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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085163
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】データ分析装置及びデータ分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/02 20060101AFI20220601BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220601BHJP
【FI】
G06N3/02
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196695
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】中里 研一
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA04
5L096HA02
5L096HA11
5L096JA11
5L096JA16
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】ニューラルネットワークの入出力特性の違いを利用して、時系列のデータの特徴を分析可能なデータ分析装置及びデータ分析方法を提供する。
【解決手段】時系列のデータの特徴を分析するデータ分析装置(100)は、分析対象の時系列のデータ、時系列予測に用いられるニューラルネットワークへ分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データ、及び、ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報を取得する取得部(41,43)と、時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとを比較するデータ処理部(41)と、複数のニューラルネットワークのそれぞれについての時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとの比較の結果と、それぞれのニューラルネットワークの入出力特性と、に基づいて分析対象の時系列のデータの特徴を分析する分析部(43)とを備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列のデータの特徴を分析するデータ分析装置(100)において、
分析対象の時系列のデータ、時系列予測に用いられるニューラルネットワークへ前記分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データ、及び、前記ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報を取得する取得部(41,43)と、
前記時系列の予測データと前記分析対象の時系列のデータとを比較するデータ処理部(41)と、
複数の前記ニューラルネットワークのそれぞれについての前記時系列の予測データと前記分析対象の時系列のデータとの比較の結果と、それぞれの前記ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報と、に基づいて前記分析対象の時系列のデータの特徴を分析する分析部(43)と、
を備える、データ分析装置。
【請求項2】
前記分析部(43)は、それぞれの前記ニューラルネットワークについて、前記分析対象の時系列のデータに対する前記時系列の予測データの再現度を判定し、それぞれの前記ニューラルネットワークの前記時系列の予測データの再現度と、それぞれの前記ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報に基づいて前記分析対象の時系列のデータの特徴を分析する、請求項1に記載のデータ分析装置。
【請求項3】
前記複数のニューラルネットワークは、レイヤ数又は入力データ数のうちの少なくとも一方が異なるニューラルネットワークを含む、請求項1又は2に記載のデータ分析装置。
【請求項4】
それぞれの前記ニューラルネットワークは、所定の時系列の入力データに対する時系列の予測データが所定回数又は所定時間安定した状態となるまで教師データを学習したニューラルネットワークである、請求項1~3のいずれか1項に記載のデータ分析装置。
【請求項5】
時系列のデータの特徴を分析するデータ分析方法において、
分析対象の時系列のデータ、時系列予測に用いられるニューラルネットワークへ前記分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データ、及び、前記ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報を取得するステップと、
前記時系列の予測データと前記分析対象の時系列のデータとを比較するステップと、
複数の前記ニューラルネットワークのそれぞれについての前記時系列の予測データと前記分析対象の時系列のデータとの比較の結果と、それぞれの前記ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報と、に基づいて前記分析対象の時系列のデータの特徴を分析するステップと、
を含む、データ分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列のデータの特徴を分析するデータ分析装置及びデータ分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でニューラルネットワークを用いた時系列予測が活用されている。時系列予測に用いられるニューラルネットワークの一態様として、例えば、回帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)がある。回帰型ニューラルネットワークとしては、例えば完全回帰型ニューラルネットワーク、深層回帰型ニューラルネットワーク、独立回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク(LSTM:Long - Short Term Memory)、ゲート付き回帰型ユニット(GRU:Gated Recurrent Unit)等の種々のニューラルネットワークが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-067948号公報
【特許文献2】特開2020-024689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのニューラルネットワークは、それぞれ異なる入出力特性を持つことが知られている。つまり、同じ時系列データを入力した場合であっても、ニューラルネットワークの種類によって出力される時系列の予測データが異なる場合がある。また、同種のニューラルネットワークであっても、ニューラルネットのレイヤ数や入力データ数が異なる場合、入出力特性が変化することがある。例えばある時系列のデータをそれぞれのニューラルネットワークに入力した場合、入出力特性によって、出力される時系列の予測データの再現度が高くなるものもあれば、再現度が低くなるものもある。
【0005】
ここで、時系列に進行する事象に、当該事象の主体の思考や思想が反映される場合が多々ある。例えばテトリスなどのビデオゲームや、囲碁又は将棋などの対戦を行う場合の手順の進め方には、プレイヤーあるいは棋士(以下、まとめて「プレイヤー」と総称する)の思考や思想が反映される。具体的には、プレイの内容は、深く考えられたプレイであったり、考えの浅いプレイであったり、さらに攻めの姿勢のプレイであったり、守りの姿勢のプレイであったりとさまざまである。換言すれば、あるプレイヤーが行ったプレイの時系列のデータから、当該プレイヤーの思考レベルやプレイの性格を推定することができると考えられる。
【0006】
本発明は、上記のニューラルネットワークの入出力特性の違いを利用して、時系列のデータの特徴を分析可能なデータ分析装置及びデータ分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、時系列のデータの特徴を分析するデータ分析装置であって、分析対象の時系列のデータ、時系列予測に用いられるニューラルネットワークへ分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データ、及び、ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報を取得する取得部と、時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとを比較するデータ処理部と、複数のニューラルネットワークのそれぞれについての時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとの比較の結果と、それぞれのニューラルネットワークの入出力特性と、に基づいて分析対象の時系列のデータの特徴を分析する分析部と、を備えるデータ分析装置が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、時系列のデータの特徴を分析するデータ分析方法であって、分析対象の時系列のデータ、時系列予測に用いられるニューラルネットワークへ分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データ、及び、ニューラルネットワークの入出力特性に関する情報を取得するステップと、時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとを比較するステップと、複数のニューラルネットワークのそれぞれについての時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとの比較の結果と、それぞれのニューラルネットワークの入出力特性と、に基づいて分析対象の時系列のデータの特徴を分析するステップと、を含むデータ分析方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、回帰型ニューラルネットワークの入出力特性の違いを利用して、時系列のデータの特徴を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るデータ分析装置の構成例を示す模式図である。
図2】RNNにより時系列の予測処理を示す模式図である。
図3】同実施形態に係るデータ分析方法の一例を示すフローチャートである。
図4】他の実施形態に係るデータ分析方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<1.データ分析装置の構成例>
まず、本発明の一実施形態に係るデータ分析装置の構成例を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るデータ分析装置100の構成例を示す模式図である。データ分析装置100は、入力部10、表示部20、記憶部30及び演算処理装置40を備える。
【0014】
データ分析装置100による分析対象の時系列のデータは特に限定されない。分析対象の時系列のデータは、所定の動作の手順のデータであってもよく、所定の状態の変化を撮影した時系列の画像データであってもよい。
【0015】
入力部10は、演算処理装置40に入力されるデータを読み込む機能を有する。入力部10は、少なくとも分析対象の時系列のデータを入力するために用いられる。例えば入力部10は、他のコンピュータ機器から送信されるデータを受信するための通信インタフェースであってもよく、USB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリ等のデータ記憶媒体が接続されるインタフェースであってもよく、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等のデータ記憶媒体が投入されるデータ再生機器であってもよい。
【0016】
また、入力部10は、撮影対象の画像データを生成し、時系列のデータとして演算処理装置40へ送信する検出機器であってもよい。かかる検出機器としては、例えば撮像カメラ又はLiDAR(Light Detection And RangingあるいはLight Imaging Detection And Ranging)が例示される。撮像カメラは、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備え、撮影対象の画像データを生成する。また、LiDARは、レーザー光を走査しながら測定対象に照射して当該レーザー光の散乱や反射光を観測することによって測定対象の外観の状態を反映した画像データを生成する。
【0017】
また、入力部10は、ユーザによる操作入力を受け付け、演算処理装置40に対して操作信号を送信する機能を備えてもよい。例えば入力部10は、マウスやキーボード、タッチパネル、タブレットコンピュータ、スマートホン、操作ボタン、スイッチ等のうちの少なくとも一つを含んで構成されていてもよい。
【0018】
表示部20は、演算処理装置40から出力される駆動信号に基づいて駆動され、少なくとも演算処理装置40により実行された時系列のデータの分析結果等の所定の表示を行う。この他、表示部20は、データ分析装置100の操作画面を画像表示する。例えば表示部20は、液晶パネル等の光学パネルを備えて構成される。なお、入力部10と表示部20とが一体化され、タッチパネルとして構成されてもよい。
【0019】
記憶部30は、磁気ディスクやHDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)フラッシュ、ストレージ装置等の少なくとも一つの記憶媒体により構成される。記憶部30は、時系列予測に用いられる複数の回帰型ニューラルネットワーク(以下、「RNN」と表記する場合がある)を記憶する。
【0020】
記憶部30に記憶されるRNNとしては、例えば完全回帰型ニューラルネットワーク、深層回帰型ニューラルネットワーク、独立回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク(LSTM)、ゲート付き回帰型ユニット(GRU)等のうちのいずれか一つ又は複数のRNNが含まれる。また、記憶部30に記憶されるRNNは、レイヤ数又は入力データ数の少なくとも一方を異ならせた同種の複数のRNNを含んでもよい。
【0021】
本実施形態では、記憶部30に記憶される複数のRNNは、あらかじめ教師データを学習済みのRNNである。教師データは、分析対象の時系列のデータに関連する一つ又は複数の時系列のデータである。例えば分析対象の時系列のデータが、テトリスのプレイの内容である場合、教師データもテトリスのプレイの内容の時系列のデータである。それぞれのRNNは、所定の時系列の入力データに対する時系列の予測データが所定回数又は所定時間安定した状態となるまで、教師データを繰り返し学習したものとなっている。
【0022】
演算処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。演算処理装置40は、CPUと併せてGPU(Graphic Processing Unit)を含んでもよい。演算処理装置40は、入力部10又は表示部20との間でそれぞれ信号を送受信する図示しない通信インタフェースを備える。
【0023】
本実施形態において、演算処理装置40は、データ処理部41、分析部43、表示制御部45及びメモリ47を備える。このうち、メモリ47は、プロセッサにより実行されるプログラムや、演算処理に用いられる種々の演算パラメータ、取得したデータ、演算結果等を記憶する。また、データ処理部41、分析部43及び表示制御部45は、プロセッサによりプログラムが実行されることによって実現される機能である。
【0024】
データ処理部41は、記憶部30に記憶された複数のRNNへ分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データと、分析対象の時系列のデータとを取得し、取得した時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとを比較する処理を実行する。本実施形態において、データ処理部41は、取得部としても機能する。本実施形態では、データ処理部41は、それぞれのRNNにより得られた時系列の予測データについて、分析対象の時系列のデータに対する再現度を求め、メモリ47に記憶する。
【0025】
図2は、あるRNNに分析対象の時系列のデータipt_ts(x0,x1,x2,x3…xn)が入力され、時系列の予測データopt_ts(y0,y1,y2,y3…yn)が出力される様子を示す模式図である。RNNのレイヤ数Dep_RNNは「m」で示されている。データ処理部41は、それぞれのRNNから得られる時系列の予測データopt_ts(y0,y1,y2,y3…yn)を分析対象の時系列のデータipt_ts(x0,x1,x2,x3…xn)と比較し、再現度を求める。
【0026】
再現度は時系列のデータの種類や分析対象の時系列の内容に応じて適宜定義されてもよい。例えばある時刻tまでの時系列のデータx(t-m),…,x(t)をRNNに入力したときに出力される時刻t+1での予測値x*(t+1)(=y(t+1))を下記式(1)で表すとすると、下記式(2)に示すように、出力された予測値x*(t+1)と実際の時刻t+1のデータx(t)との誤差関数Err(X)を再現度としてもよい。なお、入力データx(t)は、単独の値に限られず、画像データでもあり得る。
【0027】
【数1】
…(1)
【0028】
【数2】
…(2)
【0029】
また、例示した誤差関数Err(X)を粗い粒度で、例えば再現度Err(x(t-1),x(t))で表すとすると、入力データx(t-m),…,x(t-2)に対する期待値として再現度を定義することもできる。
【0030】
分析部43は、データ処理部41による複数のRNNのそれぞれについての時系列の予測データと分析対象の時系列のデータとの比較の結果と、それぞれのRNNの特性とに基づいて、分析対象の時系列のデータの特徴を分析する。具体的に、分析部43は、データ処理部41による複数のRNNについての比較結果の情報と、それぞれのRNNの入出力特性を示す入力特性に関する情報とを取得し、取得した情報に基づいて分析対象の時系列のデータの特徴を分析する。本実施形態において、分析部43は、取得部としても機能する。すでに述べたとおりRNNは、種類によって、あるいは、レイヤ数や入力データ数によって、入出力特性が異なっている。
【0031】
上述の例でいえば、完全回帰型ニューラルネットワークは、最も短期のメモリに焦点を当てた単純なパターン記憶及び予測に強いという入出力特性を有する。また、深層回帰型ニューラルネットワークは、一般のRNNに比べて複雑なパターン記憶及び予測に強いという入出力特性を有する。また、独立回帰型ニューラルネットワークは、完全回帰型ニューラルネットワークに比べて学習効果が高いために長期記憶及び予測に強いという入出力特性を有する。また、長短期記憶ネットワーク(LSTM)は、自然言語のような分節性を有する時系列に強いという入出力特性を有する。また、ゲート付き回帰型ユニット(GRU)は、LSTMと同様に分節性を有する時系列に強いという入出力特性を有する一方、パラメータが少ないことからLSTMよりはオーバーフィッティングしない傾向にある特性を有する。
【0032】
さらに、同種のRNNであっても、レイヤ数が多いほど、複雑なパターン記憶及び予測に強いという入出力特性を有する。また、同種のRNNであっても、入力データ数が多いほど、より遠い過去にさかのぼって予測することができるという入出力特性を有する。
【0033】
このため、あるRNNからの予測データの再現度が高い場合には、分析対象の時系列のデータは、当該RNNの入出力特性の特徴を持つ時系列のデータであると評価することができる。また、あるRNNからの予測データの再現度が低い場合には、分析対象の時系列のデータは、当該RNNの入出力特性の特徴を持たない時系列のデータであると評価することができる。
【0034】
例えば分析対象の時系列のデータがテトリスのプレイの内容のデータである場合、深いレイヤを持つ(レイヤ数が多い)RNNから出力された時系列の予測データの再現度が高い一方、浅いレイヤを持つ(レイヤ数が少ない)RNNから出力された時系列の予測データの再現度が低い場合には、当該プレイの内容は、深く考えられたプレイであると特徴づけることができる。逆に、浅いレイヤを持ち、入力データ数も短いRNNであっても再現度が高い場合には、当該プレイの内容は、考えの浅いプレイであると特徴づけることができる。
【0035】
また、オセロでは、四隅を抑えている場合には最終的に非常に良好な結果となるため、短期的に不利なプレイをしているように見えても四隅を取りに行くことが有効である。このようなプレイは戦略的であるが、浅いレイヤを持ち、入力データ数も短い単純なRNNでも学習データによっては予測可能である。これは、目の前の盤面を見るだけで予測できるからであり、複雑なパターン認識や長期記憶の必要がないためである。逆に言えば、複雑なパターン認識や長期記憶が必要な時系列であれば、各RNNから出力された時系列の予測データの再現度の比較によってその時系列の特徴を分析することが可能である。
【0036】
表示制御部45は、表示部20に表示させる画像信号を生成し、表示部20への表示を制御する。表示制御部45は、少なくとも分析部43による分析結果を表示部20へ表示させる。また、表示制御部45は、分析対象の時系列のデータの分析を行う際の設定画面や進捗状況を表示部20へ表示させる。ただし、表示部20への表示内容は特に制限されるものではない。
【0037】
<2.動作例>
ここまで、データ分析装置100の構成例を説明した。続いて、データ分析装置100の動作例を説明する。
【0038】
図3は、データ分析装置100の演算処理装置40により実行されるデータ分析方法の一例を示すフローチャートである。
時系列のデータの分析処理が開始されると、データ処理部41は、記憶部30に記憶された複数のRNNの中から分析対象の時系列のデータを入力するRNNを選択する(ステップS11)。RNNの選択は、RNNの種類を選択することであってもよく、RNNのレイヤ数又は入力データ数を設定することであってもよい。分析対象の時系列のデータに応じて、データ処理部41により選択可能なRNNがあらかじめ決められていてもよい。また、ユーザの選択にしたがってRNNが設定されてもよい。設定されるRNNの順序は特に限定されるものではない。
【0039】
次いで、データ処理部41は、入力部10を介して分析対象の時系列のデータを取得するとともに、ステップS11で設定したRNNへ入力して、時系列の予測データを取得する(ステップS13)。このとき、データ処理部41は、設定されたRNNに応じたデータ数の入力データを順次RNNへ入力し、時系列の予測データを取得する。データ処理部41は、取得した予測データをメモリ47に記憶する。
【0040】
次いで、データ処理部41は、取得した時系列の予測データと、入力した分析対象の時系列のデータとを比較し、RNNによる時系列のデータの再現度を求める(ステップS15)。例えばデータ処理部41は、上記式(2)に例示する誤差関数Err(X)により再現度を求めることができる。データ処理部41は、求めた再現度の情報をメモリ47に記憶する。
【0041】
次いで、データ処理部41は、すべてのRNNについての再現度の判定が終了したか否かを判定する(ステップS17)。一部のRNNについての再現度の判定が終了していない場合(S17/No)、データ処理部41は、ステップS11に戻って、再現度の判定が終了していないRNNの中から分析対象の時系列のデータを入力するRNNを選択して、ステップS13~ステップS15の処理を実行する。データ処理部41は、ステップS17において、すべてのRNNについての再現度の判定が終了したと判定されるまで、ステップS11~ステップS17の処理を繰り返し実行する。
【0042】
すべてのRNNについての再現度の判定が終了した場合(S17/Yes)、分析部43は、メモリ47に記憶されたそれぞれのRNNについての再現度の情報に基づいて、分析対象の時系列のデータの特徴を分析する(ステップS19)。分析部43は、記憶部30に記憶されたRNNそれぞれの既知の入出力特性に関する情報を取得し、それぞれのRNNについての再現度から、分析対象の時系列のデータの特徴を分析する。
【0043】
次いで、表示制御部45は、分析結果を表示する画像信号を生成して表示部20に出力し、分析結果を表示部20に表示させる(ステップS21)。分析結果の表示方法は特に限定されない。例えば、時系列のデータの特徴をテキスト化して表示する方法であってもよく、特徴の項目ごとに分析値を示す方法であってもよい。
【0044】
<3.効果>
以上説明したように、本実施形態に係るデータ分析装置及びデータ分析方法によれば、あらかじめ分析対象の時系列のデータに関連する複数の教師データを学習した複数のRNNに分析対象の時系列のデータを入力して得られる時系列の予測データを分析対象の時系列のデータと比較した結果と、それぞれのRNNの入出力特性とに基づいて、分析対象の時系列のデータの特徴を分析する。本実施形態では、比較の結果として予測データの再現度を判定し、当該再現度と、それぞれのRNNの入出力特性とに基づいて分析対象の時系列のデータの特徴を分析する。これにより、RNNの入出力特性との親和性に基づいて時系列のデータの特徴を分析することができる。特に、分析対象の時系列のデータについて、RNNの入出力特性に応じた戦略的な深みを分析することができる。したがって、分析対象の時系列のデータの分析結果を利用して、例えばビデオゲームや遊戯等のプレイを分析し、ハイライトシーン等の特筆すべきシーンを認識して自動編集したり、特筆すべきシーンの全体への影響をまとめたりする等の目的に活用することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るデータ分析装置及びデータ分析方法によれば、複数のRNNは、レイヤ数又は入力データ数のうちの少なくとも一方が異なる同種の複数のRNNを含んでもよい。このようなRNNを利用することにより、あらかじめ準備するRNNの種類が限られる場合であっても、分析対象の時系列のデータを分析することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態に係るデータ分析装置及びデータ分析方法によれば、複数のRNNは、所定の時系列の入力データに対する時系列の予測データが所定回数又は所定時間安定した状態となるまで教師データを学習したニューラルネットワークが用いられる。これにより、それぞれのRNNの入出力特性が安定した状態のRNNに対して分析対象の時系列のデータを入力した結果に基づいて分析を行うことができ、分析結果の信頼度を高めることができる。
【0047】
<4.他の実施の形態>
上記の実施の形態に係るデータ分析装置100では、あらかじめ教師データを学習済みの複数のRNNが記憶部30に記憶され、これらのRNNに分析対象の時系列のデータを入力してそれぞれのRNNについての再現度を求めたが、本発明に係るデータ分析装置100は、かかる例に限定されない。例えば分析対象の時系列のデータを学習データとしてRNNの学習を行い、時系列のデータを分析してもよい。
【0048】
かかるデータ分析装置100では、記憶部30には、未学習のRNNが記憶されてもよい。なお、記憶されるRNNは、未学習のRNNの代わりに、学習処理の回数が少ない(完成度が低い)RNNであってもよい。
【0049】
図4は、データ分析装置100の演算処理装置40により実行される別のデータ分析方法の例を示すフローチャートである。
時系列のデータの分析処理が開始されると、データ処理部41は、上記のステップS11と同様に、記憶部30に記憶された複数のRNNの中から分析対象の時系列のデータを入力するRNNを選択する(ステップS31)。
【0050】
次いで、データ処理部41は、入力部10を介して分析対象の時系列のデータを取得し、ステップS11で設定したRNNへ繰り返し入力して学習処理を実行する(ステップS33)。このとき、データ処理部41は、設定されたRNNに応じたデータ数の入力データを順次RNNへ入力する。
【0051】
次いで、データ処理部41は、出力される時系列の予測データが所定回数又は所定時間安定した状態となったか否かを判定する(ステップS35)。本実施形態では、データ処理部41は、分析対象の時系列のデータをRNNへ入力するごとに、出力される時系列の予測データを分析対象の時系列のデータと比較して、RNNによる時系列のデータの再現度を求め、再現度の変化が所定回数又は所定時間所定範囲に収まっているか否かを判定する。ただし、出力される時系列の予測データが安定したか否かを判定する方法は、この例に限定されない。
【0052】
出力される時系列の予測データが安定したと判定されない場合(S35/No)、データ処理部41は、ステップS33に戻って分析対象の時系列のデータの学習を繰り返す。一方、出力される時系列の予測データが安定したと判定された場合(S35/Yes)、データ処理部41は、RNNによる時系列のデータの再現度の情報をメモリ47に記憶する(ステップS37)。
【0053】
次いで、データ処理部41は、すべてのRNNについての再現度の判定が終了したか否かを判定する(ステップS39)。一部のRNNについての再現度の判定が終了していない場合(S39/No)、データ処理部41は、ステップS31に戻って、再現度の判定が終了していないRNNの中から分析対象の時系列のデータを入力するRNNを選択して、ステップS33~ステップS37の処理を実行する。データ処理部41は、ステップS39において、すべてのRNNについての再現度の判定が終了したと判定されるまで、ステップS31~ステップS39の処理を繰り返し実行する。
【0054】
すべてのRNNについての再現度の判定が終了した場合(S39/Yes)、分析部43は、メモリ47に記憶されたそれぞれのRNNについての再現度の情報に基づいて、分析対象の時系列のデータの特徴を分析する(ステップS41)。分析部43は、記憶部30に記憶されたRNNそれぞれの既知の入出力特性に関する情報を取得し、それぞれのRNNについての再現度から、分析対象の時系列のデータの特徴を分析する。
【0055】
次いで、表示制御部45は、分析結果を表示する画像信号を生成して表示部20に出力し、分析結果を表示部20に表示させる(ステップS43)。分析結果の表示方法は特に限定されない。例えば、時系列のデータの特徴をテキスト化して表示する方法であってもよく、特徴の項目ごとに分析値を示す方法であってもよい。
【0056】
以上説明したように、データ分析装置100は、分析対象の時系列のデータを学習データとしてRNNの学習を行い、出力される予測データが安定した状態となったときの予測データの再現度に基づいて時系列のデータを分析することもできる。このように時系列のデータを分析することによっても、RNNの入出力特性との親和性に基づいて時系列のデータの特徴を分析することができる。特に、分析対象とする時系列のデータのみを学習対象としてRNNを訓練していることから、より分析対象に特化した予測を行うことができる。したがって、特定のプレイヤーのプレイとしてはトリッキーなものと認定されるプレイ、例えば駆け引きや特別な意図が込められていると思われるプレイをハイライトすることができる。あるいは、単純な誤りと思われるプレイや、その他の通常のプレイと思われるプレイと、特殊なプレイとを識別することができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば上記実施形態では、データ分析装置100に備えられた記憶部30に複数のRNN及びそれぞれのRNNの入出力特性があらかじめ記憶され、データ処理部41は、記憶部30からRNNを取得してデータ処理を実行していたが、本発明はかかる例に限定されない。複数のRNN及びそれぞれのRNNの入出力特性に関する情報の少なくとも一つがデータ分析装置100に接続された他の装置や記憶媒体に記憶され、データ処理部41は、当該他の装置や記憶媒体からRNN及びRNNの入出力特性に関する情報を取得してデータ処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…入力部、20…表示部、30…記憶部、40…演算処理装置、41…データ処理部(取得部)、43…分析部(取得部)、45…表示制御部、47…メモリ、100…データ分析装置
図1
図2
図3
図4