(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084913
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057970
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2020190042の分割
【原出願日】2015-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
(57)【要約】
【課題】セラミック焼結体における内部電極が外部から透けて認識されないようにすることで、外観検査の精度を高めた積層セラミックコンデンサを提供すること。
【解決手段】積層セラミックコンデンサ(1)は、誘電体層(12)及び内部電極層(13)が交互に積層されてなる積層体(11)と、積層体を被覆するカバー層(15)及びサイドマージン部(16)とを含む。積層体の保護領域(カバー層及びサイドマージン部)には色素成分が添加される。サイドマージン部(16)の厚みはカバー層(15)の厚みよりも薄く、サイドマージン部(16)の色素成分の濃度はカバー層(15)の色素成分の濃度よりも高いことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極層が交互に積層されてなる積層体と、前記積層体の積層方向における最外層であるカバー層及び前記積層体の積層方向に直交し、かつ、該積層体の内部電極が引き出される方向に直交する両面側に設けられるサイドマージン部である保護領域とを含む積層セラミックコンデンサであって、
前記保護領域に色素成分が添加されており、
前記サイドマージン部の厚みが前記カバー層の厚みよりも薄く、
前記サイドマージン部の色素成分の濃度が前記カバー層の色素成分の濃度よりも高い、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記保護領域が、前記主成分元素であるBa又はTi100molに対して、前記色素成分を0.2mol以上含有する、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記保護領域の厚みが15μm以下である、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記内部電極で挟まれる誘電体層の厚みが0.8μm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記保護領域が、前記主成分元素であるBa又はTi100molに対して、前記色素成分を10mol以下含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記色素成分が、V、Mo、Nb、Ta、W、Mnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である、請求項1~5の何れか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる積層体を含む積層セラミックコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やタブレット端末などのデジタル電子機器に使用される電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、当該回路を構成する積層セラミックコンデンサ(MLCC)の小型化、大容量化が急速に進んでいる。
【0003】
積層セラミックコンデンサの容量は、当該コンデンサを構成する誘電体層の構成材料の誘電率や誘電体層の積層数に比例し、誘電体層一層あたりの厚みに反比例する。そこで、小型化の要求にもこたえるため、材料の誘電率を高め、かつ誘電体層の厚みを薄くしてその積層数を増加させることが求められる。
【0004】
ところで、積層セラミックコンデンサにおいては、容量層である積層体を被覆するカバー層やサイドマージン部などの保護領域が設けられている。しかし、コンデンサの容量を上げるために誘電体層の積層数を増加させた場合、規定のチップサイズに収めるため、その積層方向における最外層として設けられるカバー層の厚みをより薄くする必要がある。また、容量を上げるため内部電極層の交差面積を広くした場合も、積層体の積層方向に直交する両面側に設けられるサイドマージン部の厚みをより薄くせざるを得ない。
【0005】
例えば、特許文献1には、カバー層の厚さが15μm以下の積層セラミックコンデンサが開示されている。また、特許文献2には、積層セラミックコンデンサの上部及び下部カバー層のうち何れか一つに明るさまたは色相の差異によりセラミック本体の上下部を識別する識別部を設けることが提案されている。この識別部は、Ni、Mn、Cr及びVから選択された一つ以上の金属が添加された誘電体層を含み、これによりセラミック本体の外部で明るさまたは色相の差異が認識できることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-11449号公報
【特許文献2】特開2014-22722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、小型化かつ大容量化した積層セラミックコンデンサにおいては、カバー層やサイドマージン部などの保護層(保護領域)の厚みをより薄くせざるを得ない。しかし、保護層の厚みを薄くすると、チップの外観画像検査において、薄い保護層を透して内部の電極が変色部として認識されてしまうことがある。このような内部電極が透けて見える変色部と内部電極が無い部分の色差と、セラミックにおけるクラックやデラミネーションなど実際の欠陥部との違いを、画像認識処理により識別することは困難である。そのため、例えば厚みが15μm以下の薄い保護層を備える積層セラミックコンデンサにおいては、外部から透けて見える内部電極の端が欠陥部として誤認され、誤って不良判定されてしまうという問題が生じていた。
【0008】
そこで本発明は、小型化かつ大容量化した積層セラミックコンデンサであって、セラミック焼結体における内部電極が外部から透けて画像認識されないようにすることで、チップの外観検査の精度を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、誘電体層及び内部電極層が交互に積層されてなる積層体と、前記積層体の積層方向における最外層であるカバー層及び前記積層体の積層方向に直交し、かつ、該積層体の内部電極が引き出される方向に直交する両面側に設けられるサイドマージン部である保護領域とを含む積層セラミックコンデンサであって、前記保護領域に色素成分が添加されており、前記サイドマージン部の厚みが前記カバー層の厚みよりも薄く、前記サイドマージン部の色素成分の濃度が前記カバー層の色素成分の濃度よりも高い、積層セラミックコンデンサである。
【0010】
積層セラミックコンデンサは、前記保護領域が、前記主成分元素であるBa又はTi100molに対して、前記色素成分を0.2mol以上含有することが好ましい。
【0011】
また、積層セラミックコンデンサは、前記保護領域の厚みが15μm以下であることが好ましい。
【0012】
また、積層セラミックコンデンサは、前記内部電極で挟まれる誘電体層の厚みが0.8μm以下であることが好ましい。
【0013】
また、積層セラミックコンデンサは、前記保護領域が、前記主成分元素であるBa又はTi100molに対して、前記色素成分を10mol以下含有することが好ましい。
【0014】
また、積層セラミックコンデンサは、前記色素成分が、V、Mo、Nb、Ta、W、Mnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、積層体の保護領域に色素成分を添加することにより、外観画像検査において内部電極層が透けて認識されることがなくなる。これにより、内部電極層が透けて画像認識されることに起因する誤判定を防ぐことができ、画像検査の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの一部断面を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の積層セラミックコンデンサのII断面を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1の積層セラミックコンデンサのIII断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[積層セラミックコンデンサ]
図1は、本発明に係る積層セラミックコンデンサ1の一部断面を模式的に示す斜視図である。積層セラミックコンデンサ1は、規格で定められたチップ寸法及び形状(例えば1.0×0.5×0.5mmの直方体)を有するセラミック焼結体10と、セラミック焼結体10の両側に形成される一対の外部電極20とから概ね構成される。セラミック焼結体10は、Ba及びTiを含む粒子結晶を主成分とし、内部に誘電体層12及び内部電極層13が交互に積層されてなる積層体11(「内電アクティブ層」又は「容量層」ということがある。)と、積層体11の少なくとも一部を被覆する保護領域14とを含んでいる。保護領域14は、積層体11の積層方向上下の最外層として形成されるカバー層15と、積層体11の積層方向に直交する両面側に設けられるサイドマージン部16とを含む。
【0018】
積層体11は、静電容量や要求される耐圧等の仕様に応じて、2枚の内部電極層13で挟まれる誘電体層12の厚みが0.8μm以下であって、全体の積層数が百~数百の高密度多層構造を有している。
【0019】
積層体11の最外層部分に形成されるカバー層15、及び積層体11の積層方向に直交する両面側に設けられるサイドマージン部16は、誘電体層12及び内部電極層13を外部からの湿気やコンタミ等の汚染から保護し、それらの経時的な劣化を防ぐために設けられている。
【0020】
また、内部電極層13はその端縁が、誘電体層12の長さ方向両端部にある極性の異なる一対の外部電極20に交互に引き出されている。
【0021】
積層セラミックコンデンサ1の誘電体層12は、Ba及びTiを含む主成分元素と、元素Xを含む副成分とを有するセラミック粒子を含む。セラミック粒子の主成分は、例えばBaTiO3である。副成分元素Xは、具体的には、Mo、Ta、Nb及びWからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である。また前記セラミック粒子は、さらに添加成分として、希土類元素(Y,Sm,Eu,Tb,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb)およびSiO2等のSi化合物を含む。
【0022】
また、誘電体層12中における副成分元素Xの組成量(濃度)は特に制限されるものではないが、積層セラミックコンデンサ1の寿命特性及びバイアス特性の観点から、誘電体層12中におけるTi100molに対して0.05~0.3molであることが好ましい。
【0023】
このようなセラミック粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、誘電体層12の薄層化の観点から、好ましくは80~800nmである。なお、本明細書において平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)またはTEMでセラミック粒子を観察し、1つの画像に80粒子程度となるように倍率を調整し、合計で300粒子以上となるように複数枚の写真を得て、写真上の粒子全数について計測したFeret径の平均値である。なお、Feret径とは、粒子を挟む2本の平行接線間の距離で定義される定方向接線径である。
【0024】
内部電極層13を形成する導電性材料としては、特に制限されるものではないが、例えばAg、Pb、Pt、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素を含むことができる。
【0025】
積層体11の保護領域14であるカバー層15及びサイドマージン部16は、主成分元素としてBa及びTiを含んでいる。カバー層15及びサイドマージン部16の主成分は、誘電体層12の主成分と同一であり、例えばBaTiO
3であることが好ましい。カバー層15及びサイドマージン部16の厚みは、規格で定められたチップ寸法内で最大容量を得るという観点から、15μm以下に形成される。ここで、カバー層の「厚み」とは、カバー層表面と該カバー層表面から最も近い内部電極との間の最短の距離をいう(
図2参照)。サイドマージン部の「厚み」とは、サイドマージン部表面と該サイドマージン部表面から最も近い内部電極端部との間の最短の距離をいう(
図3参照)。すなわち保護領域の「厚み」とは、保護領域表面と該保護領域表面から最も近い内部電極との間の最短の距離をいう。
【0026】
カバー層15及び/又はサイドマージン部16には、副成分として、これら保護領域14を暗色化する色素成分が添加されている。保護領域14に添加される副成分(色素成分)は、誘電体層12の副成分と同じ元素を含むものでもよいが、それ以外にV、Mo、Nb、Ta、W、Mnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものでもよい。カバー層15及び/又はサイドマージン部16は、主成分元素であるBa又はTi100molに対して、副成分(色素成分)を0.2mol以上含有することが好ましい。0.2mol%以上の副成分が添加されたセラミック焼結体10は、少なくとも15μmの深度(厚み)を超えては可視光を通さない状態となる。
また、カバー層15及び/又はサイドマージン部16に添加される副成分(色素成分)の量は、主成分元素であるBa又はTi100molに対して、10mol以下であることが好ましい。
【0027】
カバー層15及び/又はサイドマージン部16における副成分(色素成分)の組成量は、誘電体層12における副成分の組成量よりも多い。具体的には、カバー層15の色素成分組成量aを、誘電体層12の副成分組成量bの少なくとも1.5倍以上にすることが好ましい。カバー層15の色素成分量aが、誘電体層12の副成分の副成分量bの1.5倍以上の場合、カバー層15が十分暗色化し、チップの外観画像検査において最外層の内部電極13がカバー層15を透して認識されなくなる。これによりセラミック粒子構造欠陥の誤判定を防ぐことができる。また、サイドマージン部16の色素成分組成量aを、誘電体層12の副成分組成量bの1.5倍以上にした場合も、サイドマージン部16が暗色化し、内部電極層13の端部がサイドマージン部16を透して認識されなくなる。
また、カバー層15及び/又はサイドマージン部16の色素成分組成量aを、誘電体層12の副成分組成量bの5倍よりも多くすると、一部の色素成分が誘電体層12に拡散し、誘電体層12の焼結性や誘電率に影響する。5倍を超えると濃度差による拡散により誘電率が1.5倍での誘電率から10%以上も低下してしまう。
【0028】
したがって、カバー層15及び/又はサイドマージン部16における色素成分の組成量(主成分に対するmol比)aは、誘電体層12における副成分の組成量(主成分に対するmol比)bの少なくとも1.5倍以上であること、また色素成分組成量aは、副成分組成量bの5倍以下、好ましくは3倍以下であることが好ましい。すなわち、副成分組成量bに対する色素成分組成量aの比が、1.5≦a/b≦5.0の関係式を満たすことが好ましい。
【0029】
カバー層15及び/又はサイドマージン部16に添加する色素成分は、V、Mo、Nb、Ta、W、Mnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。これらの元素は、Niを含む内部電極層13に近い色相にカバー層15及び/又はサイドマージン部16を暗色化することができる。つまり、これらの元素を含む色素成分が添加されることにより、上述した誘電体層12の副成分量bに対する保護領域14の色素成分量aの比(a/b)を可及的に小さくすることができ、誘電体層12の焼結性や誘電率への影響を減らすことができる。
【0030】
なお、色素成分が添加される保護領域は、カバー層15及びサイドマージン部16の双方、又は、カバー層15若しくはサイドマージン部16の何れか一方のみであってもよい。また、チップ外部からの内部電極の透視をなくすため、カバー層15及び/又はサイドマージン部16の表面に暗色の塗料などを塗布する手法も有効性があると考えられる。
【0031】
また、本発明は、積層体11や誘電体層12を構成するセラミック粒子が、主成分元素として、Sr、Caより選ばれる少なくとも一種の元素及びTi、Zrより選ばれる少なくとも一種の元素を含む、例えば温度補償用コンデンサにも適用することができる。かかる組成のセラミック粒子は、Ba及びTiを主成分とするセラミック粒子よりも色が薄いため、内部電極層13が透けて画像認識されることに起因する誤判定を招き易かった。このような積層セラミックコンデンサにおいても、カバー層15及び/又はサイドマージン部16に、V、Mo、Nb、Ta、W、Mnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有する副成分(色素成分)を添加することにより内部電極層13が透けて見えなくなり、本発明の効果を特に有効に奏することができる。
【0032】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
以下、以上説明した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
まず、誘電体層12を形成するための原料粉末を用意する。誘電体はBa及びTiを含んでおり、これは通常チタン酸バリウム(BaTiO3)粒子の焼結体の形で誘電体層12に含まれる。
【0033】
チタン酸バリウムはペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このチタン酸バリウムは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得られる。前記チタン酸バリウムの合成方法としては従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾルゲル法、水熱法等が知られている。本発明においては、これらのいずれも採用可能である。
【0034】
本方法においては、好ましくはまずチタン酸バリウム粒子に、上述した副成分元素Xを含む副成分化合物を混合して820~1150℃で仮焼を行う。続いて、仮焼後のチタン酸バリウム粒子を希土類化合物およびSi化合物等の添加成分化合物とともに湿式混合し、乾燥、粉砕してセラミック粉末を調製する。誘電体層に添加する副成分化合物の量は、Ti100molに対して0.05~0.3molである。また、希土類化合物の量はTi100molに対して0.05~0.5mol、Si化合物の量はTi100molに対して0.5~1.5molである。
【0035】
そして前記セラミック粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダ、エタノール及びトルエン等の有機溶剤並びにフタル酸ジオクチル(DOP)等の可塑剤を加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に厚み1.2μm以下の帯状の誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0036】
カバー層となるグリーンシート(カバーシート)についても、上述した誘電体グリーンシートと同様の工程を経て調製される。また、サイドマージン部となる誘電体ペーストについても上述したスラリーと同様の工程を経て調製される。ただし、これらの保護層については、暗色化するための色素成分として、誘電体層に添加する副成分の副成分量の少なくとも1.5倍以上、好ましくは0.2mol%以上の副成分が、チタン酸バリウム粒子に混合される。保護層に添加する副成分化合物は、誘電体グリーンシートに添加する副成分化合物と同じでよいが、それ以外にV、Mo、Nb、Ta、W、Mnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものでもよい。
【0037】
そして、誘電体グリーンシートの表面に、有機バインダを含む金属導電ペーストをスクリーン印刷により印刷することで、極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出される内部電極層のパターンを配置する。前記金属としては、コストの観点からニッケルが広く採用されている。なお、前記金属導電ペーストには共材として、平均粒子径が50nm以下のチタン酸バリウムを均一に分散させてもよい。
【0038】
その後、内部電極層パターンが印刷された誘電体グリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれた前記誘電体グリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層13と誘電体層12とが互い違いになるように、かつ内部電極層が誘電体層の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出されるように、所定層数(例えば100~500層)だけ積層する。積層した誘電体グリーンシートの上下に、カバー層15となる15μm厚のカバーシートを積層し圧着する。そして、積層体を電極のサイド部が露出するように所定チップ寸法にカットし、電極が露出した積層方向に垂直な両カット面に、誘電体ペーストを厚さ15μm厚となるように塗布して乾燥させサイドマージン部15を形成する。
【0039】
その後に外部電極20となるNi導電ペーストを、カットした積層体の両側面に塗布して乾燥させる。これにより、積層セラミックコンデンサ1の成型体が得られる。なお、スパッタリング法によって、積層体の両端面に外部電極を厚膜蒸着してもよい。
【0040】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの成型体を、250~500℃のN2雰囲気中で脱バインダした後に、還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成することで、前記誘電体グリーンシートを構成する各化合物が焼結して粒成長する。このようにして、内部に焼結体からなる誘電体層12及び内部電極層13が交互に積層されてなる積層体11と、積層方向上下の最外層として形成されるカバー層15及び積層方向両面側に形成されるサイドマージン部16とを有する積層セラミックコンデンサ1が得られる。
【0041】
なお、本発明においてはさらに、600~1000℃で再酸化処理を実施してもよい。また、積層セラミックコンデンサの製造方法に関する他の実施形態としては、外部電極と誘電体とを別の工程で焼成させてもよい。例えば誘電体を積層した積層体を焼成した後に、その両端部に導電ペーストを焼き付けて外部電極を形成してもよい。
【0042】
[実施例]
表1に、試作したMLCCの各製造条件と評価結果を示す。なお、サンプルNo.1~26は、さらに添加成分として酸化ホルミウムをTi100molに対して0.5mol、二酸化ケイ素をTi100molに対して1.0mol添加した。また、サンプルNo.27~33は、さらに添加成分として酸化ホルミウムを主成分100molに対して0.1mol、二酸化ケイ素を主成分100molに対して1.0mol添加した。また、サンプルの形状は1.0mm×0.5mm×0.5mmの直方体形状とした。
【表1】
【0043】
(サンプルNo.1~26)
サンプルNo.1~26は、BaTiO3を主成分とするMLCCである。これらについては画像不良率0%、且つ、比誘電率が4000よりも大きいものを適合品と判定した。これらのサンプルのうち、誘電体層における副成分量bが0.05~0.3mol%であるとき、カバー層(厚み13~15μm)における色素成分量a1が0.2mol%以上、またサイドマージン部(厚み13~15μm)における色素成分量a2が0.2mol%以上のサンプル(No.1、2、8~10、18、20~26)で良好な結果が得られた。これら実施例の色素成分/副成分の分量比は、1.5b≦a1≦5b、1.5b≦a2≦5bであった。
【0044】
カバー層及び/又はサイドマージン部に色素成分が添加されていないサンプルNo.3、17や、色素成分が0.1mol%程度と少ないサンプルNo.12、15などでは、画像不良率が30%、60%と高くなった。また、色素成分/副成分の分量比a1/b、a2/bが、それぞれ1.0程度と少ないサンプルNo.4、15も、画像不良率が30%、60%と若干高くなった。
【0045】
色素成分/副成分の分量比が5.0を超えるサンプルNo.5、6、13、14、19については、画像不良率が0%と良好であったが、比誘電率が4000以下となった。このことから、小型大容量の積層セラミックコンデンサを得るためには、色素成分/副成分の分量比a1/b、a2/bがそれぞれ1.5~5.0の範囲であることが好ましい。
【0046】
なお、サンプルNo.16のMLCCについては、色素成分量が1.0mol%(色素成分/副成分の分量比が1.0)と過少ではあるが、画像不良率は0%であった。画像不良率が0%の理由は、カバー層及びサイドマージン部の厚みが17μmと比較的厚く、そのため内部電極層が外部から透けて見えなかったためと考えられる。
【0047】
(サンプルNo.27~33)
サンプルNo.27~33は、BaTiO3以外を主成分とするMLCCであって、Sr、Caより選ばれる少なくとも一種の元素及びTi、Zrより選ばれる少なくとも一種の元素を主成分として含むサンプルである。これらについては、画像不良率0%を適合品と判定した。例えばカバー層及びサイドマージン部における色素成分量が0.2mol%であるサンプルNo.27~30については、画像不良率0%が達成され良好であった。
【符号の説明】
【0048】
1 積層セラミックコンデンサ
10 セラミック焼結体
11 積層体
12 誘電体層
13 内部電極層
15 カバー層
16 サイドマージン部
20 外部電極