IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ フォース ミリタリー メディカル ユニバーシティーの特許一覧

特開2022-84832ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用
<>
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図1
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図2
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図3
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図4
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図5
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図6
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図7
  • 特開-ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084832
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ヒト化抗ベイシジン抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220531BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220531BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220531BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220531BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220531BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220531BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20220531BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/071
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P33/06
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022047763
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2018556501の分割
【原出願日】2017-05-02
(31)【優先権主張番号】201610285139.4
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515281547
【氏名又は名称】フォース ミリタリー メディカル ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】FOURTH MILITARY MEDICAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.169, Changle West Road Xi’an, Shaanxi 710032 China
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジーナン
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ,ピーン
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン,ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,ムオンヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ビエン,ホゥイジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジアーン,ジエンリ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い結合親和性を有するヒト化抗ベイシジン抗体を提供する。
【解決手段】ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントであって、重鎖可変領域(VH)を含み、VHは、配列番号1のアミノ酸配列(EVQLXESGGGLVQPGGSLRLSCXASGFTFSNFWMNWVRQAPGKGLEWVXEIRLKSNNYATHYAESVKGRFTISRDDSKXXLYLQMNSLXTEDTXVYYCTSYDYEYWGQGTLVTVSA)を含み、ここで配列番号1の位置i(i=5、23、49、79、80、89、94)におけるXは、XHiと称され、XH5、XH23、XH49、XH79、XH80、XH89、XH94のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントであって、重鎖可変領域(V)を含み、Vは、配列番号1のアミノ酸配列(EVQLXESGGGLVQPGGSLRLSCXASGFTFSNFWMNWVRQAPGKGLEWVXEIRLKSNNYATHYAESVKGRFTISRDDSKXXLYLQMNSLXTEDTXVYYCTSYDYEYWGQGTLVTVSA)を含み、ここで配列番号1の位置i(i=5、23、49、79、80、89、94)におけるXは、XHiと称され、XH5、XH23、XH49、XH79、XH80、XH89、XH94のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
H5が、VまたはLであり、XH23が、AまたはSであり、XH49が、S、AまたはGであり、XH79が、NまたはSであり、XH80が、TまたはIであり、XH89が、KまたはRであり、XH94が、AまたはTである、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントであって、(a)XH5が、Vであり、XH23が、Aであり;および/または
(b)XH49が、SまたはAであり;および/または
(c)XH79が、Nであり、XH80が、Tであり、XH89が、KまたはRであり、XH94が、Aである、
ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
が、配列番号3、配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
が、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15に記載のフレームワーク領域(FR)を含む、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
軽鎖可変領域(V)をさらに含み、ここでVは、配列番号22、配列番号23または配列番号24に記載のCDRを含む、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
が、配列番号2のアミノ酸配列(DIQMTQSPXXLSXSVGDRVTXXCKASENVGTYVSWYQQKPGXXPKLLIYGASNRYTGVPXRFTGXGSGTDFTLTISSLQXXDXATYYCGQSYSYPFTFGSGTKLEIK)を含み、ここで配列番号2の位置j(j=9、10、13、21、22、42、43、60、65、80、81、83)におけるXは、XLjと称され、XL9、XL10、XL13、XL21、XL22、XL42、XL43、XL60、XL65、XL80、XL81、XL83のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る、請求項6に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
L9が、S、PまたはAであり、XL10が、TまたはSであり、XL13が、A、LまたはVであり、XL21が、LまたはIであり、XL22が、SまたはTであり、XL42が、KまたはQであり、XL43が、A、TまたはSであり、XL60が、SまたはAであり、XL65が、SまたはTであり、XL80が、PまたはSであり、XL81が、EまたはDであり、XL83が、FまたはIである、請求項7に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項7に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントであって、(a)XL9が、SまたはAであり、XL10が、TまたはSであり、XL13が、Aであり、XL21が、LまたはIであり、XL22が、SまたはTであり;および/または(b)XL42が、KまたはQであり、XL43が、AまたはTであり;および/または(c)XL60が、Sであり、XL65が、SまたはTであり、XL80が、Pであり、XL81が、EまたはDであり、XL83が、Fである、
ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
が、配列番号16、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
が、配列番号25、配列番号26、配列番号27および配列番号28に記載のFRを含む、請求項6に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
抗原結合フラグメントが、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、scFv、dsFv、dAb、および単鎖結合ポリペプチドから選択される抗体フラグメントである、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
重鎖ポリペプチドが、ヒトIgG重鎖の定常領域を含む、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
ヒトIgGが、ヒトIgG2である、請求項10に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
軽鎖ポリペプチドが、ヒトκ鎖の定常領域を含む、請求項6に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
約1×10-11M~約5×10-10MのKでベイシジンに結合する、請求項1に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
5×10-11M~約1.1×10-10MのKでベイシジンに結合する、請求項16に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントと、ベイシジンとの結合に関して競合することができる、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸配列。
【請求項20】
配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号17、配列番号19、または配列番号21のヌクレオチド配列を含む、請求項19に記載の単離された核酸配列。
【請求項21】
ヒトIgG重鎖またはヒトカッパ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項19に記載の単離された核酸配列。
【請求項22】
請求項20または21に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項23】
請求項22に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
前記細胞が、CHO細胞である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
(a)請求項1~18のいずれか一項に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント、および(b)医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項26】
対象におけるベイシジンに関連する疾患を治療する方法であって、対象に有効量の請求項25に記載の組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項27】
ベイシジンに関連する疾患が、がんまたはマラリアである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
がんが、肺がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、乳がん、卵巣がん、食道がんまたは胃がんである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象が、ヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
対象においてベイシジンに関連する疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の開示は、一般的に、ヒト化抗ベイシジン(BASIGIN)抗体およびその使
用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ベイシジン(また、EMMPRIN、ニューロテリン(Neurothelin)およびM
6抗原としても公知)は、50から60kDの分子量を有する高度にグリコシル化された膜貫通糖タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーである。ヒトにおいて、ベイシジンは、269個のアミノ酸を有し、これは細胞外、膜貫通および細胞内領域に分けることができ、N末端の翻訳開始ポイントから最初の21残基がシグナルペプチドを構成し、残基22~205が細胞外ドメインを構成し、残基206~229が典型的なロイシンジッパー構造を有する膜貫通領域を構成し、C末端の残基230~269が細胞内ドメインを構成する。
【0003】
[0003]ベイシジンは、肺がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、乳がん、卵巣がん、食道がんまたは胃がんなどの多くのタイプのヒト固形腫瘍で過剰発現されることが示されている。以前の研究によれば、ベイシジン分子は、腫瘍進行において重要な機能性膜タンパク質であることが示されており、例えば以下に示すような様々ながん関連の現象に関与する。
【0004】
[0004]i.ベイシジンは、腫瘍細胞の接着および転移を媒介する。腫瘍細胞の表面上で発現されたベイシジンは、ビンキュリンと相互作用して、腫瘍細胞の偽足形成、蔓延および接着を促進し;アネキシンIIと相互作用して、腫瘍細胞においてMMP-2の分泌を促進し;周囲のマトリックスの分解を促進し、腫瘍細胞と腫瘍細胞周辺の線維芽細胞を刺激して様々な細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、例えばMMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-11、MT1-MMPおよびMT2-MMPなどを分泌することにより、腫瘍転移を促進する。
【0005】
[0005]ii.ベイシジンは、腫瘍細胞の嫌気性代謝に関与する。ベイシジンは、モノカルボン酸トランスポーターMCT-1およびMCT-4の重要な分子シャペロンである。ベイシジンは、MCT-1およびMCT-4と相互作用して、細胞膜上でのそれらの正しい位置決めを助け、それらの乳酸代謝生成物の輸送を調節し続けることができる。腫瘍細胞は主として嫌気性代謝に頼ってエネルギーを生産するため、ベイシジンは、エネルギー代謝と腫瘍細胞の機能を、MCTの発現を介して間接的に調節する。
【0006】
[0006]iii.ベイシジンは腫瘍細胞の薬物耐性を促進する。ベイシジンは、多剤耐性(MDR)遺伝子の転写に影響を与え、共発現調節メカニズムによりP-gの発現を促進し、結果として腫瘍のMDRを誘導する。Kanekuraらは、ベイシジンはP-gを介してMDRを引き起こすことを証明したが、これは、ベイシジンは、MDRを阻害するための将来性のある有効な標的であり得ることを示す。加えて、ベイシジンは、p-TFII-Iの核局在化を促進し、折りたたみ不全タンパク質応答(UPR)における主要因子であるBipの発現を上方調節し、腫瘍細胞で小胞体ストレスとUPRを引き起こすことによって、アポトーシスを阻害し、結果として薬物に対する不感受性を生じさせる。ベイシジンの阻害は、肝細胞癌細胞のアポトーシスを促進し、既存の抗腫瘍薬物に対する腫瘍細胞の感受性を強化することができる。
【0007】
[0007]iv.ベイシジンは、VEGF発現を上方調節して、腫瘍の血管新生を促進する
。それゆえに、ベイシジン発現の阻害は、VEGFの分泌を有意に阻害し、それによって腫瘍の血管新生を阻害することができる。
【0008】
[0008]v.ベイシジンは複数の分子と相互作用する。ベイシジンタンパク質の膜貫通領域は、その様々な細胞膜タンパク質との相互作用に関する構造的な基礎である高度に保存された負電荷を有するグルタミン酸を有し、さらに、ベイシジンは、様々なタンパク質との相互作用を介して、細胞の様々な生理学的活性に影響を与える得ることも示唆されている。ベイシジンは、CD98、インテグリン、カベオリン-1、シクロフィリン(CyP)および他のタンパク質と相互作用して、例えばエネルギー代謝、細胞-マトリックス相互作用、シグナル伝達などの細胞機能を調整することにより、腫瘍細胞の成長および転移に影響を与える。
【0009】
[0009]加えて、数々の過去の研究から、腫瘍組織におけるベイシジンの発現レベルとがん患者の予後とが密接に相関していることが示された。非小細胞肺がん患者において、ベイシジン発現レベルと患者の予後は密接に関連している。
【0010】
[0010]それゆえに、ベイシジンは、腫瘍療法の新しい標的になりつつあり、抗体薬物「リカルチン(Licartin)」の開発成功により、ベイシジン標的薬の安全性および有効性が証明された。
【0011】
[0011]加えて、赤血球上で発現されたベイシジンと熱帯熱マラリア原虫のロプトリータンパク質PfRh5との、リガンド-受容体の方式での相互作用は、熱帯熱マラリア原虫の侵入における重要な要素である熱帯熱マラリア原虫による赤血球の遠位認識を媒介する。PfRh5と赤血球上のベイシジンとの相互作用は、様々なマラリア株でみられることから、赤血球上のベイシジンは、抗マラリア薬の重要な標的であることが期待されることが示唆される。化学療法薬に対する耐性を克服するために、赤血球上のヒトベイシジンに対する新しい抗マラリア薬は、従来の抗マラリア薬と組み合わせて使用される。
【発明の概要】
【0012】
[0012]モノクローナル抗体(McAb)は、疾患の診断および処置において広く使用されてきた。しかしながら、ヒトの体にマウスMcAbを複数回注射することは、患者においてヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を引き起こす可能性があり、全身性アレルギー反応は、抗体の有効性をブロックする可能性がある。それゆえに、抗体薬物調査およびそれらの可能性のある利点を調査するための開発において、ヒト抗体およびヒト化抗体が研究される。
【0013】
発明の簡潔な要約
[0013]本発明の開示は、高い結合親和性を有するヒト化抗ベイシジン抗体を提供し、その生物活性は、実験を介して検証される。
【0014】
[0014]本発明の開示は、重鎖可変領域(V)を含む、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
[0015]一部の実施態様において、Vは、配列番号1のアミノ酸配列(EVQLXESGGGLVQPGGSLRLSCXASGFTFSNFWMNWVRQAPGKGLEWVXEIRLKSNNYATHYAESVKGRFTISRDDSKXXLYLQMNSLXTEDTXVYYCTSYDYEYWGQGTLVTVSA)を有し、配列番号1の位置iにおけるX(i=5、23、49、79、80、89、94)は、XHiと称され、XH5、XH23、XH49、XH79、XH80、XH89、XH94のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る。
【0015】
[0016]一部の実施態様において、XH5は、VまたはLである。一部の実施態様において、XH23は、AまたはSである。一部の実施態様において、XH49は、S、AまたはGである。一部の実施態様において、XH79は、NまたはSである。一部の実施態様において、XH80は、TまたはIである。一部の実施態様において、XH89は、KまたはRである。一部の実施態様において、XH94は、AまたはTである。
【0016】
[0017]一部の実施態様において、(a)XH5は、Vであり、XH23は、Aであり;および/または(b)XH49は、SまたはAであり;および/または(c)XH79は、Nであり、XH80は、Tであり、XH89は、KまたはRであり、XH94は、Aである。
【0017】
[0018]一部の実施態様において、Vは、配列番号9~11に記載の3つの重鎖CDRを含む。
[0019]一部の実施態様において、Vは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15に記載のフレームワーク領域(FR)を含む。
【0018】
[0020]一部の実施態様において、Vは、配列番号3、配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列を有する。
[0021]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(V)をさらに含む。
【0019】
[0022]一部の実施態様において、Vは、配列番号2のアミノ酸配列(DIQMTQSPXXLSXSVGDRVTXXCKASENVGTYVSWYQQKPGXXPKLLIYGASNRYTGVPXRFTGXGSGTDFTLTISSLQXXDXATYYCGQSYSYPFTFGSGTKLEIK)を有し、ここで配列番号2の位置jにおけるX(j=9、10、13、21、22、42、43、60、65、80、81、83)は、XLjと称され、XL9、XL10、XL13、XL21、XL22、XL42、XL43、XL60、XL65、XL80、XL81、XL83のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る。
【0020】
[0023]一部の実施態様において、XL9は、S、PまたはAである。一部の実施態様において、XL10は、TまたはSである。一部の実施態様において、XL13は、A、LまたはVである。一部の実施態様において、XL21は、LまたはIである。一部の実施態様において、XL22は、SまたはTである。一部の実施態様において、XL42は、KまたはQである。一部の実施態様において、XL43は、A、TまたはSである。一部の実施態様において、XL60は、SまたはAである。一部の実施態様において、XL65は、SまたはTである。一部の実施態様において、XL80は、PまたはSである。一部の実施態様において、XL81は、EまたはDである。一部の実施態様において、XL83は、FまたはIである。
【0021】
[0024]一部の実施態様において、(a)XL9は、SまたはAであり、XL10は、TまたはSであり、XL13は、Aであり、XL21は、LまたはIであり、XL22は、SまたはTであり;(b)XL42は、KまたはQであり、XL43は、AまたはTであり;および/または(c)XL60は、Sであり、XL65は、SまたはTであり、XL80は、Pであり、XL81は、EまたはDであり、XL83は、Fである。
【0022】
[0025]一部の実施態様において、Vは、配列番号22~24に記載の3つの軽鎖CDRを含む。
[0026]一部の実施態様において、Vは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28に記載のFRを含む。
【0023】
[0027]一部の実施態様において、Vは、配列番号16、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を有する。
[0028]一部の実施態様において、抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、scFv、dsFv、dAb、および単鎖結合ポリペプチドから選択される抗体フラグメントである。
【0024】
[0029]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG重鎖の定常領域を含む。一部の実施態様において、ヒトIgGは、ヒトIgG2である。一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトκ鎖の定常領域を含む。
【0025】
[0030]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、約1×10-11M~約5×10-10Mまたは約5×10-11M~約1.1×10-10MのKDでベイシジンに結合する。
【0026】
[0031]一形態において、本発明の開示はまた、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸配列も提供する。
[0032]一部の実施態様において、単離された核酸配列は、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号17、配列番号19、または配列番号21のヌクレオチド配列を含む。
【0027】
[0033]別の形態において、本発明の開示はまた、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むベクターも提供する。
【0028】
[0034]別の形態において、本発明の開示は、本明細書で提供されるベクターを含む宿主細胞を提供する。一部の実施態様において、宿主細胞は、CHO細胞である。
[0035]さらに別の形態において、本発明の開示は、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントおよび医薬的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0029】
[0036]別の形態において、本発明の開示は、対象におけるベイシジンに関連する状態を処置する方法であって、対象に有効量の本明細書で提供される組成物を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0030】
[0037]一部の実施態様において、ベイシジンに関連する状態は、がんまたはマラリアである。一部の実施態様において、がんは、肺がん、肝臓がん、子宮頸がん、結腸がん、乳がん、卵巣がん、食道がんまたは胃がんである。一部の実施態様において、対象は、ヒトである。
【0031】
[0038]別の形態において、本発明の開示は、対象におけるベイシジンに関連する状態を処置するための医薬品の製造における、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】[0039]図1は、ヒト化抗ベイシジン抗体の重鎖FRにおける特異的なアミノ酸部位のある特定の例示的なバリエーションを示す図解である。
図2】[0040]図2は、ヒト化抗ベイシジン抗体の軽鎖FRにおける特異的なアミノ酸部位のある特定の例示的なバリエーションを示す図解である。
図3】[0041]図3は、ELISA分析によって測定した場合の、ヒトベイシジンに対する、マウス6H8(塗りつぶしのひし形)、キメラ6H8(塗りつぶしの逆三角形)、ヒト化HP6H8-1(黒丸)、ヒト化HP6H8-2(塗りつぶしの三角形)、ヒト化HP6H8-3(塗りつぶしの正方形)などの抗ベイシジン抗体の用量依存性の結合を示す。
図4】[0042]図4は、抗ベイシジン抗体の軽鎖遺伝子の発現ベクターpcDNA3.3-LC-N-229-205の概略的な構造であり、軽鎖可変領域をコードする配列は、pcDNA3.3プラスミドのXbaI部位とBsiWI部位との間に挿入され、それに続いてヒトカッパ鎖の定常領域をコードする配列が挿入される。
図5】[0043]図5は、抗ベイシジン抗体の重鎖遺伝子の発現ベクターpOptivec-HC-D-229-205の概略的な構造であり、重鎖可変領域をコードする配列は、pOptivecプラスミドのXbaI部位とNheI部位との間に挿入され、それに続いてヒトIgG2重鎖の定常領域をコードする配列が挿入される。
図6】[0044]図6は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株におけるHP6H8-1抗体の発現の結果を示す。
図7】[0045]図7は、結腸、肝臓および肺がんの悪性組織におけるHP6H8-1の免疫組織化学的染色の結果を示す。
図8】[0046]図8は、ヒト化抗体HP6H8-1による赤血球の熱帯熱マラリア原虫侵入のインビトロにおける阻害結果を提示し、ここで結果のデータは、平均±S.E.M.として示される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
[0047]以下の本発明の開示の説明は、単に様々な本発明の開示の実施態様を例示することが意図されている。そのようなものとして、論じられた具体的な改変は、本発明の開示の範囲に対する限定として解釈されないものとする。当業者であれば、本発明の開示の範囲から逸脱することなく様々な均等物、変更、および改変が可能であることが明らかであると予想され、このような等価な実施態様が本明細書に包含されることが理解される。本明細書において引用された全ての参考文献、例えば公報、特許および特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0034】
ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント
[0048]一形態において、本発明の開示は、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0035】
[0049]本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、あらゆる免疫グロブリン、モノクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体、または二重特異性(2価)抗体を包含する。天然のインタクトな抗体は、ジスルフィド結合により相互連結された2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む。抗体の各重鎖は、可変領域(V)および第1、第2および第3の定常領域(それぞれCH1、CH2、CH3)からなり、一方で抗体の各軽鎖は、可変領域(V)および定常領域(C)からなる。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。両方の鎖における可変領域は、一般的に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の3つの領域にさらに分割される(ここで、軽(L)鎖CDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を包含し、重(H)鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、HCDR3を包含する)。本明細書で開示される抗体および抗原結合フラグメントのCDRの境界は、Kabat、Chothia、またはAl-Lazikaniの慣例によって定義または同定することができる(Al-Lazikani, B.、Chothia, C.、Lesk, A.M.、J. Mol. Biol.、273(4)、927(1997);Chothia, C.ら、J Mol Biol. Dec 5;186(3):651~63(1985);Chothia, C.およびLesk, A.M.、J. Mol. Biol.、196、901(1987);Chothia, C.ら、Nature. 12月21~28日;31(6252)
:877~83(1989);Kabat E.A.ら、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。一部の実施態様において、抗体のCDRの境界は、Kabatデータベースに
従って決定される。3つのCDRは、フレームワーク領域(FR、ここで重(H)鎖FRは、HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4を包含し、軽(L)鎖FRは、LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4を包含する)として公知のフランキングストレッチの間に挿入され、このような領域は、CDRより高度に保存され、高度可変ループを支持する足場を形成する。それゆえに、各VおよびVは、3つのCDRおよび4つのFRを以下の順番:(アミノ酸残基のN末端からC末端に):FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で含む。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。
【0036】
[0050]哺乳類の重鎖は、α、δ、ε、γ、およびμとして分類され、哺乳類の軽鎖は、λまたはκとして分類される。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づき、それぞれα、δ、ε、γ、およびμ重鎖の存在によって特徴付けられる5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り振られる。数種の主要な抗体クラスのサブクラスは、例えばIgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)、またはIgA2(α2重鎖)などである。
【0037】
[0051]一部が1つの種由来の重鎖および/または軽鎖の一部であり、その残部が異なる種由来の重鎖および/または軽鎖である抗体または抗原結合フラグメントは、キメラと称される。説明に役立つ例において、キメラ抗体は、ヒト由来の定常領域および非ヒト種、例えばマウス由来の可変領域を含んでいてもよい。
【0038】
[0052]ヒト化抗体または抗原結合フラグメントは、非ヒト(例えば、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ヤギ、ウマ、またはニワトリ)抗体由来のCDR、ならびに全体的または実質的にヒト免疫グロブリン由来の可変領域FRおよび定常領域(存在する場合)を含む抗体または抗原結合フラグメントを指す。
【0039】
[0053]「実質的に」は、本明細書で使用される場合、2つの比較される項目(例えば、配列、数値)間の類似性の程度が高いことを指し、当業者は、2つの項目間に有意差があるとみなさないであろうし、および/または2つの比較される項目が、それらの特性(例えば、物理的特性、または生物活性)に関してほとんど差がないと予期するであろう。
【0040】
[0054]一部の実施態様において、ヒト化抗体または抗原結合フラグメントの配列を変更して(例えば、置換して、挿入して、または欠失させて)、例えば結合親和性、安定性、免疫原性、薬物動態学的な半減期、pH感受性、コンジュゲーションに対する適合性などの1つまたはそれより多くの特性において抗体を改善することができる。一部の実施態様において、1つまたはそれより多くの非ヒトCDRおよび/またはヒトFRにおける1つまたはそれより多くのアミノ酸残基を変更して、1つまたはそれより多くの上述した抗体の特性を改善しつつ、抗体の結合親和性を維持または改善し、ここで変更されたアミノ酸残基は、特異的な結合にとって重要であるか、またはヒト化抗体のベイシジンへの結合が有意に影響を受けないように変更が保存的変化であるかのいずれかである。
【0041】
[0055]一部の実施態様において、非ヒト抗体由来のCDRは、元となる非ヒトCDRと同じアミノ酸配列を含んでいてもよいし、または3つ以下、2つ以下、または1つ以下のアミノ酸変更を含んでいてもよい。一部の実施態様において、変更は、保存的置換である。
【0042】
[0056]「保存的置換」は、アミノ酸配列に関して、類似の生理化学的な特性を有する側
鎖を有する異なるアミノ酸残基でアミノ酸残基を置き換えること、またはポリペプチドの活性にとって重要ではないアミノ酸の置換を指す。例えば、保存的置換は、非極性側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、PheおよびTrp)の間、非荷電性の極性側鎖を有する残基(例えば、Cys、Ser、Thr、Asn、GlyおよびGln)の間、酸性側鎖を有する残基(例えば、AspおよびGlu)の間、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、LysおよびArg)の間、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、Thr、ValおよびIle)の間、硫黄を含有する側鎖を有するアミノ酸(例えば、CysおよびMet)の間、または芳香族側鎖を有する残基(例えば、Trp、Tyr、HisおよびPhe)の間でなすことができる。一部の実施態様において、置換、欠失または付加はまた、このような置換、欠失、または付加がタンパク質の立体配座構造において有意な変化を引き起こさず、そのためタンパク質の生物活性を保持できる限りは「保存的置換」とみなすこともできる。保存的置換として挿入または欠失されるアミノ酸の数は、約1から3個の範囲であってもよい。
【0043】
[0057]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(V)を含む。一部の実施態様において、Vは、配列番号9~11に記載のCDRを含む。一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(V)を含む。一部の実施態様において、Vは、配列番号22~24に記載のCDRを含む。
【0044】
[0058]一部の実施態様において、コンピューターソフトウェアを使用して、抗体または抗原結合フラグメントのヒトベイシジンへの結合を実質的にシミュレートすることができ、したがって、結合にとって重要ではない抗体/フラグメント(例えば、FR)上のアミノ酸部位を同定することができる。シミュレーションにおいて、このような部位に関して様々なアミノ酸を試験して、抗体または抗原結合フラグメントの結合性部分の構造/コンフォメーションを変化させないアミノ酸、または任意選択で、例えば結合または結合親和性、安定性、免疫原性、薬物動態学的な半減期、pH感受性、コンジュゲーションに対する適合性などの抗体または抗原結合フラグメントの1つまたはそれより多くの特性を改善するアミノ酸を同定することができる。このようなコンピューターソフトウェアの例としては、これらに限定されないが、SYBYL、ディスカバリースタジオ(Discovery Studio)、MOE、AMBER、GROMACS、NAMD、CONCOORD、DynDom、Autodock、MODELER、MolMolなどが挙げられる。
【0045】
[0059]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントのFR領域は、例えば、20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下のアミノ酸部位にいくつかのアミノ酸バリエーションを含んでいてもよい。一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントのFR領域は、非ヒトFRに相同である。
【0046】
[0060]本明細書で使用される場合、「相同体」および「相同な」は、同義的に使用され、最適に並べた場合、別の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列または核酸配列(またはその相補鎖)を指す。
【0047】
[0061]アミノ酸配列(または核酸配列)に関する「配列同一性」のパーセント(%)は、最大の一致を達成するために配列を並べ、必要に応じてギャップを導入した後の、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基に同一な候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸(または核酸)配列同一性のパーセントを決定する目的のアライメントは、例えばBLASTN、BLASTp、ClustalW2、およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公共的に利用可能なツールを使用することによって達成することができる。
【0048】
[0062]一部の実施態様において、Vは、配列番号1のアミノ酸配列(EVQLXESGGGLVQPGGSLRLSCXASGFTFSNFWMNWVRQAPGKGLEWVXEIRLKSNNYATHYAESVKGRFTISRDDSKXXLYLQMNSLXTEDTXVYYCTSYDYEYWGQGTLVTVSA)を有し、ここで配列番号1の位置iにおけるX(i=5、23、49、79、80、89、94)は、XHiと称され、XH5、XH23、XH49、XH79、XH80、XH89、XH94のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る。一部の実施態様において、Vは、配列番号1のアミノ酸配列(EVQLXESGGGLVQPGGSLRLSCXASGFTFSNFWMNWVRQAPGKGLEWVXEIRLKSNNYATHYAESVKGRFTISRDDSKXXLYLQMNSLXTEDTXVYYCTSYDYEYWGQGTLVTVSA)からなり、ここで配列番号1の位置iにおけるX(i=5、23、49、79、80、89、94)は、XHiと称され、XH5、XH23、XH49、XH79、XH80、XH89、XH94のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る。
【0049】
[0063]一部の実施態様において、XH5は、VまたはLである。一部の実施態様において、XH23は、AまたはSである。一部の実施態様において、XH49は、S、AまたはGである。一部の実施態様において、XH79は、NまたはSである。一部の実施態様において、XH80は、TまたはIである。一部の実施態様において、XH89は、KまたはRである。一部の実施態様において、XH94は、AまたはTである。
【0050】
[0064]一部の実施態様において、(a)XH5は、Vであり、XvH23は、Aであり;および/または(b)XvH49は、SまたはAであり;および/または(c)XvH79は、Nであり、XH80は、Tであり、XvH89は、KまたはRであり、XvH94は、Aである。
【0051】
[0065]一部の実施態様において、XH5は、Vであり、XvH23は、Aである。一部の実施態様において、XH49は、SまたはAである。一部の実施態様において、XH49は、Sである。一部の実施態様において、XH49は、Aである。一部の実施態様において、XH79は、Nであり、XH80は、Tであり、XH89は、Kであり、XH94は、Aである。一部の実施態様において、XH79は、Nであり、XH80は、Tであり、XH89は、Rであり、XH94は、Aである。
【0052】
[0066]一部の実施態様において、Vは、配列番号12~15から選択される1つまたはそれより多くの重鎖FRを含む。一部の実施態様において、Vは、配列番号3、配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、Vは、配列番号3、配列番号5または配列番号7のアミノ酸配列からなる。
【0053】
[0067]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域Vを含む。一部の実施態様において、Vは、配列番号22、配列番号23および配列番号24に記載のCDRを含む。
【0054】
[0068]一部の実施態様において、Vは、配列番号2のアミノ酸配列(DIQMTQSPXXLSXSVGDRVTXXCKASENVGTYVSWYQQKPGXXPKLLIYGASNRYTGVPXRFTGXGSGTDFTLTISSLQXXDXATYYCGQSYSYPFTFGSGTKLEIK)を有し、ここで配列番号43の位置jにお
けるX(j=9、10、13、21、22、42、43、60、65、80、81、83)は、XLjと称され、XL9、XL10、XL13、XL21、XL22、XL42、XL43、XL60、XL65、XL80、XL81、XL83のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る。一部の実施態様において、Vは、配列番号2のアミノ酸配列(DIQMTQSPXXLSXSVGDRVTXXCKASENVGTYVSWYQQKPGXXPKLLIYGASNRYTGVPXRFTGXGSGTDFTLTISSLQXXDXATYYCGQSYSYPFTFGSGTKLEIK)からなり、ここで配列番号43の位置jにおけるX(j=9、10、13、21、22、42、43、60、65、80、81、83)は、XLjと称され、XL9、XL10、XL13、XL21、XL22、XL42、XL43、XL60、XL65、XL80、XL81、XL83のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る。
【0055】
[0069]一部の実施態様において、XL9は、S、PまたはAである。一部の実施態様において、XL10は、TまたはSである。一部の実施態様において、XL13は、A、LまたはVである。一部の実施態様において、XL21は、LまたはIである。一部の実施態様において、XL22は、SまたはTである。一部の実施態様において、XL42は、KまたはQである。一部の実施態様において、XL43は、A、TまたはSである。一部の実施態様において、XL60は、SまたはAである。一部の実施態様において、XL65は、SまたはTである。一部の実施態様において、XL80は、PまたはSである。一部の実施態様において、XL81は、EまたはDである。一部の実施態様において、XL83は、FまたはIである。
【0056】
[0070]一部の実施態様において、(a)XL9は、SまたはAであり、XL10は、TまたはSであり、XL13は、Aであり、XL21は、LまたはIであり、XL22は、SまたはTであり;(b)XL42は、KまたはQであり、XL43は、AまたはTであり;および/または(c)XL60は、Sであり、XL65は、SまたはTであり、XL80は、Pであり、XL81は、EまたはDであり、XL83は、Fである。
【0057】
[0071]一部の実施態様において、XL9は、Sであり、XL10は、Tであり、XL13は、Aであり、XL21は、Lであり、XL22は、Sである。一部の実施態様において、XL9は、Aであり、XL10は、Sであり、XvL13は、Aであり、XL21は、Iであり、XL22は、Sである。一部の実施態様において、XL9は、Sであり、XL10は、Sであり、XL13は、Aであり、XL21は、Lであり、XL22は、Tである。
【0058】
[0072]一部の実施態様において、XL42は、Kであり、XL43は、Aである。一部の実施態様において、XL42は、Qであり、XL43は、Tである。一部の実施態様において、XL42は、Qであり、XL43は、Aである。
【0059】
[0073]一部の実施態様において、XL60は、Sであり、XL65は、Sであり、XL80は、Pであり、XL81は、Eであり、XL83は、Fである。一部の実施態様において、XL60は、Sであり、XL65は、Sであり、XL80は、Pであり、XL81は、Dであり、XL83は、Fである。
【0060】
[0074]一部の実施態様において、Vは、配列番号25~28から選択される1つまたはそれより多くのFRを含む。
[0075]一部の実施態様において、Vは、配列番号16、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、Vは、配列番号16、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列からなる。
【0061】
[0076]一部の実施態様において、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM重鎖の定常領域を含む重鎖を含む。一部の実施態様において、重鎖は、ヒトIgG重鎖の定常領域を含む。一部の実施態様において、ヒトIgGは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である。一部の実施態様において、ヒトIgGは、ヒトIgG2である。一部の実施態様において、ヒト化抗体またはそのフラグメントは、ヒトλまたはκ鎖の定常領域を含む軽鎖を含む。一部の実施態様において、軽鎖は、ヒトκ鎖の定常領域を含む。
【0062】
[0077]一部の実施態様において、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体は、配列番号9~11に記載の3つの重鎖CDR、配列番号12~15に記載のHFR1、HFR2、HFR3およびHFR4の重鎖フレームワーク配列、配列番号22~24に記載の軽鎖CDR、ならびに配列番号25~28に記載のLFR1、LFR2、LFR3およびLFR4の軽鎖フレームワーク配列を含み、ここで重鎖可変領域の配列は、式:HFR1-HCDR1-HFR2-HCDR2-HFR3-HCDR3-HFR4に従っており、軽鎖可変領域の配列は、式:LFR1-LCDR1-LFR2-LCDR2-LFR3-LCDR3-LFR4に従っている。
【0063】
[0078]ヒト化抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト用の治療剤として有用である。一部の実施態様において、これはなぜなら、非ヒト種抗体と比較して、低い免疫原性を有するかまたはヒトにおいて免疫応答を誘発する可能性が低いためである。一部の実施態様において、非ヒト動物は、哺乳動物であり、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ハムスター、または非ヒト霊長類(例えば、サル(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)もしくは類人猿(例えば、チンパンジー、ゴリラ、サルまたは真猿亜目(affen))である。
【0064】
[0079]用語「特異的な結合」または「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、2つの分子間の、例えば抗体と抗原との間の無作為ではない結合反応を指す。結合親和性は、K値によって表すことができ、K値は、抗原と抗体との結合が平衡に達したときの、会合速度(kon)に対する解離速度(koff)の比率、すなわち、koff/konとして計算される。K値は、当業界において公知の好適な方法、例えば、ビアコア(Biacore)などの機器を使用したプラズモン共鳴結合(SPR)アッセイなどを使
用して適切に決定することができる(例えば、Murphy, M.ら、Current protocols in protein science、第19章、ユニット19.14、2006年を参照)。
【0065】
[0080]一部の実施態様において、本明細書で提供される抗ベイシジン抗体およびその抗原結合フラグメントは、プラズモン共鳴結合アッセイによって測定した場合、約10-7Mまたはそれ未満(例えば、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M)の結合親和性(K)でのヒトベイシジンへの特異的な結合が可能である。一部の実施態様において、本明細書で提供される抗体または抗原結合フラグメントは、約1×10-11Mから約1×10-7M、約1×10-11Mから約1×10-8M、1×10-11Mから約5×10-9M、約1×10-11Mから約1×10-9M、1×10-11Mから約1×10-9M、約5×10-11Mから約5×10-10Mまたは約5×10-11Mから約1.1×10-11Mの結合親和性(K)でヒトおよび/または非ヒトベイシジンに特異的に結合する。一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、約1×10-11M~約5×10-10M、または約5×10-11M~約1.1×10-10MのKでベイシジンに結合する。
【0066】
[0081]一部の実施態様において、抗ベイシジン抗体およびその抗原結合フラグメントは、ヒトベイシジンに特異的に結合するが、マウスベイシジンに特異的に結合せず、例えばマウスベイシジンの結合親和性は、ヒトベイシジンの結合親和性の、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満である。
【0067】
[0082]用語「抗原結合フラグメント」は、本明細書で使用される場合、1つまたはそれより多くのCDRを含む抗体のフラグメント、または抗原に結合するがインタクトな天然の抗体構造を含まない他のあらゆる抗体部分から形成された抗体フラグメントを指す。抗原結合フラグメントの例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(dsFv)、ダイアボディ(dAb)、二重特異性ds-ダイアボディ(二重特異性ds-dAb)、単鎖Fv(scFv)、scFv二量体、単鎖結合ポリペプチド、単離されたCDRおよび多重特異性抗体が挙げられる。抗原結合フラグメントは、親抗体が結合する抗原と同じ抗原に結合することが可能である。
【0068】
[0083]「Fab」は、ジスルフィド結合により単一の重鎖の可変領域および第1の定常領域に結合した単一の軽鎖(可変および定常領域の両方)からなる抗体の1価抗原結合フラグメントを指す。
【0069】
[0084]「Fab’」は、ヒンジ領域の一部をさらに包含するFabフラグメントに対応する1価抗原結合フラグメントを指す。
[0085]「F(ab’)」は、ジスルフィド結合により一緒に結合した2つのFab’フラグメントの二量体を指す。
【0070】
[0086]「Fv」は、単一の重鎖の可変領域に結合した単一の軽鎖の可変領域からなる。
[0087]「dsFv」は、単一の軽鎖の可変領域と単一の重鎖の可変領域との間の連結がジスルフィド結合である、ジスルフィド安定化Fvフラグメントを指す。一部の実施態様において、「(dsFv)」は、3つのペプチド鎖、すなわち、ペプチドリンカーにより連結され、ジスルフィド架橋により2つのV部分に結合した2つのV部分を含む。一部の実施態様において、dsFvは、二重特異性であり、重鎖と軽鎖とを対合させた各ジスルフィドは、異なる抗原特異性を有する。
【0071】
[0088]「ダイアボディ」または「dAb」は、2つの抗原結合部位を有する小さいフラグメントを指し、このフラグメントは、単一の鎖上の2つのドメイン間で対合するには短すぎるリンカーを使用することによって、単一のポリペプチド鎖中のVドメインに接続されたVドメイン(V-VまたはV-V)(例えば、Holliger P.ら、Proc Natl Acad Sci USA.;90(14):6444~8(1993);EP404097;WO93/111
61を参照)を含み、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合させられて、2つの抗原結合部位を作り出す。
【0072】
[0089]一部の実施態様において、「二重特異性dsダイアボディ」は、VH1とVL1とのジスルフィド架橋を介してVL1-VH2(これもペプチドリンカーにより連結されている)に結合したVH1-VL2(ペプチドリンカーにより連結されている)を含む。
【0073】
[0090]「単鎖Fv」または「scFv」または「単鎖抗体」は、抗体の単一のVドメインおよび単一のVドメインを含む操作された抗体フラグメントを指し、これらのドメインは、互いに直接的に、またはペプチドリンカー配列を介して接続されて、単一のポリペプチド鎖を形成する(Huston JS ら、Proc Natl Acad Sci USA、85:5879 (1988))
【0074】
[0091]「scFv二量体」は、2つのscFvの二量体を指す。
[0092]「単鎖結合ポリペプチド」は、抗原またはエピトープに結合することが可能なあ
らゆる単鎖ポリペプチドを指す。
【0075】
[0093]用語「抗原」は、本明細書で使用される場合、抗体または抗原結合フラグメントと結合することが可能であり、加えて、その抗原に結合することが可能な抗体を生産させるために動物で使用することが可能な分子または分子の一部を指す。抗原は、1つまたはそれより多くのエピトープを有していてもよい。用語「エピトープ」は、本明細書で使用される場合、原子の特定の基(例えば、糖側鎖、ホスホリル基、スルホニル基)、または抗体または抗原結合フラグメントと相互作用することが可能な抗原上のアミノ酸を指す。
【0076】
[0094]一部の実施態様において、抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、dsFv、dAb、scFv、および単鎖結合ポリペプチドから選択される抗体フラグメントである。
【0077】
[0095]一部の実施態様において、本発明の開示は、例示的なマウスモノクローナル抗体HAb18GC2(6H8とも称される)、そのキメラ抗体(すなわち、c6H8)、およびヒト化抗体HP6H8-1、HP6H8-2、HP6H8-3を提供する。
【0078】
[0096]マウスモノクローナル抗体HAb18GC2は、配列番号31の重鎖可変領域、配列番号29の軽鎖可変領域を有する。キメラ抗体c6H8は、上述したマウス可変領域に融合したIgG1アイソタイプのヒト定常領域を含む。
【0079】
[0097]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体は、HP6H8-1、HP6H8-2およびHP6H8-3からなる群から選択され、これらは、配列番号3、5および7それぞれの重鎖可変領域(コード化DNA配列である配列番号4、6および8それぞれに対応する)、ならびに配列番号16、18および20それぞれの軽鎖可変領域(コード化DNA配列である配列番号17、19および21それぞれに対応する)を有する。
【0080】
[0098]ヒト化抗体または抗原結合フラグメントを生産する方法
[0099]一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントは、組換え方法を使用して調製される。ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントを生産する組換えプロセスは、以下を含む:
[00100] 1)ヒトベイシジンタンパク質またはhベイシジン生産細胞で好適な非ヒト
動物を免疫化すること。動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、またはモルモットであってもよい。非ヒト動物からの脾臓またはリンパ節を使用して抗体を生産するハイブリドーマを生成するか、または免疫化された非ヒト動物のB細胞を集め、非ヒトモノクローナル抗ベイシジン抗体の力価を測定する。従来の手順を使用することによって(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、モノクローナル抗体をコードするDNAを単離およびシーケンシングする。
【0081】
[00101] 2)生成したハイブリドーマまたは集められたB細胞クローンから、好適な
力価を有する非ヒトモノクローナル抗ベイシジン抗体をコードするポリヌクレオチドをクローニングすること。そのポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの配列を分析して、非ヒトモノクローナル抗体のCDRの境界を同定する。
【0082】
[00102] 3)可変領域フレームワークおよび定常領域が存在する場合、それらが全体
的にまたは実質的にヒト免疫グロブリン配列からのものになるように、非ヒト由来抗体のCDR遺伝子をヒト免疫グロブリン遺伝子にグラフト化することにより、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントの組換え遺伝子を得ること。
【0083】
[00103] 4)任意選択で(Optionally)、好適なベクターに組換え遺伝子を取り入れ
、宿主細胞にベクターまたは組換え遺伝子を導入して、本明細書で提供されるヒト化抗体またはその抗原フラグメントを生産すること。
【0084】
[00104]本明細書で提供される抗体およびその抗原結合フラグメントは、宿主細胞を培
養すること、続いて宿主細胞または培養液(例えば、上清)を分離および精製することによって実質的に純粋で均一な形態で得ることができる。抗体またはその抗原結合フラグメントの分離および精製には、あらゆる従来のポリペプチド精製方法を採用することができる。
【0085】
[00105]単離された核酸配列
[00106]一形態において、本発明の開示は、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗
体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸配列を提供する。
【0086】
[00107]「単離された」物質は、人工的にその天然状態から変更された物質であり、例
えば、その元の環境から取り出された天然に存在する物質を、単離された物質と称することができる。「単離された」核酸は、実質的に他の核酸分子を含まず、天然状態で核酸に付随する天然に存在する要素を伴っていない核酸分子である。「単離された核酸配列」は、単離された核酸分子の配列を指す。
【0087】
[00108]一部の実施態様において、単離された核酸配列は、本発明の開示で提供される
CDR配列をコードする1つまたはそれより多くのヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、単離された核酸配列は、配列番号4、配列番号6または配列番号8、またはそれらの相同配列のヌクレオチド配列を含む。一部の実施態様において、単離された核酸配列は、配列番号17、配列番号19または配列番号21、またはそれらの相同配列のヌクレオチド配列を含む。
【0088】
[00109]「相同体」および「相同な」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用さ
れ、別の配列に対して、最適に並べた場合、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する核酸配列(またはその相補鎖)またはアミノ酸配列を指す。
【0089】
[00110]核酸配列(またはアミノ酸配列)に関するパーセント(%)「配列同一性」は
、最大の一致を達成するために配列を並べ、必要に応じてギャップを導入した後の、参照配列中の核酸(またはアミノ酸)残基に同一な候補配列中の核酸(またはアミノ酸)残基のパーセンテージと定義される。核酸(またはアミノ酸)配列同一性のパーセントを決定する目的のアライメントは、例えば、公共的に入手可能なツール、例えばBLASTN、BLASTp(米国の立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイトで入手可能であり、さらにAltschul S.F.ら、J. Mol. Biol.、215:403~410(1990);Stephen F.ら
、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402(1997)も参照)、ClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所のウェブサイトで入手可能であり、さらにHiggins D.G.ら、Methods in Enzymology、266:383~402(1996);Larkin M.A.ら、Bioinformatics(
オックスフォード、英国)、23(21):2947~8(2007)も参照)、およびALIGNま
たはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、ツールによって提供されるデフォルトパラメーターを使用してもよいし、またはアライメントのために必要に応じて、例えば好適なアルゴリズムを選択することによってパラメーターをカスタマイズしてもよい。
【0090】
[00111]ベクター
[00112]別の形態において、本発明の開示はまた、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗
原結合フラグメントをコードする単離された核酸配列を含むベクターも提供する。
【0091】
[00113]用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、細胞を形質転換またはトラ
ンスフェクトし、細胞中で遺伝子発現を可能にする核酸の運搬手段を指す。ベクターは、発現ベクターまたはクローニングベクターであり得る。本発明の開示は、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする本明細書で提供される核酸配列、核酸配列に作動可能に連結した少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーを含有するベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。本発明の開示の発現ベクターは、ウイルスベクター、プラスミド、ファージおよびコスミドであり得る。例としては、これらに限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスなど)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純疱疹ウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)、ラムダファージ、およびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT(登録商標)、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bosなどが挙げられる。
【0092】
[00114]宿主細胞
[00115]別の形態において、本発明の開示は、本明細書で提供されるベクターを含む宿主
細胞を提供する。
【0093】
[00116]「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、1つまたはそれより多くの外因
性タンパク質を発現させるために外因性核酸および/またはベクターが導入された細胞を指す。用語「宿主細胞」は、特定の対象の細胞とその後代の両方を指すことを目的とする。宿主細胞は、原核生物、真核生物、植物細胞、動物細胞またはハイブリドーマであり得る。タンパク質および遺伝子生成物の翻訳後プロセシングおよび改変に関して、異なる宿主細胞は、異なる特徴およびメカニズムを有する可能性があるため、発現されたヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントが確実に正しく改変およびプロセシング(例えば一次転写、グリコシル化、およびリン酸化)されるように、宿主細胞として好適な細胞株を選ぶことができる。一部の実施態様において、宿主細胞は、哺乳類細胞である。
【0094】
[00117]有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40(例えば、COS-7)で形質転換
したサル腎臓CV1株;ヒト胎児腎臓株(例えば、懸濁培養中での増殖のためにサブクローニングした293または293T細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞(例えば、CHO/-DHFR、CHO/-GS、Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:116(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod. 23:243~251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL141);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞癌細胞(HepG2、HB8065);マウス乳がん(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44~68(1982
));MRC5細胞;FS4細胞;PC12;マウス胚線維芽細胞株(3T3);NSO骨髄腫細胞(機能的な免疫グロブリン鎖を内因的にまったく生産しないマウス骨髄腫細胞株)である。一部の実施態様において、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0095】
[00118]上述されたベクターまたは組換え遺伝子で形質転換した宿主細胞は、従来の栄
養培地、またはプロモーターを誘導する、形質転換株を選択する、もしくは望ましい配列をコードする遺伝子を増幅する必要に応じて改変された従来の栄養培地中で培養することができる。一部の実施態様において、宿主細胞は、抗体の異なるフラグメントをコードする第2のポリヌクレオチドと共に形質転換されてもよい。一部の実施態様において、宿主細胞は、外因性核酸を含有していてもよいが、調節物質が細胞に導入されたり、または外因性核酸が核酸と作動可能に連結するように調節配列が細胞に導入されたりしない限り、その外因性核酸によってコードされたタンパク質を望ましいレベルで発現しない。一部の実施態様において、形質転換したベクターを含有する宿主細胞は、抗ベイシジン抗体を一時的に発現することができる。
【0096】
[00119]医薬組成物
[00120]一形態において、本発明の開示は、本明細書で提供される1つまたはそれより多
くのヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
【0097】
[00121]本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、液状溶液、懸
濁液、乳剤、丸剤、カプセル、錠剤、持続放出製剤または粉末などの当業界において公知のあらゆる従来の形態であってもよい。一部の実施態様において、医薬組成物は、注射用組成物に製剤化される。注射用組成物の例としては、すぐ注射可能な滅菌溶液;すぐ注射可能な滅菌懸濁液;すぐ注射可能な滅菌乳剤;滅菌乾燥させた可溶性製品、例えば使用直前に溶媒にすぐに再溶解可能な凍結乾燥粉末などが挙げられる。凍結乾燥粉末は、適切な条件下で、例えば約4℃から室温で貯蔵することができる。再溶解させるのに有用な溶液は、水性または非水性のいずれでもよい。一部の実施態様において、単位用量の注射用組成物は、アンプル、バイアルまたは針を有するシリンジ中に予めパッケージ化される。一部の実施態様において、複数用量の注射用組成物は、アンプルまたはバイアル中に予めパッケージ化される。
【0098】
[00122]一部の実施態様において、医薬組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含
む。
[00123]用語「医薬的に許容される」は、本明細書で使用される場合、指定された担体
が、一般的に、医薬組成物中に含まれる他の成分と化学的および/または物理的に適合性を有し、確実な医療的判断の範囲内であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなくレシピエント対象(例えば、ヒトおよび動物)におけるインビボでの使用に好適であり、適度なベネフィット/リスク比に見合っていることを意味する。
【0099】
[00124]「医薬的に許容される担体」としては、例えば、医薬的に許容される水性、非
水性または固体ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、緩衝液、pH調節剤、懸濁/分散剤、封鎖剤またはキレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性の補助剤、貯蔵と対象への活性成分の投与を容易にすることができる当業界で公知の他の要素、またはそれらのあらゆる組合せが挙げられる。本発明の開示で採用することができる医薬的に許容される担体としては、一般的に当業界で公知の担体、例えば、参照により本明細書に組み入れられる「Remington Pharmaceutical Sciences」Mack Pub. Co.、ニュージャージー州(1991)に記載される担体が挙げられる。
【0100】
[00125]さらなる例示のために、医薬的に許容される担体としては、例えば、滅菌水、
塩化ナトリウム、デキストロース、ラクトース、フルクトース、グルコース、トレハロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコール、クロロ-ブタノール、グリセロール、プロリン、ヒスチジン、アルギニン、塩酸、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸、クエン酸塩、リン酸塩、ソルビン酸塩(sorbitate)、リン酸スクロース、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、エタノール酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシケイ皮酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンオレエート、シクロデキストリン、TWEEN-20、Tween-80、コーンシロップ、グリセリン、硫酸水素ナトリウム、塩酸プロカイン、ポロキサム(Poloxam)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、EDTA、EGTAまたは他の好適な物質が挙げられる。
【0101】
[00126]一部の実施態様において、医薬組成物は、本明細書で提供されるヒト化抗ベイ
シジン抗体またはその抗原結合フラグメント、および1つまたはそれより多くの他の治療剤を含む。一部の実施態様において、他の治療剤は、放射線療法、化学療法、標的療法、遺伝子治療、免疫療法、ホルモン療法、血管新生阻害、緩和ケア、外科手術、抗マラリア薬またはそれらの組合せで使用される薬剤である。
【0102】
[00127]キット
[00128]本発明の開示は、本明細書で提供される抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フ
ラグメントを含むキットを提供する。一部の実施態様において、キットは、生体サンプル中でベイシジンの存在またはレベルを検出するのに有用である。生体サンプルは、細胞または組織であり得る。
【0103】
[00129]一部の実施態様において、キットに含有される抗ベイシジン抗体またはそれら
の抗原結合フラグメントは、検出可能な標識(例えば、蛍光、放射性または酵素標識)とコンジュゲートされている。いくつかの他の実施態様において、キットは、非標識の抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、非標識の抗ベイシジン抗体に結合することが可能な標識された二次抗体をさらに含む。キットはさらに、標識を検出する手段を包含していてもよい。キットは、特定の方法を実行するために使用される追加の試薬および緩衝液を含んでいてもよい。キットは、使用説明書、およびキット中の構成要素のそれぞれを分離するパッケージをさらに含んでいてもよい。一部の実施態様において、キットは、ベイシジン抗体を検出するためのイムノアッセイを含む。
【0104】
[00130]一部の実施態様において、キットは、ベイシジンタンパク質レベルを検出する
ために提供される。一部の実施態様において、キットは、ベイシジンに関連する状態を予測する、診断する、予防する、または処置するために使用される。
【0105】
[00131]処置方法(治療方法:Method of Treatment)
[00132]一形態において、本発明の開示は、対象におけるベイシジンに関連する状態を処
置する方法であって、対象に、有効量の本明細書で提供される医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0106】
[00133]別の形態において、本発明の開示は、対象におけるベイシジンに関連する状態
を処置するための医薬品の製造における、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0107】
[00134]別の形態において、本発明の開示は、対象におけるベイシジンに関連する状態
を処置するのに有用な、本発明の開示のヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0108】
[00135]用語「対象」は、本明細書で使用される場合、動物を指す。動物は、典型的に
は哺乳動物であり、特定の例としては、霊長類(例えば、ヒト)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジが挙げられる。一部の実施態様において、対象は、ヒトである。
【0109】
[00136]「ベイシジンに関連する状態」は、本明細書で使用される場合、ベイシジン(
例えば、ヒトベイシジン)の発現または活性の増加または減少によって引き起こされる、それによって悪化する、またはそれ以外の方式でそれに関連するあらゆる状態を指す。一部の実施態様において、ベイシジンに関連する状態は、がん、炎症性疾患または感染症である。
【0110】
[00137]「がん」は、本明細書で使用される場合、悪性細胞の増殖または新生物、異常
な増殖、侵入または転移を特徴とするあらゆる病状を指し、固形腫瘍および非固形がん(血液系腫瘍)の両方を含み、例えば白血病を含む。「固形腫瘍」は、本明細書で使用される場合、新生物および/または悪性細胞の固体質量を指す。がんの例としては、これらに限定されないが、非小細胞肺がん(扁平上皮/非扁平上皮)、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、結腸がん、卵巣がん、乳がん(基底乳癌、腺管癌および乳房の小葉癌など)、膵臓がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽腫、子宮頸がん、胸腺癌、黒色腫、骨髄腫、菌状息肉腫(mycoses fungoids)、メルケル細胞がん、肝細胞癌(HCC)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、リンパ性悪性腫瘍、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、クロム親和性細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、精上皮腫、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性(顆粒球)白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、真性多血症、肥満細胞由来の腫瘍、EBV陽性および陰性PTLD、ならびにびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、上咽頭癌、HHV8関連原発性滲出液リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリーセル白血病および脊髄形成異常、中枢神経系原発リンパ腫、脊髄軸の腫瘍、脳幹グリオーマ、星細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、ならびに網膜芽細胞腫が挙げられる。一部の実施態様において、がんは、転移性のがんであり、特にベイシジンを発現する転移がんである。
【0111】
[00138]一部の実施態様において、ベイシジンに関連する状態は、炎症性疾患であり、
例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、腸粘膜の炎症、大腸炎に関連する消耗性疾患、多発性硬化症、ウイルス感染、リウマチ様関節炎、変形性関節症、クローン病(Cohn’s disease)、および炎症性腸疾患、乾癬、全身性強皮症、自己免疫性糖尿病などである。
【0112】
[00139]一部の実施態様において、ベイシジンに関連する状態は、例えば真菌感染、寄
生体/原生動物感染または慢性ウイルス感染、例えば、マラリア、コクシジオイデス・イミチス(coccidioiodmycosis immitis)、ヒストプラスマ症、爪真菌症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ・アルビカンス(candidiasis albicans)、パラコクシジオイデス症(paracoccidioiomycosis)、微胞子虫症、アカントアメーバ角膜炎、アメ
ーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、ベイリスアスカリス症、シャーガス病、肝吸虫症、コクリオミイヤ属、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、象皮病、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ランブル鞭毛虫症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、横川吸虫症、ハエ蛆症、糸状虫症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ病、旋毛虫病、鞭虫症、トリパノソーマ症、蠕虫感染などの感染症、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、HIV、サイトメガロウイルス、単純疱疹ウイルスI型、単純疱疹ウイルスII型、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型、ヒト免疫不全ウイルスII型、カポジウェスト(Kaposi West)肉腫に関連するヘルペスウイルス流行、薄い環状のウイルス(トルクテノウイルス)、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型、ヒトTリンパ球向性ウイルスII型、水痘帯状疱疹、JCウイルスまたはBKウイルスの感染である。一部の実施態様において、状態は、マラリアである。
【0113】
[00140]状態を「処置(治療)すること」、状態の「処置」または「療法」は、本明細
書で使用される場合、同義的に使用することができ、治療的処置、予防もしくは防止的措置、例えば、状態を予防もしくは軽減すること、状態の発症もしくは状態が進行する速度の遅延、状態が進行するリスクの低減、状態に関連する症状の進行の予防もしくは遅延、状態に関連する症状の低減もしくは終止、状態の完全なもしくは部分的な寛解をもたらすこと、状態の治癒、またはそれらのいくつかの組合せを包含する。
【0114】
[00141]用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、ヒトベイシジンに関連す
る疾患または状態を処置するのに有効な薬物の投薬量または濃度を指す。例えば、がんを処置するための本明細書で開示されるヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントの使用に関して、治療有効量は、腫瘍体積を低減すること、がん細胞の成長または増殖を阻害すること、腫瘍増殖またはがん細胞の他の臓器への侵入を阻害するかまたは遅延させること、がん細胞の転移を阻害するかまたは遅延させること、がんに関連するあらゆる症状を緩和すること、がんの進行を予防または遅延させること、またはそれらのいくつかの組合せが可能な抗体または抗原結合フラグメントの投薬量または濃度である。または、マラリアを処置するための本明細書で開示されるヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントの使用に関して、治療有効量は、プラスモジウム属の感染または増殖を阻害すること、マラリアの状態に関連するあらゆる症状を緩和すること、マラリアの状態の進行を予防するかまたは遅延させること、またはそれらのいくつかの組合せが可能な抗体または抗原結合フラグメントの投薬量または濃度である。
【0115】
[00142]本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントの
治療有効量(単独で、または化学療法剤などの他の薬剤と組み合わせて使用される場合)は、当業界において公知の様々な要因、例えば、処置しようとする疾患のタイプ、抗体のタイプ、体重、年齢、過去の病歴、現在の薬物療法、対象の健康状態、免疫の状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性および有害な副作用、加えて投与経路およびタイプ、疾患の重症度および進行度、ならびに主治医または獣医師の裁量によって決まると予想される。一部の実施態様において、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントは、1日当たり1回またはそれより多くの回数、約0.01mg/kgから約100mg/kg(例えば、1日当たり1回またはそれより多くの回数、約0.01mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kg)の治療上有効な投薬量で投与されてもよい。一部の実施態様において、ヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントは、約50mg/kgまたはそれ未満の投薬量で投与され、一部の実施態様において、投薬量は、20mg/kgまたはそれ未満、10mg/kgまたはそれ未満、3mg/kgまたはそれ未満、1mg/kgまたはそれ未満、0.3mg/kgまたはそれ未満、または0.1mg/kgまたはそれ未満である。一部の実施態様において、投与量は、処置の経過にわたり変更することができる。例えば、一部の実施態様において、最初の投与量は、後続の投与量より多くてもよい。一部の実施態様において、投与量は、処置の経過にわたり対象の反応に応じて変更することができる。
【0116】
[00143]投薬レジメンは、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)がもたらされるよ
うに調整することができる。一部の実施態様において、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントは、1回で、または一連の処置にわたり、対象に投与される。一部の実施態様において、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体または抗原結合フラグメントは、疾患のタイプおよび重症度に応じて、1つまたはそれより多くの別個の投与により、または連続的な点滴により対象に投与される。指針は、例えば、米国特許第4,657,760号;5,206,344号;5,225,212号に見出すことができる。
【0117】
[00144]本明細書で開示されるヒト化抗ベイシジン抗体および抗原結合フラグメントは
、当業界において公知のあらゆる経路、例えば、非経口(例えば、皮下、腹膜内、静脈内、例えば静脈内注入、筋肉内、または皮内注射など)または非経口(例えば、経口、鼻腔内、眼球内、舌下、直腸、または局所)経路などによって投与することができる。
【0118】
[00145]一部の実施態様において、本明細書で開示されるヒト化抗ベイシジン抗体およ
び抗原結合フラグメントは、制御放出の方式で投与することができる。制御放出用非経口製剤は、インプラント、油性注射液または微粒子系(例えば、マイクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子)として作製することができる(Banga, A.J.、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc.、ペンシルベニア州ランカスター(1995);Kreuter, J.、Colloidal Drug Delivery Systems, J. Kreuter編、Marcel Dekker, Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク、219~31頁(1994);TiceおよびTabibi、Treatise on Controlled Drug Delivery、A. Kydonieus編、Marcel Dekker, Inc. ニューヨーク州ニューヨーク、315~339頁(1992)を参照)。一部の実施態様において、本明細書で提供されるヒト化抗ベイシジン抗体および抗原結合フラグメントは、分解性または非分解性ポリマーマトリックス中で投与することができる(Langer、Accounts Chem. Res. 26:537~51、1993を参照)。
【0119】
[00146]別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用
語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
[00147]単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、本明細
書で使用される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の形態も同様に含むことが意図される。用語「含む」、「含むこと」、「包含する」、「包含すること」、「有する」および/または「有すること」は、本明細書において使用される場合、述べられた特徴、工程、操作、エレメントおよび/または構成要素の存在を明記するものであるが、1つまたはそれより多くの他の特徴、工程、操作、エレメント、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるものとする。用語「約」は、本明細書で使用されるように、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が列挙された値から10%以下で変動する可能性があることを意味する。
【0120】
[00148]本明細書において引用されたいずれの文書も、全ての相互参照されたまたは関
連する特許または出願を含め、明示的に排除されたりまたはそれ以外の方法で限定されたりしない限り、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。全ての文書の引用は、それが、本明細書において開示または特許請求されたいずれかの発明に関する従来技術であること、または単独で、または他のいずれか1つまたは複数の参考文献とのあらゆる組合せで、このような発明のいずれかを教示している、示唆している、または開示していることの承認ではない。さらに、この文書中の用語のいずれかの意味または定義が、参照により組み入れられる文書中の同じ用語のいずれかの意味または定義と矛盾する場合、この文書中でその用語に充てられた意味または定義が優先されるものとする。
【実施例0121】
[00149]以下の実施例は、特許請求された発明をよりよく例示するために提供され、本
発明の範囲を制限すると解釈されないこととする。後述される全ての具体的な組成物、材料、および方法は、その全体が、または部分的に、本発明の範囲内に含まれる。これらの具体的な組成物、材料、および方法は、発明を限定することを意図していないが、本発明の範囲内に含まれる具体的な実施態様を単に例示することを意図している。当業者は、発明の能力を行使することなく、さらに本発明の範囲から逸脱することなく、等価な組成物、材料、および方法を開発することが可能である。本明細書に記載の手順に、それでもなお本発明の範囲内に残るように多くのバリエーションをなすことができることが理解されると予想される。本発明者らの意図は、このようなバリエーションは本発明の範囲内に包含されることである。
【0122】
実施例1:ファージディスプレイベクターの構築
[00150]2006年に、ハイブリドーマ細胞株HAb18GC2を生成し、中国典型培養
物保存センター(China Center for Type Culture Collection)に受託番号CCTCC-C200636で寄託した。細胞株、細胞株によって生産される抗体および調製方法に関する詳細な情報は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる中国特許第ZL200710007452.2号に記載されている。
【0123】
[00151]全RNA抽出キット(オメガバイオテック(Omega bio-tek))をキットのマニュアルに従って使用することによって、全RNAをハイブリドーマ細胞HAb18GC2から抽出した。抽出された全RNAの完全性をアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0124】
[00152]逆転写キットPrimeScript RT試薬キット(TaKaRa)のマニュア
ルに従って、μgの全RNAをとり、cDNAの第1の鎖を合成することによってcDNAを調製し、これをさらなる実験のために-20℃で貯蔵した。
【0125】
[00153]VH遺伝子フラグメントおよびVL遺伝子フラグメントを、PCR反応でそれ
ぞれVHおよびVL遺伝子特異的プライマーセットを使用することによって、cDNAテンプレートから増幅した。PCRにはPhusion(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼ(NEB)を使用した。反応ミックスは、NEBのマニュアルに従って調製される。PCR反応条件は、以下の通りに設定される:94℃、5分;(94℃、15秒、54℃、30秒、72℃、1分)×35サイクル;72℃、10分。増幅されたフラグメントのサイズを、1%アガロースゲル電気泳動で決定した。
【0126】
[00154]さらなるPCR反応で、リンカー配列およびその相補的なリバース配列を、そ
れぞれV遺伝子フラグメントの3’末端およびV遺伝子フラグメントの5’末端に、プライマー(Vリバースリンカー-R1:配列番号34、CAAAGTTGGAAATAAAAGCGGCCGCAGAACAAAA;Vリンカー-F1:配列番号35、TTTTGTTCTGCGGCCGCTTTTATTTCCAACTTTG)を介して、導
入した。
【0127】
[00155]リンカー配列またはリンカー配列の相補的なリバース配列を有するV遺伝子
フラグメントおよびV遺伝子フラグメントを、1:1(mol/mol)で混合し、オーバーラップ-PCR方法を使用することによってscFv遺伝子を増幅させる。反応系を以下のようにして調製した:1pmolのV遺伝子フラグメント、1pmolのV遺伝子フラグメント、100pmolのpFL-6H8-F1プライマー(配列番号33、CCCAGCCGGCCATGGCCGAAGTGAAGCTTGAGGAGTCT)、100pmolのpFL-6H8-R2プライマー(配列番号36、TTTTGTTCTGCGGCCGCTTTTATTTCCAACTTTG)、10μlの10×PCR緩衝液。PCR反応条件を以下のように設定した:95℃、5分;(95℃、15秒、56℃、30秒、72℃、1分)×35サイクル;72℃、10分。増幅されたフラグメントのサイズを、1%アガロースゲル電気泳動で決定した。
【0128】
[00156]期待されるサイズのバンドを切り出し、DNAフラグメント精製キット(オメ
ガバイオテック)を使用することによって回収して、NcoIおよびNotIの制限部位を含有するscFv遺伝子フラグメントを得た。
【0129】
[00157]切断部位NcoIおよびNotIを含有するscFv遺伝子フラグメントおよ
びベクタープラスミドpGEM-Tベクター(Promega)を紫外線分光光度計で測定し、
次いで制限酵素消化に供した。
【0130】
[00158]反応を以下のように設定した:3μgの回収されたscFv遺伝子フラグメン
トまたは3μgのpGEM-Tベクター、1μlのNcoI-HF、1μlのNotI-HF制限エンドヌクレアーゼ(NEB)、5μlの10×CutSmart緩衝液を混合し、水を添加して50μlにした。消化反応ミックスを37℃で1時間インキュベートした。得られた生成物のサイズを、1%アガロースゲル電気泳動で決定し、期待されるサイズにおけるバンドを切り出し、DNAフラグメント精製キット(オメガバイオテック)を使用することによって回収して、消化されたscFv遺伝子フラグメントおよび消化されたpGEM-Tベクターを得た。
【0131】
[00159]消化後、回収されたscFv遺伝子フラグメントおよびpGEM-Tベクター
をライゲートした。ライゲーション反応ミックスを以下のように設定した:0.7μgの消化されたscFv遺伝子フラグメント、1.4μgの消化されたpGEM-Tベクター、40UのT4リガーゼ、40μlの5×ライゲーション緩衝液。ライゲーション反応ミックスを16℃で一晩インキュベートした。TG1コンピテント細胞をライゲーション生成物で形質転換し、次いでLB寒天プレート上に塗り広げ、37℃で一晩インキュベートした。別個のコロニーをピックアップし、ベクターにとって万能なプライマーを用いて陽性クローンに関してスクリーニングした。次いで陽性クローンを正しいインサートに関して配列決定し、正しいインサートを含有することが証明されたもの(組換えプラスミドpFL-6H8と命名)を、さらなる使用のために-40℃で貯蔵した。組換えプラスミドpFL-6H8は、完全な重鎖および軽鎖可変領域配列を有するscFv遺伝子を含有する。
【0132】
実施例2:マウスモノクローナル抗体6H8のCDRおよびFRの決定
[00160]マウスモノクローナル抗hベイシジン抗体6H8の軽鎖および重鎖可変領域中の
CDR(HAb18GC2としても公知である。中国特許第ZL200710007452.2号を参照)を、Kabatデータベースに従って決定した。3つの軽鎖CDRのアミノ酸配列は、配列表中、それぞれ配列番号22、配列番号23および配列番号24に示される。3つの重鎖CDRのアミノ酸配列は、配列表中、それぞれ配列番号9、配列番号
10および配列番号11に示される。
【0133】
実施例3:適切なヒト免疫グロブリンフレームワーク配列の選択
[00161]抗体のヒト化のために、Kabatデータベースから得られたヒトFR配列を上
述のCDRでグラフト化し、グラフト化した抗体の可変領域を相同性および構造に関してスクリーニングした。ディスカバリービジョン(Discovery Vision)(VIOVIA、バージョン3.5)という名称のコンピューターソフトウェアを使用して、分子モデリング、相同性モデリングおよび力学の最適化を介してヒト化の前および後の抗体の分子構造を分析し、置き換えられたFRがVおよびVの全体的な骨格構造を変化させずに、具体的には、マウスモノクローナル抗体のβ鎖の2次構造を破壊せずに、確実に元のマウス抗体の親和性を維持するかまたは改善するような、ヒトFRにおいて可能な変更を検証した。本発明の開示の図1および図2に、選択されたヒト重鎖/軽鎖可変FR配列を、特定の部位に起こり得るバリエーションと共に、マウスFR配列と一致させて列挙した。
【0134】
実施例4:ファージディスプレイのヒト化抗hベイシジン抗体ライブラリーの構築およびスクリーニング
[00162]実施例2で決定されたCDRおよび実施例3で検証されたFR配列の配列に基づ
き、哺乳類細胞において一般的に使用されるコドンを使用することによって、ヒト化抗体のScFvフラグメントをコードする対応するヌクレオチド配列を得た。オーバーラップ-PCR方法によってコード化遺伝子を得て、次いでクローニングベクターにクローニングし、増幅し、陽性クローンをシーケンシング分析に供した。重鎖/軽鎖FRのコード配列中の特異的なアミノ酸部位に、プライマーにより変更およびバリエーションを導入することによって、FRのヒト化を実行した。詳細なプロトコールは後述される。
【0135】
[00163]材料
[00164]実施例1からのマウス由来のscFvフラグメントを、テンプレートとして使用
した。以下のプライマーを、ヒト化された重鎖可変領域(hVH)およびヒト化された軽鎖可変領域(hVL)の増幅のために使用した:
[00165]hVHフォワードプライマーとしては、以下が挙げられる:
[00166] 1)6H8-L1-F1:配列番号37
[00167]CAGCCGGCCATGGCCGAAGTGCAGCTTGTGGAGTCT

[00168] 2)6H8-L1-F2:配列番号38(6H8-L1-F2はプライマーの混合物を表し、式中R=GまたはA、S=GまたはCである)
[00169]CGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTTGAGTGGGTTRSC
GAAATTAGATTGAAATC
[00170] 3)6H8-L1-F3:配列番号39(6H8-L1-F3はプライマーの混合物を表し、式中R=GまたはAである)
[00171]CAGATGAACTCCTTAARGACTGAAGACACTGCCGTG
TATTACTGTACCAG
[00172]hVHリバースプライマーとしては、以下が挙げられる:
[00173] 1)6H8-L1-R1:配列番号40(6H8-L1-R1はプライマーの混合物を表し、式中M=AまたはC、Y=TまたはCである)
[00174]GAAAGTGAATCCAGAGGCGGMACAGGAGAGCYTCAG
GGATCCTCCAGG
[00175] 2)6H8-L1_R2:配列番号41
[00176]CCCTGGAGCCTGGCGGACCCAGTTCATCCAGAAGTT
ACTGAAAGTGAATCCAG
[00177] 3)6H8-L1-R3:配列番号42(6H8-L1-R3はプライマーの混合物を表し、式中R=GまたはA、K=GまたはTである)
[00178]TAAGGAGTTCATCTGCAGGTACAGGRTGKTTTTGGA
ATCATCTCTTG
[00179] 4)6H8-L1-R4:配列番号43
[00180]GGGAGATTGGGTCATCTGAATGTCGCTAGCACCGC
CAC
[00181] 5)6H8-L1_R5:配列番号44(6H8-L1_R5はプライマーの混合物を表し、式中R=GまたはA、S=GまたはC、W=AまたはT、V=GまたはCまたはAである)
[00182]GGTGACCCTGTCGCCCACTGAGRSGGACAGGGWGG
VGGGAGATTGGGTC
[00183]hVLフォワードプライマーとしては、以下が挙げられる:
[00184] 1)6H8-L1_F4:配列番号45(6H8-L1_F4はプライマーの混合物を表し、式中M=AまたはC、W=AまたはTである)
[00185]GTGGGCGACAGGGTCACCMTCWCCTGCAAGGCCAGT
GAG
[00186] 2)6H8-L1_F6:配列番号46(6H8-L1_F6はプライマーの混合物を表し、式中Y=TまたはC、S=GまたはC、W=AまたはTである)
[00187]TCAGCAGTCTGCAGYCCGASGACWTCGCAACCTATT
ACTGTGGACAGAGTTAC
[00188] 3)6H8-L1_F5:配列番号47
[00189]CCGGCAGTGGATCTGGCACAGATTTCACTCTGACCA
TCAGCAGTCTGCAG
[00190]hVLリバースプライマーとしては、以下が挙げられる:
[00191] 1)6H8-L1_R6:配列番号48(6H8-L1_R6はプライマーの混合物を表し、式中H=AまたはCまたはT、K=GまたはTである)
[00192]GTTGGATGCCCCGTATATCAGCAGTTTAGGGGHCTK
GCCTGGTTTCTGTTG
[00193] 2)6H8-L1_R8:配列番号49
[00194]TTTGTTCTGCGGCCGCTTTTATTTCCAACTTTGTCC

[00195] 3)6H8-L1_R7:配列番号50(プライマー6H8-L1_R7は、プライマーの混合物であり、式中W=AまたはT、M=AまたはCである)
[00196]AGATCCACTGCCGGWGAAGCGGGMGGGGACCCCAGT
GTACCGGTTGGATGCCCC
[00197]方法および結果
[00198]標的フラグメントを、以下で設定した通りの以下の増幅スキームによって増幅し
た。
[00199] 第1の工程の増幅:5つのプライマーの対(6H8-L1-F1+6H8-L
1-R1、6H8-L1-F2+6H8-L1-R3、6H8-L1-F3+6H8-L1-R4、6H8-L1_F4+6H8-L1_R6、6H8-L1_F6+6H8-L1_R8)を使用して、実施例1で得られたpFL-6H8ベクターから、5つの第1の工程のフラグメントを増幅した。PCR反応条件を以下のように設定した:95℃、3分;(95℃、30秒、55℃、30秒、72℃、40秒)×40サイクル;72℃、10分。PCRの後、増幅されたフラグメントのサイズを、1%アガロースゲル電気泳動で決定し、次いでpMD18-Tベクター(TaKaRa)にライゲートした。ライゲーション生成物をコンピテント細胞に形質転換し、クローンを選択し、正しい挿入に関してスクリーニングした。シーケンシング結果に基づき、正しい配列を有するフラグメントをそれぞれ6H8-L1-1、6H8-L1-2、6H8-L1-3、6H8-L1-4および6H8-L1-5と名付けた。
【0136】
[00200] 第2の工程の増幅:上記で得られた5つの第1の工程のフラグメント(6H
8-L1-1、6H8-L1-2、6H8-L1-3、6H8-L1-4および6H8-L1-5)をテンプレートとして使用して、4つのプライマーの対(6H8-L1-F1+6H8-L1_R2、6H8-L1-F2+6H8-L1_R5、6H8-L1_F4+6H8-L1_R7、6H8-L1_F5+6H8-L1_R8)を使用して、第2の工程のフラグメントを増幅した。PCR反応条件は、第1の工程の増幅における条件と同じであった。PCRの後、PCR生成物を、1%アガロースゲル電気泳動を介して精製し、pMD18-Tベクター(TaKaRa)にライゲートし、コンピテント細胞に形質転換した。陽性クローンを選択し、正しい挿入に関してスクリーニングした。シーケンシング結果に基づき、正しい配列を有するフラグメントを、それぞれ6H8-L1-6、6H8-L1-9、6H8-L1-7および6H8-L1-8と名付けた。
【0137】
[00201] 第3の工程の増幅:第1の工程の増幅と同じ手順に従って、上記で得られた
2つの第2の工程のフラグメント(6H8-L1-6および6H8-L1-9)をテンプレートとして使用して、プライマーの対(6H8-L1-F1+6H8-L1_R5)を使用して、第3の工程のフラグメント(6H8-L1-10)を得た。上記で得られた2つの第2の工程のフラグメント(6H8-L1-7および6H8-L1-8)をテンプレートとして使用して、プライマーの対(6H8-L1_F4+6H8-L1_R8)を使用して、第3の工程のフラグメント(6H8-L1-11)を得た。
【0138】
[00202] 第4の工程の増幅:第1の工程の増幅と同じ手順に従って、上記で得られた
第3の工程のフラグメント(6H8-L1-10および6H8-L1-11)をテンプレートとして使用して、プライマーの対(6H8-L1-F1+6H8-L1_R8)を使用して、第4の工程のフラグメント(6H8-L1-12)を得た。
【0139】
[00203]6H8-L1-12フラグメントを制限酵素NcoI-HFおよびNotI-
HF(NEB)で消化し、それに続いて1%アガロースゲル電気泳動を介して分離し、次いで消化されたフラグメントを、ゲル抽出キット(オメガバイオテック)によって精製した。精製され消化されたフラグメントを、ファージベクターpComb3Xss(ファージベクターの骨格に前もって加工されたc-myc融合タンパク質を包含する)を用いてライゲートしたこれは、T4DNAリガーゼ(TaKaRa)により同じセットの制限酵素(すなわち、NcoI-HFおよびNotI-HF)で消化される。ライゲーション生成物を脱イオン化し、次いでエレクトロポレーションを介してTG1コンピテント細胞に形質転換した。形質転換したTG1細胞を、クローンスクリーニングのためにLBプレート上に植え付けた。6H8-L1抗体ファージライブラリーの能力を記録し、さらなる使用のためにライブラリーを-80℃で貯蔵した。
【0140】
[00204]6H8-L1抗体ファージライブラリーの抗原特異性のパニングを、以下の工
程を用いた固相パニングによって行った。
[00205]6H8-L1抗体ファージライブラリーを60mlの2YT培地中で回復させ
、振盪インキュベーター中、37℃で、培養物のOD600が0.3~0.4に達するまでインキュベートした。M13KO7ヘルパーファージ(インビトロジェン(Invitrogen))を添加し、培養物を静止したインキュベーター中で30分インキュベートし、振盪インキュベーター中、37℃で60分インキュベートした。培養物を、1500rpmで10分遠心分離し、上清を捨て、細胞を、60mlの50μg/mlカナマイシンを含有する2YT培地(グルコース非含有)で再懸濁した。再懸濁した培養物を、振盪インキュベーター中、30℃で一晩インキュベートし、12,000rpmで10分遠心分離して、ファージディスプレイライブラリーを含有する細菌を沈殿させた。上清を新しい遠心管に移し、30ml/チューブのロットに等分し、7.5mlのPEG/NaClを各遠心管に添加し、よく混合し、氷上に1時間置き、12000rpmで5分遠心分離し、上清を
捨て、ファージを、PBS-5%BSAを含有する溶液2.2mlで再懸濁した。再懸濁したファージを、12000rpmで再度5分遠心分離して、死細胞片を除去した。
【0141】
[00206]ヒトベイシジンでコーティングされたプレートを使用して、5ラウンドのパニ
ング(結合-洗浄-増幅)で親和性パニングを実行した。ここでパニングのラウンドごとに、抗原のコーティング濃度を次第に減少させた(1μg/ml、0.1μg/ml、0.01μg/ml、0.001μg/ml、0.0001μg/ml)。シグナル対ノイズ比(S/N)が10.768未満になったときパニング実験を終わらせ、クローンを選択し、選択されたクローンを培養し、誘導して、scFv抗体を発現させて、これをELISA分析に使用した。
【0142】
実施例5:ELISAおよびシーケンシング分析
[00207]ヒトベイシジンを、コーティング緩衝液(200mMのNaCO/NaHC
、pH9.2)で1μg/mlに希釈し、そのうち50μlを96ウェルプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。各ウェル中のコーティング溶液を捨て、プレートを、1×PBS緩衝液で3回洗浄し、1ウェル当たり200μlのブロッキング緩衝液(2%BSA/1×PBS緩衝液)で室温で1時間ブロックし、次いで1ウェル当たり200μlの1×PBS緩衝液で洗浄した。プレートの個々のウェルにScFv抗体および陰性対照を含有する細胞培養上清を添加し、室温で2時間インキュベートした。次いでプレートを200μlの1×PBS緩衝液で3回洗浄した。ブロッキング緩衝液で(1:2500に)希釈された二次抗体としての抗c-MycAb(HRP)(Abcamカタログ番号ab19312、50μl/ウェル)をプレートの個々のウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いでプレートを200μlの1×PBS緩衝液で6回洗浄した。TMB基質溶液(50μl/ウェル)を各ウェルに添加して、10分反応させ、停止溶液(2MのHCl、50μl/ウェル)を添加して反応を終わらせた。450nmにおける吸光度をELISAプレートリーダーで読んだ。ELISAの結果に従って、シーケンシング分析のためにA450>2.0の123個のクローンを選択した。
【0143】
[00208]シーケンシングからのDNA配列の結果を、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系デ
ータベースおよびウェブサイトhttp://www.bioinf.org.uk/abs/shab/を参照して、ヒト化の度合いに関して評価した。親和性ソーティングのために、最も高い程度にヒト化された26個のscFV分子を選択した。
【0144】
実施例6:SPRによるscFv結合親和性の決定
[00209]抗体の親和性をProteOn XPR36(バイオ-ラッド(Bio-Rad))を用いて測定した。GLCチップ(バイオ-ラッド、1765011)を、0.04MのEDC+0.01Mのスルホ-NHS(バイオ-ラッド)で活性化した。ヒトベイシジンを、10mMのNaAc(pH4.5)を用いて10mMに希釈し、次いで30μl/分の速度でチップ上に注入し、活性化されたチップに抗原をアミノ基を介してカップリングした。最終的に、チップを1Mのエタノールアミン-HCl(バイオ-ラッド)で不活性化し、チップを90度回転させ、それを、ベースラインが安定になるまで緩衝液(PBS/0.005%のTween20)で洗浄した。scFv抗体および1つの陰性対照を含有する5つの細胞培養上清を、6つの水平のチャネル上に、それぞれ30μl/分の供給速度で注入した。結合のための時間を60秒と設定し、解離のための時間を900秒と設定した。反応速度論-ラングミュアモデルを使用してデータを分析した。
【0145】
[00210]ヒトベイシジンのscFv抗体を含有するTG1上清との結合をリアルタイム
でモニターするために、SPRを使用した。全てのスクリーニングした抗体の会合速度定数(Kon)は同等であったため、抗体の結合親和性を決定するのにKの代わりに解離速度定数(Koff)を使用した。ヒトベイシジンのヒト化されたscFv抗体との結合
親和性をKoffに従って事前に評価した。表1に結果を示す。
【0146】
[00211]
【0147】
【表1】
【0148】
[00212]他の特徴を考慮して、それぞれインタクトな抗体を構築するためにより相対的
に低いKoff値を有するものから、5つのヒト化されたscFv(すなわち、11188、11214、11242、11245および11305)を選択した。
【0149】
実施例7:インタクトなヒト化抗体の構築
[00213]以前の親和性ソーティングの結果に従って、選択されたscFvを有する5つの
クローンを一晩植え付けた。一晩の培養物のそれぞれからプラスミドを抽出し、それらの配列をシーケンシングによって確認した。
【0150】
[00214]以下のプライマーを、インタクトなヒト化抗体を生成するためのヒト化された
重鎖可変領域(VH)およびヒト化された軽鎖可変領域(VL)の増幅のために使用した:
[00215]VLフォワードプライマー:PCI-wbp229_F1、配列番号51
[00216]GCTCCCCGGGGCGCGCTGTGACATTCAGATGACCCA
ATC
[00217]VLリバースプライマー:pCI-6H8_R8、配列番号52
[00218]GGTGCAGCCACCGTACGTTTTATTTCCAACTTTGTC
CCCGAG
[00219]VHフォワードプライマーとしては、以下が挙げられる:
[00220]1)PCI-wbp229_F2:配列番号53
[00221]CTCTCCACAGGTGTACACTCCGAAGTGCAGCTTCTG
GAGTC
[00222]2)PCI-wbp229_F3:配列番号54
[00223]CTCTCCACAGGTGTACACTCCGAAGTGCAGCTTGTG
GAGTC
[00224]3)6H8-L1_R2:配列番号55
[00225]CCCTGGAGCCTGGCGGACCCAGTTCATCCAGAAGTT
ACTGAAAGTGAATCCAG
[00226]4)6H8-L1_R5:配列番号56
[00227]GGTGACCCTGTCGCCCACTGAGRSGGACAGGGWGGV
GGGAGATTGGGTC
[00228]VHリバースプライマー:PCI-wbp229_R1、配列番号57を参照

[00229]GGGCCCTTGGTCGACGCTGCAGAGACAGTGACCAGA
GTC
[00230]標的フラグメントを、以下で設定した通りの以下の増幅スキームによって増幅
した:
[00231]11188からのプラスミドをテンプレートとして使用し、プライマー対(PC
I-wbp229_F1+pCI-6H8_R8およびPCI-wbp229_F2+PCI-wbp229_R1)を使用して、インタクトなヒト化抗体WBP229-201のためにVLおよびVH領域を増幅した。
【0151】
[00232]11214からのプラスミドをテンプレートとして使用し、プライマー対(P
CI-wbp229_F1+pCI-6H8_R8およびPCI-wbp229_F2+PCI-wbp229_R1)を使用して、インタクトなヒト化抗体WBP229-202のためにVLおよびVH領域を増幅した。
【0152】
[00233]11242からのプラスミドをテンプレートとして使用し、プライマー対(P
CI-wbp229_F1+pCI-6H8_R8およびPCI-wbp229_F3+PCI-wbp229_R1)を使用して、インタクトなヒト化抗体WBP229-203のためのVLおよびVH領域を増幅した。
【0153】
[00234]11245からのプラスミドをテンプレートとして使用し、プライマー対(P
CI-wbp229_F1+pCI-6H8_R8およびPCI-wbp229_F2+PCI-wbp229_R1)を使用して、インタクトなヒト化抗体WBP229-204のためのVLおよびVH領域を増幅した。
【0154】
[00235]11305からのプラスミドをテンプレートとして使用し、プライマー対(P
CI-wbp229_F1+pCI-6H8_R8およびPCI-wbp229_F3+PCI-wbp229_R1)を使用して、インタクトなヒト化抗体WBP229-205のためのVLおよびVH領域を増幅した。
【0155】
[00236]PCRの後、増幅されたフラグメントを1%アガロースゲル電気泳動で分離し
、期待されるサイズにおけるバンドを回収し、精製した。
[00237]精製されたVL/VHフラグメントをNgoMIVおよびSnaBIで消化し
、消化されたフラグメントをDNA精製キットで精製し、次いで哺乳類発現ベクターである、(hIgG2重鎖定常領域またはヒトκ鎖定常領域)遺伝子を包含するpCI-ベクターにライゲートし、これを同じ酵素で消化した。ライゲーション生成物をTOP10大腸菌(E. coli)細胞(インビトロジェン)に形質転換し、形質転換した細胞を100μ
g/mlのアンピシリンを含むLB寒天プレート上に塗り広げた。次いで100μg/mlのアンピシリンを含むLB液状培地中に陽性クローンをを植え付け、シーケンシングによってクローンを検証した後、Midi-Prepプラスミド抽出キット(キアゲン(QIAGEN))を使用することによってクローンプラスミドを抽出した。調製したプラスミドを、それぞれpCI-WBP229-201LおよびpCI-WBP229-201H、pCI-WBP229-202LおよびpCI-WBP229-202H、pCI-WBP229-203LおよびpCI-WBP229-203H、pCI-WBP229-204LおよびpCI-WBP229-204H、pCI-WBP229-205LおよびpCI-WBP229-205Hと名付け、これらのそれぞれは、インタクトなヒト化抗体を生産するために完全な軽鎖遺伝子または完全な重鎖遺伝子を含有する。
【0156】
実施例8:細胞の一過性トランスフェクションおよび抗体精製
[00238]HEK293細胞(細胞1.0×10個/ml)を、インビトロジェンからの
フリースタイルマックス試薬(Freestyle Max Reagent)トランスフェクション試薬を使
用することによって、1つの軽鎖遺伝子および1つの対応する重鎖遺伝子を含有するプラスミドの対(例えば、pCI-WBP229-201L/H~205L/H)と共にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、振盪インキュベーター中、37℃、5%COで、さらに120rpmの回転速度で植え付けた。トランスフェクションから7日後に遠心分離によって培養上清を収集し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムを使用して、上清から標的抗体を単離および精製した。最も高いヒト化抗体を生産した以下の3つの培養物を選択した。
【0157】
[00239]1)配列番号3の重鎖可変領域のアミノ酸配列、および配列番号16の軽鎖可
変領域のアミノ酸配列を有するHP6H8-1(pCI-WBP229-205L/Hに相当)。
【0158】
[00240]2)配列番号5の重鎖可変領域のアミノ酸配列、および配列番号18の軽鎖可
変領域のアミノ酸配列を有するHP6H8-2(pCI-WBP229-204L/Hに相当)。
【0159】
[00241]3)配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列、および配列番号20の軽鎖可
変領域のアミノ酸配列を有するHP6H8-3(pCI-WBP229-203L/Hに相当)。
【0160】
実施例9:ヒト化抗hベイシジン抗体の結合親和性の決定
[00242]200ngのヒトベイシジン組換えタンパク質をELISAプレートにコーティ
ングし、4℃で一晩静置した。コーティングされたプレートを0.1%BSAで室温で1時間ブロックした。実施例8で得られた3種の抗体を、親マウスモノクローナル6H8およびキメラ抗体c6H8と共に、それぞれ10,100、1,000、10,000および100,000ng/mlの勾配濃度を有する5種の溶液を用いて調製した。100μlの各溶液を個々のウェルに添加し、プレートを室温で1時間静置した。二次抗体として、100μlの1:4,000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒト軽鎖定常領域(ミリポア(Millipore))を添加し、室温で1時間静置した。次いでプレートを200μlの1×PBS緩衝液で3回洗浄し、TMB基質溶液(50μl/ウェル)を各ウェルに添加して、10分反応させ、停止溶液(2MのHCl、50μl/ウェル)を添加して反応を終わらせた。450nmにおける吸光度をELISAプレートリーダーで読んだ。
【0161】
[00243]結果に従って、3種のヒト化抗体およびキメラ抗体c6H8は、親マウス抗体
6H8と比較して、ヒトベイシジンに対して、より有意に高い親和性を示した(図3)。
[00244]3種のヒト化抗体、マウス抗体6H8およびキメラ抗体c6H8の結合親和性
もSPRによって決定し(詳細な工程については実施例6の説明を参照されたい)、表2にデータを示した。
【0162】
[00245]
【0163】
【表2】
【0164】
[00246]図3および表2で示されるように、ヒト化抗体の結合親和性は、親マウス抗体
6H8の結合親和性より高かった。ヒトにおけるヒト化抗体の免疫原性は、親マウス抗体6H8の免疫原性より低く、ヒト化抗体の安定性は、親マウス抗体6H8の安定性より優れている。
【0165】
実施例10:高度に効率的なヒト化抗hベイシジン抗体の発現ベクターの構築および安定な発現細胞株のスクリーニング
[00247]実施例9の結果に従って、HP6H8-1の遺伝子配列を、高度に効率的なヒト
化抗体の発現ベクターの構築に使用した。
【0166】
[00248]1.軽鎖遺伝子の発現ベクターの構築
[00249]HP6H8-1のVL領域をコードする遺伝子配列を合成し、XbaIおよびB
siWIの制限酵素認識部位をそれぞれ配列の5’および3’末端に付加した。合成された分子および軽鎖定常遺伝子を有するpcDNA3.3-LC-104new-Mプラスミドを制限酵素XbaIおよびBsiWIで消化した。消化された生成物を1%アガロースゲル電気泳動で分離し、期待されるサイズにおけるバンドを回収し、精製した。精製したフラグメント(合成分子由来の416bpのフラグメントおよびpcDNA3.3-LC-104new-Mプラスミド由来の5,712bpのフラグメント)をT4リガーゼを使用することによってライゲートし、反応ミックスを16℃で20分維持した。20μlのライゲーション溶液のうち10μlを使用して、大腸菌TOP10コンピテント細胞(インビトロジェン)を形質転換した。PCR分析、酵素消化分析およびシーケンシングによって形質転換したコロニーを確認した後、1つの正しいモノクローンを、220rpmの振盪インキュベーターにおいて200mlのLB培地中で37℃で一晩植え付けた。プラスミドを抽出し、pcDNA3.3-LC-N-229-205と名付けた(図4に示す)。
【0167】
[00250]2.重鎖遺伝子の発現ベクターの構築
[00251]同様に、HP6H8-1のVH領域をコードする遺伝子配列を合成し、XbaI
およびNheIの制限酵素認識部位をそれぞれ配列の5’および3’末端に付加した。合成された分子および重鎖定常遺伝子を有するpOptivec-HC-208-Mプラスミドを制限酵素XbaIおよびNheIで消化した。消化された生成物を1%アガロースゲル電気泳動で分離し、期待されるサイズにおけるバンドを回収し、精製した。精製したフラグメント(合成分子由来の434bpのフラグメントおよびpOptivec-HC-208-Mプラスミド由来の5,364bpのフラグメント)をT4リガーゼを使用することによってライゲートし、反応ミックスを16℃で20分維持した。20μlのライゲーション溶液のうち10μlを使用して、大腸菌TOP10コンピテント細胞(インビトロジェン)を形質転換した。PCR分析、酵素消化分析およびシーケンシングによって形質転換したコロニーを確認した後、1つの正しいモノクローンを、220rpmの振盪
インキュベーターにおいて200mlのLB培地中で37℃で一晩植え付けた。プラスミドを抽出し、pOptivec-HC-D-229-205と名付けた(図5に示す)。
【0168】
[00252]3.CHO安定発現細胞株の構築およびスクリーニング
[00253]ヒト化抗体軽鎖の発現ベクターpcDNA3.3-LC-N-229-205お
よびヒト化抗体重鎖の発現ベクターpOptivec-HC-D-229-205を、フリースタイルマックス試薬(インビトロジェン)を使用することによってCHO/DHFR細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を初代継代し、細胞の生存率が85%を超えて回復するまで500μg/mlのG418を補充したOptiCHO培地でスクリーニングした。2ラウンドのスクリーニングを、500nMのMTXを含有するスクリーニング培地中で実行した。ClonePixFLを用いて単一のクローンを選択した。モノクローナル培養の7~10日の後、培養物上清中のHP6H8-1の発現レベルは、HTRF方法で測定したところ2.23±0.18g/Lであった(図6に示す)。
【0169】
実施例11:ヒト化抗hベイシジン抗体の特異性の決定
[00254]免疫組織化学的方法を使用して、抗体HP6H8-1の腫瘍組織への特異的な結
合を検出し、抗体の免疫組織化学的な交差反応性を調査した。内因性ペルオキシダーゼをブロックして不活性化するために3%Hを使用し、ブロックのために正常ヒツジ血清使用溶液を使用し、一次抗体としてHP6H8-1を使用し、二次抗体としてビオチン標識ウサギ抗ヒトFc抗体を使用し、標識試薬としてホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ストレプトマイシンアルブミン溶液を使用し、発色のためにDABを使用し、再染色のためにヘマトキシリンを使用した。サンプルを脱水した後、それを有するスライドを顕微鏡検査のためにマウントした。
【0170】
[00255]図7に結果を示した。抗体HP6H8-1の特異的な発色は、肺がん、肝臓が
ん、結腸がんおよび他の悪性腫瘍組織で観察されたが、正常な組織ではほとんど観察されなかった。様々な発色の程度を「++」または「+++」で示した。
【0171】
[00256]上記の結果から、CDRグラフト化に基づき本発明の開示で生成されたヒト化
抗体は、ヒトベイシジンを特異的に認識することができることが示される。
実施例12:インビトロにおけるHP6H8-1抗体を用いた抗マラリア性の試験
[00257]ヒト赤血球(O型)を、熱帯熱マラリア原虫株Dd2、3D7、FCC1および
Nf54それぞれで感染させた。感染率が≧1%であり、マラリアによる環状体が≧80%の場合、抗マラリア性の試験を実行した。培養物をモノクローナル抗体で希釈して、寄生虫血症の初期レベルを0.5%に設定し、新鮮な赤血球を添加して、初期のヘマトクリットを2%に設定し、モノクローナル抗体HP6H8-1を、それぞれ100、10、1、0.1、0.01μg/mlの濃度で添加して、各濃度勾配を3連で試験した。37℃で72時間培養した後、薄い血液塗抹標本を調製し、100倍の油浸顕微鏡下で観察して、寄生体の割合を数えた。実験を独立して3回繰り返し、結果を平均し、統計のためにSPSSで分析した。
【0172】
[00258]図8に、インビトロにおける熱帯熱マラリア原虫株Dd2、3D7、FCC1
およびNf54に対するヒト化HP6H8-1モノクローナル抗体の薬力学的結果を示した。抗体の投与から72時間後、ヒト化モノクローナル抗体HP6H8-1は、全ての熱帯熱マラリア原虫株に対して有意な抗マラリア性作用を示し、IC50は、それぞれ0.04、0.02、0.04、および0.05mg/mlであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022084832000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメントであって、重鎖可変領域(V)を含み、Vは、配列番号1のアミノ酸配列(EVQLXESGGGLVQPGGSLRLSCXASGFTFSNFWMNWVRQAPGKGLEWVXEIRLKSNNYATHYAESVKGRFTISRDDSKXXLYLQMNSLXTEDTXVYYCTSYDYEYWGQGTLVTVSA)を含み、ここで配列番号1の位置i(i=5、23、49、79、80、89、94)におけるXは、XHiと称され、XH5、XH23、XH49、XH79、XH80、XH89、XH94のそれぞれは、任意のアミノ酸であり得る、ヒト化抗ベイシジン抗体またはその抗原結合フラグメント。
【外国語明細書】