IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マックスウェル テクノロジーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-84659リチウムイオンキャパシタのための電解質組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084659
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】リチウムイオンキャパシタのための電解質組成物
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/64 20130101AFI20220531BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20220531BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20220531BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220531BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20220531BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALN20220531BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALN20220531BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALN20220531BHJP
【FI】
H01G11/64
H01G11/62
H01G11/60
H01G11/86
H01G11/06
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030919
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2018545172の分割
【原出願日】2017-02-27
(31)【優先権主張番号】62/302,059
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/442,080
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508035757
【氏名又は名称】マックスウェル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマン サンタナム
(72)【発明者】
【氏名】シ シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】イエ シャンロン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ジアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウムイオンキャパシタのための電解質組成物及びリチウムイオンキャパシタの製造方法を提供する。
【解決手段】電解質は、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルアセトアミド、ハイドロフルオロエーテル分岐環状カーボネート、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート、ハイドロフルオロエーテル、フルオロエチレンカーボネート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1種類以上の添加剤及び/又は溶媒成分を含有する。電解質は、カーボネート系の溶媒、1種類以上の溶媒成分並びに/又はビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルアセトアミド、ハイドロフルオロエーテル分岐環状カーボネート、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート、ハイドロフルオロエーテル及びフルオロエチレンカーボネートの1種類以上を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、
アノードと、
上記カソードおよびアノードの間のセパレータと、
溶媒とリチウム塩と1種類以上の添加剤とを含有する電解質と、
を備え、
上記1種類以上の添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネー
ト(VEC)、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロエーテル分岐環
状カーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびこれらの組み合わせか
らなる群から選択され、上記電解質は、上記1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量%含有するリチウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
上記溶媒は、1種類以上のカーボネートを含む
請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項3】
上記1種類以上のカーボネートは、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカー
ボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチ
ルメチルカーボネート)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される
請求項2に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項4】
上記溶媒は、EC/PC/DEC、EC/DEC/DMC/EB、EC/EMC、EC/EMC/MP、EC/DEC/DMC/EMC、また
はEC/DMC/EBを含む
請求項3に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項5】
上記溶媒は、体積比が約3:1:4のEC/PC/DEC、体積比が約1:1:1:1のEC/DEC/DMC/EB
、体積比が約3:7のEC/EMC、体積比が約1:1:8のEC/EMC/MP、体積比が約1:1:1:2のEC/DEC/DMC/EMC、または体積比が約1:1:1のEC/DMC/EBを含む
請求項4に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項6】
上記溶媒は、MP(プロピオン酸メチル)、EB(酪酸エチル)、MB(酪酸メチル)、EA(酢酸エチル)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるエステルを含む
請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項7】
上記リチウム塩はLiPF6である
請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項8】
上記LiPF6は上記電解質に約0.8~1.4Mの濃度で存在する
請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項9】
上記LiPF6は上記電解質に約0.6~0.95Mの濃度で存在する。
請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項10】
カソードと、
アノードと、
上記カソードと上記アノードとの間のセパレータと、
溶媒とリチウム塩と1種類以上の添加剤とを含有する電解質と、
を備え、
上記1種類以上の添加剤は、アノードパッシベーション膜形成剤、カソード保護剤およ
び過充電保護剤、電解質安定剤、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、上記電解質は、上記1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量%含有する
リチウムイオンキャパシタ。
【請求項11】
上記添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、
フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネー
ト(HFEEC)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアノードパッシベー
ション膜形成剤である
請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項12】
上記添加剤はビニレンカーボネート(VC)である
請求項11に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項13】
上記添加剤はビニルエチレンカーボネート(VEC)である
請求項11に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項14】
上記添加剤はフルオロエチレンカーボネート(FEC)である
請求項11に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項15】
上記添加剤は、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)である
請求項11に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項16】
上記添加剤は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、
およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカソード保護剤および過充電保護剤である
請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項17】
上記添加剤はジメチルアセトアミド(DMAc)である
請求項16に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項18】
上記添加剤は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)である
請求項16に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項19】
上記添加剤はフルオロエチレンカーボネート(FEC)から選択される電解質安定剤であ

請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項20】
上記溶媒は、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)、DEC(ジ
エチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種類以上のカーボネートを含む
請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項21】
上記リチウム塩はLiPF6である
請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項22】
上記アノードは、乾燥粒子混合物から形成された自立型乾燥粒子電極である
請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項23】
カソードを設ける工程と、
アノードを設ける工程と、
上記カソードおよび上記アノードの間にセパレータを配置する工程と、
上記カソード、上記アノードおよび上記セパレータをハウジングに挿入する工程と、
電解質を上記ハウジングに加え、該電解質を上記カソードおよび上記アノードに接触させる工程とを含み、
上記電解質は、溶媒、リチウム塩、および1種類以上の添加剤を含有し、上記1種類以上の添加剤は、アノードパッシベーション膜形成剤と、カソード保護剤および過充電保護剤と、電解質安定剤と、これらの組み合わせとからなる群から選択され、上記電解質は上記1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量%含有する
リチウムイオンキャパシタの製造方法。
【請求項24】
上記アノードは、集電体と、乾燥粒子混合物から乾式の処理によって形成される電極フィルムとを備えた
請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
上記溶媒は1種類以上のカーボネートを含有する
請求項23に記載の製造方法。
【請求項26】
上記1種類以上のカーボネートは、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカー
ボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチ
ルメチルカーボネート)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される
請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
上記溶媒は、EC/PC/DEC、EC/DEC/DMC/EB、EC/EMC、EC/EMC/MP、EC/DEC/DMC/EMCまたはEC/DMC/EBを含む
請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
上記溶媒は、体積比が約3:1:4のEC/PC/DEC、体積比が約1:1:1:1のEC/DEC/DMC/EB
、体積比が約3:7のEC/EMC、体積比が約1:1:8のEC/EMC/MP、体積比が約1:1:1:2のEC/DEC/DMC/EMC、または体積比が約1:1:1のEC/DMC/EBを含む
請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
上記溶媒は、MP(プロピオン酸メチル)、EB(酪酸エチル)、MB(酪酸メチル)、EA(酢酸エチル)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるエステルを含む
請求項23に記載の製造方法。
【請求項30】
上記リチウム塩はLiPF6である
請求項23に記載の製造方法。
【請求項31】
上記LiPF6は上記電解質に約0.8~1.4Mの濃度で存在する
請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
上記LiPF6は上記電解質に約0.6~0.95Mの濃度で存在する
請求項30に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置、特にエネルギー貯蔵装置の電解質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類のエネルギー貯蔵装置が、電気機器に電力を供給するために使用することができる。そのような電気機器としては、例えば、キャパシタ、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッドおよび/または燃料電池が挙げられる。リチウムイオンキャパシタなどのエネルギー貯蔵装置は、その電解質組成物を改良して、キャパシタの電気的性能を改善することができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明、および、本発明によって達成する先行技術に対する利点を要約するために、本発明の特定の目的および利点がここに記載される。必ずしもそのような目的または利点の全てが本発明の特定の実施形態よって達成されるわけではない。したがって、例えば、当業者であれば、ここに記載される1つの利点または1群の利点を達成または最適化できる方法で、ここに記載または示唆されるその他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本発明を具体化または実施することができることを理解するであろう。
【0004】
第1の態様では、カソードと、アノードと、上記カソードおよびアノードの間のセパレ
ータと、溶媒とリチウム塩と1種類以上の添加剤とを含有する電解質とを備え、上記1種類以上の添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、
ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロエーテル分岐環状カーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびこれらの組み合わせからなる群から
選択され、上記電解質は、1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量%含有す
るリチウムイオンキャパシタが提供される。
【0005】
第1の態様の一実施形態では、リチウムイオンキャパシタの溶媒は、1種類以上のカーボネートを含有する。第1の態様の一実施形態では、上記1種類以上のカーボネートは、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート
)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。第1の態様の一実施形態では、溶媒は、MP(プロ
ピオン酸メチル)、EB(酪酸エチル)、MB(酪酸メチル)、EA(酢酸エチル)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるエステルを含有する。第1の態様の一実施形
態では、リチウム塩はLiPF6である。第1の態様の一実施形態では、LiPF6は電解質中に約0.8~1.4Mの濃度で存在する。第1の態様の一実施形態では、LiPF6は電解質中に約0.6~0.95Mの濃度で存在する。第1の態様の一実施形態では、溶媒は、EC/PC/DEC、EC/DEC/DMC/EB
、EC/EMC、EC/EMC/MP、EC/DEC/DMC/EMC、またはEC/DMC/EBを含む。第1の態様の一実施形
態では、溶媒は、体積比が約3:1:4のEC/PC/DEC、体積比が約1:1:1:1のEC/DEC/DMC/EB、体積比が約3:7のEC/EMC、体積比が約1:1:8のEC/EMC/MP、体積比が約1:1:1:2のEC/DEC/DMC/EMC、または体積比が約1:1:1のEC/DMC/EBを含む。
【0006】
第2の態様では、カソードと、アノードと、上記カソードとアノードとの間のセパレー
タと、溶媒とリチウム塩と1種類以上の添加剤とを含有する電解質とを備え、上記1種類以上の添加剤は、アノードパッシベーション膜形成剤、カソード保護剤および過充電保護剤、電解質安定剤、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、上記電解質は、上記1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量%含有するリチウムイオンキャ
パシタが提供される。
【0007】
第2の態様の一実施形態では、添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレ
ンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択さ
れるアノードパッシベーション膜形成剤である。第2の態様の一実施形態では、添加剤は
ビニレンカーボネート(VC)である。第2の態様の一実施形態では、添加剤はビニルエチ
レンカーボネート(VEC)である。第2の態様の一実施形態では、添加剤はフルオロエチレンカーボネート(FEC)である。第2の態様の一実施形態では、添加剤は、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)である。第2の態様の一実施形態では、添加剤は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、およびこれら
の組み合わせからなる群から選択されるカソード保護剤および過充電保護剤である。第2
の態様の一実施形態では、添加剤はジメチルアセトアミド(DMAc)である。第2の態様の
一実施形態では、添加剤は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)である。第2の態様の一実施形態では、添加剤はフルオロエチレンカーボネート(FEC)から選択される電解質安定
剤である。第2の態様の一実施形態では、溶媒は、EC(エチレンカーボネート)、PC(プ
ロピレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され
る1種類以上のカーボネートを含有する。第2の態様の一実施形態では、リチウム塩はLiPF6である。第2の態様の一実施形態では、アノードは、乾燥粒子混合物から形成された自立型乾燥粒子電極である。
【0008】
第3の態様では、カソードを設ける工程と、アノードを設ける工程と、上記カソードお
よびアノードの間にセパレータを配置する工程と、上記カソード、アノードおよびセパレータをハウジングに挿入する工程と、電解質を上記ハウジングに加え、該電解質を上記カソードおよびアノードに接触させる工程とを含み、上記電解質は、溶媒、リチウム塩、および1種類以上の添加剤を含有し、上記1種類以上の添加剤は、アノードパッシベーション膜形成剤と、カソード保護剤と、過充電保護剤と、電解質安定剤と、これらの組み合わせとからなる群から選択され、上記電解質は上記1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量%含有するリチウムイオンキャパシタの製造方法が提供される。
【0009】
第3の態様の一実施形態では、アノードは、集電体と、乾燥粒子混合物から乾式の処理
によって形成される電極フィルムとを備える。第3の態様の一実施形態では、溶媒は1種類以上のカーボネートを含む。第3の態様の一実施形態では、1種類以上のカーボネートは、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネ
ート)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。第3の態様の一実施形態では、溶媒は、MP(
プロピオン酸メチル)、EB(酪酸エチル)、MB(酪酸メチル)、EA(酢酸エチル)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるエステルを含む。第3の態様の一実施形
態では、リチウム塩はLiPF6である。第3の態様の一実施形態では、LiPF6は電解質中に約0.8~1.4Mの濃度で存在する。第3の態様の一実施形態では、LiPF6は電解質中に約0.6~0.95Mの濃度で存在する。第3の態様の一実施形態では、溶媒は、EC/PC/DEC、EC/DEC/DMC/EB
、EC/EMC、EC/EMC/MP、EC/DEC/DMC/EMCまたはEC/DMC/EBを含む。第3の態様の一実施形態
では、溶媒は、体積比が約3:1:4のEC/PC/DEC、体積比が約1:1:1:1のEC/DEC/DMC/EB
、体積比が約3:7のEC/EMC、体積比が約1:1:8のEC/EMC/MP、体積比が約1:1:1:2のEC/DEC/DMC/EMC、または体積比が約1:1:1のEC/DMC/EBを含む。
【0010】
本明細書に開示されたまたはその他の特徴、態様、および利点は、特定の実施形態の図面を参照して説明される。これらの図面は、特定の実施形態を説明することを意図したものであり、本発明を限定するものではない、
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の例の概略断面図である。
図2】添加剤を含有しないEC-PC-DEC電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図3A】1重量%のVCおよびEC-PC-DECを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図3B】2重量%のVCおよびEC-PC-DECを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図4】VCを含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタと、1重量%のVCを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタとのサイクル性能の比較を示す。
図5A】VCを含有しないEC-PC-DEC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図5B】2重量%のVCを含有するEC-PC-DEC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図6A】VCを含有しないEC-DEC-DMC-EB含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図6B】2重量%のVCを含有するEC-DEC-DMC-EB含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図7A】VCを含有しないEC-DEC-DMC-EMC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図7B】2重量%のVCを含有するEC-DEC-DMC-EMC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図8A】EC-DEC-DMC-EBを含有し、未精製でDMAcを含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図8B】EC-DEC-DMC-EBを含有し、未精製で2重量%のDMAcを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図8C】EC-DEC-DMC-EBを含有し、精製されDMAcを含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図8D】EC-DEC-DMC-EBを含有し、精製され2重量%のDMAcを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図9A】EC-DEC-DMC-EMCを含有し、未精製でDMAcを含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図9B】EC-DEC-DMC-EMCを含有し、未精製でDMAcを2重量%含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図9C】EC-DEC-DMC-EMCを含有し、精製されDMAcを含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図9D】EC-DEC-DMC-EMCを含有し、精製されDMAcを2重量%含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図10A】DMAcを含有しないEC-PC-DEC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図10B】2重量%のDMAcを含有するEC-PC-DEC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図11A】DMAcを含有しないEC-DEC-DMC-EB含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図11B】2重量%のDMAcを含有するEC-DEC-DMC-EB含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図12A】DMAcを含有しないおよび含有するEC-DEC-DMC-EMC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図12B】2重量%のDMAcを含有するEC-DEC-DMC-EMC含有の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。
図13図13は、本明細書に記載の1種類以上の多機能性添加剤を含有するリチウムイオンキャパシタの使用可能なエネルギー密度および使用可能な電力密度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、特定の実施形態および実施例を記載するが、当業者であれば、本発明が具体的に開示された実施形態および/または使用、明らかな変更およびそれらの等価物を超えることを理解するであろう。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、以下に記載される特定の実施形態によって限定されるべきではない。
【0013】
いくつかの実施形態では、改善された電気的性能を有するリチウムイオンキャパシタ(LiC)などのエネルギー貯蔵装置が提供される。いくつかの実施形態では、そのリチウム
イオンキャパシタは、改良された電解質組成物を含有することができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタは、例えば約50℃~約70℃の、高い作動温度下で所望の装置電気性能を示すように構成された電解質組成物を有することができる。例えば、リチウムイオンキャパシタは、アノードパッシベーション膜形成を有利に促進し(アノードパッシベーション膜形成剤)、カソードを保護し(カソード保護剤)過充電に対する保護を与え(過充電保護剤)、および/または電解質を安定化させる(電解質安定剤)ように選ばれた1種類以上の添加剤および/または1種類以上の溶媒成分を含有する電解質を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、上記1種類以上の添加剤は、ビニレンカーボ
ネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、
ハイドロフルオロエーテル分岐環状カーボネート、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、
ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)、およびフルオロエチレンカ
ーボネート(FEC)の1種類以上を含む1種類以上の多機能性化合物を含む。いくつかの実
施形態では、上記1種類以上の多機能性化合物は、電解質の溶媒成分であってもよい。い
くつかの実施形態では、電解質は、カーボネート系溶媒ならびに本明細書に記載の1種類
以上の溶媒成分および/または1種類以上の添加剤を含有する。いくつかの実施形態では
、望ましいアノードパッシベーション膜の形成、カソードの保護、過充電に対する保護、および電解質の安定化を促進するために、電解質は1種類以上の溶媒成分および/または
添加剤を含有する。
【0014】
本明細書に記載する組成物を含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、例えば、高い作動温度下で、等価直列抵抗の低減、エネルギー密度および/もしくは電力密度の性能の向上、長寿命化、ならびに/または装置安全性の改善を有利に示すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物を含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、改善された作動電圧および/またはロバストなサイクル性能を有利に示すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、プリズム形、円筒形および/またはボタン形を含む様々な形状を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、風力発電システム、無停電電源システム(UPS)、光起電力
発電、産業機械におけるエネルギー回収システム、および/または輸送システムの用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電
気自動車(PHEV)、および/または電気自動車(EV)に電力を供給するために使用することができる。
【0015】
本明細書に記載の溶媒成分および添加剤を含有しない電解質は、所望の範囲の作動電圧、等価直列抵抗、作動温度範囲、装置寿命および/または装置安全性を示さないことがある。例えば、本明細書の実施形態に係る成分または添加剤を含有しない、LiPF6塩および
カーボネート溶媒からなるかまたは本質的にそれらからなる電解質は、記載された実施形態と比較して、より低い作動電圧、より大きな等価直列抵抗、より低い作動温度範囲、より短い寿命および/またはより低い装置安全性を示すことができる。
【0016】
本明細書に記載の電極およびエネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンキャパシタの文脈で説明することができるが、実施形態は、リチウムを含むまたは含まない、バッテリ、キャパシタ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、燃料電池、これらの組み合わせなどの多数のエネルギー貯蔵装置およびシステムのあらゆるものに実装することができることが理解されよう。
【0017】
図1は、エネルギー貯蔵装置100の一例の側方の概略断面図を示す。このエネルギー貯
蔵装置100は、リチウムイオンキャパシタであってもよい。当然、他のエネルギー貯蔵装
置も本発明の範囲内であり、それはバッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、および/または燃料電池を含み得ることを理解されたい。エネルギー貯蔵装置100は、第1の電極102、第2の電極104、および第1の電極102と第2の電極104との間に配置されたセパレー
タ106を備えていてもよい。例えば、第1の電極102および第2の電極104は、セパレータ106の対向する面に隣接して配置されていてもよい。第1の電極102はカソードであってもよく、第2の電極104はアノードであってもよく、またはその逆(第1の電極102がアノードで、第2の電極104がカソード)であってもよい。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵
装置100の電極102,104間のイオン伝達を容易にする電解質122を備えることができる。例えば、電解質122は、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106と接触していてもよい。電解質122、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置のハウジング120内に収容されてもよい。例えば、エネルギー貯蔵装置のハウジ
ング120は、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106を収容し、エネルギー貯蔵装置100に電解質122を含浸させた後、密閉して、電解質がハウジングの外部の環境から物理的に密閉されるようにすることができる。電解質122は、任意で、本明細書に記載の1種類以上の添加剤を含有する。
【0018】
セパレータ106は、セパレータ106の対向する面に隣接する2つの電極、例えば第1の電極102および第2の電極104を電気的に絶縁する一方、2つの隣接する電極間のイオン伝達を可能にするように構成することができる。セパレータ106は、様々な多孔質の電気絶縁材料
を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータ106はポリマー材料を含むこ
とができる。例えば、セパレータ106は、セルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン
(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料、および/またはポリエチレンとポリプロピレンとからなる材料を含むことができる。
【0019】
図1に示すように、第1の電極102および第2の電極104は、それぞれ第1の集電体108および第2の集電体110を備える。第1の集電体108および第2の集電体110は、対応する電極と外部回路(図示せず)との間の電気的結合を容易にすることができる。第1の集電体108および/または第2の集電体110は、1種類以上の導電性材料を含有することができ、および/
または対応する電極と、エネルギー貯蔵装置100を外部端子に結合するための端子と、の
間の電荷の移動を容易にするように、様々な形状および/または寸法を有することができる。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、それらの合金等の金属材料を含有することができる。例えば、第1の集電体108および/または第2の集電体110は、長方形または実質的に長方形の形状のアルミニウムホイルからなるものでもよく、対応する電極と外部電気回路との間の望ましい電荷移動(例えば、集電体プレートおよび/または電極と外部電気回路との間の電気的連絡を与えるように構成されたエネルギー貯蔵装置の他の部品を介して)を可能にするような寸法にすることができる。
【0020】
第1の電極102は、第1の集電体108の第1の面(例えば、第1の集電体108の上面)上の第1の電極フィルム112(例えば、上部の電極フィルム)と、第1の集電体108の第2の対向する面(例えば、第1の集電体108の底面)上の第2の電極フィルム114(例えば、下部の電極フィルム)とを備えている。同様に、第2の電極104は、第2の集電体110の第1の面(例えば
、第2の集電体110の上面)上の第1の電極フィルム116(例えば、上部の電極フィルム)と、第2の集電体110の第2の対向する面(例えば、第2の集電体110の底面)上の第2の電極フィルム118とを備えている。例えば、第2の集電体110の第1の面は、第1の集電体108の第2
の面と向かい合うようにし、セパレータ106は、第1の電極102の第2の電極フィルム114と
、第2の電極104の第1の電極フィルム114とに隣接するようにしてもよい。
【0021】
電極フィルム112,114,116および/または118は、様々な適切な形状、寸法、および/または厚さにすることができる。例えば、電極フィルムは、約100ミクロン(μm)~約250
ミクロンを含む、約30ミクロン~約250ミクロンの厚さを有することができる。本明細書
に記載された実施形態は、1つ以上の電極、および1つ以上の電極フィルムを備えた電極で実施することができ、図1に示す実施形態に限定されるものではない。
【0022】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタのアノードおよび/またはカソードの電極フィルムは、バインダ材および炭素を含有する混合物を含有する。いくつかの実施形態では、アノードおよび/またはカソードの電極フィルムは、導電性添加剤などの、1種類以上の添加剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、バインダ材は、1種類以上のフィブリル化可能なバインダ成分を含むことができる。例えば、電極フィルムを形成するための処理は、フィブリル化可能なバインダ成分をフィブリル化して、電極フィルムがフィブリル化バインダを含有するようにすることができる。バインダ成分はフィブリル化して複数のフィブリルとすることができ、それらのフィブリルはフィルムの1種
類以上の他の成分に対して所望の機械的支持を提供する。例えば、フィブリルのマトリックス、格子および/またはウェブを形成して、電極フィルムに所望の機械的構造を与えることができる。例えば、リチウムイオンキャパシタのカソードおよび/またはアノードは、1種類以上のフィブリル化バインダ成分を含有する1つ以上の電極フィルムを備えることができる。いくつかの実施形態では、バインダ成分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、および/または他の適切なフィブリル化可能な材料など、1種類以上の様々な適切なフィブリル化可能なポリマー材料を含むことがで
きる。
【0023】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタのカソードの電極フィルムは、例えば、活性炭素のような多孔質炭素材料などの、1種類以上の炭素系電気活性成分を含有
する電極フィルム混合物を含有することができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタのアノードの電極フィルムは、リチウムイオンを可逆的にインターカレートするような炭素を含有する電極フィルム混合物を含有する。いくつかの実施形態では、リチウムをインターカレートする炭素はグラファイトである。いくつかの実施形態では、カソードおよび/またはアノードの電極フィルムは、例えばカーボンブラックを含む導電性促進添加剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、カソードの電極フィルムは、活性炭素を含有するか、または本質的に活性炭素からなる。いくつかの実施形態で
は、リチウムイオンキャパシタのカソードおよび/またはアノードの電極フィルムは、例えば約60重量%~約95重量%などの、約50重量%~約99重量%の炭素を含有することができる。いくつかの実施形態では、カソードおよび/またはアノードの電極フィルムは、例えば約1重量%~約40重量%または約1重量%~約20重量%などの、約1重量%~約50重量
%のバインダ材を含有する。いくつかの実施形態では、カソードおよび/またはアノードの電極フィルムは、例えば約0.5重量%~約30重量%または約0.5重量%~約20重量%などの、約40重量%以下の導電性促進添加剤を含有する。特定の実施形態では、カソードは金属酸化物を含有しない。特定の実施形態では、カソードは、酸化リチウムを含有しない。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵装置はリチウムイオン電池ではない。
【0024】
いくつかの実施形態では、デバイス100のようなエネルギー貯蔵デバイスは、電極102,104などのような、カソードを設ける工程と、アノードを設ける工程と、セパレータ106などのセパレータをカソードとアノードとの間に配置する工程と、カソード、アノードおよびセパレータをハウジング120などのハウジングに挿入する工程と、電解質122などの電解質をハウジングに加えこの電解質を上記カソードおよびアノードに接触させる工程とを含む方法によって製造される。ここで、上記電解質は、溶媒、リチウム塩、および1種類以
上の添加剤を含有し、この1種類以上の添加剤は、アノードパッシベーション膜形成剤と
、カソード保護剤と、過充電保護剤と、電解質安定剤と、これらの組み合わせとからなる群から選択され、上記電解質は上記1種類以上の添加剤それぞれを約0.5重量%~約5重量
%含有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の電極フィルムは、乾式の製
造工程によって製造することができる。本明細書に記載する乾式の製造工程は、電極フィルムの形成において溶媒が使用されないか、または実質的に使用されない工程を指すことができる。例えば、電極フィルムの成分は乾燥粒子を含むことができる。電極フィルムを形成するための乾燥粒子は、混ぜ合わされて、乾燥粒子電極フィルム混合物とすることができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムの成分の重量百分率と乾燥粒子電極フィルム混合物の成分の重量百分率とがほぼ同一かまたは同一となるように、乾式の製造工程によって電極フィルムを乾燥粒子電極フィルム混合物から形成することができる。いくつかの実施形態では、乾式の製造処理によって乾燥粒子電極フィルム混合物から形成された電極フィルムは、あらゆる処理溶媒およびそれから生じる溶媒残留物を含有しないか実質的に含有しなくてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、乾燥粒子混合物から乾式の処理によって形成された自立型乾燥粒子電極フィルムである。
【0026】
エネルギー貯蔵装置100は、溶媒、リチウム塩などの塩、および/または1種類以上の添加剤を含有する電解質122を備えることができる。いくつかの実施形態では、電解質の成
分は、所望の電気的性能を有するリチウムイオンキャパシタが得られるように選択される。いくつかの実施形態では、溶媒および/または1種類以上の添加剤は、等価直列抵抗の
低下、エネルギー密度および電力密度の増加、長寿命化、および/または約50℃~約70℃の高い作動温度の下での装置安全性の改善を示すリチウムイオンキャパシタが得られるように選択される。いくつかの実施形態では、溶媒および/または1種類以上の添加剤は、
アノードパッシベーション膜の形成を有利に促進し(アノードパッシベーション膜形成剤)、カソードの保護および過充電の保護をもたらし(カソード保護および過充電保護剤)、および/または電解質の安定化をもたらす(電解質安定剤)。いくつかの実施形態では、電解質は、パッシベーション膜の形成を容易にし、カソードの保護および過充電に対する保護を与え、電解質の安定化を与えることによって、電極の成分間の相乗効果によって装置が所望の電気的性能となることを促進するように設計された1種類以上の溶媒成分お
よび/または1種類以上の添加剤を含有する。溶媒、溶媒成分、および/または添加剤は
、上述の利点の任意の組み合わせを提供するように選択され、組み合わせられ、および/または設計できることが理解されよう。
【0027】
本明細書では、溶媒成分は、固体、液体または気体溶質などの溶質の溶解および/または懸濁を促進するように設計された電解質の構成成分を指し、溶媒成分の含有量は電解質の約10重量%~約40重量%である。例えば、溶質は、電解質塩を含むことができ、この電解質塩が溶媒成分に溶解され、それによって電解質塩および溶媒成分を含有する溶液を形成することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は2種類以上の溶媒成分化合物を含
む。例えば、溶媒は、所望の特性を有する電解質が得られるように選択された1種類以上
の溶媒成分化合物を含有することができる。本明細書では、電解質添加剤は、本明細書に記載の所望の特性を有する電解質が得られるように選択および/または構成される電解質の構成要素を指し、一般に電解質の他の構成成分よりも含有量(重量%)が少ない。いくつかの実施形態では、溶媒における1種類以上の添加剤それぞれの含有量は、約0.5重量%~約5重量%、いくつかの実施形態では約0.5重量%~約4重量%、またはいくつかの実施
形態では約0.5重量%~約3重量%、いくつかの実施形態では約0.5重量%~約2重量%、またはいくつかの実施形態では約0.5重量%~約1.5重量%、またはいくつかの実施形態では、約0.5重量%~約1重量%である。さらに他の実施形態では、溶媒における添加剤の合計の含有量は、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約7.5重量%、約0.5重量%~約5
重量%、約0.5重量%~約4重量%、約0.5重量%~約3重量%、約0.5wt%~約2重量%、または約0.5重量%~約1重量%である。いくつかの実施形態では、電解質は、本明細書に記載の1種類以上の溶媒成分および/または添加剤と共に、リチウム塩およびカーボネート
系溶媒を含有する。いくつかの実施形態では、溶媒は、スルトンのようなスルホン酸エステルを含むことができる。さらに他の実施形態では、スルホン酸エステルは、1,3-プロパンスルトン(PS)およびプロプ-1-エン-1,3-スルトン(PES)から選択することができる
【0028】
いくつかの実施形態では、溶媒および/または1種類以上の添加剤は、フッ素含有化合
物を含む。いくつかの実施形態では、フッ素含有化合物は、作動条件下での熱的および/または電気化学的安定性を促進し得る。具体的には、エーテルなどの炭化水素やその誘導体におけるフッ素による水素の置換は、これらの化合物の電気化学的特性を変化させることが知られている。いくつかの実施形態では、溶媒および/または1種類以上の添加剤は
、非フッ素化化合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質は非水性である。いくつかの実施形態では、フッ素化化合物は、フルオロエーテル、例えば、ハイドロフルオロエーテルであってもよい。ハイドロフルオロエーテルの市販品は、例えば、HFE-7200およびHFE-7500などがある。さらに他の実施形態では、ハイドロフルオロエーテルは、アルキル-パーフルオロアルキルエーテルであり得る。さらに他の実施形態では、ハイドロフルオロエーテルは、アルキル分枝状パーフルオロアルキルエーテルであってもよい。いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロエーテルは、C1~C10(炭素数が1-10の)アルキル-C1~C10(炭素数が1-10の)パーフルオロアルキルエーテルであってもよい。いくつかの実施
形態では、ハイドロフルオロエーテルは、式Iの構造であってもよい。
【0029】
【化1】
(式I)
【0030】
ここで、各Rfは、互いに独立してCnHmF(m-2n+2)(nは1~10の自然数)であってもよい
。いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロエーテルは、パーフルオロエーテルであってもよい。特定の実施形態では、ハイドロフルオロエーテルは式IIまたは式IIIの構造で
あってもよい。
【0031】
【化2】
(式II) (式III)
【0032】
いくつかの実施形態では、フッ素化化合物は、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)であってもよい。さらに他の実施形態では、HFEECは、式IV:
【0033】
【化3】
(式IV)
【0034】
(式中、Rgはフッ素化アルキル基)の構造を有することができる。さらに他の実施形態では、フッ素化アルキル基は、1~10個の炭素原子を有することができる。さらに他の実施
形態では、RgはCpHqF(q-2p+2)で表される構造をとることができる。特定の実施形態で
は、Rgはパーフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、フッ素化化合物は、ハイドロフルオロエーテル分枝環状カーボネートを含む。いくつかの実施形態では、フッ素化化合物はフルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。一般に、フルオロ
エチレンカーボネートは、1~4個のフッ素原子で置換されたエチレンカーボネートであってもよい。いくつかの実施形態では、フルオロエチレンカーボネートは、式Vの構造:
【0035】
【化4】
(式V)
【0036】
を有していてもよい。いくつかの実施形態では、フッ素化化合物は、ハイドロフルオロエーテル分枝環状カーボネートであってもよい。
【0037】
本明細書で説明されるように、いくつかの実施形態では、電解質の溶媒および/または添加剤は、アノードパッシベーション膜の形成を容易にするように、またはアノードパッシベーション膜形成剤として機能するように選択される。例えば、電解質は、所望の化学組成の固体電解質中間相(SEI)層の形成を促進にするために、1種類以上の溶媒成分および/または1種類以上の添加剤を含有することができる。この固体電解質中間相層は、リ
チウムイオンキャパシタの充電および/または放電中に電解質に曝されたリチウムイオン
キャパシタアノードの表面上に形成されてもよい。固体電解質中間相は、一つには電解質の1種類以上の成分の分解が原因となって形成される場合がある。例えば、アノードおよ
び電解質の界面における1種類以上の固体電解質相間形成成分に電子を移動させる単一ス
テップまたはマルチステップの分解反応は、アノードと電解質との間の界面に固体電解質中間相を形成させることがある。固体電解質界面相の化学的組成のような固体電解質中間相層の1つ以上の特性は、電解質の化学組成に少なくとも部分的に依存し得る。いくつか
の実施形態では、固体電解質界面相の化学組成は、電解質の溶媒、添加剤および/または不純物に少なくとも部分的に依存し得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1種類以上の添加剤および/または溶媒成
分を含有する電解質は、約50℃~約70℃のような高温下で作動するように設計されたリチウムイオンキャパシタ用の所望の固体電解質中間相層が効率的に形成するのを促進することができる。例えば、固体電解質中間相層は、所望のイオン伝導性を維持しながら、改善された熱安定性、改善された電気化学的安定性、および/またはリチウムイオンキャパシタの他の1種類以上の成分との二次反応の反応性の低下を示すことができる。いくつかの
実施形態では、固体電解質界面相層は、高温サイクル下で非常に安定であり得ることを示すことができる。所望の化学組成を有する固体電解質相間層を備えたリチウムイオンキャパシタは、例えば高温下での作動中においても、装置サイクル寿命の改善、長寿命化、電力能力の向上、装置安全性の改善および/またはアノード安定性の改善など、改善された電気特性を示すことができる。所望の化学組成を有する固体電解質相間層を備えたリチウムイオンキャパシタは、より低い作動可能アノード電位および/またはキャパシタのより高い作動可能電位を示すことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えばアノードパッシベーション膜形成剤など、所望の固体電解質界面層の形成を促進するように選択および/または設計された電解質添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)の1種類以上を含有する。いくつかの実施形態では、電解質添加剤は、本明細書に記載のフッ素化化合物を含む。いくつかの実施形態では、電解質添加剤はフルオロエチレンカーボネート(FEC)で
あってもよい。いくつかの実施形態では、電解質添加剤は、本明細書に記載のハイドロフルオロエーテル(HFE)などのフルオロエーテルを含む。いくつかの実施形態では、電解
質添加剤は、ハイドロフルオロエーテル分枝環状カーボネートを含む。いくつかの実施形態では、電解質添加剤は、ハイドロフルオロエーテルエチレンカーボネート(HFEEC)で
あってもよい。いくつかの実施形態では、電解質は、フッ素化化合物添加剤を、約1重量
%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%を含む、約1重量%~約5重量%の含有量で
含有することができる。いくつかの実施形態では、電解質は、塩としてLiPF6を含有し、
本明細書に記載の1種類以上の添加剤を含有することができ、いくつかの実施形態では、
高温サイクルを受けるような応用に用いられるカーボネート系溶媒を含有する。いくつかの実施形態では、約50℃~約70℃の温度で高温サイクルを実施することができる。いくつかの実施形態では、電解質は、EC/PC/DECの溶媒中の1.2M(モーラー)のLiPF6との組み合わせで、本明細書で提供される1種類以上の添加剤を含有し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、フッ素化化合物は溶媒の成分として機能することができる。例えば、電解質の溶媒は、FECおよび/またはHFEECの1種類以上を含むことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、例えば、本明細書に記載の1種類以上の添加剤を含有しない電解質と比較して、等価
直列抵抗および/またはRC時定数を維持することができる。例えば、VC、VECおよびFECの1種類以上を含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタは、これらの添加剤のい
ずれをも含有しない電解質と少なくとも同じレベルの等価直列抵抗および/またはRC時定数を示すことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、電解質は、カソードの保護および過充電保護を促進するように設計された添加剤および/または溶媒成分、すなわち、カソード保護および過充電保護剤を含有することができる。例えば、電解質は、カソードにおける電解質の分解の抑制とアノードにおける電解質不純物の固体電解質中間層形成への寄与とを促進するカソード保護剤および過充電保護剤を含有することができ、これによって取り扱い可能なより高いカソード電位および/または装置の長寿命化を促進することができる。電解質不純物は、例えば、フッ化水素(HF)および/または水(H2O)を含むことができる。いくつかの実施
形態では、カソード保護および過充電保護が改善されるように設計された添加剤および/または溶媒成分は、フッ素化化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、フッ素化化合物は、本明細書で記載するようなハイドロフルオロエーテル(HFE)を含む。い
くつかの実施形態では、改善されたカソード保護および過充電保護を促進にするように設計された添加剤および/または溶媒成分は、非フッ素化化合物を含む。さらに他の実施形態では、カソード保護剤および過充電保護剤は、C1-10(炭素数1-10の)アルキルカルボ
キシレートの低分子量ジアルキルアミド誘導体であってもよい。さらに他の実施形態では、カソード保護剤および過充電保護剤は、C1-10アルキルカルボキシレートのジメチルア
ミド誘導体であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば非フッ素化化合物などのカソード保護剤および過充電保護剤は、ジメチルアセトアミド(DMAc)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、電解質は、電解質の安定化を促進するように設計された添加剤および/または溶媒成分、すなわち電解質安定化剤を含有することができる。例えば、電解質安定剤は、電解質に所望の熱的および/または電気化学的安定性を与えることができる。いくつかの実施形態では、電解質安定剤は、所望のイオン伝導性を示しながら、改良された熱的および/または電気化学的安定性を有する固体電解質界面層の形成を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、電解質安定化を促進するように設計された添加剤および/または溶媒成分は、本明細書に記載のフッ素化化合物を含む。さらに他の実施形態では、このフッ素化化合物は、本明細書に記載のフルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。いくつかの実施形態では、溶媒の1種類以上のフッ素化されていないカーボネート成分は、上記のフッ素化された電解質安定化剤で置き換えることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、
四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(トリフルオロ
メタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2CF32)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、これらの組み合わせおよび/またはそれらと同等のものを含む。本明細書に記載のように、いくつかの実施形態では、1種類以上の溶媒成分および/また
は添加剤は、リチウム塩およびカーボネート系溶媒と組み合わることができる。いくつかの実施形態では、上記1種類以上の溶媒成分および/または添加剤は、リチウム塩、なら
びに、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネ
ート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、酪酸エチル(EB)、プロピレンカーボネート(PC)、およびこれらの組み合わせを含む溶媒と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、任意で体積比が約3:1:4のEC/PC/DEC、任意で体積比が約1:1:1:1のEC/DEC/DMC/EB、任意で体積比が3:7のEC/EMC、任意で体積比が約1:1:8のEC/EMC/MP、任意で体積比が約1:1:1:2のEC/DEC/DMC/EMC、または任意で体積比が約1:1:1のEC/DMC/EBを含む。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、約0.1M~約2Mの濃度で、例えば約0.8M~約1.4M、または約0.6M~約0.95Mの濃度で、電解質中に存在する。いく
つかの実施形態では、本明細書に記載の上記1種類以上の溶媒成分および/または添加剤
は、以下の組成の電解質に添加されてもよい:EC/PC/DEC(体積比3:1:4)中の1.2MのLiPF6、EC/DEC/DMC/EB(体積比1:1:1:1)中の1.0MのLiPF6、EC/EMC(体積比3:7)中の1.0M
のLiPF6、EC/EMC/MP(体積比1:1:8)中の1.4MのLiPF6、EC/DEC/DMC/EMC(体積比1:1:
1:2)中の1.0MのLiPF6である。追加の実施形態では、溶媒は、MP(プロピオン酸メチル
)、EB(酪酸エチル)、MB(酪酸メチル)、EA(酢酸エチル)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるエステルを含むことができる。さらに他の実施形態では、溶媒は、EC、DMC、DEC、EMC、EB、PC、MP、EB、MB、およびEAの1~3種類を含み、各溶媒成
分は溶媒中に約10~80体積%で存在することができる。例えば、特定の実施形態では、溶媒は、10~30%EC-10~30%PC-40~70%DEC、10~30%EC-10~30%DEC-10~30%DMC-10~30%EB、10~30%EC-70~90%EMC、5~15%EC-5~15%EMC-30~90%MP、10~30%EC-10~30%DEC-10~30%DMC-30~50%EMC、または15~40%EC-15~40%DMC-15~40%EBを含む。
【実施例0045】
図2図13は、本明細書に記載の電解質組成物を含有するリチウムイオンキャパシタの様々な実施形態の電気化学的性能を、互いに比較して、ならびに/または本明細書に記載の溶媒成分および/もしくは添加剤を含有しないいくつかの装置性能と比較して示すグラフである。
【0046】
図2は、約65℃の温度で測定されたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。そのリチウムイオンキャパシタは、EC-PC-DEC
溶媒中に1.2MのLiPF6を含有する電解質を備えていた。y軸はアンペア(A)で測定した電
流を示し、x軸はボルト(V)で測定した電位を示す。この図からわかるように、第1のサ
イクルには2つの還元電流の「ピーク」が存在する。本明細書に記載される「ピーク」は
、必ずしもy軸上の明示的な「高」または「低」点として定義されるわけではない。そう
ではなく、ピークは、サイクルを定義づける曲線の勾配および曲率を分析する当業者に基づいて、装置の周期的な作動における性能に関連して生じると考えられるボルタンメトリーチャート上の点である。例えば、第1のサイクルにおける以下の2つのピークは、アノードの表面上のSEI薄膜の形成に起因すると考えられている:約1.2Vの右から第1番目のピークは、溶媒/添加剤の単一電子還元によるLi2CO3の形成によるものと考えられ、0.7V付近の第2番目のピークは、溶媒成分の二電子還元プロセスから生じるリチウムアルキルカー
ボネート(ROCO2Li)の形成に関連するものと考えられる。約0Vおよび0.3Vで見られる一
対の還元および酸化ピークは、リチウムイオンの挿入および抽出のプロセスにそれぞれ対応すると考えられる。曲線の全体的な形状、例えばそれらのそれぞれのピークの形状は、例えば、図3Aおよび図3Bのグラフにおけるサイクル間の変動と比較した場合、サイクル間の有意な変動を示す。同様の定義、分析および比較は、本明細書の他のボルタンメトリーチャート間で行うことができる。
【0047】
図3Aは、約65℃の温度で測定されたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。そのリチウムイオンキャパシタは、EC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6および1重量%のVCを含有する電解質を備えていた。したがって、
図3Aに示されたキャパシタは、図2のキャパシタと同様であるが、その電解質には上記パーセンテージの添加剤が含まれている。
【0048】
図3Bは、約65℃の温度で測定されたリチウムイオンキャパシタのアノードのサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。そのリチウムイオンキャパシタは、EC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6および2重量%のVCを含有する電解質を備えていた。図3Bは、図
2および図3Aと同様のキャパシタを示しているが、例えば図3Bのキャパシタの電解質は図3Aの電解質とEC-PC-DEC溶媒の比は同じであるが、電解質に含まれる添加剤の含有
量が多い。y軸はアンペア(A)で測定した電流を示し、x軸はボルト(V)で測定した電位を示す。図2図3Aおよび図3Bの曲線を比較すると、図2(添加物なし)は図3B(2%のVC添加剤含有)よりもサイクル間でより多くの変動を示し、図3B図3A(1%のVC添加剤含有)よりもサイクル間でより多くの変動を示す。
【0049】
図4は、1重量%のVC添加剤を含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのライフサイクル性能(図3Aに示すものと同様)を、VC添加剤を含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのライフサイクル性能(図2に示すものと同様)と比較して示す。このグラフは、x軸にサイクル数を示し、y軸に静電容量を初期の静電容量の値に対する割合として示す。このグラフは、多くの回数の充放電サイクル後の各キャパシタの静電容量の低下を、初期の静電容量の割合として表している。キャパシタは、約65℃の温度でサイクルを行った。VCを含有するキャパシタの電解質は、EC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6および1重量%のVCを含有していた。VCを含有しないキャパシタの電解質は、EC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6を含有していた。これら2つの電解質は、同じ比のEC-PC-DEC溶媒を含有
していた。図4に示すように、VC電解質添加剤を含有するリチウムイオンキャパシタは、例えば、多くの回数の充放電サイクルの後のキャパシタンスの低下が抑えられ、ライフサイクル性能の改善が実証された。具体的には、1%のVC電解質添加剤を含有するキャパシ
タは、1500サイクル後に初期の静電容量の95%以上を維持し、電解質添加剤を含有しないキャパシタは1500サイクル後にその初期の静電容量の95%未満となった。
【0050】
図5Aおよび図5Bは、VC添加物を含有しないおよび含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードの性能を比較するサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図5Aは、体積比3:1:4のEC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6を含有する
電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図5Bは、体積比3:1:4のEC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6および2重量%のVCを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図5B(2%のVC添加剤含有
)グラフの曲線は、図5Aのグラフ(添加剤なし)と比較してサイクル間の変動が少ないことがわかる。
【0051】
図6Aおよび図6Bは、VCを含有しないおよび含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードの性能を比較するサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図6Aは、体積比1:1:1:1のEC-DEC-DMC-EB溶媒中に1.0MのLiPF6を含有する電
解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図6Bは、体積比1:1:1:1のEC-DEC-DMC-EB溶媒中に1.0MのLiPF6および2重量%のVCを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで
測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図6Bの曲線(2%のVC添
加剤含有)は、図6A(添加剤なし)のグラフと比較してサイクル間の変動が少ないこと
がわかる。
【0052】
図7Aおよび図7Bは、VCを含有しないおよび含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードの性能を比較するサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図7Aは、体積比1:1:1:2のEC-DEC-DMC-EMC溶媒中に1.0MのLiPF6を含有す
る電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図7Bは、体積比1:1:1:2のEC-DEC-DMC-EMC溶媒中に1.0MのLiPF6と2重量%のVCとを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図7B(2%のVC添加
剤含有)のグラフの曲線は、図7Aのグラフ(添加剤なし)と比較してサイクル間の変動が少ないことがわかる。
【0053】
図8A図8Dは、DMAcを含有するおよび含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードの性能を、電解質の精製の有無に応じて比較するサイクリックボルタ
ンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸
はボルト(V)で測定された電位を示す。図8Aは、体積比1:1:1:1のEC-DEC-DMC-EB溶媒中に1.0MのLiPF6を含有し未精製の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノー
ドで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図8Bは、体積比1
:1:1:1のEC-DEC-DMC-EB溶媒中に1.0MのLiPF6および2重量%のDMAcを含有し未精製の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図8Cは、図8Aに示すものと名目上同じ組成の精製された電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示す。図8Dは、図8Bに示すものと名目上同じ組成の精製された電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示す。図8D(2%のDMAc添加剤を含有し精製された電解質)のグラフの曲線は、図8A
図8Bまたは図8Cのいずれのグラフ(添加剤を含有しないおよび/または未精製の電解質)と比較してサイクル間の変動が少ないことがわかる。本明細書では、「精製された」電解質は、水などの不純物の含有量が10重量%未満となるように精製処理された電解質を意味する。精製された溶媒は、一般に、未精製の溶媒よりも酸含量が少なく水分も少ないということによって特徴があった。
【0054】
図9A図9Dは、DMAcを含有するおよび含有しない電解質、ならびに、精製されたおよび未精製の電解質、を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードの性能を比較するサイクルボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図9Aは、体積比1:1:1:2のEC-DEC-DMC-EMC溶媒中に1.0MのLiPF6を含有する未精製の電解質を備えたリチウムイオンキャ
パシタのアノードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図9Bは、体積比1:1:1:2のEC-DEC-DMC-EMC溶媒中に1.0MのLiPF6および2重量%のDMAcを含有し未精製の電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図9Cは、図9Aに示すものと名目上同じ組成の精製された電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されるサイクリックボルタンメトリーを示す。図9Dは、図9Bに示すものと名目上同じ組成の精製された電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのアノードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示す。図9D(2%のDMAc添加剤を含有し精製された電解質)のグラフの曲
線は、図9A図9Bまたは図9Cのいずれのグラフ(添加剤なしおよび/または未精製の電解質)と比較してサイクル間の変動が少ないことがわかる。
【0055】
図10Aおよび図10Bは、DMAcを含有しないおよび含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードの性能を比較するサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図10Aは、体積比3:1:4のEC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6を含有す
る電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードで測定されたサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図10Bは、体積比3:1:4のEC-PC-DEC溶媒中に1.2MのLiPF6および2重量%のDMAcを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図10Aのグラフの曲線は、図10Bのグラフと比較して、グラフの下部のサイクルで3.7Vと4Vとの間の電流の増加を示す。したがって、図10Aのカソード(添加剤なし)は、図10Bのカソード(2%のDMAc添加剤含有)と比較して、追加的な望ましくない電解反応を示す。
【0056】
図11Aおよび図11Bは、DMAcを含有しないおよび含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードの性能を比較するサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図11Aは、体積比1:1:1:1のEC-DEC-DMC-EB溶媒中に1.0MのLiPF6を含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードで測定したサイクリックボ
ルタンメトリーを示すグラフである。図11Bは、体積比1:1:1:1のEC-DEC-DMC-EB溶
媒中に1.0MのLiPF6および2重量%のDMAcを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図11Aのグラフの曲線は、図11Bのグラフと比較して、グラフの下部のサイクルで3.7Vと4Vとの間で電流の増加を示す。したがって、図11Aのカソード(添加剤なし)は、図11Bのカソード(2%のDMAc添加剤含有)と比較して、追加的な望ましくない電解反応を示す
【0057】
図12Aおよび図12Bは、DMAcを含有するおよび含有しない電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードの性能を比較するサイクリックボルタンメトリー曲線を示すグラフである。y軸はアンペア(A)で測定された電流を示し、x軸はボルト(V)で測定された電位を示す。図12Aは、体積比1:1:1:2のEC-DEC-DMC-EMC溶媒中に1.0MのLiPF6
を含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図12Bは、体積比1:1:1:2のEC-DEC-DMC-EMC溶媒中に1.0MのLiPF6および2重量%のDMAcを含有する電解質を備えたリチウムイオンキャパシタのカソードで測定したサイクリックボルタンメトリーを示すグラフである。図12Aのグラフの曲線は、図12Bのグラフと比較して、グラフの下部のサイクルで3.7Vと4Vの間で電流の増加を示す。したがって、図12Aのカソード(添加剤なし)は、図12Bのカソード(2%のDMAc添加剤含有)と比較して、追加的な望ましくない電解反応を示す
【0058】
図13は、本明細書に記載の1種類以上の多機能性添加剤を含有するリチウムイオンキ
ャパシタの使用可能なエネルギー密度および使用可能な電力密度を列挙した表である。エネルギー密度はワット時/キログラム(Wh/kg)で示され、電力密度はキロワット/キロ
グラム(kW/kg)で示されている。この表で、「先行技術」は、当技術分野で知られてい
る典型的なエネルギーおよび電力密度を有するキャパシタを指す。この表で、「製品目標」は、商用の実装のための特定の設計基準を満たす可能性のあるキャパシタを指す。この表で、「ベースラインのリチウムイオンキャパシタ」は、電解質が本明細書に記載の添加剤を含有しないキャパシタを指す。この表で、「250Fのリチウムイオンキャパシタ」は、250Fの静電容量を有し、本明細書に記載の電解質添加剤を含有するキャパシタを指す。この表で、「ラボセル」は、本明細書に記載の電解質添加剤を含有する静電容量が15~20F
のキャパシタを指す。この表の情報を比較すると、電解質添加剤が添加された「250Fのリチウムイオンキャパシタ」および「ラボセル」のセルは、「先行技術」と比較してエネルギー密度および電力密度がより大きくなっていたことがわかる。
【0059】
本発明は特定の実施形態および実施例の文脈で開示されているが、当業者であれば、本発明は具体的に開示された実施形態を超えて他の実施形態および/または本発明の他の使用や変更などに拡張されることを理解するであろう。加えて、本発明の実施形態のいくつかの変形が示され、詳細に説明されているが、本発明の範囲内にある他の変更は、この開示に基づいて当業者には容易に明らかであろう。これらの実施形態の特定の特徴および態様の様々な組合せまたは部分的な組み合わせがなされ得ること、そしてそれも本発明の範囲に含まれることを理解されたい。開示された実施形態の様々な特徴および態様は、開示された発明の実施形態の様々な他の態様を形成するために、互いに組み合わせるか、または互いに置き換えることができることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された本発明の範囲は、上記の特定の実施形態によって限定されるべきではない。
【0060】
本明細書で用いられる見出し(表題)は、便宜上のものであって、本明細書に開示される装置および方法の範囲または意味に必ずしも影響を及ぼすものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13