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  • 特開-パルス管冷凍機 図1
  • 特開-パルス管冷凍機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085122
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】パルス管冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
F25B9/00 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196629
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平塚 善勝
(57)【要約】
【課題】パルス管冷凍機の小型化に寄与する技術を提供する。
【解決手段】パルス管冷凍機10は、パルス管22と、位相制御部24とを備える。位相制御部24は、パルス管22に接続されるイナータンス容積26と、イナータンス容積26を介してパルス管22に接続されるバッファ容積28とを備える。バッファ容積28は、バッファタンク壁30によって外界から区画されている。イナータンス容積26は、バッファタンク壁30に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス管と、
前記パルス管に接続されるイナータンス容積と、前記イナータンス容積を介して前記パルス管に接続されるバッファ容積とを備え、前記バッファ容積が、バッファタンク壁によって外界から区画されている位相制御部と、を備え、
前記イナータンス容積は、前記バッファタンク壁に形成されていることを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項2】
前記イナータンス容積は、前記バッファタンク壁に形成されているらせん状の空間を備えることを特徴とする請求項1に記載のパルス管冷凍機。
【請求項3】
前記バッファタンク壁は、前記バッファ容積を包囲する耐圧壁と、前記耐圧壁の内側に配置され、内部に前記イナータンス容積を有するイナータンス筒部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のパルス管冷凍機。
【請求項4】
前記バッファタンク壁は、互いに結合される外壁と内壁とを備え、前記イナータンス容積が前記外壁と前記内壁との間に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパルス管冷凍機。
【請求項5】
前記位相制御部は、前記バッファ容積内に延在し、前記パルス管を前記イナータンス容積に接続する内部接続管をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパルス管冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス管冷凍機、例えば、スターリング型のパルス管冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリニア圧縮機などの圧力振動源を用いるパルス管冷凍機が知られている。圧力振動源が生成する圧力振動流を利用する点でスターリング冷凍機と共通するので、このようなパルス管冷凍機は、スターリング型パルス管冷凍機とも呼ばれている。スターリング型パルス管冷凍機では通例、位相制御のために、長い細管(例えば、管の内径が数mmで管の長さが数m)をたとえばコイル状に巻いたものが用いられ、「イナータンス管(またはイナータンスチューブ)」と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-17422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、パルス管冷凍機について鋭意研究を重ねた結果、以下の課題を認識するに至った。パルス管冷凍機の小型化のために、イナータンス管の巻き径を小さくしたとき、管の曲率は大きくなる。そうすると、パルス管冷凍機の製造時に管を巻くとき、管が平たく潰れたり、あるいは座屈して折れ曲がったりして、良好な加工をすることが困難となりうる。とくに、イナータンス管をバッファタンク内に収める設計を採用する場合には、この問題がバッファタンクの小型化の妨げとなりうる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、パルス管冷凍機の小型化に寄与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、パルス管冷凍機は、パルス管と、パルス管に接続されるイナータンス容積と、イナータンス容積を介してパルス管に接続されるバッファ容積とを備え、バッファ容積が、バッファタンク壁によって外界から区画されている位相制御部と、を備える。イナータンス容積は、バッファタンク壁に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パルス管冷凍機の小型化に寄与する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るパルス管冷凍機を概略的に示す図である。
図2】他の実施の形態に係るパルス管冷凍機の膨張器を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
図1は、実施の形態に係るパルス管冷凍機10を概略的に示す。パルス管冷凍機10は、スターリング型パルス管冷凍機として構成され、圧力振動源12と、接続管14と、コールドヘッドとも称される膨張器16とを備える。膨張器16は、蓄冷器18と、冷却ステージ20と、パルス管22と、位相制御部24とを備える。膨張器16は、蓄冷器18とパルス管22が同軸かつ直列に互いに接続された、いわゆるインライン型または直線型の構成を有する。理解のために、膨張器16の軸方向を矢印Aにより図示している。
【0011】
図においては簡単のために、単段のパルス管冷凍機10として示されているが、ある実施形態においては、パルス管冷凍機10は、二段パルス管冷凍機として構成することも可能である。
【0012】
パルス管冷凍機10の冷媒ガスは典型的にヘリウムガスが使用される。ただし、これに限られず、適切な他のガスを冷媒ガスとして用いることも可能である。冷媒ガスは、パルス管冷凍機10内に充填され封入されている。
【0013】
パルス管冷凍機10は、圧力振動源12の動作によってパルス管22内に冷媒ガスの圧力振動が誘起され、位相制御部24の作用により圧力振動と同期して適切な位相遅れをもって、パルス管22内で冷媒ガスの変位振動すなわちガスピストンの往復動が生じるように、設計されている。ある圧力を保持しながらパルス管22内を上下に周期的に往復する冷媒ガスの動きは、しばしば「ガスピストン」と称され、パルス管冷凍機10の挙動を説明するためによく用いられる。ガスピストンがパルス管22の高温端またはその近傍にあるときパルス管22の低温端で冷媒ガスが膨張し、寒冷が発生する。
【0014】
このような冷凍サイクル(例えば、具体的には、逆スターリングサイクル)を繰り返すことにより、パルス管冷凍機10は、冷却ステージ20を所望の極低温に冷却することができる。したがって、パルス管冷凍機10は、冷却ステージ20に設置され、または適宜の伝熱部材を介して冷却ステージ20に熱的に結合された被冷却物を極低温に冷却することができる。
【0015】
一例として、被冷却物は、赤外線、サブミリ波、X線、またはその他の電磁波を検出する検出素子であってもよい。こうした検出素子は、天文観測に使用される観測装置の構成要素であってもよい。このような電磁波検出素子を有する観測装置とともに、パルス管冷凍機10は、例えば人工衛星などの宇宙機に搭載可能とされていてもよい。あるいは、パルス管冷凍機10は、そうした観測装置を備える地上設備に搭載されてもよい。あるいは、パルス管冷凍機10は、極低温環境が望まれる例えば超伝導装置またはその他の装置とともに宇宙機または地上設備に搭載されてもよい。
【0016】
圧力振動源12は、対向して同軸に配置された2つのシリンダ12aを有する、いわゆる対向二気筒のリニア圧縮機として構成されている。各シリンダ12aには、ピストン12bと、ピストン12bを軸方向に振動させるリニアアクチュエータ12cが収容されている。ピストン12bの振動方向は膨張器16の軸方向とは異なる。ピストン12bは、フレクシャベアリング12dとも呼ばれる板バネまたは弾性支持部材を介して、径方向および周方向の変位は規制されつつ軸方向には変位できるようにシリンダ12aに弾性的に支持されている。またシリンダ12aは、リニアアクチュエータ12cを固定的に支持する。シリンダ12aとピストン12bとの間に圧縮室12eが形成される。接続管14の一端が圧縮室12eに接続されている。
【0017】
リニアアクチュエータ12cの駆動により、ピストン12bが軸方向に振動される。それにより圧縮室12eの容積が振動的に増減し、圧縮室12e内の冷媒ガスの圧力振動が生成される。一例として、圧力振動の平均圧力は例えばメガパスカルのオーダ、例えば約1~4MPaの範囲にあり、圧力振幅は例えば約0.5~1MPa以内の範囲にあり、周波数は例えば約50~60Hzの範囲にあってもよい。
【0018】
接続管14は、圧力振動源12と膨張器16との間で相互に双方向に冷媒ガスを流すことができるように圧力振動源12と膨張器16とを接続する。よって、圧力振動源12により生成される冷媒ガスの圧力振動は、接続管14を介して膨張器16に伝達され、それにより膨張器16内に圧力振動を誘起することができる。なお、接続管14は、フレキシブル管であってもよいし、剛性管であってもよい。
【0019】
蓄冷器18は通例、円筒またはそのほか筒状の形状を有する容器と、この容器に充填された蓄冷材とを備える。蓄冷器18は、蓄冷器高温端18aと、蓄冷器低温端18bとを有する。蓄冷器高温端18aは、接続管14の他端に接続され、接続管14を介して圧力振動源12の圧縮室12eに接続されている。蓄冷器高温端18aには、アフタークーラとも呼ばれる熱交換器またはその他の放熱部材が設けられていてもよい。
【0020】
パルス管22は、例えば円筒または他の適切な形状を有する管状の部材であり、冷媒ガスを収容できる内部空間を有する。蓄冷器18と位相制御部24はパルス管22を介して接続されている。なお、パルス管冷凍機10においては、蓄冷器18およびパルス管22を迂回する冷媒ガスの流路は設けられていない。よって、圧力振動源12と位相制御部24との間のガス流通はすべて、蓄冷器18およびパルス管22を経由する。
【0021】
パルス管22は、パルス管高温端22aと、パルス管低温端22bとを有する。パルス管低温端22bは、蓄冷器低温端18bに接続されている。パルス管低温端22bと蓄冷器低温端18bは相互に連通しており、それにより、パルス管22と蓄冷器18は相互に双方向に冷媒ガスを流すことができるように接続されている。また、パルス管低温端22bは、蓄冷器低温端18bと構造的に固く結合されている。
【0022】
パルス管低温端22bと蓄冷器低温端18bの結合部には、この結合部を包囲するようにして、冷却ステージ20が設置されている。冷却ステージ20は、例えば銅などの高熱伝導材料で形成されている。冷却ステージ20は、パルス管低温端22bおよび蓄冷器低温端18bに熱的に結合されている。上述のように、冷却ステージ20には、パルス管冷凍機10により冷却すべき所望の被冷却物を設置することができる。
【0023】
パルス管高温端22aには、位相制御部24が設けられている。位相制御部24は、パルス管高温端22aに接続されるイナータンス容積26と、イナータンス容積26を介してパルス管高温端22aに接続されるバッファ容積28と、内部接続管27とを備える。イナータンス容積26は、バッファタンク壁30に形成されている。内部接続管27は、バッファ容積28内に延在し、パルス管22をイナータンス容積26に接続する。バッファ容積28は、バッファタンク壁30によって外界から区画されている。
【0024】
バッファタンク壁30は、円筒状の側壁部31と、側壁部31の一端を塞ぐドーム部32とを有する。側壁部31は、円筒状の外壁31aと円筒状の内壁31bを有し、これらの間にイナータンス容積26が形成される。外壁31aの内周面には外側らせん溝33aが形成されている。外側らせん溝33aに対応して、内壁31bの外周面には内側らせん溝33bが形成されている。
【0025】
パルス管冷凍機10の製造段階において、側壁部31の外壁31aとドーム部32は一体化された単一部品として用意される。内壁31bはこれとは別部品として用意され、外壁31aに固定される。外壁31aと内壁31bは、例えばろう付けにより、または他の適切な接合手法により互いに接合される。このとき、外側らせん溝33aと内側らせん溝33bが組み合わされてらせん状の空間(イナータンス容積26に相当する)を形成するように、外壁31a上で外側らせん溝33a間のらせん状の表面と内壁31b上で内側らせん溝33b間のらせん状の表面とが接合面34として接合される。このらせん状の接合面34に沿って外壁31aと内壁31bをろう付けにより接合することで、外側らせん溝33aと内側らせん溝33bを組み合わせたらせん状空間を流れるべき冷媒ガスが、軸方向(図1に示されるA方向)に隣接する溝間でリークすることを防ぐことができる。
【0026】
なお、バッファタンク壁30の側壁部31は、バッファ容積28内の冷媒ガス圧力を保持する耐圧壁として、互いに結合された外壁31aと内壁31bによって所望の耐圧性能を満たすように設計されてもよく、または、外壁31aのみで所望の耐圧性能を満たすように設計されてもよい。バッファタンク壁30は典型的に、例えばステンレス鋼などの高荷重に耐える金属材料で形成されるが、後者の場合、内壁31bは荷重を受け持つ必要が無いので、外壁31aに比べて低強度の金属材料、または樹脂材料などその他適宜の材料で形成されてもよい。
【0027】
パルス管高温端22aには径方向(A方向に垂直な方向)に広がるフランジ部35が設けられていてもよく、バッファタンク壁30は、ドーム部32とは反対側の側壁部31の端部で例えばボルト等の締結部材によりフランジ部35に確実に固定されてもよい。あるいは、フランジ部35は、バッファタンク壁30の一部(例えば、ドーム部32とは反対側の側壁部31の端部)であってもよく、このフランジ部35がパルス管高温端22aに構造的に固く結合されてもよい。このようにして、バッファタンク壁30内にバッファ容積28が定められ、バッファタンクが形成される。バッファタンクもまた、蓄冷器18およびパルス管22と同軸に配置されていてもよい。
【0028】
イナータンス容積26は上述のように、外壁31aの内周面に形成された外側らせん溝33aと、これに対応して内壁31bの外周面に形成された内側らせん溝33bとを組み合わせることによって形成されている。このようにしてバッファタンク壁30に形成されたらせん状の空間は、既存のパルス管冷凍機におけるコイル状のイナータンス管と同様に、内径が数mm程度で長さが数m程度に及ぶ。らせん状空間の断面形状は、図示されるように例えば円形であるが、他の形状でもよい。イナータンス容積26の一端(ドーム部32側)は、内部接続管27によりパルス管高温端22aに接続され、イナータンス容積26の他端(フランジ部35側)は、バッファ容積28への出口36としてバッファ容積28に開放されている。
【0029】
内部接続管27は、パルス管22と同軸にA方向にパルス管高温端22aからバッファ容積28に延在する直管部と、ドーム部32の近傍でこの直管部から径方向に折れ曲がり内壁31bに固定されイナータンス容積26に接続される接続部とを有する。内部接続管27は、パルス管22よりも細く、その内径はイナータンス容積26の内径と同程度である。内部接続管27の内部容積も、イナータンス容積26の一部であるとみなされてもよい。内部接続管27は、例えば金属材料で形成された剛性管であるが、フレキシブル管であってもよい。
【0030】
以上に説明したように、実施の形態に係るパルス管冷凍機10によれば、イナータンス容積26がバッファタンク壁30に組み込まれている。したがって、製造時に、従来のパルス管冷凍機におけるイナータンス管のように細管を巻く加工を要しない。パルス管冷凍機の小型化のためにイナータンス管の巻き径を小さくした場合に、管が平たく潰れたり、折れ曲がったりして、設計通りに加工しがたいという問題は、解消され、または少なくとも緩和される。イナータンス容積26をバッファタンク壁30に収めることにより、パルス管冷凍機10を小型化することが容易となる。
【0031】
スターリング型パルス管冷凍機に限られず、パルス管冷凍機は一般に、例えばセンサなど振動を嫌う被冷却物を冷却する用途に適している。パルス管冷凍機の膨張器は可動部品を有しないように構成することができ、そのため、膨張器に関しては制振対策を何らとることなく被冷却物を低振動に保持して冷却することができるからである。
【0032】
ところが、本発明者は、そのような既知の用途ではまったく問題とならない程度にすぎないが、既存のスターリング型パルス管冷凍機では、膨張器に出入りする冷媒ガスの運動による慣性力に起因して、実際には、膨張器に非常に微小な振動が生じうることに気づいた。その一因は、イナータンス管にある。コイル状に巻かれたイナータンス管は例えばバッファタンクなど隣接の部材に固定されるが、それでも実際の使用の際には管内部を出入りする冷媒ガスに誘起されて微小な振動がイナータンス管に発生しがちであり、この振動を十分に抑えることは必ずしも容易でない。
【0033】
本発明者の想定によれば、最先端の学術研究または先進的な産業利用の冷却用途(例えば、宇宙機に搭載される新規な観測機器の検出素子の極低温冷却など)においては、既存のパルス管冷凍機により実現可能な低振動を超える超低振動のもとでの冷却が、今後要請される可能性がある。
【0034】
実施の形態に係るパルス管冷凍機10によれば、イナータンス容積26がバッファタンク壁30に一体化されているから、コイル状イナータンス管をもつ既存のパルス管冷凍機に比べて、パルス管冷凍機10の運転中に発生しうる上述の微小振動を低減することができる。これは、パルス管冷凍機10の信頼性向上にもつながる。
【0035】
図2は、実施の形態に係るパルス管冷凍機の膨張器16を概略的に示す。図2に示される膨張器16は、蓄冷器18およびパルス管22に配置とイナータンス容積26の形成に関して図1に示される実施形態と相違し、その余については概ね共通する。以下では、相違する構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0036】
膨張器16は、蓄冷器18と、冷却ステージ20と、パルス管22と、位相制御部24とを備える。膨張器16は、蓄冷器18がパルス管22を取り囲むように蓄冷器18とパルス管22が同軸に配置された、いわゆる同軸型の構成を有する。冷却ステージ20の内部で冷媒ガスの流路は軸方向に反対向きに折り返される。蓄冷器高温端18aとパルス管高温端22aはほぼ同じ場所に位置し、ともにフランジ部35に固定されている。接続管14は、フランジ部35を径方向に貫通して、蓄冷器高温端18aに接続されている。
【0037】
この実施形態においても、位相制御部24は、パルス管高温端22aに接続されるイナータンス容積26と、イナータンス容積26を介してパルス管高温端22aに接続されるバッファ容積28と、内部接続管27とを備える。イナータンス容積26は、バッファタンク壁30に形成されている。内部接続管27は、バッファ容積28内に延在し、パルス管22をイナータンス容積26に接続する。バッファ容積28は、バッファタンク壁30によって外界から区画されている。
【0038】
バッファタンク壁30は、バッファ容積28を包囲する耐圧壁38と、耐圧壁38の内側に配置され、内部にイナータンス容積26を有するイナータンス筒部40とを備える。耐圧壁38は、円筒状の側壁部31と、側壁部31の一端を塞ぐドーム部32とを有し、側壁部31とドーム部32は一体形成されている。
【0039】
イナータンス筒部40は、例えば3Dプリンタなどの三次元造形技術により、イナータンス容積26としてのらせん状の流路を内部に有する単一の筒状部品として用意される。イナータンス容積26の一端(ドーム部32側)は、内部接続管27によりパルス管高温端22aに接続され、イナータンス容積26の他端(フランジ部35側)は、バッファ容積28への出口36としてバッファ容積28に開放されている。
【0040】
イナータンス筒部40は、耐圧壁38の側壁部31の内面に接触して側壁部31に取り付けられている。耐圧壁38とは異なり、イナータンス筒部40はバッファ容積28に収められており、冷媒ガス圧力による荷重を受け持つ必要が無いので、耐圧壁38に比べて低強度の金属材料、または樹脂材料などその他適宜の材料で形成されてもよい。イナータンス筒部40は、耐圧壁38からいくらか隙間をあけて、耐圧壁38の内側に配置されてもよい。イナータンス筒部40は、耐圧壁38のドーム部32またはフランジ部35に取り付けられてもよい。
【0041】
なお、図1に示される実施形態と同様に、イナータンス筒部40は外筒と内筒を備えてもよく、イナータンス容積26が、外筒の内周面に形成された外側らせん溝と、これに対応して内筒の外周面に形成された内側らせん溝とを組み合わせることによって形成されてもよい。
【0042】
このようにしても、イナータンス容積26をバッファタンク壁30に組み込むことができ、これはパルス管冷凍機10の小型化に役立つ。パルス管冷凍機10の運転中に発生しうる微小振動を低減することができる。
【0043】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0044】
図2を参照して説明したイナータンス筒部40にイナータンス容積26を形成しイナータンス筒部40を耐圧壁38に装着する構成は、図2に示される蓄冷器18とパルス管22が同軸配置された膨張器16だけでなく、図1に示されるインライン型の膨張器16に適用することもできる。同様に、図1を参照して説明したバッファタンク壁30の外壁31aと内壁31bとの間にイナータンス容積26を形成する構成は、図1のインライン型の膨張器16だけでなく、図2の同軸型の膨張器16に適用することもできる。
【0045】
バッファタンク壁30の製造に三次元造形技術を適用可能である場合には、内部にイナータンス容積26が形成されかつ耐圧設計されたバッファタンク壁30が単一部品として提供されてもよく、これを用いてパルス管冷凍機10が製造されてもよい。
【0046】
イナータンス容積26の形状は、らせん状に限られない。イナータンス容積26は、バッファタンク壁30内、またはイナータンス筒部40内で、他の様々な流路配置をとりうる。たとえば、イナータンス容積26は、パルス管22の軸方向に往復するような蛇行経路、またはその他の湾曲経路をとってもよい。
【0047】
イナータンス容積26は、ドーム部32またはその近傍に設けられてもよい。例えば、バッファ容積28内においてドーム部32の内側に隣接または近接して配置され、内部にイナータンス容積26を有するイナータンスプレートが設けられてもよい。あるいは、ドーム部32は、互いに結合される外壁と内壁とを備え、イナータンス容積26が外壁と内壁との間に形成されてもよい。
【0048】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0049】
10 パルス管冷凍機、 22 パルス管、 24 位相制御部、 26 イナータンス容積、 27 内部接続管、 28 バッファ容積、 30 バッファタンク壁、 31a 外壁、 31b 内壁、 38 耐圧壁、 40 イナータンス筒部。
図1
図2