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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085156
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/86 20060101AFI20220601BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A01D34/86
A01D34/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196680
(22)【出願日】2020-11-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第6回鉄道技術展2019/第3回橋梁・トンネル技術展、幕張メッセ 5・6・7・8ホール(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)、令和1年11月27日~29日
(71)【出願人】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509304922
【氏名又は名称】両備ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】特許業務法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士
(72)【発明者】
【氏名】守分 巧
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083CA28
2B083CB01
2B083DA03
2B083DA04
2B083DA08
2B083HA53
2B083HA59
(57)【要約】
【課題】 エンジンを駆動源とする草刈り機において、草刈り機が左右方向に傾斜する場合だけでなく、前後方向に傾斜する場合でも、エンジンをほぼ水平状体に保つことができる草刈り機を提供することを課題とする。
【解決手段】 本体と、エンジンと、少なくとも左右一対の駆動輪と、草刈り刃を作動させる草刈り刃動力源を備える草刈り機であって、前記エンジンの回転出力軸の回転を液圧又は電力に変換する変換機構と、前記変換機構からの出力によって駆動され、前記駆動輪を回転させる回転駆動源と、前記エンジンと前記変換機構とを、一体的に、前記本体に対し、少なくとも前記本体の左右方向及び前後方向に傾動させる傾動機構とを備える草刈り機を提供することによって上記課題を解決する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、エンジンと、少なくとも左右一対の駆動輪と、操舵輪と、草刈り刃を作動させる草刈り刃動力源を備える草刈り機であって、
さらに、前記エンジンの回転出力軸の回転を液圧又は電力に変換する変換機構と、前記変換機構から出力される液圧又は電力によって駆動され、前記駆動輪を回転させる回転駆動源と、
前記エンジンと前記変換機構とを、一体的に、前記本体に対し、少なくとも前記本体の左右方向軸の回り及び前後方向軸の回りに傾動させる傾動機構とを備える草刈り機。
【請求項2】
前記傾動機構が、前記エンジンと前記変換機構とを、一体的に、前記本体に対し、前記本体の左右方向軸の回り及び前後方向軸の回りに加えて、前記本体の斜め方向軸の回りにも傾動させることができる傾動機構である請求項1記載の草刈り機。
【請求項3】
前記変換機構が液圧ポンプ又は発電機であり、前記回転駆動源が液圧モータ又は電動モータである請求項1又は2記載の草刈り機。
【請求項4】
前記草刈り刃動力源が、前記変換機構から出力される液圧又は電力によって駆動される液圧モータ又は電動モータであるか、前記本体に搭載される電力源から供給される電力によって駆動される電動モータである請求項1~3のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項5】
前記本体又は前記エンジン又は前記変換機構の傾きを検知する傾斜センサを備え、前記傾斜センサの出力に基づいて、前記エンジンが略水平状態を維持するように前記傾動機構を制御する制御手段を備えている請求項1~4のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項6】
前記左右一対の駆動輪が、相対的に接地幅の広い左側又は右側駆動輪と、相対的に接地幅の狭い右側又は左側駆動輪を組合わせた一対の駆動輪である請求項1~5のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項7】
前記左右一対の駆動輪を回転させる回転駆動源が、左右いずれか一方の駆動輪を、他方の駆動輪よりも大きな回転トルクで回転駆動する手段を備えている請求項1~6のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項8】
前記本体が、少なくとも前記操舵輪を備える前側本体と、少なくとも前記左右一対の駆動輪と前記エンジンを備える後側本体とから構成され、前記前側本体と前記後側本体とを着脱自在に連結する連結機構を備えている請求項1~7のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項9】
前記操舵輪が左右一対の操舵輪であり、前記駆動輪とは独立して、前記本体の前後方向軸の回りに傾動可能に取り付けられている請求項1~8のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項10】
外部からの制御信号及び/又は位置情報信号を受信する受信手段と、受信した制御信号及び/又は位置情報信号に基づいて、前記エンジン、前記変換機構、前記回転駆動源、前記草刈り刃動力源、又は前記傾動機構の動作、又は前記操舵輪の向きを制御する制御手段を備えている請求項1~9のいずれかに記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は草刈り機に関し、詳細には、鉄道線路周辺や道路脇、堤防脇の法面などの傾斜地での草刈りに適した草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から提案されている草刈り機は、4サイクルエンジンなどのエンジンを駆動源としているものが多い。ただし、エンジンは、水平から傾くとエンジンオイルなどの回りが悪くなり、エンジンの焼付や、燃料供給不足によるエンジンストップなどの不具合が発生する恐れがある。
【0003】
このような欠点を解決すべく、エンジンを草刈り機本体に対しエンジンの出力軸又は出力軸と平行な軸の回りに傾動可能に支持し、草刈り機が傾斜地で傾いた場合でも、その傾きを相殺するようにエンジンの姿勢を変化させることで、エンジンをほぼ水平状態に維持することができる草刈り機が提案されている(特許文献1~3)。
【0004】
しかし、上記従来の草刈り機は、草刈り機が進行方向左右に傾斜した場合には、エンジンを出力軸又は出力軸と平行な軸の回りに傾動させてほぼ水平に維持することができるものの、草刈り機が進行方向に対して前後方向に傾いた場合にはエンジンの姿勢を変化させてエンジンを水平状態に維持することができないという欠点を有している。
【0005】
このため、従来の例草刈り機を用いて、例えば鉄道線路の法面のような傾斜地の草刈りを行う場合には、草刈り機を法面の傾斜方向と直交する方向に進行させ、左右には傾いても、前後方向には傾かないような走行ルートを選ばなければならないという制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-312947号公報
【特許文献2】特許第5650972号公報
【特許文献3】特開2017-87783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の草刈り機の状況に鑑みて為されたもので、エンジンを駆動源とする草刈り機において、草刈り機が進行方向左右に傾く場合だけでなく、それ以外の方向に傾く場合でも、エンジンをほぼ水平状態に保つことができる草刈り機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、鋭意研究と試行錯誤を重ねた結果、本発明者らは、従来の草刈り機において、エンジンをその回転出力軸又は回転出力軸と平行な軸の回りにしか傾動可能に支持することしかできなかったのは、エンジンの回転出力を機械的な動力伝達機構を介して駆動輪に伝達していたためであり、エンジンの回転出力軸と駆動輪との機械的で直接的な動力伝達関係を断ち切ることで、草刈り機本体に対するエンジンの傾動方向の自由度を飛躍的に高めることができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、本体と、エンジンと、少なくとも左右一対の駆動輪と、操舵輪と、草刈り刃を作動させる草刈り刃動力源を備える草刈り機であって、さらに、前記エンジンの回転出力軸の回転を液圧又は電力に変換する変換機構と、前記変換機構から出力される液圧又は電力によって駆動され、前記駆動輪を回転させる回転駆動源と、前記エンジンと前記変換機構とを、一体的に、前記本体に対し、少なくとも前記本体の左右方向軸の回り及び前後方向軸の回りに傾動させる傾動機構とを備える草刈り機を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0010】
さらに、本発明は、前記傾動機構が、前記エンジンと前記変換機構とを、一体的に、前記本体に対し、前記本体の左右方向軸の回り及び前後方向軸の回りに加えて、前記本体の斜め方向軸の回りにも傾動させることができる傾動機構である草刈り機を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0011】
なお、本明細書でいう「左右方向軸の回りの傾動」とは、いわゆるピッチングに相当する傾動を意味し、「前後方向軸の回りの傾動」とは、いわゆるローリングに相当する傾動を意味している。また、「斜め方向軸の回りの傾動」とは、文字どおり、左右方向軸と前後方向軸の間に想定される斜め方向を向いた軸の回りの傾動をいうものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る草刈り機によれば、鉄道線路周辺の法面や、道路脇又は堤防脇の法面などのような傾斜地の草刈りであっても、エンジンの傾きによる焼き付きや燃料供給不足を懸念することなく、草刈り機を走行させて草刈りを行うことができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の草刈り機の一例を示す平面図である。
図2】本発明の草刈り機の一例を示す側面図である。
図3】後側本体の部分だけを取り出して示す部分平面図である。
図4図3のx-x’断面図である。
図5】第一パレットの傾動状態の一例を示す図である。
図6図3のy-y’断面図である。
図7】第二パレットの傾動状態の一例を示す図である。
図8】前側本体に運搬用のハンドルを取り付けた状態を示す図である。
図9】後側本体に運搬用のハンドルを取り付けた状態を示す図である。
図10】本発明の草刈り機の他の一例を示す平面図である。
図11】本発明の草刈り機の更に他の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示されるものに限られないことは勿論である。
【0015】
図1は本発明に係る草刈り機の一例を示す平面図、図2は側面図である。図1及び図2において、1は本発明に係る草刈り機である。草刈り機1は、フレーム状の本体2を有している。本体2は前側本体2aと後側本体2bの2つの部分から構成されており、前側本体2aと後側本体2bとは、着脱自在な連結機構3a、3b、3c、3dによって、着脱自在に連結されている(但し、連結機構3cは図1及び図2には現れていない。)。なお、図1及び図2に示す草刈り機1は、着脱自在に連結された前側本体2aと後側本体2bとから構成されているが、前側本体2と後側本体2bとが一体的に構成され、一つの本体2を形成していても良いことは勿論である。
【0016】
4a、4bは左右一対の駆動輪、5a、5bは操舵輪である。6はエンジンであり、7はエンジン6に付随する燃料タンク等を含む付随ユニットである。8はエンジン6の回転出力軸であり、回転出力軸8は変換機構9と機械的に連結されている。
【0017】
変換機構9は、エンジン6の回転出力軸8の回転を液圧又は電力に変換する装置であり、回転出力軸8の回転を液圧又は電力に変換することができるものであればどのような機構、構造の装置であっても良い。典型的には、回転出力軸8の回転を油圧などの液圧に変換する油圧ポンプなどの液圧ポンプ、回転出力軸8の回転を電力に変換する発電機を変換機構9として用いるのが好ましい。
【0018】
10a、10bは接続回路、11a、11bは、それぞれ駆動輪4a及び4bを回転駆動する回転駆動源である。回転駆動源11a、11bは、それぞれ接続回路10a及び10bを介して、変換機構9に接続されている。この接続回路10a、10bによって、変換機構9で発生される液圧又は電力は、回転駆動源11a及び11bに供給され、駆動輪4a及び4bが回転駆動されることになる。
【0019】
例えば、変換機構9が液圧を発生する液圧ポンプである場合には、回転駆動源11a、11bとしては、液圧で回転駆動される油圧モータなどの液圧モータが用いられ、その場合、接続回路10a、10bとしては、例えばホースなどの液圧を伝達するフレキシブルな管路が用いられる。なお、回転駆動源11a、11bである液圧モータから、変換機構9である液圧ポンプに戻る作動液体の復路は図示していない。
【0020】
一方、変換機構9が電力を発生する発電機である場合には、回転駆動源11a、11bとしては、電力で回転駆動される電動モータが用いられ、その場合、接続回路10a、10bとしては、電力を伝達する通常の手段である電気導線が用いられる。
【0021】
いずれにせよ、本発明に係る草刈り機1においては、エンジン6の出力は、そのまま機械的な動力伝達機構を介して駆動輪4a、4bに伝えられるのではなく、変換機構9において一旦液圧又は電力に変換された後、ホースや電気導線などのフレキシブルな接続回路10a、10bを介して、エンジン6とは別に駆動輪を回転駆動するために設けられた回転駆動源11a、11bに伝えられ、駆動輪4a、4bを回転させる。このため、本発明の草刈り機1においては、エンジン6と駆動輪4a、4bとの位置関係を、エンジン6の回転出力軸8の向きに関係なく、自由に変更することができる。このため、草刈り機1が回転出力軸8と平行な軸の回りに傾いた場合だけでなく、それ以外の軸の回りに傾いた場合であっても、本体2に対するエンジン6の姿勢を自在に変化させて、エンジン6を水平状態に維持することが可能となる。
【0022】
駆動輪4a、4bを回転駆動する回転駆動源11a、11bには、駆動輪4a、4bの回転方向を切り換える回転方向切り換え手段、回転速度を調節する速度調節手段、及び回転トルクを調節する回転トルク調節手段が設けられており、これらを適宜操作するか、外部からの信号で遠隔操作することによって、草刈り機1を前進又は後進させたり、走行速度を変更したり、作業場所となる法面の傾斜角度や地面の状態などに応じて、駆動輪4a、4bの回転トルクを変えて草刈り機1の安定走行を図ることが可能である。
【0023】
なお、駆動輪4a、4bを回転させる回転トルクは、左右の駆動輪4a、4bで別々に調節できるようにしておくのが望ましい。駆動輪4a、4bの回転トルクを別々に調節することができる場合には、本発明の草刈り機1が法面を前後方向軸の回りに傾きながら走行するとき、傾きの下側に位置する駆動輪の回転トルクを、傾きの上側に位置する駆動輪の回転トルクよりも大きくすることによって、草刈り機1が傾斜方向にずり落ちることを有効に防止し、目的とする方向に進行させることができるという利点が得られる。回転トルクに代えて、傾きの下側に位置する駆動輪の接地幅を、傾きの上側に位置する駆動輪の接地幅よりも大きくすることによっても同様の効果、利点が得られる。
【0024】
12a、12bは草刈り刃、13a及び13bは、草刈り刃12a及び12bをそれぞれ作動させる草刈り刃動力源である。本例において、草刈り刃12a、12bは回転することによって草刈りを行うタイプの草刈り刃であるが、回転以外の動作で草刈りを実行する草刈り刃であっても良い。
【0025】
本例において、草刈り刃動力源13a、13bは電動モータであり、それぞれ接続線14a、14bを介して、電力源であるバッテリー15a、15bと接続されている。ただし、草刈り刃動力源13a、13bは電動モータに限られず、草刈り刃12a、12bを作動させて草刈りを行うことができるものであればどのような動力源を用いても良く、回転駆動源11a、11bと同様に、油圧モータ等の液圧モータであっても良い。
【0026】
なお、変換機構9が発電機である場合、草刈り刃動力源13a、13bを駆動する電力は、バッテリー15a、15bからではなく、変換機構9から供給を受けるようにしても良い。また、変換機構9が油圧ポンプなどの液圧ポンプである場合、草刈り刃動力源13a、13bとして液圧モータを用い、それを駆動する液圧を変換機構9から供給を受けるようにしても良い。
【0027】
16は操舵機構であり、図示しないアクチュエータと動力源を備えており、人による操作及び/又は外部からの信号に基づいて作動し、操舵輪5a、5bの向きを変え、草刈り機1の進行方向を適宜変化させることができる。
【0028】
17は制御装置である。制御装置17は、外部からの制御信号及び位置情報信号を受信する手段を備えている。制御装置17は、適宜の接続手段を介して、エンジン6、変換機構9、回転駆動源11a、11b、草刈り刃動力源13a、13b、操舵機構16と接続されている。これにより、制御装置17は、外部からの制御信号、位置情報信号、或いは自身の判断に基づいて、接続されている各部材の動作を制御して、草刈り機1の運転をコントロールすることができる。
【0029】
図3は、後側本体2bの部分だけを取り出して示す部分平面図である。図中、2bsは後側本体2bのメインフレーム間に掛け渡されたサブフレームである。図3において、18は第一パレットであり、第一パレット18は、その一側辺(図中、上側側辺)に取り付けられた連結体19を介して、第一傾動軸ax1に連結されている。20a、20bは、第一傾動軸ax1をその両端部でそれぞれ軸支する軸受機構であり、図示しない駆動装置を備えている。人による操作又は制御信号によって、軸受機構20a、20bの駆動装置は作動し、連結体19及び第一パレット18を第一傾動軸ax1とともに第一傾動軸ax1の軸芯の回りに傾動させることができる。
【0030】
図3に示すとおり、第一傾動軸ax1は、エンジン6の回転出力軸8と平行であるので、軸受機構20a、20bの駆動装置が作動するとき、第一パレット18は、後側本体2bに対して、エンジン6の回転出力軸8と平行な軸の回りに傾動することになる。第一パレット18の上には第二パレット21が存在し、かつ、第二パレット21の上には、後述するとおり、エンジン6が配置されている。そして、本例においては、第一傾動軸ax1、及びエンジン6の回転出力軸8は、共に、本体2の前後方向軸と平行であるので、軸受機構20a、20bとその駆動装置は、連結体19及び第一パレット18とともに、エンジン6及び変換機構9を、本体2の前後方向軸の回りに傾動させる傾動機構に相当する。
【0031】
21は、第一パレット18上に配置されている第二パレットであり、第二パレット21の上にはエンジン6及び付随ユニット7が取り付けられている。第二パレット21は、その一側辺(図中、左側側辺)に取り付けられた連結体22を介して、第二傾動軸ax2に連結されている。23a、23bは、第二傾動軸ax2をその両端部でそれぞれ軸支する軸受機構であり、第一パレット18上に取り付けられており、図示しない駆動装置を備えている。人による操作又は制御信号によって、軸受機構23a、23bの駆動装置は作動し、連結体22及び第二パレット21を、第二傾動軸ax2とともに第二傾動軸ax2の軸芯の回りに傾動させることができる。
【0032】
図3に示すとおり、第二傾動軸ax2は、エンジン6の回転出力軸8と直交しているので、軸受機構23a、23bの駆動装置が作動するとき、第二パレット21は、第一パレット18に対して、エンジン6及び付随ユニット7を載せたまま、エンジン6の回転出力軸8と直交する軸の回りに傾動することになる。本例においては、第二傾動軸ax2は、本体2の左右方向軸と平行であるので、軸受機構23a、23bとその駆動装置は、連結体22及び第二パレット21とともに、エンジン6及び変換機構9を、本体2の左右方向軸の回りに傾動させる傾動機構に相当する。
【0033】
図4は、図3のx-x’断面図である。図4に見られるとおり、後側本体2bのサブフレーム2bs上には、その一側辺が連結体19を介して第一傾動軸ax1に取り付けられた第一パレット18が、軸受機構20a、20bに軸支された状態で取り付けられている。
【0034】
図5は、第一パレット18の傾動状態の一例を示す図である。図5に示すとおり、草刈り機1が傾斜のある法面Eを傾斜方向と直交する方向に走行すると、駆動輪4a、4bは法面Eの傾斜に従って進行方向に向かって左右方向(すなわち、本体2の前後方向軸の回り)に傾くが、このとき、第一パレット18を支える軸受機構20a、20bに備えられている駆動装置を作動させると、図中矢印で示すとおり、第一パレット18を後側本体2bに対して第一傾動軸ax1の軸芯の回りに傾動させ、第一パレット18を、その上に配置されている第二パレット21及びエンジン6及び付随ユニット7とともに水平状態に維持することができる。
【0035】
図6は、図3のy-y’断面図である。図4に見られるとおり、第一パレット18上には、その一側辺が連結体22を介して第二傾動軸ax2に取り付けられた第二パレット21が、軸受機構23a、23bに軸支された状態で取り付けられている。
【0036】
図7は、第二パレット21の傾動状態の一例を示す図である。図7に示すとおり、草刈り機1が傾斜のある法面Eを下る方向に走行すると、草刈り機1の本体2は後側本体2bを含めて前後方向の前下がり(すなわち、本体2の左右方向軸の回り)に傾くが、このとき、第二パレット21を支える軸受機構23a、23bに備えられている駆動装置を作動させると、図中矢印で示すとおり、第二パレット21を第一パレット18に対して第二傾動軸ax2の軸芯の回りに傾動させ、第二パレット21の上に配置されているエンジン6を、付随ユニット7及びエンジン6の回転出力軸8と連結されている変換機構9とともに水平状態に維持することができる。
【0037】
なお、第一パレット18及び第二パレット21を草刈り機1の傾きに抗して水平状態へと傾動駆動する駆動装置としては、電動モータと歯車機構を組合わせた駆動装置や、電動シリンダー、油圧シリンダー等の適宜の駆動装置を用いることができる。また、これら駆動装置を作動させる動力は、前述した変換機構9から液圧又は電力の形態で供給を受けても良いし、バッテリー15a又は15bから、或いはその他の電源装置から供給を受けるようにしても良い。いずれにせよ、これらの駆動装置が、エンジン6と変換機構9とを、一体的に、本体2に対し、少なくとも本体2の左右方向軸の回り及び前後方向軸の回りに傾動させる傾動機構ということになる。
【0038】
なお、以上説明した例では、第一パレット18及び第二パレット21は、それぞれが、共に、その一側辺に近い箇所に位置する第一傾動軸ax1及び第二傾動軸ax2の軸芯の回りに傾動自在に軸支されているが、第一傾動軸ax1は第一パレット18のほぼ中央にエンジン6の回転出力軸8と平行に設けても良く、同様に、第二傾動軸ax2は、第二パレット21のほぼ中央にエンジン6の回転出力軸8と直交する方向に設けても良い。
【0039】
また、第一パレット18と第二パレット21という2つのパレットを設ける代わりに、下面に半球状の凸部を有する単一のパレットを用意し、この半球状の凸部と嵌合する半球状の凹部を後側本体2bのフレームに設け、この半球状の凹部を、前記パレットの下面に設けられた前記半球状の凸部と係合させることによって、後側本体2bに対して、単一のパレットを傾動自在に取り付けるようにしても良い。なお、半球状の凹部、凸部の関係は逆であっても良く、単一のパレットの下面に半球状の凹部を設け、後側本体2bにそれと係合する半球状の凸部を設けるようにしても良い。
【0040】
この場合、パレットは、互いに摺動自在に係合する半球状の凹凸部によって後側本体2bに支持されるので、本体2に対し、360度、いずれの方向にも傾動可能である。例えば、当該パレットの四隅と後側本体2bとの間に電動シリンダー又は油圧シリンダーなどの適宜の駆動手段を配置しておき、これらを適宜伸縮作動させることによって、当該パレットを草刈り機1の左右方向軸の回り又は前後方向軸の回りはもとより、右斜め方向軸の回り、左斜め方向軸の回りにも傾動させて、草刈り機1がどの方向に傾いた場合でも、パレット上に設置されているエンジン6を、付随ユニット7及び変換機構9とともに、常に水平状態に維持することができる。
【0041】
なお、上記パレットを傾動させる駆動手段の駆動力は、適宜の装置から得ることができる。例えば、当該駆動手段が油圧シリンダーであって、変換機構9が油圧ポンプである場合には変換機構9から駆動力となる油圧を得れば良く、当該駆動手段が電動シリンダーであって、変換機構9が発電機である場合には、変換機構9又は適宜のバッテリーから駆動力となる電力を得れば良い。
【0042】
また、上記パレットを傾動させる電動シリンダー又は油圧シリンダーなどの駆動手段は人力で操作しても良いが、草刈り機1に搭載されている他の機器と同様に、制御装置17の自らの判断によって、或いは外部から受信した制御信号によって制御、操作されるのが望ましい。
【0043】
いずれにせよ、エンジン6を変換機構9とともに本体2の左右方向軸の回り、前後方向軸の回り、さらには斜め方向軸の回りに傾動させる傾動機構の具体的な構成、構造には特段の制限はなく、どのような構成、構造、メカニズムで所期の傾動動作を実現しても良い。
【0044】
好適な場合、本発明に係る草刈り機1は、本体2又はエンジン6又は変換機構9の傾きを検知する傾斜センサを備えている。前記傾斜センサからの出力は制御装置17に送られ、制御装置17から、上記パレットを傾動させる傾動機構の制御信号として傾動機構に送られる。これにより、草刈り機1が前後、左右、或いは他の方向に傾斜する場合でも、エンジン6は、略水平状態を維持するようにその姿勢が制御される。なお、この傾斜センサとその出力信号に基づくエンジン6の姿勢制御は、先に述べた第一パレット18及び第二パレット21を備える草刈り機1においても同様である。
【0045】
図8及び図9は、作業終了後等に、本発明に係る草刈り機1を前側本体2aと後側本体2bとに分解し、それぞれに運搬用のハンドル24又は25を取り付けた状態を示している。運搬用のハンドル24及び25には、それぞれ、前側本体2a又は後側本体2bに残されている連結機構3a~3dの一部と係合する連結機構が設けられているので、ハンドル24及び25の前側本体2a及び後側本体2bへの取り付け、取り外しは容易であり、かつ確実である。
【0046】
このように本発明に係る草刈り機1の本体2は、前側本体2aと後側本体2bとから構成され、両者は連結機構3a~3dによって着脱自在に連結されているので、草刈り作業現場での組立も容易である。しかも、草刈り作業後は、前側本体2と後側本体2bとに分解し、さらにハンドル24及び25を取り付けることによって、操舵輪5a、5b又は駆動輪4a、4bを車輪として、リヤカーの要領で所望の場所へと運搬することができる。
【0047】
図10は、本発明に係る草刈り機の他の一例を示す平面図である。本例の草刈り機1は、前側本体2aと後側本体2bとが、連結機構3a~3dではなく、回転連結機構26によって連結されている点が、これまでに述べた例とは異なっている。前側本体2aと後側本体2bとが、回転連結機構26によって本体2の前後方向軸の回りに相対的に回転自在に連結されているので、左右一対の操舵輪5a、5bは、駆動輪4a、4bとは独立に、前側本体2aごと、本体2の前後方向軸の回りに傾動可能である。
【0048】
このように、左右一対の操舵輪5a、5bが、駆動輪4a、4bとは独立に、前側本体2aごと、本体2の前後方向軸の回りに傾動可能であるので、例えば、本発明に係る草刈り機1が平らな場所から法面へと差し掛かるときにも、前方に位置する操舵輪5a、5bだけが法面の傾斜に対応して、本体2の前後方向軸の回りに傾動して、法面と接触することができるので、操舵輪5a、5b、及び駆動輪4a、4bの全輪が地面と接触し、草刈り機1の安定走行が保たれるという利点がある。
【0049】
図11は、本発明に係る草刈り機のさらに他の一例を示す平面図である。本例の草刈り機1は、前側本体2aと左右一対の操舵輪5a、5bとが、回転連結機構27によって連結されている点が、これまでに述べた例とは異なっている。前側本体2aと操舵輪5a、5bとが回転連結機構27によって本体2の前後方向軸の回りに相対的に回転自在に連結されているので、左右一対の操舵輪5a、5bは、駆動輪4a、4bとは独立に、車軸ごと、本体2の前後方向軸の回りに傾動可能である。
【0050】
このように、左右一対の操舵輪5a、5bが、駆動輪4a、4bとは独立に、車軸ごと、本体2の前後方向軸の回りに傾動可能であるので、先に述べた例と同様に、例えば、本発明に係る草刈り機1が平らな場所から法面へと差し掛かるときにも、前方に位置する操舵輪5a、5bだけが法面の傾斜に対応して、本体2の前後方向軸の回りに傾動して、法面と接触することができるので、操舵輪5a、5b、及び駆動輪4a、4bの全輪が地面と接触し、草刈り機1の安定走行が保たれるという利点がある。
【0051】
本発明に係る草刈り機は、その好適な一態様において、外部からの制御信号や位置情報信号を受信する手段を備えており、外部からの遠隔操作により、或いは、GPS信号や施工箇所に配置された位置信号発信装置などからの信号に基づいて、自身で走行ルートや走行範囲を判断して実行される自動走行によって、対象とする施工現場を効率良く草刈りすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る草刈り機によれば、例えば鉄道線路周辺や道路脇、堤防脇の法面等のような傾斜地であっても、エンジンを水平状態に保つことができるので、傾斜方向や走行ルートを懸念することなく草刈り機を走行させ、草刈りを行うことができる。本発明は、実作業現場での草刈り作業の効率化に資すること多大であり、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0053】
1 草刈り機
2 本体
3a~3d 連結機構
4a、4b 駆動輪
5a、5b 操舵輪
6 エンジン
7 エンジン付随ユニット
8 回転出力軸
9 変換機構
10a、10b 接続回路
11a、11b 回転駆動源
12a、12b 草刈り刃
13a、13b 草刈り刃動力源
14a、14b 接続線
15a、15b バッテリー
16 操舵機構
17 制御装置
18 第一パレット
19、22 連結体
20a、20b、23a、23b 軸受機構
21 第二パレット
24、25 ハンドル
26、27 回転連結機構
ax1 第一傾動軸
ax2 第二傾動軸
E 法面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11