(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085194
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20220601BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20220601BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/26 Z
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196752
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中澤 由彦
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC10
3D022AD01
3D022AE01
3D022AE22
(57)【要約】
【課題】乗降ステップの上側にデッキ部材が配置されている場合でも、照明具によって乗降ステップを確実に照らす。
【解決手段】ホイールローダ1の後部車体3は、運転席8に乗り降りするための乗降ステップ9と、乗降ステップ9の上側に配置され乗降ステップ9と運転席8との間に足場を形成するデッキ部材16と、乗降ステップ9に光を照射する照明具20とを含んで構成されている。デッキ部材16は、乗降時に踏面となる上面部17Aおよび乗降ステップ9と上下方向で対面する下面部17Bとを有し、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bと乗降ステップ9との間に設けられている。これにより、照明具20からの光を、デッキ部材16やオペレータに遮られることなく乗降ステップ9に照射することができ、夜間作業時に、乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り込むときの安全性を高めることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を備えた自走可能な車体と、
前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記車体は、前記運転席に乗り降りするための乗降ステップと、
前記乗降ステップの上側に配置され前記乗降ステップと前記運転席との間に足場を形成するデッキ部材と、
前記乗降ステップに光を照射する照明具とを含んで構成された作業機械において、
前記デッキ部材は、乗降時に踏面となる上面部および前記乗降ステップと上下方向で対面する下面部とを有し、
前記照明具は、前記デッキ部材の前記下面部と前記乗降ステップとの間に設けられていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記デッキ部材には、前記上面部から前記下面部へと貫通する複数の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記デッキ部材には、その周縁部から下方に突出して前記下面部を取り囲む枠部が設けられ、
前記照明具は、前記デッキ部材の前記下面部に取付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記デッキ部材の前記下面部には、前記デッキ部材の強度を確保する補強部材が設けられ、
前記照明具は、前記デッキ部材の前記補強部材に取付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記照明具は、前記デッキ部材の前記枠部と前記下面部とが交わる角部のうち前記運転席側に位置する角部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【請求項6】
前記乗降ステップは、前記車体の側面に間隔をもって取付けられ上下方向に延びる一対のサイドプレートと、
前記一対のサイドプレート間に取付けられた複数のステップ本体とを含んで構成され、
前記デッキ部材の前記下面部には、前記一対のサイドプレートに取付けられるデッキ取付ブラケットが設けられ、
前記照明具は、前記デッキ取付ブラケットに取付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記車体の側面には、前記車体に搭載された搭載機器を収容すると共に前記デッキ部材が取付けられる機器収容箱が設けられ、
前記照明具は、前記デッキ部材の前記下面部側に位置して前記機器収容箱に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばホイールローダ、油圧ショベル等の乗降ステップを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木作業に用いられるホイールローダ、油圧ショベル等の作業機械は、運転席を備えた自走可能な車体と、車体に設けられた作業装置とを含んで構成されている。作業機械の車体には、通常、オペレータが運転席に乗り降りするための乗降ステップが設けられている。また、作業機械の車体には、夜間作業時に乗降ステップに光を照射する照明具が設けられている(特許文献1,2,3,4参照)。
【0003】
ここで、特許文献2,3,4には、内部に運転席が設けられたキャブと乗降ステップを備えた作業機械においては、ステップの上側に照明具が配置され、この照明具によって乗降ステップの上方から光を照射する構成が開示されている。また、特許文献1には、乗降ステップの側方に設けられたハンドレールに照明具を昇降可能に取付け、この照明具によって乗降ステップの側方から光を照射する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-054431号公報
【特許文献2】特開2004-338566号公報
【特許文献3】特開2011-245951号公報
【特許文献4】特開2006-103455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、路面等の整地作業に好適に用いられるホイールローダにおいては、車体の側面に乗降ステップが設けられ、乗降ステップの上側には、乗降ステップと運転席との間に足場を形成するデッキ部材が設けられている。このため、乗降ステップの上方に配置された照明具から光を照射しても、この光がデッキ部材に遮られることにより、乗降ステップを確実に照らし出すことができないという問題がある。
【0006】
一方、ハンドレールに照明具を取付けた場合には、乗降ステップを乗り降りするときに照明具が邪魔となり、運転席に対する円滑な乗降動作が妨げられる。さらに、ハンドレールに照明具を取付けた場合には、作業装置を用いて整地作業等を行うときに、車輪に巻き上げられて飛散した土砂が照明具に衝突することにより、照明具が破損するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、乗降ステップの上側にデッキ部材が配置されている場合でも、照明具によって乗降ステップを確実に照らすことができ、かつ、飛散した土砂等から照明具を保護することができるようにした作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、運転席を備えた自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記車体は、前記運転席に乗り降りするための乗降ステップと、前記乗降ステップの上側に配置され前記乗降ステップと前記運転席との間に足場を形成するデッキ部材と、前記乗降ステップに光を照射する照明具とを含んで構成された作業機械において、前記デッキ部材は、乗降時に踏面となる上面部および前記乗降ステップと上下方向で対面する下面部とを有し、前記照明具は、前記デッキ部材の前記下面部と前記乗降ステップとの間に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、照明具からの光を、デッキ部材に遮られることなく乗降ステップに照射することができ、乗降ステップを確実に照らすことができる。また、照明具は、デッキ部材によって上方から覆われているので、作業機械の作業時に飛散した土砂等が、照明具に衝突するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態が適用されたホイールローダを示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態による照明具を後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等と共に示す要部拡大の正面図である。
【
図3】照明具、後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等を
図2中の矢示III-III方向から見た側面図である。
【
図4】照明具、後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等を示す斜視図である。
【
図5】照明具が設けられたデッキ部材を乗降ステップに取付ける状態を示す分解斜視図である。
【
図6】第2の実施形態による照明具を後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等と共に示す要部拡大の正面図である。
【
図7】照明具、後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等を
図6中の矢示VII-VII方向から見た側面図である。
【
図8】照明具が設けられたデッキ部材を乗降ステップに取付ける状態を示す分解斜視図である。
【
図9】第3の実施形態による照明具を後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等と共に示す要部拡大の正面図である。
【
図10】照明具、後部車体、乗降ステップ、デッキ部材等を
図9中の矢示X-X方向から見た側面図である。
【
図11】照明具が設けられたデッキ部材を乗降ステップに取付ける状態を示す分解斜視図である。
【
図12】第4の実施形態による照明具を後部車体、機器収容箱、乗降ステップ、デッキ部材等と共に示す要部拡大の正面図である。
【
図13】照明具、後部車体、機器収容箱、乗降ステップ、デッキ部材等を
図12中の矢示XIII-XIII方向から見た側面図である。
【
図14】照明具が設けられたデッキ部材を乗降ステップに取付ける状態を示す分解斜視図である。
【
図15】乗降ステップのサイドプレートに照明具を取付けた変形例を示す
図3と同様な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による作業機械を、ホイールローダに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図15を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、ホイールローダの走行方向を前後方向とし、ホイールローダの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0012】
図1ないし
図5は本発明の第1の実施形態を示している。図中、ホイールローダ1は、左,右の前車輪2Aが設けられた前部車体2と、左,右の後車輪3Aが設けられた後部車体3とを有し、これら前部車体2と後部車体3とにより自走可能な車体が構成されている。ホイールローダ1は、前部車体2と後部車体3とが、連結軸4を介して左,右方向に屈曲可能に連結されたアーティキュレート式車両として構成されている。前部車体2には、後述の作業装置6が設けられ、後部車体3には、後述のキャブ7、乗降ステップ9、デッキ部材16、照明具20等が設けられている。
【0013】
前部車体2と後部車体3との間には、左右のステアリングシリンダ5(左側のみ図示)が設けられている。これら左右のステアリングシリンダ5を伸縮させることにより、連結軸4を中心として前部車体2を左方向、または右方向に操舵させることができ、ホイールローダ1を左方向、または右方向に旋回走行させることができる。
【0014】
ホイールローダ1の前部車体2には、作業装置6が俯仰動可能に設けられている。作業装置6は、前部車体2に俯仰動可能に取付けられたブーム6Aと、ブーム6Aの先端に回動可能に取付けられたローダバケット6Bと、ブーム6Aを俯仰動させるブームシリンダ(図示せず)と、ローダバケット6Bを上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)させるバケットシリンダ6Cとにより構成されている。
【0015】
一方、ホイールローダ1の後部車体3には、エンジン(図示せず)およびキャブ7が設けられている。キャブ7は、後部車体3の前側に配置され、オペレータが搭乗する運転室を画成している。キャブ7内には、オペレータが座る運転席8が設けられ、運転席8の前側には、ホイールローダ1の走行動作を制御するステアリング装置、作業装置6の動作を制御するバケット操作装置(いずれも図示せず)が設けられている。
【0016】
ここで、キャブ7の左右両側には、ドア7Aが開閉可能に設けられている(左側のみ図示)。また、ドア7Aの下側には、地上からオペレータが操作できる高さ位置にドアロック7Bが設けられている。オペレータは、地上からドアロック7Bを操作してドア7Aを開いた状態で、乗降ステップ9を足場としてキャブ7内に搭乗する構成となっている。
【0017】
乗降ステップ9は、前車輪2Aと後車輪3Aとの間に位置して後部車体3の左右の側面にそれぞれ設けられている(左側のみ図示)。乗降ステップ9は、キャブ7よりも下側に配置され、オペレータが地上と運転席8との間を乗り降りするときの足場を形成している。
図5に示すように、乗降ステップ9は、一対のサイドプレート10と、上ステップ本体11、下ステップ本体12とを含んで構成されている。
【0018】
一対(2枚)のサイドプレート10は、後部車体3の側面に固定されたステップ取付ブラケット3Bに取付けられ、前後方向に間隔をもって対面している。サイドプレート10は、台形状をなす板体により形成され、キャブ7の下側から地面に向けて上下方向に延びている。サイドプレート10の上端には、デッキ取付フランジ10Aが設けられ、このデッキ取付フランジ10Aには、デッキ部材16が着脱可能に取付けられる。
【0019】
上ステップ本体11および下ステップ本体12は、一対のサイドプレート10間に取付けられている。上ステップ本体11と下ステップ本体12とは、地面から後部車体3に向けて斜め上向きに延びる階段状に連続し、運転席8に乗り降りするオペレータの足場を形成している。上ステップ本体11は、前後方向に延びる長方形の枠状に形成され、上ステップ本体11の前後方向の両端は、一対のサイドプレート10に溶接されている。下ステップ本体12も、前後方向に延びる長方形の枠状に形成され、下ステップ本体12の前後方向の両端は一対のサイドプレート10に溶接されている。また、下ステップ本体12の下側には、U字型の枠状に形成された補助ステップ13が、ボルト13Aを用いて一対のサイドプレート10に着脱可能に取付けられている。
【0020】
一対のサイドプレート10の上側には、例えばパイプ材に折曲げ加工を施すことにより形成された前側手摺り14および後側手摺り15が設けられている。前側手摺り14の基端側は、前側のサイドプレート10に固定されている。前側手摺り14の先端側は、デッキ部材16の上側へと延びた後、キャブ7に向って延在している。後側手摺り15の基端側は、後側のサイドプレート10に固定されている。後側手摺り15の先端側は、デッキ部材16の上側へと延びた後、後車輪3Aに向って延在している。これら前側手摺り14および後側手摺り15は、乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り降りするオペレータが把持することにより、オペレータの姿勢を安定させる。
【0021】
デッキ部材16は、乗降ステップ9の上側に配置されている。デッキ部材16は、乗降ステップ9の上ステップ本体11と運転席8との間に、オペレータの足場を形成している。即ち、乗降ステップ9の補助ステップ13から下ステップ本体12を経て上ステップ本体11に達したオペレータは、上ステップ本体11からデッキ部材16を足場としてキャブ7に搭乗し、運転席8に座るようになっている。
【0022】
デッキ部材16は、前後方向に延びる長方形状の踏み板部17と、踏み板部17の周縁部から下方に突出する枠部18とを有している。踏み板部17は、オペレータの乗降時に踏面となる上面部17Aと、乗降ステップ9と上下方向で対面する下面部17Bとを有し、下面部17Bの周囲は枠部18によって取り囲まれている。枠部18は、前後方向で対面する前枠部18Aおよび後枠部18Bと、左右方向で対面する左枠部18Cおよび右枠部18Dとを有し、踏み板部17を補強している。
【0023】
踏み板部17には、上面部17Aから下面部17Bへと貫通する複数の貫通孔17Cが形成されている。これら貫通孔17Cは、踏み板部17でのスリップを防止すると共に、踏み板部17上に落下した雨水等を排出する。踏み板部17の下面部17Bには、左右方向に延びて左枠部18Cと右枠部18Dとの間を連結する2枚のL字型のデッキ取付ブラケット17Dが溶接されている。これら2枚のデッキ取付ブラケット17Dの下端は、サイドプレート10のデッキ取付フランジ10Aにボルト等を用いて取付けられる。
【0024】
補強部材19は、デッキ部材16を構成する踏み板部17の下面部17Bに設けられている。補強部材19は、前後方向に延びて2枚のデッキ取付ブラケット17D間を連結し、デッキ部材16の強度を確保している。この補強部材19には、照明具20が取付けられている。
【0025】
照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bと乗降ステップ9との間に設けられている。具体的には、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bに設けられた補強部材19に、ボルト、ナット等の締結具を用いて取付けられている。照明具20は、夜間等においてオペレータが乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り降りするとき、乗降ステップ9に光を照射する。照明具20は、後部車体3に搭載されたバッテリ等(図示せず)を電源とするライトにより構成され、キャブ7に設けられたドア7Aの開閉動作に連動して点灯、消灯する。具体的には、ドアロック7Bが操作されてドア7Aが開いたときに照明具20が点灯し、ドア7Aが閉じたとき(ドアロック7Bが掛ったとき)に照明具20が消灯する構成となっている。
【0026】
照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bに取付けられているので、照明具20からの光は、デッキ部材16に遮られることなく、かつ、運転席8に乗り降りするオペレータによって遮られることなく、確実に乗降ステップ9に照射される構成となっている。一方、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bに取付けられているので、ホイールローダ1を用いて整地作業等を行うときに、前車輪2Aまたは後車輪3Aによって巻上げられて飛散した土砂等が照明具20に衝突したり、堆積するのをデッキ部材16によって阻止することができる構成となっている。
【0027】
また、デッキ部材16の下面部17Bに取付けられた照明具20の周囲は、枠部18によって取り囲まれているので、照明具20からの光がデッキ部材16の周囲に漏れるのを抑え、乗降ステップ9を上るオペレータが照明具20からの光によって眩惑されるのを防止できる構成となっている。さらに、照明具20から乗降ステップ9に照射された光の一部は、デッキ部材16の踏み板部17に形成された貫通孔17Cを通じて下面部17B側から上面部17A側に漏れるようになる。これにより、夜間作業時に運転席8に乗り降りするオペレータは、デッキ部材16の位置を明確に認識することができる構成となっている。
【0028】
第1の実施形態によるホイールローダ1は、上述の如き構成を有するもので、ホイールローダ1を用いて夜間作業を行う場合には、オペレータは、ホイールローダ1の乗降ステップ9に近づき、キャブ7のドア7Aに設けられたドアロック7Bを操作してドア7Aを開く。これにより、照明具20が点灯し、照明具20からの光が乗降ステップ9に照射され、上ステップ本体11.下ステップ本体12、補助ステップ13を照らすことができる。また、乗降ステップ9に照射された光の一部は、デッキ部材16の踏み板部17に形成された複数の貫通孔17Cを通じて踏み板部17の上面部17A側に漏れる。これにより、オペレータは、デッキ部材16の位置を明確に認識することができる。
【0029】
この状態で、オペレータは、前側手摺り14および後側手摺り15を把持しつつ、乗降ステップ9の補助ステップ13、下ステップ本体12、上ステップ本体11を踏み進む。この場合、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bに取付けられているので、照明具20からの光は、デッキ部材16に遮られることなく、確実に乗降ステップ9に照射される。また、乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り込むオペレータが、照明具20からの光を遮ることもない。この結果、乗降ステップ9を常に明るく照らすことができ、ホイールローダ1を用いた夜間作業時に、乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り込むときの安全性を高めることができる。
【0030】
また、デッキ部材16の踏み板部17の周縁部には枠部18が設けられているので、下面部17Bに取付けられた照明具20の周囲は、枠部18によって取り囲まれる。これにより、照明具20からの光がデッキ部材16の周囲に漏れるのを抑えることができ、乗降ステップ9を上るオペレータが、照明具20からの光によって眩惑されるのを防止することができる。
【0031】
乗降ステップ9の上ステップ本体11に達したオペレータは、上ステップ本体11からデッキ部材16を足場としてキャブ7に搭乗し、ドア7Aを閉じて運転席8に座る。照明具20は、ドア7Aが閉じることにより消灯する。そして、運転席8に座ったオペレータが、運転席8の前側に配置されたステアリング装置、バケット操作装置等(いずれも図示せず)を操作することにより、整地作業等を行うことができる。この整地作業時には、前車輪2Aまたは後車輪3Aによって巻き上げられた土砂がキャブ7等に向かって飛散するが、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bに取付けられている。このため、整地作業時に飛散した土砂が、照明具20に衝突したり、堆積したりするのをデッキ部材16によって阻止することができ、照明具20の寿命を延ばすことができる。
【0032】
整地作業が終了した後には、オペレータは、運転席8から降りるためにキャブ7のドア7Aを開く。これにより、照明具20が点灯し、運転席8に乗り込む場合と同様に、乗降ステップ9を明るく照らすことができるので、オペレータが乗降ステップ9を足場として運転席8から地上に降りるときの安全性を高めることができる。そして、地上に降りたオペレータがドア7Aを閉じることにより、照明具20を消灯させることができる。
【0033】
かくして、実施形態では、運転席8を備えた自走可能な前部車体2および後部車体3と、後部車体3に設けられた作業装置6とからなり、後部車体3は、運転席8に乗り降りするための乗降ステップ9と、乗降ステップ9の上側に配置され乗降ステップ9と運転席8との間に足場を形成するデッキ部材16と、乗降ステップ9に光を照射する照明具20とを含んで構成されたホイールローダ1において、デッキ部材16は、乗降時に踏面となる上面部17Aおよび乗降ステップ9と上下方向で対面する下面部17Bとを有し、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bと乗降ステップ9との間に設けられている。
【0034】
この構成によれば、照明具20からの光を、デッキ部材16やオペレータに遮られることなく乗降ステップ9に照射することができ、乗降ステップ9を明るく照らすことができる。しかも、照明具20は、デッキ部材16によって上方から覆われているので、ホイールローダ1の整地作業時において、キャブ7等に向けて飛散した土砂が照明具20に衝突したり、堆積したりするのを、デッキ部材16によって防止することができ、照明具20の寿命を延ばすことができる。
【0035】
実施形態では、デッキ部材16の踏み板部17には、その上面部17Aから下面部17Bへと貫通する複数の貫通孔17Cが設けられている。この構成によれば、乗降ステップ9に照射された光の一部が、複数の貫通孔17Cを通じてデッキ部材16(踏み板部17)の下面部17B側から上面部17A側に漏れるので、オペレータは、デッキ部材16の位置を明確に認識することができる。
【0036】
実施形態では、デッキ部材16には、踏み板部17の周縁部から下方に突出して下面部17Bを取り囲む枠部18が設けられ、照明具20は、デッキ部材16の下面部17Bに取付けられている。この構成によれば、下面部17Bに取付けられた照明具20の周囲を、枠部18によって取り囲むことができる。この結果、照明具20からの光がデッキ部材16の周囲に漏れるのを抑えることができ、乗降ステップ9を上るオペレータが、照明具20からの光によって眩惑されるのを防止することができる。
【0037】
実施形態では、デッキ部材16の下面部17Bには、デッキ部材16の強度を確保する補強部材19が設けられ、照明具20は、デッキ部材16の補強部材19に取付けられている。この構成によれば、補強部材19によってデッキ部材16の強度を高めることができると共に、補強部材19を利用して照明具20を取付けることができる。
【0038】
次に、
図6ないし
図8は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、デッキ部材に設けられたデッキ取付ブラケットに、照明具が取付けられていることにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
デッキ部材21は、乗降ステップ9の上側に配置され、乗降ステップ9の上ステップ本体11と運転席8との間に、オペレータの足場を形成している。デッキ部材21は、第1の実施形態によるデッキ部材16と同様に、上面部17A、下面部17B、複数の貫通孔17C、2枚のデッキ取付ブラケット17Dを有する長方形状の踏み板部17と、前枠部18A、後枠部18B、左枠部18C、右枠部18Dを有する枠部18とを含んで構成されている。
【0040】
しかし、デッキ部材21は、第1の実施形態によるデッキ部材16のような補強部材19が設けられていない点、および乗降ステップ9(サイドプレート10)のデッキ取付フランジ10Aに取付けられる2枚のデッキ取付ブラケット17Dを利用して、2個の照明具20を取付ける構成としている点で、第1の実施形態によるデッキ部材16とは異なっている。
【0041】
2個の照明具20は、デッキ部材21の下面部17Bに設けられた2枚のデッキ取付ブラケット17Dに、それぞれ締結具を用いて取付けられ、デッキ部材21の下面部17Bと乗降ステップ9との間に配置されている。これにより、2個の照明具20からの光は、デッキ部材21に遮られることなく、かつ、運転席8に乗り降りするオペレータによって遮られることなく、確実に乗降ステップ9に照射される構成となっている。
【0042】
第2の実施形態によるホイールローダ1は、上述の如きデッキ部材21および2個の照明具20を有するもので、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
然るに、第2の実施形態では、乗降ステップ9(サイドプレート10)のデッキ取付フランジ10Aに取付けるためにデッキ部材21に設けられたデッキ取付ブラケット17Dを利用して、2個の照明具20を取付ける構成としている。このため、照明具20を取付けるための部材(例えば第1の実施形態による補強部材19等)をデッキ部材21に設ける必要がなく、この分、デッキ部材21の部品点数を抑え、製造コストの低減に寄与することができる。また、2枚のデッキ取付ブラケット17Dを利用して2個の照明具20を取付けることにより、乗降ステップ9を一層明るく照らすことができる。
【0044】
次に、
図9ないし
図11は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、デッキ部材の枠部と下面部とが交わる角部のうち運転席側に位置する角部に、照明具が取付けられていることにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
デッキ部材22は、乗降ステップ9の上側に配置され、乗降ステップ9の上ステップ本体11と運転席8との間に、オペレータの足場を形成している。デッキ部材22は、第1の実施形態によるデッキ部材16と同様に、上面部17A、下面部17B、複数の貫通孔17C、2枚のデッキ取付ブラケット17Dを有する長方形状の踏み板部17と、前枠部18A、後枠部18B、左枠部18C、右枠部18Dを有する枠部18とを含んで構成されている。
【0046】
しかし、デッキ部材22は、第1の実施形態によるデッキ部材16のような補強部材19が設けられていない点、および後述する右角部22Dに照明具20を取付ける構成としている点で、第1の実施形態によるデッキ部材16とは異なっている。
【0047】
ここで、デッキ部材22を構成する踏み板部17の下面部17Bと枠部18とは、4つの角部を介して交わっている。即ち、下面部17Bと前枠部18Aとは、左右方向に延びる前角部22Aを介して交わり、下面部17Bと後枠部18Bとは、左右方向に延びる後角部22Bを介して交わっている。また、下面部17Bと左枠部18Cとは、前後方向に延びる左角部22Cを介して交わり、下面部17Bと右枠部18Dとは、前後方向に延びる右角部22Dを介して交わっている。これら前角部22A、後角部22B、左角部22C、右角部22Dのうち運転席8側に位置する右角部22Dに、照明具20が取付けられる構成となっている。
【0048】
照明具20は、デッキ部材22の下面部17Bと枠部18とが交わる4つの角部のうち、運転席8側に位置する右角部22Dに締結具を用いて取付けられ、デッキ部材22の下面部17Bと乗降ステップ9との間に配置されている。これにより、照明具20からの光は、デッキ部材22に遮られることなく、かつ、運転席8に乗り降りするオペレータによって遮られることなく、確実に乗降ステップ9に照射される構成となっている。
【0049】
ここで、運転席8側に位置するデッキ部材22の右角部22Dに照明具20を取付けることにより、後部車体3に搭載されたバッテリ等の電源(図示せず)と照明具20との間を接続するケーブル23の長さを可及的に短くできる構成となっている。また、照明具20をデッキ部材22に取付ける締結具(図示せず)は、後部車体3の側面とデッキ部材22との間の隙間に突出させることができる。これにより、乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り降りするときに、締結具が邪魔になるのを抑えることができる構成となっている。
【0050】
第3の実施形態によるホイールローダ1は、上述の如きデッキ部材22および照明具20を有するもので、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
然るに、第3の実施形態では、デッキ部材22の下面部17Bと枠部18とが交わる4つの角部のうち、運転席8側に位置する右角部22Dに照明具20を取付ける構成としている。このため、照明具20を取付けるための部材をデッキ部材22に設ける必要がなく、この分、デッキ部材22の部品点数を抑えることができる。また、後部車体3に搭載されたバッテリ等の電源(図示せず)と照明具20との間を接続するケーブル23の長さを短くすることができるので、整地作業時に飛散した土砂によってケーブル23が損傷するのを防止することができる。
【0052】
次に、
図12ないし
図14は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、車体の側面には、車体に搭載される搭載機器を収容すると共にデッキ部材が取付けられる機器収容箱が設けられ、照明具は、デッキ部材の下面部側に位置して機器収容箱に設けられていることにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
機器収容箱24は、前車輪2Aと後車輪3Aとの間に位置して後部車体3の左側面に設けられている。
図14に示すように、機器収容箱24は、前後方向で対面する前面板24Aおよび後面板24Bと、前面板24Aと後面板24Bとの間を連結し、後部車体3の側面と左右方向で対面する側面板24Cと、側面板24Cの上端から後部車体3側に折返された上面板24Dとを含んで構成されている。機器収容箱24の前面板24Aおよび後面板24Bは、複数のボルト24Eを用いて後部車体3の側面に取付けられている。機器収容箱24内には、後部車体3に搭載された搭載機器、例えばステアリングシリンダ5等の油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御するコントロールバルブ(図示せず)が収容されている。また、機器収容箱24には、後述する乗降ステップ25、デッキ部材29、照明具20が取付けられている。
【0054】
乗降ステップ25は、機器収容箱24の側面板24Cに設けられ、オペレータが地上と運転席8との間を乗り降りするときの足場を形成している。乗降ステップ25は、地面から後部車体3に向けて階段状に連続する上段ステップ25Aと下段ステップ25Bとを有し、これら上段ステップ25Aと下段ステップ25Bとは、ボルト25Cを用いて側面板24Cに取付けられている。下段ステップ25Bには、U字型の枠状に形成された補助ステップ26が、ボルト26Aを用いて着脱可能に取付けられている。また、上段ステップ25Aおよび下段ステップ25Bには、乗降ステップ25を足場として運転席8に乗り降りするオペレータが把持する前側手摺り27および後側手摺り28が、溶接等の手段を用いて固定されている。
【0055】
デッキ部材29は、乗降ステップ25の上側に配置され、乗降ステップ25の上段ステップ25Aと運転席8との間に、オペレータの足場を形成している。デッキ部材29は、第1の実施形態によるデッキ部材16と同様に、上面部17A、下面部17B、複数の貫通孔17Cを有する長方形状の踏み板部17と、前枠部18A、後枠部18B、左枠部18C、右枠部18Dを有する枠部18とを含んで構成されている。さらに、デッキ部材29には、踏み板部17の下面部17Bおよび枠部18に溶接され、前後方向で間隔をもって対面した一対(2枚)のブラケット17D′が設けられている。デッキ部材29は、2枚のブラケット17D′が機器収容箱24の側面板24Cにボルトを用いて取付けられることにより、乗降ステップ25の上側に位置して機器収容箱24に取付けられている。
【0056】
照明具20は、機器収容箱24の上面板24Dに取付けられたブラケット30に、締結具を用いて取付けられ、デッキ部材29の下面部17Bと乗降ステップ25との間に配置されている。これにより、照明具20からの光は、デッキ部材29に遮られることなく、かつ、運転席8に乗り降りするオペレータによって遮られることなく、確実に乗降ステップ25に照射される構成となっている。
【0057】
第4の実施形態によるホイールローダ1は、上述の如き機器収容箱24、乗降ステップ25、デッキ部材29および照明具20を有するもので、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
然るに、第4の実施形態では、後部車体3の側面に、搭載機器を収容する機器収容箱24が設けられた場合でも、この機器収容箱24を利用して、乗降ステップ25、デッキ部材29および照明具20を設けることができる。
【0059】
なお、第1の実施形態では、デッキ部材16の下面部17Bに照明具20を取付けることにより、デッキ部材16の下面部17Bと乗降ステップ9との間に照明具20を配置した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば
図15に示す変形例のように、乗降ステップ9を構成する一対のサイドプレート10の互いに対向する面に照明具20を取付けることにより、デッキ部材16の下面部17Bと乗降ステップ9との間に照明具20を配置する構成としてもよい。この場合には、乗降ステップ9を足場として運転席8に乗り降りするオペレータの邪魔にならない部位に照明具20を配置することが望ましい。
【0060】
また、照明具20は、前側手摺り14または後側手摺り15に取付けることにより、デッキ部材16の下面部17Bと乗降ステップ9との間に照明具20を配置する構成としてもよい。
【0061】
さらに、実施形態では、後部車体3に搭載されたキャブ7内に運転席8が配置されたホイールローダ1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、運転席を覆うキャブを備えていないホイールローダにも適用することができる。さらに、本発明は、ホイールローダ1に限らず、乗降ステップおよびデッキ部材を備えたホイール式油圧ショベル、クローラ式油圧ショベル等の作業機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 前部車体(車体)
3 後部車体(車体)
6 作業装置
8 運転席
9,25 乗降ステップ
10 サイドプレート
11 上ステップ本体
12 下ステップ本体
16,21,22,29 デッキ部材
17A 上面部
17B 下面部
17C 貫通孔
17D デッキ取付ブラケット
18 枠部
19 補強部材
22D 右角部
24 機器収容箱