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  • 特開-鶏の育成方法、および成長促進方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084959
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】鶏の育成方法、および成長促進方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
A01K67/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019065302
(22)【出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】宮城 正貴
(72)【発明者】
【氏名】國吉 真也
(72)【発明者】
【氏名】新里 元
(57)【要約】
【課題】 鶏の成長を効果的に促進できる飼育方法を提供する。
【解決手段】 本発明の鶏の飼育方法は、育成初期に、光源を用いて、鶏に対して光照射する照射工程を含み、前記光照射の光が、青色光と赤色光との混合光であることを特徴とする。前記光源は、例えば、LEDであり、前記照射工程は、例えば、屋内で、前記光源により前記混合光を照射する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育成初期に、光源を用いて、鶏に対して光照射する照射工程を含み、
前記光照射の光が、青色光と赤色光との混合光であることを特徴とする鶏の飼育方法。
【請求項2】
前記光源が、LEDである、請求項1に記載の飼育方法。
【請求項3】
屋内で、前記光源により前記混合光を照射する、請求項1または2に記載の飼育方法。
【請求項4】
前記混合光において、青色光の照度を相対値1とした場合、赤色光の照度の相対値が、0.1~9の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の飼育方法。
【請求項5】
前記混合光の照度が、5~100ルクスである、請求項4に記載の飼育方法。
【請求項6】
前記育成初期において、少なくとも入雛日を0日齢として0日齢から7日齢までの間、毎日、前記混合光を照射する、請求項1から5のいずれか一項に記載の飼育方法。
【請求項7】
前記育成初期において、前記混合光を照射する期間のうち、前半に照射する前記混合光の照度と、後半に照射する前記混合光の照度とを、1:0.3~1:0.08の比率とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の飼育方法。
【請求項8】
前記育成初期において、前記前半が、1週齢の間であり、前記後半が、2週齢の間である、請求項7記載の飼育方法。
【請求項9】
前記育成初期において、一日あたりの前記混合光の照射合計時間を、20時間~24時間とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の飼育方法。
【請求項10】
前記育成初期において、前記混合光の照射を断続的に行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏の育成方法、および成長促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉用の鶏の中でも、いわゆるブロイラーは、屋内において飼育されている。そして、飼育においては、効果的に成長を促進させることが求められている。すなわち、例えば、50日齢で到達する一般的な大きさがある場合、より早い日齢でその大きさに到達させたり、同じ50日齢でより大きな大きさに到達させるというようなことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、鶏の成長を効果的に促進できる飼育方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明の鶏の飼育方法は、育成初期に、光源を用いて、鶏に対して光照射する照射工程を含み、前記光照射の光が、青色光と赤色光との混合光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、例えば、育成初期に、前記混合光を照射することで、容易に、鶏の成長を促進させることができる。このため、本発明は、ブロイラー等の養鶏において、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施例1における光照射に伴う鶏の体重変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)鶏の飼育方法
本発明の飼育方法は、前述のように、育成初期に、光源を用いて、鶏に対して光照射する照射工程を含み、前記光照射の光が、青色光と赤色光との混合光であることを特徴とする。
【0008】
本発明において、飼育対象となる鶏の種類は、特に制限されず、いわゆる食肉用があげられ、この他にも、例えば、採卵鶏等があげられる。
【0009】
本発明において、鶏に対して照射する光は、青色光と赤色光との混合光である。前記混合光は、青色光および赤色光のみを含むことが好ましい。前記混合光において、青色光と赤色光との割合は、特に制限されない。前記混合光における青色光の照度を相対値1とした場合、前記混合光における赤色光の照度の相対値は、例えば、1~9であり、好ましくは、2~3である。また、前記混合光は、青色光および赤色光以外の他色の光を含んでもよい。前記混合光に含まれる前記他色の光の割合は、青色光と赤色光との合計の照度を相対値1とした場合、前記混合光における前記他色の光の照度の相対値は、例えば、0.5以下である。
【0010】
前記青色光の波長は、例えば、435~480nmであり、好ましくは、440~460nmである。前記赤色光の波長は、例えば、610~750nmであり、好ましくは、640~660nmである。
【0011】
前記混合光の照射に使用する光源は、特に制限されず、赤色光と青色光とを照射できる光源であればよい。前記光源は、例えば、LED等が使用できる。鶏への前記混合光の照射には、前記光源を備えた光照射デバイスが使用できる。本発明においては、例えば、青色光を照射する光源(例えば、LED)が搭載された光照射デバイスと、赤色光を照射する光源(例えば、LED)が搭載された光照射デバイスとを、併用してもよいし、青色光を照射する光源および赤色光を照射する光源の両方が搭載された光照射デバイスを使用してもよい。
【0012】
前記照射工程において、鶏に対して前記混合光を照射する環境は、特に制限されず、例えば、鶏舎等の屋内である。前記屋内における前記混合光の照射は、例えば、実質的に太陽光が照射されていない環境下での、前記混合光の照射ともいえる。
【0013】
本発明の飼育方法において、前記照射工程は、育成初期の鶏に施せばよく、育成初期以外のステージにおける飼育条件は、特に制限されない。本発明において、「育成初期」とは、入雛日を0日齢として0日齢から14日齢までの期間である。また、本発明においては、例えば、前記育成初期の後、さらに、同様の前記混合光を照射してもよい。
【0014】
前記育成初期において、前記混合光を照射する日数は、特に制限されず、下限の日数は、例えば、1日以上であり、上限の日数は、例えば、15日以下である。また、前記混合光の照射は、前記育成初期、具体的には、0日齢から14日齢までの間、毎日行われることが好ましい。
【0015】
前記混合光の照射は、例えば、前記育成初期の最初から最後まで行ってもよいし、前記育成初期のうち所定の期間に行ってもよい。前記混合光の照射は、例えば、段階的に、照度を変更してもよく、具体的には、経時的に、照度を低下させてもよい。前記照度の低下は、例えば、段階的な低下でもよいし、連続的な低下でもよい。前記育成初期における前記混合光を照射する期間のうち、例えば、前半に前半と後半とで、異なる照度としてもよい。この場合、例えば、前半に照射する前記混合光の照度と、後半に照射する前記混合光の照度とを、1:0.08~1:0.3の比率としてもよい。前記育成初期において、例えば、前記前半は、1週齢の間であり、前記後半は、2週齢の間が例示できる。
【0016】
前記育成初期において、一日あたりの前記混合光の照射合計時間は、下限が、例えば、20時間以上であり、上限が、例えば、24時間以下である。
【0017】
前記育成初期における前記混合光の照射は、例えば、断続的に行ってもよい。前記混合光を照射する照射期間は、例えば、夜17時から朝6時の間において、合計0時間を超え4時間以下の間、前記混合光を非照射としてもよい。
【0018】
前記育成初期において、前記混合光の照射以外の飼育条件は、特に制限されず、一般的な条件が採用できる。前記飼育条件のうち、飼育温度は、例えば、23~29℃、24~30℃であり、経時的に飼育温度を変更してもよい。前記飼育温度を変更する場合、例えば、所定日数ごとに、所定温度ずつ低下させてもよい。前記所定日数は、例えば、1~3日であり、所定温度は、例えば、前記所定日数あたり1~2℃である。
【0019】
本発明において、前記育成初期以降の飼育条件は、何ら制限されず、例えば、従来の条件を採用できる。
【0020】
(2)鶏の生育促進方法
本発明の鶏の生育促進方法は、前記本発明の飼育方法により、育成初期の鶏を飼育することを特徴とする。本発明は、育成初期の鶏に対して、前記混合光の照射を行うことが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明において、前記混合光の照射は、前述した本発明の飼育方法の記載を援用できる。
【実施例0021】
(実施例1)
縦700cm×横400cm×高さ600cmで仕切った実験区(飼育箱)を、室内に準備した。そして、前記実験区に、バーユニット型のLEDライトを配置した。前記LEDライトには、赤色光用のLED素子および青色光用のLED素子が両方搭載されており、それぞれを、0%-100%で調光可能なものを使用した。前記LEDライトにより、青色光と赤色光とを照射する実験区を実施例区1とし、赤色光のみを照射する実験区を比較例1とした。青色光の波長ピークは、450nmとし、赤色光の波長ピークは、660nmとした。実験区1つあたりのLEDライトの数は、1個(1ユニット)とした。前記LEDライトは、前記実験区の中央であって、地面から600mmの高さに設置した。
【0022】
また、同じ条件の実験区(飼育箱)について、前記LEDライトに代えて、白熱灯を配置したものを、参照区とした。実験区1つあたりの白熱灯は、1個とした。前記白熱灯は、前記実験区の中央に、上部から吊るし、前記LEDと同じ照度となる高さで固定した。
【0023】
実施例区1、比較例区1のそれぞれに対して、参照区を準備し、以下の飼育を行った。実施例区1と参照区とは、互いの照射光に影響を受けないように、遮光幕で覆った状態で飼育した。比較例区1と参照区についても、同様とした。そして、前記各実験区の領域内に、0日齢のブロイラー雄ヒナ12羽を放ち、下記条件で飼育しながら、鶏の体重変動を測定した。
【0024】
(1)入雛作業
全ての前記雄ヒナに対して、蛍光灯下で、1時間餌付けを行ってから、各実験区に12羽ずつ前記雄ヒナを放った。
【0025】
(2)共通の飼育条件
温度:室温を29℃に設定し、3日ごとに1℃ずつ低下させた。
給餌:不断給餌
給水:不断給水
【0026】
(3)照射条件
・実施例区1
1週齢(0日齢から7日齢)
青色光照度70ルクス、赤色光照度30ルクス、照度合計100ルクス
24時間照射
2週齢(8日齢から14日齢)
青色光照度7ルクス、赤色光照度3ルクス、照度合計10ルクス
23時間照射
14時から15時の1時間を非照射
・比較例区1
1週齢(0日齢から7日齢)
赤色光照度100ルクス、
24時間照射
2週齢(8日齢から14日齢)
赤色光照度10ルクス
23時間照射
14時から15時の1時間を非照射
・参照例区
1週齢(0日齢から7日齢)
白熱灯照度100ルクス、
24時間照射
2週齢(8日齢から14日齢)
白熱灯照度10ルクス、
23時間照射
14時から15時の1時間を非照射
【0027】
これらの結果を図1に示す。図1は、経時的な体重変動を示すグラフであり、(A)は、比較例区1と参照区との結果、(B)は、実施例区1と参照区との結果である。図1(A)に示すように、赤色光のみを照射した比較例区1は、参照例区に対して、14日齢において1%の体重の増加が確認された。これに対して、図1(C)に示すように、青色光と赤色光との混合光を照射した実施例区1は、参照例区に対して、約4%の体重増加が確認された。この結果から、青色光と赤色光との混合光を育成初期に照射することで、鶏の成長を促進できることがわかった。
【0028】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0029】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
育成初期に、光源を用いて、鶏に対して光照射する照射工程を含み、
前記光照射の光が、青色光と赤色光との混合光であることを特徴とする鶏の飼育方法。
(付記2)
前記光源が、LEDである、付記1に記載の飼育方法。
(付記3)
屋内で、前記光源により前記混合光を照射する、付記1または2に記載の飼育方法。
(付記4)
前記混合光において、青色光の照度を相対値1とした場合、赤色光の照度の相対値が、0.1~9の範囲である、付記1から3のいずれかに記載の飼育方法。
(付記5)
前記混合光の照度が、5~100ルクスである、付記4に記載の飼育方法。
(付記6)
前記育成初期において、少なくとも入雛日を0日齢として0日齢から7日齢までの間、毎日、前記混合光を照射する、付記1から5のいずれかに記載の飼育方法。
(付記7)
前記育成初期において、前記混合光を照射する期間のうち、前半に照射する前記混合光の照度と、後半に照射する前記混合光の照度とを、1:0.3~1:0.08の比率とする、付記1から6のいずれかに記載の飼育方法。
(付記8)
前記育成初期において、前記前半が、1週齢の間であり、前記後半が、2週齢の間である、付記7記載の飼育方法。
(付記9)
前記育成初期において、一日あたりの前記混合光の照射合計時間を、20時間~24時間とする、付記1から8のいずれかに記載の飼育方法。
(付記10)
前記育成初期において、前記混合光の照射を断続的に行う、付記1から9のいずれかに記載の飼育方法。
(付記11)
17時から6時の間において、合計0を超え4時間以下の間、前記混合光を非照射とする、付記1から10のいずれかに記載の飼育方法。
(付記12)
付記1から11のいずれかに記載の飼育方法により、育成初期の鶏を飼育することを特徴とする鶏の成長促進方法。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、例えば、育成初期に、前記混合光を照射することで、容易に、鶏の成長を促進させることができる。このため、本発明は、ブロイラー等の養鶏において、極めて有用である。
図1