(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008462
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/027 20190101AFI20220105BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B32B7/027
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153298
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2020548812の分割
【原出願日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0046452
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520347410
【氏名又は名称】ファン,テ-ギョン
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,テ-ギョン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AH08C
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100EH46B
4F100JB02C
4F100JD10B
4F100JJ02B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材層10の一面に熱遮蔽層30が形成され、前記熱遮蔽層は前駆体をなす元素が安定同位元素で構成され、酸素が欠乏した
(Y)A
x
(182、183、184、186)W
1O
(3-n)形態の六方晶系型構造を有する非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含むように構成して、放射性物質の生成を防ぎ、ヘイズを基本的に遮断して、可視光線透過率と赤外線遮断率を改善し、かつ熱遮蔽層を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で構成したときに起きる可能性のある耐熱性及び耐久性の問題が、不動態化皮膜により解決される、非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム及びその製造方法に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一面に形成された熱遮蔽層を含み、前記熱遮蔽層が、放射線を放出しない非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含むことを特徴とする、非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏し、
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は、(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の構造を形成し、
前記(Y)Aは非放射性安定同位元素であって、
前記Xは前記(Y)Aにドーピングされる元素の数を示し、
前記YはAの質量数を示し、
前記(3-n)は酸素の欠乏を示し、
前記(Y)Aが、非放射性アルカリ金属元素または非放射性アルカリ土金属元素であることを特徴とする、請求項1に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項3】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は、(六方晶系構造を形成することを特徴とする、請求項2に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記(Y)Aが、(23)Na、(39、41)K、(85)Rb、(133)Cs、(24、25、26)Mg、及び(42、43、44)Caのうち、いずれか1つであることを特徴とする、請求項2に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項5】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を、300~600℃の範囲でか焼させて、水酸基及び水分子を除去し、無定形を形成することを特徴とする、請求項3に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項6】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、前記か焼の以後、不活性ガスを投入した還元焼成により、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成することを特徴とする、請求項5に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項7】
前記不活性ガスが、N2、Ar、Ne、及びCO3のうち、いずれか1つ以上を含むことを特徴とする、請求項6に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項8】
前記熱遮蔽層が、酸素が欠乏した前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を向上させる不動態化皮膜をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項9】
前記不動態化皮膜が、有機酸金属キレート化合物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項10】
前記有機酸金属キレート(Chelate)化合物は、R1-M-R2構造を有し、前記Mは、Cu、Ag、Zn、Ni、W,及びCoのうちのいずれか1つの元素であり、前記R1及びR2は、低分子型グルタミン酸(Glutamic Acid)及び高分子型ナトリウムポリアスパーテート(Sodium Poly Aspartate)のうち、いずれか1つであることを特徴とする、請求項9に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【請求項11】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)であることを特徴とする、請求項1に記載の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム及びその製造方法に関し、より詳しくは、基材層の一面に熱遮蔽層が形成され、前記熱遮蔽層は前駆体をなす元素が安定同位元素で構成され、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を有する非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含むように構成して、放射性物質の生成を防ぎ、ヘイズを根本的に遮断し、可視光線透過率と赤外線遮断率を改善し、かつ熱遮蔽層を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で構成したときに発生する耐熱性及び耐久性の問題を不動態化皮膜により解決される、非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子の核の内部に陽子数が十分に多い場合にはクーロン反撥力のため、核は不安定になり易く、したがって、安定化するための自然的な原理により、一層少ない陽子を有する原子に崩壊される傾向が生じる。このような現象により放射線(Radiation)が発生し、放射線にはα線、β線、γ線がある。
【0003】
放射線を出すことができる放射性元素には自然放射性元素と人工放射性元素があるが、自然放射性元素は自然界に存在する元素として約60余種(原子番号81以上)が知られており、人工放射性元素は、核反応及び核分裂など、人工的な方法により作られるもので、その種類は非常に多い。
【0004】
放射能(Radioactivity)とは放射線を放出する能力を指し、放射能を有する物質を放射性物質という。このような放射性物質に生命体が晒されると各種の問題が引き起こされることがある。
【0005】
まず、生命体の相当の部分は水からなるが、水分子は放射線により電離される場合があり、水分子が電離されれば非常に速い速度でイオンと自由ラジカル(Free Radical)が生成される。イオンの場合、自然状態でも大量に存在するので、その有害性は大きくないが、自由ラジカルの場合、その活性が非常に大きくて他の分子の構造変形に関与するか、または強酸化剤である過酸化水素(H2O2)を生成して毒性を引き起こすことがある。その結果、DNA及びRNAなど、細胞分裂と関連したシステムに作用して細胞の破壊、変形などを引き起こすようになる。
【0006】
問題はこのような放射線が生活環境の中の随所で発生しているという事実である。原子力発電をすることができる原子番号が大きい元素だけでなく、ベリリウム(Be)、炭素(C)、水素(H)、カリウム(K)、ラドン(Rn)などの元素でも放射線が発生するので、生命体は日常生活を営む過程でやむをえず多量の放射線に晒されざるをえない。
【0007】
身体が年間自然放射線に被曝される量は約3.08mSvであり、被曝される量の45.6%はラドンにより、33.8%は地殻放射線により、12.3%は食物により発生することがわかっている。
【0008】
放射線は晒された線量がエネルギーを意味するので、線量と比例してその危害性も増加するようになる。100mSv以上では血液検査上の異常、200mSv以上では胎児の障害、生殖細胞異常及び不妊、1Sv以上では急性放射線症候群、2Sv以上では白内障などが引き起こされると報告されている。
【0009】
熱遮蔽材料は、有機化合物型熱遮蔽材料と、無機化合物型熱遮蔽材料とに大別できる。
【0010】
有機化合物型熱遮蔽材料は高い可視光線透過率を示すが、近赤外線領域中に単一波長(≒950nm)付近のみで吸収が起こって、実際に人体が感じる熱エネルギー領域付近での効果的な遮断は難しく、無機化合物型材料よりは相対的に遮蔽効果が落ちる。これによって、前記有機化合物型熱遮蔽材料は無機化合物型熱遮蔽材料と混用されながら熱遮蔽の補助的な材料に使われている。有機化合物にはランタニウムヘキサボライド(Lanthanum Hexaboride、LaB6)、フタロシアニン(Phthalocyanine、PC)、カーボンブラック(Carbon Black)、チタンブラック(Titan Black)、金属錯塩(Metal Complex)、ジイモニウム塩(Diimonium Salt)などがある。その中で、実際にたくさん使われている有機化合物は金属錯塩(Metal Complex)、カーボンブラック(Carbon Black)、ジイモニウム塩(Diimonium Salt)などである。
【0011】
一方、無機化合物型熱遮蔽材料は低い可視光線透過率を有するが、有機物化合物型材料よりは優れた耐久性と高い熱遮蔽特性を有している。熱遮蔽材料には特に無機酸化物が多く、このような無機酸化物にはアンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムティンオキサイド(ITO)、二酸化シリカ(SiO2)、三酸化アルミナ(Al2O3)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化バナジウム(V2O5)、タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)、タングステンオキサイド(Tungsten Oxide)などが使用される。その中で、特に最も多く使われて、実際に赤外線遮断特性が良好な無機酸化物はアンチモンティンオキサイド(ATO)とインジウムティンオキサイド(ITO)、タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)である。
【0012】
アンチモンティンオキサイド(ATO)はインジウムティンオキサイド(ITO)より価格が低廉で、一般的な熱遮蔽フィルムに多く適用されている。しかしながら、近赤外線透過ピークのうち、1500nmから2200nmまで緩やかな傾斜の透過グラフで、完壁な赤外線遮断はなされておらず、高い可視光線透過率を確保するためには、その投入量が制限的にならざるをえない。仮に、高い近赤外線遮断率確保のためにアンチモンティンオキサイド(ATO)ゾル投入量を高くすれば、可視光線透過率は40~50%まで顕著に落ちるようになり、過度な無機物含有は熱遮蔽コーティング層のクラック、付着力低下、白濁、経時変化などを起こす。このように、粒子サイズ30nmのアンチモンティンオキサイド(ATO)といっても可視光線対比近赤外線遮断特性にはその限界があるため、活用範囲が狭く、高性能熱遮蔽フィルム製造には容易に適用できない。
【0013】
インジウムティンオキサイド(ITO)はアンチモンティンオキサイド(ATO)より高い可視光線透過率と赤外線遮断特性を有する。しかしながら、インジウム(Indium)価格が世界的に高い価格の原料としてよく知られており、大部分の電子産業ではインジウムティンオキサイド(ITO)に代えることができる物質が開発中である。また、熱遮蔽フィルム製造でもこのような高価な原料を使用することは大きい負担にならざるをえない。したがって、インジウムティンオキサイド(ITO)より高い可視光線透過率と高い近赤外線遮断特性を有する物質を開発することが急務である。
【0014】
また、アンチモンティンオキサイド(ATO)とインジウムティンオキサイド(ITO)は、ナノ粒子無機酸化物の合成において非常に難しい工程を経て製造されている。特に、Sol-Gel法、Autoclave法により製造された水酸化アンチモンティンオキサイド(ATO(OH))、水酸化インジウムティンオキサイド(ITO(OH))は必ず焼成過程を経ることとなる。焼成は計2回に亘ってなされるが、空気中で300~400℃で1次焼成した後、2次水素還元焼成がなされる。その際、水素ガス(Gas)と不活性ガスを混合して還元焼成がなされることになり、若干の酸素が投入された場合でも爆発する可能性が非常に高く、注意を要する作業であり、設備もGas Flow焼成炉はかなり高価な装備である。このように、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムティンオキサイド(ITO)を製造するに当たって、安定性の問題と高い設備投資が必要であるという短所が存在する。
【0015】
ペロブスカイトタングステンブロンズ(Perovskite Tungsten Bronze)は、ワイドバンドギャップ(Wide Band Gap)酸化物で、三酸化タングステンにNaなどの陽性元素をドーピングした形態であり、一般的にペロブスカイト構造(ABO3)を有する。タングステンブロンズの特徴には、波長800nm以上から光エネルギー吸収が強く、波長380~780nmでの光エネルギー吸収は弱いので、透明性を必要とする分野では活発に研究されている現状である。タングステンブロンズ化合物は約5万種類程度が知られており、特に赤外線遮断特性を示すタングステンブロンズ化合物はAkW1Oy形態で、Akはアルカリ金属またはアルカリ土金属元素、W1はタングステン、Oyは酸素をいう。
【0016】
前記無機化合物型熱遮蔽材料は、よりよい光学的特性の発揮のために、か焼及び還元焼成ステップなどを通じて結晶欠陥が誘導できるが、問題はこのような過程で、マイクロ波ウェーブ合成のように合成過程中に予想しない極度に高いエネルギーが使われたときに、不所望な放射性物質が生成されることがあるということである。
【0017】
図1は従来の熱遮蔽フィルムを図示した図面であって、これは特許文献1(2014.12.03.)に開示されている。
【0018】
図1を参考して説明すると、前記従来の熱遮蔽フィルム90は、PET(Poly Ethylene Terephthalate)またはPC(Poly Carbonate)を主材にする基材層91と、前記基材
層91の上部に赤外線を反射しながらも熱を吸収するコーティング剤が蒸着されるコーティング層93と、前記基材層91の下部に紫外線と赤外線を選択的に遮蔽する接着剤が粘着される接着層95と、前記基材層91と前記コーティング層93との間に視認性と遮蔽性を有する薄膜が選択的にさらに蒸着される薄膜層97と、熱反射フィルムを保護し、付着前に剥離される保護層99を含み、前記コーティング剤はアンチモンティンオキサイド(ATO)5~40重量%とアクリルレジン60~95重量%を含むことを特徴とする。
【0019】
前記従来の熱遮蔽フィルム90は、やはり熱遮蔽材料に無機化合物を使用しているが、無機化合物に加えられた高いエネルギーにより放射性物質が検出されることがあるという事実は看過している。
【0020】
結局、従来の熱遮蔽フィルム90には放射線の放出可能性が内在しており、放射線を放出する熱遮蔽フィルム90が使われた環境に身体が持続的に晒された場合、身体の内部に細胞変形、細胞破壊などが発生することがあり、突然変異、奇形児出産、癌発生可能性なども高まることがある。
【0021】
したがって関連業界では、太陽光に分布する赤外線を効果的に遮断でき、かつ有害な放射線同位元素を選別的に除去して、有害性がなく、耐熱性及び耐久性を有し、製造過程が簡単で製造に高いコストを必要としない新たなタイプの熱遮蔽フィルムに関する開発が求められている実状が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】韓国特許第10-1470901号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は上記のような問題点を解決するために考案されたものであって、
【0024】
本発明の目的は、基材層の一面に形成される熱遮蔽層を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で構成して、放射線に対する有害性がなく、優環境的な熱遮蔽フィルムを提供することにある。
【0025】
本発明の別の目的は、前駆体をなす元素を安定同位元素で構成し、相対的に低い温度及び低いエネルギー状態で合成を進行させて、放射性物質の生成を遮断する、非放射性熱遮蔽フィルムを提供することにある。
【0026】
本発明の更に別の目的は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するようにして、相対的に小さな1次粒径を有するようになることによって、化合物の製造時、焼成過程で粒子サイズの増大の問題が発生しないようにすることにある。
【0027】
本発明の更に別の目的は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するようにして、ヘイズを根本的に遮断することによって、完成された熱遮蔽フィルムが散乱現象によりぼやけて見える問題の発生を、防止することにある。
【0028】
本発明の更に別の目的は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するようにして、無機物熱遮蔽材料の光学的特性を極大化することによって、可視光線透過率及び赤外線遮断率を改善した熱遮蔽フィルムを提供することにある。
【0029】
本発明の更に別の目的は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を合成条件が簡単な液状沈殿法により製造して、粒子生成及び粒子サイズの制御が容易となるようにすることで、均一なナノサイズの粒子を有する熱遮蔽フィルムを提供することにある。
【0030】
本発明の更に別の目的は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を300~600℃の範囲でか焼させて、水酸基及び水分子を完全に除去しながら粒子の成長を最小化することでナノサイズ粒子を得ることができるようにすることにある。
【0031】
本発明の更に別の目的は、不活性ガスの投入下に還元焼成を進行して、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造が形成されるようにし、酸素の空いている個所に非放射性アルカリ金属元素または非放射性アルカリ土金属元素を密に代置させて赤外線吸収特性を有するようにすることにある。
【0032】
本発明の更に別の目的は、還元焼成を進行する際、爆発の危険性がある水素ガスを使用せず、不活性ガスを使用することによって、作業上の危険を減らし、既存の焼成装備を用いて簡便に作業が進行できるようにすることにある。
【0033】
本発明の更に別の目的は、選択的反応性が優先で、かつ異種反応性のない有機酸金属キレート化合物(Organic Acid Metallic Chelate Compounds)を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の表面に形成するか、または分散ゾル内に分布させることによって、残留酸素(O、O2)流入による反応、残留水酸基(-OH)による反応、残留ラジカル(Radical)による反応などを前記有機酸金属キレート化合物が、効果的に遮断するようにして、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の耐熱性、耐久性などの問題を補完することにある。
【0034】
本発明の更に別の目的は、不動態化皮膜の役割をする有機酸金属キレート化合物をリフラックス(Reflux)法により製造するようにして、所望の目的に合う化合物を既存の設備でも簡単に製造できるようにすることにある。
【0035】
本発明の更に別の目的は、塗布された塗膜の乾燥及び硬化のために熱風乾燥及び紫外線照射がなされる場合、120℃以上の温度に基材層が晒されることによって変形が発生する問題を、熱変形温度が高く、寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)で基材層を構成して解決することにある。
【0036】
本発明の更に別の目的は、分散ゾル内の非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の含有量を20~30重量%になるように構成して、十分な光学的特性が発揮されるようにし、分散時間を縮めて分散剤の変形を防止することにある。
【0037】
本発明の更に別の目的は、分散ゾル内の分散剤の含有量は1~10重量%になるようにして、十分な分散ゾルを得て、コーティングされた表面を乾燥させる時、乾燥できなかった分散剤がコーティングの表面に残存してコーティングの表面の不良を起こさないようにすることにある。
【0038】
本発明の更に別の目的は、分散ゾル内の有機酸金属キレート化合物の含有量を5~10重量%で構成して、可視光線透過率及び赤外線遮蔽率などの光学的特性をあまり落とさずに、かつ非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を格段に向上させることにある。
【0039】
本発明の更に別の目的は、ボールミル法により分散ゾルを形成するようにすることで、凝集された粉末を容易に分散させ、分散ゾル形成を簡便にし、大量生産可能にすることにある。
【0040】
本発明の更に別の目的は、コーティングゾル内の分散ゾルの含有量が40~50重量%になるようにすることで、フィルムの光学的特性及び塗膜付着力を高めて、表面耐スクラッチ性を向上させることにある。
【0041】
本発明の更に別の目的は、光重合体として紫外線照射により光重合を起こすオリゴマー(Oligomer)、モノマー(Monomer)、光開始剤をコーティングゾルに含んで、コーティングゾルと基材層との結合力を増進させ、塗膜の厚さを微細に調節できるようにすることにある。
【0042】
本発明の更に別の目的は、基材層に塗布されたコーティング塗膜の厚さを3~4μmで構成して、光学的特性を維持しながら表面耐スクラッチ性を高めて、表面クラック発生を防ぎ、基材層との付着力を向上させることにある。
【0043】
本発明の更に別の目的は、熱遮蔽層の一面に粘着層を構成して、フィルムが建物または車両などに容易に接着できるようにすることにある。
【0044】
本発明の更に別の目的は、粘着層の一面に離型紙を付着して粘着層の一面が離型紙により保護されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本発明は、上述の目的を達成するために次のような構成を有する実施例により具現される。
【0046】
本発明の一実施例によれば、本発明は、基材層と、前記基材層の一面に形成された熱遮蔽層を含み、前記熱遮蔽層が、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含むことを特徴とする。
【0047】
本発明の他の実施例によれば、本発明は、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏したことを特徴とする。
【0048】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成することを特徴とする。
【0049】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記(Y)Aが、非放射性アルカリ金属元素または非放射性アルカリ土金属元素であることを特徴とする。
【0050】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記(Y)Aが、(23)Na、(39、41)K、(85)Rb、(133)Cs、(24、25、26)Mg、及び(42、43、44)Caのうち、いずれか1つであることを特徴とする。
【0051】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を、300~600℃の範囲でか焼させて、水酸基及び水分子を除去し、無定形を形成することを特徴とする。
【0052】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、前記か焼の以後、不活性ガスを投入した還元焼成により、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成することを特徴とする。
【0053】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記不活性ガスが、N2、Ar、Ne、CO3のうち、いずれか1つ以上を含むことを特徴とする。
【0054】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記熱遮蔽層が、酸素が欠乏した前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を向上させる不動態化皮膜をさらに含むことを特徴とする。
【0055】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記不動態化皮膜が、有機酸金属キレート化合物を含むことを特徴とする。
【0056】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記有機酸金属キレート(Chelate)化
合物は、R1-M-R2構造を有し、前記Mは、Cu、Ag、Zn、Ni、W、及びCoのうち、いずれか1つの元素であり、前記R1及びR2は、低分子型グルタミン酸(Glutamic Acid)及び高分子型ナトリウムポリアスパーテート(Sodium Poly Aspartate)のうち、いずれか1つであることを特徴とする。
【0057】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)であることを特徴とする。
【0058】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、基材層を提供する基材層提供ステップと、前記基材層提供ステップの後で、前記基材層の一面に非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含む熱遮蔽層を形成する熱遮蔽層形成ステップを含むことを特徴とする。
【0059】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記熱遮蔽層形成ステップは、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を生成する非放射性化合物形成ステップと、前記非放射性化合物形成ステップの後で、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物に不動態化皮膜を形成する不動態化皮膜ステップと、前記不動態化皮膜ステップの後で、前記基材層にコーティング膜を形成するコーティングステップを含むことを特徴とする。
【0060】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記非放射性化合物形成ステップが、液状沈殿法により非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を合成する合成ステップと、前記合成ステップの後で、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を300~600℃の範囲でか焼させて水酸基及び水分子を除去し、無定形を形成する1次か焼ステップと、前記1次か焼ステップの後で、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するために不活性ガスの投入下に還元焼成をする2次還元焼成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0061】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記不動態化皮膜ステップは、有機酸金属キレート化合物を製造する有機酸金属キレート化合物製造ステップと、前記有機酸金属キレート化合物製造ステップの後で、分散ゾルを形成する分散ゾル形成ステップを含むことを特徴とする。
【0062】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記有機酸金属キレート化合物製造ステップは、遷移金属を含む前駆体を有機酸溶媒に溶解させて、60~80℃で4~5時間の間撹拌してリフラックス(Reflux)させることを特徴とする。
【0063】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記分散ゾル形成ステップが、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物20~30重量%と、分散剤1~10重量%と、有機酸金属キレート化合物5~10重量%を含む分散ゾルを形成することを特徴とする。
【0064】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記コーティングステップが、コーティングゾルを形成するコーティングゾル形成ステップと、前記コーティングゾル形成ステップの後で、前記コーティングゾルを前記基材層に塗布するコーティングゾル塗布ステップと、前記コーティングゾル塗布ステップの後で、コーティングゾルが塗布された基材層を熱風乾燥及び紫外線硬化させる乾燥硬化ステップとを含むことを特徴とする。
【0065】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記コーティングゾル形成ステップが、分散ゾル40~50重量%と、バインダー40~50重量%と、有機溶剤10~20重量%を含むコーティングゾルを形成することを特徴とする。
【0066】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記バインダーが、光重合体として紫外線照射により光重合を起こすオリゴマー(Oligomer)、モノマー(Monomer)、光開始剤を含むことを特徴とする。
【0067】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記有機溶剤が、メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone)、トルエン(Toluene)、エチルアセテート(Ethyl Acetate)、イソプロピルアルコール(Iso Propyl Alcohol)、エチルセロソルブ(Ethyl Cellosolve)、イソブチルアルコール(Isobutyl Alcohol)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)、エタノール(Ethanol)、ブチルセロソルブ(Butyl Cellosolve)、キシレン(Xylene)、1-オクタノール(1-Octanol)、ジエチレングリコール(Diethylene Glycol)、ニトロベンゼン(Nitrobenzene)のうち、いずれか1つ以上を含むことを特徴とする。
【0068】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記コーティングゾル塗布ステップは、マイクログラビア(Micro Gravure)コーティング、ナイフ(Knife)コーティング、及びロールツーロール(Roll to Roll)コーティングのうち、いずれか1つを使用することを特徴とする。
【0069】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記コーティングゾル塗布ステップは、コーティング塗膜の厚さを3~4μmにすることを特徴とする。
【0070】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記熱遮蔽フィルム製造方法は、前記熱遮蔽層形成ステップの後で、前記熱遮蔽層の一面に粘着層を形成する粘着層形成ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0071】
本発明の更に他の実施例によれば、本発明は、前記熱遮蔽フィルム製造方法は、前記粘着層形成ステップの後で、前記粘着層の一面に離型紙を付着する離型紙付着ステップをさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0072】
本発明は先の実施態様と、以下に説明する構成、結合、関連性により、次のような効果を得ることができる。
【0073】
本発明は、基材層の一面に形成される熱遮蔽層を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で構成して、放射線に対する有害性がなく、優環境的な熱遮蔽フィルムを提供する効果を有する。
【0074】
本発明は、前駆体をなす元素を安定同位元素で構成し、相対的に低い温度及び低いエネルギー状態で合成を進行して、放射性物質の生成を遮断する、非放射性熱遮蔽フィルムを提供する効果が導かれる。
【0075】
本発明は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するようにして、相対的に小さな1次粒径を有することによって、化合物の製造時、焼成過程で粒子サイズの増大の問題が発生しないようにする効果がある。
【0076】
本発明は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するようにして、ヘイズを根本的に遮断することによって、完成された熱遮蔽フィルムで散乱現象によってぼやけて見える問題の発生を防止する効果を有する。
【0077】
本発明は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が
、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するようにして、無機物熱遮蔽材料の光学的特性を極大化することによって、可視光線透過率及び赤外線遮断率を改善した熱遮蔽フィルムを提供する効果が導かれる。
【0078】
本発明は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を
合成条件が簡単な液状沈殿法により製造して、粒子生成及び粒子サイズの制御が容易となるようにすることで、均一なナノサイズの粒子を有する熱遮蔽フィルムを提供する効果がある。
【0079】
本発明は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を300~600℃の範囲でか焼させて、水酸基及び水分子は完全に除去しながら粒子の成長は最小化してナノサイズ粒子を得ることができるようにする効果を有する。
【0080】
本発明は、不活性ガスの投入下に還元焼成を進行して、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造が形成されるようにし、酸素の空いている個所に非放射性アルカリ金属元素または非放射性アルカリ土金属元素をより稠密に代置させて赤外線吸収特性を有するようにする効果が導かれる。
【0081】
本発明は、還元焼成を進行する際、爆発の危険性がある水素ガスを使用せずに、不活性ガスを使用することによって、作業上の危険を減らし、既存の焼成装備を用いて簡便に作業が進行できるようにする効果がある。
【0082】
本発明は、選択的反応性が優先で、かつ異種反応性はない有機酸金属キレート化合物(Organic Acid Metallic Chelate Compounds)を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の表面に形成するか、または分散ゾル内に分布させることによって、残留酸素(O、O2)流入による反応、残留水酸基(-OH)による反応、残留ラジカル(Radical)による反応などを、前記有機酸金属キレート化合物が効果的に遮断するようにして、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の耐熱性、耐久性などの問題を補完する効果を有する。
【0083】
本発明は、不動態化皮膜の役割をする有機酸金属キレート化合物をリフラックス(Reflux)法により製造するようにして、所望の目的に合う化合物を既存の設備でも簡単に製造できるようにする効果が導かれる。
【0084】
本発明は、塗布された塗膜の乾燥及び硬化のために熱風乾燥及び紫外線照射がなされる場合、120℃以上の温度に基材層が晒されることによって変形が発生することがある問題を、熱変形温度が高く、寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)で基材層を構成して解決する効果がある。
【0085】
本発明は、分散ゾル内の非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の含有量を20~30重量%になるように構成して、十分な光学的特性が発揮されるようにし、分散時間を減らして分散剤の変形を防止する効果を有する。
【0086】
本発明は、分散ゾル内の分散剤の含有量は1~10重量%になるようにして、十分な分散ゾルを得て、コーティングされた表面を乾燥させる時、乾燥できなかった分散剤がコーティングの表面に残存してコーティングの表面の不良を起こさないようにする効果が導かれる。
【0087】
本発明は、分散ゾル内の有機酸金属キレート化合物の含有量を5~10重量%で構成して、可視光線透過率及び赤外線遮蔽率などの光学的特性をあまり落とさずに、かつ非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を格段に向上させる効果がある。
【0088】
本発明は、ボールミル法により分散ゾルを形成するようにすることで、凝集された粉末を容易に分散させ、分散ゾル形成を簡便にし、大量生産可能にする効果を有する。
【0089】
本発明は、コーティングゾル内の分散ゾルの含有量が40~50重量%になるようにすることで、フィルムの光学的特性及び塗膜付着力を高めて、表面耐スクラッチ性を向上させる効果が導かれる。
【0090】
本発明は、光重合体として紫外線照射により光重合を起こすオリゴマー(Oligomer)、モノマー(Monomer)、光開始剤をコーティングゾルに含んで、コーティングゾルと基材層との結合力を増進させ、塗膜の厚さを微細に調節できるようにする効果がある。
【0091】
本発明は、基材層に塗布されたコーティング塗膜の厚さを3~4μmに構成して、光学的特性を維持しながら表面耐スクラッチ性を高めて、表面クラック発生を防ぎ、基材層との付着力を向上させる効果を有する。
【0092】
本発明は、熱遮蔽層の一面に粘着層を構成して、フィルムが建物または車両などに容易に接着できるようにする効果が導かれる。
【0093】
本発明は、粘着層の一面に離型紙を付着して粘着層の一面が離型紙により保護されるようにする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図2】本発明の一実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムに関する図面。
【
図3】本発明の他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムに関する図面。
【
図4】本発明の更に他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムに関する図面。
【
図5】本発明の一実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法に関する図面。
【
図7】
図6の非放射性化合物形成ステップに関する図面。
【
図10】本発明の他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法に関する図面。
【
図11】本発明の更に他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法に関する図面。
【
図12】実施例3の液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素セシウムタングステン酸化物(
(133)Cs
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))粒子のSEM写真。
【
図13】実施例1の液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物(
(39、41)K
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))粒子のSEM写真。
【
図14】実施例3の液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素セシウムタングステン酸化物(
(133)Cs
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))の結晶を示すXRDグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下、本発明に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム及びその製造方法の好ましい実施例を添付した図面を参考にして詳細に説明する。下記で本発明を説明するに当たって、公知の機能または構成に対する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすることがあると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。特別な定義がない限り、本明細書の全ての用語は本発明が属する技術分野の通常の知識を有する技術者が理解する当該用語の一般的な意味と同一であり、仮に本明細書で使われた用語の意味と衝突する場合には本明細書で使われた定義に従う。
【0096】
図2は本発明の一実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムに関する図面であって、
図2を参考にして説明すると、本発明の非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム1は、基材層10及び熱遮蔽層30を含む。
【0097】
前記基材層10は、熱遮蔽層30がコーティングされる一面を提供する構成で、後述する熱遮蔽層30を支持する。前記基材層10にはポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ナイロン(Nylon)、ポリプロピレン(Polypropylene)などを使うことができる。一般に、前記基材層10上に熱
遮蔽層30が塗布された後では、塗布された塗膜の乾燥及び硬化のために熱風乾燥及び紫外線照射が行われる。その際、前記基材層10は120℃以上の温度に晒されることがあるが、一般的なプラスチック基材だけでは固有の熱変形温度により基材層10自体で変形が発生することがある。したがって、前記基材層10は熱変形温度が高く、寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)で構成することが好ましい。
【0098】
前記熱遮蔽層30は、前記基材層10の一面に形成されて外部の日射熱及び内部の輻射熱が流入または放出されることを防止する構成をいう。前記熱遮蔽層30は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含む。
【0099】
同位元素(Isotope)とは、原子番号は同一であるが、質量数(陽子数と中性子数との和)が異なる元素を意味するものであって、核をなす中性子の数は異なるが、陽子の数は同一であるので、原子番号が同一であり、化学的性質も同一な元素をいう。放射性同位元素(Radioactive Isotope)とは、ある元素の同位元素のうち、核が不安定で、より安定な状態に変わる過程でエネルギーを有する粒子(放射線)を放出することによって放射性崩壊(Radioactive Decay)をする同位元素をいい、反対に、非放射性同位元素とは、ある元素の同位元素のうち、核が安定で、放射線を放出しない同位元素をいう。本発明はこのような非放射性同位元素を用いて熱遮蔽層30を構成することによって、放射線を放出しない人体に無害な優環境型フィルムを提供しようとする。
【0100】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は、酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系(Hexagonal)型構造を形成することができる。六方晶(Hexagonal Close Packed、HCP)または六方晶系とは、結晶学で3個のベクトルで描写される7結晶系のうちの1つであって、六方晶系は正六角形を底面とするプリズムのような形態を有する。六方晶系構造は稠密六方晶と称し、この構造の特徴は、ある一層の原子はその上層または下層の3個の原子孔隙に位置するという点である。その結果、1つの原子はその上層の3原子、該当層の6原子、及びその下層の3原子と接触するようになる。前記六方晶系構造は1単位胞に6個の原子を有し、配位数が12であり、74%の原子充填率(Atomic Packing Factor、APF)を有する。
【0101】
アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムティンオキサイド(ITO)、タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)のような無機物熱遮蔽材料は、1次粒径(Particle Size)が100nm以内であれば、実際に分散ゾルで製造した時、平均粒度分布が100nm以上になる場合が多い。100nm以上の平均粒度分布を有する分散ゾルはヘイズ(Haze)を有し、フィルムで製作された時、散乱現象によりぼやけて見えるようになる。
【0102】
しかしながら、前記(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系(Hexagonal)型構造は、相対的に小さな1次粒径を有するため、化合物の製造時、焼成過程中、粒子のサイズが増大する問題がない。したがって、前記(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系(Hexagonal)型構造は既存の無機物熱遮蔽材料の光学的特性を極大化しながらぼやけて見える外観上の問題を解決する。実際に、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の粒子サイズは20~30nmで、粒子サイズ100nm級で発生するヘイズを根本的に遮断するようになる。
【0103】
前記(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系(hexagonal)型構造で、前記(Y)Aは安定同位元素を有する非放射性アルカリ金属元素及び/又は非放射性アルカリ土金属元素で、(23)Na、(39、41)K、(85)Rb、(133)Cs、(24、25、26)Mg、及び(42、43、44)Caのうち、いずれか1つ以上の元素を含むことができる。前記(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系(hexagonal)型構造で前記Xは還元焼成に従う(Y)Aにドーピング(Doping)される元素の数を示し、YはAの質量数、(3-n)は酸素の欠乏を意味する。
【0104】
例えば、アルカリ金属のうち、セシウム(Cesium、Cs)は原子量112~151の間に、計40個の同位元素が知られており、自然界に存在するセシウムは殆どが、質量数が133である133Csで、前記133Csは唯一に放射線を出さない非放射性安定同位元素である特徴がある。したがって、前記熱遮蔽層30の形成時、前記133Csを用いることができ、その際、前記(Y)Aは前記(133)Csと見ることができる。
【0105】
また、自然界に存在するタングステン(Tungsten、W)は放射線を出さない非放射性安定同位元素で、182W、183W、184W、186Wが存在し、前記熱遮蔽層30を形成するときにこれらを用いることができ、その際、前記(182、183、184、186)Wは前記(182)W、(183)W、(184)W、(186)Wと見ることができる。
【0106】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は、液状沈殿法により合成できる。液状沈殿法によれば、所望の元素の前駆体を容易に溶媒に溶解させて、溶解された反応物の反対になる酸価(pH)を一定量投入すれば、沈殿及び析出が起こし、この過程中に温度、溶媒、積荷物質、反応時間などの調節により所望の無機化合物が合成できるようになる。その際、反応器は特別に制限されず、熱源の設備も制限がなくて、既存の設備が十分に活用できるようになる。
【0107】
液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物は、水酸基(-OH)のある状態で存在しているので、水酸基及び水分子を完全に除去するために1次か焼(Calcine)を経るようになる。
【0108】
か焼とは、ある物質を高温に加熱してその揮発成分の一部または全部を除去する操作で、以下の反応が進行できる。
【0109】
【0110】
前記1次か焼の温度は300~600℃の範囲で維持されることが好ましい。か焼温度が300℃未満の場合には、水酸基(-OH)及び水分子を完全に除去することができないので、水酸基及び水分子が残存することがあり、水酸基及び水分子が残存すれば、前述した六方晶系構造を形成できなくなる。また、か焼温度が600℃を超過する場合には粒子の成長が進行されてナノサイズ粒子を得ることができなくなり、最終の製品でヘイズが発生することがある。したがって、前記1次か焼の温度を、好ましくは400~600℃の範囲で維持することができ、より好ましくは400~500℃の範囲で維持することができる。
【0111】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の結晶欠陥は2次還元焼成(Reduction Firing)により誘導できる。
【0112】
還元焼成とは、燃焼で空気が充分に供給されなければ、不完全燃焼が起こって二酸化炭素または燃料の分解生成物の中にある水素が被加熱物に還元作用を起こす焼成方法であって、以下の反応が進行できる。
【0113】
【0114】
前記2次還元焼成は爆発の危険性がある水素ガスを使用せず、爆発の危険性がない不活性ガス(N2、Ar、Ne、CO3のうち、いずれか1つ以上を含み)を投入して還元させることによって、金属酸化物に酸素欠乏現象を与えることが好ましい。もし、水素ガスを使用すれば、ガスを注入しなければならない高価な特殊装備が必要になるだけでなく、水素ガスの注入条件が合わない場合には若干の酸素だけでも大きな爆発が発生することがあるため、これは作業上の危険を減らし、簡便に既存の焼成装備を利用できるようにするためである。このような2次還元焼成により形成された粉末は、濃い青色を帯びることがある。
【0115】
前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は非放射性安定同位元素であって、有害性のない優環境的な化合物を形成するために一般的な焼成及びか焼温度より低い温度に実施して、相対的に酸素が欠乏した欠陥のある多少弱い結晶構造を有するようになるため、耐熱性、耐久性などの問題がありえる。
【0116】
しかしながら、このような耐熱性、耐久性などの問題は不動態化皮膜(Passivation Film)により解決できる。
【0117】
不動態化皮膜とは、通常の化学反応性が喪失した状態の金属酸化皮膜をいう。具体的には、選択的反応性が優先で、かつ異種反応性のない有機酸金属キレート化合物(Organic Acid Metallic Chelate Compounds)を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の表面に形成するか、または分散ゾル内に分布させることによって、残留酸素(O、O2)の流入による反応、残留水酸基(-OH)による反応、残留ラジカル(Radical)による反応などを前記有機酸金属キレート化合物が効果的に遮断するようになって、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性、耐久性などの問題を解決できるようになる。
【0118】
【0119】
不動態化皮膜の役割をする前記有機酸金属キレート化合物は、上述の反応に表現されたように、R1-M-R2構造を有することができ、前記R1、R2は各々有機酸の本体である低分子型グルタミン酸(Glutamic Acid)または高分子型ナトリウムポリアスパーテート(Sodium Poly Aspartate)のうちのいずれか1つでありえ、前記R1、R2は互いに同一または相異することができる。好ましくは、前記Mは遷移金属であるCu、Ag、Zn、Ni、W、及びCoのうち、いずれか1つの元素でありうる。
【0120】
前記有機酸金属キレート化合物はリフラックス法(Reflux Method)により製造できる。具体的には、前記Cu、Ag、Zn、Ni、W、及びCoのうち、1種の元素を含有する前駆体を有機酸溶媒に溶解させて反応温度60~80℃で反応時間4~5時間の間撹拌(Agitation)してリフラックス(Reflux)させて製造できる。
【0121】
図3は本発明の他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムに関する図面であって、
図3の実施例は前述した
図2の実施例で粘着層50が追加された差異のみあるため、以下では前記粘着層50に対してのみ説明する。
【0122】
前記粘着層50は、前記熱遮蔽層30の一面に形成される構成をいう。前記粘着層50は、前記熱遮蔽層30を含む熱遮蔽フィルム1を建物または車両などに容易に接着できるようにする構成である。前記粘着層50の粘着性は主に高分子鎖の分子量、分子量分布、または分子構造の存在量に依存し、特に分子量により決定されるので、アクリル系共重合体(Acrylic Copolymer)は重量平均分子量が80万~20万のものが好ましい。一方、炭素数1~12のアルキル基を有するメタアクリレイトモノマーはアクリル系共重合体に90~99.9重量%で含まれることが好ましい。これは、前記メタアクリレイトモノマーがアクリル系共重合体に90重量%未満の場合には初期粘着力が低下するという問題があり、99.9重量%を超過する場合には凝集力の低下によって耐久性に問題が発生することがあるためである。
【0123】
図4は本発明の更に他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムに関する図面であって、
図4の実施例は前述した
図3の実施例で離型紙70が追加された差異のみであるため、以下では前記離型紙70に対してのみ説明する。
【0124】
前記離型紙70は前記粘着層50の一面に形成される構成であって、前記粘着層50の外部の表面を保護する。前記離型紙70は、好ましくはPET基材にシリコンコーティング処理されたフィルムを使用するようになる。もし、シリコンコーティング処理されていなければ、最終に製造された熱遮蔽フィルムをガラスに施工する時、前記粘着層50から前記離型紙70が分離できないことがあるためである。
【0125】
図5は本発明の一実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法に関する図面であって、以下では
図5を参考して、非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法(S1)について説明する。重複した説明を避けるために、前述した非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルム1に関する説明はその記載を省略または簡略にする。
【0126】
図5の実施例によれば、本発明である非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法(S1)は、基材層提供ステップ(S10)と、熱遮蔽層形成ステップ(S30)とを含む。
【0127】
前記基材層提供ステップ(S10)は、前記熱遮蔽層30が結合される前記基材層10を提供するステップをいう。前記基材層10は熱変形温度が高く、寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)で構成できる。
【0128】
前記熱遮蔽層形成ステップ(S30)は、前記基材層提供ステップ(S10)の後で、前記基材層10の一面に前記熱遮蔽層30を形成するステップをいう。前記熱遮蔽層30は非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を含み、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は酸素が欠乏した
(Y)A
x
(182、183、184、186)W
1O
(3-n)形態の六方晶系(Hexagonal)型構造を形成することができる。前記
(Y)A
x
(182、183、184、1
86)W
1O
(3-n)形態の六方晶系(hexagonal)型構造で、前記
(Y)Aは安定同位元素を有する非放射性アルカリ金属元素及び/又は非放射性アルカリ土金属元素で、
(23)Na、
(39、41)K、
(85)Rb、
(133)Cs、
(24、25、26)Mg、及び
(42、43、44)Caのうち、いずれか1つ以上の元素を含むことができる。
図6は
図5の熱遮蔽層形成ステップに関する図面であって、
図6を参考すると、前記熱遮蔽層形成ステップ(S30)は、非放射性化合物形成ステップ(S31)と、不動態化皮膜ステップ(S33)と、コーティングステップ(S35)とを含む。
【0129】
前記非放射性化合物形成ステップ(S31)は、六方晶系(Hexagonal)型非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物を生成するステップをいう。
図7は
図6の非放射性化合物形成ステップに関する図面であって、
図7を参考すると、このような前記非放射性化合物形成ステップ(S31)は、合成ステップ(S311)と、1次か焼ステップ(S313)と、2次還元焼成ステップ(S315)とを含む。
【0130】
前記合成ステップ(S311)は、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を合成するステップであって、好ましくは液状沈殿法によりなされることができる。非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物を合成条件が簡単な液状沈殿法により製造することによって、粒子生成及び粒子サイズの制御が容易で、均一なナノサイズの粒子を得ることができるようになる。
【0131】
具体的な例を挙げて説明すると、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物は、タングステン(W1)安定同位元素(182W、183W、184W、186W)のみで構成された塩化タングステン(WCl2)、タングステン酸(H2WO4)、タングステン酸ナトリウム2水和物(Na2WO4・2H2O)、タングステンヘキサイプロパノレート(C18H42O6W)、タングステンセレナイド(H2Se2W)、タングステンテルライド(WTe2)、タングステンボライド(BH2W)の中で、白色粉末のタングステン酸ナトリウム2水和物(Na2WO4・2H2O)30重量%と、(Y)Akに該当する陽性元素((Y)Na、(Y)K、(Y)Rb、(Y)Cs、(Y)Mg、及び(Y)Ca)のうち、カリウム安定同位元素(39K(93.3%)、41K(6.7%))だけで構成された水酸化カリウム(KOH)、塩化カリウム(KCl)、炭酸カリウム(KCO3)のうち、炭酸カリウム(KCO3)15重量%を蒸溜水のように四口フラスコ反応器に投入後、ヒーティングマントル(Heating Mantle)を用いて80℃を維持しながら3時間の間ゆっくり撹拌して無色透明な液体に完全に解離させ、滴下材料として有機酸であるフマル酸(Fumaric Acid)50重量%を蒸溜水に解離させて、先の前駆体が溶解しているフラスコ反応器に滴下漏斗(Dropping Funnel)を使用して、一定の速度で20分間滴下を進行させれば、無色透明であった溶液は順次、黄色粘稠液に形成され、一定時間の熟成後、反応を終了させてフィルタ及び副産物を洗浄することによって、灰白色反応物45重量%を取得することができる。
【0132】
前記1次か焼ステップ(S313)は、前記合成ステップ(S311)の後で、合成された非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物で水酸基(-OH)及び水分子を除去し、無定形を形成するために300~600℃の範囲でか焼を行うステップで、以下の反応で表現できる。
【0133】
【0134】
液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物は、水酸基(-OH)のある状態で存在しているので、水酸基及び水分子を完全に除去するために1次か焼(Calcine)を経る。前記1次か焼の温度は、300~600℃の範囲で維持されることが好ましい。か焼温度が300℃未満の場合には、水酸基(-OH)及び水分子を完全に除去できないので、水酸基及び水分子が残存することがあり、水酸基及び水分子が残存すれば前述した六方晶系構造を形成できなくなる。また、か焼温度が600℃を超過する場合には粒子の成長が進行されてナノサイズ粒子を得ることができなくなり、最終の製品でヘイズが発生することがある。したがって、前記1次か焼の温度は好ましくは400~600℃の範囲で維持することができ、より好ましくは400~500℃の範囲で維持できる。前記1次か焼ステップ(S313)を通じて、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)水和物で水酸基及び水分子は完全に除去しながら粒子の成長は最小化してナノサイズ粒子を得ることができる。
【0135】
前記2次還元焼成ステップ(S315)は、前記1次か焼ステップ(S313)の後で、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の酸素欠乏のために不活性ガスの投入下に還元焼成をするステップで、以下の反応で表現できる。
【0136】
【0137】
上記2次還元焼成ステップ(S315)で使われる不活性ガスは、N2、Ar、Ne、及びCO3のうち、いずれか1つ以上を含む。前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の結晶欠陥は、前記2次還元焼成ステップ(S315)により誘導できる。還元焼成とは、燃焼で空気が充分に供給されなければ不完全燃焼が起こって二酸化炭素または燃料の分解生成物の中にある水素が被加熱物に還元作用を起こす焼成方法をいう。前記2次還元焼成ステップ(S315)は爆発の危険性がある水素ガスを使用せず、爆発の危険性がない不活性ガス(N2、Ar、Ne、CO3のうち、いずれか1つ以上を含み)を投入して還元させることによって、金属酸化物に酸素欠乏現象を与える。もし、水素ガスを使用すれば、ガスを注入しなければならない高価な特殊装備が必要になるだけでなく、水素ガスの注入条件が合わない場合には若干の酸素だけでも大きな爆発が発生することがあるため、これは作業上の危険を減らして簡便に既存の焼成装備を利用できるようにするためである。このような2次還元焼成により形成された粉末は濃い青色を帯びることがある。
【0138】
前記不動態化皮膜ステップ(S33)は、前記非放射性化合物形成ステップ(S31)の後で、耐熱性及び耐久性を向上させるために、前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物に不動態化皮膜を形成するステップをいう。前記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は非放射性安定同位元素であって、有害性のない優環境的な化合物を形成するために一般的な焼成及びか焼温度より低い温度に実施して、相対的に酸素が欠乏した欠陥のある多少弱い結晶構造を有するようになるため、耐熱性、耐久性などの問題が生じる場合がある。したがって、このような耐熱性、耐久性などの問題は前記不動態化皮膜ステップ(S33)により解決されるようになる。不動態化皮膜とは、通常の化学反応性が喪失した状態の金属酸化皮膜をいう。具体的には、選択的反応性が優先で、かつ異種反応性はない有機酸金属キレート化合物(Organic Acid Metallic Chelate Compounds)を非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の表面に形成するか、または分散ゾル内に分布させることによって、残留酸素(O、O2)の流入による反応、残留水酸基(-OH)による反応、残留ラジカル(Radical)による反応などを前記有機酸金属キレート化合物が効果的に遮断するようになって、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性、耐久性などの問題が解決できるようになる。
【0139】
【0140】
不動態化皮膜の役割をする上記有機酸金属キレート化合物は、上述の反応に表現されるように、R
1-M-R
2構造を有することができる。上記R
1、R
2は各々有機酸の本体である低分子型グルタミン酸(Glutamic Acid)または高分子型ナトリウムポリアスパーテート(Sodium Poly Aspartate)のうちのいずれか1つでありえ、上記R
1、R
2は互いに同一または相異することができる。好ましくは、上記Mは遷移金属であるCu、Ag、Zn、Ni、W,及びCoのうち、いずれか1つの元素でありえる。上記有機酸金属キレート化合物はリフラックス法(Reflux Method)により製造できる。具体的には、上記Cu、Ag、Zn、Ni、W、及びCoのうち、1種の元素を含有する前駆体を有機酸溶媒に溶解させて反応温度60~80℃で反応時間4~5時間の間撹拌(Agitation)してリフラックス(Reflux)させて製造できる。不動態化皮膜の役割をする有機酸金属キレート化合物をリフラックス(Reflux)法により製造するようにして、所望の目的に合う化合物を既存の設備でも簡単に製造できるようになる。
図8は
図6の不動態化皮膜ステップに関する図面であって、
図8を参考すると、このような上記不動態化皮膜ステップ(S33)は、有機酸金属キレート化合物製造ステップ(S331)、分散ゾル形成ステップ(S333)を含む。
【0141】
上記有機酸金属キレート化合物製造ステップ(S331)は、有機酸金属キレート化合物を製造するステップであって、上記有機酸金属キレート化合物はリフラックス(Reflux)法により製造できる。具体的には、遷移金属選択群のうち、1種の元素を含有する前駆体を有機酸溶媒に溶解させて反応温度60~80℃で反応時間4~5時間の間撹拌してリフラックス(Reflux)させて製造できる。上記リフラックス法によれば、不動態化皮膜の役割をする有機酸金属キレート化合物を既存の設備でも簡単に製造できるようになる。
【0142】
上記分散ゾル形成ステップ(S333)は、上記有機酸金属キレート化合物製造ステップ(S331)の後で分散ゾルを形成するステップをいう。上記分散ゾルは、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物と、分散剤と、有機酸金属キレート化合物と、溶媒(有機溶剤)を含むことができる。
【0143】
上記分散ゾル内の上記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の含有量は20~30重量%となることが好ましい。上記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の含有量が20重量%未満の場合には、最終の塗膜形成時、低い厚さで十分な光学的特性を発揮できなく、上記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の含有量が30重量%を超過する場合には、高い固形分によって所望のナノ分散ゾルの粒度サイズに到達するために相対的に多い分散時間がかかるためである。分散時間が長くなることが分散剤の変形を起こし、次の工程であるコーティングゾル製造で問題を引き起こすことがある。後述するコーティングゾルを製造するためには高分子バインダーが含まれるが、過度な分散時間を通じて製造された分散ゾルと上記高分子バインダーが混合される場合、相互間の親和性が低下して、層の分離、ミクロショック、経時変化によるゲル化などの問題が発生する。
【0144】
上記分散ゾル内の上記分散剤の含有量は1~10重量%となることが好ましい。上記分散剤が1重量%未満の場合には、十分な分散ゾルを得ることができず、上記分散剤が10重量%を超過する場合にはコーティングされた表面を乾燥させる時、乾燥できなかった分散剤がコーティングの表面に残存するようになり、コーティングの表面の不良を引き起こすことがある。
【0145】
上記分散ゾル内の上記有機酸金属キレート化合物の含有量は5~10重量%となることが好ましい。上記有機酸金属キレート化合物の含有量が5重量%未満の場合には不動態化皮膜現象が正しく発揮できなくて非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を格段に向上させることができなく、上記有機酸金属キレート化合物の含有量が10重量%を超過する場合には非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の光学特性のうち、可視光線透過率を落とすことがあるので、高透過高効率熱遮蔽フィルム製造が難しくなる。
【0146】
フィルムは可視光を透過させる必要があるが、上記非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物は、凝集されている形態を有するため、その粒子は分散していることが好ましい。このために、上記分散ゾル形成ステップ(S333)は簡便で、かつ大量生産に容易なボールミル(Ball Mill)法により粒子を分散させながら分散ゾルを形成することができる。
【0147】
具体的には、凝集された状態の非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物粉末、溶媒(有機溶剤)、分散剤などを円筒形分散器に投入し、ジルコニウムビッド(Zirconium Bid)を円筒形分散器体積の60%以上を投入した後、上記円筒形分散器を一定速度で回転させることによりなされる。その際、円筒形分散器の内部の全ての内容物が回転するようになり、特に、上記ジルコニウムビッドは、凝集していた分散しようとする粉末に直接、表面衝撃及び表面剪断力を伝達して物理的エネルギーを加えると共に、表面グラインディング(Grinding)が誘導されるため、一定時間が経過すれば1次粒径より小さなサイズのナノ粒子に分散され、最終的には光学的特性が発揮できるようになる。
【0148】
結局、上記分散ゾル形成ステップ(S333)では、化合物の凝集を分離させ、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を向上させる有機酸金属キレート化合物が液状状態で共に分布しているか、または表面に形成するようになる。
【0149】
上記コーティングステップ(S35)は、上記不動態化皮膜ステップ(S33)の後で上記基材層10にコーティング膜を形成するステップをいう。
図9は
図6のコーティングステップに関する図面であって、
図9を参考すると、このような上記コーティングステップ(S35)は、コーティングゾル形成ステップ(S351)、コーティングゾル塗布ステップ(S353)、乾燥硬化ステップ(S355)を含む。
【0150】
上記コーティングゾル形成ステップ(S351)はコーティングゾルを形成するステップであって、上記コーティングゾルは分散ゾル、バインダー、有機溶剤を含むことができる。
【0151】
上記コーティングゾルで上記分散ゾルの含有量は40~50重量%となることが好ましい。上記分散ゾルの含有量が40重量%未満の場合、フィルムの光学的特性が落ちるようになり、上記分散ゾルの含有量が50重量%を超過する場合、バインダーの比率が低くなって塗膜付着力が落ちるか、または表面耐スクラッチ性が落ちることがあるためである。より好ましくは、上記分散ゾルは40~50重量%、上記バインダーは40~50重量%、上記有機溶剤は10~20重量%で構成できる。
【0152】
上記コーティングゾルにおいて、上記バインダーは基材であるプラスチックフィルムと結合を容易にし、塗膜の厚さを調節できるようにする。上記バインダーは、光重合体として紫外線照射により光重合を起こすオリゴマー(Oligomer)、モノマー(Monomer)、光開始剤で構成することができる。
【0153】
上記コーティングゾルにおいて、上記有機溶剤は、メチルエチルケトン(Methyl EthylKetone)、トルエン(Toluene)、エチルアセテート(Ethyl Acetate)、イソプロピルアルコール(Iso Propyl Alcohol)、エチルセロソルブ(Ethyl Cellosolve)、イソブチルアルコール(Iso butyl Alcohol)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)、エタノール(Ethanol)、ブチルセロソルブ(Butyl Cellosolve)、キシレン(Xylene)、1-オクタノール(1-Octanol)、ジエチレングリコール(Diethylene Glycol)、ニトロベンゼン(Nitrobenzene)のうち、いずれか1つ以上を含むことができる。
【0154】
上記コーティングゾル塗布ステップ(S353)は、上記コーティングゾル形成ステップ(S351)の後で上記コーティングゾルを上記基材層10に塗布するステップをいう。好ましくは、上記コーティングゾル塗布ステップ(S353)は、マイクログラビア(Micro Gravure)コーティング、ナイフ(Knife)コーティング、及びロールツーロール(Roll to Roll)コーティングのうち、いずれか1つを使用することができ、より好ましくは、大面積コーティングにおいて最も平坦な塗膜表面を示し、相対的に生産性の高いマイクログラビアコーティングを使用することができる。
【0155】
塗布されたコーティング塗膜の厚さは3~4μmにすることが好ましい。コーティング塗膜の厚さが3μm未満の場合には光学的特性が発揮できなく、表面耐スクラッチ性が落ちるデメリットが生じ、コーティング塗膜の厚さが4μm超過の場合には、ハードな紫外線コーティング層が形成されて表面にクラックが発生するか、または上記基材層10との付着力が落ちることがある。
【0156】
上記乾燥硬化ステップ(S355)は、上記コーティングゾル塗布ステップ(S353)の後でコーティングゾルが塗布された基材層10を熱風乾燥及び紫外線硬化させるステップをいう。
【0157】
図10は本発明の他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法に関する図面であって、
図10の実施例は前述した
図5の実施例で上記熱遮蔽層形成ステップ(S30)の以後、粘着層形成ステップ(S50)が追加された特徴があるため、以下では上記粘着層形成ステップ(S50)について説明する。
【0158】
上記粘着層形成ステップ(S50)は、上記熱遮蔽層形成ステップ(S30)の後で上記熱遮蔽層30の一面に粘着層50を形成するステップをいう。上記粘着層50の粘着性は主に高分子鎖の分子量、分子量分布、または分子構造の存在量に依存し、特に分子量により決定されるので、アクリル系共重合体(Acrylic Copolymer)は重量平均分子量が8
0万~20万のものが好ましい。一方、炭素数1~12のアルキル基を有するメタアクリレイトモノマーは、アクリル系共重合体に90~99.9重量%で含まれることが好ましい。これは、上記メタアクリレイトモノマーがアクリル戒共重合体に90重量%未満の場合には初期粘着力が低下するという問題があり、99.9重量%を超過する場合には凝集力の低下によって耐久性に問題が発生することがあるためである。上記粘着層50により熱遮蔽フィルム1は建物または車両などに容易に接着できる。
【0159】
図11は本発明の更に他の実施例に従う非放射性安定同位元素を用いた優環境熱遮蔽フィルムの製造方法に関する図面であって、
図11の実施例は
図10の実施例で上記粘着層形成ステップ(S50)の後で離型紙付着ステップ(S70)が追加された特徴がある。
【0160】
上記離型紙付着ステップ(S70)は、上記粘着層形成ステップ(S50)の後で上記粘着層50の一面に離型紙70を付着するステップをいう。上記離型紙70は、上記粘着層50の一面に形成される構成であって、上記粘着層50の外部表面を保護する。上記離型紙70は、好ましくはPET基材にシリコンコーティング処理されたフィルムを使用するようになる。もし、シリコンコーティング処理されていなければ、最終の製造された熱遮蔽フィルムをガラスに施工する時、上記粘着層50から上記離型紙70が分離できないこともあるためである。上記離型紙付着ステップ(S70)を通じて上記粘着層50の一面は上記離型紙70を通じて保護できる。
【0161】
以下では、熱遮蔽フィルムを非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で構成する場合、放射性に対する安定性、可視光線透過率、赤外線遮断率が改善されるという点と、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の耐熱性及び耐久性は不動態化皮膜を通じて向上するという点を具体的な実施例を挙げて説明する。
【0162】
(1)試片の準備
【0163】
1)実施例1
【0164】
-非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の生成
【0165】
白色粉末のタングステン酸ナトリウム2水和物(Na2WO42H2O)30重量%と、炭酸カリウム(KCO3)15重量%を蒸溜水と共に四口フラスコ反応器に投入後、ヒーティングマントル(Heating Mantle)を用いて80℃を維持しながら3時間の間ゆっくり撹拌して無色透明な液体に完全に解離させ、滴下材料として有機酸であるフマル酸(Fumaric Acid)50重量%を蒸溜水に解離させて、前駆体が溶解されているフラスコ反応器に滴下漏斗(Dropping Funnel)を使用して一定の速度で20分間滴下を進行させれば、無色透明であった溶液は順次に黄色粘稠液に形成される。一定時間熟成後、反応を終了させてフィルタ及び副産物を洗浄して灰白色反応物45重量%を取得する。上記のように得られた水和物状態のカリウムタングステン酸化物を得た後、1次か焼のために400℃の温度で約1時間の間焼成した。以後、得られた非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物は、格子欠陥及び六方晶系(Hexagonal)型結晶を形成するために電気炉の内部は窒素(N2)ガスで詰めて、温度600℃で2時間の間維持した後、自然冷却させて2次還元焼成を終了すれば、青い色の非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))を取得する。
【0166】
-有機酸金属キレート化合物の生成
【0167】
有機酸金属キレート化合物の前駆体は塩化アンモニウム亜鉛30重量%とエタノール(Ethanol)をリフラックス(Reflux)反応器に投入し撹拌させて無色透明な液状に形成し、その際、低分子グルタミン酸(Glutamic Acid)40重量%を投入させ、反応温度を60℃に維持し、4時間の間反応させて灰白色の粘稠液を形成し、反応終了後、フィルタ及び副産物などを洗浄して乾燥させて灰白色の粉末である有機酸金属キレート化合物を取得する。
【0168】
-分散ゾル製造
【0169】
このように得られた粉末を分散ゾル形態に製造するために還元焼成された非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))粉末20重量%、有機酸亜鉛キレート5重量%、分散剤0.5重量%と、有機溶媒74.5重量%を入れて、0.5mmジルコニウムビッドを全体体積に60%を入れてボールミルを行う。この時分散時間は72時間の間行った。
【0170】
-コーティングゾル製造
【0171】
光重合体バインダー50重量%に分散ゾル40重量%を入れた後、有機溶剤にメチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone、MEK)10重量%を投入させてコーティングゾルを完成する。
【0172】
-コーティング膜形成
【0173】
完成されたコーティングゾルは基材層であるPETフィルムの上にコーティングさせて塗膜の厚さを3~4μmになるようにする。
【0174】
-粘着層形成及び離型紙付着
【0175】
熱遮蔽層がコーティングされた背面に6~7μm厚さで粘着層を形成して離型紙と合紙して最終の熱遮蔽フィルムを完成するようになる。
【0176】
-熱遮蔽フィルムの準備
【0177】
上記熱遮蔽フィルムを横145mm×縦145mmに切断して実施例1を準備した。
【0178】
2)実施例2
【0179】
実施例1において、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物粉末合成過程中で、出発原料である炭酸カリウム(KCO3)の代わりに、ナトリウム安定同位元素(23Na)だけで構成された炭酸ナトリウム(Na2CO3)15重量%を投入すること以外には、実施例1と同一の条件で実施例2を準備した。
【0180】
即ち、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))の組成で、陽性元素が既存のカリウムからナトリウムに交替投入されて非放射性安定同位元素ナトリウムタングステン酸化物((23)Nax
(182、183、184、186)WO(3-n))になった。
【0181】
3)実施例3
【0182】
実施例1において、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物粉末合成過程中で、出発原料に炭酸カリウム(KCO3)の代わりに、セシウム安定同位元素(133Cs)だけで構成された炭酸セシウム(Cs2CO3)15重量%を投入すること以外には、実施例1のような条件で実施例3を準備した。
【0183】
即ち、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))組成で陽性元素が既存のカリウムからセシウムに交替投入されて非放射性安定同位元素セシウムタングステン酸化物((133)Csx
(182、183、184、186)WO(3-n))になった。
【0184】
4)実施例4
【0185】
実施例1において、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))粉末合成過程中、還元焼成ステップで窒素の代わりに、アルゴンガスを投入し、有機酸金属キレート粉末合成過程中、塩化アンモニウム亜鉛30重量%の代わりに、塩化銅2水和物30重量%を投入すること以外には、実施例1と同一の条件で実施例4を準備した。
【0186】
即ち、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))の還元焼成ステップで既存の窒素からアルゴンガスに交替投入され、有機酸金属キレートが既存の亜鉛から銅に交替投入された。
【0187】
5)実施例5
【0188】
実施例1において、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))分散ゾル製造過程中、還元焼成された粉末20重量%、有機酸亜鉛キレート9重量%、分散剤1.0重量%と有機溶媒70重量%に最終の分散ゾル固形分が30重量%になるようにすること以外には、実施例1のような条件で実施例5を準備した。
【0189】
即ち、有機酸亜鉛キレートを既存の5重量%から10重量%に固形分を高くした。
【0190】
6)実施例6
【0191】
実施例1において、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))分散ゾル製造過程中、還元焼成された粉末29重量%に分散剤1.0重量%と有機溶媒70重量%に最終の分散ゾル固形分が30重量%になるようにすること以外には、実施例1と同一の条件で実施例6を準備した。
【0192】
即ち、実施例1において分散ゾルに含有させた有機酸亜鉛キレートを除外した。
【0193】
7)比較例1
【0194】
実施例1において、非放射性安定同位元素である(39、41)Kを放射性同位元素である(40)Kに交替投入してカリウムタングステン酸化物((40)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))粉末を合成し、以外には実施例1と同一の条件で比較例1を準備した。
【0195】
即ち、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))の組成でアルカリ金属元素のうち、既存の非放射性安定同位元素である(39、41)Kを放射性同位元素である(40)Kに交替投入された。
【0196】
8)比較例2
【0197】
実施例2において、非放射性安定同位元素である(23)Naを、放射性同位元素である(24)Naに交替投入し、1次か焼時、既存の電気炉の代わりにマイクロ波炉で高出力(2,450MHz)を適用して放射性ナトリウムタングステン酸化物((24)Nax
(182、183、184、186)WO(3-n))粉末を合成し、以外には実施例2と同一の条件で比較例2を準備した。
【0198】
即ち、非放射性安定同位元素ナトリウムタングステン酸化物((23)Nax
(182、183、184、186)WO(3-n))の組成でアルカリ金属元素のうち、既存の非放射性安定同位元素である(23)Naを放射性同位元素である(24)Naに交替投入し、1次か焼を既存の加熱方式の代わりにマイクロ波の誘電加熱方式によりか焼した。
【0199】
(2)試験1-粒子サイズの観察
【0200】
- 試験目的
【0201】
本発明に従う非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の粒子サイズを測定
【0202】
- 試験条件
【0203】
粒子観察写真はHITACHI(JAPAN)S-2400 SEM(Scanning Electron Microscope)イメージであり、15kwで×50k~×100kw倍率で撮影したものである。
【0204】
- 結果考察
【0205】
図12は実施例3の液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素セシウムタングステン酸化物(
(133)Cs
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))粒子のSEM写真であって、
図12を参考すると、実施例3は小さな粒子が固まっている状態と見えるが、粒子単位当たりサイズを観察した結果、20~30nmであり、粒子形態は均一な丸い(Spherical)形態を表していることが確認された。
【0206】
一方、
図13は実施例1の液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物(
(39、41)K
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))粒子のSEM写真であって、
図13を参考すると、実施例1の粒子サイズは約100~200nmであり、粒子形態は一定でなかった。
【0207】
即ち、非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))組成で陽性元素が既存のカリウムからセシウムに交替投入されて生成された非放射性安定同位元素セシウムタングステン酸化物((133)Csx
(182、183、184、186)WO(3-n))が粒子サイズ及び粒子形態においてより良好な結果を有することを知ることができるため、ヘイズを根本的に遮断することによって、完成された熱遮蔽フィルムで散乱現象によってぼやけて見える問題の発生を防止することには陽性元素をセシウムで構成することが有利であることを確認することができた。
【0208】
(3)試験2-XRD結晶性の観察
【0209】
-試験目的
【0210】
本発明に従う非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の六方晶系(Hexagonal)型結晶性確認
【0211】
-試験条件
【0212】
XRD観察はPHILIPS(Netherlands)、X'Pert-MPD Systemを使用して測定した。
【0213】
-結果考察
【0214】
図14は実施例3の液状沈殿法により合成された非放射性安定同位元素セシウムタングステン酸化物(
(133)Cs
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))の結晶を示すXRDグラフであって、
図14を参考すると、XRD値は0.0.2面で2θ23.6、0.2.0面で2θ28.12、1.1.2面で2θ33.82、2.0.2面で2θ36.91の値として非放射性安定同位元素セシウムタングステン化合物(
(133)Cs
x
(182、183、184、186)WO
(3-n))が六方晶系(Hexagonal)型結晶性を有することを確認することができた。
【0215】
即ち、非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物が酸素が欠乏した(Y)Ax
(182、183、184、186)W1O(3-n)形態の六方晶系型構造を形成するにつれて、相対的に小さな1次粒径を有することによって、化合物製造時、焼成過程で粒子サイズの増大問題が発生しないようになり、小さな粒子によりヘイズを基本的に遮断することによって、完成された熱遮蔽フィルムで散乱現象によってぼやけて見える問題の発生を防止した熱遮蔽フィルムが提供できるようになる。
【0216】
(4)試験3-光学的特性と耐久性及び生活放射性観察
【0217】
-試験目的
【0218】
*非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の製造過程に従う可視光線及び赤外線透過とヘイズ特性比較、耐久性、及び生活放射性を観察して生活優環境熱遮蔽材として性能を評価
【0219】
-試験条件
【0220】
可視光線及び赤外線透過とヘイズ観察はJASCO(JAPAN)650 UV/VIS SpectrometerでBaselineを空気中に設定して測定し、耐熱及び耐久性の観察は熱風乾燥器(SH-DO-149FG)を使用して温度120℃で72時間の間、放置した後、光学特性を再測定して変化率を示し、生活放射性観察はRD-200[Radon EYE、パルス型イオン化チャンバー、感度:0.5cpm/pci/l、測定範囲:0.1~99.99pci/l(3700Bq/m3)]を使用して1秒間1つの原子核が崩壊するときに放出される放射能の強度、即ちベクレル(Becquerel:Bq/m3)強度を測定した。
【0221】
-結果考察
【0222】
試験結果は以下の表1の通りである。(可視光線透過率は400~780nmの透過率を示したものであり、赤外線遮蔽率は780~2000nm透過率から100を引いた値で示しており、ヘイズは拡散透過率(Is)を全光透率(Is+Ir)で割って百分率で示した)
【0223】
【0224】
以下、表1を参考して説明する。
【0225】
実施例1と比較例1を見ると、比較例1は実施例1の非放射性安定同位元素カリウムタングステン酸化物((39、41)Kx
(182、183、184、186)WO(3-n))の組成でアルカリ金属元素のうち、既存の非放射性安定同位元素である(39、41)Kを放射性同位元素である(40)Kに交替投入した差異のみ存在し、実験結果、非放射性安定同位元素を使用した実施例1に比べて放射性同位元素を使用した比較例1でベクレル強度が高く示されて、熱遮蔽フィルムの周辺に多い放射線を放出していることが確認された。したがって、熱遮蔽フィルムを構成する時、非放射性安定同位元素を使用することが放射性物質の生成を防ぐことに有利であることが分かる。さらに、非放射性安定同位元素を使用した実施例1ではヘイズ値が0.72%に過ぎない一方、比較例1ではヘイズ値が1.55%に高く示されているため、非放射性安定同位元素を使用する場合、相対的に小さな粒子のサイズによってヘイズが遮断できることが確認された。
【0226】
実施例2と比較例2を見ると、比較例2は実施例2の非放射性安定同位元素である(23)Naを、放射性同位元素である(24)Naに交替投入し、1次か焼時、既存の電気炉の代わりにマイクロ波炉で高出力(2,450MHz)を適用して放射性ナトリウムタングステン酸化物((24)Nax
(182、183、184、186)WO(3-n))粉末を合成した差異のみ存在し、実験結果、非放射性安定同位元素を使用した実施例2の場合、ベクレル強度が51.8Bq/m3に相対的に少ない放射線が検出されたが、放射性同位元素を使用した比較例2の場合、ベクレル強度が225.7Bq/m3に大変高く示されたため、非放射性安定同位元素の使用により放射線を少なく放出する優環境熱遮蔽フィルムが構成できることが確認された。また、実施例2の場合、比較例2に比べて低いヘイズ値を示すので、非放射性安定同位元素の使用により完成された熱遮蔽フィルムで散乱現象によりぼやけて見える問題の発生が防止されることが確認された。
【0227】
比較例2では、1次か焼時、既存の電気炉の代わりにマイクロ波炉で高出力(2,450MHz)を適用したため、高いエネルギーによって、か焼時、極性材料の分子内双極子回転及び振動などの摩擦熱により熱エネルギーが発生し、秒当たり数十億回の極性変化により分子及び元素は不安定な状態にあるため、放射性同位元素は、分子間または元素間での人工的なエネルギーの生成にさらに起因して、瞬間的または微量の放射性同位元素を生成することと思われる。さらに物質の内部のエネルギーが1000℃以上になると粒子の凝集が起こり、これによって粒子のサイズが大きくなって最終フィルムのヘイズ数値が高まる。
【0228】
上記実施例3と上記実施例1とを比較すると、実施例3の場合は非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で陽性元素にセシウム(133Cs)
が使われて、実施例1の場合は陽性元素にカリウム((39、41)K)が使われた違いがある。
【0229】
その結果、実施例3が実施例1に比べてベクレル強度が低く、相対的に生活放射性に対する安定性が高く、陽性元素にセシウム(133Cs)を使用した時は、カリウム((39、41)K)を使用したときに比べて可視光線透過率が高く、特に赤外線遮蔽率が格段に向上し、耐熱性及び耐久性がやはり相対的に優れたことが立証された。
【0230】
上記実施例3と上記実施例2とを比較すると、実施例3の場合は非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物で陽性元素をセシウム(133Cs)
とし、実施例2の場合は陽性元素をナトリウム(23Na)で構成した違いがある。
【0231】
その結果、表1に示すように、陽性元素にセシウム(133Cs)を使用することがナトリウム(23Na)を使用することに比べて光学的特性を改善する側面で有利であることが確認された。耐熱性及び耐久性にも相対的な差異が認められ、この場合にも陽性元素にセシウム(133Cs)を使用することがより有利であった。
【0232】
上記実施例3と上記実施例4とを比較してみると、上記実施例3は非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten Bronze)化合物の還元焼成ステップで窒素ガスを使用し、有機酸金属キレートに亜鉛を使用し、上記実施例4は上記還元焼成ステップでアルゴンガスを使用し、有機酸金属キレートに銅を使用した違いがある。
【0233】
その結果、実施例4は実施例3に比べて可視光線透過率及び赤外線遮蔽率が落ちており、耐熱性及び耐久性も落ちた。
【0234】
上記実施例3と上記実施例5とを比較すると、実施例3では有機酸亜鉛キレートの含有量を5重量%にした一方、実施例5では有機酸亜鉛キレートの含有量を10重量%に高めた違いがある。
【0235】
その結果、有機酸金属キレートの含有量が高まれば、光学特性は多少落ちる傾向を見せるが、耐熱性及び耐久性は優れて維持されたことが立証された。
【0236】
上記実施例3と上記実施例6とを比較すると、実施例3の場合は有機酸金属キレートを含んでおり、実施例6の場合はこのような有機酸金属キレートを除外したものであって、有機酸金属キレートを全く添加しない実施例6で最も優れた可視光線透過率が示されたが、耐熱性及び耐久性で大きい問題点が発生することが確認された。
【0237】
即ち、優れた光学特性を有する非放射性安定同位元素タングステンブロンズ(Tungsten
Bronze)化合物の耐熱性及び耐久性を補完するためには、残留酸素(O、O2)の流入による反応、残留水酸基(-OH)による反応、残留ラジカル(Radical)による反応などを遮断するために有機酸金属キレートの添加が必要となることが分かる。
【0238】
以上の詳細な説明は本発明を例示するのである。また、前述した内容は本発明の好ましい実施例を示して説明することであり、本発明は多様な他の組合、変更、及び環境で使用することができる。即ち、本明細書に開示された発明の概念の範囲、著述した開示内容と均等な範囲及び/又は当業界の技術または知識の範囲内で変更または修正可能である。著述した実施例は本発明の技術的思想を具現するための最善の状態を説明するのであり、本発明の具体的な適用分野及び用途で要求される多様な変更も可能である。したがって、以上の発明の詳細な説明は開示された実施状態に本発明を制限しようとする意図ではない。また、添付した請求範囲は他の実施状態も含むものとして解析されるべきである。