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特開2022-85169ワーク処理方法、およびワーク処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085169
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ワーク処理方法、およびワーク処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/04 20060101AFI20220601BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B23P19/04 B
B23K37/00 D
B23P19/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196708
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 潤
(72)【発明者】
【氏名】千野 啓
(72)【発明者】
【氏名】石黒 仁志
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BC04
3C030BC27
3C030BC35
3C030BD06
(57)【要約】
【課題】溶接工程に要する時間を短縮できるワーク処理方法、およびワーク処理装置を提供する。
【解決手段】ワーク処理方法は、測定工程と、処理工程とを含み、前記測定工程が、保持装置10を測定位置に配置するとともに保持装置10にワークWを保持させる保持工程と、測定位置に配置された保持装置10に保持されたワークWの第1位置情報を取得する第1位置取得工程と、第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置に至るまでのワークWの第1移動距離を算出する第1算出工程と、を含み、処理工程が、保持装置10をワークWを保持した状態で測定位置から第1の方向に移送して作業位置に配置する移送工程と、作業位置において、第1移動距離に基づいて保持装置10を第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整工程と、溶接装置50によってワークWに対して溶接を行う溶接工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持装置と、前記保持装置に保持されたワークに対して溶接を行う溶接装置とを備えるワーク処理装置によってワークを処理するワーク処理方法であって、
測定工程と、処理工程とを含み、
前記測定工程が、
前記保持装置を測定位置に配置するとともに前記保持装置に前記ワークを保持させる保持工程と、
前記測定位置に配置された前記保持装置に保持された前記ワークの第1位置情報を取得する第1位置取得工程と、
前記第1位置取得工程で取得された前記第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置に至るまでの前記ワークの第1移動距離を算出する第1算出工程と、を含み、
前記処理工程が、
前記保持装置を前記ワークを保持した状態で前記測定位置から第1の方向に移送して作業位置に配置する移送工程と、
前記作業位置において、前記第1算出工程で算出された前記第1移動距離に基づいて前記保持装置を前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整工程と、
前記溶接装置によって前記ワークに対して溶接を行う溶接工程と、を含む、ワーク処理方法。
【請求項2】
前記処理工程は、
前記位置調整工程後の前記保持装置に保持された前記ワークの第2位置情報を取得する第2位置取得工程と、
前記第2位置取得工程で取得された前記第2位置情報に基づいて前記ワークの位置が前記設定位置に対して許容範囲内にあるかどうかを判定する判定工程と、
をさらに含み、
前記判定工程において前記ワークの位置が前記許容範囲内にあると判定された場合に前記溶接工程が実行される、請求項1に記載のワーク処理方法。
【請求項3】
前記処理工程は、
前記判定工程において前記ワークの位置が前記許容範囲内にないと判定された場合に、前記第2位置情報に基づいて前記設定位置に至るまでの前記ワークの第2移動距離を算出する第2算出工程と、
前記第2移動距離に基づいて前記保持装置を前記第2の方向に移動させる位置補正工程と、をさらに含む、請求項2に記載のワーク処理方法。
【請求項4】
前記ワークがガスセンサ用部品である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワーク処理方法。
【請求項5】
ワークに対して溶接作業を行うためのワーク処理装置であって、
ワークを保持する保持装置と、
前記保持装置を測定位置から作業位置まで第1の方向に移送可能な移送装置と、
前記保持装置が前記測定位置にあるときに前記ワークの第1位置情報を取得する第1位置取得装置と、
前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記保持装置を前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整装置と、
前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記ワークに対して溶接を行う溶接装置と、
前記第1位置取得装置、前記移送装置および前記位置調整装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、
前記第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置までの前記ワークの移動距離を算出する演算処理部と、
前記演算処理部によって算出された前記移動距離に基づいて前記位置調整装置による前記保持装置の移動を制御する動作制御部と、を備える、ワーク処理装置。
【請求項6】
前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記ワークの位置情報を測定する第2位置取得装置と、
前記第2位置取得装置によって測定された第2位置情報に基づいて前記ワークの位置が予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定部と、をさらに備える、請求項5に記載のワーク処理装置。
【請求項7】
前記移送装置に取り付けられる一の前記保持装置と、
前記移送装置に取り付けられるとともに、前記一の保持装置が前記作業位置に配されるときに前記測定位置に配される他の前記保持装置とを備える、請求項5または請求項6に記載のワーク処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、ワーク処理方法、およびワーク処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに溶接加工等の処理を行うためのワーク処理装置は、ワークを保持するためのクランパーと、クランパーを移動させるためのアクチュエータとを備えるワーク受け装置と、クランパーに保持されたワークを撮像するための撮像装置と、ワークに処理を行うための処理装置が固定されている産業用ロボットと、産業用ロボットを制御する制御装置とを備えている。クランパーに保持されたワークは撮像装置により撮像される。得られた画像が画像処理されることにより求められたデータに基づいて、制御装置により、産業用ロボットによるワークの処理位置が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-148368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接工程は製造工程の中でも時間がかかる工程であるため、溶接工程に要する時間を短縮することで、製造工程全体に要する時間を短縮したいとの要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるワーク処理方法は、ワークを保持する保持装置と、前記保持装置に保持されたワークに対して溶接を行う溶接装置とを備えるワーク処理装置によってワークを処理するワーク処理方法であって、測定工程と、処理工程とを含み、前記測定工程が、前記保持装置を測定位置に配置するとともに前記保持装置に前記ワークを保持させる保持工程と、前記測定位置に配置された前記保持装置に保持された前記ワークの第1位置情報を取得する第1位置取得工程と、前記第1位置取得工程で取得された前記第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置に至るまでの前記ワークの第1移動距離を算出する第1算出工程と、を含み、前記処理工程が、前記保持装置を前記ワークを保持した状態で前記測定位置から第1の方向に移送して作業位置に配置する移送工程と、前記作業位置において、前記第1算出工程で算出された前記第1移動距離に基づいて前記保持装置を前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整工程と、前記溶接装置によって前記ワークに対して溶接を行う溶接工程と、を含む。
【0006】
また、本明細書によって開示されるワーク処理装置は、ワークに対して溶接作業を行うためのワーク処理装置であって、ワークを保持する保持装置と、前記保持装置を測定位置から作業位置まで第1の方向に移送可能な移送装置と、前記保持装置が前記測定位置にあるときに前記ワークの第1位置情報を取得する第1位置取得装置と、前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記保持装置を前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整装置と、前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記ワークに対して溶接を行う溶接装置と、前記第1位置取得装置、前記移送装置および前記位置調整装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置までの前記ワークの移動距離を算出する演算処理部と、前記演算処理部によって算出された前記移動距離に基づいて前記位置調整装置による前記保持装置の移動を制御する動作制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示されるワーク処理方法、およびワーク処理装置によれば、溶接工程に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のワーク処理装置のブロック図
図2】実施形態のワーク処理装置の平面図
図3】実施形態のワーク処理装置において、保持装置が作業位置にある状態を示す部分拡大側面図
図4】実施形態のワーク処理装置において、保持装置が測定位置にある状態を示す部分拡大側面図
図5】実施形態のワーク処理装置において、位置調節装置によって保持装置が移動した状態を示す部分拡大側面図
図6】実施形態におけるワーク処理方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
(1)本明細書によって開示されるワーク処理方法は、ワークを保持する保持装置と、前記保持装置に保持されたワークに対して溶接を行う溶接装置とを備えるワーク処理装置によってワークを処理するワーク処理方法であって、測定工程と、処理工程とを含み、前記測定工程が、前記保持装置を測定位置に配置するとともに前記保持装置に前記ワークを保持させる保持工程と、前記測定位置に配置された前記保持装置に保持された前記ワークの第1位置情報を取得する第1位置取得工程と、前記第1位置取得工程で取得された前記第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置に至るまでの前記ワークの第1移動距離を算出する第1算出工程と、を含み、前記処理工程が、前記保持装置を前記ワークを保持した状態で前記測定位置から第1の方向に移送して作業位置に配置する移送工程と、前記作業位置において、前記第1算出工程で算出された前記第1移動距離に基づいて前記保持装置を前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整工程と、前記溶接装置によって前記ワークに対して溶接を行う溶接工程と、を含む。
【0010】
また、本明細書によって開示されるワーク処理装置は、ワークに対して溶接作業を行うためのワーク処理装置であって、ワークを保持する保持装置と、前記保持装置を測定位置から作業位置まで第1の方向に移送可能な移送装置と、前記保持装置が前記測定位置にあるときに前記ワークの第1位置情報を取得する第1位置取得装置と、前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記保持装置を前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる位置調整装置と、前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記ワークに対して溶接を行う溶接装置と、前記第1位置取得装置、前記移送装置および前記位置調整装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置までの前記ワークの移動距離を算出する演算処理部と、前記演算処理部によって算出された前記移動距離に基づいて前記位置調整装置による前記保持装置の移動を制御する動作制御部と、を備える。
【0011】
上記の構成によれば、予め測定工程においてワークの位置を測定して移動距離を算出しておき、処理工程において、算出された移動距離に基づいてワークの位置を調節する。これにより、処理工程においてワーク位置の測定と位置調整とを繰り返す頻度を低減することができ、作業時間を短縮できる。
【0012】
(2)上記の構成のワーク処理方法において、前記処理工程は、前記位置調整工程後の前記保持装置に保持された前記ワークの第2位置情報を取得する第2位置取得工程と、前記第2位置取得工程で取得された前記第2位置情報に基づいて前記ワークの位置が前記設定位置に対して許容範囲内にあるかどうかを判定する判定工程と、をさらに含み、前記判定工程において前記ワークの位置が前記許容範囲内にあると判定された場合に前記溶接工程が実行されても構わない。
【0013】
また、上記の構成のワーク処理方法において、前記処理工程は、前記判定工程において前記ワークの位置が前記許容範囲内にないと判定された場合に、前記第2位置情報に基づいて前記設定位置に至るまでの前記ワークの第2移動距離を算出する第2算出工程と、前記第2移動距離に基づいて前記保持装置を前記第2の方向に移動させる位置補正工程と、をさらに含んでも構わない。
【0014】
また、上記の構成のワーク処理装置は、前記保持装置が前記作業位置にあるときに前記ワークの位置情報を測定する第2位置取得装置と、前記第2位置取得装置によって測定された第2位置情報に基づいて前記ワークの位置が予め定められた許容範囲内にあるかどうかを判定する判定部と、をさらに備えていても構わない。
【0015】
ワーク位置の測定を減らすことが課題とはいえ、溶接実行前に位置測定を行うことで、確実な位置に溶接することができる。
【0016】
(3)上記の構成のワーク処理方法において、前記ワークがガスセンサ用部品であっても構わない。
【0017】
ガスセンサ用部品の溶接においては、部品同士の溶接位置を精密に制御することが求められるため、上記の位置調整方法を好適に適用できる。
【0018】
(4)上記の構成のワーク処理装置において、前記移送装置に取り付けられる一の前記保持装置と、前記移送装置に取り付けられるとともに、前記一の保持装置が前記作業位置に配されるときに前記測定位置に配される他の前記保持装置とを備えていても構わない。
【0019】
一の保持装置に保持されたワークに対して処理工程を行っている間に、他の保持装置に保持されたワークに対して測定工程を行うことができるから、作業時間をさらに短縮できる。
【0020】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態>
実施形態を、図1から図6を参照しつつ説明する。本実施形態のワーク処理装置1は、ワークWの溶接を行うための装置である。溶接の対象となるワークWは、例えば、測定対象となるガス中の酸素濃度を検知するためのガスセンサに用いられる部品である。ガスセンサは、酸素を検出するためのガスセンサ素子と、ガスセンサ素子を内部に保持する略円筒形の主体金具と、主体金具の後端部を収容する外筒とを備えており、主体金具と外筒とが溶接により接合される。
【0022】
[ワーク処理装置1の全体構成]
ワーク処理装置1は、図1に示すように、ワークWを保持するための保持装置10と、保持装置10を移送するための移送装置20と、保持装置10を移送装置20に対して昇降可能に組み付ける昇降装置31と、昇降装置31を押圧して昇降移動させる押圧装置41と、ワークWに対して溶接を行うための溶接装置50と、ワークWを撮像するための2台の撮像装置60A、60Bと、を備えている。昇降装置31と押圧装置41とが、保持装置10を変位させることでワークWの位置を調節する位置調整装置30を構成する。
【0023】
[保持装置10]
保持装置10は、図3に示すように、複数の把持部11と、把持部11を駆動する駆動装置12とを備える。各把持部11は、駆動装置12により互いに接近および離間する方向に駆動される。把持部11を互いに接近させることでワークWを把持することができ、把持部11を互いに離間させることでワークWを解放することができる。ワーク処理装置1は、複数(本実施形態では8つ)の保持装置10を備えている。
【0024】
[移送装置20]
移送装置20は、図2に示すように、回転軸21と、この回転軸21の周りに回転可能な円板状のターンテーブル22とを備えている。ターンテーブル22は、水平に設置されており、図示しない駆動装置によって、回転軸21の周りに回転駆動される。複数の保持装置10は、図3に示すように、それぞれ昇降装置31を介してターンテーブル22に組み付けられている。
【0025】
複数の昇降装置31、およびこれらに接続された保持装置10は、図2に示すように、回転軸21の周りに、等間隔で、円を描くように並んでいる。保持装置10、および保持装置10に保持されたワークWは、ターンテーブル22の回転に伴って、水平方向(図2の矢印方向:第1の方向の一例)に、つまり、ターンテーブル22の板面に平行な方向に移送される。一の昇降装置31に接続された一の保持装置10が作業位置に配されるときに、一の保持装置10の隣に配された他の昇降装置31に接続された他の保持装置10が、測定位置に配されるようになっている。測定位置は、第1撮像装置60AによるワークWの撮像が可能な位置である。作業位置は、第2撮像装置60BによるワークWの撮像と、溶接装置50によるワークWに対する溶接作業とが可能な位置である。
【0026】
[昇降装置31]
昇降装置31は、図3に示すように、保持装置10に連なる芯部32と、芯部32に連なる受け部33と、芯部32に取り付けられて受け部33を付勢する付勢部材34とを備えている。
【0027】
芯部32は、円柱状であって、ターンテーブル22を鉛直方向に貫通して配されている。芯部32の一端部(図3の下端部)はターンテーブル22の上方に突出しており、ここには保持装置10が接続されている。また、他端部(図3の上端部)はターンテーブル22の下方に突出しており、ここには受け部33が接続されている。芯部32は、鉛直方向(図3の上下方向:第2の方向の一例)、つまり、移送装置20による保持装置10の移送方向に対して垂直な方向に変位可能となっている。これにより、芯部32に連なる保持装置10、および、保持装置10に保持されたワークWも、移送装置20による保持装置10の移送方向に対して垂直な方向に変位可能となっている。
【0028】
受け部33は、芯部32よりも大きな径を有する円板状をなし、ターンテーブル22に平行に配されている。受け部33がターンテーブル22に当接することで、芯部32および芯部32に接続された保持装置10が、それ以上下方に変位することが規制されている。
【0029】
付勢部材34は、例えばコイルばねであって、内部に芯部32が挿通されている。付勢部材34の一端(図3の下端)は、ターンテーブル22に支持されており、他端(図3の上端)は、受け部33に当接している。付勢部材34は、受け部33をターンテーブル22から離れる方向(図3の上方)に付勢している。受け部33に対して外部から力が加えられていない初期状態(図3に示す状態)では、付勢部材34が圧縮されていない。この状態では、受け部33は、ターンテーブル22から離間して配されている。
【0030】
[押圧装置41]
押圧装置41は、図3に示すように、サーボモータ42と、このサーボモータ42に接続されて受け部33を押圧する押し治具43とを備えている。押し治具43は、サーボモータ42に駆動されて上下方向に移動可能となっている。押し治具43が下方に移動すると、図5に示すように、押し治具43により受け部33が押圧され、受け部33がターンテーブル22に近づく方向(図3の下方)に変位する。すると、付勢部材34が受け部33とターンテーブル22との間で圧縮され、保持装置10およびワークWがターンテーブル22から離れる方向(図3の下方)に変位する。押し治具43が上方に移動すると、図3に示すように、押し治具43による受け部33の押圧が解除される。すると、受け部33が付勢部材34によってターンテーブル22から離れる方向に付勢され、昇降装置31および保持装置10が初期状態に戻る。
【0031】
[溶接装置50]
溶接装置50は、例えばレーザ溶接装置である。溶接装置50は、作業位置にあるワークWに対して溶接作業が可能な位置に配置されており、ワークWに対して溶接作業を行う。
【0032】
[撮像装置60A、60B]
撮像装置60A、60Bは、保持装置10に保持されたワークWを撮像するための装置であって、CCDやCMOS等のイメージセンサや、ワークWを照らすための光源などを備えている。2つの撮像装置60A、60Bのうち一方は、測定位置にある保持装置10が保持するワークWを撮像可能な位置に配置された第1撮像装置60Aである。他方は、作業位置にある保持装置10が保持するワークWを撮像可能な位置に配置された第2撮像装置60Bである。
【0033】
[ワーク処理装置1の電気的構成]
次に、ワーク処理装置1の電気的構成について、図1を参照して説明する。ワーク処理装置1は、制御部70を有しており、制御部70によってその全体が制御統括されている。制御部70は、演算処理部71と、画像処理部72と、動作制御部73と、判定部74と含む。画像処理部72は、撮像装置60A、60Bに接続されている。画像処理部72は、撮像装置60A、60Bから出力される画像信号が取り込まれるように構成されている。第1撮像装置60Aと画像処理部72とが、第1位置取得装置75を構成し、第2撮像装置60Bと画像処理部72とが、第2位置取得装置76を構成している。動作制御部73は、保持装置10、移送装置20、押圧装置41および溶接装置50に接続されている。保持装置10、移送装置20、押圧装置41および溶接装置50の動作は、動作制御部73によって制御されている。
【0034】
画像処理部72は、撮像装置60A、60Bによって撮像された撮像画像を解析してワークWの位置情報を取得する。演算処理部71は、第1位置取得装置75および第2位置取得装置76によって取得された位置情報に基づいて、予め定められた設定位置までのワークWの移動距離を算出する。動作制御部73は、演算処理部71によって算出された移動距離に基づいて押圧装置41を駆動し、昇降装置31を昇降させて保持装置10を変位させる。判定部74は、第1位置取得装置75および第2位置取得装置76によって取得された位置情報に基づいて、ワークWの位置が予め定められた設定位置に対して許容範囲内にあるかどうかを判定する。
【0035】
[ワーク処理装置1の動作態様]
上記のワーク処理装置1を用いたワークWの処理方法について、図6を参照しつつ説明する。ワークWの処理方法は、測定工程と、処理工程と、を含む。測定工程は、保持工程と、第1位置取得工程と、第1算出工程と、を含む。処理工程は、移送工程と、位置調整工程と、第2位置取得工程と、判定工程と、第2算出工程と、位置補正工程と、溶接工程と、を含む。
【0036】
まず、測定工程について説明する。最初に、動作制御部73は、保持装置10を駆動制御して、ワークWを把持部11に保持させる。動作制御部73は、移送装置20を制御して、ワークWを保持した保持装置10を測定位置に配置する(保持工程:ステップS1)。
【0037】
次に、制御部70は、第1撮像装置60Aを制御して、測定位置に配置された保持装置10に保持されているワークWを撮像し、第1撮像画像を得る。画像処理部72は、得られた第1撮像画像を解析して、ワークWの第1位置情報を取得する(第1位置取得工程:ステップS2)。なお、ワークWの位置は、予め定められた基準位置(ゼロ点位置)からのワークWの高さとして把握される。
【0038】
次に、演算処理部71は、第1位置取得工程で取得された第1位置情報に基づいて、予め定められた設定位置に至るまでのワークWの第1移動距離を算出する(第1算出工程:ステップS3)。設定位置は、保持装置10が作業位置にあるときの、ワークWの、溶接装置50によって溶接作業を行うために最も好ましい高さに設定されている。
【0039】
第1移動距離は、例えば、下記式(1)により求められる。
【0040】
Y=A-B+C+D-X …(1)
【0041】
式(1)中、Yは、第1移動距離である。Dは、ワークWが設定位置にあるときのワークWの高さである。Xは、第1位置取得工程で取得された第1位置情報である。
【0042】
式(1)中、Aは、あらかじめ保持装置10にマスターワークを保持させて測定位置に配置し、第1撮像装置60Aを用いてこのマスターワークを撮像し、得られた撮像画像を解析して得た位置情報である。Bは、あらかじめ保持装置10にマスターワークを保持させて作業位置に配置し、第2撮像装置60Bを用いてこのマスターワークを撮像し、得られた撮像画像を解析して得た位置情報である。第1撮像装置60Aと第2撮像装置60Bは同じ高さとなるように設定されているが、実際には、高さが僅かながらずれてしまう場合がある。AおよびBは、そのずれ量を把握して補正するためのパラメータである。
【0043】
式(1)中、Cは、あらかじめ保持装置10にマスターワークを保持させて作業位置に配置し、押圧装置41によって受け部33を予め設定された一定量押圧したときのマスターワークの実際の変位量である。動作制御部73から出力される押圧量のデータと、実際のワークWの変位量とには、わずかながら誤差が生じる場合がある。Cは、この誤差を把握して補正するためのパラメータである。
【0044】
なお、上記した第1撮像装置60Aと第2撮像装置60Bの高さのずれや、動作制御部73から出力される押圧量のデータと実際のワークWの変位量との誤差が無視できる程度である場合には、これらのパラメータが考慮されなくても構わない。
【0045】
次に、処理工程について説明する。第1算出工程の完了後、動作制御部73は、移送装置20を制御して、ターンテーブル22を回転駆動させる。測定工程終了後のワークWを保持した保持装置10は、移送装置20によって測定位置から水平方向(第1の方向)に移送され、作業位置に配置される(移送工程:ステップS11)。この移送工程において、保持装置10は水平方向にのみ移動し、保持装置10に保持されたワークWの高さは変化しない。
【0046】
次に、動作制御部73は、押圧装置41を制御して、第1移動距離に基づいて、作業位置に配された保持装置10を、移送装置20による保持装置10の移送方向に対して垂直な方向(第2の方向)に移動させる(位置調整工程:ステップS12)。具体的には、動作制御部73の制御により、押圧装置41の押し治具43が、受け部33を、第1移動距離分だけ押し下げる。これにより、付勢部材41が圧縮され、保持装置10、および保持装置10に保持されたワークWが、第1移動距離分だけ下方に変位する。
【0047】
次に、制御部70は、第2撮像装置60Bを制御して、位置調整終了後の保持装置10に保持されているワークWを撮像し、第2撮像画像を得る。画像処理部72は、得られた第2撮像画像を解析して、ワークWの第2位置情報を取得する(第2位置取得工程:ステップS13)。
【0048】
次に、判定部74は、第2位置情報に基づいて、ワークWの位置が設定位置に対して許容範囲内にあるかどうかを判定する(判定工程:ステップS14)。許容範囲内とは、溶接装置50によるワークWの溶接作業が支障なく行える範囲内である。
【0049】
判定工程においてワークWの位置が許容範囲内にないと判定された場合には、演算処理部71は、第2位置情報に基づいて設定位置までのワークWの第2移動距離を算出する(第2算出工程:ステップS15)。
【0050】
次に、動作制御部73は、押圧装置41を制御して、第2移動距離に基づいて、保持装置10を、移送装置20による保持装置10の移送方向に対して垂直な方向(第2の方向)に移動させる(位置補正工程:ステップS16)。具体的には、動作制御部73の制御により、押圧装置41の押し治具43が、位置調整終了後の状態の受け部33を、さらに第2移動距離分だけ押し下げる。これにより、付勢部材34がさらに圧縮され、保持装置10、および保持装置10に保持されたワークWが、第2移動距離分だけ下方に変位する。
【0051】
位置補正工程後に、再びステップS13とステップS14の処理が行われ、ワークWの位置が設定位置に対して許容範囲内にあるかどうかが判定される。ワークWの位置が許容範囲内と判定されるまで、ステップS15、ステップS16、ステップS13、およびステップS14の処理が繰り返される。
【0052】
判定工程においてワークWの位置が許容範囲内にあると判定された場合には、動作制御部73は、溶接装置50を制御してワークWに対して溶接作業を行う(溶接工程:ステップS17)。以上のようにして、ワークWに対する溶接処理が完了する。
【0053】
上記したように、一の保持装置10が作業位置に配されるときに、一の保持装置10の隣に配された他の保持装置10が測定位置に配されるようになっている。一の保持装置10に保持されたワークWに対して処理工程が行われている間に、他の保持装置10に保持された他のワークWに対して測定処理が行われる。
【0054】
一の保持装置10に保持されたワークWに対する溶接処理の完了後、動作制御部73は、押圧装置41を制御して、押し治具43による受け部33の押圧を解除する。付勢部材34が圧縮状態から開放され、受け部33を上方に付勢することによって、昇降装置31および保持装置10が初期状態に戻る。
【0055】
その後、動作制御部73は、移送装置20を制御して、測定工程終了後のワークWを保持した他の保持装置10を作業位置に配置する。作業位置に配された他の保持装置10に保持されたワークWに対して、上記と同様に処理工程が行われる。その間に、他の保持装置10のさらに隣に配された保持装置10に保持されたワークWに対して、上記と同様に測定工程が行われる。このような工程を繰り返すことにより、複数の保持装置10に保持されたワークWに対して順次測定工程と処理工程とが行われていく。
【0056】
[作用効果]
以上のように本実施形態によれば、予め測定工程においてワークWの位置を計測して第1移動距離を算出しておき、処理工程において、算出された第1移動距離に基づいてワークWの位置を調節する。これにより、処理工程においてワークWの位置の計測と位置調整とを繰り返す頻度を低減することができ、作業時間を短縮できる。
【0057】
また、処理工程において、溶接工程の実行前に第2位置取得工程と判定工程が行われる。判定工程において、ワークWの位置が許容範囲内にないと判定された場合には、第2算出工程と、位置補正工程とがさらに行われる。ワークWの位置の計測を減らすことが課題とはいえ、溶接工程の実行前に上記の工程が行われることで、より正確な位置に溶接を施すことができる。
【0058】
また、ガスセンサ用部品の溶接においては、部品同士の溶接位置を精密に制御することが求められるため、上記のようなワーク処理装置1、およびワーク処理方法を好適に適用できる。
【0059】
また、一の保持装置10に保持されたワークWに対して処理工程を行っている間に、他の保持装置10に保持されたワークWに対して測定工程を行うことができるから、作業時間をさらに短縮できる。
【0060】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、第2の方向は、第1の方向に対して垂直な方向であったが、第2の方向は、第1の方向と異なる特定の方向であればよく、第1の方向に対して斜めに傾いた方向であっても構わない。
(2)上記実施形態では、ターンテーブルが水平に配され、保持装置が移送装置によって水平方向に移送されたが、移送装置の向き、および、移送装置による保持装置の移送方向は、任意である。
(3)処理工程において、位置調整工程の後、第2位置取得工程、判定工程、第2算出工程、および位置補正工程を経ることなく、溶接工程に進んでも構わない。
(4)処理工程において、位置補正工程後に、第2位置取得工程および判定工程に戻ることなく、溶接工程に進んでも構わない。
(5)移送装置は、上記のようなターンテーブルを備える装置に限るものではなく、例えば保持装置を直進方向に移送するコンベア装置を備える装置であっても構わない。
(6)移送装置に取り付けられる保持装置の数は上記実施形態に限るものではなく、任意である。
(7)位置調整装置の構成は上記実施形態に限るものではなく、保持装置を第1の方向とは異なる第2の方向に移動させることが可能な装置であればよい。
(8)1台の撮像装置によって、測定位置にある保持装置に保持されたワークと、作業位置にある保持装置に保持されたワークとの双方が撮像可能とされていても構わない。
(9)上記実施形態において、ワークWは、ガス中の酸素濃度を検知するためのガスセンサに用いられる部品であり、主体金具と外筒とが溶接により接合されたが、溶接により接合される部位は、主体金具と外筒との接合部分以外の部位であっても構わない。また、ワークは酸素センサとは異なるガスセンサのための部品であってもよく、ガスセンサ用部品以外の部材であっても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1:ワーク処理装置
10:保持装置
20:移送装置
30:位置調整装置
50:溶接装置
70:制御部
71:演算処理部
72:動作制御部
74:判定部
75:第1位置取得装置
76:第2位置取得装置
W:ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6