(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085136
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】起倒式バリカー装置,および施設または設備の利用管理システム
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20220601BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20220601BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
G07B15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196648
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】514265360
【氏名又は名称】株式会社MI
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 章嘉
【テーマコード(参考)】
2D101
3E127
【Fターム(参考)】
2D101CA11
2D101EA01
2D101FA11
2D101FA21
2D101FB01
2D101HA01
3E127AA18
3E127BA32
3E127CA25
3E127CA47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】起倒動作それ自体に電源を必要としないバリカー装置を提供する。
【解決手段】起倒式バリカー装置は,両端部が軸受部11に回転可能に支持され,かつバリカー13が起倒自在に固定された回転軸12,上記回転軸12に外挿され,一方の腕部が上記回転軸12に,他方の腕部が筐体3にそれぞれ固定されており,上記バリカー13を起こした姿勢に向けて付勢するねじりコイルばね23,および上記バリカー13を倒したときに上記回転軸12に固定的に設けられたロック爪31aに係合し,上記バリカー13の倒した姿勢を解除可能に維持するロックピン33を備えるロックピン駆動アクチュエータ34を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が軸受けに回転可能に支持され,かつバリカーが起倒自在に固定された回転軸,
上記回転軸に外挿され,第一腕部が上記回転軸に,第二腕部が上記軸受けを含む筐体にそれぞれ固定されており,上記バリカーを起こした姿勢に向けて付勢するねじりコイルばね,および
上記バリカーを倒したときに上記回転軸に固定的に設けられたロック爪に係合し,上記バリカーの倒した姿勢を解除可能に維持するストッパ機構を備えている,
起倒式バリカー装置。
【請求項2】
上記バリカーの起倒に伴う上記回転軸の回転により発電する発電機をさらに備えている,
請求項1に記載の起倒式バリカー装置。
【請求項3】
上記ストッパ機構が,電動モータ,進退自在に設けられたピン,および上記電動モータの回転を上記ピンの進退駆動に変換する変換機構を備え,
上記電動モータに上記発電機によって発電された電力が供給される,
請求項2に記載の起倒式バリカー装置。
【請求項4】
外部装置と無線通信する通信装置を備え,
上記通信装置に上記発電機によって発電された電力が供給される,
請求項2または3に記載の起倒式バリカー装置。
【請求項5】
起こされたときに施設または設備の利用を阻止し,かつ倒されたときに施設または設備の利用を許す標識または障害物を備える施設または設備の利用管理システムであって,
上記標識または障害物を起倒する起倒機構が,
両端部が軸受けに回転可能に支持され,上記標識または障害物が起倒自在に固定された回転軸,
上記回転軸に外挿され,第一腕部が上記回転軸に,第二腕部が上記軸受けを含む筐体にそれぞれ固定されており,上記標識または障害物を起こした姿勢に向けて付勢するねじりコイルばね,および
上記標識または障害物を倒したときに上記回転軸に固定的に設けられたロック爪に係合し,上記標識または障害物の倒した姿勢を解除可能に維持するストッパ機構を備えている,
利用管理システム。
【請求項6】
上記起倒機構が施設または設備の利用に関する認証手段を備え,
上記認証手段によって施設または設備の利用が許可される場合に上記ストッパ機構が作動され,これによって上記標識または障害物を倒した姿勢が維持され,
上記認証手段によって施設または設備の利用が許可されない場合に上記ストッパ機構が作動されず,これによって上記ねじりコイルばねの付勢により上記標識または障害物が倒した姿勢から起こした姿勢に戻される,
請求項5に記載の利用管理システム。
【請求項7】
上記起倒機構が携帯端末と近距離無線通信する通信手段を備え,
上記認証手段は,上記携帯端末から送信されるコード情報に基づいて上記施設または設備の利用の許可/不許可を判断する,
請求項6に記載の利用管理システム。
【請求項8】
上記起倒機構が備える標識または障害物が起こされたタイミングまたは倒されたタイミングに計時される上記施設または設備の利用時間にしたがって,上記施設または設備の利用料金を算出する利用料金算出手段を備えている,
請求項5から7のいずれか一項に記載の利用管理システム。
【請求項9】
上記起倒機構が,上記標識または障害物の起倒に伴う上記回転軸の回転により発電する発電機をさらに備えている,
請求項5から8のいずれか一項に記載の利用管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は起倒式バリカー装置,および施設または設備の利用管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車室(車両駐車範囲)ごとにロック板が設置された時間貸し駐車場では,車両を車室に入庫(駐車)するとロック板が上昇し車両がロックされる。駐車場に設置された精算機を用いて駐車料金を支払うとロック板が下降し車両ロックが解除され,これにより車両を車室から出庫させることができる。近年では駐車場がカーシェアリングに用いられることもある。カーシェアリングでは車室に駐車されている車両が登録会員間で共同使用される。車両ないし車種,その車両が駐車されている駐車場(ステーション),利用時間帯(利用開始日時,利用終了日時)が予約され,会員カードを用いて車両の扉が開錠されて出庫される。出庫された車室に他者が誤って車両を駐車しないように出庫時に車室にスタンド看板が置かれる。
【0003】
特許文献1は駐車場に設置される起倒式駐車防止装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
特許文献1の起倒式駐車防止装置ではリモートコントロールが用いられて可動パイプが起倒される。可動パイプは電動機によって支軸を回動させることによって起倒される。可動パイプを起こす場合と倒す場合の両方に電動機が用いられるので,可動パイプの起倒に必要とされる電力は比較的大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は,起倒動作それ自体に電源を必要としないバリカー装置を提供することを目的とする。
【0007】
この発明はまた,外部電源を必要とせずに無線通信等が可能なバリカー装置および利用管理システムを提供することを目的とする。
【0008】
この発明はさらに,施設または設備の利用を無人管理できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による起倒式バリカー装置は,両端部が軸受けに回転可能に支持され,かつバリカーが起倒自在に固定された回転軸,上記回転軸に外挿され,第一腕部が上記回転軸に,第二腕部が上記軸受けを含む筐体にそれぞれ固定されており,上記バリカーを起こした姿勢に向けて付勢するねじりコイルばね,および上記バリカーを倒したときに上記回転軸に固定的に設けられたロック爪に係合し,上記バリカーの倒した姿勢を解除可能に維持するストッパ機構を備えている。
【0010】
回転軸が回転すると,回転軸に固定されたバリカーは回転軸を中心に回動する。回転軸が回転することでバリカーは起こした姿勢(起立姿勢)と倒した姿勢(降伏姿勢)の2つの姿勢をとる。
【0011】
この発明によると,第一腕部が回転軸に固定され,かつ第二腕部が筐体に固定されたねじりコイルばねが回転軸に外挿されており,このねじりコイルばねによってバリカーは起立姿勢に付勢される。倒されたバリカーを起こすのに電力を必要としない。起立したバリカーを下向きに押すことでバリカーを倒すことができ,バリカーを倒すための電力も必要としない。起倒動作に電源を要しないバリカー装置が提供される。
【0012】
回転軸に固定的に設けられたロック爪にストッパ機構を係合させることによって,バリカーを倒した姿勢に留めることができる。ストッパ機構の係合を外すことでバリカーは,ねじりコイルばねによって元の起こされた姿勢に戻る。起倒式バリカー装置が駐車場に設置されている場合に,バリカーを倒した姿勢に維持することによって車両を駐車場に入庫しまたは駐車場から出庫することができる。また,ストッパ機構の係合を外してバリカーを起立させることで,その駐車場(車室)への車両の進入(誤駐車)を防止することができる。
【0013】
好ましくは,起倒式バリカー装置は上記バリカーの起倒に伴う上記回転軸の回転により発電する発電機をさらに備えている。上述したように,バリカーを倒すまたはバリカーを起こすたびに回転する回転軸が発電に利用される。
【0014】
一実施態様では,上記ストッパ機構が,電動モータ,進退自在に設けられたピン,および上記電動モータの回転を上記ピンの進退駆動に変換する変換機構を備え,上記電動モータに上記発電機によって発電された電力が供給される。ピンの進退駆動に用いられるだけであるので比較的小さい電力が供給されれば十分であり,この電力を発電するために上述したバリカーの起伏動作を用いることができる。
【0015】
他の実施態様では,外部装置と無線通信する通信装置を備え,上記通信装置に上記発電機によって発電された電力が供給される。外部装置との無線通信についても大きな電力は必要とされず,この電力を発電するために上述したバリカーの起伏動作を用いることができる。
【0016】
いずれにしてもバリカーを倒したときおよび起こしたときの回転軸の回動動作を利用して自己発電されるので,外部電源から電力供給が無くても,ストッパ機構や通信装置を稼働させることができる。
【0017】
この発明による利用管理システムは,起こされたときに施設または設備の利用を阻止し,かつ倒されたときに施設または設備の利用を許す標識または障害物を備えるものであって,上記標識または障害物を起倒する起倒機構が,両端部が軸受けに回転可能に支持され,上記標識または障害物が起倒自在に固定された回転軸,上記回転軸に外挿され,第一腕部が上記回転軸に,第二腕部が上記軸受けを含む筐体にそれぞれ固定されており,上記標識または障害物を起こした姿勢に向けて付勢するねじりコイルばね,および上記標識または障害物を倒したときに上記回転軸に固定的に設けられたロック爪に係合し,上記標識または障害物の倒した姿勢を解除可能に維持するストッパ機構を備えている。
【0018】
標識または障害物は,駐車場の車室,通路,レストランのテーブル,スポーツ練習場,遊戯施設等に設置される。標識または障害物は起倒機構によって起倒される。標識または障害物が起こされたときに施設または設備の利用が阻止(禁止)され,かつ倒されたときに施設または設備の利用が許される。
【0019】
この発明によると,電源を必要とすることなく,起こされている標識または障害物を倒すことができ,ストッパ機構によって標識または障害物の倒された状態を維持することができる。
【0020】
一実施態様では,上記起倒機構が施設または設備の利用に関する認証手段を備え,上記認証手段によって施設または設備の利用が許可される場合に上記ストッパ機構が作動され,これによって上記標識または障害物の倒した姿勢が維持され,上記認証手段によって施設または設備の利用が許可されない場合に上記ストッパ機構が作動されず,これによって上記ねじりコイルばねの付勢により上記標識または障害物が倒された姿勢から起こされた姿勢に戻される。正規の利用者に施設または設備を利用させることができる。また,施設または設備を無人管理することができる。
【0021】
好ましくは,上記起倒機構が携帯端末と近距離無線通信する通信手段を備え,上記認証手段は,上記携帯端末から送信されるコード情報に基づいて上記施設または設備の利用の許可/不許可を判断する。携帯端末を用いて簡単に施設または設備を利用可能とすることができる。
【0022】
他の実施態様では,利用管理システムは,上記起倒機構が備える標識または障害物が起こされたタイミングまたは倒されたタイミングに計時される上記施設または設備の利用時間にしたがって,上記施設または設備の利用料金を算出する利用料金算出手段を備えている。施設または設備の利用時間に応じた料金を利用者に請求することができる。
【0023】
好ましくは,上記起倒機構が上記標識または障害物の起倒に伴う上記回転軸の回転により発電する発電機をさらに備えている。外部電源を必要とせずに無給電でたとえば上述した携帯端末との近距離無線通信を実現することができる。起倒機構は,利用者が所持する携帯端末を介して,外部とネットワーク接続することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】起倒式バリカー装置が設置されている駐車場を示している。
【
図3】バリカーを起立させた状態の起倒式バリカー装置の斜視図である。
【
図4】バリカーを降伏させた状態の起倒式バリカー装置の斜視図である。
【
図5】バリカーを起立させた状態の起倒式バリカー装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図6】バリカーを降伏させた状態の起倒式バリカー装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図7】登録ユーザデータベースのデータ構造を示す。
【
図8】入出庫管理データベースのデータ構造を示す。
【
図9】入庫処理時の起倒式バリカー装置,スマートフォンおよび管理サーバの処理を示すフローチャートである。
【
図10】出庫処理時の起倒式バリカー装置,スマートフォンおよび管理サーバの処理を示すフローチャートである。
【
図11】スマートフォンの表示画面例(予約確認画面)を示す。
【
図12】スマートフォンの表示画面例(二次元コード撮像画面)を示す。
【
図13】スマートフォンの表示画面例(出庫説明画面)を示す。
【
図14】スマートフォンの表示画面例(入庫確認画面)を示す。
【
図15】スマートフォンの表示画面例(出庫説明画面)を示す。
【
図16】スマートフォンの表示画面例(精算画面)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
【0026】
駐車システムは,ネットワーク2(たとえばインターネット)に接続されるスマートフォン60,管理サーバ80および決済サーバ90と,駐車場の車室(車両駐車領域)ごとに設置される起倒式バリカー装置1とを備えている。スマートフォン60,管理サーバ80および決済サーバ90はいずれもCPU,メモリ,記憶装置,通信装置等を備えるコンピュータ装置であり,ネットワーク2を通じて相互にデータ通信が可能である。他方,起倒式バリカー装置1についてはネットワーク2を通じたデータ通信は行わずスマートフォン60との間で近距離無線通信を行う。
【0027】
管理サーバ80には登録ユーザデータベース81および入出庫管理データベース82が接続されている。これらのデータベース81,82に登録されているデータが用いられて駐車管理処理および決済処理が行われる。登録ユーザデータベース81および入出庫管理データベース82の詳細は後述する。
【0028】
スマートフォン60の記憶装置にはあらかじめ駐車場利用アプリケーション・プログラム(以下,駐車場利用アプリと呼ぶ)がインストールされる。駐車場利用アプリを起動することによってスマートフォン60は駐車場に車両を駐車するときに起倒式バリカー装置1と相互に通信し,駐車場の利用状況を管理サーバ80に通知する端末となる。後述するように駐車時間に応じた利用料金が決済サーバ90によって決済される。
【0029】
はじめに起倒式バリカー装置1を詳細に説明する。
図2は起倒式バリカー装置1が設置されている駐車場を示している。
図3および
図4は起倒式バリカー装置1の斜視図であり,
図3は起倒式バリカー装置1が備えるバリカー(車止め,ポール)を起こした(起立させた)状態を,
図4はバリカーを倒した(降伏させた)状態をそれぞれ示している。
【0030】
起倒式バリカー装置1は駐車場に区画される車室(車両駐車領域)ごとに設置される。起倒式バリカー装置1は車室前方に固定的に設置されるもので,起倒自在(回動可能)なバリカー13を備える。バリカー13を起立させた状態において車室への車両の入庫および車室からの車両の出庫が阻止される(
図3)。バリカー13は回動させて倒した状態(寝かせた状態,接地面と水平にした状態)に固定することができる(
図4)。バリカー13が倒されることで車両を車室に自由に入庫させかつ出庫させることができる。
【0031】
図3,
図4を参照して,起倒式バリカー装置1が備えるバリカー13は,起立させた状態において横向きにのびる中央部分と,中央部分の両端から下向きにのびる両椀部分を含み,概略逆U字形である。逆U字形バリカー13の横向きにのびる中央部分には駐車場利用者に対する利用説明文および二次元コード14aが印字された看板14が設けられている。バリカー13の両椀部の先端部分は,横向きにのびる円柱形の回転軸12に互いに間隔をあけて固定されている。バリカー13の形状は,U字形に限らず,I字形,T字形等であってもよい。
【0032】
図5および
図6はそれぞれ
図3,
図4に対応するもので,筐体3,4によって保護される起倒式バリカー装置1の内部構造を示している。
【0033】
図5,
図6を参照して,回転軸12の両端部は筐体3に固定された一対の軸受部11に回動可能に軸受けされている。回転軸12が回転するとバリカー13は回転軸12を中心に回動する。逆にバリカー13を回動させる(起倒させる)ことで回転軸12が回転する。バリカー13は約45度の範囲,すなわち起立姿勢(
図3,
図5)から降伏姿勢(
図4,
図6)までの範囲で回転させることができればよい。
【0034】
回転軸12にねじりコイルばね23が外挿されている。すなわち,ねじりコイルばね23の中空に回転軸12が通されている。ねじりコイルばね23の一方の腕部は回転軸12に固定されたばね固定具21に,他方の腕部は筐体3に固定されたばね固定具22に,それぞれ固定されている。起立しているバリカー13を倒すと回転軸12が回転し,このときにねじりコイルばね23に巻き込み力が発生する。ねじりコイルばね23には巻き込み力を解放しようとする動力(回転軸12を逆回転させる付勢)が生じる。一旦倒したバリカー13(回転軸12)から手を離すと,上述したねじりコイルばね23に生じている巻き込み力を解放しようとする動力によって回転軸12は逆回転し,バリカー13は元の起立姿勢に戻る。
【0035】
バリカー13を倒した状態に固定するために,回転軸12にロック部材31が,筐体3にロックピン駆動アクチュエータ34が,それぞれ固定的に設けられている。
【0036】
ロック部材31は回転軸12に固定的に設けられた環状部材であり,外向きに突出するロック爪31aが一体的に形成されている。バリカー13を起立させた状態においてロック爪31aは上方に突出している(
図5)。バリカー13を倒すとロック爪31aは約45度回転し,接地面と平行に概略平行にのびる(
図6)。
【0037】
ロックピン駆動アクチュエータ34は電気錠に類似する機構を備えるもので,ロックピン駆動アクチュエータ34からロックピン33を進退駆動させるように動作する。ロックピン駆動アクチュエータ34は,進退駆動するロックピン33と,アクチュエータ34内に格納された電動モータ(図示略)と,電動モータの回転を傘歯車等を介してロックピン33の進退駆動(直線運動)に変換する変換機構(図示略)と,ロック解除スイッチ32とを備えている。ロック解除スイッチ32の先端部分は筐体4の外にまでのびている(
図3,
図4)。
【0038】
図5を参照して,バリカー13を起立させた状態ではロックピン33はロックピン駆動アクチュエータ34の向きに引っ込められている。
図6を参照して,バリカー13を倒した後にロックピン33を駆動させると,前方に飛び出したロックピン33によってロック部材31のロック爪31aが係止される。ロック爪31aを備える環状ロック部材31は回転軸12に固定されているので,ロックピン33によってロック部材31のロック爪31aが係止されている状態では回転軸12は逆回転できず,これによってバリカー13は倒された状態に留められる(ロックする)ことができる。
【0039】
バリカー13が倒されているときの起倒式バリカー装置1の全高は車両の地上高よりも低く,バリカー13が倒されているときに車両は車室に入庫され,かつ出庫される。
【0040】
ロックピン駆動アクチュエータ34はメモリ(図示略)を含むコントローラ42と信号線によって電気的に接続されており,ロックピン駆動アクチュエータ34の電動モータの動作はコントローラ42によって制御される。また,ロック解除スイッチ32を押下することによって電動モータを逆回転させてロックピン33を引っ込めることができ,ロックピン33が引っ込むことでバリカー13のロックは解除される。ロック解除スイッチ32にはたとえば電子スイッチを用いることができる。
【0041】
ロックピン33によるロックが解除されると,上述したように,ねじりコイルばね23による巻き込み力を解放しようとする動力によって回転軸12は逆回転し,バリカー13は元の起立姿勢に戻る。
【0042】
回転軸12にはさらに,回転軸12の回転に伴って回転する大径の歯車25が固定されており,この大径歯車25に小径の歯車26がかみ合わされている。小径歯車26の回転軸は発電機(ダイナモまたはオルタネータ)41に接続されており,バリカー13が起立ないし降伏させられるたびに発電する。発電機41によって発電された電気は必要に応じて蓄電器(バッテリィ)(図示略)に蓄電してもよい。発電機41によって発電された電気は上述したロックピン駆動アクチュエータ34(その電動モータ,ロックピン33)の駆動,次に説明する近距離無線通信(コントローラ42への給電)などに用いることができる。小型の蓄電器(バッテリ)(図示略)に発電機41が発電した電気を蓄電してもよい。
【0043】
コントローラ42にはアンテナ43が接続されており,アンテナ43を通じてスマートフォン60との間でデータを近距離無線により送受信することができる。コントローラ42は,上述したロックピン駆動アクチュエータ34の電動モータの駆動処理(バリカー13のロック処理)の他,後述するように,バリカー13のロックを許可するかどうかの判定処理,スマートフォン60との間の近距離無線通信なども制御する。また,コントローラ42は後述する認証処理を実行するため認証コード等が記憶されたメモリ(図示略)を備えている。
【0044】
図7は駐車システムを構成する管理サーバ80に接続される登録ユーザデータベース81を示している。
【0045】
登録ユーザデータベース81には利用者ID,氏名,決済方法その他のデータが登録される。
【0046】
駐車システムの利用者にはあらかじめ利用者ID(会員番号)が付与される。「利用者ID」によって駐車システム(車室)の利用者(会員)が特定される。「氏名」は利用者IDによって特定される会員の氏名である。「決済方法」は車室の利用料金の決済方法であり,クレジットカード番号,銀行振込,銀行引き落とし等,使用者があらかじめ指定した決済方法の種類等が格納される。後述するように,登録ユーザデータベース81に登録された決済方法にしたがって決済サーバ90は利用料金を決済する。
【0047】
図8は駐車システムを構成する管理サーバ80に接続される入出庫管理データベース82を示している。
【0048】
入出庫管理データベース82には,予約番号,予約場所,予約日時,利用者ID,入庫日時,出庫日時および料金に関するデータが登録される。
【0049】
駐車システムの利用者は車室の利用を予約することができる。利用者によって予約が行われると,入出庫管理データベース82には予約番号,予約場所(駐車場名),予約日時,車室番号および利用者IDが登録される。
【0050】
後述するように,駐車場が利用されるたびに車両の入庫日時および車両出庫日時が入出庫管理データベース82に登録され,入庫日時から出庫日時の間の利用時間に基づいて利用料金が算出され,これも入出庫管理データベース82に登録される。入出庫管理データベース82に登録される利用者IDおよび利用料金に基づいて,上述した登録ユーザデータベース81に登録された決済方法にしたがって,決済サーバ90による利用料金の決済処理が行われる。
【0051】
図9は駐車システムを構成する起倒式バリカー装置1,スマートフォン60および管理サーバ80の入庫処理時のフローチャートである。
図11~
図14は入庫処理においてスマートフォン60の表示画面に表示される表示例を示している。
【0052】
あらかじめ駐車場の予約が行われる。駐車場(車室)予約は駐車システムの予約サイト(図示略)を用いて行われる。予約サイトでは少なくとも予約場所および予約日時(利用開始日時)および車室番号が決定される。予約が確定すると管理サーバ80によって予約番号が発行される。予約番号,予約場所,予約日時,車室番号および利用者IDを含むレコードが入出庫管理データベース82(
図8)に新たに登録される。
【0053】
予約した駐車場に到着した利用者はスマートフォン60の駐車場利用アプリを起動する(ステップ51)。利用者氏名,予約場所(駐車場名),車室番号,予約日時および予約番号を含む予約確認画面60A(
図11)が登録ユーザデータベース81および入出庫管理データベース82から読み出されたデータに基づいてスマートフォン60の表示画面に表示される。
【0054】
スマートフォン60の撮像機能が用いられて看板14の二次元コード14a読み取られる(ステップ52,
図12)。二次元コード14aは駐車場名,車室番号およびバリカー装置ID(バリカー装置1ごとの固有ID)を表すデータを含む。二次元コード14aによって読み取られた駐車場名,車室番号およびバリカー装置IDと,利用者ID(利用者IDは駐車場利用アプリによってスマートフォン60のメモリから読み出されるまたは利用者によって入力される)とが,ネットワーク2を通じてスマートフォン60から管理サーバ80に送信される(ステップ53)。
【0055】
スマートフォン60の画面が利用説明画面60B(
図13)に切り替えられる。利用説明画面60Bにしたがって利用者はバリカー装置1のバリカー13を倒す(ステップ61)。
【0056】
上述したように,バリカー13を倒すと回転軸12も一緒に回転する。回転軸12に固定された大径歯車25および大径歯車25にかみ合わされた小径歯車26が回転し,発電機41による発電が行われる(ステップ62)。バリカー13を倒したときに発生する電力が以下に説明する認証処理,ロック解除処理,データ通信処理等に用いられる。
【0057】
管理サーバ80はスマートフォン60から受信した利用者IDに基づいて本人確認処理(会員登録されている者かどうか)を実行し,かつ二次元コード14aに基づくデータに基づいてその利用者IDによって予約された駐車場および車室であるかを確認する(予約確認処理)(ステップ71)。本人確認および予約確認の両方が正しく行われると,管理サーバ80は認証コードを発行し,ネットワーク2を通じてスマートフォン60に送信する(ステップ72)。認証コードにはたとえば上述したバリカー装置IDを含ませることができる。
【0058】
管理サーバ80から認証コードを受信したスマートフォン60は受信した認証コードをバリカー装置1に送信する(ステップ54)。
【0059】
バリカー装置1は,スマートフォン60から受信した認証コードが正しい認証コードかどうかを認証する。たとえば,バリカー装置1が備えるコントローラ42のメモリにあらかじめ記憶されている認証コードと,受信した認証コードが一致しているかどうかを判断する(ステップ63)。すなわち,バリカー装置1のコントローラ42は認証装置として動作する。
【0060】
受信した認証コードが正しい場合,すなわち入出庫管理データベース82に登録されている予約内容と,スマートフォン60から送信されたデータ内容とが一致している(すなわち予約内容通りに特定利用者が特定日時に特定駐車場の特定車室を訪問している)場合,バリカー装置1は倒されたバリカー13をロックする(ステップ63でYES,ステップ64)。上述したように,バリカー13のロックは,バリカー装置1が備えるロックピン駆動アクチュエータ34においてロックピン33が前方に飛び出し,ロックピン33がロック部材31のロック爪31aに係合することによって実現される。ロック中,バリカー13は倒された状態に留められる(
図4,
図6)。バリカー13が倒された状態にロックされることで利用者は車室に車両を駐車することができる。
【0061】
たとえば管理サーバ80において本人確認処理が正しく行われずに認証コードがバリカー装置1に送信されなかった,または本人確認処理は正しく行われたが予約確認処理が正しく行われなかった(利用者が車室を間違えた等)場合には,バリカー13はロックされない(ステップ63でNO,ステップ65)。バリカー13はロックされないので利用者がバリカー13から手を放すとバリカー13はねじりコイルばね23によって再び起立する。不正または不当な駐車場の利用を防止することができる。
【0062】
車両を車室に駐車した利用者は,バリカー装置1のロック解除スイッチ32を押下する(ステップ66)。ロックピン33が引っ込み,これによってバリカー13のロックが解除される。バリカー13が起き上がり,このときにも発電機41による発電が行われる(ステップ67)。
【0063】
バリカー13のロックが解除されたことに応じて,バリカー装置1からスマートフォン60を経由して管理サーバ80にロック解除データが送信される(ステップ68,55)。管理サーバ80はロック解除データの受信にしたがって入庫日時データを入出庫管理データベース82に登録する(ステップ73)。管理サーバ80は正常入庫メッセージを作成してスマートフォン60に送信する(ステップ74)。スマートフォン60の表示画面に入庫時刻を含む入庫確認画面60Dが表示される(ステップ56,
図14)。
【0064】
図10は駐車システムを構成するバリカー装置1,スマートフォン60および管理サーバ80の出庫処理時のフローチャートである。
図15および
図16は出庫処理においてスマートフォン60の表示画面に表示される表示例を示している。
図10に示すフローチャートにおいて
図9に示す処理と同一処理には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0065】
出庫時においても入庫時と同様にして,スマートフォン60の駐車場利用アプリおよび看板14の二次元コード14aが用いられて管理サーバ80において本人確認処理および予約確認処理が行われ(ステップ71),認証コードが用いられてバリカー装置1において認証処理が行われる(ステップ63)。出庫のためにバリカー13を倒したときに発電が行われ(ステップ62),この発電によって認証処理,ロック解除処理,バリカー装置1とスマートフォン60との間のデータ通信処理等に用いられる電力が賄われる。
【0066】
バリカー13がロックされると,スマートフォン60の表示画面には出庫のための説明画面60Eが表示される(
図15)。車室から車両が出庫される。ロック解除スイッチ32が押下されることでバリカー13のロックが解除され,バリカー13は再び起立する(ステップ66,67)。
【0067】
バリカー装置1からスマートフォン60を経由して管理サーバ80にロック解除データが送信されると,管理サーバ80は出庫日時データを入出庫管理データベース82に格納し(ステップ73A),さらに入庫日時から出庫日時までの時間にしたがって利用料金を算出する(精算処理)(ステップ74)。算出された料金も入出庫管理データベース82に登録される(
図8)。利用料金データはネットワーク2を通じて管理サーバ80から決済サーバ90に送信され,かつスマートフォン60にも送信される。管理サーバ80は正常出庫メッセージを作成してスマートフォン60に送信する。スマートフォン60の表示画面には入庫時間,出庫時間,駐車時間,利用料金を含む正常出庫画面(精算画面)60F(
図16)が表示される(ステップ57)。
【0068】
上述した実施例では,車両を駐車場の車室に所定時間駐車する時間貸しの駐車システムを説明した。駐車システムに限らず,たとえ駐車場に駐車された車両を共同使用するカーシェアリングにおいても上述のシステムは利用することができる。もちろん,駐車場に限らず,レストランにおけるテーブルのリザーブ,ゴルフ練習場その他のスポーツ施設,ゲーム場その他の遊戯施設や設備においても,施設ないし設備の利用を阻止するまたは許可ために上述した起倒式バリカー装置1を用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 起倒式バリカー装置(起倒機構)
2 ネットワーク
3,4 筐体
11 軸受部
12 回転軸
13 バリカー
14 看板
14a 二次元コード
21,22 ばね固定具
23 ねじりコイルばね
31 ロック部材
31a ロック爪
32 ロック解除スイッチ
33 ロックピン
34 ロックピン駆動アクチュエータ(ストッパ機構)
41 発電機
42 コントローラ
60 スマートフォン
80 管理サーバ
81 登録ユーザデータベース
82 入出庫管理データベース
90 決済サーバ