(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084899
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】組織内方成長を促進する医療用弁及び弁膜
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055446
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2020524014の分割
【原出願日】2018-09-12
(31)【優先権主張番号】62/579,760
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/129,671
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】カール ブサラッチ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ディー.キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】カイル ダブリュ.コラビート
(72)【発明者】
【氏名】カール エム.コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】コーディ エル.ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ メニーゴーツ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】フランク イー.マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】ビ ティー.ファム
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア エー.スプリンクル
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.ワーロップ
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン エル.ベネット
(57)【要約】
【課題】人工心臓弁装置に使用するための可撓性合成弁膜を提供する。
【解決手段】合成弁膜の上及び/又は中での組織内方成長を促進して助長するように構成された合成弁膜を有する中央開放式弁膜人工弁デバイス。弁膜は弁膜フレームに結合されて、生物学的身体構造に使用するのに適した人工弁を形成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁膜フレームと、
合成弁膜を含む弁膜構成体であって、各弁膜の上に、該弁膜フレームと該弁膜の間で組織の成長が助長されるような組織内方成長を促進するように構成された部分を含む弁膜構成体と
を含んでなる人工弁であって、
前記合成弁膜が、第1ゾーンと第2ゾーンとを有する多孔質膜を含み、前記合成弁膜の前記多孔質膜の前記第1ゾーン内に第1エラストマ系材料が含まれ、かつ、前記合成弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンには該第1エラストマ系材料が含まれず、さらに
前記合成弁膜が、その下地弁膜ベースに結合された組織内方成長カーテンを含み、該組織内方成長カーテンは組織内方成長を促進するように構成され、かつ、TFE/PMVE共重合体がエラストマ系材料を含む、人工弁。
【請求項2】
前記弁膜が、前記下地弁膜ベースに結合された複数の組織内方成長カーテンを含み、該複数の組織内方成長カーテンの各組織内方成長カーテンは組織内方成長を促進するように構成される、請求項1に記載の人工弁。
【請求項3】
前記複数の内方成長カーテンが、第1組織内方成長カーテンと第2組織内方成長カーテンとを含み、該第1組織内方成長カーテンは前記弁膜の前記下地弁膜ベースの第1側に結合され、かつ、該第2組織内方成長カーテンは前記弁膜の前記下地弁膜ベースの第2側に結合されている、請求項2に記載の人工弁。
【請求項4】
前記組織内方成長カーテンが多孔質膜を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項5】
前記組織内方成長カーテンがフッ素重合体膜を含む、請求項4に記載の人工弁。
【請求項6】
前記フッ素重合体膜が延伸フッ素重合体を含む、請求項5に記載の人工弁。
【請求項7】
前記延伸フッ素重合体膜がePTFEを含む、請求項6に記載の人工弁。
【請求項8】
前記組織内方成長カーテンが前記下地弁膜ベースに結合されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項9】
前記弁膜フレームが組織内方成長を促進するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項10】
組織が前記弁膜フレームを横切って前記弁膜上にまで成長するように助長される、請求項1~9のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項11】
前記弁膜フレームが組織内方成長促進材料で被覆される、請求項1~10のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項12】
前記組織内方成長促進材料が布帛である、請求項11に記載の人工弁。
【請求項13】
前記組織内方成長カーテンが前記下地弁膜ベースに接着剤で結合される、請求項1~12のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項14】
前記組織内方成長を促進するように構成された部分が前記弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンに結合される、請求項1~13のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項15】
前記組織内方成長カーテンが前記弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンに接着剤で結合される、請求項14に記載の人工弁。
【請求項16】
前記弁膜の前記多孔質膜が第1側と第2側とを含み、前記組織内方成長カーテンが、前記弁膜の前記多孔質膜の前記第1側において、前記弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンを完全に被覆する、請求項1~15のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項17】
前記多孔質膜がフッ素重合体膜である、請求項1~16のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項18】
前記フッ素重合体膜が延伸フッ素重合体を含む、請求項17に記載の人工弁。
【請求項19】
前記延伸フッ素重合体がePTFEを含む、請求項18に記載の人工弁。
【請求項20】
前記第1エラストマ系材料がシリコーンである、請求項1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項21】
前記第1エラストマ系材料がフッ素エラストマである、請求項1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項22】
前記第1エラストマ系材料がウレタンである、請求項1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項23】
前記第1エラストマ系材料がTFE/PMVE共重合体である、請求項1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項24】
前記弁膜の前記多孔質膜の前記第1ゾーン内に第2エラストマ系材料が含有される、請求項1~23のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項25】
前記組織内方成長カーテンが前記下地弁膜ベースに接着剤で結合されており、該接着剤が、前記下地弁膜ベースと前記組織内方成長カーテンの1つ又は複数の縁との間に移行部を形成している、請求項1~24のいずれか一項に記載の人工弁。
【請求項26】
前記組織内方成長カーテンと前記弁膜ベースとの間の移行部を差し渡す隅肉が形成されている、請求項25に記載の人工弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月31日に提出された仮特許出願第62/579760号の利益を主張する2018年9月12日に提出された米国特許出願第16/129671号(その両方が、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概略的に、人工弁、より具体的には人工心臓弁装置に使用するための可撓性合成弁膜(leaflet)に関する。
【背景技術】
【0003】
人工弁に使用するための合成弁膜を製造するために多数の製造技術が使用されてきた。多くの場合、その結果得られた弁膜は、人工弁フレーム上に支えられて、弁膜が人工弁フレームに結合される取付け縁と、フラップが動けるようにする自由縁とを有するフラップを形成する。このような人工弁フレームは、1つ、2つ、3つ又はこれより多い弁膜を含むことができる。弁膜は、概略的に、患者の身体構造において流体圧の影響を受けて開放状態と閉鎖状態との間で移動又は移行する。作動時に、弁膜は、人工弁の流入側(例えば人工弁の上流)における流体圧が人工弁の流出側(例えば、人工弁の下流)における流体圧を上回るとき開放し、人工弁の流出側の流体圧が人工弁の流入側の流体圧を上回るとき閉鎖する。弁膜の自由縁は、(部分的に又は全面的に)下流流体圧の影響を受けて接合して、下流の血液が人工弁を通過して逆流するのを最小限に抑える又は防止する作用をする。概略的に、「遠位」は、本開示において、人工弁の流出端(遠位端)又は流出方向を意味するために使用され、「近位」は、人工弁の流入端又は人工弁を通過する一次流の方向の反対方向を意味するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成弁膜を備えた従来の人工心臓弁の埋植に伴う組織反応が、既知の多数の合併症、並びに場合によっては弁膜の機能低下を引き起こす可能性がある。不透過性その他細胞組織の内方成長を阻害するような材料を含む従来の弁膜設計は、弁及び/又は弁膜の周囲の内皮細胞を永久的に傷つけることで、炎症を引き起こし、血小板の活性化を促進すると考えられる。身体によるこのような反応の潜在的結果の一つとして血栓形成があり、このため既知の多数の合併症を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施例(「実施例1」)によれば、人工弁は、弁膜フレームと、合成弁膜を含む弁膜構成体とを含み、各弁膜の上には、該弁膜フレームと該弁膜の間で組織の成長が助長されるような組織内方成長を促進するように構成された部分を含む。
【0006】
別の実施例(「実施例2」)によれば、実施例1に加えて、弁膜は、下地弁膜ベース(underlying leaflet base)に結合された組織内方成長カーテンを含み、組織内方成長カーテンは組織内方成長を促進するように構成される。
【0007】
別の実施例(「実施例3」)によれば、実施例2に加えて、弁膜は、下地弁膜ベースに結合された複数の組織内方成長カーテンを含み、複数の組織内方成長カーテンの各組織内方成長カーテンは、組織内方成長を促進するように構成される。
【0008】
別の実施例(「実施例4」)によれば、実施例3に加えて、複数の組織内方成長カーテンは第1組織内方成長カーテンと第2組織内方成長カーテンとを含み、第1組織内方成長カーテンは弁膜の下地弁膜ベースの第1側に結合され、かつ、第2組織内方成長カーテンは弁膜の下地弁膜ベースの第2側に結合されている。
【0009】
別の実施例(「実施例5」)によれば、実施例2~4に加えて、組織内方成長カーテンは多孔質膜を含む。
【0010】
別の実施例(「実施例6」)によれば、実施例5に加えて、組織内方成長カーテンは、フッ素重合体膜を含む。
【0011】
別の実施例(「実施例7」)によれば、実施例6に加えて、フッ素重合体膜は、延伸フッ素重合体を含む。
【0012】
別の実施例(「実施例8」)によれば、実施例7に加えて、延伸フッ素重合体膜はePTFEを含む。
【0013】
別の実施例(「実施例9」)によれば、実施例2~8に加えて、組織内方成長カーテンは下地弁膜ベースに結合される。
【0014】
別の実施例(「実施例10」)によれば、実施例1~9のいずれかに加えて、弁膜フレームは組織内方成長を促進するように構成される。
【0015】
別の実施例(「実施例11」)によれば、実施例1~10のいずれかに加えて、組織は、弁膜フレームを横切って弁膜上にまで成長するよう助長される。
【0016】
別の実施例(「実施例12」)によれば、実施例1~11のいずれかに加えて、弁膜フレームは組織内方成長促進材料で被覆される。
【0017】
別の実施例(「実施例13)」によれば、実施例11に加えて、組織内方成長促進材料は布帛である。
【0018】
別の実施例(「実施例14」)によれば、実施例2~13のいずれかに加えて、組織内方成長カーテンは下地弁膜ベースに接着剤で結合される。
【0019】
別の実施例(「実施例15」)によれば、実施例1~14のいずれかに加えて、弁膜は、第1ゾーンと第2ゾーンとを有する多孔質膜を含み、弁膜の多孔質膜の第1ゾーン内に第1エラストマ系材料が含まれ、かつ、弁膜の多孔質膜の第2ゾーンには第1エラストマ系材料が含まれない。
【0020】
別の実施例(「実施例16」)によれば、実施例15に加えて、組織内方成長カーテンは弁膜の多孔質膜の第2ゾーンに結合される。
【0021】
別の実施例(「実施例17」)によれば、実施例16に加えて、組織内方成長カーテンは弁膜の多孔質膜の第2ゾーンに接着剤で結合される。
【0022】
別の実施例(「実施例18」)によれば、実施例15~17に加えて、弁膜の多孔質膜は第1側と第2側とを含み、組織内方成長カーテンは、弁膜の多孔質膜の第1側において弁膜の多孔質膜の第2ゾーンを完全に被覆する。
【0023】
別の実施例(「実施例19」)によれば、実施例15~18に加えて、多孔質膜はフッ素重合体膜である。
【0024】
別の実施例(「実施例20」)によれば、実施例19に加えて、フッ素重合体膜は延伸フッ素重合体を含む。
【0025】
別の実施例(「実施例21」)によれば、実施例20に加えて、延伸フッ素重合体はePTFEを含む。
【0026】
別の実施例(「実施例22」)によれば、実施例15~21に加えて、第1エラストマ系材料はシリコーンである。
【0027】
別の実施例([実施例23])によれば、実施例15~21に加えて、第1エラストマ系材料はフッ素エラストマである。
【0028】
別の実施例(「実施例24」)によれば、実施例15~21に加えて、第1エラストマはウレタンである。
【0029】
別の実施例(「実施例25」)によれば、実施例15~21に加えて、第1エラストマ系材料はTFE/PMVE共重合体である。
【0030】
別の実施例(「実施例26」)によれば、実施例15~25に加えて、第2エラストマ系材料は弁膜の多孔質膜の第1ゾーン内に含有される。
【0031】
別の実施例(「実施例27」)によれば、実施例1~26のいずれかに加えて、組織内方成長カーテンが下地弁膜ベースに接着剤で結合されており、該接着剤が、下地弁膜ベースと組織内方成長カーテンの1つ又は複数の縁との間に移行部を形成している。
【0032】
別の実施例(「実施例28」)によれば、実施例27に加えて、組織内方成長カーテンと弁膜ベースとの間の移行部を差し渡す隅肉(fillet)が形成されている。
【0033】
別の実施例(「実施例29」)によれば、合成弁膜を形成する方法は、第1合成多孔質膜を用意し、該第1合成多孔質膜の1つ又は複数の部分に1つ又は複数のフィラー材料を吸収させるに際し、該吸収した部分又は領域の1つ又はそれ以上が組織内方成長の支援又は促進に適さなくなるように吸収させ、組織内方成長を促進するのに適した第2合成多孔質膜を用意し、そして前記第2合成多孔質膜を前記第1合成多孔質膜に固定することを含む。
【0034】
別の実施例(「実施例30」)によれば、合成弁膜を形成する方法は、第1ゾーンと第2ゾーンとを含む合成多孔質膜を用意するに際し、該第1ゾーン及び該第2ゾーンの上での組織内方成長の促進に適したものを用意し、そして該多孔質膜の第1ゾーンにフィラー材料を吸収させるに際し、該吸収した該多孔質膜の第1部分が組織内方成長の支援又は促進に適さなくなるように吸収させることを含む。
【0035】
1つの実施例(「実施例31」)によれば、不全又は機能不全の生来の弁を人工弁で治療する方法は、生来の弁を請求項1~28のいずれかに記載の人工弁と置き換えることを含む。
【0036】
複数の実施形態を開示するが、当業者には、例示的な実施形態を説明する下記の詳細な説明から他の実施形態も明らかになるだろう。したがって、図面及び詳細な説明は、例示的なものであり、限定的なものとはみなされないものとする。
【0037】
添付図面は、開示の更なる理解のために含まれており、本明細書に援用され、その一部を構成し、実施形態を図解し、説明と一緒に、本開示の原則を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】1つの実施形態に従った人工心臓弁の流出側斜視図である。
【
図2】いくつかの実施形態に従った弁膜構成体の前面図である。
【
図3】いくつかの実施形態に従った、平らに広げられている
図2の弁膜フレームの図である。
【
図5】いくつかの実施形態に従った弁膜の図である。
【
図6】いくつかの実施形態に従った、
図4の線6-6に沿って見た弁膜の断面図である。
【
図7A】いくつかの実施形態に従った弁膜の断面図である。
【
図7B】いくつかの実施形態に従った弁膜の断面図である。
【
図7C】いくつかの実施形態に従った弁膜の断面図である。
【
図8A】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図8B】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図8C】いくつかの実施形態に従った、
図8Aの線8C-8Cに沿って見た弁膜の断面図である。
【
図9】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図10】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図11】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図12】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図13】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図14】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図15】いくつかの実施形態に従った、
図14の線15-15に沿って見た弁膜の断面図である。
【
図16】いくつかの実施形態に従った弁膜の断面図である。
【
図17】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図18】いくつかの実施形態に従った、
図17の線18-18に沿って見た弁膜の断面図である。
【
図19】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図20】いくつかの実施形態に従った、
図19の線20-20に沿って見た弁膜の断面図である。
【
図21】いくつかの実施形態に従った弁膜の上面図である。
【
図22】いくつかの実施形態に従った、
図21の線22-22に沿って見た弁膜の断面図である。
【
図23】いくつかの実施形態に従った弁膜の断面図である。
【
図24】いくつかの実施形態に従った弁膜の断面図である。
【
図25】いくつかの実施形態に従った人工弁の流出側の上面図である。
【
図26】いくつかの実施形態に従った人工弁の流出側の上面図である。
【
図27】いくつかの実施形態に従った、
図25の線27-27に沿って見た人工弁の断面図である。
【
図28A】いくつかの実施形態に従った別の人工弁の流出側の上面図である。
【
図29】いくつかの実施形態に従った治療部位へ人工弁を送達する方法を図解する。
【
図30】いくつかの実施形態に従った治療部位へ人工弁を送達する方法を図解する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の様々な形態は、意図される機能を果たすように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることが、当業者には容易に分かるはずである。言い換えれば、意図される機能を果たすために、他の方法及び装置を、本明細書に組み込むことができる。又、本明細書において言及する添付図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本開示の様々な形態を図解するために誇張する場合があり、その点で、図面は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0040】
本明細書において、様々な原則及び確信に関連して実施形態を説明するが、説明する実施形態は、理論にとらわれない。例えば、実施形態は、本明細書において、人工弁に関連して、より具体的には心臓人工弁に関連して説明する。しかし、本開示の範囲内の実施形態は、同様の構造及び/又は機能を持つ任意の弁又は機構に応用できる。更に、本開示の範囲内の実施形態は、心臓に関わらない用途に応用できる。
【0041】
本明細書において人工弁に関して「弁膜」が使用される場合、一方向弁の可撓性成分であり、弁膜は、圧力差の影響を受けて開放位置と閉鎖位置との間を移動できるように作動可能である。開放位置のとき、弁膜は、弁を通過して血液が流動できようにする。閉鎖位置のとき、弁膜は、弁孔を遮断又は閉塞して、流体圧力差に反応して流れを部分的又は全面的に防止する。いくつかの事例において、隣り合う弁膜の接合(coaptation)は、人工弁を通過する流体(例えば、血液)の流れを完全に遮断するように作用できるが、他の事例においては、隣り合う弁膜の接合は、人工弁を通過する流体(例えば血液)の流れの全ては遮断しないように作動可能である。
【0042】
複数の弁膜を備える実施形態において、各弁膜は、概略的に、隣り合う又は隣接配置された少なくとも1つの弁膜と協働して、血液の逆流を遮断又は制限する。血液の圧力差は、例えば、心室又は心房の収縮によって生じ、この圧力差は、典型的には、弁膜が閉鎖したときに弁膜の一方の側において流体圧力が上がることによって生じる。弁の流入側における圧力が弁の流出側における圧力より上がるとき、弁膜は開いて、血液がこれを通過して流れる。血液が弁を通過して隣の房室又は血管へ流れるとき、流入側の圧力は流出側の圧力と等しくなる。弁の流出側の圧力が弁の流入側の圧力より高くなるとき、弁は閉鎖位置に戻って、弁を通過する血液の逆流を概ね防止する。
【0043】
本明細書において論じる実施形態及び実施例は、心臓弁置換など(但しこれに限定されない)人工弁のための様々な装置、システム及び方法を含む。いくつかの実施例において、人工弁は、一方向弁として作動可能であり、人工弁は弁孔を形成し、弁膜は弁孔を開放して、血流を許容し、弁孔を閉鎖して、流体圧力差に反応して流れを防止する。開示する例において、主に、外科的に埋植された弁を含めて人工弁又は同様な構造及び/又は機能を持つ機構に関連して実施例を説明するが、前記の実施例の特徴は経カテーテル人工弁にも同等に応用可能であることが分かるはずである。
【0044】
図1A及び1Bは、それぞれ、1つの実施形態に従った、人工心臓弁の形式の人工弁100の流出側及び流入側の図である。
図1A及び1Bに示す人工弁100の構成成分は、弁膜フレーム200と、弁膜フレーム200に結合された複数の弁膜310とを含む。いくつかの実施例において、人工弁100は、ソーイングカフ400を含む。
【0045】
弁膜フレーム200は、弁膜310を保持し支持するために作動可能である。適切な弁膜フレーム構成及びソーイングカフの実施例は、米国特許出願第13/833650号明細書、14/973589号明細書及び14/853654号明細書(各内容を参照により本明細書の一部とする)において図解され説明される。弁膜フレーム200は、特にエッチング、カッティング、レーザーカット、スタンプ又は三次元プリントによって環状構造に又は材料シートに加工し、シートはその後環状構造に形成できる。様々な実施例において、弁膜フレーム200は、ニチノール、ニッケルチタン合金などの形状記憶材料を含めて、生体適合性でかつ弾性変形可能な金属又は高分子材料など(但し、これに限定されない)を含むことができる。弁膜フレーム200に適する他の材料は、他のチタン合金、ステンレス鋼、コバルトニッケル合金、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、PEEK、アセチルホモポリマー、アセチル共重合体、他の合金、重合体及び熱可塑材、又は本明細書に説明する弁膜フレーム200として機能するために適する物理的及び機械的特性を有する概ね生体適合性のその他の材料を含むが、これらに限定されない。
【0046】
様々な実施形態において、弁膜フレーム200の1つ又は複数の部分は、組織内方成長を促進するために適する材料で被覆できる。例えば、弁膜フレーム200は、組織内方成長を促進するために適する材料で包むことができる。様々な実施例において、このような組織内方成長促進材料は、弁膜フレーム200全体に又は弁膜フレーム200の全体未満に適用できる。例えば、組織内方成長を促進するために適する材料は、弁膜取付け前に、弁膜フレームの内面及び弁膜フレームの外面に、任意に弁膜フレームの突出部の間に結合できる。弁膜フレーム200(又は人工弁100の他の部分)に適用できる材料の非限定的例は、ePTFE膜、布帛、フィルム又はコーティングなどの延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレート布帛(例えば、Dacron布帛)を含む。
【0047】
弁膜310は、
図1Aに示すように各々が概ね弁膜フレーム200から三重点348へ向かって半径方向内向きに延びるように、弁膜フレーム200に結合される。
図2~3は、いくつかの実施形態に従った弁膜310を示す。
図2は、複数の弁膜310を含む弁膜構成体300の前面図である。
図3は、弁膜310の特徴をより良く図解するために長手方向にカットして、開いて、平らに置いた
図2の弁膜構成体300の図である。
図3の弁膜に加えられるカットの場所及び図解は、単に例示のためであり、限定的なものとして解釈すべきではないことが分かるはずである。又、本明細書において論じる実施形態及び実施例は、複数の弁膜を含む人工弁及び複数の弁膜から成る弁膜構成体を含むが、本明細書において論じる組織内方成長カーテン及び吸収法は、1、2、3又はそれ以上の弁膜を組み込む人工弁の合成弁膜に応用できる。
【0048】
図3~5は、いくつかの非限定的な代表的弁膜構造を示す。
図4は、
図3の円内の拡大上面図であり、
図3の弁膜構成体300の弁膜310の1つを示す。
図5は、人工弁構造の別の弁膜510の上面図であり、人工弁の各弁膜510は、人工弁の他の弁膜から独立して人工弁の弁膜フレームに結合される独立モノリス成分を形成する。平面状態において、弁膜310及び510の両方は、図示するように、概ね弓形側面を持つ二等辺台形に構成される。但し、人工弁の弁膜フレームに適用される場合(例えば
図1A及び1B)弁膜は別の形状を取ることが分かるはずである。例えば、弁膜フレームに結合されたとき弁膜の形状は、少なくとも部分的に、特に弁膜フレームの形状、弁膜フレームに取り付けられる弁膜の部分の形状及び作動時に弁膜が遭遇する流体圧力によって決められる。いくつかの実施例において、弁膜の形状は、弁膜成形及び形状固定(shape-setting)など(但しこれに限定されない)他の技法の影響を受ける又はこれによって改変できる。
【0049】
図4を参照すると、弁膜310の各々は、概略的に、弁膜取付け領域330、弁膜ベリー領域322と、弁膜自由縁312と、を含む。いくつかの実施例において、弁膜ベリー領域322は、弁膜自由縁312において終結する。いくつかの実施例において、弁膜ベリー領域322は、それに加えて又はその代わりに、弁膜取付け領域330において終結する。いくつかの実施例において、弁膜ベース325は、弁膜取付け領域330と弁膜ベリー領域322との交差部に形成される。様々な実施例において、弁膜310の弁膜ベリー領域322は、人工弁100に組み立てられたとき弁膜310の作動部分である。様々な実施例において、弁膜取付け領域330は、弁膜フレーム200に取り付けるように構成された弁膜310の部分に合致する。いくつかの実施例において、弁膜取付け領域330は、弁膜310の周囲の一部分の周りに延び、弁膜自由縁の中心点の反対側で、弁膜自由縁312で終結する。様々な実施例において、弁膜取付け領域330は、弁膜ベリー領域322の境界を成す。いくつかの実施例において、弁膜310は、弁膜フレーム200の1つ又は複数の部分の周りを包むように構成できる。弁膜310を弁膜フレーム200に取り付けるために適切な方法のいくつかの例は、上述の米国特許出願第13/833650号明細書、同第14/973589号明細書及び同第14/853654号明細書において図解され説明されている。
【0050】
図5に示す弁膜510は、同様に、弁膜取付け領域530と、弁膜ベリー領域522と、弁膜自由縁512と、弁膜取付け領域530と弁膜ベリー領域522との間の交差部に形成された弁膜ベース525とを含む。
図5に示すように、弁膜510は、組織内方成長カーテン532と弁膜ベリー領域522との交差部に境界線534が画定されるように、弁膜ベリー領域522の中まで延びる組織内方成長カーテン532を含む。更に、図示するように、弁膜510は、弁膜510を対応する弁膜フレームに固定するための1つ又は複数の特徴部を含む。
図5においては弁膜開口508として示されるが、弁膜510を対応する弁膜フレームに固定するための特徴部は、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、別の任意の適切な形式を取ることができることが分かるはずである。又、図には示さないが、弁膜510は、弁膜510を対応する弁膜フレーム200に固定するための同様の特徴部(例えば、弁膜開口)を含むことができる。
【0051】
様々な実施形態によれば、本明細書において論じる弁膜を含む様々な弁膜構成体は、合成であり、弁膜及び弁膜構成体の様々な他の部分は、生体適合性重合体など、生物由来ではなくかつ特定の目的のために充分に従動的で(compliant)、かつ丈夫な1つ又は複数の生体適合性材料を含む。いくつかの実施形態において、弁膜は、本明細書において開示するように、複合材料を形成するために、フッ素エラストマなどのエラストマ系材料と組み合わされた膜を含む。様々な実施例は弁膜構成体300及び900に関連して論じるが、本明細書において論じる様々な実施例及び実施形態は、本明細書において論じる弁膜構成体の各々及び/又は弁膜構成体の各種構成成分に万能的に応用できる。
【0052】
いくつかの実施例において、弁膜310を含む弁膜構成体300は、
図2及び3に示すような形状にカットされた円筒形の重合体材料から開始することによって、作ることができる。いくつかの他の実施例において、複数の弁膜310は、
図4に示すような形状にカットされ、その後
図2及び3に示すような環状形状に一緒に結合された重合体シートから作られる。いくつかの他の実施例において、弁膜構成体300及び/又は弁膜310は、1つ又は複数の圧縮成形又は射出成形工程によって形成できる。
【0053】
上述のように、弁膜310は、概略的に、合成複合材料として形成される。様々な実施形態において、弁膜310は、さらに後述するように、弁膜ベース材料に組み込まれ及び/又は弁膜ベース材料と結合できる組織内方成長カーテンと組み合わされた合成下地弁膜ベース材料を含む。いくつかの実施例において、下層合成弁膜ベースを形成する複合材料は、フィブリルのマトリクス内に複数の空間を含む延伸フッ素重合体膜と、該延伸フッ素重合体膜内に吸収その他により取り込まれたフッ素エラストマのようなエラストマ系材料とを含む。いくつかの実施例において、下地弁膜ベースは、吸収した多孔質単層を含む。複数のタイプのフッ素重合体膜及び複数のタイプのエラストマ系材料(及び非エラストマ系材料)を組み合わせて、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、下地弁膜ベースの複合材料を形成できる。エラストマ系材料は、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、複数のエラストマ、無機質フィラーなどの複数のタイプの非エラストマ成分、治療薬、放射線不透過マーカー及びこれに類似するものを含むことができることが、分かるはずである。
【0054】
別の実施例は、少なくとも1つのフッ素重合体膜層を備える弁膜構成体300を含み、膜構成体300は、複数のフッ素重合体膜層を有する複合材を含み、少なくとも1つのフッ素重合体膜層は、延伸フッ素重合体膜層である。いくつかの実施例において、弁膜構成体300は、複数の気孔を有する少なくとも1つのフッ素重合体膜及びフッ素重合体膜層のうちの少なくとも1つの気孔の中に存在するエラストマ及び/又はエラストマ系材料を有する複合材料を含む。
【0055】
様々な実施例において、本明細書において説明する弁膜構成体(例えば、弁膜構成体)のいずれも、生体適合性合成材料(例えば、ePTFE及びePTFE複合材又はその他の材料)で形成できる。合成弁膜に使用するために適するその他の生体適合性重合体は、ウレタン、シリコーン(有機ポリシロキサン)、シリコンウレタンの共重合体、スチレン/イソブチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリエチレンコポリ(酢酸ビニル)、ポリエステル共重合体、ナイロン共重合体、フッ化炭化水素重合体及びこれらの各々の共重合体又は混合物の群を含むが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書において使用する場合、「エラストマ」は、元来の長さの少なくとも1.3倍まで伸張されて、解除されたとき急速にほぼ元来の長さまで収縮する能力を持つ重合体又は重合体の混合物を意味する。「エラストマ系材料」は、エラストマと同様の伸張及び回復特性を発揮する(但し必ずしも同じ程度の伸張及び/又は回復を示さない)重合体又は重合体の混合物を意味する。「非エラストマ系材料」は、エラストマ又はエラストマ系材料と同様ではない即ちエラストマ又はエラストマ系材料と見なされない、伸張及び回復特性を示す重合体又は重合体の混合物を意味する。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、弁膜構成体は、複数の気孔及び/又は空間を有する少なくとも1つの多孔質合成重合体膜層と、少なくとも1つの合成重合体膜層の気孔及び/又は空間を充填するエラストマ及び/又はエラストマ系材料及び/又は非エラストマ系材料と、を有する複合材料を含む。他の実施例によれば、弁膜構成体は、更に、複合材料上にエラストマ及び/又はエラストマ系材料及び/又は非エラストマ系材料の層を備える。いくつかの実施例によれば、複合材料は、約10%~90%(質量)の範囲の多孔質合成重合体膜を含む。
【0058】
多孔質合成重合体膜の例は、気孔及び/又は空間を形成するノード-フィブリル構造を有する延伸フッ素重合体膜を含む。いくつかの実施例において、延伸フッ素重合体膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜である。多孔質合成重合体膜の別の例は、微小多孔質ポリエチレン膜を含む。
【0059】
エラストマ及び/又はエラストマ系材料及び/又は非エラストマ系材料の例は、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(TFE/PMVE共重合体)、(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、ウレタン、シリコーン(有機ポリシロキサン)、シリコン-ウレタン共重合体、スチレン/イソブチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリエチレンコポリ(酢酸ビニル)、ポリエステル共重合体、ナイロン共重合体、フッ化炭化水素重合体及びこれらの共重合体又は混合物を含む。いくつかの実施例において、TFE/PMVE共重合体は、基本的に60~20質量パーセントのテトラフルオロエチレンと40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むエラストマである。いくつかの実施例において、TFE/PMVE共重合体は、基本的に67~61質量パーセントのテトラフルオロエチレンと33~39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むエラストマ系材料である。いくつかの実施例において、TFE/PMVE共重合体は、基本的に73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンと27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含む非エラストマ系材料である。TFE-PMVE共重合体のTFE及びPMVE構成成分は、質量%で示す。参考のために、PMVEの40、33~39及び27~32のWt%は、それぞれ29、23~28及び18~22のモル%に該当する。
【0060】
いくつかの実施例において、TFE-PMVE共重合体は、エラストマ、エラストマ系及び/非エラストマ系特性を提示する。
【0061】
いくつかの実施例において、複合材料は、更に、約73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンと約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むTFE-PMVE共重合体の層又はコーティングを含む。
【0062】
いくつかの実施例において、弁膜構成体は、約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンと約40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むTFE-PMVEを吸収した延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であり、弁膜構成体300は、更に、血液接触面の上に約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンと約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルから成るTFE-PMVEのコーティングを含む。
【0063】
上述のように、エラストマ及び/又はエラストマ系材料及び/又は非エラストマ系材料は、エラストマ及び/又はエラストマ系材料及び/又は非エラストマ系材料が延伸フッ素重合体膜内の空隙又は気孔の実質的に全てを占めるように、延伸フッ素重合体膜と組み合わせできる。
【0064】
1つの実施形態によれば、複合材料は、例えば概略的に米国特許第7306729号(Bacino)明細書において説明される多孔質ePTFE膜から作られた延伸フッ素重合体材料を含むことができる。
【0065】
説明する複合材のいくつかを形成するために使用される延伸フッ素重合体膜は、PTFEホモポリマーを含むことができる。別の実施形態において、PTFEの混合物、延伸可能改質PTFE及び/又はPTFEの延伸共重合体を使用できる。適切なフッ素重合体材料の非限定的例については、例えば、米国特許第5708044号(Branca)明細書、米国特許第6541589号(Baillie)明細書、米国特許第7531611号(Sabol他)明細書、米国特許出願第11/906877号(Ford)明細書及び米国特許出願第12/410050号(Xu他)明細書において説明される。
【0066】
様々な実施形態において、弁膜310は、組織内方成長を促進するように構成される。いくつかの実施形態において、弁膜310は、弁膜310を形成する材料の1つ又はそれ以上の1つ又は複数の離散した領域、部分又は区分を横切って、又は弁膜310を形成する材料の1つ又はそれ以上の全体を横切って、組織内方成長及び増殖を促すように構成できる。組織内方成長及び増殖は、弁膜310の流出側又は面において及び/又は弁膜310の流入側又は面において及び/又は弁膜を形成する1つ又は複数の材料内で、促進できる。
【0067】
いくつかの実施例によれば、下でさらに詳しく論じるように、組織内方成長のこの促進は、1つ又は複数の組織内方成長カーテンの中へ及び/又はその上に組織が成長するのを促がす(又は成長するのを防止又は阻止しない)ように、1つ又は複数の合成組織内方成長カーテンを1つ又は複数の下地弁膜ベース材料に結合することによって、容易になる。即ち、いくつかの実施例において、組織内方成長を促進するように構成された1つ又は複数の層は、下地弁膜構造又は材料に適用できる。いくつかの実施例において、本明細書において説明するように、下地弁膜構造又は材料は、組織内方成長を防止又は阻止するように構成できる。
【0068】
それに加えて又はその代わりに、いくつかの実施例において、組織内方成長のこの促進は、弁膜310を形成する1つ又は複数の材料の1つ又は複数の部分に、1つ又は複数のフッ素エラストマなどを選択的に吸収させることによって容易になる。即ち、いくつかの実施例において、1つ又は複数の合成組織内方成長カーテンを1つ又は複数の下地弁膜ベース材料に結合することに加えて又はその代わりに、下地弁膜ベース材料自体が、組織内方成長を促進又はこれに対応するように構成される。いくつかの実施例において、下でさらに詳しく論じるように、下地弁膜ベース材料は、組織が、1つ又は複数の下地弁膜ベース材料の1つ又は複数の離散した又は指定された区分、部分又は領域の中へ及び/又はその上へ成長するのを促されるように(又は成長を防止又は阻止されないように)構成される。
【0069】
様々な実施形態において、組織内方成長カーテンは、概略的に、フィブリルのマトリクス内に複数の空間を含み、かつ、組織の内方成長を促進し支援するために適する延伸フッ素重合体膜を含む。他の非限定的な材料の例として、ニットPTFEなどの他の生体適合性多孔質材料が含まれる。但し、上述のように、また以下でさらに詳細に論じるように、いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、1つ又は複数のコーティングの形式で下地弁膜ベースに適用できる。
【0070】
いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、多孔質ePTFE膜から作られた延伸フッ素重合体材料を含む。但し、組織内方成長カーテンは、フッ素重合体膜を含めて他のタイプの膜及びニットPTFEなどの他の生体適合性多孔質材料から形成できることが分かるはずである。例えば、延伸可能フッ素重合体は、PTFEホモポリマーを含むことができる。いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、フッ化エチレンプロピレン(FEP)などのヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンの共重合体から形成できる。いくつかの実施例において、PTFEの混合物、延伸可能改質PTFE及び/又はPTFEの延伸共重合体を使用できる。このように、生体適合性であり、かつ組織内方成長の促進又は支援に適する適切な微小構造を有する又はこれを含むように改質されることを前提として、組織内方成長カーテンは、多様な高分子材料から形成できることが分かるはずである。様々な実施例において、組織内方成長カーテンは、選択された材料に応じて1ミクロン~400ミクロンの範囲の厚みを持つことができる。
【0071】
いくつかの実施例において、高分子材料は、1つ又は複数の自然に生じる及び/又は1つ又は複数の人工の気孔、リリーフ又は組織内方成長を支援するためのチャンネルを含むことができる。組織内方成長カーテンを形成する際に使用するために適する他の生体適合性多孔質材料は、例えば、ウレタン、フッ素重合体、スチレン/イソブチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリエチレンコポリ(酢酸ビニル)、ポリエステル共重合体、ナイロン共重合体、フッ化炭化水素重合体及びこれらの共重合体又は混合物の群を含むが、これらに限定されない。
【0072】
次に
図6及び
図7A~7Cを見ると、様々な実施例において、1つ又は複数の合成組織内方成長カーテン332は、弁膜ベース320に適用される。
図6は、弁膜310の断面図である。
図7A~7Cは、弁膜710の(
図6と同様の)断面図である。例えば、
図7Bは、線7B-7Bに沿って見た
図9の弁膜710の断面図である。
図7A及び7Cは、
図7A及び7Cに示す弁膜710が下地弁膜ベース720に組織内方成長カーテン732に適用するための別の構造を含むことを除いて、
図7Cと同様の断面図である。
【0073】
図4及び
図6に示すように、弁膜310は、弁膜ベース320と組織内方成長カーテン332とを含む。上述のように、様々な実施例において、組織内方成長カーテン332は、弁膜ベース320の全部ではない部分に適用される。例えば、
図4及び6に示すように、組織内方成長カーテン332は、弁膜自由縁312の反対側の弁膜310の縁314から弁膜自由縁312へ向かって弁膜ベリー領域322上に延びる。様々な実施例において、組織内方成長カーテン332は、弁膜ベリー領域322の一部分上に又はこれを横切って延びて、境界線334が組織内方成長カーテン332と弁膜ベリー領域322との間の交差部に形成されるように弁膜ベリー領域上で終結する。
図4に示すように、境界線334は、縁314に準拠するが、下で論じるように、他の構造も想定される。
図8~13に関連して下でさらに論じるように、弁膜310は、境界線334がほぼ任意の線形又は非線形、連続又は非連続(例えば複数境界線)プロフィルを持つように、組織内方成長カーテンが弁膜ベリー領域322で終結するように構成できる。
【0074】
更に、上で論じかつ
図6に示すように、弁膜310は、組織内方成長カーテン332a及び組織内方成長カーテン332bなどの複数の組織内方成長カーテンを含む。即ち、弁膜310は、弁膜310の流入側316及び流出側318の両方に配置された組織内方成長カーテンを持つように構成される。このように、弁膜310は、弁膜ベース320の一方又は両方の側の1つ又は複数の部分に結合された又はこれに被せてその他の方法で配置された組織内方成長カーテン332を持つように構成できる。図示するように、第1組織内方成長カーテン332aは、弁膜ベース320の流入側316に結合又はこれに被せてその他の方法で配置され、第2組織内方成長カーテン332bは、弁膜ベース320の流出側318に結合又はこれに被せてその他の方法で配置される。
【0075】
弁膜310は、
図6において、それぞれ第1側(例えば流入側316)及び第2側(例えば、流出側318)に配置された第1及び第2組織内方成長カーテン332a及び332bを含むものとして示すが、他の様々な実施例において、弁膜310は、組織内方成長カーテンが弁膜ベース320の第1側316及び第2側318の一方のみに配置されるように構成できることが分かるはずである。例えば、
図7Aに示すように、弁膜710は、下地弁膜ベース720と、弁膜710の第1側716(例えば、下地弁膜ベース720の流入側)に配置された第1組織内方成長カーテン732を含む。第1組織内方成長カーテン732は、その代わりに、弁膜710の第2側718(例えば、下地弁膜ベース720の流出側)に配置できることが分かるはずである。
【0076】
更に、上述のように、いくつかの実施形態において、弁膜310は、1つ又は複数の組織内方成長カーテン732が下地弁膜ベース720の一方又は両方の側を完全に被覆するように構成される。例えば、
図7B及び9に示すように、弁膜710は、下地弁膜ベース720と、第1組織内方成長カーテン732が弁膜710の第2側718を全体的に被覆するように弁膜710の第2側718に配置された第1組織内方成長カーテン732と、を含む。上述のように、第1組織内方成長カーテン732は、その代わりに、弁膜710の第1側716に配置できることが分かるはずである。更に、上述のように、いくつかの実施例において、第2組織内方成長カーテンは、弁膜710の第1側716に配置された組織内方成長カーテンに加えて、弁膜710の第2側718に配置できる。例えば、
図7Cに示すように、弁膜710は、下地弁膜ベース720と、第1組織内方成長カーテン732aが弁膜710の第1側716を全体的に被覆するように弁膜710の第1側716(例えば、下地弁膜ベース720の流入側)に配置された第1組織内方成長カーテン732aと、を含む。
図7Cに示すように、第2組織内方成長カーテン732bは、第2組織内方成長カーテン732aが弁膜710の第2側718を全体的に被覆するように、弁膜710の第2側718(例えば、下地弁膜ベース720の流出側)に配置できる。
【0077】
更に、
図6に示す第1及び第2組織内方成長カーテン332a及び332bは、基本的に相互に鏡面画像であるが、弁膜310は、弁膜ベース320の第1側(例えば、流入側)に配置された第1組織内方成長カーテンが、弁膜ベース320の第2側(例えば、流出側)に配置された第2組織内方成長カーテンと異なるプロフィル及び/又は断面を持つように構成できる。例えば、いくつかの実施例において、環境条件および人工弁100の流入側及び流出側における力学が異なる場合には、弁膜の第1側が、第1サイズ及び/又は第1材料及び/又は第1形状及び/又は第1断面及び/又は第1プロフィルを有する第1境界線を有する第1組織内方成長カーテンを含み、かつ弁膜の第2側が、第2サイズ及び/又は第2材料及び/又は第2形状及び/又は第2断面及び/又は第2プロフィルを有する第2境界線を有する第2組織内方成長カーテンを含むように、弁膜を構成することが望ましい場合がある。
【0078】
例えば、
図8A~
図8Cに示すように、弁膜310と同様に、弁膜810は、下地弁膜ベース820と、弁膜自由縁812と、縁814と、第1側及び第2側816及び818と、弁膜ベリー領域822と、弁膜ベース825と、弁膜取付け領域830と、を含む。弁膜810は、更に、弁膜810の第1側816(例えば、下地弁膜ベース820の流入側)の一部分を覆って配置された第1組織内方成長カーテン832aと、第2側818を覆って配置された第2組織内方成長カーテン832bと、を含む。第1組織内方成長カーテン832aは、第1側816の弁膜ベリー領域822の一部分上まで又はこれを横切って延び、境界線834aが第1組織内方成長カーテン832aと弁膜ベリー領域822との間の交差部に画定されるように終結する。第2組織内方成長カーテン832bは、第2側818の弁膜ベリー領域822を横切って延びて、境界線834bが第2組織内方成長カーテン832bと弁膜ベリー領域822との間の交差部(この場合には弁膜自由縁812と合致する)に画定されるように終結する。図示するように、第2組織内方成長カーテン832bは、第1組織内方成長カーテン832aとは異なる断面及び/又は境界線プロフィル及び/又は形状及び/又はサイズを有する。
【0079】
図10~
図13は、組織内方成長カーテン332を含む弁膜310の多様な付加的構造を示す。
図10は、弁膜ベース320の一部分に適用されて、境界線334が実質的に線形であるように弁膜自由縁312と縁314との間のほぼ中点で弁膜ベリー領域322において終結する組織内方成長カーテン332を有する弁膜310を示す。いくつかの他の実施例において、組織内方成長カーテン332は、
図10に示す線形境界線が弁膜自由縁312により近く(又はより遠く)へ移動するように、
図10に示すより大きく又は小さくできる。
【0080】
更に、組織内方成長カーテンは、境界線334が線形プロフィル(
図10)を取るように弁膜ベリーの中で終結できるが、他のいくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、境界線334が非線形プロフィルを取るように弁膜ベリーの中で終結できる。
図11及び12は、境界線334が非線形を取るように、弁膜ベース320の一部分に適用されて弁膜ベリー領域322で終結する組織内方成長カーテン332を有する弁膜310を示す。
図11に示すように、境界線334は、弁膜自由縁312に対して凸面形状を取る。
図12に示すように、境界線334は、弁膜自由縁312に対して凹面形状を取る。いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、弁膜自由縁312の中で終結するテーパー状とすることができる。他の実施例において、組織内方成長カーテンは、縁314の中へ向かってテーパー状とすることができる。いくつかの実施例において、このようなテーパーは、隣接配置された弁膜間の組織成長を最小限に抑えるように作用をする(例えば、1つの組織内方成長カーテンから別の組織内方成長カーテンへ、隣接配置された弁膜を差し渡して架橋する)。
【0081】
上述のように、いくつかの実施例において、1つ又は複数の組織内方成長カーテンは、弁膜ベリー領域と組織内方成長カーテンとの間の境界線のプロフィルが不連続であるように、下地弁膜ベースに適用できる。次に
図13を見ると、弁膜310は、弁膜ベース320の第1側の第1部分に適用された第1組織内方成長カーテン332aと、弁膜ベース320の第1側の第2部分に適用された第2組織内方成長カーテン332bと、を含む。図示するように、弁膜310は、第1境界線334aと第2境界線334bとを含む。
図13に示す弁膜310は、下地弁膜ベースの一方の側に適用された2つの異なる組織内方成長カーテンを含むが、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、3つ以上の異なる組織内方成長カーテンを下地弁膜ベースの所与の側に適用できることが分かるはずである。例えば、いくつかの実施例において、複数の異なる組織内方成長カーテンは、指定されるパターン(例えば、タイル型)を得るために下地弁膜ベースの所与の側に適用できる。
【0082】
本明細書において論じる組織内方成長カーテンは、当業者が既知の方法に従って下地弁膜ベースに適用、接着又はその他の方法で結合できる。例えば、いくつかの実施例において、FEPなどの1つ又は複数の接着剤を使用して、組織内方成長カーテンを下地弁膜ベースに結合できる。他の適切な接着剤は、ウレタン、熱可塑剤、フッ素重合体、シリコーン/ウレタン混合物、エポキシ、フッ素エラストマ、FEP、及びFEPの共重合体を含むが、これらに限定されない。これらの接着剤は、下地弁膜ベース及び組織内方成長カーテンの1つ又はそれ以上に適用できる。このようないくつかの実施例において、下層接着剤は、下地弁膜ベースと組織内方成長カーテンを組み合わせる前に下地弁膜ベース及び/又は組織内方成長カーテンの中へ吸上げ(wick)又は吸収される。いくつかの実施例において、下地弁膜ベース及び組織内方成長カーテンは、その代わりに又はそれに加えて、組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースとの間の接着を容易にするために、1つ又は複数の熱処理及び/又は加圧処理を受けることができる。
【0083】
上述の組織内方成長カーテンは、概略的に、膜、フィルム、ニット又は上述のように下地弁膜ベースに接着、適用又はその他の方法で取付けされるその他の構造を含むが、いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、1つ又は複数のコーティングの形式で下地弁膜ベースに適用できる。いくつかのこのような実施例において、コヒーレント不規則網(coherent irregular network)が、下地弁膜ベースの1つ又は複数の部分、領域、区分、区域又はゾーンに分散又は沈着される。このようなコヒーレント不規則網を分散する例は、米国特許出願第12/879333号明細書(その内容は参照により本明細書に援用される)において図解及び説明される。いくつかの実施例において、コヒーレント不規則網は、当業者には分かるように、組織の内方成長及び増殖を支援するために適する表面テクスチャを生成するために下地弁膜ベースの1つ又は複数の部分に適用される。例えば、コヒーレント不規則網は、下地弁膜ベースの1つ又は複数の離散した又は指定された区分、部分又は領域に選択的に適用できる。いくつかのこのような実施例において、コヒーレント不規則網は、コヒーレント不規則網を含む第1領域とコヒーレント不規則網を持たない第2領域とを有する弁膜を得るために、コヒーレント不規則網適用工程後にカバー又はマスクを取り除けるように、組織の内方成長が望ましくない下地弁膜ベースの部分をマスキング又はその他の方法で被覆することによって、指定された区域に適用される。いくつかの実施例において、1つ又は複数のポリイミドシート(例えば、Kaptonシート)などの1つ又は複数の犠牲シートは、下地弁膜ベースに配列されて、コヒーレント不規則網がマスキング又は被覆された区域に適用されるのを防止する。犠牲シート材料の非限定的例は、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、PET、ePTFE/Kaptonブレンド(例、mapton)、ePTFE、PTFE、シリコーン、及びステンレス鋼、又はその他の薄い金属シートを含む。いくつかの実施例において、1つ又は複数の犠牲シートは、コヒーレント不規則網適用工程後に取り除かれて、コヒーレント不規則網を含む1つ又は複数の領域とコヒーレント不規則網のない1つ又は複数の領域(例えば、下地弁膜ベース材料が露出するところ)とを含む構造を有する弁膜を露出できる。このような構造は、結合された膜層間の剥離の可能性を最小限に抑える弁膜の構成を与える。
【0084】
上述のように、いくつかの実施例において、1つ又は複数の組織内方成長カーテンを下地弁膜ベースに適用することに加えて又はその代わりに、下地弁膜ベース材料自体が、組織内方成長を促進又は対応するように構成される。例えば、いくつかの実施例において、下地弁膜ベース材料は、1つ又は複数の下地弁膜ベース材料の1つ又は複数の離散した又は指定された区分、部分又は領域の中へ及び/又はその上に組織が成長するのを助長される(又は成長を防止又は阻止されない)ように構成される。例えば、上述のように、合成下地弁膜ベースを形成する複合材料は、延伸フッ素重合体膜内に吸収その他により取り込まれたエラストマ及び/又はフッ素エラストマなどのエラストマ系材料を含むことができる。様々な実施例において、組織の内方成長及び増殖を促進又は対処する下地弁膜ベースを得るために、延伸フッ素重合体膜は、延伸フッ素重合体膜がエラストマ系フィラー材料を持たない又はこれが吸収されていない(又は少なくともエラストマ系フィラー材料が組織内方成長を防止するように作用する程度まで充填されない)1つ又は複数の離散する部分、領域、区分、ゾーン又は区域を含むように、1つ又は複数のフッ素エラストマを選択的に吸収する。合成下地弁膜ベース材料の選択的吸収は、当業者には既知の技法で行うことができる。
【0085】
図14及び15は、弁膜1410を形成するために選択的に吸収されている膜を含む下地弁膜ベース1420を有する弁膜1410を示す。
図14は、弁膜1410の上面図である。
図15は、
図14の線15-15に沿って見た弁膜1410の断面図である。弁膜310と同様、弁膜1410は、下地弁膜ベース1420と、弁膜自由縁1412と、縁1414と、第1側1416及び第2側1418と、弁膜ベリー領域1422と、弁膜ベース1425と、そして弁膜取付け領域1430とを含む。下地弁膜ベース1420は、膜1421を含む。図示するように、膜1421は、下地弁膜ベース1420を形成するためにベリー領域1422において選択的に吸収されている。具体的には、図示するように、弁膜自由縁1412と境界線1435との間の膜1421の部分は、本明細書において論じる実施形態及び実施例に従ってフィラー材料を吸収しているが、縁1414と境界線1435との間の膜1421の部分は、フィラー材料を一切含まないままである。即ち、縁1414と境界線1435との間の膜1421の部分は吸収されていない。したがって、境界線1435は、フィラー材料を吸収した膜1421の部分と、フィラー材料を含まない膜1421の部分との間の交差部において画定されることが分かるはずである。更に、
図15の断面図は、下地弁膜ベース1420の第1側1416と第2側1418との間に均等に浸透するフィラー材料を示すが、いくつかの実施例において、フィラーは、第1側1416及び第2側1418の各々を始点として膜1421の中へ部分的にしか浸透しない。したがって、様々な実施例において、吸収工程に際し、フィラー材料は、第1側1416及び第2側1418の両側から膜内に吸収される。使用される特定の方法に応じて、フィラー材料は、第1側1416と第2側1418との間の膜1421全体に(又は部分的に)浸透できる。
【0086】
上述のように、弁膜310は、弁膜310が、第2組織内方成長カーテンと異なる断面及び/又は境界線プロフィル及び/又は形状及び/又はサイズを持つ第1組織内方成長カーテンを有するように、弁膜ベース320の対向する第1側及び第2側に配置された第1及び第2組織内方成長を含むように構成できる。同様に、弁膜1410の膜1421は、第1側1416が、(存在する場合)フィラー材料を吸収していない第2側1418の1つ又は複数の部分、領域、区分、ゾーン又は区域とは異なる、(存在する場合)フィラー材料を吸収していない1つ又は複数の部分、領域、区分、ゾーン又は区域を含むように、吸収される。言い換えると、弁膜1410の膜1421は、第1側1416と第2側1418とが異なる組織内方成長プロフィル及び/又は機能を有するように、吸収し得る。
【0087】
例えば、
図16は、弁膜1410の断面(
図14の線15-15と同様の線に沿って見た断面)を示し、弁膜1410は、膜1421の第1側1416全体を横切ってフィラー材料を吸収させ、かつ、第2側1418の全体未満の部分にフィラー材料を吸収させた膜1421を含む。
【0088】
上述の実施形態及び実施例は、組織内方成長カーテンを下地弁膜ベースの1つ又は複数の面の1つ又は複数の部分に適用すること、又は下地弁膜ベースの膜の1つ又は複数の側の1つ又は複数の部分にフィラー材料を選択的に吸収させることを含むが、様々な実施形態において、弁膜は、膜の1つ又は複数の部分に吸収させること及び選択的に吸収された下地弁膜ベースに組織内方成長カーテンを適用することによって、構成できることが分かるはずである。
図17~20は、1つ又は複数の選択的に吸収させた部分、領域、ゾーン又は区域を含みかつ1つ又は複数の組織内方成長カーテンを含む様々な弁膜を示す。
【0089】
図17は、弁膜1710の上面図である。
図18は、
図17の線18-18に沿って見た弁膜1710の断面図である。弁膜1410と同様、弁膜1710は、下地弁膜ベース1720と、弁膜自由縁1712と、縁1714と、第1及び第2側1716及び1718と、弁膜ベリー領域1722と、弁膜ベース1725と、弁膜取付け領域1730と、を含む。下地弁膜ベース1720は、膜1721を含む。図示するように、膜1721は、下地弁膜ベース1720を形成するためにベリー領域1722において選択的に吸収されている。特に、膜1721は、下地弁膜ベース1420と同じ下地弁膜ベース1720を得るために、弁膜1410の膜1421と同様に選択的に吸収されている。更に、
図4に示す弁膜310の構成と同様に、組織内方成長カーテン1732は、下地弁膜ベース1720の第2側1718の一部分に適用される。
【0090】
特に、内方成長カーテン1732は、フィラー材料が吸収されていない下地弁膜ベース1720の第2側1718の部分(縁1714と境界線1735との間に延びる下地弁膜ベース1720の第2側1718の部分)に適用されている。したがって、境界線1734及び1735は、
図17において相互に重なる。いくつかの実施例において、内方成長カーテン1732は、フィラー材料が吸収されていない下地弁膜ベース1720の第2側1718の部分全体に適用される。このような構造は、弁膜1710の第1側1716が、フィラー材料が吸収されていない膜1421の部分によって形成された組織内方成長促進領域を含み、弁膜1710の第2側1718が、組織内方成長カーテン1732によって形成された組織内方成長促進領域を含むようにできる。いくつかの実施例において、組織は、組織内方成長領域の両方の中へ及び又はその上に及び/又はこれを横切って成長又は増殖するように促がされる。様々な他の実施例において、組織内方成長カーテン1732は、それに加えて又はその代わりに、フィラー材料が吸収されていない下地弁膜ベース1720の第1側1716の部分(例えば、縁1714と境界線1735との間に延びる下地弁膜ベース1720の第1側1716の部分)に適用できる。
【0091】
いくつかの実施例において、内方成長カーテン1732は、吸収されていない下地弁膜ベース1720の第1側1716及び/又は第2側1718の部分の全体未満に適用するか、それに加えて又はその代わりに、フィラー材料が吸収されている下地弁膜ベース1720の第1側1716及び/又は第2側1718の1つまたは複数の部分に適用できる。
【0092】
図19及び20は、選択的に吸収された1つ又は複数の部分、領域、ゾーン又は区域を含み、かつ、1つ又は複数の組織内方成長カーテンを含む弁膜1910を示す。
図19は、弁膜1910の上面図である。
図20は、
図19の線20-20に沿って見た弁膜1910の断面図である。
【0093】
弁膜1710と同様、弁膜1910は、下地弁膜ベース1920と、弁膜自由縁1912と、縁1914と、第1及び第2側1916及び1918と、弁膜ベリー領域1922と、弁膜ベース1925と、弁膜取付け領域1930と、を含む。下地弁膜ベース1920は、膜1921を含む。図示するように、膜1921は、下地弁膜ベース1920を形成するために選択的に吸収されている。特に、膜1921は、下地弁膜ベース1720と同じ下地弁膜ベース1920を得るために弁膜1710の膜1721と同様にベリー領域1922において選択的に吸収されている。更に、
図17及び18に示す弁膜1710の構成と同様に、組織内方成長カーテン1932は、下地弁膜ベース1920の第2側1918の部分に適用されている。但し、
図19及び20に示すように、組織内方成長カーテン1932は、境界線1934が縁1914と境界線1935との間に画定されるように、縁1914と境界線1935との間の位置まで延びる。即ち、
図19及び20に示すように、組織内方成長カーテン1932は、フィラー材料が吸収されていない下地弁膜ベース1920の第2側1918の部分の全体未満に適用される。このように、組織内方成長カーテン1932、及びフィラー材料が吸収されていない下地弁膜ベース1920の第2側1918の部分の両方が、周囲の組織に対して露出される。いくつかの実施例において、組織は、組織内方成長カーテン1932及び境界線1934と1935との間の下地弁膜ベース1920の移行区域の両方の中へ及び/又はその上に及び/又はそれを横切って成長又は増殖するように促される。
【0094】
様々な他の実施例において、組織内方成長カーテン1932は、それに加えて又はその代わりに、フィラーが吸収されていない下地弁膜ベース1920の第1側1916の部分が周囲の組織に露出されるように、フィラーが吸収されていない下地弁膜ベース1920の第1側1916の全体未満の部分に適用される。いくつかの実施例において、組織は、これらの付加的組織内方成長領域の中へ及び/又はその上に及び/又はそれを横切って成長又は増殖するように促される。
【0095】
様々な実施例において、下地弁膜ベースは、複数のフィラー材料を吸収できる。即ち、いくつかの実施例において、下地弁膜ベースの膜の第1部分、区域、領域、区分又はゾーンは、第1フィラー材料を吸収でき、下地弁膜ベースの膜の第2部分、区域、領域、区分又はゾーンは第2フィラー材料を吸収できる。例えば、いくつかの実施例において、下地弁膜ベースの膜の第1部分は、膜の第1部分が第1部分の中への及び/又はその上への及び/又はそれを横切る組織内方成長に抵抗する又はこれを阻止又は防止するように、第1フィラー材料が吸収される。但し、いくつかの実施例において、第1フィラーが吸収されている膜の部分は、組織内方成長カーテンの接着又は結合に対処するために適さない場合がある。したがって、組織内方成長弁膜を膜の第2部分に接着又は他の方法で結合することが望ましい実施例においては、第2部分は、膜の第2部分が組織内方成長カーテンをこれに接着又はその他の方法で結合するために適するように、第2フィラー材料を吸収できる。いくつかの実施例において、第2フィラー材料は、それに加えて又はその代わりに、組織内方成長を促進できる。即ち、いくつかの実施例において、膜の1つ又は複数の部分は、組織内方成長及び増殖を促すフィラー材料を吸収できる。その代わりに、上述のように、第2部分は、全くフィラー材料を吸収せず、フィラー材料無しのままとすることができる。
【0096】
図21及び22は、複数の選択的に吸収された部分、領域、ゾーン又は区域を含みかつ1つまたは複数の組織内方成長カーテンを含む弁膜2110を示す。
図21は、弁膜2110の上面図である。
図20は、
図21の線20-20に沿って見た弁膜2110の断面図である。図示するように、膜は第1部分と第2部分とを含む。膜の第1部分は、弁膜自由縁2112と境界線2135との間に延びる部分、領域、ゾーン又は区域に合致し、膜の第2部分は、縁2114と境界線2135との間に延びる部分、領域、ゾーン又は区域に合致する。図示するように、膜2121は、膜2121の第1部分が第1フィラー材料を吸収し(薄い方の陰影)、かつ膜の第2部分が第2フィラー材料を吸収する(濃い方の陰影)ように、選択的に吸収されている。更に、図示するように、組織内方成長カーテン2132は、下地弁膜ベース2120の第2側2118の膜2121の第2部分に適用されている。
【0097】
様々な実施例において、組織内方成長カーテン2132は、それに加えて又はその代わりに、下地弁膜ベース2120の第1側2116の膜2121の第2部分に適用できることが分かるはずである。又、組織内方成長カーテン2132は、下地弁膜ベース2120の第1側2116及び/又は第2側2118の第2部分の全体未満に適用できることも分かるはずである。同様に、下地弁膜ベース2120は、膜2121の第2部分の全体未満が第2フィラー材料を吸収するように構成できることが分かるはずである。即ち、いくつかの実施例において、第2部分の1つ又は複数の領域又はゾーンは、第1及び第2フィラー材料の両方がない場合がある。
【0098】
下地弁膜ベースに接着又は付着された組織内方成長カーテンを含むいくつかの弁膜構成は、分離又は剥離の故障を生じることが分かった。いくつかの実施例において、分離又は剥離は、組織内方成長カーテンの縁において又はその付近で生じる。概略的に、剥離は、組織内方成長カーテンの隣接面が組織内方成長カーテンの縁で終結する場所で又はこれに近接して組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースの隣り合う面の間に生じる。したがって、いくつかの事例において、剥離又は分離は、組織内方成長カーテン332と弁膜ベリー領域322が交差する場所又はそれに近接して組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースの隣り合う面の間に生じる。言い換えると、いくつかの事例において、剥離又は分離は、上述の境界線334において又はこれに近接して生じる。
【0099】
いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースとの間の剥離又は分離の可能性を最小限に抑えるために、組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースを結合する接着剤又は接着層(それに加えて又はその代わりに付加的な接着層)は、組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースの1つ又は複数の縁の間に移行部を形成するように適用できる。いくつかの実施例において、このような移行区域は、組織内方成長カーテン332と弁膜ベリー領域322との間の交差部を横切って(例えば、境界線334を横切って)形成される。
【0100】
図23及び24を見ると、弁膜310は、弁膜ベース320と、接着剤又は接着層340を介して弁膜310の第2側318に適用又は結合接着された組織内方成長カーテン332と、を含む。
図23に示す弁膜310は、
図23に示す弁膜310が、弁膜310の第2側318に適用又は接着される1つの組織内方成長カーテン332のみを含むことを除いて、
図4及び6に示す弁膜310の構成と同様である。他の実施例において、弁膜は、第1及び第2側316及び318の両方に適用された組織成長カーテン332を含むことが分かるはずである。
図23は、
図4の線6-6と同様の線に沿って見た弁膜310の断面図である。図示するように、接着剤又は接着層340は、組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320との間の隣り合う面に沿って延びる。更に、
図23に示すように、境界線334は、組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320との間に急激な移行部を示す。上述のように、境界線334は、組織内方成長カーテン332と弁膜310の作動部分である弁膜ベリー領域322との間の交差点に沿って画定される。当業者は、応力集中が概ね境界線334に沿って生じることが分かるはずである。いくつかの実施例において、これらの応力集中は、応力をより均等に分布するために、組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320との間の交差部の形状を変更することによって、最小限に抑えることができる。
【0101】
図24は、組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320を結合する接着剤又は接着層340が組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースの1つ又は複数の縁の間に移行部を形成するように適用される点を除いて、
図23に示す弁膜310と同様の断面図である。例えば、図示するように、接着剤又は接着層340は、隅肉342が組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320との間の移行部を横切って形成されるように適用される。様々な実施例において、組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320は、自然の隅肉形状を形成するように熱圧着される。いくつかの実施例において、接着剤又はフィラー材料は、接着剤又はフィラー材料を所望の形状に形成するために、組織内方成長カーテン332と弁膜ベース320との間の移行部に、熱及び圧力の1つ又はそれ以上を利用して適用される。いくつかの実施例は、接着剤又はフィラー材料は、予備切断されたシートの形式を持つことができる。
【0102】
いくつかの実施形態に従った人工弁を作る方法は、上述の実施形態及び実施例に従った1つ又は複数の弁膜を形成することと、1つまたは複数の弁膜を弁膜フレームに固定することと、を含む。いくつかの実施例において、1つ又は複数の弁膜を形成することは、本明細書において論じるように下地弁膜材料を形成するために適するePTFE構成体などの膜の1つ又は複数の層を備えるチューブ又はシートを取得することを含む。いくつかの実施例において、膜の1つ又は複数の部分は、吸収された部分又は区域の1つ又はそれ以上が組織内方成長を支援又は促進するために適さないようにするように、1つ又は複数のフィラー材料が(全面的に又は選択的に)吸収される。上述のように、膜は、当業者には既知の方法に従ってフィラー材料を吸収できる。
【0103】
いくつかの実施例において、方法は、更に、本明細書において論じるように、組織内方成長カーテンを形成するために適するフィルム又は膜などのePTFE構成体などの膜を用意することを含む。多様なサイズ、形状、厚み及び材料の構成体が想定されることが分かるはずである。方法は、更に、組織内方成長カーテンを下地弁膜ベースに接着又はその他の方法で結合することを含む。但し、いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンを下地弁膜ベースに適用又は結合する前に、方法は、接着剤を組織内方成長カーテンに適用することを含む。いくつかの実施例において、FEPなどの接着剤は、組織内方成長カーテンの中へ吸上げ又は摂取される。いくつかの実施例において、接着剤は、構成体の1つ又は複数の側から組織内方成長カーテンの中へ吸上げ又は吸収される。それに加えて又はその代わりに、接着剤は、構成体の1つ又は複数の縁から組織内方成長カーテンの中へ吸上げ又は吸収される。いくつかの実施例において、接着剤は、構成体の厚みの5パーセント(%)~95パーセント(%)の範囲の距離まで吸上げ又は吸収される。
【0104】
いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンの望ましいパターンが、例えばレーザーカットなどの既知の方法に従った構成体からカットされる。その後、いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、下地弁膜ベースに適用される。いくつかの実施例において、組織内方成長カーテンは、付随する下地弁膜ベースと層状化されて、組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースとが互いに結合される。組織内方成長カーテンと下地弁膜ベースは、圧着及び/又は熱処理及び/又はヒートセット及び/又は溶剤溶着を含めて(但しこれらに限定されない)既知の方法に従って結合できることが分かるはずである。
【0105】
いくつかの実施例において、方法は、更に、既知の方法に従って得られた構成体から弁膜をカットすることを含む。いくつかの実施例において、当業者には既知の方法に従って、得られた弁膜のきれいな自由縁を得るために最終自由縁カット作業を実施できる。
【0106】
いくつかの実施例において、方法は、上述のように組織内方成長カーテンに接着剤を適用することに加えて又はその代わりに、下地弁膜ベースに接着剤を適用することを含む。いくつかの実施例において、FEPなどの接着剤は、同様に下地弁膜ベースの1つ又は複数の部分の中へ吸上げ又は吸収され、その後、組織成長カーテンと下地弁膜ベースは、既知の方法に従って圧着及び/又はヒートセットされる。
【0107】
いくつかの他の実施例において、組織内方成長カーテン及び下地弁膜ベースに別個に又は個別に接着剤を適用することに加えて又はその代わりに、組織内方成長カーテン(例えば指定されたパターンを持つ)と下地弁膜ベースは、その間に1つ又は複数の接着剤又は接着層を挟んで層状化され、その後、層状化構成体は、既知の方法に従って圧着及び/又はヒートセットされる。方法は、更に、既知の方法に従って得られた構成体から弁膜をカットすることを含む。いくつかの実施例において、最終自由縁カット作業は、当業者には分かるように、既知の方法に従って得られた弁膜のきれいな自由縁を得るために弁膜に対して実施できる。
【0108】
いくつかの実施例において、方法は、更に、人工弁が患者体内に埋植されたとき組織が弁膜の上及び/又はその中へ成長するのを促されるように、弁膜フレームに弁膜を固定することを含む。いくつかの実施例において、方法は、組織内方成長カーテンが弁膜フレームに隣接するように弁膜フレームに弁膜を固定することを含む。いくつかの実施例において、方法は、組織内方成長を促進するように構成された下地弁膜の部分が弁膜フレームに隣接するように、弁膜フレームに弁膜を固定することを含む。いくつかの実施例において、方法は、組織が弁膜フレームを横切って及び/又は弁膜と弁膜フレームとの間の境界面を横切って、及び/又は弁膜上に成長するのを促されるように、弁膜フレームに弁膜を固定することを含む。
【0109】
図25~27は、組織内方成長カーテン332を含む弁膜310を持つ人工弁100の流出側を示す。
図27は、
図25の線27-27に沿って見た人工弁100の断面図である。
【0110】
図25及び26に示すように、人工弁100は、弁膜310の組織内方成長カーテン332が弁膜フレーム200に隣接するように構成される。
図25は、弁膜フレーム200から計測して約1200ミクロン(1.2mm)の幅の組織内方成長カーテン332を持つ弁膜310を示す。
図26は、弁膜フレーム200から計測して約200ミクロン(0.2mm)の幅の組織内方成長カーテン332を持つ弁膜310を示す。
図25及び26に示す実施例は、限定的であると見なされるべきではない。例えば、上述のように、組織内方成長カーテンは、下地弁膜ベース(
図7B、7C及び8C)の表面全体を横切って適用できる。上述の実施形態及び実施例のいくつかは、弁膜の縁314から計測した組織内方成長カーテンの幅に言及するが、適切なカーテン幅は、弁膜が弁膜フレームに取り付けられる様式に基づいて変動することが分かるはずである。
【0111】
更に、上述のように、弁膜フレーム200の1つ又は複数の部分は、組織内方成長を促進するために適する材料で被覆される。したがって、人工弁100は、弁膜フレーム200上へ(例えば、弁膜フレーム200を被覆する材料の上へ及び/又はその中へ)更に弁膜フレーム200から弁膜(例えば、組織内方成長カーテン及び/又は組織内方成長を促進するように構成された下地弁膜ベースの部分)の上へ及び/又はその中への組織の成長が促されるように構成される。いくつかの実施例において、従来の設計と異なり、本明細書において論じる実施形態及び実施例は、完全合成(非生物学的)弁膜を含む人工弁構造を含み、組織は、弁膜フレーム200と弁膜310との間の境界面を横切って人工弁膜310の上へ増殖し成長するように促される。
図28Aは、いくつかの実施形態に従った別の人工弁100の流出側の上面図である。人工弁100は、弁膜310の組織内方成長カーテン332が弁膜フレーム200に隣接するように構成できる。組織内方成長カーテン332は、下地弁膜ベース(
図7B、7C及び8C)の面全体を横切って適用できる。上述の実施形態及び実施例のいくつかは、弁膜の縁から計測した組織内方成長カーテンの幅に言及するが、適切なカーテン幅は、概略的に、弁膜が弁膜フレームに取り付けられる様式に応じて変動することが分かるはずである。更に、組織内方成長カーテン332は、弁膜310のいずれかの側(流入側又は流出側)又は両側に配置できる。
【0112】
更に、上述のように、弁膜フレーム200の1つ又は複数の部分は、組織内方成長を促進するために適する材料で被覆できる。したがって、人工弁100は、組織が弁膜フレーム200上に(例えば、弁膜フレーム200を被覆する材料上に及び/又はその中へ)、又、更に弁膜フレーム200から弁膜(例えば、組織内方成長カーテン及び/又は組織内方成長を促進するように構成された下地弁膜ベースの部分)の上に及び/又はその中へ成長するように促されるように構成されることが分かるはずである。本明細書において論じる実施形態及び実施例は、完全合成(又は非生物学的)弁膜を含む人工弁構造を含み、組織は、弁膜フレーム200と弁膜310との間の境界面を横切って合成弁膜310上へ増殖及び成長するように促される。
図28Bに示す人工弁100は、外科的に埋植された弁とすることができる。このように、人工弁100は、患者の疾患又は損傷のある自然の弁膜の上に又はこれを覆って埋植できる。組織内方成長カーテン332は、患者の自然の弁膜から又はその周りにおいて弁膜フレーム200及び/又は弁膜310上への組織内方成長を促すように構成できる。
【0113】
図28Bは、
図28Aに示す人工弁100の弁膜フレーム200の側面図である。弁膜310は、多様な技法(例えば、接着、付着、縫い付け及びその他)のいずれかを使用して支持構造体102内に受け入れられて、これに結合できる。弁膜フレーム200及び支持構造体102は、弁膜310と一緒に、任意に、収縮プロフィルの送達状態に折畳み可能であり、その後現場で拡張可能である(例えば、バルーン拡張によるなど内部力を加えることによって自己拡張可能である又は拡張する)。弁膜フレーム200は、任意に環状であり、テーパー状円筒形(例えば、円錐体)を形成するか、又はフレーム200は、無負荷状態において(例えば横断荷重を受けないとき)フレーム高さに沿って概ね連続的な円形横断面を形成できる。任意の多様な断面(例えば、卵形又は長方形)が想定されることが分かるはずである。
【0114】
図29及び30は、いくつかの実施形態によれば、人工弁を治療部位へ送達する方法を図示する。
【0115】
経カテーテル送達システム
【0116】
いくつかの実施形態において、
図29を参照すると、経カテーテル送達システム6000は、直径方向に圧迫された又は折り畳まれた状態と拡張作動状態(図示する通り)を持つ
図28A~Bに示す人工弁100などの人工弁6100と、人工弁6100を展開するように構成された送達カテーテル6200と、を備える。人工弁6100は、脈管を通過して送達するために送達カテーテル6200の端部に取り付けでき、複数の拘束具1272によって折畳み状態に維持される。拘束具は、人工弁6100が拡張できるようにするためにその後解除される。送達カテーテル6200上に折畳み状態の人工弁6100を保持するために、経カテーテル送達システム6000は、更に、人工弁100に被せてぴったり嵌めるために取外し可能シース(図示せず)又はその他のタイプの拘束具を備えることができる。
【0117】
送達のいくつかの方法は、人工弁100を送達カテーテル6200の端部において半径方向に圧縮して折畳み状態にするステップと、生来の弁孔(例えば、大動脈弁孔又は僧帽弁孔)など組織孔6400を含む所望の治療部位まで経大腿骨又は経心尖経路で人工弁100を送達するステップと、組織孔6400の中へ人工弁100を拡張するステップと、を含む。人工弁100は、自己拡張式とし、かつ/又は拡張は、バルーン(図示せず)を拡張することによって容易にできる。
【0118】
外科的実施形態
【0119】
人工弁100(上で説明する実施例のいずれかに従う)は、経カテーテル法を使用せずに外科的に埋植できる。
図30に示すように、人工弁100(上で説明する実施形態のいずれかに従う)は、フレーム外側面に隣接してソーイングカフ6300を含むことができる。ソーイングカフ6300(技術上既知のタイプとすることができる)は、組織孔6400などのインプラント部位に人工弁100を固定するために縫合糸を受け入れる構造体を提供するように作動できる。ソーイングカフは、二重ベロアポリエステルなど(これに限定さない)の適切な任意の材料を含むことができる。ソーイングカフ6300は、例えば、人工弁100のフレームの周りの円周方向に配置できる。
【0120】
弁膜がそれに加えて又はその代わりに上述の実施形態及び実施例に従った選択的吸収によって構成される場合、組織内方成長を支援及び/又は促進するために適する対応する部分、区分、領域、区域及び/又はゾーンは、組織内方成長カーテンと同様のサイズとすることができることが分かるはずである。
【0121】
以上の説明において、装置及び/又は方法の構造及び機能の詳細と一緒に様々な方策を含めて多数の特徴及び利点について述べた。本開示は、例示的なものであり、網羅的であることを意図しない。当業者は、特に、特許請求の範囲を表現する用語の広義の一般的意味によって指示される範囲まで、本開示の原理の範囲内で組合せを含めて構造、材料、要素、成分、形状、サイズ及び配列に関して変更を加えることができることが、当業者には明らかであろう。これらの各種の変更が請求項の主旨及び範囲を逸脱しない範囲で、変更は請求項に包括されることを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0121】
以上の説明において、装置及び/又は方法の構造及び機能の詳細と一緒に様々な方策を含めて多数の特徴及び利点について述べた。本開示は、例示的なものであり、網羅的であることを意図しない。当業者は、特に、特許請求の範囲を表現する用語の広義の一般的意味によって指示される範囲まで、本開示の原理の範囲内で組合せを含めて構造、材料、要素、成分、形状、サイズ及び配列に関して変更を加えることができることが、当業者には明らかであろう。これらの各種の変更が請求項の主旨及び範囲を逸脱しない範囲で、変更は請求項に包括されることを意図する。以下、本発明の実施態様を列挙する。
(態様1)
弁膜フレームと、
合成弁膜を含む弁膜構成体であって、各弁膜の上に、該弁膜フレームと該弁膜の間で組織の成長が助長されるような組織内方成長を促進するように構成された部分を含む弁膜構成体と
を含んでなる人工弁であって、
前記合成弁膜が、第1ゾーンと第2ゾーンとを有する多孔質膜を含み、前記合成弁膜の前記多孔質膜の前記第1ゾーン内に第1エラストマ系材料が含まれ、かつ、前記合成弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンには該第1エラストマ系材料が含まれず、さらに
前記合成弁膜が、その下地弁膜ベースに結合された組織内方成長カーテンを含み、該組織内方成長カーテンは組織内方成長を促進するように構成され、かつ、TFE/PMVE共重合体がエラストマ系材料を含む、人工弁。
(態様2)
前記弁膜が、前記下地弁膜ベースに結合された複数の組織内方成長カーテンを含み、該複数の組織内方成長カーテンの各組織内方成長カーテンは組織内方成長を促進するように構成される、態様1に記載の人工弁。
(態様3)
前記複数の内方成長カーテンが、第1組織内方成長カーテンと第2組織内方成長カーテンとを含み、該第1組織内方成長カーテンは前記弁膜の前記下地弁膜ベースの第1側に結合され、かつ、該第2組織内方成長カーテンは前記弁膜の前記下地弁膜ベースの第2側に結合されている、態様2に記載の人工弁。
(態様4)
前記組織内方成長カーテンが多孔質膜を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様5)
前記組織内方成長カーテンがフッ素重合体膜を含む、態様4に記載の人工弁。
(態様6)
前記フッ素重合体膜が延伸フッ素重合体を含む、態様5に記載の人工弁。
(態様7)
前記延伸フッ素重合体膜がePTFEを含む、態様6に記載の人工弁。
(態様8)
前記組織内方成長カーテンが前記下地弁膜ベースに結合されている、態様1~7のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様9)
前記弁膜フレームが組織内方成長を促進するように構成される、態様1~8のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様10)
組織が前記弁膜フレームを横切って前記弁膜上にまで成長するように助長される、態様1~9のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様11)
前記弁膜フレームが組織内方成長促進材料で被覆される、態様1~10のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様12)
前記組織内方成長促進材料が布帛である、態様11に記載の人工弁。
(態様13)
前記組織内方成長カーテンが前記下地弁膜ベースに接着剤で結合される、態様1~12のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様14)
前記組織内方成長を促進するように構成された部分が前記弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンに結合される、態様1~13のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様15)
前記組織内方成長カーテンが前記弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンに接着剤で結合される、態様14に記載の人工弁。
(態様16)
前記弁膜の前記多孔質膜が第1側と第2側とを含み、前記組織内方成長カーテンが、前記弁膜の前記多孔質膜の前記第1側において、前記弁膜の前記多孔質膜の前記第2ゾーンを完全に被覆する、態様1~15のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様17)
前記多孔質膜がフッ素重合体膜である、態様1~16のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様18)
前記フッ素重合体膜が延伸フッ素重合体を含む、態様17に記載の人工弁。
(態様19)
前記延伸フッ素重合体がePTFEを含む、態様18に記載の人工弁。
(態様20)
前記第1エラストマ系材料がシリコーンである、態様1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様21)
前記第1エラストマ系材料がフッ素エラストマである、態様1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様22)
前記第1エラストマ系材料がウレタンである、態様1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様23)
前記第1エラストマ系材料がTFE/PMVE共重合体である、態様1~19のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様24)
前記弁膜の前記多孔質膜の前記第1ゾーン内に第2エラストマ系材料が含有される、態様1~23のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様25)
前記組織内方成長カーテンが前記下地弁膜ベースに接着剤で結合されており、該接着剤が、前記下地弁膜ベースと前記組織内方成長カーテンの1つ又は複数の縁との間に移行部を形成している、態様1~24のいずれか一項に記載の人工弁。
(態様26)
前記組織内方成長カーテンと前記弁膜ベースとの間の移行部を差し渡す隅肉が形成されている、態様25に記載の人工弁。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋植可能な心臓弁のための組織内方成長複合材料であって、
フィブリルのマトリクス内に形成された複数の空間を含む延伸フッ素重合体膜と、該延伸フッ素重合体膜内に吸収されたフッ素エラストマとを含むベース層を含んでなり、
該フッ素エラストマは、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(TFE/PMVE共重合体)を含み、該TFE/PMVE共重合体は、67~61質量パーセントのテトラフルオロエチレンと33~39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むことを特徴とする、組織内方成長複合材料。
【請求項2】
さらに、73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンと27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むTFE/PMVE共重合体の層を含む、請求項1に記載の組織内方成長複合材料。
【請求項3】
前記組織内方成長複合材料の一部が組織内方成長を抑える特性を有する、請求項1に記載の組織内方成長複合材料。
【請求項4】
前記組織内方成長複合材料が1~400ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の組織内方成長複合材料。
【請求項5】
埋植可能な心臓弁のための組織内方成長複合材料であって、
フィブリルのマトリクス内に形成された複数の空間を含む延伸フッ素重合体膜と、該延伸フッ素重合体膜内に吸収されたフッ素エラストマとを含むベース層、及び
73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンと27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含むTFE/PMVE共重合体の層
を含んでなる、組織内方成長複合材料。
【請求項6】
前記フッ素エラストマは、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(TFE/PMVE共重合体)を含み、該TFE/PMVE共重合体は、60~20質量パーセントのテトラフルオロエチレンと40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルとを含む、請求項5に記載の組織内方成長複合材料。
【請求項7】
フレームと、
該フレームに結合され、組織内方成長を促進するように構成された多孔質膜を含む組織内方成長カーテンと
を含んでなる、埋植可能な心臓弁。
【請求項8】
前記多孔質膜はフッ素重合体膜を含む、請求項7に記載の心臓弁。
【請求項9】
前記フッ素重合体膜は延伸フッ素重合体を含む、請求項8に記載の心臓弁。
【請求項10】
前記延伸フッ素重合体はePTFEを含む、請求項9に記載の心臓弁。
【請求項11】
さらに前記フレームに結合された膜を含み、前記組織内方成長カーテンは、前記組織内方成長カーテンが該膜を介して前記フレームに結合されるように該膜に結合されている、請求項7に記載の心臓弁。
【請求項12】
前記組織内方成長カーテンは、接着剤を介して前記膜に結合されている、請求項7に記載の心臓弁。
【請求項13】
前記膜は第1ゾーンと第2ゾーンとを有し、前記組織内方成長カーテンは、前記膜の該第2ゾーンに結合されている、請求項7に記載の心臓弁。
【請求項14】
前記組織内方成長カーテンは、接着剤を介して前記膜の前記第2ゾーンに結合されている、請求項13に記載の心臓弁。
【請求項15】
前記膜は第1ゾーンと、第2ゾーンと、第1側と、第2側とを有し、前記組織内方成長カーテンは、前記膜の該第1側において前記膜の該第2ゾーンを完全に被覆する、請求項7に記載の心臓弁。
【請求項16】
前記組織内方成長カーテンはフッ素エラストマを含む、請求項7に記載の心臓弁。
【請求項17】
前記組織内方成長カーテンはTFE/PMVE共重合体を含む、請求項7に記載の心臓弁。