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特開2022-84845管理サーバ、管理システム、及び管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084845
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】管理サーバ、管理システム、及び管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220531BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220531BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J3/32
H02J13/00 301A
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048818
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2020527389の分割
【原出願日】2019-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018122949
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】沖野 健太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蓄電装置の劣化度に基づいて、充放電制御の対象から除外する蓄電装置を選択する管理サーバ、管理システム及び管理方法を提供する。
【解決手段】管理システムにおいて、制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行うサーバを含む管理サーバは、少なくとも1つのプロセッサを備える。少なくとも1つのプロセッサは、特定処理と、選択処理と、通知処理と、を実行する。特定処理は、複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度を特定する。選択処理は、特定処理により特定された劣化度に基づいて、複数の蓄電装置の中から、制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する。通知処理は、選択処理により選択された除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を制御サーバに通知する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行う少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する選択処理と、
前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する通知処理と、を実行する管理サーバ。
【請求項2】
前記通知処理は、前記除外蓄電装置に対する充放電制御が禁止される旨を前記制御サーバに通知する処理を含む、
請求項1又は15に記載の管理サーバ。
【請求項3】
前記通知処理は、前記制御サーバによる充放電制御を禁止することを示す禁止設定情報を前記除外蓄電装置又は前記除外蓄電装置の制御装置に設定することにより、前記不可である旨の通知を行う処理を含む、請求項1又は15に記載の管理サーバ。
【請求項4】
前記禁止設定情報が制御装置に設定された場合であっても、前記制御装置による前記除外蓄電装置への充放電制御は許可される、
請求項3に記載の管理サーバ。
【請求項5】
前記選択処理は、前記複数の蓄電装置のうち前記除外蓄電装置が占める割合又は前記除外蓄電装置の数を所定閾値以下に維持しつつ、前記複数の蓄電装置の中から少なくとも1つの除外蓄電装置を選択する処理を含む、請求項1、3又は15に記載の管理サーバ。
【請求項6】
前記選択処理は、前記複数の蓄電装置のうち前記制御サーバによる充放電制御を許可する蓄電装置の数を一定数以上担保するように前記所定閾値を設定する処理を含む、請求項5に記載の管理サーバ。
【請求項7】
前記選択処理は、前記複数の蓄電装置のうち前記制御サーバによる充放電制御を許可する蓄電装置の合計の定格出力を一定値以上担保するように前記所定閾値を設定する処理を含む、請求項5に記載の管理サーバ。
【請求項8】
前記選択処理は、前記複数の蓄電装置のうち前記制御サーバによる充放電制御を許可する蓄電装置の合計の放電余力を一定値以上担保するように前記所定閾値を設定する処理を含み、
前記放電余力は、蓄電装置の定格出力のうち前記制御サーバによる充放電制御のために割り当てられた電力、又は蓄電装置の蓄電残量のうち前記制御サーバによる充放電制御のために割り当てられた電力量を表す、請求項5に記載の管理サーバ。
【請求項9】
前記選択処理は、経年時間に対する目標劣化度の関係を表す経年劣化速度に基づいて、前記複数の蓄電装置のそれぞれについて経年時間に対応する目標劣化度を特定する処理と、前記特定された劣化度と前記目標劣化度との比較結果に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から前記除外蓄電装置を選択する処理と、を含む請求項1乃至8、又は請求項15のいずれか1項に記載の管理サーバ。
【請求項10】
前記特定処理は、前記複数の蓄電装置のそれぞれについて、SOC(State of Charge)、温度、及び充放電電力の少なくとも1つを含む劣化要因パラメータを監視する処理と、前記監視している劣化要因パラメータに基づいて前記複数の蓄電装置のそれぞれの推定劣化度を特定する処理と、を含む請求項1乃至9、又は請求項15のいずれか1項に記載の管理サーバ。
【請求項11】
前記選択処理は、前記複数の蓄電装置がグループ分けされている場合に、前記除外蓄電装置の選択をグループごとに個別に行う処理を含む、請求項1乃至10、又は請求項15のいずれか1項に記載の管理サーバ。
【請求項12】
前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置について、前記制御サーバによる充放電制御を許可する特定時間帯を決定する決定処理をさらに備え、
前記通知処理は、前記除外蓄電装置に対する充放電制御が前記特定時間帯において許可される旨を前記制御サーバに通知する処理を含む、請求項1乃至11、又は請求項15のいずれか1項に記載の管理サーバ。
【請求項13】
前記決定処理は、前記制御サーバが電力系統の電力需給バランスを調整するための充放電制御を行う場合に、各時間帯における前記調整の必要性の高さを表す情報に基づいて前記特定時間帯を決定する処理を含む、請求項12に記載の管理サーバ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記蓄電装置から、前記蓄電装置の劣化に関連する情報を含むメッセージを受信する処理をさらに実行する、請求項1又は15に記載の管理サーバ。
【請求項15】
制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行う少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化健康度、健康状態、又はState of Health(SOH)を特定する特定処理と、
前記特定処理により特定された前記劣化健康度、前記健康状態、又は前記SOHに基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する選択処理と、
前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する通知処理と、を実行する管理サーバ。
【請求項16】
前記蓄電装置の制御装置が、前記蓄電装置が設けられる施設に設けられる、
請求項1又は15に記載の管理サーバ。
【請求項17】
前記蓄電装置の制御装置が、前記蓄電装置が設けられる施設の外部に設けられる、
請求項1又は15に記載の管理サーバ。
【請求項18】
制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行う少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する選択処理と、
前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する通知処理と、を実行する管理システム。
【請求項19】
制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる蓄電装置と、
前記蓄電装置に対する保守管理を行う管理サーバと、を備え、
前記蓄電装置は、前記蓄電装置の劣化に関する情報を前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、前記蓄電装置の劣化度に基づいて、前記蓄電装置を、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置として決定し、
前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する、
管理システム。
【請求項20】
制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行う少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記複数の蓄電装置のそれぞれの健康度、健康状態、又はState of Health(SOH)を特定する特定処理と、
前記特定処理により特定された前記健康度、前記健康状態、又は前記SOHに基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する選択処理と、
前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する通知処理と、を実行する管理システム。
【請求項21】
制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行うことを備え、
前記保守管理を行うことは、
前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択することと、
前記選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知することと、を備える管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理サーバ、管理システム、及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や家庭等の施設が有する分散型エネルギーリソースを統合的に制御して仮想的な1つの発電所のように機能させる技術であるVPP(Virtual Power Plant)が注目されている。かかる制御を行う事業者(「アグリゲータ」と称される)の制御サーバは、送配電事業者等の電力事業者からの要請に応じた統合制御を行う。
【0003】
また、特許文献1には、分散配置された複数の蓄電装置を統合制御するシステムが記載されている。特許文献1に記載のシステムでは、複数の蓄電装置の充放電を制御する装置が、当該複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度に応じて、当該複数の蓄電装置の中から放電又は充電させる蓄電装置を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-15875号公報
【発明の概要】
【0005】
第1の特徴に係る管理サーバは、制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行うサーバである。前記管理サーバは、少なくとも1つのプロセッサを備える。前記少なくとも1つのプロセッサは、特定処理と、選択処理と、通知処理と、を実行する。前記特定処理は、前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度を特定する処理を含む。前記選択処理は、前記特定処理により特定された前記劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する処理を含む。前記通知処理は、前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する処理を含む。
【0006】
第2の特徴に係る管理システムは、制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行うシステムを含む。前記管理システムは、少なくとも1つのプロセッサを備える。前記少なくとも1つのプロセッサは、特定処理と、選択処理と、通知処理と、を実行する。前記特定処理は、前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度を特定する処理を含む。前記選択処理は、前記特定処理により特定された前記劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する処理を含む。前記通知処理は、前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する処理を含む。
【0007】
第3の特徴に係る管理方法は、制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行うことを含む。前記保守管理を行うことは、前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度を特定することと、前記特定された前記劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択することと、前記選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知することと、を備える。
【0008】
第4の特徴に係る蓄電装置は、施設に設けられる。前記蓄電装置は、メモリおよび少なくとも1つのプロセッサを備える。前記メモリは、制御サーバからの制御を許可するか否かを示す外部制御設定情報を記憶する処理を実行する。前記少なくとも1つのプロセッサは、受信処理と、送信処理と、を実行する。前記受信処理は、前記施設の電力を管理する管理装置から、前記外部制御設定情報の送信を要求する要求メッセージを受信する処理を含む。前記送信処理は、前記要求メッセージの受信に応じて、前記外部制御設定情報を含む応答メッセージを前記管理装置に送信する処理を含む。ここで、前記外部制御設定情報は、前記管理装置から前記蓄電装置に対して設定不可とされた設定情報であってもよい。
【0009】
第5の特徴に係る管理装置は、施設の電力を管理する。前記管理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備える。前記少なくとも1つのプロセッサは、第1送信処理と、受信処理と、第2送信処理と、を実行する。前記第1送信処理は、制御サーバからの制御を許可するか否かを示す外部制御設定情報の送信を要求する要求メッセージを、前記施設に設けられる蓄電装置に送信する処理を含む。前記受信処理は、前記外部制御設定情報を含む応答メッセージを前記蓄電装置から受信する処理を含む。前記第2送信処理は、受信した外部制御設定情報に基づく情報を前記制御サーバに送信する処理を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る管理システムの構成を示す図である。
図2】実施形態に係る管理システムにおける通信路構成を示す図である。
図3】実施形態に係る蓄電装置の構成を示す図である。
図4】実施形態に係る管理サーバの構成を示す図である。
図5】実施形態に係る管理システムにおける動作シーケンスの一例を示す図である。
図6】実施形態に係る外部制御設定情報の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る管理システムにおける通信路構成の変更例を示す図である。
図8】実施形態の変更例に係る管理システムにおける動作シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
蓄電装置のユーザ及び/又は蓄電装置の保守管理を行う事業者(蓄電装置のメーカーでありうる)にとっては、蓄電装置のメーカーが保証する製品寿命が満たされることが重要である。また、制御サーバの充放電制御により、一処理の蓄電装置だけ劣化が早く進むことは好ましくない。
【0012】
しかしながら、アグリゲータは、電力事業者からの要請に応じた統合制御を行う責任を有するものの、蓄電装置の保守管理を行う責任を有しないケースがある。このため、制御サーバは、各蓄電装置の劣化を十分に考慮せずに充放電制御を行うことがありうる。
【0013】
よって、制御サーバが複数の蓄電装置を統合制御する場合、一処理の蓄電装置だけ劣化が早く進んでしまう可能性がある。極端な場合には、メーカーが保証する製品寿命を満たせない蓄電装置が発生する懸念がある。
【0014】
そこで、本開示は、制御サーバが劣化を考慮せずに複数の蓄電装置の統合制御を行う場合であっても、一処理の蓄電装置だけ劣化が早く進んでしまうことを回避可能とする管理サーバ、管理システム、及び管理方法を提供する。
【0015】
一実施形態に係る管理サーバは、制御サーバによる充放電制御の対象に含まれる複数の蓄電装置に対する保守管理を行うサーバである。前記管理サーバは、少なくとも1つのプロセッサを備える。前記少なくとも1つのプロセッサは、特定処理と、選択処理と、通知処理と、を実行する。前記特定処理は、前記複数の蓄電装置のそれぞれの劣化度を特定する処理を含む。前記選択処理は、前記特定処理により特定された前記劣化度に基づいて、前記複数の蓄電装置の中から、前記制御サーバによる充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する処理を含む。前記通知処理は、前記選択処理により選択された前記除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を前記制御サーバに通知する処理を含む。
【0016】
これにより、制御サーバが劣化を考慮せずに複数の蓄電装置の統合制御を行う場合であっても、一部処理の蓄電装置だけ劣化が早く進んでしまうことを回避可能とする管理サーバ、管理システム、及び管理方法を提供できる。
【0017】
一実施形態に係る管理システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0018】
(管理システム)
図1は、本実施形態に係る管理システム1の構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、管理システム1は、複数の施設100と、管理サーバ200と、制御サーバ300と、上位サーバ400とを有する。図1では、複数の施設100として、施設100A乃至300Cが例示されている。各施設100は同様の構成であるため、図1では施設100A乃至300Cのうち施設100Aの構成のみを示している。各施設100は、電力系統10に接続される。以下において、電力系統10から施設100への電力の流れを潮流と称する。また、施設100から電力系統10への電力の流れを逆潮流と称する。電力系統10から施設100への電力は、需要電力と称されることがある。
【0020】
施設100、管理サーバ200、制御サーバ300、及び上位サーバ400は、通信ネットワーク20に接続されている。例えば、通信ネットワーク20は、インターネットを含んでもよい。また、例えば、通信ネットワーク20は、VPN(Virtual Private Network)等の専用回線を含んでもよい。
【0021】
施設100は、計測装置110と、蓄電装置120と、負荷機器130と、EMS(Energy Management System)140とを有する。施設100は、太陽光発電装置等の分散電源をさらに有してもよい。
【0022】
計測装置110は、潮流量及び逆潮流量を計測する装置である。計測装置110は、計測データをEMS140に送信する。
【0023】
蓄電装置120は、充電及び放電を行う装置である。蓄電装置120は、リチウムイオン蓄電装置、鉛蓄電装置、又はニッケル・水素蓄電装置等を含む。蓄電装置120は、EMS140により制御される。また、蓄電装置120は、管理サーバ200との通信を行う。
【0024】
負荷機器130は、電力を消費する機器である。例えば、負荷機器130は、空調機器、照明機器、AV(Audio Visual)機器等を含む。
【0025】
EMS140は、施設100の電力を管理する装置である。EMS140は、蓄電装置120を制御する制御装置の一例である。EMS140は、負荷機器130の動作状態を制御してもよい。例えば、EMS140は、電気料金削減のためにピークカットを行ってもよい。このような場合、EMS140は、例えば、電力需要の低い夜間に充電を行い、電力需要の高くなる時間帯に放電を行うように蓄電装置120を制御する。これにより、EMS140はピーク電力を下げる。一方、VPP制御において、EMS140は、制御サーバ300からの制御メッセージに応じて蓄電装置120を制御する。
【0026】
管理サーバ200は、蓄電装置120の保守管理を行う装置である。管理サーバ200は、O&M(Operation and Maintenance)サービス提供者のサーバである。O&Mサービス提供者は、蓄電装置120の保守管理を行う事業者である。O&Mサービス提供者は、蓄電装置120のメーカーであってもよい。管理サーバ200は、特定のメーカーの蓄電装置120、又はO&Mサービス提供者との保守管理契約を有するユーザの蓄電装置120を管理対象とする。管理サーバ200は、蓄電装置120との通信を行い、蓄電装置120の遠隔監視を行う。管理サーバ200は、EMS140経由で蓄電装置120との通信を行ってもよい。
【0027】
制御サーバ300は、施設100の蓄電装置120の充放電を統合的に制御する装置である。制御サーバ300は、アグリゲータのサーバである。アグリゲータは、複数の施設100の分散型エネルギー設備を集約して電力管理を行う事業者である。アグリゲータは、電力系統10の電力需給バランスを取るための調整力を提供する。このようなアグリゲータはリソースアグリゲータと称されることがある。制御サーバ300は、リソースアグリゲータとの契約を有するユーザの施設100を制御対象とする。制御サーバ300は、上位サーバ400からの要請に応じて、要請された量の電力を調整するように蓄電装置120の充放電を制御する。具体的には、蓄電装置120の制御を指示する制御メッセージをEMS140に送信する。
【0028】
上位サーバ400は、電力系統10の電力需給バランスを取るために、潮流量又は逆潮流量の調整を制御サーバ300に要請する装置である。上位サーバ400は、電力事業者のサーバ、又は上位アグリゲータのサーバである。電力事業者には発電事業者、送配電事業者及び小売事業者等を含む。上位アグリゲータは、複数のリソースアグリゲータを統括する。上位サーバ400は、例えば太陽光発電量が多い時間帯について逆潮流量の削減を制御サーバ300に要請してもよい。また、上位サーバ400は、例えば太陽光発電量が少ない時間帯について潮流量の削減を制御サーバ300に要請してもよい。
【0029】
図2は、本実施形態に係る管理システム1における通信路構成を示す図である。
【0030】
図2に示すように、上位サーバ400は、制御サーバ300との通信を行う。上位サーバ400と制御サーバ300との間の通信には、OpenADR(Automated Demand Response)2.0に準拠するプロトコル又は独自の専用プロトコルを用いることができる。OpenADR2.0において、制御メッセージを送信する機能をVTN(Virtual Top Node)と称する。また、OpenADR2.0において、制御メッセージを受信する機能をVEN(Virtual End Node)と称する。上位サーバ400は、制御サーバ300に対して、潮流の制御を要求する潮流制御メッセージ(例えば、DR(Demand Response)要請又はDRイベント)を送信してもよい。或いは、上位サーバ400は、制御サーバ300に対して、逆潮流の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、絶対値(例えば、○○kW)で表されてもよく、相対値(例えば、○○%)で表されてもよい。
【0031】
制御サーバ300は、上位サーバ400及びEMS140との通信を行う。制御サーバ300とEMS140との間の通信には、OpenADR2.0に準拠するプロトコル又は独自の専用プロトコルを用いることができる。制御サーバ300は、EMS140に対して、潮流の制御を要求する潮流制御メッセージ(例えば、DR要請又はDRイベント)を送信してもよい。或いは、制御サーバ300は、EMS140に対して、逆潮流の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。
【0032】
EMS140は、制御サーバ300及び蓄電装置120との通信を行う。EMS140と蓄電装置120との間の通信には、ECHONET Lite(登録商標。以下同じ)に準拠するプロトコル、SEP(Smart Energy Profile)2.0、KNX、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。EMS140は、制御サーバ300からの制御メッセージに応じて蓄電装置120の充放電を制御する。具体的には、EMS140は、蓄電装置120の動作を設定するメッセージを蓄電装置120に送信する。これにより、EMS140は蓄電装置120を制御する。
【0033】
蓄電装置120は、EMS140及び管理サーバ200との通信を行う。蓄電装置120と管理サーバ200との間の通信には、独自の専用プロトコルを用いることができる。蓄電装置120は、EMS140からのメッセージに応じて充放電を行う。
【0034】
管理サーバ200は、蓄電装置120との通信を行い、蓄電装置120の遠隔監視を行う。管理サーバ200は、EMS140経由で蓄電装置120との通信を行ってもよい。また、管理サーバ200は、自身の管理下の複数の蓄電装置120のうち一部の蓄電装置だけ劣化が早く進むことを回避するための処理を行う。具体的には、管理サーバ200は、複数の蓄電装置120のそれぞれの劣化度を特定する。劣化度は、実際の劣化度であってもよい。或いは、劣化度は、推定された劣化度であってもよい。管理サーバ200は、特定された劣化度に基づいて、除外蓄電装置を選択する。除外蓄電装置とは、複数の蓄電装置120の中から制御サーバ300による充放電制御の対象から除外する蓄電装置である。更に、管理サーバ200は、選択された除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を制御サーバ300に通知する。
【0035】
但し、本実施形態において、管理サーバ200は、制御サーバ300との間に直接的な通信路を有していない。よって、管理サーバ200は、蓄電装置120及びEMS140を介して制御サーバ300に対する通知を行う。具体的には、管理サーバ200は、禁止設定情報を除外蓄電装置に設定する。禁止設定情報は制御サーバ300による充放電制御を禁止することを示す。これにより、管理サーバ200は除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨の通知を行う。蓄電装置120に設定された禁止設定情報はEMS140により読み出されて制御サーバ300に伝達される。或いは、管理サーバ200は、禁止設定情報をEMS140に設定する。禁止設定情報は制御サーバ300による充放電制御を禁止することを示す。これにより、管理サーバ200は除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨の通知を行う。EMS140に設定された禁止設定情報はEMS140から制御サーバ300に伝達される。以下においては、管理サーバ200が禁止設定情報を除外蓄電装置に設定する一例について説明する。
【0036】
制御サーバ300は、管理サーバ200により選択された除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である(禁止されている)旨の通知を受ける。このような場合、制御サーバ300は、当該除外蓄電装置に対する充放電制御を避ける。具体的には、制御サーバ300は、自身の配下の施設100のうち、除外蓄電装置を有する施設100を除外した後にVPP制御を行う。
【0037】
(蓄電装置)
図3は、本実施形態に係る蓄電装置120の構成を示す図である。
【0038】
図3に示すように、蓄電装置120は、蓄電池セル121と、PCS(Power Conditioning System)122と、通信部123と、記憶部124と、温度センサ125と、制御部126とを有する。PCS122には、通信部123、記憶部124、温度センサ125、及び制御部126のうち少なくとも1つが含まれていてもよい。
【0039】
蓄電池セル121は、PCS122から入力される電力を蓄える。また、蓄電池セル121は、PCS122に電力を出力する。
【0040】
PCS122は、放電時において、蓄電池セル121から入力される電力(直流)を交流に変換して出力する。また、PCS122は、充電時において、電力系統10から入力される電力(交流)を直流に変換して蓄電池セル121に出力する。PCS122は、SOC(State of Charge)及び充放電電力を計測する。更に、PCS122は、計測データを制御部126に出力する。
【0041】
通信部123は、EMS140との通信及び管理サーバ200との通信を行う。通信部123は通信モジュールを含む。例えば、通信部123は、ECHONET Liteに従ったメッセージをEMS140と送受信する。また、通信部123は、独自の専用プロトコルに従ったメッセージを管理サーバ200と送受信する。
【0042】
記憶部124は、各種の情報を記憶する。記憶部124はメモリを含む。記憶部124は、例えば、外部制御設定情報を記憶する。外部制御設定情報は、「許可」又は「禁止」を示す設定情報である。すなわち、外部制御設定情報は、制御サーバ300からの充放電制御を許可すること又は禁止することを示す設定情報である。以下において、「禁止」を示す外部制御設定情報を外部制御禁止設定情報と称することがある。記憶部124は、外部制御設定情報として「許可」をデフォルトの設定情報(初期情報)として記憶していてもよい。
【0043】
温度センサ125は、温度を計測し、計測データを制御部126に出力する。温度センサ125は、蓄電池セル121の温度を計測するものであってもよい。或いは、温度センサ125は、蓄電池セル121の周囲の温度を計測するものであってもよい。
【0044】
制御部126は、蓄電装置120が備える各構成を制御する。制御部126は、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部126は、通信部123がEMS140から受信したメッセージを解読する。更に制御部126は、当該メッセージに従ってPCS122を制御する。
【0045】
通信部123は、外部制御設定情報の送信を要求するメッセージを受信してもよい。このような場合、制御部126は、記憶部124に記憶された外部制御設定情報を読み出す。更に、制御部126は、読み出した外部制御設定情報を含む応答メッセージをEMS140に送信するように通信部123を制御する。
【0046】
通信部123は、管理サーバ200から外部制御設定情報(「禁止」)を受信してもよい。このような場合、制御部126は、記憶部124に記憶される外部制御設定情報を「禁止」に更新する。
【0047】
制御部126は、劣化要因パラメータを含むメッセージを管理サーバ200に送信するように通信部123を制御する。劣化要因パラメータは、SOC(State of Charge)、温度、及び充放電電力の少なくとも1つを含む。
【0048】
制御部126は、蓄電装置120の使用状況を示す情報を含むメッセージを管理サーバ200に送信するように通信部123を制御する。蓄電装置120の使用状況は、蓄電装置120の劣化度(SOH;State of Health)の特定に用いられる。蓄電装置120の使用状況を示す情報は、蓄電装置120の現在容量を示す情報を含んでもよい。蓄電装置120の現在容量は、例えば、AC実効容量(充電)、AC実効容量(放電)を含む。或いは、蓄電装置120の使用状況を示す情報は、蓄電装置120の現在抵抗値を示す情報を含んでもよい。或いは、蓄電装置120の使用状況を示す情報は、蓄電装置120の累積充電時間及び累積放電時間を示す情報を含んでもよい。或いは、蓄電装置120の使用状況を示す情報は、蓄電装置120の累積充電量を示す情報及び累積放電量を示す情報を含んでもよい。蓄電装置120の累積充電量を示す情報は、例えば、AC積算充電電力量計測値、AC瞬時充電電力量計測値、DC積算充電電力量計測値、DC瞬時充電電力量計測値、積算充電電力量計測値、瞬時充電電力計測値、及び瞬時充電電圧計測値のうちの少なくとも1つを含む。また、累積放電量を示す情報は、例えば、AC積算放電電力量計測値、AC瞬時放電電力量計測値、DC積算放電電力量計測値、DC瞬時放電電力量計測値、積算放電電力量計測値、瞬時放電電力計測値、及び瞬時放電電圧計測値のうちの少なくとも1つを含む。蓄電装置120の使用状況を示す情報は、蓄電装置120の累積充放電サイクル数を示す情報を含んでもよい。
【0049】
(管理サーバ)
図4は、本実施形態に係る管理サーバ200の構成を示す図である。
【0050】
図4に示すように、管理サーバ200は、データベース210と、通信部220と、制御部230とを有する。
【0051】
データベース210は、メモリ又は/及びHDD等の記憶媒体によって構成されている。データベース210は、制御部230における制御及び処理に用いられる情報及びデータを記憶する。データベース210は、管理サーバ200の管理下の蓄電装置120に関するデータを記憶する。蓄電装置120に関するデータは、施設100に設けられる蓄電装置120のスペックなどであってもよい。スペックは、蓄電装置120の初期容量(W)、初期抵抗値(Ω)、及び定格出力(W)であってもよい。スペックは、蓄電装置120の種別によって特定されてもよい。
【0052】
データベース210は、目標経年劣化速度を記憶していてもよい。目標経年劣化速度は、蓄電装置120の経年時間に対する目標SOHの関係を表す。例えば、目標経年劣化速度は、目標SOH/経年時間で表される。経年時間は、蓄電装置120の設置からの時間である。経年時間は、蓄電装置120の設置からの累積放電量及び累積充電量の合計値から推定されてもよい。或いは、経年時間は、蓄電装置120の設置からの累積放電時間及び累積充電時間の合計値から推定されてもよい。或いは、経年時間は、蓄電装置120の設置からの累積充放電サイクル数から推定されてもよい。目標SOHは、経年時間に対して予め定められるSOHの目標値である。目標経年劣化速度は、蓄電装置120毎に異なっていてもよい。
【0053】
通信部220は、通信モジュールによって構成されている。通信部220は、蓄電装置120との通信を行う。通信部220は、劣化要因パラメータを含むメッセージを蓄電装置120から受信する。劣化要因パラメータは、SOC(State of Charge)、温度、及び充放電電力の少なくとも1つを含む。また、通信部220は、蓄電装置120の使用状況を示す情報を含むメッセージを蓄電装置120から受信する。さらに、通信部220は、外部制御設定情報を含むメッセージを蓄電装置120に送信する。
【0054】
制御部230は、CPU等によって構成される。制御部230は、管理サーバ200が備える各構成を制御する。制御部230は、特定部231と、選択部232と、通知部233と、決定部234とを有する。特定部231、選択部232、通知部233、及び決定部234は、1つのCPUにより構成されてもよいし、複数のCPUにより構成されてもよい。
【0055】
特定部231は、データベース210が記憶している情報及び通信部220が受信した情報に基づいて、蓄電装置120のSOHを特定する。蓄電装置120のSOHは、SOH=(現在容量/初期容量)×100によって実測されてもよい。或いは、蓄電装置120のSOHは、SOH=(現在抵抗値/初期抵抗値)×100によって実測されてもよい。或いは、SOHは、所定周期(例えば、1回/2年)でメンテナンスモードを実行することによって実測されてもよい。
【0056】
蓄電装置120のSOHは、{(容量t1-劣化容量)/初期容量}×100によって推定されてもよい。容量t1は、タイミングt1で実行されたメンテナンスモードで実測される容量である。劣化容量は、タイミングt1と現在タイミングとの間における充放電電力(放電量及び充電量)×1kWh劣化率によって推定される。1kWh劣化率は、蓄電装置120の保証劣化率によって特定してもよい。例えば、蓄電装置120は、6000回の充放電サイクルで20%の劣化率が保証されてもよい。このような場合、1kWh劣化率は、1/3600で表されてもよい。蓄電装置120のSOHは、メンテナンスモード間のSOH劣化量及び充放電電力量から特定してもよい。メンテナンスモードは、タイミングt0、t1で実行される。
【0057】
蓄電装置120のSOHは、劣化要因パラメータに基づいて推定されてもよい。劣化要因パラメータは、SOC(State of Charge)、温度、及び充放電電力の少なくとも1つを含む。具体的には、蓄電装置120が劣化しやすい状況にあるか否かに応じて、将来的なSOHが推定されてもよい。例えば、蓄電装置120の温度が高温である場合を想定する。このような場合、蓄電装置120の充電又は放電を行うとSOHは悪くなる。このため、特定部231は、温度が定常的に高温である蓄電装置120又は高温である時間の割合が多い蓄電装置120の将来的なSOHとして低いSOHを推定してもよい。また、SOCがゼロ又はゼロに近い、すなわち蓄電残量が空又は空に近い場合を想定する。このような場合、蓄電装置120のSOHは悪くなる。このため、特定部231は、SOCがゼロ又はゼロに近い時間の割合が多い蓄電装置120の将来的なSOHとして低いSOHを推定してもよい。
【0058】
以下においては、実測SOH及び推定SOHを特に区別せずにSOHと称することもある。
【0059】
選択部232は、管理サーバ200の管理下の蓄電装置120の中から、特定部231により特定されたSOHに基づいて、制御サーバ300による充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する。選択部232は、管理サーバ200の管理下の蓄電装置120のうちSOHが最も悪い蓄電装置120を除外蓄電装置として選択してもよい。選択部232は、特定部231により特定されたSOHが悪い順に所定数抽出し、抽出した蓄電装置120を除外蓄電装置として選択してもよい。
【0060】
或いは、選択部232は、管理下の蓄電装置120のそれぞれについて、目標経年劣化速度に基づいて、経年時間に対応する目標SOHを特定してもよい。このような場合、選択部232は、特定部231により特定されたSOHと目標SOHとの比較結果に基づいて除外蓄電装置を選択してもよい。具体的には、選択部232は、特定されたSOHが目標SOHよりも悪い蓄電装置120について、劣化を抑制するために除外蓄電装置として選択してもよい。
【0061】
但し、除外蓄電装置を増やしすぎると、制御サーバ300が制御可能な蓄電装置120が少なくなり、十分な調整力を確保できなくなる可能性がある。そのため、除外に一定の制約を設けてもよい。具体的には、選択部232は、管理下の蓄電装置120のうち除外蓄電装置が占める割合又は除外蓄電装置の数を所定閾値以下に維持しつつ、管理下の蓄電装置120の中から少なくとも1つの除外蓄電装置を選択してもよい。
【0062】
ここで、選択部232は、管理下の蓄電装置120のうち制御サーバ300による充放電制御を許可する蓄電装置の数を一定数以上担保するように所定閾値を設定してもよい。例えば、管理下の蓄電装置120の数が「100」であり、制御サーバ300による充放電制御を許可する蓄電装置の数又は割合が「80」と定められている場合を想定する。このような場合、除外蓄電装置として選択可能な数又は割合は「20」である。或いは、選択部232は、所定閾値を設定してもよい。このとき、所定閾値は、管理下の蓄電装置120のうち制御サーバ300による充放電制御を許可する蓄電装置の合計の定格出力を一定値以上担保するように設定されてもよい。或いは、所定閾値は、管理下の蓄電装置120のうち制御サーバ300による充放電制御を許可する蓄電装置の合計の放電余力を一定値以上担保するように設定されてもよい。ここで、放電余力は、蓄電装置120の定格出力のうち制御サーバ300による充放電制御のために割り当てられた電力を表す。又は、放電余力は、蓄電装置120の蓄電残量のうち制御サーバ300による充放電制御のために割り当てられた電力量を表す。充放電制御を許可する蓄電装置の数、充放電制御を許可する蓄電装置の合計の定格出力、及び充放電制御を許可する蓄電装置の合計の放電余力は、O&Mサービス提供者とアグリゲータとの間の合意により予め定められる。
【0063】
管理下の蓄電装置120は、グループ分けされている場合を想定する。このような場合、選択部232は、除外蓄電装置の選択をグループごとに個別に行ってもよい。例えば、管理下の蓄電装置120は、グループAと、グループBとにグループ分けられていてもよい。グループAは、制御サーバA(アグリゲータA)の制御対象の蓄電装置120を含む。グループBは、制御サーバB(アグリゲータB)の制御対象の蓄電装置120を含む。このとき、選択部232は、グループAとグループBとで別々に除外蓄電装置を選択する。或いは、管理下の蓄電装置120が、地理的エリア(例えば電力管轄)ごとにグループ分けされる場合を想定する。このような場合、選択部232は、地理的エリアで別々に除外蓄電装置を選択する。
【0064】
通知部233は、選択部232により選択された除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を制御サーバ300に通知する。本実施形態において、通知部233は、外部制御禁止設定情報を除外蓄電装置に設定する。外部制御禁止設定情報は、制御サーバ300による充放電制御を禁止することを示す。これにより、通知部233は、除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨の通知を行う。具体的には、通知部233は、外部制御設定情報(「禁止」)を含むメッセージを除外蓄電装置に送信する。選択部232は、除外蓄電装置の再選択を所定の周期(例えば、1ヶ月ごと、半年ごと、1年ごと)で行ってもよい。例えば、除外に一定の制約が設けられる場合に、選択部232は、除外蓄電装置として選択する蓄電装置120を定期的に入れ替える。このような場合、通知部233は、除外蓄電装置としての選択が解除された蓄電装置120に対して、外部制御禁止設定情報(「許可」)を設定してもよい。外部制御禁止設定情報(「許可」)は、制御サーバ300による充放電制御を許可することを示す。
【0065】
決定部234は、除外蓄電装置として選択した蓄電装置120について、特定の時間帯に限って制御サーバ300による充放電制御を許可することとしてもよい。具体的には、決定部234は、選択部232により選択された除外蓄電装置について、制御サーバ300による充放電制御を許可する特定時間帯を決定する。決定部234が、制御サーバ300が電力系統の電力需給バランスを調整するための充放電制御を行う場合を想定する。この場合、決定部234は、各時間帯における調整の必要性の高さを表す情報に基づいて特定時間帯を決定する。調整の必要性の高さを表す情報とは、VPP制御に参加することにより得られる報酬(インセンティブ)であってもよい。例えば、決定部234は、電力需給バランスを調整する必要性が高い時間帯(すなわち、報酬が高い時間帯)を、制御サーバ300による充放電制御を許可する特定時間帯として決定する。このような場合、通知部233は、除外蓄電装置に対する充放電制御を特定時間帯において許可する旨を制御サーバ300に通知する。例えば、通知部233は、特定時間帯において、外部制御禁止設定情報(「許可」)を設定してもよい。外部制御禁止設定情報(「許可」)は、制御サーバ300による充放電制御を許可することを示す。
【0066】
決定部234は、除外蓄電装置について、温度情報(外気温など)に基づいて、その蓄電装置が劣化し難いと推定される時間帯を、制御サーバ300による充放電制御を許可する特定時間帯として決定してもよい。例えば、蓄電装置が劣化し難いと推定される時間帯は、除外蓄電装置に対応する温度が所定値以下である時間帯である。
【0067】
(動作シーケンスの一例)
図5は、本実施形態に係る管理システム1における動作シーケンスの一例を示す図である。
【0068】
図5に示すように、ステップS101乃至S103において、施設100A乃至100Cのそれぞれの蓄電装置120は、メッセージを管理サーバ200に送信する。メッセージには、自身の劣化に関連する蓄電装置情報を含む。蓄電装置情報は、SOC(State of Charge)、温度、及び充放電電力の少なくとも1つの劣化要因パラメータであってもよい。蓄電装置情報は、蓄電装置120の使用状況を示す情報であってもよい。
【0069】
ステップS104において、管理サーバ200は、各蓄電装置120から受信した蓄電装置情報に基づいて各蓄電装置120の劣化度を特定する。更に、管理サーバ200は、特定した劣化度に基づいて除外蓄電装置を選択する。ここでは施設100Aの蓄電装置120が除外蓄電装置として選択されたと仮定して説明を進める。
【0070】
ステップS105において、管理サーバ200は、施設100Aの蓄電装置120に対して、外部制御設定情報(「禁止」)を除外蓄電装置に設定する。外部制御設定情報(「禁止」)は、制御サーバ300による充放電制御を禁止することを示す。図6は、蓄電装置120に設定される外部制御設定情報の一例を示す図である。図6では、ECHONET Liteに準拠するフォーマットにより外部制御設定情報を設定する一例を示している。図6に示すように、外部制御設定情報は、蓄電装置120の新たな設定情報(「プロパティ」と称される)として追加されている。例えば、プロパティ名称が「外部制御設定」であり、「外部制御設定」のインデックス(EPC)が「0x**」である。「外部制御設定」は、「0x41」(許可)及び「0x42」(禁止)の値を取りうる。また、「アクセスルール」は、EMS140から設定が可能な「Set」及びEMS140から問い合わせが可能な「Get」のいずれが適用されるかを表す。「外部制御設定」は、「Set」が適用されず、「Get」のみ適用可能とされている。すなわち、EMS140は、「外部制御設定」を蓄電装置120に問い合わせて確認することはできるが、その内容を設定・変更することはできない。
【0071】
ステップS106において、施設100AのEMS140は、「外部制御設定」を問い合わせるGetメッセージを施設100Aの蓄電装置120に送信する。具体的には、Getメッセージは「外部制御設定」のEPCである「0x**」を含む。
【0072】
ステップS107において、施設100Aの蓄電装置120は、Getメッセージに応じて、「外部制御設定」を含むGet応答メッセージを施設100AのEMS140に送信する。Get応答メッセージは、「外部制御設定」のEPCである「0x**」と、設定内容である「0x42」(禁止)とを含む。
【0073】
ステップS108において、施設100AのEMS140は、Get応答メッセージにおいて、「外部制御設定」が「0x42」(禁止)に設定されていることに応じて、メッセージを制御サーバ300に送信する。当該メッセージは、施設100Aの蓄電装置120に対して制御サーバ300による充放電制御が禁止されることを示す情報を含む。当該メッセージは、蓄電装置外部制御不可の旨の情報と、施設100Aの識別子又は施設100Aの蓄電装置120の識別子とを含んでもよい。
【0074】
ステップS109において、制御サーバ300は、EMS140からのメッセージに応じて、施設100Aの蓄電装置120に対する充放電制御が不可である(禁止されている)ことを認識する。このとき、制御サーバ300は、施設100A(蓄電装置120)をVPP制御対象から除外する。
【0075】
ステップS110において、制御サーバ300は、上位サーバ400からの要請に応じて、VPP制御の対象とする施設100を選択する。ここで、制御サーバ300は、自身の配下の施設100(蓄電装置120)のうち、除外蓄電装置を除外した後に、制御する蓄電装置120を選択する。ここでは、施設100Bの蓄電装置120が選択されたと仮定して説明を進める。
【0076】
ステップS111において、制御サーバ300は、施設100BのEMS140に対して、潮流制御メッセージ又は逆潮流制御メッセージを送信する。潮流制御メッセージは、潮流の制御を要求するメッセージである。逆潮流制御メッセージは、逆潮流の制御を要求するメッセージである。
【0077】
(実施形態のまとめ)
本実施形態によれば、管理サーバ200は、管理下の蓄電装置120のそれぞれのSOHを特定する。管理サーバ200は、特定されたSOHに基づいて、管理下の蓄電装置120の中から除外蓄電装置を選択する。除外蓄電装置とは、制御サーバ300による充放電制御の対象から除外する蓄電装置である。更に、管理サーバ200は、選択された除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を制御サーバ300に通知する。これにより、制御サーバ300が劣化を考慮せずに蓄電装置120の統合制御を行う場合であっても、一部の蓄電装置だけ劣化が早く進んでしまうことを回避可能とすることができる。
【0078】
(変更例)
図7は、本実施形態に係る管理システム1における通信路構成の変更例を示す図である。以下において、上述の実施形態との相違点について説明する。
【0079】
図7に示すように、本変更例においては、制御サーバ300とEMS140との間に直接的な通信路が確立されていない。一方で、制御サーバ300と管理サーバ200との間、及び、管理サーバ200とEMS140との間に直接的な通信路が確立されている。また、管理サーバ200と蓄電装置120との間に直接的な通信路が確立されていない。
【0080】
管理サーバ200と制御サーバ300との間の通信、及び、管理サーバ200とEMS140との間の通信には、OpenADR2.0に準拠するプロトコル又は独自の専用プロトコルを用いることができる。
【0081】
このような通信路構成において、管理サーバ200は、制御サーバ300とEMS140との間でプロトコル変換を行う。例えば、管理サーバ200は、制御サーバ300からOpenADR2.0の制御メッセージを受信する。このような場合、管理サーバ200は、受信した制御メッセージのフォーマットを独自の専用プロトコルに変換してEMS140に送信する。
【0082】
また、管理サーバ200は、EMS140を介して蓄電装置120の遠隔監視を行う。管理サーバ200は、上述の実施形態と同様に、自身の管理下の複数の蓄電装置120のうち一部の蓄電装置だけ劣化が早く進むことを回避するための処理を行う。具体的には、管理サーバ200は、自身の管理下の各蓄電装置120の劣化度に基づいて、制御サーバ300による充放電制御の対象から除外する除外蓄電装置を選択する。更に、管理サーバ200は、選択された除外蓄電装置に対する充放電制御が不可である旨を制御サーバ300に通知する。
【0083】
本変更例において、管理サーバ200は制御サーバ300との間に直接的な通信路を有している。そのため、管理サーバ200は、制御サーバ300に対する直接的な通知を行うことができる。当該通知は、例えばOpenADR2.0のレポートメッセージであってもよい。当該メッセージは、蓄電装置外部制御不可の旨の情報と、除外蓄電装置の識別子又は当該除外蓄電装置を有する施設の識別子とを含んでもよい。
【0084】
図8は、本変更例に係る管理システム1における動作シーケンスの一例を示す図である。
【0085】
図8に示すように、ステップS201乃至S204において、施設100A乃至100Cのそれぞれの蓄電装置120は、メッセージを、対応するEMS140を介して管理サーバ200に通知する。当該メッセージは、自身の劣化に関連する蓄電装置情報を含む。
【0086】
ステップS205において、管理サーバ200は、各蓄電装置120の蓄電装置情報に基づいて各蓄電装置120の劣化度を特定する。更に、管理サーバ200は、特定した劣化度に基づいて除外蓄電装置を選択する。ここでは施設100Aの蓄電装置120が除外蓄電装置として選択されたと仮定して説明を進める。
【0087】
ステップS206において、管理サーバ200は、メッセージを制御サーバ300に送信する。当該メッセージは、制御サーバ300による充放電制御を禁止することを示す情報を含む。当該メッセージは、蓄電装置外部制御不可の旨の情報と、施設100Aの蓄電装置120の識別子又は施設100Aの識別子とを含んでもよい。
【0088】
ステップS207において、制御サーバ300は、管理サーバ200からのメッセージに応じて、施設100Aの蓄電装置120に対する充放電制御が不可である(禁止されている)ことを認識する。更に、制御サーバ300は、施設100A(蓄電装置120)をVPP制御対象から除外する。
【0089】
ステップS208において、制御サーバ300は、上位サーバ400からの要請に応じて、VPP制御の対象とする施設100を選択する。ここで、制御サーバ300は、自身の配下の施設100(蓄電装置120)のうち、除外蓄電装置を除外した後に、制御する蓄電装置120を選択する。ここでは、施設100Bの蓄電装置120が選択されたと仮定して説明を進める。
【0090】
ステップS209において、制御サーバ300は、施設100BのEMS140に対して、潮流制御メッセージ又は逆潮流の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信する。潮流制御メッセージは、潮流の制御を要求するメッセージである。逆潮流制御メッセージは、逆潮流の制御を要求するメッセージである。
【0091】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では特に触れていないが、除外蓄電装置に対する制御サーバ300による充放電制御が禁止された場合であっても、除外蓄電装置に対してEMS140が自発的に行う充放電制御は許可されてもよい。或いは、除外蓄電装置に対する制御サーバ300による充放電制御が禁止された場合、EMS140が自発的に行う充放電制御も禁止されてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、管理サーバ200がデータベース210を有するが、これに限定されるものではない。データベース210は、インターネット上に設けられたクラウドサーバであってもよい。
【0093】
上述の実施形態では特に触れていないが、EMS140は、必ずしも施設100内に設けられていなくてもよい。例えば、EMS140の機能の一部は、インターネット上に設けられたクラウドサーバによって提供されてもよい。すなわち、EMS140がクラウドサーバを含むと考えてもよい。
【0094】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0095】
本願は、日本国特許出願第2018-122949号(2018年6月28日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8