IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-84915頚動脈血流の逆流を確立する方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084915
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】頚動脈血流の逆流を確立する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
A61M1/36 100
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022058009
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2020158552の分割
【原出願日】2016-04-07
(31)【優先権主張番号】62/145,809
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ステュワート・エム・クメ
(72)【発明者】
【氏名】シエウ・ティ・ズオン
(72)【発明者】
【氏名】ミチ・イー・ギャリソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内頚動脈などの脳血管への塞栓の放出を制限または防止するため、頚動脈分岐部の領域における血液循環の逆流を確立し、容易にする装置および方法を提供する。
【解決手段】システム100は、頚動脈と相互に作用して、頚動脈から、例えば内頚静脈(または、別の大静脈や、代わりの実施態様における外部レセプタクルなどの別のリターンサイト)などの静脈リターンサイトに逆流を提供する。逆流システム100は、動脈アクセスデバイス110と、静脈リターンデバイス115と、動脈アクセスデバイス110から静脈リターンデバイス115までの逆流通路を提供するシャント120と、を含んでいる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経頚部アクセスデバイスであって:
内部管腔を規定するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、総頚動脈内に導入され、前記頸動脈から血流を受け取るように、前記シース本体のサイズおよび形が決められる、動脈アクセスシース;
前記シース本体の近位端に取り付ける細長いチューブであって、コネクターが前記チューブを前記シース本体と接続する、細長いチューブ;
前記細長いチューブの近位端にあるアダプターであって、前記アダプターは血流シャントラインと取り外し可能に接続するのに適合しているハブを有し、前記アダプターは前記経頚部アクセスデバイスの内部管腔に近接して配置されるバルブをさらに有し、前記バルブは前記経頚部アクセスデバイスの前記内部管腔から前記ハブに向かう流量を制御する、アダプター;
前記アダプターの近位端に接続する近位伸長部であって、細長い本体から形成された、近位伸長部;
前記近位伸長部が止血バルブを前記アダプターから離して配置するように、前記近位伸長部の近位端にある止血バルブ;および
前記近位伸長部の近位端に接続し、洗い流すための流体の通路を前記シース本体内に提供する、洗い流しラインを含む、経頚部アクセスデバイス。
【請求項2】
前記細長いチューブを前記アダプターに接続する前記コネクター上に位置する小穴をさらに含む、請求項1記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項3】
前記バルブが、前記経頚部アクセスデバイスの前記内部管腔からの血流を可能にする開状態と、前記経頚部アクセスデバイスの前記内部管腔からの血流を遮断する閉状態と、の間を移行する、請求項1記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項4】
前記シース本体の一部を覆い、かつ前記シース本体の一部を露出するように、前記シース本体上に配置できるシースストッパーをさらに含み、前記シースストッパーは、前記頚動脈内への前記シース本体の挿入を前記シース本体の露出された遠位部分に制限し、フランジは前記シースストッパーの遠位端に配置される、請求項1記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項5】
前記フランジが可膨張性または機械的に拡張可能である、請求項4記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項6】
経頚部アクセスデバイスであって:
内部管腔を規定するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、総頚動脈内に導入され、前記頸動脈から血流を受け取るように、前記シース本体のサイズおよび形が決められる、動脈アクセスシース;
前記シース本体の近位端にあるアダプターであって、前記アダプターは血流シャントラインと取り外し可能に接続するのに適合しているハブを有し、前記アダプターは前記経頚部アクセスデバイスの内部管腔に近接して配置されるバルブをさらに有し、前記バルブは前記経頚部アクセスデバイスの前記内部管腔から前記ハブに向かう流量を制御する、アダプター;
前記アダプターの近位端に接続する近位伸長部であって、細長い本体から形成された、近位伸長部;
前記近位伸長部が止血バルブを前記アダプターから離して配置するように、前記近位伸長部の近位端にある止血バルブ;および
前記近位伸長部の近位端に接続し、洗い流すための流体の通路を前記シース本体内に提供する、洗い流しラインを含む、経頚部アクセスデバイス。
【請求項7】
前記シース本体を前記アダプターに接続する前記コネクター上に位置する小穴をさらに含む、請求項6記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項8】
前記バルブが、前記経頚部アクセスデバイスの前記内部管腔からの血流を可能にする開状態と、前記経頚部アクセスデバイスの前記内部管腔からの血流を遮断する閉状態と、の間を移行する、請求項6記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項9】
前記シース本体の一部を覆い、かつ前記シース本体の一部を露出するように、前記シース本体上に配置できるシースストッパーをさらに含み、前記シースストッパーは、前記頚動脈内への前記シース本体の挿入を前記シース本体の露出された遠位部分に制限し、フランジは前記シースストッパーの遠位端に配置される、請求項6記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項10】
前記アダプターの前記ハブと取り外し可能に接続する血流シャントラインをさらに含み、前記血流シャントライン上に単一のハウジングをさらに含み、前記ハウジングは:
前記血流シャントを通して血流の低流状態と高流状態との間を動かすことのできる血流制御要素;
前記血流シャントを通る血流を可能にする開状態と、前記血流シャントを通る血流を遮断する閉状態と、の間を移行できるバルブ;
流体フィルター;および
一方向チェックバルブを含む、請求項1または6に記載の経頚部アクセスデバイス。
【請求項11】
前記血流シャントラインが前記アクセスデバイスからリターンサイトに流量を切り替える、請求項10記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、同時係属の米国仮特許出願第62/145,809号(発明の名称「頚動脈血流の逆流を確立する方法およびシステム(METHODS AND SYSTEMS FOR ESTABLISHING RETROGRADE CAROTID ARTERIAL BLOOD FLOW)」、2015年4月10日に出願)の優先権を主張する。上述の出願日の優先権を主張し、この仮特許出願はその全体を参照して本明細書に組み入れる。
【0002】
背景
本願の開示は、概して、医療方法および医療機器に関する。特に、本願の開示は、頚動脈ステント留置術および他の手技の間に、頚動脈血管にアクセスし、血流の逆流を確立するための方法およびシステムに関する。
【0003】
頚動脈疾患(Carotid artery disease)は、通常は、総頚動脈CCAと内頚動脈ICAとの間の接合部(junction)を狭くするプラークPの沈着から成り(図5)、動脈は脳に血流を提供している。これらの沈着は、塞栓粒子(embolic particles)が生成され、そして脳血管に入るリスクを増加させ、例えば、一過性脳虚血発作TIA、虚血性脳卒中、または死などの神経学的な結果(neurologic consequences)を引き起こす。さらに、そのような狭窄が重症になれば、脳への血流が阻害され、深刻で、しばしば致命的な結果を伴う。
【0004】
頚動脈疾患を治療するのに、主に2つの治療法が用いられる。第1は、頚動脈血管内膜切除術CEAという外科的切開手術であり、その手術では、総頚動脈、内頚動脈および外頚動脈を閉塞し、病変部位(the site of the disease)(通常、総頚動脈CCAが内頚動脈ICAと外頚動脈ECAとに分かれる頚動脈の分岐部)で頚動脈を切開し、プラークPを切り離して除去し、次に頚動脈を閉じることに依る。第2の手法は、頚動脈にステントを留置する手技に依り、これは、頚動脈ステント留置術CASと呼ばれており、典型的には、総頚動脈CAAから内頚動脈ICAへの分岐部に又は分岐部を横切って留置され、あるいは完全に内頚動脈内に留置される。通常、自己拡張型ステント(self-expanding stent)は、鼠径部内の大腿動脈への経皮的穿刺(percutaneous puncture)を通して、大動脈弓を上がり、目標となる総頚動脈CCAの中に導入される。
【0005】
これら両方法には、患者は、内頚動脈ICAを介して脳血管に放出される(released)塞栓のリスクにさらされる。顔の構造に血液を提供する動脈である外頚動脈ECAへの塞栓放出の臨床的結果は、それほど重要ではない。CEAの間、血管を閉じて血流を回復する前の、動脈の創面切除と勢いのよい洗い流し(vigorously flushing)により、内頚動脈ICAへの塞栓放出のリスクは最小となる。手術中に動脈が切開されている間は、すべての頚動脈が閉塞されるので、粒子は血管に入ることができない。
【0006】
頚動脈ステント留置術(CAS)の手術中には、通常は付加的な塞栓予防デバイス(embolic protection device)を用いて、少なくとも部分的に塞栓のリスクを軽減する。それらのデバイスの一例として遠位部フィルターがあり、ステント領域より遠位にある内頚動脈中に展開する。フィルターは、塞栓粒子を捕らえて脳血管への通過を防ぐことを目的としている。しかしながら、そのようなフィルタリングデバイスは、ある種の制限を備えている。それらのフィルタリングデバイスは目標血管に向かって前進し、そして展開に先立って狭窄を横断しなくてはならず、そのことは、脳血管を塞栓のシャワーにさらすことになる。狭い狭窄および/またはひどく角張っている血管を通って、それらが前進し、展開し、そして除去することが必ずしも簡単だとは限らない。そして最後に、それらは、フィルター細孔サイズ(典型的には100~120μm)より大きな粒子をろ過するのみである。また、これらのデバイスは、フィルターの壁との対向が不完全なので、血流の100%をろ過できず、さらに、フィルター回収(filter retrieval)中に、デブリス(破片:debris)がすり抜けるリスクがある。
【0007】
本願開示で特に関心のあることは、内頚動脈ICAへの塞栓放出のリスクを減らす別の方法で、頚動脈ステント留置術CASの手術中に用いられ、内頚動脈ICA内の血流を逆流させる概念を利用して、脳血管に入る塞栓のデブリスを防ぐ方法が提案されてきた。特定のプロトコル(specific protocols)は多数記述されてきたが、それらは一般に、大腿動脈を介して(経大腿部アクセス)総頚動脈にシースを入れることに頼っている。総頚動脈の血流は、典型的には、シースの遠位先端上のバルーンをふくらますことにより閉塞される。外頚動脈ECAへの血流も、典型的には、シースを通して導入されたバルーンカテーテルまたはバルーンガイドワイヤーを用いて閉塞されてもよい。その後、内頚動脈からシースを通って脳血管から離れる方向の逆流(reverse or retrograde flow)を確立するために、シースは、静脈の位置あるいは低圧の外部レセプタクル(low pressure external receptacle)に接続される。そのような逆流が確立された後に、塞栓が脳血管に入るリスクを大幅に低減した状態で、ステント留置術を行うことができる。
【0008】
ICAの順方向の血流を単に停止する代わりのシステムは、2個の一体型バルーン(遠位先端のECA閉塞バルーンと、そのECAバルーンの近傍にいくらかの一定距離あけて設置したCCA閉塞バルーン)を備えた頚動脈アクセスシース(carotid access sheath)から成る。2個のバルーンの間に、頚動脈ステント介入デバイス(interventional carotid stenting devices)を送る開口がある。このシステムは、ICAから静脈系まで血流を逆流させないが、その代りに、血流を遮断(block)し、ICA内の順方向の血流を確立する前に吸引を行って塞栓のデブリスを除去することに依る。
【0009】
頚動脈の血管内のステント留置術およびその他の介入手技(interventional procedures)を行うための、そのような血流の逆流または静止のプロトコルは、極めて有望である一方、そのような方法は、一般に、複数の別個アクセスおよび閉塞用構成要素(occlusion components)の操作を必要としてきた。さらに、そのプロトコルはやや複雑であり、多くの別個の工程を必要とし、それらの遂行は最も熟練した血管外科医、インターベンショナルラジオロジスト(interventional radiologists)および心臓専門医のみに制限されてきた。その上、大腿部アクセスの寸法制限により、アクセスデバイス自身が非常に高い血流抵抗を与えて、逆流および/または吸引の可能性を制限する。更に、外頚動脈を閉塞する要求は、手技にリスクと複雑さを加える。ステントが総頚動脈から内頚動脈まで分岐部を横切って設置されていて、それを除去するときに展開したステントに損傷を与えるような場合には、外頚動脈を閉塞するためのバルーンカテーテルは、動脈壁の中にトラップされてもよい。
【0010】
記述される脳保護デバイスおよび方法のいずれも、手術後の保護を提供しない。しかしながら、ステント手術後48時間またはそれ以降まで、塞栓粒子の発生が測定されてきた。CEAでは、内頚動脈ICAへの血流を遮断しながら手術の最後に洗い流すことは、術後の塞栓発生を低減するのに役立つだろう。CASにおける同様の洗い流し工程もまた、塞栓リスクを減らすだろう。さらに、塞栓粒子の取り込みを改善するように設計されたステントもまた、術後の塞栓を低減するだろう。
【0011】
さらに、現在利用可能な全ての頚動脈ステント留置術および脳保護システムは、大腿動脈からアクセスするように設計されている。残念なことに、大腿動脈から総頚動脈への経路は比較的長く、何人かの患者では完全に角張っているいくつかの湾曲(turns)を有し、そして、しばしば、プラークおよびその他の疾患を含んでいる。大腿動脈からの総頚動脈へのアクセスを含む手技の部分は、困難で、時間を消費すると共に、目標の総頚動脈と反対の総頚動脈の両方を上がってそこから脳血管に塞栓のデブリスのシャワーを生じるリスクの可能性がある。いくつかの研究は、CAS手術中の塞栓の合併症(embolic complications)の半分またはそれ以上が、CCAへのアクセス中に発生することを示唆している。プロトコルまたはシステムのいずれも、手術のこの部分の間の保護を提供しない。
【0012】
近年、頚動脈までの代わりのアクセスルートを有する逆流プロトコルが、Criadoによって提案された。この代わりのルートは、総頚動脈CCAへの直接の外科的アクセスから成り、経頚部アクセス(transcervical or transcarotid access)と呼ばれる。経頚部アクセスは、血管へのアクセスポイントから目標の処置サイトまでの経路の長さとねじれを非常に短くし、それにより手技の時間と困難性とを緩和する。さらに、このアクセスルートは、疾患があり、角張っており、またはねじ曲がっている(tortuous)大動脈弓または総頚動脈の組織(anatomy)の進路(navigation)から塞栓発生のリスクを低減する。
【0013】
Criadoのプロトコル(Criadoプロトコル)は、以下に引用された医学文献のいくつかの刊行物に記載されている。図3に示すように、Criadoプロトコルは、動脈シース210および静脈シース212含んでいる血流シャント(flow shunt)を用いる。各シースはサイドアーム214を有し、栓(stopcock)216で終端している。2つのシース栓はコネクターチューブ218によって接続され、それにより、動脈シース210から静脈シース212への逆流シャントが完成する。動脈シースは、頚動脈の分岐部より下側の頚部に開いた外科的切開を通じて総頚動脈CCA内に設置される。総頚動脈CCAの閉塞は、一時的な血管結紮(vessel ligation)、例えば、Rummel止血器(Rummel tourniquet)および臍テープ(umbilical tape)、または血管ループ(vessel loop)を用いて達成することができる。静脈リターンシース(venous return sheath)212もまた、開いた外科的切開を介して内頚静脈IJV(図3)の中に設置される。その後、内頚動脈ICAおよび外頚動脈ECAからの逆流は、栓216を開くことにより確立されるだろう。Criadoプロトコルは、大腿部アクセスを必要としないので、初期の逆流プロトコルに比べて進歩している。このように、大腿部アクセスに関連した潜在的な合併症は完全に回避される。更に、短いアクセスルートで提供される低い血流制限(flow restrictions)は、勢いのよい逆流速度の機会を提供し、塞栓のデブリスの除去効率を増大させる。これらの低減された血流制限により、初期プロトコルで必要とされるような外頚動脈ECAの閉塞なしに、内頚動脈ICAの所望の逆流を確立できるだろう。
【0014】
大腿部アクセスに基づいた逆流プロトコルに比べれば著しく進歩しているが、Criadoプロトコルおよび血流シャントは、まだ進歩の恩恵を受けることができる。特に、手術中に用いられる既存の動脈シース及び静脈シースは、依然としてサイドアーム214および栓216に著しい血流制限を有している。介入カテーテルが動脈アクセスシースに挿入されたとき、逆流回路抵抗(reverse flow circuit resistance)は最大になる。患者の何パーセントかは、外頚動脈ECAの灌流圧力は内頚動脈ICAの灌流圧力より大きい。これらの患者では、この差圧が、ECAからICAへの順行性の血流を駆動するかもしれない。低い血流抵抗を伴う逆流シャントは、ECAからICAへの圧力勾配にもかかわらず、ECAとICAの両方において逆流を保証することができた。
【0015】
さらに、逆流速度をモニターまたは調整する手段は存在しない。血流速度を増加および/または調整する能力は、患者の耐性(tolerance)および生理機能(physiology)ならびに手術のステージにとって最適な逆流速度を設定し、それにより塞栓のデブリスからの進化した保護を提供する能力をユーザーに与えるだろう。更に、Criadoによって記述されたシステムは、例えば、CASシステムの設置を容易にするために造影剤を射出している間に、手動で1つ以上の栓を回して逆流シャントを開閉することに依存している。最後に、Criadoプロトコルは、血管ループまたはRummel止血器を介した総頚動脈の外科的切開の閉塞に依存する。総頚動脈を血管内で閉塞する手段を備えた(例えば、動脈アクセスシース上の閉塞要素(occlusion element)を備えた)システムは、経皮的技術を用いて全手技を行なうことを可能にするだろう。経皮的アプローチは、外科以外の医師が手技を行なうことを可能にするだけでなく、外科的切開の寸法とそれに伴う合併症とを制限する。
【0016】
これらの理由により、手術及び術後の塞栓のリスクを減らし、手術全体にわたる止血のレベルを改善し、そして頚動脈ステント留置術の容易さと速さを改善するために、経頚部アクセス、逆流、及び洗い流しの手技を行うための、そして頚動脈の血管中に頚動脈ステントを挿入するための改良された方法、装置およびシステムを提供することが望ましい。この方法、装置およびシステムは、不適切な手技を行うリスクおよび/または塞栓の放出に対する保護のための逆流および洗い流しが十分に達成できないリスクを減らすと共に、医師が行なう手技を単純化するだろう。このシステムは、互いに用いるのが容易で、且つ塞栓に関連する合併症を予防する個々のデバイスおよび構成要素を提供するだろう。この方法およびシステムはまた、手技の終わりの意図しない失血を防ぐために、幾つかのまたは全ての動脈の貫通部(arterial penetrations)のための便利で好都合な自動閉鎖部(automatic closure)も提供するだろう。さらに、このシステム、装置および方法は、外科的切開あるいは経皮的な血管内へのアクセスルートのいずれかで行なうのに適しているだろう。さらに、この方法、装置およびシステムは、術後の合併症を低下させる血管内の人工インプラント(prosthetic implant)の挿入を可能にするだろう。これらの目的のうち少なくともいくつかは、本願明細書の以下に記載された本発明により達成されるだろう。
【発明の概要】
【0017】
開示された方法、装置およびシステムは、脳血管への、特に内頚動脈への塞栓の放出を制限または防止するための、頚動脈分岐部の領域内の血流循環の逆流を、確立し、容易にする。この方法は、経頚部アプローチまたは経大腿部を通して総頚動脈内で行なわれる介入手技、例えばステント留置術および血管形成(angioplasty)、アテローム切除術(atherectomy)などに特に有用で、改良セルジンガー法(modified Seldinger technique)またはマイクロパンクチャー(micropuncture)技術などの、外科的切開術または経皮的技術のいずれかを用いる。
【0018】
総頚動脈へのアクセス(図5)は、動脈の管腔(lumen)に、シースまたは他の管状アクセスカニューレを入れることにより確立され、典型的には、総頚動脈から内頚動脈と外頚動脈への接合部または分岐部B(図5)の近くに配置されるシースの遠位端を有している。シースは遠位端に、閉塞部材(例えば適合した(compliant)閉塞バルーン)を有していてもよい。バルーンなどの閉塞部材を備えたカテーテルまたはガイドワイヤーを、アクセスシースを通して設置して、外頚動脈ECAの近位に配置することにより、塞栓が外頚動脈に入るのを抑制してもよいが、通常、外頚動脈の閉塞は必須ではない。第2のリターンシース(return sheath)は、静脈系(例えば内頚静脈IJVまたは大腿静脈FV)に設置される。動脈アクセスシースと静脈リターンシースとが接続されて、外部の動脈-静脈シャントを形成する。
【0019】
逆流は、患者の要求を満たすように確立され調整される。総頚動脈を通る血流は、外部血管ループもしくはテープ、血管クランプ、バルーンなどの内部閉塞部材、または他のタイプの閉塞手段のいずれかによって閉塞される。総頚動脈を通る血流が遮断されると、内頚動脈と静脈系との間の自然な圧力勾配は、脳血管から内頚動脈を通り、シャントを通って静脈系へと流れる逆方向の血流をもたらすだろう。
【0020】
代わりに、静脈シースを排除して、動脈シースを外部回収リザーバ(external collection reservoir)またはレセプタクル(receptacle)に接続することができる。逆流した血流は、このレセプタクルに回収することができる。必要に応じて、回収した血液をろ過して、そして手術中または手術の最後に患者に戻すことができる。レセプタクルの圧力は大気圧を受け入れて、脳血管からレセプタクルへの逆方向の血流を引き起こす圧力勾配を形成することができ、または、レセプタクルの圧力は負圧にすることができる。
【0021】
任意で、内頚動脈からの逆流を達成または高めるために、典型的には、外部頚動脈中のうちで内頚動脈との分岐部の直上(すなわち、遠位側)に、バルーンまたは他の閉塞要素を展開することにより、外頚動脈からの血流を遮断してもよい。
【0022】
以下に記載される手技とプロトコルは、頚動脈のステント留置術に特に向けられているが、本願明細書に記載された頚動脈へのアクセス方法は、頚動脈系の中、特に内頚動脈と外頚動脈との間の分岐部に近い場所で行われる血管形成、アテローム切除術および他の介入手技においても有用であることが認識されるだろう。さらに、それらのアクセス方法、血管閉止方法、および塞栓予防方法のいくつかは、他の血管介入手技(例えば急性脳卒中 (acute stroke)の処置)に適用可能であることが、十分に理解されるだろう。
【0023】
本願の開示は、頚動脈アクセスプロトコルの性能(performance)を改善するための多くの具体的な態様を含んでいる。頚動脈系への特定の介入性能を容易にし且つ高めるために、少なくとも、これらの個々の態様および改善の大部分は、個々にまたは1つ以上の他の改善と組み合わせて行うことができる。
【0024】
1つの態様において、頚動脈へのアクセスおよび処置で使用されるシステムが開示される。システムは、総頚動脈に導入して総頚動脈からの血流を受け入れるのに適した動脈アクセスデバイス(arterial access device)と、動脈アクセスデバイスに対して流体流通的に(fluidly)接続されたシャント(shunt)であって、動脈アクセスデバイスからリターンサイト(return site)への血流の経路を提供するシャントと、シャントに連結され、シャントを通して少なくとも第1の血流状態(first blood flow state)と少なくとも第2の血流状態(second blood flow state)との間で血流を調節するのに適した血流制御アセンブリ(flow control assembly)であって、シャントを通して血流と相互に作用する1つ以上の構成要素を含んでいる血流制御アセンブリと、を含む。
【0025】
別の態様では、頚動脈へのアクセスおよび処置で使用されるシステムが開示される。システムは、総頚動脈に導入して総頚動脈からの血流を受け入れるのに適した動脈アクセスデバイスと、動脈アクセスデバイスに対して流体流通的に接続されたシャントであって、動脈アクセスデバイスからリターンサイトへの血流の経路を提供するシャントと、シャントに連結され、シャントを通して第1の血流速度(first blood flow rate)と第2の血流速度(second blood flow rate)との間で血流を変更するのに適した流動機構(flow mechanism)と、ユーザーからの入力を必要とせずに、自動的に流動機構と相互に作用して、シャントを通して第1の血流速度と第2の血流速度との間で血流を調節するコントローラと、を含む。
【0026】
さらに別の態様では、頚動脈へのアクセスおよび処置で使用されるデバイスが開示される。デバイスは、総頚動脈へ導入するのに適した遠位端、近位端、および遠位端と近位端との間に延在する管腔を有する遠位シース(distal sheath)と、遠位端、近位端、およびそれらの間にある管腔を有する近位伸張部(proximal extension)であって、近位伸張部の遠位端は、接合部において、互いの管腔が接触(contiguous)するようにシースの近位端に接続されている近位伸張部と、管腔を有する血流ライン(flow line)であって、シースの遠位端に流れ込む血液が血流ラインの管腔内に流れ込むことができるように、接合部の近くに接続している血流ラインと、近位伸張部の近位端にある止血バルブであって、近位伸張部を通って遠位シース内へのカテーテル導入を可能にする間に、近位伸張部からの血流を抑制するのに適した止血バルブと、を含む。
【0027】
別の態様では、頚動脈にアクセスおよび処置する方法が開示される。この方法は、総頚動脈壁に貫通部(penetration)を形成する工程と、貫通部を通じてアクセスシースの位置を決める工程と、シースが通過した総頚動脈からの血流を遮断する工程と、頚動脈からシースへ、そしてシースから血流パス(flow path)を介してリターンサイトへと逆流する血流を可能にする工程と、血流パスを通る血流を、フィードバックデータに基づいて修正する工程と、を含む。
【0028】
別の態様では、頚動脈にアクセスおよび処置する方法が開示される。この方法は、総頚動脈壁に貫通部を形成する工程と、貫通部を通じてアクセスシースの位置を決める工程と、シースが通過した総頚動脈からの血流を遮断する工程と、頚動脈からシースへ、そしてシースから血流パスを介してリターンサイトへと逆流する血流を可能にする工程と、血流パスを通して血流をモニターする工程と、を含む。
【0029】
別の態様では、頚動脈にアクセスおよび処置する方法が開示される。方法は、総頚動脈壁に貫通部を形成する工程と、貫通部を通じて動脈アクセスシース(arterial access sheath)の位置を決める工程と、シースが通過した総頚動脈からの血流を遮断する工程と、総頚動脈を遮断したままで、内頚動脈からシースへと逆流する血流を可能にする工程と、シースを通して逆流する血流の状態を調節する(adjusting)工程と、を含む。
【0030】
別の態様では、頚動脈にアクセスおよび処置する方法が開示される。この方法は、総頚動脈壁に貫通部を形成する工程と、貫通部を通じて動脈アクセスシースの位置を決める工程と、シースが通過した総頚動脈からの血流を遮断する工程と、総頚動脈を遮断したままで、内頚動脈からシースへと逆流する血流を可能にする工程と、シースから逆流する血流の速度を、患者が耐えられる高さのレベルに調節する工程であって、前記調節された速度がベースラインである、調節する工程と、を含む。
【0031】
本出願は、米国特許第8,157,760号(発明の名称「頚動脈血流の逆流を確立する方法およびシステム(Methods and Systems for Establishing Retrograde Carotid Arterial Flow)」)および米国特許出願第14/227,585号(発明の名称「頚動脈血流の逆流を確立する方法およびシステム(Methods and Systems for Establishing Retrograde Carotid Arterial Blood Flow)」)に関し、両者を引用により本明細書に組み入れる。
【0032】
他の特徴および利点は、例示と発明の原理を目的として図示された様々な実施態様の以下の記載から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A図1Aは血流制御アセンブリを含む逆流する血流システムの模式図であり、動脈アクセスデバイスは経頚部アプローチによって総頚動脈にアクセスし、静脈リターンデバイスは内頚静脈と通じている。
【0034】
図1B図1Bは逆流する血流システムの模式図であり、動脈アクセスデバイスは経頚部アプローチによって総頚動脈にアクセスし、静脈リターンデバイスは大腿静脈と通じている。
【0035】
図1C図1Cは逆流する血流システムの模式図であり、動脈アクセスデバイスは経大腿部アプローチによって総頚動脈にアクセスし、静脈リターンデバイスは大腿静脈と通じている。
【0036】
図1D図1Dは逆流する血流システムの模式図であり、逆流は外部レセプタクルに集められる。
【0037】
図1E図1Eは代替の、逆流する血流システムの模式図であり、動脈アクセスデバイスは経頚部アプローチによって総頚動脈にアクセスし、静脈リターンデバイスは大腿静脈と通じている。
【0038】
図2A図2Aは頚動脈の拡大図であり、シース上の閉塞要素によって頚動脈は閉塞され、逆流シャントに接続され、介入デバイス(例えばステント送達システムまたは他の作動カテーテル(working catheter)など)は動脈アクセスデバイスを介して頚動脈へ導入される。
【0039】
図2B図2Bは代わりのシステムであり、別個の外部の閉塞デバイスによって頚動脈は閉塞され、逆流シャントに接続され、介入デバイス(例えばステント送達システムまたは他の作動カテーテルなど)は動脈アクセスデバイスを介して頚動脈へ導入される。
【0040】
図2C図2Cは代わりのシステムであり、頚動脈は逆流シャントに接続され、介入デバイス(例えばステント送達システムまたは他の作動カテーテルなど)は動脈アクセスデバイスを介して頚動脈へ導入され、頚動脈は別個の閉塞デバイスにより閉塞される。
【0041】
図2D図2Dは代わりのシステムであり、頚動脈は閉塞され、動脈は動脈アクセスデバイスを介して逆流シャントに接続され、介入デバイス(例えばステント送達システムなど)は別個の動脈イントロデューサーデバイスを介して頚動脈へ導入される。
【0042】
図3図3は従来のCriado血流シャントシステムを示す。
【0043】
図4図4は、ウィリス輪を含む正常な脳循環のダイアグラムを示す。
【0044】
図5図5は患者の頚部の血管を示し、総頚動脈CCA、内頚動脈ICA、外頚動脈ECAおよび内頚静脈IJVを含んでいる。
【0045】
図6A図6Aは、本願で開示された方法およびシステムに有用な動脈アクセスデバイスを図示している。
【0046】
図6B図6Bは、縮径された遠位端(reduced diameter distal end)を備えた追加の動脈アクセスデバイス構造を示している。
【0047】
図7A-B】図7Aおよび7Bは、図6Aのシースに有用なチューブを図示する。
【0048】
図7C図7Cは、シースストッパーの実施態様を示す。
【0049】
図7D図7Dは、シースに取り付けられた図7Cのシースストッパーを示す。
【0050】
図7E-F】図7Eおよび7Fは、使用時の順応性のあるシースストッパーを示す。
【0051】
図7G図7Gは、使用時の柔軟な遠位部およびシースストッパーを備えるシースの実施態様を示す。
【0052】
図8A図8Aは、拡張可能な閉塞要素を備えた追加の動脈アクセスデバイス構造を示す。
【0053】
図8B図8Bは、拡張可能な閉塞要素と縮径された遠位端とを備えた追加の動脈アクセスデバイス構造を示す。
【0054】
図9A-B】図9Aおよび9Bは、動脈アクセスデバイスの追加の実施態様を示す。
【0055】
図9C-D】図9Cおよび9Dは、動脈アクセスデバイス上のバルブの実施態様を示す。
【0056】
図10A-D】図10Aから10Dは本願で開示された方法およびシステムに有用な静脈リターンデバイスの実施態様を示す。
【0057】
図11図11は、血流制御アセンブリを含む図1のシステムを示す。
【0058】
図12A-B】図12A-12Bは、本願で開示された方法およびシステムに有用な可変血流抵抗の構成要素(variable flow resistance component)の実施態様を示す。
【0059】
図13A-C】図13A-13Cは、単一のハウジング(housing)内の血流制御アセンブリの実施態様を示す。
【0060】
図14A-E】図14A-14Eは、本願で開示された原理に従って頚動脈の分岐部にステントを挿入する手技の間における、典型的な血流パスを示す。
【0061】
図15A-D】図15A-15Dは、典型的なキットおよびパッケージの形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
詳細な説明
図1Aは、逆流システム100の第1の実施態様を示しており、このシステムは、脳血管(特に内頚動脈)への塞栓の放出を制限または防止するために、頚動脈分岐部の領域内における血液循環の逆流を確立し容易にするのに適している。システム100は、頚動脈と相互に作用して、頚動脈から、例えば内頚静脈(または、別の大静脈や、代わりの実施態様における外部レセプタクルなどの別のリターンサイト)などの静脈リターンサイトに逆流を提供する。逆流システム100は、動脈アクセスデバイス110と、静脈リターンデバイス115と、動脈アクセスデバイス110から静脈リターンデバイス115までの逆流通路を提供するシャント120と、を含んでいる。血流制御アセンブリ125はシャント120と相互に作用する。以下により詳細に記述するように、血流制御アセンブリ125は、総頚動脈から内頚静脈までの逆流を調節しおよび/またはモニターするのに適している。血流制御アセンブリ125は、シャント120、内部の血流パスおよび外部の血流パスのいずれか一方あるいは両方を介して血流パスと相互に作用する。より詳細に下に記述されるように、動脈アクセスデバイス110は少なくとも部分的に、総頚動脈CCAに挿入され、静脈リターンデバイス115は少なくとも部分的に、内頚静脈IJVなどの静脈リターンサイトに挿入される。動脈アクセスデバイス110および静脈リターンデバイス115は、結合位置127a、127bにおいて、シャント120と結合される。総頚動脈を通る血流が遮断される場合、内頚動脈と静脈系との間の自然な圧力勾配によって、血液は、脳血管から内頚動脈とシャント120とを通って静脈系まで、逆方向RG(図2A)に流れる。血流制御アセンブリ125は、逆流する血流を調整し、増大させ(augment)、支援し(assist)、モニターし、および/または別の方法で調節する。
【0063】
図1Aの実施態様では、動脈アクセスデバイス110は、経頚部アプローチを介して総頚動脈CCAにアクセスする。経頚部アクセスは、血管アクセスポイントから目標の処置サイトまでの距離が短くねじ曲がっていない経路を提供し、それにより、例えば経大腿部アプローチと比較して、手技にかかる時間および困難性を緩和する。ある実施態様において、切開した動脈(arteriotomy)から目標の処置サイトまでの動脈の距離は(動脈を通って移動する距離を測定すると)、15cmまたはそれ未満である。ある実施態様において、その距離は5乃至10cmである。さらに、このアクセスルートは、疾患があり、角張っており、もしくはねじ曲がっている大動脈弓または総頚動脈組織の進路から、塞栓発生のリスクを低減する。少なくとも静脈リターンデバイス115の一部は、内頚静脈IJVに設置される。ある実施態様では、総頚動脈への経頚部アクセスは、動脈アクセスデバイス110が挿入される皮膚の切開または穿刺を介して、経皮的に達成される。もし切開が用いられる場合、切開の長さを約0.5cmにすることができる。拡張可能なバルーンなどの閉塞要素129は、動脈アクセスデバイス110の遠位端より近位側の場所で、総頚動脈CCAを閉塞するのに用いることができる。閉塞要素129は、動脈アクセスデバイス110に配置することができ、または別個のデバイスに配置することができる。代わりの実施態様では、動脈アクセスデバイス110は、直接の外科的経頚部アプローチ(direct surgical transcervical approach)を介して総頚動脈CCAにアクセスする。外科的アプローチでは、総頚動脈は止血器2105を用いて閉塞することができる。任意の外科的アプローチで用いられるデバイスであることを示すために、止血器2105は2点鎖線(phantom)で図示される。
【0064】
図1Bに示された別の実施態様では、動脈アクセスデバイス110は経頚部アプローチを介して総頚動脈CCAにアクセスし、その一方、静脈リターンデバイス115は、頚静脈以外の静脈リターンサイト(例えば大腿静脈FVから構成された静脈リターンサイトなど)にアクセスする。静脈リターンデバイス115は、鼠径部の経皮的穿刺を介して大腿静脈FVなどの中心静脈に挿入することができる。
【0065】
図1Cに示された別の実施態様によれば、動脈アクセスデバイス110は、大腿部アプローチを介して総頚動脈にアクセスする。大腿部アプローチによれば、動脈アクセスデバイス110は、例えば鼠径部内の大腿動脈FAへの経皮的穿刺を介して、大動脈弓AAを上がって目標となる総頚動脈CCAへと、CCAにアプローチする。静脈リターンデバイス115は、頚静脈JVまたは大腿静脈FVと通じることができる。
【0066】
図1Dはさらに別の実施態様を示しており、システムは、頚動脈から、(静脈リターンサイトではなく)外部レセプタクル130へと向かう逆流を提供する。動脈アクセスデバイス110は、シャント120を介してレセプタクル130に接続しており、シャント120は血流制御アセンブリ125と通じている。逆流した血液は、レセプタクル130に回収される。必要に応じて、血液をろ過し、次いで患者に戻すことができる。レセプタクル130の圧力は、ゼロプレッシャー(大気圧)またはそれ以下に設定してもよく、それにより脳血管からレセプタクル130への逆方向の血液の流れがもたらされる。任意で、内頚動脈からの逆流を達成あるいは高めるために、典型的には、外部頚動脈中のうちで内頚動脈との分岐部の直上に、バルーンまたは他の閉塞要素を展開することにより、外頚動脈からの血流を遮断してもよい。図1Dは、経頚部アプローチにおいてCCAに配列(arrange)された動脈アクセスデバイス110を示しているが、経大腿部アプローチにおいて動脈アクセスデバイス110と共に外部レセプタクル130を使用することもできる、と認識されるべきである。
【0067】
図1Eは逆流システム100のさらに別の実施態様を示す。先行の実施態様と同様に、このシステムは動脈アクセスデバイス110、血流制御アセンブリ125を備えるシャント120、および静脈リターンデバイス115を含む。動脈アクセスデバイス110および静脈リターンデバイス115は、結合位置127aおよび127bにおいてシャント120と結合する。この実施態様において、血流制御アセンブリはまた、単一の血流制御ハウジングに内包される、インラインフィルター、一方向バルブ、および血流制御アクチュエーターを含む。
【0068】
図2Aの頚動脈の拡大図に関して、詳細に下に記述されるように、ステント送達システム135または他の作動カテーテルなどの介入デバイスは、動脈アクセスデバイス110を介して頚動脈へ導入することができる。ステント送達システム135は、例えば頚動脈内にステントを展開するなど、プラークPを処置するために用いることができる。図2Aの矢RGは、逆流の方向を表わす。
【0069】
図2Bは、別の実施態様を示しており、動脈アクセスデバイス110は、頚動脈に少なくとも1つの介入デバイスを導入するだけでなく、動脈-静脈シャント(arterial-to-venous shunt)を形成する目的で用いられる。閉塞要素129を備えた別個の動脈閉塞デバイス112は、動脈アクセスデバイス110の遠位端の近位側の場所で総頚動脈CCAを閉塞するのに用いることができる。
【0070】
図2Cは、さらに別の実施態様を示しており、動脈アクセスデバイス110は、閉塞要素129を用いて動脈を閉塞するだけでなく、動脈-静脈シャントも形成する目的で用いられる。別個の動脈イントロデューサーデバイスは、少なくとも1つの介入デバイスを、動脈アクセスデバイス110の遠位側の場所で頚動脈内に導入するのに用いることができる。
【0071】
組織の説明
脳の側副血行路(Collateral Brain Circulation)
ウィリス輪CWは、脳の主たる動脈吻合の主要部であり、脳に供給する全ての主な動脈、すなわち2本の内頚動脈(ICA)と椎骨脳底動脈系(vertebral basilar system)とが接続する。血液は、ウィリス輪から、前大脳動脈、中大脳動脈および後大脳動脈によって脳まで運ばれる。動脈間のこの連絡は、脳を通る側副血行路(collateral circulation)を形成することができる。代わりのルートを通る血流を形成することができるので、脳に血液を提供する血管の1つ以上が遮断状態(blockage)の場合には、安全機構を提供する。動脈系のどこかが遮断状態にあったとしても(例えば、本願明細書に記述されるようにICAが結紮されたときでも)、脳は、ほとんどの場合、適切な血液供給を受け続けることができる。ウィリス輪を通る血流は、血液の枯渇した側(deprived side)に血液を再分配する多数の経路によって、適切な脳血流を保証する。
【0072】
ウィリス輪の側副的な潜在力(collateral potential)は、その構成血管の存在およびサイズに依存すると考えられる。個体間の相当な解剖学的変化がそれらの血管に存在しうること、そして、含まれる血管の多くが病気かもしれないことを認識すべきである。例えば、何人かの人々は、交通動脈の1つが欠如している。そのような人々に遮断状態を開始する場合、側副血行路は、虚血性イベント(ischemic event)および潜在的な脳損傷という結果になる危険性にさらされる。さらに、灌流圧力の減少に対する自己調節性の応答は、ウィリス輪内の側副動脈(例えば交通動脈)の拡大を含むかもしれない。側副血行路が正常な機能を支持するレベルに達する前に、この代償機構(compensation mechanism)に、調整時間が時々必要である。この自己調節性の応答は、15~30秒の時間にわたって発生することがあり、ある範囲内における圧力低下および血流低下だけを代償することができる。したがって、一過性脳虚血発作は、調整時期中に発生する可能性がある。長期間にわたる非常に高い逆流速度は、患者の脳が十分な血流を得ていない状況を引き起こして、神経症状またはいくつかのケースでは一過性脳虚血発作を示すような、患者が耐えられない状態を引き起こすかもしれない。
【0073】
図4は、ウィリス輪CWの正常な脳循環および構成を示している。大動脈AOは腕頭動脈BCAを生じさせ、それは、左総頚動脈LCCAおよび左鎖骨下動脈LSCAに分岐する。大動脈AOは、さらに、右総頚動脈RCCAおよび右鎖骨下動脈RSCAを生じさせる。左右の総頚動脈CCAは、中大脳動脈MCA、後交通動脈PcoAおよび前大脳動脈ACAに分岐する内頚動脈ICAを生じさせる。前大脳動脈ACAは、前頭葉および線条体のいくつかの部分に血液を提供する。中大脳動脈MCAは、脳の各半球の外側面全体に血液をもたらす樹状の枝部(branches)を有する大動脈である。左右の後大脳動脈PCAは脳底動脈BAから発生し、脳の後部(後頭葉)に血液を提供する。
【0074】
前方では、ウィリス輪は、前大脳動脈ACAと2つのACAを接続する前交通動脈ACoAとによって形成される。2つの後交通動脈PCoAはウィリス輪を2つの後大脳動脈PCAに接続しており、それは脳底動脈BAから分岐して、輪の後方を完成する。
【0075】
総頚動脈CCAはまた外頚動脈ECAも生じさせ、それは、脳と眼の中身(contents of the orbit)以外の頭部のほとんどの構造物に供給するために広範囲に分岐している。ECAはまた、頚部および顔面の構造物への供給を助ける。
【0076】
頚動脈分岐部(Carotid Artery Bifurcation)
図5は、患者の頚部中の関連する血管の拡大図を示す。総頚動脈CCAは、分岐部Bで、内頚動脈ICAおよび外頚動脈ECAに分岐する。分岐部は、ほぼ第4頚椎のレベルに位置する。図5は分岐部Bに生成されたプラークPを示す。
【0077】
上述のように、動脈アクセスデバイス110は経頚部アプローチを介して総頚動脈CCAにアクセスすることができる。経頚部アプローチに従って、動脈アクセスデバイス110は動脈アクセス場所Lで総頚動脈CCAに挿入され、動脈アクセス場所Lは、例えば総頚動脈CCAの壁部の外科的切開または穿刺であろう。動脈アクセス場所Lと分岐部Bとの間には、典型的には約5~7cmの距離Dがある。動脈アクセスデバイス110が総頚動脈CCAに挿入されたときに、動脈アクセスデバイス110の遠位側の先端が分岐部Bと接触するのは望ましくなく、これがプラークPを粉砕して、塞栓粒子の発生をもたらすかもしれない。動脈アクセスデバイス110が分岐部Bに接触する可能性を最小限にするために、ある実施態様では、手技中に、動脈アクセスデバイスの遠位領域の約2~4cmのみが総頚動脈CCAに挿入される。
【0078】
総頚動脈は、頚動脈鞘(carotid sheath)と呼ばれる筋膜層の各側で包まれる。この頚動脈鞘は、内頚静脈と迷走神経も包んでいる。頚動脈鞘の前側は、胸鎖乳突筋である。総頚動脈および内頚静脈への経皮的あるいは外科的な経頚部アクセスは、鎖骨の直上から、胸鎖乳突筋の2つの頭部の間で頚動脈鞘を通って、迷走神経を回避するように注意しながら行われる。
【0079】
この頚動脈鞘の上端で、総頚動脈は内頚動脈および外頚動脈の二叉に分かれる。内頚動脈は、頭蓋に入って網膜と脳とに血液を供給するまでは、分岐せずに上がり続ける。外頚動脈は分岐して、頭皮、顔面、眼、およびその他の表皮的な構造物に血液を供給する。いくつかの顔面神経および脳神経が、動脈の前側および後側の両方で絡み合っている。さらなる頚部の筋肉も、分岐部を覆っているだろう。頚動脈血管内膜切除術の手技中には、これらの神経および筋肉の構造体を切開し(dissect)押しやって、頚動脈の分岐部にアクセスすることができる。あるケースでは、頚動脈の分岐部が下顎のレベルにより接近しており、そこでは、アクセスはより難しく(challenging)、回避すべき(spared)様々な神経からそれを分けることのできる余地が少ない。これらの場合には、不注意な神経損傷のリスクが増加しうるので、切開による動脈内膜除去術手技は好ましい選択ではないかもしれない。
【0080】
逆流する血流システムの詳述
先に述べたように、逆流システム100は、動脈アクセスデバイス110と、静脈リターンデバイス115と、動脈アクセスデバイス110から静脈リターンデバイス115への逆流のための通路を提供するシャント120と、を含んでいる。システムはまた、血流制御アセンブリ125を含んでおり、それはシャント120と相互に作用して、シャント120を介して逆流する血流を調節および/またはモニターする。逆流システム100の構成要素の典型的な実施態様を、ここに記述する。
【0081】
動脈アクセスデバイス
図6Aは、動脈アクセスデバイス110の典型的な実施態様を示しており、遠位シース605、近位伸張部610、血流ライン615、アダプターまたはYコネクター620、および止血バルブ625を含む。動脈アクセスデバイスはまた、先細の先端650を持つ拡張器645およびイントロデューサーガイドワイヤー611を含む。拡張器およびイントロデューサーガイドワイヤーを備える動脈アクセスデバイスは、血管へのアクセスを増加するために共に用いられる。動脈アクセスデバイスの特徴は、経頚部アクセスに最適化できることである。例えば、アクセスデバイスの構成要素の配置を、鋭角の挿入によって血管の潜在的な損傷を制限し、非外傷性および安全なシースの挿入を可能にし、ならびに血管内に挿入するシース、シース拡張器、およびイントロデューサーガイドワイヤーの長さを制限するように、最適化できる。
【0082】
遠位シース605は、開いた外科的切開または、例えばセルジンガー法を用いて確立される経皮的穿刺のいずれかによって、総頚動脈の壁部への切開または穿刺を通して導入されるのに適している。シースの長さは5~15cmの範囲にすることができ、通常は10cm~12cmである。内径は、典型的には7Fr~10Fr(フレンチ:1Fr=0.33mm)の範囲にあり、通常は8Frである。特に、シースが経頚部アプローチを介して、鎖骨より上側だが頚動脈の分岐部より下側に導入される場合、シース605は、よじれ(kinking)と曲がり(backling)に抵抗するためのフープ強度(hoop strength)を保持しつつ、非常に柔軟であるのが望ましい。このように、遠位シース605を、組み紐(braid)、螺旋状のリボン(helical ribbon)、螺旋状のケーブル(helical wire)、切ったチューブ(cut tubing)などによって周囲から強化してもよく、外側の被覆層(jacket layer)と内側のライナー(liner)との間に補強構造を挟むように、内側のライナーを有してもよい。内側のライナーはPTFEなどの低摩擦材料でもよい。外側の被覆は、Pebax、熱可塑性ポリウレタン、またはナイロンを含む材料の一以上の群であってもよい。ある実施態様において、補強構造または材料および/または外側の被覆材料または厚さは、長さに沿った柔軟性を変えるため、シース605の長さに渡って、変化してもよい。代わりの実施態様では、遠位シースは、例えば鼠径部内の大腿動脈への経皮的穿刺を介して、大動脈弓AAを上がって目標となる総頚動脈CCAへと導入されるのに適している。
【0083】
図6B(シース605の遠位領域630の拡大図を示している)に示すように、遠位シース605は、縮径された遠位領域630を有している階段状(stepped)または他の形態を有することができる。シースの遠位領域630は、頚動脈への挿入に適したサイズにされていて、内径は典型的には2.16mm(0.085インチ)~2.92mm(0.115インチ)の範囲であり、シースの残りの近位領域は、より大きい外径と内腔径(luminal diameters)にされていて、内径は典型的には2.794mm(0.110インチ)~3.43mm(0.135インチ)の範囲である。近位領域のより大きな内腔径は、シースの全体的な血流抵抗を最小にする。ある実施態様では、縮径された遠位部分630の長さはおよそ2cm~4cmである。縮径された遠位部分630の比較的短い長さによって、シース605の遠位端が分岐部Bと接触するリスクを低減しながら、この部分が経頚部アプローチを介して総頚動脈CCAに位置することを可能にする。さらに、縮径された遠位部分630はまた、血流抵抗のレベルにわずかな影響しか及ぼさずに、動脈にシース605を導入するための切開した動脈のサイズを縮小することを可能にする。その上、縮径された遠位部分はより柔軟性があり、したがって血管の管腔に対してより等角(conformal)となり得る。
【0084】
図6Aを再び参照すると、細長い本体である近位伸張部610は、シース605の内腔に連続した(contiguous with)内腔を有している。それらの管腔は、血流ライン615の管腔もシースに接続するYコネクター620によって連結することができる。アセンブリシステムでは、血流ライン615は、逆流シャント120(図1)の第1の脚部(leg)に接続されて、それを形成する。近位伸張部610は、止血バルブ625をYコネクター620から間隔を置くのに十分な長さを有することができ、Yコネクター620は経皮的または外科的な挿入サイトに隣接している。止血バルブ625を経皮的挿入サイトから遠ざけて間隔を置くことによって、蛍光透視法(fluoroscopy)が行なわれているときに、医師は、ステント送達システムまたは他の作動カテーテルを、蛍光透視法の視野外にとどまらせながら、近位伸張部610およびシース605に導入することができる。ある実施態様において、近位伸長部は、シース605との最も遠位の接合部(止血バルブなど)から近位伸長部の近位端まで約16.9cmである。ある実施態様において、近位伸長部は、0.125インチの内径および0.175インチの外径を有する。ある実施態様において、近位伸長部は0.025インチの壁の厚さを持つ。例えば内径は、0.010インチから0.050インチの壁の厚さを伴い、0.60インチから0.150インチの範囲でよい。別の実施態様において、例えば内径は、0.025インチから0.100インチの壁の厚さを伴い、0.150インチから0.250インチの範囲であってよい。近位伸長部の寸法は様々であってよい。ある実施態様において、近位伸長部は約12~20cmの範囲内の長さである。別の実施態様において、近位伸長部は約20~30cmの範囲内の長さである。
【0085】
ある実施態様において、止血バルブ625からシース605の遠位先端までのシースに沿った距離は約25~40cmの範囲である。ある実施態様において、その距離は約30~35cmの範囲である。動脈への2.5cmのシースの導入、および切開した動脈サイトから目標サイトまでの5乃至10cmの動脈の距離を可能にするシステムの形態を伴って、このシステムは、32~43cmの止血バルブ625(アクセスシースへの介入デバイスの導入部位)から目標サイトへの距離を約32.5cm~42.5cmの範囲とすることを可能にする。この距離は、従来技術で必要とされる距離の約3分の1である。
【0086】
洗い流しライン(flush line)635は、止血バルブ625側に接続でき、その近位端または遠位端に栓640を有することができる。洗い流しライン635は、手術中に、生理食塩水、造影剤(contrast fluid)などの導入を可能にする。洗い流しライン635はまた、手術中に圧力をモニターすることを可能にするだろう。先細の遠位端650を有する拡張器645を提供して、総頚動脈への遠位シース605の導入を容易にすることができる。図7Aに最もよく見られるように、先細の遠位端650がシース605の遠位端を通って延在するように、拡張器645は止血バルブ625を通って導入することができる。拡張器645は、ガイドワイヤーを収容するために、中央の管腔を有することができる。典型的には、ガイドワイヤーが最初に血管に設置され、そして拡張器/シースの組合せがガイドワイヤーの上を移動して、血管に導入される。
【0087】
また図7Aに示すように、任意で、チューブの形状などのシースストッパー705を提供しても良く、それは遠位シース605の外側に、同軸上に受容される。シースストッパー705は、シースが血管内に遠くまで挿入されるのを防ぐためのシースストッパーとして働くように設計される。シースストッパー705は、シース本体605の一部を覆い、シース本体605の遠位部を露出したままにするように、シース本体605上に配置されるためのサイズおよび形に決められる。チューブ705は、アダプター620を係合させるフレア状(flared:裾広がり)の近位端710と、遠位端715と、を有してもよい。図7Bに示すように、任意で、遠位端715を斜めにしてもよい。シースストッパー705は、少なくとも2つの目的のために役立つだろう。第1に、図7Aに示すように、シースストッパー705の長さは、シース605の導入をシース605の露出する遠位部分に制限し、これは挿入するシースの長さをシースの露出する遠位部分に制限する。ある実施態様において、シースストッパーは露出する遠位部分を2~3cmの範囲に制限する。ある実施態様において、シースストッパーは露出する遠位部分を2.5cmに制限する。言い換えると、シースストッパーは動脈へのシースの挿入を約2~3cmの範囲または2.5cmに制限し得る。第2に、チューブ705は頚動脈壁に配置される予備展開穿刺閉止デバイス(pre-deployed puncture closure device)と係合することができ、もし存在するなら、閉止デバイスを取り除かずに、シース605を引き抜くことを可能にする。シースストッパー705下のシース本体がはっきりと見えるように、シースストッパー705を透明物質で製造してもよい。シースストッパー705はまた、柔軟性のある材料で作ってもよく、またはシースストッパー705は、動脈に挿入される際に適切な位置に応じてシースを曲げることを可能にするように、柔軟性の増した連接部(articulating)または部分を含んでもよい。例えば、シースストッパーの遠位部分はより硬い材料で作られてもよく、近位部分はより柔軟性のある材料で作られてもよい。ある実施態様において、より硬い物質は85Aのデュロメーター硬さ(durometer)であり、より柔軟性のある部分は50Aのデュロメーター硬さである。ある実施態様において、より硬い遠位部分はシースストッパー705の1~4cmである。ユーザーがより長いシースの挿入を望む場合、ユーザーがシースストッパー705を取り外し、(シースストッパーの)長さをより短く切り、そしてより長い挿入可能なシースをシースストッパー705から突出させるように、シース上にシースストッパー705を再度組み立てることができるよう、シースストッパー705はシースから取り外し可能であってもよい。
【0088】
図7Cは、内部に拡張器645を配置するシース605に隣接するシースストッパー705の別の実施態様を示す。図7Cのシースストッパー705を、直線形などの、第一の形状から第一の形状とは異なる第二の形状に変形してもよく、シースストッパー705はその形状を変化させるのに十分な外力がシースストッパーに働くまで、第二の形状のままである。第二の形状は、直線でなく、曲がっており、または他の輪郭もしくは不規則な形状であってもよい。例えば図7Cは、多重の屈曲および直線部分を持つシースストッパー705を示す。図7Cは単に実施例を示し、シースストッパー705は縦軸に沿ったいかなる量の屈曲を持つように成形されてもよいことを認識すべきである。図7Dはシース605上に配置されるシースストッパー705を示す。シース605がシースストッパー705の輪郭の形状に適合する形状または輪郭をとるように、シースストッパー705はシース605よりも硬い。
【0089】
シースストッパー705を、動脈へのシースの挿入角度およびその動脈の深さまたは患者の体型に従って成形してもよい。この特徴は、特にシースが血管に急な角度で挿入された場合、血管壁内のシース先端の力を減らす。たとえ動脈切開への入射角が比較的急であっても、シースストッパーを、侵入する動脈とシースが同軸上に向くように補助する形状に曲げ、または他に変形してもよい。患者にシースを挿入する前に、手術者がシースストッパーを成形してもよい。または、シースを動脈内に挿入後、インサイチュ(in situ)で、シースストッパーを成形および/または再成形してもよい。図7Eおよび7Fは、使用時の順応性のあるシースストッパーの実施例を示す。図7Eは、シース605上に配置される直線形のシースストッパー705を示す。シース605は直線形のシースストッパー705を装着し、シース605の遠位先端が動脈の壁に隣接または面するように、相対的に急な角度で動脈Aに侵入する。図7Fにおいて、ユーザーは、シース605の長軸が動脈Aの軸とより平行になるようにシース605の入射角を調整するため、シースストッパー705を曲げる。この様式では、シースストッパー705は、シース605が動脈Aの反対側の壁から離れる方向に向くように補助する形状、および図7Eの形状に対して動脈Aの軸とより同軸になる方向に、ユーザーによって形成される。
【0090】
ある実施態様において、シースストッパー705は順応性のある材料で作られ、またはシースストッパー上または内に配置する順応性のある複合的な構成要素を伴う。別の実施態様において、シースストッパーを、同心(concentric)チューブ、プルワイヤー(pull wire)などのアクチュエーターを用いて接合するように構成する。例えばシースストッパーが動脈または通路(entryway)の屈曲に直面するときなどに、外力に対してその形状を保持するように補助するため、シースストッパーの壁を延性のあるワイヤーまたはリボンで補強してもよい。またはシースストッパーを、金属およびポリマーを含む均一な順応性のあるチューブの材料で構成してもよい。シースストッパーの本体はまた、変形後の形状を保持可能な補強された組み紐またはコイルで少なくとも部分的に構成されてもよい。
【0091】
別のシースストッパーの実施態様は、シースが血管内に配置された後でさえ、(シースに対する)シースストッパーの位置の調整を容易にするように設計される。シースストッパーの一つの実施態様は、シースストッパーをシース本体から取り出し、望むように前方または後方に動かし、およびその後シース本体の長さに沿って再配置できるように、全長またはほとんどの長さに沿ったスリットを有するチューブを含む。そのチューブをつかみ、より容易に取り出せるように、そのチューブは近位端につまみまたは特徴を有してもよい。
【0092】
別の実施態様において、シースストッパーは非常に短いチューブ(バンド(band)など)またはシース本体の遠位部分上に存在するリングである。シースストッパーは鉗子で容易につかむことができ、例えば、手技においてシースの挿入の長さを適切に設定するため、望むように新たな位置へ後方または前方に引っ張ることができる特徴を含んでもよい。シースストッパーは、チューブ材料からの摩擦またはシース本体に対して開閉できるクランプのいずれかを通して、シース本体に固定されてもよい。クランプは、通常シース本体上に固定される、ばねで留められたクランプでもよい。シースストッパーを動かすため、ユーザーは自分の指または装置でクランプを開き、クランプの位置を調整し、およびその後クランプをはずしてもよい。クランプをシース本体の邪魔をしないように設計する。
【0093】
別の実施態様において、シースストッパーは、シースストッパーおよびシースを患者の組織に縫合可能な特徴を含み、これはシースの確保を改善し、シースがはずれるリスクを減らす。この特徴は、シースストッパーチューブ内に付随し、または形作られる縫合の小穴(eyelet)でもよい。
【0094】
別の実施態様において、図9Aに示すように、シースストッパー705は遠位フランジ(flange)710を含み、これはシースストッパーの力を血管壁上のより大きな面積にわたって分配し、それによって血管損傷または切開した動脈を通って血管へのシースストッパーの偶発的な挿入のリスクを減らすように、サイズおよび形が決まる。フランジ710は、シースストッパーの力を血管壁上のより大きな面積にわたって分配するのに十分な大きさの、円形の形状または他の非外傷性の形状でもよい。ある実施態様において、フランジは可膨張性または機械的に拡張可能である。例えば、動脈シースおよびシースストッパーを、皮膚内の小さな穿刺を通って、外科的な部位に挿入し、その後動脈へのシースの挿入前に拡張してもよい。
【0095】
シースストッパーは、シースストッパーの長さに沿って、一以上の切り抜き(cutout)または切り込み(indent)720を含んでもよく、これは、切り込みがシースストッパーの可屈曲性を増し、一方動脈の壁に対するシースストッパーの前方の力を可能にする軸の強度を維持するような、ねじれ型構造(staggered configuration)を形成する。縫合を介して患者に対するシースの確保を容易にし、シースの外れを軽減するために、切り込みを用いてもよい。シースストッパーを動脈シースに固定でき、またはその固定を外せるように、シースストッパーはまた、動脈シースの特徴に対応する近位端上に、コネクター要素730を含んでもよい。例えば、コネクター要素は、一般にL字形の溝(slot)740を伴うハブ(hub)であり、これはマウントスタイル(mount-style)のバヨネット(bayonet)接続を作るためのハブ上のピン750に対応する。この様式では、シースストッパーをハブに安全に接続でき、ハブから固定を外さない限り、シースストッパーがハブから不注意に取り除かれる可能性が下がる。
【0096】
遠位シース605を、総頚動脈上の通常の前後方向のアプローチ(anterior-posterior approach)から、総頚動脈内の通常の管腔の軸方向へと、曲線の変化を確立するように構成できる。直接の外科的な切開または経皮的アクセスのいずれかからの、総頚動脈壁を通る動脈アクセスは、他の動脈アクセスのサイトよりも典型的に大きなアクセスの角度を必要とする場合がある。これは、総頚動脈の挿入サイトが他のアクセスポイントからに比べてはるかに処置サイト(すなわち、頚動脈分岐部)に近いという事実のためである。より大きなアクセスの角度が、挿入サイトから処置サイトまでの距離を広げるために必要であり、これはシースの遠位先端が頚動脈分岐部に到達することなく、適切な距離でのシースの挿入を可能にする。例えば、経頚部アクセスを介するシースの挿入角度は典型的に30~45°またはそれよりもさらに大きく、一方大腿動脈へのアクセスにおいて、シースの挿入角度は15~20°でよい。したがって、シースは、イントロデューサーシースを伴い、ねじれがなく、反対側の動脈壁に過度な力を生じない典型よりも大きく曲がらなければならない。加えてシースの先端は、シースへの血流を制限する様式では、挿入後、動脈壁に隣接または接触しないことが望ましい。シースの挿入角度は、動脈の管腔の軸とシースの長軸との間の角度として定義される。
【0097】
シース本体605を、アクセスの角度によって必要とされるこのより大きな屈曲を可能にする様々な方法で形成してよい。例えば、シースおよび/または拡張器は、典型的なイントロデューサーシースよりも小さい、柔軟性のある複合の曲げ剛性(combined flexible bending stiffness)を有してもよい。ある実施態様において、シース/拡張器の組み合わせ(すなわち、シースの内部に配置された拡張器を備えるシース)は、約80および100N-m2 x 10-6の範囲の柔軟性のある複合の剛性(E*I)を有し、ここでEは弾性率であり、Iはデバイスの慣性の面積モーメント(area moment)である。シース単独では、約30から40N-m2 x 10-6の範囲の曲げ剛性を持ち、拡張器単独では、約40から60N-m2 x 10-6の範囲の曲げ剛性を持つ。典型的なシース/拡張器の曲げ剛性は、150から250N-m2 x 10-6の範囲である。補強の材料または設計の選択を通して、より高い柔軟性を達成できる。例えばシースは、.002”から.003”の厚さおよび.005”から.015”の幅の寸法ならびに40乃至55Dのデュロメーター硬さの外側の被覆を伴う、ステンレス鋼のリボンコイル(ribbon coil)の補強を有してもよい。ある実施態様において、コイルリボン(coil ribbon)は.003” x .010”であり、外側の被覆は45Dのデュロメーター硬さである。ある実施態様において、シース605を、先端から所定の距離(典型的には0.5~1cm)に、湾曲部または角部を持つようにプレシェイプする(pre-shaped:あらかじめ形づくる)ことができる。プレシェイプされた湾曲部または角部は、典型的には5°~90°の範囲、好ましくは10°~30°の範囲の曲げ(turn)を提供してもよい。導入初期には、シース605は、その管腔に設置される拡張器645などの閉鎖器具または他の直線状もしくは成形された器具によって、真っ直ぐにされるだろう。シース605が、経皮的または他の動脈壁貫通を通して少なくとも部分的に導入された後、閉鎖物(obturator)を引き抜いて、シース605が動脈管腔内でそのプレシェイプの形態を再び取り戻すことを可能にする。挿入中真っ直ぐに伸ばした後、シース本体の湾曲部または角部の形状を保持するため、シースを、製造中、湾曲部または角部の形状においてヒートセット(heat set)してもよい。代わりに、補強構造をニチノールで構成してもよく、製造中、湾曲部または角部の形状へ熱で成形してもよい。代わりに、追加のばねの要素をシース本体に加えてもよく、例えば、ばね鋼またはニチノールのばねを、正確な形状で、シースの補強層(reinforcement layer)に加えてもよい。
【0098】
他のシース構造は、シースを設置できるようなたわみ機構(deflection mechanism)を持つことを含んでおり、カテーテルは、インサイチュで所望の展開角度にたわむことができる。さらに別の構造では、カテーテルは、総頚動脈の管腔内に設置したときに、硬くない構造(non-rigid configuration)を有する。管腔内に設置した後、シースを望ましい構造に形作るまたは硬直させるために、プルワイヤー又は他の硬直機構(stiffening mechanism)を展開することができる。そのような機構の1つの具体例は、医学および特許の文献によく記載されている「形状ロック」機構("shape-lock" mechanisms)として一般に知られている。
【0099】
別のシース構造は、直線で柔軟なシースに挿入される湾曲した拡張器を含み、拡張器とシースは、挿入中に湾曲する。シースは、拡張器を除去した後に、組織に適合するように十分に柔軟である。
【0100】
別のシースの実施態様は、挿入時、角部の構造において、シースをねじることなく、反対側の動脈壁に過度な力を生じずに、大きな角度に曲げることができるような、一以上の柔軟性のある遠位部分を含むシースである。一つの実施態様において、シース本体605の最も遠位の部分は、シース本体の残部よりも柔軟性がある。例えば、最も遠位の部分の曲げ剛性は、シース本体605の残部の曲げ剛性の2分の1から10分の1である。ある実施態様において、最も遠位の部分の曲げ剛性は30から300N-mm2であり、シース本体605の残りの部分の曲げ剛性は500から1500N-mm2である。CCAアクセスサイト用に構成されたシースにおいて、柔軟性のある最も遠位の部分は比として表現できるシース本体222の重要な部分を含む。ある実施態様において、柔軟性のある最も遠位の部分の長さのシース本体222の全長に対する比は、シース本体222全長の少なくとも10分の1および最大で2分の1である。柔軟性におけるこの変更は、様々な方法で達成できる。例えば、様々な部分における外側の被覆のデュロメーター硬さおよび/または材料を変更してもよい。代わりに、補強構造または補強材料を、シース本体の長さにわたって変更してもよい。ある実施態様において、柔軟性のある最も遠位の部分は1cmから3cmの範囲である。一以上の柔軟性のある部分を伴うある実施態様において、(最も遠位の部分に対して)より柔軟性の低い部分は、最も遠位の部分における近位部分から1cmから2cmであってもよい。ある実施態様において、柔軟性のある遠位部分は約30から50N-m2 x 10-6の範囲の曲げ剛性(bending stiffness)を持ち、より柔軟性の低い部分は約50から100N-m2 x 10-6の範囲の曲げ剛性を持つ。別の実施態様において、より柔軟性のある部分は1乃至2cmの長さの内、0.5乃至1.5cmに位置し、シースはある角度で動脈に侵入するが、シースの遠位部分が血管の軸とより容易に平行になることを可能にする連接部分を作る。様々な柔軟性の部分を含むこれらの構成をいくつかの様式で製造してよい。例えば、近位部分においてより硬い補強がなされ、遠位部分または連接部分においてより柔軟性のある補強がなされるように、より柔軟性の低い補強される部分は様々であってよい。ある実施態様において、シースの最も外部の被覆材料は、近位部分において45Dから70Dのデュロメーター硬さであり、最も遠位の部分において80Aから25Dである。ある実施態様において、シースの柔軟性は、シース本体の長さに沿って連続的に変動する。図7Gは、シース本体が曲がり、その遠位先端が血管の管腔と大まかに一直線になることを可能にする柔軟性のある遠位部分を備える、動脈に挿入するそのようなシースを示す。ある実施態様において、コイルもしくは組み紐のピッチ(pitch)を様々に変えること、または異なる切断パターンで切断されたハイポチューブ(hypotube)を組み込むことのいずれかによって、遠位部分はより柔軟性のある補強構造を含んで作られる。代わりに、遠位部分は、近位部分と異なる補強構造を持つ。
【0101】
ある実施態様において、遠位シースの先細の先端を、遠位シースの本体よりも硬い材料で製造する。この目的は、シース上の非常に滑らかな先細を可能にすることによって、シース挿入の容易さを促進し、シース先端のゆがみの変化または血管へのシース挿入中および挿入後に楕円形になることを軽減することである。一つの実施例において、遠位の先細の先端の材料を、例えば60~72Dのショア硬さ(shore)の材料など、より硬いデュロメーター硬さの材料で製造する。別の実施例では、遠位先端を、例えば、HDPE、ステンレス鋼または別の適したポリマーもしくは金属など、別個の材料で製造する。追加の実施態様において、遠位先端を、例えばタングステンもしくは硫酸バリウムなどのポリマー材料への添加、または(ほとんどの金属材料の場合のように)材料の本質的な性質のいずれかとして、放射線不透過性の材料で製造する。
【0102】
別の実施態様において、拡張器645もまた、様々な硬さであってよい。例えば、拡張器の先細の先端650を拡張器の近位部分よりも柔軟性のある材料で作ってもよく、これはシースおよび拡張器を動脈内に挿入する際に、血管の損傷のリスクを最小化する。ある実施態様において、柔軟性のある遠位部分は、約45から55N-m2 x 10-6の範囲の曲げ剛性を持ち、より柔軟性の低い近位部分は約60および90N-m2 x 10-6の範囲の曲げ剛性を持つ。拡張器の先細の形状を経頚部アクセス用に最適化してもよい。例えば、動脈に侵入するシースおよび拡張器の量を制限するため、先細の長さおよびシースを通り過ぎて延在する拡張器の量を、典型的なイントロデューサーシースよりも短くすべきである。例えば、先細の長さは1から1.5cmであってよく、シース本体の端から1.5から2cm伸びてもよい。ある実施態様において、拡張器は、先端の位置が蛍光透視法下で容易に目で見えるように、遠位先端に放射線不透過性のマーカーを含む。
【0103】
別の実施態様において、イントロデューサーガイドワイヤーは経頚部アクセスに最適に構成される。典型的に、イントロデューサーシースを血管内に挿入する際、イントロデューサーガイドワイヤーが血管内に最初に挿入される。これは、マイクロパンクチャー技術または改良セルジンガー法のいずれでなされてもよい。イントロデューサーガイドワイヤーが挿入され得る、例えば大腿動脈へ、シースが挿入される方向に通常長い血管がある。この場合、ユーザーは、シースを挿入する前に、ガイドワイヤーを10乃至15cmまたはそれ以上血管に導入してもよい。動脈内に導入される際に血管を損傷しないように、ガイドワイヤーは柔軟性のある遠位部分を持つように設計される。イントロデューサーシースガイドワイヤー(introducer sheath guide wire)の柔軟性のある部分は典型的に5から6cmの長さであり、より硬い部分へと徐々に移行する。10から15cmのガイドワイヤーの挿入は、ガイドワイヤーの硬い部分が穿刺の領域に位置し、続くシースおよび拡張器の血管内への挿入において安定な補助を可能にすることを意味する。しかしながら、総頚動脈への経頚部のシースの挿入の場合、頚動脈へ挿入するガイドワイヤーの量に限界がある。分岐部または内頚動脈における頚動脈疾患の場合、ワイヤーを外頚動脈に挿入することによって塞栓のリスクを最小化することが望ましく、これは、ガイドワイヤーの約5から7cmのみの挿入を意味し、または分枝部に到達する前にワイヤーを止めることが望ましく、これはガイドワイヤーの3から5cmのみの挿入となる。したがって、経頚部のシースガイドワイヤーは、3乃至4cmの柔軟性のある遠位部分および/またはより硬い部分へのより短い移行を有してもよい。代わりに、経頚部のシースガイドワイヤーは非外傷性の先端部分を有するが、より硬い部分への非常に遠位および短い移行を有する。例えば、柔らかい先端部分が1.5から2.5cmであり、3から5cmの長さの移行部分が続き、ワイヤーの残りの部分を含むより硬い近位部分を伴うより硬い近位区分(segment)が続く。
【0104】
上述の構成に加えて、イントロデューサーガイドワイヤー、またはマイクロパンクチャーカテーテル、またはマイクロパンクチャーカテーテルガイドワイヤーにおいて、頚動脈の罹患部分へのこれらのデバイスの不注意な前進を防ぐ特徴を含んでもよい。例えば、ストッパーの特徴を、イントロデューサーガイドワイヤー、マイクロパンクチャーカテーテルおよび/またはマイクロパンクチャーガイドワイヤー上に配置し、これらのデバイスの挿入可能な長さを制限してもよい。例えば、ストッパーの特徴は、デバイス上にスライド可能に配置でき、一度配置すると、摩擦によってデバイス上の定位置にとどまる、チューブの短い部分であってもよい。例えば、ストッパーの特徴を、シリコンゴム、ポリウレタンまたは他の熱可塑性エラストマーなどの柔らかいポリマー材料で製造してもよい。ストッパーの特徴は、デバイスの直径と同じサイズまたはそれよりもさらにわずかに小さい内径を有してもよい。代わりに、ユーザーがデバイスの固定を外し、デバイスを再配置するために、ストッパーの特徴を強く押し、または固定を解除し、その後デバイス上のストッパーの特徴を外し、または再度固定しなければならないように、ストッパーの特徴をデバイス上に固定するように構成してもよい。ストッパーの特徴を、穿刺サイトの位置、穿刺サイトに対する分岐部の距離および頚動脈の分岐部の疾患の量に基づいて、血管へ最適に挿入するように配置してもよい。
【0105】
シースガイドワイヤーは、ユーザーが拡張器に対するワイヤーの先端の場所を決定するのに役立つガイドワイヤーマーク(guide wire marking)を有してもよい。例えば、ワイヤーの先端がちょうどマイクロアクセスカニューレ(micro access cannula)の先端に存在する時に対応する、ワイヤーの近位端にマークがあってもよい。このマークは、迅速なワイヤー位置のフィードバックを与え、ユーザーが挿入するワイヤーの量を制限するのに役立つ。別の実施態様において、ワイヤーは追加のマークを含み、設定距離(set distance)(例えば5cm)によって、ユーザーにワイヤーがカニューレに存在することを知らせてもよい。代わりに、イントロデューサーガイドワイヤー、マイクロパンクチャーカテーテルおよび/またはマイクロパンクチャーガイドワイヤーは、マーカー(marking pen)でマーク可能な材料から構成されてもよく、または構成される部分を有してもよく、ここでこのマークはカテーテル処置室(cath lab)または手術室(OR)環境内で容易に目に見える。この実施態様において、ユーザーは、上述のように解剖学的情報に基づいて構成要素にプレマーク(pre-mark)し、これらのマークを用いて、各構成要素における最大の挿入量を決定する。例えば、ガイドワイヤーはマークされた部分の周りに白いコーティングを有してもよい。
【0106】
ある実施態様では、シースは、固有の(built-in)穿刺能力およびガイドワイヤーの先端と類似する無傷性の先端(atraumatic tip)を有している。これにより、マイクロパンクチャー技術による動脈アクセスで現在用いられる針およびワイヤー交換の必要をなくし、よって、時間を節約し、失血を低減し、そして必要とされる外科的スキルをより低くできる。
【0107】
別の実施態様において、シース拡張器を、経頚部アクセスのために0.018”のガイドワイヤー上に挿入するように構成する。マイクロパンクチャーキットを用いる標準的なシースの挿入は、22Gaの針を通る.018”のガイドワイヤーの第一の挿入、次にマイクロパンクチャーカテーテルを用いる.035”または.038”のガイドワイヤーへの交換、および最後に.035”または.038”のガイドワイヤー上のシースおよび拡張器の挿入を必要とする。018”のガイドワイヤー上に挿入可能なシースが存在するため、ワイヤー交換の必要はない。これらのシース(橈骨動脈への挿入のために設計されたため、通常「経橈骨動脈(transradial)」と呼ばれる)は、典型的により長い拡張器の先細を有し、.018”のワイヤーからシース本体への適切な直径の増加を可能にする。経頚部アクセスにおいては残念ながら、シースおよび拡張器の挿入の長さが制限され、そのためこれらの既存のシースは適切ではない。別の不利益は、.018”のガイドワイヤーは、頚動脈へより鋭い角度でシースを挿入するために必要な補助ができないことである。本明細書で開示する実施態様において、経頚部のシースシステムは、シース本体、シース拡張器および、シース拡張器の内部にスライド可能に適合し、.018”のガイドワイヤーを収容できる先細の遠位端を伴う内部チューブを含む。
【0108】
このシースシステムの実施態様を用いるため、.018”のガイドワイヤーを第一に、22Gaの針を通って血管内に挿入する。同軸上に取り付けるシースシステムを.018”のワイヤー上に挿入する。内部チューブを第一に.018”のワイヤー上に前進させ、これは本質的に.018”のワイヤーを、外径および機械的な補助の両方において、.035”または.038”のガイドワイヤーに相当するものに変換する。それは、近位端で.018”のワイヤーと固定される。次いで、シースおよび拡張器を.018”のワイヤーおよび内部チューブ上で、血管へ前進させる。この構成は、現在の経橈骨動脈シースと同様により長い拡張器の先細を必要とせず、および標準的なイントロデューサーシースと同様のガイドワイヤーの補助を伴って、ワイヤー交換の工程を排除する。上述のように、シースシステムのこの構成はストッパーの特徴を含んでもよく、これはシース挿入中に.018”のガイドワイヤーおよび/または内部チューブが不注意に前進し過ぎることを防ぐ。シースが挿入されると、拡張器、内部チューブ、および.018”のガイドワイヤーは取り除かれる。
【0109】
図8Aは、動脈アクセスデバイス110の別の実施態様を示す。この実施態様は、遠位シース605が、(例えば総頚動脈を通る)血流を閉塞するための閉塞要素129を含んでいる以外は、図6Aに示された実施態様と実質的に同様である。閉塞要素129がバルーンなどの可膨張性の構造体である場合、シース605は、閉塞要素129と通じている膨張管腔(inflation lumen)を含むことができる。閉塞要素129は、可膨張性のバルーンにすることができるが、可膨張性のカフ(cuff)や、総頚動脈の内壁に係合し、そこを通過する血流を遮断する外向きに裾が広がった円錐状もしくは他の円周要素や、膜で覆われた組み紐や、軸方向に圧縮されたときに半径方向に拡大する穴あきチューブ(slotted tube)や、または機械的手段等によって展開できる同様の構造体にすることもできる。バルーン閉塞の場合、バルーンは、適合した(compliant)、不適合の(non-compliant)、弾性の(elastomeric)、補強された、または様々な他の特徴を持っている。ある実施態様では、バルーンは、膨張する前はシースの遠位端の外側を覆って密着して受容されている弾性バルーンである。膨張したときは、弾性バルーンは、総頚動脈の内部壁を拡張し、内部壁に適合することができる。ある実施態様では、弾性バルーンは、非展開の形態に比べて少なくとも2倍の直径に拡張することができ、しばしば、非展開の形態に比べて少なくとも3倍の直径に拡張することができ、より好ましくは、非展開の形態に比べて少なくとも4倍の直径、あるいはそれ以上に拡張することができる。
【0110】
図8Bに示すように、閉塞要素129を備えた遠位シース605は、縮径された遠位領域630を有している階段状または他の形態を有することができる。遠位領域630は、頚動脈への挿入に適したサイズにされており、シース605の残りの近位領域はより大きい外径と内腔径にされていて、内径は典型的には2.794mm(0.110インチ)~3.43mm(0.135インチ)の範囲である。近位領域のより大きな内腔径は、シースの全体的な血流抵抗を最小にする。ある実施態様では、縮径された遠位部分630の長さはおよそ2cm~4cmである。縮径された遠位部分630の比較的短い長さによって、シース605の遠位端が分岐部Bと接触するリスクを低減しながら、この部分が経頚部アプローチを介して総頚動脈CCAに位置することを可能にする。
【0111】
図2Bは代わりの実施態様を示しており、閉塞要素129を、動脈アクセスデバイス110の遠位シース605と別個の第2のシース112上で頚動脈に導入できる。第2または「近位」のシース112は、脳血管から離れた近位または「下側」方向で総頚動脈に挿入するのに適しているだろう。概略的に上述したように、第2の近位シースは、可膨張性のバルーン129または他の閉塞要素を含むことができる。その後、動脈アクセスデバイス110の遠位シース605を、第2の近位シースの遠位側の総頚動脈に設置し、通常は脳血管に向けて遠位方向に方向付けることができる。別個の閉塞シースおよびアクセスシースを用いて、アクセスシースの導入に必要とされる切開した動脈のサイズを縮小することができる。
【0112】
図2Cは、2つの動脈シースシステムのさらに別の実施態様を示しており、介入デバイスは、動脈デバイス110の遠位シース605と分離した導入シース114によって導入される。第2または「遠位」のシース114は、動脈アクセスデバイス110より遠位側で、総頚動脈に挿入するのに適しているだろう。先の実施態様と同様に、2つの別個のアクセスシースを使用することによって、各々の切開した動脈のサイズを縮小することができる。
【0113】
経頚部アクセスの手技において見ることができるように、動脈へのシースの挿入が鋭角であり、および/または挿入するシースの長さが短い状況において、シースの遠位先端は部分的または全体的に血管壁に接触して配置される可能性がより高く、それによってシースへの血流が制限される。ある実施態様において、シースを、血管の管腔内においてその先端が中心に配置するように設計する。一つのこのような実施態様は、上述の閉塞要素129などのバルーンを含む。別の実施態様において、バルーンは血流を閉塞せず、可膨張性のバンパー(bumper)のように、シースの先端を血管壁から離して中心に配置していてもよい。別の実施態様において、拡張可能な特徴はシースの先端に位置し、シースが所定の場所に置かれると、機械的に膨張する。機械的に膨張可能な特徴の実施例は、編まれた(braided)構造またはらせん構造または縮めると半径方向に膨張する長軸方向の支柱を含む。
【0114】
ある実施態様において、シースの遠位先端の近位にある血管の閉塞は、ルンメル止血帯(Rummel tourniquet)またはシース挿入サイトの近位にある血管ループなどにおいて、血管の外側からなされてもよい。代わりの実施態様において、閉塞デバイスは、例えば血管および遠位シース先端の周囲を締め付けることができる、弾性のあるループ(elastic loop)、可膨張性のカフまたは機械的なクランプなど、シース先端周囲の血管の外側に適合してもよい。血流の逆流のシステムにおいて、この血管閉塞の方法は、血流が静止した領域を最小化し、それによって血栓形成のリスクを下げ、またシース先端が血管と軸方向に一直線になり、血管壁によって部分的または完全に遮断されないことを保証する。
【0115】
ある実施態様において、シース本体の遠位部分は、たとえシースの先端が動脈壁によって部分的または完全に遮断されてもシースへの血流が維持されるように、側孔(side hole)を含んでもよい。
【0116】
別の動脈アクセスデバイスを図9A~9Dに示す。この構成は、先述の変形例(version)とは異なる血流シャントとの接続の型(style)を有する。図9Aは、動脈アクセスシース605、シース拡張器645、シースストッパー705およびシースガイドワイヤー111を含む動脈アクセスデバイス110の構成要素を示す。図9Bは、頚動脈内へのシースガイドワイヤー611上の挿入のために組み立てられるような動脈アクセスデバイス110を示す。動脈へのシースの挿入後および手技中に、シースガイドワイヤー611およびシース拡張器705は取り除かれる。この構成において、シースはシース本体605、近位伸長部610ならびに洗い流しライン635および栓640を備える止血バルブ625を有する。近位伸長部610は、Yアダプター660から洗い流しライン635が接続する止血バルブ625まで伸長する。シース本体605は頚動脈に挿入されるようにサイズが決められている部分であり、使用中に実際に動脈へ挿入される。
【0117】
バルブ内で終了する血流ラインの接続を伴うYコネクターの代わりに、シースはシースの遠位部分を近位伸長部610に接続するYアダプター660を有する。Yアダプターはまた、シャントなどの血流ラインを取り外し可能に接続できるコネクターまたはハブ680との流体接続を開閉するために操作できるバルブ670を含んでもよい。バルブ670は、アダプター660の内部管腔に近接(immediately adjacent)して配置され、これはシース本体605の内部管腔と連絡する。図9Cおよび9Dはバルブ670およびハブ680を備えるYアダプター660の横断面の詳細を示す。図9Cはコネクターに対して閉じたバルブを示す。これは、動脈シースの調整中におけるバルブの配置である。バルブは、シースの調整中に空気をトラップする可能性がないように構成される。図9Dはコネクターに対して開いたバルブを示す。この配置は、血流シャント120がハブ680に接続されると使用され、動脈シースからシャントへの血流を可能にする。この構成は、洗い流しラインおよび血流ラインの両方を調整する必要性を排除し、代わりに単一の洗い流しライン635および栓640での調整を可能にする。この単一ポイント(single-point)での調整は、シャントライン(shunt line)との接続を持たない従来のイントロデューサーシースの調整と同一であり、そのためユーザーはより精通しており、ユーザーにはより便利である。加えて、シース上の血流ラインの欠如は、調整および動脈への挿入中において、動脈シースの操作をより容易にする。
【0118】
再度、図9Aに関して、シースはまた、第二のより遠位のコネクター690を含んでもよく、これはチューブ665の区分によってYアダプター660から分離される。この第二のコネクターおよびチューブ665の目的は、シース605の挿入可能な部分の長さを制限したままで、バルブ670をシースの遠位先端からさらに近位に配置することを可能にし、したがって、血流シャントが手技中に動脈シースに接続される際の、ユーザーの放射線源への暴露のレベルの減少を可能にすることである。ある実施態様において、遠位コネクター690は、配置後に患者に対するシースの確保を助けるための縫合の小穴を含む。
【0119】
静脈リターンデバイス
次に図10を参照すると、静脈リターンデバイス115は、遠位シース910および血流ライン915を含むことができ、システムの使用中、シャント120に接続されてシャント120の脚部を形成する。遠位シース910は、切開または穿刺を通して静脈リターン場所(頚静脈または大腿静脈など)に導入するのに適している。遠位シース910および血流ライン915は永久に取り付けることができ、または、図10Aに示すように、従来のルアーフィッティング(luer fitting)を用いて取り付けることができる。任意で、図10Bに示すように、シース910はYコネクター1005によって血流ライン915に結合することができる。Yコネクター1005は、止血バルブ1010を含んでもよい。静脈リターンデバイスはまた、内頚静脈または他の静脈への静脈リターンデバイスの導入を容易にする、静脈シース拡張器(venous sheath dilator)1015およびイントロデューサーガイドワイヤー611を含む。動脈アクセス拡張器645と同様に、静脈拡張器1015はガイドワイヤーの中央の管腔を含んでおり、それにより、静脈シースと拡張器との組合せをガイドワイヤー611上に設置できる。任意で、静脈シース910は、近位端または遠位端に栓1025を備える洗い流しライン1020を含むことができる。
【0120】
代わりの構成を図10Cおよび10Dに示す。図10Cは、静脈リターンシース910、シース拡張器1015およびシースガイドワイヤー611を含む、静脈リターンデバイス115の構成要素を示す。図10Dは、中心静脈へのシースガイドワイヤー611上の挿入のために組み立てられるような静脈リターンデバイス115を示す。シースを静脈に挿入すると、拡張器およびガイドワイヤーは取り除かれる。静脈シースは止血バルブ1010および血流ライン915を含んでもよい。血流の端の栓1025は、使用前に血流ラインを介して静脈シースを洗い流すことを可能にする。この構成は、従来のイントロデューサーシースと同様に、シースを単一ポイントから調整することを可能にする。血流シャント120の接続は、栓1025上のコネクター1030と作られる。
【0121】
全体のシステム血流抵抗を低減するために、動脈アクセス血流ライン615(図6A)および静脈リターン血流ライン915、ならびにYコネクター620(図6A)および1005の各々は、比較的大きい血流の管腔内部径で、典型的には2.54mm(0.100インチ)~5.08mm(0.200インチ)の範囲の内部径と、比較的短い長さで、典型的には10cm~20cmの範囲の長さとを持つことができる。システム血流抵抗は低いことが望ましく、それは、塞栓のリスクが最大になったときに、手技の一時期の間に血流を最大にできるからである。以下に詳細に説明するように、低いシステム血流抵抗はまた、システム中の血流を制御するための可変血流抵抗の使用を可能にする。静脈リターンシース910の寸法は、上記の動脈アクセスシース605の寸法と、およそ同じである。静脈リターンシース内に、止血バルブ1010用の伸張部は必要ではない。
【0122】
逆流シャント(Retrograde Shunt)
シャント120は、動脈アクセスカテーテル110と静脈リターンカテーテル115との間の流体の連絡を提供し、それらの間で逆流する血流の経路を提供する単一チューブまたは複数の接続チューブから形成することができる。図1Aに示すように、シャント120は、その一端で、(コネクター127aを介して)動脈アクセスデバイス110の血流ライン615に接続し、他端で、(コネクター127bを介して)静脈リターンカテーテル115の血流ライン915に接続する。
【0123】
ある実施態様では、シャント120は、血流制御アセンブリ125と通じる少なくとも1本のチューブで形成することができる。シャント120は、血流用の流体経路を提供するどのような構造体でもよい。シャント120は、単一の管腔を持つことができ、または複数の管腔を持つことができる。シャント120は、血流制御アセンブリ125、動脈アクセスデバイス110および/または静脈リターンデバイス115に、取り外し可能に取り付けられてもよい。使用に先立って、ユーザーは、動脈アクセス場所および静脈リターン場所に使用するのに最適な長さのシャント120を選択することができる。ある実施態様では、シャント120は、シャント120の長さを変更するのに利用できる1以上の延長チューブを含んでもよい。延長チューブは、所望の長さを達成するために、シャント120にモジュールで取り付けることができる。シャント120のモジュール態様は、ユーザーが、必要に応じて、静脈リターンサイトに依存してシャント120を延長するのを可能にする。例えば、何人かの患者では、内頚静脈IJVは小さく、および/またはねじ曲がっている。他の組織構造体に近いので、この位置での合併症のリスクは他の場所よりも高いかもしれない。さらに、頚部の血腫は、気道閉塞および/または脳血管の合併症を引き起こすかもしれない。従って、そのような患者にとって、内頚静脈IJV以外の場所、例えば大腿静脈などに静脈リターンサイトを置くのが望ましいだろう。大腿静脈リターンサイトは、重大な合併症の低いリスクと共に経皮的に達成されてもよく、および内頚静脈IJVが利用可能でない場合には、中心静脈に代わりの静脈アクセスをも提供する。更に、大腿部静脈リターンは、デバイスが導入され造影剤射出ポートが配置される介入の「作業領域(working area)」により近接してシャント制御が配置されるように、逆流シャントのレイアウトを変更する。
【0124】
ある実施態様では、シャント120は、内径が4.76mm(3/16インチ)で、長さが40~70cmで
ある。上述のように、シャントの長さは調節できる。ある実施態様において、シャントと動脈および/または静脈アクセスデバイスとの間のコネクターは血流抵抗を最小化するように構成される。ある実施態様において、図1A~1Dに示すように、動脈アクセスシース110、逆流シャント120および静脈リターンシース115を組み合わせ、低い血流抵抗の動静脈AVシャントを作り出す。上述のように、これら全てのデバイスの接続および血流ラインを最適化し、血流の抵抗を最小化または低減する。ある実施態様において、AVシャントは、動脈シース110内にデバイスがなく、AVシャントが血液の粘度および60mmHgの水圧の静圧を伴う流体源と接続している場合、最大で300mL/分までの血流を可能にする血流抵抗を有する。実際のシャントの抵抗は、(図11に示すような)チェックバルブ(check valve)1115またはフィルター1145の存在の有無、またはシャントの長さに依存して変動してもよく、150乃至300mL/分の血流が可能となり得る。
【0125】
動脈シース内にステント送達カテーテルなどのデバイスがある場合、血流抵抗を増加する動脈シースの部分があり、これは次にAVシャント全体の血流抵抗を増加する。この血流抵抗の増加は対応する血流の減少を有する。ある実施態様において、図6Aに示すようなYアーム(arm)620は、動脈シース本体605を、カテーテルをシースへ導入する止血バルブ625から少し離れた血流ライン615に接続する。この距離は近位伸長部610の長さによって設定される。したがって、カテーテルによって制限される動脈シースの部分は、シース本体605の長さに限定される。実際の血流の制限はシース本体605の長さおよび内径ならびにカテーテルの外径に依存する。上述のように、シースの長さは5から15cmの範囲であってもよく、通常は10から12cmであり、内径は典型的に7Frから10Fr(1Fr = 0.33mm)であり、通常は8Frである。ステント送達カテーテルは3.7Frから5.0Frまたは6.0Frの範囲であってもよく、ステントおよび製造者のサイズに依存する。図6Bに示すように、この制限は、シース本体を血管内(階段状のシース本体)以外の部分の内径を増加するように設計する場合、さらに低減され得る。血流の制限は、管腔の距離の4乗に比例するため、管腔または環状の面積の小さな増加は血流の制限の大きな減少をもたらす。
【0126】
使用時のAVシャントを通る実際の血流はさらに、患者の脳の血圧および血流抵抗に依存する。
【0127】
血流制御アセンブリ-逆流の調節とモニタリング
血流制御アセンブリ125は、逆流シャント120と相互に作用して、総頚動脈から、例えば大腿静脈、内頚静脈などの静脈リターンサイトへの、または外部レセプタクル130への逆流速度を調節および/またはモニターする。これに関して、ユーザーは、血流制御アセンブリ125により、現存のシステムより高い最大血流速度を達成することができ、また、逆流する血流速度を選択的に調節、設定、または調整することができる。以下により完全に記載するように、様々な機構を利用して、逆流速度を調節することができる。以下に記載するように、ユーザーは、血流制御アセンブリ125により、様々な処置法に適した様式で逆流する血流を構成することができる。
【0128】
一般的に、連続的な逆流速度を制御する能力は、医師が個々の患者および手術のステージのためにプロトコルを調節することを可能にする。逆流する血流速度は、典型的には、低速~高速の範囲にわたって制御される。高速は、低速に比べて少なくとも2倍速く、典型的には低速に比べて少なくとも3倍速く、また多くの場合低速に比べて少なくとも5倍またはそれ以上速い。ある実施態様では、高速は、低速より少なくとも3倍速く、また別の実施態様では、高速は低速より少なくとも6倍速い。逆流する血流速度を高くして、頚動脈からの塞栓の抽出を最大にするのが一般的に望ましいが、逆流する血流に耐える患者の能力は様々である。このように、逆流する血流速度を容易に調整できるシステムおよびプロトコルを有することにより、血流速度がその患者にとって耐えられるレベルを越えているときは、治療する医師が決定して、それに応じて逆流速度を設定することができる。連続的な高速の逆流速度に耐えられない患者には、医師は、塞栓のデブリスのリスクが最も高く、手技で危険な短い間だけ、高速の血流を作動させることを選択できる。短い間隔、例えば15秒乃至1分では、患者の耐性限界は通常は要因にならない。
【0129】
特定の実施態様では、連続的な逆流する血流速度は、10ml/分~200ml/分の範囲のベースラインの血流速度で制御でき、典型的には20ml/分~100ml/分の範囲で制御できる。これらの血流速度は、大多数の患者が耐えられる。手術のほとんどの間は、血流速度をベースラインの血流速度に維持するが、塞栓放出のリスクが増加したときは、そのような塞栓を捕らえる能力を高めるために、血流速度を、短時間だけベースラインを越えて増加させることができる。例えば、ステントカテーテルが導入されるとき、ステントを展開するとき、ステントの拡張前および拡張後、および総頚動脈閉塞部の除去時などに、逆流する血流速度を、ベースラインを越えて増加することができる。
【0130】
血流速度コントロールシステムは、頚動脈分岐部の領域内の頚動脈を「洗い流す」ために、順行性の血流を再建する前に、比較的低い血流速度と比較的高い血流速度との間で繰り返すことができる。そのような繰り返しは、低い血流速度に比べておよそ2~6倍速い高い血流速度、典型的には約3倍速い血流速度を確立することができる。繰り返しの周期は、典型的には0.5秒~10秒の範囲の長さ、通常は2秒~5秒の長さを有することができ、繰り返しの合計継続時間は、5秒~60秒の範囲、通常は10秒~30秒にすることができる。
【0131】
図11は、血流制御アセンブリ125の配置図を含むシステム100の実施例を示しており、血流制御アセンブリ125は、逆流する血流が少なくとも血流制御アセンブリ125の一部を通過するか、または一部と通じるように、シャント120に沿って配置されている。血流制御アセンブリ125は、逆流の調節および/またはモニターのために、様々な制御可能な機構を含むことができる。その機構は、1以上のポンプ1110、バルブ1115、シリンジ1120および/または可変抵抗成分1125を含む逆流制御用の様々な手段を含むことができる。血流制御アセンブリ125は、ユーザーによって手動で制御され、および/またはコントローラ1130を介して自動で制御されて、シャント120を通る血流を変更することができる。例えば、血流抵抗を変更することにより、シャント120を通る逆流する血流速度を制御することができる。コントローラ1130(以下により詳細に記載される)は、血流制御アセンブリ125に統合することができ、または、血流制御アセンブリ125の構成要素と通じている別個の構成要素とすることができる。
【0132】
さらに、血流制御アセンブリ125は、逆流の1以上の状況を検知するために、1以上の血流センサ(flow sensors)1135および/または解剖学的データセンサ(anatomical data sensors)1140(以下に詳細に記載される)を含むことができる。フィルター1145を、血液が静脈リターンサイトに戻る前に塞栓を除去するために、シャント120に沿って配置することができる。フィルター1145をコントローラ1130の上流に配置すると、フィルター1145は、塞栓がコントローラ1145に入って可変血流抵抗成分1125を詰めるおそれを防ぐことができる。血流制御アセンブリ125の様々な構成要素(ポンプ1110、バルブ1115、シリンジ1120、可変抵抗成分1125、センサ1135/1140およびフィルター1145を含む)は、シャント120に沿って様々な場所に配置でき、そして互いに対して上流または下流の様々な位置に配置できると認識されるべきである。血流制御アセンブリ125の構成要素は、図11に示される場所に制限されない。さらに、血流制御アセンブリ125は、必ずしも全ての構成要素を含まず、むしろ構成要素の様々なサブコンビネーション(sub-combinations)を含んでよい。例えば、シリンジを、血流を調節する目的で、血流制御アセンブリ125内に任意で使用することができ、または、シャント120を介して順行性の方向で動脈に放射線造影剤などの流体を導入するように、血流調節以外の目的でアセンブリの外部で使用することもできる。
【0133】
可変抵抗成分1125およびポンプ1110の両方は、シャント120に連結して、逆流する血流速度を制御することができる。ポンプ1110がシャント120を通って容積式(positive displacement)に血液を提供する間に、可変抵抗成分1125は血流抵抗を制御する。このように、ECAとICAの灌流幹圧力(perfusion stump pressures)および静脈の背圧(back pressure)に依存して逆流を駆動するのではなく、ポンプを稼働して逆流を駆動することができる。ポンプ1110は、蠕動チューブポンプまたは容積式ポンプを含むいずれかのタイプのポンプにすることができる。ポンプ1110を(手動またはコントローラ1130を介して自動で)稼働または停止して、シャント120を通る血液移動を選択的に達成することができ、シャント120を通る血流速度を制御することができる。シャント120を通る血液移動は、吸引シリンジ1120を用いることを含む他の方法によっても達成でき、または、バキュティナ(vacutainer)、バキュロック(vaculock)シリンジもしくは壁面吸い込みなどの吸気源を用いてもよい。ポンプ1110はコントローラ1130と通じることができる。
【0134】
1以上の血流制御バルブ1115を、シャントの経路に沿って配置できる。バルブは、手動で動かすことができ、または(コントローラ1130を介して)自動で動かすことができる。血流制御バルブ1115は、例えば、シャント120内の順行性の方向の血流を防ぐための一方向バルブ、チェックバルブ、または、例えば高圧での造影剤注入(それらは順行性の方向で動脈血管に入るように意図される)の間に、シャント120を閉じる高圧バルブにすることができる。ある実施態様において、一方向バルブは、例えば米国特許第5,727,594号に記述される血流抵抗の低いバルブまたは他の血流抵抗の低いバルブである。
【0135】
フィルター1145および一方向チェックバルブ1115の両方を備えるシャントのある実施態様において、チェックバルブはフィルターの下流に位置している。この様式では、デブリスがシャント内に進むと、デブリスはチェックバルブに到達する前にフィルターにトラップされる。多くのチェックバルブの構成は、血流の管腔を含むハウジングを密封する密封材(sealing member)を含む。デブリスは密封材とハウジングとの間でトラップされる可能性があるため、背圧を密封するバルブの能力を損なう。
【0136】
コントローラ1130は、血流制御アセンブリ125を含むシステム100の構成要素と通じており、システム100の構成要素(例えば、シャント120、動脈アクセスデバイス110、静脈リターンデバイス115および血流制御アセンブリ125を含む)を通して、手動および/または自動で、逆流の調整および/またはモニターを可能にする。例えば、ユーザーは、コントローラ1130上の1以上のアクチュエーターを動かして、血流制御アセンブリ125の構成要素を手動で制御することができる。手動制御は、コントローラ1130に直接置かれたスイッチ、ダイヤルもしくは同様の構成要素、または、例えばフットペダルや同様のデバイスなどのコントローラ1130から離れて置かれた構成要素を含んでもよい。コントローラ1130はまた、ユーザーに入力を要求せずに、システム100の構成要素を自動的に制御することもできる。ある実施態様では、ユーザーは、コントローラ1130にソフトウェアをプログラムして、そのような自動制御を可能にすることができる。コントローラ1130は、血流制御アセンブリ125の機械的部分の動作を制御できる。コントローラ1130は、センサで生成された信号に応じてコントローラ1130が血流制御アセンブリ125の動作を制御できるように、センサ1135/1140で生成されたそのような信号を解釈する電気回路またはプログラミングを含むことができる。
【0137】
図11のコントローラ1130の描写は単なる例示である。コントローラ1130は、外観および構造を変更できると認識されるべきである。図11では、コントローラ1130は単一のハウジングに統合されているように図示されている。これにより、ユーザーは、1つの場所から、血流制御アセンブリ125を制御することが可能である。コントローラ1130のあらゆる構成要素は、別個のハウジングに分散させることができると認識されるべきである。更に、図11は、コントローラ1130と血流制御アセンブリ125とを別個のハウジングとして図示している。コントローラ1130と血流制御レギュレータ125は、単一のハウジングに統合することができ、または、複数のハウジングもしくは複数の構成要素に分割することもできると認識されるべきである。
【0138】
血流状態インジケータ(Flow State Indicator(s))
コントローラ1130は、逆流の状態に関して、ユーザーに視覚的および/または音声的な信号を提供する1以上のインジケータ(表示部)を含むことができる。音声表示は、ユーザーに対して血流コントローラ1130の視覚的チェックを要求せずに、血流状態をユーザーに気づかせるのに有利である。インジケータは、スピーカー1150および/またはライト1155、またはユーザーに逆流の状態を伝えるためのあらゆる他の手段を含むことができる。コントローラ1130は、システムの1以上のセンサと通じて、インジケータの作動を制御できる。または、インジケータの作動を、血流制御アクチュエーター1165の1つを動かすユーザーと直接結び付けてもよい。インジケータは、スピーカーまたはライトである必要はない。インジケータは、視覚的に逆流の状態を示す単なるボタンまたはスイッチにすることができる。例えば、ある状態(例えば、押されたまたは下がった状態)のボタンは、逆流が速い状態にあることを視覚的に表示してもよい。または、特定のラベルを付けた血流状態を指すスイッチまたはダイヤルが、逆流がラベルを付けた状態にあることを、視覚的に表示してもよい。
【0139】
インジケータは、逆流の1以上の状態を示す信号を提供することができる。ある実施態様では、インジケータは、2つのみの個別の状態(「高い」血流速度の状態と「低い」血流速度の状態)を同定する。別の実施態様では、インジケータは2以上の血流速度を同定し、「高い」血流速度と、「中程度の」血流速度と、「低い」速度とを含んでいる。インジケータは、逆流の個別の状態のどんな量も同定するように構成することができ、または、逆流の状態に対応した目盛り付きの信号(graduated signal)を同定することができる。その際には、インジケータは、ml/分または他の単位などの逆流速度の値を示すデジタルメーターまたはアナログメーター1160にすることができる。
【0140】
ある実施態様では、インジケータは、逆流速度が「高い」血流速度の状態なのか、「低い」血流速度なのかをユーザーに示すように構成される。例えば、インジケータは、血流速度が高いときは、第1の様式(first manner)(例えば、明るさのレベル)で明るくなりおよび/または第1の音声信号を発し、その後に、血流速度が低いときは、明るさの第2の様式に変化しおよび/または第2の音声信号を発する。または、インジケータは、血流速度が高いときのみ、または血流速度が低いときのみ、明るくなり、および/または音声信号を発してもよい。何人かの患者は、高い血流速度に耐えられないこと、または長期間を越える高い血流速度に耐えられないことを考慮すると、インジケータは、血流速度が高い状態にあるときに、ユーザーに通知を提供するのが望ましいだろう。これはフェイルセーフ(二重安全)の特徴として役立つ。
【0141】
別の実施態様では、血流速度の状態が変わったとき、たとえば、血流速度が高い状態から低い状態に変化および/またはその逆に変化したときに、インジケータは信号(音声的および/または視覚的)を提供する。別の実施態様では、逆流が存在しないとき、例えばシャント120が遮断されたとき、またはシャント120の栓のうちの1つが閉じられたときに、インジケータは信号を提供する。
【0142】
血流速度アクチュエーター(Flow Rate Actuators)
コントローラ1130は、ユーザーが押し(press)、切り替え(switch)、操作し(manipulate)、または動かす(actuate)ことのできる1以上のアクチュエーターを含んで、逆流する血流速度を調節し、および/または血流速度をモニターすることができる。例えば、コントローラ1130は、コントローラが逆流の態様を選択的に変更するためにユーザーが動かすことのできる血流制御アクチュエーター1165(例えば、1以上のボタン、ノブ、ダイヤル、スイッチなど)を含むことができる。例えば、図示された実施態様では、血流制御アクチュエーター1165は様々な別個の位置に回転できるノブであり、それぞれはシステム100に特定の逆流状態を達成させるコントローラ1130に対応する。それらの状態は、例えば、(a)オフ(OFF)状態、(b)低流(LO-FLOW)状態、(c)高流(HI-FLOW)状態、および(d)吸引(ASPIRATE)状態を含んでいる。前述の状態は単なる例示であり、異なる状態または状態の組合せも利用できると認識されるべきである。コントローラ1130は、センサ、バルブ、可変抵抗成分および/またはポンプを含むシステムの1以上の構成要素と相互に作用することにより、様々な逆流状態を達成する。コントローラ1130はまた、ユーザーがコントローラ1130を積極的に動かす必要のないように、逆流速度を調節しおよび/または血流速度をモニターする電気回路およびソフトウェアを含むこともできると認識されるべきである。
【0143】
オフ状態は、シャント120を通る逆流する血流が存在しない状態に対応する。ユーザーが血流制御アクチュエーター1165をオフに設定すると、コントローラ1130は、例えばシャント120のバルブを締め、または栓を閉じることにより、逆流を停止する。低流状態および高流状態は、低い逆流速度および高い逆流速度にそれぞれ対応する。ユーザーが血流制御アクチュエーター1165を低流または高流に設定すると、コントローラ1130は、ポンプ1110、バルブ1115および/または可変抵抗成分1125を含む血流制御125の構成要素と相互に作用して、それに応じて血流速度を増加または減少させる。最後に、積極的な逆流が望まれるならば、吸引状態は、回路を吸気源(例えば、バキュティナまたは吸引装置)に開くことに対応する。
【0144】
システムは、血流を、能動状態、受動状態、吸引状態およびオフ状態を含む様々な状態間で変更するために利用できる。能動状態は、逆流する血流を積極的に駆動する手段を用いるシステムに対応する。そのような能動手段は、例えばポンプ、シリンジ、真空源などを含むことができる。受動状態は、ECAおよびICAの灌流幹圧力ならびにおそらく静脈圧によって、逆流する血流が駆動される場合に対応する。吸引状態は、吸気源(例えばバキュティナまたは吸引装置)を用いて逆流する血流を駆動するシステムに対応する。オフ状態は、栓またはバルブを閉じた結果のように、逆流する血流がないシステムに対応する。低い血流速度および高い血流速度は、受動的または能動的な血流状態のいずれかであり得る。ある実施態様では、低い血流速度および/または高い血流速度のいずれかの特定の値(例えばml/分の単位で)は、ユーザーが実際に値を設定または入力しないように、コントローラ内にあらかじめ決めることおよび/またはあらかじめプログラムすることができる。より正確には、ユーザーは単に「高い血流」および/または「低い血流」を(例えば、コントローラ1130上のボタンなどのアクチュエーターを押すことによって)選択し、コントローラ1130は、血流制御アセンブリ125の1以上の構成要素と相互に作用し、血流速度は所定の高い血流速度の値または低い血流速度の値となる。別の実施態様では、ユーザーは、低い血流速度および/または高い血流速度の値を、例えばコントローラ内に設定または入力する。別の実施態様では、低い血流速度および/または高い血流速度は実際には設定されない。より正確には、外部データ(例えば、解剖学的データセンサ1140からのデータなど)を、血流速度に作用する基準として用いる。
【0145】
血流制御アクチュエーター1165は、複数のアクチュエーターであってもよく、例えば、低流状態から高流状態に状態を切り替えるための(例えばボタンまたはスイッチなどの)1つのアクチュエーターおよび、例えば造影剤が順行性で頚動脈に向けられている場合の造影剤の注入の間に、血流ループを閉じてオフ状態にするための別のアクチュエーターである。ある実施態様では、血流制御アクチュエーター1165は複数のアクチュエーターを含むことができる。例えば、1つのアクチュエーターを操作して血流速度を低速から高速に切り替えることができ、別のアクチュエーターを操作して一時的に血流を止めることができ、そして第3のアクチュエーター(例えば栓など)を操作してシリンジを用いて吸引することができる。別の例では、1つのアクチュエーターを操作して低流状態に切り替え、そして別のアクチュエーターを操作して高流状態に切り替える。または、血流制御アクチュエーター1165は、低流状態から高流状態に切り替えるための複数のアクチュエーターと、高い血流速度および低い血流速度のなかで、血流速度を微調整するための追加のアクチュエーターとを含むことができる。低流状態と高流状態との間で切り替える際に、これらの追加のアクチュエーターを用いて、血流速度をそれらの状態のなかで微調整することができる。このように、様々な血流速度は、それぞれの状態(つまり、高い血流状態と低い血流状態)において、ダイヤルを回されて(dialed in)微調整できる、と理解されるべきである。多種多様のアクチュエーターを用いて、血流状態に対する制御を達成することができる。
【0146】
コントローラ1130、またはコントローラ1130の個々の構成要素は、患者に対しておよび/またはシステム100の他の構成要素に対して、様々な位置に置くことができる。例えば、ツールの導入中における血流制御アクチュエーター1165へのアクセスを容易にするために、介入ツールを患者へ導入する場合、血流制御アクチュエーター1165は止血バルブの近くに置くことができる。図1A~Cに示すように、例えば、経大腿部アプローチまたは経頚部アプローチを用いるかどうかに基づいて、置く場所は変更してもよい。コントローラ1130は、システム100の残りの部分に対する無線接続および/または調節可能な長さの有線接続を有して、システム100のリモートコントロールを可能にすることができる。コントローラ1130は、血流制御レギュレータ125との無線接続および/または調節可能な長さの有線接続を有して、血流制御レギュレータ125のリモートコントロールを可能にすることができる。コントローラ1130はまた、血流制御レギュレータ125に統合することもできる。コントローラ1130が血流制御アセンブリ125の構成要素に機械的に接続される場合、機械的動作能力の範囲(tether)で、コントローラ1130を1以上の構成要素に接続することができる。ある実施態様では、コントローラ1130を、システム100から十分な距離をおいて位置させることにより、蛍光透視法が使用されているときに、コントローラ1130を放射線場の外側に位置させることができる。
【0147】
コントローラ1130およびその構成要素は、様々な様式で、システムの他の構成要素(例えば、ポンプ、センサ、シャントなど)と相互に作用することができる。例えば、様々な機械的接続部を用いて、コントローラ1130とシステムの構成要素との間の連絡を可能にすることができる。代わりに、コントローラ1130は、システムの構成要素と、電子的あるいは磁気的に連絡することができる。電気機械的な接続もまた、用いることができる。コントローラ1130は、コントローラがシステムの構成要素を制御する機能を実装することを可能にする制御ソフトウェアを装備することができる。コントローラ自体は、機械的、電気的、または電子機械的なデバイスにすることができる。コントローラは、機械的に、空気圧で、もしくは油圧で動かすことができ、または電気機械的に動かすことができる(例えば、血流制御状態のソレノイド動作の場合など)。コントローラ1130は、データ記憶能力だけでなく、コンピューター、コンピュータープロセッサおよびメモリを含むことができる。
【0148】
図12は、可変の血流制御要素1125の典型的な実施態様を示す。この実施態様において、シャント120を通る血流抵抗を、低いおよび高い抵抗の血流パスを作り出す2以上の代わりの血流パスを提供することによって、変更してもよい。図12Aに示すように、シャント120を通る血流は、主要な管腔1700および第二の管腔1705を通過する。第二の管腔1705は、主要な管腔1700よりも長く、および/または小さい半径を有する。したがって、第二の管腔1705は主要な管腔1700よりも高い血流抵抗を有する。血液がこれらの管腔両方を通過することによって、血流抵抗は最小値となる。血液は、第二の管腔1705の注入口および排出口を横切る主要な管腔1700内に作り出される血圧低下によって、管腔1700および1705の両方を通って流れることができる。これは血液の停滞を防ぐ利点がある。図12Bに示すように、シャント120の主要な管腔1700を通る血流を遮断することで、血流は全て第二の管腔1705へ迂回し、したがって血流抵抗が増加し、血流速度が減少する。三つ、四つまたはそれ以上の別々の平行な血流抵抗を可能にする、追加の血流の管腔が提供されてもよいことを認識すべきである。シャント120は、主要な管腔1700および第二の管腔1705への血流を制御するバルブ1710を備えてもよい。バルブの位置を、血流コントローラー125のハウジング上のボタンまたはスイッチなどのアクチュエーターで制御してもよい。図12Aおよび12Bの実施態様は、最も遅い血流の設定においてさえ、この実施態様が正確な血流の管腔のサイズを維持する点において、利点がある。第二の血流の管腔のサイズを、最も遅い血流または持続的な血流の条件下でさえ、血栓が形成することを防ぐように構成できる。ある実施態様において、第二の管腔1705の管腔の内径は0.063インチまたはそれよりも大きい。
【0149】
図13A~Cは、単一のハウジング1300に含まれるまたは封入される多くの血流シャントの構成要素および特徴を備える、血流コントローラー125の実施態様を示す。この構成は、血流コントローラー125および血流シャント120に必要な空間を簡素化し、縮小する。図13Aに示すように、ハウジング1300は、図12に例示される型の可変血流要素1125を含む。アクチュエーター1330はバルブ1710を前後に動かし、シャント内の血流抵抗を低い抵抗状態と高い抵抗状態との間で移行させる。図13Aにおいて、バルブは開いた位置にあり、低い抵抗(高流)状態のシャントを伴う。図13Bにおいて、バルブは閉じた位置にあり、シャントは高い抵抗(低流)状態である。第二のアクチュエーター1340は第二のバルブ1720を前後に動かし、シャントライン120を開閉する。図13Aおよび13Bにおいて、バルブ1720は開いた位置にあり、シャント120を通る血流を可能にする。図13Cにおいて、バルブ1720は閉じた位置にあり、シャント120内の血流を完全に止める。ハウジング1300はまた、フィルター1145および一方向チェックバルブ1115を含む。ある実施態様において、ハウジングを手技後に開き、フィルター1145を取り除いてもよい。この実施態様には、医師が、手技中にシステムによって補足された塞栓のデブリスの直接的な視覚的根拠を得ることができるように、手技後にフィルターをすすぎ、点検してもよいという利点がある。
【0150】
好ましい実施態様において、逆流システムの要素を接続するコネクターは、口径が大きく、迅速な接続(quick-connect)型のコネクターである。例えば、図9Bに示すような動脈シース110のYアダプター660上の雄型の大きい口径のハブ680は、図13に示すような血流シャント120の動脈側の雌型の対応物(counterpart)1320と接続する。同様に、血流シャント120の静脈側の雄型の大きい口径のコネクター1310は、図10Cに示すような静脈シース115の血流ライン上の雌型の対応物コネクター1310と接続する。接続された逆流システム100を図1Eに示す。この好ましい実施態様は、血流シャントを通る血流抵抗を減らし、したがってより速い血流速度を可能にし、また(誤った位置のチェックバルブを伴って)血流シャントが偶然に逆に接続されるのを防ぐ。代わりの実施態様において、接続は標準の雌型および雄型のルアーコネクターまたは他の型のチューブのコネクターである。
【0151】
<センサ>
上述のように、血流制御アセンブリ125は、1以上のセンサを含む、または1以上のセンサと相互に作用することができ、それは、システム100と連絡しており、および/または患者の組織と連絡している。センサの各々は、物理的な刺激(例えば、熱、光、音、圧力、磁気、運動などを含む)に応答するのに適していてもよく、また、計測もしくは表示用、またはコントローラ1130の操作用に得られた信号を伝えるのに適してもよい。ある実施態様では、血流センサ1135はシャント120と相互に作用して、シャント120を通る血流の状況(例えば、血流の流速または容積流量など)を検知する。血流センサ1135は、血流の容積流量または流速の値を直接表示するディスプレイに、直接連結することができる。または、血流センサ1135は、表示用の容積流量または流速のデータをコントローラ1130に入力することができる。
【0152】
血流センサ1135のタイプは変更することができる。血流センサ1135は、例えば、パドルホイール(paddle wheel)、フラッパー弁(flapper valve)、回転ボール(rolling ball)、またはシャント120を通る血流に応答する機械的な構成要素などの機械デバイスであってもよい。シャント120を通る血流に応じた機械デバイスの動きは、流量の視覚表示として役立つことができ、液体流速の視覚表示としてスケールに目盛をつける(calibrated to)こともできる。機械デバイスは、電気部品に連結することができる。例えば、パドルホイールは、流量がパドルホイールを回転させるように、シャント120内に位置することができ、流量の速度が大きいほどパドルホイールの回転速度は大きくなる。パドルホイールは、ホール効果センサに磁気的に連結して、回転速度を検出することができ、それはシャント120を通る流速を示している。
【0153】
ある実施態様では、血流センサ1135は、超音波もしくは電磁気の、または電気光学的な流量計であり、それは、血液と接触することなく、シャント120の壁を通して血流測定を可能にする。超音波または電磁気の流量計は、それがシャント120の内腔と接触する必要がないように構成することができる。実施態様では、血流センサ1135は、シャント120を通る流量を測定するドップラー流量計(例えば遷音速流量計)を、少なくとも部分的に含んでいる。別の実施態様では、血流センサ1135は血流ラインに沿った圧力差を測定し、流量を決定する。超音波流量計およびトランスデューサーを含め、多種多様のセンサ型を用いることができると認識されるべきである。さらに、システムは複数のセンサを含むことができる。
【0154】
システム100は、シャント120内に位置する血流センサ1135を用いること、または静脈リターンデバイス115もしくは動脈アクセスデバイス110と相互に作用するセンサを用いることに制限されない。例えば、解剖学的データセンサ1140は、患者の組織(例えば、患者の神経学的組織など)と通じるか、または相互に作用することができる。この様式では、解剖学的データセンサ1140は、頚動脈からの逆流速度に対して直接的または間接的に関連している測定可能な組織の状況を検知することができる。例えば、解剖学的データセンサ1140は、脳内の血流条件(例えば中大脳動脈の血流速度)を測定し、ディスプレイおよび/または所定の基準に基づいて逆流速度を調整するためのコントローラ1130に、そのような条件を伝えることができる。ある実施態様では、解剖学的データセンサ1140は経頭蓋ドップラー超音波診断(TCD)を含み、それは、反射された音波を用いて、脳を通って流れる血液を評価する超音波検査である。TCDの使用はTCD信号をもたらし、所望のTCDプロファイルを達成または維持するために、逆流速度を制御するためのコントローラ1130に伝えることができる。解剖学的データセンサ1140は、生理学的測定値(逆流速度、中大脳動脈を通る血流、塞栓粒子のTCD信号、あるいは他の神経学的モニタリング(neuromonitoring)信号を含む)に基づくことができる。
【0155】
ある実施態様では、システム100は閉ループ制御システムを含む。閉ループ制御システムでは、1以上のセンサ(血流センサ1135または解剖学的データセンサ1140など)が、システム100または組織の所定の状況(例えば、逆流速度および/または神経学的モニタリング信号など)を検知またはモニターする。センサはコントローラ1130に関連データを入力し、所望の逆流速度を維持する必要に応じて、システムの状況を連続的に調節する。コントローラ1130が、そのデータを翻訳して血流制御レギュレータ125の構成要素を動かして、逆流速度への乱れをダイナミックに補うことができるように、センサは、システム100がコントローラ1130をどのように操作しているかについてフィードバックを伝える。例えば、コントローラ1130はソフトウェアを含んでもよく、それは、コントローラ1130に血流制御アセンブリ125の構成要素へ信号を送らせて、患者からの血圧が異なるにもかかわらず血流速度が一定の状態で維持されるように血流速度を調節する。この実施態様では、システム100は、いつ、どれくらいの長さで、および/またはどれくらいの値で、逆流速度を高い状態あるいは低い状態に設定するかを決定するのに、ユーザーに依存する必要はない。むしろ、コントローラ1130内のソフトウェアは、そのようなファクターを支配(govern)することができる。閉ループシステムでは、コントローラ1130は、血流制御アセンブリ125の構成要素を制御して、センサ1135で検知された逆流速度に基づいて、逆流のレベルまたは状態(アナログレベルまたは例えば高い、低い、ベースライン、中間などの個別の状態のいずれか)を確立することができる。
【0156】
実施態様では、(患者の生理学的測定値を測定する)解剖学的データセンサ1140はコントローラ1130に信号を伝え、それは血流速度を信号に基づいて調節する。例えば、生理学的測定値は、MCAを通る流速、TCD信号、または他の脳血管信号に基づいてもよい。TCD信号の場合、TCDを用いて、脳血流変化をモニターし、微小塞栓を検出してもよい。コントローラ1130は、血流速度を調節して、TCD信号を所望のプロファイル内に維持してもよい。例えば、TCD信号が微小塞栓の存在を示してもよく(「TCD hits」)、また、コントローラ1130が逆流する血流速度を調節して、TCD hitsを、TCD hitsの閾値より下に維持することができる。(Riboら、「血流反転保護を伴う頚動脈の経頚部ステント留置術の経頭蓋ドップラーモニタ:新しい頚動脈の血管再生術("Transcranial Doppler Monitoring of Transcervical Carotid Stenting with Flow Reversal Protection: A Novel Carotid Revascularization Technique ")」Stoke 2006、37, 2846-2849、Shekelら、「頚動脈血管内膜切除術における神経生理学的モニターの500例の経験("Experience of 500 Cases of Neurophysiological Monitoring in Carotid Endarterectomy")」Acta Neurochir, 2007, 149:681-689を参照。これらは、引用して全体を本明細書に組み込む。)
【0157】
MCAの血流の場合、コントローラ1130は、患者が耐えられる「最大の」血流速度に逆流速度を設定することができ、脳への灌流によって評価される。コントローラ1130は、ユーザーが仲を取り持つ(intercede)ことに依存せずに、逆流速度を制御して患者の保護レベルを最適化できる。別の実施態様では、フィードバックは、システム100中のデバイスまたは使用された介入ツールの状態に基づいている。例えば、システム100がハイリスク状態にあるとき(例えば、介入カテーテルがシース605内に位置するとき)、センサは、コントローラ1130に通知してもよい。その後、コントローラ1130は血流速度を調節して、そのような状態を補う。
【0158】
コントローラ1130を用いて、様々な様式にある逆流を選択的に増大させることができる。例えば、より大きな逆流速度が、結果として、脳に向かう血流のより大きい降下を引き起こすことが観測されており、ここで最も重要なのは同側のMCAであり、それはウィリス輪からの側副血流で十分に代償されないかもしれない。このように、長期間にわたる高い逆流速度は、患者の脳が十分な血流を得られない状況を引き起こして、それに患者が耐えられず、神経症状として現れ得る。研究は、10cm/秒未満のMCAの血流速度が、それ以下であると患者が神経学的血液欠乏のリスクにさらされる閾値であることを示す。脳への適切な灌流をモニターするための他のマーカー(例えば、EEG信号など)がある。しかしながら、MCAへの血流の完全停止に至るような高い血流速度でさえも、約15秒~1分以内の短期間なら耐えられるだろう。
【0159】
このように、コントローラ1130は、手術中に塞栓発生のリスクの高い期間に相当する限られた期間だけ、自動的に逆流を増加させることにより、塞栓のデブリスの捕獲を最適化することができる。リスクの高い期間には、介入デバイス(ステント拡張前後の拡張バルーンまたはステント送達デバイス)がプラークPを横切る期間が含まれる。別の期間は、例えばステントの展開または拡張前後のバルーンの膨張または収縮などの介入操作の間である。第3の期間は、処置領域の血管造影画像のための造影剤注入の間である。リスクの低い期間には、コントローラは、逆流速度をより低いベースラインレベルに戻すことができる。このより低いレベルは、ICA内の低い逆流速度に相当してもよく、または、ICAに対するECAの高い灌流圧力比を伴った患者内のわずかな順行性の血流に相当してもよい。
【0160】
ユーザーが手動で血流状態を設定する血流調節システムでは、ユーザーが逆流状態(高いまたは低い)に注意を払わず、誤って回路を高い血流に保持してしまうリスクがある。このことが、後で有害な患者の反応を引き起こすだろう。ある実施態様では、セーフティ機構として、血流速度の初期値は低い血流速度である。これは、高い血流速度に耐えられない患者のためのフェイルセーフ手段として役立つ。これに関して、高い血流速度で所定時間が経過した後に、システムがコントローラによって低い血流速度に戻るように、コントローラ1130に速度の初期値に向かうバイアスをかけることができる。低い血流速度に向かうバイアスは、電子機器またはソフトウェアによって達成することができ、または、機械的な構成要素もしくはそれらの組合せを用いて達成することができる。ある実施態様では、コントローラ1130の血流制御アクチュエーター1165および/またはバルブ1115および/または血流制御レギュレータ125のポンプ1110は、低い血流速度を達成する状態に向けてバネ荷重されている。コントローラ1130は、必要に応じてシステムを低い血流速度の状態に手動で戻せるように、ユーザーがコントローラ1130に優先するように構成される。
【0161】
別のセーフティ機構では、コントローラ1130は、どれくらいの時間だけ高い血流速度にあるかに関して、時間を記録するタイマー1170(図11)を含んでいる。コントローラ1130は、高い血流速度で所定の期間(例えば15、30、60秒またはそれ以上)が経過した後、システム100を低い血流速度に自動的に戻らせるようにプログラムすることができる。コントローラが低い血流速度に戻した後、必要であれば、ユーザーは、高い血流速度の別の所定期間を開始することができる。さらに、ユーザーがコントローラ1130に優先して、システム100を所望の低い血流速度(または高い血流速度)に移らせることができる。
【0162】
例示的な手技では、最初に低速の逆流レベルに設定し、そして手術中の危機的段階の間に個別の期間だけ高速に切り替えることにより、患者の耐性の問題を生ぜずに、塞栓のデブリスの捕獲を最適化する。代わりに、血流速度を最初に高速に設定し、そして残りの手技を続ける前に、そのレベルに対する患者の耐性を確認する。患者が耐えられない兆候を示せば、逆流速度を下げる。患者の耐性は、解剖学的データセンサ1140からのフィードバックに基づいて、コントローラが自動的に決定してもよく、または、患者の観察に基づいてユーザーが決定してもよい。逆流速度の調整は、コントローラにより自動で、またはユーザーが手動で行うことができる。代わりに、ユーザーは、例えばTCDを用いて中大脳動脈(MCA)を通る流速をモニターし、そして、閾値レベルを越えるMCAの流速を維持できる逆流の最大レベルに設定してもよい。この状況では、血流状態を修正せずに全手技が行われてもよい。MCAの流速が手技の経過中に変化したなら、または患者が神経症状を示したなら、必要な調整が行われるだろう。
【0163】
典型的なキットの構成およびパッケージの設計
逆流システム100の典型的な実施態様において、逆流システムの全ての構成要素は、動脈シース、動脈シース拡張器、静脈シース、静脈シース拡張器、血流シャント/血流コントローラーおよび1以上のシースガイドワイヤーを含む、単一で無菌のパッケージに共に包装される。一つの構成において、構成要素を段ボールまたはポリマーのカードなどの平らなカード上に乗せ、これは構成要素を受け取り、閉じるようにサイズおよび形が決められる、1以上の開口部または切り抜きを持つ。別の構成において、カードを、パッケージの外形を縮小するよう、本のように、またはあらゆる二つ折り(clamshell)の様式で開閉するように構成する。この実施態様において、カードは、閉じた形態の時に製品の少なくとも一部分が見えるような切り抜きを有してもよい。図15Aは、開いた形態のブックカード(book card)1510上に乗るキットを示す。図15Bは、閉じた形態のブックカードを備えるキットを示す。切り抜き1520は、カードが閉じた形態にあるときでさえ、血流コントローラーハウジング1300など、パッケージデバイスの少なくとも1つの一部分の視覚化を可能にする。図15Cは、無菌の袋1530および棚状のカートン(shelf carton)1540を含む、追加のパッケージの構成要素に挿入されるキットおよびブックカードを示す。この実施態様において、棚状のカートン1540もまた、図15Dに示すように、ブックカード内の切り抜き1520と1列に並び、閉じた棚状のカートンの外側から製品の少なくとも一部分の視覚化を可能にする、切り抜き1550を含む。汚れまたは損傷から無菌の袋を保護するために、ナイロンまたは他の透明なフィルム材料を棚状のカートンの窓に貼ってもよい。
【0164】
ある実施態様において、平らなまたは本のいずれかの型のパッケージカードを、装置の調整および使用を補助するための、構成要素の名前、接続の説明書、および/または調整の説明書と共に印刷してもよい。
【0165】
代わりの実施態様において、動脈アクセスデバイス、静脈リターンデバイスおよび血流コントローラーを伴う血流シャントを3つの別個の無菌パッケージに包装する。例えば、動脈アクセスシース、シース拡張器およびシースガイドワイヤーを含む動脈アクセスデバイスを第一の無菌パッケージに入れ、静脈リターンシース、静脈シース拡張器およびシースガイドワイヤーを含む静脈リターンデバイスを第二の無菌パッケージに入れ、および血流コントローラーを伴う血流シャントを第三の無菌パッケージに入れる。
【0166】
使用方法の例示
図14A~14Eを参照すると、本願で開示された方法の異なる段階における頚動脈分岐部を通る血流が記載されている。最初は、図14Aに示すように、動脈アクセスデバイス110の遠位シース605が総頚動脈CCAに導入される。上述のように、総頚動脈CCAへの侵入は、経頚部アプローチまたは経大腿部アプローチを介してなされてもよく、直接の外科的な切開または経皮的アクセスのいずれかでもよい。動脈アクセスデバイス110のシース605が総頚動脈CCAに導入された後、図14Aに示すように、血流は順行性の方向AGで継続し、血流は、総頚動脈から内頚動脈ICAおよび外頚動脈ECAの両方に入るだろう。
【0167】
その後、静脈リターンデバイス115は、内頚静脈IJV(図14A~14Eには図示されず)または大腿静脈などの静脈リターンサイトへ挿入される。シャント120を用いて、(図1Aに示されたように)動脈アクセスデバイス110および静脈リターンデバイス115のそれぞれの血流ライン615および915を接続する。この様式において、シャント120は、動脈アクセスデバイス110から静脈リターンデバイス115への逆流用の通路を提供する。別の実施態様では、図1Cに示すように、シャント120は、静脈リターンデバイス115ではなく外部レセプタクル130に接続する。
【0168】
システムの全ての構成要素が配置されて接続されたら、総頚動脈CCAを通る血流は、典型的には止血器2105または他の外部血管閉塞デバイスを用いて総頚動脈CCAを閉塞し、止められる。代わりの実施態様では、閉塞要素129は、動脈アクセスデバイス110の遠位端に位置する。代わりに、図2Bに示すように、閉塞要素129は、動脈アクセスデバイス110の遠位シース605と分離した第2の閉塞デバイス112で導入される。ECAは、同じデバイス110上または別個の閉塞デバイス上の別個の閉塞要素で閉塞されてもよい。
【0169】
その時点で、外頚動脈ECAおよび内頚動脈ICAからの逆流RGが始まり、シース605、血流ライン615、シャント120を通り、そして血流ライン915を介して静脈リターンデバイス115に流れるだろう。血流制御アセンブリl25は、上述のように逆流を調節する。図14Bは、逆流RGの発生を示している。逆流が維持されている間に、図14Cに示すように、ステント送達カテーテル(stent delivery catheter)2110がシース605に導入される。ステント送達カテーテル2110は、止血バルブ615および動脈アクセスデバイス110の近位伸張部610(図14A~14Eには図示されず)を通ってシース605へ導入される。図14Dに示すように、ステント送達カテーテル2110は、内頚動脈ICAに進められて、ステント2115が分岐部Bで展開される。
【0170】
例えば、ステント送達カテーテル2110が導入されている間や、任意でステント2115が展開されている間などの塞栓発生のリスクが高い期間には、逆流速度を増加することができる。ステントの展開前後の拡張用バルーンの配置および膨張の間にも、逆流速度を増加することができる。ステント留置術の前に、アテローム切除術も、逆流状態のもとで行なうことができる。
【0171】
さらに任意で、ステント2115を拡張した後に、低い血流速度と高い血流速度との間で逆流を繰り返すことにより、分岐部Bを洗い流すことができる。正常な血流を再建する前に、ステントが展開された又は他の手技が行われた頚動脈の領域を、血液で洗い流してもよい。特に、総頚動脈が閉塞され続けている間に、バルーンカテーテルまたは他の閉塞要素を内頚動脈に進めて展開することにより、その動脈を完全に閉塞してもよい。また、展開後のステント拡張(a post-deployment stent dilatation)を行なうために、同じ操作を用いてもよく、それは現在、自己拡張ステント手技で典型的に行われている。その後、動脈中に存在する閉塞手段を一時的に開いて、総頚動脈から外頚動脈への血流を再建してもよい。得られた血流(遅い血流、乱れた血流、または外頚動脈内の頚動脈閉塞中の停滞した血流)は、総頚動脈を洗い流すことができるだろう。さらに、同じバルーンを逆流中にステントの遠位側に位置させ、そして、総頚動脈の閉塞を一時的に取り除いて洗い流すことにより、前方流を確立してもよい。このように、洗い流しの作用がステントされた領域で生じて、その領域において遊離または緩く付着している塞栓のデブリスを除去するのに役立つ。
【0172】
任意で、総頚動脈からの血流が続き、内頚動脈が遮断され続けている間に、手段(measures)によって、処置された領域からのさらなる遊離塞栓を取ることができる。例えば、機械的要素を用いて、ステント内で遊離もしくは緩く付着しているプラークまたは他の潜在的な塞栓のデブリスを洗浄または除去してもよく、血栓溶解剤または他の流体を送達するカテーテルを用いて、その領域を洗浄してもよく、または他の手技が行われてもよい。例えば、バルーン、アテローム切除術、またはさらなるステントを用いたステント内再狭窄の処置を逆流下で行うことができる。別の実施例では、閉塞バルーンカテーテルは、バルーンの近位に開口した血流または吸引の管腔またはチャネルを含んでいてもよい。追加のデバイスを必要とせずに、処理領域からまたは処理領域に、生理食塩水、血栓溶解剤、または他の流体を注入し、および/または血液およびデブリスを吸引してもよい。このようにして放出された塞栓が、外頚動脈に流入するかもしれないが、外頚動脈は、内頚動脈に比べて塞栓の放出に対して一般にそれほど過敏ではない。残っている潜在的な塞栓を予防的に除去することによって、内頚動脈への血流が再建されたときに、放出される塞栓のリスクがさらに低減される。塞栓は逆流下でも放出されて、その結果、塞栓がシャント120を通って静脈系、シャント120内のフィルター、またはレセプタクル130に流れ込む可能性がある。
【0173】
分岐部から塞栓が除去された後に、閉塞要素129または代わりの止血器2105を取り除いて、図14Eに示すように、順行性の血流を再建することができる。その後に、シース605を除去することができる。
【0174】
手技が終わってシース605を引き抜く前に、総頚動脈の壁内の貫通部の周囲に自己閉鎖要素(self-closing element)を展開してもよい。通常は、自己閉鎖要素は、手技の開始時またはその近くで展開されるが、任意で、自己閉鎖要素は、シースが引き抜かれたとき、多くの場合はシースの遠位端が総頚動脈の壁の上から解放されたときに、展開することもできる。自己閉鎖要素は、シースが引き抜かれているときに、総頚動脈の貫通部の迅速な閉止に実質的に作用するので、自己閉鎖要素の使用は有利である。そのような迅速な閉止は、手技の終わりに、またはシースが不慮に取り外された間のいずれかに、意図しない失血を低減あるいは排除することができる。さらに、そのような自己閉鎖要素は、アクセス中の動脈壁の解離(dissection)のリスクを減らすだろう。更に、自己閉鎖要素は、手技中にシース上に摩擦力または他の保持力(retention force)を働かせるように構成されてもよい。そのような保持力は有利であり、手技中にシースが不慮に取り外される可能性を減らすことができる。自動閉鎖要素は、シースを除去した後に縫合糸による動脈の外科的縫合の必要性をなくし、大きな手術野の必要を低減し、そして手技に必要な外科的スキルを大幅に低減する。
【0175】
開示されたシステムおよび方法では、多種多様の自己閉鎖要素を使用してもよく、典型的には、アンカー部と自己閉鎖部とを含んだ機械的要素である。アンカー部は、フック、ピン、ステープル、クリップ、歯(tine)、縫合糸などを含んでもよく、それは、総頚動脈の外表面で貫通部の周囲に係合して、その貫通部が完全に開いているときに自己閉鎖要素を固定する。自己閉鎖要素は、バネ状または他の自己閉鎖部を含んでいてもよく、それは、閉止を提供すると共に動脈壁内の組織を引き寄せるために、シースの除去に際して、アンカー部を閉じるだろう。通常、その閉止は十分であり、貫通部を閉止あるいは密封するために更なる手段を取る必要はないだろう。しかしながら、任意で、シースが引き抜かれた後、自己閉鎖要素の補助シーリングを備えるのが望ましいかもしれない。例えば、自己閉鎖要素および/または要素の範囲内にある組織管(tissue tract)は、生体吸収性高分子、コラーゲンプラグ、接着剤、シーラント、凝固因子または他の凝血促進剤などの止血材で処理することができる。代わりに、組織または自己閉鎖要素は、電気焼灼、縫合、クリッピング、ステープル留めなどの他のシーリングプロトコルを用いて、密封してもよい。別の方法では、自己閉鎖要素は、クリップ、接着剤、バンドまたは他の手段により血管の外壁に付けられた自己密封膜またはガスケット材料であろう。自己密封膜は、スリットまたはクロスカットなどの内部開口部を有していてもよく、それは血圧に抵抗して通常は閉じられるだろう。これらの自己閉鎖要素は、切開する外科的手技で設置されるように、または経皮的に展開されるように設計することができる。
【0176】
もう一つの実施態様では、外頚動脈内にシースを設置して閉塞バルーンカテーテルを展開した後に、頚動脈ステント留置術が行われてもよい。側面の穴部を有するステントまたは外頚動脈口を遮断しないように意図された他の要素は、ガイドワイヤーまたは側面の穴部を通って受容される外頚動脈閉塞バルーンのシャフトを備えたシースを通して送達される。このように、典型的には内頚動脈へ延在するガイドワイヤー上に導入されたカテーテルによってステントが進められた場合、側面の穴部内にカテーテルのシャフトが存在することによって、ステントが進められたときに側面の穴部が外頚動脈口に整列することを保証するだろう。閉塞バルーンが外頚動脈中で展開されたときに、側面の穴部は、他の血流逆転システムの欠点である、ステントを備えた外頚動脈閉塞バルーンシャフトのトラップを防ぐ。このアプローチはまた、外頚動脈を「拘置(jailing)」することを避け、ステントがグラフト原料で覆われている場合に、外頚動脈への血流を遮断することを避ける。
【0177】
もう一つの実施態様では、総頚動脈と内頚動脈との間の先在する角度に実質的に適合する形状を有するステントが設置される。患者間の組織的な著しい変化により、内頚動脈と外頚動脈との間の分岐部には種々様々の角度および形状があるだろう。異なる幾何学的形状を有するステントの仲間を提供することにより、または展開に先立って医師が成形できる個々のステントを提供することにより、医師は、展開に先立って患者の特定の組織と一致するステントを選択できる。患者の組織は、血管造影法または他の従来の手段を用いて決定されるだろう。さらなる代替物として、ステントは関節(articulation)の部分を有していてもよい。これらのステントが最初に設置され、次いで、総頚動脈と内頚動脈との間の分岐部の角度と一致するためにインサイチュで関節接合(articulated)されてもよい。ステントは頚動脈に設置されてもよく、そこでは、ステントは異なる密度のゾーンを備えた側壁を有している。
【0178】
別の実施態様では、ステントの一端または両端が、グラフト原料によって少なくとも部分的に覆われている場合に、ステントが設置されるだろう。一般に、ステントはグラフト原料が存在せず、また、総頚動脈から外頚動脈への血流を可能にするために、外頚動脈口に隣接して展開されるステントの中間部分も存在しないだろう。
【0179】
もう一つの実施態様では、ステント送達システムは、経大腿部アクセスのために設計されたシステムよりも短く、および/または固くすることにより、経頚部アクセスに最適化することができる。これらの変更は、展開中に、ステントに正確にトルクを与えそして正確に位置決めする能力を高めるだろう。さらに、ステント送達システムは、外頚動脈内の外頚動脈閉塞バルーンまたは別個のガイドワイヤーのいずれかを用いることによって、ステントが外頚動脈口と整列するように設計することができ、これは、側面の穴部を備えたステント、または向きが重大な部分に湾曲部、屈曲部、または角度のついた部分を備えたステントに特に有用である。
【0180】
ある実施態様では、シャントは動脈のアクセスシースおよび静脈リターンシースに固定して接続されて、取り替え可能な血流アセンブリおよびシースの全アセンブリが使い捨てで、1単位として取り替え可能であってもよい。他の例では、血流制御アセンブリは、一方のシースまたは両方のシース両方に、取り外し可能に取り付けられてもよい。
【0181】
ある実施態様では、ユーザーは最初に、手技中に、塞栓発生のリスクの高い期間が存在するかどうかを決定する。上述のように、リスクの高い典型的な期間には、(1)デバイスがプラークPを横切る期間の間、(2)例えばステントの送達中、またはバルーンカテーテルもしくはガイドワイヤーの膨張中もしくは収縮中などの、介入手技の間、および(3)造影剤の射出中、が含まれる。前述したものは、リスクが高い期間の単なる例示である。このような期間の間、ユーザーは、個々の期間に高速の逆流を設定する。ハイリスクな時間が終わったときに、または、患者が高い血流速度に対する不耐性を示したならば、ユーザーは血流状態をベースラインの血流に戻す。もしシステムがタイマーを有していれば、設定された期間の経過後に、血流状態は自動的にベースライン血流に戻る。この場合、手技が依然として塞栓のリスクの高い期間にあるならば、ユーザーは、血流状態を高い血流速度に再び設定してもよい。
【0182】
別の実施態様では、患者が逆流の存在に対して不耐性を示す場合、逆流は、ICA内でプラークPより遠位側にフィルターを配置する間だけ確立される。そして介入手技がプラークP上で行なわれる間、逆流を停止する。その後、フィルターが除去される間に逆流が再建される。別の実施態様では、フィルターはICA内でプラークPの遠位側に配置され、フィルターが定位置にある間、逆流が確立される。この実施態様では、遠位フィルターの使用を逆流と組み合わせる。
【0183】
様々な方法および装置の実施態様が、いくつかの型を参照して本明細書に詳細に記述されているが、他の型、実施態様、使用方法およびそれらの組合せもまた可能であると認識されるべきである。従って、添付された特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書に含まれる実施態様の記載に制限されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15A
図15B
図15C
図15D
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部管腔を規定するシース本体を有するアクセスシースであって、頚動脈内に導入され、前記頸動脈から血流を受け取るように、前記シース本体のサイズおよび形が決められる、アクセスシース;
前記シース本体の近位端にあるアダプターであって、前記アダプターは血流シャントラインと取り外し可能に接続するのに適合しているハブを有し、前記アダプターはアクセスデバイスの内部管腔に近接して配置されるバルブをさらに有し、前記バルブは前記アクセスデバイスの前記内部管腔から前記ハブに向かう流量を制御する、アダプター;
前記アダプターの近位端に接続する近位伸長部であって、細長い本体から形成された、近位伸長部;
前記近位伸長部が止血バルブを前記アダプターから離して配置するように、前記近位伸長部の近位端にある止血バルブ;および
前記シース本体の一部を覆い、かつ前記シース本体の一部を露出するように、前前記シース本体上に配置できるシースストッパーを含み、前記シースストッパーは、前記頚動脈内への前記シース本体の挿入を前記シース本体の露出された遠位部分に制限し、フランジは前記シースストッパーの遠位端に配置される、頸動脈を介して脳血管系にアクセスするためのデバイス。
【請求項2】
前記シース本体と前記アダプターを分離する細長いチューブと、チューブを前記シース本体に接続するコネクターと、をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記細長いチューブを前記アダプターに接続するコネクター上に位置する小穴をさらに含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記シース本体を前記アダプターに接続するコネクター上に位置する小穴をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記バルブは、前記デバイスの前記内部管腔からの血流を可能にする開状態と、前記デバイスの前記内部管腔からの血流を遮断する閉状態と、の間で移行するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記フランジは可膨張性または機械的に拡張可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記アダプターの前記ハブに取り外し可能に接続可能な血流シャントラインをさらに含み、前記血流シャントライン上の単一のハウジングをさらに含み、前記ハウジングは:
前記血流シャントラインを通して血流の低流状態と高流状態との間を動かすことのできる血流制御要素;
前記血流シャントラインを通して血流を可能にする開状態と、前記血流シャントラインを通して血流を遮断する閉状態と、の間で移行できるバルブ;
流体フィルター;および
一方向チェックバルブ、をさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記血流シャントラインが、前記アクセスデバイスからリターンサイトへの流量を切り替えるように構成される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記シース本体が、縮径された遠位領域を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記近位伸長部の近位端に接続し、洗い流すための流体の通路を前記シース本体内に提供する、洗い流しラインをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0183
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0183】
様々な方法および装置の実施態様が、いくつかの型を参照して本明細書に詳細に記述されているが、他の型、実施態様、使用方法およびそれらの組合せもまた可能であると認識されるべきである。従って、添付された特許請求の範囲の精神および範囲は、本明細書に含まれる実施態様の記載に制限されるべきではない。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
経頚部アクセスデバイスであって:
内部管腔を規定するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、総頚動脈内に導入され、動脈から血流を受け取るように、シース本体のサイズおよび形が決められる、動脈アクセスシース;
前記シース本体の近位端に取り付ける細長いチューブであって、コネクターが前記チューブを前記シース本体と接続する、細長いチューブ;
前記細長いチューブの近位端にあるアダプターであって、前記アダプターは血流シャントラインと取り外し可能に接続するのに適合しているハブを有し、前記アダプターは経頚部アクセスデバイスの内部管腔に近接して配置されるバルブをさらに有し、前記バルブは前記経頚部アクセスデバイスの内部管腔からハブに向かう流量を制御する、アダプター;
前記アダプターの近位端に接続する近位伸長部であって、細長い本体から形成された、近位伸長部;
近位伸長部が止血バルブをアダプターから離して配置するように、近位伸長部の近位端にある止血バルブ;および
近位伸長部の近位端に接続し、洗い流すための流体の通路をシース本体内に提供する、洗い流しラインを含む、経頚部アクセスデバイス。
(態様2)
前記細長いチューブをアダプターに接続するコネクター上に位置する小穴をさらに含む、態様1記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様3)
バルブが、経頚部アクセスデバイスの内部管腔からの血流を可能にする開状態と、経頚部アクセスデバイスの内部管腔からの血流を遮断する閉状態と、の間を移行する、態様1記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様4)
シース本体の一部を覆い、かつシース本体の一部を露出するように、シース本体上に配置できるシースストッパーをさらに含み、前記シースストッパーは、シース本体の遠位部分を露出するように頚動脈内へのシース本体の挿入を制限し、フランジはシースストッパーの遠位端に配置される、態様1記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様5)
フランジが可膨張性または機械的に拡張可能である、態様4記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様6)
経頚部アクセスデバイスであって:
内部管腔を規定するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、総頚動脈内に導入され、動脈から血流を受け取るように、シース本体のサイズおよび形が決められる、動脈アクセスシース;
シース本体の近位端にあるアダプターであって、前記アダプターは血流シャントラインと取り外し可能に接続するのに適合しているハブを有し、前記アダプターは経頚部アクセスデバイスの内部管腔に近接して配置されるバルブをさらに有し、前記バルブは経頚部アクセスデバイスの内部管腔からハブに向かう流量を制御する、アダプター;
アダプターの近位端に接続する近位伸長部であって、細長い本体から形成された、近位伸長部;
近位伸長部が止血バルブをアダプターから離して配置するように、近位伸長部の近位端にある止血バルブ;および
近位伸長部の近位端に接続し、洗い流すための流体の通路をシース本体内に提供する、洗い流しラインを含む、経頚部アクセスデバイス。
(態様7)
シース本体をアダプターに接続するコネクター上に位置する小穴をさらに含む、態様6記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様8)
バルブが、経頚部アクセスデバイスの内部管腔からの血流を可能にする開状態と、経頚部アクセスデバイスの内部管腔からの血流を遮断する閉状態と、の間を移行する、態様6記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様9)
シース本体の一部を覆い、かつシース本体の一部を露出するように、シース本体上に配置できるシースストッパーをさらに含み、前記シースストッパーは、シース本体の遠位部分が露出するように頚動脈内へのシース本体の挿入を制限し、フランジはシースストッパーの遠位端に配置される、態様6記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様10)
アダプターのハブと取り外し可能に接続する血流シャントラインをさらに含み、血流シャントライン上に単一のハウジングをさらに含み、前記ハウジングは:
血流シャントを通して血流の低流状態と高流状態との間を動かすことのできる血流制御要素;
血流シャントを通る血流を可能にする開状態と、血流シャントを通る血流を遮断する閉状態と、の間を移行できるバルブ;
流体フィルター;および
一方向チェックバルブを含む、態様1または6に記載の経頚部アクセスデバイス。
(態様11)
血流シャントラインがアクセスデバイスからリターンサイトへの流量を切り替える、態様10記載の装置。
【外国語明細書】