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特開2022-85089被圧延材のトラッキング方法、トラッキング装置および搬送方法ならびにサイジングプレス装置およびサイジングプレス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085089
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】被圧延材のトラッキング方法、トラッキング装置および搬送方法ならびにサイジングプレス装置およびサイジングプレス方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20220601BHJP
   B21B 39/00 20060101ALI20220601BHJP
   B21B 1/02 20060101ALI20220601BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20220601BHJP
   B21B 38/08 20060101ALI20220601BHJP
   B65G 43/08 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B21B37/00 241
B21B39/00 J
B21B1/02 E
B21C51/00 F
B21B38/08
B21C51/00 C
B65G43/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196585
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真行
(72)【発明者】
【氏名】野中 誠治
【テーマコード(参考)】
3F027
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
3F027AA03
3F027CA07
3F027DA02
3F027EA04
3F027FA12
3F027FA15
4E002AB04
4E002BC06
4E002BD01
4E124AA01
4E124AA17
4E124BB18
4E124CC02
4E124EE11
4E124EE15
4E124FF10
(57)【要約】
【課題】圧延搬送ラインにおける被圧延材の精確なトラッキング技術を提供する。
【解決手段】複数の圧延工程を有する圧延設備における、被圧延材を搬送する際に、被圧延材を位置検出するセンサ信号と、圧延機の荷重検出信号と、を用いて、被圧延材の位置をトラッキングする被圧延材のトラッキング方法である。被圧延材のトラッキング装置であって、被圧延材が、圧延機に搬入されたこと、および、圧延機から搬出されたことを検出する位置検知センサと、被圧延材が圧延機によって圧延されていることを検出する圧延荷重の検出手段と、前記位置検知センサの信号と、前記圧延荷重の検出手段からの信号とを組み合わせて、被圧延材のトラッキング信号を発生する手段と、を備えるものである。被圧延材のトラッキング方法を用いて、被圧延材の位置をトラッキングして、被圧延材の搬送可否を判断する被圧延材の搬送方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧延工程を有する圧延設備における、被圧延材を搬送する際の、被圧延材のトラッキング方法であって、
被圧延材を位置検出するセンサ信号と、圧延機の荷重検出信号と、を用いて、被圧延材の位置をトラッキングする、被圧延材のトラッキング方法。
【請求項2】
複数の圧延工程を有する圧延設備における、被圧延材を搬送する際の、被圧延材のトラッキング装置であって、
被圧延材が、圧延機に搬入されたこと、および、圧延機から搬出されたことを検出する位置検知センサと、
被圧延材が圧延機によって圧延されていることを検出する圧延荷重の検出手段と、
前記位置検知センサの信号と前記圧延荷重の検出手段からの信号とを組み合わせて、被圧延材のトラッキング信号を生成する手段と、を備える被圧延材のトラッキング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の被圧延材のトラッキング方法を用いて、
被圧延材の位置をトラッキングして、被圧延材の搬送可否を判断することを特徴とする被圧延材の搬送方法。
【請求項4】
請求項2に記載のトラッキング装置を有するサイジングプレス装置。
【請求項5】
熱間圧延設備に配置されたサイジングプレス装置を用いて熱間スラブをサイジングプレスする方法であって、
サイジングプレス装置に対し熱間スラブの搬送方向で上流側および下流側に配した位置検知センサからの、熱間スラブを検出するセンサ信号と、
前記サイジングプレスの荷重検出信号と、を取得し、
前記位置検知センサ間に熱間スラブが存在するトラッキング信号を生成するとともに、
前記トラッキング信号に基づいて、熱間スラブの搬送可否を判断することを特徴とするサイジングプレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ラインなどで被圧延材の位置を検出して追跡する被圧延材のトラッキング方法に関し、その方法に適したトラッキング装置、その被圧延材のトラッキング方法を用いた被圧延材の搬送方法、そのトラッキング装置を有するサイジングプレス装置および、サイジングプレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱間圧延工場などでは、材料の位置を検出するために、各種センサを配置し、センサを通過する材料の先端や尾端の位置を、センサ信号のオンやオフにより判断している。このセンサ信号を用いて、材料の位置を追跡するトラッキング方法が、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0003】
この位置を検出するセンサには、高温の材料が発する赤外線を検出するホットメタルディテクタ(HMD)や、レーザー光線などの光源の遮断を検知する光電子センサなどが用いられる。
【0004】
熱間圧延ラインの環境は、熱や蒸気、油、外乱光、振動、騒音などにより、極めて劣悪である。上記センサもその環境の影響でチャタリングノイズに基づく誤検出が問題となる。特許文献1では、チャタリングノイズを所定の時間で判定する方法を用いたトラッキング装置を開示している。
【0005】
また、特許文献2に開示された装置では、位置検知センサに加えて、搬送設備のロールに組み込まれた回転検出器(パルスジェネレータ)を用いて、位置検知センサの誤検出によるトラッキング異常を防止するとしている。
【0006】
また、特許文献3に開示された装置では、検出センサの誤検出によるチャタリングに対し、オンディレイタイマやオフディレイタイマを追加することで問題を解決できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63-192509号公報
【特許文献2】特開2000-95326号公報
【特許文献3】国際公開第2009/004703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には、下記の問題がある。
特許文献1に記載の技術では、まず、外乱ごとにノイズの判定時間が異なり、必ずしもすべてのチャタリングに対応できるわけではない問題がある。
【0009】
特許文献2に開示された技術では、まず、材料の検出にフォト(光電子)センサを用いており、このときチャタリングが発生すれば、正確な材料の位置が検出できなくなる問題がある。
【0010】
また、圧延設備内におけるトラッキング、たとえば、サイジングプレスへの熱間スラブの搬送では、特許文献3に開示された技術のようなオンディレイタイマやオフディレイタイマを組み込めない場合や、適切な遅れ時間を設定できない場合がある。そのような場合にはチャタリングによって、材料の検出が正しく行われないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、圧延搬送ラインにおける被圧延材の精確なトラッキング方法およびトラッキング装置を提供し、加えて、その方法を用いた被圧延材の搬送方法、そのトラッキング装置を有するサイジングプレス装置およびサイジングプレス方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、光電子センサを用いた被圧延材の位置検出に圧延機の荷重検出を追加することで、光電子センサ間における被圧延材の位置検出の誤動作を防止することができることを見出した。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる被圧延材のトラッキング方法は、複数の圧延工程を有する圧延設備における、被圧延材を搬送する際の、被圧延材のトラッキング方法であって、被圧延材を位置検出するセンサ信号と、圧延機の荷重検出信号と、を用いて、被圧延材の位置をトラッキングするものである。
【0014】
また、本発明にかかる被圧延材のトラッキング装置は、複数の圧延工程を有する圧延設備における、被圧延材を搬送する際の、被圧延材のトラッキング装置であって、被圧延材が、圧延機に搬入されたこと、および、圧延機から搬出されたことを検出する位置検知センサと、被圧延材が圧延機によって圧延されていることを検出する圧延荷重の検出手段と、前記位置検知センサの信号と前記圧延荷重の検出手段からの信号とを組み合わせて、被圧延材のトラッキング信号を生成する手段と、を備えるものである。
【0015】
また、本発明にかかる被圧延材の搬送方法は、上記被圧延材のトラッキング方法を用いて、被圧延材の位置をトラッキングして、被圧延材の搬送可否を判断することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるサイジングプレス装置は、上記トラッキング装置を有するものである。
また、本発明にかかるサイジングプレス方法は、熱間圧延設備に配置されたサイジングプレス装置を用いて熱間スラブをサイジングプレスする方法であって、サイジングプレス装置に対し熱間スラブの搬送方向で上流側および下流側に配した位置検知センサからの、熱間スラブを検出するセンサ信号と、前記サイジングプレスの荷重検出信号と、を取得し、前記位置検知センサ間に熱間スラブが存在するトラッキング信号を生成するとともに、前記トラッキング信号に基づいて、熱間スラブの搬送可否を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光電子センサ等を用いた被圧延材の位置検出に荷重検出を追加したことで、光電子センサ間における被圧延材の位置検出の誤動作を防止することができるようになった。それによって、被圧延材の精確なトラッキングが可能となり、被圧延材の圧延時間間隔を短縮でき、効率よく生産できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】被圧延材のトラッキング信号を検出する回路のラダー図であって、(a)従来法のセンサ信号にディレイタイマを組み込んだ回路図を表し、(b)従来法のセンサ生信号を直接取得する回路図を表し、(c)本発明の一実施形態を示す回路図を表す。
図2】本発明を適用するサイジングプレスの装置概要を示す上面図である。
図3】上記サイジングプレスにおけるトラッキング方法を説明する概念図である。
図4】(a)は従来法によるトラッキング方法の一例を示すラダー図であり、(b)は、本発明の一実施形態にかかるトラッキング方法のラダー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を以下の図に基づいて説明する。
図1は、被圧延材の位置を検知するセンサ信号をトラッキング信号の生成に用いる回路のラダー図である。図1(a)および(b)は、従来のセンサ信号出力回路を表し、図1(c)は本発明の一実施形態にかかるセンサ信号出力回路を表す。図1(a)は、ディレイタイマを用いた例を、図1(b)は、ディレイタイマを用いない例を示す。図2は、圧延設備の一例として熱間圧延設備のサイジングプレス装置100を例示したものである。図3は、サイジングプレス装置100における熱間スラブのトラッキング方法を説明する概念図である。以下、本発明の一実施形態としての被圧延材のトラッキング方法およびその方法に用いて好適なトラッキング装置について説明する。
【0020】
通常は、圧延機の前後に設置された位置検知センサ(HMD)がオンの信号を発することで、当該センサ位置まで被圧延材が搬送されたことを認識し、トラッキング情報を生成(オン)する。センサ生信号SRをそのままセンサ信号SFとして生成しトラッキング情報などに用いる回路の例を図1(b)に示す。この場合、位置検知センサがチャタリングし、ノイズを拾ってしまうと、実際の被圧延材位置(図3の10)と、トラッキング信号による被圧延材位置(図3の20)が異なることとなる。
【0021】
これまでは、このようなチャタリングによる被圧延材位置の誤検出を防止するために、センサ生信号SRにディレイタイマTDを通して、センサ信号SFとして生成していた(図1(a))。つまり、オン信号やオフ信号が所定時間続かなければ、ノイズと判定し、センサ信号SFを生成しないものである。ところが、圧延設備によっては、オンディレイタイマやオフディレイタイマを組み込めない場合や、適切な遅れ時間を設定できない場合がある。たとえば、サイジングプレスでは、被圧延材である熱間スラブを効率よく処理するために、次の被圧延材までの時間間隔を短くし、継続する熱間スラブ間の距離間隔を短くすることが求められる。一方、図2に示すようにサイジングプレスに近いP4やP6に位置する位置検知センサは、水蒸気によるチャタリングが発生しやすい。そのため、最も重要なP4トラッキングゾーンP4TRKのトラッキング信号に誤検出が生じやすい。
【0022】
そこで、本実施形態では、被圧延材が圧延設備を搬送される間に、圧延機の入側の位置検知センサがオンの信号を送った後、圧延機の圧延荷重が検出されている間は、圧延機の前後の位置検知センサがチャタリングしてオフ信号を発しても、センサ間の位置検出に係るトラッキング信号をオンのままとするように制御する。本実施形態のセンサ回路の一例を図1(c)に示す。
【0023】
図1(c)の例では、位置検知センサ信号SFのリレーは常時オフで、例えば、図1(b)の回路から位置検知センサ生信号SRがオン信号を取得したときのみオンするように構成されている。また、並行してトラッキング信号TFを自己保存するようにするとともに、圧延機の荷重検出信号PLを掛け合せて上記位置検知センサ信号SFとの和をとるようにしている。これらのリレーはいずれも常時オフでトラッキング信号TFと圧延機の荷重検出信号PLのいずれもがオン信号を取得したときのみオン信号が送られるように構成されている。つまり、センサ信号SFおよび荷重信号PLを用いた信号のいずれかがオンのときにトラッキング信号TFがオン信号を生成するように構成している。トラッキング信号TFを生成する直前の回路にリセット信号RSのリレーを配置し、トラッキング信号をオフするように構成している。こうすることで、たとえ、位置検知センサがチャタリングして、位置検知センサ信号SFがオフになったとしても、被圧延材が圧延中であることを示す圧延機の荷重検出信号PLがオンであれば、トラッキング信号TFはオンに維持される。したがって、被圧延材のトラッキング信号上の位置20と実際の位置10とに齟齬が生じることなく、被圧延材の搬送制御が可能となり、被圧延材の間隔を縮めて、効率よく圧延することが可能となる。
【0024】
本実施形態のトラッキング方法を適用する圧延設備について、サイジングプレスを例に説明する。図2に示すサイジングプレス装置100は、熱間スラブ(図示せず)の幅方向を圧下する一対の金型101と、その金型101を熱間スラブに向かって揺動させる偏心クランク軸を有する一対のクランク104と、このクランク104の回転によって揺動運動を与えられる外ブロック103と、この外ブロック103に間隔調整可能に取り付けられ、金型101を支持する内ブロック102と、外ブロック103と内ブロック102の間隔を調整するためのスクリューやナットを有する幅アジャスト(ADJ)105と、を備える。
【0025】
熱間スラブは、連続鋳造機(図示せず)から直接、または、加熱炉(図示せず)による再加熱後、搬送テーブル111上を搬送方向FRに運ばれる。サイジングプレス装置100の上流側には、熱間スラブを幅方向で適切な位置に搬送するように入口サイドガイド(S/G)106が設けてある。サイジングプレス装置100には、入側ピンチロール107および出側ピンチロール108を設けるとともに、熱間スラブ厚み方向上下一対の座屈防止ロール109を設けて、幅圧下される熱間スラブの高さ方向位置を適切に制御できるようにしている。
【0026】
位置検知センサ(HMD)P1~P8の搬送方向FR下流側の次の位置検知センサまでの間をトラッキングゾーンP1TRK~P8TRKとする。実際に幅圧下プレスが行われるP4トラッキングゾーンP4TRKは、水蒸気や粉塵などの発生量が多くP4やP6の位置検知センサにはチャタリングが発生しやすい。
【0027】
図3に示すように、P2位置の位置検知センサがオフになり、搬送ロール(MR)110によるテーブル搬送が行われるとP2トラッキングゾーンP2TRKのP2在荷信号P2TFをリセット(オフ)する。P3位置の位置検知センサがオンになり、搬送ロール110によるテーブル搬送が行われるとP3トラッキングゾーンP3TRKのP3在荷信号P3TFを生成(オン)する。図3の例では、熱間スラブの実際の在荷位置10は、先端がP4位置の位置検知センサを通過し、後端がP3位置の位置検知センサの検知範囲にある。このときデータ上のトラッキング位置20は、P3トラッキングゾーンP3TRKおよびP4トラッキングゾーンP4TRKにあり、両ゾーンに在荷信号TFを生成(オン)している。
【0028】
具体的なトラッキング用のセンサ信号出力回路の例を図4にラダー図で示す。図4(a)は、通常の回路構成であり、水蒸気等による外乱の少ない、P2トラッキングゾーンP2TRKにおける熱間スラブの在荷制御の例である。P2位置の位置検知センサの生信号P2SRは、ディレイタイマDT、および、立ち上がりパルスのみ出力するUPリレーを介して、所定時間続けてオンの状態を継続したときのみ、P2立ち上がり信号P2UPを生成(オン)するように構成されている。同様に、P3位置の位置検知センサの生信号P3SRは、ディレイタイマDT、および、立ち上がりパルスのみ出力するDNリレーを介して、所定時間続けてオフの状態を継続したときのみ、P3立ち下がり信号P3DNを生成(オン)するように構成されている。
【0029】
P2立ち上がり信号P2UPおよびP3立ち下がり信号P3DNは、テーブル搬送信号MFを掛け合わせて、それぞれ、テーブル搬送かつP2立ち上がり信号M&P2、および、テーブル搬送かつP3立ち下がり信号M&P3を生成(オン)する。ここで、テーブル搬送信号MRは、たとえば、搬送テーブル111を構成する搬送ロール(MR)110のうち、P2トラッキングゾーンP2TRKにあるロール110への、プロセスを管理する上位計算機からの搬送指令信号を用いてもよい。
【0030】
P2トラッキングゾーンP2TRKに熱間スラブが搬送されてきたとき、テーブル搬送かつP2立ち上がり信号M&P2がA接点(常時オフでリレーがオンのときのみオンする)に接続されて、P2在荷信号P2TFを生成(オン)する。P2在荷信号P2TFは、オンされた後は、並列のA接点に接続されて、自己保存し、オンのままとなる。テーブル搬送かつP3立ち下がり信号M&P3は、P2在荷信号P2TF出力の直前のB接点(常時オンでリレーがオンのときのみオフする)に接続されて、オン信号を送ることにより、P2在荷信号をオフする。つまり、熱間スラブがP2トラッキングゾーンP2TRKを通過したことを表す。
【0031】
適切なディレイ(遅れ時間)が設定できる場合は、上記トラッキング方法で問題ない。ところが、サイジングプレスのP4位置やP6位置に設置した位置検知センサは、水蒸気などの擾乱を受けやすく、作業効率を考慮すると適切なディレイを選択できない。
【0032】
そこで、図4(b)に示すように、P4トラッキングゾーンP4TRKに本実施形態のトラッキング方法にかかるセンサ信号出力回路を適用した。本実施形態では、ディレイタイマを介さず、P4位置およびP6位置の位置検知センサの生信号P4SRおよびP6SRは、それぞれUPリレーおよびDNリレーを介して、P4立ち上がり信号P4UPおよびP6立ち下がり信号P6DNを生成する。ディレイタイマを介さないので、即時の応答が可能となる。
【0033】
P4立ち上がり信号P4UPは、テーブル搬送信号MFを掛け合わせて、テーブル搬送かつP4立ち上がり信号M&P4を生成する。P6立ち下がり信号P6DNは、サイジングプレスの幅圧下プレスの荷重検出信号(プレスロード信号)PLとの和をテーブル搬送信号MFと掛け合わせて、テーブル搬送かつP6立ち下がり信号M&P6を生成する。ここで、テーブル搬送信号MFは、たとえば、プロセスを管理する上位計算機から入側ピンチロール107や出側ピンチロール108への搬送指令信号を用いればよい。P6立ち下がり信号P6DNは、オフディレイタイマを介していないので、生信号P6SRがチャタリングすると、そのままでは、P6立ち下がり信号P6DNをオンにしてしまう。そして、P4在荷信号P4TFをオフして、実際の在荷位置10とデータ上の在荷位置20に齟齬が生じる。たとえば、先の熱間スラブを幅圧下プレスしている途中で、次の熱間スラブを送り込もうとして、熱間スラブ同士が衝突して、傷が生じたり、設備の破損を招いたりする。しかし、サイジングプレスの荷重検出信号PLとの和を取ることにより、幅圧下プレスが続いている間は、P4在荷信号P4TFをオンに継続することができる。したがって、品質の向上、設備破損の防止を図ることができる。
【0034】
本実施形態の位置検知センサには、熱間スラブのように高温の被圧延材を対象とする場合には、ホットメタルディテクタ(HMD)や、イメージセンサなどが適用可能であり、レーザー光源と光電子センサを組み合わせてもよい。以上説明したように、本実施形態のサイジングプレス装置においては、上記実施形態のトラッキング装置を有することが好ましい。
【0035】
本発明の他の実施形態である被圧延材の搬送方法は、上記トラッキング方法を用いて、被圧延材の在荷位置を示すトラッキング信号を得て、次の被圧延材の搬送可否を判断するものである。本発明によれば、位置検知センサのチャタリングに拘わらず、精確に、被圧延材の位置をトラッキングすることができ、被圧延材の衝突による品質悪化や、設備破損を生じることなく、被圧延材の圧延時間の間隔を効率的に縮める搬送を実施できる。
【0036】
特に、熱間スラブのサイジングプレス方法に適用して、サイジングプレス装置100に対し熱間スラブの搬送方向FRで上流側および下流側に配した位置検知センサP4、P6からの、熱間スラブを検出するセンサ生信号SRと、サイジングプレス時の荷重検出信号PLと、を取得し、前記位置検知センサ間に熱間スラブが存在するトラッキング信号TFを生成するとともに、前記トラッキング信号TFに基づいて、熱間スラブの搬送可否を判断することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、位置検知センサのチャタリングにかかわらず、在荷位置を精確に適時に把握することができ、各種搬送材の搬送方法に適用して生産性を向上できる。
【符号の説明】
【0038】
10 実際の在荷位置
20 データ上のトラッキング位置
100 サイジングプレス装置
101 金型
102 内ブロック
103 外ブロック
104 クランク
105 幅アジャスト(ADJ)
106 入口サイドガイド(S/G)
107 入側ピンチロール
108 出側ピンチロール
109 座屈防止ロール
110 搬送ロール(MR)
111 搬送テーブル
DT ディレイタイマ
FR 搬送方向
P1~P8 検知センサ(HMD)位置
P1TRK~P8TRK トラッキングゾーン
PL 荷重検出信号
SF センサ信号
SR センサ生信号
TF トラッキング信号
図1
図2
図3
図4