(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085174
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】作業機器
(51)【国際特許分類】
E01B 29/24 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
E01B29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196715
(22)【出願日】2020-11-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示会名 第6回鉄道技術展2019 開催場所 幕張メッセ 開催日 令和1年11月27日~令和1年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390041379
【氏名又は名称】株式会社山崎歯車製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士
(72)【発明者】
【氏名】山崎 清水
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057BA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レールを締着固定する固定作業又はその締着固定を解除する解除作業に用いる作業機器であって、作業を効率的に行うことが可能であり、固定作業又は解除作業を繰り返す場合の作業負担が低減され、また、テコの原理を用いるものに比べて、その全体をコンパクトに形成することが容易な作業機器を提供する。
【解決手段】パンドロール等のレール固定具に係合させる係合部4と、外部からの動力が入力される入力部21又はアクチュエータと、入力部21又はアクチュエータからの動力によって係合部4を、レール固定具50の挿入部51に沿う方向である可動方向に直動させる可動機構6とを備え、挿入部51を、可動方向に直動させることによって、ショルダー60の被挿入部に挿入するか、或いは該被挿入部から抜き取る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線バネによって少なくとも一部が構成されたレール固定具における直線状に形成された挿入部を、レールを下支えする枕木側に固定されたショルダーの被挿入部に嵌合して挿入することにより、該レール固定具に設けられた当接部によって、前記レールを前記枕木側に弾力的に押し付けて締着固定する作業である固定作業に用いるか、或いは、前記挿入部を前記被挿入部から抜き取ることにより、前記レールの前記枕木側への締着固定を解除する作業である解除作業に用いる作業機器であって、
前記レール固定具に係脱可能に係合させる係合部と、
外部からの動力が入力される入力部又はアクチュエータと、
前記入力部又は前記アクチュエータからの動力によって、前記レール固定具に係合された状態の前記係合部を、前記挿入部に沿う方向である可動方向に直動作動させる可動機構とを備えた
ことを特徴とする作業機器。
【請求項2】
前記可動機構は、前記入力部又は前記アクチュエータからの動力によって回転駆動される入力軸を含み且つ該入力軸の回転動力を減速させる減速機構と、該減速機構により減速された回転動力によって前記係合部を前記可動方向に直動させる作動機構とを有する
請求項1に記載の作業機器。
【請求項3】
前記入力部は、前記入力軸の一端側に一体的に形成され且つスパナ、手動のレンチ又はインパクトレンチを係脱可能に係合させることが可能なヘッド部である
請求項2に記載の作業機器。
【請求項4】
前記作動機構は、前記可動方向に形成された作動軸を有し、
前記作動軸は、前記入力軸からの回転動力によって自身の軸方向に直動するように構成された
請求項2又は3の何れかに記載の作業機器。
【請求項5】
前記減速機構は、前記入力軸に装着され且つ該入力軸と一体回転する入力ギヤと、前記作動軸の軸回りに回転可能に支持され且つ前記入力ギヤと噛み合う出力ギヤとを有し、
前記作動機構は、前記出力ギヤに穿設された挿入孔の内周面に形成された雌ネジと、前記挿通孔に前記作動軸をネジ係合されて挿通可能なように該作動軸の外周面に形成された雄ネジとを有し、
前記出力ギヤの回転によって、自身の軸回り回転が規制された状態の前記作動軸が、その軸方向に直動作動する
請求項4に記載の作業機器。
【請求項6】
前記入力ギヤはウォームギヤであり、
前記出力ギヤは前記フォームギヤと噛み合う平歯車である
請求項5に記載の作業機器。
【請求項7】
前記作動軸の少なくとも一端側に前記係合部が配置された
請求項4乃至6の何れかに記載の作業機器。
【請求項8】
前記可動機構が前記レール固定具を作動させる側と反対側に前記可動機構が移動することを、前記枕木側との当接によって規制する移動規制部と、
前記可動機構が前記レール固定具を作動させている際に、該可動機構が前記移動規制部側を支点として回動することを前記レール側との当接によって規制するが回動規制部とを備えた
請求項1乃至7の何れかに記載の作業機器。
【請求項9】
前記レールの側面に近接又は当接して前記可動機構を含む一部又は全体がレール側に倒れるのを防止する転倒防止部を備えた
請求項1乃至8の何れかに記載の作業機器。
【請求項10】
前記可動機構は、前記可動方向に形成された作動軸と、該作動軸をその軸方向に移動作動させる油圧式のアクチュエータとを有する
請求項1に記載の作動機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを枕木側に締着固定する作業に用いるか、或いは、レールの枕木側への締着固定を解除する作業に用いる作業機器に関する。
【背景技術】
【0002】
レールをその下側に配置された枕木側に締着固定するパンドロールと呼ばれるレール固定具が従来公知である。このレール固定具は、少なくとも一部が線バネから構成され、直線状に成形された挿入部及びレールに当接する当接部を有し、その全体がクリップ状に成形されている。
【0003】
このレール固定具は、その当接部によってレールを枕木側に弾力的に押さえ付けるようにして、前記挿入部を、枕木側に固定されたショルダーの装着孔(被挿入部)に嵌合して挿脱可能に挿入することにより、レールを枕木側に締着固定する一方で、装着孔から挿入部から抜き取ることによって、レールの枕木側への締着固定を解除する。
【0004】
挿入部を装着孔に挿入してレールを枕木に締着固定する固定作業や、装着孔から挿入部を抜き取ってレールの枕木への締着固定を解除する解除作業の際には、線バネの弾性力に抗して挿入部の装着孔への挿入又は挿入部の装着孔からの抜き取りを行う必要があり、これを完全な手作業で行うのは困難である。
【0005】
このような事情に鑑み、一直線状に成形された棒状の本体と、本体の下端側に配置され且つレール固定具に係脱可能に係合させるフック(係合部)とを備え、フックをレール固定具に引っ掛け、その下端側がショルダー側に当接された状態の本体を、その上端側を把持し、その下端側を支点として前後に揺動させることによって、挿入部を装着孔に挿入するか、或いは装着孔から抜き取る作業具(作業機器)が公知になっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
上記文献の作業具によれば、テコの原理によりレール固定具に大きな力を作用させることができるため、固定作業や解除作業を行うことが容易になる。
【0007】
しかし、このような作業具では、本体をその下端を支点に前後揺動させた際、フックは該本体の下端側を中心とした円弧状の移動軌跡を描くのに対して、挿入部を装着孔に挿入する動作又は装着孔から抜き取る動作が直動的であるため、余分な力が必要になる場合や、作業中に弾性力等によって衝撃力が発生する場合等、種々の不具合が生じるケースがあり、これによって作業の効率が低下することがあり、この作業効率の低下は、固定作業や解除作業を繰り返す場合における作業者の負担を大幅に増大させる。また、大きな力をレール固定具に作用させるためには、本体の長さを一定以上にする必要があるので、全体をコンパクトに形成することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、レール固定具によってレールを締着固定する固定作業又はその締着固定を解除する解除作業に用いる作業機器であって、作業を効率的に行うことが可能であり、固定作業又は解除作業を繰り返す場合の作業負担が低減され、また、テコの原理を用いるものに比べて、その全体をコンパクトに形成することが容易な作業機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、線バネによって少なくとも一部が構成されたレール固定具における直線状に形成された挿入部を、レールを下支えする枕木側に固定されたショルダーの被挿入部に嵌合して挿入することにより、該レール固定具に設けられた当接部によって、前記レールを前記枕木側に弾力的に押し付けて締着固定する作業である固定作業に用いるか、或いは、前記挿入部を前記被挿入部から抜き取ることにより、前記レールの前記枕木側への締着固定を解除する作業である解除作業に用いる作業機器であって、前記レール固定具に係脱可能に係合させる係合部と、外部からの動力が入力される入力部又はアクチュエータと、前記入力部又は前記アクチュエータからの動力によって、前記レール固定具に係合された状態の前記係合部を、前記挿入部に沿う方向である可動方向に直動作動させる可動機構とを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記可動機構は、前記入力部又は前記アクチュエータからの動力によって回転駆動される入力軸を含み且つ該入力軸の回転動力を減速させる減速機構と、該減速機構により減速された回転動力によって前記係合部を前記可動方向に直動させる作動機構とを有するものとしてもよい。
【0012】
前記入力部は、前記入力軸の一端側に一体的に形成され且つスパナ、手動のレンチ又はインパクトレンチを係脱可能に係合させることが可能なヘッド部であるものとしてもよい。
【0013】
前記作動機構は、前記可動方向に形成された作動軸を有し、前記作動軸は、前記入力軸からの回転動力によって自身の軸方向に直動するように構成されたものとしてもよい。
【0014】
前記減速機構は、前記入力軸に装着され且つ該入力軸と一体回転する入力ギヤと、前記作動軸の軸回りに回転可能に支持され且つ前記入力ギヤと噛み合う出力ギヤとを有し、前記作動機構は、前記出力ギヤに穿設された挿入孔の内周面に形成された雌ネジと、前記挿通孔に前記作動軸をネジ係合されて挿通可能なように該作動軸の外周面に形成された雄ネジとを有し、前記出力ギヤの回転によって、自身の軸回り回転が規制された状態の前記作動軸が、その軸方向に直動作動するものとしてもよい。
【0015】
前記入力ギヤはウォームギヤであり、前記出力ギヤは前記フォームギヤと噛み合う平歯車であるものとしてもよい。
【0016】
前記作動軸の少なくとも一端側に前記係合部が配置されたものとしてもよい。
【0017】
前記可動機構が前記レール固定具を作動させる側と反対側に前記可動機構が移動することを、前記枕木側との当接によって規制する移動規制部と、前記可動機構が前記レール固定具を作動させている際に、該可動機構が前記移動規制部側を支点として回動することを前記レール側との当接によって規制するが回動規制部とを備えたものとしてもよい。
【0018】
前記レールの側面に近接又は当接して前記可動機構を含む一部又は全体がレール側に倒れるのを防止する転倒防止部を備えたものとしてもよい。
【0019】
前記可動機構は、前記可動方向に形成された作動軸と、該作動軸をその軸方向に移動作動させる油圧式のアクチュエータとを有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の作業機器によれば、レール固定具に係合する係合部が、挿入部の作動方向に対応して直動するため、作業を効率的に行うことが可能であり、固定作業又は解除作業を繰り返す場合の作業負担が低減され、また、テコの原理を用いるものに比べて、その全体をコンパクトに形成することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した作業機器の構成を示す平面図である。
【
図2】本発明を適用した作業機器の構成を示す側面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示す作業機器の構成を、レール、枕木及びインシュレータを破断して示す正面図である。
【
図4】
図1乃至
図3に示す作業機器によって解除作業を行う状態を示した側面図である。
【
図5】作業機器を搬送する搬送装置の構成を示す正面図である。
【
図6】本発明の別実施形態に係る作業機器の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1,
図2は本発明を適用した作業機器の構成を示す平面図及び側面図であり、
図3は
図1及び
図2に示す作業機器の構成を、レール、枕木及びインシュレータを破断して示す正面図である。列車の走行方向である前後方向に敷設される左右一対のレールRは、レール固定具50によって、前後方向に並列された複数の枕木Tの上面側に締着固定される。
【0023】
レールRは、本例では、平底レールであり、枕木T側に接地される幅広の底部R1と、底部R1の直上に位置し且つ底部R1よりも幅狭の頭部R2と、底部R1と頭部R2とを連接し且つ該頭部R2よりもさらに幅狭の腹部R3とを一体で有している。枕木Tは、木製又はコンクリート製の材料によって左右方向に延びる四角柱状に成形され、その上面には、敷道パットPが敷設されている。
【0024】
レールRは、敷道パットP上に自立した状態で設置される。枕木Tにおける敷道パットPの左右両側の夫々には、ショルダー60が設置されている。ショルダー60は、その中途部から下部に至る部分が枕木Tに埋設されて固定され、その上部に、枕木Tから上方に突出して露出する露出部61になる。
【0025】
この露出部61の正面視で中央寄り部分には、自身をレールRと平行な方向に貫通する丸孔である装着孔(被挿入部)61aが穿設されている。ちなみに、敷道パットPには、平面視で露出部61を避けるように方形の切欠き状をなす凹部P1が形成されている。
【0026】
レール固定具50は、平面視で「の」の字状のクリップ形状に曲げ形成された線状バネである。レール固定具50の一端寄り部分(一端部)は、レールR及び装着孔61aの形成方向に沿う方向(具体的には、レールR及び装着孔61aと平行な方向)に一直線状に形成された挿入部51になる。
【0027】
レール固定具50では、挿入部51から一体で連続して平面視でU字状をなす接続部52と、該接続部52から一体で連続して挿入部51と平行で且つ同一の高さを有する平行部53と、該平行部53から一体で連続して平面視でU字状をなし且つ正面視で逆U字状をなす被係合部54と、該被係合部54から一体で連続して枕木T側に当接する当接部56とを有する。
【0028】
平行部53と被係合部54とは側面視でヘの字状をなし、当接部56の全体又はその大部分は、挿入部51よりも高い位置において該挿入部51と平行な一直線状をなし、その端面が挿入部51の挿入側の端面と反対を向いている。
【0029】
レールRを敷道パットP上に自立させ、レール固定具50の挿入部51を、該レール固定具50の弾性力に抗して、該装着孔61aに嵌合して挿入すれば、その当接部56が該レールRの底部R1の上面側に弾力的に当接し、これによってレールRが枕木T側に締着固定される。
【0030】
すなわち、挿入部51を装着孔61aに挿入する作業が、レールRを枕木T側に締着固定する固定作業になる。一方、挿入部51を装着孔61aから抜き取る作業が、レールRの枕木T側への締着固定を解除する解除作業になる。この固定作業及び解除作業を、作業機器1を用いて効率的に行う。
【0031】
ちなみに、レールRの底部R1と当接部51との間には、絶縁材料から構成されたインシュレータ70が介在されている。言い換えると、当接部51による枕木T側への弾性力は、インシュレータ70を介して、レールRに作用する。このインシュレータ70は、正断面視でレールRの底部R1の上面から外側側面に至る範囲に至るL字状に形成されている。また、インシュレータ70には、平面視で露出部61を避けるように方形の切欠き状をなす凹部71が形成されている。
【0032】
次に、
図1乃至
図4に基づいて作業機器1の構成を説明する。
【0033】
作業機器1は、その構成部品の大部分が金属製材料によって構成され、具体的には、可動方向(前後方向)に長い方形板状に成形されたベース2と、該ベース2の前後方向中途部から上方に突出形成された伝動ケース3と、レール固定具50の被係合部54に係脱可能に引っ掛けて係合するフック(係合部)4と、該伝動ケース3の少なくとも一部が収容され且つフック4を挿入部51に沿う方向(具体的には平行な方向)である可動方向に直動させる可動機構6と、を備えている。
【0034】
可動機構6は、可動方向に形成された作動軸7と、該作動軸7をその軸方向に直動させる作動機構と、入力された回転動力を減速して前記作動機構(作動軸7)に伝動する減速機構とを有している。
【0035】
作動軸7は、その軸方向における両端寄り部分である被取付部11,11の径が、その中途部分である作動部12の径よりも小さく設定され、この前後の各被取付部11の先端側には、フック4,4が上下回動可能に取り付け支持されている。各フック4は、この上下回動によって、可動方向に向けられた使用姿勢と、上方に向けられた格納姿勢とに切換可能に構成される。
【0036】
作動機構は、伝動ケース3の作動側収容部13に回転自在に支持された平歯車である出力ギヤ14と、前記作動軸7とを有している。出力ギヤ14は、その中心部に作動軸7を垂直又は略垂直に挿通させる挿通孔16が穿設されている。作動軸7の作動部12の外周面には、螺旋状に雄ネジ12aが形成されている。一方、挿通孔16の内周面には、雄ネジ12aとネジ係合する雌ネジ16aが形成されている。
【0037】
作動側収容部13には、作動軸7の作動部12の部分を貫通させる貫通孔13aが形成されている。この作動部12(作動軸7)を、その軸方向と垂直な面で切断した面(断面)は、半円以上の円弧とその両端を接続する弦とからなる形状に成形されている。言い換えると、作動部12の外周面には、フラットな切欠き状面12bが形成されている。一方、貫通孔13aは、作動部12(作動軸7)の断面形状と同一又は略同一の形状に成形されている。
【0038】
すなわち、作動軸7は、その軸回り方向への回転が規制(禁止)され且つその軸方向への移動が可能な状態で、作動収容部13側(伝動ケース3側)に支持されている。ちなみに、作動軸7の回転は、該作動軸7に取り付けられたフック4とレール固定具50の被係合部54との係合によっても規制される。
【0039】
該構成によれば、出力ギヤ14の回転駆動によって、作動軸7を、その軸方向である可動方向の両側に移動作動させることが可能になる。具体的には、作動軸7が、出力ギヤ12の一方向への回転によって可動方向の一方側にスライド移動する一方で、他方向への回転によって可動方向の他方側にスライド移動するように構成されている。
【0040】
減速機構は、伝動ケース3の減速側収容部17に、その少なくとも一部が収容され且つ該減速側収容部17側(伝動ケース3側)に回転可能に支持された上下方向の入力軸18と、該入力軸18に一体的に装着され且つ出力ギヤ12と常時噛み合うウォームギヤである入力ギヤ19と、回転動力が入力される入力部21と、前記出力ギヤ14とを備えている。
【0041】
入力軸18は、側面視で作動軸7と直交する姿勢で自身の軸回りに回転可能に支持され、その上端部が減速側収容部17から上方に突出して外部に露出した状態になり、該上端部に入力部21が一体的に設けられている。また、入力軸18における減速側収容部17に内部に位置する下寄り部分には、該入力軸18と一体回転する入力ギヤ19が装着固定されている。
【0042】
入力部21は、入力軸18と共に一体回転するヘッド部であり、このヘッド部21はレンチ、手動のスパナ又は電動のインパクトレンチ等の工具を係合させることが可能であり、これらの工具からの回転動力が入力部21を介して入力軸18に伝動される。
【0043】
このようにして入力軸18に回転動力が入力された場合、入力ギヤ19が該入力軸18と共に一体で回転する。入力ギヤ19の回転動力は、出力ギヤ14にギヤ伝動される。出力ギヤ14の回転動力は、上述した通り、作動軸7の可動方向への直動作動に変換される。入力ギヤ19から出力ギヤ14へのギヤ伝動の際には、両ギヤ14,19の歯数の関係で、その回転数が減少して伝動される。
【0044】
ちなみに、出力ギヤ14の回転作動を、上述した雄ネジ12a及び雌ネジ16aによって、作動軸7の直動作動に変換する際にも、出力ギヤ14の小さな回転力が、作動軸7の軸方向の大きな作動力に変換されるように、減速が行われる。すなわち、この作動機構も減速機構として機能している。
【0045】
なお、作動軸7には、その軸方向である前後に大きな力が作用するため、その反力が伝動ケース3に作用することになる。このため、この伝動ケース3の前後の夫々の面と、ベース2の上面とを接続して強度を補強するリブ状の補強フレーム22、22等が設けられている。
【0046】
ベース2の長手方向の両端部は、枕木T側(具体的にはショルダー60)に当接することによって、固定作業時又は解除作業時におけるベース2の可動方向への移動を規制(禁止)する移動規制部2a,2aを構成している。
【0047】
具体的には、固定作業を行う場合、
図1及び
図2に示す通り、挿入部51の先端側をショルダー60(枕木T側)に向けられた状態のレール固定具50と、該ショルダー60(枕木T)と、作業機器1とを、この順番で、可動方向に並べ、レール固定具50の被係合部54に、その湾曲した部分の内側から、フック4を引っ掛けて係合させた状態で、挿入部51を、ショルダー60の装着孔61aに手作業で若干挿入し、準備を完了する。ちなみに、フック4の被係合部54への係脱は、該フック4の上下回動によって行ってもよい。
【0048】
この際、ベース2のショルダー60側の移動規制部2aが該ショルダー60に当接するとともに、フック4と被係合部54との係合が保持されるように、作動軸7の位置を調整しておく。このようにすると、フック4と、作動軸7と、移動規制部2aと、挿入部51と、装着孔61aとが平面視で可動方向に一直線状に並んだ状態になる。
【0049】
そして、上述した工具によって、作動軸7を、レール固定具50の弾性力に抗して、挿入部51がショルダー60の装着孔61aに挿入される側にスライド移動させ、挿入部51が装着孔61aに挿入されると、固定作業が完了する。
【0050】
この固定作業時や後述する解除作業時、この際、伝動ケース3、可動機構6及びベース2等を含む作業機器1を、該と枕木T側との当接部分である移動規制部2a側を支点として回動させる力が作用するが、この力を抗して作業機器1の回動を規制する回動規制部材(回動規制部)23が、ベース2のショルダー60に当接していない側の移動規制部2aに着脱可能に設けられている。
【0051】
回動規制部材23は、可動方向に対して垂直な方向に延びる着脱具24と、棒状に形成された規制本体26とを有している。着脱具24は、前後の移動規制部2a,2aの何れにも着脱自在に取り付け固定できるように、その全体形状が側面視で可動方向に対称な逆T字状に形成されている。
【0052】
着脱具24の可動方向の中心には、可動方向と交差(具体的には、直交)する方向であって且つベース2の水平又は略水平な両面に沿う方向である左右方向の取付孔24aが穿設されている。規制本体26は、その一端部がレールRの直下にまで臨んだ状態で、その他端寄り部分が取付孔24aに嵌合挿入された固定される。
【0053】
このようにして、ベース2に着脱可能に固定された規制本体26は、レールRの底部R1の下面に近接又は当接して、伝動ケース3、可動機構6及びベース2等を含む作業機器1の上述した回動を規制(禁止)するように構成されている。ちなみに、回動規制部材23によるこのような回動規制への切換作業は、実際には、上述した準備段階で行う。
【0054】
なお、フック4と、作動軸7と移動規制部2aと、挿入部51と、装着孔61aとを、側面視でも可動方向に一直線状に並べると、フック4を介してレール固定具50に可動方向に力を作用させた場合でも、移動規制部2a側を支点に上下回動させる力が作業機器1に作用しなくなるため、回動規制部材23を省略することが可能になる。
【0055】
図4は
図1乃至
図3に示す作業機器によって解除作業を行う状態を示した側面図である。同図に示す通り、解除作業を行う場合には、ベース2の前後の移動規制部2aのうち、固定作業時の反対側に回動規制部材23を着脱可能に取り付け固定する。また、前後一対のフック4,4も、固定作業時とは反対側のものを用いる。
【0056】
そして、ショルダー60のレール固定具50を挟んだ反対側に、作動軸7の位置を適宜調整した作業機器1を配置し、挿入部51が前記ショルダー60の装着孔61aに挿入して固定された状態のレール固定具50における被係合部54に、その湾曲した部分の外側から、フック4を引っ掛けて係合させ、ベース2の前記ショルダー60側の移動規制部2aを該ショルダー60に当接させ、該移動規制部2aの反対側の移動規制部2aに装着した回動規制部材23の規制本体26の先端寄り部分をレールRの底部R1の下面に近接又は当接させ、準備を完了する。
【0057】
この解除作業の準備段階において、フック4と、作動軸7と、移動規制部2aと、挿入部51と、装着孔61aとは、固定作業の準備段階と同様、平面視で可動方向に一直線状に並んだ状態になる。
【0058】
続いて、上述した工具によって、作動軸7を、レール固定具50の弾性力に抗して、挿入部51がショルダー60の装着孔61aから抜き取られるようにして、スライド移動させ、解除作業が完了する。
【0059】
ところで、このような解除作業時、レール固定具50の弾性力等によって衝撃が発生し、これによって可動機構3を含む一部又は全部がレールR側に倒れる可能性がある。ちなみに、この作業機器1は、ベース2上に略全てに部品が自然と分離しないように取り付けられているため、可動機構3を含む全体がレールR側に横倒れするリスクがある。
【0060】
この横倒れを防止する転倒防止部材(転倒防止部)27が伝動ケース3とレールRの腹部R3との間に介在されている。転倒防止部材27は、伝動ケース3のレールR側の側部に着脱自在に嵌め込まれる平面視でコの字状に成形され、その端部がレールRの腹部R3の側面に近接又は接触する状態になる。
【0061】
なお、同様の機能を有する転送防止部(図示しない)を、伝動ケース3やその他のベース2等の部分に一体的に形成してもよいし、逆に、転倒防止部材27を伝動ケース3に位置決めすることは必須でもない。
【0062】
以上のように構成される作業機器1によれば回動規制部材23の取り付け位置を前後で切り換えることによって、部品の交換なく、固定作業及び解除作業の両方を行うことが可能になる。
【0063】
また、フック4を直動作動させることによって、固定作業及び解除作動を円滑且つ迅速に行うことも容易になる。ちなみに、固定作業や解除作業を、例えば従来公知のパンプラーと呼ばれる作業機器の手動操作によって繰り返し行う場合、重労働になるが、この作業機器1によれば、フック4の可動方向への直動作動によって効率的に作業を行うことが可能になるとともに、インパクトレンチ等の動力を利用して固定作業や解除作業を行うことが可能になるため、作業負担が大幅に軽減される。
【0064】
さらに、作業機器1が移動や回動するのを防止するため、本来は作業機器1を重くする必要があるが、移動規制部2aや回動規制部材23によって、作業機器1の移動や回動が確実に規制されるため、作業機器1自体を軽量化することが容易である。
【0065】
なお、
図2及び
図3に仮想線で示す通り、入力軸18の上端部には、入力部21ではなく、電動モータ等のアクチュエータ28を設け、このアクチュエータ28で発生させた回転動力を入力軸18に伝動してもよい。
【0066】
また、
図2及び
図3に仮想線で示す通り、アクチュエータ28を、作動軸7の可動方向での位置に応じて自動的に制御する制御ユニット29を設けてもよい。この場合、作動軸7やレール固定具50が、ベース2に対して、所定の位置に移動していることを検出する一又は複数の検出センサ31,32や、作動軸7やレール固定具50のベース2に対する相対位置を検出する検出センサ(図示しない)等を設ける。制御ユニット28はこれらの検出センサ31,32の検出結果に基づいてアクチュエータ28を制御し、固定作業や解除作業を自動的に行う。
【0067】
さらに、ベース2に取り付け支持され且つ可動方向に伸縮作動する油圧シリンダー等の油圧式のアクチュエータによって、可動機構及びアクチュエータを構成してもよい。この場合、ピストンロッドの先端部にフック4が上下回動可能に装着される。
【0068】
次に、
図5に基づいて作業機器1を搬送する搬送装置80の構成を説明する。
【0069】
図5は作業機器を搬送する搬送装置の構成を示す正面図である。搬送装置80は、左右に車輪81,81によってレールR上を走行する機体82と、該機体82から上方の突設された支持フレーム83と、支持フレーム82を上下スライド自在なスライダー84と、その中途部がスライダー84に連結部材85を介して連結固定され且つ上下方向に延びる可動フレーム86とを備えている。
【0070】
可動フレーム86の下端部には、着脱可能に、作業機器1が取り付け固定されている。すなわち、作業機器1は、レールR上を走行する搬送装置80に吊り下げ支持された状態で搬送される。
【0071】
次に、
図6に基づいて本発明の別実施形態について上述の形態と異なる点を説明する。
【0072】
図6は本発明の別実施形態に係る作業機器の構成を示す平面図である。同図に示す作業機器1は、作動軸7を含む伝動ケース3が、回転テーブル33によって、ベース2上に前後に水平回動可能に支持されている。転倒防止部27は、ベース2におけるレール1側に延出された延出部2bに一体的に形成されている。
【0073】
固定作業時又は解除作動時、ベース2の可動方向の一端側の移動規制部2aとショルダー60に当接させる場合、該ショルダー60側にフック4が向くように回転テーブル33を回動させて位置決め固定し、その他端寄り部分に回動規制部材23を装着する。後の作業は上述した形態と同様である。
【0074】
該構成の作業機器1によれば、作動軸7の両端側にフック4を取り付ける必要がなくなり、その構成が簡略化され、さらになる小型化が可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1 作業機器
2a 移動規制部
4 フック(係合部)
6 可動機構
12a 雄ネジ
14 出力ギヤ(平歯車)
16 挿通孔
16a 雌ネジ
19 入力ギヤ(ウォームギヤ)
21 ヘッド部(入力部)
28 アクチュエータ
23 回転規制部材(回動規制部)
27 転倒防止部材(転倒防止部)
50 レール固定具(線バネ,パンドロール)
51 挿入部
56 当接部
60 ショルダー
R レール
T 枕木