IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン化工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-環境浄化装置及び環境浄化方法 図1
  • 特開-環境浄化装置及び環境浄化方法 図2
  • 特開-環境浄化装置及び環境浄化方法 図3
  • 特開-環境浄化装置及び環境浄化方法 図4
  • 特開-環境浄化装置及び環境浄化方法 図5
  • 特開-環境浄化装置及び環境浄化方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085107
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】環境浄化装置及び環境浄化方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220601BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12N1/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196610
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000100780
【氏名又は名称】アイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】特許業務法人 Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 亘祥
(72)【発明者】
【氏名】福田 桂也
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029BB02
4B029CC01
4B029CC03
4B029DB19
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BB02
4B065BC42
4B065CA54
(57)【要約】
【課題】副生水素等の水素を利用して周囲環境の温室効果ガスである二酸化炭素の削減化を図ること。
【解決手段】環境浄化装置1は、無機塩を含んだ水素細菌の培養液15、及び、湿気を含み水素細菌を担持した細菌担体13をハウジング11内に含んだリアクタ部10と、リアクタ部10のハウジング11内に水素、二酸化炭素及び酸素を供給する基質ガス供給部30と、リアクタ部10のハウジング11の室内の内気を排出する排気部40とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学独立栄養細菌、及び、無機塩を含有した前記化学独立栄養細菌の培養液をハウジング内に含んだリアクタ部と、
前記リアクタ部の前記ハウジング内に前記化学独立栄養細菌の基質を供給する基質供給部と、
前記リアクタ部の前記ハウジングの室内の圧力を調節する圧力調節部と
を具備することを特徴とする環境浄化装置。
【請求項2】
前記化学独立栄養細菌は、水素細菌であることを特徴とする請求項1に記載の環境浄化装置。
【請求項3】
前記基質は、水素、二酸化炭素及び酸素であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の環境浄化装置。
【請求項4】
前記基質としての前記水素の供給源は、副生水素を含む排ガス、空気、または製造された水素ガスの何れか1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の環境浄化装置。
【請求項5】
前記基質としての前記二酸化炭素の供給源は、二酸化炭素を含む燃焼排ガス、副生二酸化炭素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の環境浄化装置。
【請求項6】
前記基質としての前記酸素の供給源は、余剰酸素を含む燃焼排ガス、副生酸素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であることを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか1つに記載の環境浄化装置。
【請求項7】
前記リアクタ部では、前記化学独立栄養細菌が細菌担体に担持されており、前記化学独立栄養細菌を担持し水分を含んだ前記細菌担体が前記ハウジング内に収容されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の環境浄化装置。
【請求項8】
前記細菌担体は、通気性を有し、かつ、その一部が前記培養液に浸漬されて前記培養液を吸い上げる吸水性を有するものであることを特徴とする請求項7に記載の環境浄化装置。
【請求項9】
前記細菌担体は、その複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジに収納されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の環境浄化装置。
【請求項10】
前記細菌担体は、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料を含んだものであることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1つに記載の環境浄化装置。
【請求項11】
前記細菌担体は、親水性繊維と多孔質材料の抄紙体からなるものであることを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか1つに記載の環境浄化装置。
【請求項12】
前記細菌担体は、貫通状の多孔構造を有するものであることを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか1つに記載の環境浄化装置。
【請求項13】
前記圧力調節部は、前記ハウジングの室内の内気を排出することで前記ハウジングの室内の圧力を調節する排気部からなることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1つに記載の環境浄化装置。
【請求項14】
更に、前記排気部から排出された前記内気の一部を前記ハウジング内に戻し循環させる循環路を具備することを特徴とする請求項13に記載の環境浄化装置。
【請求項15】
化学独立栄養細菌、及び、無機塩を含んだ前記化学独立栄養細菌の培養液をハウジング内に含み、前記ハウジングの室内の圧力が一定に維持されるよう前記ハウジングの室内の内気を室外に排出自在とし、また、前記排出された内気の一部を前記ハウジング内に戻して循環するリアクタ部に対し、その前記ハウジング内に前記化学独立栄養細菌の基質を供給することを特徴とする環境浄化方法。
【請求項16】
前記化学独立栄養細菌は、水素細菌であることを特徴とする請求項15に記載の環境浄化方法。
【請求項17】
前記基質は、水素、二酸化炭素及び酸素であることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の環境浄化方法。
【請求項18】
前記リアクタ部に供給される前記基質としての前記水素の供給源は、副生水素を含む排ガス、空気、または製造された水素ガスの何れか1種以上であることを特徴とする請求項17に記載の環境浄化方法。
【請求項19】
前記リアクタ部に供給される前記基質としての前記二酸化炭素の供給源は、二酸化炭素を含む燃焼排ガス、副生二酸化炭素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の環境浄化方法。
【請求項20】
前記リアクタ部に供給される前記基質としての前記酸素の供給源は、余剰酸素を含む燃焼排ガス、副生酸素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であることを特徴とする請求項17乃至請求項19の何れか1つに記載の環境浄化方法。
【請求項21】
前記リアクタ部では、前記化学独立栄養細菌が細菌担体に担持されており、前記化学独立栄養細菌を担持し水分を含んだ前記細菌担体が前記ハウジング内に収容されていることを特徴とする請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の環境浄化方法。
【請求項22】
前記細菌担体は、通気性を有し、かつ、その一部が前記培養液に浸漬されて前記培養液を吸い上げる吸水性を有するものであることを特徴とする請求項21に記載の環境浄化方法。
【請求項23】
前記細菌担体は、その複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジに収納されていることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の環境浄化方法。
【請求項24】
前記細菌担体は、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料を含んだものであることを特徴とする請求項21乃至請求項23の何れか1つに記載の環境浄化方法。
【請求項25】
前記細菌担体は、親水性繊維と多孔質材料の抄紙体からなるものであることを特徴とする請求項21乃至請求項24の何れか1つに記載の環境浄化方法。
【請求項26】
前記細菌担体は、貫通状の多孔構造を有するものであることを特徴とする請求項21乃 至請求項24の何れか1つに記載の環境浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等から排出される副生水素ガスを含む水素排ガス等の水素を利用し、工場等から排出される二酸化炭素を含む燃焼ガスや空気中の二酸化炭素の削減化を図る環境浄化装置及び環境浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の枯渇、環境破壊、環境汚染、地球温暖化等の深刻な問題を受け、地球環境保護の観点から、温室効果ガスの代表である二酸化炭素を排出する化石燃料の消費を減らし、限りある資源を有効に活用する循環型社会の構築を求める声が高まっている。
【0003】
例えば、二次エネルギである水素は、酸素と化学反応させて燃料電池等の電気エネルギとして利用したり、エンジン等で燃焼させて熱エネルギとして利用したりしても地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないことから、エネルギ源としての活用が注目されている。
【0004】
ここで、水素は、水の電気分解や、石油、石炭、或いは天然ガス等の化石燃料から製造できるが、製鉄所において熱源に使用されるコークスの製造過程や、苛性ソーダ工場、石油化学工場等の化学工場の化学製品の生産過程でも副次的に発生している。このため、副生水素の発生量が多い苛性ソーダ工場や製鉄所等の副生水素については、例えば、特許文献1や特許文献2にあるように、それを回収して燃料電池のエネルギ源に利用しようとする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-157442号公報
【特許文献2】特開2009-048888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした副生水素の燃料電池への利用、供給は、立地条件の制約を受ける。特に、化学工場等での化学製品の生産過程から発生する副生水素においては、その発生量が少量かつ不安定であり、純度もそれほど高くない。このため、燃料電池運転の安定性や燃料電地スタックを劣化させる等の電池の品質問題があり、副生水素の燃料電池への利用は非効率である。
そこで、副生水素の発生量が少ない工場では、副生水素を燃やしてボイラや自家用発電設備等の燃料として利用する試みもある。しかし、燃料として利用するにも、副生水素の発生量が不安定であると、熱量、エネルギ効率が低くなるから、燃焼制御が難しいという問題がある。
したがって、化学製品等の生産過程から発生する副生水素の発生量が少ない化学工場等においては、副次的に発生する水素を何ら消費することなく大気に無駄に放出、廃棄している現状があり、副生水素の有効利用の要望が高まっている。
【0007】
加えて、化学工場等では製品の生産過程において燃料の燃焼により二酸化炭素を含むガスを多く排出しているところ、地球温暖化問題が深刻化する中で、環境保護の観点から、温室効果ガスである二酸化炭素の低減化に対する社会からの要求もますます強くなっている。
【0008】
そこで、本発明は、副生水素等の水素を利用して温室効果ガスである二酸化炭素の削減化を図る環境浄化装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の環境浄化装置は、化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とをハウジング内に含んだリアクタ部と、前記リアクタ部の前記ハウジング内に前記細菌の基質を供給する基質供給部と、前記リアクタ部の前記ハウジングの室内の圧力を調節する圧力調節部とを有し、前記リアクタ部の前記ハウジング内に収容した前記化学独立栄養細菌により水素及び二酸化炭素を消費させるものである。
【0010】
上記リアクタ部は、ハウジング内に化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とを含むものであり、好ましくは、ハウジングの室外の外部環境に影響されずにハウジングの室内温度を制御自在とするものである。
上記ハウジング内に化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とを含むとは、当該ハウジング内の培養液中に化学独立栄養細菌を含む液体培養であってもよいし、化学独立栄養細菌を細菌担体に担持させ、化学独立栄養細菌を担持した細菌担体が培養液等の水分(湿気)を含むように構成されたものであってもよい。即ち、ハウジング内に培養液及び細菌担体を収容し高温、高湿の条件とすることで細菌担体を濡らしてもよいし、細菌担体が培養液を吸水するものであってもよいし、或いは、細菌担体に培養液を散水、噴霧等することによって湿らせるものであってもよい。何れにせよ、細菌担体を使用する場合にはそれを湿潤状態とすればよい。
【0011】
ここで、上記化学独立栄養細菌とは、無機物の酸化反応によるエネルギを利用して二酸化炭素を還元することにより、菌体の細胞内の有機物を合成しているものである。つまり、無機物の酸化によってエネルギを得て、そのエネルギを利用して二酸化炭素から菌体の細胞内に必要な有機物を合成しているものであり、例えば、水素細菌(水素酸化細菌)、メタン菌、メタン酸化菌、硝酸菌、亜硝酸菌、硫黄酸化菌、鉄酸化菌、アナモックス菌が挙げられる。化学独立栄養細菌が利用するエネルギ源の無機物としては、還元型の無機物、例えば、水素、硫化水素、硫黄、酸化鉄(II)、アンモニア等がある。
【0012】
また、上記培養液は、化学独立栄養細菌の無機栄養源である無機塩を含有するものであり、好ましくは、アンモニウム塩、硝酸塩等の窒素源を含有するものである。
【0013】
上記基質供給部は、前記化学独立栄養細菌の基質を前記リアクタ部の前記ハウジング内に供給するものである。
上記化学独立栄養細菌の基質とは、化学独立栄養細菌の生育、増殖に必要な栄養基質であり、少なくとも、化学独立栄養細菌のエネルギ源としての無機物、例えば、水素、硫化水素、硫黄、酸化鉄(II)、アンモニア等と、炭素源としての二酸化炭素とが使用され
、化学独立栄養細菌が好気性菌である場合には、酸素も使用される。それら基質の前記ハウジング内への供給形態は、ガスの形態で供給するものであってもよいし、水に溶解或いは吸湿させて供給するようにしてもよい。更に、前記ハウジングの気相部分に供給してもよいし、前記ハウジングの培養液中に供給するようにしてもよい。各基質は混合して供給されてもよいし、別々に供給されてもよい。
【0014】
上記圧力調節部は、前記リアクタ部のハウジング内の気圧を一定に制御自在とする構成であればよく、例えば、前記ハウジング内の気圧の上昇に伴い前記ハウジング内の圧力を外部に解放する排気部の構成とすることもできるし、前記ハウジング内の気圧の上昇に伴い前記ハウジングの内気を吸気して貯留し前記ハウジング内の気圧の下降に伴い前記吸気した内気を前記ハウジング内に排気する吸排気タンクの構成とすることもできるし、前記ハウジングの内気と外気とを交換する換気部の構成とすることもできる。
【0015】
請求項2の発明の環境浄化装置の前記化学独立栄養細菌は、水素細菌であるものである。
ここで、上記水素細菌とは、水素酸化細菌とも称され、遊離の水素を酸化し、その反応によって生じるエネルギを利用して、二酸化炭素(炭酸ガス)を炭素源として生育、増殖し、炭酸同化を行う細菌の総称である。上記水素細菌は、酸素を電子受容体として利用し好気的に水素を酸化し二酸化炭素を同化するものであってもよいし、二酸化炭素や硝酸イオン(NO3 -)を電子受容体として利用し嫌気的に水素を酸化し二酸化炭素を同化するものであってもよい。なお、水素細菌は、一般的には、短桿菌、グラム陰性、無胞子桿菌で極毛を有するものであり、例えば、土壌や水から分離したものが使用できる。
【0016】
請求項3の発明の環境浄化装置の前記基質供給部で供給する前記基質は、水素、二酸化炭素及び酸素であるものである。
なお、基質供給部からの水素、二酸化炭素及び酸素の前記ハウジング内への供給は、それら3成分系のみに厳格に要求されるものではなく、前記化学独立栄養細菌の培養、増殖ができる水素、二酸化炭素及び酸素の所定濃度(所定量)を供給できれば、水素、二酸化炭素及び酸素以外の気体、不純物が含まれていてもよい。前記ハウジング内で水素が、好ましくは、20~90%濃度、より好ましくは、50~90%濃度、更に好ましくは、70~90%濃度、酸素が、好ましくは、5~60%濃度、より好ましくは、5~40%濃度、更に好ましくは、5~25%濃度、二酸化炭素濃度が、好ましくは、5~60%濃度、より好ましくは、5~40%濃度、更に好ましくは、5~35%濃度となるように供給される。水素、二酸化炭素及び酸素は、別々に供給されてもよいし、何れか2種以上を混合して供給してもよいし、水素、二酸化炭素及び酸素の混合ガス、成分を供給してもよい。
【0017】
ここで、上記水素は、水素細菌等の化学独立栄養細菌のエネルギ源として利用される、即ち、化学独立栄養細菌により資化される基質であり、例えば、工場等から排出された副生水素を含む排ガスや、空気や、工場等で製造された水素ガスにより供給される。なお、水素の供給源である工場等から排出された副生水素を含んだ排ガスや空気や製造された水素ガスは、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により水素が濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。
【0018】
また、上記二酸化炭素は、化学独立栄養細菌の炭素源として利用される、即ち、化学独立栄養細菌により資化される基質であり、例えば、工場等から排出された二酸化炭素を含む燃焼ガス、副生二酸化炭素を含む排ガスや空気(外気、大気)により供給される。なお、二酸化炭素の供給源である工場等から排出された二酸化炭素を含んだ燃焼ガスや副生二酸化炭素を含んだ排ガスや空気は、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により二酸化炭素が濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。
【0019】
更に、上記酸素は、水素細菌等の化学独立栄養細菌の電子受容体として水素の酸化つまりは好気呼吸に利用される、即ち、化学独立栄養細菌により資化される基質であり、例えば、工場等から排出された余剰酸素を含む燃焼ガスや副生酸素を含んだ排ガスや空気(外気、大気)により供給される。なお、酸素の供給源である工場等から排出された酸素を含んだ燃焼ガスや、水素製造時等に発生する副生酸素を含んだ排ガスや、空気は、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により酸素が濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。
【0020】
請求項4の発明の環境浄化装置の前記基質である前記水素の供給源は、副生水素を含む排ガス、空気、または製造された水素ガスの何れか1種以上であるものである。
上記副生水素を含む排ガスとは、例えば、苛性ソーダ、塩素ガス等、或いはその他化学製品を製造する際に、副次的に発生する水素ガスを含み、工場等から排出されるガスである。
上記製造された水素ガスとは、工場等で天然ガスや石油等の化石燃料から水蒸気改質または部分酸化改質で製造された水素ガスや、水の電気分解により製造された水素ガスや、メタノールまたはエタノールの改質で製造された水素ガスである。
【0021】
請求項5の発明の環境浄化装置の前記基質である前記二酸化炭素の供給源は、二酸化炭素を含む燃焼排ガス、副生二酸化炭素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるものである。
上記二酸化炭素を含む燃焼排ガスとは、工場等で燃料を燃焼させたときに生じるガスで、燃料の燃焼で生じる二酸化炭素を含み、工場等から排出されるガスである。
また、上記副生二酸化炭素を含む排ガスは、製鉄時や石油化学製品の製造時、或いはその他の製品を製造する際に、副次的に発生する二酸化炭素を含み、工場等から排出されるガスである。例えば、工場等から排出される副生水素を含む排ガス中には、副生二酸化炭素が含まれていることも多い。
【0022】
請求項6の発明の環境浄化装置の前記基質である前記酸素の供給源は、余剰酸素を含む燃焼排ガス、副生酸素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるものである。
上記余剰酸素を含む燃焼排ガスとは、工場等で燃料を燃焼させたときに生じるガスで、燃料の燃焼に使用されなかった余剰の酸素を含み、工場等から排出されるガスである。
また、上記副生酸素を含む排ガスは、例えば、水の電気分解等で副次的に発生する酸素を含み、工場等から排出されるガスである。
【0023】
請求項7の発明の環境浄化装置の前記リアクタ部では、前記化学独立栄養細菌が細菌担体に担持されており、前記化学独立栄養細菌を担持し水分を含んだ前記細菌担体が前記ハウジング内に収容されているものである。
上記ハウジング内に水分を含み化学独立栄養細菌を担持した細菌担体を含むとは、当該ハウジング内に培養液及び細菌担体を収容し高温、高湿の条件とすることで細菌担体を濡らしてもよいし、細菌担体が培養液を吸水するものであってもよいし、或いは、細菌担体に培養液や水を散水、噴霧等することによって湿らせるものであってもよい。何れにせよ、細菌担体を湿潤状態とすればよい。また、細菌担体はハウジング内に交換自在に収容される。なお、当該ハウジング内には、細菌担体が複数個収容されていてもよいし、細菌担体の複数個がまとめられてカートリッジに収納され、当該カートリッジが複数個収容されていてもよい。
【0024】
そして、上記化学独立栄養細菌を担持した細菌担体とは、化学独立栄養細菌を付着、保持したものであり、例えば、セラミック、ポリウレタン、ポリプロピレン、セルロース等の多孔質体または多孔質材料の担体(多孔体)や、ポリビニルアルコール(PVA)等の含水ゲル担体や、繊維状・紐状・レース状担体等が使用される。上記多孔質体とは、その内部に孔(空隙)を有するものであり、例えば、粒子が凝集した構造のものや、気泡が分散されている構造(スポンジ状)のものや、網目構造等のものがあり、好ましくは、孔が連通し前記培養液を吸い上げ、上昇しやすくするものである。上記多孔質材料とは、孔が多く空いているポーラス材料であり、例えば、活性炭等のカーボンや、ゼオライトや、珪藻土や、セラミック等が使用される。担体の形状としては、シート状、平板状、柱状、筒状、繊維状、紐状、粒状等の何れの形態であってもよい。
【0025】
請求項8の発明の環境浄化装置の前記細菌担体は、通気性を有し、かつ、その一部が前記培養液に浸漬されて前記培養液を吸い上げる吸水性を有するものである。即ち、前記リアクタ部の前記ハウジング内で、前記化学独立栄養細菌を担持した細菌担体の一部が前記培養液中に浸漬し、前記細菌担体は、前記培養液を吸い上げ湿潤状態になるものであり、前記細菌担体上の前記化学独立栄養細菌が前記培養液中に流出し難い構造である。
【0026】
請求項9の発明の環境浄化装置の前記細菌担体は、その複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジに収納されているものであり、前記細菌担体の取り換え等を容易としたものである。
上記カートリッジは、液分や気体が透過し中に収納される前記細菌担体に供給できる通気性及び通水性を有する構造であればよく、例えば、網状、メッシュ状、多孔質状のものが使用される。
【0027】
請求項10の発明の環境浄化装置の前記細菌担体は、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料、即ち、多くの細孔を含んだ材料からなるものである。
【0028】
請求項11の発明の環境浄化装置の前記細菌担体は、親水性繊維と多孔質材料からなる抄紙体としたものである。
ここで、上記親水性繊維とは、例えば、パルプ、コットン等の天然繊維や、レーヨン、キュプラ、等の再生セルロース繊維や、アセテート繊維等の半合成セルロース繊維等の植物繊維のセルロース系の繊維や、ポリビニルアルコール繊維等が使用される。
また、上記多孔質材料とは、細孔が多く空いているポーラス材料であり、例えば、活性炭等のカーボンや、ゼオライトや、珪藻土や、セラミック等が使用される。
上記抄紙体は、親水性繊維と多孔質材料とを混抄紙してなる抄紙体であってもよいし、親水性繊維を抄造して得た抄紙体に多孔質材料を付着(外填)させたものであってもよく、親水性繊維と多孔質材料を結合保持するために結合剤を使用したものであってもよい。
【0029】
請求項12の発明の環境浄化装置の前記細菌担体は、貫通状の多孔構造を有するものである。
ここで、上記貫通状の多孔構造とは、例えば、楕円形または円形状の孔や、三角形、四角形、五角形、六角形(ハニカム)等の角形状とした多数の孔が細菌担体の表裏を貫通する構造であることを意味する。
【0030】
請求項13の発明の環境浄化装置の前記圧力調節部は、前記ハウジングの室内の内気を排出することで前記ハウジング内の圧力を調節する排気部からなるものである。
上記排気部は、前記リアクタ部の前記ハウジングの室内の内気を室外に排出するものであり、当該内気の排出によって、前記ハウジング内の気圧を一定に制御自在とするものである。前記ハウジングから室外に排出された内気は、大気(外気)に放出してもよいし、その一部を前記ハウジング内に戻し循環させてもよい。
【0031】
請求項14の発明の環境浄化装置は、更に、前記排気部から排出された前記内気の一部を前記ハウジング内に循環させる循環路を有するものである。
上記循環路は、前記排気部から排出された前記内気の一部を前記ハウジング内に戻す循環系のガス経路であり、通常、ファン、ブロア、送風機等によって前記排気部から排出された前記内気の一部が前記ハウジング内に供給される。
【0032】
請求項15の発明の環境浄化方法は、化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とをハウジング内に含み、前記ハウジングの室内の圧力が一定に維持されるよう前記ハウジングの室内の内気を室外に排出自在とし、また、前記排出された内気の一部を前記ハウジング内に戻して循環するリアクタ部に対し、その前記ハウジング内に前記細菌の基質を供給するものであり、前記細菌に基質としての水素及び二酸化炭素を消費させるものである。
【0033】
上記リアクタ部は、ハウジング内に無機塩を含んだ培養液と化学独立栄養細菌とを含むものであり、好ましくは、ハウジングの室外の外部環境に影響されずにハウジングの室内温度を制御自在とするものである。
上記ハウジング内に化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とを含むとは、当該ハウジング内の培養液中に化学独立栄養細菌を含む液体培養であってもよいし、化学独立栄養細菌を細菌担体に担持させ、化学独立栄養細菌を担持した細菌担体が培養液等の水分(湿気)を含むように構成されたものであってもよい。即ち、ハウジング内に培養液及び細菌担体を収容し高温、高湿の条件とすることで細菌担体を濡らしてもよいし、細菌担体が培養液を吸水するものであってもよいし、或いは、細菌担体に培養液を散水、噴霧等することによって湿らせるものであってもよい。何れにせよ、細菌担体を使用する場合にはそれを湿潤状態とすればよい。
【0034】
ここで、上記化学独立栄養細菌とは、無機物の酸化反応によるエネルギを利用して二酸化炭素を還元することにより、菌体の細胞内の有機物を合成しているものである。つまり、無機物の酸化によってエネルギを得て、そのエネルギを利用して二酸化炭素から菌体の細胞内に必要な有機物を合成しているものであり、例えば、水素細菌(水素酸化細菌)、メタン菌、メタン酸化菌、硝酸菌、亜硝酸菌、硫黄酸化菌、鉄酸化菌、アナモックス菌が挙げられる。化学独立栄養細菌が利用するエネルギ源の無機物としては、還元型の無機物、例えば、水素、硫化水素、硫黄、酸化鉄(II)、アンモニア等がある。
【0035】
また、上記培養液は、化学独立栄養細菌の無機栄養源である無機塩を含有するものであり、好ましくは、アンモニウム塩、硝酸塩等の窒素源を含有するものである。
【0036】
上記ハウジングの室内の内気を室外に排出は、当該内気の排出によって、前記ハウジング内の気圧を一定に制御自在とするものであり前記ハウジングから室外に排出された内気の一部は前記ハウジング内に戻し循環され、残りが大気(外気)に放出されることになる。前記ハウジングから排出された内気の一部を前記ハウジング内に戻す循環路、即ち、循環系のガス経路では、通常、ファン、ブロア、送風機等によって前記ハウジングから排出された前記内気の一部が前記ハウジング内に供給される。
【0037】
上記ハウジング内に供給される前記化学独立栄養細菌の基質とは、化学独立栄養細菌の生育、増殖に必要な栄養基質であり、少なくとも、化学独立栄養細菌のエネルギ源としての無機物、例えば、水素、硫化水素、硫黄、酸化鉄(II)、アンモニア等と、炭素源と
しての二酸化炭素とが使用され、化学独立栄養細菌が好気性菌である場合には、酸素も使用される。それら基質の前記ハウジング内への供給形態は、ガスの形態で供給するものであってもよいし、水に溶解或いは吸湿させて供給するようにしてもよい。更に、前記ハウジングの気相部分に供給してもよいし、前記ハウジングの培養液中に供給するようにしてもよい。各基質は混合して供給されてもよいし、別々に供給されてもよい。
【0038】
請求項16の発明の環境浄化方法の前記化学独立栄養細菌は、水素細菌であるものである。
ここで、上記水素細菌とは、水素酸化細菌とも称され、遊離の水素を酸化し、その反応によって生じるエネルギを利用して、二酸化炭素(炭酸ガス)を炭素源として生育、増殖し、炭酸同化を行う細菌の総称である。上記水素細菌は、酸素を電子受容体として利用し好気的に水素を酸化し二酸化炭素を同化するものであってもよいし、二酸化炭素や硝酸イオン(NO3 -)を電子受容体として利用し嫌気的に水素を酸化し二酸化炭素を同化するものであってもよい。なお、水素細菌は、一般的には、短桿菌、グラム陰性、無胞子桿菌で極毛を有するものであり、例えば、土壌や水から分離したものが使用できる。
【0039】
請求項17の発明の環境浄化方法の前記基質は、水素、二酸化炭素及び酸素であるものである。
なお、前記ハウジング内への基質としての水素、二酸化炭素、及び酸素の供給は、それら3成分系のみに厳格に要求されるものではなく、前記化学独立栄養細菌の培養、増殖ができる水素、二酸化炭素及び酸素の所定濃度(所定量)を供給できれば、水素、二酸化炭素及び酸素以外の気体、不純物が含まれていてもよい。前記ハウジング内で水素が、好ましくは、20~90%濃度、より好ましくは、50~90%濃度、更に好ましくは、70~90%濃度、酸素が、好ましくは、5~60%濃度、より好ましくは、5~40%濃度、更に好ましくは、5~25%濃度、二酸化炭素濃度が、好ましくは、5~60%濃度、より好ましくは、5~40%濃度、更に好ましくは、5~35%濃度となるように供給される。水素、二酸化炭素及び酸素は、別々に供給されてもよいし、何れか2種以上を混合して供給してもよいし、水素、二酸化炭素及び酸素の混合ガス、成分を供給してもよい。
【0040】
ここで、上記水素は、水素細菌等の化学独立栄養細菌のエネルギ源として利用される、即ち、化学独立栄養細菌により資化される基質であり、例えば、工場等から排出された副生水素を含む排ガスや、空気や、工場等で製造された水素ガスにより供給される。なお、水素の供給源である工場等から排出された副生水素を含んだ排ガスや空気や製造された水素ガスは、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により水素が濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。
【0041】
また、上記二酸化炭素は、水素細菌等の化学独立栄養細菌の炭素源として利用される、即ち、化学独立栄養細菌により資化される基質であり、例えば、工場等から排出された二酸化炭素を含む燃焼ガスや副生二酸化炭素を含む排ガスや空気(外気、大気)により供給される。なお、二酸化炭素の供給源である工場等から排出された二酸化炭素を含んだ燃焼ガスや副生二酸化炭素を含んだ排ガスや空気は、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により二酸化炭素が濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。
【0042】
更に、上記酸素は、水素細菌等の化学独立栄養細菌の電子受容体として水素の酸化、つまりは、好気呼吸に利用される、即ち、前記細菌により資化される基質であり、例えば、工場等から排出された余剰酸素を含む燃焼ガスや副生酸素を含んだ排ガスや空気(外気、大気)により供給される。なお、酸素の供給源である工場等から排出された酸素を含んだ燃焼ガスや、水素製造時等に発生する副生酸素を含んだ排ガスや、空気は、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により酸素が濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。
【0043】
請求項18の発明の環境浄化方法の前記リアクタ部に供給される前記基質としての前記水素の供給源は、副生水素を含む排ガス、空気、または製造された水素ガスの何れか1種以上であるものである。
上記副生水素を含む排ガスとは、例えば、苛性ソーダ、塩素ガス等、或いはその他化学製品を製造する際に、副次的に発生する水素ガスを含み、工場等から排出されるガスである。
上記製造された水素ガスとは、工場等で天然ガスや石油等の化石燃料から水蒸気改質または部分酸化改質で製造された水素ガスや、水の電気分解により製造された水素ガスや、メタノールまたはエタノールの改質で製造された水素ガスである。
【0044】
請求項19の発明の環境浄化方法の前記リアクタ部に供給される前記基質としての前記二酸化炭素の供給源は、二酸化炭素を含む燃焼排ガス、副生二酸化炭素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるものである。
上記二酸化炭素を含む燃焼排ガスとは、工場等で燃料を燃焼させたときに生じるガスで、燃料の燃焼で生じる二酸化炭素を含み、工場等から排出されるガスである。
また、上記副生二酸化炭素を含む排ガスは、製鉄時や石油化学製品の製造時、或いはその他の製品を製造する際に、副次的に発生する二酸化炭素を含み、工場等から排出されるガスである。例えば、工場等から排出される副生水素を含む排ガス中には、副生二酸化炭素が含まれていることも多い。
【0045】
請求項20の発明の環境浄化方法の前記リアクタ部に供給される前記基質としての前記酸素の供給源は、余剰酸素を含む燃焼排ガス、副生酸素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるものである。
上記余剰酸素を含む燃焼排ガスとは、工場等で燃料を燃焼させたときに生じるガスで、燃料の燃焼に使用されなかった余剰の酸素を含み、工場等から排出されるガスである。
また、上記副生酸素を含む排ガスは、例えば、水の電気分解等で副次的に発生する酸素を含み、工場等から排出されるガスである。
【0046】
請求項21の発明の環境浄化方法の前記リアクタ部では、前記化学独立栄養細菌が細菌担体に担持されており、化学独立栄養細菌を担持し水分を含んだ前記細菌担体が前記ハウジング内に収容されているものである。
上記ハウジング内に水分を含み化学独立栄養細菌を担持した細菌担体を含むとは、当該ハウジング内に培養液及び細菌担体を収容し高温、高湿の条件とすることで細菌担体を濡らしてもよいし、細菌担体が培養液を吸水するものであってもよいし、或いは、細菌担体に培養液を散水、噴霧等することによって湿らせるものであってもよい。何れにせよ、細菌担体を湿潤状態とすればよい。また、細菌担体はハウジング内に交換自在に収容される。なお、当該ハウジング内には、細菌担体が複数個収容されていてもよいし、細菌担体の複数個がまとめられてカートリッジに収納され、当該カートリッジが複数個収容されていてもよい。
【0047】
そして、上記化学独立栄養細菌を担持した細菌担体とは、化学独立栄養細菌を付着、保持したものであり、例えば、セラミック、ポリウレタン、ポリプロピレン、セルロース等の多孔質体または多孔質材料の担体(多孔体)や、ポリビニルアルコール(PVA)等の含水ゲル担体や、繊維状・紐状・レース状担体等が使用される。上記多孔質体とは、その内部に孔(空隙)を有するものであり、例えば、粒子が凝集した構造のものや、気泡が分散されている構造(スポンジ状)のものや、網目構造等のものがあり、好ましくは、孔が連通し前記培養液を吸い上げ、上昇しやすくするものである。上記多孔質材料とは、孔が多く空いているポーラス材料であり、例えば、活性炭等のカーボンや、ゼオライトや、珪藻土や、セラミック等が使用される。担体の形状としては、シート状、平板状、柱状、筒状、繊維状、紐状、粒状等の何れの形態であってもよい。
【0048】
請求項22の発明の環境浄化方法の前記細菌担体は、通気性を有し、かつ、その一部が前記培養液に浸漬されて前記培養液を吸い上げる吸水性を有するものである。即ち、前記リアクタ部のハウジング内で、前記化学独立栄養細菌を担持した細菌担体の一部が前記培養液中に浸漬し、前記細菌担体は、前記培養液を吸い上げ湿潤状態になるものであり、前記細菌担体上の前記化学独立栄養細菌が前記培養液中に流出し難い構造である。
【0049】
請求項23の発明の環境浄化方法の前記細菌担体は、その複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジに収納されているものであり、前記細菌担体の取り換え等を容易としたものである。
上記カートリッジは、液分や気体が透過し中に収納される前記細菌担体に供給できる通気性及び通水性を有する構造であればよく、例えば、網状、メッシュ状、多孔質状のものが使用される。
【0050】
請求項24の発明の環境浄化方法の前記細菌担体は、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料、即ち、多くの細孔を含んだ材料からなるものである。
【0051】
請求項25の発明の環境浄化方法の前記細菌担体は、親水性繊維と多孔質材料からなる抄紙体のものである。
ここで、上記親水性繊維とは、例えば、パルプ、コットン等の天然繊維や、レーヨン、キュプラ、等の再生セルロース繊維や、アセテート繊維等の半合成セルロース繊維等の植物繊維のセルロース系の繊維や、ポリビニルアルコール繊維等が使用される。
また、上記多孔質材料とは、細孔が多く空いているポーラス材料であり、例えば、活性炭等のカーボンや、ゼオライトや、珪藻土や、セラミック等が使用される。
上記抄紙体は、親水性繊維と多孔質材料とを混抄紙してなる抄紙体であってもよいし、親水性繊維を抄造して得た抄紙体に多孔質材料を付着(外填)させたものであってもよく、親水性繊維と多孔質材料を結合保持するために結合剤を使用したものであってもよい。
【0052】
請求項26の発明の環境浄化方法の前記細菌担体は、貫通状の多孔構造を有するものである。
ここで、上記貫通状の多孔構造とは、例えば、楕円形または円形状の孔や、三角形、四角形、五角形、六角形(ハニカム)等の角形状とした多数の孔が細菌担体の表裏を貫通する構造であることを意味する。
【発明の効果】
【0053】
請求項1の発明に係る環境浄化装置によれば、化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とをハウジング内に含んだリアクタ部と、前記リアクタ部の前記ハウジング内に前記細菌の基質を供給する基質供給部と、前記リアクタ部の前記ハウジングの室内の圧力を調節する圧力調節部とを具備するものであり、無機塩を含んだ培養液と化学独立栄養細菌とをハウジング内に収容したリアクタ部に化学独立栄養細菌の基質を供給することで、化学独立栄養細菌によって水分に溶解した基質を資化させ、消費させるものである。
【0054】
ここで、化学独立栄養細菌の中には、水素をエネルギ源の無機物として利用するものがあることから、水素基質及び二酸化炭素基質の供給で、化学独立栄養細菌によって、水分に溶解した水素を酸化し、そして、水素を酸化したときのエネルギで、水分に溶解した二酸化炭素を資化、還元し炭酸同化(炭素固定)を行うことができる。このときリアクタ部では、圧力調節部によりハウジング内の圧力が一定に維持できることで、ハウジング内の増圧による化学独立栄養細菌の不活性化、増殖の停止が抑えられ、水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。
【0055】
こうして、請求項1の発明の環境浄化装置によれば、化学独立栄養細菌によって、副生水素ガス等の水素排ガスを利用し周囲環境の二酸化炭素の削減化を図ることが可能である。
特に、副生水素ガスを燃料電池等として有効利用するときには発電量の安定性や燃料電地スタックを劣化させる等の電池の品質問題があるのに対し、副生水素ガスを化学独立栄養細菌に利用させるものでは、不純物が含まれていても、また、供給量が不安定であっても、燃料電池等のような品質の問題が生じ難い。水素ガスの純度が低く、供給量が不安定な副生水素ガスでも、その水素を利用して二酸化炭素を消費する環境浄化に有効活用することができる。
更に、請求項1の発明の環境浄化装置によれば、化学独立栄養細菌を使用した炭酸同化であり、太陽光等の光をエネルギ源として利用する光合成細菌とは異なり、二酸化炭素の還元、即ち、炭酸同化に光エネルギを要するものでないから、省スペース、コンパクトな設計で水素及び二酸化炭素を消費できる。
【0056】
請求項2の発明に係る環境浄化装置によれば、前記化学独立栄養細菌は、水素細菌であり、水素細菌は化学独立栄養細菌の中でも増殖速度が速く、菌濃度を高くできるとされていることから、請求項1に記載の効果に加えて、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。
【0057】
請求項3の発明に係る環境浄化装置によれば、前記基質は、水素、二酸化炭素及び酸素であり、酸素を基質とする化学独立栄養細菌では、嫌気条件下とする煩雑な設備設計、管理を必要としないから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、維持コストが低コストで済む。
【0058】
請求項4の発明に係る環境浄化装置によれば、前記基質である前記水素の供給源が、副生水素ガスを含む水素排ガスや空気であれば、請求項3に記載の効果に加えて、低コストの水素利用で、環境中または燃焼排ガス中の二酸化炭素の削減化を図ることできる。また、前記基質である前記水素の供給源が、工場等で製造された水素ガスであれば、水素純度が高いことで、二酸化炭素の消費効率を高くできる可能性がある。
【0059】
請求項5の発明に係る環境浄化装置によれば、前記基質である前記二酸化炭素の供給源が、二酸化炭素を含む燃焼排ガス、副生二酸化炭素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるから、請求項3または請求項4に記載の効果に加えて、燃焼排ガスや排ガス中の二酸化炭素の消費であれば、大気中への二酸化炭素の排出を抑えることができ、また、空気中の二酸化炭素の消費であれば、空気中の二酸化炭素の削減を図ることができる。
【0060】
請求項6の発明に係る環境浄化装置によれば、前記基質である前記酸素の供給源が、余剰酸素を含む燃焼ガス、副生酸素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるから、請求項3乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、低コストの酸素利用で、環境中または排ガス中の二酸化炭素の削減化を図ることができる。
【0061】
請求項7の発明に係る環境浄化装置によれば、前記リアクタ部では、前記化学独立栄養細菌が細菌担体に担持されており、前記化学独立栄養細菌を担持し水分を含んだ前記細菌担体が前記ハウジング内に収容されている。したがって、吸湿した細菌担体上で化学独立栄養細菌を培養するものであるから、基質ガス溶解のためのバブリング等を含め液体管理に多大なエネルギを必要とする液体培養と比較し、省エネ設計を可能とする。よって、請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の効果に加えて、省エネ化が可能である。
【0062】
請求項8の発明に係る環境浄化装置によれば、前記細菌担体が、通気性を有し、かつ、その一部が前記培養液に浸漬されて前記培養液を吸い上げる吸水性を有するものであるから、ハウジング内に供給された水素、二酸化炭素等の基質と、細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くできる。よって、請求項7に記載の効果に加えて、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。
【0063】
請求項9の発明に係る環境浄化装置によれば、前記細菌担体は、その複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジに収納されているから、請求項7または請求項8に記載の効果に加え、細菌担体の交換が容易にでき、細菌担体のまとめた運搬が容易で取扱いやすい。
【0064】
請求項10の発明に係る環境浄化装置によれば、前記細菌担体は、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料を含んだものであるから、請求項7乃至請求項9の何れか1つに記載の効果に加え、細菌を高濃度に保持できるうえ、ハウジング内に供給された水素、二酸化炭素等の基質と細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。
【0065】
請求項11の発明に係る環境浄化装置によれば、前記細菌担体は、親水性繊維と多孔質材料の抄紙体からなるものであるから、通気性並びに吸水性及び保水性が良い。よって、請求項7乃至請求項10の何れか1つに記載の効果に加え、水素、二酸化炭素等の基質と細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。
【0066】
請求項12の発明に係る環境浄化装置によれば、前記細菌担体は、貫通状の多孔構造を有するものであるから、通気性が良い。よって、請求項7乃至請求項10の何れか1つに記載の効果に加え、水素、二酸化炭素等の基質と細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。特に、ハニカム構造では、強度を高くできるから、長期の再利用にも好適である。
【0067】
請求項13の発明に係る環境浄化装置によれば、前記圧力調節部は、前記ハウジングの室内の内気を排出することで前記ハウジング内の圧力を調節する排気部からなるから、請求項1乃至請求項12の何れか1つに記載の効果に加えて、簡単な構成でハウジング内の圧力を一定に制御可能とする。
【0068】
請求項14の発明に係る環境浄化装置によれば、更に、前記排気部から排出された前記ハウジングの前記内気の一部を前記ハウジング内に循環させる循環路を具備するから、例えば、副生水素ガスを含んだ水素排ガス等からの水素の供給量が変動し水素供給量が少なくなったときでも、未利用の水素ガスの大気中への排出が抑えられ、無駄なく有効に利用して細菌の増殖を維持できるようにすることが可能となる。即ち、供給される基質量に変動がある場合でも基質を無駄なく有効に細菌に消費させることが可能となる。したがって、請求項13に記載の効果に加えて、二酸化炭素を含む排ガスや周囲環境等の二酸化炭素の削減効果を高めることが可能となる。
【0069】
請求項15の発明に係る環境浄化方法によれば、化学独立栄養細菌と無機塩を含んだ培養液とをハウジング内に含み、前記ハウジングの室内の圧力が一定に維持されるよう前記室内の内気を室外に排出自在とし、また、前記排出された内気の一部を前記ハウジング内に戻して循環しているリアクタ部に対し、その前記ハウジング内に化学独立栄養細菌の基質を供給することで、化学独立栄養細菌によって水分に溶解した基質を資化させ、消費させるものである。
【0070】
ここで、化学独立栄養細菌の中には、水素をエネルギ源の無機物として利用するものがあることから、水素基質及び二酸化炭素基質の供給で、化学独立栄養細菌によって、水分に溶解した水素を酸化し、そして、水素を酸化したときのエネルギで、水分に溶解した二酸化炭素を資化、還元し炭酸同化(炭素固定)を行うことができる。
このときリアクタ部では、ハウジング内の圧力が一定に維持されるようハウジング内の内気を排出できることで、ハウジング内の増圧による水素細菌の不活性化、増殖の停止が抑えられ、水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。更に、ハウジングから排出された内気の一部をハウジング内に循環させているから、例えば、副生水素ガスを含んだ水素排ガスからの水素の供給量が変動し水素供給量が少なくなったときでも、未利用の水素ガスの大気中への排出が抑えられ、水素ガスを無駄なく有効に利用して水素細菌の増殖を維持できるようにすることが可能となる。即ち、供給される基質量に変動がある場合でも基質を無駄なく有効に細菌に消費させることが可能となる。
【0071】
こうして、請求項15の発明の環境浄化方法によれば、化学独立栄養細菌によって、副生水素ガス等の水素排ガスを利用し周囲環境の二酸化炭素の削減化を図ることが可能である。
特に、副生水素ガスを燃料電池等として有効利用するときには発電量の安定性や燃料電地スタックを劣化させる等の電池の品質問題があるのに対し、副生水素ガスを化学独立栄養細菌に利用させるものでは、不純物が含まれていても、また、供給量が不安定であっても、燃料電池等のような品質の問題が生じ難い。水素ガスの純度が低く、供給量が不安定な副生水素ガスでも、その水素を利用して二酸化炭素を消費する環境浄化に有効活用することができる。
更に、請求項15の発明の環境浄化方法によれば、化学独立栄養細菌を使用した炭酸同化であり、太陽光等の光をエネルギ源として利用する光合成細菌とは異なり、二酸化炭素の還元、即ち、炭酸同化に光エネルギを要するものでないから、省スペース、コンパクトな設計で水素及び二酸化炭素を消費できる。
【0072】
請求項16の発明に係る環境浄化方法によれば、前記化学独立栄養細菌は、水素細菌であり、水素細菌は化学独立栄養細菌の中でも増殖速度が速く、菌濃度を高くできるとされていることから、請求項15に記載の効果に加えて、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。
【0073】
請求項17の発明に係る環境浄化方法によれば、前記基質は、水素、二酸化炭素及び酸素であり、酸素を基質とする化学独立栄養細菌では、嫌気条件下とする煩雑な設備設計、管理を必要としないから、請求項15または請求項16に記載の効果に加えて、維持コストが低コストで済む。
【0074】
請求項18の発明に係る環境浄化方法によれば、前記基質としての前記水素の供給源が、副生水素ガスを含む水素排ガスや空気であれば、請求項17に記載の効果に加えて、低コストの水素利用で、環境中または燃焼排ガス中の二酸化炭素の削減化を図ることできる。また、前記基質である前記水素の供給源が、工場等で製造された水素ガスであれば、水素純度が高いことで、二酸化炭素の消費効率を高くできる可能性がある。
【0075】
請求項19の発明に係る環境浄化方法によれば、前記基質としての前記二酸化炭素の供給源が、二酸化炭素を含む燃焼排ガス、副生二酸化炭素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるから、請求項17または請求項18に記載の効果に加えて、燃焼排ガスや排ガス中の二酸化炭素の消費であれば、大気中への二酸化炭素の排出を抑えることができ、また、空気中の二酸化炭素の消費であれば、空気中の二酸化炭素の削減を図ることができる。
【0076】
請求項20の発明に係る環境浄化方法によれば、前記基質としての前記酸素の供給源が、余剰酸素を含む燃焼ガス、副生酸素を含む排ガス、または空気の何れか1種以上であるから、請求項17乃至請求項19の何れか1つに記載の効果に加えて、低コストの酸素利用で、環境中または排ガス中の二酸化炭素の削減化を図ることができる。
【0077】
請求項21の発明に係る環境浄化方法によれば、前記リアクタ部では、前記化学独立栄養細菌が細菌担体に担持されており、前記化学独立栄養細菌を担持し水分を含んだ前記細菌担体が前記ハウジング内に収容されている。したがって、吸湿した細菌担体上で化学独立栄養細菌を培養するものであるから、基質ガス溶解のためのバブリング等を含め液体管理に多大なエネルギを必要とする液体培養と比較し、省エネ設計を可能とする。よって、請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の効果に加えて、省エネ化が可能である。
【0078】
請求項22の発明に係る環境浄化方法によれば、前記細菌担体が、通気性を有し、かつ、その一部が前記培養液に浸漬されて前記培養液を吸い上げる吸水性を有するものであるから、ハウジング内に供給された水素、二酸化炭素等の基質と、細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くできる。よって、請求項21に記載の効果に加えて、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。
【0079】
請求項23の発明に係る環境浄化方法によれば、前記細菌担体は、その複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジに収納されているから、請求項21または請求項22に記載の効果に加え、細菌担体の交換が容易にでき、細菌担体のまとめた運搬が容易で取扱いやすい。
【0080】
請求項24の発明に係る環境浄化方法によれば、前記細菌担体は、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料を含んだものあるから、請求項21乃至請求項23の何れか1つに記載の効果に加え、水素細菌を高濃度に保持できるうえ、ハウジング内に供給された水素、二酸化炭素等の基質と細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。
【0081】
請求項25の発明に係る環境浄化方法によれば、前記細菌担体は、親水性繊維と多孔質材料の抄紙体からなるものであるから、通気性並びに吸水性及び保水性が良い。よって、請求項21乃至請求項24の何れか1つに記載の効果に加え、水素、二酸化炭素等の基質と細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。
【0082】
請求項26の発明に係る環境浄化方法によれば、前記細菌担体は、貫通状の多孔を有するものであるから、通気性が良い。よって、請求項21乃至請求項24の何れか1つに記載の効果に加え、水素、二酸化炭素等の基質と細菌担体上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素等の基質を含んだ湿気と細菌担体上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素、二酸化炭素等の基質の消費効率を高くできる。特に、ハニカム構造では、強度を高くできるから、長期の再利用にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は本発明の実施の形態に係る環境浄化装置を説明する概念図である。
図2図2(a)は本発明の実施の形態に係る環境浄化装置の細菌担体の一例を示す説明図であり、図2(b)は本発明の実施の形態に係る環境浄化装置の細菌担体の別の一例を示す説明図である。
図3図3(a)は本発明の実施の形態に係る環境浄化装置の細菌担体がカートリッジに収納されている構成を説明する概念図であり、図3(b)は本発明の実施の形態に係る環境浄化装置の細菌担体がカートリッジに収納されてハウジング内に収容される構成を説明する概念図である。
図4図4は本発明の実施の形態に係る環境浄化装置のリアクタ部のハウジング内の環境条件をコンピュータで制御する場合のハードウェアの説明図である。
図5図5は本発明の実施の形態の変形例1に係る環境浄化装置を説明する概念図である。
図6図6は本発明の実施の形態の変形例2に係る環境浄化装置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態及び各変形例において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する詳細な説明を省略する。
【0085】
まず、本発明の実施の形態に係る環境浄化装置1について、図1乃至図4を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る環境浄化装置1は、ハウジング11内に化学独立栄養細菌を担持した細菌担体13及び水素細菌の培養液15を収容したリアクタ部10と、リアクタ部10のハウジング11内に化学独立栄養細菌により資化される水素(H2)、二酸化炭素(CO2)等の基質を供給する基質ガス供給部30と、ハウジング11の室内の圧力を調節する圧力調節部としてハウジング11の室内の内気を室外に排出する排気部40とを有する。
【0086】
リアクタ部10のハウジング11は、その室内に収容された細菌担体13を交換する等のハウジング11の内容物の出し入れを可能とする開閉自在な構造で、かつ、室内の培養液15が室外に漏出しない構成であればよい。また、ハウジング11の室外の外部環境に影響されずに室内の温度及び湿度を制御自在なように、室内の温度及び湿度が室外のものと一致しない程度に遮断できる構造であればよい。即ち、ハウジング11内の湿度及び温度は、室外の環境条件によって制御されるものでなく、化学独立栄養細菌の好ましい生育環境、水素や二酸化炭素等の消費効率からしてハウジング11内の温度及び湿度が所定の範囲内となる恒温及び恒湿環境にできる熱や湿気の遮断性があればよい。ハウジング11の材質は、特に限定されないが、熱や湿気の遮断性、耐圧性、腐食性等から、例えば、金属性やガラス製が好ましく使用され、断熱材を組み合わせてもよい。なお、ハウジング11の形状は特に問われず、底部(下面)と、底部から立ち上がる側面部と、側壁部の上に形成する天井部(上面部)とからなる断面四角形の筒状であってもよいし、円筒状であってもよいし、ドーム型であってもよい。側面を曲面状にすると、エアレーション効率を高めることも可能となる。ハウジング11の大きさ、容積は、副生水素ガスの処理量等に応じて適宜される。
【0087】
更に、リアクタ部10のハウジング11の室内には、化学独立栄養細菌を担持した細菌担体13が収容される。化学独立栄養細菌を担持した細菌担体13は、化学独立栄養細菌を付着保持できるものであればよく、例えば、カーボン、セラミック、または珪藻土等の多孔質材料または多孔質体からなる担体が使用される。
【0088】
ここで、化学独立栄養細菌を担持する細菌担体13としては、例えば、抄紙構造の担体13Aを使用できる(図2(a)参照)。抄紙担体13Aは、例えば、植物繊維等の天然繊維または合成繊維等の化学繊維、好ましくは、水酸基(親水基)を有し親水性の高いポリビニルアルコール(PVA)繊維またはビニロン繊維や、セルロース系繊維等の親水性繊維と、カーボン、セラミック、または珪藻土等の多孔質材料とからなる薄い板状またはシート状の抄紙体である。こうした抄紙体は、繊維等の原料を水等の所定の液体に入れて分散させ、それら分散液(スラリー)をワイヤー(網)等を有する抄造機で抄造し、圧縮及び加熱して乾燥させた後、所定形状に切断するまたは打ち抜くことにより形成することができる。親水性の高い繊維と多孔質材料からなる抄紙担体13Aは、適宜、結合剤を使用し所定の繊維と多孔質材料との混抄紙としてもよいし、親水性繊維を抄紙した後に、多孔質材料を散布し、適宜結合剤を使用してそれらを結合したものであってもよいし、そこに更に親水性繊維を積層するようにしたものであってもよい。
【0089】
このような親水性の高い繊維と多孔質材料の抄紙体からなる抄紙担体13Aによれば、多孔質材料の孔や抄紙体の多孔質構造による繊維間の微細な間隙に化学独立栄養細菌を多く保持できるうえ、抄紙体の繊維間の微細な間隙の多孔質構造による毛細管現象によって、また、繊維の親水性によって、吸湿性・吸水性や保水性に優れるから、抄紙担体13Aに担持された化学独立栄養細菌による、水分(培養液15)に溶解した基質、即ち、水素、二酸化炭素、酸素、無機塩等の摂取効率を高めることができる。特に、抄紙体からなる担体13Aによれば多孔質材料による多孔質構造や抄紙構造による繊維間に微細な間隙を有する多孔質構造によって表面積を大きくでき、通気、湿気の流通が良いから、抄紙担体13Aに保持された水分と外部から供給された水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスとの接触効率(接触頻度)や、抄紙担体13Aと水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスを含んだ湿気との接触効率が高く、水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスが抄紙担体13A上の水分に取り入れられやすい。よって、化学独立栄養細菌による水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。
【0090】
更に、抄紙担体13Aには、吸水性、保水性を高めるために、吸水性ポリマを含有させてもよい。吸水性ポリマとしては、例えば、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸(レイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等)、アクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体、ポリアクリル酸及びその塩(ナトリウム塩等)、ポリアクリル酸塩グラフト重合体等からなる粒径1μm~1000μmのポリマ粒子等が使用できる。このような吸水性ポリマの含有により、水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスと抄紙担体13A上の水分との接触効率をより高め、抄紙担体13Aに担持された化学独立栄養細菌の水分(培養液15)に溶解した水素、二酸化炭素、酸素、無機塩等の摂取効率をより高めることができる。即ち、化学独立栄養細菌の生育、増殖を促進し化学独立栄養細菌による水素及び二酸化炭素の消費効率をより高めることが可能となる。
なお、このような吸水性ポリマは、例えば、繊維の抄紙体に散布し、適宜結合剤を使用して結合させてもよいし、そこに更に繊維を積層するようにしてもよい。
【0091】
化学独立栄養細菌を担持する細菌担体13の別の事例としては、例えば、図2(b)に示すように、貫通状の多孔構造であるハニカム構造の担体13Bを使用できる。なお、ハニカム構造とは、正六角形または正六角柱の多数のセルが蜂の巣状に敷き詰められた形状のものである。ハニカム担体13Bは、例えば、カーボン、セラミック、珪藻土等の多孔質材料をハニカム状に成形してなる板状またはシート状の担体である。断面六角形状の空隙が形成されたハニカム構造体は、例えば、カーボン、セラミック、珪藻土等の多孔質材料を水、バインダー等とともに混練し、押出成形後、焼成することによって形成することができる。なお、ハニカム担体13Bの形状は、直方体状、筒状等であってもよい。
【0092】
カーボン、セラミック、珪藻土等の多孔質材料をハニカム状に成型してなるハニカム担体13Bによれば、多孔質材料の孔に化学独立栄養細菌を多く保持できるうえ、多孔質材料の多孔性、毛細管現象等により吸湿性・吸水性や保水性が良く、ハニカム担体13Bに担持された化学独立栄養細菌の水分(培養液15)に溶解した水素、二酸化炭素、酸素、無機塩等の摂取効率を高めることができる。特に、ハニカム構造及び多孔質構造により表面積を大きくでき、通気、湿気の流通が良いから、ハニカム担体13Bに保持された水分と供給された水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスや、ハニカム担体13Bと水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスを含んだ湿気との接触効率(接触頻度)が高く、水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスがハニカム担体13B上の水分に取り入れられやすい。よって、化学独立栄養細菌による水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。また、ハニカム構造であると軽量で強度を高くでき、交換作業も容易となり、繰り返し使用する耐久性にも優れる。
【0093】
ここで、本実施の形態では、細菌担体13に担持させる化学独立栄養細菌として水素及び二酸化炭素を消費できる水素細菌を使用した。
水素細菌としては、例えば、Alcaligenes,Aquaspirillum,Arthrobacter,Azospirillum,Bacillus,Bradyrhizobium,Burkholderia,Calderobacterium,Cupriavidus,Derxia,Flavobacterium,Frankia,Helicobacter,Hydrogenobacter,Hydrogenomonas,Hydrogenovibrio,Mycobacterium,Microcyclus,Norcadia,Paracoccus,Pseudmonas,Pyrinomonas, Streptomyces, Ralstonia,Renobacter,Rhizobium,Rhodococcus,Variovorax,Xantobacter属等のものが使用できる。形質転換体を使用してもよい。
【0094】
細菌担体13への水素細菌の担持、接種は、例えば、水素細菌の培養液に浸漬させた担体13に水素細菌の粉末またはコロニーを擦り付けるまたは塗り付けることにより水素細菌を細菌担体13に付着、保持させてもよい。または、水素細菌の培養液に細菌担体13を投入、浸漬し、これに水素細菌を投入、混合して水素及び二酸化炭素と、必要に応じ酸素とを含む所定条件下で培養することで、水素細菌を細菌担体13に付着、保持させてもよい。このとき、細菌担体13を含んだ培養液は攪拌しながら培養することで、短時間で水素細菌を高濃度に担持することができる。或いは、予め、所定濃度に水素細菌を培養した培養液に細菌担体13を投入、所定時間浸漬させることで、水素細菌を細菌担体13に付着、保持させてもよい。
【0095】
こうして水素細菌を担持した細菌担体13は、ハウジング11内に交換自在に収容されるが、細菌担体13の取扱い、交換を容易とするため、好ましくは、細菌担体13はカートリッジ17に収納されてハウジング11内に交換自在に収容される。
【0096】
水素細菌を担持した細菌担体13のハウジング11への収容は、例えば、上述の細菌担体13A,13Bのように、板状またはシート状とした細菌担体13の例で説明すると、図3に示したように、板状またはシート状とした細菌担体13は、ハウジング11内でその底部に対して垂直方向に立設するよう1枚または複数枚まとめて略直方体状のカートリッジ17に収納した状態で、ハウジング11内に収容される。
【0097】
このときのカートリッジ17は、通気及び通水を許容する構造、例えば、網状、メッシュ状、多孔質状に形成された断面長方形の箱状または筒状のものが使用される。ハウジング11内に充填する培養液15の水位によっては、即ち、細菌担体13の培養液15への浸漬が深くなる場合には、細菌担体13を収納した箱または筒の底上げを行う複数の脚部17aを設けてもよいし、或いは、細菌担体13をカートリッジ17の底部から所定距離離して保持するようにして、ハウジング11の底部から細菌担体13が所定距離だけ離間する構造に形成してもよい。また、細菌担体13の保持高さを調節自在な構成としてもよい。何れにせよ、ハウジング11の底部に対し板状またはシート状とした細菌担体13を垂直方向に立設するようにハウジング11の底部に設置できる構造であればよい。
【0098】
そして、このカートリッジ17は、その内部が、板状またはシート状とした細菌担体13がハウジング11の底部に対して垂直方向に立設するよう保持、固定できる構造であればよく、例えば、カートリッジ17内で細菌担体13が傾倒しないように細菌担体13を支持できる構造や担体13同士を仕切る構造等とされる。細菌担体13を複数枚収納する場合には、カートリッジ17内の細菌担体13間の通気及び湿気の流通を良くするため、所定の間隔を空けて細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)の立設を保持、固定できる構造とするのが望ましい。細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)の厚み方向で所定の間隔を空けて配置することで、細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)間での通気及び湿気の流通が確保されるから、各細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)に保持された水分と水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスとの接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスを含んだ湿気と細菌担体13上の水素細菌との接触効率(接触頻度)が良く、各細菌担体13に担持された水素細菌に対し水素、二酸化炭素、酸素等の基質ガスを取り込まれやすくなる。よって、水素細菌による水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。
【0099】
こうして板状またはシート状とした細菌担体13であれば、その1枚が交換自在にカートリッジ17に収納され、または、複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)がその厚み方向に所定間隔を空けて並列的に積層された状態で交換自在にカートリッジ17に収納され、1枚の細菌担体13またはn枚の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)を収容したカートリッジ17ごとハウジング11の底部上に設置される。
そして、1枚の細菌担体13または複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)を収容したカートリッジ17は、ハウジング11内に1個を収容するものであってもよいし、図3(b)に示すように、複数個(m個)収容するようにしてもよい。なお、複数個(m個)のカートリッジ17(17-1,17-2,・・・,17-m)を収容する際には、ハウジング11の底部上に水平方向に並列的またはランダムに配置してもよいし、垂直方向に積層して配置してもよい。
【0100】
このように、板状またはシート状とした細菌担体13を箱状等のカートリッジ17内に所定の立設状態で交換自在に収納し、細菌担体13を収納した箱状等のカートリッジ17をハウジング11の底部に設置することで、細菌担体13はハウジング11の底部に対して垂直方向に立設した状態で容易にハウジング11内に設置することができる。細菌担体13を箱状等のカートリッジ17内に収納してハウジング11内に設置する場合には、ハウジング11内の構造について、板状またはシート状とした細菌担体13をハウジング11の底部に立設状態で設置する保持、支持構造に設計しなくてもよいから、ハウジング11内の設計自由度を高めることができる。
また、ハウジング11内の細菌担体13上の水素細菌が飽和状態になったときには、細菌担体13を収納したカートリッジ17ごとハウジング11から取り出し、新たな水素細菌を担持した細菌担体13が立設状態で収納されたカートリッジ17をハウジング11内に設置すればよく、細菌担体13の交換を容易とする。
【0101】
特に、複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)をハウジング11内に入れるときまたは取り出すときでも、それらがカートリッジ17内に収容されていれば、ハウジング11内に複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)をまとめて入れることができ、または、ハウジング11から複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)をまとめて取り出すことができ、交換作業が容易である。更に、ハウジング11内に複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)を設置するまでの運搬作業、または、ハウジング11から複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)を取り出し、複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)を別途の場所で細菌回収等の処理するまでの運搬作業も、それらがカートリッジ17内に収納していれば容易である。
【0102】
また、複数枚(n枚)の細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)をカートリッジ17に収容してハウジング11内に設置する場合には、複数個(m個)のカートリッジ17(17-1,17-2,・・・,17-m)をハウジング11内に収容するときでも、各カートリッジ17の単位で細菌担体13の管理ができる。したがって、水素や二酸化炭素の供給量やそれら消費量等に応じ、各カートリッジ17の単位で交換のタイミングの最適化を図ることができる。
【0103】
こうして水素細菌を担持した細菌担体13が設置されるハウジング11内には、更に、細菌担体13に担持された水素細菌の生育、増殖に必要な水及び栄養基質を含む培養液15も収容される。
培養液15は、主に無機塩を含むものであり、リン酸塩、アンモニウム塩、硝酸塩等の窒素源や、リン酸イオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、硫酸イオン、カルシウムイオン等の無機イオン類を含有する。
具体的には、例えば、硫酸アンモニウム((NH42SO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、硫酸マグネシウム水和物(MgSO4・7H2O)、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)、塩化鉄(FeCl2・4H2O)、塩化ニッケル等を含有する。また必要に応じ微量元素(例えば、硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)、硫酸銅(CuSO4・5H2O)、硫酸マンガン(MnSO4・5H2O)、酸化モリブテン(MoO3)、モリブテン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)、塩化コバルト(CoCl2・6H2O)、塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)、ホウ酸(H3BO3)等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸類等の微量栄養素が含有される。微量栄養素は、それを含む天然の栄養物、例えば酵母エキス,麦芽エキス等であってもよい。それら微量栄養素の含有により水素細菌の生育、増殖を促進することも可能である。特に、好ましくは、リン酸水素ナトリウム(Na2HPO4)及びリン酸二水素ナトリウム(KH2PO4)や、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を培養液15に含むことにより、pH緩衝能を持たせることができる。即ち、溶存した二酸化炭素や水素細菌の産生物によるpH低下を防止し、pH低下による水素細菌の菌体の生育、増殖の阻害を防止する。
【0104】
ハウジング11内に収容する培養液15の量は、水素や二酸化炭素の処理量等によって適宜設定されるが、ハウジング11内において培養液15は、細菌担体13の下方の一部が浸漬する所定の水位、例えば、細菌担体13の高さ(長さ)の1/10以下の水位で収容され、細菌担体13に担持された水素細菌が培養液15に流出し難いようにしている。
【0105】
これより、本実施の形態のリアクタ部10では、そのハウジング11内に水素細菌の培養液15が所定の水位で充填され、更に、水素細菌を担持した細菌担体13が、その下方の一部が培養液15中に浸漬するように設置されており、ハウジング11内に設置した細菌担体13が培養液15を吸い上げて湿潤状態され、細菌担体13に担持された水素細菌が培養液15中の水分及び栄養基質を摂取できるようにしている。
【0106】
ところで、本実施の形態のリアクタ部10では、ハウジング11の室内温度、室内湿度、室内圧力が管理される。このとき、ハウジング11の室内温度、室内湿度、室内圧力等の情報をセンサで検出しコンピュータ制御とすることも可能である。例えば、ハウジング内11の培養液15が充填されていない上部空間(ヘッドスペース)の温度を検出する温度センサや、湿度を検出する湿度センサや、圧力を検出する圧力センサを配設し、それら温度センサ、湿度センサ、圧力センサの出力が、マイクロコンピュータからなる制御装置25に入力される(図4参照)。更に、温度センサ、湿度センサ、圧力センサからの情報入力されたマイクロコンピュータからなる制御装置25の出力は、空調装置や排気部40に入力され、空調装置による温度制御や、排気部40によってハウジング11の室内の内気を室外に排気するその排気量の制御に使用される。
【0107】
空調装置は、温度エネルギの発生源であり、空調装置によりハウジング11の室内の温度が水素細菌の生育、増殖に最適な所定の範囲内、例えば、25~75℃の範囲内、好ましくは、25~50℃の範囲内に制御される。なお、ハウジング11内の温度は、水素細菌の属種により生育の最適温度は異なるため、水素細菌の属種により適宜好適な範囲に設定される。
【0108】
また、温度制御により、ハウジング11の室内の湿度を所定の範囲内、例えば、30%~80%範囲内に制御することが可能となる。特に、こうした湿度制御により、ハウジング11内の細菌担体13を湿潤状態に維持し、所定の温度下で湿潤状態にある細菌担体13上での水素細菌の培養を可能としている。なお、温度制御によって湿度制御が可能であるが、所定の範囲の温度制御で所定の湿度が得られない場合、加湿装置等によって湿度制御を行ってもよい。即ち、ハウジング11内の温度及び湿度情報が入力されたマイクロコンピュータからなる制御装置25の出力を加湿装置に入力するようにしてもよい。加湿装置は、水蒸気を発生するものであり、加湿装置によっても、ハウジング11の室内の湿度を所定の範囲に制御できるようにして、ハウジング11内の細菌担体13を湿潤状態に維持するようにしてもよい。また、培養液15を補充、追加することでもハウジング11の室内の湿度を所定の範囲に制御できるようにしてもよい。このとき、ハウジング11内の温度及び湿度情報が入力されたマイクロコンピュータからなる制御装置25の出力を培養液15が収容された貯留部27に入力し、制御装置25のプログラム制御で貯留部27の培養液15をハウジング11内に補充、追加するようにしてもよい。
【0109】
更に、本発明を実施する場合には、工場からの廃熱の温度エネルギを利用して温度制御してもよい。また、排気部40は、後述するように、ファン、ブロア等の作動によりハウジング11の室内の内気を室外に排気するものであり、圧力センサからの情報入力でファン、ブロア等の運転制御によるハウジング11の内気の排気により、ハウジング11の室内の圧力を所定の範囲に制御することが可能となる。
【0110】
こうして、リアクタ部10のハウジング11の室内は、マイクロコンピュータからなる制御装置25のプログラム制御或いはマイクロコンピュータ等の電気エネルギを使用しない管理によって所定の温度及び湿度に維持されることにより、所定の温度下で湿潤状態にある細菌担体13上での水素細菌の培養を可能とし、水素細菌による水素や二酸化炭素の継続的な消費を可能とする。また、リアクタ部10のハウジング11の室内の圧力も、マイクロコンピュータからなる制御装置25のプログラム制御或いはマイクロコンピュータ等の電気エネルギを使用しない管理によって一定に制御されることにより、ハウジング11内の増圧を抑え、高圧による水素細菌の不活性化、増殖の停止を防止して、水素及び二酸化炭素の継続的な消費を可能とする。
【0111】
更に、リアクタ部10では、ハウジング11内の培養液15中にpHセンサを設置してpHセンサにより培養液15のpHを検出しpHを管理してもよい。このとき、pHセンサで検出したpHの情報をマイクロコンピュータからなる制御装置25に入力するようにしてもよい。マイクロコンピュータからなる制御装置25に入力されたpHの情報を、培養液15の補充または無機塩等の栄養基質成分の補充やpHの中和に使用することができる。
【0112】
特に、培養液15に溶存した二酸化炭素や水素細菌の産生物によるpH低下は、水素細菌の水素や二酸化炭素等の取り込み、即ち、生育、増殖に影響するから、培養液15の補充または無機塩等の栄養基質成分の補充やpHの中和成分の添加、補充により、培養液15のpHを所定の範囲、例えば、pH2.0~12.0、好ましくは、pH4.0~9.5、より好ましくは、pH6.5~7.5に制御、維持するのが好ましい。
このとき、培養液15のpH情報が入力されたマイクロコンピュータからなる制御装置25の出力を、培養液15、無機塩等の栄養基質成分、またはpHの中和成分を収容した貯留部27に入力し、制御装置25のプログラム制御により貯留部27から培養液15、無機塩等の栄養基質成分、またはpHの中和成分が培養液15に添加、補充されるようしてもよい。なお、pHの中和成分としては、例えば、アンモニア等が使用できる。アンモニアであれば、水素細菌によって資化された培養液15中の消費された窒素源を補うこともできる。
【0113】
また、リアクタ部10では、ハウジング11内に水位センサを設置してその水位センサにより培養液15の水位を検出し、管理してもよい。このとき、水位センサで検出した水位の情報をマイクロコンピュータからなる制御装置25に入力するようにして培養液15の量を管理してもよい。マイクロコンピュータからなる制御装置25に入力された水位の情報を、培養液15の補充に使用することができる。培養液15の水位の低下は、水素、二酸化炭素等の基質の溶解量の低下、水素細菌の水分、栄養基質の不足等を招き、水素細菌の水素や二酸化炭素等の基質の取り込み、即ち、生育、増殖に影響するから、ハウジング11内で培養液15の水位が所定以下に減少したら、培養液15を追加、補充するのが好ましい。なお、水素や二酸化炭素の処理量等に応じてハウジング内11に収容される培養液15の量、水位等が決定される。
このとき、培養液15の水位情報が入力されたマイクロコンピュータからなる制御装置25の出力を、培養液15を収容した貯留部27に入力し、制御装置25のプログラム制御により貯留部27から培養液15が培養液15に添加、補充されるようしてもよい。
【0114】
更に、培養液15の無機塩等の栄養基質は水素細菌により消費されるから、適宜、栄養基質の成分も補うようにしてもよい。例えば、ハウジング11内の培養液15の窒素濃度等を培養液15中に設置した窒素濃度センサにより検出し、管理してもよい。このとき、その窒素濃度等の情報をマイクロコンピュータからなる制御装置25に入力して窒素濃度等を管理してもよい。マイクロコンピュータからなる制御装置25に入力された窒素濃度等の情報を、培養液15の栄養基質成分の補充に使用して、培養液15の窒素量等を所定濃度に制御することができる。このとき、培養液15の窒素濃度等の情報が入力されたマイクロコンピュータからなる制御装置25の出力を、窒素源等を収容した貯留部27に入力し、制御装置25のプログラム制御により貯留部27から窒素源等が培養液15に添加、補充されるようしてもよい。
【0115】
加えて、こうして水素細菌を担持した細菌担体13及び培養液15を収容したリアクタ部10のハウジング11内には、循環扇、ファン、ブロワー等の内気循環手段21を配設し、それら内気循環手段21によって、ハウジング11の室内の内気を循環させるのが好ましい。これより、後述の基質ガス供給部30から供給された水素、二酸化炭素等の基質ガスが水素細菌に消費されることなく後述の排気部40から排出されることを防止できる。また、内気循環手段21によって、ハウジング11の室内に気流が生じることより、後述の基質ガス供給部30から供給された水素、二酸化炭素等の基質ガスが万遍なくハウジング11の室内に行きわたり、水分との接触効率(接触頻度)を高めることができる。このため、ハウジング11内の循環系の気流は停止することなく、常に動作させるのが好ましい。
【0116】
更に、リアクタ部10のハウジング11内の培養液15においても、攪拌羽等の攪拌手段23によって、例えば、攪拌速度50rpm~1500rpmで攪拌されるようにするのが好ましい。これにより、後述する基質ガス供給部30から供給された水素、二酸化炭素等の基質ガスが培養液15に溶解しやすくなり、水素細菌による水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。
【0117】
更に、本実施の形態の環境浄化装置1には、リアクタ部10に接続し、リアクタ部10のハウジング11内に水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)を供給する基質ガス供給部30が設けられている。また、必要に応じ、即ち、水素細菌が好気的に水素を酸化するものでは、基質ガス供給部30で酸素(O2)も供給する。ここでは、好気的に水素を酸化する水素細菌、即ち、酸素を電子受容体として利用する水素細菌を用いる例で説明する。
図1に示すように、本実施の形態の基質ガス供給部30は、工場等から排出された副生水素等を含んだ水素排ガス31Gを供給する水素排ガス供給部31と、工場等から排出された二酸化炭素等を含んだ燃焼排ガス32Gと、ハウジング11の室外の外気、即ち、空気33Gを供給する空気供給部33とから構成され、それら水素排ガス供給部31、燃焼排ガス32及び空気供給部33にてハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に水素、二酸化炭素及び酸素の基質ガスを供給する。
【0118】
水素排ガス供給部31は、例えば、化学製品を製造する化学工場等から排出された副生水素等を含んだ水素排ガス31Gをハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に供給する供給路であり、工場等から接続されるパイプライン等の管路31a及びハウジング11内に副生水素等を含んだ水素排ガス31Gを送り込むファン(送風機、ブロア)F31等から構成される。
工場等から排出された副生水素とは、例えば、苛性ソーダ、塩素ガス、エチレン等の製造時、コークスの精製時、石油精製時、化学製品を製造する際のシリコーンの脱水素縮合反応時、化学エッジング処理時、ダイカスト処理時等で副次的に生産される水素である。
これら化学製品等の製造時に副次的に生産された副生水素を含む水素排ガス31Gには、副生水素ガスの他、燃焼によるまたは副次的な二酸化炭素ガスが含まれていることもある。
【0119】
また、燃焼排ガス供給部32は、例えば、工場等から排出された二酸化炭素を含んだ燃焼排ガス32Gをハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に供給する供給路であり、工場等から接続されるパイプライン等の管路32a及びハウジング11内に二酸化炭素等を含んだ燃焼排ガス32Gを送り込むファン(送風機、ブロア)F32等から構成される。
工場等から排出された二酸化炭素を含んだ燃焼排ガス32Gとは、工場等で燃料を燃焼させたときに生じるガスで、燃料の燃焼で生じる二酸化炭素を含んだものである。この燃焼排ガス32Gには、燃焼に使用されなかった酸素(余剰酸素)が含まれていることもある。
【0120】
更に、空気供給部33は、ハウジング11の室外の空気(外気)33Gをハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に供給する供給路であり、ファン(送風機、ブロア)F33を設けハウジング11の室外の空気33Gを吸気する構成であればよい。空気33Gには、当然、酸素、二酸化炭素及び水素の各ガスが含まれている。
【0121】
なお、リアクタ部10のハウジング11内に水素排ガス31G、燃焼排ガス32G、空気33Gを供給する各ファン(送風機、ブロア)F31,32,33は、インバータ制御による回転数制御等によって風量制御が自在なものを用いてもよい。例えば、工場の生産が止まる夜間等、排ガスの供給量の変動等に対応して、各ガスの供給量の調節を行うことで、水素細菌の生育に好適なガス環境濃度の調節を可能とする。また、各ガスの供給量が少なくて済むときには、回転速度を落としてエネルギ消費の節約(省エネ運転)を可能とする。
【0122】
こうして、本実施の形態の基質ガス供給部30では、主に副生水素を含んだ水素排ガス31Gを供給する水素排ガス供給部31の構成と、主に二酸化炭素を含んだ燃焼排ガス32Gを供給する燃焼排ガス供給部32の構成と、空気33を供給する空気供給部33の構成とを有し、ハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gの供給により水素、二酸化炭素及び酸素を供給している。
【0123】
基質ガス供給部30では、ハウジング11内の水素濃度が、好ましくは、20~90%、より好ましくは、50~90%、更に好ましくは、70~90%、酸素濃度が、好ましくは、5~60%、より好ましくは、5~40%、更に好ましくは、5~25%、二酸化炭素濃度が、好ましくは、5~60%、より好ましくは、5~40%、更に好ましくは、5~25%の範囲内となるように供給する。
【0124】
水素、二酸化炭素及び酸素の供給源である工場等から排出された排ガス31G,32Gやハウジング11の室外の空気33Gは、それを直接供給してもよいし、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものを供給してもよいし、濃縮・分離器等により水素、二酸化炭素または酸素ガスが濃縮、高濃度化されたものを供給してもよい。即ち、必要に応じ、基質ガス供給部30では、水素排ガス供給部31の構成や、燃焼排ガス供給部32の構成や、空気供給部33の構成において、不純物や雑菌を除去したり水素、二酸化炭素、酸素の各分圧(濃度、純度)を高めたりするために、各種フィルタ、濃縮装置、分離装置(分離膜)等を配設し、フィルタ等による不純物の除去処理や、滅菌処理を行ったものをハウジング11内に供給してもよいし、濃縮・分離器等により水素、二酸化炭素または酸素ガスが濃縮、高濃度化されたものをハウジング11内に供給してもよい。
【0125】
例えば、工場からの副生水素を含む水素排ガス31Gまたは空気33G中に含まれる水素を分離、濃縮する手段としては圧力スイング吸着法(Pressure Swing Adsorption、PSA)や、水素を選択的に透過する高分子膜やパラジウム合金膜等を用いた水素分離膜法、深冷分離法等がある。また、工場からの水素排ガス31Gや燃焼排ガス32Gまたは空気33G中に含まれる二酸化炭素を分離、濃縮する手段としては、二酸化炭素を選択的に吸収できるアルカリ性溶液を用いた化学吸収法、二酸化炭素を選択的に透過する高分子膜やセラミック膜等を用いた膜分離法、圧力スイング吸着法、深冷分離法等がある。更に、工場からの燃焼排ガス32Gや空気33G中に含まれる酸素を分離、濃縮する手段としては、ゼオライト等を用いた吸着法、深冷分離法、高分子膜やセラミック膜等の膜分離法等がある。
また、例えば、燃焼排ガス32G中に還元力の強い一酸化炭素(CO)が多く含まれる場合等には、水素細菌の増殖を阻害する可能性もある。この場合には、一酸化炭素を除去した排ガス32Gの供給が望ましい。なお、リアクタ部10へのそれら排ガス31G,32Gの供給や空気33Gの供給は、バッチ式で行うこともできるが、水素細菌の生育、増殖や、水素細菌による二酸化炭素、酸素の消費効率等から、連続的に行うことが好ましい。
【0126】
更に、本実施の形態の環境浄化装置1には、ハウジング11の室内の圧力を調節する圧力調節部として、リアクタ部10に接続し、ハウジング11の室内の内気を室外に排出する排気部40が設けられている。
本実施の形態の排気部40は、ハウジング11の上方でハウジング11の室内の内気を室外に排出する排出路であり、ファン(送風機、ブロア)F41を設けハウジング11の室内の内気を吸気し室外に排出する構成であればよい。ハウジング11の室内に吸気ダクト等を設けてもよい。
【0127】
こうしたハウジング11の室内の内気を室外に排出する排気部40を設けることにより、ハウジング内の気圧を一定の範囲内に制御自在として、水素細菌による水素及び二酸化炭素の消費を維持できる。なお、ハウジング11の室内の内気の排出は、連続的に行うこともできるし、間欠的であってもよく、特に、ハウジング11の室内の圧力の所定以上に上昇したときに、ファン(送風機、ブロア)F41を作動させハウジング11の室内の内気を室外に排出するようにしてもよい。これにより、未利用の水素、二酸化炭素、及び酸素のハウジング11の室外への排出量を抑え、供給された水素、二酸化炭素、及び酸素を無駄なく有効に利用して水素細菌の培養を維持できる。
【0128】
このとき、排気部40では、ハウジング11の室内の内気を室外に排出する排気路(排気管路)を分岐し、その分岐した一方に、循環系のファン(送風機、ブロア)F42を配設し、そのファン(送風機、ブロア)F42の出力をリアクタ部10のハウジング11内に入力する構成とする循環路42を形成してもよい。即ち、排気部40は、ハウジング11から排出された内気の一部を大気中に排出する大気排出路41の構成と、ハウジング11から排出された内気の一部を循環系のファン(送風機、ブロア)F42を用いてハウジング11の室内に戻して循環させる循環路42の構成としてもよい。このような排気部40では、ハウジング11から排出された内気排気量のうち、大気排出路41から大気に排出させる大気排気量との差が循環路42からハウジング11内に供給される。但し、ハウジング11の室内の圧力が所定値を上回る場合には、循環系のファン(送風機、ブロア)F42の動作を停止し、或いは、循環系のファン(送風機、ブロア)F42を常に動作させても、循環量よりも、排気部40から大気中に排出される内気の排出量を絶対的に大きくし、ハウジング11内の内気が所定の気圧に維持できるようにする。
なお、循環路41のハウジング11内への入力は、基質ガス供給部30の構成、例えば、空気供給部33の構成にまとめてよいし、それとは別にしてもよい。
【0129】
こうしたハウジング11から排出された内気の一部を再びハウジング11内に供給する循環路42の形成により、例えば、副生水素を含んだ水素排ガス供給部31からの水素の供給量に変動があり、ハウジング11内への水素供給量が少なくなったときでも、未利用の水素の大気中への排出を抑えて無駄なく有効に利用して水素細菌の増殖を維持し、排ガス31G,32Gの組成や供給量による影響を少なくして、ガス効率の低下を防止することが可能となる。また、循環路42を常に動作させている場合には、ハウジング11の室内の内気が循環する気流が形成されるから、水素、二酸化炭素及び酸素の基質ガスと水分との接触効率(接触頻度)を高めることができる。
【0130】
このように構成された本実施の形態の環境浄化装置1によれば、基質ガス供給部30の水素排ガス供給部31に設けたファン(送風機、ブロア)F31の駆動により、水素排ガス供給部31からリアクタ部10のハウジング11室内のヘッドスペース(気相空間)に水素や二酸化炭素を含んだ水素排ガス31Gが供給され、また、基質ガス供給部30の燃焼排ガス供給部32に設けたファン(送風機、ブロア)F32の駆動により、燃焼排ガス供給部32からリアクタ部10のハウジング11室内のヘッドスペース(気相空間)に二酸化炭素や酸素を含んだ燃焼排ガス32Gが供給され、更に、基質ガス供給部30の空気供給部33に設けたファン(送風機、ブロア)F33の駆動により、空気供給部33からリアクタ部10のハウジング11室内のヘッドスペース(気相空間)に酸素、二酸化炭素及び水素を含んだ空気33Gが供給される。
【0131】
そして、リアクタ部10のハウジング11内には、水素細菌の培養液15が所定の水位で充填され、更に、水素細菌を担持した細菌担体13の下方の一部が培養液15に浸漬した状態で設置されており、細菌担体13が培養液15を吸水して湿潤状態にあるから、ハウジング11の室内に供給された水素排ガス31G、燃焼排ガス32G、及び空気33Gに含まれている水素、酸素及び二酸化炭素は、培養液15や細菌担体13中の水分やハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)の湿気の水分に溶け、それらガスが溶存した水分を細菌担体13上の水素細菌が摂取することにより、水素細菌に取り込まれることになる。
【0132】
即ち、好気的に水素を酸化する水素細菌によれば、資化した酸素を電子受容体として用いて遊離の水素を好気的に酸化し(資化し)、更に、その反応によって生じるエネルギを使用して炭素源の二酸化炭素(炭酸ガス)を資化し、また、培養液15中の無機塩等の無機栄養基質も資化して、生育、増殖するものであるから、ハウジング11の室内に供給された水素、二酸化炭素及び酸素、また、無機塩等の無機栄養基質の存在下で、酸素を利用して水素を好気的に酸化し、更に、その酸化エネルギを利用して二酸化炭素を吸収し、炭酸固定を行うことで、生育、増殖する。なお、好気的に水素を酸化する水素細菌では、好気呼吸で二酸化炭素も生じるが、呼吸による発生量は炭酸固定量より少ないものである。
【0133】
こうして本実施の形態の環境浄化装置1によれば、細菌担体13に担持させた水素細菌が水素及び二酸化炭素を消費するから、副生水素等の水素ガスを利用して周囲環境の二酸化炭素の削減化を図ることが可能である。
副生水素を燃料電池等として有効利用する場合には発電量の安定性や燃料電地スタックを劣化させる等の電池の品質問題があるのに対し、このように細菌担体13に担持させた水素細菌の培養により水素及び二酸化炭素の消費を行うもの、即ち、副生水素を水素細菌に消費させるものでは、供給されたガスに含まれた二酸化炭素や水素を水素細菌が選択的に使用するものであるから、副生水素を含んだ水素排ガス31Gの水素の純度が低かったり、ガス組成や供給量が不安定で変動があったりしても、燃料電池等のような品質の問題が生じ難い。水素の純度が低く、供給量が不安定な水素排ガス31Gでも、それに含まれる副生水素を利用して二酸化炭素を消費する環境浄化に有効活用することができる。
【0134】
特に、本実施の形態の環境浄化装置1は、水素細菌等の化学独立栄養細菌によって水素及び二酸化炭素を消費するものであり、藻類、シアノバクテリア等の光合成微生物による光合成を利用した二酸化炭素の消費、つまり、光合成を利用した炭素固定を行う場合と異なり、十分な光を得るための大規模で広大な受光面積、設置面積を必要としない。このため、明所、暗所を問わず設置できるうえ、小型化が可能であり、省スペース及び低コストで水素及び二酸化炭素を処理できる。殊に、炭素固定を行う独立栄養細菌のなかでも水素細菌は、光エネルギ(光合成)を利用した炭素固定に比べ、炭素固定を行うエネルギ効率が良くて、増殖速度が速い種属もあり、炭素固定効率を高くできるため、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。
【0135】
更に、水素細菌であれば、その培養に特殊な栄養基質も必要なく、入手容易な安価な材料で済む。特に、本実施の形態では、湿潤状態とした細菌担体13上で水素細菌を培養するものであるから、基質ガス溶解のためのバブリング等を含め液体管理に多大なエネルギを必要とする液体培養と比較し、省エネ設計を可能とする。また、培養液15のpH等の成分変動の影響が少なく、菌体量を多くする(菌体濃度を高める)ことが可能であり、水素細菌や培養液15の交換頻度の手間が少なくて済み、水素細菌による水素及び二酸化炭素の消費効率も高くできる。
加えて、水素細菌では栄養要求も単純であり、細菌担体13上で水素細菌を担持して培養しているうえ、水素が高濃度で存在する培養条件下では、リアクタ部10でコンタミによる雑菌の繁殖も生じ難く、有害物も排出しないから、メンテナンスや管理が容易で、培養液15の廃棄処理も複雑化しない。即ち、水素濃度が高い環境では、他の菌の生育も抑えられ、水素細菌を優先的に培養できるから、排ガス31G,32Gや空気33Gのフィルタ除菌等は必ずしも必要ではなく、基質ガス供給部30を簡易な構成にできる。
故に、本実施の形態の環境浄化装置1によれば、省エネ設計が可能で、維持コストも低コストで済み、管理も容易である。
【0136】
更に、本実施の形態の環境浄化装置1によれば、水素、二酸化炭素等を資化する水素細菌では、その菌体内或いは菌体外に、培養液15に所定の栄養基質を含んだ条件下、貧栄養条件下、形質転換体等で、酸(例えば、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、4-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)、ヒドロキシイソブチル酸、ヒドロキシ酪酸、メチルクエン酸、乳酸、カルボン酸、酢酸等)、多糖類、アミノ酸・ペプチド・蛋白質(例えば、リジン、アルギニン、トリプトファン,メチオニン、シアノフィシン、有機リン加水分解酵素等)、脂肪酸(例えば、直鎖飽和脂肪酸等)、アミン、エステル(例えば、ラクトン、リン酸エステル等)、核酸、酵素、ビタミン類、生理活性物質、バイオプラスチック(ポリエステル等)等の有機資源を産生することもできるから、培養した水素細菌の菌体を回収して、その菌体から上述の酸、蛋白質、バイオプラスチック(ポリエステル等)等の有用資源を抽出、分離することで、酸や蛋白質等の有用資源を供給することも可能である。即ち、水素を酸化したエネルギで温室効果ガスである二酸化炭素を炭酸固定すると共に、それらを有用資源に変換することも可能である。
【0137】
そして、本実施の形態の環境浄化装置1によれば、細菌担体13上の水素細菌が飽和状態となった際には、ハウジング11内から細菌担体13を収納したカートリッジ17を取り出し、新たに水素細菌が担持された細菌担体13を収納したカートリッジ17と交換することで、水素細菌により水素及び二酸化炭素を持続的に消費することが可能である。
回収した細菌担体13は、それを所定の溶液に投入、攪拌する等の処理を行い、所定の溶液中に水素細菌の菌体を回収し、更に、洗浄、滅菌(除菌)等すれば、再度、新たな水素細菌を担持する細菌担体13として再利用することもできる。特に、上述したように、細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)を所定間隔で配置してカートリッジ17に設置、固定するものでは、細菌担体13(13-1,13-2,・・・,13-n)同士の接触摩擦による摩耗もないから、繰り返しの利用に適する。よって、環境浄化装置1の維持も低コストで済む。また、このとき回収した水素細菌の菌体の一部を、細菌担体13に接種する種菌として利用してもよい。細菌担体13から回収された水素細菌を含んだ溶液は滅菌(除菌)処理して廃棄することも可能であるし、それを遠心分離し、得られた沈殿物を適宜抽出処理することにより、有用資源を得ることも可能である。
【0138】
ところで、上記実施の形態では、水素、二酸化炭素及び酸素の供給源として水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gを供給する事例で説明したが、本発明を実施する場合には、水素、二酸化炭素及び酸素の供給源は、それらに限定されず、他の供給源を追加してもよいし、水素、二酸化炭素及び酸素を供給できれば、燃焼排ガス32Gの供給源を省略することもできるし、他の供給源を使用してもよい。例えば、副生水素の処理量によっては、燃焼排ガス32Gの供給を省略してもよく、水素排ガス31G及び空気33Gの供給源のみで、水素、二酸化炭素及び酸素を供給してもよい。また、水素の供給源としては、例えば、工場等で天然ガスや石油等の化石燃料から水蒸気改質または部分酸化改質で製造された水素ガスや、水の電気分解により製造された水素ガスや、メタノールまたはエタノールの改質で製造された水素ガス等を供給することもできる。更に、二酸化炭素の供給源としては、例えば、製鉄時や石油化学製品の製造時、或いはその他の製品を製造する際に、副次的に発生する二酸化炭素を含む排ガスを供給することもできる。加えて、酸素の供給源としては、水の電気分解等で副次的に発生する酸素を含み、工場等から排出される排ガスを供給することもできる。
また、例えば、培養液15中に炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩(炭酸水素イオン、炭酸イオン)を含有させ、それを水素細菌の二酸化炭素源として利用してもよい。水素排ガス31G、燃焼排ガス32G、空気33G等の水素、二酸化炭素及び酸素の供給源であるガスは、予め混合し、水素、二酸化炭素及び酸素の混合ガスをハウジング11内に供給するようにしてもよい。
【0139】
また、上記実施の形態では、水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33をハウジング11の室内上方の気相(ヘッドスペース)に供給する事例で説明したが、本発明を実施する場合には、図5に示した本実施の形態の変形例1に係る環境浄化装置100として説明するように、水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gをハウジング11へ送り込み、ポンプまたはコンプレッサP31,P32,33による圧縮を介してハウジング11内の培養液15中に配設した散気管31b,32b,33bから水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gを培養液15中に供給するようにしてもよい。
なお、以下で説明する変形例1及び変形例2に係る環境浄化装置100,200においては、基質ガス供給部30以外の構成は、上記実施の形態の説明と同じであるから、ここでは重複する説明は省略し、相違する点のみ説明する。また、図5及び図6においては、上記実施の形態で説明した貯留部27等は、省略してある。
【0140】
図5に示すように、本変形例1に係る基質ガス供給部30では、水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gをハウジング11内の培養液15中に供給する供給路である。
本変形例1において、工場等から排出された副生水素を含んだ水素排ガス31Gを供給する水素排ガス供給部31は、主に、工場等から接続されるパイプラインや配管等の管路31aと、管路31aの途中に配設されハウジング11に副生水素等を含んだ水素排ガス31Gを送り込むファン(送風機、ブロア)F31と、同じく管路31aの途中に配設されファン(送風機、ブロア)F31から送風された空気を圧縮しハウジング11内の培養液15中に配設した散気管31bに送り込むポンプまたはコンプレッサP31と、ハウジング11内の培養液15に配設した散気管31bとから構成される。
【0141】
このような本変形例1に係る水素排ガス供給部31によれば、化学製品を製造する化学工場等から排出された副生水素を含む水素排ガス31Gは、管路31aを介し、ファン(送風機、ブロア)F31及びポンプまたはコンプレッサP31によってハウジング11内の培養液15中に配設した散気管31bに圧送され、散気管31bから微細気泡化されて培養液15中に噴出される。
【0142】
また、本変形例1において、工場等から排出された二酸化炭素を含んだ燃焼排ガス32Gを供給する燃焼排ガス供給部32も、主に、工場等から接続されるパイプライン、配管等の管路32aと、管路32aの途中に配設されハウジング11に二酸化炭素等を含んだ燃焼排ガス32Gを送り込むファン(送風機、ブロア)F32と、同じく管路32aの途中に配設されファン(送風機、ブロア)F32から送風された空気を圧縮しハウジング11内の培養液15中に配設した散気管32bに送り込むポンプまたはコンプレッサP32と、ハウジング11内の培養液15に配設した散気管32bとから構成される。
【0143】
このような本変形例1に係る燃焼排ガス供給部32によれば、工場等から排出された二酸化炭素を含む燃焼排ガス32Gも、管路32aを介し、ファン(送風機、ブロア)F32及びポンプまたはコンプレッサP32によってハウジング11内の培養液15中に配設した散気管32bに圧送され、散気管32bから微細気泡化されて培養液15中に噴出される。
【0144】
更に、本変形例1において、ハウジング11の室外の外気、即ち、空気33Gを供給する空気供給部33は、外気中から取り入れた空気をハウジング11内の培養液15中に配設した散気管33bに送り込むポンプまたはコンプレッサP33と、ポンプまたはコンプレッサP33からの空気33Gを散気管33bに送り込む配管等の管路33aと、ハウジング11内の培養液15に配設した散気管33bとから構成される。
【0145】
このような本変形例1に係る空気供給部33によれば、ハウジング31の室外の外気である空気33Gは、管路33aを介し、ポンプまたはコンプレッサP33によってハウジング11内の培養液15中に配設した散気管33bに圧送され、散気管33bから微細気泡化されて培養液15中に噴出される。
【0146】
こうして、本変形例1に係る環境浄化装置100の基質ガス供給部30では、管路31aを介し、ファン(送風機、ブロア)F31及びポンプまたはコンプレッサP31を用いた圧送によってハウジング11内の培養液15中に配設した散気管31bから副生水素等を含む水素排ガス31Gを培養液15中に噴出させて供給する水素排ガス供給部31の構成と、管路32aを介し、ファン(送風機、ブロア)F32及びポンプまたはコンプレッサP32を用いた圧送によってハウジング11内の培養液15中に配設した散気管32bから二酸化炭素等を含む燃焼排ガス32Gを培養液15中に噴出させて供給する燃焼排ガス供給部32の構成と、管路33aを介しポンプまたはコンプレッサP33を用いた圧送によってハウジング11内の培養液15中に配設した散気管33bから空気33Gを培養液15中に噴出させて供給する空気供給部33の構成とを有し、ハウジング11内に収容された培養液15中に水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gの供給により水素細菌に資化させる水素、二酸化炭素及び酸素を供給している。
【0147】
こうした本変形例1に係る環境浄化装置100では、ハウジング11内の培養液15中に直接水素、二酸化炭素及び酸素を供給するものであり、特に、ポンプまたはコンプレッサP31,P32,P33を用いて圧送された排ガス31G,32G及び空気33Gを散気管31b,32b,33bから微細気泡化して培養液15中に噴出させるものであるから、水(培養液15)への溶解効率を高めることができる。よって、供給量に大きな変動があり供給されるガス量が極端に少なくなるときでも、そのガスの水分への溶解効率を高めて、水素細菌の消費効率の低下、生育、増殖の停止を抑えることができる。
なお、本変形例1では、散気管31b,32b,33bを用いたエアレーションで培養液15に流動が生じ、攪拌されることになるから、攪拌羽等の攪拌手段23を省略することも可能である。
【0148】
ところで、本変形例1では、水素、二酸化炭素、酸素の基質ガスの供給は、散気管31b,32b,33bからの噴出とする説明としたが、本発明を実施する場合には、それに限定されず、水素、二酸化炭素及び酸素の培養液15中への供給は、気体透過性膜やエゼクタ等を用い培養液15中に供給することも可能である。
【0149】
また、本発明を実施する場合には、水への溶解性が比較的低い水素を多く含む水素排ガス31Gのみ培養液15中に供給し、水への溶解度が高い二酸化炭素及び高濃度になると水素細菌の増殖を阻害する恐れのある酸素を含む燃焼排ガス32G及び空気33Gは、ハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に供給するようにしてもよい。これにより、水素排ガス31Gによる水素供給量に変動があっても、水素の水への溶解効率を高め、各ガスの溶解バランスを維持し、水素細菌の消費効率の低下、生育、増殖の停止を抑えることができる。
【0150】
更に、本発明を実施する場合には、図6に示した本実施の形態の変形例2に係る環境浄化装置200として、水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gを、水を収容した混合タンク35で混合し、吸湿させた混合ガス35GをポンプP35等を介してハウジング11へ送り込み、ハウジング11内のヘッドスペース(気相空間)に供給するようにしてもよい。
【0151】
即ち、本変形例2に係るガス基質供給部30においては、ファン(送風機、ブロア)F31を配設した管路31aを介して工場等から排出された副生水素を含んだ水素排ガス31Gを混合タンク35の水中に入力する水素排ガス供給部31を形成し、また、ファン(送風機、ブロア)F32を配設した管路32aを介して工場等から排出された二酸化炭素を含んだ燃焼排ガス32Gを混合タンク35の水中に入力する燃焼排ガス供給部32を形成し、更に、ファン(送風機、ブロア)F33を用い酸素や二酸化炭素を含んだ空気ガス33Gを混合タンク35の水中に入力する空気ガス供給部33を形成し、所定量の水を収容した混合タンク35の水中に水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gを混合する。そして、配管等の管路35aで混合タンク35とハウジング11の間を接続し、混合タンク35のヘッドスペース(気相空間)から、水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gが混合し湿気を含んだ混合ガス35GをポンプP35を用いて管路35a介しハウジング11のヘッドスペース(気相空間)に供給する。
【0152】
こうして、本変形例2に係るガス基質供給部30においては、混合タンク35の水に水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gを入力し、攪拌羽等の攪拌手段39で攪拌させながら溶解させ、その混合タンク35内のヘッドスペース(気相空間)における吸湿した混合ガス35Gをハウジング11のヘッドスペース(気相空間)に供給するものであり、混合タンク35内で水素排ガス31G、燃焼排ガス32G及び空気33Gを混合し、吸湿させてからハウジング11のヘッドスペース(気相空間)に供給するものである。
【0153】
こうした本実施の形態の変形例2に係る環境浄化装置200によれば、含水率の高い湿気を含んだ水素、二酸化炭素及び酸素の混合ガス35Gがハウジング11のヘッドスペース(気相空間)に供給されることで、細菌担体13がより湿りやすくなり、水分に溶解した水素、二酸化炭素及び酸素が細菌担体13上の水素細菌に取り込まれやすくなる。よって、水素及び二酸化炭素の消費効率を上げることが可能となる。
【0154】
なお、本発明を実施する場合には、水素、二酸化炭素及び酸素の混合ガス35Gは、上記変形例1のときと同様に、散気管を介してハウジング11内の培養液15中に供給するようにしてもよい。
【0155】
以上説明してきたように、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200は、化学独立栄養細菌としての水素細菌、及び、無機塩を含有した水素細菌の培養液15をハウジング11内に含んだリアクタ部10と、リアクタ部10のハウジング11内に水素細菌の基質として水素(H2)、二酸化炭素(CO2)及び酸素(O2)を供給する基質ガス供給部30と、リアクタ部10のハウジング11の室内の圧力を調節する圧力調節部としての排気部40とを具備するものである。
【0156】
したがって、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200によれば、無機塩を含んだ水素細菌の培養液15と、培養液15等からの湿気を含み水素細菌を担持した細菌担体13とをハウジング11内に収容したリアクタ部10に水素、二酸化炭素及び酸素が供給されることで、ハウジング11内の水分に水素、二酸化炭素及び酸素が溶解し、水素、二酸化炭素及び酸素が溶解した水分を吸湿した細菌担体13上に担持された水素細菌が、酸素のある好気的な条件下で、即ち、水分に溶解した酸素を電子受容体に用いることで、水分に溶解した(遊離)水素を酸化できる。更に、細菌担体13上の水素細菌は、水素を酸化したときのエネルギを用いて、水分に溶解した二酸化炭素を資化、還元して炭酸同化(炭素固定)を行うことができる。また、排気部40によりハウジング11内の圧力が一定に維持されるようハウジング11内の内気を排出できるから、ハウジング11内の増圧による水素細菌の不活性化、増殖の停止を抑え、水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。
【0157】
こうして、副生水素ガス等の水素排ガスを利用し周囲環境の二酸化炭素の削減化を図ることが可能な環境浄化装置1,100,200となる。特に、副生水素ガスを燃料電池等として有効利用するときには発電量の安定性や燃料電地スタックを劣化させる等の電池の品質問題があるのに対し、副生水素ガスを水素細菌に利用させるものでは、不純物が含まれていても、また、供給量が不安定であっても、燃料電池等のような品質の問題が生じ難い。水素ガスの純度が低く、供給量が不安定な副生水素ガスでも、その水素を利用して二酸化炭素を消費する環境浄化に有効活用することができる。
【0158】
また、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200によれば、水素細菌を使用した炭酸同化であり、光合成細菌とは異なり、二酸化炭素の還元、即ち、炭酸同化に光エネルギを要するものでないから、省スペース、コンパクトな設計で水素及び二酸化炭素を消費できる。
【0159】
特に、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200によれば、水素、二酸化炭素及び酸素が溶解する水分を含む細菌担体13上で水素細菌を培養するものであるから、液体培養と比較し、省エネ化が可能である。また、培養液15のpH等の成分変動の影響が少なく、菌体量を多くする(菌体濃度を高める)ことが可能である。よって、水素細菌や培養液15の交換頻度が少なくて済み、メンテナンス性に優れ使い勝手が良く、結果的に、水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることが可能である。更に、細菌担体13上での水素細菌の培養であれば、水素細菌を担持した細菌担体13の個数の制御により、水素、二酸化炭素等の基質の供給量の変動に対応して消費効率を高くできる。
【0160】
ところで、上記実施の形態やその変形例1,2は、化学独立栄養細菌としての水素細菌、及び、無機塩を含んだ水素細菌の培養液15と培養液15をハウジング11内に含み、ハウジング11の室内の圧力が一定に維持されるようハウジング11の内気を排出自在とし、また、ハウジング11から排出された内気の一部をハウジング11内に戻して循環させているリアクタ部10に対し、そのハウジング11内に、水素細菌の基質としての水素(H2)、二酸化炭素(CO2)及び酸素(O2)を供給する環境浄化方法の発明と捉えることもできる。
【0161】
したがって、上記実施の形態及びその変形例1,2に係る環境浄化方法によれば、無機塩を含んだ水素細菌の培養液15と、培養液15等からの湿気を含み水素細菌を担持した細菌担体13とをハウジング11内に収容したリアクタ部10に対し水素、二酸化炭素及び酸素が供給されることで、ハウジング11内の水分に水素、二酸化炭素及び酸素が溶解し、水素、二酸化炭素及び酸素が溶解した湿気を含む細菌担体13上に担持された水素細菌が、酸素のある好気的な条件下で、即ち、水分に溶解した酸素を電子受容体に用いることで、水分に溶解した(遊離)水素を酸化できる。更に、細菌担体13上の水素細菌は、水素を酸化したときのエネルギを用いて、水分に溶解した二酸化炭素を資化、還元して炭酸同化(炭素固定)を行うことができる。
【0162】
このとき、リアクタ部10では、ハウジング11内の圧力が一定に維持されるようハウジング11の内気が排出自在とされているから、ハウジング11内の増圧による水素細菌の不活性化、増殖の停止を抑え、水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることができる。更に、ハウジング11から排出された内気の一部をハウジング11内に戻して循環させているから、例えば、副生水素ガスを含んだ水素排ガスからの水素の供給量が変動し水素供給量が少なくなったときでも、未利用の水素ガスの大気中への排出が抑えられ、水素ガスを無駄なく有効に利用して水素細菌の増殖を維持できるようにすることが可能となる。
【0163】
こうして、上記実施の形態及びその変形例1,2に係る環境浄化方法によれば、副生水素ガス等の水素排ガスを利用し周囲環境の二酸化炭素の削減化を図ることが可能である。特に、副生水素ガスを燃料電池等として有効利用するときには発電量の安定性や燃料電地スタックを劣化させる等の電池の品質問題があるのに対し、副生水素ガスを水素細菌に利用させるものでは、不純物が含まれていても、また、供給量が不安定であっても、燃料電池等のような品質の問題が生じ難い。水素ガスの純度が低く、供給量が不安定な副生水素ガスでも、その水素を利用して二酸化炭素を消費する環境浄化に有効活用することができる。
特に、水素細菌を使用した炭酸同化は、光合成細菌とは異なり、二酸化炭素の還元、即ち、炭酸同化に光エネルギを要するものでないから、省スペース、コンパクトな設計で水素及び二酸化炭素を消費できる。
【0164】
更に、上記実施の形態及びその変形例1,2に係る環境浄化方法によれば、水素、二酸化炭素及び酸素を溶解する水分を含む細菌担体13上で水素細菌を培養するものであるから、液体培養と比較し、省エネ化が可能である。また、培養液15のpH等の成分変動の影響が少なく、菌体量を多くする(菌体濃度を増やす)ことが可能である。よって、水素細菌や培養液15の交換頻度が少なくて済み、メンテナンス性に優れ使い勝手が良く、結果的に、水素及び二酸化炭素の消費効率を高めることが可能である。
【0165】
また、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法は、基質ガス供給部30の水素の供給源が、副生水素ガスを含む水素排ガス31G及び空気33Gであるから、低コストの水素利用で、環境中または燃焼排ガス中の二酸化炭素の削減化を図ることできる。
【0166】
上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法は、基質ガス供給部30の二酸化炭素の供給源が、二酸化炭素を含む燃焼排ガス32Gや、副生二酸化炭素を含む水素排ガス31Gや、空気33Gであるから、燃焼排ガス中の二酸化炭素の消費であれば、大気中への二酸化炭素の排出を抑えることができ、また、空気中の二酸化炭素の消費であれば、空気中の二酸化炭素の削減を図ることができる。
【0167】
上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法は、基質ガス供給部30の酸素の供給源が、余剰酸素を含む燃焼排ガス32Gや空気33Gであるから、低コストの酸素利用で、環境中または燃焼排ガス中の二酸化炭素の削減化を図ることができる。
【0168】
更に、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200は、排気部40から排出されたハウジング11の内気の一部をハウジング11内に循環させる循環路42を具備するから、例えば、副生水素ガスを含んだ水素排ガス31Gからの水素の供給量が変動し水素供給量が少なくなったときでも、未利用の水素ガスの大気中への排出が抑えられ、水素ガスを無駄なく有効に利用して水素細菌の増殖の維持を可能とする。
【0169】
加えて、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法は、細菌担体13が、通気性を有し、かつ、その一部が培養液15に浸漬されて培養液15を吸い上げる吸水性を有するものであるから、ハウジング11内に供給された水素、二酸化炭素及び酸素と、細菌担体13上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素及び酸素を含んだ湿気と細菌担体13上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くできる。よって、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。
【0170】
また、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法において、細菌担体13の複数個が通気性及び通水性のあるカートリッジ17に収納されていると、細菌担体13の交換が容易にでき、細菌担体13のまとめた運搬が容易で取扱いやすい。
【0171】
更に、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法において、細菌担体13が、カーボン、セラミック、または珪藻土の何れからなる多孔質材料を含んだものであると、水素細菌を高濃度に保持できるうえ、ハウジング11内に供給された水素、二酸化炭素及び酸素と細菌担体13上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素及び酸素を含んだ湿気と細菌担体13上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。
【0172】
特に、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法において、細菌担体13が、親水性繊維と多孔質材料の抄紙体からなるものであると、水素、二酸化炭素及び酸素と細菌担体13上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素及び酸素を含んだ湿気と細菌担体13上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。
【0173】
また、上記実施の形態の環境浄化装置1及びその変形例1,2に係る環境浄化装置100,200並びに環境浄化方法において、細菌担体13が、ハニカム構造等の貫通状の多孔構造を有するものであると通気性が良く、水素、二酸化炭素及び酸素と細菌担体13上の水分との接触効率(接触頻度)や、水素、二酸化炭素及び酸素を含んだ湿気と細菌担体13上の細菌との接触効率(接触頻度)を高くでき、水素及び二酸化炭素の消費効率を高くできる。また、強度を高くできるから、長期の再利用にも好適となる。
【0174】
ところで、上記実施の形態及び変形例では、化学独立栄養細菌として、好気的条件で水素を酸化し、その酸化エネルギを利用して二酸化炭素を固定(消費)する水素細菌を使用する例で説明したが、本発明を実施する場合には、二酸化炭素や硝酸イオン(NO3 -)を電子受容体として利用し嫌気的に水素を酸化し二酸化炭素を同化する水素細菌を使用してもよい。係る水素細菌の場合には、基質供給部30から酸素を供給することなく、ハウジング11内を嫌気条件とする。即ち、酸素を基質として供給しないものとなる。
更に、本発明を実施する場合には、水素及び二酸化炭素を消費するものであれば、化学独立栄養細菌として水素細菌の使用に限定されるものではなく、その他の水素資化性の化学独立栄養細菌であってもよい。
【0175】
また、上記実施の形態及び変形例では、水素細菌が担持された細菌担体13は、ハウジング11の底部にカートリッジ17等を介して設置し、その一部がハウジング11内に収容した培養液15に浸漬され、培養液15を吸い上げることによって細菌担体13が培養液15の湿気を含み湿潤状態とされるものであるが、本発明を実施する場合には、細菌担体13を培養液15中に浮遊させるものであってもよいし、細菌担体13の全体を培養液15中に浸漬させるものであってもよく、更には、細菌担体13を用いることなく培養液15中で水素細菌13を培養させる液体培養の形態であってもよい。
【0176】
なお、本発明を実施するに際しては、環境浄化装置1,100,200のその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等については、上記実施例に限定されるものではない。
また、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0177】
1,100,200 環境浄化装置
10 リアクタ部
11 ハウジング
13 細菌担体
15 培養液
17 カートリッジ
30 基質供給部
40 排気部(圧力調整部)
42 循環路
図1
図2
図3
図4
図5
図6