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特開2022-84843抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用の危険性を評価する方法、その検出試薬、およびその使用
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  • 特開-抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用の危険性を評価する方法、その検出試薬、およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084843
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用の危険性を評価する方法、その検出試薬、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20220531BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220531BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048589
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2020543661の分割
【原出願日】2017-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】516171001
【氏名又は名称】チャン グァン メモリアル ホスピタル,リンコウ
【氏名又は名称原語表記】Chang Gung Memorial Hospital,Linkou
【住所又は居所原語表記】No.5,Fusing St.,Guishan Dist.,Taoyuan City,33305,Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】520144934
【氏名又は名称】ホン,シュエン-ユ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン,シュエン-ユ
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ウェン-ホン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発された薬剤による皮膚副作用の危険性を評価する方法を提供する。前記皮膚副作用は、播種状紅斑丘疹、固定薬疹、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹を含む。
【解決手段】HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルと、HLA-B*1502アレルと、の存在を検出するステップを含み、HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルとHLA-B*1502アレルとの存在は、HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルとHLA-B*1502アレルとが存在しない患者と比べて、患者における薬剤による皮膚副作用の発症の危険性が高いことを示し、かつ、前記薬剤が抗てんかん薬ラモトリギンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルと
、HLA-B*1502アレルと、の存在を検出するステップを含み、
HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルと
HLA-B*1502アレルとの存在は、HLA-A*0207、HLA-B*1502
、またはHLA-A*0207アレルとHLA-B*1502アレルとが存在しない患者
と比べて、患者における薬剤による皮膚副作用の発症の危険性が高いことを示し、かつ、
前記薬剤が抗てんかん薬ラモトリギンである、患者における薬剤による皮膚副作用の発
症の危険性を評価する方法。
【請求項2】
前記薬剤による皮膚副作用が以下の副作用:播種状紅斑丘疹(MPE)、固定薬疹(F
DE)、およびスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TE
N)、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹(DRESS)の少なくとも一つを含む
、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレ
ルとHLA-B*1502アレルとを、患者の末梢血から調製したDNA、RNA、タン
パク質、細胞、または血清検体から検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルと
HLA-B*1502アレルとの存在を検出する剤を含み、
HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルと
HLA-B*1502アレルとの存在は、HLA-A*0207、HLA-B*1502
、またはHLA-A*0207とHLA-B*1502アレルとが存在しない患者と比べ
て、患者における薬剤による皮膚副作用の発症の危険性が高いことを示し、かつ、
前記薬剤が抗てんかん薬ラモトリギンである、患者における薬剤による皮膚副作用の発
症の危険性を評価する検出試薬。
【請求項5】
前記薬剤による皮膚副作用が以下の副作用:播種状紅斑丘疹(MPE)、固定薬疹(F
DE)、およびスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TE
N)、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹(DRESS)の少なくとも一つを含む
、請求項4に記載の検出試薬。
【請求項6】
前記剤が、HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*020
7アレル、およびHLA-B*1502アレルと特異的にハイブリダイズするオリゴヌク
レオチドを含む、請求項4に記載の検出試薬。
【請求項7】
抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発された薬剤による皮膚副作用を発症する危険性を
評価するための検出試薬の製造における、HLA-A*0207、HLA-B*1502
、またはHLA-A*0207アレルとHLA-B*1502アレルとを検出するための
剤の使用。
【請求項8】
前記剤が、HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*020
7アレル、およびHLA-B*1502アレルと特異的にハイブリダイズするオリゴヌク
レオチドを含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記薬剤による皮膚副作用が以下の副作用:播種状紅斑丘疹(MPE)、固定薬疹(F
DE)、およびスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TE
N)、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹(DRESS)の少なくとも一つを含む
、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚副作用発症の危険性を評価する方法、より具体的には抗てんかん薬ラモト
リギンにより誘発される皮膚の副作用発祥の危険性を評価する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬剤による皮膚副作用(CADR)は、播種状紅斑丘疹(MPE)、固定薬疹(FDE
)から、好酸球増加と全身症状を伴う薬疹(DRESS)、スティーヴンス・ジョンソン
症候群(Stevens Johnson Syndrome、SJS)、および中毒性
表皮壊死症(TEN)などの重症皮膚副作用(SCAR)に及ぶ非常に様々な症状に関す
る重要な臨床疾患である。MPEは最も一般的な薬疹であり、通常散在した紅斑と丘疹か
ら始まり、さらにびまん性紅斑へと合併する。固定薬疹(FDE)は患者が同じ薬を服用
した後に、毎回同じ位置に噴き出る薬疹を指す。最も一般的な位置は、顔、唇、外性器、
および四肢である。症状は通常、かゆみと痛みとを伴う円形または楕円形の赤紫斑である
。斑は一つまたは複数の場合があり、より重篤な場合は大きな水疱となることがある。急
性期の後に、茶色がかった黒色の色素沈着が残る。スティーヴンス・ジョンソン症候群(
SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、熱、のどの痛み、唇の腫れなどを含む通
常の風邪の症状と似た前駆症状を有し、続いて全身紅斑、水疱、および目、口、性器内の
炎症性、潰瘍性粘膜が急に噴出する。さらに重篤な場合、患者は全身が焼かれたように見
える。SJSとTENの最も大きな違いは、前者においては表皮剥離が体表面積の10%
未満であるのに対し、TENは30%より多い表皮剥離を有する。好酸球増加と全身症状
とを伴う薬疹(DRESS)の主要な臨床的特徴は、熱、皮膚発疹、血中の好酸球の増加
、リンパ節腫脹、および内臓病変を含む。最も一般的かつ重篤な臓器病変は肝臓で、劇症
肝炎を引き起こす可能性があり、この患者における最も一般的な死因である。他の臓器病
変としては、腎炎、心筋炎、肺炎、および甲状腺炎が挙げられる。
【0003】
副作用は多くの場合、免疫応答に関連している。患者が特定の薬にアレルギーを持ち、
その薬を服用した場合、二度目の副作用はより急速かつより重篤に発症する。しかしなが
ら、免疫機構は非常に複雑である。例えば、HLA-Aは300を超える遺伝子型を有し
ており、HLA-Bは600を超える遺伝子型を有している。従って、副作用を明確に示
す免疫機構を探すのは困難である。
【0004】
ラモトリギン(LTG)(商号:LmitalTM、以下LTGという)は近年臨床の
場で利用可能となった抗てんかん薬である。その作用機序は電位感受性ナトリウムイオン
チャネルを阻害することによるもので、つまり、シナプス終末においてグルタミン酸の放
出を減少させ、神経安定化の効果をもたらす。従来の抗てんかん薬と比較して、LTGは
1980年代後半に開発された比較的新しい薬である。その構造は従来の抗てんかん薬と
やや異なり、トリアジン類に分類される。アメリカ食品医薬品局(FDA)の指示による
と、LTGは現在焦点発作、全般発作、レノックス・ガストー症候群、双極性障害1型の
治療に承認されている。一方で、他の適応外使用は体重減少、片頭痛、三叉神経痛、うつ
病が含まれる(Micromedex)。
【0005】
LTGは多くの種類のてんかんを治療するのに用いられうるにも関わらず、臨床の場に
おける副作用の発生率が高いため、その使用は制限されている。臨床の場において最も重
篤な副作用はSJS、TEN、DRESSなどの重症皮膚副作用である。DRESSは肝
不全、貧血、顆粒細胞の減少、血小板減少症、播種性血管内凝集、および好酸球増加とい
った全身反応をも引き起こす。従って、現在もなおLTGが誘発する薬剤による皮膚副作
用の危険性を評価する必要性がある。本発明は、この要求に応えるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用を発症す
る危険性を評価する方法を提供し、前記薬剤による皮膚副作用は、播種状紅斑丘疹(MP
E)、固定薬疹(FDE)、重症皮膚副作用(SCAR)を含み、前記SCARはスティ
ーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens Johnson Syndrome、S
JS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹(DRESS
)を含む。本発明は、HLA-B*1301アレルと、抗てんかん薬ラモトリギンにより
誘発される薬剤による皮膚副作用との関連の発見に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
詳細には、本発明は、HLA-A*0207アレルおよび/またはHLA-B*150
2アレルの存在を検出するステップを含む、患者において薬剤による皮膚副作用を発症す
る危険性を評価する方法を提供し、HLA-A*0207アレルおよび/またはHLA-
B*1502アレルの存在を皮膚副作用の危険性の指標とする。一実施形態では、薬は抗
てんかん薬ラモトリギンである。薬剤による皮膚副作用としては、播種状紅斑丘疹(MP
E)、固定薬疹(FDE)、スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮
壊死症(TEN)、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹(DRESS)からなる群
から選択された少なくとも一つの反応が挙げられる。一実施形態では、患者はHLA-A
*0207アレルを持つ。一実施形態では、患者はHLA-B*1502アレルを持つ。
他の実施形態では、患者はHLA-A*0207およびHLA-B*1502アレルを持
つ。
【0008】
一実施形態では、患者はHLA-A*0207アレルを持ち、皮膚副作用はスティーヴ
ンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹
である。一実施形態では、患者はHLA-A*0207アレルを持ち、皮膚副作用は播種
状紅斑丘疹または固定薬疹である。一実施形態では、患者はHLA-B*1502アレル
を持ち、皮膚副作用は播種状紅斑丘疹または固定薬疹である。一実施形態では、患者はH
LA-B*1502アレルを持ち、皮膚副作用は播種状紅斑丘疹、固定薬疹、または好酸
球増加と全身症状とを伴う薬疹である。一つの特定の実施形態では、患者はHLA-A*
0207およびHLA-B*1502アレルを持ち、皮膚副作用はスティーヴンス・ジョ
ンソン症候群、中毒性表皮壊死症、または好酸球増加と全身症状を伴う薬疹である。一つ
の特定の実施形態では、患者はHLA-A*0207およびHLA-B*1502アレル
を持ち、皮膚副作用は播種状紅斑丘疹または固定薬疹である。他の特定の実施形態では、
患者はHLA-A*0207、またはHLA-A*0207およびHLA-B*1502
アレルを持ち、皮膚副作用は播種状紅斑丘疹、固定薬疹、スティーヴンス・ジョンソン症
候群、中毒性表皮壊死症、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹からなる群から選択
される少なくとも一つの副作用を含む。
【0009】
本発明は、抗てんかん薬ラモトリギンから誘発される薬剤による皮膚副作用を発症する
危険性を評価する検出試薬の製造における、HLA-A*0207アレルおよび/または
HLA-B*1502アレルを検出する剤を提供する。前記剤は、HLA-A*0207
アレルおよび/またはHLA-B*1502アレルの存在を検出する。前記皮膚副作用と
しては、播種状紅斑丘疹、固定薬疹、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊
死症、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹からなる群から選択される少なくとも一
つの副作用が挙げられる。
【0010】
HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルお
よびHLA-B*1502アレルの存在は、患者が薬剤による皮膚副作用を発症する危険
性が、HLA-A*0207、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレ
ルおよびHLA-B*1502アレルを持たない被験者と比較して1倍より高い、2倍よ
り高い、3倍より高い、4倍より高い、5倍より高い、6倍より高い、7倍より高い、8
倍より高い、9倍より高い、10倍より高い、3倍から4倍より高い、1倍から4倍より
高いことを示している。
【0011】
アレルと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド法、血清型法、微量細胞障害
試験法のような当技術分野で知られているアレルの検出方法が、アレルのcDNA、RN
A、タンパク質生成物を検出する目的で用いられ得るが、これらに限定されない[Ken
neth D. McClatchey.Clinical Laboratory M
edicine.2002]。一実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは患者の末梢血
のDNAと特異的にハイブリダイズする。前記オリゴヌクレオチドはHLA-A*020
7アレルおよび/またはHLA-B*1502アレルの最も可変な配列に対して設計され
る。例えば、図1に示すように、HLA-A*0207アレルおよびHLA-B*150
2アレルのエキソン2(配列番号2)およびエキソン3(配列番号1)。
【0012】
一つの例示的な実施形態では、HLA-A*0207の存在を検出するのに用いられる
フォワードプライマーのオリゴヌクレオチド配列は5’-TCCGGAGTATTGGG
ACGGGGAGACACGGAAA-3’(配列番号3)であり、リバースプライマー
の配列は5’-TCAACTGCTCCGCCACATGGGCCGCCT-3’(配列
番号4)であり、プローブの配列は5’-TCCAGAGGATGTGTGGCT-3’
(配列番号5)および5’-TCCAGAGGATGTATGGCT-3’(配列番号6
)である。他の例示的な実施形態では、HLA-B*1502の存在を検出するのに用い
られるフォワードプライマーのオリゴヌクレオチド配列は5’-ATGGCGCCCCG
GG-3’(配列番号7)であり、リバースプライマーの配列は5’-TAGTAGCC
GCGCAGGTTCC-3’(配列番号8)であり、プローブの配列は5’-AACA
CACAGATCTACAAGG-3’(配列番号9)および5’-AACACACAG
ATCTCCAAGA-3’(配列番号10)である。他の実施形態では、患者の末梢血
からのRNA、タンパク質、細胞、または血清を用いて、血清型法または微量細胞障害試
験法が実行される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、HLA-A*0207アレルおよび/またはHLA-B*1502アレルの
存在を検出することにより、誘発される薬剤による皮膚副作用を発症する危険性を評価す
るための試薬を提供し、ここで、HLA-A*0207アレルおよび/またはHLA-B
*1502アレルの存在は薬剤による皮膚副作用を発症する危険性を示し、前記薬剤によ
る皮膚副作用としては、播種状紅斑丘疹、固定薬疹、スティーヴンス・ジョンソン症候群
、中毒性表皮壊死症、または好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹からなる群から選択され
る少なくとも一つの副作用が挙げられる。
【0014】
本発明で使用される用語「発明」および「本発明」は、広く本出願および特許請求の範
囲を指すことを意図している。これらの用語を含む記載は本出願の範囲または特許請求の
範囲に限定されないと理解されるべきである。本発明の実施例は本出願によって明示され
ており、本発明の内容によってではない。この概要は発明のさまざまな態様の高い水準で
の概説であり、以下のセクションにさらに示されるいくつかの概念の説明である。この概
要は、特許請求された出願の重要な、または必要不可欠な特徴を特定することを意図して
おらず、単に特許請求された出願の範囲を決定する目的のみに使用されることを意図して
いない。本出願の目的は、いずれかのまたはすべての図および各特許請求の範囲の適切な
部分を参照することにより理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、HLA-A*0207アレルおよびHLA-B*1502アレルのエキソン配列(エキソン2およびエキソン3)を示す。小文字の配列はエキソン2とエキソン3とを連結するイントロンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例
本発明は、抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用を発症す
る危険性を評価する方法を提供し、前記薬剤による皮膚副作用は、播種状紅斑丘疹(MP
E)、固定薬疹(FDE)、および重症皮膚副作用(SCAR)からなる群から選択され
る少なくとも一つの副作用を含み、前記SCARは、好酸球増加と全身症状とを伴う薬疹
(DRESS)、スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens Johnson
Syndrome、SJS)、または中毒性表皮壊死症(TEN)からなる群から選択
される少なくとも一つの重症皮膚副作用を含む。本発明は、HLA-A*0207、HL
A-B*1502またはHLA-A*0207およびHLA-B*1502といったHL
Aアレルが抗てんかん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用に関連する
という発見に関するものである。
【0017】
以下の実施例においては、ラモトリギンにより誘発された薬剤による皮膚副作用を有す
る26人の患者(SCAR、MPE、およびFDEの患者を含む)がHLAタイピングに
登録され、755人の正常な健康対照者と比較された。その結果、HLA-A*0207
、HLA-B*1502、またはHLA-A*0207アレルおよびHLA-B*150
2アレルがラモトリギン誘発の皮膚副作用と関連することが示された。HLA-A*02
07アレルに関して、ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用(CADR)
を有する26人の患者のうち、11人がこの遺伝子型を持っており(42.31%)、一
方、755人の正常な健康対照者(コントロール)のうち、200人のみがこの遺伝子型
を持っていた(16.82%)。これは、HLA-A*0207が、ラモトリギンにより
誘発されるCADRと関連していることを示している(CADR対コントロール:P=2
.48×10-3、オッズ比(OR)=3.63(1.63-8.08)、感度:42.
31%、特異度:83.18%)。HLA-B*1502アレルに関して、ラモトリギン
により誘発される薬剤による皮膚副作用(CADR)を有する26人の患者のうち、7人
がこの遺伝子型を持っており(26.92%)、755人の正常な健康対照者のうち、7
3人のみがこの遺伝子型を持っていた(10.70%)。これは、HLA-B*1502
が、ラモトリギンにより誘発されるCADRと関連していることを示している(CADR
対コントロール:P=1.2×10-2、オッズ比=3.44(1.40-8.46)、
感度:26.92%、特異度:90.33%)。HLA-A*0207およびHLA-B
*1502アレルのさらなる分析により、ラモトリギンにより誘発されるCADRの危険
性を評価する感度が有意に増加したことが示された(CADR対コントロール:P=4.
32×10-4、オッズ比=4.44(1.98-9.45)、感度:61.54%、特
異度:73.51%)。上記の結果は、HLA-A*0207、HLA-B*1502、
またはHLA-A*0207アレルおよびHLA-B*1502アレルの有無が抗てんか
ん薬ラモトリギンにより誘発される薬剤による皮膚副作用の発症の危険性を評価するため
に利用され得ることを示している。
【0018】
【表1】
【0019】
したがって、本発明は、HLA-A*0207アレルおよび/またはHLA-B*15
02アレルの存在を決定するステップを含む、薬を服用した後の患者が薬剤による皮膚副
作用を発症する危険性を評価する方法を提供し、ここで、HLA-A*0207アレルお
よび/またはHLA-B*1502アレルの存在は、薬剤による皮膚副作用の発症の危険
性の指標である。前記薬剤は抗てんかん薬ラモトリギンである。薬剤による皮膚副作用と
しては、播種状紅斑丘疹(MPE)、固定薬疹(FDE)、スティーヴンス・ジョンソン
症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、または好酸球増加と全身症状とを伴う
薬疹(DRESS)からなる群から選択される少なくとも一つの副作用が挙げられる。
【0020】
上記は本発明の好ましい実施態様の説明であり、本発明は詳細に説明され、本発明の対
象は前述の発明の思想および範囲を逸脱することなく変更および修正され得る。修正は以
下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。
図1
【配列表】
2022084843000001.app