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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085149
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】水性組成物及び殺微生物剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/20 20060101AFI20220601BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220601BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220601BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220601BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20220601BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A61K33/20
A61P17/00 101
A61P31/00
A61K9/08
A61K47/02
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/00 A
A01N25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196668
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】506146644
【氏名又は名称】株式会社長野食料
(71)【出願人】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(71)【出願人】
【識別番号】520466375
【氏名又は名称】廣田 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】平田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
(72)【発明者】
【氏名】廣田 毅
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD27
4C076FF36
4C076FF54
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA24
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA90
4C086ZB31
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA13
4H011DA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保存安定性及び酸化分解能を兼ね備える水性組成物及び殺微生物剤を提供する。
【解決手段】二酸化塩素を含み、かつ平均粒子径が400nm以下である気泡が水に分散されており、更に、気泡を安定化するための成分としてSiO(OH) を含み、pHが8.5以上12.5以下である水性組成物、又は該水性組成物を含む殺微生物剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】

二酸化塩素を含みかつ平均粒子径が400nm以下である気泡が、水に分散されてなる、水性組成物。
【請求項2】

SiO(OH) をさらに含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】

pHが、8.5以上12.5以下である、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】

前記二酸化塩素の含有量が、前記水性組成物の総量に対し、1ppm以上100000ppm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項5】

請求項1~4のいずれか1項に記載の水性組成物を含む、殺微生物剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、水性組成物、殺微生物剤、消臭剤及び漂白剤に関し、より詳しくは、存安定性及び酸化分解能を兼ね備える水性組成物及び殺微生物剤に関する。
【背景技術】
【0002】

二酸化塩素(ClO)は、強力な酸化剤であり、菌や悪臭成分の酸化分解能を有するため、これを水に溶解させてなる水溶液は、殺菌剤、消臭剤等として用いられている。
【0003】

このような二酸化塩素水溶液は、空気と接触すると急激に二酸化塩素ガスを発生させて、酸化分解能を失う。このため、例えば特許文献1では、過酸化炭酸ナトリウム水溶液に二酸化塩素ガスを溶解して亜塩素酸ナトリウムを形成させるとともにpHを9に調整してなる水溶液が開示されている。このような水溶液では、二酸化塩素が安定化されており、長期間に渡って保存することができることも開示されている。
【0004】

しかしながら、特許文献1の水溶液では、このように二酸化塩素が安定化されているため、酸化分解能を有する遊離の二酸化塩素ガスの発生が少ない。そこで、使用前に酸を添加し、pHを7以下に調整して二酸化塩素ガスの発生を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】特開昭61-181532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

このように、二酸化塩素を発生させる水溶液において、保存安定性と、酸化分解能の発現とは相反するものであり、これらの両立は困難であった。
【0007】

本開示は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、保存安定性及び酸化分解能を兼ね備える水性組成物、殺微生物剤及び消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】

本発明者らは、上述した課題を解決するため、鋭意検討を行った。その結果、二酸化塩素を含みかつ平均粒子径が400nm以下である気泡が、水に分散されてなる、水性組成物によれば、高い保存安定性及び高い酸化分解能が両立されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】

(1)二酸化塩素を含みかつ平均粒子径が400nm以下である気泡が、水に分散されてなる、水性組成物。
【0010】

(2)前記アニオンは、SiO(OH) をさらに含む、上記(1)に記載の水性組成物。
【0011】

(3)pHが、8.5以上12.5以下である、上記(1)又は(2)に記載の水性組成物。
【0012】

(4)前記二酸化塩素の含有量が、前記水性組成物の総量に対し、1ppm以上100000ppm以下である上記(1)~(3)のいずれかに記載の水性組成物。
【0013】

(5)上記(1)~(7)のいずれかに記載の水性組成物を含む、殺微生物剤。
【発明の効果】
【0014】

本発明によれば、保存安定性及び酸化分解能を兼ね備える水性組成物、殺微生物剤、消臭剤及び漂白剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】

<水性組成物>

本開示に係る水性組成物は、二酸化塩素を含みかつ平均粒子径が400nm以下である気泡が、水に分散されてなるものである。
【0016】

このような水性組成物においては、二酸化塩素が溶解して化学変化が生じているのではなく、酸化分解能を有する二酸化塩素そのものが気泡の状態として存在する。このため、このような水性組成物によれば、剤の添加等の処理がなく、二酸化塩素に由来する高い酸化分解能を活かすことができる。
【0017】

また、このような水性組成物において、気泡の周囲には水酸化物イオンが集合してこの気泡を被覆するため、水となじみがよく水中で安定に分散される。また、気泡は水酸化物イオンによって負に帯電しているため、近接すると電荷の作用によって斥力が働き、合一もし難い。
【0018】

このような水性組成物においては生体への毒性が極めて低い。特に、驚くべきことに、水性組成物のアルカリ性にしても、アルカリによる生体への損傷(タンパク質の溶解)が起こらない。また、このような水性組成物によれば、従来の塩素系殺微生物剤を用いた場合に生じるトリハロメタンも生成しない。さらに、このような水性組成物においては、二酸化塩素を含むにもかかわらず、いわゆる塩素臭もない。
【0019】

〔気泡〕

気泡は、二酸化塩素を含みかつ平均粒子径が400nm以下であるものである。
【0020】

気泡の平均粒子径としては、400nm以下であれば特に限定されず、例えば390nm以下、380nm以下、370nm以下、360nm以下、350nm以下、340nm以下、330nm以下、320nm以下、300nm以下、290nm以下、280nm以下、270nm以下、260nm以下、250nm以下であることが好ましい。気泡の平均粒子径が所要量以下であることにより、水への分散性を高めることができる。一方、気泡の平均粒子径としては、10nm以上、15nm以上、20nm以上、25nm以上、30nm以上であってよい。なお、水性組成物中には、気泡以外に各種添加物が含まれることがあり、例えば添加剤が粒子状として含まれる場合、水性組成物について単純に動的光散乱法(DLS)で平均粒子径を測定しても、そこで得られる平均粒子径が気泡の平均粒子径であるとは言えない。そこで、本開示においては、気泡の平均粒子径の測定は、一律、次の方法で行う。島津製作所のSALADシリーズを用いて、動的光散乱法によって、まず当該水性組成物中の微粒子の数を測定する。続いて、当該水性組成物中を、24時間かけて-5℃まで徐冷し凍結した後、24時間かけて20℃まで戻して解凍する。これにより、気泡が除去された水溶液が得られる。この水溶液についても同様微粒子の数を測定する(以下、「第2の散乱スペクトル」ということもある。)。第1の散乱スペクトルと第2の散乱スペクトルの差のスペクトルを、気泡に由来する散乱スペクトルとして、このスペクトルから、気泡の平均粒子径(メディアン径、D50)を測定する。
【0021】

気泡は、二酸化塩素のみからなってもよい(不可避的不純物の含有は許容される)が、二酸化塩素の他に気体を含んでもよい。例えば、気泡は、窒素やアルゴン等の不活性ガスや、酸素等の酸化性ガスを含むことができる。また、気泡は、水素や一酸化炭素等の還元性ガスを含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
【0022】

〔二酸化塩素〕

二酸化塩素の含有量としては、特に限定されないが、水性組成物の総量に対し、例えば0.05ppm以上、0.07ppm以上、0.1ppm以上、0.2ppm以上、0.5ppm以上、0.7ppm以上、1ppm以上、2ppm、3ppm以上、4ppm以上、5ppm以上、6ppm以上、7ppm以上、8ppm以上、9ppm以上、10ppm以上、15ppm以上、20ppm以上、25ppm以上、30ppm以上、35ppm以上、40ppm以上、45ppm以上、50ppm以上、55ppm以上、60ppm以上、65ppm以上、70ppm以上、75ppm以上、80ppm以上、85ppm以上、90ppm以上、100ppm以上、110ppm以上、120ppm以上、130ppm以上、140ppm以上、150ppm以上、160ppm以上、170ppm以上、180ppm以上、190ppm以上、200ppm以上、220ppm以上、240ppm以上、260ppm以上、280ppm以上、300ppm以上、350ppm以上、400ppm以上、450ppm以上、500ppm以上、550ppm以上、600ppm以上、650ppm以上、700ppm以上、750ppm以上、800ppm以上、850ppm以上、900ppm以上、950ppm以上、1000ppm以上、1100ppm以上、1200ppm以上、1400ppm以上、1600ppm以上、1800ppm以上、2000ppm以上であることが好ましい。二酸化塩素の含有量が所要量以上であることにより、二酸化塩素の酸化分解能をより効果的に発現させることができる。一方、二酸化塩素の含有量としては、水性組成物の総量に対し、100000ppm以下、95000ppm以下、90000ppm以下、85000ppm以下、80000ppm以下、75000ppm以下、70000ppm以下、65000ppm以下、60000ppm以下、55000ppm以下、50000ppm以下、45000ppm以下、40000ppm以下、35000ppm以下、30000ppm以下、25000ppm以下、20000ppm以下、15000ppm以下、14000ppm以下、13000ppm以下、12000ppm以下、11000ppm以下、10000ppm以下、9000ppm以下、8000ppm以下、7000ppm以下、6000ppm以下、5000ppm以下、4000ppm以下、3000ppm以下、2500ppm以下、2000ppm以下、1500ppm以下、1000ppm以下、900ppm以下、800ppm以下、700ppm以下、600ppm以下、500ppm以下、450ppm以下、400ppm以下、350ppm以下、300ppm以下、250ppm以下、200ppm以下、150ppm以下、100ppm以下であってよい。
【0023】

〔アニオン〕

本開示に係る水性組成物は、さらに、水酸化物イオン以外のアニオンを含むことが好ましい。上述したとおり、気泡は、その表面に集合した水酸化物イオンによって負に帯電するため、水性組成物中で斥力によって相互に距離を保ちながら安定分散している。この水性組成物中に、負に帯電したアニオンをさらに加えることにより、気泡とアニオンとの間にも斥力がさらに発生して、気泡をより安定化させる効果が得られる。
【0024】

アニオンとしては、水酸化物イオン以外のものであれば特に限定されないが、Fイオン、Clイオン、Brイオン、Iイオン、CNイオン、NO イオン、CHCOOイオン、SiO(OH) イオン、SO 2-イオン、PO 3-イオン等を用いることができる。中でも、アニオンとしては、SiO(OH) イオンを用いることが好ましい。理由は明らかではないが、SiO(OH) イオンを用いることにより、特に気泡の安定化効果が得られる。なお、SiO(OH) イオンは、例えばメタケイ酸ナトリウム等のケイ素が溶解した溶液を、pH約8~13.5のアルカリ性に調整することによって生じるイオンである(K.Yang et al.,J. Colloid Interface Sci.,328(2008) 41-47参照)。
【0025】

アニオンの濃度としては、特に限定されないが、水性組成物の総量に対し、例えば0.01mg/L以上、0.02mg/L以上、0.05mg/L以上、0.07mg/L以上、0.1mg/L以上、0.2mg/L以上、0.5mg/L以上、0.7mg/L以上、1mg/L以上、2mg/L以上、5mg/L以上、7mg/L以上、10mg/L以上、12mg/L以上であることが好ましい。一方、アニオンの濃度としてば、例えば1000mg/L以下、700mg/L以下、500mg/L以下、200mg/L以下、100mg/L以下、50mg/L以下、20mg/L以下であることが好ましい。
【0026】

〔その他の成分〕

本開示に係る水性組成物は、上述した気泡及びアニオン以外に、各種成分を含んでいてもよい。
【0027】

水性組成物に含まれるその他の成分としては、特に限定されず、例えば、防腐剤、増粘剤、着色剤、香料等を含むことができる。
【0028】

その他の成分の含有量としては、特に限定されず、水性組成物の総量に対し、例えば60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.001質量%以下、0.0005質量%以下、0.0001質量%以下であってよい。また、その他の成分の含有量としては、0質量%超であってよい。
【0029】

本開示に係る水性組成物は、界面活性剤やアルコールを含んでいても、含まなくてもよい。これらは、生体刺激性を示すこともあるため、本開示に係る水性組成物は、界面活性剤やアルコールを含まないか、含んでいても少量であることが好ましい。ただし、本開示に係る水性組成物は、以下に示す量を超えて含むことを排除するものではない。また、「界面活性剤やアルコールを含まない」は、不可避的不純物を排除するものではない。
【0030】

具体的に、界面活性剤の含有量としては、特に限定されないが、水性組成物の総量に対し、例えば1質量%以下、0.5質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.02質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.002質量%以下、0.001質量%以下であってよい。また、界面活性剤の含有量としては、水性組成物の総量に対し、例えば0質量%以上であってよい。
【0031】

また、アルコールの含有量としては、特に限定されないが、水性組成物の総量に対し、例えば1質量%以下、0.5質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.02質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.002質量%以下、0.001質量%以下であってよい。また、アルコールの含有量としては、水性組成物の総量に対し、例えば0質量%以上であってよい。
【0032】

〔水性組成物のpH〕

水性組成物のpHとしては、特に限定されないが、例えば8.5以上であることが好ましく、8.7以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。一方、水性組成物のpHとしては、14以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましく、12.5以下であることがさらに好ましい。
【0033】

〔水性組成物の用途〕

本開示に係る水性組成物は、二酸化塩素を有効成分とする水溶液の用途として用いられている各種の用途に用いることができる。具体的には、殺微生物剤、消臭剤、洗浄剤及び漂白剤等が挙げられる。なお、「微生物」の中には、ウイルスも含まれる。また、「殺微生物」は、対象箇所に塗布や噴霧等をすることで現在存在する微生物を不活性化するだけではなく、対象箇所に塗布や噴霧等をすることで以降発生・付着し得る微生物の発生・増殖を抑制する、いわゆる「抗微生物」作用も含むものとする。
【0034】

水性組成物の性状としては、特に限定されず、液状、ジェル状であってよい。
【0035】

水性組成物の具体的な使用方法としては、当該水性組成物が対象箇所に付着すれば特に限定されるものではなく、例えば液状、ジェル状の場合には、指等の人体、家具、食器等に塗布してもよいし、液状のものをスプレーとして用いる場合には室内に噴霧してもよい。
【0036】

〔水性組成物の製造方法〕

本開示に係る水性組成物は、二酸化塩素又は二酸化塩素を含む気体を、特開2010-167404号公報に開示された装置に付すことによって得られるものである。水性組成物の平均粒子径や含有量等は、この装置の流量や処理時間等により制御できる。
【0037】

本開示に係る水性組成物は、以上の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、適宜変更を加えて実施することができる。また、上述した各構成は、互いに組み合わせ可能である。
【実施例0038】

以下、実施例を示して本開示に係る水性組成物をより具体的に説明するが、本開示に係る水性組成物は、以下の具体例に何ら限定されるものではない。
【0039】

<試料の調製>

(実施例1)

K.Yang et al.,J. Colloid Interface Sci.,328(2008) 41-47に記載された方法にしたがい、SiO(OH) の濃度が15mol/L、pHが12.3のSiO(OH) 水溶液を得た。
【0040】

次いで、特開2010-167404号公報に記載された方法にしたがい、SiO(OH) 水溶液に、二酸化塩素ガスを吹き込み、気泡の平均粒子径が400nm以下、二酸化塩素の濃度が500ppmである水性組成物試料を得た。
【0041】

(実施例2)

実施例1の水性組成物を、水で希釈して二酸化塩素の濃度が200ppmの水性組成物試料を得た。
【0042】

なお、二酸化塩素の濃度は、WAK-ClO?(共立理化学研究所製)により測定した(以下においても同様である)。
【0043】

<保存安定性試験>

〔試験方法〕

500mLの飲料用ペットボトルに、実施例1の試料を充填してキャップをし、197日室温下に置いた。実施例1の試料の製造直後に、試料の二酸化塩素濃度及びpHを測定した。また、60日置いた後の試料について、二酸化塩素濃度とpHを測定した。さらに、197日置いた後の試料について、二酸化塩素濃度を測定した。なお、pHは、pH試験紙 ロールタイプ(ADVANTEC製)を用いて測定した。
【0044】

〔試験結果〕

下記表1に、実施例1の各時点の二酸化塩素濃度及びpHを示す。
【0045】

【表1】
【0046】

表1より、長期間室温下においても、二酸化塩素の濃度とpHが一定に保たれることがわかった。
【0047】

<微生物試験>

〔試験方法〕

試験対象の菌として、以下[1]~[5]に示す菌を用いた。以下、「菌1」~「菌5」と呼ぶ。

[1]Bacillus subtillis NBRC3134(枯草菌)

[2]Escherichia Coli NBRC 3972(大腸菌)

[3]Escherichia Coli ATCC(大腸菌、血清型O157:H7、ベロ毒素I及びII型産生株)

[4]Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275(緑膿菌)

[5]Staphylococcus aureus subsp.aureus NBRC 12732 (黄色ブドウ球菌)
【0048】

菌1については、ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地(栄研化学株式会社製)で、35℃±1℃の温度で、7~10時間培養した試験菌の菌体を生理食塩水に懸濁させた後、70℃±1℃、20分間加熱し、栄養細胞を死滅させた。このようにして得られた懸濁液を遠心分離して上澄み液を除いた後、菌体を生理食塩水に懸濁させ、菌数が約10/mLとなるように調整して得た芽胞液を菌液として用いた。
【0049】

菌2~菌5については、普通ブイヨン培地(栄研化学株式会社製)で30℃±1℃、24時間振とう培養(約100rpm/min)した。得られた培養液を遠心分離(3000rpm/min、10分間)し、上澄み液を取り除いた後、生理食塩水に懸濁させた。その後、遠心分離(3000rpm/min、10分間)し、上澄み液を取り除いた後、菌体を生理食塩水に懸濁させ、菌数が10~10/mLとなるように調整し、菌液として用いた。
【0050】

菌1、菌4、菌5の菌液を用いる場合、実施例1の水性組成物試料49mLに、1mLの菌液を添加し、菌2、菌3の菌液を用いる場合、実施例1の水性組成物試料10mLに、0.1mLの菌液を添加し、調製した混合液を、20℃±1℃の条件で保存した。添加から10秒後、30秒後、60秒後、5分後及び10分後に、混合液をSCDLP寒天培地(日本製薬株式会社製)に移し10倍に希釈した。
【0051】

次いで、菌1、菌3、菌4及び菌5の菌液を用いる場合は、標準寒天培地(栄研化学株式会社)、混釈平板培養法、30℃±1℃、3日間の条件で混合液中の生菌数を測定した。また、菌2はSCDLP寒天培地(日本製薬株式会社製)、混釈平板培養法、30℃±1℃、3日間の条件で混合液中の生菌数を測定した。なお、以上の操作をそれぞれ2つの検体(検体1、2)で行った。
【0052】

〔試験結果〕

結果を下記表2に示す。なお、「<10」で示した箇所は検出限界未満を示す。また、数値は、混合液の生菌数を測定し、混合液1mLあたりに換算した菌数である。
【0053】

【表2】
【0054】

<ウイルス試験>

〔試験方法〕

試験ウイルスとしてFeline Calicivirus F-9 ATCC VR-782(ネコカリシウィルス)株を用いた。試験ウイルス株をネコ腎臓由来株化細胞CRFK細胞(大日本製薬株式会社製)に接種させ、ウシ胎児血清フリーのMinimum Essential Medium Eagle with Earle’ssalt(MEMフリー)で34℃、48時間培養した後、750G、15分間遠心分離を行い、その上澄み液のウイルス感染価が10~10PFU/mLであることをプラーク法により確認し、ウイルス液とした。
【0055】

なお、ここでのウイルス感染価の測定は、具体的に、以下の方法で行った。6穴プラスチックプレートにCRFK細胞を撒き、37℃のCOインキュベーターで3~5日間培養を行った後、細胞の培養液を除去して10倍階段希釈したウイルス液を2穴に0.1mLずつ接種し、これをCOインキュベーターで34℃、3日間培養した。培養後、各穴に3%ホルマリンを2mLずつ加え細胞を固定させた後、ホルマリンを除去して流水で寒天培地を取り去り0.038%メチレンブルー液で染色し水洗いした。その後出現したプラックを数え、この数値をウイルス感染価として算出した。
【0056】

一方、BSA(牛胎児血清)濃度が10%のリン酸緩衝生理食塩水溶液(検体1)及び2%のリン酸緩衝生理食塩水溶液(検体2)を作製して、これらのBSA溶液とリン酸緩衝食塩水にウイルス液を加えてイーグルMEM培地を使用して細胞増殖培地とした。試験管に実施例1の試料0.9mLとウイルス液0.1mLを混合して室温(25℃)で10秒間、30秒間、1分間、5分間及び10分間反応させた後、試験液0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液0.1mLを添加した。後のウイルス液はMEMフリーで10倍希釈し、Behrens-Kaerber法により感染価(TCID50,Median Tissue Culture Infection Dose,50%組織培養感染量)を算出した。なお、対照としてリン酸緩衝生理食塩水を用いた。
【0057】

〔試験結果〕

結果を下記表3に示す。なお、「<1.5」で示した箇所は検出限界未満を示す。
【0058】

【表3】
【0059】

<空間除菌試験>

〔試験方法〕

実施例1の水性組成物試料を、超音波加湿装置(FT-M43、ユーキャン株式会社製)の貯水タンクに注入し、約3L/hの噴射能力の超音波加湿器を用いて、10分の噴霧を行い浮遊菌の存在を確認した。噴霧量は、1分間で約30mあたり約50mLとした。
【0060】

試験場所は、東京豊洲市場内の株式会社丸中中央魚類会長室、同社社長室、同社大会議室、株式会社千代田水産応接室、同社会議室及び豊洲市場内食堂内3箇所に設定した。
【0061】

各箇所において、水性組成物の噴霧前後それぞれで、標準寒天培地とポテトデキストロース寒天培地を20分間開放して落下菌、浮遊菌の存在を確認した。
【0062】

〔試験結果〕

結果を下記表4に示す。
【0063】

【表4】
【0064】

<靴底拭きマットの拭き取り試験>

〔試験方法〕

東京都豊洲市場の食堂入り口の靴底拭きマットの拭き取り試験を行った。マットの中心に近い箇所、約10cm×10cmの拭き取りを行い、一般生菌数、大腸菌数及び黄色ブドウ球菌について菌数を測定した。拭き取りを行った直後、実施例2の水性組成物をトリガータイプのスプレーで10プッシュ(約5mL)噴霧して30秒後に再度拭き取りを行った。噴霧前後それぞれの菌数を測定した。なお、菌数の測定は、「食品衛生検査指針 微生物編 2018」にしたがい行った。
【0065】

〔試験結果〕

結果を下記表5に示す。なお、「<300」で示した箇所は検出限界未満を示す。
【0066】

【表5】
【0067】

<手指の拭き取り試験(1)>

〔試験方法〕

2人の被験者について、手指の拭き取りを行った。次いで実施例1の水性組成物又はアルコール系除菌剤(アルコール70%)を5プッシュ噴霧(約2.5mL)した後、手を満遍なく1分間弱擦り合わせて、再度拭き取りを行った。噴霧前後それぞれの菌数を測定した。なお、菌数の測定は、「食品衛生検査指針 微生物編 2018」にしたがい行った。
【0068】

〔試験結果〕

結果を下記表6に示す。
【0069】

【表6】
【0070】

<手指の拭き取り試験(2)>

〔試験方法〕

10人の被験者について、手指の拭き取りを行った。次いで実施例1の水性組成物又はアルコール系除菌剤(アルコール70%)を4プッシュ噴霧(約2.0mL)した後、手を満遍なく1分間弱擦り合わせて、再度拭き取りを行った。噴霧前後それぞれの菌数を測定した。なお、菌数は、キッコーマン社製ルミアスターPD30を用いて、ATP拭き取り検査(A3法)にしたがい測定した。
【0071】

〔試験結果〕

【表7】
【0072】

<ウサギを用いる眼刺激性試験>

〔試験方法〕

OECD Test Guideline 405に準拠しウサギを用いる眼刺激性試験を行った。
【0073】

具体的に、ウサギ3匹の片眼に、実施例1の水性組成物を0.1mL点眼した。本試験は、一般社団法人日本食品分析センターに委託し、日本白色種雄ウサギを1週間以上の予備飼育を行って一般状態に異常のないことを確認した後、3匹を試験した。
【0074】

ウサギはFRP製ケージに個別収容して室温22℃±2℃照明時間12時間/日とした飼育室において飼育した。飼料はウサギ・モルモット用固形飼料(LRC4、オリエンタル酵母工業株式会社製)を制限給与し、飲料水は水道水を自由摂取させた。各ウサギの両眼の前眼部を試験開始当日に検査し、異常のないことを確認した。体重測定後、各試験動物の片眼結膜嚢内に検体を0.1mL点眼し、約1秒間上下眼瞼を緩やかに合わせ保持した。他眼は無処置の対照とした。点眼から1時間後、24時間後、48時間後及び72時間後に、スリットランプ(×10)(株式会社オーヒラ製)を用いて角膜虹彩、結膜等の観察を行い、Draize試験に準拠して眼刺激性の程度を採点した。また、点眼から1時間後を除く各観察時間にフルオレセインナトリウムを用いて角膜上皮障害の有無と程度を詳細に観察した。
【0075】

〔試験結果〕

3匹のウサギ全てについて、観察期間を通して、試験眼及び対照眼に刺激反応は確認されず、観察期間中のDraize試験によるスコアは0であった。また、3匹のウサギ全てについて、観察期間を通して、フルオレセインナトリウムによる染色は認められなかった。
【0076】

<ウサギを用いる皮膚一次刺激性試験>

〔試験方法〕

上述した眼刺激性試験と同様に、OECD Test Guideline 405に準拠し、ウサギを用いる皮膚一次刺激性試験を行った。
【0077】

具体的には、3匹のウサギの体幹背部被毛を試験の約24時間に剪毛した。試験動物1匹に付き約6cmの面積で4か所を設定し、そのうち2箇所には18ゲージの注射針を用いて真皮まで達しないように角化層に井げた状のすり傷をつけ(有傷皮膚)、他の2か所を無処理(無傷皮膚)とした。
【0078】

約2cm×3cmに裁断したガーゼパッチに実施例1の水性組成物試料0.5mLを均一に塗布し、無傷及び有傷皮膚の各1箇所ずつに貼り付けた後、マルチフィックス・ロールで固定した。また、ガーゼパッチが皮膚と接触するようにさらにサージカルテープ(スリーエムヘルスケア株式会社製)で保持した。残りの無傷及び有傷皮膚は対照とした。
【0079】

ガーゼパッチを24時間貼り付けた後、ガーゼパッチを取り除き適応部位を注射用水で清拭した。ガーゼパッチを取り除いてから1時間後、24時間後、48時間後及び72時間後に観察を行い、刺激性を確認した。評価方法は、ISO 10993-10:2010 Biological evaluation of medical devices-Part 10に準拠した。
【0080】

〔試験結果〕

全てのウサギの有傷皮膚及び無傷皮膚においても、紅斑及び痂皮の形成も、浮腫の形成も確認されず、ISO 10993-10:2010の一次刺激性インデックスは0であった。
【0081】

<ラットを用いる急性経口毒性試験>

〔試験方法〕

上述した眼刺激性試験及び皮膚一次刺激性試験と同様に、OECD Test Guideline 405に準拠し、ラットにおける急性経口毒性試験を調べた。
【0082】

具体的には、実施例1の水性組成物試料を投与する試験群及び対照として注射用水を投与する対照群を設定し、各群について雌雄のラットをそれぞれ5匹、計10匹を用いた。投与前に、約17時間ラットを絶食させた。体重を測定した後、試験群には実施例1の水性組成物試料、対照群には注射用水をそれぞれ20mL/kgの投与容量で胃ゾンデを用いて強制単回経口投与した。観察期間は14日間として、投与日は頻回、翌日から1日1回観察。投与後7日及び14日に体重を測定してLeveneの検定を行った。分散に差が認められなかったため、Studentのt-検定により群間の比較を行った。有意水準は5%とした。観察期間終了後にラット全てを剖検した。
【0083】

〔試験結果〕

その結果、雄雌ともにいずれの試験群及び対照群においても、観察期間中に、死亡例、異常は確認されなかった。雄雌ともにいずれの試験群及び対照群の間で、体重差に差異は認められなかった。また、雄雌ともにいずれの試験群及び対照群においても、剖検において、全てのラットに異常は確認されなかった。