(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085066
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】熱線入りガラス構造体
(51)【国際特許分類】
B60S 1/02 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
B60S1/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196547
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】中田 智治
【テーマコード(参考)】
3D025
3D225
【Fターム(参考)】
3D025AA03
3D025AC10
3D025AD02
3D225AA03
3D225AC10
3D225AD02
(57)【要約】
【課題】車体からの振動伝達により生じる導電板への応力を抑制する。
【解決手段】熱線入りガラス構造体10は、車体パネル3,4に対してウェザーストリップ2により保持された2枚のガラス20と、2枚のガラス20の間に挟み込まれた電熱線30と、バスバー50を介して電熱線30と接続される導電板60と、導電板60に接続されるリード線40とにより構成される。導電板60は、一端61aがバスバー50に接続されるとともに他端61bがリード線40に接続される第一導電板61と、一端61aと他端61bとの間において第一導電板61から分岐する第二導電板62とを有し、第一導電板61がガラス20とウェザーストリップ2との間に保持されるとともにウェザーストリップ2の外表面に沿って配置されて、第二導電板62が車体パネル3,4とウェザーストリップ2との間に挿入されることで、固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに対してウェザーストリップにより保持された2枚のガラスと、
前記2枚のガラスの間に挟み込まれた電熱線と、
バスバーを介して前記電熱線と接続される導電板と、
前記導電板に接続されるリード線と、により構成され、
前記導電板は、一端が前記バスバーに接続されるとともに他端が前記リード線に接続される第一導電板と、前記一端と前記他端との間において前記第一導電板から分岐する第二導電板とを有し、
前記導電板は、前記第一導電板が前記2枚のガラスと前記ウェザーストリップとの間に保持されるとともに前記ウェザーストリップの外表面に沿って配置されて、前記第二導電板が前記車体パネルと前記ウェザーストリップとの間に挿入されることで、固定される
ことを特徴とする熱線入りガラス構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱線入りガラス構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントガラスに付着した霜や雪、氷などを融かすための電熱線が設けられた熱線入りガラス構造体が知られている。一般的にフロントガラスに使用される熱線入りガラス構造体は、対向する2枚のガラスの間に電熱線を挟み込み、電熱線に通電することによってガラスを温めて、フロントガラスに付着した霜や雪、氷などを融かす(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱線入りガラス構造体には、バスバーを介して電熱線に接続する一方で対向する2枚のガラス間の外部にある車両配線に接続するための導電板が設けられる。この導電板は、対向する2枚のガラス間においてバスバーに接続するため、非常に薄く構成される。薄い導電板は折損しやすいので、導電板は、車体振動などにより生じる応力を抑制するために車両に固定されることが望ましい。しかし、ガラスを車両へ支持するウェザーストリップはゴム部品のため、導電板のウェザーストリップへの接着は雰囲気温度による収縮率の違いから成立することが難しい。
【0005】
本件の熱線入りガラス構造体は、このような課題に鑑み案出されたもので、車体からの振動伝達により生じる導電板への応力を抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する熱線入りガラス構造体は、車体パネルに対してウェザーストリップにより保持された2枚のガラスと、前記2枚のガラスの間に挟み込まれた電熱線と、バスバーを介して前記電熱線と接続される導電板と、前記導電板に接続されるリード線と、により構成される。前記導電板は、一端が前記バスバーに接続されるとともに他端が前記リード線に接続される第一導電板と、前記一端と前記他端との間において前記第一導電板から分岐する第二導電板とを有し、前記導電板は、前記第一導電板が前記2枚のガラスと前記ウェザーストリップとの間に保持されるとともに前記ウェザーストリップの外表面に沿って配置されて、前記第二導電板が前記車体パネルと前記ウェザーストリップとの間に挿入されることで、固定されることを特徴としている。
【0007】
このように、第一導電板が2枚のガラスとウェザーストリップとの間に保持されるとともに、第一導電板から分岐する第二導電板が車体パネルとウェザーストリップとの間に挿入されることで、導電板が車両に固定されるため、車体振動などによって生じる導電板への応力を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
開示の熱線入りガラス構造体によれば、車体からの振動伝達により生じる導電板への応力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る熱線入りガラス構造体が適用された車両の上側の前部を示す模式図である。
【
図3】
図1の熱線入りガラス構造体が備える導電板の長手方向断面を示す模式図である。
【
図4】変形例に係る熱線入りガラス構造体が備える導電板の長手方向断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、実施形態としての熱線入りガラス構造体について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
[1.装置構成]
本実施形態に係る熱線入りガラス構造体10(以下、単に「ガラス構造体」という)は、車両1のウィンドガラスとして適用される。本実施形態では、
図1に示すように、車両1のフロントウィンドガラスとして適用されたガラス構造体10を例示する。
【0012】
図2に示すように、ガラス構造体10は、対向する2枚のガラス20とその間に挟み込まれた電熱線30とを備える。ガラス構造体10は、電熱線30に通電することによってガラス20を温めて、ガラス20に付着した霜や雪、氷などを融かす。本実施形態では、
図1に示すように、ガラス20の全面に車両1の上下方向に沿って互いに平行に配線された複数の電熱線30を例示する。
【0013】
図2に示すように、ガラス構造体10は、電熱線30に通電するための要素として、車両1の図示しないバッテリに接続するリード線40と、リード線40に接続するとともにバスバー50を介して電熱線30に接続する端子体60(導電板)とを備える。
【0014】
バスバー50は、導電性の薄い部材(例えば、アルミ箔)であって、ガラス20の間に挟み込まれて電熱線30の端部に接続する。
図1に示すように、ガラス構造体10には、少なくとも一対のバスバー50が設けられ、一方が電熱線30への配電を担い、他方が電熱線30からの集電を担う。本実施形態では、電熱線30が車両1の上下方向に沿って配線されることに対応して、一対のバスバー50は、ガラス20の上部及び下部にガラス20の上縁20ue及び下縁20beのそれぞれに沿って設けられる。
【0015】
図2に示すように、端子体60は、一端61aがバスバー50に接続されるとともに他端61bがリード線40に接続される第一導電板61及び、一端61aと他端61bとの間において第一導電板61から分岐する第二導電板62を備える。また、端子体60は、第一導電板61の一端61aを除く部分を覆う第一熱収縮チューブ63と、第二導電板62の一部を覆う第二熱収縮チューブ64とを備える。第一熱収縮チューブ63及び第二熱収縮チューブ64はそれぞれ、第一導電板61及び第二導電板62の防水を図るために設けられる。
【0016】
第一導電板61及び第二導電板62は、導電性を有する薄い長尺板状に形成される。第一導電板61及び第二導電板62の厚さは、ガラス20の間に挟み込むことができる程度に薄く(例えば、t=0.1mm)形成される。また、第二導電板62の長さは第一導電板61の長さよりも短い。本実施形態では、
図3に示すように、第二導電板62は第一導電板61とは別の部材として設けられる。なお、
図3では、説明の便宜上、第一導電板61及び第二導電板62の断面のハッチングを省略して示している。
【0017】
第一導電板61は、
図2に示すように、一端61aがガラス20の間においてバスバー50に接続されて、ガラス20の下縁20beよりも下方に延出して、ガラス20の間の外側に取り出される。ガラス構造体10が車両1に取り付けられた状態において、第一導電板61は、その後、車内側のガラス20の表面に沿って上方へ延出する。さらに、第一導電板61は、後述するウェザーストリップ2の外表面に沿って配置されて、他端61bが(例えば、半田付けによって)リード線40に接続される。
【0018】
第二導電板62は、ガラス構造体10が車両1に取り付けられた際に端子体60の位置を固定するために設けられる。
図3に示すように、本実施形態の第二導電板62は、リード線40とともに第一導電部61の他端61bに接続されて、他端61bよりも一端61a側で第一導電板61から分岐する。第二導電板62が第一導電板61から分岐する部分では、第二導電板62が第一熱収縮チューブ63に設けられた切欠き63cを貫通して、第一熱収縮チューブ63の外部に延出する。第二導電板62の露出した部分は、第二熱収縮チューブ64によって覆われる。
【0019】
上述したガラス構造体10の車両1への取り付け手順を以下に説明する。ガラス構造体10は、車両1の窓枠の全周に亘って液密に内嵌されたウェザーストリップ2(
図1参照)にガラス20を内嵌したあと、端子部60の位置が固定されることで、車両1に取り付けられる。
【0020】
図2を参照しながら詳述する。ウェザーストリップ2は、二つの凹部2a,2bを有する断面S字状のゴム製の部材であって、一方の凹部2aを形成する部分で車両1のアウターパネル3(車体パネル)とインナーパネル4(車体パネル)との接合部分を挟むように配置される。ガラス20は、ウェザーストリップ2の他方の凹部2bに挿入されることで、アウターパネル3及びインナーパネル4に対してウェザーストリップ2により保持される。
【0021】
この際、第一導電板61の一端61aから延出する部分がガラス20とウェザーストリップ2との間に保持(挟持)される。さらに、第一導電板61は、ウェザーストリップ2の外表面に沿って配置される。その後、第二導電板62の端部がインナーパネル4とウェザーストリップ2との間に挿入されて、第二導電板62がインナーパネル4とウェザーストリップ2とに挟持される。これにより、端子体60は、その位置が固定される。
【0022】
[3.作用,効果]
ガラス構造体10によれば、第一導電板61がガラス20とウェザーストリップ2との間に保持されるとともに、第一導電板61から分岐する第二導電板62がインナーパネル4とウェザーストリップ2との間に挿入される。これにより、端子体60が車両1に固定されるため、車体振動などによって生じる端子体60への応力を抑制することができる。また、ガラス構造体10によれば、ウェザーストリップ2に端子体60を接着することなく端子体60の位置を固定することができるため、ガラス構造体10を容易に車両1に取り付けることができる。さらに、第一導電板61が、ウェザーストリップ2の外表面に沿って配置されることで、車両前部の視界を広く確保することができるとともに車室内の見栄えを向上することができる。
【0023】
[4.変形例]
上述したガラス構造体の構成は一例である。上述したガラス構造体10では、端子体60の有する第一導電板61と第二導電板62とが別の部材として構成されていたが、第一導電板と第二導電板とが一部材で構成されていてもよい。具体的には、
図4に示すように、第一導電板61′と第二導電板62′とが、端部が折り返された長尺の板状部材により構成されてもよい。このように構成されたガラス構造体であれば、端子体60′の部品点数を削減することができる。
【0024】
上述したガラス構造体10では、ガラス20の下縁20beに沿って設けられたバスバー50に接続する端子体60を例示したが、ガラス20の上縁20ueに沿って設けられたバスバー50に接続する端子体を同様に構成してもよい。また、電熱線30は上下方向に沿って設けられたものに限らず、幅方向に沿って設けられていてもよい。ガラス構造体は、リアウィンドガラスなどフロントウィンドガラス以外のガラスに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 車両
2 ウェザーストリップ
3 アウターパネル(車体パネル)
4 インナーパネル(車体パネル)
10 ガラス構造体
20 ガラス
30 電熱線
40 リード線
50 バスバー
60 端子体(導電板)
61 第一導電板
61a 一端
61b 他端
62 第二導電板