(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084685
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルム、熱収縮ラベル、および包装体
(51)【国際特許分類】
B29C 61/06 20060101AFI20220531BHJP
B29C 61/02 20060101ALI20220531BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220531BHJP
C08G 63/181 20060101ALI20220531BHJP
C08F 32/00 20060101ALI20220531BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20220531BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20220531BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20220531BHJP
【FI】
B29C61/06
B29C61/02
C08J5/18 CFD
C08G63/181
C08F32/00
B29K67:00
B29K23:00
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032454
(22)【出願日】2022-03-03
(62)【分割の表示】P 2017541137の分割
【原出願日】2017-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2016147257
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温の場所で保管や使用をしてもフィルムが破れ難い熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル系フィルム又は環状ポリオレフィン系フィルムであり、下記要件(1)~(5)を満たすことを特徴とする熱収縮性延伸フィルム。(1)未延伸フィルムの示差走査熱量計により測定されたガラス転移温度(Tg)が90℃以上140℃以下(2)80℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合のフィルム主収縮方向の収縮率が12%以下(3)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合のフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が12%以下(4)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合のフィルム主収縮方向の収縮率が30%以上80%以下(5)温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルム主収縮方向、及び主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度が共に10%以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系フィルムであり、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としてテレフタル酸及び/又は2,6-ナフタレンジカルボン酸を含有し、ポリエステルを構成するジオール成分はエチレングリコール及びエチレングリコール以外のアルコール成分からなり、該エチレングリコール以外のアルコール成分は、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールからなる群より選択されてなる1種以上であるか、
又は環状ポリオレフィン系フィルムであり、
下記要件(1)~(5)を満たすことを特徴とする熱収縮性延伸フィルム。
(1)未延伸フィルムの示差走査熱量計により測定されたガラス転移温度(Tg)が90℃以上140℃以下である
(2)80℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の収縮率が12%以下である
(3)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が12%以下である
(4)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の収縮率が30%以上80%以下である
(5)温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルム主収縮方向、及び主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度が共に10%以上である
【請求項2】
フィルム主収縮方向と主収縮方向に対する直交方向の引張破断強度の比(フィルム主収縮方向の引張破断強度÷フィルム主収縮方向に対する直交方向の引張破断強度)が0.1以上0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性延伸フィルム。
【請求項3】
フィルム主収縮方向と主収縮方向に対する直交方向の引裂き伝播強度の比(フィルム主収縮方向の引裂き伝播強度÷フィルム主収縮方向に対する直交方向の引裂き伝播強度)が0.1以上0.5以下であることを特徴とする請求項1、または2のいずれかに記載の熱収縮性延伸フィルム。
【請求項4】
温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルムの主収縮方向の収縮率(所謂 自然収縮率)が1.5%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱収縮性延伸フィルム。
【請求項5】
一軸延伸フィルムであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の熱収縮性延伸フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の熱収縮性延伸フィルムを用いた熱収縮性ラベル。
【請求項7】
請求項6に記載の熱収縮性ラベルが、包装対象物の少なくとも外周の一部に被覆されている包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルム、熱収縮ラベル、および包装体に関するものであり、詳しくは、ラベル用途に好適な熱収縮性フィルム、該熱収縮フィルムを用いたラベル、及び該ラベルを用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。特に飲料用のPETボトル容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
また熱収縮という特徴を活かし、PETボトル容器のラベル以外でも熱収縮フィルムは使用されてきている。例えばモーターでの結線部の被覆用に使用されている。しかしモーターは運転時には50℃前後に温度が上がる物も有る。その為、使用される熱収縮フィルムも60℃付近で使用した時の耐熱性が求められる。
【0004】
ところが熱収縮性フィルムは、夏場等の気温が高い時に温調管理がされていない外の倉庫で保管すると、フィルムが脆くなったり、収縮率が低下するなどの問題が有る。それゆえに熱収縮性フィルムは,温度25℃以下の低温条件下で保管されるのが一般的である。従って、一般的に耐候性が劣る熱収縮フィルムを高温の場所で使用しているとフィルムが脆くなり、振動等で熱収縮フィルムが破れて剥れてしまうような事が生じる課題が有る。これらの原因は、一般的な熱収縮性フィルムである一方向収縮フィルムは一軸延伸から製膜されており、非収縮方向(主収縮する方向に対する直交方向)がフィルム生産工程において未延伸であり、分子配向が伴っていないので、高温でのエージングにより非収縮方向が破れやすい為である。
またフィルムのガラス転移温度が低く、熱による影響でポリマーが劣化し、フィルムが破け易くなっているという事も原因として考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は,上記従来の熱収縮性フィルムが有する課題を解消し、高温な場所で保管や使用してもフィルムが破れ難い(破断し難い)熱収縮フィルムを提供することである。
【0007】
特許文献1に記されているように、過去にも高温でエージングした時に良好な破断伸度が得られる熱収縮性ポリエステルフィルムが報告されている。しかし、この方法は二軸延伸により非収縮方向の機械強度を増す方法である。一般的な熱収縮フィルムは主収縮方向にのみ延伸する一軸延伸フィルムが用いられている。従って上記特許文献1で示す二軸延伸での製造方法では、製造設備費用が高くなり、製造設備が大型化する短所がある。
また一軸延伸しかしていないフィルムは 二軸延伸フィルムと比較すると原料が同じ非晶量でも主収縮方向の収縮率が高くなり、高収縮な用途に適している。
そこで本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、高温下での保管や使用に耐えうる一軸延伸の熱収縮フィルムを新たに見出し、遂に本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の構成よりなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1. 下記要件(1)~(6)を満たすことを特徴とする熱収縮性フィルム。
(1)ガラス転移温度(Tg)が90℃以上140℃以下である。
(2)80℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の収縮率が12%以下である
(3)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が12%以下である
(4)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の収縮率が30%以上80%以下である
(5)温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルム主収縮方向、及び主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度が共に10%以上である
(6)温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルム主収縮方向の140℃収縮率と、エージング前のフィルム主収縮方向の140℃収縮率の差が5%以下である
2. フィルム主収縮方向と主収縮方向に対する直交方向の引張破断強度の比(フィルム主収縮方向の引張破断強度÷フィルム主収縮方向に対する直交方向の引張破断強度)が0.1以上0.5以下であることを特徴とする上記1に記載の熱収縮性フィルム。
3. フィルム主収縮方向と主収縮方向に対する直交方向の引裂き伝播強度の比(フィルム主収縮方向の引裂き伝播強度÷フィルム主収縮方向に対する直交方向の引裂き伝播強度)が0.1以上0.5以下であることを特徴とする上記1、または2のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
4. 温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルムの主収縮方向の収縮率(所謂 自然収縮率)が1.5%以下であることを特徴とする上記1~3のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
5. 一軸延伸フィルムであることを特徴とする、上記1~4のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
6. 上記1~5のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを用いた熱収縮性ラベル。
7. 上記6に記載の熱収縮性ラベルが、包装対象物の少なくとも外周の一部に被覆されている包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一軸方向に延伸された熱収縮性フィルムは、一軸延伸されただけのフィルムであるが、ガラス転移温度が高く、温度50℃・相対湿度70%の環境下で672時間エージング処理した後のフィルム物性変化が小さい。その為、高温な場所で使用された際のフィルム劣化が小さく、破袋が少ない。また一軸延伸されたフィルムなので、生産する為の機械の規模を小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱収縮性フィルムは、下記要件(1)~(6)を満たすことを特徴とする熱収縮性フィルムである。
(1)ガラス転移温度(Tg)が90℃以上140℃以下である
(2)80℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の収縮率が12%以下である
(3)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向に対する直交方向の収縮率が12%以下である
(4)140℃のグリセリン中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向の収縮率が30%以上80%以下である
(5)温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルム主収縮方向、及び主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度が共に10%以上である
(6)温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージング後のフィルム主収縮方向の140℃収縮率と、エージング前のフィルム主収縮方向の140℃収縮率の差が5%以下である
【0011】
また、本発明の熱収縮フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が90℃以上140℃以下である事が望ましい。Tgが90℃未満であると、50℃でエージングした際のエージング温度とTgの差が小さくなり、エージングで劣化しやすくなるので好ましくない。エージング温度とTgの差が小さいと、エンタルピー緩和が大きくなりエージング前後での収縮率差が大きくなり、エージング後のフィルムの伸度が低下して耐劣性が悪くなり好ましくない。Tgは93℃以上が好ましく、更に好ましくは95℃以上である。
またTgが140℃より高いと、140℃での加熱による熱収縮率が小さくなるので好ましくない。Tgは135℃以下が好ましく、更に好ましくは130℃以下である。
【0012】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、80℃の温度に加熱されたグリセリン中に無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの熱収縮率(すなわち、80℃温度のグリセリン熱収縮率)が、フィルム主収縮方向の収縮率が12%以下であることが必要である。
(式1)
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)
【0013】
主収縮方向の80℃のグリセリン収縮率が12%より高いと、温度50℃でエージングすると、エージングと収縮率が高い温度の差が小さく、50℃での自然収縮率が高くなり好ましくない。80℃のグリセリン収縮率は、好ましくは10%以下で、より好ましくは8%以下である。
【0014】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、140℃に加熱されたグリセリン中に無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式1により算出したフィルムの主収縮方向に対する直交方向の熱収縮率(すなわち、140℃のグリセリン熱収縮率)が、12%以下であることが必要である。
【0015】
140℃における主収縮方向に対する直交方向のグリセリン熱収縮率が12%を上回ると、ラベルとして用いた場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなるので好ましくない。140℃における主収縮方向に対する直交方向のグリセリン熱収縮率の上限値は、10%以下であると好ましく、8%以下であるとより好ましい。
【0016】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、140℃に加熱されたグリセリン中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式1により算出したフィルムの主収縮方向の熱収縮率(すなわち、140℃のグリセリン熱収縮率)が、30%以上80%以下であることが必要であり、33%以上77%以下であると好ましく、36%以上74%以下であるとより好ましい。
【0017】
140℃における主収縮方向のグリセリン熱収縮率が30%を下回ると、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうので好ましくなく、反対に、140℃における幅方向のグリセリン熱収縮率が70%を上回ると、ラベルとして用いて場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。
【0018】
また、本発明の熱収縮性フィルムは、下記の方法で測定した温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージングした後の主収縮方向、主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度が共に10%以上である。
【0019】
[引張破断伸度の測定方法]
JIS-K7113に準拠し、所定の大きさの短冊状の試験片を作製し、万能引張試験機でその試験片の両端を把持して、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、破断時までの伸度を測定した。
【0020】
引張破断伸度が10%未満だと、印刷等の長手方向に張力がかかる工程でフィルムが破ける等のトラブルが生じやすい。また高温下でフィルムを熱収縮させ使用した際に、フィルムが振動等で破壊し易くなる等のトラブルが生じ易くなり好ましくない。温度50℃・相対湿度70%の雰囲気下で672時間エージングした後の主収縮方向、主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度がいずれも20%以上であると好ましく、より好ましくは30%以上である。
【0021】
また、本発明の熱収縮性フィルムは、下記の方法で測定した温度50℃・相対湿度70%で672時間エージング前後のフィルム主収縮方向の140℃グリセリン収縮率の差が5%以下である。
【0022】
[エージング前後の熱収縮率差の測定方法]
上式1より,エージング前後のフィルムを140℃グリセリン中でフィルム主収縮方向の熱収縮率を測定した。それを下式2より求めた。
(式2)
エージング前後の熱収縮率差=エージング前の熱収縮率-エージング後の熱収縮率
【0023】
主収縮方向のエージング前後の熱収縮率差が5%より高いと,生産直後と保管後のフィルムの熱収縮率差が大きいので,ラベル等にする際の熱収縮させる温度条件が異なり,収縮仕上り性が悪くなるので好ましくない。幅方向のエージング前後の熱収縮率差の上限値は、4%以下であると好ましく、3%以下であるとより好ましい。また、下限値は0%が好ましい。
【0024】
また、本発明の熱収縮性フィルムは、温度50℃・相対湿度70%で672時間エージング後のフィルム主収縮方向の収縮率(所謂,自然収縮率)が,以下の方法で求めたときに、1.5%以下であることが好ましい。
【0025】
[自然収縮率の測定方法]
フィルム非収縮方向に20mm,フィルム主収縮方向に240mmの長さでサンプリングし,フィルム主収縮方向の長さが200mmとなるように標線を入れる。表線間の長さをエージング前の長さ(mm)とした。概フィルムを温度50℃・湿度70%に設定されたギアオーブンで672時間エージングした後,表線間の長さをエージング後の長さ(mm)として以下の式3より求めた。
(式3)
自然収縮率=(エージング前の長さ-エージング後の長さ)÷エージング前の長さ×100(%)
【0026】
主収縮方向の自然収縮率が1.5%より高いと,主収縮方向が幅方向だと生産直後と保管後のフィルム製品幅が変わり,印刷等の加工工程で寸法が異なってくるので好ましくない。また主収縮方向が長手方向だと、巻き方向に収縮するので、シワが入ったり巻き締りが生じて好ましくない。自然収縮率の上限値は、1.3%以下であると好ましく、1.1%以下であるとより好ましい。また、自然収縮率の下限値は、0%好ましいが,当該原料や生産方式から0.05%が限界であると考えている。
【0027】
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、下式4より求めた引張破断伸度の比は、0.1以上0.5以下であることが好ましい。
(式4)
引張破断伸度の比=主収縮方向の引張破断伸度÷主収縮方向に対する直交方向の引張破断伸度
【0028】
引張破断伸度の比が0.1より小さくと、主収縮方向が伸び難いという事であり、フィルムが振動等で破壊し易くなる等のトラブルが生じ易くなり好ましくない。0.5より高いと主収縮方向の引張破断伸度が高く(非収縮方向の引張破断伸度が低く)なり、主収縮方向にフィルムをカットする際、主収縮方向では無く、非収縮方向へ切れていく為、好ましくない。引張破断伸度の比は、0.15以上0.45以下がより好ましい。
【0029】
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、下式5より求めた引裂き伝播強度の比は、0.1以上0.5以下であることが好ましい。
【0030】
[引裂き伝播強度の測定方法]
JIS-K7128に準拠し、エルメンドルフ法で測定した。
(式5)
引裂き伝播強度の比=主収縮方向の引裂き伝播強度÷主収縮方向に対する直交方向の引裂き伝播強度
【0031】
引裂き伝播強度の比が0.1より小さくと、主収縮方向が伸び難いという事であり、フィルムが振動等で破壊し易くなる等のトラブルが生じ易くなり好ましくない。0.5より高いと主収縮方向の引裂き伝播強度が高く(主収縮方向に対する直交方向の引裂き伝播強度が低く)なり、主収縮方向にフィルムをカットする際に主収縮方向では無く主収縮方向に対する直交方向へ切れていく為、後述のラベル状として包装対象物に被覆後のカット性が悪化するので好ましくない。引裂き伝播強度の比は0.15以上0.45以下が、より好ましい。
【0032】
さらに、本発明の熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、5~80μmが好ましく、10~70μmがより好ましい。
【0033】
本発明の熱収縮フィルムのうち、熱収縮性ポリエステル系フィルムを例に挙げて好適な製造方法を以下説明する。ジカルボン酸成分と多価グリコール成分とで構成されるポリエステルを、押出機から溶融押出しし、導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却してフィルム化することでその未延伸フィルムを得ることができる。
【0034】
なお前記溶融押出しに際しては、必要な熱収縮特性をフィルムに付与するため、共重合ポリエステルを単独で押出すか、又は複数のポリエステル(共重合ポリエステル、ホモポリエステルなど)を混合して押出す。つまり、前記フィルムは、ベースユニット(ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどの結晶性ユニットなど)と、前記ベースユニットを構成する多価グリコール成分(エチレングリコール成分など)とは異なる非晶性をフィルムに与える第2のアルコール成分を含有している。前記ベースユニットを構成する主たる酸成分としてはテレフタル酸及び/又は2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、主たるジオール成分としてはエチレングリコールが好ましい。
なお、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルにおける酸成分、ジオール成分の含有率は、2種以上のポリエステルを混合して使用する場合、ポリエステル全体の酸成分、ジオール成分に対する含有率である。混合後にエステル交換がなされているかどうかにはかかわらない。
【0035】
上記ポリエステルは、いずれも従来の方法により重合して製造され得る。例えば、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などを用いて、ポリエステルが得られる。重合は、回分式および連続式のいずれの方法で行われてもよい。
【0036】
エチレングリコール以外の第2のアルコール成分を含有するポリエステル系フィルムを延伸すると、熱収縮性ポリエステル系フィルムを容易に得ることができる。
【0037】
前記の非晶性を付与する第2のアルコール成分は、ジオール成分および三価以上のアルコール成分が使用できる。ジオール成分には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどのアルキレングリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの環状アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物などのエーテルグリコール類;ダイマージオールなどが含まれる。三価以上のアルコールには、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが含まれる。なお、スピログリコール、ノルボルナンジメタノール、パーヒドロジメタノナフタレンジオール、及びパーヒドロトリメタノアントラセンジメタノール等はモノマーが高価となるため、これらのアルコール成分は使用しないことが好ましい。
【0038】
全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が10モル%以上であることが好ましく、11モル%以上であることがより好ましく、特に12モル%以上であることが好ましい。ここで非晶質成分となりうるモノマーとは、好ましくはネオペンチルグリコールや1,4-シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0039】
また、収縮仕上がり性が特に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムとすると共に、高い熱収縮率でありながら収縮仕上がり性を向上させるためには、前記のように全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコール及び/または1,4-シクロヘキサンジメタノール成分量が10モル%以上であることが好ましく、11モル%以上であることがより好ましく、特に12モル%以上であることが好ましい。該成分の上限は特に限定されるものではないが、該成分の量が多すぎると、フィルムの耐破断性を悪化させる場合があるので、40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下であることが特に好ましい。
【0040】
炭素数8個以上の脂肪族直鎖ジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は、含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な主収縮方向の収縮率を確保しにくくなる。
【0041】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、滑剤として微粒子を添加することによりポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとするのが好ましい。微粒子としては任意のものを選択することができるが、たとえば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子としては、たとえば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05~3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0042】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0043】
本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムには、ガラス転移温度(Tg)を高くする為に、PETと相溶しやすくTgが高い原料を混合して、フィルムのTgを90℃以上140℃以下にする事が好ましい。本報実施例ではPEN(ポリエチレンナフタレート。Tg=120℃)を混合してフィルムのTgを90℃以上とした。混合するPETのTgは75℃であったので、従ってこの混合系ではTgの最高温度は120℃未満である。好ましいPEN原料の比率は、Tgを90℃以上にするためには33%以上が必要であり、好ましくは36%以上である。またPENの比率が高いほどTgは高くなって好ましいが、非晶モノマーが入らなくなるので、PEN比率の上限は70%以下であり、好ましくは57%以下である。また、PENの構成成分である、2,6-ナフタレンジカルボン酸をPETに共重合したポリエステルを使用することもできる。
【0044】
上記の方法で得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸し、熱処理することによって本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。
延伸前の予備加熱工程では、フィルムの温度をTg以上~Tg+50℃以下に加熱することが好ましい。予備加熱工程でフィルム温度がTgより低いと、延伸工程で延伸応力が高くなり破断が生じるので好ましくない。一方、予備加熱工程でフィルムの温度がTg+50℃より高いと、延伸工程で延伸応力が低くなり厚みムラが悪くなるので好ましくない。延伸前の予備加熱工程では、フィルムの温度をTg+5℃以上~Tg+45℃以下に加熱することが更に好ましい。
延伸工程では、フィルムの温度をTg以上~Tg+40℃以下に加熱することが好ましい。延伸工程でフィルム温度がTgより低いと、延伸応力が高くなり破断が生じるので好ましくない。一方、延伸工程でフィルムの温度がTg+40℃より高いと、延伸工程で延伸応力が低くなり厚みムラが悪くなり、収縮率が低くなるので好ましくない。延伸工程では、フィルムの温度をTg+5以上~Tg+35℃以下に加熱することが更に好ましい。
熱固定工程での温度は 延伸工程の温度+10℃以上~延伸工程の温度+90℃以下が好ましい。熱固定工程の温度が 延伸工程の温度+10℃より低いとフィルムの配向緩和が不十分となり、高温でエージングした後の強度が不足し易くなり好ましくない。一方、熱固定工程の温度が延伸工程の温度+90℃より高いと、140℃で測定時の収縮率が低くなり、本発明の熱収縮フィルムとして好ましく無い。熱固定工程の温度は、延伸工程の温度+20℃以上~延伸工程の温度+80℃以下で加熱する事が更に好ましい。
延伸工程での延伸倍率は 3倍以上7倍以下が好ましい。延伸倍率が3倍未満だと厚みムラが悪くなるので好ましくない。一方 延伸倍率が7倍より高いと配向結晶化して140℃で測定時の収縮率が低くなり、本発明の熱収縮フィルムとして好ましく無い。延伸工程での延伸倍率は 3.5倍以上6.5倍以下が更に好ましい。
【0045】
前記延伸中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面にコロナ処理を施し、フィルムの印刷層および/または接着剤層等に対する接着性を向上させることも可能である。
【0046】
また、上記延伸工程中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面に塗布を施し、フィルムの接着性、離型性、帯電防止性、易滑性、遮光性等を向上させることも可能である。
【0047】
本発明の熱収縮フィルムにおいて、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムも好ましい様態である。使用するポリオレフィン樹脂としては、環状ポリオレフィンが好ましい。環状ポリオレフィン樹脂のシクロオレフィン単位としては、ノルボルネン、テトラシクロドデカン単位を有するのが好ましい。また、共重合単位としては非環状オレフィンモノマー単位を有するのが好ましく、特に好ましくはエチレン単位である。特に好ましいシクロオレフィン共重合体としては、ノルボルネン-エチレン共重合体およびテトラシクロドデカン-エチレン共重合体である。中でもエチレン単位が5~80重量%、好ましくは10~60重量%含有する環状ポリオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0048】
環状ポリオレフィン樹脂は通常-20~400℃のガラス転移温度を有するが、本発明で使用する環状ポリオレフィン樹脂は90~140℃である必要があり、好ましくは93~130℃である。ガラス転移温度が90℃未満の場合、エージングの温度が高くなると非晶配向が緩和されて、エージング後の収縮率が低下するので好ましくない。またTgが140℃より高いと、140℃での加熱による熱収縮率が小さくなり好ましくない。
【0049】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの製造方法は特に限定されないが、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムと同様に、原料を押出機により溶融押出しして未延伸フィルムを形成し,その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により一軸延伸して熱処理することによって得ることができる。
【0050】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、前記のオレフィン系樹脂を、押出機を利用して、260~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。オレフィン系の樹脂は、前記ポリエステル樹脂のような乾燥の工程は不要で、未乾燥で用いることができる。
【0051】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。また水冷式により冷却を促進させても良い。
【0052】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸し、熱処理することによって本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを得ることが可能となる。
延伸前の予備加熱工程では、フィルムの温度をTg+10℃以上~Tg+50℃以下に加熱することが好ましい。予備加熱工程でフィルム温度がTg+10℃より低いと、延伸工程で延伸応力が高くなり破断が生じるので好ましくない。一方、予備加熱工程でフィルムの温度がTg+50℃より高いと、延伸工程で延伸応力が低くなり厚みムラが悪くなるので好ましくない。延伸前の予備加熱工程では、フィルムの温度をTg+10℃以上~Tg+45℃以下に加熱することが更に好ましい。
延伸工程では、フィルムの温度をTg以上~予備加熱工程の温度℃以下に加熱することが好ましい。延伸工程でフィルム温度がTgより低いと、延伸応力が高くなり破断が生じるので好ましくない。一方、本発明でのポリプロピレンフィルムは、延伸工程で冷却しながら延伸すると厚みムラが良好となり好ましかったので、上限を予備加熱工程の温度とした。延伸工程では、フィルムの温度をTg+5以上~予備加熱工程の温度―5℃以下に加熱することが更に好ましい。
熱固定工程での温度は、延伸工程の温度+5℃以上~延伸工程の温度+40℃以下が好ましい。熱固定工程の温度が、延伸工程の温度+5℃より低いとフィルムの配向緩和が不十分となり、高温でエージングした後の強度が不足し易くなり好ましくない。一方、熱固定工程の温度が延伸工程の温度+40℃より高いと、140℃で測定時の収縮率が低くなり、本発明の熱収縮フィルムとして好ましく無い。熱固定工程の温度は、延伸工程の温度+10℃以上~延伸工程の温度+35℃以下で加熱する事が更に好ましい。
延伸工程での延伸倍率は、3.5倍以上8倍以下が好ましい。延伸倍率が3.5倍未満だと厚みムラが悪くなるので好ましくない。一方、延伸倍率が8倍より高いと配向結晶化して140℃で測定時の収縮率が低くなり、本発明の熱収縮フィルムとして好ましく無い。延伸工程での延伸倍率は、4倍以上7.5倍以下が更に好ましい。
【0053】
前記延伸中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面にコロナ処理を施し、フィルムの印刷層および/または接着剤層等に対する接着性を向上させることも可能である。
【0054】
また、上記延伸工程中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面に塗布を施し、フィルムの接着性、離型性、帯電防止性、易滑性、遮光性等を向上させることも可能である。
【0055】
本発明の包装体は、前記のポリエステルやポリオレフィン等からなる熱収縮性フィルムを基材とし、包装体の対象物としては、飲料用のペットボトルをはじめ、各種の瓶、缶、菓子や弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる(以下、これらを総称して包装対象物という)。またモーター等のコードの被覆や結線部の補強にも用いる事ができる。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性フィルムを基材とするラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該ラベルを約2~15%程度熱収縮させて包装体に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるラベルには、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良い。
【0056】
ラベルを作成する方法としては、長方形状のフィルムの片面の端部から少し内側に有機溶剤を塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着してラベル状にするか、あるいは、ロール状に巻き取ったフィルムの片面の端部から少し内側に有機溶剤を塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着して、チューブ状体としたものをカットしてラベル状とする。接着用の有機溶剤としては、1,3-ジオキソランあるいはテトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。この他、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素やフェノール等のフェノール類あるいはこれらの混合物が使用できる。またヒートシールによる接着も可能である。また接着剤を使用してチューブ状にする事も可能である。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
本発明のフィルムの評価方法は下記の通りである。
【0059】
[熱収縮率(グリセリン熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃に加熱されたグリセリンの中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下式1にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。
(式1)
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)
【0060】
[エージング前後の熱収縮率差の測定方法]
上式1より、エージング前後のフィルムの140℃グリセリン中でフィルム主収縮方向の熱収縮率を測定した。それを下式2より求めた。なお、フィルムのエージングは、温度50℃・相対湿度70%に設定されたギアオーブンで672時間エージングを行った。
(式2)
エージング前後の熱収縮率差=エージング前の熱収縮率-エージング後の熱収縮率
【0061】
[自然収縮率の測定方法]
フィルム主収縮方向に対する直交方向に20mm、フィルム主収縮方向に240mmの長さでサンプリングし、フィルム主収縮方向の長さが200mmとなるように標線を入れる。表線間の長さをエージング前の長さ(mm)とした。概フィルムを温度50℃・相対湿度70%に設定されたギアオーブンで672時間エージングした後、表線間の長さをエージング後の長さ(mm)として以下の式3より求めた。
(式3)
自然収縮率=(エージング前の長さ-エージング後の長さ)÷エージング前の長さ×100(%)
【0062】
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgを、-40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をTg(ガラス転移点)とした。
【0063】
[引張破断強度、伸度の測定方法]
JIS-K7113に準拠し、所定の大きさの短冊状の試験片を作製し、万能引張試験機でその試験片の両端を把持して、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムの引張破断時の伸びを引張破断伸度、破断時の強度を引張破断強度として算出した。なお、エージング後の値を測定する場合、フィルムのエージングは、温度50℃・相対湿度70%に設定されたギアオーブン中で672時間エージングを行った。
【0064】
[引張破断伸度の比]
上述した方法で求めた主収縮方向の値と主収縮方向に対する直交方向の値を以下の式4より求めた。
(式4)
引張破断伸度の比=主収縮方向の値÷主収縮方向に対する直交方向の値
【0065】
[引裂き伝播強度]
JIS-K7128に準拠し、エルメンドルフ法で測定した。なお、エージング後の値を測定する場合、フィルムのエージングは、温度50℃・相対湿度70%に設定されたギアオーブン中で672時間エージングを行った。
【0066】
[引裂き伝播強度の比]
上述した方法で求めた主収縮方向の値と主収縮方向に対する直交方向の値を以下の式5より求めた。
(式5)
引裂き伝播強度の比=主収縮方向の値÷主収縮方向に対する直交方向の値
【0067】
[収縮仕上り性]
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金色のインキで2色印刷した。そして、印刷したフィルムの両端部を210℃のヒートシールバーで1秒かけてヒートシールする事により円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としたラベル)を作成した。しかる後、Fuji Astec Inc製熱風トンネルを用い、通過時間10秒、ゾーン温度140℃で、直径8cm、高さ10cmのスチール製の金属缶を用いてテストした(測定数=20)。
なお、装着の際には、ラベルの折り径は14cmであり、ラベルの収縮は10%程度である。
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
○:シワ、飛び上り、収縮不足の何れも未発生
×:シワ、飛び上り、又は収縮不足が発生
【0068】
[ラベルでの収縮歪み]
収縮後の仕上がり性の評価として、装着されたラベル上部の360度方向の歪みをゲージを使用して測定を行い、歪みの最大値を求めた。その時、基準を以下とした。
○ :最大歪み 1.5mm未満
× :最大歪み 1.5mm以上
【0069】
[エージング保管後のラベル強度]
缶にラベルを装着した後、温度70℃・相対湿度70%の恒温恒湿機で504時間保管した。保管後に缶からラベルを取り、主収縮方向と非収縮方向の引張破断伸度を上記と同じ方法で測定を行った。
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
○:主収縮方向、主収縮方向に対する直交方向共に破断伸度が10%以上
×:主収縮方向、主収縮方向に対する直交方向のどちらか一方、または共に破断伸度が10%未満
【0070】
[非晶成分含有量]
サンプリングしたフィルム約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比9/1)0.7mlに溶解し、1H-NMR(varian製、UNITY50)を使用して求めた。外側層の各々の非晶成分の含有量(モル数)を求め、その差を非晶成分の含有量(モル数)の差とした。なお、本願実施例においてはいずれも、非晶成分含有量としてネオペンチルグリコール含有量を求めた。
【0071】
また、実施例、比較例で使用したポリエステル原料の性状、組成、実施例、比較例におけるフィルムの製造条件(延伸・熱処理条件等)を、それぞれ表1、表2に示す。
【0072】
【表1】
表中の略号は、以下の通りである。
DMT:ジメチルテレフタレート、EG:エチレングリコール、
NPG:ネオペンチルグリコール、PEN:ポリエチレンナフタレート
IPA:イソフタル酸、NDA:ナフタレンジカルボン酸、
ビスA―EO:ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物
【0073】
【0074】
実施例に用いたポリエステルは以下の通りである。
原料a,b:ポリエチレンテレフタレート 極限粘度0.75dl/g
原料c:ネオペンチルグリコール30モル%とエチレングリコール70モル%と テレフタル酸とからなるポリエステル 極限粘度0.78dl/g
原料d:PEN Tg120℃ 極限粘度0.6dl/g
原料e:環状ポリオレフィン樹脂(ポリプラスチックス株式会社製 製品名:Topas(商標登録)5013)Tg140℃
原料f:環状ポリオレフィン樹脂(ポリプラスチックス株式会社製 製品名:Topas(商標登録)8007)Tg80℃
原料g:テレフタル酸90モル%とイソフタル酸10モル%とエチレングリコール100モル%からなるポリエステル 極限粘度0.78dl/g
原料h:ナフタレンジカルボン酸100モル%とエチレングリコール90モル%とビスフェノールAエチレンオキサイド付加物10モル%からなるポリエステル 極限粘度0.75dl/g
【0075】
[実施例1]
上記した原料a,原料b,原料c,原料dを重量比5:5:50:40で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが180μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは93℃であった。
【0076】
上記の如く得られた未延伸フィルムを、幅方向の両端側をクリップによって把持した状態で、120℃、風速12m/秒で8秒間に亘って予熱した後に、100℃、風速18m/秒で幅方向(横方向)に4.0倍延伸した。しかる後、その横延伸フィルムを幅方向の両端側をクリップによって把持した状態でテンター内の最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、125℃、風速10m/秒の温度で8秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、幅500mmで約45μmの一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
目標の特性となるフィルムが得られ、エージング後の物性変化、収縮仕上り性等に優れた良好な結果であった。
【0077】
[実施例2]
原料の混合比率を原料a,原料c,原料dを重量比5:45:50に変更し、未延伸フィルムのTgは98℃であった。それ以外は実施例1と同様の方法で,一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。得られたフィルムは実施例1同様に良好な結果であった。
【0078】
[実施例3]
上記した原料e,原料fを重量比80:20で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが180μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは128℃であった。
【0079】
上記の如く得られた未延伸フィルムを、幅方向の両端側をクリップによって把持した状態で、140℃、風速12m/秒で8秒間に亘って予熱した後に、133℃、風速18m/秒で幅方向(横方向)に4.0倍延伸した。しかる後、その横延伸フィルムを幅方向の両端側をクリップによって把持した状態でテンター内の最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、150℃、風速10m/秒の温度で8秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、幅500mmで約45μmの一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
目標の特性となるフィルムが得られ、エージング後の物性変化、収縮仕上り性等に優れた良好な結果であった。
【0080】
[実施例4]
原料の混合比率を原料e,原料fを重量比50:50に変更し、未延伸フィルムのTgは110℃であった。それ以外は実施例1と同様の方法で,一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。得られたフィルムは実施例3同様に良好な結果であった。
【0081】
[比較例1]
原料の混合比率を原料a,原料b,原料c,原料dを重量比5:25:50:20に変更し、未延伸フィルムのTgは84℃であった。それ以外は実施例1と同様の方法で,一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。得られたフィルムは、エージング後の引張り破断伸度が劣り、実施例に比較して劣るフィルムであった。
【0082】
[比較例2]
原料の混合比率を原料a,原料b,原料cを重量比5:45:50に変更し、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが180μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは75℃であった。
【0083】
上記の如く得られた未延伸フィルムを、幅方向の両端側をクリップによって把持した状態で、100℃、風速12m/秒で8秒間に亘って予熱した後に、80℃、風速18m/秒で幅方向(横方向)に4.0倍延伸した。しかる後、その横延伸フィルムを幅方向の両端側をクリップによって把持した状態でテンター内の最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、140℃、風速10m/秒の温度で8秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、幅500mmで約45μmの一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
エージング後の引張り破断伸度が劣り、実施例に比較して劣るフィルムであった。
【0084】
[比較例3]
原料fを重量比100に変更し、未延伸フィルムのTgは80℃であった。それ以外は比較例2と同様の方法で,一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。エージング後の引張り破断伸度が劣り、実施例に比較して劣るフィルムであった。
【0085】
[比較例4]
上記した原料g、原料hを重量比60:40で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を290℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが202μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは91℃であった。得られた未延伸フィルムを、幅方向の両端側をクリップによって把持した状態で、120℃、風速12m/秒で8秒間に亘って予熱した後に、120℃、風速12m/秒で幅方向(横方向)に4.5倍延伸した。しかる後、その横延伸フィルムを幅方向の両端側をクリップによって把持した状態でテンター内の最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、120℃、風速12m/秒の温度で8秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、幅500mmで約45μmの一軸延伸フィルムを連続的に製造した。そして得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
収縮が不足し、収縮仕上り性が劣るフィルムであった。またエージング後の収縮率低下も大きく、実施例に比較して劣るフィルムであった。
【0086】