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  • 特開-自励式無効電力補償装置 図1
  • 特開-自励式無効電力補償装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085200
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】自励式無効電力補償装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20220601BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20220601BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
H02M7/493
H02J3/16
H02J3/18 135
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196759
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五藤 和志
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】桑原 祐
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066AD14
5G066AE14
5G066DA04
5G066DA08
5G066FB11
5H770AA02
5H770BA13
5H770DA11
5H770DA22
5H770DA48
5H770HA03Y
5H770JA10X
5H770JA13Y
(57)【要約】
【課題】自励式無効電力補償装置を構成する二台のインバータ間に発生する高周波の循環電流を抑制する。
【解決手段】並列接続した非同期の二台のインバータ3a,3b間に、2つの連系リアクトル6a,6bを介して高周波の循環電流を抑制する1つのリアクトル(循環電流抑制リアクトル)7を接続し、この1つのリアクトル7は、連系リアクトル6bに巻始めを接続する一方のコイル7bと、当該一方のコイル7bの巻終わりに巻始めを接続し、その巻終わりを連系リアクトル6aに接続した他方のコイル7aによって構成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器部と電力変換器部からなり、該電力変換器部を構成する並列接続した非同期の二台のインバータ間に、当該インバータの何れかに一端を接続する2つの連系リアクトルと、当該2つの連系リアクトルの間に、高周波の循環電流を抑制する1つの循環電流抑制リアクトルを接続し、当該循環電流抑制リアクトルは、前記2つの連系リアクトルのうち、一方の連系リアクトルの他端に巻始めを接続する一方のコイルと、当該一方のコイルの巻終わりに巻始めを接続し、その巻終わりを他方の前記連系リアクトルの他端に接続した他方のコイルから構成したことを特徴とする自励式無効電力補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自励式無効電力補償装置(以下、STAOCOMという。)を構成する二台のインバータ間に発生する循環電流を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを利用する分散型電源が配電系統に大量導入された場合、系統電圧の変動が増大することが懸念される。特に、日射や風力の急変により、これらの出力は大きく変動する。
【0003】
その影響による急激な電圧変動に対しては、変圧器のタップを切換えて電圧を調整する従来の電圧調整装置では対応できず、この問題を解決する装置としてSTATCOMなどの無効電力補償装置が有効と考えられる。
【0004】
STATCOMは、高圧配電系統に接続されて、無効電力を無段階かつ高速に供給するものであり、無効電力が配電線を流れることで発生する電圧を利用して、配電線の電圧を調整する。無効電力はインバータで制御される。
【0005】
インバータはサイリスタよりも高速動作が可能な半導体(SiC-MOSFET(炭化ケイ素MOS型電界効果トランジスタ))を用いて構成されており、高速な無効電力出力制御によって急激な電圧変動を迅速に抑制することができる。(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】[2019年4月10日検索]インターネット<URL:http://www.aichidenki.jp/products/catalog_pdf/a2-statcom.pdf>
【0007】
非特許文献1記載のSTATCOMの制御性能としては、高圧配電系統の電圧一定制御は、応答時間30ms以内、無効電力一定制御は、応答時間30ms以内、フリッカ抑制制御はフリッカ電圧(6Hz)45%以下を実現している。
【0008】
図2に従来のSTATCOMの主回路構成をブロック図で示す。STATCOM101は、二台のインバータ102a,102bと制御ユニット103、連系用変圧器104、電圧検出器105を備えて概略構成されている。
【0009】
二台のインバータ102a,102bは互いに並列接続されており、連系用変圧器104を介して高圧配電系統(以下、単に配電系統という)106に接続される。
【0010】
制御ユニット103は電圧検出器105を介して配電系統106に接続されており、電圧検出器105にて配電系統106の(線間)電圧を検出し、配電系統106の電圧が目標電圧となるようにインバータ102a,102bを制御する。
【0011】
インバータ102a,102bはSiC-MOSFETのスイッチングによって、連系用変圧器104を介して無効電力を配電系統106に流し、配電線に無効電力が流れることによって発生する電圧を利用して、配電系統106の電圧を目標電圧に調整する。
【0012】
インバータ102a,102bは無効電力を無段階で調節可能なため、きめ細かい電圧調整が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
然るに、前記インバータ102a,102bは並列構成となっているので、互いに非同期とした場合、インバータ102a,102b間に高周波の循環電流が流れる。
【0014】
インバータ102a,102b間に高周波の循環電流が流れることによって、インバータ102a,102bを構成するSiC-MOSFET等のパワーデバイスで生じる導通損失を増大させることとなるので、好ましくない。
【0015】
そこで従来は、インバータ102a,102bを構成する制御部(図示せず)の補償器(ゲイン)を理想の値よりも下げることで、循環電流の影響を抑制していた。
【0016】
しかし、補償器(ゲイン)を理想の値よりも下げることによって、インバータ102a,102bの性能が低下する問題が発生する。
【0017】
本発明は、前述の問題を解決できるものであり、インバータの制御性能を低下させることなく、循環電流の影響を抑制することのできる無効電力補償装置の構造に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の自励式無効電力補償装置は、変圧器部と電力変換器部からなり、該電力変換器部を構成する並列接続した非同期の二台のインバータ間に、当該インバータの何れかに一端を接続する2つの連系リアクトルと、当該2つの連系リアクトルの間に、高周波の循環電流を抑制する1つの循環電流抑制リアクトルを接続し、当該循環電流抑制リアクトルは、前記2つの連系リアクトルのうち、一方の連系リアクトルの他端に巻始めを接続する一方のコイルと、当該一方のコイルの巻終わりに巻始めを接続し、その巻終わりを他方の前記連系リアクトルの他端に接続した他方のコイルから構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、インバータ内の制御部の調整が不要となるので、インバータの制御性能を低下させることなく、高周波の循環電流を抑制することが可能となる。また、連系リアクトルを設けることにより、接続する系統の線路インピーダンスの変化の影響を受けにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る自励式無効電力補償装置の主回路を示すブロック図である。
図2】従来の自励式無効電力補償装置の主回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1により説明する。図1において、1は配電系統2に接続される自励式無効電力補償装置(STATCOM)であり、3a,3bはSTATCOM1の電力変換器部を構成する二台のインバータである。
【0022】
二台のインバータ3a,3bは互いに並列接続されており、非同期構成となっている。
【0023】
4は配電系統2に接続される電圧検出器であり、5は電圧検出器4を介して配電系統2に接続され、配電系統2の配電線電圧を制御する制御ユニットを示している。
【0024】
6a,6bはインバータ3a,3bに一端を接続する2つの連系リアクトルであり、7は連系リアクトル6a,6b間に接続される1つのリアクトル(循環電流抑制リアクトル)を示している。循環電流抑制リアクトル7を構成する各コイル7a,7bは、連系リアクトル6a,6bの他端にそれぞれ一端を接続し、他端を他方のコイル7b,7aの他端に接続することで、互いに直列接続されている。なお、各コイル7a,7bは1つの鉄心に巻回されることで、1つのリアクトル7を構成している。
【0025】
さらに詳述すれば、非同期の二台のインバータ3a,3b間に連系リアクトル6a,6bを介して接続した1つの循環電流抑制リアクトル7は、連系リアクトル6aに巻終わりを接続する一方のコイル7aと、当該一方のコイル7aの巻始めに巻終わりを接続し、その巻始めを連系リアクトル6bに接続した他方のコイル7bから構成されている。
【0026】
各コイル7a,7b間の接続点には、変圧器部を構成する連系用変圧器8が接続されており、当該連系用変圧器8を介して配電系統2に接続されている。
【0027】
以上のように構成されたSTATCOM1の動作は図2で説明した従来のSTATCOM101の場合と概ね同一である。つまり、制御ユニット5は電圧検出器4を介して配電系統2の(線間)電圧を検出し、配電系統2の電圧が目標電圧となるようにインバータ3a,3bを制御する。
【0028】
インバータ3a,3bはSiC-MOSFETのスイッチングによって、連系リアクトル6a,6b、および、循環電流抑制リアクトル7のコイル7a,7bから連系用変圧器8を介して無効電力を配電系統2に流し、配電線に無効電力が流れることによって発生する電圧を利用して、配電系統2の電圧を目標電圧に調整する。
【0029】
このとき、連系リアクトル6a,6bは、インバータ3a,3bの制御が配電系統2の図示しない線路インピーダンスLの影響を受けにくくしている。連系リアクトル6a,6bの各々のインダクタンスLa,Lbと配電系統2の線路インピーダンスLとの関係は、La,Lb>Lである場合がインバータ3a,3bの制御への影響が小さい理想形となる。
【0030】
また、並列構成となっている非同期のインバータ3a,3b間には高周波の循環電流が流れるが、連系リアクトル6a,6bのみによってこの循環電流を抑制しようとすると、循環電流が高周波であることから、La,Lb>>Lとする必要があり、コストやサイズを考慮すると現実的でない。
【0031】
そこで、本発明では、インバータ3a,3b間に、循環電流抑制リアクトル7を前述した接続態様によって接続することで、高周波の循環電流を当該リアクトル7によって抑制する。なお、当該リアクトル7は商用周波(ノーマル成分)電流に影響を与えることはない。
【0032】
このようにして循環電流を抑制することにより、インバータ3a,3bを構成するSiC-MOSFET等のパワーデバイスで生じる導通損失が増大することを確実に防止することができる。
【0033】
そして、この循環電流の抑制は、従来のように、インバータ3a,3bを構成する制御部内の補償器(ゲイン)を調節する(ゲインを理想値より下げる)ことなく実現できるので、インバータ3a,3bの制御性能の低下を招くことはない。
【0034】
この結果、本発明に係るSTATCOM1による配電系統2の電圧制御性能を従来のSTATCOM101と比較して向上させることが可能となる。
【0035】
具体的には、電圧一定制御の応答時間を20ms以内に、無効電力一定制御の応答時間を20ms以内に、フリッカ抑制制御のフリッカ電圧(6Hz)を30%以下とすることが可能となった。
【0036】
以上説明したように、本発明の自励式無効電力補償装置(STATCOM)によれば、当該装置を構成する並列接続した二台のインバータ間に流れる高周波の循環電流を、両インバータ間に1つのリアクトルを追加するという簡易な構成によって抑制できるので、従来のように、インバータの制御性能を低下させることなく、循環電流による弊害を確実に防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、並列接続した非同期のインバータを備えた各種機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1,101 自励式無効電力補償装置(STATCOM)
2,106 高圧配電系統
3a,3b,102a,102b インバータ
4,105 電圧検出器
5,103 制御ユニット
6a,6b 連系リアクトル
7 循環電流抑制リアクトル
7a,7b コイル
8,104 連系用変圧器
図1
図2