(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085158
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ヘッドの吐出調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
B41J2/01 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196685
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】井上 広紀
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA08
2C056EB27
2C056EB42
2C056EC07
2C056EC38
2C056FA13
2C056HA58
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のヘッドチップを有するヘッドを備えた印刷装置において、ヘッドチップの間の輝度の端上がりを抑制して、ヘッドチップの間の濃度むらを抑えるための吐出調整方法を提供する。
【解決手段】所定のテストパターンを光学的に読み取って、読取範囲に対応する第1スキャンデータと、読取範囲に対応する第2スキャンデータとを取得する。第1スキャンデータに基づいて、読取範囲の、ノズルの位置に対応する各チャンネル毎の輝度データD1を取得する。第2スキャンデータに基づいて、読取範囲の、ノズルの位置に対応する各チャンネル毎の輝度データD2を取得する。輝度データD1と輝度データD2の差分Δが所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、どちらの輝度データを選択するかを決定し、選択された一方の輝度データに基づいて、ラインヘッドにおける5つの電源回路21~25の割り当てを選択する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源回路及び複数のヘッドチップを含むヘッドの吐出調整方法であって、
前記ヘッドの前記複数のヘッドチップを用いて印刷された所定のパターンを第1の読取範囲にわたって光学的に読み取った第1のスキャンデータに基づいて、前記パターンの輝度に関する第1の輝度データを算出することと、
前記パターンを、前記第1の読取り範囲を包含し、且つ、前記第1の読取り範囲よりも広い第2の読取り範囲にわたって光学的に読み取った第2のスキャンデータに基づいて、前記パターンの輝度に関する第2の輝度データを算出することと、
前記第1の輝度データと前記第2の輝度データとの差分が所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、前記第1の輝度データ及び前記第2の輝度データのうち、いずれか一方の輝度データを選択することと、
選択された前記一方の輝度データに基づいて、前記ヘッドの前記ヘッドチップの1つにおける前記複数の電源回路の割り当てを選択することと、
を備えるヘッドの吐出調整方法。
【請求項2】
前記ヘッドチップは、複数のノズルを含み、
前記第1の輝度データを取得することは、第1のスキャンデータにおいて第1個数のノズルに対応する輝度値の総和を前記第1個数で除算した値である第1移動平均値を算出することを含み、
前記第2の輝度データを取得することは、第2のスキャンデータにおいて前記第1個数よりも多い第2個数のノズルに対応する輝度値の総和を前記第2個数で除算した値である第2移動平均値を算出することを含み、
前記第1移動平均値または前記第2移動平均値に基づいて、前記ヘッドの前記ヘッドチップの1つにおける前記複数の電源回路の割り当を選択する請求項1に記載のヘッドの吐出調整方法。
【請求項3】
前記選択された前記一方の輝度データに基づいて、前記ヘッドの前記ヘッドチップの1つにおける前記複数の電源回路の割り当てを選択することは、
前記一方の輝度データの所定区間における近似曲線を算出することと、
前記所定区間の少なくとも一部の区間で、前記近似曲線と、前記一方の輝度データとの差分を算出することと、
前記近似曲線と、前記一方の輝度データとの前記差分に基づいて、前記ヘッドの前記ヘッドチップの1つにおける前記複数の電源回路の割り当てを選択することとを含む請求項1又は2に記載のヘッドの吐出調整方法。
【請求項4】
前記複数のヘッドチップは、第1ヘッドチップと、第1方向において前記第1ヘッドチップと一部が重なるようにずれて配置された第2ヘッドチップを含み、
前記第1、第2ヘッドチップは、それぞれ、前記第1方向に配列された複数のノズルと、前記複数の電源回路を含み、
前記所定区間は、第1ヘッドチップの、前記第1方向における前記第2ヘッドチップと重なる部分を含んで前記第1方向に並ぶ100個以上のノズルにより印刷された領域を含む請求項3に記載のヘッドの吐出調整方法。
【請求項5】
さらに、前記一方の輝度データのばらつきの大きさを取得することと、
前記ばらつきの大きさが所定値を超えるかどうかを判断することと、
前記ばらつきの大きさが前記所定値を超えると判断した場合に、前記近似曲線の数を増やすことと、を備える請求項3又は4に記載のヘッドの吐出調整方法。
【請求項6】
さらに、前記一方の輝度データの、前記近似曲線の1つに対応する前記所定区間の1つの幅を広げることと、
前記幅を広げられた所定区間に基づいて、前記近似曲線の1つを修正することと、を備える請求項5に記載のヘッドの吐出調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源回路及び複数のヘッドチップを含むヘッドの吐出調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型のラインヘッドを有する印刷装置に対する需要が高まっている。大型のラインヘッドを形成する技術として、複数のヘッドチップを、ラインヘッドの長手方向に沿って千鳥状に並べて配置することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、長手方向に並んだ複数のヘッドチップを有するラインヘッドでは、長手方向に隣合う2つのヘッドチップは、互いに一部が長手方向に重なるように配置される。この場合において、各ヘッドチップの、長手方向において他のヘッドチップと重ならない領域(非重複領域)にあるノズルによって形成された画像の輝度よりも、長手方向において他のヘッドチップと重なる領域(重複領域)にあるノズルによって形成された画像の輝度の方が高くなる現象(輝度の端上がりと呼ばれる)が認められる。このような輝度の端上がりがあると、2つのヘッドチップの間において濃度むらが発生するため、画像品質に悪影響を及ぼすことになる。
【0005】
本発明は、複数のヘッドチップを有するラインヘッドなどのヘッドを備えた印刷装置において、ヘッドチップの間の輝度の端上がりを抑制して、2つのヘッドチップの間の濃度むらを抑えるための吐出調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、複数の電源回路及び複数のヘッドチップを含むヘッドの吐出調整方法であって、
前記ヘッドの前記複数のヘッドチップを用いて印刷された所定のパターンを第1の読取範囲にわたって光学的に読み取った第1のスキャンデータに基づいて、前記パターンの輝度に関する第1の輝度データを算出することと、
前記パターンを、前記第1の読取り範囲を包含し、且つ、前記第1の読取り範囲よりも広い第2の読取り範囲にわたって光学的に読み取った第2のスキャンデータに基づいて、前記パターンの輝度に関する第2の輝度データを算出することと、
前記第1の輝度データと前記第2の輝度データとの差分が所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、前記第1の輝度データ及び前記第2の輝度データのうち、いずれか一方の輝度データを選択することと、
選択された前記一方の輝度データに基づいて、前記ヘッドの前記ヘッドチップの1つにおける前記複数の電源回路の割り当てを選択することと、
を備えるヘッドの吐出調整方法が提供される。
【0007】
本発明の態様によれば、複数のヘッドチップの間における輝度の端上がりの発生を抑制して、複数のヘッドチップの間の濃度むらを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のプリンタ1の要部構成の一例を示す平面図である。
【
図2】本実施形態のヘッドチップ11の一例を示す底面図である。
【
図3】本実施形態のヘッドチップ11が備える第2基板50と、第2基板50と接続されたフレキシブル回路基板60との構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】ドライバIC27が備える回路構成の一例を示す図である。
【
図5】ドライバIC27が備える波形生成回路30の構成の一例を示す回路図である。
【
図6】テストパターンTPとヒストグラムH1を示す説明図である。
【
図7】テストパターンTPとヒストグラムH2を示す説明図である。
【
図8】4つの近似曲線(L1~L4)を説明するための説明図である。
【
図9】第1実施形態にかかるヘッドの吐出調整方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第2実施形態にかかるヘッドの吐出調整方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【
図11】第2実施形態にかかるヘッドの吐出調整方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態について、
図1~9を参照しつつ説明する。
【0010】
図1において、シートS(記録媒体)の搬送方向がプリンタ1の前後方向に対応する。詳細には、搬送方向の下流側が前方に対応し、搬送方向の上流側が後方に対応する。また、シートSの幅方向は、シートSが搬送される面(
図1の紙面と平行な面)と平行で、且つ、前記搬送方向と直交する方向であり、プリンタ1の左右方向に対応する。なお、
図1に示されるように、プリンタ1を前方から見たときの左側がプリンタ1の左方、
図1の右側がプリンタ1の右方である。さらに、シートSの搬送面と直交する方向(
図1の紙面に直交する方向)を、プリンタ1の上下方向と定義する。
図1において、紙面表側が上方、紙面裏側が下方である。以下では、前後方向、左右方向、上下方向を適宜使用して説明する。
【0011】
図1に示すように、プリンタ1は、筐体2と、プラテン3と、4つのラインヘッド4と、2つの搬送ローラ5A、5Bと、コントローラ7とを主に備える。
【0012】
プラテン3は筐体2の内部に配置されている。プラテン3の上面には、シートSが載置される。4個のラインヘッド4は、プラテン3の上方において、前後方向に並ぶように配置されている。2個の搬送ローラ5A、5Bは、前後方向にプラテン3を挟むように、プラテン3に対して後側と前側にそれぞれ配置されている。2個の搬送ローラ5A、5Bは、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン3上のシートSを前方(搬送方向下流側)へ搬送する。
【0013】
図3に示すように、コントローラ7は第1基板71を備える。第1基板71は、FPGA(Field Programmable Gate Array)711、不図示のROM(Read Only Memory)、不図示のRAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)712などを備える。コントローラ7は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の外部装置9と相互に通信が可能である。コントローラ7は、外部装置9又はプリンタ1が具備する不図示の操作部からの指示により、当該ROMに格納されたプログラムに従って各ラインヘッド4及び搬送ローラ5A、5Bの動作を制御する。なお、FPGA711に代えて、又はFPGA711に加えて、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Microprocessor Unit)を使用してもよい。
【0014】
例えばコントローラ7は、搬送ローラ5A、5Bを駆動するモータを制御して、搬送ローラ5A、5BにシートSを前方に搬送させる。また、コントローラ7は、各ラインヘッド4を制御してシートSに向けてインクを吐出させる。これにより、シートSに画像が印刷される。なお、シートSは、搬送方向の上流端を含む供給ロールと、搬送方向の下流端を含む回収ロールとからなるロール状のシートであってもよい。この場合、供給ロールは搬送方向上流側の搬送ローラ5Aに取り付けられてもよく、回収ロールは搬送方向下流側の搬送ローラ5Bに取り付けられてもよい。あるいは、シートSは、搬送方向の上流端を含む供給ロールのみを含むロール状のシートであってもよい。この場合、供給ロールは搬送方向上流側の搬送ローラ5Aに取り付けられてもよい。
【0015】
図1に示されるように、筐体2には、4個のラインヘッド4に対応して、4個のヘッド保持部8が取り付けられている。4個のヘッド保持部8は、プラテン3の上方で、且つ、前後方向における搬送ローラ5A、5Bの間の位置において、前後に並んで配置されている。各ヘッド保持部8によって、1個のラインヘッド4が保持される。
【0016】
4個のラインヘッド4はそれぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを吐出する。各ラインヘッド4には、図示しないインクタンクから、対応する色のインクが供給される。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の各ラインヘッド4は、10個のヘッドチップ11を備える。10個のヘッドチップ11は、左右方向に沿って千鳥状に2列に配置されている。1つのラインヘッド4には1色のインクが供給されるので、当該1つのラインヘッド4に含まれる10個のヘッドチップ11からは、当該1色のインクが吐出される。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の各ヘッドチップ11の底面には、複数のノズル11aが開口している。なお、本実施形態においては、各ヘッドチップ11は1680個のノズル11aを有しているが、
図2においては、図面を見やすくするために一部のノズル11aのみが図示されている。ノズル11aは、前後方向に並んだ4つのノズル列r1~r4を形成している。各ノズル列r1~r4に含まれるノズル11aは、左右方向に延在するように所定のピッチPで配置されている。4つのノズル列r1~r4は、左右方向において互いにP/4ずつずれるように配置されている。なお、各ヘッドチップ11には図示しないマニホールドが2個形成されており、ノズル列r1及びr2を構成するノズル11aには、一方のマニホールドからインクが供給される。また、ノズル列r3及びr4を構成するノズル11aには、他方のマニホールドからインクが供給される。各ヘッドチップ11における各ノズル11aの位置は、当該ノズル11aが属するノズル列と搬送方向の位置とによって、一意に特定される。
【0019】
また、各ヘッドチップ11には、第2基板50(
図3参照)及びフレキシブル回路基板60(
図3参照)と、ノズル11aと同数の駆動素子111(
図5参照)とが備えられている。本実施形態のプリンタ1は4個のラインヘッド4を備え、各ラインヘッド4は10個のヘッドチップ11を備えるので、プリンタ1は、40個のヘッドチップ11を備える。従って、第2基板50の数も40個となり、第2基板50と接続されたフレキシブル回路基板60の数も40個となる。
図3に示すように、コントローラ7の第1基板71は、40個の第2基板50に接続される。なお
図3では、便宜上、1個の第2基板50と1個のフレキシブル回路基板60のみを示している。
【0020】
図3に示されるように、第2基板50は、FPGA51、EEPROMなどの不揮発性メモリ52と、D/Aコンバータ20と、電源回路21~26とを備える。フレキシブル回路基板60は、EEPROMなどの不揮発性メモリ62と、ドライバIC27とを備える。
【0021】
FPGA51は、第1基板71に設けられたFPGA711の制御の下、電源回路21~26の出力電圧を設定するためのデジタルの設定信号を、D/Aコンバータ20に出力する。
【0022】
D/Aコンバータ20は、FPGA51が出力するデジタルの設定信号をアナログの設定信号に変換して電源回路21~26に出力する。
【0023】
電源回路21~26として、例えば、FET、インダクタ、抵抗、電解コンデンサ等の複数の電子部品で構成されるDC/DCコンバータを用いることができる。各電源回路21~26は、設定信号で指定された出力電圧をドライバIC27に出力する。本実施形態において、電源回路21~26は全て、出力電圧が異なるように設定されている。本実施形態においては、電源回路21の出力電圧は22V、電源回路22の出力電圧は21V、電源回路23の出力電圧は20V、電源回路24の出力電圧は19V、電源回路25の出力電圧は18V、そして、電源回路26の出力電圧は24Vである。
【0024】
ドライバIC27は、配線VDD1を介して電源回路21と接続され、配線VDD2を介して電源回路22と接続され、配線VDD3を介して電源回路23と接続され、配線VDD4を介して電源回路24と接続され、配線VDD5を介して電源回路25と接続され、配線HVDDを介して電源回路26と接続されている。なお、電源回路26は、後述の駆動素子111と配線VCOMを介して接続されている。配線HVDDと配線VCOMは、電源回路26から引き出された配線が、経路の途中で2つの配線に分岐したものである。
【0025】
電源回路21~26は、配線VDD1~VDD5及び配線HVDDを介して、ドライバIC27の内部に形成された波形生成回路30(1)~波形生成回路30(n)(nは2以上の自然数であり、本実施形態では、ヘッドチップ11が有する駆動素子111の数に等しい)に接続されている(
図4参照)。
【0026】
波形生成回路30(1)~30(n)は、各ヘッドチップ11が備えているn個の駆動素子111にそれぞれ対応して備えられている。つまり、波形生成回路30(1)~30(n)は、各ヘッドチップ11が備えているn個のノズル11aにそれぞれ対応して備えられている。ドライバIC27は、n本の信号線34(1)~34(n)と接続されている。ドライバIC27は、n本の信号線34(1)~34(n)を介して、n個の駆動素子111と接続されている。各信号線34は、駆動素子111の個別電極と接続されている。
【0027】
また、
図4に示されるように、ドライバIC27は、n個の駆動素子111に対応して設けられたn個のセレクタ90(1)~90(n)を備える。各セレクタ90は、ドライバIC27の内部に形成された複数のFETなどから構成されるハードウェアの構成要素である。
【0028】
電源回路26は、駆動素子111のVCOM用電源電圧、あるいは後述のPMOSトランジスタ311~315のHVDD(ハイサイド側バックゲート電圧)として使用することができる。
【0029】
図3に示されるように、ドライバIC27は、n本の制御線33(1)~33(n)及び制御線40を介してFPGA51と接続されている。制御線33(1)~33(n)は、上述のn個の波形生成回路30(1)~30(n)に対応して設けられた制御線である。各制御線33には、各波形生成回路30に備えられたFETを制御するための信号が伝播される。この信号に従って、波形生成回路30は、駆動素子111を駆動する駆動信号を生成し、生成した駆動信号を、信号線34を介して駆動素子111に出力する。
【0030】
また、制御線40には、ドライバIC27が有するn個のセレクタ90(1)~90(n)を制御するための制御信号が伝送される。FPGA51は、n個のセレクタ90(1)~90(n)を制御することで、各信号線34に出力する駆動信号を生成するための電源回路を選択する。
【0031】
次に、ドライバIC27が備える回路構成の一例を、
図4を参照しつつ説明する。
図4に示されるように、ドライバIC27は、n個の波形生成回路30(1)~30(n)と、波形生成回路30(1)~30(n)にそれぞれ対応して備えられたn個のセレクタ90(1)~90(n)を備える。
【0032】
ドライバIC27は、同様の構成をノズルの数と同じn個分備えているので、以下では、代表して制御線33(1)と、信号線34(1)との間に備えられた回路構成について説明する。ドライバIC27には、制御線33(1)と信号線34(1)と間に、セレクタ90(1)と波形生成回路30(1)が形成されている。
【0033】
FPGA51からの制御線33(1)は、セレクタ90(1)と接続されている。制御線33(1)はFPGA51とセレクタ90(1)とを結ぶ経路の途中で分岐しており、制御線33(1)から分岐した制御線SB(1)は波形生成回路30(1)と接続されている。
【0034】
セレクタ90(1)と波形生成回路30(1)とは、5本の制御線S1(1)、S2(1)、S3(1)、S4(1)、及びS5(1)で接続されている。セレクタ90(1)は、FPGA51からの指示に従って、5本の制御線S1(1)、S2(1)、S3(1)、S4(1)、及びS5(1)の中から選択されるいずれか一つの制御線を、制御線33(1)と接続する。
【0035】
波形生成回路30(1)には、上述の配線VDD1~VDD5と接続される5つの配線と、配線HVDDと接続される配線と、配線GNDと接続される配線とが接続されている。
【0036】
次に、本実施形態のヘッドチップ11が備える波形生成回路30(1)~30(n)の構成の一例について、
図5を参照しつつ説明する。なお、波形生成回路30(1)~30(n)は、同様の構成を有するので、以下では、波形生成回路30(1)について説明する。波形生成回路30(1)は、5個のPMOS(P-type Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ311~315(
図5では、2つのみ図示)、1個のNMOS(N-type Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ32、抵抗35などを備える。波形生成回路30(1)は、信号線34(1)を介して、駆動素子111の個別電極と接続されている。
【0037】
本実施形態の駆動素子111は、一つの圧力室に対して、個別電極と第1の定電位電極との間に挟まれる第1活性部と、個別電極と第2の定電位電極との間に挟まれる第2活性部とを備える圧電素子である。このため、駆動素子111は、キャパシタ111bと、キャパシタ111b′を備える。
【0038】
5つのPMOSトランジスタ311~315の5つのソース端子311a~315aにはそれぞれ、配線VDD1~VDD5が接続されている。NMOSトランジスタ32のソース端子32aは、グランドに接続されている。つまり、PMOSトランジスタ311は、配線VDD1を介して電源回路21と接続されている。PMOSトランジスタ312は、配線VDD2を介して電源回路22と接続されている。PMOSトランジスタ313は、配線VDD3を介して電源回路23と接続されている。PMOSトランジスタ314は、配線VDD4を介して電源回路24と接続されている。PMOSトランジスタ315は、配線VDD5を介して電源回路25と接続されている。
【0039】
PMOSトランジスタ311のゲート端子311cには、制御線S1(1)が接続されている。PMOSトランジスタ312のゲート端子312cには、制御線S2(1)が接続されている。PMOSトランジスタ313のゲート端子313cには、制御線S3(1)が接続されている。PMOSトランジスタ314のゲート端子314cには、制御線S4(1)が接続されている。PMOSトランジスタ315のゲート端子315cには、制御線S5(1)が接続されている。また、NMOSトランジスタ32のゲート端子32cには、制御線SB(1)が接続されている。
【0040】
また、5つのPMOSトランジスタ311~315のドレイン端子311b~315bは、抵抗35の一端に接続されている。また、NMOSトランジスタ32のドレイン端子32bは、抵抗35の一端に接続されている。抵抗35の他端は、駆動素子111の個別電極(キャパシタ111b′の他端及びキャパシタ111bの一端)に接続されている。駆動素子111の第1の定電位電極(キャパシタ111b′の一端)はVCOMに接続され、駆動素子111の第2の定電位電極(キャパシタ111bの他端)はグラウンドに接続されている。
【0041】
FPGA51が、制御線33(1)にローレベル(「L」)の信号を出力すると、PMOSトランジスタ311~315のうち、上述のセレクタ90(1)で選択された信号線と接続されたいずれか一つのPMOSトランジスタはオン状態となる。電源回路21~25のいずれか一つから供給される電圧によってキャパシタ111bが充電され、キャパシタ111b′が放電される。一方、FPGA51が、制御線33(1)にハイレベル(「H」)の信号を出力すると、NMOSトランジスタ32はオン状態となり、電源回路21~25のうちのいずれか一つから出力される電圧によってキャパシタ111b′が充電され、キャパシタ111bが放電される。キャパシタ111b、111b′が交互に充電及び放電を行うことによって、駆動素子111は変形し、ノズルの吐出口11aからインクが吐出される。
【0042】
すなわち、信号線34(1)には駆動素子111を駆動する駆動信号が出力される。セレクタ90(1)が、5つの制御線S1(1)~S5(1)のうちから接続する制御線を一つ選択することで、駆動信号を生成する電源回路を電源回路21~25の中から選択することができる。このように、コントローラ7は、FPGA711を介してFPGA51及びドライバIC27のセレクタ90を制御することにより、各駆動素子111に対して、電源回路21~25のうちのいずれの電源回路を用いて駆動信号を生成するかを選択することができる。言い換えると、コントローラ7は、各駆動素子111を駆動する駆動信号の電圧を調整することができる。
【0043】
次に、本実施形態のプリンタ1における輝度上がりについて説明する。
図6は、本実施形態のプリンタ1を用いて印刷されたテストパターンTPと、テストパターンTPの読取範囲AR1をスキャナで読み取ることによって取得された輝度分布のヒストグラムH1を示している。
図7は、同じテストパターンTPの読取範囲AR2をスキャナで読み取ることによって取得された輝度分布のヒストグラムH2を示している。
【0044】
テストパターンTPは、4個のラインヘッド4に対応した4つの同形状のパターンを有しており、それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクで形成されている。なお、
図6、7においては、シアン(C)、マゼンタ(M)のインクで形成されたパターンの一部が図示されている。
【0045】
図6に示される読取範囲AR1は、あるヘッドチップ11に含まれる1680個のノズル11aによって形成された領域である。
図6においては1つの読取範囲AR1だけが図示されているが、10個のヘッドチップ11に対応した10個の矩形状のパターンにそれぞれ読取範囲AR1が設定される。
図6のヒストグラムH1において、1chはそれぞれ1つのノズルに対応しており、読取範囲AR1は1680ch分(141ch~1820ch)に対応する。なお、前述のように10個のヘッドチップ11は千鳥状に左右方向に並んでおり、各ヘッドチップ11の左右方向の両端は、左右方向に隣接するヘッドチップ11と前後方向に重なっている。これに対応して、読取範囲AR1の両端部分は、あるヘッドチップ11のノズル11aのうち、前後方向において隣接するヘッドチップ11と重なる位置にあるノズル11aに対応している。
【0046】
図7に示される読取範囲AR2は、読取範囲AR1を左右方向に拡張した領域である。読取範囲AR2の左右方向の両端の、読取範囲AR1の外側の領域は、左右方向に隣接する別のヘッドチップ11に含まれるノズル11aによって形成されたものである。
図7においては1つの読取範囲AR2だけが図示されているが、10個のヘッドチップ11に対応した10個の矩形状のパターンにそれぞれ読取範囲AR2が設定される。本実施形態では、読取範囲AR2は、1つのヘッドチップ11に含まれる1680個のノズル11aと、当該ヘッドチップ11と左右方向に隣接するヘッドチップ11に含まれる280個のノズル11aによって形成されている。
図7のヒストグラムH2において、読取範囲AR2は1960ch分(1ch~1960ch)に対応する。
【0047】
図6のヒストグラムH1から、読取範囲AR1の左右方向の両端、即ち、左右方向に隣接する別のヘッドチップ11と前後方向において重なっている領域において、輝度が上昇していることが読み取れる。このような輝度の端上がりがあると、左右方向に隣接する2つのヘッドチップ11の間でインクの濃度むらが発生し、印刷品質が損なわれる恐れがある。そこで、本実施形態においては、以下に説明するヘッドの吐出調整方法を用いることによって、輝度の端上がりを抑制している。
【0048】
本実施形態に係る、輝度の端上がりを抑制するためのヘッドの吐出調整方法について、
図9のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、不図示のスキャナを用いて、プリンタ1の4つのラインヘッド4を用いて印刷されたテストパターンTPを光学的に読み取ることにより、読取範囲AR1に対応する第1スキャンデータと、読取範囲AR2に対応する第2スキャンデータとを取得する。そして、第1スキャンデータと第2スキャンデータに基づいて、読取範囲AR1及び読取範囲AR2の、ノズル11aの位置に対応する各チャンネル毎の輝度値を取得する。本実施形態においては、4つのラインヘッド11がそれぞれ10個のヘッドチップ11を備えていることに対応して、テストパターンTPには40個の読取範囲AR1と、40個の読取範囲AR2とが含まれている。
【0049】
40個の読取範囲AR1に関して、それぞれ、移動区間の幅を24chに設定して各チャンネルの輝度値の移動平均を算出し、輝度データD1を作成する(S100)。同様に、40個の読取範囲AR2に関して、それぞれ、移動区間の幅を96chに設定して各チャンネルの輝度値の移動平均を算出し、輝度データD2を作成する(S101)。以下の処理においては、あるヘッドチップ11に対応する、輝度データD1と輝度データD2とを1組のデータセットとして扱う。40組の輝度データD1と輝度データD2の組について、輝度データD1と輝度データD2との差分の許容値d1を設定する。本実施形態においては、輝度データD1と輝度データD2の全ての組について、輝度データD1と輝度データD2との差分Δの許容値を±1と設定する(S102)。
【0050】
次に、1組の輝度データD1と輝度データD2について差分Δを算出し、差分Δが許容値(本実施形態では1)に収まっているかどうかを判断する(S104)。差分Δが許容値に収まっている場合(S104:Yes)、つまり、差分Δの絶対値が1未満である場合には、輝度データD1が選択される(S105)。また、差分Δが許容値に収まっていない場合(S104:No)、つまり、差分Δの絶対値が1以上である場合には、輝度データD2が選択される(S106)。
【0051】
次に、選択された輝度データD1又は輝度データD2に基づいて、4つの近似曲線を算出する(S107)。本実施形態においては、以下の手順で8点を抽出し、4つの近似曲線(直線の近似式)を算出する。48ch~96chの平均aを点a1(72ch)にセットし、120ch~168chの平均bを点b1(144ch)にセットする。そして、点a1、b1から1つめの近似曲線(Y=αX+β)を算出する(
図8の直線L1参照)。同様に、256ch~304chの平均cを点c1(280ch)にセットし、816ch~839chの平均dを点d1(839ch)にセットする。そして、点c1、d1から2つめの近似曲線(Y=αX+β)を算出する(
図8の直線L2参照)。840ch~869chの平均eを点e1(840ch)にセットし、1376ch~1424chの平均fを点f1(1400ch)にセットする。そして、点e1、f1から3つめの近似曲線(Y=αX+β)を算出する(
図8の直線L3参照)。1632ch~1680chの平均gを点g1(1656ch)にセットし、1728ch~1766chの平均hを点h1(1752ch)にセットする。そして、点g1、h1から4つめの近似曲線(Y=αX+β)を算出する(
図8の直線L4参照)。
【0052】
次に、選択された輝度データD1又は輝度データD2と、近似曲線との差分を計算する(S108)。例えば、輝度データD2が選択されている場合には、72ch~144ch、280ch~839ch、840ch~1400ch、1656ch~1752chの範囲において、輝度データD2と近似曲線との差分を算出する(S108)。そして、算出された差分に基づいて、これらの範囲の各チャンネルに対応するノズル11aに関して、インクを吐出する際に用いる駆動素子111を駆動するための電源回路を電源回路21~25の中から選択する(S109)。例えば、あるチャンネルにおいて、輝度データD2を近似曲線に近づけるためには、当該チャンネルに対応するノズル11aからインクを吐出する際に用いる駆動素子111を駆動するための駆動電圧を下げた方がよいと判断される場合には、電源回路21~25のうち、出力電圧値が低くなるように電源回路が選択される。逆に、あるチャンネルにおいて、輝度データD2を近似曲線に近づけるためには、当該チャンネルに対応するノズル11aからインクを吐出する際に用いる駆動素子111を駆動するための駆動電圧を上げた方がよいと判断される場合には、電源回路21~25のうち、出力電圧値が高くなるように電源回路が選択される。上述のチャンネルの範囲において、全てのチャンネルについて、電源回路の選択が終了したら、未処理の輝度データD1と輝度データD2の組があるかどうかが判断され(S103)、未処理の輝度データD1と輝度データD2の組がある場合には(S103:Yes)、上述の処理S104~S109を繰り返す。未処理の輝度データD1と輝度データD2の組がない場合には(S103:No)、処理を終了する。
【0053】
<第1実施形態の効果>
上記実施形態においては、不図示のスキャナがラインヘッド4を用いて印刷された所定のテストパターンTPを光学的に読み取って、読取範囲AR1に対応する第1スキャンデータと、読取範囲AR2に対応する第2スキャンデータとを取得している。なお、読取範囲AR2は、読取範囲AR1を左右方向に拡張した領域であるため、読取範囲AR1を包含し、且つ、読取範囲AR1よりも広い。そして、第1スキャンデータに基づいて、読取範囲AR1の、ノズル11aの位置に対応する各チャンネル毎の輝度データD1を取得している。また、第2スキャンデータに基づいて、読取範囲AR2の、ノズル11aの位置に対応する各チャンネル毎の輝度データD2を取得している。そして、輝度データD1と輝度データD2の差分Δが所定の範囲内にあるかどうかに基づいて、どちらの輝度データを選択するかを決定している。さらに、選択された一方の輝度データに基づいて、ラインヘッド4における5つの電源回路21~25の割り当てを選択している。
【0054】
本実施形態においては、輝度データD1と輝度データD2の差分Δが所定の範囲内(±1の範囲内)にある場合には、チャンネル数が少ない輝度データD1を選択している。これにより、移動平均を算出する際などの計算の負荷を下げることができる。また、輝度データD1と輝度データD2の差分Δが所定の範囲(±1の範囲)を超えている場合には、チャンネル数が多い輝度データD2を選択している。これにより、移動平均を算出する際などの計算の精度をあげることができる。さらに、本実施形態においては、選択された輝度データに基づいて、あるチャンネルに対応するノズル11aからインクを吐出する際に用いる駆動素子111を駆動するための駆動電圧を下げた方がよいと判断される場合には、電源回路21~25のうち、出力電圧値が低くなるように電源回路を選択している。逆に、あるチャンネルに対応するノズル11aからインクを吐出する際に用いる駆動素子111を駆動するための駆動電圧を上げた方がよいと判断される場合には、電源回路21~25のうち、出力電圧値が高くなるように電源回路を選択している。これにより、ラインヘッド4で印刷を行う際に発生する輝度上がりなどのインクの濃度むらを抑えることができる。
【0055】
本実施形態において、第1スキャンデータに含まれる、読取範囲AR1に含まれる各チャンネルの輝度値について、24chの移動区間で移動平均を取ることによって輝度データD1が作成される。同様に、第2スキャンデータに含まれる、読取範囲AR2に含まれる各チャンネルの輝度値について、96chの移動区間で移動平均を取ることによって輝度データD2が作成される。このように、第1、第2スキャンデータに含まれる輝度値をそのまま用いるのでは無く、移動平均を取ることによって、偶然に輝度値が上がったり下がったりしているチャンネルの輝度値を平滑化することができる。これにより、輝度データD1,D2の信頼性を上げることができる。
【0056】
本実施形態において、選択された輝度データD1又は輝度データD2に基づいて電源回路21~25の割り当てを選択する際に、4つの近似曲線(4つの直線の近似式)を算出し、近似曲線と選択された輝度データとの差分を算出している。そして、近似曲線と選択された輝度データとの差分に基づいて、電源回路21~25の割り当てを選択している。輝度の端上がりが生じているときのように、輝度が過度に高くなっている場合には、輝度を下げるように、駆動電圧を低く設定することが好ましい。本実施形態では、駆動電圧をどの程度下げれば良いかについての指標を容易に得ることができる。
【0057】
本実施形態においては、
図8に示されるように、72ch~144chと、1656ch~1752chの領域で輝度の端上がりが確認できる。このような輝度の端上がりが発生している領域は、左右方向に隣接する2つのヘッドチップ11の、前後方向に互いに重なっている領域に対応する。そして本実施形態では、点a1(72ch)を挟んだ約50ch分の平均と、点b1(144ch)を挟んだ約50ch分の平均とに基づいて直線の近似式を算出している。同様に、点g1(1656ch)を挟んだ約50ch分の平均と、点h1(1752ch)を挟んだ約50ch分の平均とに基づいて、直線の近似式を算出している。このように、本実施形態においては、左右方向に隣接する2つのヘッドチップ11の、前後方向に互いに重なっている領域における約100ch分の輝度データに基づいて近似曲線(直線の近似式)を算出しているので、近似曲線が輝度の端上がりが発生している領域を確実にカバーすることができる。左右方向に隣接する2つのヘッドチップ11の、前後方向に互いに重なっている領域において100ch以上の輝度データに基づいて近似曲線(直線の近似式)を算出することにより、近似曲線と輝度データとの差分を取る際のデータ処理の信頼性を上げることができる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態について
図10、11を参照しつつ説明する。第1実施形態と共通する構成については、同じ参照符号を使用して、詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態においても、不図示のスキャナがプリンタ1の4つのラインヘッド4を用いて印刷されたテストパターンTPを光学的に読み取って、読取範囲AR1に対応する第1スキャンデータと、読取範囲AR2に対応する第2スキャンデータとを取得する。第1スキャンデータ及び第2スキャンデータにおける輝度値のばらつきを判定して、近似曲線の数を決定する(S200)。本実施形態においては、近似曲線として直線を採用しており、第1スキャンデータ及び第2スキャンデータにおける輝度値のばらつきが所定の閾値を超える場合には、近似曲線(直線)の本数を4本から6本に増やしている。続くS100~S107の処理は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。但し、S107の処理は第1実施形態と同様に8点抽出を行う場合を例に挙げているが、上述の処理S200において、近似曲線の数を6本にすることを決定した場合には、さらに4点の抽出を行い、6つの近似曲線(直線)の近似式を算出する。
【0060】
S107の処理に続いて、点b1(144ch)の前後100ch分の平均kを算出し、120ch~168chの平均bとの差分xを算出する(S201)。そして、点f1(1400ch)の前後100ch分の平均iを算出し、1376ch~1424chの平均fとの差分yを算出する(S202)。次に、差分xが所定の閾値(本実施形態では1)を超える場合(S203:Yes)には、点b1(144ch)の前後100chの平均kを点b1にセットする(S205)。差分yが所定の閾値(本実施形態では1)を超える場合(S204:Yes)には、点f1(1400ch)の前後100chの平均iを点f1にセットする(S206)。そして、S205、S206の処理において、点b1、f1にセットされた平均値のうち、少なくとも一方が変更された場合には、処理S107で作成した近似曲線を、S205、S206の処理でセットされた平均k、iを用いて修正する(S207)。続くS108、S109の処理は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0061】
本実施形態においては、第1スキャンデータ及び第2スキャンデータにおける輝度値のばらつきが所定の閾値を超えるかどうかを判断している。そして、第1スキャンデータ及び第2スキャンデータにおける輝度値のばらつきが所定の閾値を超える場合には、近似曲線(直線)の本数を4本から6本に増やしている。これにより、輝度値のばらつきをより抑えるように駆動電圧を適切に設定することができる。
【0062】
本実施形態においては、点b1及び点f1にセットする平均を算出するための区間の幅を、約50chから100chに広げている。そして、広げた区間により算出した輝度の平均に基づいて、近似曲線を修正している。点b1及び点f1の前後は、輝度値が大きくばらつくことが想定されている領域である。そのため、より広い範囲にわたって平均を算出することにより、点b1及び点f1の前後における輝度値のばらつきの影響を抑えることができ、近似曲線の信頼性を上げることができる。
【0063】
以上説明した実施形態は、あくまでの例示に過ぎず、適宜変更しうる。上述の実施形態では、プリンタ1は4個のラインヘッド4を備えているが、ラインヘッド4の数は4個に限定されない。また、上記実施形態では、1つのラインヘッド4が10個のヘッドチップ11を備えていたが、ヘッドチップ11の数は10個に限定されない。また、上述の実施形態では、各ヘッドチップ11が1680個のノズル11aを備えていたが、ノズル11aの数は1680個に限定されない。また、ノズル列の数は4列に限定されない。また、各ヘッドチップ11に設けられるマニホールドの数は2個に限定されない。例えば、ノズル列r1~r4に対して1個のマニホールドが設けられてもよく、ノズル列r1~r4毎に1個(即ち、合計4個)のマニホールドが設けられていてもよい。また、上記実施形態において、第2基板50は6個の電源回路21~26を備えているが、電源回路の数は6個には限定されない。また、各電源回路21~26の出力電圧も適宜変更しうる。
【0064】
テストパターンTPの形状はあくまでも例示であり、適宜変更しうる。また、読取範囲AR1、AR2の幅も、読取範囲AR2が読取範囲AR1を包含する限りにおいて適宜変更しうる。
【0065】
上記実施形態において、移動平均の移動区間の幅は24ch又は96chに設定されていたが、本開示はこれには限定されず、適宜変更しうる。また、上記実施形態において、近似曲線として直線を用いていたが本開示はこれには限定されない。例えば、近似曲線として2次曲線などの曲線を用いることもできる。上記実施形態において、直線の近似曲線を算出するために、8点(点a1~点h1)を抽出していたが、近似曲線を算出するため抽出される点の位置及び数は適宜変更しうる。
【0066】
上記実施形態においては、点a1~点h1の各点の周りにおいて、所定数のチャンネルにわたる輝度値の平均を算出し、各点の輝度値としてセットしていたが、各点の周りにおいて何チャンネル分にわたって平均を取るかについては適宜変更しうる。
【0067】
上記実施形態では、プリンタ1にラインヘッド4が固定され、シートSが搬送されていたが、ラインヘッド4に対してシートSが相対的に移動していればよく、例えば、固定されたシートSに対してラインヘッド4が移動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンタ
4 ラインヘッド
5A,5B 搬送ローラ
7 コントローラ
11 ヘッドチップ
11a ノズル
21~26 電源回路
27 ドライバIC
50 第2基板
51 FPGA
71 第1基板
711 FPGA
712 EEPROM