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特開2022-84831酸素化コレステロールサルフェート、並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084831
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】酸素化コレステロールサルフェート、並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20220531BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220531BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61K31/575
A61K47/26
A61P3/06
A61P3/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P43/00 105
A61P31/04
A61P39/02
A61P1/16
A61P17/00
A61P17/02
A61P29/00
A61K9/10
A61K47/14
A61K9/48
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/12
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047697
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2019505245の分割
【原出願日】2017-08-01
(31)【優先権主張番号】62/370,200
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/470,834
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.TRITON
3.SPAN
4.CREMOPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】508027589
【氏名又は名称】デュレクト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミクスズタル,アンドリュー アール.
(72)【発明者】
【氏名】リン,ウェイチー
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミー ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ホンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン エル.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ウェンディ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸素化コレステロールサルフェート(OCS)の改善された送達のための組成物を提供する。
【解決手段】1種以上の酸素化コレステロールサルフェート、及び少なくとも1種のポリオキシルグリセリドを含む組成物とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)、及び
少なくとも1種のポリオキシルグリセリド
を含む組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、飽和ポリグリコール化グリセリドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
飽和ポリグリコール化グリセリドが、約38℃~約55℃の融点及び約1~約16の親水親油バランス(HLB)を有する飽和ポリグリコール化グリセリドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
飽和ポリグリコール化グリセリドが、約38℃~約50℃の融点及び約1~約16のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
飽和ポリグリコール化グリセリドが、ラウロイルポリオキシルグリセリド及び/又はステアロイルポリオキシルグリセリドである、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の総重量に対して、約10重量%~約99重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートを含む粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ビヒクル中の粒子の懸濁液を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
粒子が、レーザー回折によって測定した、約0.1μm~約500μmの範囲の中央粒径を有する、請求項7及び8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、5-コレステン-3β,25-ジオール,3-サルフェート又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
非イオン性界面活性剤である少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマー、レシチンドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、硫酸化ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、ポリオキシルヒマシ油、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)、ポリオキシエチレンエステル、カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリグリセリルオレエート、リノール酸グリセリド、ポリオキシルステアレート、ハッカ油、及びオレイン酸から選択される少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の界面活性剤が、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド及び/又はポリグリセリル-3オレエートである、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約20重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項12~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項12~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
組成物の総重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物の総重量に対して、約5重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
カプセル内に収容された、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
25HC3Sを含む粒子、
ラウロイルポリオキシルグリセリド、及び
ステアロイルポリオキシルグリセリド
を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
カプセル内にある、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ラウロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約55重量%~約95重量%の範囲の量で組成物中に存在し、
ステアロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約1重量%~約30重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項21又は22に記載の組成物。
【請求項24】
PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドを含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
ポリグリセリル-3オレエートを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドが、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
ポリグリセリル-3オレエートが、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項25~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
ポリグリセリル-3オレエートが、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項25~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
それを必要とする対象において、高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つを処置する方法であって、請求項1~28のいずれか一項に記載の、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項30】
投与が、経口により行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
医薬として使用するための、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つから選択される疾患又は症状の処置に使用するための、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つから選択される疾患又は症状の処置に使用するための医薬の製造における、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年8月2日に出願された米国仮特許出願第62/370,200号、及び2017年3月13日に出願された米国仮特許出願第62/470,834号の利益を主張するものであり、これらの出願内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、一般に、少なくとも1種の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む組成物に関する。組成物は、ポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む。組成物は、多種多様な疾患及び症状、例えば、炎症によって引き起こされるか又は炎症に関連する症状の処置及び/又は予防的処置のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
酸素化コレステロールサルフェート(oxygenated cholesterol sulfate)(OCS)、例えば、5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(5-cholesten-3, 25-diol, 3-sulfate)(25HC3S)及び5-コレステン,3,25-ジオール,ジサルフェート(5-cholesten, 3, 25-diol, disulfate)(25HCDS)は、多種多様な疾患及び症状を予防又は処置することが知られている。例えば、OCSは、炎症の強力なメディエーターであることが知られており、炎症によって引き起こされるか又は炎症によって悪化する疾患を予防及び処置するために問題なく使用されている。これらの疾患には、広範囲の疾病、例えば心疾患、器官不全などが含まれる。
【0004】
例えばその治療効果を最大にすることを目的として、薬物を製剤化するための広範囲の方略が知られている。しかし、新規薬物化合物に適用するための最適な方略を非経験的に予測することは簡単でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OCSの改善された送達のための組成物が必要とされている。特に、高い有効性、低い毒性、保存安定性、均質性、注射可能性及び等張性のうち1つ以上、好ましくは複数、最も好ましくは全てを有する組成物が有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示はこれらの必要性に取り組み、1種以上(例えば、少なくとも1種)の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む組成物を提供する。組成物は、ポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む。他の指標の中では、組成物は急性肝不全を予防及び処置するために使用され得る。ただし、組成物の使用が急性肝不全(ALF)の処置に限定されるわけではない。本明細書に記載の組成物及び方法により、他の各種疾患及び症状も予防及び/又は処置することができ、例えば高コレステロール/高脂質、各種炎症性疾患及び症状、他の種類の器官不全(例えば腎臓)なども予防及び/又は処置することができる。
【0007】
本開示の態様は以下を含む。
1. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子、及び
少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含むビヒクル
を含む組成物であって、ビヒクル中の粒子の懸濁液を含む組成物。
2. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、少なくとも1種のポリエチレングリコールを含む、態様1に記載の組成物。
3. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、少なくとも1種のポリエチレングリコールからなる、態様1に記載の組成物。
4. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、約200ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
5. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、約300ダルトン~約7,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様4に記載の組成物。
6. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、約500ダルトン~約5,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様4に記載の組成物。
7. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
8. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約20重量%の範囲の量で存在する、態様7に記載の組成物。
9. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、組成物の重量に対して、約1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、態様7に記載の組成物。
10. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含み、レーザー回折によって測定した、約0.1μm~約500μmの範囲の中央粒径を有する粒子、及び
少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩を含むビヒクル
を含む組成物であって、ビヒクル中の粒子の懸濁液を含む組成物。
11. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、約50,000ダルトン~約800,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様10に記載の組成物。
12. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、約70,000ダルトン~約700,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様11に記載の組成物。
13. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、約80,000ダルトン~約500,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様11に記載の組成物。
14. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、約0.2重量%~約75重量%の範囲の量で存在する、態様10~13のいずれか一項に記載の組成物。
15. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、態様14に記載の組成物。
16. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約40重量%の範囲の量で存在する、態様14に記載の組成物。
17. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)、及び
少なくとも1種のポリオキシルグリセリドを含む組成物。
18. 少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、飽和ポリグリコール化グリセリドを含む、態様17に記載の組成物。
19. 飽和ポリグリコール化グリセリドが、約38℃~約55℃の融点及び約1~約16の親水親油バランス(HLB)を有する飽和ポリグリコール化グリセリドである、態様18に記載の組成物。
20. 飽和ポリグリコール化グリセリドが、約38℃~約50℃の融点及び約1~約16のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドである、態様18に記載の組成物。
21. 飽和ポリグリコール化グリセリドが、ラウロイルポリオキシルグリセリド及び/又はステアロイルポリオキシルグリセリドである、態様18~20のいずれか一項に記載の組成物。
22. 少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約10重量%~約99重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様17~21のいずれか一項に記載の組成物。23. 少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約40重量%~約85重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様22に記載の組成物。
24. 少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約50重量%~約80重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様22に記載の組成物。
25. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートを含む粒子を含む、態様17~24及び115~117のいずれか一項に記載の組成物。
26. ビヒクル中の粒子の懸濁液を含む、態様25に記載の組成物。
27. 粒子が、レーザー回折によって測定した、約0.1μm~約500μmの範囲の中央粒径を有する、態様1~9、25及び26のいずれか一項に記載の組成物。
28. 粒子が、レーザー回折によって測定した、約0.25μm~約50μmの範囲の中央粒径を有する、態様10~16及び27のいずれか一項に記載の組成物。
29. 粒子が、レーザー回折によって測定した、約0.5μm~約25μmの範囲の中央粒径を有する、態様28に記載の組成物。
30. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、5-コレステン-3β,25-ジオール,3-サルフェート又はその薬学的に許容される塩を含む、態様1~29のいずれか一項に記載の組成物。
31. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、5-コレステン,3β,25-ジオール,ジサルフェート又はその薬学的に許容される塩を含む、態様1~30のいずれか一項に記載の組成物。
32. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、5-コレステン-3β,25-ジオール,3-サルフェート又はその薬学的に許容される塩からなる、態様1~29のいずれか一項に記載の組成物。
33. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、5-コレステン,3β,25-ジオール,ジサルフェート又はその薬学的に許容される塩からなる、態様1~29のいずれか一項に記載の組成物。
34. 1種以上のOCSが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、態様1~33のいずれか一項に記載の組成物。
35. 1種以上のOCSが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約20重量%の範囲の量で存在する、態様34に記載の組成物。
36. 少なくとも1種のOCSが、組成物の重量に対して、約1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、態様34に記載の組成物。
37. 少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、態様1~36のいずれか一項に記載の組成物。
38. 非イオン性界面活性剤である少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、態様1~36のいずれか一項に記載の組成物。
39. ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマー、レシチンドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、硫酸化ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、ポリオキシルヒマシ油、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)、ポリオキシエチレンエステル、カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリグリセリルオレエート、リノール酸グリセリド、ポリオキシルステアレート、ハッカ油、及びオレイン酸から選択される少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、態様1~36のいずれか一項に記載の組成物。40. 少なくとも1種の界面活性剤が、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド及び/又はポリグリセリル-3オレエートである、態様39に記載の組成物。
41. 少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約20重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様37~40のいずれか一項に記載の組成物。
42. 少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様37~41のいずれか一項に記載の組成物。
43. 水をさらに含む、態様1~42のいずれか一項に記載の組成物。
44. 水が、組成物の重量に対して、約0.1重量%~約99重量%の範囲の量で存在する、態様43に記載の組成物。
45. 少なくとも1種の酸化防止剤をさらに含む、態様1~44のいずれか一項に記載の組成物。
46. 酸化防止剤を含有しない、態様1~44のいずれか一項に記載の組成物。
47. メチオニンを含有しない、態様1~46のいずれか一項に記載の組成物。
48. 少なくとも1種の緩衝液をさらに含む、態様1~47のいずれか一項に記載の組成物。
49. リン酸緩衝液、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、クエン酸塩、及びホウ酸塩から選択される少なくとも1種の緩衝液をさらに含む、態様1~48のいずれか一項に記載の組成物。
50. 少なくとも1種の緩衝液が、約1mM~約500mMの範囲の量で組成物中に存在する、態様48又は49に記載の組成物。
51. 少なくとも1種の塩をさらに含む、態様1~50のいずれか一項に記載の組成物。
52. 塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び硫酸ナトリウムから選択される少なくとも1種の塩をさらに含む、態様1~51のいずれか一項に記載の組成物。
53. 少なくとも1種の塩が、組成物の重量に対して、約0.1重量%~約5重量%の範囲の量で存在する、態様51又は52に記載の組成物。
54. 少なくとも1種の糖をさらに含む、態様1~53のいずれか一項に記載の組成物。
55. ブドウ糖、マンニトール、及びスクロースから選択される少なくとも1種の糖をさらに含む、態様1~54のいずれか一項に記載の組成物。
56. 少なくとも1種の防腐剤をさらに含む、態様1~55のいずれか一項に記載の組成物。
57. ベンジルアルコールをさらに含む、態様1~56のいずれか一項に記載の組成物。
58. グリセリルパルミトステアレート(glyceryl palmitostearate)をさらに含む、態様1~57のいずれか一項に記載の組成物。
59. 崩壊剤をさらに含む、態様1~58のいずれか一項に記載の組成物。
60. クロスカルメロースナトリウムである崩壊剤をさらに含む、態様1~59のいずれか一項に記載の組成物。
61. 崩壊剤が、組成物の重量に対して、約1重量%~約5重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様59又は60に記載の組成物。
62. 約150mmol/kg~約3000mmol/kgの範囲のオスモル濃度を有する、態様1~61のいずれか一項に記載の組成物。
63. 約3~約10の範囲のpHを有する、態様1~62のいずれか一項に記載の組成物。
64. 21ゲージの0.5インチ針を取り付けた1mL注射器に25℃で組成物を入れ、10ポンドの力を加えたとき、組成物が注射可能となる、態様1~63のいずれか一項に記載の組成物。
65. 27ゲージの0.5インチ針を取り付けた1mL注射器に25℃で組成物を入れ、10ポンドの力を加えたとき、組成物が注射可能となる、態様1~64のいずれか一項に記載の組成物。
66. ボトル内に収容された、態様1~65のいずれか一項に記載の組成物。
67. バイアル内に収容された、態様1~65のいずれか一項に記載の組成物。
68. カプセル内に収容された、態様1~67のいずれか一項に記載の組成物。
69. カプセルがゼラチンを含む、態様68に記載の組成物。
70. カプセルがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、態様68又は69に記載の組成物。
71. 少なくとも、
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートを含む粒子、
ポリエチレングリコール、
界面活性剤、
塩、
水、及び
緩衝液
を含む、態様1~70のいずれか一項に記載の組成物。
72. 少なくとも、
25HC3Sを含む粒子、
ポリエチレングリコール、
ポリソルベート、
NaCl、
水、及び
リン酸緩衝液
を含む、態様1~71のいずれか一項に記載の組成物。
73. それを必要とする対象において、高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つを処置する方法であって、態様1~72及び105~133のいずれか一項に記載の、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法。
74. 腎臓、肝臓、膵臓、心臓、肺及び脳からなる群から選択される少なくとも1つの器官の機能異常又は不全を処置することを含む、態様73に記載の方法。
75. アセトアミノフェンによって引き起こされる肝臓の機能異常又は不全を処置することを含む、態様74に記載の方法。
76. 虚血によって引き起こされる傷害を処置することを含む、態様73に記載の方法。
77. 虚血/再灌流傷害によって引き起こされる虚血によって引き起こされる傷害を処置することを含む、態様73に記載の方法。
78. 肝障害を処置することを含む、態様73に記載の方法。
79. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である肝障害を処置することを含む、態様73に記載の方法。
80. 炎症性皮膚疾患を処置することを含む、態様73に記載の方法。
81. アトピー性皮膚炎又は乾癬である炎症性皮膚疾患を処置することを含む、態様73に記載の方法。
82. 投与が注射により行われる、態様73~81のいずれか一項に記載の方法。
83. 投与が静脈内に行われる、態様73~81のいずれか一項に記載の方法。
84. 投与が局所的に行われる、態様73~81のいずれか一項に記載の方法。
85. 投与が経口により行われる、態様73~81のいずれか一項に記載の方法。
86. それを必要とする対象において、本明細書に開示された任意の疾患又は症状を処置する方法であって、態様1~72及び105~133のいずれか一項に記載の、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法。
87. 親水性ポリマーを含むビヒクル中に懸濁させた1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子を含む懸濁液を注射することを含む投与する方法。
88. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子と、少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含むビヒクルとを混合し、懸濁液を形成することを含む、懸濁液を製造する方法。
89. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子と、少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩を含むビヒクルとを混合し、懸濁液を形成することを含む、懸濁液を製造する方法。
90. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子と、少なくとも1種のポリオキシルグリセリドを含むビヒクルとを混合し、懸濁液を形成することを含む、懸濁液を製造する方法。
91. 混合が手動での振盪を含む、態様88~90のいずれか一項に記載の方法。
92. 混合が超音波処理を含む、態様88~91のいずれか一項に記載の方法。
93. 混合がフラットベッドシェーカー内での振盪を含む、態様88~92のいずれか一項に記載の方法。
94. 懸濁液を均質化することをさらに含む、態様88~93のいずれか一項に記載の方法。
95. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートをジェットミリングして粒子を形成することをさらに含む、態様88~94のいずれか一項に記載の方法。
96. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェートを篩にかけて混合用の粒子を選別することをさらに含む、態様88~95のいずれか一項に記載の方法。
97. 混合に先立って粒子を滅菌することをさらに含む、態様88~96のいずれか一項に記載の方法。
98. 混合に先立って粒子をオートクレーブ処理にかけることをさらに含む、態様88~97のいずれか一項に記載の方法。
99. 混合に先立って粒子をγ線照射にかけることをさらに含む、態様88~98のいずれか一項に記載の方法。
100. 医薬として使用するための、態様1~72及び105~133のいずれか一項に記載の組成物。
101. 本明細書に開示された任意の疾患又は症状の処置に使用するための、態様1~72及び105~133のいずれか一項に記載の組成物。
102. 疾患又は症状が、高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患から選択される、態様101に記載の使用のための組成物。
103. 本明細書に開示された任意の疾患又は症状の処置に使用するための医薬の製造における、態様1~72及び105~133のいずれか一項に記載の組成物の使用。
104. 疾患又は症状が、高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患から選択される、態様103に記載の使用。
105. 25HC3Sを含む粒子、
ラウロイルポリオキシルグリセリド、及び
ステアロイルポリオキシルグリセリド
を含む組成物。
106. カプセル内にある、態様105に記載の組成物。
107. ラウロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約55重量%~約95重量%の範囲の量で組成物中に存在し、
ステアロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約1重量%~約30重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様105又は106に記載の組成物。
108. ラウロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約60重量%~約90重量%の範囲の量で組成物中に存在し、
ステアロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約5重量%~約25重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様107に記載の組成物。
109. PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドを含む、態様105~108のいずれか一項に記載の組成物。
110. ポリグリセリル-3オレエートを含む、態様105~109のいずれか一項に記載の組成物。
111. PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドが、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様109又は110に記載の組成物。
112. PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドが、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様111に記載の組成物。
113. ポリグリセリル-3オレエートが、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様110~112のいずれか一項に記載の組成物。
114. ポリグリセリル-3オレエートが、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様110~113のいずれか一項に記載の組成物。
115. 少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約5重量%~約25重量%の範囲の量で組成物中に存在する、態様17~20のいずれか一項に記載の組成物。116. 組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、態様17~20のいずれか一項に記載の組成物。
117. 組成物の重量に対して、約5重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、態様17~20のいずれか一項に記載の組成物。
118. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子、及び
少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含むビヒクル
を含む組成物。
119. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、少なくとも1種のポリエチレングリコールを含む、態様118に記載の組成物。
120. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、少なくとも1種のポリエチレングリコールからなる、態様118に記載の組成物。
121. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、約200ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様118~120のいずれか一項に記載の組成物。
122. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、約300ダルトン~約7,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様121に記載の組成物。
123. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、約500ダルトン~約5,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様121に記載の組成物。
124. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、態様118~123のいずれか一項に記載の組成物。
125. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約20重量%の範囲の量で存在する、態様124に記載の組成物。
126. 少なくとも1種のポリアルキレングリコールが、組成物の重量に対して、約1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、態様124に記載の組成物。
127. 1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含み、レーザー回折によって測定した、約0.1μm~約500μmの範囲の中央粒径を有する粒子、及び
少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩を含むビヒクル
を含む組成物。
128. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、約50,000ダルトン~約800,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様127に記載の組成物。
129. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、約70,000ダルトン~約700,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様128に記載の組成物。
130. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、約80,000ダルトン~約500,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、態様128に記載の組成物。
131. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、約0.2重量%~約75重量%の範囲の量で存在する、態様127~130のいずれか一項に記載の組成物。
132. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、態様131に記載の組成物。
133. 少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約40重量%の範囲の量で存在する、態様131に記載の組成物。
【0008】
以下の発明の記載において、言及される複数の非限定的な図面を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】PEG 3350ビヒクルに関する、種々の%NaClでの、オスモル濃度対%NaClのプロット。
図2】25HC3S溶液、溶液ビヒクル、25HC3S懸濁液、又は懸濁ビヒクルで処置したマウスの背部皮膚の紅斑(発赤)。
図3A】ELISAアッセイによって測定した、乾癬皮膚/病変におけるIL-17タンパク質レベル(A)。
図3B】ELISAアッセイによって測定した、乾癬皮膚/病変におけるTNFαタンパク質レベル(B)。
図4】NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)活性スコア(NAS)と線維症スコア。
図5】オイルレッドO染色(黒)は、HFD給餌ハムスターにおける、25HC3S投与による肝臓リピドーシスの減少を示している。
図6】コホートAマウスにおける24時間の平均酵素及び生化学的血清レベル:アセトアミノフェン(APAP)(300mg/kg)投与の1時間後に経口胃管栄養投与により与えられた、ビヒクル又は25HC3S(25Mg/Kg)。
図7】外科的に誘発された腎虚血ラットにおける、25HC3S処置後の血清クレアチニン及びBUNレベル。
図8】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図9】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図10】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図11】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図12】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図13】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図14】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図15】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図16】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図17】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図18】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図19】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図20】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図21】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図22】t=0、t=1、3、及び7カ月後(25℃での保存)、並びにt=0.5、1、3、及び7カ月後(40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図23】NAFLD活性スコア。統計検定:ダネット多重比較による一元配置分散分析。
図24】線維症の面積率。ダネット多重比較による一元配置分散分析を行った。aマン・ホイットニー検定で、統計的有意性がp<0.05に改善されることを示す。
図25】胆管結紮(BDL)手術後9日目の体重変化パーセント及び絶対体温変化。ダネット多重比較による一元配置分散分析を行った。*p<0.05、**p<0.01。
図26】BDL手術後9日目の血清ビリルビンレベル。ダネット多重比較による一元配置分散分析を行った。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図27】BDL手術後9日目の体温変化。二元配置分散分析を行った。*p<0.05。
図28】BDL手術後10日目の脾臓-体重比。スチューデントのt検定を行った。*p<0.05。
図29】BDL手術後の体重変化パーセント、体温及び疾患スコア。ダネット多重比較による一元配置分散分析を行った。*p<0.05、**p<0.01。
図30】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図31】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図32】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図33】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図34】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図35】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図36】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図37】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
図38】t=0、t=11週間後(相対湿度60%、25℃での保存)、並びにt=2及び11週間後(相対湿度75%、40℃での保存)で試験したカプセル製剤の溶解プロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
少なくとも1種の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む組成物が提供される。組成物は、ポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む。組成物は、高脂血症、虚血、敗血症、心疾患、器官不全などの多種多様な疾患及び症状を予防及び/又は処置するために使用される。
【0011】
定義
以下の定義は、全体を通して使用されている。
【0012】
本明細書で使用するとき、「少なくとも1つ」は、1、2、3、4つ又はそれより多くを意味する。
【0013】
本明細書に記載の組成物は、1種又は2種以上のOCSを含む。組成物に使用される例示的なOCSとしては、限定されないが、5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)、5-コレステン,3,25-ジオール,ジサルフェート(25HCDS)、5-コレステン,3,27-ジオール,3-サルフェート、5-コレステン,3,27-ジオール,3,27-ジサルフェート、5-コレステン,3,7-ジオール,3-サルフェート、5-コレステン,3,7-ジオール,3,7-ジサルフェート、5-コレステン,3,24-ジオール,3-サルフェート、5-コレステン,3,24-ジオール,3,24-ジサルフェート、5-コレステン,3-オール,24,25-エポキシ3-サルフェート、及びそれらの塩、特にそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。25HC3Sの開示は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第8,399,441号に見出される。25HCDSの開示は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国公開出願第20150072962号に見出される。特定の態様において、OCSは、5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)及び5-コレステン,3,25-ジオール,ジサルフェート(25HCDS)から(単独で又は組み合わせて)選択される。さらなる態様において、OCSは、5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)である。
【0014】
OCSは、典型的に、体内で天然に存在するOCSの合成変種である。OCSは、体内で天然には見られない形態で、天然に存在するものよりも著しく高い濃度で、投与してよい。25HC3Sについては、天然レベルは、血液又は血漿中で、例えば約2ng/ml以下から最大約5ng/mlの範囲である。OCS(例えば、25HC3S)で処置される患者の血液又は血漿中のOCS(例えば、25HC3S)の濃度は、一般に約5ng/mlより大きく、一般に約50ng/ml~約5000ng/ml、例えば約80ng/ml~約3000ng/mlの範囲であり、例えば約100~約2000ng/ml、又は約200~約1000ng/mlの範囲である。
【0015】
一態様において、OCSは、下記式
【化1】
の5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)及び/又はその薬学的に許容される塩である。
【0016】
一態様において、OCSは、下記式
【化2】
の5-コレステン-3β,25-ジオール,3-サルフェート及び/又はその薬学的に許容される塩である。
【0017】
一態様において、OCSは、下記式
【化3】
の5-コレステン,3,25-ジオール,ジサルフェート(25HCDS)及び/又はその薬学的に許容される塩である。
【0018】
いくつかの態様において、OCSは、下記式
【化4】
の5-コレステン,3β,25-ジオール,ジサルフェート及び/又はその薬学的に許容される塩である。
【0019】
いくつかの態様において、1種以上の酸素化コレステロールサルフェートは、5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの態様において、1種以上の酸素化コレステロールサルフェートは、5-コレステン,3,25-ジオール,ジサルフェート(25HCDS)又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの態様において、1種以上の酸素化コレステロールサルフェートは、5-コレステン-3,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)又はその薬学的に許容される塩からなる。いくつかの態様において、1種以上の酸素化コレステロールサルフェートは、5-コレステン,3,25-ジオール,ジサルフェート(25HCDS)又はその薬学的に許容される塩からなる。
【0020】
予防及び処置
本明細書で使用するとき、「予防的に処置する」(「予防的処置」、「予防的に処置すること」など)及び「予防する」(「予防」、「予防すること」など)とは、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物を、それを必要とする対象に予防的に投与することにより、疾患又は望ましくない症状(ALF又は本明細書に記載の別の疾患若しくは症状など)の少なくとも1つの症候の発生を防ぐ又は避けることを指す。一般に、「予防的」又は「予防」は、患者が障害を発現する可能性の低下に関する。典型的に、対象は、当業者によって、疾患若しくは望ましくない症状の少なくとも1種の症候を発現する危険があるか、若しくは発現しやすいと考えられるか、又は疾患/症状の少なくとも1種の症候を発現する可能性が高いと考えられる。ただし、一般に、「予防」又は「予防的処置」については、投与は、対象が疾患の症候(症状、障害、症候群など。特に指示がない限り、これらの用語は本明細書において互換的に用いられる)を有するか、又は有することが知られるか若しくは確認される前に行われる。換言すれば、症候は、まだ明白ではないか又は観察可能ではない場合がある。対象は、限定されないが、遺伝的素質;切迫した内科的又は外科的手技(例えば、手術、イメージングにおける造影剤の使用、化学療法など);最近の特定の若しくは疑わしい又は避けられない将来的な、有毒作用因子への曝露(例えば、有毒化学物質又は薬物治療、放射線などへの曝露);或いは予防している疾患/症状の発現に連鎖又は関係している、別のストレッサー又はストレッサーの組合せにさらされているか又はそれらを経験していることを含む、種々の要因により危険にさらされていると考えられ得る。例えば、いくつかの態様において、予防する対象は、器官機能異常/不全(例えばALF)であり、対象は、器官機能異常/不全、例えば、虚血、敗血症、有害又は不適切なレベルの炎症、有害性の細胞死、壊死などの潜在的前兆の症候をすでに示している可能性がある。そのような態様において、対象を処置することにより、前兆的症状の有毒又は有害な効果又は転帰(結果)を予防することができ、例えば、処置により死を予防することができる。疾患又は症状の「予防」又は「予防的処置」は、検知可能な症候の発生を完全に予防することを含み得るか、或いは、本明細書で提供される医療的介入がなければ発生するであろう疾患の少なくとも1つの症候の程度、重症度又は持続期間を軽減又は減衰させることを含み得る。或いは、対象は初期段階の症候を経験している場合があり、予防する対象は末期的疾患への進行である。
【0021】
本明細書で使用する「処置する」(「処置」、「処置すること」など)とは、OCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む少なくとも1種の組成物を、疾患の少なくとも1つの症候をすでに示している対象に、投与することを指す。換言すれば、疾患に関係していることが知られている少なくとも1つのパラメーターが、対象において測定、検知、又は観察されている。例えば、本明細書に記載されるように処置されるいくつかの器官機能異常/不全及び/又はその前兆は、ある程度予測可能な因子(例えば、APAP過剰投与)、又は事故(娯楽活動及び娯楽活動以外での事故)、戦争、診断未確定のアレルギー、若しくは他の危険因子などによる外傷などの、予期しない原因によって引き起こされる。疾患の「処置」は、組成物の投与前又は投与時に存在していた疾患の少なくとも1つの症候の軽減若しくは減衰、又は場合によっては完全な根絶を含む。したがって、例えば、ALFの処置は、ALFに関係する損傷を処置することを含む。
【0022】
APAP過剰投与:一般に、Rumack-Matthewのノモグラムにおいて、摂取4時間後にAPAPの血清血漿中濃度が140~150マイクログラム/mL(又はミリグラム/L)であることは、APAP過剰投与処置の必要性を示す。Rumack-Matthewのノモグラムは、摂取直後ではなく摂取4時間後から開始し、吸収後に完了する可能性が高いと考えられる、対数グラフである。ただし、ノモグラムは、患者が異常な精神状態である(例えば自殺の可能性がある)場合、又は病歴が信頼できない場合、単独では使用されない。むしろ、線の傾きがノモグラムと同じであるかそれより上であるかどうかを確認するために、第2のレベルが描画されプロットされる。例えば、時間(t=0)(患者の入院時)及び時間(t=4時間)においてAPAP血中レベルを測定することにより、正規の半減期を決定することもできる。半減期が4時間を超える場合、肝毒性及び肝不全を予防するために処置がおそらく必要である。ただし、APAPに特に敏感である人もいるため、例えば小児又は高齢者において、根拠があると判断される場合、より低い血漿レベルで処置が行われてもよい。一般に、24時間以内に4000mgを超えるAPAPが摂取されると、過剰投与が疑われることがある。7000mg以上の摂取は、処置しない場合に重度の過剰摂取を招くおそれがある。過剰投与の症候としては、腹痛、食欲不振、昏睡、痙攣、下痢、過敏症、黄疸、吐き気、発汗、胃のむかつき、及び嘔吐が挙げられ、これらはそれぞれ、本明細書に記載の組成物の投与によって予防又は処置することができる。
【0023】
本明細書で使用するとき、「注射可能な」とは、組成物を充填し且つ針及び注射器から放出する能力を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「懸濁」とは、懸濁液を調製した後8時間の静置室温保存期間中に容量的に採取されたアリコートから決定される用量均一性が得られるように、薬物粒子が懸濁ビヒクル中に懸濁したままの状態にすることを意味する。懸濁液は、実質的に均一な薬物粒子分散を示し、調製後8時間の静置室温保存期間中に実質的に相分離を示さないことがある。
【0025】
本明細書における「用量均一性」という用語は、同時に又は異なる時間点で採取され、懸濁液中の同一又は異なる位置から採取された、同一の懸濁液から容量的に採取されたアリコートに関して、全てのアリコートが実質的に同量(すなわち、±約15%)の懸濁薬物及び実質的に同量の遊離薬物を含有することを意味する。所与の容積の懸濁液中の薬物の量は、任意の適切な方法によって、例えば高速液体クロマトグラフィーによって、測定することができる。
【0026】
組成物
本明細書に記載の組成物は、一般に、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む。いくつかの態様において、1種以上のOCSは、約0.01~約75%(重量/重量)、例えば、約0.1~約50%(重量/重量)、約1~約25%(重量/重量)、約2~約20%(重量/重量)、又は約3~約10%(重量/重量)の範囲の量で、組成物中に存在する。
【0027】
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートは、典型的に、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%、例えば、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~20重量%、約0.5重量%~約10重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、約1重量%~約4重量%、又は約1重量%~3重量%の範囲の量で存在する。
【0028】
単一(唯一の)OCS(例えば、25HC3S又は25HCDS)が、液体、ローション、又はクリーム状組成物(液体溶液、懸濁液、例えば液体懸濁液、ローション、クリームなどを含む)中に存在する場合、OCSの濃度は一般に、約0.01~約200mg/ml又は約0.1~100mg/mlの範囲であり、一般に約1~約50mg/mlであり、例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mg/mlである。複数のOCS(例えば、2種以上、例えば、2、3、4、5種以上のOCS)が溶液組成物中に存在する場合、それぞれの濃度は典型的に、約0.01~約200mg/ml、又は約0.1~100mg/ml、一般に約1~約50mg/mlの範囲であり、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mg/mlである。
【0029】
単一(唯一の)OCS(例えば、25HC3S又は25HCDS)が、固体又は半固体組成物(例えば、ゲル又は他の固形化調製物)中に存在する場合、OCSの濃度は一般に、約0.01~約75%(重量/重量)又は約0.1~約50%(重量/重量)の範囲であり、一般に約1~約25%(重量/重量)であり、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%(重量/重量)である。複数のOCS(例えば、2種以上、例えば、2、3、4、5種以上のOCS)が固体又は半固体組成物中に存在する場合、それぞれの濃度は典型的に、約0.01~約75%(重量/重量)又は約0.1~約50%(重量/重量)の範囲であり、一般に約1~約25%(重量/重量)であり、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%(重量/重量)である。
【0030】
単一(唯一の)OCS(例えば、25HC3S又は25HCDS)が、凍結乾燥固体組成物中に存在する場合、OCSの濃度は一般に、約0.01~約100%(重量/重量)、約0.1~約75%(重量/重量)の範囲であり、約1~約15%(重量/重量)の範囲であってよく、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15%(重量/重量)である。複数のOCS(例えば、2種以上、例えば、2、3、4、5種以上のOCS)が凍結乾燥固体組成物中に存在する場合、それぞれの濃度は典型的に、約0.01~約15%(重量/重量)の範囲であり、一般に約1~約11%(重量/重量)の範囲であり、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11%である。
【0031】
粒径
例えば、本開示の粒子含有組成物を製造するために使用される、1種以上のOCSを含む粒子は典型的に、レーザー回折によって測定した、0.1マイクロメートル~500マイクロメートル、例えば、0.2マイクロメートル~50マイクロメートル、0.25マイクロメートル~50マイクロメートル、0.1マイクロメートル~25マイクロメートル、0.1マイクロメートル~10マイクロメートル、0.2マイクロメートル~10マイクロメートル、0.5マイクロメートル~10マイクロメートル、0.5マイクロメートル~25マイクロメートル、0.5マイクロメートル~7マイクロメートル、又は1マイクロメートル~5マイクロメートル、2マイクロメートル~7マイクロメートル、若しくは3マイクロメートル~5マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する。組成物が注射用である場合、粒子は、レーザー回折によって測定した、約0.5μm~約25μm、例えば、約1μm~約20μm、約2μm~約7μm、又は約3μm~約5μmの範囲の中央粒径を有する傾向がある。
【0032】
例えば、本開示の粒子含有組成物を製造するために使用される、1種以上のOCSを含む粒子は典型的に、レーザー回折によって測定した、0.1マイクロメートル~1000マイクロメートル、例えば、0.2マイクロメートル~500マイクロメートル、0.25マイクロメートル~250マイクロメートル、0.1マイクロメートル~150マイクロメートル、0.1マイクロメートル~100マイクロメートル、0.2マイクロメートル~75マイクロメートル、0.5マイクロメートル~60マイクロメートル、0.5マイクロメートル~50マイクロメートル、0.5マイクロメートル~40マイクロメートル、又は1マイクロメートル~30マイクロメートル、2マイクロメートル~20マイクロメートル、若しくは3マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲のD90粒径を有する。組成物が注射用である場合、粒子は、レーザー回折によって測定した、約0.5μm~約50μm、例えば、約1μm~約30μm、約2μm~約20μm、又は約3μm~約10μmの範囲のD90粒径を有する傾向がある。
【0033】
粒子が比較的大きく、レーザー回折によって測定した、例えば20マイクロメートルを超える中央粒径を有する場合、粒子は低粘度製剤中で懸濁液から沈降する傾向を有する。粒子が比較的小さい場合、粒子の取り扱いは比較的難しい。粒径は生物学的利用能にも影響を及ぼし得る。
【0034】
本開示との関係において、特に明記しない限り、レーザー回折によって測定した中央粒径とは、ビヒクル添加前の粒子の大きさを指す。したがって、記載した粒子含有組成物は、薬学的活性剤を含む粒子及び1種以上のさらなる特定の成分「から製造される」又はそれら「を組み合わせて得られる」。
【0035】
最終粒子含有組成物において、1種以上のOCSを含有する粒子は、レーザー回折によって測定した、0.1マイクロメートル~500マイクロメートル、例えば、0.2マイクロメートル~50マイクロメートル、0.25マイクロメートル~50マイクロメートル、0.1マイクロメートル~25マイクロメートル、0.1マイクロメートル~10マイクロメートル、0.2マイクロメートル~10マイクロメートル、0.5マイクロメートル~10マイクロメートル、0.5マイクロメートル~25マイクロメートル、0.5マイクロメートル~7マイクロメートル、又は1マイクロメートル~5マイクロメートル、2マイクロメートル~7マイクロメートル、若しくは3マイクロメートル~5マイクロメートルの範囲の中央粒径を有し得る。組成物が注射用である場合、粒子は、レーザー回折によって測定した、約0.5μm~約25μm、例えば、約1μm~約20μm、約2μm~約7μm、又は約3μm~約5μmの範囲の中央粒径を有する傾向がある。
【0036】
ポリアルキレングリコール
本組成物は、ポリアルキレングリコール、例えば本明細書に記載の少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含み得る。ポリアルキレングリコールは繰り返し単位[-O-アルキレン-]を含有するポリマーである。アルキレンは低級アルキル又はヒドロキシルにより置換されていてもよい。ポリアルキレングリコールの好ましい例は、C2~3アルキレン鎖からなるポリマーであり、そのより好ましい例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。ポリアルキレングリコールは、直鎖状、星状、及び分岐状のいずれでもよい。いくつかの態様において、ポリアルキレングリコールは、ポリ(エチレングリコール)PEG、ポリ(プロピレングリコール)PPG、及び/又はポリ(テトラメチレングリコール)PTMEGなどのポリエーテルグリコールである。本明細書に記載の少なくとも1種のポリアルキレングリコールは、本明細書に記載のカルボキシメチルセルロース(又はその薬学的に許容される塩)及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種と組み合わせて、本組成物に含まれてもよい。
【0037】
いくつかの態様において、少なくとも1種のポリアルキレングリコールは、少なくとも1種のポリエチレングリコールを含む。用語「PEG」又は「ポリエチレングリコール」は、-(O-CH2-CH2)-を含有する化合物の繰り返し単位を含むポリマーを意味する。いくつかの態様において、少なくとも1種のポリアルキレングリコールは、少なくとも1種のポリエチレングリコールからなる。
【0038】
用語「マルチアームPEG」とは、コア分子の周りに形成され、複数のPEG分子をコアに共有結合させることを可能にするPEGを指す。マルチアームPEGは、4アームPEG、6アームPEG、又はコア分子に結合した複数のPEGを有する任意のPEGを含む。
【0039】
用語「多分岐PEG」とは、鎖中にエポキシド部分が結合した単一のPEGポリマーを指す。多分岐PEGは、特定の比率のエポキシド:エチレンオキシド部分を有することを特徴とする場合がある。完全誘導体化多分岐PEGは、エポキシド:エチレンオキシド比が2になる。ただし、多分岐PEGが2未満のエポキシド:エチレンオキシド比を有していてもよく、この比は、複数のPEG分子において、平均して、整数である必要はないと理解すべきである。
【0040】
少なくとも1種のポリアルキレングリコールは典型的に、約200ダルトン~約10,000ダルトン、例えば、約300ダルトン~約7000ダルトン、又は約500ダルトン~約5000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。
【0041】
少なくとも1種のポリアルキレングリコールは典型的に、組成物の重量に対して、約0.2重量%~約75重量%、例えば、約0.5重量%~約50重量%、約0.5重量%~約40重量%、約0.5重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0042】
カルボキシメチルセルロース
本組成物は、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、例えば本明細書に記載の少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩を含んでもよい。カルボキシメチルセルロースの薬学的に許容される塩としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルボキシメチルセルロースの他のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩が挙げられる。例えば、本明細書で使用する用語「カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩」は、式-CH2CO2A(式中、Aは、水素又は一価のカチオン、例えば、K+、若しくは好ましくはNa+である)の基で置換されたセルロースを包含する。本明細書に記載の少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース(又はその薬学的に許容される塩)は、本明細書に記載のポリアルキレングリコール及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種と組み合わされて、本組成物に含まれてもよい。
【0043】
いくつかの態様において、少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩は、約50,000ダルトン~約800,000ダルトン、例えば、約70,000ダルトン~約700,000ダルトン又は約80,000ダルトン~約500,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。いくつかの態様において、少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩は、組成物の重量に対して、約0.2重量%~約75重量%、例えば、約0.5重量%~約50重量%、約0.5重量%~約40重量%、約0.5重量%~約20重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0044】
ポリオキシルグリセリド
本組成物は、ポリオキシグリセリド、例えば本明細書に記載の少なくとも1種のポリオキシグリセリドを含んでよい。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1種のポリオキシグリセリド、例えば、カプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、ラウロイルポリオキシルグリセリド、リノレオイルポリオキシルグリセリド、オレオイルポリオキシルグリセリド、ステアロイルポリオキシルグリセリド、並びにGelucire(登録商標)(飽和ポリグリコール化グリセリド(polyglycolized glyceride)(例えば、Gattefosseブランド))及びLabrasol(登録商標)(Gattefosseブランド)を含む。本明細書に記載の少なくとも1種のポリオキシグリセリドは、本明細書に記載のポリアルキレングリコール及びカルボキシメチルセルロース(又はその薬学的に許容される塩)のうち少なくとも1種と組み合わされて、本組成物に含まれてもよい。
【0045】
いくつかの態様において、少なくとも1種のポリオキシルグリセリドは、組成物の重量に対して、約10重量%~約99重量%、例えば約40重量%~約85重量%、又は約50重量%~約80重量%の範囲の量で、組成物中に存在する。
【0046】
いくつかの実施形態において、組成物は、1種以上のGelucire(登録商標)(飽和ポリグリコール化グリセリド)及び/又はLabrasol(登録商標)(PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド)(例えば、飽和C8~C10脂肪酸のグリセロールエステル)を含む。適切なGelucire(登録商標)としては、例えば、Gelucire(登録商標)44/14(ラウロイルポリオキシルグリセリド)、Gelucire(登録商標)43/01(硬質脂肪EP/NF/JPE)、Gelucire(登録商標)39/01(脂肪酸のグリセロールエステル、例えば、飽和C12~C18脂肪酸のグリセロールエステル)、Gelucire(登録商標)48/16(ポリオキシルステアレート(タイプI)NF)、及びGelucire(登録商標)50/13(ステアロイルポリオキシルグリセリド)が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態において、Gelucire(登録商標)、例えば、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)43/01、Gelucire(登録商標)39/01、Gelucire(登録商標)48/16、Gelucire(登録商標)50/13、Labrasol(登録商標)又はそれらの組合せは、組成物の重量に対して約10~約99重量パーセント(重量%)、例えば、約40~約85重量%、約50~約80重量%、約55~約75重量%、又は約60~約70重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、Gelucire(登録商標)、例えば、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)43/01、Gelucire(登録商標)39/01、Gelucire(登録商標)48/16、Gelucire(登録商標)50/13、若しくはLabrasol(登録商標)、又はそれらの組合せは、組成物の重量に対して、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%、又は約99重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、Gelucire(登録商標)、例えば、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)43/01、Gelucire(登録商標)39/01、Gelucire(登録商標)48/16、Gelucire(登録商標)50/13、若しくはLabrasol(登録商標)、又はそれらの組合せは、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約15重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約30重量%、約30重量%~約35重量%、約35重量%~約40重量%、約40重量%~約45重量%、約45重量%~約50重量%、約50重量%~約55重量%、約55重量%~約60重量%、約60重量%~約65重量%、約65重量%~約70重量%、約70重量%~約75重量%、約75重量%~約80重量%、約80重量%~約85重量%、約85重量%~約90重量%、又は約90重量%~約99重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の重量に対して、約60重量%~約90重量%(例えば、約65重量%~約85重量%)でGelucire(登録商標)44/14及び約1重量%~約20重量%(例えば、約5重量%~約15重量%)でGelucire(登録商標)50/13を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、表28に示されている値と等しい又はほぼ等しい重量パーセントで、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)50/13、及び/又はLabrasolを含む。
【0047】
各Gelucireはスラッシュで区切られた2つの数字で示され、最初の数字(2桁の数字)はその融点を示し、2番目の数字はHLB(親水親油バランス)を示す。
【0048】
いくつかの実施形態において、組成物は、約38℃~約55℃又は39℃~約50℃(例えば、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、又は約49℃)の融点及び約1~約16(例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15)のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドを含む。したがって、いくつかの実施形態において、約38℃~約55℃又は38℃~約50℃(例えば、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、又は約49℃)の融点及び約1~約16(例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15)のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドは、薬物組成物の重量に対して約0.01~約99重量パーセント(重量%)、例えば、約10~約99重量%、約40~約85重量%、約50~約80重量%、約55~約75重量%、又は約60~約70重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、約38℃~約55℃又は38℃~約50℃(例えば、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、又は約49℃)の融点及び約1~約16(例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15)のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドは、組成物の重量に対して、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%、又は約99重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、約38℃~約55℃又は38℃~約50℃(例えば、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、又は約49℃)の融点及び約1~約16(例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15)のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドは、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約15重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約30重量%、約30重量%~約35重量%、約35重量%~約40重量%、約40重量%~約45重量%、約45重量%~約50重量%、約50重量%~約55重量%、約55重量%~約60重量%、約60重量%~約65重量%、約65重量%~約70重量%、約70重量%~約75重量%、約75重量%~約80重量%、約80重量%~約85重量%、約85重量%~約90重量%、又は約90重量%~約99重量%で、本開示の組成物中に存在する。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル、例えば、Plurol(登録商標)Oleique CC 497(ポリグリセリル-3オレエート)を含み、ポリグリセリル脂肪酸エステルは、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約15重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約30重量%、約30重量%~約35重量%、約35重量%~約40重量%、約40重量%~約45重量%、約45重量%~約50重量%、約50重量%~約55重量%、約55重量%~約60重量%、約60重量%~約65重量%、約65重量%~約70重量%、約70重量%~約75重量%、約75重量%~約80重量%、約80重量%~約85重量%、約85重量%~約90重量%、又は約90重量%~約99重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル、例えば、Plurol(登録商標)Oleique CC 497(ポリグリセリル-3オレエート)を含み、ポリグリセリル脂肪酸エステルは、組成物の重量に対して、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%、又は約99重量%で、本開示の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、組成物は、表28に示されている値と等しい又はほぼ等しい重量パーセントで、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル、例えば、Plurol(登録商標)Oleique CC 497(ポリグリセリル-3オレエート)を含む。
【0050】
理論に拘束されることなく、ポリオキシルグリセリドは、OCSの生物学的利用能を高める傾向があると考えられている。OCSは水不溶性であり得るが、ポリオキシルグリセリドを含む製剤は、可溶化状態でOCSを送達することを促進し得る。ポリオキシルグリセリドは、食事摂取状態を誘発し、腸細胞全体の透過性を増大させ、且つ/又はリンパ輸送を促進することによって、吸収を増大させることができる。
【0051】
組成物は一般に、薬学的に許容され活性成分に対して適合性があり、適切な賦形剤、エリキシル剤、結合剤などを含む、(一般に「薬学的及び生理学的に許容される担体」と称される)薬学的に許容される製剤で投与される。薬物担体はまた、低い水溶性及び/又は膜透過性を有する多くの薬物の薬物動態学的特性、特に生物学的利用能を改善するために使用され得る。
【0052】
OCS、並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種は、薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム又はリチウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウムなど)又は他の錯体として、製剤中に存在し得る。薬学的に許容される製剤は、例えば、錠剤、カプセル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、フォーム、ペースト、エアロゾル化剤形、及び各種注射可能形態(例えば、静脈内投与用形態)などの、固体、半固体、及び液体剤形を調製するために従来的に利用されている、固体、半固体、及び液体材料を含むと理解すべきである。適切な薬学的担体としては、限定されないが、不活性固体希釈剤又は充填剤、滅菌水溶液及び非経口使用のための各種有機溶媒、例えば、ポリエチレングリコール(PEG 300及びPEG 400などのPEG)、エタノール、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、植物油(ゴマ、大豆、トウモロコシ、ヒマシ、綿実、及びピーナッツ)及びグリセリンが挙げられる。固体担体(希釈剤、賦形剤)の例としては、ラクトース、デンプン、従来的崩壊剤、被覆剤、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及びセルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。液体担体の例としては、限定されないが、各種水性又は油性ビヒクル、食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール、イソプロパノール、リン酸緩衝液、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン、ミリスチン酸イソプロピル、エチルココエート、オクチルココエート、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、パラフィン、流動パラフィン、プロピレングリコール、セルロース、パラベン、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、フェノキシエタノールなど、又はこれらの組合せが挙げられる。水は、組成物を等張にするための従来的緩衝液及び薬剤も含み得る組成物を調製するための担体として使用され得る。経口剤形としては、各種増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、結合剤、被覆剤などを挙げることができる。本開示の組成物は、意図された投与経路に適した形態で組成物を供給するように任意のそのような追加成分も含有してよい。加えて、組成物は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの、少量の補助物質を含有してよい。同様に、担体又は希釈剤は、モノステアリン酸グリセロール又はジステアリン酸グリセロールなどの、当技術分野で公知の任意の徐放性材料を、単独で又はワックスと混合して、含むことができる。他の潜在的な添加剤及び他の材料(好ましくは、一般に安全と認められる[GRAS]材料)としては、着色剤;香味料;界面活性剤(例えば、ポリソルベート(TWEEN(登録商標)20、40、60、及び80ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなど)を含む非イオン性界面活性剤)、ソルビタンエステル(Span 20、40、60、及び85など)、並びにポロキサマー(Pluronic L44、Pluronic F68、Pluronic F87、Pluronic F108及びPluronic F127など);レシチンなどの両性イオン界面活性剤;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び硫酸化ヒマシ油などのアニオン性界面活性剤;並びに塩化ベンザルコニウム及びセトリミドなどのカチオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor EL)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、ポリオキシル60硬化ヒマシ油(Cremophor RH 60)、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)、12-ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル(Solutol HS-15)、PEG 300カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Softigen 767)、PEG 400カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Labrafil M-1944CS)、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol(登録商標))、ポリグリセリルオレエート(例えば、ポリグリセリル-3オレエート(Plurol(登録商標)CC497))、PEG 300リノール酸グリセリド(Labrafil M-2125CS)、ポリオキシル8ステアレート(PEG 400モノステアレート)、ポリオキシル40ステアレート(PEG 1750モノステアレート)、ハッカ油、オレイン酸など、及び溶媒、安定化剤、結合剤又は封入剤(ラクトース、リポソームなど)が挙げられる。防腐剤、例えば、ベンジルアルコール、フェノール、クロロブタノール、2-エトキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、クロルヘキシジン、3-クレゾール、チメロサール、フェニル第2水銀塩(phenylmercurate salt)、安息香酸ナトリウム、臭化セトリモニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、セチルアルコール、ステリルアルコール、クロロアセトアミド(chloroactamide)、トリクロロカルバン、ブロノポール、4-クロロクレゾール、4-クロロキシレノール、ヘキサクロロフェレン、ジクロロフェン、又は塩化ベンザルキウムも使用することができる。製剤に応じて、活性成分(例えば少なくとも1種のOCS)はそれぞれ組成物の約1~約99%(重量/重量)で存在し、「担体」ビヒクルは組成物の約1~約99%(重量/重量)を構成すると予想される。本開示の薬学的組成物は、それらが組成物の治療効果を妨げない又は妨害しない限りにおいて、任意の適切な薬学的に許容される添加剤又は補助剤を含んでよい。本開示の使用のためのさらに他の適切な製剤は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 22nd edition, Allen, Loyd V., Jr editor (Sept 2012);及びAkers, Michael J. Sterile Drug Products: Formulation, Packaging, Manufacturing and Quality; publisher Informa Healthcare (2010)に見出すことができる。
【0053】
加えて、ALFの処置に使用される製剤としては、場合により、例えばアセトアミノフェン毒性を沈静化するために使用される、追加の適切な同時製剤化(又は場合により同時投与)薬剤も挙げられ、限定されないが、メチオニン及び/若しくはグルタチオン生合成経路の代謝産物、例えば、S-アデノシルホモシステイン(SAH)、S-メチルメチオニン(SMM)、シスチン、ベタインなど、又はそれらの各種形態及び/若しくは塩、例えば、アセチルシステイン(例えば、静脈内N-アセチルシステイン)、並びに各種栄養補助食品、活性炭などが挙げられる。例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、場合により、例えばアセトアミノフェン毒性を沈静化するために使用される、追加の適切な同時製剤化(又は場合により同時投与)薬剤を含んでもよい。
【0054】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む。いくつかの場合において、組成物は少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含む。界面活性剤の例としては、限定されないが、ポリソルベート、Triton X100、及びSDSから選択される、少なくとも1種の界面活性剤が挙げられる。いくつかの場合において、少なくとも1種の界面活性剤は、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約20重量%、例えば約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.03重量%~約2重量%、約0.1重量%~約0.3重量%、又は約0.05重量%~約10重量%の範囲の量で、組成物中に存在する。いくつかの場合において、少なくとも1種の界面活性剤は、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%、例えば、約6重量%~約10重量%、約7重量%~約10重量%、約8重量%~約10重量%、又は約9重量%~約10重量%の範囲の量で、組成物中に存在する。
【0055】
組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、水をさらに含んでよい。水は典型的に、組成物の重量に対して、約0.1重量%~約99重量%、例えば約0.05重量%~約98重量%、約70重量%~約98重量%、約80重量%~約97重量%、約90重量%~約96重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0056】
いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、少なくとも1種の酸化防止剤をさらに含む。抗酸化剤の例としては、限定されないが、メチオニン、BHT、BHA、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アセチルシステイン、ビタミンA、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、及びビタミンEが挙げられる。他の場合において、組成物は酸化防止剤を含有しない。例えば、組成物はメチオニンを含有しないことがあり得る。
【0057】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、1種以上の薬学的に許容される緩衝液、例えば、リン酸塩、酢酸塩、アンモニア、ホウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、グリシン、乳酸塩、リジン、マレイン酸、コハク酸塩、酒石酸塩又はトロメタミンを含有する。いくつかの態様において、組成物中の緩衝液濃度は、約0.1~約200mMの範囲であり、いくつかの態様において、約1~約50mMの範囲であり、いくつかの態様において、約5~約15mMの範囲である。いくつかの態様において、組成物は少なくとも1種の緩衝液をさらに含む。緩衝液の例としては、限定されないが、リン酸緩衝液、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、クエン酸塩、及びホウ酸塩から選択される少なくとも1種の緩衝液が挙げられる。少なくとも1種の緩衝液は典型的に、約1mM~約500mM、例えば、約2mM~約200mM、約50mM~約200mM、約5mM~約50mM、約7mM~約25mM、約9mM~約20mM、又は約9mM~約15mMの範囲の量で、組成物中に存在する。
【0058】
いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、少なくとも1種の塩をさらに含む。少なくとも1種の塩の例としては、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び硫酸ナトリウムから選択される、少なくとも1種の塩が挙げられる。少なくとも1種の塩は典型的に、組成物の重量に対して、約0.1重量%~約5重量%、例えば、約0.2重量%~約2.5重量%、約0.2~約0.85重量%、約0.2重量%~約0.8重量%、約0.3重量%~約0.75重量%の範囲の量で存在する。
【0059】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、少なくとも1種の糖をさらに含む。少なくとも1種の糖の例としては、限定されないが、ブドウ糖、マンニトール、及びスクロースから選択される少なくとも1種の糖が挙げられる。
【0060】
いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、少なくとも1種の防腐剤をさらに含む。少なくとも1種の防腐剤の例としては、限定されないが、ベンジルアルコールが挙げられる。
【0061】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、少なくとも1種の香味剤をさらに含む。
【0062】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、粘度増強剤をさらに含む。
【0063】
いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、グリセリルパルミトステアレートをさらに含む。
【0064】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、崩壊剤をさらに含む。崩壊剤の例としては、限定されないが、クロスカルメロースナトリウムが挙げられる。崩壊剤は典型的に、組成物の重量に対して、約1重量%~約5重量%の範囲の量で、組成物中に存在する。
【0065】
一般に、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、約200~約2000mmol/kg、例えば約270~約340mmol/kgのオスモル濃度、例えば、約270、280、290、300、310、320、330又は340mmol/kgのオスモル濃度を有し、その結果、組成物(例えば、溶液)は血液と等張(等浸透圧)になり、それにより注射時の痛みが軽減され、等張剤を添加する必要がなくなる。いくつかの場合において、組成物は、約150mmol/kg~約3000mmol/kg、例えば、約200mmol/kg~約500mmol/kg、約270mmol/kg~約330mmol/kg、約280mmol/kg~約320mmol/kgの範囲のオスモル濃度を有する。ただし、高濃度薬物を調製し、IV注射用の滅菌水で希釈することができる。逆に、低薬物濃度製剤は、非経口剤形の場合に等張性を予想範囲内にするために、塩化ナトリウム又はマンニトールなどの等張剤を含み得る。
【0066】
いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、約3~約10、例えば、約3~約8、約4~約8、約6~約8、又は約7~約8の範囲のpHを有する。
【0067】
いくつかの態様において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を、21以下のゲージ、例えば22、23、24、25、26、又は27以下のゲージの0.5インチ針を取り付けた1mL注射器に25℃で入れて、10ポンドの力を加えたとき、組成物は注射可能である。
【0068】
いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、すぐに使用できる懸濁液である。他の場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、例えば使用前に復元するための粉末、例えば凍結乾燥粉末である。いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、単回用量容器内に収容される。他の場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、多回用量容器内に収容される。いくつかの場合において、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、ボトル、バイアル、注射器、又はカプセル内に収容される。カプセル材料の例としては、限定されないが、ゼラチン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0069】
組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、典型的に、液体溶液、懸濁液、エマルジョンなど、又は注射及び/若しくは静脈内投与に適した液体;各種制御放出製剤;或いはクリーム又はローションなどとして投与される。投与に適した固体形態、又は投与前に液体中の溶液若しくは懸濁液とするのに適した固体形態も包含される。
【0070】
制御放出とは、時間に応じた化合物の供給又は送達を指し、一般に経口投薬製剤における時間依存放出を指す。制御放出は、持続性放出(長期放出が意図されている場合)、パルス放出(破裂した薬物が異なる時間に放出されるもの)、遅延放出(例えば胃腸管の異なる領域を標的とするもの)などの、複数の変種を有する。制御放出製剤は、摂取又は注射後の薬物濃度の潜在的に有害なピークを回避し、治療有効性を最大にするために、薬物作用を延長し、所望の治療可能時間域内に薬物レベルを維持することができる。丸薬、カプセル及び注射可能薬物担体(追加の放出機能を有することが多い)に加えて、放出制御医薬品の形態として、ゲル、インプラント、デバイス及び経皮パッチが挙げられる。
【0071】
いくつかの態様において、例えば、急性ALFの処置の場合、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、静脈内(IV)投与用に製剤化されている。この場合、投与される容積は一般に、他の投与方式が用いられるときよりも大きく、例えば約50~1000mlである。そのような製剤において、OCSの量は依然として本明細書の他の箇所に記載されている範囲内にある。
【0072】
対照的に、筋肉内又は腹腔内注射に使用される組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の場合、用量を送達するために使用される液体の容積は、典型的にはるかに少なく、例えば最大約0.5~約10mlである。
【0073】
予防及び/又は処置される例示的疾患/症状
器官機能異常及び不全
いくつかの態様において、器官又は器官系不全を予防及び/又は処置する方法が提供される。方法は、目的の器官(例えば肝臓)を、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物と接触させることを含む。目的の器官が患者の体内にある場合(in vivo)、接触は一般に、患者における1種以上の器官又は器官系の機能異常及び/又は不全を予防及び/又は処置するのに有効又は十分である量、例えば、患者が示している器官機能異常又は不全の少なくとも1つの症候を予防又は処置するために治療上有効である量の組成物を、患者に投与することを含む。器官がすでに対象から(すなわちドナーから)採取されており、したがってex vivoである場合、接触は一般に、器官を少なくとも1種の組成物と接触させること、すなわち、少なくとも1種の組成物を器官に適用し、器官を保存すること、すなわち、移植されるまで器官の生存能力を維持し、且つ/又は器官の維持を強化することを含む。
【0074】
器官機能異常及び不全につながるか、それらを引き起こすか、それらによって引き起こされるか、又はそれらに関連する症状を予防及び/又は処置する方法、例えば、炎症、細胞死(例えば壊死)、虚血の結果、敗血症、及びその他のものの予防及び/又は処置もまた記載されている。方法は、症状を予防及び/又は処置するのに有効又は十分である量の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0075】
本明細書で使用するとき、「器官」とは、生体の体内で何らかの特殊な機能を果たす細胞及び組織を含む、分化した且つ/又は相対的に独立した身体構造を指す。「器官系」とは、身体機能の実行において一緒に働く2つ以上の器官を指す。中空器官は、中空管若しくは嚢を形成するか、又は空洞を含む内臓器官(内臓)である。本開示の組成物の投与又はそれとの接触によってその機能異常又は不全が予防及び/又は処置される例示的な器官としては、限定されないが、心臓、肺(例えば、肺線維症によって損傷した肺、例えば慢性喘息に関連した肺)、肝臓、膵臓、腎臓、脳、腸、結腸、甲状腺などが挙げられる。いくつかの場合において、1種以上のOCSの投与によって予防及び/又は処置される機能異常又は不全は、肝臓以外の器官、例えば、心臓、肺、膵臓、腎臓、脳、腸、結腸などに関係する。一般に、「器官」を指す本明細書に記載の方法及び組成物はまた、他に指示がない限り、「器官系」を含むと理解されるべきである。
【0076】
「器官機能異常」は、器官がその期待される機能を果たさない症状又は健康状態を意味する。器官機能は、生理学的範囲内でそれぞれの器官の期待される機能を呈する。当業者は、診察中に器官のそれぞれの機能を認識する。器官機能異常は、典型的に、場合により解剖学的傷害の非存在下で、器官における進行性で潜在的に可逆的な生理学的機能異常の発現を伴う臨床的症候群を含む。
【0077】
「器官不全」は、通常の恒常性が外部の臨床的介入なしには維持できない程度の器官機能異常を意味する。
【0078】
「急性器官機能異常」とは、通常、既往症のない人において、急速に、すなわち、数日又は数週間内(例えば、26週以内、13週以内、10週以内、5週以内、4週以内、3週以内、2週以内、1週以内、5日以内、4日以内、3日以内、又は2日以内)に、発生する器官機能の低下を指す。
【0079】
「急性器官不全」とは、通常、既往症のない人において、急速に、すなわち、数日又は数週間内(例えば、26週以内、13週以内、10週以内、5週以内、4週以内、3週以内、2週以内、1週以内、5日以内、4日以内、3日以内、又は2日以内)に、発生する器官機能の喪失を指す。例えば、「急性腎不全」という用語は、体内での老廃物の蓄積をもたらすのに十分な腎機能の急速な悪化を意味する。急性肝不全は、以下で詳細に論じられている。
【0080】
本明細書で使用するとき、「虚血」とは、器官への血流の減少を指す。
【0081】
用語「敗血症(sepsis)」及び「敗血症(septicemia)」とは、微生物及びそれらに関連する内毒素が血流に侵入することから生じる病的症状を指す。
【0082】
「内毒素」とは、グラム陰性菌細胞壁由来のリポ多糖類、グラム陽性菌由来のペプチドグリカン、及び真菌細胞壁由来のマンナンなどの、微生物細胞のあらゆる有害構成成分を指す。
【0083】
当業者は、1種以上の器官機能異常、器官不全、及び/又は器官機能異常若しくは不全の前兆である1種以上の症状が、共存症であり得る、すなわち、対象又は個体に同時に存在し得ることを理解するであろう。例えば、対象は、器官不全をもたらす活発な敗血症を有することがある。したがって、敗血症を処置することは同時に器官不全の発生を予防することができ、又は虚血を処置することにより、本組成物の投与がなかったなら器官不全につながるであろう虚血事象の後に起こる炎症を予防若しくは処置することができるという点で、予防及び/若しくは処置が重複することがある。
【0084】
したがって、いくつかの態様において、本開示は、組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を提供し、本明細書に記載の治療有効量の組成物を投与することによる、それを必要とする対象における1種以上の器官又は器官系の機能異常及び/又は不全の予防及び/又は処置方法を提供する。いくつかの態様において、器官及び/又は器官系の機能異常及び/又は不全は、急性のものであり、例えば急性肝不全である。
【0085】
方法は、治療上有効又は十分な量の、本明細書に記載の少なくとも1種の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を、対象に投与することを含み得る。その量は、処置される器官の機能異常を予防及び/若しくは処置するために、又は処置される器官の不全を予防及び/若しくは処置するために十分なものである。いくつかの態様において、処置される器官不全は多器官機能異常症候群(MODS)である。方法は一般に、そのような処置を必要とする対象を特定又は診断することを含み、例えば、器官機能異常若しくは不全の影響を受けやすいか、又は器官機能異常若しくは不全の少なくとも1種の徴候若しくは症候をすでに示していることなどのため、そのような処置から利益を得るであろう対象を特定又は診断することを含む。例えば、対象は、特定の患者群の成員であってよく、例えば、急性発作(細菌感染、重度の火傷、外傷などに起因する急性器官傷害)に起因する疾患、又は慢性的症状(器官損傷を引き起こす薬物治療への長期間の曝露)、及び/又は以下でより詳細に論じる他の原因による疾患を有する患者であってよい。
【0086】
本開示によって対処される患者群はまた、以下のように定義することもできる。SOFAシステムは、1994年に欧州集中治療医学会議の合意会議で作成され、1996年にさらに改訂された。SOFAは、毎日多器官不全を測定する6器官機能異常/不全スコアである。各器官は0(正常)~4(最も異常な)に格付けされ、0~24点の毎日のスコアを得る。SOFAの目的は、臨床スタッフのために単純で信頼性が高く継続的なスコアを作成することである。集中治療室(ICU)入室又は入院の最初の数日間の器官機能異常の逐次評価は、予後の良い指標である。平均及び最高のSOFAスコアの両方は、転帰についての特に有用な予測因子である。
【0087】
一態様において、本開示に従う患者群は、下限閾値として少なくとも1つのSOFAスコアを有し、SOFAスコアは、入院日又は集中治療室(ICU)への入室日において、呼吸、肝臓、凝固、心血管系、CNS、又は腎臓の臨床基準のうちの少なくとも1つについて1である。ただし、患者は、臨床基準のうち少なくとも1つについて、1若しくは2、又はそれ超(例えば、3又は4)のスコアを有し得る。したがって、前記患者群は、本開示に従う治療的介入を必要としており、したがって、器官機能異常又は器官不全、例えば、腎臓、肝臓、心臓及び/又は肺の機能異常又は器官不全の予防又は低減を必要としている。
【0088】
初期スコアとは無関係に、一般に、ICU又は病院における最初の48時間の間のSOFAスコアの増加から、少なくとも50%の死亡率が予測される。したがって、別の態様において、本開示に従う器官機能異常/不全に対する治療的介入を必要とする患者群は、入院又はICU入室後の最初の48時間以内に少なくとも1つのSOFAスコアが増加することを特徴とする。いくつかの態様において、不全が生じる器官(複数可)又は器官系は、心血管系、呼吸器系、腎臓、血液系、神経系、消化器系、肝臓系、心臓、肝臓、肺、腸、結腸、腎臓、脾臓、及び脳のうちの少なくとも1つの部分を含む。
【0089】
本開示の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の投与は、器官機能異常及び器官不全の予防又は低減のために適用することができ、したがって、慢性若しくは急性疾患又は急性症状自体、したがって、基礎疾患と称することができるものに対する、何らかの一次処置又は初回処置の方法を意図したものであり得るが、必ずしもそうではない。このことは、本開示が必ずしも、例えばそれぞれの器官にある感染、癌、又は腫瘍を治癒/回復させる治療を提供するものではなく、生理的機能に向けてそれぞれの器官を蘇生するためのものであることを意味する。したがって、本開示の範囲内での患者の慢性若しくは急性疾患又は急性症状の治療は、急性事象としてのあらゆる種類の器官機能不全、又は器官機能低下を含む。
【0090】
腎機能異常及び/又は不全
腎臓疾患は、以下に論じる、急性若しくは慢性腎不全、又はさらには慢性腎不全の急性増悪であり得る。
【0091】
急性腎傷害(AKI、以前は急性腎不全(ARF)と呼ばれていた)とは、例えば約7日以内に発現する、腎臓機能の突然の喪失を指す。AKIは一般に、何らかの原因、例えば、低血圧、腎臓に有害な物質への曝露、腎臓の炎症過程、又は尿の流れを妨げる尿路閉塞による腎血流の減少(腎虚血)によって引き起こされる、腎組織への損傷のために起こる。急性腎傷害の原因としては、腎臓が長期間にわたって正常な血流を奪われる、事故、傷害、又は手術による合併症が挙げられる。心臓バイパス手術はそのような手技の一例である。偶発的な薬物過剰投与又は抗生物質若しくは化学療法などの薬物の化学的過負荷による薬物過剰投与も、急性腎傷害の発症を引き起こし得る。AKIは、血液尿素窒素(BUN)及びクレアチニンの上昇、又は腎臓が十分な量の尿(例えば、成人では1日当たり400mL未満、小児では0.5mL/kg/時未満、又は幼児では1mL/kg/時未満)を産生できないことなどの、特徴的臨床検査結果に基づいて診断される。したがって、本方法は、対象におけるこれらのパラメーターのうち1つ以上を測定又は検知し、測定パラメーターのうち1つ以上が陽性であり、したがって、約7日以内に発現する腎機能不全の存在を示している場合、急性腎傷害を診断し、本明細書に記載の通り、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含み得る。
【0092】
慢性腎臓疾患(CKD)は通常ゆっくりと発現し、初期には患者は症候をほとんど示さない場合がある。CKDは、不可逆的急性疾患の長期的な結果又は疾患進行の一部であり得る。CKDは、真性糖尿病、長期の非管理高血圧、多嚢胞性腎臓疾患、ハンタウイルスなどの感染症、及び特定の遺伝的素因、例えば、APOL1遺伝子変異体を含む、多数の原因を有する。本方法は、CKDを有する対象に、本明細書に記載の組成物を投与することを含む。
【0093】
いくつかの場合において、腎臓機能異常/不全の患者群を指示する臨床基準は以下の通りである。
腎臓機能異常/不全の危険がある患者:GFR減少>25%、6時間で血清クレアチニン1.5倍増加、又は尿産生量<0.5ml/kg/時
現在、腎傷害を有する患者:GFR減少>50%、12時間でクレアチニン倍増又は尿産生量<0.5ml/kg/時
腎不全を有する患者:GFR減少>75%、24時間でクレアチニン3倍増若しくはクレアチニン>355μmol/l(>44の上昇)(>4mg/dl)又は尿排出量0.3ml/kg/hr未満
腎機能喪失患者:持続性急性腎傷害(AKI)又は4週間超にわたる腎機能の完全喪失
末期腎疾患:3カ月超にわたる腎機能の完全喪失
【0094】
各種イメージングに使用される造影及び増強染料、特にヨウ素含有染料も、特に高齢者、糖尿病患者、すでに何らかの形態の腎臓機能障害を有する人々などの、罹患しやすい集団において、腎臓損傷を引き起こすことが知られている。造影剤誘発腎症は、例えばX線又はコンピュータ断層撮影(CT)スキャンのための染料投与後における、血清クレアチニンの25%超の増加、又は0.5mg/dLの血清クレアチニンの絶対増加のいずれかとして定義される。ヨウ素含有染料としては、限定されないが、イオヘキソール、イオジキサノール及びイオベルソール、並びに他のイオン性ヨウ素染料、例えば、ジアトリゾエート(Hypaque 50)、メトリゾエート(Isopaque 370)、及びイオキサグレート(Hexabrix);並びに非イオン性造影剤、例えば、イオパミドール(Isovue 370)、イオヘキソール(Omnipaque 350)、イオキシラン(Oxilan 350)、イオプロミド(Ultravist 370)、及びイオジキサノール(Visipaque 320)が挙げられる。本明細書に記載の組成物は、例えば、染料への曝露にもかかわらず腎臓値を正常レベルに維持するために、又は染料投与後にこれらの値を安全で正常な範囲に戻すことを促進するか若しくは速めるために、染料の投与前、染料と同時に、及び/又は染料投与後に投与した場合に、そのような染料の影響を防止又は軽減することができる。
【0095】
肝機能異常及び/又は不全
本開示の例示的な態様は、急性肝不全、特に壊死によって引き起こされる急性肝不全の処置を含む。急性肝不全は、肝細胞機能異常、特に既知の以前の肝疾患のない患者における凝固障害及び精神状態の変化(脳症)の急速な発現を伴う。この疾病は、その一般的な特徴(thread)が肝細胞の重度傷害及び/又は大量壊死、例えば、肝細胞の80~90%の機能喪失である、多くの症状を包含する。肝細胞機能の喪失は、(黄疸などの)肝疾患の最初の徴候の直後に重度の合併症が急速に出現することを特徴とする、多器官反応を引き起こす。合併症としては、例えば血清アルブミンのレベル及び血中のプロトロンビン時間によって測定される、肝性脳症及びタンパク質合成障害が挙げられる。これまで、急性肝不全に対する処置の選択肢は限られており、肝臓が元の損傷から回復し始めた後でも、しばしば突然死が起こることがある。
【0096】
急性肝不全の診断(すなわち、急性肝不全を経験しており、本方法の実施から利益を得ることができる対象の特定)は、一般に、例えば、精神状態の変化、凝固障害、発症の迅速性、及び既知の以前の肝疾患がないことを証明するための、健康診断、臨床検査結果、患者の病歴、及び過去の病歴に基づく。「急速」の正確な定義は、用いられる特定の慣習によって異なる。最初の肝症候の発症から脳症の発症までの時間に基づく、様々な細分化が存在する。あるスキームは、「急性肝不全」を、何らかの肝臓症候の発症から26週以内の脳症の発現として定義する。「急性肝不全」は、8週以内に脳症の発症を必要とする「劇症肝不全」と、8週間後だが26週間より前の脳症の発症を記述する「亜劇症」に細分化される。別のスキームは、「超急性」肝不全を、7日以内の発症として定義し、「急性」肝不全を、7~28日での発症として定義し、及び「亜急性」肝不全を、28日~24週での発症として定義する。これらの基準のいずれかによって急性肝不全を経験していると特定された対象は、本明細書に記載の方法によって処置することができる。
【0097】
いくつかの場合において、肝機能異常/不全の患者群は、>1.2mg/dL、例えば、>1.9mg/dL、又は>5.9mg/dLという、ビリルビンのより低い閾値を特徴とする。急性肝不全は、多くの潜在的な原因を有し、何らかの理由で急性肝不全を経験していると特定された対象は、本明細書に記載の方法によって処置され得る。考えられる原因としては以下のものが挙げられる。
アセトアミノフェン(APAP)。アセトアミノフェン(パラセタモール、Tylenol(登録商標)、その他のも)を服用しすぎることは、米国における急性肝不全の最も一般的な原因である。非常に大量の単回用量のAPAPを一度に服用すると急性肝不全が発生することがあり、又は推奨値より高い用量を数日間にわたり毎日服用すると急性肝不全が発生することがある。慢性肝疾患の人々は、高齢者、非常に若年の者などと同様に、特に罹患しやすい。そのような対象において、APAP「過剰投与」は、慢性肝疾患を有さない人又は高齢者若しくは非常に若年の者ではない人にとっては、安全な又は通常の用量である場合がある。本開示のこの態様は、以下で詳細に論じられている。
処方箋による薬物治療。抗生物質、非ステロイド系抗炎症薬、及び抗痙攣剤を含むいくつかの処方箋による薬物治療は、急性肝不全を引き起こすおそれがある。ハーブサプリメント。カバ、エフェドラ、スカルキャップ、及びペニーロイヤルを含む、生薬及びハーブサプリメントは、急性肝不全に関連している。
肝炎及び他のウイルス。A型肝炎、B型肝炎及びE型肝炎は急性肝不全を引き起こすおそれがある。急性肝不全を引き起こす可能性がある他のウイルスとしては、エプスタインバールウイルス、サイトメガロウイルス及び単純ヘルペスウイルスが挙げられる。
毒素。急性肝不全を引き起こすおそれがある毒素としては、食用種に間違われることがある野生の毒キノコ、タマゴテングタケ(Amanita phalloides)が挙げられる。
自己免疫疾患。肝不全は、免疫系が肝細胞を攻撃して炎症及び傷害を引き起こす疾患である自己免疫性肝炎によって引き起こされる場合がある。
肝臓内静脈の疾患。バッド・キアリ症候群などの血管疾患は、肝臓の静脈に閉塞を引き起こし、急性肝不全を引き起こすおそれがある。
代謝性疾患。ウィルソン病及び妊娠中の急性脂肪肝などの、稀な代謝性疾患は、急性肝不全を引き起こすおそれがある。
癌。肝臓に発生する癌、又は体内の他の場所から肝臓に拡がった癌は、急性肝不全を引き起こすおそれがある。
その他。他の原因としては、薬物治療(例えばテトラサイクリン、トログリタゾン)に対する特異体質性反応、過剰なアルコール摂取(重度のアルコール性肝炎)、ライ症候群(ウイルス感染による小児の急性肝不全、例えば、アスピリンが特定の役割を果たすことがある水痘)、及びその他のものなどが挙げられる。急性肝不全の多くの症例は明らかな原因がない。
【0098】
加えて、末期的ALFの発現の前に、本開示の方法及び組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物によって、肝臓毒性の各種症候を予防及び/又は処置することができる。例示的な症候としては、限定されないが、脳浮腫及び脳症(これらは肝性脳症、昏睡、脳ヘルニアなどを引き起こし得る);凝固障害(例えば、プロトロンビン時間の長期化、血小板機能異常、血小板減少症、脳内出血など);腎不全(例えば、急性尿細管壊死をもたらすAPAP過剰投与などの元々の発作によるか、又は肝腎症候群若しくは機能的腎不全をもたらす収縮過多性循環に起因する);炎症及び感染症(例えば、感染の有無にかかわらず、敗血症及び多器官不全を引き起こし得る、全身性炎症症候群);低ナトリウム血症、低血糖症、低カリウム血症、低リン酸血症、代謝性アルカローシス、及び乳酸アシドーシス(主にアセトアミノフェン過剰投与で起こる)などの各種代謝障害;血行動態及び心臓呼吸性障害(例えば、低血圧、組織内酸素摂取量の減少、組織低酸素症及び乳酸アシドーシス);肺合併症(例えば、敗血症、肺出血、胸水、無気肺、及び肺内シャントなどを伴うか又は伴わない、急性呼吸窮迫症候群(ARDS));ALFの初期の臨床的発現として、活力減退、食欲減退、濃い琥珀色の尿、深部の黄疸、吐き気、嘔吐、及び腹部膨満などが挙げられる、妊娠後期の合併症が挙げられる。これらの症候又は症状のうち1つ以上を示す対象は、少なくとも1種のOCSの投与から利益を得ることができる。
【0099】
APAP毒性による急性肝不全
いくつかの態様において、本開示は、APAP関連の毒性及びそれに関連する症候又はその特徴、特に上述の肝傷害又はALFを予防及び/又は処置するための、方法及び組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を提供する。APAP毒性は世界中で中毒の最も一般的な原因の1つであり、そしてアメリカ合衆国及び英国では急性肝不全の最も一般的な原因である。APAP毒性を有する多くの個体は、過剰投与後の最初の24時間以内に全く症候を示さないことがある。他の人は当初、あいまいな腹痛や吐き気などの非特異的な病訴を有する場合がある。進行性疾患では、通常、肝不全の徴候が発現する。肝不全の徴候としては、低血糖、低血中pH、出血しやすいこと、及び肝性脳症が挙げられる。肝臓への損傷、又は肝毒性は、APAP自体からではなく、その代謝産物の1種であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)(N-アセチルイミドキノンとしても知られている)からもたらされる。NAPQIは、肝臓の天然の抗酸化物質であるグルタチオンを枯渇させ、肝臓内の細胞を直接傷つけ、肝不全につながる。APAP毒性の危険因子としては、過度の慢性的アルコール摂取、絶食又は神経性食欲不振、及びイソニアジドなどの特定の薬物の使用が挙げられる。
【0100】
それを必要とする対象において、ALF、特にAPAP毒性に関連する肝機能異常及び/又は急性肝不全を予防又は処置するための方法が本開示に記載されている。方法は、APAP毒性を予防及び/又は処置するために、APAPの投与前に、APAPの投与と同時に、及び/又はAPAPの投与後に、本明細書に記載の組成物を投与することを含み得る。
【0101】
膵機能異常及び不全
膵臓は脊椎動物の消化器系及び内分泌系で機能する腺器官である。膵臓は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドを含むいくつかの重要なホルモンを産生し、また、小腸における栄養素の消化及び吸収を助ける消化酵素を含有する膵液を分泌する。膵臓の炎症(膵炎)には複数の原因があり、典型的に即時処置が必要である。膵炎は急性である場合があり、突然始まり数日続くか、又は慢性である場合があり、何年にもわたって発症する。膵炎の症例の80%はアルコール又は胆石によって引き起こされ、胆石は急性膵炎の単一の最も一般的な病因であり、アルコールは慢性膵炎の単一の最も一般的な病因である。重度の膵炎は、器官不全、壊死、感染壊死、偽嚢胞及び膿瘍に関連し、死亡率は、約2~9%であり、壊死が起こった場合はそれより高くなる。以下のうち少なくとも3つの項目が当てはまる場合、重度膵炎と診断される。患者の年齢が55歳を超えていること;血中PO2酸素が60mm Hg又は7.9kP未満であること;白血球数1マイクロリットル(mcL)当たり>15,000WBC;カルシウム<2mmol/L;尿素>16mmol/L;乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)>600iu/L;アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)>200iu/L;アルブミン<32g/L;及びグルコース>10mmol/L。
【0102】
本開示の一態様は、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することによる膵機能異常及び/又は不全の処置である。適切な患者又は患者群は、熟練医師によって、上に列挙された症候又は基準のうち少なくとも1つを示すものとして特定される。
【0103】
心機能異常及び/又は不全
慢性心不全(CHF)を意味するためにしばしば使用される心不全(HF)は、心臓が身体の要求を満たすために血流を維持するのに十分な程度にポンピングすることができないときに起こる。鬱血性心不全(CHF又はCCF)という用語は、しばしば慢性心不全と互換的に使用される。症候としては一般に、息切れ(特に運動時、横になったとき、及び夜間睡眠中)、過度の疲労感、及び脚の腫れが挙げられる。心不全の一般的な原因としては、以前の心筋梗塞(心臓発作)を含む冠状動脈疾患、高血圧、心房細動、心臓弁膜症、及び心筋症が挙げられる。心不全は、心臓の筋肉の一部が死滅する心筋梗塞、及び血流が完全に停止する心停止とは異なる。
【0104】
心不全は典型的に、症候の履歴、並びに心臓超音波検査、血液検査、及び/又は胸部X線撮影による確証を伴う身体検査に基づいて診断される。心臓超音波検査では、超音波を使用して1回拍出量(SV、1拍動ごとに心室を出る心臓の血液量)、拡張終期量(EDV、拡張終期の総血液量)、及びEDVに対するSVの比率(駆出率(EF)として知られる値)を決定する。これらのうち1つ以上の異常は、心機能異常及び/又は不全を示すか又は確証し得る。心電図(ECG/EKG)は、不整脈、虚血性心疾患、左右の心室肥大、及び伝導遅延又は異常の存在(例えば、左脚ブロック)を特定するために使用される。これらのうち1つ以上の異常もまた、心機能異常及び/又は不全を示すか又は確証し得る。心機能異常/不全を診断又は確認するために日常的に行われる血液検査としては、電解質(ナトリウム、カリウム)、腎機能測定、肝機能検査、甲状腺機能検査、全血球計算、及びしばしば、感染が疑われる場合のC反応性タンパク質が挙げられる。これらのうち1つ以上の異常もまた、心機能異常及び/又は不全の存在を示すか又は確証し得る。B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の増加は、心不全を示す特定の検査項目である。心筋梗塞が疑われる場合、限定されないが、トロポニンクレアチンキナーゼ(CK)-MB(クレアチンキナーゼのイソ型)、乳酸デヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとも呼ばれる)、ミオグロビン、虚血変性アルブミン(IMA)、プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド、グリコーゲンホスホリラーゼアイソザイムBBなどを含む各種心臓マーカーを検査することができる。これらのうち1つ以上の異常レベル(通常、異常に高いレベル)は、心機能異常又は心不全の処置を必要とする対象を特定していると考えられる。
【0105】
心不全はまた、化学療法、例えば、乳癌などの癌に対する処置として受けた化学療法の副作用として及び/又はその化学療法の余波において起こり得る。化学療法を受けているか又はすでに化学療法を受けている患者に対する、本明細書に記載の組成物の投与は、癌化学療法の最中又は後に、心臓(並びに他の器官、器官系、組織及び細胞)への望ましくない損傷を防ぐことができる。換言すれば、本明細書に記載の組成物は、化学療法の有害な影響に対する保護剤として使用される。
【0106】
心機能異常又は不全を有することが確証されているか又は疑われる対象は、治療有効量の本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の投与によって処置される。その量は、心機能異常若しくは不全の症候を予防するか、又は心機能異常若しくは不全の症候を緩和するために、例えば、心臓機能を少なくとも部分的に正常若しくはほぼ正常に回復させ、且つ/又は心臓機能及び患者の健康がさらに悪化することを防ぐために、十分なものである。
【0107】
脳機能異常及び/又は不全
脳機能異常及び/又は不全(すなわち器質性脳症候群「OBS」)は、精神疾患以外の医学的疾患による精神機能の低下を表す一般用語である。原因としては、限定されないが、外傷による脳傷害;脳内への出血(脳内出血);脳周囲の空間への出血(くも膜下出血);脳に圧力をかけている頭蓋骨内部の血餅(硬膜下血腫);震盪;体内の低酸素(低酸素症)及び体内の高二酸化炭素レベル(高炭酸血症)などの各種呼吸症状;各種心血管障害、例えば、多発性脳卒中による認知症又は多発性梗塞性認知症、心臓感染症(心内膜炎、心筋炎)、脳卒中(例えば、自発性脳卒中)及び一過性脳虚血発作(TIA)又はいわゆる「ミニ脳卒中」;或いはアルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、びまん性レビー小体病、ハンチントン病、多発性硬化症、正常圧水頭症、パーキンソン病及びピック病などの各種変性障害によるもの;腎臓、肝臓、若しくは甲状腺疾患及び/又はビタミン欠乏(B1、B12、又は葉酸)などの代謝性の原因による認知症;並びに薬物及びアルコール関連の症状、例えば、アルコール禁断症状、薬物又はアルコール使用による中毒、ウェルニッケ・コルサコフ症候群(過度のアルコール摂取又は栄養不良の長期的影響)、及び薬物からの離脱(特に催眠鎮静薬及びコルチコステロイド);並びに突然発症(急性)又は長期(慢性)感染、例えば、敗血症、脳炎、髄膜炎、プリオン感染症、及び晩期梅毒;並びに癌又は癌処置の合併症が挙げられる。OBSの症候としては、動揺、混乱;脳機能の長期的喪失(認知症)、及び重度の短期的脳機能喪失(せん妄)、並びに、例えば呼吸を制御する自律神経系への影響が挙げられる。OBSの存在の診断又は確認は、血液検査、脳波図(EEG)、頭部CTスキャン、頭部MRI、及び/又は腰椎穿刺などの各種方法論を検知又は測定することによって決定され、正常値は典型的に以下の通りである。圧力:70~180mm Hg;脳脊髄液(CSF)の外観:透明無色;CSF総タンパク質:15~60mg/100mL;γグロブリン:総タンパク質の3~12%;CSFグルコース:50~80mg/100mL(又は血糖値の2/3超);CSF細胞数:0~5個の白血球(全て単核性)、及び赤血球なし;並びにCSFクロリド:110~125mEq/L。
【0108】
これらの検査若しくは分析又は指標のうち1つ以上が異常である場合、対象は一般に、OBSの影響を受けやすいか又はすでに罹患していると考えられる。OBS(初期段階又は進行段階のいずれか)を有することが確認されているか又は疑われている対象は、本明細書に記載の少なくとも1種のOCS(例えば、25HC3S)を含む治療有効量の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の投与によって処置され、その量は、OBSの症候を予防するか、又はOBSの症候を緩和するために、例えば、脳機能を少なくとも部分的に正常若しくはほぼ正常に回復させ、且つ/又は脳機能及び患者の健康がさらに悪化することを防ぐために十分なものである。
【0109】
外傷による器官機能異常及び/又は不全
いくつかの態様において、器官機能異常/不全は外傷によるものである。外傷の例としては、限定されないが、車両事故による創傷;射創(狩猟に関連した活動中の偶発的な射創及び犯罪活動又は戦争に関連した射創などの故意に加えられた射創の両方);鈍的外傷又は鈍的傷害、例えば、衝撃、傷害、又は身体的攻撃による、身体部分への身体的外傷などの非穿通性鈍的外傷などが挙げられる。鈍的外傷の例としては、限定されないが、震盪、例えば、運動選手又は事故、転倒などに巻き込まれた人が被る震盪、及び落下物などの投射物との接触の結果被った鈍的外傷、及び他のものが挙げられる。
【0110】
このような鈍的外傷を受けやすい個体(例えば、運動選手、高齢者)は、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の予防的投与から利益を得ることができ、対象において震盪などの鈍的外傷が診断された場合、対象は、傷害が疑われるか又は確認された後、可能な限り早く投与から利益を得ることができる。
【0111】
虚血によって引き起こされる症状の予防及び/又は処置
虚血とは、組織又は器官への血液供給が不十分であり、細胞代謝及び組織の生存の維持に必要な酸素及びグルコースの不足を引き起こすことを指す。低酸素症(無酸素症としても知られている)とは、虚血によって引き起こされ、身体又は身体の一部位に十分な酸素供給が行われていない症状を指す。虚血は、虚血のカスケードとして知られる過程において組織損傷をもたらす。損傷は主に、代謝老廃物の蓄積、細胞膜を維持できないこと、ミトコンドリアの損傷、そして最終的に自己分解タンパク質分解酵素の細胞及び周辺組織への漏出の結果である。炎症の結果、細胞及び組織も損傷を受ける。即時の介入なしでは、虚血は組織壊死まで急速に進行し、最終的には例えば器官機能異常又は不全に至ることがある。
【0112】
加えて、虚血組織への血液供給の回復は、再灌流傷害として知られる追加の損傷の原因となり得る。再灌流傷害は、初期の虚血よりも有害である場合がある。血流の再導入は酸素を組織に戻し、細胞を損傷するフリーラジカル及び活性酸素種のより多くの産生を引き起こす。血流の再導入はまた、より多くのカルシウムイオンを組織にもたらし、カルシウム過負荷を引き起こし得、潜在的に致命的な心不整脈をもたらすおそれがあり、細胞の自己破壊を加速し得る。回復した血流はまた、損傷組織の炎症反応を悪化させ、損傷を受けたがまだ生存可能である細胞を白血球が破壊する原因となり得る。
【0113】
本開示は、それを必要とする対象における、虚血/再灌流傷害を含む、虚血の有害な影響又は転帰を予防及び/又は処置する方法及び組成物を提供する。方法は一般に、虚血及び/又は虚血/再灌流の症候を予防又は処置するのに十分である治療有効量の、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することを含む。方法はまた、虚血及び/又は虚血/再灌流を経験する、又は経験している、又は経験したことがある対象を特定又は診断することを含んでよい。虚血及び/又は虚血/再灌流は、疾患過程(例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓など)に起因するか、若しくは事故(例えば、動脈又は他の血液導管の切断)に起因することがあり、又は例えば、身体の画定若しくは限局された領域への血流を一時的に止めるために、いくつかの心臓手術若しくは他の手術中に起こるように、意図的に(計画的に)行われることもある。
【0114】
本明細書に記載の方法に関連する虚血の種類としては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
心臓虚血、例えば心筋虚血は、心臓の筋肉又は心筋が不十分な血流を受け取るときに発生する。心臓虚血は、冠状動脈におけるコレステロールに富むプラークの長期的蓄積であるアテローム性動脈硬化症から最も頻繁に生じる。
腸虚血:大腸及び小腸の両方が虚血性傷害によって影響を受ける可能性がある。大腸の虚血性傷害は、虚血性大腸炎として知られる炎症過程をもたらし、また手術及び癒着成長の結果としても起こり得る。小腸の虚血は腸間膜虚血と呼ばれる。
脳虚血は、脳への不十分な血流であり、急性(すなわち、急速)又は慢性(すなわち、長期的)であり得る。急性虚血性脳卒中は、迅速に処置すれば可逆的になり得る神経学的な救急事態である。脳の慢性虚血は血管性認知症と呼ばれる認知症の一形態をもたらすことがある。脳に影響を与える虚血の短い発症は一過性虚血発作(TIA)と呼ばれ、しばしば誤って「ミニ脳卒中」と呼ばれる。
四肢虚血:四肢への血流の欠如は急性四肢虚血をもたらす。
皮膚虚血とは、皮膚層への血流の減少を指し、皮膚の斑点形成又は不均一な斑状の変色をもたらすことがあり、チアノーゼの発現、又は褥瘡(例えば、褥瘡性潰瘍、とこずれなど)などの他の症状をもたらすことがある。
可逆性虚血とは、特定の器官への血流の欠如をもたらす症状を指し、これは薬物治療又は手術を介して逆進させ得る。可逆性虚血とは、最も多くの場合、心臓の筋肉への妨げられた血流を指すが、脳を含む身体の任意の器官の閉塞を指すこともある。虚血の症例を逆進させ得るかどうかは、根本的な原因に依存する。動脈内でのプラーク蓄積、動脈の衰弱、低血圧、血栓、及び異常な心臓律動は全て、可逆性虚血の原因となるおそれがある。
心尖部の虚血とは、心臓の頂端部又は底部先端部への血流の欠如を指す。
腸間膜虚血とは、不十分な血液供給のために起こる炎症及び小腸損傷を指す。血流減少の原因としては、体循環の変化(例えば、低血圧)、又は血管の狭窄若しくは血栓などの局所的要因を含み得る。
限定されないが、肝臓(肝虚血)、腎臓、腸などを含む各種器官の虚血。
【0115】
虚血、虚血/再灌流もまた、因果的に炎症及び器官機能異常/不全に関連し得る。例えば、大脳(脳)虚血は、典型的に、サイトカイン、接着分子、並びにプロスタノイド及び一酸化窒素を含む他の炎症のメディエーターの虚血誘発性発現によって開始される、顕著な炎症反応を伴う。そのような炎症を減弱することを目的とした介入は、例えば大脳虚血の後期段階で起こる脳損傷の進行を減少させることが知られている。加えて、腎臓内(腎臓)不全(ARF)の最も頻繁な原因は、一過性又は長期的腎臓低灌流(虚血)である。
【0116】
その影響が本明細書に記載のように処置又は予防され得る、他の種類の虚血としては、限定されないが、虚血性脳卒中、小血管虚血、虚血/再灌流傷害などが挙げられる。
【0117】
虚血の診断は一般に、影響を受ける特定の器官若しくは器官系又は組織若しくは細胞における機能不全の1つ以上の症候を特定することによって行われる。したがって、症候としては、個々の器官の機能異常/不全について本明細書に列挙されたもの、さらに患者の病歴を記録することによる虚血それ自体の記録(例えば、器官又は組織に血液を供給する動脈の既知の閉塞、遮断又は切断など、そのような観察を示すか又はそれと整合しているイメージングなど)が挙げられる。
【0118】
1つ以上の適切な検査若しくは分析又は指標が異常である場合、対象は一般に、虚血の影響を受けやすいか又はすでに罹患していると考えられる。虚血を有することが確認されているか又は疑われている(又は、例えば外科的処置中に将来予定された虚血を経験することが判明している)対象は、本明細書に記載の治療有効量の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の投与によって処置することができ、その量は、虚血及び/若しくは虚血/再灌流傷害の症候を予防するか、又は、虚血及び/若しくは虚血/再灌流傷害の症候を緩和するために、例えば、血流が再確立したとき器官若しくは組織機能を少なくとも部分的に正常若しくはほぼ正常に回復させ、且つ/又は器官若しくは組織機能及び患者の健康がさらに悪化することを防ぐために十分なものである。
【0119】
望ましくない細胞死の影響の予防及び/又は処置
能動的な調節された細胞死は、「プログラム細胞死」又は「PCD」と呼ばれ、これは細胞内経路によって媒介される調節された過程である。PCDは一般に生体にとって有益であるが、シグナル伝達の異常又は細胞に対する圧倒的なストレスの存在は、望ましくないPCDを引き起こすことがある。PCDの形態としては、アポトーシス、すなわち、細胞の自殺を引き起こす、ストレスに応答した制御された細胞内シグナル伝達の開始;及びネクロプトーシス、すなわち、例えばアポトーシスシグナル伝達がウイルス又は突然変異などの内因性又は外因性因子によって遮断されたときに、アポトーシスのバックアップとしての役割を果たすPCDの一形態が挙げられる。
【0120】
PCDとは対照的に、壊死とは、生体組織中の細胞の有害で早熟な死をもたらす、調節されない受動的な細胞死を指す。壊死は、典型的に、例えば感染、毒素、外傷、虚血などの細胞又は組織外部の因子によって引き起こされる。理論に拘束されることなく、壊死は細胞膜の完全性の喪失及び細胞死の産生物の細胞内空間への制御されない放出を含み、それにより、近傍の食細胞が死細胞を探し出して排除することを妨げる周囲の組織において炎症反応を開始させると考えられている。壊死組織の外科的除去は壊死の拡大を止めることができるが、例えば内部組織又は器官が関与している場合などの、いくつかの場合において、外科的介入は不可能であるか又は実際的ではない。したがって、内部器官の壊死は、多くの場合、危険でしばしば致命的な器官機能異常及び/又は不全を招く。
【0121】
本開示は、それを必要とする対象における、望ましくない細胞死、特に器官機能異常及び/又は器官不全に関連する望ましくないアポトーシス及び壊死の影響を予防及び/又は処置する方法及び組成物を提供する。細胞死は、望ましくないPCD(例えば、望ましくない又は有害なアポトーシス、自食作用、又は壊死)、若しくは壊死(これは定義上望ましくない)、及び/又はこれらの組合せから生じるか、又はそれと関連し得る。方法は、本明細書に記載の治療有効量の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することを含み、その量は、望ましくない細胞死の発生を予防するか、又は対象においてすでに起きている望ましくない細胞死の影響を処置するために十分なものである。
【0122】
アポトーシスによる望ましくない又は有害な細胞死は、例えば、虚血の余波及びアルツハイマー病において起こる。望ましくないアポトーシスは非常に有害であり、広範囲の組織損傷を引き起こす。
【0123】
本明細書に記載の方法によって予防及び/又は処置され得る壊死の種類としては、限定されないが、以下のものを含む。
無菌性壊死は、感染を伴わない壊死であり、通常、外傷性股関節脱臼後の大腿骨頭に発生する。
急性尿細管壊死とは、通常、腎毒性、大手術後の虚血、外傷(圧挫症候群)、重度の血液量減少、敗血症、又は火傷のいずれかに対して二次的に発生する、軽度から重度の損傷又は尿細管細胞の壊死を伴う急性腎不全を指す。
無血管性壊死は、骨への血流の一時的又は永久的な停止の結果である。血液が存在しないと、骨組織が死に、骨全体の骨折又は圧潰をもたらす。
バルザー脂肪性壊死は、大網滑液包炎及び脂肪組織の壊死の散在性斑点を伴う壊疽性膵炎である。
架橋壊死は、肝小葉の隣接した中心静脈と亜急性肝壊死に特徴的な門脈三管とを架橋する、癒合性壊死の隔壁の壊死である。
乾酪様又は「チーズ状」壊死は、組織が柔らかく、乾いて、カッテージチーズ様になる壊死であり、結核及び梅毒に最も多く見られ、死んだ組織が湿って柔らかくなる湿潤壊死とは対照的である。
中心壊死は、影響を受ける骨、肝臓の細胞又は小葉の中心部分に影響を及ぼす壊死である。
凝固壊死とは、線維性梗塞の形成を伴う、器官又は組織の一部の壊死を指し、細胞の原形質は、タンパク質成分の凝固により固定され不透明になり、細胞の外形は長い間存続する。
液化壊死又は融解壊死は、壊死物質が軟化して液化する壊死である。
収縮性帯壊死とは、過剰収縮した筋原線維及び収縮性帯、並びに死滅しつつある細胞へのカルシウム流入によって引き起こされるミトコンドリア損傷を特徴とする心臓病変を指し、これは、結果として細胞を収縮状態に留める。
脂肪壊死は、脂肪組織中の中性脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解される壊死であり、通常、急性出血性膵炎において膵臓及び脾臓周囲脂肪に影響を及ぼす。
壊疽性壊死は、細菌作用と組み合わされた虚血が腐敗を引き起こす壊死である。「壊疽」は、乾性壊疽、湿性壊疽、ガス壊疽、内部壊疽、及び壊疽性筋膜炎を包む。
歯肉壊死とは、歯肉の細胞及び他の構成要素の死又は変性を指す(例えば、壊死性潰瘍性歯肉炎)。
歯間壊死は、乳頭の組織を破壊し、歯間クレーターを生じさせる進行性の疾患である。進行した歯間壊死は、歯周アタッチメントの喪失につながる。
虚血性壊死とは、血液供給による干渉の結果として組織の死及び崩壊が生じ、したがって、組織が代謝維持に必要な物質に接触できなくなることを指す。
黄斑変性:黄斑変性(湿潤形態及び乾燥形態の両方)は、黄斑として知られる、網膜の小さい中心部分が悪化する場合に生じる。この疾患は人が歳をとるのに伴って発現するため、しばしば、加齢黄斑変性症(AMD)と呼ばれる。
急性黄色肝萎縮症とは、広範囲の、通常は致命的な、肝臓の壊死を指し、肝臓毒への曝露によって又は薬物アレルギーから生じ得るウイルス性肝炎(激症肝炎)の稀な合併症である。
リン壊死は、リンへの曝露による顎骨の壊死である。
分娩後下垂体壊死とは、産後期の下垂体の壊死を指し、多くの場合、分娩の際のショック及び過度の子宮出血に関連しており、各種パターンの下垂体機能不全につながる。
放射線壊死は、放射線によって引き起こされる組織の死である。
選択的心筋細胞壊死とは、筋原線維変性を指す。
ゼンカー壊死とは、横紋筋のヒアリン変性及び壊死を指し、ゼンカー変性とも呼ばれる。
【0124】
そのような望ましくない又は病理学的な細胞死は、細胞死を予防若しくは処置し且つ/又は隣接細胞への細胞死シグナル伝達の広がりを防ぐのに十分な量で、影響を受ける細胞を、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物と接触させることによって、予防又は処置することができる。処置の候補細胞、又は処置の候補細胞を含有する器官は、複数の公知技術のいずれかによって、例えば、細胞死の明白な影響(組織破壊、液状化、臭いなど)を観察し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を検知することによって、各種スキャン、例えば、断層撮影又は核磁気共鳴によって、抗体などを使用して原因菌の存在を(例えば、PCRを使用して)検知することによって、特定される。
【0125】
敗血症(炎症反応症候群、又はSIRS)に関係するか又はそれによって引き起こされる症候の予防及び/又は処置
敗血症は、免疫反応の引き金となる重篤な感染症によって引き起こされる、潜在的に生命に危険を及ぼす全身性の炎症である。感染症は、典型的に、細菌によって引き起こされるが、血液、尿管、肺、皮膚、又は他の組織中の菌類、ウイルス、又は寄生生物にも起因し得る。残念ながら、症候は、感染症が消失した後でも継続し得る。重症敗血症は、例えば、低血圧、高血中乳酸、及び/又は低尿排出量などによって証明される、器官機能不良又は不十分な血流を引き起こす敗血症である。実際に、敗血症は、感染症から多器官機能異常症候群(MODS)までの範囲内に入ると考えられている。敗血症ショックは、十分な量の点滴液を与えた後にも改善しない敗血症に起因する低血圧である。
【0126】
これまで、敗血症は典型的に、しばしば集中治療室において、点滴液及び抗生物質によって処置されていた。各種薬物治療及び他の介入を使用することができ、例えば、機械的人工呼吸、透析、及び酸素飽和も使用することができる。転帰は疾患の重症度に依存し、死亡の危険性は、敗血症で30%、重症敗血症では50%、敗血症ショックでは80%にもなる。本明細書では、本明細書に記載の治療有効量の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を、それを必要とする対象又は患者に投与することによって敗血症を予防又は処置する方法が提供される。例えば、本開示は、哺乳動物のエンドトキシン血症及び敗血症、並びにエンドトキシン血症及び敗血症ショックを処置するために使用されるカテコールアミンによって誘発される腎血管収縮及び腸間膜血管収縮の処置を含む。用語「エンドトキシン血症」とは、血流中の微生物性内毒素の存在を指す。エンドトキシン血症に罹っている対象は、通常、敗血症も有している。本開示は、敗血症/エンドトキシン血症を処置する方法を含む。本開示はさらに、本明細書に記載の有効量の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することにより、敗血症/エンドトキシン血症によって引き起こされる急性腎不全を処置する方法をも含む。
【0127】
さらに、本開示は、敗血症/エンドトキシン血症によって引き起こされる腎血管収縮を処置する方法を含む。さらに、本開示は、カテコールアミン誘発腎血管収縮及び腸間膜血管収縮を減少させる方法を提供する。さらにまた、本開示は、内毒素及び/又は血圧上昇薬の作用に起因する、患者の腸及び腎臓への損傷を予防する方法も含む。敗血症は、ミトコンドリア機能異常に関連し、ミトコンドリア機能異常は、酸素消費障害につながり、敗血症誘発多器官不全につながり得る。このことは、特に、敗血症患者における組織酸素圧力の上昇に当てはまり、これは、酸素を使用する器官の能力低下を示唆する。ミトコンドリア酸化作用リン酸化によるATP産生は総酸素消費の90%超を占めるため、ミトコンドリア機能異常は、おそらくin vitroでのミトコンドリア呼吸を阻害することが知られ敗血症において過剰に産生される一酸化窒素により、直接的に器官不全をもたらし得る。したがって、本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、重症敗血症、及び敗血症ショックの患者のための器官機能異常及び不全の予防方法において使用される。
【0128】
方法は、例えば、敗血症の少なくとも1つの症候、例えば、異常温度(101°F(38.3℃、「発熱」)超又は96.8°F(36℃)未満の体温)、心拍数の増加、呼吸数の増加、予想又は確認された感染症、及び場合により精神錯乱を検知又は測定することによって、そのような処置を必要とする適切な患者を特定することを含んでよい。重症敗血症の患者は、器官が不全に陥っている可能性があることを示す以下の徴候及び症候:尿排出量の著しい減少、精神状態の突然の変化、血小板数の減少、呼吸困難、心ポンプ機能異常、及び腹痛のうち少なくとも1つを示す。敗血症ショックの診断は一般に、重症敗血症の徴候及び症候の観察、並びに単純な補液に適切に反応しない極度に低い血圧の測定に基づく。いくつかの場合において、対象は、咳嗽/痰/胸痛;腹痛/膨満/下痢;線感染(line infection);心内膜炎;排尿障害;頚部硬直を伴う頭痛;蜂巣炎/創傷/関節感染;及び/又は任意の感染に関する陽性微生物学に基づく敗血症の予防的処置又は治療的処置の候補になり得る。他の場合において、対象は、敗血症の診断、並びに心収縮期血圧<90/平均;<65mm HG;乳酸>2mmol/L;ビリルビン>34μmol/L;2時間での尿排出量<0.5mL/kg/時;クレアチニン>177μmol/L;血小板<100×109/L;及びSpO2>90%(O2が与えられるまで)から選択される任意の器官機能異常に対する少なくとも1つの臨床上の疑いに基づき、重症敗血症のOCSによる予防又は治療的処置の候補になり得る。いくつかの場合において、対象は、処置に応答しない難治性低血圧があり、静脈内輸液全身投与だけでは患者の血圧が低血圧にならないように維持するのに不十分である場合に、敗血症ショックの予防又は治療的処置の候補になり得る。早期敗血症、重症敗血症、又は敗血症ショックの(徴候が見られるという)診断を伴う患者は、例えば治療有効量の組成物の投与による、本明細書に記載の組成物を用いた処置の候補である。投与量は、敗血症の症候が発現若しくは継続することを防ぐか、又は敗血症の症候の影響を少なくとも減少させるのに十分な量であってよい。
【0129】
高脂血症
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物及び方法、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物によって処置される対象は、高レベルの脂質の症候、すなわち高脂血症を有し、且つ/又はそのように診断されている。高脂血症は、どの種類の脂質が上昇しているかによっても分類され、すなわち、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、又はその両方の複合高脂血症に分類される。高レベルのリポタンパク質(a)も含まれる。高コレステロール血症とは一般に、血清中のコレステロールレベルが約200mg/dL以上の範囲であることを指す。高トリグリセリド血症は、例えば、境界線(1dL当たり150~199mg)、又は高い値(1dL当たり200~499mg)又は非常に高い値(1dL当たり500mg以上)として特徴付けられる。これらの症状は、それに関連する疾患又は症状、例えば、アテローム性動脈硬化症、心疾患、脳卒中、アルツハイマー病、胆石症、胆汁鬱滞性肝疾患、膵炎などと同様に、本明細書に記載の組成物によって処置される。本明細書に開示の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、対象におけるコレステロール及び/又は脂質レベルを低下させるために使用される。「コレステロールレベルを低下させること」とは、患者における遊離血清コレステロールのレベルが、組成物投与前の対象におけるコレステロールのレベルと比較して、少なくとも約10%~30%、好ましくは少なくとも約30~50%、より好ましくは少なくとも約50~70%、最も好ましくは少なくとも約70~約100%又はそれを超えて減少することを意味する。或いは、減少の程度は、化合物が投与されていない類似の未処置対照群と比較することによって決定することができる。当業者はそのような決定に精通しており、例えば、対照の使用、又はコレステロール及び/若しくは脂質を低下させる薬剤の投与前後の血中コレステロールレベルの測定に精通している。
【0130】
いくつかの態様において、予防又は処置される疾患又は症状は、高脂血症であるか、高脂血症によって引き起こされる。「高脂血症」とは、血中のいずれか又は全ての脂質及び/又はリポタンパク質の異常に上昇したレベルの症状を意味する。高脂血症としては、一次サブタイプ及び二次サブタイプの両方が含まれ、一次高脂血症は通常、遺伝的原因(受容体タンパク質の突然変異など)に起因するものであり、二次高脂血症は、糖尿病などの他の根本的原因から生じるものである。対象において上昇し、本明細書に記載の処置によって低下し得る、脂質及び脂質複合体としては、限定されないが、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質、中密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質(LDL)及び高密度リポタンパク質が挙げられる。特に、高コレステロール(高コレステロール血症)及びトリグリセリド(高トリグリセリド血症)は、アテローム性動脈硬化症に対する影響により、血管及び心血管疾患の危険因子であることが知られている。脂質上昇はまた、対象において急性膵炎などの他の症状の素因にもなることがある。したがって、本開示の方法はまた、高脂質であるか又は高脂質に関連する症状の処置又は予防(例えば予防的処置)においても使用され得る。そのような症状としては、例えば、限定されないが、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂肪肝(肝脂肪症)、メタボリックシンドローム心血管疾患、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症(すなわち、動脈硬化性血管疾患又はASVD)及び関連する疾病、急性膵炎、各種代謝障害、例えば、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、動脈硬化、脳卒中、胆石、炎症性腸疾患、遺伝性代謝障害、例えば脂質蓄積障害などが挙げられる。加えて、高脂血症に関連する各種症状としては、発行された米国特許第8,003,795号(Liuら)及び第8,044,243号(Sharmaら)に記載されているものが挙げられ、その両方の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0131】
いくつかの態様において、予防又は処置される疾患及び症状としては、炎症、並びに/又は炎症に関連するか、炎症を特徴とするか、若しくは炎症によって引き起こされる疾患及び症状が挙げられる。これらの疾患及び症状としては、多数のヒト疾患の基礎にある多数の群の障害が挙げられる。いくつかの実施形態において、炎症は急性であり、例えば、感染症、傷害などからもたらされる。他の実施形態において、炎症は慢性である。いくつかの実施形態において、免疫系は、アレルギー反応及びいくつかの筋疾患の両方に見られる炎症性障害に関与している。ただし、癌、アテローム性動脈硬化症、及び虚血性心疾患、並びに下記に列挙された他の疾患を含む、炎症過程に病因学的原因を有する各種非免疫疾患もまた処置され得る。
【0132】
少なくとも1種のOCSを使用して予防又は処置することができる、異常な炎症に関連する障害の例としては、限定されないが、尋常性座瘡、喘息、各種自己免疫疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、各種過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植拒絶、脈管炎、及び間質性膀胱炎が挙げられる。法的に処方された薬物及び違法薬物の両方の使用の結果として生じる炎症障害、並びに否定的認知又はその結果として引き起こされる炎症、例えばストレス、暴力、又は剥奪によって引き起こされる炎症もまた含まれる。
【0133】
一態様において、予防又は処置される炎症性障害は、アレルギー反応(1型過敏症)であり、炎症を引き起こす不適当な免疫反応の結果である。一般的な例は花粉症であり、花粉症はアレルゲンに対する皮膚肥満細胞の過敏反応によって引き起こされる。重症の炎症反応は、アナフィラキシーとして知られる全身性反応に移行する場合がある。他の過敏症反応(2型及び3型)は抗体反応によって媒介され、周囲の組織を損傷させる白血球を引き付けることによって炎症を誘発し、さらに本明細書に記載されるように処置され得る。
【0134】
他の態様において、炎症性筋疾患が予防又は処置される。このような筋疾患は、免疫系が筋肉の構成要素を不適切に攻撃して筋肉炎症の徴候をもたらすことによって引き起こされる。筋疾患は、全身性硬化症などの他の免疫障害に付随して起こることがあり、皮膚筋炎、多発性筋炎、及び封入体筋炎を含む。
【0135】
一態様において、本開示の方法及び組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、全身性炎症、例えば、メタボリックシンドローム及び糖尿病(例えば2型成人発症型糖尿病)に関連する炎症などの、肥満に関連する炎症を予防又は処置するために使用される。そのような炎症において、関与する過程は組織の炎症と同一であるが、全身性炎症は特定の組織に限定されず、内皮及び他の器官系を含む。全身性炎症は慢性である場合があり、肥満において広く観察されており、IL-6(インターロイキン-6)、IL-8(インターロイキン-8)、IL-18(インターロイキン-18)、TNF-α(腫瘍壊死因子-α)、CRP(C反応性タンパク質)、インスリン、血糖、及びレプチンを含む、炎症マーカーの上昇が多く観察される。これらのマーカーの高いレベルに関連する症状又は疾患は、本明細書に記載されるように予防又は処置することができる。いくつかの実施形態において、炎症は、TNF-α、IL-6、及びCRPなどのサイトカインの全身濃度の2~3倍の増加が観察される「低悪性度慢性炎症」として分類され得る。胴囲も全身性炎症反応と有意に相関し、この相関における主要因子は、脂肪過多によって引き起こされた自己免疫反応に起因し、これによって免疫細胞は脂肪沈着物を細菌や真菌などの感染体と「間違える」。全身性炎症は過食によっても引き起こされる場合がある。飽和脂肪を多く含む食事、及びカロリーを多く含む食事は炎症マーカーの増加と関連しており、過食が慢性的である場合、反応は慢性的になることがある。
【0136】
本開示の方法の実施は、一般に、高コレステロール及び/又は脂質に関連する症状に罹患しているか又はそれを発現する危険がある患者を特定すること、並びに、本開示の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を、適切な経路によって許容される形態で投与することを含む。投与される正確な投薬量は、個々の患者の年齢、性別、体重及び全体的な健康状態、並びに疾患の正確な病因論に応じて変わり得る。ただし、一般に哺乳動物(例えばヒト)への投与の場合、体重1kg・24時間当たり約0.1~約100mg以上の化合物、好ましくは体重1kg・24時間当たり約0.1~約50mgの化合物、より好ましくは体重1kg・24時間当たり約0.1~約10mgの化合物の範囲の(OCSに関しての)投薬量が有効である。
【0137】
肝障害
肝臓は体内の脂質恒常性を維持する役割を担っており、本明細書に記載の組成物は、肝疾患及び肝臓自体の損傷(例えば、NAFLD)を予防及び処置するために使用されてよく、過度に高いレベルの循環脂質に関連する疾患を予防及び処置するために、すなわち高脂血症及びアテローム性動脈硬化症などの関連する障害を予防又は処置するために使用されてよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物及び方法、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物によって処置される対象は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の少なくとも1つの症候を有するか、又はそれを有すると診断されている。
【0138】
さらなる態様において、本明細書に記載の組成物及び方法、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物によって処置される対象は、主に各種ウイルスによって引き起こされるがいくつかの毒(例えばアルコール)によっても引き起こされる、肝炎、肝臓の炎症などの肝障害;自己免疫(自己免疫性肝炎)又は遺伝性の症状;肝炎、すなわち脂肪性肝炎及び/又は肝硬変につながるおそれがある、非アルコール性脂肪性肝疾患、肥満に関連し肝臓中に豊富な脂肪があることを特徴とする疾患のスペクトラム;肝硬変、すなわち、死んだ肝細胞の置き換えによる肝臓内での線維性瘢痕組織の形成(肝細胞の死は、例えばウイルス性肝炎、アルコール依存症又は他の肝毒性化学物質との接触によって引き起こされることがある);ヘモクロマトーシス、体内での鉄の蓄積を引き起こし最終的には肝損傷につながる遺伝性疾患;肝臓癌(例えば、原発性肝細胞癌又は胆管癌、及び通常は胃腸管の他の部分からの転移性癌);ウィルソン病、身体が銅を保持するようになる遺伝性疾患;原発性硬化性胆管炎、おそらく本質的に自己免疫性である胆管の炎症性疾患;原発性胆汁性肝硬変、小胆管の自己免疫疾患;バッド・キアリ症候群(肝静脈閉塞);ギルバート症候群、人口の約5%に見出される、ビリルビン代謝の遺伝的障害;糖原病II型;並びに、各種小児肝疾患、例えば、胆道閉鎖症、α-1アンチトリプシン欠乏症、アラギル症候群、及び進行性家族性肝内胆汁鬱滞などの少なくとも1種の症候を有し、且つ/又はそれを有すると診断されている。加えて、外傷による肝損傷、例えば事故、射創などによる損傷も処置され得る。さらに、特定の薬物治療によって引き起こされる肝損傷を予防又は処置することができ、例えば、抗不整脈薬アミオダロン、各種抗ウイルス薬(例えばヌクレオシド類似体)、アスピリン(稀に小児のライ症候群の一部として)、コルチコステロイド、メトトレキセート、タモキシフェン、テトラサイクリンなどの薬物は、肝損傷を引き起こすことが知られている。
【0139】
他の態様において、本開示は、対象において肝細胞の増殖又は肝組織の再生を促進するために、肝細胞増殖及び肝組織再生のうち少なくとも一方を必要とする対象に対して、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することを含む、対象における肝細胞増殖又は肝組織再生を促進する方法を含む。いくつかの態様において、投与は、対象における肝臓手術、例えば肝移植手術の前、最中又は後に行われる。対象はまた、肝硬変、肝傷害、及び肝炎のうち少なくとも1つを有していてもよい。
【0140】
レプチン欠乏症、レプチン耐性及び脂質蓄積症
本開示はまた、異常な脂質蓄積(LA)を特徴とする障害を処置する組成物及び方法を提供する。既存の異常で有害な脂質沈着物(例えば、沈着が不適切である肝臓又は他の器官若しくは組織中の脂質小球)を有する哺乳動物に対して、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することは、脂質沈着物の減少又は排除及び追加的な脂質蓄積の防止をもたらす。したがって、投与は異常な脂質沈着を防止し、処置開始時に現存している脂質沈着(蓄積)を好転させる。
【0141】
そのように処置される障害は、本明細書において例えば「脂質蓄積障害」、「脂質沈着障害」などの語句によって言及され、限定されないが、以下のものを含む。
I.例えば、以下の原因に起因する、レプチン活性の欠如又は減弱から生じる障害、
i)例えばレプチン欠乏症(LD)において生じる、低レベルのレプチン産生、又は機能不全若しくは機能不良レプチン分子の産生を引き起こす遺伝子変異、或いは
ii)例えばレプチン受容体の機能の先天的又は後天的な異常又は欠損によって引き起こされ、例えば、レプチン受容体の遺伝子変異、又は例えばレプチン耐性(LR)において生じる、レプチン結合に対する受容体感受性の後天的喪失に起因する、レプチンシグナル伝達の欠陥、及び
II.一般に先天性である脂質蓄積障害。
【0142】
したがって、本明細書で使用する用語「減弱化レプチン活性(attenuated leptin activity)」は、上記のi)及びii)で特徴付けられるレプチン欠乏症(LD)及びレプチン耐性(LR)を包含する。同様に、本明細書で使用する用語「レプチン欠乏症関連脂質蓄積」は、上記のi)及びii)で特徴付けられる、レプチン欠乏症(LD)及びレプチン耐性(LR)に関連する脂質蓄積を包含する。
【0143】
したがって、本明細書に記載の組成物及び方法によって処置される対象は、レプチン欠乏症及び/若しくはレプチン耐性並びに/又は脂質蓄積症の少なくとも1種の症候を有し得る。これらの対象は、i)例えばレプチン欠乏症(LD)において生じる、低レベルのレプチン産生、又は機能不全若しくは機能不良レプチン分子の産生を引き起こす遺伝子変異(例えば、LEP遺伝子コード化レプチン(LEP gene encoding leptin)における突然変異);或いはii)例えばレプチン受容体の機能の先天的又は後天的な異常又は欠損によって引き起こされ、例えば、レプチン受容体の遺伝子変異(例えば、レプチン受容体をコード化するOb(lep)遺伝子の突然変異)に起因し、又は例えばレプチン耐性(LR)において生じる、レプチン結合に対する受容体感受性の後天的喪失に起因する、レプチンシグナル伝達の欠陥;或いはiii)先天性であり得る脂質蓄積障害を有していても有していなくてもよい。脂質蓄積障害としては、例えば、中性脂質蓄積症、ゴーシェ病、ニーマンピック病、ファブリー病、ファーバー病、GM1ガングリオシド症及びGM2ガングリオシド症などのガングリオシド症(例えば、テイ・サックス病及びサンドホッフ病)、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー(MLD、乳児期後期、若年及び成人MLDを含む)、並びに酸リパーゼ欠乏障害、例えばウォルマン病及びコレステリルエステル蓄積症が挙げられる。
【0144】
方法は、疾患又は症状を予防及び/又は処置するのに治療上有効である量の、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することを含む。
【0145】
皮膚炎症
なおさらなる態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で処置される対象は、「炎症性皮膚疾患」若しくは「炎症性皮膚障害」と診断され、且つ/又は1種以上の皮膚病変に罹患している。炎症性皮膚疾患は、典型的に、例えば、発赤、かゆみ、乾燥、肌荒れ、薄片状、炎症、及び刺激を伴う皮膚を特徴とし、皮膚はまた、水疱、鱗状斑などを示すこともある。いくつかの態様において、炎症性皮膚疾患は急性であり、処置しなくても一般に数日又は数週間以内に治癒し、本開示の組成物及び方法は、疾患の治癒中に症候を緩和し(例えば、かゆみ、発赤などを軽減し)、且つ/又は症候の消失を早める。或いは、いくつかの態様において、皮膚の炎症性疾患/障害は慢性的であり、例えば、処置しない場合、或いは従来的処置をしても、症候は数週間、数カ月、若しくは数年間、又はさらには無期限に持続する。いくつかの態様において、本開示の組成物及び方法は、疾患が持続する間、慢性的皮膚炎症の症候を緩和(軽減)し(例えば、かゆみ、発赤、皮膚のひび割れ及び剥がれなどを軽減し)、且つ/又は処置しなければ存在するであろう症候をさらに部分的若しくは完全に治癒する(完全に又はほぼ完全に消失させる)。
【0146】
「炎症性皮膚疾患」は、特定の、既知の又は特定可能な病原体への曝露によって引き起こされる疾患及び症状、さらに原因が明確にされていない疾患/症状を包含することを意図しており、例えば、これらの疾患/症状は、免疫障害又は機能不全(例えば、自己免疫反応)、ストレス、未確認のアレルギー、遺伝的素因などに起因し、且つ/又は2つ以上の要因に起因する。
【0147】
本明細書で使用する「皮膚病変」とは、最も一般的に、その周囲の皮膚と比較して異常な成長又は外観を有する皮膚の領域を指す。例えば、皮膚の領域は、1つ以上の外皮層(少なくとも表皮)の破れ、場合によっては下層組織を露出させる真皮及び/又は皮下組織(下皮)の破れを示す領域であり得る。皮膚病変としては、例えば、皮膚潰瘍、すなわち壊死性炎症組織の脱落によって生じた皮膚表面の局所的欠損、破壊又は削掘が挙げられる。潰瘍は、例えば、本質的に神経栄養性又は虚血性であり得、褥瘡性潰瘍、糖尿病性潰瘍(これらはしばしば足部潰瘍である)などを含む。静脈性及び動脈性潰瘍、典型的には脚又は足の潰瘍の処置も包含される。皮膚病変としては、故意又は偶発的な破れ、例えば、炎症又は感染を伴うか又は伴わない、切り傷、かき傷、切開などによるものも含まれる。皮膚病変はまた、赤膚、開放創などと呼ばれることもある。皮膚病変の根本的な原因は、炎症、感染症(例えば、ウイルス感染症又は細菌感染症)、神経障害、虚血、壊死(例えば、糖尿病性潰瘍において生じる壊死)、又はこれらのうち1つ以上の組合せであり得る。加えて、多くの皮膚疾患は、炎症及び1つ以上の皮膚病変の両方によって引き起こされ、且つ/又はそれを特徴とし、全てのそのような皮膚疾患及び/若しくは病変、又はそれらの症候は、本明細書に開示の組成物及び方法によって処置することができる。
【0148】
疑義を回避するために言うと、皮膚病変は皮膚壊死を含む。したがって、本明細書に記載の方法及び技術は、皮膚壊死の処置又は予防処置に適している。
【0149】
炎症性皮膚疾患/障害(特に慢性炎症性皮膚疾患)としては、限定されないが、例えば、アトピー性皮膚炎、全ての種類の乾癬、座瘡、魚鱗癬、接触性皮膚炎、湿疹、光線皮膚症、乾燥肌障害、単純ヘルペス、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、日焼け(例えば重症の日焼け)などが挙げられる。本明細書における乾癬への言及は、特に指示のない限り、全ての種類の乾癬を指す。
【0150】
いくつかの態様において、処置される疾患/症状は乾癬であり、斑状屈曲性(plaque flexural)、滴粒状、膿疱性、爪型、感光性、及び紅皮性乾癬などの全ての種類の乾癬を含む。乾癬は一般に免疫障害として認識されており、感染(例えば扁桃炎又は口腔カンジダ症)、ストレス、皮膚への傷害(切り傷、擦り傷、虫刺され、重症の日焼け)、特定の薬物治療(リチウム、抗マラリア剤、キニジン、インドメタシン)などの因子によって引き起こされるか、又はそれらに関係することがあり、クローン病、2型糖尿病、心血管疾患、高血圧、高コレステロール、鬱病、潰瘍性大腸炎などの他の免疫症状を併発することがある。これらの原因のいずれか、又は任意の他の原因若しくは未知の原因による乾癬は、本明細書に記載の製剤及び方法によって処置することができる。
【0151】
いくつかの態様において、処置される疾患/症状は湿疹である。湿疹は、かゆみがあり炎症を起こした皮膚の発疹を引き起こす各種症状を表すのに使用される一般的な用語であり、早期に発赤、かゆみ、微小丘疹及び小胞、滲出、漏出、及び痂皮化(crusting)、並びにその後の鱗屑化(scaling)、苔蘚化、及びしばしば色素沈着によって特徴付けられる、主に表皮を含む任意の表面炎症過程を指す。皮脂欠乏性湿疹、カポジ水痘様発疹、貨幣状湿疹、神経性皮膚炎、乾燥症湿疹紅斑(主に暖房した室内の低湿度が角質層の過度の水分不足を引き起こす冬に起こる、乾性鱗屑化、細かいひび割れ、皮膚の掻痒)、及びアトピー性皮膚炎を含む様々な種類の湿疹が知られている。
【0152】
アトピー性皮膚炎、湿疹の一種は、非伝染性障害であり、慢性的に炎症を起こす皮膚、及び場合により耐えられないかゆみを特徴とする。アトピー性皮膚炎とは、喘息や花粉症のような呼吸器系を含むストレス及びアレルギー性障害にしばしば関連する広範囲の疾患を指す。アトピー性皮膚炎はどの年齢でも起こり得るが、子供及び若年成人に最も一般的に見られ、例えば乳児湿疹が見られる。分泌物が滲出して(ooze)外殻を形成する肌を特徴とする乳児湿疹は、ほとんどの場合、顔面と頭皮に発生する。一態様において、アトピー性皮膚炎は、例えばアレルギー反応を引き起こす薬剤への曝露によって引き起こされる接触アレルギー性皮膚炎である。アトピー性皮膚炎の一般的な誘因としては、例えば、石鹸及び家庭用洗剤(例えば、汎用洗浄剤、食器用洗剤、洗濯用洗剤、窓用洗浄剤、家具用磨き粉、排水口用洗浄剤、トイレ用消毒剤など);衣類(例えば、ウールのような粗い布地);熱;ラテックスとの接触;化粧品及び化粧品の成分(例えば、アスコルビン酸、パラバン保存料、並びにグリコール酸、リンゴ酸、及び乳酸などのα-ヒドロキシ酸);ツタウルシ、ポイズンオーク、及びドクウルシなどの植物由来油;食品、特に酸性食品又は香辛料との接触;ニッケル、コスチュームジュエリー、時計バンド、ジッパーなどの日用部品(common component);日焼け止め剤及びその成分、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)系化学物質などが挙げられる。
【0153】
本明細書に記載の方法は、疾患又は症状を予防又は処置するのに治療上有効である量の、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することを含む。
【0154】
2つ以上の疾患/症状の予防/処置
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物及び方法によって処置される対象は、2つ以上の別個の組成物による処置を受け、それらの組成物のそれぞれは、少なくとも1種のOCS、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を含み、それらの組成物のそれぞれは、異なる疾患又は症状に対して処方又は使用される。例えば、高コレステロールの処置のために、(例えば、米国特許第8,399,441号に記載の)OCSの経口剤形又は本明細書に記載の組成物を服用している対象は、本明細書に記載の異なる組成のIV製剤により、又はさらには例えば接触性皮膚炎の処置のための局所製剤などの第3の組成物により、異なる障害、例えばAPAP過剰投与による急性肝不全についても処置され得る。異なる組成は異なる性質を有していてよく、例えば、特定の疾患又は症状に適合するように、形態が異なっていてよく(例えば、錠剤、液体、クリーム)、方式又は送達が異なっていてもよく(例えば、経口、静脈内、局所)、組成物中のOCS及び他の成分の濃度が異なっていてもよい。推奨される投与計画及び処置期間もまた異なり得るが、重複してもよく、例えば、高コレステロールのための経口調製物(例えばカプセル)を服用している間、及び/又はAPAP過剰投与によるALFの処置を受けている間に、患者は局所用クリームにより皮膚炎について処置され得る。高コレステロールの処置は、比較的低い投薬量のOCSと共に1日1錠の錠剤を何年にもわたって投与する治療方式を含む場合があり、皮膚炎の処置は、症候が消えるまで1日2回クリームを塗ることを含み、APAP過剰投与による急性肝不全の処置は、1つ又は2つの巨丸剤により、非常に高いOCS濃度及びより低い量(例えば5%以下)で、本明細書に記載の大量の組成物を投与することを含み得る。
【0155】
組成物投与の説明
方法の実施は一般に、本明細書に記載の疾患又は症状に罹患しているか又はそれを発現する危険がある患者を特定することを含み、適切な経路により、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物を投与することを含む。投与される正確な投薬量は、個々の患者の年齢、性別、体重及び全体的な健康状態、又は患者が受けている他の処置、並びに処置されている疾患症状の程度又は進行度、及び疾患の正確な病因に応じて変わり得る。ただし、一般に哺乳動物(例えばヒト)への投与の場合、体重1kg・24時間当たり約0.001~約100mg以上、好ましくは体重1kg・24時間当たり約0.01~約50mgの化合物、より好ましくは体重1kg・24時間当たり約0.1~約10mgの化合物の範囲のOCS投薬量を達成するのに十分な組成物を投与することが有効である。(OCSに関して)1日当たりの用量は一般に、1人1日当たり約0.1ミリグラム~約5000ミリグラムの範囲である。いくつかの態様において、用量は、1人1日当たり約10ミリグラム~約2000ミリグラム、又は1人1日当たり約100ミリグラム~約1000ミリグラムである。用量は、投与経路、生物学的利用能、及び投与される特定の製剤、並びに予防又は処置されている疾病の性質に応じて変わる。
【0156】
投与は、経口又は非経口であってもよく、静脈内、筋肉内、皮下、皮内注射、腹腔内注射などを含み、又は他の経路、例えば、経皮、舌下、直腸、及び口腔内送達、エアロゾル吸入、膣内、鼻腔内、局所、点眼剤としての投与、スプレーを介した投与、イオン導入、光音響誘導薬物送達、マイクロニードル送達などによるものであってもよい。投与経路は、典型的に、処置される症状の性質、及び例えば処置が予防的であるか又は存在する疾患の治癒をもたらすことを意図しているかどうかに応じて変わる。例えば、器官機能異常が起こる前に予防的効果を達成するには、特に経口投与されたOCSの優れた生物学的利用能の観点から、経口投与で十分であり得る。さらに、任意の手段による化合物の投与は、単回方式の治療として、又は他の治療及び処置様式、例えば手術、他の医薬(例えば鎮痛剤など)、栄養補助食品、食事療法、運動などと組み合わせて、実施することができる。いくつかの態様において、製品は、静脈内巨丸剤、静脈内注射(薬学的に適切な希釈剤で希釈したもの)、筋肉内、皮下、又は経口経路で投与することができる即時使用(ready to use)の製品溶液を含む。
【0157】
組成物が投与される対象は一般に、哺乳動物、多くの場合、ヒトであるが、これは常にそうであるとは限らない。この技術の獣医学的用途も考えられ、例えば、コンパニオンペット(猫、犬など)、又は家畜及び牧畜動物、馬、さらに特別な価値を有するか若しくは獣医師の保護下にある「野生」動物、例えば、保護区若しくは動物園内の動物、更生中の負傷した動物などのための用途も考えられる。
【0158】
いくつかの態様において、組成物は、対象が罹患している疾病に応じて、各種鎮痛薬、抗関節炎薬、各種化学療法薬、抗生物質、各種点滴液(例えば、生理食塩水、グルコースなど)などの、他の処置様式と組み合わせて投与される。「と組み合わせて」とは、1種以上の追加の薬剤の別々の調製物を投与すること、及び本開示の組成物中に1種以上の追加の薬剤を含めることの両方を指す。例えば、アスピリン、イブプロフェン、及びアセトアミノフェンは全て、長期間服用したり、又は特定の脆弱な集団(例えば非常に若年の者、高齢者など)が服用したり、又は過量が摂取されたりすると、潜在的に重篤な器官損傷を引き起こす副作用があり、本明細書に記載の組成物中の含有物によって投与することができる。したがって、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種、並びにそのような薬剤のうち1種以上を含む剤形が考えられている。
【0159】
本開示の化合物(すなわち組成物)、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物の投与は、断続的であってよく、又は段階的若しくは連続的、一定若しくは制御された速度によるものであってよい。さらに、医薬製剤が投与される時刻及び1日当たりの回数は様々であり得、医師などの熟練した開業医によって最も適切に決定される。例えば、APAP過剰投与の処置の場合、化合物は、例えば器官損傷を引き起こす薬剤の過剰投与から1週以内、例えば1日以内、12時間以内、4時間以内、1時間以内、又は10分以内に投与してよい。化合物は、少なくとも1カ月若しくは少なくとも1週間にわたり、手術前に少なくとも1日1回(例えば、毎日2回)又は手術の少なくとも1日前に、或いはさらには手術中に、例えば、器官不全に関連若しくは付随する手術、又は器官不全を引き起こす可能性のある手術(例えば、意図的な虚血/再灌流を含む手術)の中に、投与することができる。化合物はまた、少なくとも1日、少なくとも1週間、又は少なくとも1カ月にわたり、手術後に少なくとも毎日(例えば、毎日2回)投与されてよい。例えば、手術は心臓手術(例えば冠状動脈バイパス移植術(CABG))、心臓血管手術、心肺移植、肺手術(例えば肺塞栓症手術)、深部静脈血栓症(DVT)手術、脳外科手術、肝臓手術、胆管手術、腎臓手術(例えば、腎臓結石手術)、胃腸手術(例えば、腸、腸閉塞、憩室炎、又は腸管捻転手術)、又は動脈瘤手術であってよい。いくつかの場合において、例えば処置される1種以上の器官が肝臓を含む場合、投与は14日以内、例えば、10日以内、8日以内、5日以内、又は1日以内の間行われてよい。
【0160】
本開示の組成物(調製物)、例えば、本明細書に記載の、少なくとも1種のOCS並びにポリアルキレングリコール、カルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩、及びポリオキシルグリセリドのうち少なくとも1種を含む組成物、例えば本明細書に記載の個別に番号が付された態様に記載の組成物は、限定されないが、経口投与、注射による投与、直腸投与、吸入による投与、膣内投与、鼻腔内投与、局所投与、点眼剤としての投与、スプレーを介した投与などを含む、当業者に公知の多くの適切な手段のいずれかによる投与用に製剤化されてよい。いくつかの態様において、投与方式は経口、注射又は静脈内投与である。典型的に、経口投与は、器官損傷(壊死及び/又はアポトーシスによるものなど)、及び急性的に又は長期間、例えば数週間、数カ月若しくは数年にわたり、例えば、処置しなければ、器官損傷を引き起こす薬剤を服用しており且つ/又は放射線などの毒性物質にさらされている患者に起こっていた器官損傷を予防するために、予防的に使用されるときに特に有効である。損傷がすでに起こっている場合、及び特に疾患の症候がすでに明らかになっている場合、投与経路は一般に、組成物中の活性剤の送達を速めるために、非経口又は静脈内である。
【0161】
いくつかの場合において、投与する方法は、親水性ポリマーを含むビヒクル中に懸濁させた1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子を含む懸濁液を注射することを含む。
【0162】
いくつかの場合において、懸濁液を製造する方法は、1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子と、少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含むビヒクルとを混合し、懸濁液を形成することを含む。他の場合において、懸濁液を製造する方法は、1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子と、少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース又はその薬学的に許容される塩を含むビヒクルとを混合し、懸濁液を形成することを含む。他の場合において、懸濁液を製造する方法は、1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)を含む粒子と、少なくとも1種のポリオキシルグリセリドを含むビヒクルとを混合し、懸濁液を形成することを含む。
【0163】
いくつかの態様において、混合は手動での振盪を含む。いくつかの態様において、混合は超音波処理を含む。他の態様において、混合はフラットベッドシェーカー内での振盪を含む。
【0164】
いくつかの態様において、製造する方法は懸濁液を均質化することを含む。
【0165】
いくつかの場合において、製造する方法は、1種以上の酸素化コレステロールサルフェートをジェットミリングして粒子を形成することを含む。
【0166】
いくつかの態様において、製造する方法は、1種以上の酸素化コレステロールサルフェートを篩にかけて混合用の粒子を選別することを含む。
【0167】
いくつかの態様において、製造する方法は、混合に先立って粒子を滅菌することを含む。いくつかの場合において、製造する方法は、混合に先立って粒子をオートクレーブ処理にかけることを含む。いくつかの場合において、製造する方法は、混合に先立って粒子をγ線照射にかけることを含む。
【0168】
本開示は、以下の実施例を通じて、さらに説明される。これらの実施例は非限定的であり、本開示の範囲を限定しない。特に指示がない限り、実施例に示された全ての百分率、部などは全て重量によるものである。
【実施例0169】
[実施例1]
(粒子調製)
【0170】
背景
粒径分析のために、2ロットの25HC3Sナトリウム塩(ロット番号A及びロット番号B)を、20メッシュ又は35メッシュのステンレス鋼篩を最初に通した。ジェットミリングにより粒径をさらに低減させ、再び分析した。Malvern Mastersizer 2000を用いて、全ての粒径分析を決定した。
【0171】
装置
Fluid Energyモデル00 Jet-O-Mizerを全てのジェットミリングに使用した。Hydro 2000S分散セルを備えたMalvern Mastersizer 2000を粒径分析に使用した。
【0172】
方法
(a)25HC3Sの粒径低減条件
【0173】
【表1】
【0174】
(b)粒径分析のための試料調製:
約60mgのAPIを4mLスクリューキャップバイアルに量り取り、1mLの水、USPをバイアルに添加した。試料を手動で15回振盪する操作を2回行い、均質な懸濁液を形成した。約0.21~0.35mLの懸濁液又はペースト(1回の試料分析後にロット番号Bでペーストを形成した)を分析のために分散セルに添加したところ、5~15%の範囲の掩蔽(obscuration)が生じた。各単一試料調製物からの重複試料を分析した。
【0175】
(c)粒径分析パラメーター:
粒子屈折率は1.53であると推定され(屈折計では測定されない)、粒子吸収率は0.01であった。
分散剤(水、USP、25HC3Sで予備飽和)の屈折率は1.33であった。
ポンプ条件:懸濁液をHydro 2000S分散セルに添加した後、試料を3000rpmでポンピングし、100%で2分間超音波処理し、続いて、粒径測定前に3分間だけポンピングした。測定全体を通じて、ポンプ速度は超音波処理なしで3000rpmであった。
測定積分時間は20,000msであり、各試料の測定数は5回で、2回の測定間に20秒の遅延があった。
分析モデル:汎用
【0176】
結果及び考察
25HC3S(ロット番号A及びロット番号B)の粒径を表Aにまとめる。表Aに示されるように、ジェットミリング-1パス目(5.180μm)とジェットミリング-3パス目(2.755μm)との間で、25HC3Sロット番号Aについては、試料の90%がそのサイズ未満である粒子のサイズであるd(0.9)に有意差はない。25HC3Sロット番号Bについての、ジェットミリング-1パス目(22.07μm)とジェットミリング-3パス目(16.17μm)との間のd(0.9)にも有意差はない。ロット番号Bの制御なし供給速度でのd(0.9)16.17μm(ジェットミリング-1パス目)と比較して、供給速度1g/分でのd(0.9)は9.09μmである。
【0177】
【表2】
【0178】
[実施例2A]
(懸濁液調製)
【0179】
導入
この実施例は、25HC3Sナトリウム塩懸濁液製剤の開発における合計19の実験を含む。25HC3Sは、各種水溶液及びFDA承認の有機溶媒又は油への溶解度が低い。したがって、例えば皮下注射の場合の、25HC3Sの剤形として、懸濁液製剤を選択した。
【0180】
2ロットの25HC3Sナトリウム塩(ロット番号A及びロット番号B)を使用した。ロット番号Bを20メッシュスクリーンに通して塊を除いた。実験用の懸濁液を調製する前に、原薬を直接使用するか又はさらにジェットミリングした。25HC3Sナトリウム塩の3番目のロット(ロット番号C)を最初にジェットミリングし、次に直接使用するか、又は実験前にさらに20メッシュスクリーンに通した。10を超えるビヒクルを篩にかけた。以下の4つの混合方法:手動振盪(混合方法1)、手動振盪とそれに続く超音波処理(混合方法2)、及び超音波プローブを用いた均質化(混合方法3)、並びにフラットベッドシェーカー内での水平機械振盪(混合方法4)を評価した。実験番号1~13では、ビヒクルスクリーニング、混合方法及び注射可能性評価を組み合わせた。注射可能性に対する薬物濃度の効果を評価した(実験番号10及び11)。
【0181】
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.7%NaCl+0.15%L-メチオニン(L-メチオニン含有PEG 3350ビヒクル)における25HC3Sを、実験番号1~11に基づいて、好ましい懸濁液製剤として最初に選択した。室温で数カ月間保存した後、好ましい懸濁液製剤は、L-メチオニンの分解に起因すると思われる、硫黄様の臭いを生じた。最初に抗酸化剤としてL-メチオニンを添加した。過酸化水素を含む25HC3S懸濁液製剤についてのストレス実験は、25HC3Sでは酸化分解が生じなかったことを示した。したがって、好ましい懸濁液製剤からL-メチオニンを除去した。PEG 3350ビヒクル(L-メチオニン非含有)中の25HC3Sを、さらなる注射可能性実験に用いた(実験番号12及び13)。
【0182】
HPLC分析により、10~25mg/mLの25HC3Sの好ましい懸濁液製剤(L-メチオニン含有)について、実験番号14~16で均質性を評価し、実験番号17で安定性を評価した。HPLC技術は、溶解度試料中の25HC3Sの濃度を測定するための逆相HPLCを含んでいた。
【0183】
NaClを0.7%から0.75%に増加させることによって、25mg/mLの25HC3Sの好ましい懸濁液製剤(L-メチオニン非含有)をさらに改良し、等張条件(約300mmole/kgのオスモル濃度)を満たすようにした(実験番号18)。
【0184】
改良した懸濁液製剤の最終組成は、pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.75%NaClにおける25mg/mLの25HC3Sであった。ジェットミリングした薬物との混合方法4(フラットベッドシェーカー内で200rpmにて45分間振盪する)によって、懸濁液を調製した。最終改良製剤のオスモル濃度は321mmole/kgであった(実験番号18)。均質性は、ラベル強度89.3~105.9%の範囲であった(実験番号19)。この懸濁液製剤を、下記の実施例3のマウスに対するラットイミキモド誘発乾癬様炎症実験に使用した。
【0185】
実験
(A)材料:
【0186】
活性医薬成分(25HC3S):以降のジェットミリングの有無にかかわらず、ステンレス鋼スパチュラを使用して、ロット番号Aを20メッシュスクリーンに通して塊を除いた。ロット番号Bを20メッシュスクリーンに通して塊を除き、ジェットミリングした。ロット番号Cを、以降に20メッシュスクリーンに通して又は通さずに、ジェットミリングした。
【0187】
不活性成分:
懸濁液ビヒクル用の不活性成分
【0188】
【表3】
【0189】
(B)装置及び供給品
装置:
ジェットミル:Fluid Energyモデル00ジェットミル
超音波処理装置:Branson、モデル8510
ホモジナイザー:5×95mmフラットプローブを取り付けたPowerGen 1000
フラットベッドシェーカー:IKAデジタルシェーカー、モデルHS501
蒸気圧浸透圧計:Vapor(登録商標)蒸気圧浸透圧計、モデル5520(Wescor, Inc.)
HPLCシステム:Agilent 1100 HPLCシステム
【0190】
供給品
注射器:1mLのBD注射器(Luer Lokチップ)、参照番号:309628
注射可能性実験用の針:以下に記載
【0191】
【表4】
【0192】
(C)懸濁液製剤の調製
注射可能性実験(実験番号1~11)用の予備懸濁液製剤の調製
【0193】
それぞれ約10~100mgの25HC3Sを2mLバイアルに量り取る。各バイアルに1mLのビヒクルを添加する。合計3つの混合方法を用いて懸濁液を調製した。混合方法1:各バイアルを手動で15~45回振盪した。懸濁液を室温(RT)で1分間保存した後、沈降について視覚的に検査した。注射可能性実験用に、懸濁液を超音波処理することなく手動で15回再振盪した。混合方法2:注射可能性実験用に、各バイアルを手動で30回振盪した後、3~6分間超音波処理した。混合方法3:注射可能性実験番号7、10及び11のために、5×95mmのフラットプローブを取り付けたPowerGen1000ホモジナイザーにより、速度設定4で、30又は60秒間、各バイアルを均質化した。合計11の実験を行った。
【0194】
注射可能性実験(実験番号12~13)用の好ましい懸濁液製剤の調製(L-メチオニン非含有PEG 3350ビヒクル中の25mg/mLの25HC3S)
【0195】
それぞれ約125mg(実験番号12)又は75mg(実験番号13)の25HC3S(ロット番号C、20メッシュスクリーンに通して又は通さずに、ジェットミリングを行った)を10mLバイアルに量り取る。各バイアルに5mL又は3mLのビヒクルを添加して、最終25HC3S濃度を25mg/mLにする。バイアルをフラットベッドシェーカー内に水平に置き、100rpm(実験番号12)及び200rpm(実験番号13)で最大45分間振盪した(混合方法4)。
【0196】
均質性実験(実験番号14及び15)及び安定性実験(実験番号17)用の好ましい懸濁液製剤の調製(L-メチオニン含有PEG 3350ビヒクル中での調製)
【0197】
80mgの25HC3S(ロット番号B、20メッシュスクリーンに通し、ジェットミリング3パス目を行った)を10mLバイアルに量り取る。バイアルに8mLのPEG 3350ビヒクル(0.15%L-メチオニン及び0.9%NaClを含有)を添加する。懸濁液を手動で30回振盪して混合した後、Bransonモデル8510超音波処理装置で30分間超音波処理した(混合方法2)。10mg/mLの懸濁液を手動で10回倒立させた後、HPLC用にMeOHで希釈するために、それぞれ1mLを10mLメスフラスコに分注した。HPLCによる均質性分析(実験番号14)及び安定性実験(実験番号17)用に、20G1"又は25G5/8" Terumo UTW針を取り付けた1mLのBD注射器を用いて、合計9個の試料を分注した。
【0198】
それぞれ50及び80mgの25HC3Sを2及び10mLバイアルに量り取る。L-メチオニンを含有する2mL及び8mLのPEG 3350ビヒクルをバイアルに添加する。懸濁液を手動で30回振盪して混合した後、Bransonモデル8510超音波処理装置で30分間超音波処理した(混合方法2)。バイアルを10回倒立させた後、HPLC分析用のメタノール希釈のために0.2又は0.9mLをメスフラスコに分注した(効力及び安定性に関するHPLC分析用にそれぞれ合計8及び7個の試料)(実験番号15)。
【0199】
均質性実験(実験番号16)用の好ましい懸濁液製剤の調製(L-メチオニン非含有PEG 3350ビヒクル中で調製)
【0200】
それぞれ約125mgの25HC3S(ロット番号C、ジェットミリングし、20メッシュスクリーンに通した)を10mLバイアルに量り取った。L-メチオニンを含有しない5mLのPEG 3350ビヒクルをバイアルに添加した。バイアルをフラットベッドシェーカー内に水平に置き、100rpmで最大45分間振盪した(混合方法4)。ガラスバイアル壁及び底部に若干の小さな湿潤塊が固着した。25G5/8" Teruma UTW針を取り付けた1mlのBD注射器を用いて懸濁液製剤を抜き取り、各種時点で100μL又は300μLをそれぞれ2つHPLCバイアルに抜き取って分注し、HPLCによる均質性分析用にMeOHで1/5に希釈した。
【0201】
等張性のための好ましい製剤改良(実験番号18-1)
【0202】
0.71%、0.77%及び0.80%NaClを含有するPEG 3350ビヒクル(pH7.4の10mMリン酸塩中3%PEG 3350+0.3%Tween 80)を調製し、オスモル濃度を蒸気圧浸透圧計で測定した。
【0203】
オスモル濃度及び均質性実験(実験番号18-2、19)用のPEG 3350ビヒクル(pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.75%NaCl)中の最終改良懸濁液製剤
【0204】
87mgの25HC3S(ロット番号C、ジェットミリングし、次いで20メッシュスクリーンに通す)を5mLバイアルに量り取る。バイアルに3mLのPEG 3350ビヒクル(L-メチオニンを含有せず、0.75%NaClを含有する)を添加する。フラットベッドシェーカー内で200rpmで45分間振盪することにより、懸濁液を混合した(混合方法4)。25mg/mLの25HC3S懸濁液のオスモル濃度を測定した(実験番号18-2)。3mLのPEG 3350ビヒクルを入れた3つの別々の10mLバイアルに、近似的及び正確に90mgの別の25HC3S(ロット番号D及びロット番号B、微粉化、1パス)をそれぞれ量り取る。バイアルをフラットベッドシェーカー内に200rpmで45分間置いた(混合方法4)。1mL容積式ピペットを使用して、それぞれ0.4mLの懸濁液を2mLメスフラスコに移し、HPLC分析(合計3つのバイアル、それぞれ2回ずつ分析する)用にMeOHで容量を希釈した。27G1/2"針を取り付けた1mLのBD注射器を使用することを除いて、同じ3つのバイアルから、試料の第2のセットを同様に調製した。均質性を決定した(実験番号19)。
【0205】
結果及び考察
(A)注射可能性実験
【0206】
各種ビヒクルにおける分散容易性及び注射可能性に関して合計13件の実験を行った。ジェットミリングあり又はなしの25HC3Sの効果、及び混合方法の効果、並びに注射可能性に関する薬物濃度を評価した。実験番号1~13についての試験結果を以下の表(表1~13)にまとめた。
【0207】
実験番号1(表1)
25HC3S(ロット番号A)を使用して、ジェットミリングあり又はなしで20メッシュスクリーンに通して塊を除き、水性及び非水性懸濁液ビヒクル(合計8種のビヒクル)の予備スクリーニングを行った。全ての懸濁液を30mg/mLで手動振盪により混合した(混合方法1)。1mLのBD注射器に取り付けた20G1" Terumo UTW針を使用したときに良好な注射可能性を有するH2O中0.05%Tween 80を含有する3%PEG 3350中に、25HC3Sが十分に分散したことが見出された。ただし、21G1" BD針を使用すると、若干の塊が針の先端に固着する。H2O中又はゴマ油中の0.05%Tween 80を含有する0.5%又は0.25%NaCMC中に、25HC3Sは十分に分散しなかった。実施したビヒクルにおける分散容易性及び注射可能性は、以下の順序:H2O中0.05%Tween 80を含有する3%PEG 3350>H2O中0.05%Tween 80を含有する0.25~0.5%NaCMC>H2O中0.9%NaCl=PG/H2O=50/50>ゴマ油=0.05%Tween80を含有するゴマ油=BA/BB(10/90)であった。
【0208】
25HC3S(ロット番号A)を20メッシュスクリーンに通し、さらにジェットミリング(3パス目)した。若干の大きな凝集塊が微粒子と共に観察された。大きな凝集塊及び微粒子も、H2O中0.05%Tween 80を含有する3%PEG 3350に別々に懸濁した。大きな凝集塊は十分に分散しなかったことが見出された(1個の塊が観察された)。微粒子(ジェットミリング3パス目後)は十分に分散し、塊は観察されず、22G1" Terumo、UTW針を使用する場合の良好な注射可能性を示した。
【0209】
この実験から、H2O中0.05%Tween 80を含有する3%PEG 3350がより良好な懸濁液ビヒクルであることを結論付けた。25HC3Sは、Tween 80の有無にかかわらず、0.25若しくは0.5%NaCMC又はゴマ油中に十分に分散しなかった。ジェットミリングした25HC3Sは、ジェットミリングしなかった25HC3S(20G1" Terumo UTW)よりも、H2O中3%PEG 3350+0.05%Tween 80において、良好な注射可能性(22G1' Terumo UTW)を示した。
【0210】
実験番号2(表2)
この実験では、20メッシュスクリーンに通して塊を除いたがジェットミリングしなかった25HC3S(ロット番号A)を使用し、H2O中3%PEG 3350又は0.5%Plasdone C17を含有するビヒクル(合計5種のビヒクル)に対する、Tween 80又は0.9%NaClの影響を評価した。25HC3Sの濃度は30mg/mLである。手動で30回振盪した後、H2O中に0.05%Tween 80を含有する3%PEG 3350中の25HC3Sについて、塊は観察されなかった。室温(RT)において1分後に沈降は観察されなかった。懸濁液をさらに6分間超音波処理した(混合方法2)。1mLのBD注射器に取り付けられた25G5/8" BD針を使用したとき、懸濁液は良好な注射可能性を示した。ビヒクル中での25HC3Sの分散容易性及び注射可能性は、以下の順序:H2O中0.05%Tween 80を含有する3%PEG 3350>H2O中3%PEG 3350+0.05%Tween 80+0.9%NaCl=H2O中3%PEG 3350+0.9%NaCl>H2O中0.9%NaCl=H2O中0.5%Plasdone C17+0.9%NaClであった。
【0211】
この実験から、0.5%Plasdone C17と比較して、3%PEG 3350がより優れた溶解度増強剤(又は湿潤剤)であると結論付けた。0.9%NaClの添加は懸濁容易性を低下させるように見えた。ただし、室温(RT)において3日後、H2O中3%PEG 3350+0.05%Tween及び0.9%NaClにおける懸濁液は有意な沈降を示さず、十分に再懸濁した。6分間の超音波処理を行うと注射可能性が改善した。
【0212】
実験番号3(表3)
この実験では、20メッシュスクリーンに通して塊を除いたがジェットミリングしなかったロット番号Aを使用したときの、100mg/mLの25HC3Sの濃度効果を評価した。同じロットの100mg/mLの25HC3Sを、30mg/mLの25HC3Sを用いた実験番号2のものと同じビヒクルに懸濁させた。100mg/mLにおいて、手動で30回振盪した(混合方法1)後、若干の粒子がバイアル壁及び底部に固着し、25HC3Sは全てのビヒクル中に完全には懸濁しなかったことが見出された。6分間の超音波処理(混合方法2)の後、全てのビヒクルについて20G1"針で懸濁液を抜き取ることは依然としてやや困難であった。
【0213】
実験から、25HC3S(ロット番号A、20メッシュスクリーンに通したが、ジェットミリングしなかった)について、超音波処理の有無にかかわらず、実験した全てのビヒクルに完全に分散させる上で、100mg/mLでは濃度が高すぎると結論付けた。
【0214】
実験番号4(表4)
この実験では、20メッシュスクリーンに通し、続いてジェットミリング(3パス目)を行った、ロット番号Aを使用したときの、30mg/mLの25HC3S懸濁液の注射可能性を評価した。懸濁液は、以下のビヒクルにおいて、超音波処理を行わず(混合方法1)、20G1" Terumo針を使用したとき、及び3分間の超音波処理を行い(混合方法2)、22G1" Terumo UTW針を使用したとき、良好な注射可能性を示したが、塊は観察されなかった。
H2O中3%PEG 3350+0.3%Tween 80、
H2O中3%PEG 3350+0.3%Tween 80+5%マンニトール、及び
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80+5%マンニトール。
【0215】
懸濁液は、以下のビヒクルにおいて、超音波処理を行わず(若干の塊が観察された)、20G1" Terumo針を使用したとき、及び3分間の超音波処理を行い(若干の塊が観察された)、22G1" Terumo UTW針を使用したとき、良好な注射可能性を示した。
H2O中0.5%Plasdone C17+0.3%Tween 80、
H2O中0.5%Plasdone C17+0.3%Tween 80+5%マンニトール、及び
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中0.5%Plasdone C17+0.3%Tween 80+5%マンニトール。
【0216】
H2O中5%マンニトールを含有し、Tween 80及び溶解度増強剤を含有しない、ビヒクル中の懸濁液は、超音波処理を行わず(若干の塊が観察された)、20G1" Terumo針を使用したとき、良好な注射可能性を示したが、22G1" Terumo針を使用したとき、3分間の超音波処理後、抜き取りがやや困難だった。
【0217】
この実験から、ビヒクルに5%マンニトールを添加すると注射可能性が低下するが、pH7.4の10mMリン酸緩衝液を添加しても注射可能性に影響を及ぼさないと結論付けた。
【0218】
実験番号5(表5)
この実験では、20メッシュスクリーンに通し、ジェットミリングしなかったロット番号Aを使用したときの、30mg/mLの25HC3S懸濁液の注射可能性を評価した。実験番号4は、ジェットミリングした、同じロットの25HC3Sを使用した。混合方法は、手動で振盪した後、3分間超音波処理する方法だった(混合方法2)。実験番号4及び5について、同じビヒクルを篩にかけた。
【0219】
ジェットミリングを行わない場合、22G1" Terumo針を使用したとき、H2O中3%PEG 3350+0.3%Tween 80における懸濁液について、注射可能性は良好であり(1個の塊が観察された)、抜き取りはやや困難であるか又は容易だったが、ビヒクルの残部に塊が観察された。
【0220】
実験番号4及び5から、20メッシュスクリーンに通し、ジェットミリングした25HC3Sは、超音波処理(混合方法2)を伴うpH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80+5%マンニトール中で最良の注射可能性を示したと結論付けた。
【0221】
実験番号6(表6)
この実験では、実験番号5と同じビヒクルにおいて、20メッシュスクリーンに通したが、ジェットミリングしなかったロット番号Aを使用したときの、60mg/mLの25HC3S懸濁液の注射可能性を評価した。ジェットミリング及び超音波処理を行わない場合、塊が観察された。3分間の超音波処理後、H2O中3%PEG 3350+0.3%Tween 80における懸濁液(1個の塊が観察された)について、22G1" Terumo針を使用したとき、注射可能性は良好であり、抜き取りはやや困難であるか又は容易だったが、ビヒクルの残部に塊が観察された。
【0222】
実験番号5及び6から、30又は60mg/mLの25HC3S懸濁液間の注射可能性に有意差はないと結論付けた。
【0223】
実験番号7(表7)
この実験では、20メッシュスクリーンに通し、ジェットミリングしなかったロット番号Bを使用して、0.15%L-メチオニンを添加した、実験6のビヒクル中の30mg/mLの25HC3S懸濁液の注射可能性を評価した。手動で30回振盪した後、薬物は濡れにくく、5%マンニトール又は0.9%NaClのいずれかを含有する、pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80+0.15%L-メチオニン中で、バイアル底部に沈んだ。25HC3Sは、5%マンニトール又は0.9%NaClのいずれかを含有する、pH7.4の10mMリン酸緩衝液中0.5%NaCMC+0.3%Tween 80+0.15%L-メチオニン中で、ビヒクル中に十分に分散しなかった。
【0224】
全ての製剤には塊が生じ、6分間の超音波処理を行い又は行わずに、20G1" Terumo針を使用したとき、抜き取りが困難であった。
【0225】
30~60秒間の均質化により、バイアル内に粒子が残らずに、20G1"~22G1"針を通して抜き取ることが容易である懸濁液が生成した。
【0226】
実験番号8(表8)
この実験では、同じ懸濁液ビヒクルにおいて、同じ30mg/mLの濃度で、ジェットミリングした場合(実験番号8)とジェットミリングしなかった場合(実験番号7)で、25HC3S(ロット番号B)の注射可能性を比較した。ジェットミリングした薬物を用いた懸濁液は、より良好な注射可能性を示した。
【0227】
実験番号9(表9)
この実験は、25HC3S(ロット番号A、20メッシュスクリーンに通して塊を除いた後、ジェットミリング(3パス目)を行った)により、(沈殿防止のための)懸濁液ビヒクル中の0.1及び0.2%NaCMCの効果を評価した。30mg/mLにおいて、以下のものに25HC3Sは完全には分散しないことが見出された。
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中0.1%NaCMC、3%PEG3350+0.3%Tween 80+5%マンニトール+0.15%L-メチオニン、
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中0.2%NaCMC、3%PEG3350+0.3%Tween 80+5%マンニトール+0.15%L-メチオニン、
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中0.1%NaCMC、3%PEG3350+0.3%Tween 80+0.9%NaCl+0.15%L-メチオニン、及び
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中0.2%NaCMC、3%PEG3350+0.3%Tween 80+0.9%NaCl+0.15%L-メチオニン。
【0228】
手動で30回振盪した後に、全てで塊が形成された。6分間の超音波処理後、20G1" Terumo UTW針を使用したとき、抜き取りは依然として困難であった。
【0229】
実験番号10(表10)
この実験は、ジェットミリングなしで薬物を使用して均質化することにより調製された、(L-メチオニン含有)PEG 3350ビヒクル中の10及び50mg/mLの25HC3S懸濁液について、非常に良好な注射可能性を示した。懸濁液は、最大50mg/mLの25HC3S濃度で、25G5/8" Terumo、UTW針を使用する場合に、抜き取ることができる。100mg/mLにおいて、懸濁液は、20G1" Terumo、UTW針を使用しても抜き取ることができない濃厚ペーストを形成した。
【0230】
実験番号11(表11)
100mg/mLにおいて、PEG3350ビヒクル(L-メチオニン含有)中の25HC3S懸濁液は、濃厚ペーストを形成した。注射可能性は試験されなかった。20メッシュスクリーンに通した後、ジェットミリング1パス目を行った25HC3S(ロット番号B)を使用して、均質化又は超音波処理のいずれかによって調製した懸濁液は、50mg/mLにおいて、良好な注射可能性を示した。懸濁液は、25G5/8" Terumo、UTW針で抜き取ることができる。ただし、懸濁液の発泡により、正確な容積を知ることはできなかった。バイアルを倒立させたとき、少数の湿潤塊がバイアル壁に固着した。
【0231】
実験番号10及び11に基づいて、PEG 3350ビヒクル(L-メチオニン含有)中100mg/mLの25HC3S懸濁液は、注射可能性の乏しい濃厚ペーストを形成した。50mg/mLにおいて、バイアル壁の底部又は側面に湿潤塊が固着した。塊は注射可能性に影響を及ぼさなかったが、均質性又はラベル強度に影響を及ぼした可能性がある。したがって、25HC3S懸濁液は今後の実験では25mg/mLに低減されるであろう。
【0232】
実験番号12(表12)
この実験は、25mg/mLの25HC3Sは、フラットベッドシェーカーで100rpmで最大50分間振盪することでは、PEG 3350ビヒクル(L-メチオニン非含有)中に十分に分散しないことを示した。バイアル壁及びバイアル底部に少数の湿潤塊が固着した。湿潤塊はバイアル壁に固着していたため、注射可能性に影響を及ぼさなかった。ただし、それらの湿潤塊は均質性又は%ラベル強度に若干の影響を及ぼし得る。
【0233】
実験番号13(表13)
この実験は、フラットベッドシェーカーで、より高速(200rpm)で最大45分間振盪することにより、25mg/mLの25HC3SがPEG 3350ビヒクル(L-メチオニン非含有)中に十分に分散することを示した。(実験番号12の100rpmで振盪したものと比較して)ごくわずかな小さな湿潤塊がバイアル壁に固着した。懸濁液は良好な注射可能性を示した。
【0234】
実験番号12及び13に基づいて、混合方法4のために、200rpmというフラットベッドシェーカーでの改善された振盪速度が選択された。
【0235】
(B)均質性実験
実験番号14(表14)
この実験は、PEG 3350ビヒクル(0.15%L-メチオニン及び0.9%NaClを含有)中10mg/mLの25HC3S懸濁液について、良好な均質性(94.3~98.1%LS、1.32%RSD、n=9)を示した。25HC3S(ロット番号B、ジェットミリング3パス目を行った)を使用して、懸濁液を調製した。混合方法は、手動で100回振盪した後、30分間超音波処理する方法だった(混合方法2)。20G1" Teruma UTW針を取り付けた1mLのBD注射器を用いて、それぞれ1mLの懸濁液(n=9、同じ10mLのバイアルからのもの)を抜き取り、HPLC分析のために分注した。100%未満のLS回収率は、懸濁液調製に使用した25HC3S(ロット番号B)が、外部標準調製に使用した25HC3Sナトリウム塩(ロット番号D)と比較して、より低い純度を有していたことに起因し得る。両方のロットともピーク純度を調整しなかった。
【0236】
実験番号15(表15)
この実験は、25G5/8" Terumo UTW針及び1mLのBD注射器を使用したとき、PEG 3350ビヒクル(0.15%L-メチオニン含有)中の、25mg/mLの25HC3S(96.2~109.4%LS、4.36%RSD、n=8、同じ0.2mLバイアルからそれぞれ0.2mL分注)、及び10mg/mLの25HC3S(100.5~103.1%LS、1.10%RSD、n=7、同じ10mLバイアルからそれぞれ0.9mL分注)について、良好な均質性を示した。混合方法は、手動で130回振盪した後、30分間超音波処理する方法だった(混合方法2)。懸濁液を25HC3S(ロット番号B、ジェットミリング3パス目を行った)から調製し、外部標準をHPLC分析用の混合ロット(ロット番号E)から調製した。
【0237】
実験番号16(表16)
この実験は、PEG 3350ビヒクル(0.15%L-メチオニン非含有)中に懸濁した25mg/mLの25HC3Sについて、良好な均質性を示した。混合方法は、フラットベッドシェーカー内で100rpmで45分間振盪する方法だった(混合方法4)。調製後、懸濁液を室温で保存した。各時間点(時間0、1、2及び19.5時間)で、懸濁液を数回倒立させ、25G5/8" Terumo UTW針及び1mLのBD注射器を使用して、それぞれ均質性分析のために、それぞれ100μL(n=2)で、続いてそれぞれ300μL(n=2)で、HPLCバイアルに分注した。均質性は、100μLの試料では90.3~99.1%LS(n=8)、及び300μLの試料では86.3~91.5%LS(n=8)の範囲であった。より低い%LSは、部分的には、外部参照標準(ロット番号F)及び懸濁液製剤(ロット番号C、ジェットミリングし、20メッシュスクリーンに通した)が2つの異なるロットから調製されたことに起因し得る。標準はピーク純度について調整されたが、懸濁液はピーク純度について調整されなかった。バイアル壁に固着した若干の湿潤塊は、HPLC分析用の試料分注のための注射器内に引き込まれなかった。これも%LSの低下に寄与した。
【0238】
実験14~16に基づき、ジェットミリングした薬物を使用したとき、混合方法2又は4のいずれかにより、PEG 3350ビヒクル(L-メチオニン含有又は非含有)中に懸濁した10又は25mg/mLの25HC3Sは、良好な均質性(85~115%LSの許容基準に合格)を示した。
【0239】
(C)安定性実験
実験番号17-1及び17-2(表17-1及び17-2)
PEG 3350ビヒクル(0.15%L-メチオニン含有)中の25mg/mLの25HC3S懸濁液は、周囲室温で少なくとも2週間安定であった。室温(RT)で2週間後、25HC3Sの%ピーク面積は、約99.17%で本質的に変化しないままであり(25HC3S+2種の不純物のピーク面積を100%として用いる。n=2、表17-2)、103.7%の薬物効力を有していた(時間0濃度を100%として用いる。n=2、表17-1)。主な分解生成物は、3β-サルフェート,25-OH-5,24-ジエン及び3β-サルフェート,25-OH-5,25-ジエン(RRT=2.6)、並びに25-OHコレステロール(RRT=3.5)の混合物であった。
【0240】
(D)改良のための好ましい懸濁液製剤の選択
原薬のジェットミリングを行い又は行わずに、混合方法4(均質化)により調製し、並びにジェットミリングした薬物を用いて混合方法2及び4(手動振盪、続いて超音波処理又はフラットベッドシェーカーでの200rpmでの機械的振盪)により調製した、PEG3350ビヒクル(L-メチオニン含有又は非含有)中の25mg/mLの両方の25HC3S懸濁液は、良好な注射可能性を示した。
【0241】
懸濁液は、少なくとも2週間、室温(RT)で良好な均質性及び安定性を示した。ただし、長期保存後(1カ月超)、L-メチオニンを含有する懸濁液は、硫黄様の臭いを発生したが、これはL-メチオニンの分解に起因し得る。したがって、さらなる改良のためにL-メチオニンをPEG 3350ビヒクルから除去した。
【0242】
(E)好ましい製剤の等張性の改善
実験番号18-1及び18-2(表18-1及び18-2)
表18-1は、0.7~0.8%NaClを含有する、懸濁液ビヒクル(pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80)のオスモル濃度をまとめたものである。0.75%NaClでの懸濁液ビヒクルのオスモル濃度は、オスモル濃度対%NaClプロット(図1)から補間して、293mmol/kgであった。25HC3Sの溶解度は、ビヒクル中で低く、25HC3Sがオスモル濃度値に大きく寄与することはないと予想された。したがって、このビヒクル中の25mg/mLの25HC3S懸濁液は、等張液(300mmol/kg)を含有するビヒクルに近いと予想された。
【0243】
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.75%NaClにおける25mg/mLの25HC3Sを、最終25HC3S懸濁液製剤として選択した。
【0244】
表18-2は、プラセボビヒクル(L-メチオニンを含有せず、0.75%NaClを含有する、PEG 3350ビヒクル)及びプラセボビヒクル中の25mg/mLの25HC3S懸濁液製剤のオスモル濃度をまとめたものである。6回の連続測定の平均オスモル濃度は、プラセボビヒクルについては0.3%RSDで297mmol/kgであり、25mg/mLの25HC3S懸濁液製剤については1.4%RSDで321mmol/kgであった。
【0245】
(F)pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.75%NaClにおける25mg/mLの最終25HC3S懸濁液製剤の均質性及び含量均一性
実験番号19(表19)
この実験は、25HC3Sについて良好な均質性及び含量均一性を示した。pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.75%NaClにおける25mg/mLの懸濁液。均質性は、0.4mLの懸濁液を1mL容積式ピペット(n=6)で移し、続いて針に取り付けた注射器(n=6)で同じバイアルから0.4mL懸濁液を移すことによって決定した。表19に列挙されるように、HPLCによって決定された均質性及び含量均一性は、ピペットで移された試料については、89.3~105.9%LS、5.48%RSD、(n=6)、27G1/2"針に取り付けた注射器で移された試料については、98.2~100.4%LS、0.96%RSD、(n=6)の範囲であった。懸濁液は、フラットベッドシェーカー内で200rpmで45分間混合方法4により調製した。
【0246】
結論
pH7.4の10mMリン酸緩衝液中3%PEG 3350+0.3%Tween 80及び0.75%NaClに懸濁した25mg/mLの25HC3Sを、最終懸濁液製剤として選択した。これは良好な注射可能性を示した。製剤は、ピーク面積正規化による99.172%25HC3Sを使用したとき室温で最大14日間安定しており、本質的に時間0におけるものと同一であった。混合方法3(均質化)は、目に見える薬物湿潤塊がほとんどなく、懸濁液について最良の物理的外観を示した。長期安定性及び無菌目的のために、2バイアルシステムを提案した。一方のバイアルに25HC3S粉末(ジェットミリングした)を充填し、他方のバイアルにPEG 3350ビヒクル(0.75%NaCl、メチオニン非含有)を充填した。2つのバイアルにγ線照射した。ビヒクルを含有するバイアルから所望容積のビヒクルを抜き取り、25HC3S粉末を含有するバイアルに添加し、フラットベッド機械式振盪器内で水平に200rpmで最大45分間混合した(混合方法4)。25HC3SはPEG 3350ビヒクル(0.75%NaCl、メチオニン非含有)中に十分に分散し、ごくわずかな塊が観察された。均質性及び含量均一性は、HPLC分析により、89.3~105.9%のラベル強度、5.48%RSDの範囲であった(n=6、各調製物について二重注入を伴う三重製剤(triplicate formulation)調製物)。
【0247】
【表5】
【0248】
【表6】
【0249】
【表7】
【0250】
【表8】
【0251】
【表9】
【0252】
【表10】
【0253】
【表11】
【0254】
【表12】
【0255】
【表13】
【0256】
【表14】
【0257】
【表15】
【0258】
【表16】
【0259】
【表17】
【0260】
【表18】
【0261】
【表19】
【0262】
【表20】
【0263】
【表21】
【0264】
【表22】
【0265】
【表23】
【0266】
【表24】
【0267】
【表25】
【0268】
[実施例2B]
経口製剤
【0269】
下記の経口製剤を以下のようにして製造した。Gelucireを容易に液化するために約50℃~70℃の範囲の高温を用いた。他の賦形剤及び25HC3Sナトリウム塩を撹拌しながら添加した。製剤がまだ温かい間に、カプセルに充填した。
【0270】
本発明者らがin vitroでの溶解データを有するカプセル製剤の例としては以下のものが挙げられる。
1. 30%(重量/重量)薬物及び70%(重量/重量)Gelucire 44/14 - 150mg薬物/カプセル
2. 30%(重量/重量)薬物及び70%(重量/重量)Gelucire 50/13 - 150mg薬物/カプセル
3. 30%(重量/重量)薬物、35%(重量/重量)Gelucire 44/14及び35%(重量/重量)PEG-400 - 150mg薬物/カプセル
4. 30%(重量/重量)薬物、32.5%(重量/重量)Gelucire 44/14、32.5%(重量/重量)PEG-400及び5%(重量/重量)Methocel E3 - 150mg薬物/カプセル
5. 10%(重量/重量)薬物及び90%(重量/重量)Gelucire 44/14 - 50mg薬物/カプセル
6. 10%(重量/重量)薬物、85%(重量/重量)Gelucire 44/14及び5%(重量/重量)Ac-Di-Sol - 50mg薬物/カプセル
7. 10%(重量/重量)薬物、42.5%(重量/重量)Gelucire 44/14、42.5%(重量/重量)PEG-400及び5%(重量/重量)Ac-Di-Sol - 50mg薬物/カプセル
8. 20%(重量/重量)薬物、70%(重量/重量)Gelucire 44/14及び10%(重量/重量)Ac-Di-Sol - 100mg薬物/カプセル
9. 14.3薬物、50%(重量/重量)Gelucire 44/14、28.6%(重量/重量)PEG-400及び7.1%(重量/重量)のAc-Di-Sol - 50mg/カプセル
10. 15%(重量/重量)薬物、40%(重量/重量)Gelucire 44/14、40%(重量/重量)PEG-400及び5%(重量/重量)Ac-Di-Sol - 100mg薬物/カプセル
11. 15%(重量/重量)薬物、80%(重量/重量)Gelucire 44/14及び5%(重量/重量)Ac-Di-Sol - 100mg薬物/カプセル
12. 10%(重量/重量)薬物、45%(重量/重量)Gelucire 44/14及び45%(重量/重量)PEG-400 - 50mg薬物/カプセル
13. 10%(重量/重量)薬物、85%(重量/重量)Gelucire 44/14及び5%(重量/重量)Gelucire 50/13 - 50mg薬物/カプセル
14. 10%(重量/重量)薬物、85%(重量/重量)Gelucire 44/14及び5%(重量/重量)Precirol - 50mg薬物/カプセル
15. 10%(重量/重量)薬物、88%(重量/重量)Gelucire 44/14及び2%(重量/重量)Campritol - 50mg薬物/カプセル
16. 10%(重量/重量)薬物、85%(重量/重量)Gelucire 44/14及び5%(重量/重量)Campritol - 50mg薬物/カプセル
【0271】
[実施例3]
マウスのイミキモド(IMQ)誘発乾癬モデルにおける、皮内投与された25HC3Sの抗炎症活性の評価
【0272】
材料及び方法
【0273】
動物
実験の対象は40匹のオスのBalb/Cマウス(18~22g)であった。72時間の検疫期間中に臨床的苦痛、疾患又は傷害の徴候を示さなかった動物を実験のために受け入れ、全体を通して日常的な動物の世話を行った。全てのマウスの背部の約1.5cm×2cmの面積を剃毛した。
【0274】
製剤
25HC3Sの2つの製剤、製剤A及び製剤Bを実験に使用した。
【0275】
製剤Aは、溶液ビヒクル(250mg/mLのヒドロキシプロピルベータデクス(hydroxypropyl betadex)(β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシプロピルエーテル、β-シクロデキストリンの部分置換ポリ(ヒドロキシプロピル)エーテル)及び無菌水中の10mMリン酸ナトリウム緩衝液)中の25HC3Sナトリウム塩(30mg/mL)の透明溶液であった。ビヒクルを2~8℃の倉庫に保存し、使用直前に粉末化25HC3Sと混合する前に室温に30分間置いた。ビヒクルA中の25HC3Sの溶解は迅速であり、混合時に完了したように見えた。溶液中の25HC3Sの濃度は30mg/mlであった。
【0276】
製剤Bは、懸濁液ビヒクル(無菌水中の30mg/mLのポリエチレングリコール3350、3mg/mLのポリソルベート80、7.5mg/mLのNaCl、及び10mMのリン酸ナトリウム緩衝液)中の25HC3Sナトリウム塩(25mg/mL)の乳状懸濁液であった。Fluid Energyモデル00 Jet-O-Mizerを使用して、25HC3Sを約5ミクロンの平均粒径(Hydro 2000S分散セルを備えたMalvern Mastersizer 2000により測定)に粉砕した。ビヒクルを2~8℃の倉庫に保存し、使用直前に粉末化25HC3Sと混合する前に室温に30分間置いた。製剤Bは懸濁液であるので、以下の混合プロトコルを使用した。予め量り取った粉末化25HC3Sを含有するバイアルに3.0mLの懸濁液ビヒクルを添加した。バイアルをフラットベッドシェーカーで15分間振盪して均一に白色の懸濁液を作り、次に手動で5~10回倒立させ、さらに5分間振盪した。さらに、投与直前に、バイアルを手動で5~10回倒立させ、懸濁液の均一性を確保した。
【0277】
IMQ、ビヒクル及び25HC3Sの投与
乾癬様の症状を誘発するために、IMQを、各マウスの剃毛した背部皮膚(50mg)及び右耳(12.5mg)に、毎日1回朝に局所適用した。
【0278】
ビヒクル中の25HC3S又はビヒクル単独を、皮内注射により、0日目及び1日目に1回投与し、3日目及び4日目に1回投与した。注射はその日のIMQ適用の約6時間後に行われた。皮内注射(50μL/注射/マウス)を背部皮膚病変部位に与えた。
【0279】
モニタリング及び測定パラメーター
マウスを苦痛の徴候についてモニターし、背部病変の毎日の写真を撮った。背部皮膚の紅斑、鱗屑化、及び厚さを、独立した採点者(盲目的)によって0~4の尺度で毎日採点した。ここで、0=なし、1=わずか、2=中程度、3=顕著、及び4=極めて顕著。累積スコア(紅斑+鱗屑化+肥厚)を、炎症の重症度の指標として計算した(0~12の尺度)。浮腫の指標として耳及び背部皮膚厚を電子ノギスで測定した。
【0280】
終了(6日目)
実験における全てのマウスを麻酔し瀉血した。血液を採取し、血清に処理し、分析に使用するために-80℃で保存した。
【0281】
組織病理学
終了時に、剃毛した背部皮膚を各動物から採取し、秤量し、切断して2等分にした(脊椎に沿って中央から半分に切った)。組織病理学のために、一方の半分を10%中性緩衝ホルマリン中に保存した。サイトカインTNFα及びIL-17の測定のために、背部皮膚の他方の半分を均質化した。
【0282】
結果
この実験の結果を図2並びに3A及び3Bに示す。図2から分かるように、製剤B懸濁液で処置したマウスでは、背部皮膚の紅斑(発赤)が有意に減少した。背部皮膚の紅斑は製剤Aで処置したマウスでは有意には減少せず、右耳の紅斑は製剤A又はBで処置したマウスでは有意には減少しなかった。
【0283】
図3A及び3Bは、それぞれ、ELISAアッセイによって測定した乾癬皮膚/病変におけるIL-17及びTNFαタンパク質レベルを示す。図から分かる通り、IL-17は、製剤B群ではそれぞれのビヒクル群と比較してより低い傾向を示したが、製剤A及びそのビヒクル群では大きな違いは観察されなかった。対照的に、TNFαタンパク質レベルは、ビヒクルと比較して製剤A処置マウスの皮膚組織において適度に減少したが、製剤B処置マウスではその各ビヒクルと比較して増加した。これらの結果は矛盾するように思われるが、この実験の1つの注意点は、組織が採取された場所(病変の小さい領域に含まれる皮内注射の部位か、乾癬病変の非露出領域か)に応じて、処置群の中でタンパク質レベルは大きく変わり得るということである。全体として、本発明者らは、25HC3Sが乾癬の齧歯類モデルにおいて紅斑の減少を促進することを見出す。
【0284】
[実施例4]
前臨床薬物動態(PK)注射実験
【0285】
PEGを含有する25HC3S懸濁液製剤を用いて、2回のPK注射実験を行った。以下の注射実験:I.イヌにおける急性(単回用量)皮下(SC)注射実験、及びII.ラットにおける急性(単回用量)筋肉内(IM)又は急性SC注射実験を行った。
I.ビーグル犬における単回SC注射PK実験
材料及び方法
【0286】
動物
実験の対象は、5匹のオスのビーグル犬(4~7歳、8~11kg)であった。順応期間後に臨床的苦痛、疾患又は傷害の徴候を示さなかった動物を実験のために受け入れ、全体を通して日常的な動物の世話を行った。全ての動物は健康な状態にあり、実験に受け入れられた。
【0287】
製剤
25HC3Sナトリウム塩の懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の3%(重量/容積)ポリエチレングリコール3350、0.3%(重量/容積)ポリソルベート80、0.7%(容積/容積)塩化ナトリウム、0.15%(重量/容積)L-メチオニン、pH7.4の10mMリン酸ナトリウム緩衝液の溶液であった。25HC3Sをビヒクル溶液に混合して、25mg/mLの薬物濃度を得た。混合物を約30回振盪して25HC3S粉末とビヒクルを一緒に混合し、続いて全出力で約30分間超音波処理し、その後、乳白色の懸濁液を得た。製剤化された試験物品を、構成から24時間以内に使用した。
【0288】
25HC3S投与
各イヌは単回皮下注射を受けた。25mg/kgの用量レベルを1mL/kgの用量体積で投与した。投薬前、投薬後0.5、1、2、4、8、12、24、及び32時間(h)の時点で、頚静脈を介して全血試料を採取した。血液試料をK2EDTAを含有する管に入れた。抗凝固剤の分散を確実にするために血液を穏やかに混合し、得られた血漿試料を分析して25HC3Sレベルを定量した。生存期間中、1日目及び2日目に投薬後4時間以内の臨床徴候について動物を観察した。評価は、限定されないが、注射時の疼痛の証拠、活動性の評価、姿勢、呼吸、嘔吐、発作、水分補給状態、注射部位評価を含んでいた。観察可能な臨床徴候はなかった。
【0289】
結果
25mg/kgの25HC3Sの単回SC用量は、23.2時間での最大血漿薬物濃度に達するまでの平均時間で観察された、急速な吸収をもたらした。最大血漿濃度において相当な変動性が観察された。32時間での平均濃度は157.6ng/mLであった。
【0290】
II.ラットにおける単回SC又はIM注射PK実験
材料及び方法
【0291】
動物
実験の対象は、15匹のオスのSprague Dawleyラット(8~11週齢、投与時に280~327g)であった。順応期間後に臨床的苦痛、疾患又は傷害の徴候を示さなかった動物を実験のために受け入れ、全体を通して日常的な動物の世話を行った。全ての動物は健康な状態にあり、実験に受け入れられた。
【0292】
製剤
25HC3Sの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の3%(重量/容積)ポリエチレングリコール3350、0.3%(容積/容積)ポリソルベート80、0.7%(重量/容積)塩化ナトリウム、0.15%(重量/容積)L-メチオニン、pH7.4の10mMのリン酸ナトリウム緩衝液の溶液であった。25HC3Sをビヒクル溶液に混合して、25、5及び10mg/mLの薬物濃度を得た。混合物を約30回振盪して25HC3S粉末とビヒクルを一緒に混合し、続いて全出力で約30分間超音波処理し、その後、乳白色の懸濁液を得た。製剤化された試験物品を、構成から24時間以内に使用した。
【0293】
25HC3S投与
各ラットに単回IM又はSC注射を与えた(2回用量)(N=5/群)。IM注射の用量レベルは25mg/kgであり、1mL/kgの用量体積で投与した。SC注射経路については2つの用量群があった。SC注射の用量レベルは25及び50mg/kgであり、両群とも5mg/mLの用量体積であった(薬物濃度はそれぞれ5及び10mg/mLであった)。投薬前、投薬後0.5、1、2、4、8、12、24、及び32時間(h)の時点で、各ラットから頚静脈又は顎下静脈を介して全血試料を採取した。ただし、最後の採血は、イソフルランによって深く麻酔をかけた動物を用いた末梢心臓穿刺(terminal cardiac puncture)によって採取された可能性がある。血液試料をK2EDTAを含有する管に入れた。抗凝固剤の分散を確実にするために血液を穏やかに混合し、得られた血漿試料を分析して25HC3Sレベルを定量した。生存期間中、動物の臨床徴候を観察した。評価は、限定されないが、活動性の評価、姿勢、呼吸、嘔吐、発作、水分補給状態、注射部位評価及び全身的症状を含んでいた。観察可能な臨床徴候はなかった。
【0294】
結論
25mg/kgのIMとSCの両方の用量により、25HC3Sの同様の血漿濃度が得られた。2回のSC用量(25及び50mg/kg)は、比例した血漿用量濃度を示さなかった。IM群は10.4(±2.2)時間という最大血漿薬物濃度までの平均時間を有することが観察された一方、2つのSC群(25及び50mg/kd)は7.6(±4.6)及び7.2(±1.8)時間で最大薬物レベルに達することが観察された。3つの群の平均最大濃度は101.9(±17.1)、127.1(±93.8)及び76(±15.9)ng/mLであり、32時間での平均濃度は、それぞれ30(±6.9)、35(±10.3)及び34.2(±13.8)ng/mLであった。
【0295】
[実施例5]
25HC3SはNASHの加速マウスモデルにおける有効性を示す - パートI
材料及び方法
【0296】
動物
実験の対象は、30匹のオスのC57BL/6Jマウスであった。生後2日目にマウスに200μgのストレプトゾトシン(STZ)を与え、4週齢から高脂肪食(HFD)を与え始め、実験の残りを通じて(9週齢まで)与え続けた。マウスの生活における初期のこの介入は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行を加速させ、著しい特徴をもたらした。
【0297】
製剤
25HC3Sナトリウム塩及びその各ビヒクルの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の0.5%(重量/容積)CMC及び0.05%(容積/容積)Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して5及び10mg/mLの薬物濃度を得た。30~40秒ごとに10秒の中断を入れて、懸濁液を混ぜ合わせて約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。製剤化された試験物品は毎週調製し、室温で保持した。
【0298】
25CH3S投与
マウスを処置群(N=10/群)に分け、5週目から9週目まで(28日間の処置)、10mg/kg又は50mg/kgの25HC3Sを、ビヒクルの経口強制飼養により毎日投薬した。
【0299】
結果
実験終了時(9週目)に採取した肝臓切片の組織病理学的実験は、ビヒクル処置マウスにおいて、中程度から重度の小滴性及び大滴性脂肪沈着、重度の肝細胞風船様腫大並びに炎症性細胞浸潤を示した。25HC3S処置は、ビヒクル群と比較してNAS(NAFLD活性スコア)の有意な減少に反映される顕著な改善を示した50mg/kg群において用量依存的効果を示した(図4、p=0.0088)。ビヒクル群と25HC3S-10mg/kg群との間のH&E染色切片に明らかな変化は観察されなかった(データは示さず)。NAS減少と一致して、線維症の面積率(シリウスレッド陽性面積)もまた、ビヒクル群と比較した場合、50mg/kg処置群において有意に減少した(図4、p=0.0061)。ビヒクル処置群と25HC3S-10mg/kg処置群との間の線維症の面積率に有意差はなかった(データは示さず)。
【0300】
要約すると、4週間にわたる25HC3S(50mg/kg)の毎日の経口処置は、屠殺時点において、ビヒクルと比較してNASを有意に減少させた。25HC3S(50mg/kg)もまた、シリウスレッド染色によって測定された通り、ビヒクル処置と比較して線維症の減少を示した。まとめると、これらの結果は、25HC3Sが抗NASH効果を示し、NASHにおける線維症の進行を遅らせる可能性があり得ることを示唆している。
【0301】
[実施例6]
ゴールデンシリアンハムスターにおける25HC3Sの非GLP薬物動態学的及び薬力学的実験
材料及び方法
【0302】
動物
実験の対象は、40匹のオスのゴールデンシリアンハムスターであった。通常食(RD)又は高脂肪食(HFD)のいずれかを10週間与えた2つのコホートを用意した。25HC3S処置を11週目の始めに開始した。群1では通常食を続け、HFD給餌ハムスターを無作為に3つの処置群(群2~4、表20)に分けた。
【0303】
製剤
25HC3Sナトリウム塩及びその各ビヒクルの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の0.5%(重量/容積)CMC及び0.05%(容積/容積)Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して2.5及び10mg/mLの薬物濃度を得た。30~40秒ごとに10秒の中断を入れて、懸濁液を混ぜ合わせて約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。製剤化された試験物品は毎週調製し、室温で保持した。
【0304】
25HC3S投与
RD又はHFDを維持しながら、6週間、毎日の経口強制飼養により、25HC3Sでハムスターを処置した。各ハムスターに、経口強制飼養により25HC3S又はビヒクルを毎日投薬した(N=10/群)。表20に示した通り、10及び50mg/kgという2つの用量群(群3及び4)があり、用量体積はそれぞれ4及び5mL/kgであった。
【0305】
薬物動態(PK)分析のために、最初の25HC3S投薬後に血液を採取した。投薬前、投薬後0.5、2、4、8、12時間(h)の時点で、各ハムスターから頚静脈を介して全血試料を採取した。ただし、最後の採血は、イソフルランによって深く麻酔をかけた動物を用いた末梢心臓穿刺によって採取された可能性がある。血液試料をK2EDTAを含有する管に入れた。抗凝固剤の分散を確実にするために血液を穏やかに混合し、得られた血漿試料を分析して25HC3Sレベルを定量した。
【0306】
有効性の薬力学的測定のために、実験全体を通じて空腹時血清の採取により臨床化学パラメーターを測定し、RDでビヒクル対照を与えた動物と比較してHFD及び25HC3S処置の効果を評価した。
【0307】
生存期間中、動物の臨床徴候を観察した。評価は、限定されないが、活動性の評価、姿勢、呼吸、嘔吐、発作、水分補給状態、注射部位評価及び全身的症状を含んでいた。実験の生存期間(16週目)の最後に、全ての動物を屠殺し、生化学的及び組織病理学的分析のために肝臓を採取した。
【0308】
【表26】
【0309】
結果
初回投薬後に、経口投与による25HC3Sの薬物動態を、HFD給餌ハムスターで測定した。25HC3Sの平均最大血漿濃度を、両方の用量について0.5時間の時点で観察した。濃度は12時間まで徐々に低下した。平均半減期は3時間であることが観察された。最大血漿濃度及び累積曝露(AUC)の増加は、経口投与後の用量に比例しなかった。50mg/kg用量の正規化Cmaxは、10mg/kg用量の半分(32.2ng/mL/mg)にすぎず、50mg/kg用量についての用量正規化AUCは、10mg/kg用量(195ng*時/mL/mg)と比較して同様の減少を示した。
【0310】
6週間にわたり毎日25HC3SをPO投与しても、顕著な臨床徴候は生じなかった。統計的に有意ではないが、HFD給餌ハムスターの25HC3S処置は、高用量(50mg/kg)群(群4)において用量及び時間に依存した血清コレステロールレベルの減少をもたらした。6週間の処置(16週目)は、高用量群において血清コレステロールレベルの(約15~18%の)減少をもたらした。対照的に、血清トリグリセリドレベルは、処置の6週間にわたってビヒクル群と比較して、処置群において、より高い傾向があった(非用量依存的であり統計的に有意ではなかった)。
【0311】
実験の最後(16週目)に、HDL、LDL並びにALT、AST及びALKの血清レベルを測定した。予想通り、HFD給餌ハムスターは、RD給餌ハムスターと比較して、HDL及びLDLコレステロールレベルが有意に上昇していた。総血清コレステロールレベルと一致して、6週間の25HC3S処置は、HFD給餌ハムスターにおいて、用量依存的にHDL及びLDLコレステロールの両方を減少させた。RGと比較すると、HFD給餌ハムスターは、より高いALT及びASTレベルを有し、このことは肝傷害を示している。ただし、25HC3S処置は、ビヒクルと比較して、ALT及びASTレベルの両方を減少させた。この実験では、薬物処置にかかわらず、HFD給餌ハムスターの全てにおいて(RD給餌ハムスターと比較して)ALKレベルが減少した。
【0312】
25HC3S処置は、HFD関連肝臓重量増加に対して統計的に有意な効果を及ぼさなかった。ただし、肉眼的剖検は、HFDでのビヒクル処置群(データは示さず)における「正常に見える」肝臓の0%の発生率と比較して、群4の動物において(病理学者の評価により)「正常に見える」肝臓の22%の発生率を示した。
【0313】
RD及びHFD給餌ハムスターにおける総コレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリド及び遊離脂肪酸(FFA)レベルについて肝臓組織を定量した。RD給餌対照と比較して、HFD給餌ハムスターは、肝臓総コレステロール、遊離コレステロール及びトリグリセリドの有意な蓄積を示した(表21)。遊離脂肪酸レベルは、HFDでは増加しなかった。6週間の25HC3Sによる処置は、より高い25HC3S投薬量で肝臓コレステロールレベルを有意に減少させた(群4では、10mg/kgを与えられたハムスターに効果は見られなかった)。結果は統計的有意性には達しなかったが、25HC3S投薬量の増加と共に、肝臓トリグリセリドレベルの低下も観察された(表21)。
【0314】
【表27】
【0315】
組織病理学を、実験の最後に採取した肝臓について行った。標準的なH&E及びオイルレッドO染色により、肝微小胞リピドーシス(オイルレッドO染色に対して陽性である微小液胞を伴う細胞質膨張)が全てのHFD給餌群には存在するが、RD群には存在しないことが明らかになった。加えて、軽度の多病巣性非化膿性炎症及び若干のグリコーゲン蓄積もまた、HFD給餌ハムスターの肝臓に存在した。用量依存的に、HFD給餌対照動物(群2)と比較して、25HC3S処置では、かなり少ない微小胞変化、オイルレッドO染色の減少、及びより軽度の炎症が観察された。図5を参照されたい。
【0316】
[実施例7]
急性肝不全のアセトアミノフェン(APAP)誘発モデルにおける25HC3Sの非GLP薬力学的実験材料及び方法
【0317】
動物
実験の対象は、52匹のオスのC57BL/6Jマウス(12週齢、27.4~40g)であった。順応期間後に臨床的苦痛、疾患又は傷害の徴候を示さなかった動物を実験のために受け入れ、全体を通して日常的な動物の世話を行った。全ての動物は健康な状態にあり、実験に受け入れられた。
【0318】
製剤
25HC3Sナトリウム塩及びその各ビヒクルの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の0.5%(重量/容積)CMC及び0.05%(容積/容積)Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して3mg/mLの薬物濃度を得た。混ぜ合わせた後、30~40秒ごとに10秒の中断を入れて、懸濁液を20,000回転毎分(rpm)で約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。製剤化された試験物品は毎週調製し、室温で保持した。
【0319】
APAP及び25HC3Sの投与
マウスの2つの群(N=14/群)に経口強制飼養により300mg/kgのAPAPを投与した。2つの群を、経口強制飼養により1回の用量のビヒクル又は25HC3S(25mg/kg)で処置し、APAP投与の1時間後に8.33mL/kgの用量体積となるようにした。1時間の時点での最初の用量に加えて、APAP送達後24時間の時点で、2回目の用量のビヒクル又は25HC3S(25mg/kg)を、各群のマウスの半分(N=6~7/群)に与えた。コホートAマウス(単回用量)をAPAP投与の24時間後に屠殺し、コホートBマウス(2回用量)をAPAP投与の48時間後に屠殺した。ベースライン測定値を比較するために、未処置の同齢マウス(APAPなしでビヒクルを経口強制飼養により投与)の並行セットも、両時間点で屠殺した(N=6/時間点、合計12)。安楽死時点で、一晩絶食した血液を心臓穿刺により採取した。血液試料を凝固させ、血清を採取して血清ALT、AST、ALK、LDH、BUN及びグルコースを測定した。
【0320】
結果
この実験では、APAPにより、コホートAマウス(単回用量、24時間)のLDH、ALT、及びASTレベルの大規模で同様の増加がもたらされた。BUNレベルもわずかに上昇したが、ALK及びグルコースレベルの変化は最小限であった。48時間で、コホートBマウスにおいて同様の誘発パターンが観察されたが、測定値は実質的により低く、これらの実験条件下で強い自己回復を示した。25HC3S(25mg/kg)での処置は、それらの各ビヒクル対照と比較して、いずれのコホートにおいて測定された血清化学パラメーターに対しても効果を示さなかった(図6)。結論として、25HC3Sの経口投与は、半APAP誘発性肝不全後に血清生化学的マーカーを低下させない。
【0321】
[実施例8]
ラットの腎虚血/再灌流傷害の予防及び処置における25HC3Sの効果
材料及び方法
【0322】
動物
実験の対象は、18匹のオスの成体Lewisラット(9~11週齢、225~250g)であった。順応期間後に臨床的苦痛、疾患又は傷害の徴候を示さなかった動物を実験のために受け入れ、全体を通して日常的な動物の世話を行った。全ての動物は健康な状態にあり、実験に受け入れられた。
【0323】
製剤
25HC3Sナトリウム塩及びその各ビヒクルの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の0.5%(重量/容積)CMC及び0.05%(容積/容積)Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して20mg/mLの薬物濃度を得た。混ぜ合わせた後、30~40秒ごとに10秒の中断を入れて、懸濁液を20,000回転毎分(rpm)で約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。製剤化された試験物品は毎週調製し、室温で保持した。
【0324】
腎虚血誘発及び25HC3S投与
全てのラットをペントバルビタール(40mg/kg)の腹腔内注射により麻酔した。血管マイクロクリップを用いた50分間の、左腎動脈及び静脈、並びに尿管の一過性閉塞により、左腎臓の虚血を達成した。虚血期間中、皮膚を一時的に閉じ、37℃の温度に維持した加温パッド上にラットを置いた。再灌流時に、4-0シルク縫合糸で腹部を恒久的に閉じる前に、右腎臓を摘出した。動物は、手術の前日(処置前、1日目)から始まる4日間及び手術後2日間にわたり、毎日、ビヒクル(N=6)又は25HC3S(N=12)で処置した。ビヒクル又は50mg/kgの25HC3S懸濁液を経口強制飼養により5mL/kgの用量体積で与えた。血清クレアチニン(sCr)レベル及びBUNレベルを手術後2日目(ベースライン)、3日目及び/又は7日目に検査した。
【0325】
結果
経口強制飼養による4日間毎日の50mg/kgの25HC3S処置は、ビヒクル群と比較して、sCr及びBUNレベルを3日目に約20%及び5%低下させたが、その差は統計的有意性には達しなかった(図7)。しかしながら、データは、25HC3Sがこのラットモデルにおける急性腎傷害を緩和し得ることを示唆している。
【0326】
[実施例9]
経口25HC3Sカプセル製剤
【0327】
25HC3Sの3つのカプセル剤形を実験に使用した。試験した各種カプセル製剤の要約を表22に記載する。
【0328】
【表28】
【0329】
製剤調製
表23に示した通り、3つのバルク製剤を、それぞれ500mLのI-Chemジャー内で、1バッチ当たり160グラムとして調製した。プロセス全体を通じて60~65℃に維持された水浴中に、製剤ジャーを浸漬させた。Gelucire 48/16又はGelucire 44/14を60℃のオーブン内で溶融するまで加熱した。分注前に、Gelucireをスパチュラにより手動で混合した。
【0330】
製剤Aについては、粉末化25HC3Sを溶融Gelucire 48/16にゆっくり添加し、視覚的に完全に混ざるまでスパチュラで混合した。製剤をオーバーヘッドミキサー下で500~1000rpmで20分間さらに混合した。
【0331】
製剤B及びCについては、Precirol ATO5又はPluriol E400(PEG-400)を、溶融Gelucire 44/14に添加し、オーバーヘッドミキサー下で300~500rpmで10~15分間混合した。次に、粉末化25HC3Sをゆっくりと添加し、視覚的に完全に混ざるまでスパチュラで混合した。製剤をオーバーヘッドミキサー下で500~1000rpmでさらに20分間混合した。
【0332】
1カプセル当たり50mgの用量強度を達成するために、目標カプセル充填重量を500mgとして、バルク製剤を手動でサイズ0のHPMCカプセルに充填した。
【0333】
【表29】
【0334】
溶解試験
USP機器2溶解試験機を使用して、25HC3Sの放出速度を決定した。各製剤からの3つのカプセルを試験した。0.1NのHCl中に0.5%Triton X-100を1000mL含有する溶解媒体を、2時間の溶解試験の間、パドル速度75rpmで37℃に維持した。標準サンプリング時間点は、0.25、0.5、0.75、1、及び2時間であった。各時間点で1mLの試料を採取し、HPLCを使用してアッセイした。
【0335】
結果
カプセル製剤A~Cに関する溶解実験の結果をそれぞれ図8~10に示す。図8~10に示した通り、カプセル製剤のそれぞれをt=0、t=25℃での保存後1、3、及び7カ月、並びにt=40℃での保存後0.5、1、3、及び7カ月で試験した。
【0336】
[実施例10]
ビーグル犬における25HC3S経口カプセルの非GLP薬物動態(PK)評価
材料及び方法
【0337】
動物
実験の対象は、5匹のオスのビーグル犬(4~7歳、8~11kg)であった。順応期間後に臨床的苦痛、疾患又は傷害の徴候を示さなかった動物を実験のために受け入れ、全体を通して日常的な動物の世話を行った。全ての動物は健康な状態にあり、実験に受け入れられた。
【0338】
製剤
上記の実施例9に記載のカプセル製剤A~Cを試験した。カプセル製剤A~Cとの比較において、比較対象(comparator)として25HC3Sの経口懸濁液製剤も実験に使用した。
【0339】
経口懸濁液製剤:ビヒクルは、水中の0.5%CMC及び0.05%Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して、薬物濃度10mg/mLを得た。30~40秒ごとに10秒の中断を入れて、懸濁液を混ぜ合わせて約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。懸濁液を投与前に少なくとも10分間撹拌プレート上に置き、薬物投与の間、穏やかに撹拌し続けた。全ての製剤は室温で保存した。
【0340】
25HC3S投与
3つの異なる固形剤形と1つの経口懸濁液製剤があった。各イヌは、25HC3Sの各投与の間に3~4日のウォッシュアウト期間を設けて、4つの異なる25HC3S製剤のそれぞれの単回経口投薬を受けた。懸濁液については、50mg/kgの用量レベルを5mL/kgの用量体積で投与し、その後、イヌを5mLの水で洗い流した。各イヌにはまた、3つの固形剤形のそれぞれについて経口摂取用の単回の50mgの25HC3Sカプセルを投与し、5mLの水で洗い流した。投薬前、投薬後1、2、4、8及び24時間(h)の時点で、頚静脈を介して全血試料を採取した。血液試料をK2EDTAを含有する管に入れた。抗凝固剤の分散を確実にするために血液を穏やかに混合し、得られた血漿試料を分析して25HC3Sレベルを定量した。生存期間中、実験全体(14日間)を通じて動物の臨床徴候を観察した。評価は、限定されないが、注射時の疼痛の証拠、活動性の評価、姿勢、呼吸、嘔吐、発作、水分補給状態、注射部位評価を含んでいた。
【0341】
結果
ビーグル犬における50mg/kgの25HC3Sの単回経口投薬は、製剤全体を通じて、1.5~3.5時間での平均血漿薬物濃度に達するまでの平均時間で観察された、急速な吸収をもたらした。最大血漿濃度は173~304ng/mLの範囲であり、カプセルAが最低のCmaxを示し、カプセルBが最高値を示した。全ての製剤の半減期は類似していた(t1/2=0.91~0.94時間)。カプセルBは、AUClast(807±156ng*時/mL)によって反映される最高レベルの全身曝露を示したが、カプセルAは最低値(552±153ng*時/mL)を示した。表24を参照されたい。
【0342】
【表30】
【0343】
[実施例11]
カプセル製剤実験
目的
【0344】
1)in vitro薬物放出プロファイルに対する薬物担持量及び各賦形剤の効果をより詳細に理解する。
【0345】
2)上記実施例9に記載され上記実施例10において使用されたカプセル製剤Bよりも高速な溶解性を有するいくつかの製剤を開発する。
【0346】
背景
25HC3Sカプセル製剤開発並びに表25及び表26に示した製剤組成について、4因子決定的スクリーニング計画を実行した。評価した4つの変数は、薬物担持量及び3つの賦形剤(Gelucire 50/13、Labrasol、及びPlurol CC497)を含んでいた。Gelucire 44/14はベース賦形剤として働き、その量は原薬及び3つの賦形剤のパーセントでの総量を100%から差し引くことによって計算した。
【0347】
【表31】
【0348】
【表32】
【0349】
製剤調製
表27に示した通り、125mLのI-Chemジャー内で1バッチ当たり30グラムとして各製剤を調製した。プロセス全体を通じて50~55℃に維持した水浴中に、各製剤ジャーを浸漬させた。Gelucire 44/14を60℃のオーブンで加熱して溶融させた。分注前に、Gelucireをスパチュラにより手動で混合した。溶融Gelucire 44/14を量り取り各ジャーに添加した。次に、個々の賦形剤を量り取り、各添加後に300rpmで5分間のオーバーヘッド混合を行いながら、溶融Gelucire 44/14に添加した。粉末化25HC3Sを混合物にゆっくりと添加し、視覚的に完全に混ざるまでスパチュラで混合した。製剤をオーバーヘッドミキサー下で500rpmで10分間さらに混合した。設定「1」により、バルク製剤を1分間均質化し、500rpmで5分間オーバーヘッド混合を行った。最終製剤を、製剤11の333mg及び製剤12の400mgを除いて、目標カプセル充填重量を500mgとして、HPMCカプセルに手動で充填した。
【0350】
【表33】
【0351】
溶解試験
USP機器2溶解試験機を使用して、25HC3Sの放出速度を決定した(n=4回反復試験)。0.1NのHCl中に0.5%Triton X-100を1000mL含有する溶解媒体を、4時間の溶解試験の間、パドル速度75rpmで37℃に維持した。標準サンプリング時間点は、0.25、0.5、0.75、1、2、及び4時間であった。各時間点で1mLの試料を採取し、HPLCを使用してアッセイした。
【0352】
結果
カプセル製剤1~12に関する溶解実験の結果をそれぞれ図11~22に示す。図11~22に示した通り、t=0及び異なる温度での異なる時間にわたる保存後に、カプセル製剤を試験した。
【0353】
[実施例12]
25HC3SはNASHの加速マウスモデルにおける有効性を示す - パートII
材料及び方法
【0354】
動物
実験の対象は、36匹のオスのC57BL/6Jマウスであった。生後2日目にマウスに200μgのストレプトゾトシン(STZ)を与え、4週齢から高脂肪食(HFD)を与え始め、実験の残りを通じて(13週齢まで)与え続けた。マウスの生活における初期のこの介入は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行を加速させ、著しい特徴をもたらした。
【0355】
製剤
25HC3Sナトリウム塩及びその各ビヒクルの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の0.5%(重量/容積)CMC及び0.05%(容積/容積)Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して、薬物濃度10mg/mLを得た。(30~40秒ごとに10秒の中断を入れて)懸濁液を約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。製剤化された試験物品は毎週調製し、室温で保持した。
【0356】
25HC3S投与
マウスを処置群(N=10/群)に分け、9週目から13週目まで(28日間の処置)、水(対照)、ビヒクル又は50mg/kgの25HC3Sを、経口強制飼養により毎日投薬した。
【0357】
結果
実験終了時(13週目)に採取した肝臓切片の組織病理学的検査は、水及びビヒクル処置マウスにおいて、中程度から重度の小滴性及び大滴性脂肪沈着、重度の肝細胞風船様腫大並びに炎症性細胞浸潤を示した。25HC3S処置は、肝細胞風船様腫大の有意な減少(p<0.05)によって反映される改善を示し、ビヒクル群と比較してNAS(NAFLD活性スコア)低下の傾向をもたらした(図23)(図23の右側パネルにおいて、各群の処置条件は、左から右に、対照、ビヒクル、50mg/kgの25HC3S、及びベースラインである)。NAS減少と一致して、線維症の面積率(シリウスレッド陽性面積)もまた、ビヒクル群と比較して、25HC3S処置により有意に減少した(図24、p<0.05)。線維症の程度はまた、9週目に屠殺したベースライン9週目マウス(N=6/群)と比較して、25HC3S処置群において、より低い傾向を示し、25HC3Sによる線維症の好転も起こり得ることを示唆している(図24)。
【0358】
要約すると、4週間にわたる25HC3S(50mg/kg)の毎日の経口処置は、屠殺時点において、ビヒクルと比較して、NASの構成要素である肝細胞風船様腫大を有意に減少させた。25HC3Sはまた、シリウスレッド染色によって測定された通り、ビヒクル処置と比較して、線維症の存在を有意に減少させ、9週目のベースラインSTAMマウスと比較して線維症を減少させた。まとめると、これらの結果は、25HC3Sが抗線維化作用を有し、NASHにおける線維症の進行を遅らせる可能性があることを示唆している。
【0359】
[実施例13]
胆汁鬱滞の齧歯類モデルにおける25HC3Sの有効性及び胆汁鬱滞の齧歯類モデルにおける25HC3Sの薬理学的介入:胆管結紮(BDL)ラット
材料及び方法
【0360】
動物
実験の対象は、オスのCD1ラット(8週齢、200~225g)であった。ラットにBDL手術を施し、肝外胆管を縫合糸で2回きつく結紮し、次に2つの結紮の間で切断した。疑似群(N=5/群)も、記載された実験のサブセットに含めた。
【0361】
製剤
25HC3Sナトリウム塩及びその各ビヒクルの懸濁液製剤を実験に使用した。ビヒクルは、水中の0.5%(重量/容積)CMC及び0.05%(容積/容積)Tween-80の溶液であった。粉末化25HC3Sをビヒクル溶液に構成して0.833~5mg/mLの薬物濃度を得た。30~40秒ごとに10秒の中断を入れて、懸濁液を混ぜ合わせて約5分間均質化し、投与前に回転させて均質性を維持した。製剤化された試験物品は毎週調製し、室温で保持した。
【0362】
25CH3S投与
マウスを処置群(N=8~10/群)に分け、経口強制飼養により、9日間にわたり毎日又は3日ごとに投薬した。5、10、30若しくは60mg/kgの25HC3S又はビヒクルを、BDL手術の1日後(1日目)から与えた。10日目に、一晩の絶食後に血清を採取し、血清生化学について測定を行った。
【0363】
結果
予備実験では、30又は60mg/kgの25HC3Sでの毎日の投与(N=10/群)が、ビヒクルラットと比較して、体温に対する有意な効果を示した(図25、右側パネル)。30mg/kgの25HC3Sは、手術後の体重増加を有意に改善したが、60mg/kgでは中程度の増加が観察された(図25、左側パネル)。体温と体重変化の両方の尺度が、改善の臨床指標と考えられている。血清ビリルビンを含む血清生化学分析物に有意差は観察されなかった(データは示さず)。
【0364】
追跡実験では、同じCROによって、同じBDLモデルにおける、低用量の25HC3Sの有効性を検査した。ラットに10若しくは30mg/kgの25HC3S又はビヒクルを毎日投薬した(N=8/群)。血清ビリルビンが約21~25倍増加し(p<0.001)、全てのBDL群において疑似群と比較してALT、ALP、AST及び胆汁酸が有意に上昇したため、BDL手術はその後の実験において成功だった(図26)。血清総、直接及び間接ビリルビンレベルは、ほぼ全て、ビヒクル処置ラットと比較して、25HC3S処置群において有意に減少することが見出された(図26)が、血清肝臓酵素に減少の傾向があった(データは示さず)。用量依存性は観察されなかった。肝臓組織に関して組織学的分析も行ったが、処置群間の差は観察されなかった(データは示さず)。この実験では、体重と体温は測定しなかった。
【0365】
5mg/kgの25HC3Sの毎日の経口投与(N=10/群)による有効性もまた検査した。9日目の体温及び脾臓対体重比は、ビヒクルと比較して有意に改善された(図27及び28)が、体重の変化及び他の血清化学的測定はほとんど又は全く違いを示さなかった(データは示さず)。この実験の結果は、この齧歯類の胆汁鬱滞/胆管炎モデルにおいて、5mg/kgの用量は、治療的利益をもたらす上で十分ではない場合があることを示唆している。
【0366】
25HC3S投与計画についても、このBDLモデルにおける有効性を検査した。ラットに、1日目から開始して、3日ごとに10若しくは30mg/kgの25HC3S又はビヒクルを経口投薬した(N=10/群)。ラットに9日間にわたって合計3回の用量の25HC3S又はビヒクルを与えた(1、4及び7日目)。実験全体を通じて数日間の体温及び疾患スコアの変化は有意であった(図29)が、体重、器官対体重比又は血清臨床化学における有意差は観察されなかった。
【0367】
要約すると、25HC3Sは、複数の用量範囲(10、30、60mg/kg)において、胆管炎及び胆汁鬱滞の齧歯類モデルにおいて「臨床徴候」(体重減少、体温低下)及び血清ビリルビンレベルの両方を有意に改善するのに有効である。ただし、3日ごとの投与と比較して、25HC3Sの毎日の投与が、体重増加の改善、体温維持、及び血清ビリルビンの低減において、より有効であることが見出された。
【0368】
[実施例14]
カプセル製剤追跡実験
【0369】
目的
1)in vitro薬物放出プロファイルに対する薬物担持量及び各賦形剤の効果をより詳細に理解する。
【0370】
2)上記実施例11に記載のカプセル製剤よりも高速で再現可能性の高い溶解性を有する、いくつかの製剤を開発する。
【0371】
製剤調製
8つのバルク製剤を、1バッチ当たり100グラムとして、250mLのI-Chemジャー内で調製した。プロセス全体を通じて50~55℃に維持した水浴中に、各製剤ジャーを浸漬させた。Gelucire 44/14を60℃のオーブンで加熱して溶融させた。分注前に、Gelucireをスパチュラにより手動で混合した。溶融Gelucire 44/14を量り取り(weighted out)各ジャーに添加した。次に、個々の賦形剤を量り取り、各添加後に400~500rpmで5分間のオーバーヘッド混合を行いながら、溶融Gelucire 44/14に添加した。粉末化25HC3Sを混合物にゆっくりと添加し、視覚的に完全に混ざるまでスパチュラで混合した。設定「2」により、バルク製剤を3分間均質化し、600~700rpmで5分間オーバーヘッド混合を行った。1カプセル当たり50mgの用量強度を達成するために、目標カプセル充填重量を500mgとして、最終製剤を手動でサイズ0のHPMCカプセルに充填した。
【0372】
【表34】
【0373】
溶解試験
USP機器2溶解試験機を使用して、25HC3Sの放出速度を決定した(n=6回反復試験)。0.1NのHCl中に0.5%Triton X-100を1000mL含有する溶解媒体を、4時間の溶解試験の間、パドル速度75rpmで37℃に維持した。標準サンプリング時間点は、0.25、0.5、0.75、1、2、及び4時間であった。25℃、60%の相対湿度で11週間保存した試料のために、1.5時間の時間点を追加した。各時間点で1mLの試料を採取し、HPLCを使用してアッセイした。
【0374】
結果
カプセル製剤14-1~14-8に関する溶解実験の結果をそれぞれ図30~37に示す。図30~37に示した通り、t=0並びに異なる温度及び相対湿度での異なる時間にわたる保存後に、カプセル製剤14-1~14-8を試験した。図38に、t=0におけるカプセル製剤14-C及び14-1~14-8の溶解結果を示す。
【0375】
特に指示がない限り、化合物又は構成成分への言及は、化合物又は構成成分自体、及び他の化合物又は構成成分との組合せ、例えば、化合物の混合物を含む。
【0376】
本明細書で使用するとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明白に他の意味を有する場合を除き、複数の言及を含む。
【0377】
本明細書に示した全ての数値範囲については、範囲はその範囲の最高値と最低値との間の全ての整数、及びそれらの値の間にある全ての小数、例えば、増分値0.1の小数を含むと理解するべきである。
【0378】
本明細書に示した全ての数値については、値はその数値を取り囲む全ての統計的に有意な値を包含することを意図している。
【0379】
本開示はその好ましい実施形態の点から記載されているが、当業者であれば、添付した態様及び特許請求の範囲の精神及びその範囲内において、本開示を改変して実施できることを理解するであろう。したがって、本開示は上記の実施形態に限定されるべきではなく、本明細書に示した記載内容の精神及び範囲に包含される、その全ての改変及び均等物をさらに含むべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
【手続補正書】
【提出日】2022-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-コレステン-3β,25-ジオール,3-サルフェート(25HC3S)又はその薬学的に許容される塩、及び
38℃~55℃の融点及び1~16の親水親油バランス(HLB)を有する飽和ポリグリコール化グリセリド
を含む組成物であって、25HC3S又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、0.5重量%~50重量%の範囲の量で存在し、飽和ポリグリコール化グリセリドが、組成物の重量に対して、10重量%~85重量%の範囲の量で存在する、前記組成物
【請求項2】
飽和ポリグリコール化グリセリドが、ラウロイルポリオキシルグリセリド及び/又はステアロイルポリオキシルグリセリドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の総重量に対して、10重量%~80重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
25HC3S又はその薬学的に許容される塩を含む粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
25HC3S又はその薬学的に許容される塩が、組成物の重量に対して、1重量%~20重量%の範囲の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
飽和ポリグリコール化グリセリド以外の少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の界面活性剤が、ポリグリセリル-3オレエートである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、0.01重量%~20重量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物の総重量に対して、1重量%~15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
カプセル内に収容された、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
25HC3S又はその薬学的に許容される塩を含む粒子、
ラウロイルポリオキシルグリセリド、及び
ステアロイルポリオキシルグリセリド
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0379
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0379】
本開示はその好ましい実施形態の点から記載されているが、当業者であれば、添付した態様及び特許請求の範囲の精神及びその範囲内において、本開示を改変して実施できることを理解するであろう。したがって、本開示は上記の実施形態に限定されるべきではなく、本明細書に示した記載内容の精神及び範囲に包含される、その全ての改変及び均等物をさらに含むべきである。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
1種以上の酸素化コレステロールサルフェート(OCS)、及び
少なくとも1種のポリオキシルグリセリド
を含む組成物。
(実施形態2)
少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、飽和ポリグリコール化グリセリドを含む、実施形態1に記載の組成物。
(実施形態3)
飽和ポリグリコール化グリセリドが、約38℃~約55℃の融点及び約1~約16の親水親油バランス(HLB)を有する飽和ポリグリコール化グリセリドである、実施形態2に記載の組成物。
(実施形態4)
飽和ポリグリコール化グリセリドが、約38℃~約50℃の融点及び約1~約16のHLBを有する飽和ポリグリコール化グリセリドである、実施形態2に記載の組成物。
(実施形態5)
飽和ポリグリコール化グリセリドが、ラウロイルポリオキシルグリセリド及び/又はステアロイルポリオキシルグリセリドである、実施形態2~4のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態6)
少なくとも1種のポリオキシルグリセリドが、組成物の総重量に対して、約10重量%~約99重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態7)
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートを含む粒子を含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態8)
ビヒクル中の粒子の懸濁液を含む、実施形態7に記載の組成物。
(実施形態9)
粒子が、レーザー回折によって測定した、約0.1μm~約500μmの範囲の中央粒径を有する、実施形態7及び8のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態10)
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、5-コレステン-3β,25-ジオール,3-サルフェート又はその薬学的に許容される塩を含む、実施形態1~9のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態11)
1種以上の酸素化コレステロールサルフェートが、組成物の重量に対して、約0.5重量%~約50重量%の範囲の量で存在する、実施形態1~10のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態12)
少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、実施形態1~11のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態13)
非イオン性界面活性剤である少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、実施形態1~12のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態14)
ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポロキサマー、レシチンドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、硫酸化ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、ポリオキシルヒマシ油、d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)、ポリオキシエチレンエステル、カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリグリセリルオレエート、リノール酸グリセリド、ポリオキシルステアレート、ハッカ油、及びオレイン酸から選択される少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、実施形態1~13のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態15)
少なくとも1種の界面活性剤が、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド及び/又はポリグリセリル-3オレエートである、実施形態12に記載の組成物。
(実施形態16)
少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約20重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態12~15のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態17)
少なくとも1種の界面活性剤が、組成物の重量に対して、約0.01重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態12~15のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態18)
組成物の総重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、実施形態1~17のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態19)
組成物の総重量に対して、約5重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルをさらに含む、実施形態1~17のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態20)
カプセル内に収容された、実施形態1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態21)
25HC3Sを含む粒子、
ラウロイルポリオキシルグリセリド、及び
ステアロイルポリオキシルグリセリド
を含む、実施形態1~20のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態22)
カプセル内にある、実施形態21に記載の組成物。
(実施形態23)
ラウロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約55重量%~約95重量%の範囲の量で組成物中に存在し、
ステアロイルポリオキシルグリセリドが、組成物の重量に対して、約1重量%~約30重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態21又は22に記載の組成物。
(実施形態24)
PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドを含む、実施形態21~23のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態25)
ポリグリセリル-3オレエートを含む、実施形態21~24のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態26)
PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドが、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態24又は25に記載の組成物。
(実施形態27)
ポリグリセリル-3オレエートが、組成物の重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態25~26のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態28)
ポリグリセリル-3オレエートが、組成物の重量に対して、約5重量%~約10重量%の範囲の量で組成物中に存在する、実施形態25~26のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態29)
それを必要とする対象において、高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つを処置する方法であって、実施形態1~28のいずれか一項に記載の、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法。
(実施形態30)
投与が、経口により行われる、実施形態29に記載の方法。
(実施形態31)
医薬として使用するための、実施形態1~28のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態32)
高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つから選択される疾患又は症状の処置に使用するための、実施形態1~28のいずれか一項に記載の組成物。
(実施形態33)
高脂血症又は高脂血症によって引き起こされる疾患若しくは症状;少なくとも1つの器官の機能異常又は不全;脂質代謝障害;代謝障害;アテローム性動脈硬化症;虚血によって引き起こされる傷害;望ましくない細胞死;敗血症;急性放射線症候群;肝障害;脂質蓄積障害;皮膚病変;及び炎症性皮膚疾患のうち少なくとも1つから選択される疾患又は症状の処置に使用するための医薬の製造における、実施形態1~28のいずれか一項に記載の組成物の使用。