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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084973
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】油性クレンジング化粧料用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20220601BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220601BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/31
A61Q1/14
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196433
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 善行
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智則
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD152
4C083AD242
4C083CC24
4C083DD01
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本発明は、クレンジング化粧料に炭化水素油を含有する低温保存安定性が高い組成物及びこれを含有する化粧料であって、濡れた手で使用することができ、さらに、汎用されているエステル油では得られなかった厚みのある塗布感を出すことができる油性クレンジング化粧料用組成物、及びクレンジング化粧料を提供することにある。
【解決手段】下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比が1:1~1:3である油性クレンジング化粧用組成物にて、上記課題を解決する。
(A)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が5~14のポリグリセリンからなるエステルであって、HLBが9~11であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)炭素数18の不飽和及び/又は分岐鎖脂肪酸とポリグリセリンのジエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル
(C)炭化水素油
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)の質量比が1:1~1:3である油性クレンジング化粧用組成物。
(A)炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が5~14のポリグリセリンからなるエステルであって、HLBが9~11であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)炭素数18の不飽和及び/又は分岐鎖脂肪酸とポリグリセリンのジエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル
(C)炭化水素油
【請求項2】
成分(A)のポリグリセリン脂肪酸エステルがジカプリン酸ヘキサグリセリル、トリカプリル酸ヘキサグリセリル、ペンタカプリル酸デカグリセリル、ヘキサカプリル酸デカグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種以上である、請求項1記載の油性クレンジング化粧料用組成物。
【請求項3】
成分(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルがジオレイン酸デカグリセリル、ジオレイン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2記載の油性クレンジング化粧料用組成物。
【請求項4】
成分(C)の炭化水素油の含有量が20質量%以上である、請求項1~3いずれか記載の油性クレンジング化粧料用組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の油性クレンジング化粧料用組成物を含有する、クレンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと炭化水素油を含有した油性クレンジング化粧料用組成物、及びこの油性クレンジング化粧料用組成物を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイク落としのためのクレンジング化粧料は様々なタイプがあるが、メイクを落とす効果が高く、且つ容易に洗い流せるオイルタイプが主流である。また、入浴時に使用する場合も多く、濡れた手で使用してもクレンジング力が低下しない性能が求められている。
【0003】
流動パラフィンをはじめとする炭化水素油は、クレンジングオイルに配合することで、エステル油では得られない厚みのある塗布感を出すことができる。濡れた手で使用できるクレンジング化粧料として、ポリグリセリン中鎖脂肪酸エステルを配合したクレンジングオイル(例えば、特許文献1参照。)が挙げられるが、炭化水素油の配合量は限定されたものであった。これよりも炭化水素油の配合量を増やすと、低温での保存安定性が悪く、分離してしまうという課題があった。
また、ポリグリセリンと炭素数18の不飽和又は分岐鎖脂肪酸のエステルを用い、透明性、経時安定性に優れた炭化水素油組成物が提供されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしこの炭化水素油組成物は、水と混合することでゲル化してしまい、濡れた手で使用したときの肌への塗布感が悪く、洗い流し時にさっぱりとした感触が得られないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-162691号公報
【特許文献2】特開2013-49011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、炭化水素油を含有する低温保存安定性が高い組成物及びこれを含有する化粧料であって、濡れた手で使用することができ、さらに、汎用されているエステル油では得られなかった厚みのある塗布感を出すことができる油性クレンジング化粧料用組成物、及びこの油性クレンジング化粧料用組成物を含有する化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意努力した結果、特定の2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせることで、クレンジング化粧料に炭化水素油を安定的に含有できることを見出し、本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物、及びこの油性クレンジング化粧料用組成物を含有したクレンジング化粧料は、厚みのある塗布感を出すのに十分な炭化水素油を含有し、低温保存時でも分離や濁りが発生せず、高い低温保存安定性がある。本発明の油性クレンジング化粧料用組成物、及びこの油性クレンジング化粧料用組成物を含有したクレンジング化粧料では、塗布時には厚みがあり、洗い流した時の乳化粒子径も小さく、さっぱりとしたべたつきのない感触を得ることができる。さらに、洗い流した後はしっとりとした感触を出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物は、成分(A)、(B)として特定の2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び成分(C)として炭化水素油を含有する。
【0009】
本発明における成分(A)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数が8~10の脂肪酸と平均重合度が5~14、より好ましくは6~10のポリグリセリンからなるエステルであって、HLBが9~11である。成分(A)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジカプリン酸ヘキサグリセリル、トリカプリル酸ヘキサグリセリル、ペンタカプリル酸デカグリセリル、ヘキサカプリル酸デカグリセリル等からなる群より選択される少なくとも一種以上が挙げられる。
【0010】
本発明における成分(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数18の不飽和及び/又は分岐鎖脂肪酸とポリグリセリンのジエステルである。構成する脂肪酸が直鎖飽和脂肪酸の場合、油性クレンジング化粧料用組成物中で低温保存時に結晶化し、低温保存安定性が悪くなる。成分(B)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジオレイン酸デカグリセリル、ジオレイン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル等からなる群より選択される少なくとも一種以上が挙げられる。
【0011】
本発明における成分(A)と(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度の算出方法は、以下の式に基づいて、水酸基価より決定される。水酸基価は公知の方法により測定した。
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
n:ポリグリセリンの平均重合度
【0012】
本発明における成分(A)及び(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とを常法によるエステル化や、脂肪酸とグリシドールを付加重合することにより容易に得られる。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸を、酸触媒(リン酸、p-トルエンスルホン酸等)もしくはアルカリ触媒(苛性ソーダ等)存在下、又は無触媒で水を除去しながら、好ましくは100~300℃、より好ましくは120~260℃の範囲で加熱することにより行うことができる。また、反応は不活性ガスの存在下で行ってもよい。このようにして得られたエステルは目的に応じて精製しても良い。精製には減圧下での蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留といった蒸留技術の他、有機溶剤による抽出、分画や合成吸着剤、ゲル濾過剤を充填したカラムによるクロマト分離も利用できる。なお、脂肪酸のかわりに、脂肪酸のエステルを用い、ポリグリセリンとエステル交換を行うことにより、目的のポリグリセリン脂肪酸エステルを得ても良い。
【0013】
本発明におけるHLBは、以下の算出法により測定された値を指す。けん化価及び中和価は公知の方法により測定した。
HLB=20(1-S/A)
S:ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価
A:原料脂肪酸の中和価
【0014】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物中の成分(A)のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは3~10質量%、より好ましくは5~10質量%である。
【0015】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物中の成分(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは5~15質量%、より好ましくは10~15質量%である。
【0016】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物中の成分(A)と(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比は1:1~1:3である。
【0017】
本発明における成分(C)の炭化水素油は、特に限定されるものではないが、例えば、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、イソドデカン、アルカン等からなる群より選択される少なくとも一種以上が挙げられ、洗浄後のしっとり感の観点から、好ましくは流動パラフィンである。
【0018】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物中の成分(C)の炭化水素油の含有量は、洗浄後のしっとり感の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましく40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。成分(C)の炭化水素油を2種以上使用する場合の含有量は、その合計量を指す。
【0019】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常化粧料に用いられる成分を適宜、その用途、目的に応じて含有することができる。特に限定されるものではないが、例えば、上記成分(A)、(B)のポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤、成分(C)の炭化水素油以外の油剤、水性ゲル化剤、油性ゲル化剤、紫外線吸収剤、粉体、抗酸化剤、防腐剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、増粘剤、植物抽出液、ビタミン類、中和剤、保湿剤、抗炎症剤、pH調整剤、アミノ酸等が挙げられる。
【0020】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物の調製方法は、特に限定されるものではないが、例えば、60℃以上で全成分を溶解した後、室温まで冷却する方法により調製することができる。
【0021】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物は、好ましくは透明な外観を有しており、油性クレンジング化粧料に使用した場合、厚みのある塗布感が得られ、洗い流した際さっぱりと洗い流せる。本発明におけるクレンジング化粧料は、好ましくは特に濡れた手でも使用できる油性クレンジング化粧料である。
【0022】
本発明のクレンジング化粧料中の油性クレンジング化粧料用組成物の含有量は、クレンジング力の観点から、好ましくは30~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは80~100質量%である。
【実施例0023】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、特に記載のない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0024】
油性クレンジング化粧料用組成物の調製
実施例1~16及び比較例1~8
表1~3に示す含有量にて各成分を、200mlビーカーを用いて80℃にて加熱溶解した後、攪拌しながら室温まで冷却して、本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物100gを調製した。なお、各ポリグリセリン脂肪酸エステルは、公知の手段により合成したものである。
【0025】
本発明品1~16及び比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物について、外観性状、低温保存安定性、耐水性、乳化粒子径、洗浄時のさっぱり感、洗浄後のしっとり感について以下の基準で評価した。それらの結果を表1~3に示した。
【0026】
(試験例1:外観性状)
調製直後の本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物を、バイアル瓶(容量20ml、内径2.5cm)に10g入れ、外観性状について、以下評価基準に従って目視で観察した。
【0027】
(評価基準)
〇:濁りや分離が見られない
△:わずかな濁りが見られる
×:分離している
【0028】
(試験例2:低温保存安定性)
本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物を、バイアル瓶(容量20ml、内径2.5cm)に10g入れ、5℃で1日保管した後の外観性状について、以下評価基準に従って目視で観察した。
【0029】
(評価基準)
〇:濁りや分離が見られない
△:わずかな濁りが見られる
×:分離している
【0030】
(試験例3:耐水性試験)
水を多量に含んだ濡れた手での使用を想定し、本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物を、バイアル瓶(容量50ml、内径3.2cm)に20g入れ、少量ずつ水を添加しながら撹拌を行ったものを調製し、目視にて安定且つ透明な状態を維持する限界加水率を下記の式より求めた。
限界加水率(%)=E/20×100
E:加水量(g)
【0031】
(試験例4:乳化粒子径)
本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物をバイアル瓶(容量100ml、内径3.2cm)に1g入れた。水を99g添加し混合した後、粒度分布計(BECKMAN COULTER LS 13 320)により粒度分布を測定した。求められる平均径を乳化粒子径とした。
【0032】
(試験例5:洗浄時のさっぱり感)
本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物を顔に対して1g塗布し、30秒間マッサージした後、水で洗い流した。洗浄時のさっぱり感について、以下の評価基準にて3段階で評価した。
【0033】
(評価基準)
〇:さっぱり洗い流せる
△:わずかにべとつきが残る
×:さっぱりせず、べとつきが残る
【0034】
(試験例6:洗浄後のしっとり感)
本発明品1~16、比較品1~8の油性クレンジング化粧料用組成物を顔に対して1g塗布し、30秒間マッサージした後、水で洗い流した。タオルにて水をふき取った後、洗浄後のしっとり感について、以下の評価基準にて3段階で評価した。
【0035】
(評価基準)
〇:しっとりしている
△:わずかにしっとりしている
×:しっとりしない
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
表1~3の結果から明らかなように、本発明品1~16の油性クレンジング化粧料用組成物はいずれも外観性状、低温保存安定性、耐水性に優れ、洗浄時のさっぱり感、洗浄後のしっとり感が得られた。成分(A)、(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用しない比較品1、7、成分(A)、(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用しても、質量比が1:1~1:3の範囲外である比較品2は、加水時にゲル化してしまうなど、洗い流し性が損なわれたものであった。また、成分(A)、(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比が1:1~1:3の範囲外である比較品3、4、成分(A)のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが10~12の範囲外である比較品5、6においては、低温保存安定性や耐水性が不十分なものであった。成分(C)の炭化水素油を配合していない比較品8は、塗布時の厚みがなく、洗浄後のしっとり感も得られなかった。
【0040】
以下に、本発明のクレンジング化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではない。なお、含有量は全て製品全量に対する質量%で表している。本処方例は、油性クレンジング化粧料用組成物に対し、通常化粧料に用いられる各種の成分を適宜、その用途、目的に応じて含有し、80℃で全成分を加熱溶解した後、攪拌しながら室温まで冷却する方法により調製した。
【0041】
処方例1(クレンジングオイル)
本発明品4を用いて、表4に示した処方に従って、本発明品を含有したクレンジングオイルを調製した。外観性状、低温保存安定性、耐水性は満足するものであり、洗浄時のさっぱり感、洗浄後のしっとり感などの使用性が良好であった。
【0042】
【表4】
【0043】
処方例2(クレンジングオイルジェル)
本発明品5を用いて、表5に示した処方に従って、本発明品を含有したクレンジングオイルジェルを調製した。外観性状、低温保存安定性、耐水性は満足するものであり、洗浄時のさっぱり感、洗浄後のしっとり感などの使用性が良好であった。
【0044】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の油性クレンジング化粧料用組成物は高い低温保存安定性を有し、クレンジング化粧料に使用した場合は、高い低温保存安定性を有しつつ、洗浄時にさっぱりと洗い流し、洗浄後はしっとりとした感触が得られることから、クレンジング化粧料に使用することができ、特に濡れた手でも使用できる油性クレンジング化粧料を提供することが可能となり、産業上貢献大である。