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特開2022-84735ドローン、ドローンの制御方法、および、ドローンの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084735
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ドローン、ドローンの制御方法、および、ドローンの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20220531BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220531BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220531BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220531BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C27/04
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64D47/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037674
(22)【出願日】2022-03-11
(62)【分割の表示】P 2021507281の分割
【原出願日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2019049393
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドローンの周囲に強い風が吹いた場合であっても、正確な撮影および薬剤散布を担保する。
【解決手段】作業エリアを飛行して、作業エリアに対し所定の動作を行う第1動作部22と、作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす風を検知する検知部23と、風が検知される検知地点を記憶する記憶部234と、検知地点に対して、風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う第2動作部24と、を備える、ドローン100。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し所定の動作を行う第1動作部と、
前記作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす風を検知する検知部と、
前記風が検知される検知地点を記憶する記憶部と、
前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う第2動作部と、
を備える、
ドローン。
【請求項2】
前記検知部は、瞬間風速が第1閾値以上となるとき、前記風を検知する、
請求項1記載のドローン。
【請求項3】
前記検知部は、平均風速が第2閾値以上となるとき、前記風を検知する、
請求項1又は2記載のドローン。
【請求項4】
前記検知部は、風向が追い風以外の向きであるとき、前記風を検知する、
請求項2又は3記載のドローン。
【請求項5】
前記第2動作部は、前記検知地点を再飛行して、前記検知地点を撮影する、
請求項1乃至4のいずれかに記載のドローン。
【請求項6】
前記第2動作部は、前記検知地点を再飛行して、薬剤を散布する、
請求項1乃至5のいずれかに記載のドローン。
【請求項7】
前記第1動作部は前記作業エリアに薬剤を散布する動作を行い、
前記記憶部は、前記風の前記検知地点において薬剤が到達する薬剤投下点を記憶し、
前記第1動作部および前記第2動作部は、前記薬剤投下点への散布を行わない、又は前記薬剤投下点における薬剤投下密度を低くする、
請求項6記載のドローン。
【請求項8】
前記第1動作部は、前記作業エリア内の画像を取得して、前記画像を分析する第1分析を行い、
前記第2動作部は、前記第1動作部が取得する画像のうち、前記検知地点において取得される画像に、前記第1分析とは異なる第2分析を行う、
請求項1乃至7のいずれかに記載のドローン。
【請求項9】
前記第1分析は、前記作業エリアに生育する作物の中部乃至上部の画像を分析する動作であり、
前記第2分析は、前記作物の株元の画像を分析する動作である、
請求項8記載のドローン。
【請求項10】
前記第2分析は、前記作物の株元の画像に基づいて、前記作物の病理診断および分げつ数判定の少なくともいずれかを行う動作である、
請求項9記載のドローン。
【請求項11】
前記作業エリアにおける飛行モードを設定する飛行モード設定部をさらに備え、
前記飛行モード設定部は、前記第2分析の結果に基づいて前記飛行モードを変更する、
請求項8乃至10のいずれかに記載のドローン。
【請求項12】
前記飛行モードは、前記作業エリアに薬剤を散布する薬剤散布モード、前記作業エリアの作物の中部乃至上部を撮影する上部撮影モード、および前記作物の株元を撮影する株元撮影モードを少なくとも含む、
請求項11記載のドローン。
【請求項13】
前記株元撮影モードの飛行高度は、前記上部撮影モードより低い、
請求項12記載のドローン。
【請求項14】
前記株元撮影モードの飛行速度は、前記上部撮影モードより遅い、
請求項12又は13記載のドローン。
【請求項15】
前記株元撮影モードで前記作業エリア内を飛行させる株元撮影部をさらに備え、
前記飛行モード設定部は、前記第2分析により病理地点が発見されるとき、前記飛行モードを前記株元撮影モードに変更し、前記株元撮影部は、前記病理地点よりも広範囲にわたって前記作業エリア内を飛行させる、
請求項12乃至14のいずれかに記載のドローン。
【請求項16】
前記株元撮影部は、前記病理地点の周辺を前記株元撮影モードで飛行し、前記病理地点の周辺の外側に、さらに病理地点が拡大していると判断される場合は、当該外側の領域を前記株元撮影モードで飛行することを決定する、
請求項15記載のドローン。
【請求項17】
前記株元撮影部は、前記作業エリアの外縁を前記株元撮影モードで飛行する、
請求項15又は16記載のドローン。
【請求項18】
前記作業エリアの飛行経路を変更する飛行経路変更部をさらに備え、
前記飛行経路変更部は、前記検知部により検知される風の方向に応じて前記飛行経路を変更する、
請求項1乃至17のいずれかに記載のドローン。
【請求項19】
前記飛行経路変更部は、前記飛行経路を、前記検知される風の風向きに沿う経路をより多く含む経路に変更する、
請求項18記載のドローン。
【請求項20】
作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し所定の動作を行うステップと、
前記作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす風を検知するステップと、
前記風が検知される検知地点を記憶するステップと、
前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行うステップと、
を含む、
ドローンの制御方法。
【請求項21】
作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し所定の動作を行う命令と、
前記作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす風を検知する命令と、
前記風が検知される検知地点を記憶する命令と、
前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う命令と、
をコンピュータに実行させる、
ドローンの制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドローン、ドローンの制御方法、および、ドローンの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
ドローンが飛行する際、ドローン又は周囲に強い風が吹くと、機体が風に煽られて姿勢角が変化し、撮影視野や薬剤の吐出方向がずれるおそれがある。また、薬剤が風で飛ばされるおそれがある。そこで、ドローンの周囲に強い風が吹いた場合であっても、正確な撮影および薬剤散布を担保することができるドローンが必要とされている。
【0005】
特許文献2には、飛行ロボット周囲の風速を判定し、風速とバッテリ残量に応じて飛行ロボットのルートを再生成する飛行ロボット制御システムが開示されている。特許文献3には、飛行ロボット周囲の風速におうじてバッテリ残量の閾値を設定し、バッテリ残量が閾値未満であるとき帰還モードに移行する飛行ロボット制御システムが開示されている。特許文献4には、風情報と散布作業における散布領域の標準偏差とに基づき、飛行体の飛行位置を調整する飛行制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開公報 特開2001-120151
【特許文献2】特許公開公報 特開2018-052341
【特許文献3】特許公開公報 特開2018-055463
【特許文献4】特許公開公報 特開2019-008409
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドローンの周囲に強い風が吹いた場合であっても、正確な撮影および薬剤散布を担保することができるドローンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンは、作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し所定の動作を行う第1動作部と、前記作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす強風を検知する検知部と、前記風が検知される検知地点を記憶する記憶部と、前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う第2動作部と、を備える。
【0009】
前記検知部は、風速が閾値以上となるとき、前記強風を検知するものとしてもよい。
【0010】
前記検知部は、風向が追い風以外の向きであるとき、前記強風を検知するものとしてもよい。
【0011】
前記第2動作部は、前記検知地点を再飛行して、前記検知地点を撮影するものとしてもよい。
【0012】
前記第2動作部は、前記検知地点を再飛行して、薬剤を散布するものとしてもよい。
【0013】
前記第1動作部は前記作業エリアに薬剤を散布する動作を行い、前記記憶部は、前記強風の前記検知地点において薬剤が到達する薬剤投下点を記憶し、前記第1動作部および前記第2動作部は、前記薬剤投下点への散布を行わない、又は前記薬剤投下点への散布濃度を低くするものとしてもよい。
【0014】
前記第1動作部は、前記作業エリア内の画像を取得して、前記画像を分析する第1分析を行い、前記第2動作部は、前記第1動作部が取得する画像のうち、前記検知地点において取得される画像に、前記第1分析とは異なる第2分析を行うものとしてもよい。
【0015】
前記第1分析は、前記作業エリアに生育する作物の中部乃至上部の画像を分析する動作であり、前記第2分析は、前記作物の株元の画像を分析する動作であるものとしてもよい。
【0016】
前記第2分析は、前記作物の株元の画像に基づいて、前記作物の病理診断および分げつ数判定の少なくともいずれかを行う動作であるものとしてもよい。
【0017】
前記作業エリアにおける飛行モードを設定する飛行モード設定部をさらに備え、前記飛行モード設定部は、前記第2分析の結果に基づいて前記飛行モードを変更するものとしてもよい。
【0018】
前記飛行モードは、前記作業エリアに薬剤を散布する薬剤散布モード、前記作業エリアの作物の中部乃至上部を撮影する上部撮影モード、および前記作物の株元を撮影する株元撮影モードを少なくとも含むものとしてもよい。
【0019】
前記株元撮影モードの飛行高度は、前記上部撮影モードより低いものとしてもよい。
【0020】
前記株元撮影モードの飛行速度は、前記上部撮影モードより遅いものとしてもよい。
【0021】
前記株元撮影モードで前記作業エリア内を飛行させる株元撮影部をさらに備え、前記飛行モード設定部は、前記第2分析により病理地点が発見されるとき、前記飛行モードを前記株元撮影モードに変更し、前記株元撮影部は、前記病理地点よりも広範囲にわたって前記作業エリア内を飛行させるものとしてもよい。
【0022】
前記株元撮影部は、前記病理地点の周辺を前記株元撮影モードで飛行し、前記病理地点の周辺の外側に、さらに病理地点が拡大していると判断される場合は、当該外側の領域を前記株元撮影モードで飛行することを決定するものとしてもよい。
【0023】
前記株元撮影部は、前記作業エリアの外縁を前記株元撮影モードで飛行するものとしてもよい。
【0024】
前記作業エリアの飛行経路を変更する飛行経路変更部をさらに備え、前記飛行経路変更部は、前記検知部により検知される風の方向に応じて前記飛行経路を変更するものとしてもよい。
【0025】
前記飛行経路変更部は、前記飛行経路を、前記検知される風の風向きに沿う経路をより多く含む経路に変更するものとしてもよい。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係るドローンの制御方法は、作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し所定の動作を行うステップと、前記作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす強風を検知するステップと、前記風が検知される検知地点を記憶するステップと、前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行うステップと、を含む。
【0027】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係るドローンの制御プログラムは、作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し所定の動作を行う命令と、前記作業エリア内の飛行中において、所定の条件を満たす強風を検知する命令と、前記風が検知される検知地点を記憶する命令と、前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う命令と、をコンピュータに実行させる。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0028】
ドローンの周囲に強い風が吹いた場合であっても、正確な撮影および薬剤散布を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願発明に係るドローンの平面図である。
図2】上記ドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】上記ドローンが有する薬剤散布システムの全体概念図である。
図7】上記ドローンが有する薬剤散布システムの別の例を示す全体概念図である。
図8】上記ドローンが有する薬剤散布システムのさらに別の例を示す全体概念図である。
図9】上記ドローンが作業を行う圃場の様子を示す概念図である。
図10】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
図11】上記ドローンが有する機能ブロック図である。
図12】上記ドローンが強風を検知して再飛行を行うフローチャートである。
図13】上記ドローンが強風を検知して第2分析を行うフローチャートである。
図14】上記ドローンが株元撮影モードで病理地点の分布を取得するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0031】
まず、本発明にかかるドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0032】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0033】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。図2、および、図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0034】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0035】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0036】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404は、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。
【0037】
操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100の動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0038】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他の作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0039】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。
【0040】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0041】
小型携帯端末401aは例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100および移動体406aの動作を変更してもよい。小型携帯端末401aは、ドローン100および移動体406aのいずれからでも情報を受信可能である。また、ドローン100からの情報は、移動体406aを介して小型携帯端末401aに送信されてもよい。
【0042】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。発着地点406は、ドローン100に記憶されている座標により規定される仮想の地点であってもよいし、物理的な発着台があってもよい。
【0043】
なお、図7に示す例のように、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、営農クラウド405が、それぞれ基地局404と接続されている構成であってもよい。
【0044】
また、図8に示す例のように、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されている構成であってもよい。
【0045】
図9に示すように、ドローン100は、圃場403の上空を飛行し、圃場内の作業を遂行する。本実施形態においては、1個の圃場403(作業エリアの例)1個のドローン100が飛行し、作業を行うが、1個の圃場403において複数のドローンが飛行および作業してもよい。ドローン100は、圃場403内にあらかじめ計画される運転経路51に沿って飛行しながら、薬剤を散布したり、圃場403a内を撮影したりする。運転経路51は、例えば圃場403内を往復して、走査するように飛行する経路であるが、どのような経路であってもよい。運転経路51に沿う飛行において行われる撮影および薬剤散布、ならびに、当該飛行に基づいて得られるデータを分析する動作は、第1動作の例である。
【0046】
運転経路51は、始点51s、作業済経路51a、未作業経路51b、および終点51eを備える。ドローン100は始点51sから飛行を開始し、終点51eまで飛行する。ドローン100がすでに飛行した経路を作業済経路51a、これから飛行する予定の経路を未作業経路51bとする。
【0047】
図10に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0048】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0049】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0050】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0051】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。侵入者検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。侵入者接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、侵入者接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0052】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0053】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0054】
ドローン100は、飛行制御部21、第1動作部22、強風検知部23、第2動作部24、飛行モード設定部25、株元撮影部26、および飛行経路変更部27を有する。
【0055】
飛行制御部21は、ドローン100が有するモータ102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部21は、例えばフライトコントローラー501の機能によって実現される。
【0056】
第1動作部22は、ドローン100が行う第1動作を制御する機能部である。第1動作は、圃場403を飛行して圃場403の画像を撮影し、当該画像を分析する動作、および圃場403に薬剤を散布する動作を含む。なお、第1動作は、計画されている運転経路51に沿って飛行しながら撮影又は薬剤散布を行ってもよいし、外的な要因に基づいて経路が決定されてもよい。
【0057】
第1動作部22は、撮影部221、散布部222および第1分析部223を備える。
【0058】
撮影部221は、ドローン100により圃場403を撮影する機能部であり、例えばマルチスペクトルカメラ512等のカメラにより実現される。撮影部221は、圃場403の作物の画像を取得する。撮影部221は、特に作物の生育状況を分析できる画像を取得する。撮影部221は、圃場403に対して特定の波長の光線を照射する照射部をさらに備え、当該光線の圃場403からの反射光を受光可能になっていてもよい。特定の波長の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)であってもよい。当該光線の反射光を分析することで、作物の窒素吸収量を推定し、ひいては作物の生育状況を分析することができる。
【0059】
散布部222は、薬剤タンク104に貯留される薬剤を、圃場403に散布する機能部である。散布部222は、精確な密度で圃場403に薬剤が散布されるように、ドローン100の飛行高度、速度、および加速度等に応じて吐出量を制御することができる。
【0060】
撮影部221および散布部222は、同時に撮影および散布を行ってもよいし、ある飛行のときには撮影のみ行い、別の飛行のときに散布のみ行うようにしてもよい。例えば、撮影時と散布時でドローン100の飛行モードを異ならせるようにして、ドローン100が撮影モードで飛行するときに撮影を行い、薬剤散布モードで飛行するときに薬剤散布を行ってもよい。
【0061】
第1分析部223は、撮影部221により取得される画像を分析する、第1分析を行う機能部である。第1分析部223は、例えば、赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)の反射光による画像を取得してNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)を計算する。NDVIによれば、作物の生育状況の分析、ひいては、作物の収穫量の予測を行うことができる。NDVIは(IR - R)/(IR + R)という計算式により求められる(ここで、IRは近赤外光の反射率、Rは赤色光の反射率)。
【0062】
無風又は弱風の場合、圃場に生育する作物は略直立して密集しているため、主に作物の中部乃至上部が撮影される。したがって、第1分析は、作物の中部乃至上部の画像を分析する。
【0063】
強風検知部23は、所定の条件を満たす風を検知する機能部である。強風検知部23は、特に、ドローン100およびその周辺に吹き付ける一時的な強い風を検知する。ドローン100は通常、計画通りの撮影視野や薬剤の散布地点を担保するため、ドローン100の姿勢角、特にピッチ角およびロール角が一定になるように制御されている。しかしながら、一時的な強い風が吹いた場合には、ドローン100の姿勢が崩れ、計画通りの撮影および散布ができない場合がある。また、一時的な強い風により、作物が風で倒伏すると、以前の診断との比較が困難になったり、倒伏方向によっては診断精度が低下したりする。薬剤が風で飛散する場合にも、計画通りの撮影および散布が困難である。そこで、強風検知部23は、計画通りの撮影および散布ができない風を検知して、当該検知地点を記憶する。
なお、強風検知部23は、一時的な強い風に代えて、又は加えて、平均的に強く吹いている風を検知してもよい。
【0064】
また、所定以上の風速下における撮影時には、風により作物が倒伏することで、無風および弱風時とは異なる画像が取得される。より具体的には、作物の株元が撮影される。この株元画像に、第1分析とは異なる分析を行うことで、株元の病理判断を行ったり、分げつ数を計数したりすることができる。強風検知部23は、株元が撮影される風を検知して、当該検知地点を記憶する。
【0065】
強風検知部23は、風速測定部231、風向測定部232、強風判定部233および検知地点記憶部234を備える。
【0066】
風速測定部231は、例えば接触検知機により風によって発生する応力を測定することで風速を算出する測定部である。また、風速測定部231は、風杯型、風車型などの風速計を有していてもよい。風速測定部231は、風速を直接検知する別途のセンサを有していてもよい。風速測定部231は、現在の姿勢角と無風状態の姿勢角との差に基づいて風速を算出してもよい。
【0067】
風速測定部231は、ドローン100に吹きつける全方向からの風の風速を測定可能に構成されている。また、風速測定部231は、特に、ドローン100の通常飛行状態における前後方向および左右方向の風速を測定可能に構成されていてもよい。
【0068】
風速測定部231は、対気速度から対地速度を差し引くことにより、ドローン100に吹き付ける進行方向の風速を求めてもよい。対地速度は、地面に対して実際に実現されるドローン100の速度である。対気速度は、ドローン100の推進器が所定の対地速度を実現するために、風の影響を加味して発揮する稼働力を、無風状態における速度に変換したときの速度である。ドローン100の進行方向に直交する方向の対気速度は0であるから、対地速度を求めることで進行方向に直交する風の風速を求めることができる。風速測定部231は、対地速度および対気速度を、方向を加味してベクトルとして計算することにより、ドローン100に吹き付ける風の方向を求めることができる。
【0069】
風速測定部231は、重量推定部231-1と、対地速度を算出する対地速度算出部231-2と、対気速度を算出する対気速度算出部231-3と、を備える。
【0070】
重量推定部231-1は、ドローン100の総重量mを推定する機能部である。重量推定部231-1は、積載物の積載重量を含むドローン100の総重量mを推定してもよいし、変化し得る積載物の積載重量を推定した上で、重量が変化しない構成、例えばドローン100のフライトコントローラー501、回転翼101、モーター102その他補機の重量を加算することにより、積載物を含むドローン100の総重量mを推定してもよい。重量が変化し得る積載物は、本実施形態においては薬剤である。
【0071】
重量推定部231-1は、ドローン100の高度が変化しない状態において推進器が発揮する高さ方向の推力Tに基づいて、積載物の積載重量を含むドローン100の総重量mを推定してもよい。ドローン100の推進器が発揮する高さ方向の推力Tは、ドローン100の高度が変化しない状態において、ドローン100が受ける重力加速度gと釣り合っているためである。
【0072】
重量推定部231-1は、流量センサー510によって測定される薬剤タンク104からの吐出流量を積算して薬剤吐出量を求め、当初積載された薬剤量から薬剤吐出量を減算することにより、薬剤タンク104の重量を推定してもよい。本構成によれば、ドローン100の飛行状態に関わらず薬剤タンク104の重量を推定することができる。また、重量推定部231-1は、例えば薬剤タンク104内の液面高さを推定する機能を有していてもよい。重量推定部231-1は、薬剤タンク104内に配置される液面計又は水圧センサー等を用いて重量を推定してもよい。
【0073】
対地速度算出部231-2は、GPSモジュール504から空間の絶対速度を求めることで対地速度を算出できる。また、対地速度測定部242-1は、ドローン100が有するGPSモジュールRTK504-1,504-2により求めることができる。さらに、対地速度測定部242-2は、6軸ジャイロセンサー505により取得されるドローン100の加速度を積分することによっても求めることが可能である。すなわち、本構成によれば、ドローン100に別途の風速測定手段を搭載することなく、簡易な構成で、ドローン100に吹き付ける風の風速を求めることができる。
【0074】
対気速度算出部231-3は、ドローン100の姿勢角θおよび重量に基づいて対気速度を求めることができる。ドローン100が地面からの高度L、姿勢角0度で飛行しているときの薬剤投下点と、姿勢角θで飛行しているときの薬剤投下点との変位量Dは、以下の式の通り求められる。
D=L×tanθ (1)
ドローン100が等速移動中又はホバリング中において、空気抵抗による抗力Fdと、対気速度vaとは、以下の式が成り立つ。
Fd=(1/2) × ρva 2 S×Cd (2)
なお、空気密度ρ、空気抵抗係数Cdである。前方投影面積等の代表面積Sは、ドローン100の大きさおよび形状に基づいてあらかじめ求められる値である。
また、姿勢角θは、抗力Fdとの間に、以下の式が成り立つ。
Fd=mg tanθ (3)
なお、mはドローン100の重量である。ドローン100が等速移動中又はホバリング中において、対気速度vaは、式(1)および(2)を解くことで、以下の式により求めることができる。
(4)
gは、重力加速度である。このように、ドローン100の姿勢角θおよび重量mに基づいて、ドローン100の対気速度vaを求めることができる。
【0075】
風向測定部232は、ドローン100およびその周辺に吹く風の風向を測定する機能部である。風向測定部232は、測定される風向を時間と共に記録してもよい。
【0076】
強風判定部233は、風速および風向きに基づいて、強風を判定する機能部である。強風判定部233は、一時的な強い風をリアルタイムに判定してもよいし、事後的に判定してもよい。強風判定部233は、測定される瞬間風速が所定の第1閾値以上の風速である場合に、強風と判定する。また、強風判定部233は、所定以上の風速が継続された時間が所定未満であるとき、強風と判定してもよい。強風が継続されると、ドローン100は姿勢制御や吐出量制御を行うため、計画通りの撮影および散布が再開される可能性が高い一方、一時的な強い風に対しては制御が追い付かない場合がある。したがって、短時間の一時的な強い風を検知することで、再撮影および再散布等の通常と異なる処理を適切に行うことができる。強風判定部233は一定時間内での風速の変位量、すなわち風の加速度が所定以上のとき、強風と判定してもよい。この構成によれば、姿勢制御や吐出量制御が間に合わなかった地点を検知することができる。
【0077】
なお、強風判定部233は、平均風速が第2閾値以上となるとき、第2動作部24が動作を行う風である旨検知してもよい。第2閾値は、第1閾値とは異なっていてもよい。この構成によれば、姿勢制御や吐出量制御が十分でなかった場合にも、再撮影および再散布等の通常と異なる処理を適切に行うことができる。
【0078】
強風判定部233は、ドローン100が第1動作として行っている動作の種類によって、強風と判定する条件を異ならせてもよい。例えば、薬剤散布時の風速の閾値は、撮影時の風速の閾値よりも小さくてもよい。散布される薬剤は風により飛散しやすいので、撮影に比べて風の影響をより強く受けるためである。
【0079】
また、強風判定部233は、風の判定条件を段階的に複数保持していてもよい。強風判定部233は、撮影時において、通常撮影可能な風、株元撮影可能な風、および再撮影が必要な風を区別して判定してもよい。また、強風判定部233は、風速が所定以上であって、測定される風向が進行方向に沿う向き、すなわち追い風であるときに株元撮影可能な風と判定してもよい。強風判定部233は、風向が追い風以外の向きであるとき、強風と検知して、再撮影が必要な風と判定してもよい。
【0080】
検知地点記憶部234は、強風が検知される検知地点を記憶する機能部である。検知地点記憶部234は、強風が検知されるときにドローン100が存在する座標を例えば3次元座標により記憶する。検知地点記憶部234は、再散布が必要な風、株元撮影可能な風、および再撮影が必要な風を区別して検知地点の情報と共に記憶する。
【0081】
検知地点記憶部234は、検知地点において散布される薬剤の投下点を算出し、記憶してもよい。検知地点において散布される薬剤は、意図通りの位置とは異なる地点に到達する。散布部222又は補完散布部242は、強風時の薬剤投下点の座標を参照して、当該薬剤投下点には薬剤の更なる散布を行わないようにするか、又は当該薬剤投下点における薬剤投下密度を低くする。ここで、薬剤投下点における薬剤投下密度を低くする手段として、薬剤吐出量を減少させる、ドローン100の飛行速度を速くする、ドローン100の飛行高度を高くする、又はこれらの組み合わせを実施することができる。この構成によれば、強風時に薬剤が意図せず散布される地点に関しても、計画通りの薬剤濃度を担保することができる。
【0082】
第2動作部24は、強風が検知される検知地点に対して行う動作を制御する機能部である。第2動作部24は、検知地点に対して、強風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う。第2動作部24は、補完撮影部241、補完散布部242および第2分析部243を備える。
【0083】
補完撮影部241は、強風判定部233により再撮影が必要な風が検知された地点を再飛行し、再撮影を行う機能部である。補完撮影部241の各構成は、撮影部221と同様である。補完撮影部241は、強風判定部233が通常撮影可能な風を検知しているときに、再撮影を行う。
【0084】
補完散布部242は、強風判定部233により再散布が必要な風が検知された地点を再飛行し、再散布を行う機能部である。補完散布部242の各構成は、散布部222と同様である。補完散布部242は、強風判定部233が薬剤散布可能な風を検知しているときに、再撮影を行う。
【0085】
補完撮影部241および補完散布部242は、検知地点を飛行するための飛行経路を生成する。補完撮影部241および補完散布部242は、検知地点が複数ある場合および検知地点が所定の範囲を有する場合、当該検知地点を効率よく飛行する最短経路を生成してもよい。検知地点を飛行するための飛行経路の始点と終点は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0086】
第2分析部243は、撮影部221が取得する画像のうち、強風判定部233により株元撮影可能な風が検知された地点の画像、すなわち作物の株元の画像を分析する第2分析を行う機能部である。第2分析は、作物の株元の画像に基づいて、作物の病理診断および分げつ数判定の少なくともいずれかを行う。作物の病理診断は、例えば株元のクロロフィルが破壊されているか否かを分析し、いもち病等の病気が発生している作物の有無を判定する。この構成によれば、上部を撮影している飛行中に、偶然発生した強風を利用して、作物の病理診断を行うことができる。
【0087】
飛行モード設定部25は、圃場403におけるドローン100の飛行モードを設定する機能部である。飛行モードとは、飛行高度、速度および加速度の制御特性を規定するものである。飛行モードは、薬剤散布を行う薬剤散布モード、作物の中部乃至上部を撮影する上部撮影モード、および作物の株元を撮影する株元撮影モードを少なくとも含む。上部撮影モードは、作物に侵襲しない高度で飛行する。株元撮影モードは、回転翼101のダウンウォッシュを利用して作物を倒伏させ、作物の根元を撮影するモードである。株元撮影モードの飛行高度は、上部撮影モードよりも低い。株元撮影モードの飛行速度は、上部撮影モードよりも遅く、ドローン100の姿勢角はより水平に近い角度である。株元撮影モードは、ダウンウォッシュを作物に十分吹付ける必要があるためである。
【0088】
飛行モード設定部25は、第2分析の結果に基づいてドローン100の飛行モードを変更する。飛行モード設定部25は、第2分析での病理診断により、病気が発生している作物が発見されるとき、ドローン100を株元撮影モードに設定して、圃場403を再度飛行させ、作物の株元を、病気が発見された当該検知地点、すなわち病理地点より広範囲にわたって撮影し、第2分析を行う。圃場403内の一部に病気が発見される場合、圃場403内の所定範囲まで病理地点が拡大している蓋然性が高い。株元撮影モードによれば、圃場403における病理地点の分布を取得することができる。また、上部撮影モードで病気を発見した際に株元撮影モードで飛行する構成によれば、上部撮影モードとは別に定期的に株元撮影モードで飛行する際にのみ第2分析を行う構成と比較して、頻繁に病理診断を行うことができるため、より早期に病理地点の有無および範囲を特定することができる。
【0089】
株元撮影部26は、圃場403内を株元撮影モードで飛行させ、撮影を行う機能部である。株元撮影部26は、ドローン100を、圃場403全体に飛行させてもよいし、病理地点の周辺を飛行させてもよい。株元撮影モードは上部撮影モードよりも低速で飛行するため、圃場403全体を飛行するものとすると、非常に長時間の飛行が必要となる。そこで、病気が広がっている蓋然性の高い、発見された病理地点の周辺を撮影することで、病理地点をより効率よく発見することができる。また、病理地点の周辺を株元撮影モードで飛行して分析した結果、当初発見された病理地点の周辺の外側に、さらに病理地点が拡大していると判断される場合は、株元撮影部26は、当該外側の領域を株元撮影モードで飛行することを決定してもよい。例えば、病理地点周辺の取得データのすべてに病気が発見される場合、病理地点の外縁が特定されないため、さらに外側の領域まで病気が拡大していると判断される。株元撮影部26は、病理地点の外縁が特定されるまで、周回する半径を徐々に広げながら、病理地点の外側を飛行する。この構成によれば、病理地点の分布を効率よく取得することができる。
【0090】
また、病理地点の周辺に加えて、圃場403の外縁を株元撮影モードで飛行してもよい。圃場403の外縁に病気が発生している場合、発見された病理地点から圃場403の外縁まで病気が拡大していると判断し、処理を終了してもよい。圃場403外縁を株元撮影モードで飛行する構成によれば、病気が圃場403内全体に渡って拡大しているか否かを判別することができ、病気の拡大の様子を効率よく把握することができる。
【0091】
飛行経路変更部27は、圃場403における飛行経路を変更する機能部である。飛行経路変更部27は、風向測定部232により検知される風の方向に応じて飛行経路を変更する。より具体的には、飛行経路変更部27は、飛行経路を、検知される風の風向きに沿う経路を多く含む経路に変更する。例えば、飛行経路変更部27は、検知される風の向きに沿う経路と、当該経路とは逆向きの経路とを往復して圃場403を走査する経路を決定する。この構成によれば、第1動作における上部撮影モードにおいて、風を利用して株元を撮影することができる。上部撮影モードの飛行速度は、株元撮影モードよりも速いので、本構成によればより短時間で株元の撮影が可能である。
【0092】
●強風を検知して再飛行を行うフローチャート
図12に示すように、まず、ドローン100は、上部撮影モード又は薬剤散布モードで圃場403を飛行し、第1動作を行う(S11)。圃場403の飛行中に強風を検知すると(S12)、強風の検知地点を記憶する(S13)。強風検知部23は、継続的に又は定期的に強風の有無を検知し、強風が停止を判定する(S14)。強風の停止が判定されるとき、検知地点を再飛行し、再撮影又は再散布を行う(S15)。ステップS14は、圃場403内の飛行中に随時行ってもよいし、圃場403内の飛行が完了した後に行ってもよい。
【0093】
●強風を検知して第2分析を行うフローチャート
図13に示すように、まず、ドローン100は、上部撮影モードで圃場403を飛行し、第1動作としての撮影を行う(S21)。圃場403の飛行中に強風を検知すると(S22)、強風の検知地点を記憶する(S23)。次いで、検知地点で取得される画像に第2分析を実行する(S24)。第2分析において病理地点を発見すると(S25)、株元撮影モードでの飛行を行う(S26)。
【0094】
●株元撮影モードで病理地点の分布を取得するフローチャート
図14に示すように、まず、株元撮影部26は、強風で発見した病理地点を基準に株元撮影の飛行経路を設定する。具体的には、圃場403の周辺、および強風で発見した病理地点の外側を周回する飛行経路を設定する(S31)。次いで、当該飛行形路を株元撮影モードで飛行する(S32)。ステップS32で得られる画像データ対して、第2分析を行う(S33)。ステップS33により病理地点の外縁が特定されるとき(S34)、処理を終了する。ステップS33により病理地点の外縁が特定されないとき、ステップS32で飛行した病理地点周辺の飛行経路の、さらに外側を周回する飛行経路を新たに設定し(S35)、ステップS32に戻る。ステップS32乃至S35を、病理地点の外縁が特定されるまで繰り返す。
【0095】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、撮影・監視用など他の用途のドローン全般に適用可能である。特に、自律的に動作する機械に適用可能である。
【0096】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかるドローンにおいては、ドローンの周囲に強い風が吹いた場合であっても、正確な撮影および薬剤散布を担保することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリアを飛行して、前記作業エリアに対し撮影を行う第1動作部と、
前記作業エリア内の撮影飛行中において、所定の条件を満たす風を検知する検知部と、
前記風が検知される検知地点を記憶する記憶部と、
前記検知地点に対して、前記風を検知しない未検知地点とは異なる動作を行う第2動作部と、
揚力を発生する複数の回転翼と、
を備え、
前記第2動作部は、前記検知地点を再飛行して、前記検知地点を撮影し、
前記検知部は、前記ドローンの水平面に対する姿勢角に応じて前記風を検知する、
ドローン。