、ISO 527-3に従って実施した。フィルム試験片の幅は15mmであり、試験長さは5cmであった。
【0312】
<引張弾性率(弾性率)>
引張弾性率の決定は、ISO 527-3に従って実施した。フィルム試験片の幅は15mmであり、試験長さは5cmであった。Eモジュラスは、0.02%と2%の伸びでの点の間の引張試験曲線の傾きに対応した。
【0313】
<水蒸気透過率(WVTR)>
ポリプロピレンフィルムのWVTR値は、ASTM E398に従って、Lyssy L80-5000(デンマークのPBI-ダンセンサー社(Dansensor A/S))測定装置を用いて測定した。
【0314】
<2 材料>
CC1(本発明):天然の重質炭酸カルシウムの総重量に基づいて0.5重量%のステアリン酸(クロダ、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から市販されている)で表面処理された、スイスのオムヤ・インターナショナル社から市販されている天然の重質炭酸カルシウム(d50:5μm;d98:20μm)、BET:2.1m2/g。
【0315】
CC2(本発明):表面処理されていない、スイスのオムヤ・インターナショナル社から市販されている天然の重質炭酸カルシウム(d50:5μm;d98:30μm)、BET:2.1m2/g。
【0316】
CC3(比較):表面処理されていない、スイスのオムヤ・インターナショナル社から市販されている天然の重質炭酸カルシウム(d50:3μm;d98:12.5μm)、BET:2.1m2/g。
【0317】
CC4(比較):天然の重質炭酸カルシウムの総重量に基づいて0.7重量%のステアリン酸(クロダ、シグマ・アルドリッチから市販されている)で表面処理された、スイスのオムヤ・インターナショナル社から市販されている天然の重質炭酸カルシウム(d50:1.4μm;d98:5μm、<1μmの粒子の含有率=28%)、BET:5.1m2/g。
【0318】
P1(比較例):オランダのサビック(Sabic)から市販されているポリエチレンテレフタレート(PET)、Valox 334、105cm3/10分のMVR(250℃/2.16kg)(ISO 1133;技術データシートによる)。
【0319】
P2(比較例):オランダのサビックから市販されているポリエチレンテレフタレート(PET)、Valox 3104、40cm3/10分のMVR(250℃/2.16kg)(ISO 1133;技術データシートによる)。
【0320】
P3(比較例):オランダのサビックから市販されているポリエチレンテレフタレート(PET)、Valox 195、82000mPasの溶融粘度(サビック法により決定)(技術データシートによる)。
【0321】
PO1(ポリマーマトリックス):スイスのダウ・ヨーロッパ(Dow Europe)から市販されているポリプロピレンホモポリマー、Dow PP H-358-02、2.1g/10分のMFR(230℃/2.16kg)、0.90g/cm3の密度(技術データシートによる)。
【0322】
<3 実施例>
[実施例1-マスターバッチの調製]
炭酸カルシウム充填剤CC1~CC4及びポリマーP1~P3及びPO1を含有するポリプロピレンマスターバッチを実験室規模のBussニーダー(スイスのブース社(Buss AG)からのBuss PR46)で連続的に調製した。調製したマスターバッチの組成及び充填剤含有率を下記の表1にまとめる。正確な充填剤含有率は灰分によって決定した。
【0323】
【0324】
[実施例2-ポリプロピレン流延フィルムの製造]
流延フィルムを、直径30mm幅のTダイを有する二軸スクリュー押出機及び温度制御されたチルロールを有する巻き取りシステムを用いて、Collin Laboratory Film Line (ドイツのドクター・コリン社)で調製した。チルドロールをTダイから20mm離して、約1500μmの厚さを有するポリプロピレンシートを製造した。押出機及びダイの温度は実験を通して一定であった。ダイ温度は250℃に設定し、ライン速度は0.8m/分であった。マスターバッチ又はポリマーを純ポリマーPO1と混合して、表2に示す濃度の流延フィルムを得た。
【0325】
【0326】
表2に示すフィルムは全て、視覚的に良好な外観を有する良好な品質で製造された流延フィルムである。
【0327】
[実施例3-二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造]
二軸ラボストレッチャー(ドイツのドクター・コリン社製のModel Maxi Grip 750S二軸ラボ延伸フレーム)を使用して流延フィルムを延伸した。135mm×135mmの寸法及び約1500μmのフィルム厚さ(表2に与えられた正確な値)を有する流延フィルムを9×9クリップで把持し、流延フィルム表面で測定して135℃まで赤外線システムにより加熱した。延伸前の予熱時間は145℃で90秒に固定し、次にフィルムを同時に二軸延伸して250mm/秒×250mm/秒の速度をもたらす6000mm/s2×6000mm/s2の加速度で最終延伸比まで延伸した。最終寸法に延伸した後、フィルムをファンで直ちに室温に空冷し、次いで延伸機から取り出した。4.6×4.6(360%×360%)の目標延伸比までフィルムを延伸した。延伸比及び温度は全ての試料について一定に保った。
【0328】
得られた配向フィルムの物理的特性、光学的特性及びバリア特性を表3に概説する。
【0329】
表3に示す結果は、本発明の配向ポリプロピレンフィルムが良好な品質、低下した密度及び高い不透明度を有することを裏付けている。本発明のフィルムはまた、高い白色度、良好なバリア特性及び良好な機械的特性を有する。
【0330】
表3に示された結果を比較することにより、請求項1による粗い炭酸カルシウムを使用すると驚くほどより低いフィルム密度が得られる(実施例2~5参照、d50=5.0μm)一方、より細かい炭酸カルシウムを使用すると、フィルム密度が高くなる(比較例6及び7参照、d50=3.0μm)ことがわかる。発明例2~5は、0.58~0.70g/cm3の間のフィルム密度を示し、より細かい炭酸カルシウムを使用する比較例よりも優れているだけでなく、有機キャビテーション剤を使用する比較例よりも優れている。
【0331】
さらに、表3から、フィルム厚さ及びWVTRは、ほぼ同じ全てのフィルムについての通常の偏差を検討しており、BOPPフィルムについての通常の範囲内であることがわかる。注目すべきことに、表面処理された炭酸カルシウムを使用した場合の不透明度の著しい改善もある(実施例2及び3参照)。
【0332】