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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084968
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】金属吸収促進剤
(51)【国際特許分類】
   C05D 9/02 20060101AFI20220601BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20220601BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C05D9/02
C05F11/00
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019073214
(22)【出願日】2019-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】310022224
【氏名又は名称】OATアグリオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】木藤 圭次郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 義紀
【テーマコード(参考)】
2B022
4H061
【Fターム(参考)】
2B022EA10
4H061AA01
4H061EE11
4H061EE15
4H061EE16
4H061EE17
4H061EE19
4H061EE25
4H061JJ04
(57)【要約】
【課題】
本発明は、新規な金属吸収促進剤の提供を目的とする。
【解決手段】
ニトロフェノール化合物又はその塩は、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の吸収を促進することができる。特に、本発明は、ニトロフェノール化合物又はその塩を含有する、植物に対する金属吸収促進剤であって、前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、金属吸収促進剤等に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロフェノール化合物又はその塩を含有する、植物に対する金属吸収促進剤であって、
前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、金属吸収促進剤。
【請求項2】
前記金属が、鉄、及び/又は亜鉛である、請求項1に記載の金属吸収促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属吸収促進剤、及び肥料を含有する金属吸収促進剤組成物。
【請求項4】
前記肥料が、有機肥料又は無機肥料である、請求項3に記載の金属吸収促進剤組成物。
【請求項5】
ニトロフェノール化合物又はその塩を用いる、植物に対する金属吸収促進方法であって、
前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、金属吸収促進方法。
【請求項6】
前記金属が、鉄、及び/又は亜鉛である、請求項5に記載の金属吸収促進方法。
【請求項7】
請求項1若しくは2に記載の金属吸収促進剤、又は請求項3若しくは4に記載の金属吸収促進剤組成物を、植物又はその根圏に処理する方法。
【請求項8】
植物に対する金属吸収を促進するための、ニトロフェノール化合物又はその塩の使用方法であって、
前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、使用方法。
【請求項9】
前記金属が、鉄、及び/又は亜鉛である、請求項8に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属吸収促進剤に関する。特に、本発明は、ニトロフェノール化合物又はその塩を含有する、植物に対する金属吸収促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物が成長するには、種々の栄養要素が必要であり、栽培において、肥料が重要な役割を担っている。例えば、肥料三大要素としては、窒素、リン酸、及びカリが知られている。窒素は、タンパク質の成分元素である。リン酸は、核酸及びリン脂質の構成元素だけでなく、エネルギー代謝、物質の合成、及び分解反応にも重要な役割を果たしている。そして、カリ(カリウム)は、物質代謝及び物質移動の生理作用がある。
【0003】
そのほか、植物の生育には必須の要素があり、具体的に、その必須要素としては、多量要素に分類されるマグネシウム、硫黄及びカルシウム、微量要素に分類される鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、ニッケル等とされている。
【0004】
このような成分を含む各種の肥料は、多くの農業生産者が利用しているが、これらの肥料成分の多くは土壌中の成分と結合し、不溶化する結果、植物体に効率的に吸収されず、施用量に見合った肥料効果が得られていないという問題があった。
【0005】
また、肥料の過剰な施用は環境の面から考えれば地下水の富栄養化、硝酸塩汚染、リン酸塩汚染、及び土壌酸性化の原因となり、また栽培の面から考えれば植物にストレスを与え、植害の原因となり得ることが知られている。
【0006】
したがって、肥料の過剰な施用に伴う問題を改善又は予防するためには、肥料成分の選択的利用効率を増加させることが望ましく、それを達成するために様々な開発が試されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、界面活性剤とヘプトン酸又はその塩を含有する肥料吸収促進剤組成物が開示されている。ここでいうへプトン酸は、α-グルコヘプトン酸ナトリウム等の光学活性を有する複雑な化合物である。
【0008】
そこで、さらに、安価で、かつ、植物体内への金属吸収を促進させる効果を有する優れた金属吸収促進剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-53483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、植物に対する新規な金属吸収促進剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ニトロフェノール化合物又はその塩を含有する金属吸収促進剤が特定の金属吸収を促進させることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、下記のニトロフェノール化合物又はその塩を含有する植物に対する金属吸収促進剤等に関する。
項1.
ニトロフェノール化合物又はその塩を含有する、植物に対する金属吸収促進剤であって、
前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、金属吸収促進剤。
項2.
前記金属が、鉄、及び/又は亜鉛である、項1に記載の金属吸収促進剤。
項3.
前記ニトロフェノール化合物又はその塩が、1つ以上のニトロ基及び1つ以上の水酸基を有する化合物又はその塩である、項1又は2に記載の金属吸収促進剤。
項4.
前記ニトロフェノール化合物又はその塩が、
一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、C2~6アルケニル基、C2~6ハロアルケニル基、C2~6アルケニルオキシ基、C2~6ハロアルケニルオキシ基、C2~6アルキニル基、C2~6ハロアルキニル基、C2~6アルキニルオキシ基、又はC2~6ハロアルキニルオキシ基を示す。
xは1~5の整数を示す。yは0~4の整数を示す。zは1~5の整数を示す。
yが2~4の整数の場合、2~4個のR基は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表されるニトロフェノール化合物又はその塩である、項1~3の何れか一項に記載の金属吸収促進剤。
項5.
前記ニトロフェノール化合物又はその塩が、
下記一般式(2):
【化2】
(式中、R、R、R、R、及びR基は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、C2~6アルケニル基、C2~6ハロアルケニル基、C2~6アルケニルオキシ基、C2~6ハロアルケニルオキシ基、C2~6アルキニル基、C2~6ハロアルキニル基、C2~6アルキニルオキシ基、又はC2~6ハロアルキニルオキシ基を示す。
ここで、R、R、R、R、及びR基のうち、少なくとも1個の基は、ニトロ基を示す。)
で表されるニトロフェノール化合物又はその塩である、項1~4の何れか一項に記載の金属吸収促進剤。
項6.
請求項1~5の何れか一項に記載の金属吸収促進剤、及び肥料を含有する金属吸収促進剤組成物。
項7.
前記肥料が、有機肥料又は無機肥料である、項6に記載の金属吸収促進剤組成物。
項8.
ニトロフェノール化合物又はその塩を用いる、植物に対する金属吸収促進方法であって、
前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、金属吸収促進方法。
項9.
前記金属が、鉄、及び/又は亜鉛である、項8に記載の金属吸収促進方法。
項10.
ニトロフェノール化合物又はその塩を施用することを含む、植物に対する金属吸収促進方法。
項11.
ニトロフェノール化合物又はその塩を、植物又はその根圏に処理することを含む、植物に対する金属吸収促進方法。
項12.
項1~5の何れか一項に記載の金属吸収促進剤、又は項6若しくは7に記載の金属吸収促進剤組成物を、植物又はその根圏に処理する方法。
項13.
植物に対する金属吸収を促進するための、ニトロフェノール化合物又はその塩の使用方法であって、
前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、使用方法。
項14.
前記金属が、鉄、及び/又は亜鉛である、項13に記載の使用方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ニトロフェノール化合物又はその塩が、植物体内への、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の吸収を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の金属吸収促進剤の効果によって、培養液中の鉄濃度(鉄残存率)が低減した結果、すなわち、植物に対して鉄の吸収が促進した結果を示した図である。
図2図2は、本発明の金属吸収促進剤の効果によって、培養液中の亜鉛濃度(亜鉛残存率)が低減した結果、すなわち、植物に対して亜鉛の吸収が促進した結果を示した図である。
図3図3は、本発明の金属吸収促進剤の効果によって、培養液中の鉄濃度(鉄残存率)が低減した結果、すなわち、植物に対して鉄の吸収が促進した結果を示した図である。
図4図4は、本発明の金属吸収促進剤の効果によって、培養液中の亜鉛濃度(亜鉛残存率)が低減した結果、すなわち、植物に対して亜鉛の吸収が促進した結果を示した図である。
図5図5は、本発明の金属吸収促進剤の効果によって、作物中の鉄及び亜鉛含量分析値が向上した結果を示した図である。
図6図6は、本発明の金属吸収促進剤の効果によって、作物中の鉄及び亜鉛含量分析値が向上した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.金属吸収促進剤
本発明の金属吸収促進剤は、植物(植物体内、植物中、作物体内、作物中と言い換えることもできる。)に対して、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(微量金属、微量要素と言い換えることができる。)を吸収促進させることができる。本発明の金属吸収促進剤(単に、「金属吸収促進剤」、「金属吸収量増加剤」、又は「肥料吸収促進剤」ということもある。)は、ニトロフェノール化合物又はその塩を含有する。金属とは、ミネラルと言い換えることもできる。
【0016】
ニトロフェノール化合物又はその塩
ニトロフェノール化合物としては、1つ以上のニトロ基及び1つ以上の水酸基(OH基)を有した芳香環化合物であれば特に限定はなく、該化合物には、さらに、上記ニトロ基及び水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0017】
置換基としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、C2~6アルケニル基、C2~6ハロアルケニル基、C2~6アルケニルオキシ基、C2~6ハロアルケニルオキシ基、C2~6アルキニル基、C2~6ハロアルキニル基、C2~6アルキニルオキシ基、C2~6ハロアルキニルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
本明細書におけるニトロフェノール化合物は、塩を形成していてもよい。すなわち、本発明の金属吸収促進剤は、ニトロフェノール化合物だけでなく、ニトロフェノール化合物の塩であってもよい。
【0019】
本明細書における塩としては、特に限定はなく、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩(アンモニア;モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、低級モノ、ジ又はトリアルキルアミン、低級モノ、ジ又はトリヒドロキシアルキルアミン等の有機アミン等)等が挙げられる。好ましいニトロフェノール化合物の塩は、水溶性の塩であり、より好ましくは農芸化学的に許容される塩であり、特に好ましくはアルカリ金属塩である。
【0020】
中でも、上記ニトロフェノール化合物としては、例えば、下記一般式(1):
【化3】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、C2~6アルケニル基、C2~6ハロアルケニル基、C2~6アルケニルオキシ基、C2~6ハロアルケニルオキシ基、C2~6アルキニル基、C2~6ハロアルキニル基、C2~6アルキニルオキシ基、又はC2~6ハロアルキニルオキシ基を示す。
xは1~5の整数を示す。yは0~4の整数を示す。zは1~5の整数を示す。
yが2~4の整数の場合、2~4個のR基は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
で表されるニトロフェノール化合物又はその塩等が挙げられる。
【0021】
さらに、上記ニトロフェノール化合物としては、下記一般式(2):
【化4】
(式中、R、R、R、R、及びR基は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、C2~6アルケニル基、C2~6ハロアルケニル基、C2~6アルケニルオキシ基、C2~6ハロアルケニルオキシ基、C2~6アルキニル基、C2~6ハロアルキニル基、C2~6アルキニルオキシ基、又はC2~6ハロアルキニルオキシ基を示す。
ここで、R、R、R、R、及びR基のうち、少なくとも1個の基は、ニトロ基を示す。)
で表されるニトロフェノール化合物又はその塩等が挙げられる。
【0022】
本明細書における各基について以下説明する。
【0023】
ハロゲン原子としては、特に限定はなく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0024】
1~6アルキル基としては、特に限定はなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等の炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。なお、本明細書において、「n-」とはノルマルを、「s-」とはセカンダリーを、「t-」とはターシャリーを示す。
【0025】
1~6ハロアルキル基としては、特に限定はなく、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル、1-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、3-フルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、1-フルオロブチル基、1-クロロブチル基、4-フルオロブチル基等の1~9個、好ましくは1~5個のハロゲン原子で置換された炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0026】
1~6アルコキシ基としては、特に限定はなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等の炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0027】
1~6ハロアルコキシ基としては、特に限定はなく、例えば、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ヨードメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1-フルオロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ、1-フルオロプロポキシ基、2-クロロプロポキシ基、3-フルオロプロポキシ基、3-クロロプロポキシ基、1-フルオロブチル基、1-クロロブトキシ基、4-フルオロブトキシ基等の1~9個、好ましくは1~5個のハロゲン原子で置換された炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる
【0028】
2~6アルケニル基としては、特に限定はなく、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基等の炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0029】
2~6ハロアルケニル基としては、特に限定はなく、例えば、2,2-ジクロロビニル基、2,2-ジブロモビニル基、3-クロロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-アリル基、3,3-ジクロロ-2-アリル基、4-クロロ-2-ブテニル基、4,4,4-トリフルオロ-2-ブテニル基、4,4,4-トリクロロ-3-ブテニル基、5-クロロ-3-ペンテニル基、6-フルオロ-2-ヘキセニル基等の任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基であって、1~13個、好ましくは1~7個のハロゲン原子で置換されたアルケニル基が挙げられる。
【0030】
2~6アルケニルオキシ基としては、特に限定はなく、例えば、ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、1-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、1-メチル-2-プロペニルオキシ基、1,3-ブタジエニルオキシ基等の炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルケニルオキシ基が挙げられる。
【0031】
2~6ハロアルケニルオキシ基としては、特に限定はなく、例えば、2,2-ジクロロビニルオキシ基、2,2-ジブロモビニルオキシ基、3-クロロ-2-プロペニルオキシ基、3,3-ジフルオロ-2-アリルオキシ基、3,3-ジクロロ-2-アリルオキシ基、4-クロロ-2-ブテニルオキシ基、4,4,4-トリフルオロ-2-ブテニルオキシ基、4,4,4-トリクロロ-3-ブテニルオキシ基、5-クロロ-3-ペンテニルオキシ基、6-フルオロ-2-ヘキセニルオキシ基等の任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基であって、1~13個、好ましくは1~7個のハロゲン原子で置換されたアルケニル基が挙げられる。
【0032】
2~6アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等の炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基が挙げられる。
【0033】
2~6ハロアルキニル基としては、特に限定はなく、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピニル基、3,3-ジフルオロプロピニル基、3,3,3-トリフルオロブチニル基、4,4,4-トリフルオロ-2-ブチニル基、3,3-ジフルオロ-ブチニル基等の任意の位置に少なくとも1つの三重結合を有する炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基であって、1~13個、好ましくは1~7個のハロゲン原子で置換されたアルキニル基が挙げられる。
【0034】
2~6アルキニルオキシ基としては、特に限定はなく、例えば、エチニルオキシ基、1-プロピニルオキシ基、2-プロピニルオキシ基、1-メチル-2-プロピニルオキシ基、1-ブチニルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、3-ブチニルオキシ基等の炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキニルオキシ基が挙げられる。
【0035】
2~6ハロアルキニルオキシ基としては、特に限定はなく、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピニルオキシ基、3,3-ジフルオロプロピニルオキシ基、3,3,3-トリフルオロブチニルオキシ基、4,4,4-トリフルオロ-2-ブチニルオキシ基、3,3-ジフルオロ-ブチニルオキシ基等の任意の位置に少なくとも1つの三重結合を有する炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状アルキニルオキシ基であって、1~13個、好ましくは1~7個のハロゲン原子で置換されたアルキニルオキシ基が挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であるのが好ましく、水素原子又はメトキシ基がより好ましい。
【0037】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であるのが好ましく、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基がより好ましい。
【0038】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であるのが好ましく、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基がより好ましい。
【0039】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であるのが好ましく、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基がより好ましい。
【0040】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であるのが好ましく、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基がより好ましい。
【0041】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、C1~6アルキル基又はC1~6アルコキシ基であるのが好ましく、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基がより好ましい。
【0042】
上記ニトロフェノール化合物又はその塩の中でも、4-ニトロフェノール、4-ニトロフェノールナトリウム塩、3-ニトロフェノール、3-ニトロフェノールナトリウム塩、2-ニトロフェノール、2-ニトロフェノールナトリウム塩等のニトロフェノール化合物又はその塩;及び/又は、5-ニトログアヤコール、5-ニトログアヤコールナトリウム塩、4-ニトログアヤコール、4-ニトログアヤコールナトリウム塩等のグアヤコール(別名:グアイアコール)化合物又はその塩が特に好ましい。
【0043】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩のうち、好ましい化合物としては、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、ニトロ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、及び
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基で表わされるニトロフェノール化合物又はその塩;
が、ニトロ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、及び
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基で表わされるニトロフェノール化合物又はその塩;並びに
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基、
が、ニトロ基、
が、水素原子、ニトロ基、又はメトキシ基で表わされるニトロフェノール化合物又はその塩である。
【0044】
上記一般式(2)で表されるニトロフェノール化合物又はその塩のうち、より好ましい化合物としては、
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、ニトロ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、及び
が、水素原子、又はメトキシ基で表わされるニトロフェノール化合物又はその塩;
が、ニトロ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、及び
が、水素原子、又はメトキシ基で表わされるニトロフェノール化合物又はその塩;並びに
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、水素原子、又はメトキシ基、
が、ニトロ基、及び
が、水素原子、又はメトキシ基で表わされるニトロフェノール化合物又はその塩である。
【0045】
そして、特に好ましいニトロフェノール化合物又はその塩としては、4-ニトロフェノール若しくはその塩、2-ニトロフェノール若しくはその塩、及び/又は、5-ニトログアヤコール若しくはその塩である。
【0046】
本発明の金属吸収促進剤には、1種又は2種以上のニトロフェノール化合物又はその塩を配合することができる。
【0047】
これら1種又は2種以上のニトロフェノール化合物又はその塩としては、公知の製造方法によって製造した化合物、又は市販品を用いることができる。公知の製造方法としては、例えば、特開平10-67716に記載の製造方法等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、4-ニトロフェノール又はその塩(0.3%)、2-ニトロフェノール又はその塩(0.2%)、及び5-ニトログアヤコール又はその塩(0.1%)を含有する水溶液等の2種又は3種のニトロフェノール化合物又はその塩を含むニトロフェノール組成物を用いることもできる。
【0048】
本発明の金属吸収促進剤の処理において、ニトロフェノール化合物又はその塩の濃度は、通常、0.0001~10mg/L、好ましくは0.001~1mg/L、より好ましくは0.01~0.1mg/Lである。また、本発明の金属吸収促進剤の処理において、2種以上のニトロフェノール化合物又はその塩を含む場合、それぞれの濃度及び比率は、適宜設定することができる。
【0049】
金属としては、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である。好ましい金属としては、鉄、及び亜鉛である。
【0050】
その他の成分
本発明の金属吸収促進剤には、他の成分を加えず、ニトロフェノール化合物又はその塩のみを含むものでもよいが、通常は、固体担体、液体担体、又はガス状担体(噴射剤)を混合することができる。
【0051】
また、必要に応じて、本発明の金属吸収促進剤には、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を添加して、通常の製剤化方法に従い、油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤、粒剤、粉剤、エアゾール、煙霧剤等に製剤して使用することができる。
【0052】
本発明の金属吸収促進剤を用いた製剤は、他の殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、微生物農薬、植物生長調節剤、共力剤、土壌改良剤、肥料等を混合して、又は混合せずに同時に用いることもできる。
【0053】
これらの製剤中のニトロフェノール化合物又はその塩の含有量としては、通常、0.00001~95重量%、好ましくは0.0001~50重量%、より好ましくは0.001~10重量%である。
【0054】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば、粘土類(カオリンクレー、珪藻土、合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、タルク類、セラミック、その他の無機鉱物(セライト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末あるいは粒状物等が挙げられる。
【0055】
液体担体としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等)、酸アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ジメチルスルホキシド、大豆油、綿実油等の植物油等が挙げられる。
【0056】
ガス状担体としては、例えば、ブタンガス、LPG(液化石油ガス)、ジメチルエーテル、炭酸ガス等が挙げられる。
【0057】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類及びそのポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール誘導体等が挙げられる。
【0058】
製剤用補助剤としては、例えば、固着剤、分散剤、安定剤等が挙げられる。
【0059】
固着剤及び/又は分散剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん粉、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)が挙げられる。
【0060】
安定剤としては、例えば、PAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、BHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールの混合物)、植物油、鉱物油、脂肪酸又はそのエステル等が挙げられる。
【0061】
本発明の金属吸収促進剤、及びそれを用いる製剤は、そのままで、或いは水等で希釈して用いることができる。
【0062】
これらの施用量、及び施用濃度は、いずれも製剤の種類、施用時期、施用場所、施用方法、害虫の種類、被害程度等の状況によって異なり、上記の範囲に限定されることなく増加させたり、減少させたりすることができる。
【0063】
本発明の金属吸収促進剤にニトロフェノール化合物又はその塩を含有させ、それを使用することを説明したが、ニトロフェノール化合物又はその塩と、その他の成分とを別個に含有する組成物を調製しておき、施用の際にこれら2種以上の成分を順次又は同時に、好ましくは同時に使用してもよい。この場合、ニトロフェノール化合物又はその塩、及びその他の成分は、上記と同様の割合で併用するのがよい。
【0064】
2.金属吸収促進剤組成物
本発明の金属吸収促進剤は、さらに肥料を含有し、金属吸収促進剤組成物とすることができる。
本明細書中における肥料とは、特に限定はなく、例えば、三大要素(N、P、K)、多量要素(Mg、S、Ca)、又は微量要素(Mn、B、Fe、Zn、Cu、Mo、Cl、Ni)源として機能する、天然又は合成の任意の化学物質(肥料)等が挙げられる。これらの化学物質(化合物)は、本発明の金属吸収促進剤中に任意の割合で混合することができる。なお、上記天然又は合成の肥料とは、無機肥料、又は有機肥料(例えば、カツオソリュブル等)の意味も含まれている。
【0065】
これらの製剤中のニトロフェノール化合物又はその塩の含有量としては、通常、0.00001~95重量%、好ましくは0.0001~50重量%、より好ましくは0.001~10重量%である。
【0066】
肥料の含有量としては、特に限定はなく、例えば、通常0.00001~99重量%である。
【0067】
これらの施用量、施用濃度は、いずれも製剤の種類、施用時期、施用場所、施用方法、病害虫の種類、被害程度等の状況によって異なり、上記の範囲に限定されることなく増加させたり、減少させたりすることができる。
【0068】
本発明の金属吸収促進剤組成物にニトロフェノール化合物又はその塩、及び肥料を含有させ、それを使用することを説明したが、ニトロフェノール化合物又はその塩と、肥料と、その他の成分とを別個に含有する組成物を調製しておき、施用の際にこれら2種以上の成分を順次又は同時に、好ましくは同時に使用してもよい。この場合、ニトロフェノール化合物又はその塩、肥料及びその他の成分は、上記と同様の割合で併用するのがよい。
【0069】
3.用途
本発明の金属吸収促進剤、又は金属吸収促進剤組成物を使用できる有用植物としては、特に限定はなく、例えば、稲、大麦、小麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ等の穀類;大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、インゲン豆、落花生等の豆類;
林檎、柑橘類、梨、葡萄、桃、梅、桜桃、胡桃、栗、アーモンド、バナナ、イチゴ等の果
樹・果実類;
キャベツ、トマト、ホウレンソウ、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン、
ナス、ペッパー等の葉・果菜類;
ニンジン、馬鈴薯、サツマイモ、サトイモ、大根、蓮根、カブ、ゴボウ、ニンニク等根菜
類;
棉、麻、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶等の加工用作物;
カボチャ、キュウリ、マクワウリ、スイカ、メロン等のウリ類;
オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバー、アルファルファ等の牧草類;
高麗芝、ベントグラス等の芝類;
ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、生姜等の香料鑑賞用作物;
キク、バラ、カーネーション、蘭等の花卉類;
イチョウ、サクラ類、アオキ等の庭木;
トドマツ類、エゾマツ類、松類、ヒバ、杉、桧等の林木等に利用することができる。
【0070】
植物又はその近傍とは植生、特に茎、葉、種子、球根又は種芋(以下、種子、球根又は種芋を単に種子と略記する。);果実等に施用できる。施用方法としては、例えば、葉面又は茎への散布、又は噴霧、種子処理(例えば、浸種若しくは粒剤の種子粉衣等)、土壌施用(例えば、粒剤の畦間散布若しくは畦間噴霧等)等が挙げられる。
【0071】
本発発明の金属吸収促進剤、又は金属吸収促進剤組成物は、その種々の側面で多数の場面で利用することができる。例えば農業、造園、園芸、水耕、林業、土地開墾(例えば埋め立て、比較的塩濃度の高い土壌等)等に使うことができる。
【0072】
本発明の金属吸収促進剤、又は金属吸収促進剤組成物は、植物若しくはその近傍に処理することによって、上記有用植物を保護することができる。
【0073】
その近傍とは、例えば、茎、葉、種子、球根又は種芋(以下、種子、球根又は種芋を単に種子と略記する。);果実等に施用できる。施用方法としては、例えば、葉面又は茎への散布、又は噴霧、種子処理(例えば、浸種若しくは粒剤の種子粉衣等)、土壌施用(例えば、粒剤の畦間散布若しくは畦間噴霧等)等が挙げられる。
【0074】
4.方法
本発明のもう一つの態様としては、ニトロフェノール化合物又はその塩を用いる、植物に対する金属吸収促進方法であって、前記金属が、鉄、亜鉛、マンガン、銅、モリブデン、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種である、金属吸収促進方法である。
【0075】
本発明のもう一つの態様としては、本発明の金属吸収促進剤、又は本発明の金属吸収促進剤組成物を、植物又はその根圏に処理する方法(処理方法)である。
【0076】
また、本発明のもう一つの態様としては、植物に対する金属吸収を促進するための、ニトロフェノール化合物又はその塩の使用方法。
【0077】
本発明において、植物の根圏とは、根が影響を受ける土壌その他の周辺部位を意味する。例えば、根圏とは、乾田、水田、畑地、茶園、果樹園等における土壌;育苗箱等における育苗培土及び育苗マット;水耕農場における水耕液等が挙げられる。
【0078】
根部又は種子に直接施用する具体的な方法としては、例えば、本発明の金属吸収促進剤又は本発明の金属吸収促進剤組成物を、根部若しくは種子に吹きつけ処理、塗沫処理、浸漬処理、含浸処理、塗布処理、フィルムコート処理、ペレットコート処理する方法が挙げられる。
【実施例0079】
以下、実施例及び試験例により、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
[製剤例]
製剤A: ニトロフェノール水溶液原液
4-ニトロフェノールナトリウム塩(旭化学工業株式会社製)9.0g、2-ニトロフェノールナトリウム塩(旭化学工業株式会社製)6.0g、5-ニトログアヤコールナトリウム塩(旭化学工業株式会社製)3.0gを超純水1Lに溶解し、水溶剤を調整した。この水溶剤を以下「製剤A」という。
【0081】
製剤B: 肥料原液1
OATハウス1号(OATアグリオ株式会社製)15kgに対し、水道水を加え、溶解させた後100Lとした。この水溶剤を以下「製剤B」という。
【0082】
製剤C: 肥料原液2
OATハウス2号(OATアグリオ株式会社製)10kgに対し、水道水を加え、溶解させた後100Lとした。この水溶剤を以下「製剤C」という。
【0083】
製剤D: 肥料原液3
OATハウスS1号(OATアグリオ株式会社製)15kgに対し、水道水を加え、溶解させた後100Lとした。この水溶剤を以下「製剤D」という。
【0084】
実験には、リーフレタス(品種:FSL-1001G、株式会社フジイシードより購入)を供試した。育苗には株式会社M式水耕研究所製の300穴ウレタンマットと育苗箱を用いた。播種は2017年8月23日に行い、発芽までの期間はアクリルハウス内での育苗・管理を行った。具体的には、新聞紙でマット上面を覆い、その上から1日2回、水道水の潅水を実施し、発芽後、子葉が展開した頃合いで新聞紙を取り除き、9月6日まで育苗を継続した。その後、20L容量の水耕栽培用バッド(縦50cm、横40cm、深さ12cm)に水道水20kgを計量した後、製剤B及びCをそれぞれ78mLずつ、ホスプラス(登録商標、OATアグリオ株式会社製)を2mL、製剤Aを202μL添加する区と添加しない対照区を設定した上で添加・混合を行い、培養液を作成した。そこに発泡スチロール製パネル(縦48cm、横38cm、厚さ2cm)に株間縦8cm、横12cmでの千鳥状に14株/枚となるよう苗の移植を行った後、培養液上に浮かべ定植した。以上を各条件6反復で行った。定植後はエアレーションを行いながら、アクリルハウス内での静置状態での栽培を行い、10月5日に作物地上部を収穫した。
【0085】
培養液調整後、定植したバッドの内、6点について100mL程度を採取し、EC値を計測し、平均値を算出した結果、1.46dS/mであった。またこれらについては、0.2μmメンブレンフィルターにてろ過処理を行った後、ICP発光分光分析装置によって溶存する鉄及び亜鉛濃度の計測を行った。これらの結果の平均値を初期の培養液量20.2Lと掛け合わせることで、定植時の培養液中の鉄及び亜鉛の総量を下式1に従い算出した。続いて、9月21日、9月29日、10月5日においては、各バッド中の培養液の水深を計測し、培養液量の算出を行った。併せて各条件の培養液を採取し、同様の分析を行った。これらの数値より、下式2に従って培養液中の鉄及び亜鉛の残存率を算出した。
【0086】
式1:[定植時の培養液中総量]=[20.2L]×[測定濃度]
【0087】
式2:[培養液中残存率(%)]=
100×[採取時の培養液量]×[採取サンプルの測定濃度]/[定植時の培養液中総量]
【0088】
各条件での培養液採取時の鉄及び亜鉛残存率、並びに各日における対照区比(%)の数値を下表1にまとめる。また、これらのうち、培養液採取時の鉄及び亜鉛残存率をそれぞれ図1及び2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
<結果>
以上の結果より、ニトロフェノール化合物又はその塩を培養液に添加することにより、培養液中の鉄及び亜鉛の培養液中での残存率の低下が認められた。その理由としては、植物体への吸収を向上させた結果と考えられる。すなわち、ニトロフェノール化合物又はその塩を施用することによる鉄及び亜鉛の吸収効率の向上を示したものと判断できる。
【0091】
(実施例2)
実験には、リーフレタス(品種:FSL-1001G、株式会社フジイシードより購入)を供試した。育苗には株式会社M式水耕研究所製の300穴ウレタンマットと育苗箱を用いた。播種は2017年10月2日に行い、発芽までの期間はアクリルハウス内での育苗・管理を行った。具体的には、新聞紙でマット上面を覆い、その上から一日2回、水道水の潅水を実施し、発芽後、子葉が展開した頃合いで新聞紙を取り除き、10月18日まで育苗を継続した。その後、20L容量の水耕栽培用バッド(縦50cm、横40cm、深さ12cm)に水道水20kgを計量した後、製剤B及びCをそれぞれ39mLずつ、ホスプラス(登録商標、OATアグリオ株式会社製)を1mL、製剤Aを201μL添加する条件A、67μLを添加する条件Bと添加しない対照区を設定した上で添加・混合を行い、培養液を作成した。そこに発泡スチロール製パネル(縦48cm、横38cm、厚さ2cm)に株間縦8cm、横12cmでの千鳥状に14株/枚となるよう苗の移植を行った後、培養液上に浮かべ定植した。以上を各条件4反復で行った。定植後はエアレーションを行いながら、アクリルハウス内での静置状態での栽培を行い、11月22日に作物地上部を収穫した。
【0092】
培養液調整後、定植したバッドの内、4点について100mL程度を採取し、EC値を計測し、平均値を算出した結果、0.81dS/mであった。またこれらについては、0.2μmメンブレンフィルターにてろ過処理を行った後、ICP発光分光分析装置によって溶存する鉄及び亜鉛濃度の計測を行った。これらの結果の平均値を初期の培養液量20.1Lと掛け合わせることで、定植時の培養液中の鉄及び亜鉛の総量を下式3に従い算出した。続いて、11月22日においては、各バッド中の培養液の水深を計測し、培養液量の算出を行った。併せて各条件の培養液を採取し、同様の分析を行った。これらの数値より、下式4に従って培養液中の鉄及び亜鉛の残存率を算出した。
【0093】
式3:[定植時の培養液中総量]=[20.1L]×[測定濃度]
【0094】
式4:[培養液中残存率(%)]=
100×[採取時の培養液量]×[採取サンプルの測定濃度]/[定植時の培養液中総量]
【0095】
各条件での培養液採取時の鉄及び亜鉛残存率、並びに対照区比(%)の数値を下表2にまとめる。また、これらのうち、培養液採取時の鉄及び亜鉛残存率をそれぞれ図3及び4に示す。
【表2】
【0096】
<結果>
以上の結果より、実施例1とは異なる肥料濃度においても同様にニトロフェノール化合物又はその塩を培養液に添加することにより、培養液中の鉄及び亜鉛の培養液中での残存率の低下が認められた。その理由としては、植物体への吸収を向上させた結果と考えられる。加えて、異なるニトロフェノール量の施用においても同様の効果が認められた。すなわち、ニトロフェノール化合物又はその塩の施用は、鉄及び亜鉛の吸収効率を安定的に向上させ得るものであると考えられる。
【0097】
(実施例3)
実験には、リーフレタス(品種:FSL-1001G、株式会社フジイシードより購入)を供試した。育苗には株式会社M式水耕研究所製の300穴ウレタンマットと育苗箱を用いた。播種は2018年4月13日に行い、発芽までの期間はアクリルハウス内での育苗・管理を行った。具体的には、新聞紙でマット上面を覆い、その上から一日2回、水道水の潅水を実施し、発芽後、子葉が展開した頃合いで新聞紙を取り除き、4月26日まで育苗を継続した。その後、20L容量の水耕栽培用バッド(縦50cm、横40cm、深さ12cm)に水道水20kgを計量した後、製剤B及びCをそれぞれ80mLずつ、ホスプラス(登録商標、OATアグリオ株式会社製)を2mL、製剤Aを202μL添加する条件C、製剤C及びDをそれぞれ120mLずつ、ホスプラス(OATアグリオ株式会社製)を2mL、製剤Aを67μL添加する条件Dと添加しない対照区を設定した上で添加・混合を行い、培養液を作成した。そこに発泡スチロール製パネル(縦48cm、横38cm、厚さ2cm)に株間縦8cm、横12cmでの千鳥状に14株/枚となるよう苗の移植を行った後、培養液上に浮かべ定植した。以上を各条件4反復で行った。定植後はエアレーションを行いながら、アクリルハウス内での静置状態での栽培を行い、5月22日に作物地上部を収穫した。
【0098】
培養液調整後、定植したバッドの内、3点についてEC値を計測し、平均値を算出した結果、区Cについては1.47dS/m、区Dについては1.95dS/mであった。
【0099】
各バッドより収穫した作物地上部について、乾式灰化法による地上部含有成分の分析を行った。具体的には、収穫株の内、生育中庸株3株を2組選抜し、65℃条件下にて乾燥処理を行った後、ミルサーで粉砕を行った。得られた粉砕物を正確に1.00g秤量し、予備加熱の後、550℃条件下電気炉にて1時間の灰化処理に供した。得られた試料に対し、濃塩酸2mLを加え、加熱しながら抽出した後、抽出液をmill-Q(登録商標)水で回収を行いつつ、ろ紙によるろ過を行った後、100mLへと定容した。本溶液を0.2μmメンブレンフィルターにてろ過処理を行った後、ICP発光分光分析装置によって溶存する鉄及び亜鉛濃度の計測を行った。
【0100】
得られた分析値、並びに対照区との平均値の比較の結果を下表3にまとめる。また、これらのうち、鉄及び亜鉛の分析値をそれぞれ図5及び6に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
<結果>
その結果、実施例1と同様の栽培条件Cでの作物中の鉄及び亜鉛含量の向上、並びに異なる肥料処方・肥料濃度・製剤A添加量における作物中の鉄及び亜鉛含量の向上が確認された。したがって、ニトロフェノール類の施用による鉄及び亜鉛の吸収促進についての効果が一層裏付けられた。
【0103】
以上より、ニトロフェノール類を施用は、作物の鉄・亜鉛吸収の促進が安定的に向上させ得る有効な手法であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6